説明

人ラクトフェリンの配列に基づくペプチドおよびその使用

【課題】感染、炎症および腫瘍の処置および予防を意図した薬用製品、該製品を含む食料品、たとえば幼児配合食品を提供する。
【解決手段】人ラクトフェリンを構成する配列にてN−末端から数え位置12〜40におけるアミノ酸の少なくとも7つの順次のアミノ酸で形成される新規なペプチド、および好ましくはその改変物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に感染、炎症および/または腫瘍を処置および/または予防するための新規なペプチドおよびその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幾つかの面にて人乳は炎症のイニシエータおよびメジエーターに乏しいが、抗炎症剤に豊むという事実に基づき、抗炎症性であるということが古くから知られている[たとえばA.S.ゴールドマン等、人乳の抗炎症特性、アクタ・ペジアトリックス・スカジナビア、第75巻、第689〜695頁、1986参照]。さらに人乳はたとえばラクトフェリンのような数種の可溶性抗感染成分を含有する[たとえばL.A.ハンソン等、ミルクにおける保護因子および免疫系の発現、ペジアトリックス、第75巻、第172〜176頁、1983参照]。
【0003】
ラクトフェリンは、77kdの分子量を有する一本鎖金属結合性グリコ蛋白である。殺細菌特性をもたらしうるラクトフェリンの構造ドメインはラクトフェリシンと呼ばれるペプシン開裂断片であることが判明している[W.ベラミー等、ラクトフェリンの殺細菌ドメインの同定、バイオヒミカ・バイオフィジカ・アクタ、第1121巻、第130〜136頁、1992およびW.ベラミー等、ラクトフェリシンB、すなわち牛ラクトフェリンのN−末端領域から生ずる有力な殺細菌性ペプチドの抗細菌スペクトル、ジャーナル・アプライド・バクテリオロジー、第73巻、第472〜479頁、1992参照]。
【0004】
ラクトフェリンリセプタはモノサイトおよびマクロファージ、レクチン刺激ヒト末梢血液リンパ球、刷子縁細胞および腫瘍細胞ラインを包含する多くの種類の細胞に見られる。
【0005】
幾つかの特許公報は、感染もしくは炎症を処置するためのラクトフェリンの使用可能性を記載している。WO98/06425号パンフレットには、たとえばラクトフェリンおよびラクトフェリシンを用いて感染、炎症および腫瘍を処置および予防しうることが開示されている。
【0006】
EP−A−0 629 347号明細書は、(A)ラクトフェリン加水分解物および/またはラクトフェリンから得られる抗微生物ペプチドの1種もしくはそれ以上および(B)金属キレート化蛋白、トコフェロール、サイクロデキストリン、グリセリン−脂肪酸エステル、アルコール、EDTAもしくはその塩、アスコルビン酸もしくはその塩、クエン酸もしくはその塩、ポリ燐酸もしくはその塩、キトサン、システインおよびコリン酸よりなる群から選択される1種もしくはそれ以上の化合物をその有効成分として含有する抗微生物剤を記載している。この抗微生物剤は製品の処理を意図し、特にたとえば食品および医薬品を安全に処理することを意図する。この特許公報による薬剤は従って新規な保存料である。公報には数種のペプチド配列が示されており、その幾種かは本発明によるペプチドに類似するが、下記するように幾つかの重要な相違点が存在する。
【0007】
天然人ラクトフェリンおよびラクトフェリシンは所望の抗炎症性、抗感染性および抗腫瘍性を有することも示されているが、これらは広範囲の基準で臨床的に使用することができない。何故なら、これらは高い製造コストに基づき極めて高価な物質となるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO98/06425号パンフレット
【特許文献2】EP−A−0 629 347号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】A.S.ゴールドマン等、人乳の抗炎症特性、アクタ・ペジアトリックス・スカジナビア、第75巻、第689〜695頁、1986
【非特許文献2】L.A.ハンソン等、ミルクにおける保護因子および免疫系の発現、ペジアトリックス、第75巻、第172〜176頁、1983
【非特許文献3】W.ベラミー等、ラクトフェリンの殺細菌ドメインの同定、バイオヒミカ・バイオフィジカ・アクタ、第1121巻、第130〜136頁、1992
【非特許文献4】W.ベラミー等、ラクトフェリシンB、すなわち牛ラクトフェリンのN−末端領域から生ずる有力な殺細菌性ペプチドの抗細菌スペクトル、ジャーナル・アプライド・バクテリオロジー、第73巻、第472〜479頁、1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ラクトフェリンおよび/またはラクトフェリシンと同じ目的につき使用しうると共に、ずっと安く製造されるが同じまたは一層良好な作用を示す新規なペプチドを提供することにある。
【0011】
本発明に到る研究の目的は、腸から吸収しうる新規なペプチドを設計することである。ヒトはその刷子縁膜に、人ラクトフェリンに結合しうるリセプタを有することが示されている[たとえばB.レンネルダール、腸刷子縁膜におけるラクトフェリンリセプタ、アドバンスト・エクスペリメンタル・メジカル・バイオロジー、1994、第357巻、第171〜175頁参照]。さらに、牛ラクトフェリンはこれらリセプタに結合しないことも示されている。従って新規なペプチドは人ラクトフェリンもしくは人ラクトフェリシンに類似するが、これらは製造が一層容易かつ特に安価でなければならない。さらに、これらは感染、炎症および腫瘍の処置および予防にて人ラクトフェリンもしくは人ラクトフェリシンと実質的に同じ効率または好ましくは一層高い効率を持たねばならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
N−末端から数えて人ラクトフェリンのアミノ酸12〜40の全部もしくは幾つかで構成された配列により形成されるペプチド、好ましくは以下さらに説明するその改変物は所望の特性を有することが突き止められた。
【0013】
本発明の第1実施形態によれば、人ラクトフェリンのN−末端からアミノ酸16〜40およびアミノ酸18〜40で構成された配列より形成されるペプチド(その幾つかの改変物については以下さらに説明する)は所望の性質を有することが示される。さらにC−20がAにより置換され、Q−22がKにより置換され、さらにN−26がDにより置換される人ラクトフェリンの残基18〜31に大凡対応する14個のみの残基を有する配列も同じまたは一層良好な性質を有することが判明した。
【0014】
本発明の第2実施形態によれば、人ラクトフェリンを構成する配列にてN−末端から数え位置12〜31におけるアミノ酸により形成されるペプチド、並びにその改変物は所望の性質を有することが示される。さらに少なくとも7つのアミノ酸よりなるこの配列の断片も同じまたは一層良好な性質を有することが示される。
【0015】
本発明の第3実施形態によれば、位置15〜21におけるアミノ酸の1つで始まると共にN−末端から数えて位置31のアミノ酸で終端する配列に対する人ラクトフェリンを構成する配列における11〜17個のアミノ酸よりなるペプチド、並びにその改変物も所望の性質を有することが示される。
【0016】
本発明の第4実施形態によれば、N−末端から数えて人ラクトフェリンにおける位置20〜31のアミノ酸よりなる配列に基づく12個のアミノ酸よりなる改変ペプチドは本発明の目的につき一層良好な結果を与えることが示される。
【0017】
人体におけるこれら新規なペプチドの吸収に関する驚異的メカニズムは、ペプチドが上記特定ラクトフェリンリセプタへの結合を介し腸にて吸収され、次いで循環を介し輸送されることである。しかしながら、本発明はこのメカニズムのみに限定されない。
【0018】
従って本発明は、添付配列リストに示した配列を有する新規なペプチドおよびその機能上均等なホモログもしくはアナログに関するものである。
【0019】
さらに本発明は、前記ペプチドを含む薬用製品および食料品、特に幼児配合食品に関するものである。
【0020】
さらに本発明は感染、炎症および腫瘍を処置および予防するための薬用製品を製造する前記ペプチドの使用にも関するものである。
【0021】
本発明のよるペプチドは殺真菌性および殺細菌性であり、従ってこの種の性質を有する物質が所望される他の用途についても使用することができる。たとえば、これらは保存料として使用することができる。
【0022】
本発明の特徴については以下の説明およびクレームから明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
従って本発明は蛋白、人ラクトフェリシン(hLF)の断片に基づくアミノ酸を含むペプチドに関するものである。本発明の基礎として用いられるhLFの断片は位置12〜40におけるアミノ酸により構成され、その配列は次の通りである:V−S−Q−P−E−A−T−K−C−F−Q−W−Q−R−N−M−R−K−V−R−G−P−P−V−S−C−I−K−R (SEQ.ID.NO.100)
【0024】
説明において、単文字記号はアミノ酸を示すべく用いられ、三文字記号は添付配列リストで使用される。当業者に周知されたこれら記号は次の意味を有する:A=Ala=アラニン、C=Cys=システイン、D=Asp=アスパラギン酸、E=Glu=グルタミン酸、F=Phe=フェニルアラニン、G=Gly=グリシン、I=Ile=イソロイシン、K=Lys=リジン、M=Met=メチオニン、N=Asn=アスパラギン、P=Pro=プロリン、Q=Gln=グルタミン、R=Arg=アルギニン、S=Ser=セリン、T=Thr=スレオニン、V=Val=バリン、W=Trp=トリプトファン、およびX=Xaa=可変アミノ酸。幾つかの配列におけるAcおよびNH2はアセチル基(CH3CO−)基およびアミノ基をそれぞれ示し、これらはペプチドのアミノ末端およびカルボキシ末端を改変すべく使用される。
【0025】
本発明によるペプチドは、以下さらに説明するように、線状もしくは環式の形態のいずれかを有することができる。
【0026】
SEQ.ID.NO.1〜99でここに挙げる全ての配列を添付配列リストに示す。
【0027】
本発明の第1実施形態は配列が次の通りであるペプチドに関する:Ac−X−X−T−K−X−F−X−W−Q−R−X−M−R−K−V−R−X−X−X−X−X−X−X−X−X−NH2 (SEQ.ID.NO.1)
[位置1におけるXはEもしくはアミノ酸無しであり、位置2におけるXはAもしくはアミノ酸無しであり、位置5におけるXはCもしくはAであり、位置7におけるXはQもしくはKであり、位置11におけるXはNもしくはDであり、位置17〜25におけるXはアミノ酸が全く存在しないか或いは−G−P−P−V−S−C−I−K−Rのいずれかである]。
本発明の第1実施形態によるペプチドの配列は添付配列リストにおけるSEQ.ID.NO.1〜7である。
【0028】
本発明の第1実施形態の好適例において、位置1におけるXはEであり、位置2におけるXはAであり、位置5におけるXはCであり、位置7におけるXはQであり、位置11におけるXはNであり、位置17〜25におけるXは−G−P−P−V−S−C−I−K−Rであり、これはSEQ.ID.NO.2である配列をペプチドに与える。線状型は、アセタミドメチル基(CH3CONHCH2−)によるシステイン側鎖の保護により得られる。
【0029】
本発明の第1実施形態の他の好適例はSEQ.ID.NO.2の環式型であり、これは位置5と22とにおける2つのシステイン間にジスルフィド架橋を形成させて配列がSEQ.ID.NO.3である環式ペプチドをもたらすことにより得られる。ジスルフィド架橋の形成は、ポリマーの形成を回避すべく制御して行わねばならない。
【0030】
本発明の第1実施形態における他の好適例は若干短いペプチドであり、SEQ.ID.NO.1における位置1のXは無しであり、位置2におけるXは無しであり、位置5におけるXはCであり、位置7におけるXはQであり、位置11におけるXはNであり、位置17〜25におけるXは−G−P−P−V−S−C−I−K−Rであって、SEQ.ID.NO.4である配列のペプチドをもたらす。
【0031】
本発明の第1実施形態におけるさらに他の好適例はSEQ.ID.NO.4の環式型であり、SEQ.ID.NO.3と同様にジスルフィド架橋を形成させてSEQ.ID.NO.5をもたらすことにより得られる。
【0032】
本発明のこの第1実施形態におけるさらに他の好適例は、位置1におけるXが無しであり、位置2におけるXが無しであり、位置5におけるXがAであり、位置7におけるXがK、X5Dであり、位置17〜25におけるXが無しである短いペプチドであって、SEQ.ID.NO.6をもたらす。
【0033】
さらに、このペプチドは、SEQ.ID.NO.6における位置5の残基Kおよび位置9におけるDが各残基の側鎖間におけるラクタムの形成により結合されてループを形成するよう改変することもできる。このペプチドの配列はSEQ.ID.NO.7である。この配列にて4個の残基だけ離間するアミノ酸連鎖間のこのペプチドにおけるラクタム形成はペプチドが天然産人ラクトフェリンの断片18〜31に類似する三次元構造をペプチドを持つと共に一層良好にリセプタに結合するよう設計される。SEQ.ID.NO.7を有するこのペプチドが本発明の第1実施形態による最も好適なペプチドである。
【0034】
本発明の第1実施形態による他のペプチドと比較したSEQ.ID.NO.6およびSEQ.ID.NO.7を有するペプチドの1つの利点は、これらが一層合成容易であると共に、これらがより短いので1g当たり一層安価となる点である。
【0035】
これら7種のペプチドの全てにおいて、アミノ末端およびカルボキシ末端はキャップされており、すなわちアミノ末端における遊離NH2基はアセチルイミダゾールと反応してアミドCH3CONH−もしくはAcNH−を形成しており、カルボキシ末端における遊離COOHはCONH2まで変換されている。
【0036】
本発明の第1実施形態による上記7種のペプチドの全ては、配列から明らかなように、カルボキシ末端に残基KおよびRを含む。これら残基は生理学的条件下で陽帯電し、リセプタに対し強力かつ特異的に相互作用することができる。従って、これらは本発明によるペプチドの重要な部分である。さらに本発明による全ペプチドのアミノ末端におけるT残基もリセプタ結合にて重要な役割を演ずることができる。
【0037】
本発明の第2実施形態は、配列が:V−S−Q−P−E−A−T−K−C−F−Q−W−Q−R−N−M−R−K−V−R (SEQ.ID.NO.8)
を有するペプチド、および少なくとも7つのアミノ酸よりなるその断片に関するものである。本発明の第2実施形態によるペプチドの配列は添付配列リストにおけるSEQ.ID.NO.8〜42である。
【0038】
本発明のこの第2実施し形態によるペプチドは少なくとも7つのアミノ酸を含有する。より短いペプチドは所望の効果を持たない。
【0039】
本発明の第2実施形態によるペプチドの好適群は、添付配列リストに示したSEQ.ID.NO.9〜22を有するペプチドである。7つのアミノ酸だけで構成されるこれらペプチドの利点はこれらが比較的短い点であって、本発明による長いペプチドよりも一層安価かつ容易に製造しうることを意味する。
【0040】
本発明のこの第2実施形態による他の好適群のペプチドは添付配列リストにおけるSEQ.ID.NO.13およびSEQ.ID.NO.23〜31を有するペプチドであって、N−末端から数え人ラクトフェリンの位置16におけるアミノ酸から位置22〜31におけるアミノ酸まで得られる改変配列に対応する。
【0041】
この実施形態によるさらに他の好適群のペプチドはSEQ.ID.NO.22およびSEQ.ID.NO.31〜42を有する好適配列リストにおけるペプチドであって、N−末端から数え人ラクトフェリンの位置13〜25におけるアミノ酸から位置31におけるアミノ酸まで得られる改変配列に対応する。
【0042】
本発明の第2実施形態によるペプチドの利点はこれらが人ラクトフェリン蛋白またはその改変物のラクトフェリシン断片の部分を形成する点であり、本発明者等は本発明に関し活性であることを突き止めた。
【0043】
発明の第3実施形態は、配列:F−X−W−X−R−X−M−R−K−X−R (SEQ.ID.NO.43)
からなる11〜17つのアミノ酸よりなるペプチドまたはその機能上均等なホモログもしくはアナログに関するものである。本発明の第3実施形態によるペプチドの配列は添付配列リストにおけるSEQ.ID.NO.43〜67およびSEQ.ID.NO.97である。
【0044】
この配列において、XもしくはXaaにより示されるアミノ酸は、好ましくは互いに独立してグルタミン(QもしくはGln)、リジン(KもしくはLys)、アスパラギン酸(DもしくはAsp)、アスパラギン(NもしくはAsn)またはバリン(VもしくはVal)である。
【0045】
本発明の第2実施形態による好適群のペプチドは14のアミノ酸で構成される。これらペプチドは、人ラクトフェリンを構成する配列にてN−末端から数え位置18〜31におけるアミノ酸により形成される配列に実質的に対応し、ここでアミノ酸の幾つかは改変されている。この群におけるペプチドは配列SEQ.ID.NO.6、7、50〜61および98を有する。
【0046】
殆ど人ラクトフェリンのこの部分に対応するこの実施形態によるペプチドは、添付配列リストに示したSEQ.ID.NO.50を有するペプチドである。この配列のキャップド物はSEQ.ID.NO.51を有する。
【0047】
この配列における位置3のアミノ酸(すなわちシステイン(CもしくはCys))はアラニン(AもしくはAla)またはリジンにより置換することができ、位置5におけるアミノ酸(グルタミン)はリジンにより置換することができ、位置9におけるアミノ酸(アスパラギン)はアスパラギン酸もしくはリジンにより置換することができ、位置13におけるアミノ酸(バリン)はアスパラギン酸により置換することができる。
【0048】
この実施形態によるペプチドがSEQ.ID.NO.46〜51および62〜67を有するペプチドのようにシステインを含めば、このシステインをアセタミドメチル−システインにより置換して、ペプチドがシステインを含む他のペプチドとのジスルフィド架橋を形成するのを回避するのが有利である。しかしながら、このアミノ酸、グルタミンおよびバリンは上記のように置換することができない。
【0049】
この実施形態によるペプチドの主たる利点は、これらが人ラクトフェリン蛋白のラクトフェリシン断片の1部またはその改変物を形成する点であり、本発明者等は本発明に関し活性であることを突き止めた。
【0050】
この実施形態によるペプチドの他の利点はこれらが比較的短い点であって、これらがたとえばラクトフェリン自身のような長いペプチドよりも一層安価かつ容易に製造しうることを意味する。
【0051】
本発明の第4実施形態は、12のアミノ酸よりなるペプチドに関するものである。これらペプチドは、N−末端から数えて人ラクトフェリンにおける位置20〜31のアミノ酸よりなる配列の改変に基づくものであり、SEQ.ID.NO.46に相当する。本発明の第3実施形態によるペプチドの配列は添付配列リストにおけるSEQ.ID.NO.68〜99である。一般的配列SEQ.ID.NO.99において、位置3におけるXaaは好ましくはGlnもしくはAlaであり、位置4におけるXaaは好ましくはTrpもしくはLeuであり、位置5におけるXaaは好ましくはGln、Lys、Orn、AlaもしくはNleであり、位置6におけるXaaは好ましくはArg、LysもしくはAlaであり、位置7におけるXaaは好ましくはAsn、Orn、AlaもしくはNleであり、位置8におけるXaaは好ましくはMetもしくはLeuであり、位置9におけるXaaは好ましくはArgもしくはLysである。或る種の場合、この配列を配列Thr−Lysもしくはそれより長い配列Glu−Ala−Thr−Lysにより進めるのが有利である。
【0052】
本発明の第4実施形態により好適ペプチドは、それぞれSEQ.ID.NO.46にて位置3および位置7におけるアミノ酸がアラニンにより置換されているSEQ.ID.NO.70およびSEQ.ID.NO.74、それぞれSEQ.ID.NO.46における位置6および位置9におけるアミノ酸がリジンにより置換されているSEQ.ID.NO.81およびSEQ.ID.NO.83、並びにそれぞれSEQ.ID.NO.46における位置5および位置7のアミノ酸がオルニチンにより置換されているSEQ.ID.NO.87およびSEQ.ID.NO.89である。さらに本発明によるこれら配列のキャップド物を使用することも可能であり、或る場合には一層好適である。
【0053】
本発明によるペプチドは天然源のもの、たとえば人ラクトフェリンから得られるものであるか或いは合成的に製造することができる。
【0054】
本発明によるペプチドはしばしば「キャップ」され、これらペプチドのアミノ末端およびカルボキシ末端が上記したようにアミドまで変換される。キャップド物(すなわちアミノ末端およびカルボキシ末端がアセチルイミダゾールと反応してアミドCH3CONH−もしくはAcNH−を形成していると共にカルボキシ末端における遊離COOHがCONH2まで変換されている配列)の利点は、これらペプチドが中性かつ未帯電であって、劇的に変化した静電気特性を有する点である。N−およびC−末端電荷が存在しない人ラクトフェリンの対応配列をリセプタが結合すると仮定して、キャップドペプチドはこの点に関しこれらが非キャップドペプチドよりも天然蛋白に類似するので一層良好に結合する筈である。約7のpHにおける生理学的条件下に、遊離アミノ末端およびカルボキシ末端はイオン化されると共に、ペプチドは陽電荷および陰電荷を有するであろう。
【0055】
或る種の例においては、キャップド型の配列のみが添付配列リストに示されている。しかしながら本発明によれば、非キャップド型も使用することができる。
【0056】
この実施形態によるペプチドが3つのアミノ酸によりアスパラギン酸もしくはグルタミン酸から分離されたリジンからなる場合、リジンおよびアスパラギン酸もしくはグルタミン酸はそれぞれSEQ.ID.NO.54におけるようにラクタムを形成することができ、ここでラクタムは位置5におけるリジンと位置9におけるアスパラギン酸との間で形成され、或いはSEQ.ID.NO.55におけるようにラクタムが位置5におけるリジンと位置9におけるグルタミン酸との間で形成される。さらにラクタムが位置3におけるリジンと位置7におけるアスパラギン酸との間で形成されると共に他のラクタムが位置8におけるリジンと位置13との間におけるアスパラギン酸との間で形成される、たとえばSEQ.ID.NO.60およびSEQ.ID.NO.61におけるようなジラクタムを得ることも可能である。ラクタム形成はペプチドが人ラクトフェリンの対応断片に類似する三次元構造を取り得るようにすると共に、これはラクトフェリンリセプタに対するペプチドの一層良好な結合を達成することができる。
【0057】
上記ペプチドの他に、たとえばラクタム架橋または他の化学的拘束のような構造的拘束の導入に基づき人ラクトフェリンにおける対応セグメントの三次元構造に類似するものを含め、機能上均等なホモログもしくはアナログを使用することも可能である。
【0058】
本発明によるペプチドは感染、炎症および/または腫瘍の処置および/または予防に適している。ここで用いる用語「処置」とは病気状態、病気進行または他の異常状態の悪作用を治癒、逆転、弱化、軽減、最小化、抑制もしくは停止させることを意味し、ここで用いる用語「予防」とは病気状態もしくは進行または他の異常状態もしくは悪性状態を発展する危険性を最小化、減少または抑制することを意味する。本発明によるペプチドもしくは薬用製品により処置しうる感染は全ゆる種類の病原体(たとえば細菌、ウィルス、真菌類など)により引き起こされる感染を包含する。
【0059】
本発明によるペプチドもしくは薬用製品により処置しうる感染は全ゆる種類の病原体(たとえば細菌、ウィルス、真菌類など)により引き起こされる感染を包含する。
【0060】
種々異なる種類の炎症を処置することも可能である。炎症は、特に組織および器官の異常な「赤色化」および腫れ、感染領域における疼痛および発熱、毛細管拡張、白血球浸潤などを特徴とする複合現象である。炎症は主として細菌や他の有毒剤および物理的外傷に露出して生ずる。炎症は多くの形態を有し、各種の異なるサイトキンおよび他の化学シグナルにより媒介される。炎症のこれら媒介物は腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)および各種のコロニー刺激因子(CSF)を包含する。
【0061】
上記したように、本発明によるペプチドは腫瘍の処置にも適している。
【0062】
本発明によるペプチドは、これらを薬用製品または医薬製剤に含ませて使用することができる。本発明による薬用製品もしくは医薬製剤は、医薬製剤の製造または製剤の投与を容易化させるべく使用される物質をも含むことができる。この種の物質は当業者に周知されており、たとえば医薬上許容しうるアジュバント、キャリヤおよび保存料とすることができる。
【0063】
本発明によるペプチドまたは薬用製品は患者に全身的また局部的に投与することができる。ここで用いる用語「患者」とは病気状態、病気進行または他の異常もしくは悪性状態の危険性を有する或いはそれに罹患した人間を意味する。
【0064】
全身的投与がたとえば尿路感染、結腸炎および腫瘍の処置に適している。全身的投与は経口、鼻腔内、静脈内、動脈内、空腔内、筋肉内、皮下、経皮、座薬(経腸を含む)、または当業者に知られた他のルートにより行うことができる。経口投与が好適である。
【0065】
局部投与は、たとえば皮膚感染、粘膜における全ての感染および炎症などを処置するのに適している。局部投与は局所、経口、鼻腔内、膣内または口腔頭ルートにより行うことができる。皮膚もしくは粘膜における局部感染もしくは炎症を処置するには、本発明によるペプチドまたは薬用製品をたとえばゲル、クリーム、軟膏またはペーストに含ませることができる。
【0066】
本発明による方法においては、本発明による有効量のペプチドを患者に投与する。ここで用いる用語「有効量」とは病気状態、病気進行または他の異常もしくは悪化状態を処置もしくは予防するのに充分な量を意味する。
【0067】
本発明によるペプチドもしくは薬用製品および方法は尿路感染および結腸炎の処置および/または予防に特に適しているが、幾種かの他の炎症および感染病も本発明により処置することができ、たとえば炎症性腸病、リューマチ性関節炎、ウィルスHIV−により引き起こされる症状、ウィルスCMVにより引き起こされる症状、並びに真菌、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルセイおよびクリプトコッカス・ネオホルマンスにより引き起こされる症状がある。このリストは決して本発明の範囲を限定するものでない。
【0068】
本発明によるペプチド、薬用製品および方法は、尿路感染または他の炎症病もしくは感染病の危険性を、この種の合併症をもたらす危険性増大を持った患者にて減少させることにより、予防薬用処置にも適している。
【0069】
本発明によるペプチド、薬用製品および方法は単独でまたは互いに組み合わせて或いは慣用の療法と組み合わせて用いることができる。
【0070】
本発明によれば、ペプチドを有効量にて病気体質、低出産体重もしくは薬用処置に基づくこの種の症状の危険性増大を持った患者にて感染および/または炎症を減少させることを意図した全ゆる種類の食品もしくは飲料に含ませることもできる。たとえば、ペプチドを有効量にてたとえば幼児で細菌、ウィルスもしくは真菌類により誘発される炎症により引き起こされる体重ロスのような細菌の有害作用を抑制することを意図した幼児配合食品に含ませることができる。本発明によるペプチドを食料品にて使用する場合(たとえば栄養目的につき使用する場合)は、天然源のペプチドを使用するのが特に好適である。
【0071】
本発明によるペプチドは抗微生物作用を有するので、これらは種々異なる食料品およびたとえばゲル、クリーム、軟膏、ペースト、溶液、乳液などの薬用製品にも保存料として使用することができる。
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。これら実施例は単に本発明を例示する目的であり、決して本発明の範囲を限定すると考えてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明による2種のペプチド(ペプチド3およびペプチド4)、人ラクトフェリン(hLF)および水によりそれぞれ処理された尿路感染を有するマウスにおける腎臓に存在する細菌の個数(CFU)を示す。
【図2】線状もしくは環式型におけるペプチド3、線状および環式型におけるペプチド4、および線状もしくは環式型における基準ペプチドと比較したペプチド7の、異なるpHにてC.アルビカンスの99%を死滅させるのに要する濃度を示す。
【図3】本発明による2種のペプチド(ペプチド3およびペプチド4)、人ラクトフェリン(hLF)および水(比較)により、それぞれC.アルビカンスの胃内投与の後に、経口処理したマウスにおける胃内に存在するC.アルビカンスの個数(CFU)を示す。
【図4】ペプチド3およびペプチド4、並びにhLFにより実験的結腸炎を有するマウスを経口処理した、水(比較)での処理と比較する結果を示し、図4Aは糞における潜血の発生を示し、図4Bは血清におけるIL−1βの量を示し、図4Cは肛門出血の発生を示し、図4Dは結腸長さを示す。
【図5】図5Aは図4により処理されたマウスからの遠隔結腸の組織セクションにおけるCD8陽性細胞の個数を示し、図5Bは図4により処理したマウスからの遠隔結腸の組織セクションにおけるMHCクラスIIの発現を示す。
【実施例】
【0074】
以下の実施例において、ペプチド2はSEQ.ID.NO.2を有する本発明によるペプチドを示し、ペプチド3はSEQ.ID.NO.3を有する本発明によるペプチドを示し、以下同様である。
【0075】
モリナガ10、モリナガ11、モリナガ12、モリナガ13、モリナガ24およびモリナガ25はEP−A−0 629 347号に記載されたペプチドを示し、モリナガ10はF−Q−W−Q−R−N(EP−A−0 629 347号における配列No.10)であり、モリナガ11はF−Q−W−Q−R(EP−A−0 629 347号における配列No.11)であり、モリナガ12はQ−W−Q−R(EP−A−0 629 347号における配列No.12)であり、モリナガ13はW−Q−R(EP−A−0 629 347号における配列No.13)であり、モリナガ24は配列K−C−F−Q−W−Q−R−N−M−R−K−V−R−G−P−P−V−S−C−I(EP−A−0 629 347号における配列No.24)を有する環式ペプチドであり、モリナガ25はK−C−F−Q−W−Q−R−N−M−R−K−V−R−G−P−P−V−S−C−I(EP−A−0 629 347号における配列No.25)である。
【0076】
hLFは人ラクトフェリンを示す。
【0077】
各実施例において、最小殺微生物濃度(MMC)および最小抑制濃度(MIC)は、各実施例にて特記しない限り次のように決定した。細菌もしくは真菌ストレインを37℃にて1晩にわたりBHI培地にて培養した。培地の所定容量をBHIを有する新たなチューブに移し、さらに2時間にわたり培養した。その後、細胞を遠心分離すると共に、1/100希釈されたBHI培地(1%BHI)に懸濁させた。細菌もしくは真菌細胞の濃度を650nmにて分光測定法により決定した。微生物濃度も生存カウント数により決定した。2段階または10段階により1%BHIにてシリーズ希釈されたペプチドを3反復にて微小滴定プレート(1ウェル当たり200μl)のウェルに添加した。細菌もしくは真菌細胞溶液を10μl容積で添加して、ウェル中1ml当たり約1〜5x105細胞の最終濃度を得た。微小プレートを2時間にわたり湿潤室内で37℃にて培養した。その後、5μlを各ウェルから採取し、血液寒天プレートへの点滴として添加し、37℃にて1晩にわたり培養した。微小プレートを37℃にてさらに20時間にわたり培養し、その後にマイクロプレートリーダー(Emax、モレキュラデバイス社、USA)にて650nmで分光測定により分析した。2時間の培養後に接種物の99%減少をもたらすペプチドの濃度をMMC99%として規定した。MIC値は、20時間の培養後にバックグランドレベルよりも高い吸光値における増加を示さない濃度として規定した。
【0078】
(実施例1)
この実施例は、本発明によるペプチド2、ペプチド3、ペプチド4およびペプチド5、並びに以下の実施例で使用したモリナガ24およびモリナガ25の各ペプチドの固相合成を示す。
【0079】
合成は、バイオサーチ・パイオニア自動化ペプチド合成装置にてFmoc連続流動手段により行った。各ペプチドは、樹脂PAC−PEG−PS(ペプチド酸につき0.21ミリモル/g)にて0.1〜0.2ミリモル尺度で合成すると共にFmoc−PAL−PEG−PS(ペプチドアミドにつき0.20ミリモル/g)の尺度で合成した。
【0080】
本発明によるペプチドの側鎖はピペリジン−安定性t−ブチル(セリンおよびスレオニンにつき)、t−ブチルエステル(グルタミン酸につき)、t−ブチルオキシカルボニル(リジンおよびトリプトファンにつき)、トリフェニルメチル(アスパラギン、システイン、グルタミンおよびヒスチジンにつき)、アセタミドメチル(システインにつき)および2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(アルギニンにつき)の各基により保護した。
【0081】
モリナガ24およびモリナガ25の各ペプチドにつき、PAC−PEG−PS樹脂へのイソロイシンの付着をイソロイシン対称無水物を用いて行った。樹脂(1g、0.21ミリモル)を3mlのジメチルホルムアミド(DMF)中で膨潤させた。Fmoc−1(10当量、2.1ミリモル)を5mlのジクロルメタン(DMC)および5滴のDMFに溶解させた。ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)(5当量、1.05ミリモル)をアミノ酸溶液に添加し、その後にこれを0℃にて20分間静置させた。DCMを減圧下に除去すると共に残留油をDMFに溶解させて樹脂に添加した。ジメチルアミノピリジン(DMAP)(1当量)を樹脂に添加し、スラリーを室温にて時々回動させながら1時間にわたり静置させた。DCMで洗浄した後、樹脂はペプチド合成の準備が整った。
【0082】
α−アミノ保護基(Fmoc)の除去をDMFにおける20%ピペリジンにより7分間行った。全てのカップリングをDMF中で行い、ペプチドより4倍過剰の活性化アミノ酸および4当量のベンゾトリアゾリル テトラメチルブロニウム テトラフルオロボレート(TBBTU):ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(1:2、モル/モル)を使用した。6倍過剰のヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)をシステイン残基(アセタミドメチルおよびトリフェニルメチル)のカップリング物に添加した。
【0083】
ペプチド2、ペプチド3、ペプチド4およびペプチド5を、DMFにおける無水酢酸の0.3M溶液を用いてアミノ末端にてアシル化した。
【0084】
樹脂からのペプチドの最終的な保護解除および開裂を、9.25mlのトリフルオロ酢酸(TFA)と250μlの水と250μlのエタンジチオールと250μlのトリイソプロピルシランとの混合物をペプチド樹脂1g当たりに用いて室温で2時間にわたり行った。この樹脂を濾過により除去した。ペプチドを低温ジエチルエタノールを用いて沈殿させ、遠心分離し、次いで新たなジエチルエーテルにさらに2回にわたり再懸濁させてスカベンジャーおよびTFAを抽出した。各ペプチドを水に溶解させると共に凍結乾燥させた。
【0085】
ジスルフィド結合したペプチド(ペプチド3およびペプチド5)の環化を未精製材料にて行った。約200mgのペプチドを1リットルの脱ガス水に溶解させた。炭酸水素アンモニウムをpHが6〜7の範囲になるまで添加し、混合物を撹拌および空気接触させながら約1日間にわたり放置し、最終的に凍結乾燥させた。
【0086】
各ペプチドはイソプロパノール(12〜16%IPA)と0.1%TFAとのイソクラチック混合物で溶出させる逆相高圧液体クロマトグラフィーにより精製した。一方がマイクロソルブ、C−841.4x250mm、8μm(カラムA)であり、他方はハイクロムC−8、25x250mm、7μm(カラムB)である2種の異なるカラムを使用した。各ペプチドは、表1に示す保持時間(R)でブロードピークとして溶出した。同定はES−MSにより行った。表におけるMWは分子量を示す。
【0087】
(実施例2)
この実施例は本発明によるペプチド6およびペプチド7の固相合成を示す。
【0088】
合成は実施例1に記載したように行ったが、ただし合成手順の次の改変を加えた。位置5におけるアミノ酸Kおよび位置9におけるDを形成するラクタムの側鎖を1(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)エチル(Dde)および4−{N−[1(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロへキシリデン)−3−メチルブチル]−アミノ}ベンジルエステル(ODmab)によりそれぞれ保護した。
【0089】
キャップド配列の合成を完了した後、Dde基およびODmab基を10分間にわたりDMFにおける2%ヒドラジン(v/v)により除去した。樹脂をDMF、DMFにおける1M DIPEAおよび最終的にDMFにより洗浄した。
【0090】
ペプチド7の場合、各側鎖間のラクタム形成を、4倍過剰のアザベンゾトリアゾリル テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HATU):DIEPEA、1:2のDMFにおける添加の後に、8時間にわたり進行させた。樹脂を次の溶剤/溶液で洗浄した:DMF、DMFにおける20%ピペリジン、メタノールおよびDCM。樹脂を減圧下に乾燥させ、ペプチドを上記と同様に樹脂から開裂させた。
【0091】
ペプチド7は下表1に示す保持時間(R)でブロードピークとして溶出した。
【0092】
【表1】

【0093】
(実施例3)
この実施例においては、本発明による各ペプチドの殺細菌活性を試験し、人ラクトフェリンの殺細菌活性と比較した。
【0094】
人ラクトフェリン(hLF)、ペプチド3およびペプチド4をそれぞれイー・コリ、すなわちイー・コリ O14(実験I)およびO6K5(実験II)の2種の異なる菌株と共に希釈増殖培地(1/100 BHI−脳心臓インフュージョン)にて2時間にわたり培養した。各ペプチドをさらに0.05mM KCl(pH7)にてイー・コリ O14と共に増殖培地なしに培養した(実験III)。種々異なる濃度のペプチドを試験した。
【0095】
培養の後、各試料を細菌塗沫につき採取した。5回および4回工程の一連の希釈物をそれぞれ実験IおよびIIにそれぞれ使用し、2回工程を実験IIIにて使用した。
【0096】
細菌の100%(実験IおよびII)または90%(実験III)を死滅させるのに要する異なるペプチドの濃度を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
表2から明らかなように、本発明によるペプチドは人ラクトフェリンよりもずっと殺細菌剤として効率的であった。
【0099】
(実施例4)
この実施例においては、本発明による各ペプチドの殺真菌活性を試験し、人ラクトフェリンの殺真菌活性と比較した。種々異なる濃度のhLF、ペプチド3およびペプチド4を異なる菌株のキャンジダ・アルビカンスおよびキャンジダ・クルセイと共にpH7.0の0.05mM KClにて37℃で1〜2時間にわたり2つの異なる場合(実験IおよびII)にてそれぞれ培養した。培養の後、各試料をサボラウドプレートへの塗沫につき採取した。真菌類の99%を死滅させるのに要する異なるペプチドの濃度を表3に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
表3における結果は、本発明による各ペプチドが人ラクトフェリンよりもずっと効率的な殺真菌剤であったことを示す。
【0102】
(実施例5)
この実施例においては、インビトロ試験を行って本発明による各ペプチドの抗炎症活性を検討した。より正確には、単核細胞ライン(THP−1)におけるLPS−誘発IL−6応答に対する本発明の各ペプチドの抑制効果を検討すると共に、I.マッツビー−バルツァー等、ペディアトリックス・リサーチ、第40巻、第257〜262頁(1996)により記載された方法を用いて人ラクトフェリンの効果と比較した。THP−1細胞におけるIL−6応答はLPSの添加により誘発させた。それぞれhLF、ペプチド3およびペプチド4はLPSの30分間後に添加した。下表4に示すようにペプチド4により顕著な抑制が得られた。ペプチド3の抑制活性は人ラクトフェリンの抑制活性と同様であった。
【0103】
【表4】

【0104】
(実施例6)
本発明によるペプチド3およびペプチド4をインビボでも試験し、尿路感染に対するその作用を示した。
【0105】
イー・コリ O6K5をマウスの膀胱中へ注入した。注入の30分間後、表5に特定した種々異なる薬剤をマウス1匹当たり500μgの量にて経口投与し、注入の24時間後に膀胱および腎臓に存在する細菌の個数(CFU)を測定した。結果を表5に示す。
【0106】
比較群は実験Iにて10匹の動物で構成し、実験IIでは23匹の動物で構成した。比較群における各動物には、ペプチドもしくはhLFの代わりに水道水を与えた。
【0107】
【表5】

【0108】
実験IIからの結果を図1にも示す。
【0109】
すなわち、本発明による各ペプチドは腎臓における細菌数を減少させることができる。
【0110】
(実施例7)
この実施例においては、本発明による各ペプチドの殺細菌および殺真菌活性をEP−A−0 629 347号に記載された各ペプチドと比較すべくインビトロ試験を行った。使用した本発明によるペプチドはペプチド4とし、EP−A−0 629 347号による各ペプチドはモリナガ10、モリナガ11、モリナガ12およびモリナガ13とした。
【0111】
各ペプチドをイー・コリ O14およびカンジダ・アルビカンスと共に培養した。C.アルビカンス酵母細胞の濃度を試験し、1ml当たり5・106および5・103であった。種々異なる濃度のペプチドを試験した。
【0112】
培養の後、各試料を細菌塗沫につき採取した。10倍工程のシリーズ希釈を表5におけるIで標識した実験に使用し、各実験における2倍工程のシリーズ希釈物はIIで標識した。
【0113】
細菌の100%を死滅させるのに要する種々異なる薬剤の濃度を表6に示す。
【0114】
【表6】

【0115】
表6から明らかなように、本発明によるペプチドはEP−A−0 629 347号に記載された短いペプチドおよび人ラクトフェリンよりもずっと効率的な殺細菌剤である。
【0116】
(実施例8)
本発明によるペプチド2、ペプチド3、ペプチド4およびペプチド7の殺真菌活性および抑制活性を、本発明によるペプチドに最も類似するEP−A−0 629 347号に記載されたペプチド、すなわちモリナガ21およびモリナガ15と比較した。
【0117】
キャンジダ・カルビカンスATCC 64549(1・105/ml)をペプチドの存在下に2時間にわたり37℃にて希釈増殖培地(BHI、50μg/mlから出発する2倍シリーズ希釈)で培養した。殺真菌活性は、各培養ウェルからの5μlをサボラウド寒天プレートで培養することにより測定した。細菌の100%を死滅させるのに要する異なる薬剤の濃度を表7に示す。
【0118】
増殖の抑制を20時間の培養後に分光測定した。増殖抑制につき必要とされる薬剤の濃度を表7に示す。
【0119】
【表7】

【0120】
この実施例は、本発明によるペプチドにペプチド3およびペプチド4が線状ペプチドであるモリナガ24よりも殺真菌および抑制活性に関し一層効率的であると共に、本発明によるペプチド7が真菌類の増殖に関しずっと良好な殺真菌剤および抑制剤であることを示す。
【0121】
(実施例9)
さらに本発明によるペプチド2、ペプチド3、ペプチド4およびペプチド7の殺細菌活性および抑制活性をモリナガ24およびモリナガ25の活性と比較した。
【0122】
イー・コリ O14を上記したと同様に各ペプチドの存在下に2時間にわたり培養した。殺細菌活性は上記と同様に測定した。細菌の100%を死滅させるのに要する種々異なる薬剤の濃度を表8に示す。
【0123】
増殖の抑制は20時間にわたる培養の後に分光測定した。増殖の抑制につき必要とされる薬剤の濃度を表8に示す。
【0124】
【表8】

【0125】
この実施例は、本発明によるペプチド2、ペプチド3およびペプチド4がモリナガ24およびモリナガ25とほぼ同じである殺細菌および抑制作用を有するが、ペプチド7は細菌の増殖抑制に関しずっと効率的であることを示す。
【0126】
(実施例10)
この実施例においては本発明による各ペプチドの殺微生物および制細菌活性を試験し、2種の比較ペプチドと比較した。
【0127】
それぞれC.アルビカンス(ATCC64549)およびイー・コリ O6を種々異なるペプチドと共に培養した。各実験は1、10、25および100μg/mlのペプチドを用いて行った。結果を表9に示す。
【0128】
【表9】

【0129】
表から明らかなように、本発明による各ペプチドは極めて良好な殺微生物活性および制微生物活性を有し、ただし最も短いペプチドであるペプチド40および最も長いペプチドであるペプチド33は他のペプチドと同様な良好な結果を与えない。
【0130】
(実施例11)
この実施例においては、C.アルビカンスの死滅およびC.アルビカンスの増殖抑制に対する本発明による各ペプチドの活性を検討した。
【0131】
C.アルビカンス酵母細胞(ATCC 64549)を2時間にわたりpH4.5にて、25μg/mlのペプチドを含有する初期濃度の1%まで希釈されたBHI培地にて培養した。その後、真菌溶液を血液寒天プレートで培養した。OD650を、さらに18時間にわたる培養の後に測定した。
【0132】
C.アルビカンスに対する各ペプチドの殺真菌効果をそれぞれ真菌の100%および99%を死滅させるペプチドの能力として決定しする一方、増殖抑制効果はOD650を測定して決定した。OD650における増加が記録されない場合、抑制作用が存在した。その結果を表10に示す。
【0133】
【表10】

【0134】
表から明らかなように、本発明によるペプチド、特にペプチド46、48、50、51および57はC.アルビカンスの死滅および増殖抑制に対し比較ペプチドよりも良好な効果を有する。
【0135】
(実施例12)
この実施例においては、本発明による各ペプチドを用いて種々異なる細菌の死滅に対する効果を検討した。使用した異なる細菌を表11に示す。
【0136】
各ペプチドは25μg/mlの濃度にて使用した。
【0137】
結果を表11に示す。
【0138】
【表11】

【0139】
表から明らかなように、本発明によるペプチド、特にペプチド46〜62は細菌の死滅に対し極めて良好な効果を有するが、最も短いペプチドであるペプチド40および最も長いペプチドであるペプチド33は他のペプチドと同様に良好な結果を与えない。
【0140】
(実施例13)
この実施例においては、異なるpHにてC.アルビカンスの99%を死滅させるための本発明による3種のペプチドにつき必要とされる濃度を比較ペプチドと対比した。本発明によるペプチドはペプチド2(線状)、ペプチド3(環式)、ペプチド4(線状)、ペプチド5(環式)およびペプチド7(ラクタム架橋)とし、全てをキャップした。使用した比較ペプチドはモリナガペプチド、すなわちモリナガ24および25の非キャップド環式型および非キャップド線状型とした。その結果を図2に示す。図から明らかなように、キャップド線状ペプチド3および4,並びにラクタム架橋含有ペプチド7は本発明によるキャップド環式ペプチドよりも良好な効果を有し、さらに本発明による全てのキャップド線状ペプチドはペプチド7の他に線状および環式非キャップド比較ペプチド(モリナガ24および25)よりもpH4.5にて良好な効果を有する。全ての異なるpHにて最も効果的なペプチドはペプチド7であった。
【0141】
(実施例14)
この実施例においては、胃内のC.アルビカンス集落化の防止を、マウスに経口的に人ラクトフェリン(hFL)、SEQ.ID.NO.3を有するペプチドおよびSEQ.ID.NO.4を有するペプチドを投与することにより検討した。C.アルビカンスの108の投入量をマウスに胃内投入した。3日間の後、hLFもしくはペプチドを3日間にわたり1日2回ずつ(全部で1日当たり1mg)投与し、4日目にマウスを殺した。胃におけるC.アルビカンスの個数をコロニー形成単位(1ml当たりのCFU)の培養および計数により測定した。結果を図3に示す。これら結果から明らかなように、各ペプチドは胃内のC.アルビカンスの増殖を効果的に減少させる。
【0142】
(実施例15)
この実施例においては、マウスにおける実験的結腸炎に対する本発明による各ペプチドの抗炎症作用を検討した。急性結腸炎を、飲料水(アドリブ)を介しデキストランサルフェート(5%)を与えることにより、C57B1/6Jマウスにて誘発させた。ペプチド3およびペプチド4,並びに人ラクトフェリン(hLF)をマウスにデキストランサルフェート処理の開始時点で経口投与した。各動物を2日目に殺した。
【0143】
本発明による各ペプチドで処理されたマウスの糞における血液は、処理の2日後に水処理比較群と対比して、より少ない動物にて生じたことが判明した(図4Aに示す)。
【0144】
本発明による各ペプチドが抗炎症性であるという事実の他の示唆は、本発明により処理されたマウスからの血清に存在する炎症性サイトキンIL−1βの減少濃度(これを図4Bに示す)および肛門出血の発生減少である(図4Cに示す)。
【0145】
結腸における炎症の他の測定は結腸長さであり、短くなった結腸は炎症の誘発である。図4Dに示されるように、本発明により処理されたマウスの結腸は比較群におけるマウスの結腸よりも長かったことが判明した。
【0146】
その後、マウスからの遠位結腸の組織セクションにおけるCD8−およびMHCクラスII−陽性細胞の個数を検討し、その結果を図5に示す。図5Aから明らかなように、本発明の各ペプチドで処理されたマウスからの遠位結腸の組織セクションにおけるCD8−陽性T−細胞の個数は水処理された比較群の場合よりも顕著に低い。
【0147】
図5Bから明らかなように、本発明による各ペプチドで処理されたマウスからの遠位結腸の組織セクションにおけるMHCクラスIIを発現する細胞(マクロファージ、デントリチックス細胞およびB細胞)の発生は未処理比較群の場合よりも高く、急性結腸炎を持たない健康動物のそれと同様であった。これら結果は、本発明による各ペプチドで処理されたマウスがその局部的細胞反応を減少もしくは遅延させることを示す。
【0148】
従って本発明による各ペプチドは、炎症自身および臨床的徴候を減少させるのに効果的である。
【0149】
(実施例16)
この実施例においては、本発明による各ペプチドの1種、すなわちSEQ.ID.NO.7を有するペプチドの殺真菌活性を慣用の抗真菌剤フルシトシンおよびフルコナゾール並びに人ラクトフェリン(hLF)と比較した。抗真菌剤は2x105細胞/mlの濃度にてC.アルビカンス(ATCC 64549)につき試験した。各試験は1/100希釈されたBHI培地で行った。結果を表12に示す。
【0150】
【表12】

【0151】
表12における結果から明らかなように、本発明によるペプチドは他の物質よりも明らかに効果的である。
【0152】
(実施例17)
この実施例においても、本発明による各ペプチドの1種(今回はSEQ.ID.NO.4を有するペプチド)を慣用の殺真菌剤アンフォテリシンと比較した。C.アルビカンスに対する抗真菌活性を検討した。20μg/mlの出発濃度にて2倍シリーズ希釈物を使用した。1/100希釈されたBHIを増殖培地として使用した。
【0153】
【表13】

【0154】
表13から明らかなように、本発明によるペプチドの活性は慣用の殺真菌剤に匹敵する。
【0155】
(実施例18)
この実施例においては、本発明による各ペプチドの2種の殺細菌活性を多耐性S.アウレウスでの試験にて検討した。1ml当たり5.0x105 S.アウレウス細菌の濃度を有する細菌溶液を使用した。細菌の99%を死滅させるのに要する各ペプチドの濃度(MMC99%)を37℃における培養の2時間後および24時間後に測定した。結果を下表14に示す。
【0156】
【表14】

【0157】
(実施例19)
この実施例においては、本発明による各ペプチドの3種の殺細菌活性をS.アウレウスの比較菌株での試験にて検討した。1ml当たり5.0x105 S.アウレウス細菌の濃度を有する細菌溶液を使用した。細菌の99%を死滅されるのに要する各ペプチドの濃度(MMC99%)を37℃における培養の2時間後に測定した。試験した最小濃度は6.25μg/mlであった。その結果を下表15に示す。
【0158】
【表15】

【0159】
(実施例20)
この実施例においては、SEQ.ID.NO.46を有するペプチド、すなわちC−F−Q−W−Q−R−N−M−R−K−V−Rの、いわゆるアラニンスキャンを行った。このアラニンスキャンにおいて、各アミノ酸を次いでアラニンで置換して下表16に示すペプチドを得た。
【0160】
【表16】

【0161】
(実施例21)
この実施例における各実験のそれぞれにおいて、SEQ.ID.NO.46を有するペプチドにおける位置4、6、8および9のアミノ酸の1種を同様なアミノ酸により置換した。実験1において位置4おけるトリプトファンはロイシンにより置換し、実験2において位置6におけるアルギニンはリジンにより置換し、実験3において位置8におけるメチオニンはロイシンにより置換し、実験4においては位置9におけるアルギニンはリジンにより置換した。得られたペプチドを表17に示す。
【0162】
【表17】

【0163】
(実施例22)
この実施例における各実験において、SEQ.ID.NO.46を有するペプチドにおける位置5、6および7のアミノ酸の1種を陰帯電アミノ酸により置換した。実験1においては位置5におけるグルタミンをグルタミン酸により置換し、実験2においては位置6におけるアルギニンをグルタミン酸により置換し、実験3においては位置7におけるアスパラギンをグルタミン酸により置換した。得られたペプチドを表18に示す。
【0164】
【表18】

【0165】
(実施例23)
この実施例における各実験においては、SEQ.ID.NO.46を有するペプチドにおける中性アミノ酸を陽帯電アミノ酸または中性アミノ酸のいずれかで置換した。実験1においては位置5におけるグルタミンをオルニチンにより置換し、実験2においては位置5おけるグルタミンをノルロインにより置換し、実験3においては位置7におけるアスパラギンをオルニチンにより置換し、実験4においては位置7におけるアスパラギンをノルロイシンにより置換した。得られたペプチドを表19に示す。
【0166】
【表19】

【0167】
(実施例24)
この実施例の各実験においては、SEQ.ID.NO.46を有するペプチドにおける1種もしくは数種のアミノ酸を他のアミノ酸により置換した。実験1においては位置5におけるグルタミンをリジンにより置換し、実験2においては位置5におけるグルタミンをリジンにより置換すると共に位置7におけるアルギニンをアラニンにより置換し、実験3においては位置3におけるグルタミンをアラニンで置換すると共に位置5におけるグルタミンをリジンにより置換し、実験4においては位置3におけるグルタミンおよび位置7におけるアスパラギンをアラニンにより置換し、実験5においては位置4におけるトリプトファンをロイシンにより置換すると共に位置6および位置9におけるアルギニンをリジンにより置換し、実験6においては位置3におけるグルタミンおよび位置7におけるアスパラギンをアラニンにより置換し、位置4におけるトリプトファンをロイシンにより置換し、さらに位置5におけるグルタミン、並びに位置6および9におけるアルギニンをリジンにより置換した。得られたペプチドを表20に示す。
【0168】
【表20】

【0169】
(実施例25)
この実施例においては、実施例18〜21にて得られた種々異なるペプチドの殺真菌効果および殺細菌効果を検討した。それぞれC.アルビカンス、イー・コリおよびS.アウレウスを、約6.7〜6.9のpHを有する1/100希釈されたBHI培地で培養した。微生物の99%を死滅させるのに要する各ペプチドの濃度(MMC99%)を測定した。結果を下表21に示す。
【0170】
【表21】

【0171】
(実施例26)
この実施例においては、実施例22にて得られた種々異なるペプチドの殺真菌効果および殺細菌効果を検討した。それぞれC.アルビカンス、イーコリおよびS.アウレウスを、約6.7〜6.9のpHを有する1/100希釈されたBHI培地で培養した。微生物の99%を死滅させるのに要する各ペプチドの濃度(MMC99%)を測定した。結果を下表22に示す。
【0172】
【表22】

【0173】
(実施例27)
この実施例においては、本発明による各ペプチドの3種の殺真菌活性を検討すると共に、3種の異なる真菌類に対し試験した。真菌類を1/100希釈されたBHI培地にて培養した。真菌類の99%を死滅させるのに要する各ペプチドの濃度(MMC99%)を決定した。結果を下表23に示す。
【0174】
【表23】

【0175】
(実施例28)
この実施例においては、本発明による各ペプチドの8種の殺微生物活性を検討すると共に、イー・コリ O6K5およびC.アルビカンスに対し試験した。
【0176】
この実施例においては、SEQ.ID.NO.55を有するペプチドを使用し、これは上記したものでない。このペプチドはSEQ.ID.NO.7を有するペプチドの改変物であり、位置9におけるAspがGluで置換されたものである。
【0177】
微生物の99%を死滅させるのに要する各ペプチドの濃度(MMC99%)を測定した。結果を下表24に示す。
【0178】
【表24】

【0179】
表21〜24の結果の結論は、ペプチド配列を幾つかの位置にて改変させることができ、それにより天然配列と比較して殺微生物活性を増大もしくは保持しうる点である。さらに、これら改変配列は各ペプチドを合成するためのコストを軽減させる。アミノ酸を一層良好または等しい結果を持って変化させうる位置は、SEQ.ID.NO.99にてXaaで示した位置である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20Cys−Phe−X−X−X−X−X−X−X−Lys−Val−Arg31(SEQ.ID.NO.99)を含有するペプチドであって、ここでXがGlnもしくはAlaであり;XがTrpもしくはLeuであり;XがGln、Lys、Orn、AlaもしくはNleであり;XがArg、LysもしくはAlaであり;XがAsn、Orn、AlaもしくはNleであり;XがMetもしくはLeuであり;およびXがArgもしくはLysであり、且つ該ペプチドは、SEQ.ID.NO.2−5,8,31−32,34−38,47,49,51,63,65,67,70、72−76および80−83、および87−97から選択されるペプチド。
【請求項2】
SEQ.ID.NO.2、37および93からなる群から選択される請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
SEQ.ID.NO.70、72−76および80−83、および87−97からなる群から選択される請求項1記載のペプチド。
【請求項4】
SEQ.ID.NO.8、31−32,34−38、47、49、51、63、65および67からなる群から選択される請求項1記載のペプチド。
【請求項5】
SEQ.ID.NO.2−5からなる群から選択される請求項1記載のペプチド。
【請求項6】
20Cys−Phe−X−X−X−X−X−X−X−Lys−Val−Arg31(SEQ.ID.NO.99)を含有するペプチドであって、ここでXがGlnもしくはAlaであり;XがTrpもしくはLeuであり;XがGln、Lys、Orn、AlaもしくはNleであり;XがArg、LysもしくはAlaであり;XがAsn、Orn、AlaもしくはNleであり;XがMetもしくはLeuであり;およびXがArgもしくはLysであり、且つ該ペプチドは、SEQ.ID.NO.2、4−5,8,31−32,34−38,47,49,51,63,65,67,70、72−76および80−83、および87−97から選択され、且つ該システインはアセタミドメチル−システインにより置換されるペプチド。
【請求項7】
20Cys−Phe−X−X−X−X−X−X−X−Lys−Val−Arg31(SEQ.ID.NO.99)を含有するペプチドであって、ここでXがGlnもしくはAlaであり;XがTrpもしくはLeuであり;XがGln、Lys、Orn、AlaもしくはNleであり;XがArg、LysもしくはAlaであり;XがAsn、Orn、AlaもしくはNleであり;XがMetもしくはLeuであり;およびXがArgもしくはLysであり、且つ該ペプチドの配列は、SEQ.ID.NO.70、72−76および80−83、および87−97から選択され、且つこのアミノ酸末端をアミノ酸配列Thr−Lysあるいはアミノ酸配列Glu−Ala−Thr−Lysにより進められるペプチド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のペプチドを含む薬用製品。
【請求項9】
感染および/または炎症の処置および/または予防のための請求項8に記載の薬用製品。
【請求項10】
尿路感染の処置および/または予防のための請求項9に記載の薬用製品。
【請求項11】
結腸炎の処置および/または予防のための請求項9に記載の薬用製品。
【請求項12】
粘膜におけるカンジダ感染の処置のための請求項9に記載の薬用製品。
【請求項13】
経口投与につき処方される請求項8〜12のいずれか一項に記載の薬用製品。
【請求項14】
非経口投与につき処方される請求項8〜12のいずれか一項に記載の薬用製品。
【請求項15】
局所投与につき処方される請求項14に記載の薬用製品。
【請求項16】
粘膜への投与につき処方される請求項8〜15のいずれか一項に記載の薬用製品。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のペプチドを含む食料品。
【請求項18】
幼児配合食品である請求項17に記載の食料品。
【請求項19】
感染および/または炎症の処置および/または予防のための薬用製品を製造する請求項1〜7のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項20】
薬用製品が尿路感染の処置および/または予防を意図する請求項19に記載の使用。
【請求項21】
薬用製品が結腸炎の処置および/または予防を意図する請求項19に記載の使用。
【請求項22】
薬用製品が粘膜におけるカンジダ感染の処置を意図する請求項19に記載の使用。
【請求項23】
薬用製品が経口投与につき処方される請求項19〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
薬用製品が非経口投与につき処方される請求項19〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
薬用製品が局所投与につき処方される請求項24に記載の使用。
【請求項26】
薬用製品が粘膜への投与につき処方される請求項19〜25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
薬用製品が食料品を構成し、または食料品に含まれる請求項23に記載の使用。
【請求項28】
食料品が幼児配合食品である請求項27に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−90162(P2010−90162A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283513(P2009−283513)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【分割の表示】特願2000−558131(P2000−558131)の分割
【原出願日】平成11年7月6日(1999.7.6)
【出願人】(507026419)ファーマサージクス イン スウェーデン アーベー (1)
【Fターム(参考)】