説明

交通流計測方法およびその装置

【課題】 交通流計測において、車両以外のものを車両であると認識されることを回避する。
【解決手段】 ITVカメラ1によって撮影された画像に対して、空間微分、二値化、マスキング等によって選出された車頭確定点が、さらに、当該車頭確定点の周辺画像(車頭確定点として選出された点を含む領域の画像)と当該画像に対応する背景画像とが比較されることにより、当該比較結果に基づいて、確定されるか否かが決定される。具体的には、車頭確定点の周辺画像と背景画像とが予め定められた程度以上に相違していると判断されれば、当該車頭確定点は保存されるが、そうでない場合には、当該車頭確定点は、記憶から削除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通流計測方法およびその装置に関し、特に、カメラで撮影された画像情報から、車両の存在、車種(たとえば、小型車、中型車などの車両の大きさの区分)、個別の車両速度などを検出して交通流計測を行なう方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般道路や高速道路の交通管制システムでは、数多くの車両感知器を道路側に配置して交通流が計測されている。この計測機能をさらに高度化したものの一つに、ITV(Industrial Television)カメラによる交通流計測処理システムがあり、従来から研究が進められている。このITVカメラによる交通流計測処理システムは、テレビカメラをセンサとして使用するものであり、道路を斜めから見下ろして撮像した映像をリアルタイムで解析することにより車両の存在とその速度を判定する。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ITVカメラを利用した交通流計測システムにおいて、ITVカメラから出力される画像に対して、空間微分処理を行なった後、車幅と同程度の幅を持つマスクを用いてマスク処理を施すことにより、車両を認識する技術が開示されている。このような技術では、カメラによって撮影された画像において、背景(カメラに撮影された画像における道路に相当する部分)に対して異なる輝度を有する部分が、車両として認識されていた。
【特許文献1】特開平5−307695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来の技術では、一時的に路面に現れる、木の葉の影やビル等の背の高い建造物の影が、特に日差しの強い夏季には、誤って車両と認識される場合があった。このように影が車両と誤認される事態に対し、カメラの映像の時間差分の利用も検討されたが、今一つ、当該誤認を解決するには至らなかった。
【0005】
本発明は上述したかかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、車両以外のものを車両であると認識されることを回避できる交通流計測方法およびその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従った交通流計測方法は、道路を撮影するステップと、前記道路を撮影することによって得られた画像に対して複数のサンプル点を定義し、当該複数のサンプル点の輝度を検出するステップと、前記複数のサンプル点の輝度に基づいて、前記道路を撮影することによって得られた画像における車頭位置の候補となる点である車頭点を決定するステップと、前記車頭点を特定する情報を記憶するステップと、前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像を、前記車頭点の近傍の画像であって車両を含まない画像である背景画像と比較することにより、これらの画像が類似する度合いを算出するステップと、前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像と前記背景画像との類似する度合いが所定の度合い以上である場合には、前記車頭点を特定する情報の記憶を削除するステップとを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、道路に対して異なる輝度を有する領域であっても、車両以外のものも含む背景画像とある程度類似する領域は、車両を含む領域ではないと判断される。
【0008】
また、本発明に従った交通流計測方法は、車両が走行する状態の前記道路の複数の画像を撮影するステップと、車両が走行する状態の前記道路の複数の画像を重ね合わせて平均化することにより、前記背景画像を作成するステップとをさらに備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明に従った交通流計測方法では、前記車頭点の近傍は、前記車頭点を中心とされ、前記道路における車両の走行方向に交わる方向について、車両に相当する幅を有する領域であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に従った交通流計測方法では、前記画像が類似する度合いを算出するステップでは、前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像と、前記背景画像との、相違度が算出され、前記車頭点を特定する情報の記憶を削除するステップでは、前記相違度が所定の値以下の場合に、前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像と前記背景画像との類似する度合いが所定の度合い以上であるとされることが好ましい。
【0011】
本発明に従った交通流計測装置は、道路の側に設置され道路を撮影するカメラと、前記カメラの撮影した画像に対して複数のサンプル点を定義し、当該複数のサンプル点の輝度を検出する輝度検出手段と、前記複数のサンプル点の輝度に基づいて、前記カメラの撮影した画像における車頭位置の候補となる点である車頭点を決定する車頭点決定手段と、前記車頭点を特定する情報を記憶する車頭点記憶手段と、前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像を、前記カメラに撮影された画像に基づいて作成された前記車頭点の近傍の画像であって車両を含まない画像である背景画像と比較することにより、これらの画像が類似する度合いを算出する類似度合い算出手段と、前記類似度合い算出手段が、前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像と前記背景画像の類似する度合いが所定の度合い以上である場合には、前記車頭点を特定する情報を前記車頭点記憶手段の記憶から削除する車頭点削除手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、道路において、当該道路上に一時的に見られる木の葉の影やビル等の建造物の影等が存在しても、それらも背景画像に含まれるため、それらが、車両として認識されることを回避できる。したがって、本発明によれば、車両以外のものを車両であると認識されることを回避できる。
【0013】
そして、車両以外のものが車両であると認識されることが回避されることにより、たとえば、ある時間間隔でカメラにより撮影された画像における車両の位置を用いて車両の速度が計算される場合であれば、より正確に、車両の速度の算出がなされることになる。また、交差点において、カメラに撮影された画像に基づいて決定された車両の位置に基づいて、感知信号の青になるタイミングが制御されている際にも、車両の位置が正確に把握されることにより、道路の実情に沿った信号の制御が可能となる。さらに、カメラに撮影された画像に基づいて決定された車両の位置に基づいて、交差点における右折信号を点灯させるタイミングが制御されている際にも、道路の実情に沿った信号の制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の交通流計測装置の一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態の交通流計測装置における、ITVカメラ1の設置例を示す図である。
【0015】
図1を参照して、道路の側に設置されたポールの上部には、ITVカメラ1が備えられ、当該ポールの、ITVカメラ1よりも下方側に、制御部2が備え付けられている。ITVカメラ1の視野(計測領域)は、ITVカメラ1から伸びる一点鎖線で示されるように、4車線ある道路の全車線に渡っている。なお、図1において、二点鎖線で示された領域αと、点線で示された領域βとは、それぞれ、後述するITVカメラ1から出力される画像信号に対応する領域を示すものである。
【0016】
図2は、本実施の形態の交通流計測装置の電気構成を示すブロック図である。
【0017】
図2を参照して、交通流計測装置は、主に、ITVカメラ1と制御部2から構成される。制御部2は、ITVカメラ1において取得される画像信号を入力される画像入力部3と、車頭候補点検出部4と、計測処理部5と、画像入力部3に入力された画像信号に基づいて道路の背景画像を作成する背景画像作成部7とからなる、制御部本体を備える。また、制御部2は、さらに、当該制御部本体により算出された交通流計測結果等の情報を通信回線を通して交通管制センタに伝える伝送部6、および、外部の電源からの制御部2への電力の供給を制御する電源部8を備えている。
【0018】
次に、制御部2の中の制御部本体において実行される交通流計測処理について、図3に記載された当該交通流計測処理のフローチャートを参照しつつ説明する。本実施の形態の交通流計測装置において、図3に示されるような交通流計測処理が開始されるタイミング(間隔)は、たとえば、当該装置の処理能力や、一回の処理において取り扱われるITVカメラ1からの画像信号の量等に応じたものとされる。
【0019】
まず、ITVカメラ1から出力される画像信号が画像入力部3で取込まれると、ステップS1(以下、「ステップ」を省略する)で、車頭候補点検出部4において、当該画像信号の中の予め定められた複数のサンプル点に基づいて車両の走行方向の空間微分処理が実行される。
【0020】
ここで、空間微分処理の内容を説明する。
【0021】
図4は、ITVカメラ1から出力される画像信号の配列の一例であって、図1の領域αに示された領域に対応する画像信号の配列を模式的に示す図である。画像入力部3では、図4に示すように、ITVカメラ1から出力される画像信号に対し、道路の横断方向(ξ方向とする)に沿ってM個のサンプル点が定義され、車両の走行方向(η方向とする)に沿ったN個のサンプル点が定義される。これにより、当該画像信号に対して、M×N個の座標(i,j)が定義される。そして、画像入力部3では、このM×N個の座標(i,j)の各輝度値P(i,j)が記憶される。サンプル点のη方向,ξ方向の間隔をΔη,Δξとすると、Δηはたとえば25cm程度、Δξはたとえば20cm程度とされる。なお、画像入力部3は、ITVカメラ1から出力される画像信号を、そのまま、外部へ、映像として出力することもできる。
【0022】
そして、車頭候補点検出部4は、画像入力部3において記憶されたM×N個の座標(i,j)の各輝度値P(i,j)を利用して、η方向の空間微分処理をする。具体的には、各(i,j)に対して次に示すソーベル演算子(Sobel operator)を作用させる(空間微分処理の詳細については、特開平5−307695号公報参照)。
【0023】
再度、図3を参照して、S1における空間微分処理の後には、S2で、二値化処理が実行される。なお、二値化処理は、車頭候補点検出部4において、予め定数として与えられているしきい値Th1が適用されて、空間微分処理された全画素が二値化されることにより、実行される。
【0024】
次に、S3において、マスキングがなされる。
【0025】
マスキング処理は、車頭候補点検出部4において、予め小型車、普通車、大型車などの区分に応じて用意されたマスクが用いられて、実行される。本実施の形態において実行されるマスキング処理の内容についても、特開平5−307695号公報に記載された内容と同様のものとすることができる。つまり、本実施の形態においても、たとえば、図5に示されるように、M1からM8までの8種類のマスクが用意され、マスキング処理が実行される。M1からM4は普通車用を表し、M5からM8は大型車用を表す。また、M1,M2,M5,M6は2行のマスクであり、M3,M4,M7,M8は3行のマスクである。各マスクにおいて注目している画素は、M1,M3,M5,M7では左下にあり、M2,M4,M6,M8では左上にある。図5では、各マスクにおいて、注目している画素に対応する位置に、ハッチングが施されている。
【0026】
マスキング処理では、各マスク内に存在する符号1である画素の数がカウントされ、当該カウントされた数が、マスクのスコアとされる。マスクが掛けられた状態の一例として、図6(A)に、左から2番目、下から2番目の注目している画素(i,j)に合わせてマスクM1が掛けられた状態を示す。このとき、マスクM1に対応する領域には符号1が9個存在するため、スコアは、9である。また、図6(B)に、左から2番目、下から2番目の注目している画素(i,j)に合わせてマスクM2が掛けられた状態を示す。このときのスコアは7である。車頭候補点検出部4は、マスキング処理において、注目している画素について、マスクの番号およびスコアを、当該画素の座標と組にして記憶する。たとえば、図6(A)に示された例では、座標(i,j)について、(i,j,M1,9)という情報が記憶される。また、図6(B)に示された例では、座標(i,j)について、(i,j,M2,7)という情報が記憶される。
【0027】
再度、図3を参照して、車頭候補点検出部4は、マスキング処理の後、当該処理の結果を用いて、S4で、現在処理対象となっている画像中に撮影されていると考えられる車両の、車種および車頭候補点を決定する。具体的には、車頭候補点検出部4は、上記したように注目している画素に対して8種類のマスク(図5参照)を掛けた結果、最もスコアの高いマスクを選択する。なお、大型車用のマスクのスコアと小型車用のマスクのスコアとが同じであれば、小型車用のマスクを選択する。そして、車頭候補点検出部4は、選択されたマスク番号に対するスコアが一定のしきい値以上であれば、当該マスクに対応した車種を現在処理対象となっている画像中に撮影されていると考えられる車両の車種(大型車または小型車)とし、そして、そのマスクをもう一度掛けて、1である画素の分布に基づいて重心を求めることにより、当該重心を車頭候補点とする。
【0028】
この結果、車頭候補点検出部4は、車頭候補点の座標、マスク番号、スコア最大値を組で記憶する。たとえば、図6(A)に示された場合であれば、重心の座標が(i,j+5)であるとすると、(i,j+5,M1,9)という情報が記憶される。そして、これ以降の処理では、画像データ、二値化データは使用されず、この車頭候補点の情報(車頭候補点の座標、マスク番号、スコア最大値)のみに基づいて、処理が進められる。
【0029】
再度、図3を参照して、S4の処理の後、制御部本体では、S5で、車頭有効点が抽出される。車頭有効点の抽出とは、具体的には、計測処理部5において、車頭候補点検出部4において記憶された複数の車頭候補点について、順に調べることにより、最も確からしい車頭位置(車頭有効点)を抽出することを言う。さらに具体的には、本実施の形態の車頭有効点の抽出では、特開平5−307695号公報に車頭有効点の抽出として記載されるように、計測処理部5は、近接する領域(例えばほぼ1台の車両が存在する領域)に車頭候補点がn個存在した場合、まず最初(n=1)の車頭候補点を車頭候補点検出部4から読出して、車頭有効点として登録する。次に、計測処理部5は、n=2以後の車頭候補点のスコア(スコア最大値)を順次車頭候補点検出部4から読出し、n=1の車頭有効点のスコアと比較して、スコアの大きい方を新たに車頭有効点として登録するか、または、車両の進行方向に近い点を新たに車頭有効点として登録する。そして、車頭有効点とならなかった車頭候補点を、車頭候補点検出部4における登録から削除するとともに、新たに車頭候補点を車頭有効点として登録した際には、当該車頭候補点と比較された車頭有効点の登録を削除する。このようにして、近接する複数の車頭候補点の中から1つの車頭有効点が決定される。
【0030】
S5の処理の後、S6で、計測処理部5によって、車頭有効点が得られたかどうかを判断し、得られなかった場合には処理を終了させる。一方、車頭有効点が得られた場合には、S7で、当該車頭有効点の中から、車頭確定点が選出される。
【0031】
車頭確定点の選出とは、特開平5−307695号公報に車頭確定点の確定として記載されるように、計測処理部5が、当該計測処理部5において登録されている車頭有効点の位置を順に調べていき、車頭有効点がm個あるとすると、先ず最初の車頭有効点を車頭確定点として登録し、次に、次の車頭有効点と、車頭確定点として登録された車頭有効点とを比較し、両者の位置関係から、両点が、マスクに対応する大型車、小型車などの車両の長さ、幅の範囲内に入っているかどうかを判断する。そして、当該範囲内に入っていると判断すると、現在比較している車頭確定点と次の車頭有効点のうち、車両進行方向にある方を車頭確定点として選出し、他の点は車頭確定点の候補から削除する。このようにして、計測処理部5に登録されたそれぞれの車頭有効点について調べていき、残った車頭有効点を車頭確定点として選出し、保存する。
【0032】
次に、制御部本体では、S8で、背景画像作成部7によって、背景画像が作成される。背景画像作成部7は、図4に示したような、ITVカメラ1から画像入力部3を介して入力される画像信号に基づいて、背景画像を作成する。具体的には、背景画像作成部7は、ITVカメラ1が車両の走行する道路の複数の状態を撮影したことによって生成された複数の画像信号を平均化することにより、背景画像として、道路についての、車両を含まない画像を作成する。
【0033】
次に、S9で、計測処理部5によって、車頭確定点として選出された点を含む領域の画像と、当該車頭確定点に対応して作成された背景画像との、相違度Aの算出がなされる。
【0034】
ここで、車頭確定点の「近傍」の領域について、図7を参照して説明する。図7は、図1のITVカメラから出力される画像信号の配列の一例であって、車頭確定点の近傍の領域についての画像信号の配列を模式的に示す図である。
【0035】
図7では、車頭確定点として選出されたサンプル点が「×」と記載されている。そして、図7に示された画像信号には、当該車頭確定点を車両の走行方向について先頭にかつ車両の幅方向について中心にして、車両の幅方向にΔξの10倍程度、車両の進行方向にΔηの10〜20倍程度の矩形領域内に存在するサンプル点が含まれている。なお、図7中の車両確定点が車両のバンパーの中央部分に対応すれば、図7に示されるような矩形領域は、多くの場合、車両のバンパーからフロントガラスの全面が検出される程度の面積を有する領域(図1中の領域βに対応する領域)と考えられる。
【0036】
また、計測処理部5は、相違度Aを、次の式(1)に基づいて算出する。なお、式(1)において、Kは、車頭確定点として選出された点を含む領域(図7参照)に含まれるサンプル点の数であり、Xは、車頭確定点として選出された点を含む領域の画像におけるi番目のサンプル点の輝度であり、Bは、背景画像(図4参照)におけるi番目のサンプル点の輝度である。
【0037】
【数1】

【0038】
S9で相違度Aが算出されると、次に、S10で、計測処理部5によって、算出された相違度Aが、予め定められた所定の値Lと比較される。所定の値Lは、予め計測処理部5内の所定のメモリに記憶されているものとする。そして、AがLよりも大きいと判断されれば、つまり、車頭確定点として選出された点を含む領域の画像と背景画像とが予め定められた程度を越えて相違していると判断されれば、処理は、S11に進められる。一方、AがL以下であれば、処理は、S12に進められる。
【0039】
S11では、現在処理対象となっている車頭確定点が、確定されたものとして、計測処理部5によって当該計測処理部5内に保存されたままとされて、S13に処理が進められる。一方、S12では、現在処理対象となっている車頭確定点が、計測処理部5によって、当該計測処理部5から削除され、S13に処理が進められる。
【0040】
S13では、計測処理部5に保存されているすべての車頭確定点について、S8〜S11の処理がなされたかについて判断がなされ、まだ、S11において確定されるような処理がなされていない車頭確定点があると判断されれば、S8に処理が戻される。一方、すべての車頭確定点についてS11において確定されるような処理がなされたと判断されると、S14に処理が進められる。
【0041】
以上説明したS1〜S13の処理によって、制御部本体では、ITVカメラ1の撮影した或るフレームについて、画像内の車両の先頭に対応する点(車頭確定点)が得られたことになる。
【0042】
そして、S14では、計測処理部5によって、当該計測処理部5において確定された車頭確定点を用いた、車両の速度の算出が実行された後、S15に処理が進められる。具体的には、車両の速度は、現在処理対象となったフレームの計測領域内の車頭確定点と、1フレーム前の計測領域内に見出された車頭確定点との位置関係を調べ、車両の速度を計算する。なお、車両の速度の算出についても、特開平5−307695号公報等に記載された周知の技術を適用することができる。
【0043】
そして、S15では、計測処理部5によって、当該計測処理部5において確定された車頭確定点(の位置情報)、当該車頭確定点に対応する車両の車種(大型車または小型車)、および、当該車両の速度が、交通流計測の結果として、伝送部6を介して、外部の装置に出力されて、交通流計測処理が終了される。
【0044】
以上説明した本実施の形態では、ITVカメラ1によって撮影された画像に対して、空間微分、二値化、マスキング等によって選出された車頭確定点が、さらに、当該車頭確定点の周辺画像(車頭確定点として選出された点を含む領域の画像)と背景画像とを比較され、当該比較結果に基づいて、確定されるか否かが決定される。具体的には、車頭確定点の周辺画像と背景画像とが予め定められた程度を越えて相違していると判断されれば、当該車頭確定点は、車頭確定点として計測処理部5で保存されるが、そうでない場合には、当該車頭確定点は、計測処理部5の記憶から削除される。このような処理により、道路上に木の葉の影が生じ、ITVカメラ1の撮影した画像において当該木の葉の影に対応するサンプル点が誤って車頭確定点としてS7で選出されても、そのような車頭確定点を、S8からS12の処理において、削除することができる。そのような木の葉の影は、背景画像にも含まれると考えられるためである。つまり、そのような木の葉の影を含む画像が背景画像と比較された場合には、これらの画像が、予め定められた程度を越えて相違することはないと考えられるからである。したがって、このような点も考慮されて、上記の値Lが決定されるべきなのである。
【0045】
また、本実施の形態では、上記したような予め定められた程度を越えて相違するかどうかについて判断するための処理として、相違度Aを算出してその値を判断したが、本発明におけるこのような処理は、相違度の算出に限定されない。たとえば、車頭確定点の周辺画像と背景画像について、類似度(たとえば、正規化相関)を求め、当該類似度が所定の値未満であれば、車頭確定点の周辺画像と背景画像とが予め定められた程度を越えて相違すると判断されても良い。
【0046】
本実施の形態では、車頭確定点の周辺画像と背景画像とが予め定められた程度を越えて相違すると判断されたなかった場合、当該車頭確定点が削除される。つまり、「車頭確定点の周辺画像と背景画像との相違度が予め定められた程度以下である場合」が、「車頭点を含む画像の中の車頭点の近傍の画像と、背景画像との、類似する度合いが所定の度合い以上である場合」に相当する。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態である交通流計測装置における、ITVカメラの設置例を示す図である。
【図2】図1の交通流計測装置の電気構成を示す図である。
【図3】図2の制御部本体で実行される交通流計測処理のフローチャートである。
【図4】図1のITVカメラから出力される画像信号の配列の一例を模式的に示す図である。
【図5】図2の車頭候補点検出部に用意された8種類のマスクを模式的に示す図である。
【図6】(A)は、図3のマスキング処理において、注目画素にマスクM1が掛けられた状態を説明するための図であり、(B)は、注目画素にマスクM2が掛けられた状態を説明するための図である。
【図7】図1のITVカメラから出力される画像信号の配列の一例であって、車頭確定点の近傍の領域についての画像信号の配列を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ITVカメラ、2 制御部、3 画像入力部、4 車頭候補点検出部、5 計測処理部、6 伝送部、7 背景画像作成部、8 電源部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を撮影するステップと、
前記道路を撮影することによって得られた画像に対して複数のサンプル点を定義し、当該複数のサンプル点の輝度を検出するステップと、
前記複数のサンプル点の輝度に基づいて、前記道路を撮影することによって得られた画像における車頭位置の候補となる点である車頭点を決定するステップと、
前記車頭点を特定する情報を記憶するステップと、
前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像を、前記車頭点の近傍の画像であって車両を含まない画像である背景画像と比較することにより、これらの画像が類似する度合いを算出するステップと、
前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像と前記背景画像との類似する度合いが所定の度合い以上である場合には、前記車頭点を特定する情報の記憶を削除するステップとを備える、交通流計測方法。
【請求項2】
車両が走行する状態の前記道路の複数の画像を撮影するステップと、
車両が走行する状態の前記道路の複数の画像を重ね合わせて平均化することにより、前記背景画像を作成するステップとをさらに備える、請求項1に記載の交通流計測方法。
【請求項3】
前記車頭点の近傍は、前記車頭点を中心とされ、前記道路における車両の走行方向に交わる方向について、車両に相当する幅を有する領域である、請求項1または請求項2に記載の交通流計測方法。
【請求項4】
前記画像が類似する度合いを算出するステップでは、前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像と、前記背景画像との、相違度が算出され、
前記車頭点を特定する情報の記憶を削除するステップでは、前記相違度が所定の値以下の場合に、前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像と前記背景画像との類似する度合いが所定の度合い以上であるとされる、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の交通流計測方法。
【請求項5】
道路の側に設置され道路を撮影するカメラと、
前記カメラの撮影した画像に対して複数のサンプル点を定義し、当該複数のサンプル点の輝度を検出する輝度検出手段と、
前記複数のサンプル点の輝度に基づいて、前記カメラの撮影した画像における車頭位置の候補となる点である車頭点を決定する車頭点決定手段と、
前記車頭点を特定する情報を記憶する車頭点記憶手段と、
前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像を、前記カメラに撮影された画像に基づいて作成された前記車頭点の近傍の画像であって車両を含まない画像である背景画像と比較することにより、これらの画像が類似する度合いを算出する類似度合い算出手段と、
前記類似度合い算出手段が、前記車頭点を含む画像の中の前記車頭点の近傍の画像と前記背景画像の類似する度合いが所定の度合い以上である場合には、前記車頭点を特定する情報を前記車頭点記憶手段の記憶から削除する車頭点削除手段とを備える、交通流計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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