説明

交通情報推定装置、交通情報推定のためのコンピュータプログラム、及び交通情報推定方法

【課題】推定対象道路リンクの交通情報を適切に推定できるようにする。
【解決手段】他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定装置1であって、他の道路リンクの交通情報及び推定パラメータを用いて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定部11と、推定対象道路リンクになり得る道路リンクにおける実測値に基づく交通情報と、当該推定対象道路リンクの交通情報を推定するために用いられる前記他の道路リンクの交通情報との組み合わせを学習用データとして学習用データベース14を蓄積し、蓄積された学習用データを用いて前記推定パラメータを最適化する学習部20と、を備えている。前記学習部20は、蓄積されている学習用データのうち、所定のデータ廃棄基準に従って、学習用データを廃棄し、廃棄されずに残っている学習用データを用いて、前記推定パラメータを最適化する学習を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報推定装置、交通情報推定のためのコンピュータプログラム、及び交通情報推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の交通情報をドライバーに提供する技術として、財団法人道路交通情報通信システムセンターによるVICS(Vehicle Information and Communication System:なお、「VICS」は上記財団法人の登録商標)が広く知られている。
このVICSは、各種の路側センサ(車両感知器やループコイル等)から収集した車両台数や車両速度等よりなる定点観測情報に基づいて、各路線での渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報を集計し、その交通情報を、ビーコンによる狭域通信やFM放送等の広域通信によってドライバーに提供するものである。
【0003】
また、道路の交通情報をドライバーに提供する他の技術として、プローブカーを利用した交通情報推定システム(以下、プローブシステムという。)も知られている。
このプローブシステムは、例えば特許文献1および2に示すように、実際に道路を走行する車両(プローブ車両)を移動体センサとして利用するもので、現時点の車両位置や時刻などのプローブ情報を無線通信によって各プローブ車両から収集し、道路の交通情報を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−151496号公報
【特許文献2】特開2005−4467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記VICS情報は、路側センサが設置された主要幹線道路などの一部の道路に関してしか得られない。
一方、プローブシステムでは、実際に道路を走行する車両(プローブ車両)を移動体センサとして利用するため、路側センサが設置されていない道路に関しても、交通情報を取得することが可能となる。
【0006】
しかし、現状では、プローブカーの台数は、非常に少なく、VICS及びプローブシステムのいずれからもデータが得られていない道路リンクについては、交通情報を得ることができない。
【0007】
そこで、(VICS及び)プローブシステムからデータが得られていない道路リンクについては、別の道路リンクの交通情報に基づいて、交通情報を推定することが考えられる。例えば、ある道路リンクの交通情報は、当該道路リンクに接続している道路リンク又はその他関連のある道路リンクにおける交通情報との相関が認められる。このような相関関係を利用すれば、別の道路リンクの交通情報を用いて、推定対象となる道路リンクの交通情報を補完することができる。
【0008】
しかし、上記のような推定を行おうとすると、別の各道路リンクの交通情報それぞれを、どの程度、推定対象となる道路リンクの交通情報として反映させるか等を決める推定パラメータを適切に設定することが必要となる。
推定パラメータを適切に設定するには、道路リンクの交通情報同士の相関を、実際に測定・調査して同定することが考えられるが、膨大な数の道路リンク同士の組み合わせについて、そのような相関を適切に求めることは現実的には不可能である。
【0009】
そこで、本発明は、他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を適切に推定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定装置であって、他の道路リンクの交通情報及び推定パラメータを用いて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定部と、推定対象道路リンクになり得る道路リンクにおける実測値に基づく交通情報と、当該推定対象道路リンクの交通情報を推定するために用いられる前記他の道路リンクの交通情報との組み合わせを学習用データとして蓄積し、蓄積された学習用データを用いて前記推定パラメータを最適化する学習部と、を備え、前記学習部は、蓄積されている学習用データのうち、所定のデータ廃棄基準に従って、学習用データを廃棄し、廃棄されずに残っている学習用データを用いて、前記推定パラメータを最適化する学習を行うことを特徴とする交通情報推定装置である。
【0011】
上記本発明によれば、推定対象道路リンクの交通情報(例えば、車両の速度)を、他の道路リンクの交通情報を用いて推定することができる。
ここで、推定に用いられる推定パラメータは、推定対象道路リンクになり得る道路リンクにおける実測値に基づく交通情報と、当該推定対象道路リンクの交通情報を推定するために用いられる前記他の道路リンクの交通情報との組み合わせで構成される学習用データから学習することができる。
蓄積される学習用データは、所定のデータ廃棄基準に従って廃棄され、廃棄されずに残っている学習用データを用いて学習が行われるため、比較的不適切な学習用データを除いた上で、学習を行うことができる。
したがって、推定パラメータの学習が適切に行われ、この結果、推定対象道路リンクの交通情報の推定を適切に行うことができる。
【0012】
(2)前記データ廃棄基準は、学習用データの蓄積数が所定の上限数を超えた場合に、古い学習用データから廃棄するよう設定されているものとすることができる。この場合、古い学習用データを、不適切な学習用データとみなして、廃棄することができる。
【0013】
(3)前記学習部は、学習用データを、所定のカテゴリーごとに分類して記憶するよう構成され、前記データ廃棄基準は、前記カテゴリーのうち、記憶されている学習用データの数が多いカテゴリーの学習用データから廃棄するよう設定されているものとすることができる。この場合、カテゴリー毎の学習用データ数を揃えることが容易となる。
【0014】
(4)前記学習部は、蓄積された学習用データに含まれる前記他の道路リンクの交通情報を、新たな交通情報に置き換えたものを、新たな学習用データとして蓄積するよう構成され、前記新たな学習用データは、元の前記学習用データが蓄積された後に、前記他の道路リンクの交通情報を推定するための前記推定パラメータの学習が行われることで更新された前記他の道路リンクの交通情報とすることができる。
蓄積された学習用データの数が少なくても、新たな学習用データを生成でき、学習用データの数を増加させることができる。
【0015】
(5)他の観点からみた本発明は、コンピュータを、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の交通情報推定装置として機能させるためのコンピュータプログラムである。
【0016】
(6)他の観点から見た本発明は、他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定装置であって、他の道路リンクの交通情報及び推定パラメータを用いて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定ステップと、推定対象道路リンクになり得る道路リンクにおける実測値に基づく交通情報と、当該推定対象道路リンクの交通情報を推定するために用いられる前記他の道路リンクの交通情報との組み合わせを学習用データとして蓄積し、蓄積された学習用データを用いて前記推定パラメータを最適化する学習ステップと、を含み、前記学習ステップでは、蓄積されている学習用データのうち、所定のデータ廃棄基準に従って学習用データを廃棄し、廃棄されずに残っている学習用データを用いて、前記推定パラメータを最適化する学習を行うことを特徴とする交通情報推定方法である。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明によれば、推定対象道路リンクの交通情報を適切に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】交通情報システムの全体構成図である。
【図2】交通情報推定装置の構成図である。
【図3】入力情報処理部の構成図である。
【図4】変換情報を示す図である。
【図5】交通情報推定処理手順を示すフローチャートである。
【図6】ニューラルネットワークの構成図である。
【図7】道路リンクの例を示す図である。
【図8】推定データベースの初期状態を示す図である。
【図9】重みデータベースの初期状態を示す図である。
【図10】入力情報として取得したVICS情報及びプローブ情報を示す図である。
【図11】1回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図12】2回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図13】3回目の更新後の推定データベースを示す図である。
【図14】スナップショットとして抽出される部分を示す図である。
【図15】学習用データベースを示す図である。
【図16】学習処理を示すフローチャートである。
【図17】簡略化した道路リンクモデルとその速度推定を示す図である。
【図18】学習したa1に対する学習用データの残差を示すグラフである。
【図19】元の学習用データPi及び当該元の学習用データPiから生成された新たな学習用データNPiを示すグラフである。
【図20】新たな学習用データNPiの生成手順の説明図である。
【図21】新たな学習用データNPiの生成手順の説明図である。
【図22】新たな学習用データNPiの生成手順の説明図である。
【図23】新たな学習用データNPiの生成手順の説明図である。
【図24】学習データベースの構造を示す図である。
【図25】カテゴリー情報付き学習用データのデータ構造図である。
【図26】カテゴリー分けした場合の学習用データの学習データベースへの蓄積処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[1.全体構成]
図1は、交通情報推定装置(中央装置)1を有する交通情報システムを示している。この交通情報システムは、交通情報推定装置1のほか、車載装置2を搭載したプローブ車両3、車載装置2と無線通信する路側通信機4、及び路側センサ5などを含む。
【0020】
前記交通情報推定装置1は、中央装置における様々な機能のうちの一機能を指しており、中央装置1は、VICS情報及びプローブ情報などの交通情報(観測情報)を取得し、車両に提供するための提供用の交通情報を生成する機能を有している。なお、中央装置1は、交通情報に基づいて、信号機制御や交通管制などの各種の交通用処理を行ってもよい。
【0021】
この交通情報推定装置(中央装置)1は、処理装置(CPU)及び記憶装置を有する一つ又は複数のコンピュータによって構成されており、記憶装置には、コンピュータを、交通情報推定装置(中央装置)として機能させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。このコンピュータプログラムは、前記処理装置によって実行され、前記処理装置が前記記憶装置等に対し入出力を行うことで、交通情報推定装置(中央装置)1としての機能を実現する。なお、以下に説明する交通情報推定装置(中央装置)1の機能は、特に断らない限り、前記コンピュータプログラムによって実現されるものである。
【0022】
前記車載装置2は、プローブ車両3の観測情報としてプローブ情報を生成し、路側通信機4に無線送信する。プローブ情報は、プローブ車両の位置、当該位置の通過速度、当該位置の通過時刻及びプローブ車両の車両IDなどを含む交通情報である。また、プローブ情報には、その他の情報を含めても良い。なお、プローブ車両の位置は、車載装置2が有するGPS受信機によって受信したGPS信号に基づいて算出される。
【0023】
前記路側通信機4は、車載装置2との間で無線通信によって情報の送受信を行うものである。具体的には、路側通信機4は、車載装置2が送信した観測情報としてのプローブ情報を受信し、交通情報推定装置(中央装置)1に転送する。また、路側通信機4は、交通情報推定装置(中央装置)1から、車両への提供用の交通情報を取得し、その交通情報を、車載装置2に送信することができる。なお、路側通信機4と交通情報推定装置1との間は、通信回線によって接続されている。
【0024】
前記路側センサ5は、観測情報(実測値)としての交通情報を検出するためのものであり、例えば、直下を通行する車両を超音波感知する車両感知器や、インダクタンス変化で車両を感知するループコイル、或いは、カメラの映像を画像処理して交通量や車両速度する計測する画像感知器よりなり、交差点に流入する車両台数や車両速度を計測する目的で、高速道路や主要な幹線道路などに設置されている。
【0025】
路側センサ5によって検出した観測情報は、通信回線を介して、VICSセンタサーバ6に送信され、このVICSセンタサーバ6では、路側センサ5の観測情報に基づいて、VICS情報を生成する。このVICS情報は、通信回線を介して、交通情報推定装置1に送信される。
【0026】
前記VICS情報は、各道路リンクでの渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報である。VICS情報は、路側センサ5から5分ごとに観測情報を取得して、情報更新されるため、時間的に高密度な情報が得られる。しかし、路側センサ5はすべての道路に設置されているわけではなく(主要道路でも20%以下)、エリアカバー率が低い。
一方、前記プローブ情報は、道路を走行するプローブ車両3から取得するため、エリアカバー率を高くすることが可能である。ただし、プローブ車両3となるための車載装置2の普及率がまだ低いため、時間的に低密度のデータしか得られない。
【0027】
つまり、所定エリア内の道路に、道路リンクを設定した場合、VICS情報が得られる道路リンクについては、VICS情報の更新単位時間ごとに常に交通情報(VICS情報)が得られる。一方、VICS情報が得られない道路リンクについては、VICS情報の更新単位時間ごとにみると、プローブ情報が交通情報として得られる道路リンクがある一方、プローブ情報も得られない道路リンクが混在することになる。
【0028】
[2.交通情報推定装置の詳細]
[2.1 推定装置の全体構成]
本実施形態に係る交通情報推定装置1は、VICS情報もプローブ情報も得られない道路リンクの交通情報を推定して、当該道路リンクの交通情報を補完することで、所定エリア内の全道路リンクの交通情報を生成する。
【0029】
このように、VICS情報もプローブ情報も得られない道路リンクの交通情報を補完することで、より精度が高い交通情報を車両(ナビゲーションシステム)に提供したり、精度良く交通管制を行ったりすることが可能となる。
なお、以下では、VICS情報もプローブ情報も得られず交通情報を推定して補完する必要がある道路リンクを、「推定対象道路リンク」という。
【0030】
図2に示すように、交通情報推定装置1は、推定対象道路リンクの交通情報を推定するための推定システム(推定部)11と、推定に用いられるパラメータ(推定用パラメータ)を学習するための学習システム12と、を備えている。
【0031】
また、交通情報推定装置1は、推定システム11によって推定した交通情報等を蓄積するための推定データベース(交通情報データベース)13、推定データベース13におけるデータのうち、学習システム12における学習に用いるデータを蓄積する学習用データベース14、推定パラメータ(本実施形態では、「重み」)を蓄積するための重みデータベース(推定パラメータデータベース)15と、を記憶装置上に備えている。
【0032】
[2.2 入力情報処理部]
さらに、本実施形態に係る交通情報推定装置1は、当該交通情報推定装置1が取得したVICS情報及びプローブ情報(以下、両情報を総称する場合、「入力情報」という)に対する処理を行う入力情報処理部16を備えている。
【0033】
前記入力情報処理部16は、入力情報から、各リンクの「速度情報」を生成する処理を行うものであり、生成した「速度情報」は、推定データベース13に与えられ、推定データベース13の更新に用いられる。
【0034】
図3に示すように、入力情報処理部16は、取得したVICS情報から「速度情報」を生成するVICS情報処理部17と、取得したプローブ情報から、「速度情報」を生成するプローブ情報処理部18と、を備えている。
VICS情報処理部17は、VICS情報に含まれるリンク旅行時間から、当該道路リンクのリンク旅行速度を算出するリンク旅行速度算出部17aと、リンク旅行速度を当該リンクの「速度情報」に変換する速度情報変換部17bとを備えている。
【0035】
VICS情報処理部17のリンク旅行速度算出部17aは、リンク旅行速度を算出しようとする道路リンクのリンク長を、当該道路リンクのリンク旅行時間で除することで、リンク旅行速度[km/h]を算出する。なお、対象エリア内の全道路リンクのリンク長は、予め、装置1の記憶装置に格納されている。
【0036】
VICS情報処理部17の速度情報変換部17bは、リンク旅行速度算出部17aで求めたリンク旅行速度を、「速度情報」(規格化速度)という指標値(速度指標情報)に変換する。この変換は、速度情報変換部17bが、装置1に予め設定された「速度−速度情報」変換情報19を参照することで行われる。「速度−速度情報」変換情報19は、例えば、図4に示すように設定されたものであるが、詳細については後述する。
【0037】
プローブ情報処理部18のリンク旅行速度算出部18bは、プローブ情報に含まれる位置及び時刻に基づいて、リンク旅行速度を算出しようとする道路リンクのリンク旅行速度を算出する。
【0038】
プローブ情報処理部18の速度情報変換部18bは、VICS情報処理部17の速度情報変換部17bと同様に、リンク旅行速度を「速度情報」に変換する。その処理内容は、速度情報変換部17bと同様である。
【0039】
[2.3 速度情報について]
「速度情報」は、リンク旅行速度の大小に応じた値をとる指標値である。本実施形態では、図4に示すように、速度情報は、0から1までの値をとり、リンク旅行速度が100[km/h]付近でほぼ「0」に近くなり、リンク旅行速度が0[km/h]のときに1の値をとる。図4に示す変換情報19は、自然対数を利用しており、具体的には、リンク旅行速度(図4の横軸)をxとし、速度情報(図4の縦軸)をyとすると、y=exp(−(x/20))の関数となっている。なお、この式中の「20」という値は、好ましい例であり、「20」に限定されるものではなく、任意の正数aを採用することができる。
【0040】
このy=exp(−(x/20))の関数において、xからみた傾きは、この式をxで微分したものとなり、下記の通りである。
【数1】

【0041】
このように、図4の変換情報は、リンク旅行速度xが大きくなるほど、リンク旅行速度xの変化に対する速度情報(規格化速度)yの変化の割合(xからみた傾き)が小さくなるように設定されている。
【0042】
ここで、図4の関数を、yについての関数として表すと、x=−20×ln(y)となり、この場合、yからみた傾きは、この式をyで微分したものとなり、下記の通りである。
【数2】

この場合、yからみた傾きは、yの逆数に比例することになる。
【0043】
図4のように、変換情報を設定することで、速度情報(規格化速度)が同じ値ほど変化しても、実際のリンク旅行速度への影響は、速度情報(規格化速度)の大小によって異なる。
例えば、速度情報が、0.1の場合と、0.5の場合を考える。この場合、yからみた傾きは、yの逆数に比例するため、dx/dy=−20/0.1=−200、ならびに、dx/dy=−20/0.5=−40となる。
【0044】
したがって、速度情報が0.01ほど変化した場合、より高速である速度情報=0.1の場合には、リンク旅行速度の変化は、−0.01(dx/dy)=2[km/h]となって比較的大きく、比較的低速である速度情報=0.5である場合には、リンク旅行速度の変化は、−0.01(dx/dy)=0.4[km/h]となって比較的小さくなる。
【0045】
つまり、速度情報(規格化速度)が同じ値変化しても、実際のリンク旅行速度への影響は、速度情報(規格化速度)の逆数によって決まる。傾きである速度情報の逆数は、単位距離(例えば、1km)を移動するリンク旅行時間に比例するので、旅行時間を評価する際には、図4のような変換情報を用いると有効である。
【0046】
以上のように設定された変換情報19によれば、速度情報という指標に、単なる「速度」という要素以外に、道路が混雑していて渋滞気味であるか、それとも道路が空いており車両が順調に流れているのかという渋滞度(交通流の度合)の要素も、持たせることができる。なお、変換情報は、図4に示すものに限定されるものではない。
【0047】
[2.4 交通情報推定装置1による処理内容]
[2.4.1 推定処理の概要]
図5は、交通情報推定装置1(の処理装置)による交通情報推定方法を示している。まず、推定データベース(交通情報データベース)13及び重みデータベース15に初期値を設定しておく(ステップS1)。
【0048】
そして、交通情報推定装置1が、VICS情報やプローブ情報を取得すると、入力情報処理部16がVICS情報やプローブ情報から各道路リンクの速度情報を生成する(ステップS2)。ただし、ステップS2において速度情報が取得できる道路リンクは、対象エリア内の全道路リンクのうちの一部であり、ステップS2では速度情報が得られない道路リンクがある。
【0049】
続いて、ステップS2で得られた速度情報を、推定データベース13にセットし、推定データベースDB4を更新する(ステップS3)。そして、推定システム11は、ステップS3で更新された推定データベース13の内容に基づいて、速度情報が得られていない道路リンクについての速度情報を推定し、推定した速度情報を、推定データベース13にセットし、推定データベース13を更新する(ステップS4)。このステップS4により、対象エリア内の全道路リンクについての速度情報(実測値に基づく速度情報と推定値である速度情報とが混在したもの)が得られる。
【0050】
ステップS4にて得られた全道路リンクについての速度情報は、装置外部に出力される(ステップS5)。具体的には、装置1のディスプレイに表示されるか、車載装置2への提供情報として出力される。
また、ステップS4で更新された推定データベース13の内容の一部は、学習用データベース14にスナップショットとして蓄積され、学習システム12による学習用データとして用いられる(ステップS6)。
【0051】
以上のステップS2〜ステップS6の処理は、速度情報が生成される度に繰り返し実行される。入力情報処理部16は、VICS情報の更新周期(例えば5分)に合わせて、VICS情報及びプローブ情報を取得して、速度情報を生成するため、ステップS2〜ステップS6の処理は、VICS情報の更新周期(例えば5分)に合わせて繰り返し実行されることになる。
【0052】
[2.4.2 速度情報推定のためのモデル]
図6は、推定システム11が、推定対象道路リンクの速度情報を推定するためのニューラルネットワークを示している。図示のニューラルネットワークは、0〜1の値をとるN個の入力信号xi(i:1〜N)それぞれに、重みwiを(wi:0〜1)乗じて、出力値yを生成する単純パーセプトロンとして構成されている。
ここで、入力信号xiは、推定対象道路リンク以外の他の道路リンク(推定対象道路リンクに接続された道路リンク)の速度情報であり、出力値yは推定対象道路リンクの速度情報である。
【0053】
また、重みwiは、推定対象道路リンク以外の複数の道路リンクそれぞれの速度情報を、どの程度の割合で反映させるかという値であり、推定対象道路リンクとの相関の高い道路リンク(例えば、推定対象道路リンクと同じ道路を構成し、推定対象道路リンクに隣接する道路リンク)ほど大きな値に設定されるべきであり、相関が低い道路リンクほど小さな値に設定されるべきものである。
【0054】
ただし、図6のものでは、一般的な単純パーセプトロンとは異なり、入力信号xiに乗じられることなくノードに加算される独立パラメータw0が設けられている。この独立パラメータw0は、推定対象道路リンク以外の道路リンクにおける速度情報以外の要因が、推定対象道路リンクの速度情報に与える要因(例えば、道路リンク間での制限速度の差)を表現することができ、速度情報を精度良く推定することができる。また、推定用パラメータ(重み)の学習の際に、推定用パラメータを最適値に収束させやすくなって、学習処理を容易又は高速に行える。
【0055】
以上のように、推定システム11が、ある推定対象道路リンクの速度情報を求めるには、当該推定対象道路リンクとの相関が多少なりとも認められる他の道路リンクの速度情報と、当該他の道路リンクの速度情報をどの程度ほど推定対象道路リンクの速度情報に反映させるかを示す重みと、が得られればよい。そのような他の道路リンクの速度情報は、推定データベース(交通情報データベース)13に蓄積され、重みは重みデータベース15に蓄積されており、推定システム11は、両データベース13,15から必要な情報を取得する。
【0056】
上記のようなニューラルネットは、各道路リンクについて設けられることになるため、推定システム11は、複数の道路リンク(要素)それぞれに関する速度情報を、他の道路リンクに関する速度情報及びその寄与度を表す推定パラメータ(重み)を用いて推定可能に構成されていることになる。
【0057】
なお、速度情報を推定するためのニューラルネットワークとしては、図6のような単層のパーセプトロンに限られるものではなく、入力層、中間層、出力層を有する多層パーセプトロンであってもよい。多層パーセプトロンとして構成すると、推定対象道路リンクと他の道路との間で、速度情報が非線形関係を持つ場合であっても、推定対象道路リンクの速度情報を適切に求めることができる。
【0058】
[2.4.3 推定処理の詳細]
ここでは、図7のように接続された道路リンクを想定する。図7において、Vxは、道路リンクの速度情報(0〜1の値)を示している。また、Vxにおける添え字xは、道路リンクのリンク番号を示しており、1〜24の値をとる。つまり、図7では、リンク番号1〜24までの24個の道路リンクが存在する。また、各リンクの矢印方向は、車両の進行方向を示す。
【0059】
図7において、実線の矢印で示す道路リンク(リンク番号x=1〜10)は、VICS情報が取得可能なリンクであり、例えば、高速道路や主要幹線道路に対応する道路リンクである。また、点線の矢印で示す道路リンク(リンク番号x=11〜24)は、VICS情報が取得できないリンクであり、例えば、高速道路や主要幹線道路以外の一般道路である。点線の矢印で示す道路リンクは、速度情報の推定対象道路リンクとなる可能性がある。つまり、点線の矢印で示す道路リンクについては、標本情報であるプローブ情報が得られた場合には、推定対象道路リンクとはならず、プローブ情報が得られなかった場合には、推定対象道路リンクとなり、速度情報の推定処理が実行される。
なお、VICS情報が取得可能な道路リンクであっても、何らかの事情でVICS情報が取得できない場合には、推定対象道路リンクとして扱われる。
【0060】
以下、図7の道路リンクを前提とし、図5も再度参照しつつ、速度情報の推定手順について詳細に説明する。
まず、推定データベース(交通情報データベース)13及び重みデータベース15には、装置管理者によって、初期値が入力される(ステップS1)。
【0061】
図8に示すように、推定データベース13は、「チェック」31、「速度情報」32、「関連道路リンク情報」33、「リンク長」34、「学習?」のデータ項目を有しており、各道路リンク(リンク番号)についてそれぞれのデータ項目の値を保存可能なものである。
【0062】
前記データ項目のうち、「チェック」31は、各道路リンクの速度情報の更新の有無及び更新された順番(更新順位;推定順位)を示す項目である。「速度情報」32は、各道路リンクの速度情報がセットされる項目である。
「関連道路リンク情報」33は、各道路リンクに相関のある道路リンク(関連道路リンク)を示しており、ここでは、それぞれの道路リンクに接続されている道路リンク(リンク番号)を示している。
【0063】
「関連道路リンク情報」33は、「逆」、「A順」、「A逆」、「B順」、「B逆」の5種類に分けられている。
「逆」は、任意の道路リンクと逆方向の道路リンクのリンク番号を示し、例えばリンク番号1の道路リンクについては、リンク番号8の道路リンクが「逆」の道路リンクとなる。
「A順」は、ある道路リンクの後方で順方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号12,7,15の道路リンクが「A順」の道路リンクとなる。
「A逆」は、ある道路リンクの後方で逆方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号11,15,13の道路リンクが「A逆」の道路リンクとなる。
【0064】
「B順」は、ある道路リンクの前方で順方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号4,9の道路リンクが「B順」の道路リンクとなる。
「B逆」は、ある道路リンクの前方で逆方向に接続している道路リンクであり、例えば、リンク番号1の道路リンクについては、リンク番号3,6の道路リンクが「B逆」の道路リンクとなる。
【0065】
また、前記データ項目のうち「リンク長」34は、各道路リンクのリンク長を示すものである。「学習?」35は、各道路リンクの速度情報等が学習部20(学習システム12)による学習のためのデータ(学習用データ)となるものであるか否かを示しており、ここでは0又は1の値をとる。「0」はその道路リンクの速度情報等が学習用データとはならないことを示しており、「1」はその道路リンクの速度情報等が学習用データとなることを示している。
【0066】
ステップS1の初期値入力は、装置1の運用開始時やリセット時に行われ、推定データベース11については、上記データ項目のうち、「速度情報」32、「関連道路リンク情報」33、「リンク長」34について初期値が設定される。「速度情報」32の初期値としては、例えば、全道路リンクについて0を設定すればよい。「関連道路リンク情報」33及び「リンク長」34の初期値については、対象エリアの道路構成に従って設定される。「関連道路リンク情報」33及び「リンク長」34の初期値は、VICS情報及びプローブ情報からなる交通情報(速度情報)を取得しても更新されることはない。
【0067】
一方、「速度情報」34の値は、VICS情報及びプローブ情報からなる交通情報(速度情報)を取得する度に、全道路リンクについて更新される(ステップS3,S4)。
また、「チェック」31については、交通情報(速度情報)を取得する度に(ステップS2)、0に初期化される。「学習?」35についても、交通情報(速度情報)を取得する(ステップS2)度に、各道路リンクの速度情報等を学習データとすべきか否かに応じて0又は1に設定される。
【0068】
図9に示すように、重みデータベース15には、各道路リンクにおける速度情報の推定値を他の道路リンクの速度情報から求める際に用いる重みwiが、初期値として設定される。重みwiは、各道路リンクについて、「関連道路リンクの数+1」ほど設定される。図9において、w0は独立パラメータであり、w1以降は関連道路リンクの速度情報それぞれに乗じられる重みである。
【0069】
推定用パラメータである重みwiは、学習システム12による学習によって、より適切な値へと自動的に更新されるため、初期値としては、適当な値を設定してもよい。したがって、初期設定が容易である。
【0070】
さて、上記の初期化を行ったのち、図7に示す道路リンクに関し、ある時点において、図10のようなVICS情報及びプローブ情報(交通情報)が得られたものとする。図10では、リンク番号1〜10の道路リンクについてのVICS情報(リンク旅行時間)が得られ、リンク番号20の道路リンクについてのプローブ情報が得られている。他の道路リンクについてはVICS情報もプローブ情報も得られていない。なお、図10では、表記の容易化のため、リンク番号20の道路リンクについてのプローブ情報を、VICS情報と同様に「リンク旅行時間」で示した。
【0071】
また、図10の情報では、プローブ情報が存在する道路リンク(リンク番号20)については、学習対象となることを示す値「1」が設定されており、VICS情報が存在する道路リンク(リンク番号1〜10)については、学習対象ではないことを示す値「0」が設定されている。
【0072】
図10のような入力情報が取得された場合、この情報における「旅行時間」は、入力情報処理部16によって「速度情報」に変換され(ステップS2)、その速度情報によって、推定データベース13の対応する道路リンクの「速度情報」32が更新される(第1回目の更新;ステップS3)。更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第1回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「1」が設定される。また、図11の入力情報の「学習対象」が「1」である道路リンク(ここでは、リンク番号20の道路リンク)については、「学習?」35が「1」に設定される。
【0073】
以上のようにして第1回目の更新(入力情報のセット)が行われた後の推定データベース13の内容を、図11に示す。
【0074】
続いて、速度情報が未更新の道路リンク(リンク番号11〜19,21〜24)についての速度情報の推定を行って、当該推定値により推定データベース13の更新を行う(ステップS4)。
具体的には、まず、「チェック」31項目に、前回の更新を示す「1」が設定されている道路リンク(リンク番号1〜10,20)の関連道路リンク(隣接道路リンク)のうち、今回の入力情報(図10)に基づく速度情報の更新が未だなされていない道路リンク(チェック=0)を抽出する。ここでは、リンク番号12,15,11,13,19,18,17,21,24,14,16の11個の道路リンクが抽出される(図12参照)。これら11個の道路リンクが、ここでの推定対象道路リンクとなる。
【0075】
そして、推定システム11は、11個の推定対象道路リンクそれぞれについての関連道路リンクを、推定データベース13から読み出すとともに、11個の推定対象道路リンクそれぞれについて設定された重み(推定用パラメータ)を、重みデータベース15から読み出し、これらを用いて、各推定対象道路リンクの速度情報の推定値を算出する。算出された、速度情報の推定値は、推定データベース13の「速度情報」にセットされ、速度情報についての第2回目の更新が行われる。なお、更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第2回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「2」が設定される。
【0076】
上記推定対象道路リンクのうち、例えば、リンク番号12,15,11,13の道路リンクの速度情報の推定値(V12,V15,V11,V13)を求めるための演算式は、下記のとおりである。
12=w0+w111+w21+w35+w413+w58+w67+w715
15=w0+w113+w220+w316+w417+w514+w61+w711
+w85+w98+w1012+w115
11=w0+w112+w28+w315+w47+w51+w611+w75
13=w0+w115+w28+w312+w47+w51+w611+w75
+w814+w917+w1016+w1120
【0077】
そして、「チェック」31項目に、前回の更新を示す「2」が設定されている道路リンク(リンク番号11〜19,21,24)の関連道路リンク(隣接道路リンク)のうち、今回の入力情報(図10)に基づく速度情報の更新が未だなされていない道路リンク(チェック=0)を抽出する。ここでは、リンク番号22,23の2個の道路リンクが抽出される(図13参照)。これら2個の道路リンクが、次の推定対象道路リンクとなる。
【0078】
そして、推定システム11は、2個の推定対象道路リンクそれぞれについての関連道路リンクを、推定データベース13から読み出すとともに、2個の推定対象道路リンクそれぞれについて設定された重み(推定用パラメータ)を、重みデータベース15から読み出し、これらを用いて、各推定対象道路リンクの速度情報の推定値を算出する。算出された、速度情報の推定値は、推定データベース13の「速度情報」にセットされ、速度情報についての第3回目の更新が行われる。なお、更新された道路リンクについては、「チェック」31に、第3回目の更新で速度情報が更新されたことを示す「3」が設定される。
【0079】
上記のような処理は、全ての道路リンクについての速度情報が推定されるまで繰り返される(ステップS4)。ここでは、3回の更新により全ての速度情報が補完されたため、推定処理を終了する。
【0080】
すると、推定データベースの内容の出力が行われる(ステップS5)。
さらに、今回の入力情報(図10)に基づく、推定処理が終了した推定データベース13の各道路リンクのデータのうち、「学習?」35に「1」が設定されたリンク番号20の道路リンクのスナップショット(図14参照)を、学習用データベース14に追加する。ここで、スナップショットとは、「学習?」35に「1」が設定されたリンク番号の道路リンクの「速度情報」、当該道路リンクの関連道路リンクの「速度情報」と、の組み合わせを記憶したものである。ここで、「学習?」35に「1」が設定されたリンク番号の道路リンクの速度情報は、プローブ情報から得られた値であるから実測値に基づく速度情報(交通情報)である。また、当該道路リンクの関連道路リンクの「速度情報」には、VICS情報から得た実測値と推測値とが混在している。
【0081】
スナップショットは、入力情報が取得されて、推定データベースの全道路リンクの更新(ステップS3,S4)が行われる度に発生する。このスナップショットは、プローブ情報を取得できた道路リンクについて発生する。
したがって、上記の例では、リンク番号20の道路リンクのみスナップショットが発生したが、推定データベースの全道路リンクの更新(ステップS3,S4)が何度も行われると、他の道路リンクについてもスナップショットが蓄積される。また、入力情報が繰り返し発生するほどの十分な時間が経過すると、一つの道路リンクについて複数のスナップショットが蓄積される。
【0082】
[2.4.4 学習処理]
図15は、複数の道路リンクについて、それぞれ複数のスナップショットが蓄積された学習用データベース14の内容を示している。
このようにして多数のスナップショットが蓄積された学習用データベース14に基づいて、学習システム12が、重みデータベース15に記憶されている重み(推定用パラメータ)の学習(最適化)を行って、重みデータベース15の内容を更新する。
【0083】
図16は、学習システム12による学習処理の手順を示している。まず、学習システム12は、誤差判定のための許容誤差、ニューラルネットワーク(図6)を構成する中間層の数、学習計数などの学習用のパラメータ設定を行う(ステップS11)。
学習システム12は、図6に示すようなニューラルネットワークを最適化(学習)するニューロエンジンとして構成されている。つまり、学習システム12は、学習用データベース14に蓄積されているスナップショットのうち、実測値である速度情報を教師信号とし、教師信号となる速度情報を持つ道路リンクの関連道路リンクについての速度情報から、この教師信号を出力するための適切なニューラルネットワークを再構築する。すなわち、学習システム12は、実測値である速度情報と、当該速度情報を持つ道路リンクの関連道路リンクについての速度情報とからなる学習データから、重みの最適値を算出する。重みの最適値の算出は、例えば、最小自乗法などによって行える。
【0084】
重みの最適値の算出は、関連道路リンクについての速度情報から算出される速度情報が、教師信号に近づいて、教師信号との誤差が、設定された許容誤差未満になるまで行われる(ステップS13)。
【0085】
重みが収束して学習処理が終了すると、得られた重みは、重みデータベース15に反映され、重みデータベース15が更新される。
【0086】
重みデータベース15が更新された後に、VICS情報及びプローブ情報からなる入力情報が発生すると、推定システム11による速度情報の推定は、新たな重みを用いて、より精度良く行われる。このように、本実施形態の交通情報推定装置1では、運用を続けることで、交通情報(速度情報)の推定精度が自然に向上する。
【0087】
[2.4.5 新たな学習用データの生成]
本実施形態の学習部20は、スナップショットとして学習用データベース14に蓄積された学習用データから、新たな学習用データを生成する生成部21を備えている。学習用データベース14に蓄積されている学習用データは、前述のように、学習対象の道路リンクの「速度情報」と当該道路リンクの関連道路リンクの「速度情報」と、の組み合わせである。ここで生成される「新たな学習用データ」は、学習用データベース14に蓄積されている学習データのうち、関連道路リンクの「速度情報」を、当該学習データの蓄積後に更新された「速度情報」に置き換えることで生成される。
【0088】
以下、新たな学習用データの生成の詳細について説明する。
図17(a)は、新たな学習用データの生成の説明のために、簡略化した道路リンクモデルを示している。図17(a)に示す道路リンク構造は、3つの道路リンク「y」,「x1」,「x2」により構成されている。
3つの道路リンクの速度情報もそれぞれ、「y」,「x1」,「x2」で表すものとし、推定対象道路リンクyの速度情報yは、道路リンクx1の速度情報x1のみから推定されるものとした場合、yとx1の関係は、例えば、y=a11として表される。
【0089】
図17(a)の簡略化した道路リンクモデルにおいて、道路リンクyを学習対象とする学習処理は、道路リンクyについての図17(b)に示すようなプローブ情報(速度情報)と、当該プローブ情報が取得できた時における道路リンクx1の速度情報(図17(b)参照)と、を学習用データとして、x1からyを求めるための適切な推定パラメータ(重み)a1を求めることに相当する。
つまり、ここでの学習処理は、図17(c)に示すグラフの傾きa1を求めることに相当する。
【0090】
図17(b)に示す学習用データの場合、a1=0.9として、誤差無く求めることができるが、実際には、学習されたa1の値を用いて道路リンクx1から推定される道路リンクyの速度情報の推定値(a11)と、プローブ情報(実測値)に基づく道路リンクyの速度情報(y)と、の間には、残差が生じる。
【0091】
ここで、学習用データの数を5個とし、学習されたa1の値における道路リンクyと道路リンクx1との速度情報の関係をEi(i:1〜学習用データの数=5)で示し、学習用データにおける道路リンクyと道路リンクx1との速度情報の関係をPi(i:1〜学習用データの数=5)で示すと、Eiに対する各学習用データのPiの残差は、図18のように表される。本実施形態の学習処理において、a1は、次の式で表される残差自乗平均Q/5が、最小になるように求められる。
【数3】

【0092】
以上の学習処理の説明は、図17(a)の簡略化した道路リンクモデルに基づくものであるが、道路リンクモデルが、例えば図7のように、複雑になっても、基本的な考え方は同様である。
【0093】
さて、新たな学習用データの生成処理では、図18に示す学習用データP1〜P5が学習用データベース14に蓄積されている場合に、これらの学習用データP1〜P5から、新たな学習用データNP1〜NP5を生成して、それらの学習用データNP1〜NP5を、学習用データベース14に追加する。この結果、学習用データの数を、P1〜P5の計5個から、NP1〜NP5の5個を加えた、計10個となり、学習用データの数を増やすことができる。
【0094】
図20〜図23は、図17(a)に示す簡略化した道路リンクモデルにおいて、学習用データPiが存在したときに、新たな学習用データNPiを生成する処理を示している。
図20では、道路リンクx1についてのプローブ情報(プローブ情報に基づく速度情報x1=90km/h)が得られ、道路リンクx1を学習対象道路リンクとする学習用データが生成されたものとする。なお、道路リンクx1の速度情報を推定するための式は、x1=a22で表されるものとし、道路リンクx1についてのプローブ情報が得られたときの道路リンクx2の速度情報(ここでは、VICS情報に基づく速度情報とする)x2=100km/hとする。
【0095】
図20に示す学習用データに基づくと、道路リンクx1のための推定用パラメータa2は、a2=0.9として学習される。
【0096】
その後、図21に示すように、道路リンクyについてはプローブ情報が得られたが、道路リンクx1についてはプローブ情報が得られず、道路リンクx2についてはVICS情報が得られたものとする。この場合、プローブ情報が得られない道路リンクx1は推定対象道路リンクとなり、道路リンクx2の速度情報に基づいて、推定処理により、道路リンクx1の速度情報が推定される。ここでは、a2=0.9、x2=90km/hであるから、道路リンクx1の速度情報x1の推定値は81km/hとなる。
【0097】
そして、道路リンクyについては、プローブ情報が得られているため、学習対象道路リンクとなり、実測値であるプローブ情報に基づく速度情報y=95km/hと、x1=81kmとの組み合わせからなる学習用データが、学習用データベース14に追加される。図21に示す、道路リンクyについての学習データに基づくと、道路リンクyのための推定用パラメータa1は、a1=1.17となる。
【0098】
図21に示すように道路リンクyのための推定用パラメータa1が学習された後、しばらく時間が経過すると、今度は、図22に示すように、道路リンクx1についてのプローブ情報が得られる。すると、道路リンクx1を学習対象道路リンクとする学習用データが学習用データベース14に追加される。ここでは、道路リンクx1を学習対象道路リンクとする学習用データとして、プローブ情報に基づく速度情報x1=89km/hと、VICS情報に基づく速度情報x2=95km/hと、の組み合わせが生成される。
この結果、図22に示すように、道路リンクx1を学習対象道路リンクとする学習用データは、2個となる。
【0099】
そして、学習システム12は、2個の学習用データに基づいて、推定パラメータa2の再学習を行い、その結果、a2=0.92に更新される。このa2の値は、1個の学習データに基づいて求められた先のa2の値(=0.9)よりも多くの学習用データに基づいて求められているため、より適切であると考えられる。つまり、道路リンクx1の速度情報の推定値は、より適切に求められていると考えられる。これを利用し、本実施形態では、学習用データベース14に蓄積済みである学習対象道路リンクyについての学習用データから、新たな学習用データを生成する。
【0100】
図23は、図21に示した状態において、最新の推定パラメータ(a2)を適用して、道路リンクx1の速度情報を補完したときのリンクの速度情報を示している。つまり、道路リンクyについては図21と同様にプローブ情報(y=95km/h)が得られ、道路リンクx2についても図21と同様にVICS情報(x2=90km/h)が得られている。ただし、道路リンクx1については、最新のより適切な推定パラメータ(a2)が適用されて速度情報が推定されるため、より適切と考えられる速度情報x1=82.8km/hとなっている。
【0101】
新たな学習用データの生成は、図23に示すように道路リンクx1の速度情報がより適切になっている状態で、図21における道路リンクyについてのプローブ情報が発生したものとみなして、道路リンクyを学習対象道路リンクとする新たな学習用データ(NPi)として、プローブ情報に基づく速度情報y=95km/hと、推定値に基づく速度情報x1=82.8km/hと、の組み合わせを生成する。
つまり、学習データベース14に元々蓄積されている学習用データにおいて、道路リンクyを学習対象道路リンクとする学習用データ(Pi)に関し、当該道路リンクyの速度情報を推定するための他の道路リンクである道路リンクx1の速度情報(=81km/h)を、最新の推定パラメータに基づいて推定された値(=82.8km/h)に置き換えたものを、新たな学習用データ(NPi)として生成する。
【0102】
図20〜図23では、1個の蓄積済み学習用データPiから、1個の新たな学習用データNPiを生成する場合を説明したが、学習用データベース14に複数の蓄積済み学習用データPiが存在する場合も、蓄積済み学習用データPiの数に対応した数の新たな学習用データNPiを生成することができる。すなわち、例えば、図19に示すように、5個の蓄積済み学習用データPiから、5個の新たな学習用データNPiを生成して、学習用データベースに蓄積することができる。
【0103】
図19にも示すように、新たな学習用データNPiは、プローブ情報に基づく道路リンクyの速度情報については、元の学習用データPiと同じ値となるが、道路リンクx1の速度情報については、より適切な値となる。したがって、新たな学習用データNPiは、元の学習用データPiに比べて、a1に対する残差が小さくなる。
【0104】
このように、本実施形態では、プローブ情報が新たに得られなくても、新たな学習用データ生成部21が、学習データベース14に蓄積されている学習用データの数を増やすことができる。この結果、比較的少ない数のプローブ情報しかない道路リンクについても、学習精度を向上させることができる。
しかも、本実施形態のシステムでは、推定対象道路リンクについての速度情報の推定(補完)処理と、学習対象道路リンクについての学習処理とが、並行して行われるため、学習対象道路リンクの周辺道路リンク(他の道路リンク)についての学習が進んだ状態で、新たな学習用データを生成し直すことで、新たな学習用データNPiは、元の学習用データPiよりも適切な値であることが期待されるため、この観点からも、学習精度が向上する。
【0105】
なお、新たな学習用データNPiを生成する時期については、特に限定されるものではなく、元の学習用データが学習データベース14に蓄積された後、学習対象道路リンクの周辺道路リンク(他の道路リンク)についての学習が行われる程度の十分な時間経過後(例えば、数日〜数月後)であればよい。
【0106】
[2.4.6 学習用データの廃棄と学習データベース構造]
上記のように、新たな学習用データNPiを生成して学習データベース14に新たに追加しても、元の古くから蓄積されている学習用データPiも、学習データベース14に残存している。したがって、学習データベース14に蓄積されている学習用データすべてを使って、学習対象道路リンクの学習処理を行うと、元の古い学習用データPiの影響を受けて、学習精度向上が妨げられるおそれがある。
したがって、学習データベース14に蓄積された時期が古い学習用データPiは、廃棄し、新たに蓄積された学習用データNPiを用いて学習を行うのが有効である。
【0107】
このような学習用データの廃棄の管理を行うため、学習部20は、学習用データベース管理部22を備えている。この管理部22は、予め設定された所定の学習用データ廃棄基準に従って、学習データベース14に蓄積されている学習用データを廃棄することで、学習処理の基礎となる学習用データの絞り込みを行う。
【0108】
学習データベース14に既に蓄積されている学習用データPiから、新たな学習用データNPiを生成した場合、管理部22による学習用データ廃棄基準としては、新たな学習用データNPiに対応する元の学習データPiの全部又は一部を廃棄するものとして設定することができる。この廃棄基準によれば、学習データベース14には、より適切な学習用データNPiがより多く残り、これらを使って学習を行うことで、学習精度を向上させることができる。
【0109】
また、上記のように新たな学習用データを生成するか否かにかかわらず、古い学習用データ(学習データベース14への蓄積時期が古いもの)を多数蓄積すると、道路状況の変化などの現状に柔軟に対応できなくなる。一方、古い学習用データを無くし、直近の学習用データだけを学習データベース14に残すと、現状に過敏に対応しすぎるという問題が発生する。
【0110】
したがって、古い学習用データを、適切に廃棄することが、適切な学習に寄与する。例えば、図24に示すように、学習対象道路リンク毎に、学習用データの蓄積数の基準値(上限値)を、例えば「1000」として、設定しておき、学習用データの蓄積数が基準値(1000)を超えたら、古い学習用データから順に廃棄するという廃棄基準を採用することができる。
この場合、図24に示すように、学習データベース14は、各道路リンクについて、基準値に対応する個数(1000個)の学習用データを記憶するための領域(配列)が確保されることになる。配列の最後尾に新たな学習用データを追記する場合、その追記により蓄積数が1000を超えると、配列の先頭から学習用データを廃棄する。学習用データを記録する場合に順次増加する識別番号が付与されるときには、蓄積数が1000を超えると、その識別番号の小さいものから学習用データを廃棄することができる。その他、例えば、学習用データを記録する場合に、その記録時刻も記録するときには、その記録時刻に従って古い学習用データを削除することもできる。
【0111】
学習を精度よく行うには、ある程度の数の学習用データが必要であるため、学習用データ蓄積数が基準値未満である場合には、廃棄せずにすべて蓄積していき、蓄積数が基準値を超えた場合には、古い学習用データから廃棄していくことで、学習用データ蓄積数をある程度確保しつつも、あまりに古い学習用データの悪影響を回避し易くなる。
なお、学習用データの蓄積数の基準値は、全学習対象道路リンクについて同一であってもよいし、学習対象道路リンク毎に異なっていても良い。
【0112】
また、学習データの廃棄は、学習用データの蓄積数ではなく、学習用データの学習データベース14への蓄積期間を基準として行っても良い。基準蓄積期間を例えば6ヶ月とし、学習データベース14に蓄積されている期間が、基準蓄積期間である6ヶ月を超えた古い学習データを廃棄するようにしてもよい。
【0113】
さて、廃棄基準として、基準蓄積期間(例えば6ヶ月)を超えた学習用データを廃棄するという基準を採用した場合、学習データベース14には、過去6ヶ月の学習データが残され、蓄積期間が6ヶ月を経過した学習用データは、逐次廃棄されていく。
ここで、過去6ヶ月に、ある道路リンクで渋滞が発生しなかったとすると、学習データベース14には、当該道路リンクで渋滞が発生したときの学習データは残らないことになる。この場合、1年のうちの特定の日に毎年渋滞が起こるものとしたときに、昨年の当該特定の日の学習データが、学習データベース14に残らない。このため、当該特定日の渋滞を考慮した学習がなされず、今年の当該特定の日の速度情報の推定(補完)が適切に行えないおそれがある。
【0114】
したがって、古い学習用データを廃棄するとしても、単純に最古の学習用データから廃棄するのではなく、廃棄対象となる学習用データの選別を行うのが好ましい。
具体的には、図25に示すように、各学習用データを、学習用データ本体Bと、各学習用データが属するカテゴリーを示すカテゴリー情報Cとで構成しておき、各学習用データのカテゴリーを分類可能にしておく。なお、学習用データ本体Bは、学習対象道路リンクの速度情報(プローブ情報に基づく速度情報)と当該学習対象道路リンクの速度情報を推定するために用いられる他の道路リンクの速度情報との組み合わせからなる。
【0115】
図25では、カテゴリー情報Cとして、学習用データ本体Bにおける学習対象道路リンクの速度情報に基づいてカテゴリー分けした速度カテゴリー情報が付加されている。速度カテゴリーとしては、例えば、学習対象道路リンクの速度情報を、その大きさに応じて、「大」「中」「小」の3つに分類したものとすることができる。学習用データ本体Bに付加された速度カテゴリー情報Cは、当該学習用データ本体Bにおける学習対象道路リンクの速度情報が、「大」「中」「小」のいずれに属するかを示す情報となる。
【0116】
図26は、スナップショットや新たな学習用データ生成処理によって、学習データベース14にカテゴリー情報C付きの学習用データが追加される場合の蓄積処理を示している。なお、この蓄積処理は、管理部22によって実行される。
【0117】
学習用データを学習データベース14に蓄積しようとする場合、まず、学習データベース14に既に蓄積されている学習用データの廃棄が必要であるか否かを、先に説明したような廃棄基準に従って、判断する(ステップS21)。廃棄の必要がなければ、その学習用データを学習データベース14に蓄積する。
廃棄の必要がある場合、3つのカテゴリーのうち、学習データベース14に既に蓄積されている学習用データの数が最大であるカテゴリーを決定する(ステップS22)。
【0118】
そして、学習用データの数が最大であるとして決定されたカテゴリーの中の、最も古い学習用データを学習データベース14から削除する(ステップS23)。そして、蓄積対象の学習用データを、学習データベース14に蓄積する(ステップS24)。
【0119】
例えば、6ヶ月間で学習用データが300個蓄積でき、蓄積後6ヶ月経過した学習用データを廃棄するという廃棄基準を採用した場合に、図26の蓄積処理を行うものとする。そして、学習データベース14に蓄積済の学習用データ各カテゴリーに属する学習用データ個数が、大:10個、中:50個、小:240個であるとする。
この場合、301個目の学習用データが得られると、学習データベース14から学習用データを1個削除する必要があるが、図26の蓄積処理に従うと、学習用データ数が最大の「小」のカテゴリーが、削除対象カテゴリーとして選択され、[小]のカテゴリーの中で最も古い学習用データが削除される。
【0120】
図26の蓄積処理を繰り返すと、蓄積数の少ないカテゴリーの学習用データは、古いものであっても削除される機会が少なくなるため、削除されずに残りやすくなる。この結果、各カテゴリーの学習データ数がほぼ等しくなる。
【0121】
なお、カテゴリー分けは、速度情報に限られるものではなく、任意のカテゴリー分けを採用できる。例えば、道路リンクの渋滞度でカテゴリー分けしてもよい。また、学習用データが得られた日(曜日、特殊日など)・時刻、その日の天気などで、学習データをカテゴリー分けしてもよい。また、カテゴリー別に異なる廃棄基準を設けるようにしてもよい。
【0122】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0123】
例えば、推定対象道路リンクの速度情報を推定するために用いられる他の道路リンク(関連道路リンク)は、推定対象道路リンクに接続されているものに限らず、推定対象道路リンクとは離れているが、速度情報の時間的変化の仕方が似ている道路リンク(例えば、推定対象道路リンクと並行する道路リンク)であってもよい。
【0124】
また、時刻の要素を速度情報の推定に反映させたい場合には、時間的に特徴的な変化をする道路リンク(例えば、朝だけ混雑する道路リンク、夜だけ混在する道路リンクなど)を他の道路リンク(関連道路リンク)に含めることもできる。この場合、時間的に特徴的な変化をする道路リンクの速度情報は、全ての推定対象道路リンクに共通して用いられる。
【0125】
さらに、本実施形態では、推定対象道路リンクの速度情報を推定するために用いられる他の道路リンクの速度情報として、時間的に同一の時間帯にある速度情報だけを用いたが、異なる時間帯の速度情報を用いても良い。例えば、推定対象道路リンクから遠く離れた道路リンクの場合、その道路リンクにおける交通状況が、推定対象道路リンクに反映されまでには時間遅れがある。そこで、遠く離れた道路リンクの場合、例えば、1時間前の速度情報を推定に用いることで、より適切な推定が行える。
【0126】
さらにまた、本実施形態の交通情報推定装置1の推定システム11が推定の対象とする交通情報は、速度情報に限らず、これに加えて/代えて、渋滞情報など他の交通情報とすることもできる。この場合、渋滞度は、上記速度情報の1を混雑、0を順調の2値に割り当てることで算出できる。また、渋滞度を推定対象の交通情報として扱う場合、ニューラルネットワークでは、2値のいずれかを決定するための閾値も推定用パラメータとして必要となる。この場合、閾値も学習部による学習対象となる。
【0127】
さらにまた、速度情報としては、規格化されたものに限らず、リンク旅行速度そのものを利用してもよい。
【0128】
さらにまた、学習用データの廃棄基準としては、特に限定されるものではなく、比較的不適切な学習用データを学習用データベースから排除するための基準であれば足りる。
【符号の説明】
【0129】
1:交通情報推定装置,2:車載装置,3:プローブ車両,4:路側通信機,5:路側センサ,6:VICSセンタコンピュータ,11:推定システム(推定部),12:学習システム,13:推定データベース,14:学習用データベース,15:重みデータベース,16:入力情報処理部,17:VICS情報処理部,17a:リンク旅行速度算出部,17b:速度情報変換部,18:プローブ情報処理部,18a:リンク旅行速度算出部,18b:速度情報変換部,19:変換情報,20:学習部,21:新たな学習用データ生成部,22:学習用データベース管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定装置であって、
他の道路リンクの交通情報及び推定パラメータを用いて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定部と、
推定対象道路リンクになり得る道路リンクにおける実測値に基づく交通情報と、当該推定対象道路リンクの交通情報を推定するために用いられる前記他の道路リンクの交通情報との組み合わせを学習用データとして蓄積し、蓄積された学習用データを用いて前記推定パラメータを最適化する学習部と、
を備え、
前記学習部は、蓄積されている学習用データのうち、所定のデータ廃棄基準に従って、学習用データを廃棄し、廃棄されずに残っている学習用データを用いて、前記推定パラメータを最適化する学習を行う
ことを特徴とする交通情報推定装置。
【請求項2】
前記データ廃棄基準は、学習用データの蓄積数が所定の上限数を超えた場合に、古い学習用データから廃棄するよう設定されている
請求項1記載の交通情報推定装置。
【請求項3】
前記学習部は、学習用データを、所定のカテゴリーごとに分類して記憶するよう構成され、
前記データ廃棄基準は、前記カテゴリーのうち、記憶されている学習用データの数が多いカテゴリーの学習用データから廃棄するよう設定されている
請求項1又は2記載の交通情報推定装置。
【請求項4】
前記学習部は、蓄積された学習用データに含まれる前記他の道路リンクの交通情報を、新たな交通情報に置き換えたものを、新たな学習用データとして蓄積するよう構成され、
前記新たな学習用データは、元の前記学習用データが蓄積された後に、前記他の道路リンクの交通情報を推定するための前記推定パラメータの学習が行われることで更新された前記他の道路リンクの交通情報である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の交通情報推定装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1〜4のいずれか1項に記載の交通情報推定装置として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項6】
他の道路リンクの交通情報に基づいて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する交通情報推定装置であって、
他の道路リンクの交通情報及び推定パラメータを用いて、推定対象道路リンクの交通情報を推定する推定ステップと、
推定対象道路リンクになり得る道路リンクにおける実測値に基づく交通情報と、当該推定対象道路リンクの交通情報を推定するために用いられる前記他の道路リンクの交通情報との組み合わせを学習用データとして蓄積し、蓄積された学習用データを用いて前記推定パラメータを最適化する学習ステップと、
を含み、
前記学習ステップでは、蓄積されている学習用データのうち、所定のデータ廃棄基準に従って学習用データを廃棄し、廃棄されずに残っている学習用データを用いて、前記推定パラメータを最適化する学習を行う
ことを特徴とする交通情報推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−113117(P2011−113117A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266181(P2009−266181)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】