説明

人工大理石用材料組成物及び人工大理石

【課題】 従来は埋め立てによる廃棄処理がなされていた不燃性又は難燃性の化粧板及びその中間材料を、新たな人工大理石用材料の一成分として再使用することにより、人工大理石のコストダウンと廃棄物の減量化と資源の有効利用を図る。
【解決手段】 マトリックス樹脂と充填材とを含有する人工大理石用材料組成物であって、前記充填材の少なくとも一部は、主として熱硬化性樹脂、無機繊維布、及び、無機充填材からなる不燃又は難燃性の化粧板の粉砕物、及び/又は、前記化粧板の中間材料である芯材層用シート材料の粉砕物であることを特徴とする人工大理石用材料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築内装材、洗面化粧台、家庭用流し天板として様々な用途に使用される人工大理石用材料組成物及びこれを成形してなる人工大理石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工大理石は外観の綺麗さ、衛生性の良さから広く普及している。人工大理石はマトリックス樹脂、無機充填剤、硬化剤、効果促進剤、着色剤、流動性付与剤、その他添加剤を配合、混合した材料組成物を加熱、加圧硬化する圧縮成形法、あるいは、低圧で振動又は吸引等を行う注型成形法により得ることができる。ここで使用される無機充填剤としては、水酸化アルミニウムを主体に炭酸カルシウムなどが使用されてきた(例えば、特許文献1又は2参照。)。
これらの無機充填剤は比較的安価ではあるが、使用比率が高いことからコストに占める割合は高く,更に低価格な材料が求められていた。
【0003】
一方、オフィス、台所等の耐燃焼性の要求される内装建材用途に、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の無機水酸化物を主体とした有機−無機系の難燃ないし不燃化粧板が使用されている。
このような化粧板は、例えば以下のようにして製造される。即ち、無機水酸化物等の無機充填材とフェノール樹脂あるいはメラミン樹脂とを配合し、これをガラス不織布等の無機繊維布に含浸し、次いで乾燥して得られる芯材層用シート材料を所望する製品厚みに応じて複数枚重ね合わせ、更にシート材料の表面又は表裏面に、メラミン樹脂を化粧紙に含浸した化粧層用シート材料を重ね、加熱加圧積層成形して得られる。
【0004】
この難燃ないし不燃化粧板の製造工程で発生する不要、不良の芯材層用シート材料及び化粧板は、その性質上焼却による廃棄が困難であり、一般的には埋め立て処理されてきた。
しかしながら、年々埋め立て場が減少している現状では、埋め立て処理を続けることの困難さは明白である。
【0005】
【特許文献1】特開2002−321956号公報
【特許文献2】特開平05−230357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来は埋め立てによる廃棄処理がなされていた上記不燃性又は難燃性の化粧板及びその中間材料を、新たな人工大理石用材料の一成分として再使用することにより、人工大理石のコストダウンと廃棄物の減量化と資源の有効利用を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(3)によって達成される。
(1)マトリックス樹脂と充填材とを含有する人工大理石用材料組成物であって、上記充填材の少なくとも一部は、主として熱硬化性樹脂、無機繊維布、及び、無機充填材からなる不燃又は難燃性の化粧板の粉砕物、及び/又は、前記化粧板の中間材料である芯材層用シート材料の粉砕物であることを特徴とする人工大理石用材料組成物。
(2)上記充填材全体に対して、上記粉砕物5〜95重量%を含む上記(1)に記載の人工大理石用材料組成物。
(3)上記(1)又は(2)に記載の人工大理石用材料組成物を成形してなる人工大理石

【発明の効果】
【0008】
本発明は、マトリックス樹脂と充填材とを含有する人工大理石用材料組成物であって、上記充填材の少なくとも一部が、主として熱硬化性樹脂、無機繊維布、及び、無機充填材からなる不燃又は難燃性の化粧板の粉砕物、及び/又は、上記化粧板の中間材料である芯材層用シート材料の粉砕物であることを特徴とする人工大理石用材料組成物であり、人工大理石用材料の低コスト化と、不燃又は難燃化粧板の製造時に発生する廃棄物の再資源化を図ることができる。従って、埋め立て処理に必要な場所の確保等の問題が回避出来る。
また、本発明は、上記本発明の人工大理石用材料組成物を成形してなる人工大理石である。本発明による人工大理石は、すべての原料を通常の新規な材料で製造した人工大理石と同等の特性を有するものであり、工業的に有用な材料を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の人工大理石用材料組成物及び人工大理石について詳細に説明する。
本発明の人工大理石用材料組成物(以下、単に「組成物」ということがある)は、マトリックス樹脂と充填材とを含有する人工大理石用材料組成物であって、上記充填材は、主として熱硬化性樹脂、無機繊維布、及び、無機充填材からなる不燃又は難燃性の化粧板の粉砕物、及び/又は、上記化粧板の中間材料である芯材層用シート材料の粉砕物を含むことを特徴とする。
また、本発明の人工大理石は、上記本発明の人工大理石用材料組成物を成形してなることを特徴とする。
【0010】
まず、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物は、マトリックス樹脂と充填材とを含有する。
【0011】
本発明の組成物で用いられるマトリックス樹脂としては特に限定されないが、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂などの付加重合型の液状樹脂を用いることができる。
本発明の組成物において、マトリックス樹脂の配合割合としては特に限定されないが、組成物全体に対して、20〜50重量%とすることができる。
【0012】
本発明の組成物において用いられる充填材は、主として熱硬化性樹脂、無機繊維布、及び、無機充填材からなる不燃又は難燃性の化粧板の粉砕物、及び/又は、前記化粧板の中間材料である芯材層用シート材料の粉砕物を含むものである。
【0013】
本発明で用いられる不燃性又は難燃性の化粧板は、無機充填材と熱硬化性樹脂とを配合し、これを無機繊維布に含浸・乾燥して得られる芯材層用シート材料を所望する製品厚みに応じて複数枚重ね合わせ、更にシート材料の表面又は表裏面に、メラミン樹脂等を化粧紙に含浸・乾燥して得られる化粧層用シート材料を重ね、加熱加圧積層成形して得られるものである。
上記無機充填材としては特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカなどが挙げられる。これらの中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物を用いると、化粧板の耐燃焼性を向上させることができる。
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、フェノール樹脂、メラミン樹脂を用いると、化粧板の耐燃焼性を向上させることができる。
無機繊維布としては特に限定されないが、ガラス不織布、ガラス織布などのガラス繊維
基材が多く用いられる。ガラス不織布としては通常、坪量30〜100g/mのものが使用される。
本願発明においては、上記化粧板、及び、化粧板の中間材料である上記芯材層用シート材料のいずれをも用いることができる。そして、これらの製造工程で発生する不良品などを粉砕したものを、上記充填材として用いることができる。
これらの中でも、特に、上記芯材層用シート材料を用いると、充填材として用いる際の粉砕などを簡易に行うことができる。
【0014】
上記化粧板や芯材層用シート材料の粉砕物を得る場合は、予めこれらの材料をカッターミル、シュレッダー、シートペレタイザー等で10mm程度に裁断することが好ましい。そして、得られた裁断品は内壁をセラミックライニングされたボールミル等の粉砕機で粉砕して得ることが好ましい。ボールミルを使用する場合、装填されるボールは、セラミックボールが好ましい。
【0015】
本発明の組成物で用いられる上記粉砕物の性状としては特に限定されないが、粒径200μm以下とすることが好ましい。これにより、成形品の表面平滑性や光沢性を良好なものとすることができる。
【0016】
本発明の組成物においては、充填材として、上記粉砕物のほか、人工大理石を製造するのに通常用いられる無機充填材を用いることができる。
このような無機充填材としては特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、シリカなどを挙げることができる。
【0017】
本発明の組成物において、充填材として、上記粉砕物と、上記の無機充填材とを併用する場合、その配合比率としては特に限定されないが、充填材全体に対して、上記粉砕物を5〜95重量%とすることが好ましく、さらに好ましくは20〜80重量%である。
上記粉砕物の配合比率が上記下限値未満では、このような粉砕物を用いる効果が充分ではない。また、上記上限値を超えると、組成物の配合によっては樹脂組成物の流動性が過小となることがある。
【0018】
本発明の組成物には、以上に説明した成分のほか、成形に要する時間、製品の大きさ、型バラシまでの時間を考慮して、硬化剤及び硬化促進剤を配合し、その配合量を選択することができる。
このほか、製品外観の向上のための着色剤、抗菌性等を付与する添加剤などを適用することができる。
【0019】
次に、本発明の人工大理石について説明する。
本発明の人工大理石は、上記本発明の組成物を成形してなるものである。
本発明の人工大理石の製造方法としては特に限定されないが、例えば、上記組成物を調製・計量し、脱泡等の工程を経てスラリー状にして型に流し込み、振動又は脱気操作を行い、泡を実質的に含まない状態とした後、型内で硬化して成形することにより、堅牢な硬化物とすることができる。この後、型から取り出し、必要に応じてアフターベーキング、表面研磨等を行うことにより、本発明の人工大理石を製造することができる。
【0020】
以上に説明したように、本発明の組成物は、不燃性又は難燃性の化粧板を製造する工程で発生する不良品などの廃棄物の粉砕品を充填材として用いるものであり、人工大理石用材料の低コスト化を図ることができるとともに、上記廃棄物の再資源化を図ることができ、廃棄物の埋め立て処理に必要な場所の確保等の問題を回避することが出来る。
そして、このような組成物を成形してなる本発明の人工大理石は、通常の材料を用いて
製造した人工大理石と同等の特性を有するものである。
【実施例】
【0021】
以下、実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
[芯材層用シート材料の粉砕物の製造]
ガラス不織布に、水酸化アルミニウム92重量%、アンモニアを触媒として合成したレゾール型フェノール樹脂8重量%の配合物を塗布した。これを180℃の熱風乾燥機内で15分間処理して、ガラス不織布に対する含浸量15倍(固形分重量)の芯材層用シート材料を得た。
得られた芯材層用シート材料を約30cm幅にシャーリング機で裁断した後、シートペレタイザー(朋来社製)で10mm角程度に粗砕した。次に3〜6cm径のセラミックボール500kgを装填した、内壁をセラミックライニング処理された容量800リットルのボールミルに上記粗砕材料150kgを投入して、3時間粉砕処理後、目開き180μmの網を装着した振動篩に掛け、粉砕品の粒度200μm以下分が99重量%の芯材層用シート材料の粉砕物を製造した。
【0023】
[組成物の調製]
[実施例]
無水フタル酸、フマル酸とエチレングリコールとの重縮合により得られる不飽和ポリエステルとスチレンとの混合物からなる不飽和ポリエステル樹脂35重量部(昭和高分子社製・「リコラック」)、上記で得られた芯材層用シート材料の粉砕物35重量部、水酸化アルミニウム30重量部、硬化剤(メチルエチルケトンパーオキサイド)1重量部、硬化促進剤(ナフテン酸コバルト6重量%スチレン溶液)0.2重量部の比率で減圧下で混合、脱気して人工大理石用材料組成物Aを得た。
【0024】
[比較例]
芯材層用シート材料の粉砕物を用いることなく、水酸化アルミニウム65重量部を用いた以外は、実施例と同じ操作で人工大理石用材料組成物Bを得た。
【0025】
[人工大理石の製造]
実施例及び比較例で調製した組成物を、100×100×25mmの空隙を有する2つ割りの型に材料を注型し、常温で6時間放置後、型バラシをし、更に70℃で3時間アフターベーキングして、人工大理石を製造した。
【0026】
上記で得られた人工大理石について、特性評価を行った。
評価方法は、以下の通りである。
(1)外観:目視によりボイド、亀裂の発生のないものを良とした。
(2)熱変形試験:150℃の乾燥機内で1時間加熱処理後の変形を目視で観察し、変形か見られないものを良とした。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例は、マトリックス樹脂と、不燃性化粧板の中間製品である芯材層用シート材料の
粉砕物と、その他の無機充填材を含有する本発明の組成物である。これを成形して得られた人工大理石は、上記粉砕物を用いない従来の組成物を用いた人工大理石と比較して、同等の特性を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の組成物は、低コストで人工大理石を製造することができるとともに、不燃又は難燃化粧板あるいはこの中間製品である芯材層用シート材料の廃棄物を削減することができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂と充填材とを含有する人工大理石用材料組成物であって、前記充填材の少なくとも一部は、主として熱硬化性樹脂、無機繊維布、及び、無機充填材からなる不燃又は難燃性の化粧板の粉砕物、及び/又は、前記化粧板の中間材料である芯材層用シート材料の粉砕物であることを特徴とする人工大理石用材料組成物。
【請求項2】
前記充填材全体に対して、前記粉砕物5〜95重量%を含む請求項1に記載の人工大理石用材料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の人工大理石用材料組成物を成形してなる人工大理石。

【公開番号】特開2006−36566(P2006−36566A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216735(P2004−216735)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】