説明

交通管制システム

【課題】 大容量の情報を遅延なく伝送するとともに、通信回線に障害が生じた場合にも、大幅な伝送遅延やさらなる通信障害を生じさせることなく通信を継続することが可能な交通管制システムを提供する。
【解決手段】 端末装置が授受するデータのサイズに応じて、広帯域通信回線が適切に用いられることにより、伝送遅延や通信不能などの障害を防ぐことが可能になる。また、中央装置は回線L1〜L4のうちのある回線に障害が発生すると、データベースに格納された迂回ルート情報に従って迂回ルートを設定し、通信を継続する。複数の迂回ルートの候補がある場合、中央装置は伝送速度がより大きい回線を選択する。よって、回線障害により通信が不可能になることを防ぐとともに、新たな通信障害の発生を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交通管制センターに設置される中央装置と、所定の場所に設置される端末装置との間で回線を用いて通信を行なうことが可能な交通管制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の交通管制システムでは、交通管制センターに設置された中央装置と端末装置(信号制御機、車両感知器、情報板、交通用監視端末等)との間で情報の交換が行なわれる。一例を示すと、交通用監視端末は動画や静止画を中央装置に送る。別の例を示すと中央装置は信号制御機に信号灯の点灯タイミングを制御するための情報を送る。
【0003】
中央装置と端末装置との間は専用回線によって接続される。専用回線にはアナログ回線やISDN(Integrated Services Digital Network)などのデジタル回線が含まれる。
【0004】
複数の専用回線のうちのある専用回線に一時的な通信障害が生じて伝送路が遮断されると、その回線に接続される端末装置と中央装置との間では通信できなくなる。このような問題を解決するための技術として、特開2001−23080号公報(特許文献1)には、各端末装置がインターネットルーティング技術を用いた無線通信を行なうことにより、遮断された伝送路を迂回して情報を伝送することが可能な交通信号制御システムおよび信号制御装置が開示される。
【0005】
また、特開2002−222489号公報(特許文献2)には、中央装置あるいは端末装置に迂回ルートが登録されたデータベースを備えることにより、伝送路が遮断された場合に中央装置あるいは端末装置が迂回ルートに基づき通信経路を設定して通信する交通信号制御システムおよび信号制御機が開示される。
【特許文献1】特開2001−23080号公報
【特許文献2】特開2002−222489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
交通用監視端末から画像情報が伝送される場合、狭帯域回線を介して交通用監視端末から情報を伝送すると、画像情報のデータ量が大きいため伝送処理に多大な時間を要する場合がある。この場合、交通管制センターでは適切なタイミングで情報を得られないため、交通整理を適切に行なうことができなくなる可能性がある。
【0007】
また、従来の技術のように障害が生じた通信回線を迂回して通信が行なわれる場合、ある特定の通信回線に通信負荷が集中することが起こり得る。専用回線の伝送速度が小さいため、その回線に負荷が集中すると新たな通信障害が生じる可能性がある。
【0008】
この発明は上述の課題を解決するものであって、その目的は、大容量の情報を遅延なく伝送するとともに、通信回線に障害が生じた場合にも、大幅な伝送遅延やさらなる通信障害を生じさせることなく通信を継続することが可能な交通管制システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は要約すれば、交通管制システムであって、交通管制センターに設けられる中央装置と、交通端末装置と、中央装置と交通端末装置とを接続し、伝送速度が1Mbps以上である広帯域回線とを備える。
【0010】
好ましくは、広帯域回線は、DSL(Digital Subscriber Line)回線または光ファイバ回線である。
【0011】
より好ましくは、交通端末装置は、信号制御機、車両感知器、交通用監視端末、および情報板のいずれかである。
【0012】
この発明の他の局面に従うと、交通管制システムであって、交通管制センターに設けられる中央装置と、中央装置との間で交通整理のための所定の交通情報を直接的に送信または受信する複数の第1の交通端末装置とを備える。
【0013】
複数の第1の交通端末装置の各々は、中央装置との間で所定の交通情報を直接的に送信または受信できない場合には、自己以外の複数の第1の交通端末装置のいずれかを経由して、中央装置との間で所定の交通情報を送信または受信する。
【0014】
交通管制システムは、複数の第1の交通端末装置の各々と中央装置との間に接続される複数の通信回線をさらに備える。
【0015】
複数の通信回線は、伝送速度に応じて複数の種類に分類され、複数の種類のうちの少なくとも1種類の通信回線の伝送速度は1Mbps以上である。
【0016】
好ましくは、交通管制システムは、複数の第1の交通端末装置の各々と中央装置との間の通信における、通常時の伝送路である通常ルートと、通常ルートの遮断時に通常ルートを迂回する伝送路である迂回ルートとが記憶される記憶装置をさらに備え、中央装置または複数の第1の交通端末装置の各々は、記憶装置に記憶される通常ルートのうちのいずれかに停止の予定がある場合には予定期間を予め記憶し、現在時刻が予定期間内にあるときには、記憶装置を検索して得られる迂回ルートを経由して通信を行なう。
【0017】
好ましくは、交通管制システムは、複数の第1の交通端末装置の各々と中央装置との間の通信における、通常時の伝送路である通常ルートと、通常ルートの遮断時に通常ルートを迂回する伝送路である迂回ルートとが記憶される記憶装置をさらに備え、中央装置または複数の第1の交通端末装置の各々は、通常ルートにおける通信状態を所定の間隔で確認して、通常状態が異常である場合には、記憶装置を検索して得られる迂回ルートに切替えて通信を行なう。
【0018】
より好ましくは、中央装置または複数の第1の交通端末装置の各々は、伝送速度の高い順に複数の通信回線の各々と対応付けられる優先順位を予め記憶し、記憶装置を検索して得られる迂回ルートが複数ある場合には、優先順位が最も高い通信回線を含む迂回ルートを選択する。
【0019】
好ましくは、交通管制システムは、複数の第1の交通端末装置のいずれかを中継局として中央装置と交通整理のための所定の交通情報を送信または受信する複数の第2の交通端末装置をさらに備え、複数の第2の交通端末装置の各々は、中央装置と中継局との間で所定の交通情報を送信または受信できない場合には、中継局以外のいずれかの複数の第1の交通端末装置を中継して、中央装置との間で所定の交通情報を送信または受信する。
【0020】
より好ましくは、交通管制システムは、複数の第1、第2の交通端末装置の各々と中央装置との間の通信における、通常時の伝送路である通常ルートと、通常ルートの遮断時に通常ルートを迂回する伝送路である迂回ルートとが記憶される記憶装置をさらに備え、中央装置または複数の第1、第2の交通端末装置の各々は、記憶装置に記憶される通常ルートのうちのいずれかに停止の予定がある場合には予定期間を予め記憶し、現在時刻が予定期間内にあるときには、記憶装置を検索して得られる迂回ルートを経由して通信を行なう。
【0021】
より好ましくは、交通管制システムは、複数の第1、第2の交通端末装置の各々と中央装置との間の通信における、通常時の伝送路である通常ルートと、通常ルートの遮断時に通常ルートを迂回する伝送路である迂回ルートとが記憶される記憶装置をさらに備え、中央装置または複数の第1、第2の交通端末装置の各々は、通常ルートにおける通信状態を所定の間隔で確認して、通常状態が異常である場合には、記憶装置を検索して得られる迂回ルートに切替えて通信を行なう。
【0022】
さらに好ましくは、中央装置または複数の第1、第2の交通端末装置の各々は、伝送速度の高い順に複数の通信回線の各々と対応付けられる優先順位を予め記憶し、記憶装置を検索して得られる迂回ルートが複数ある場合には、優先順位が最も高い通信回線を含む迂回ルートを選択する。
【発明の効果】
【0023】
この発明の交通管制システムによれば、1Mbps以上の伝送速度を有する通信回線を用いて交通端末装置と通信を行なうことによって、画像等のデータでも伝送遅延を生じさせることなく、伝送を行なうことができる。
【0024】
また、この発明の交通管制システムによれば、回線に障害が生じた場合、迂回ルートが複数ある場合には通信速度の大きい回線を優先的に選択して迂回ルートを設定するので、通信負荷の集中により生じる新たな通信障害を防ぐことができる。
【0025】
さらに、この発明の交通管制システムによれば、予め設定された期間だけ迂回ルートを経由して通信を行なうように設定することができるので、ある回線がメンテナンス期間だけ通信不可能になる場合に、その期間にあわせて通信経路を正常ルートから迂回ルートに切り換えることにより、通信障害を防ぐことができる。
【0026】
さらに、この発明の交通管制システムによれば、少なくとも2種類の異なる広帯域通信回線を用いることにより、ある1種類の通信回線がメンテナンスのために通信不可能になった場合にも他種の通信回線を使用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0028】
図1は、本発明の交通管制システムの全体を示す図である。
【0029】
図1を参照して、交通管制システム100は交通管制センターAおよび交通整理のために交通管制センターAから離れた所定の場所に各々設置される複数の交通端末装置を含む。図1では複数の交通端末装置として、代表的に端末装置2.1〜2.4,3.1〜3.4が示される。交通端末装置は交通整理のための所定の交通情報を送信し、あるいは受信する。交通端末装置は具体的には信号制御機、車両感知器、情報板、ビーコン、交通用監視端末などである。
【0030】
この発明における「交通端末装置」とは、たとえば交差点や道路脇などの所定の場所に設けられて、中央装置との間で交通情報を伝送する端末装置のことを示す。よって、たとえば交通管制センターAの中に設置されたパーソナルコンピュータはこの発明における交通端末装置に該当しない。なお、以下では「交通端末装置」を単に「端末装置」と称することにする。
【0031】
端末装置2.1〜2.4,3.1〜3.4は電波あるいは光等の無線を用いて相互に通信可能である。よって端末装置間にケーブルを設ける必要がなくなり、利便性が向上する。
【0032】
また、端末装置2.1〜2.4は、それぞれ回線L1〜L4により交通管制センターAと通信可能である。各回線の具体例について説明すると、たとえば回線L1は帯域品目3.4kHzのアナログ専用サービスを利用するアナログ回線であり、回線L2はDSL回線(Digital Subscriber Line;デジタル加入者回線)であり、回線L3は光ファイバ回線であり、回線L4はISDN等のデジタル回線である。
【0033】
なお、回線L2に用いられるDSL回線は、たとえばADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)やVDSL(Very highbitrate Digital Subscriber Line)などである。以下では本発明に用いられるDSL回線はADSL回線であるとして説明する。
【0034】
なお、本発明では伝送速度が1Mbps以上である通信回線を広帯域回線と称し、伝送速度の最大値が1Mbps未満である通信回線を狭帯域回線と称する。回線L1〜L4の伝送速度は、それぞれ約9600bps、1〜50Mbps、100Mbps、64kbpsである。よって、回線L2、L3は広帯域回線に該当し、回線L1、L4は狭帯域回線に該当する。
【0035】
本発明では、端末装置が送信または受信するデータのサイズに応じた伝送速度を有する通信回線が接続されるので伝送遅延や通信不能などの障害を防ぐことが可能になる。また、中央装置は回線L1〜L4のうちのある回線に障害が発生すると、データベース(図示せず)に格納された迂回ルート情報に従って迂回ルートを設定し、通信を継続する。複数の迂回ルートの候補がある場合、中央装置は伝送速度がより大きい回線を選択する。よって、回線障害により通信が不可能になることを防ぐとともに、新たな通信障害の発生を防ぐことができる。
【0036】
端末装置3.1〜3.4は他の端末装置を経由して交通管制センターAと通信を行なう。図1では各端末装置間の通信経路(伝送路)は簡略して示される。たとえば端末装置3.1は端末装置2.1あるいは端末装置3.2および端末装置2.2を経由して交通管制センターAと通信を行なう。端末装置3.1〜3.4の各々が端末装置2.1〜2.4のいずれと通信を行なうかは、端末装置3.1〜3.4の各々が送信または受信する情報の大きさに依存する。たとえば端末装置3.3が交通監視端末である場合、動画データを短時間で交通管制センターAに送るため、端末装置3.3は端末装置2.3および回線L3(光ファイバ回線)を介して動画データを送ればよい。
【0037】
また、端末装置3.1〜3.4は端末装置2.1〜2.4と同様に、通常時の通信経路が遮断された場合には、迂回ルートを経由して交通管制センターAと通信を行なう。たとえば端末装置3.3は通常時には回線L3および端末装置2.3を経由して交通管制センターAと通信を行なうが、回線L3が遮断された場合には、回線L2、端末装置2.2を経由して交通管制センターAと通信を行なう。
【0038】
以上のように、端末装置2.1〜2.4および端末装置3.1〜3.4は自己以外の他のいずれかの端末装置を中継局とし、交通管制センターAとの間における交通情報の伝送を中継局を介して行なうことができる。
【0039】
図2は、図1の交通管制システム100を簡略化して説明する図である。
【0040】
図2を参照して、交通管制センターAは通常時には回線a,b,cを介して端末装置である信号制御機B、交通監視端末C、光ビーコンDの各々とそれぞれ通信を行なう。交通監視端末Cは大容量の画像データを伝送するため回線aには光ファイバ回線が用いられる。中央装置から光ビーコンDへ伝送される交通情報は画像データほどではないが比較的データ量が大きい情報であるため、回線bにはADSL回線が利用される。また、信号制御機Bが交通管制センターAから受ける情報はサイズが比較的小さいため、回線cには通信コストが安価であり通信品質が比較的安定しているアナログ回線が用いられる。回線a〜cの必要伝送帯域幅は種々の条件によって変動するが、一例を示すと、回線aでは1700bps、回線bでは2600bps、回線cでは3300bps(静止画の場合)および1Mbps(動画の場合)となる。
【0041】
ここで回線b、cがともに光ファイバ回線であれば端末装置が送受信するデータサイズによらず高速の通信が可能である。しかし、システム内の通信に用いられる回線が同一種類の回線である場合、回線接続業者によるメンテナンスの対象が全回線となり交通管制システム内で通信が不可能になる。このため、回線a〜cは伝送速度によって分類される2種類以上の回線(たとえば上述のような光ファイバ回線、ADSL回線、アナログ回線、デジタル回線)が用いられることが必要である。
【0042】
なお、光ビーコンDは、ADSLによる通信が遮断された場合、たとえば回線a、交通監視端末C、回線LCDを経由して通信を行なう。ただし、伝送速度が大幅に遅くなっても許容される場合、光ビーコンDはアナログモデムにより回線bと接続して通信を行なってもよい。
【0043】
図3は、図1の交通管制システム100において伝送されるデータの構成例を示す図である。
【0044】
図3を参照して、信号制御情報、画像データ、光ビーコンによる道路交通情報などのデータは、時分割のスロット単位のデータを必要数まとめたフレームで構成される。
【0045】
各スロットは、ヘッダ部HDと実データ部DTから構成される。さらにヘッダ部HDは、発信元ID番号HD1、宛先ID番号HD2、迂回ルートID番号HD3、および迂回フラグHD4を含む。
【0046】
受信したデータの迂回フラグHD4が「1」であった場合、データを受信した端末装置は迂回ルートにてデータが伝送されていると判断し、ヘッダ部に含まれている迂回ルートID番号HD3に示された迂回ルートに従って、次の端末装置にデータを伝送する。
【0047】
図4は、交通管制システムに設けられる迂回ルートデータベースの構成例を示す図である。
【0048】
図4(A)を参照して、迂回ルートデータベースには通常時の通信経路である通常ルートと、通常ルートが遮断された場合に通常ルートを迂回する経路である迂回ルートとが記憶される。エントリーNo.1〜5には、それぞれ発信元ID,宛先ID,迂回ID,回線IDが記憶される。なお、発信元ID,宛先IDおよび迂回IDにおけるID「A」〜「D」は、それぞれ図2の交通管制センターA,信号制御機B,交通監視端末C,光ビーコンDを示す。また、迂回IDにおけるID「a」〜「c」は回線a〜cをそれぞれ示す。
【0049】
エントリーNo.1およびNo.2について説明すると、発信元IDは「A」であり、宛先IDは「B」である。つまりエントリーNo.1およびNo.2は交通管制センターAから信号制御機Bに情報を送る場合の通信経路を示す情報である。この場合、通常ルートは回線cになる。
【0050】
一方、回線cに障害が発生した場合、中央装置は迂回IDを参照する。この場合、迂回ルートとして交通監視端末Cを経由するルートと、光ビーコンDを経由するルートの2つのルートがある。
【0051】
中央装置は迂回ルートが2つ以上存在する場合、回線IDを参照してより広帯域の回線を迂回ルートに決定する。回線aは光ファイバー回線であり、回線bはADSL回線である。よって、回線cに障害が発生すると回線aが優先的に選択される。なお、回線IDと優先順位との関係を示す情報は迂回ルートデータベースとは別のデータベースである回線優先度データベースに格納される。迂回ルートデータベースには「迂回ルートの優先度」という項目が設けられるが、この項目に格納される優先度は、回線優先度データベースとは異なる優先度を設定したいときに使用される。
【0052】
図4(A)において、エントリーNo.1〜No.5の各々に対し、迂回ルートの優先度は「0」である。この場合、優先度は次に説明する回線優先度データベースに従って決定される。回線優先度データベースでの設定と異なる優先度を特別に設定したい場合、項目「迂回ルートの優先度」に「1」,「2」等の優先度が設定される。
【0053】
図4(B)は、回線優先度データベースの具体例を示す図である。
【0054】
図4(B)を参照して、回線優先度データベースには回線IDおよび回線IDに対応する優先度が格納される。
【0055】
エントリーNo.1,No.2を例に説明する。エントリーNo.1では迂回時に回線aが選択される。回線優先度データベースでは回線aの優先度が「1」と設定されている。エントリーNo.2では迂回ルートとして回線bが選択される。回線優先度データベースでは回線bの優先度が「2」と設定されている。よって、回線cに障害が発生した場合には優先度が「1」である回線aが迂回時の回線として選択される。
【0056】
優先度は、交通管制センターの監視員が回線の伝送速度や回線の品質を考慮して決定される。優先度は、たとえば回線の接続が確立した後における接続の切れ易さを指標にした接続の安定度に基づいて決定される。よって、たとえば回線の伝送速度が速いが回線接続後の安定度が小さい第1の迂回ルートと、回線の伝送速度が第1の迂回ルートより遅いが回線接続後の安定度が第1の迂回ルートより高い第2の迂回ルートとがある場合には、回線の重要性を考慮して第2の迂回ルートの優先度が高く設定される場合がある。
【0057】
なお、迂回ルートデータベースおよび回線優先度データベースは中央装置に内蔵されてもよいし、各端末装置に内蔵されてもよい。各端末装置にデータベースが内蔵される場合、たとえば交通管制システムは端末装置の追加に伴う迂回ルート情報および回線優先度の情報を各端末装置に対して送信する。各端末装置は受信した迂回ルート情報および回線優先度の情報を各データベースに追加する。
【0058】
ただし、端末装置の追加に伴う回線IDの追加や回線種別の変更等に伴う更新作業の手間がより少なくなるといった利便性の点で迂回ルートデータベースおよび回線優先度データベースは中央装置に設けられるほうが有利である。以下では、迂回ルートデータベースおよび回線優先度データベースは中央装置に設けられるものとして説明する。
【0059】
図5は、中央装置によるルート切り替え処理の流れを示すフローチャートである。
【0060】
図5を参照して、中央装置は、特定の通信相手である端末装置との通信が途絶えていないかを常時監視している(ステップS1)。中央装置は特定の通信相手である端末装置との通信が途絶えたと判定する場合(ステップS1でNoの場合)、内部にある回線切断判断タイマをセットし、所定時間の計測を開始する(ステップS2)。
【0061】
所定時間内にその端末装置からの通信が復帰すると(ステップS3でYesの場合)、中央装置は回線に障害が起こっていないと判断して回線切断判断タイマを解除する(ステップS4)。
【0062】
所定時間を経過してもその端末装置との通信が復帰せず、通信が途絶えたままであるとき(ステップS3でNo、かつ、ステップS5でYesの場合)、中央装置は端末装置との間の回線に障害が起こっていると判断する。この場合、中央装置は迂回ルートデータベースから迂回ルートを検索する(ステップS6)。
【0063】
データベースに迂回ルートが登録されている場合(ステップS6でYesの場合)、中央装置は検索された迂回ルートに従って通信回路を設定する(ステップS7)。さらに、中央装置は迂回ルートに従って、伝送するデータのヘッダ部に迂回ID番号を設定し、迂回ルートであることを示す迂回フラグを1にする(ステップS8)。これにより遮断された通信回線を迂回したルートでデータが伝送されて通信が復活する。
【0064】
なお、データベースに迂回ルートが登録されていない場合(ステップS6でNoの場合)、通信は不能のままとなる。
【0065】
また、回線接続業者によるメンテナンス等の計画停止がある場合、中央装置は予定された停止期間だけ、停止が計画されていない(メンテナンスの対象となっていない)回線を利用した迂回ルートを経由して通信を行なう。
【0066】
図6は、計画停止がある場合におけるルート切り替え処理を示すフローチャートである。
【0067】
図6を参照して、まずステップS11において、計画停止情報が作成される。この計画停止情報は、通信回線を停止させる日時や通信回線を復旧させる日時、該当の回線等の情報である。この計画停止情報は、たとえば交通管制センターの作業員により作成される。
【0068】
次にステップS12において、計画停止情報が中央装置に入力される。中央装置に入力される情報は、停止対象の回線の代替となる切換回線、切換開始時刻、切換終了時刻、計画停止期間のみ適用される臨時の迂回ルートである。
【0069】
続いてステップS13では、中央装置は所定の間隔で現在時刻をチェックし、切換開始時刻が経過したか否かを判定する。現在時刻が切換開始時刻よりも後の場合(ステップS13においてYESの場合)、中央装置はステップS14において、設定された臨時の迂回ルートに通信経路を切り換え、以後、臨時の迂回ルートに沿って通信を行なう。一方、まだ切換開始時刻が経過していない場合、(ステップS13においてNOの場合)、処理は再びステップS13に戻る。
【0070】
続いてステップS15ではステップS13と同様に、中央装置は現在時刻を所定の時間ごとにチェックし、切換終了時刻が経過したか否かを判定する。ステップS15において切換終了時刻が経過した場合(ステップS15においてYESの場合)、ステップS16において中央装置は通信経路を通常ルートに復帰させる。一方、ステップS15において、まだ切換時刻が経過していない場合(ステップS15においてNOの場合)、処理は再びステップS15に戻る。このようにして所定期間だけ通信経路は迂回ルートに切り替わる。
【0071】
以上のように、この発明の実施の形態によれば、1Mbps以上の伝送速度を有する通信回線を用いて端末装置と通信を行なうことによって、画像等のデータでも伝送遅延を生じさせることなく、伝送を行なうことができる。
【0072】
また、この発明の実施の形態によれば、回線に障害が生じた場合、迂回ルートが複数ある場合には通信速度の大きい回線を優先的に選択して迂回ルートを設定するので、通信負荷の集中により生じる新たな通信障害を防ぐことができる。
【0073】
さらに、この発明の実施の形態によれば予め設定された期間だけ迂回ルートを経由して通信を行なうように設定することができるので、ある回線がメンテナンス期間だけ通信不可能になる場合に、その期間にあわせて通信経路を正常ルートから迂回ルートに切り換えることにより、通信障害を防ぐことができる。
【0074】
さらに、この発明の実施の形態によれば、少なくとも2種類の異なる広帯域通信回線を用いることにより、ある1種類の通信回線がメンテナンスのために通信不可能になった場合にも他種の通信回線を使用することが可能になる。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の交通管制システムの全体を示す図である。
【図2】図2は、図1の交通管制システム100を簡略化して説明する図である。
【図3】図1の交通管制システム100において伝送されるデータの構成例を示す図である。
【図4】交通管制システムに設けられる迂回ルートデータベースの構成例を示す図である。
【図5】中央装置によるルート切り替え処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】計画停止がある場合におけるルート切り替え処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
2.1〜2.4,3.1〜3.4 端末装置、100 交通管制システム、A 交通管制センター、B 信号制御機、C 交通監視端末、D 光ビーコン、a〜c 回線、DT 実データ部、HD ヘッダ部、HD1 発信元ID番号、HD2 宛先ID番号、HD3 迂回ルートID番号、HD4 迂回フラグ、L1〜L4,LBC,LBD,LCD 回線、S1〜S16 ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通管制センターに設けられる中央装置と、
前記中央装置との間で交通整理のための所定の交通情報を送信または受信する交通端末装置と、
前記中央装置と前記交通端末装置とを接続し、伝送速度が1Mbps以上である広帯域回線とを備える、交通管制システム。
【請求項2】
前記広帯域回線は、DSL(Digital Subscriber Line)回線または光ファイバ回線である、請求項1に記載の交通管制システム。
【請求項3】
前記交通端末装置は、信号制御機、車両感知器、交通用監視端末、および情報板のいずれかである、請求項2に記載の交通管制システム。
【請求項4】
交通管制センターに設けられる中央装置と、
前記中央装置との間で交通整理のための所定の交通情報を直接的に送信または受信する複数の第1の交通端末装置とを備え、
前記複数の第1の交通端末装置の各々は、前記中央装置との間で前記所定の交通情報を直接的に送信または受信できない場合には、自己以外の前記複数の第1の交通端末装置のいずれかを経由して、前記中央装置との間で前記所定の交通情報を送信または受信し、
前記複数の第1の交通端末装置の各々と前記中央装置との間に接続される複数の通信回線をさらに備え、
前記複数の通信回線は、伝送速度に応じて複数の種類に分類され、
前記複数の種類のうちの少なくとも1種類の通信回線の伝送速度は1Mbps以上である、交通管制システム。
【請求項5】
前記交通管制システムは、前記複数の第1の交通端末装置の各々と前記中央装置との間の通信における、通常時の伝送路である通常ルートと、前記通常ルートの遮断時に前記通常ルートを迂回する伝送路である迂回ルートとが記憶される記憶装置をさらに備え、
前記中央装置または前記複数の第1の交通端末装置の各々は、前記記憶装置に記憶される前記通常ルートのうちのいずれかに停止の予定がある場合には予定期間を予め記憶し、現在時刻が前記予定期間内にあるときには、前記記憶装置を検索して得られる前記迂回ルートを経由して通信を行なう、請求項4に記載の交通管制システム。
【請求項6】
前記交通管制システムは、前記複数の第1の交通端末装置の各々と前記中央装置との間の通信における、通常時の伝送路である通常ルートと、前記通常ルートの遮断時に前記通常ルートを迂回する伝送路である迂回ルートとが記憶される記憶装置をさらに備え、
前記中央装置または前記複数の第1の交通端末装置の各々は、前記通常ルートにおける通信状態を所定の間隔で確認して、前記通常状態が異常である場合には、前記記憶装置を検索して得られる前記迂回ルートに切替えて通信を行なう、請求項4に記載の交通管制システム。
【請求項7】
前記中央装置または前記複数の第1の交通端末装置の各々は、伝送速度の高い順に前記複数の通信回線の各々と対応付けられる優先順位を予め記憶し、前記記憶装置を検索して得られる前記迂回ルートが複数ある場合には、前記優先順位が最も高い通信回線を含む迂回ルートを選択する、請求項6に記載の交通管制システム。
【請求項8】
前記交通管制システムは、前記複数の第1の交通端末装置のいずれかを中継局として前記中央装置と交通整理のための所定の交通情報を送信または受信する複数の第2の交通端末装置をさらに備え、
前記複数の第2の交通端末装置の各々は、前記中央装置と前記中継局との間で前記所定の交通情報を送信または受信できない場合には、前記中継局以外のいずれかの前記複数の第1の交通端末装置を中継して、前記中央装置との間で前記所定の交通情報を送信または受信する、請求項4に記載の交通管制システム。
【請求項9】
前記交通管制システムは、前記複数の第1、第2の交通端末装置の各々と前記中央装置との間の通信における、通常時の伝送路である通常ルートと、前記通常ルートの遮断時に前記通常ルートを迂回する伝送路である迂回ルートとが記憶される記憶装置をさらに備え、
前記中央装置または前記複数の第1、第2の交通端末装置の各々は、前記記憶装置に記憶される前記通常ルートのうちのいずれかに停止の予定がある場合には予定期間を予め記憶し、現在時刻が前記予定期間内にあるときには、前記記憶装置を検索して得られる前記迂回ルートを経由して通信を行なう、請求項8に記載の交通管制システム。
【請求項10】
前記交通管制システムは、前記複数の第1、第2の交通端末装置の各々と前記中央装置との間の通信における、通常時の伝送路である通常ルートと、前記通常ルートの遮断時に前記通常ルートを迂回する伝送路である迂回ルートとが記憶される記憶装置をさらに備え、
前記中央装置または前記複数の第1、第2の交通端末装置の各々は、前記通常ルートにおける通信状態を所定の間隔で確認して、前記通常状態が異常である場合には、前記記憶装置を検索して得られる前記迂回ルートに切替えて通信を行なう、請求項8に記載の交通管制システム。
【請求項11】
前記中央装置または前記複数の第1、第2の交通端末装置の各々は、伝送速度の高い順に前記複数の通信回線の各々と対応付けられる優先順位を予め記憶し、前記記憶装置を検索して得られる前記迂回ルートが複数ある場合には、前記優先順位が最も高い通信回線を含む迂回ルートを選択する、請求項10に記載の交通管制システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−215977(P2006−215977A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30842(P2005−30842)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】