説明

人工知能の構築方法、及び、医学用グリッドコンピュータシステム、及び、生理機能医療装置

【課題】
人工知能を応用して患者を診断し、治療する場合には、生体について学習し、予測する方法が必要であった。また、医療装置の制御を行う場合、健康状態についての学習のみでなく、制御装置の効果、及び副作用における実際の誤差についても学習し、治療が正しく行えているかどうかを、自己補正する手段が必要であった。
【解決手段】
学習と予測を行うための人工知能データベースと、
グリッドコンピューティング環境と、
カルテの内容のための属性情報を入力するための入力手段と、
各種生体状況を得るための生体観測手段を備え、
前記生体観測手段から得られた生体状況と属性情報の関係要素を学習するとともに、
前記グリッドコンピューティング環境は、マザーコンピューターと通信して最新の人工知能データベースを相互補完し、
前記属性情報の内容に不明点がある場合には、
前記関係要素から不明点を予測して出力する手段を備えた
ことを特徴とした総合予測医療システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人工知能システム、及び、診断システム、及び、医療装置の制御手段、に関する。
【背景技術】
【0002】
人工知能は、神経の集合を模倣した半導体、又は大学や研究所等の設備を利用した大規模コンピューターによる演算や、或いは状況に適応した感情や思考等のプログラム開発を別々に行うことで、高度な知能を備えたコンピューターシステムである。しかしながら、設計が難しく、条件が限定されている為、医療分野や汎用コンピューター上での本格的な応用が難しかった。
【0003】
また、病院や健康診断での診察には、所見のほかに聴診器やCTスキャン等が生体の観測に用いられており、それらの装置から得られた画像、及び音波情報を元に、医師による診察が行われているが、より高度な診断システム、及び原因不明の病気を究明するために必要な観測装置等が求められている。例えば、人間の5感では診察し難い脳波、及び生体波動の場合、又は長時間の病状等の観測が必要な場合には、医師の代わりに診断できるような人工知能を備えたシステムが必要であった。
【0004】
ところで、精神病院で使われる医療装置としては電気ショック療法がある。また、光刺激や、リラクゼーション効果によって、自律神経失調症や鬱病の治療のための装置がある。また、精神医学では、精神症状の有無やその診断基準のほかに、精神分析によって精神病の診断が行われているが、現代社会に相応して原因不明の病気も多い。
【0005】
また、体の各部位における生体機能を再生させるための医療装置として、人工呼吸装置、人工蘇生装置(除細動器)、人工心臓装置、生命維持装置などがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人工知能を応用して患者を診断し、治療する場合には、生体について学習し、予測する方法が必要であった。また、医療装置の制御を行う場合、健康状態についての学習のみでなく、制御装置の効果、及び副作用における実際の誤差についても学習し、治療が正しく行えているかどうかを、自己補正する手段が必要であった。
【0007】
例えば睡眠中の脳波を、予め決められたパターンに誘導することによって、睡眠障害を治療するためには、複数の被験者から得られる膨大な脳波と時間を観測し、優勢脳波の平均的な変化に基づいて実施しなければならないが、それに対して特定の脳波をフィードバックして増幅するだけでは、効果が得られない場合があった。
【0008】
精神病の診断においても、コンピューターを用いて、いくつかの質問事項に答えるような簡単な方法では、診断の目安にはなるが、必ずしも治療が必要なケースかどうかまでを判別するに至ることはできなかった。また、精神科医によっても診断基準にバラツキがあることが問題視されており、そのため、患者はいくつかの病院を転々としなければならない場合があった。
【0009】
したがって、本発明では人工知能システム、及び、その医療システムを提供する。
【0010】
本発明者は、意外にも、人工知能において、より簡素化された構築方法を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
学習データベースのための内部記憶と、各種の観測端末と、CPU本体と、を備えたコンピュータを用いた人工知能の構築方法であって、
端末入力された各種観測データを、人工知能推論に基づいて精度変換し、該要素同士を結合リストに基づいて結合した結合要素パターンを学習するステップと、
前記精度変換と、前記結合リストと、を適宜可変して、且つ、予測精度を掛け合わせられるステップと、
前記学習データベースから予測精度を掛け合わせられて成る予測可能な観測データに対して、
観測端末から得られた観測データの要素毎に、前記学習データベースから、当該要素を一方に含む結合要素パターン群の他方の要素と、その学習値の換算比率と、からなる候補リストを抽出したのち、各候補リストから同一要素毎に前記換算比率を統計して該当確率に換算し、当該予測した要素のいずれかを端末出力するステップと、
を含む、人工知能の構築方法、
及び、
ネットワーク上のコンピュータと学習内容を相互補完する通信端末と、各種生理機能のための観測端末と、を備えたコンピューターを用いて、
医療においてあらゆる状況下の生体について学習でき、必要な学習量とその学習期間の満了に応じて利用方法を拡張する医学用グリッドコンピュータシステムであって、
端末入力された各種観測データを、人工知能推論に基づいて精度変換し、該要素同士を結合リストに基づいて結合した結合要素パターンを学習する手段と、
前記精度変換と、前記結合リストと、を適宜可変して、且つ、予測精度を掛け合わせられる手段と、
を具備したことを特徴とした医学用グリッドコンピュータシステム、
及び、
各種生理機能のための観測端末と、観測データを学習するためにマザーコンピュータに適宜送信し、且つ、最新の学習データベースを受信して更新する通信端末と、を備えたコンピュータを用いて、人工知能を形成し、必要な学習量とその学習期間の満了に応じて利用方法を拡張されるべくした生理機能医療ネットワークシステムであって、
前記学習データベースから予測精度を掛け合わせられて成る予測可能な観測データに対して、観測端末から得られた観測データの要素毎に、前記学習データベースから、当該要素を一方に含む結合要素パターン群の他方の要素と、その学習値の換算比率と、からなる候補リストを抽出したのち、各候補リストから同一要素毎に前記換算比率を統計して該当確率に換算し、当該予測した要素のいずれかを端末出力する手段、
を具備した
ことを特徴とした生理機能医療ネットワークシステム。
【発明の効果】
【0012】
高性能の人工知能システムにより、睡眠状態の脳波を矯正することができ、医療分野における神経と精神に関係する病気、ならびに症状の全般的に効果を期待することが可能であり、さらに、脳波と心肺運動等の生体バイオリズムの関係を併せて学習することで生体の各生理機能の予測と自動制御を行う人工生理機能を提供する。
【0013】
また、各医療装置の制御においては、性能が大幅に向上する。膨大な医学的実績データを同システムにより収集することで、医療装置の有効性や、診察、及び治療時において予備情報をリアルタイムに医療現場に提供(及び学習)し、ならびに特定の治療を機械化、及び自動化することができる。
【0014】
さらに、人工知能を利用して、精神病のメカニズムを解析することにより、平均的な診断基準をコンピューター上で実現できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一般的に、人間の判断能力は、過去に同じ条件下において学習された知識によって達成される。もし、そのような学習が不足していれば、もっとも類似する知識から直感による判断能力仮想的に代用すると考えられる。この手順をコンピューターの人工知能として利用するためには、人間と同じように環境属性の設定、学習内容、自己補正手段を与える必要がある。つまり、環境属性は学習するための環境を特定し、学習内容はその環境下において発生した関係要素を分析することであり、自己補正手段は、予測した値と実際の誤差を学習して補正することで、コンピューターが人間と同じ判断能力を有することができる。
【0016】
本発明の医学用グリッドコンピュータシステムにおいて、学習データベースは、特に人工知能に特化したデータベースであり、一般的な汎用コンピューター上のデータベースサーバーでも当該発明の人工知能の構築方法を用いることで実現可能である。
【0017】
しかしながら、汎用性や処理効率に問題があるため、当該アルゴリズム専用の人工知能データベースシステムを新たに発明した。さらに、当該システムはさまざまな分野へ応用するための完成度に達していると思われる。
【0018】
特に、医療分野への応用範囲は、診断装置と、各生体部位に装着して生体機能を再生させるための装置全般であり、人工呼吸装置、人工蘇生装置、人工心臓、生命維持装置等、である。また、電気刺激装置、及び低周波治療装置は、長時間使用した場合には、単調なリズムにより不快感や疲労感をもたらす場合があったが、当該システムを用いることで、優勢脳波の変化を予測し、生体の観測部位に応じて波長を変化することが可能である。
【0019】
さらに、睡眠中の脳波の異常を治療する脳波治療装置によって、精神と神経に関わる病気全般の治療に効果があると思われる。候補としては、不眠症、統合失調症、自律神経失調症、ナルコレプシー、蓄膿症、その他の慢性疾患などである。また、脳波治療装置は、意識の回復が必要な場面においては、これまで医師の呼び掛けや第三者による脳波への外部刺激に頼らざる得なかった場合にも有効であると思われる。そのため、新規の治療手段となり得るものである。
【実施例1】
【0020】
図1では、医学用グリッドコンピュータシステムの大まかな構成を示しており、表1では、各システムは所定の目的において最低必要とすべき観測装置と、及び属性情報と、及び制御可能な治療装置を示している。簡単に説明すると、人工知能システムはこれらの観測装置から生体について総合的に学習し、また被験者に関する属性情報とともに、それらの関係要素を分析することで、各システムの目的を可能とするための、言わば根となる部分を形成している。将来においては、医師の代わりに生体の異常を解析して診断すること、及び医療装置を予測された各種生理機能と対応する生体波動に基づいて制御することにより、大幅な性能向上を可能ならしめるための次世代医療コンピューターシステムにおけるオペレーション・ミドルウェアシステムとして諸々の利用方法を拡大されるものである。また、観測装置から得られる生体波動には、異常を検知できる精度の情報と、及び解析プログラムには異常を検知するための学習パターンが必然していることが前提である。つまり、診断のための要素は観測精度と学習パターンが重要であり、人工知能の設計技術として、その他の数学的計算能力や医学的専門知識とは無関係に拡張できる。また、生体波動以外では、例えば画像や3次元などからでも診断可能になると思われるが、厳密には、3次元上の臓器等の構造を人工知能推論に基づいて変換するためのデータ形式が課題として残されている。
【表1】

【0021】
人間の5感で診察した場合と比べれば、診断すべき病気の内容によっては、観測装置で検知可能なものに限られるという観点上の差異があるものの、1つの人工知能を共有するメリットは大きく、診断可能な病気を確率で示すことができるため、診断時の誤差が少ないことに加え、その目的が医療においてより大多数の判断基準、及び人体の各種生理機能を、人工知能システム上において形成し、利用することに準じているため、将来的にはシステムを取り替えることなく、さらに拡張していくことが可能であると考えられる。
【実施例2】
【0022】
人工知能システムを用いた予測方法を説明する。まず、一方の要素を検索キーとして、他方の要素リストを抽出し、それぞれ学習値を比較すればその確率を算出することができる。つまり、要素を組み合わせて(関係要素)学習したことにより、予測する段階では、他方の要素は存在しなくても良い。また、様々な尺度を用いて繰り返し学習しておけば、全体的な予測が可能である。
【0023】
具体的には、観測データとして要素Aと要素Bがあり、要素Aが2通り、要素Bが3通りの状態の変化を有した学習予測アルゴリズムにおいて、学習データベースには合計6件の固有の学習データを有し、さらに2つの要素Aの要素リストにはそれぞれ3個づつの要素Bの状態とその学習値が含まれている。つまり学習は、要素Aに要素Bを掛け合わせた分解能で観測結果(学習)が蓄積される。この学習予測の原理は、00−99までの乱数で例えると、その出現回数をカウント(学習)することにより、1ケタ目の数字と、2ケタ目の数字が各要素に相当し、一方の数字からもう一方の数字をリスト化してそれぞれの予測確率を算出することができるのと同じであるが、厳密には、各要素には因果関係や関係性(偏り)を有することにより予測の有効率に反映されるため、完全な乱数の場合には予測は成り立たない。また、生体波動として、心拍数、呼吸数、優勢脳波、の要素であれば心拍数−呼吸数、心拍数−優勢脳波、呼吸数−優勢脳波、の3通りの関係要素が成立し、このうち心拍数の要素が不明であっても、呼吸数−心拍数の関係要素から考えられる心拍数のリストを抽出して各予測確率を算出する(思考アルゴリズム)ことができるだけでなく、優勢脳波−心拍数の関係要素からも同様にして各予測確率を統計することで、予測精度を掛け合わせることができる。また、要素にはさらに時間軸も加えることもできる。実用的な人工知能としての学習データベースには、10万件以上の学習データと100万回以上の学習回数が予想される。
【0024】
一般的なデータベースの場合には、2つの要素フィールドと1つの学習値フィールドによって学習予測アルゴリズムを用いることができる。(このうち、要素フィールドの2つを組み合わせたものが主キーとなる。)また、通常は、学習データベースにおける各要素はデータ圧縮のため、別途要素リストに分離してそのインデックス(ID)番号を参照する形式でプログラム化すると良い。(なお、請求項と図に記載した学習(解析)プログラム、及び、予測プログラム、及び、学習予測プログラムは、学習予測アルゴリズムを内部プログラムに適用したものである。)
【0025】
次に、学習方法について説明する。表2は、睡眠中の脳波と、心拍数と、呼吸数と、時間経過を要素として、それぞれの関係を人工知能推論に基づいて学習するために数値変換した例である。
【表2−a】

【表2−b】

【0026】
まず、表2-aについて説明する。脳波は、δ−γ波において、それぞれの出現比率が示されている。つまり、出現比率が最も高い脳波が、優勢脳波である。脳波の検出段階においては、このような各周波数帯域の分析は存在しないため、脳波の状態が判別しやすいように人工知能推論に基づいて変換されている。
【0027】
また、経過時間、心拍数、呼吸数が第一の要素となり、学習段階で前述の脳波の状態と任意に組み合わされて(関係要素として)パターン化される。例えば、経過時間-θ波、経過時間-α波、経過時間-β波、という関係要素だけで学習した場合でも、経過時間から各脳波の出現比率を予測することができるし、そのときの呼吸数も一緒に学習するには、θ波−β波−呼吸数のような3つの関係要素や、あるいは、優勢脳波−呼吸数、でも構わないが、人間でも判別できるような関係要素であることが条件である。
【0028】
表2-bは、優勢脳波と、呼吸動作と、心拍動作の関係要素を学習するためのものである。特徴的な点は、呼吸動作と心拍動作については1回分の検知された動作を比率で示していることと、優勢脳波を要素にしているということであるが、特に問題はない。しかしながら経過時間については、呼吸動作や心拍動作との関係が殆ど無く、そのままでは予測において無効であるため、例えば呼吸動作を1回繰り返すごとに経過時間はリセットするなどして、関係性を持たせるように学習アルゴリズムを工夫すべきである。
【0029】
また、予測精度は、学習すべき要素の分解能と、関係要素の数と比例する。例えば起床後にDUMMYで示された睡眠時間を学習した要素から事後変換して加えることで、他方の要素から起床時間を予測することができるし、あるいは、比率で示される数値に小数点を加えたり、各脳波の周波数帯域をさらに詳細に小分けすることで予測精度はさらに向上するが、同時に学習が予測可能段階に達するまでの必要回数と、コンピューターの処理性能が要求される。また、逆説的に、数値を四捨五入すれば必要回数やその学習期間は短縮されるが、予測も同様に大まかなものに限られる。
【0030】
なお、総合医療予測システムでは、学習と予測に用いるための要素を、属性情報と観測データに適用する。
【実施例3】
【0031】
図2は、人工知能システムに最低必要な基本型の装置環境からなるフローチャート図を示しており、観測装置と、及び再生装置と、及び情報を入出力する端末で構成されている。
【0032】
コンピューター処理においては、入力された属性情報を記憶する内部記憶と、前記属性情報と各種観測データから関係要素をパターン化して学習するための解析プログラム、及び学習データベース、及び断片化されたパターンから予測を行う予測プログラムを有する。また、解析プログラムにおける各関係要素のパターン化において、すべての関係要素を学習すると増大し続ける処理と学習容量によってコンピューターの性能をオーバーしてしまう可能性がある場合には、最低必要な関係要素に学習を限定すべきである。(学習期間の短いものについては、関係要素を2つから3つ、又は4つに拡大して予測精度をより高くすべきである。これは、自動化しても良い。)
【0033】
また、予測に十分な学習を完了することにより、図3に示される拡張型、又は図4に示される小型コンピューターへ、システムの一部移行できる場合がある。拡張型は、基本型aを二重化した拡張型bであり、再生装置aの実効率、又は人間の判断基準、又は思考能力の結果入力のための観測装置bを備えることで、自己補正を行うことが可能となる。
【0034】
小型コンピューターは、一通りのシミュレーションを再生装置に出力するだけで行うことができる。これは、単に録音されたものを再生するのではなく、あくまで録音されたものの中からもっとも平均的なデータだけを再生するためのものである。具体的には、特定の属性情報から再生装置のシミュレーションデータを抽出するための仮想環境プログラムを用いる。また、抽出されたシミュレーションデータは、小型コンピューター上のCPUと再生装置で利用することができる。
【実施例4】
【0035】
(下記に示す人工知能システム(拡張)とは、データ分析・算出を行う媒体であり、コンピューター上で再現可能な構築方法であるから、実際には下記手順を踏むことにより人工知能システムが無くても実現可能である。

【0036】
図5は、脳波誘導における生体に必要な優勢脳波の変化から、実際に有効な脳波誘導を算出する方法であって、人工知能システムに学習させる際に、実際に分かりやすく脳波と時間軸の関係で各工程を示したものである。
【0037】
まず、時間経過における優勢脳波の変化aを一般的知識から分かる範囲で入力し、不明瞭な部分は、前後の優勢脳波同士を曲線で滑らかに結んで補い、脳波誘導パターンのプロトタイプbを作成する。
【0038】
次に、脳波誘導装置を睡眠中に試行し、このとき不快感や中途覚醒があった時は、失敗情報dとして時刻d1を記録するとともに、その時刻における波長を変更して一旦終了する。さらに、次回の試行による失敗情報d2が発生した時は、失敗情報d1より以前であればd1を、以降であればd2に対して、波長を適切に変更する。
この方法を繰り返すことで、生体に最低必要となる優勢脳波の変化を長時間導くことができる。
【0039】
また、起床直後の脳波は、まだ眠っている状態であり、適切な覚醒状態を促すために、α波より高い波長レベルによる最終的な誘導段階を設けるべきである。最終的な誘導段階では、γ波、β波、α波が満遍に刺激されるのが望ましい。
【0040】
また、脳波誘導装置による脳波への連続的な刺激は、神経的な負担となり不快感を与えるため、あまりストレスにならないように呼吸動作の間隔と同調して休止時間を設けることにより、この問題を回避する必要がある。さらに厳密には、呼吸動作が予測できない状況であれば呼吸数以下の間隔を用いる。図6は、起床時において脳波誘導を万遍に行うことにより、脳波を賦活させるための実施間隔である。睡眠時においては、レム睡眠時とノンレム睡眠時には呼吸、心拍数ともに大きく変化することも考慮しなければならない。図7は実際にこの方法を用いて導いた脳波と休止間隔の推移である。
【0041】
以上の方法を用いて人工知能システムを利用する場合においては、基本型システムの段階で、被験者から睡眠時の優勢脳波とその時刻を学習したのち、人工知能システム拡張型へ移行し、実際に脳波誘導装置を使って誘導を行いながら、被験者が不快に感じたり中途覚醒した場合には、(脳波観測と脳波誘導における作用誤差であると考えられる)誘導失敗情報として押しボタン等のスイッチを拡張型側の観測装置に備えて、自己補正しなければならない。また、予測に十分な学習が完了することによって、長時間の理想的な脳波誘導パターンとして1通り以上をシミュレーションすることが可能であり、システムを簡略化した小型コンピューターへ移行することができる。
【0042】
また、より誘導精度を高めるためには、例えば年齢別、平均睡眠時間、使用頻度などの被験者ごとの属性情報を学習要素に付加することで、予め個人差による実効率の格差を調整する方法がある。
【実施例5】
【0043】
携帯型睡眠治療システムは、仮想環境プログラムにおいて抽出された複数の睡眠誘導のためのシミュレーションデータを再生するCPU部分と、その出力部分からなり、脳波誘導に必要なパルス波の情報だけが出力される。(図4参照)
【0044】
例えば睡眠時から起床時までの優勢脳波の変化は、予測により精密に決定されており、再生されたパルス波信号を脳波誘導装置に出力することにより、特定の属性情報に対応した限定的な治療を行うことができる。
【0045】
また、脳波誘導装置は、パルス波を加工増幅し、電気刺激、音刺激、光刺激、などの複数手段を使用することができ、使用者や状況に適したものを選択できることが望ましい。
【実施例6】
【0046】
グリッドコンピューター(グリッドコンピューティング環境)を利用した場合には、例えば複数の病院に設置された診断システム(分散コンピューター)から、マザーコンピューターを利用して一元化することで学習データベースを包括的に共有することができる。厳密には、人工知能システムはマザーコンピューターだけに搭載し、分散コンピューターには端末としての機能(ユーザーインターフェース)と、学習のための観測装置から得られたデータを送信する機能と、診断(予測)のための情報を受信する機能があれば可能である。
【0047】
しかしながら、通信処理速度や学習予測に伴う処理速度を現実的なものに制限するために、分散コンピューターにおいてマザーコンピューターの有する処理を一部行うとともに、コンピューターの空き時間やタイムスケジュールを利用して通信し、マザーコンピューターとの学習データベースの整合性と相互補完を図るのが望ましい。
【0048】
例えば、日時Aと日時Bの学習データベースがあり、分散コンピューターの診断システムは日時Aと日時Bの学習データベースを結合して読み込むとともに、日時Aについては各分散コンピューターによって収集された新規な学習データベースである場合、各分散コンピューターは空き時間を利用して1台づつマザーコンピューターと通信し、日時Aの学習データベースを転送するとともに、マザーコンピューターはそれぞれの日時Aと、さらに日時Bを結合して新たに日時B'を配信することによって、学習データベースを相互補完する。また、日時Aは日時Bをさらに包容しており、日時Bと照合比較した結果を転送しても良いし、あるいは、日時Aは学習データベースとしてではなく学習前の観測データそのものを転送してマザーコンピューター上で学習データベース化して配信しても良い。
【実施例7】
【0049】
精神分析診断システムにおいては、環境属性に対応して精神病の診断に必要な関係要素を特定する。例えば、カルテの内容など、諸々の症状の有無だけでなく、家族構成、親子関係、年齢、などの精神分析に伴う関係要素などであり、医師が通常必要とする質問事項すべてに対応する。また、学習内容には、これらの関係要素について多数の被験者からの入力結果を蓄積する必要がある。具体的には、「被験者が既に診断されている病名」を関係要素として加えるとともに、多数の被験者の病名を学習することで対応した病気の判別が可能になる。また、健常者についても同様に学習しておくことで、被験者が既に診断されているか否かに関わらず、(病名を除く断片的な入力結果から)関係要素を分析することにより被験者の症状の有無や病名を予測することができる。
【0050】
また、自己補正手段はそれらの予測精度を柔軟に高くするための手段であり、予測(1次学習予測)と実際の誤差を新たに学習して自己補正(2次学習予測)を加えることにより、人間の思考能力により近い人工知能を実現するためのものである。例えば、1次学習予測では直接的な診断を行わずに、診断材料となる精神分析的(専門的)な関係要素のみに留め、2次学習予測でそれらの因果関係と併せて診断することにより、専門医と同じ知識レベルで学習予測することができるだけでなく、その結果得られる複雑な因果関係からも学習予測することができる。つまり、診断基準に係る同等の中間処理を有するため、カルテの自動作成なども行うことができる。(なお、2次学習予測からさらに簡単な文体を構築するような特別なプログラムも必要である。)
【0051】
2次学習予測には、精神医学的な診断基準だけでなく、医学全般や、原因不明の病因についての多角的な分析作業、医療装置に対する学習制御(予測)、にも適用することができる。制御の場合には、新規の病気に対する医療装置の自動適応化、医療装置の機種(性能)などの変更に伴う自動適応化、機種間(生体観測装置と対応する生体医療装置を含む)の互換性のために専門化された制御用のバイオステータス、などが挙げられる。
【0052】
また、2次学習予測側は必然的に処理量が少なく、また、1次学習予測との並行処理が望ましいため、人工知能システムとしてはそれぞれ独立した学習データベースと学習予測処理(アルゴリズムを含む)が行えるようなマルチタスクを適用したものが望ましい。
【実施例8】
【0053】
一般的に、精神医学による精神分析の方法や診断基準は、ユングや、ブロイラーを始めとした心理学者によって体系化されたものを継承している。しかしながら、このような理論は時代的に古く、現代医療においてもそのままでは通用できない場合があり、精神科医によっても診断基準のバラツキが見受けられる場合がある。
【0054】
そこで、コンピューターを用いた精神分析では、現代社会に通用できるような諸々の事項を新たに抽出して診断を行うべきである。具体的には、人工知能において、被験者の置かれている環境を多角的に分析するための関係要素の決定が重要であり、その内容によっては、現代の精神医療を上回る診断能力を有することができるからである。
【0055】
基本的には、病気を少しでも特定できそうな諸々の尺度を用いて多角的に分析するとともに、特に関係性の高い要素についてはその分解能を高くするために、より微分化された要素に分割することで、より大多数の臨床成績と現代的な解析方法によって、診断基準を導くことができると思われる。また、プロトタイプの初期の尺度については、生活環境、人体、精神、の各概念について、さらにそれぞれの入出力とその内部構成に対応するような9つの要素から、関係性の高い要素を下位概念化によって拡大していくことが望ましい(逆に関係性のないものは排除可能)。環境では、対人関係や生活物品の変化、それらに対する期待、同居人や友人の状況、人体では、食事、運動、体格など、であり、精神では、教育、性格、知覚、などがそれに相当すると思われる。(また、この方法は精神医学の診断基準を導くだけでなく、万物の学習予測に応用することができるため、特に人工知能システムの学習予測アルゴリズムにおいては関係要素の設計方法として必須となる。)
【0056】
プロトタイプからより発展した具体的な項目には、自覚症状の有無に加えて、生活環境、友人関係、健康状態、心理的興味、宗教・心理学の6方面から、10個づつの関係要素を有する例では、被験者は60件の質問事項に回答することで相当の精神分析診断システムを構築することが可能である。具体的には、生活環境においては住居の種別、その町の人口、職業、同居者、環境騒音の有無、生活費、などの生活に直接的な要素、友人関係は、友人の数、関係内容、性別、などの親子関係以外の思想保持者との関係要素であり、健康状態は、睡眠時間や起床時間、食事の回数とその内容、過去の病歴、民間療法の有無、親戚に同じような病気の人がいないかなどの遺伝的要因の有無、などの健康に直接影響する要素であり、心理的興味は、今読んでいる雑誌や小説などの文学、漫画、ニュースや新聞などで気になった事件、良く見るテレビ番組、などの思想的立場を構成する要素であり、宗教・心理学は、心理学や催眠術の知識の有無、神仏に対する信憑性の有無、宗教の有無、それらの実践の有無、などのアイデンティティの理解度を構成する要素が挙げられる。(また、精神医療における被験者のカルテの内容から、出現率の高い単語をキーワードとして抽出し、それに対応する質問事項を予めリスト化しておくことでも精神分析に必要な関係要素を構築することもできる。しかしながら、この方法を用いた場合には精神科医の質問内容に影響を受けたことによる患者の返答内容も含まれてしまうことが考えられるので、あくまでプロトタイプの診断システムにとどめておくべきである。)
【0057】
また、精神分析診断システムは、基本的に文字情報のみで生体観測装置を必要としないため、インターネット上のサーバーでも実現可能であると思われる。あるいは、検出された脳波との関係要素も併せて学習予測を行うことで、脳波と諸々の要素との関係を解析することができるため、より現実的な精神病の診断方法としても利用することができる。
【実施例9】
【0058】
実施例4では、複数の要素からそれぞれの組み合わせによって関係要素を抽出し、学習することで、要素が断片的であった場合でも他方の要素を予測できるということを説明した。また、自己補正のための手段として予測された値と、実際の誤差を検出して学習することにより補正する方法も既に説明した。
【0059】
予測精度については、予め決定した関係要素の分解能(学習精度)に依存するため、あまり精度を高くすると予期しない学習量のためにコンピューターの処理能力をオーバーしてしまう問題があり、そのため該分解能の決定に際し、想定される学習量を算出する必要があった。
【0060】
これを解決するための方法として、学習値が一定以上になった場合には自動的に分解能を高くする方法が挙げられる。通常の学習予測における関係要素は、2つの要素の組み合わせで十分であるが、予め複数の関係要素を同時に処理することで、要素数を2つから3つに拡大可能とし、相互に分解能を掛け合わせることにより、学習値が十分なものについて自動化することができる。
【0061】
例えば要素数が10個であれば、最初の1要素と、他方の要素を順次組み合わせることで合計9個の関係要素を学習し、さらに学習が十分なものについては該関係要素に加えて、他方8個の要素すべてを3つめの要素として処理を拡大する。厳密には、分解能が低い場合には学習回数(学習値)の増加率も高くなるはずであるから、一定を超えたものについては検出する。学習、予測、のいずれにおいても同様に処理を拡大可能としなければならない。
【実施例10】
【0062】
生体の各部位に流れるインパルス(微弱電気)と、該部位の実際の動き(反応)との関係性を学習することにより、末梢神経としての機能を有する人工神経システムを実現することができる可能性がある。例えば、中指を動かした場合には人差し指や薬指も一緒に動いたりするが、これは神経に流れるインパルスが特定の神経のみには流れずに、神経同士にある程度の関係性を有したまま反応しているためと考えられる。つまり、この関係性を学習して分析することにより、特定部位の反応を、関係性の高い部位のインパルスから予測することができると思われる。例えば、筋電義肢などに用いることで、特別な訓練をしなくてもすぐに利用することができる。
【0063】
また、運動神経だけでなく、器官、及び、脊髄にも適用して末梢神経全体の機能を学習予測することができると思われる。
【実施例11】
【0064】
学習すべき内容が、自然現象ではなく人為的なものの結果である場合には、学習回数値から予想外の結果を招くことがある。それは、学習内容において、時代や時間経過による変化を伴う要素が混入しているからであり、そのような場合には一定回数を超えた学習内容は消去されるようなカウント方式が望ましい。
【0065】
具体的には、1回の学習値を正負のビットで表現し、ビットシフトして挿入することで一定回数を超えた古い学習値はオーバーフローにより無効となる方法を用いると良い。ただし、学習値と反対の値も追加する必要がある。例えば、1つの要素にA、B、C、という3通りの変化がある場合、Aを学習するときには2回分の正の値と、さらに、BとCに1回分づつの負の値、の計4回分をカウントすることによりバランスを取らなければならない。変化が2通りであれば単純にそれぞれが正負1回分に対応する。(厳密には、変化が3通り以上であっても、複数の要素に2、3、づつに微分することができる。)また、実際の学習値についても、正負の合計値から算出すべきであるから、初期値においてビットがすべて0か1のいずれかであれば偏りが生じていることになるため、1と0のバランスを取らなければならない。例えば2進数で「10101010」のような1と0を交互に織り交ぜた場合、3回連続して負を学習することにより「01010111」というようになる。つまり、初回から8回分までの学習時毎に、±1の誤差が交互に発生することになる。これをさらに予防する方法としては、例えば32ビットのようにすれば精度的には問題はなくなる。あるいは、ビットシフトによる学習値のほかに、有効なビットを特定するための学習回数を一緒に設けて学習値の読み出しに反映することで解決することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
人工知能システムは、観測装置を備えたコンピューターであれば利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】総合医療システムの大まかな構成を示した図である。
【図2】人工知能システムの基本型における内部フローチャートを示した図である。
【図3】人工知能システムの拡張型における内部フローチャートを示した図である。
【図4】人工知能システムを小型コンピューターへ移植する例を示した図である。
【図5】睡眠時脳波誘導算出方法を示した折れ線グラフ図である。
【図6】起床時における脳波賦活方法を示したグラフ図である。
【図7】実際に睡眠時の脳波を誘導することができる折れ線グラフ図である。
【符号の説明】
【0068】
100 コンピューター
110 人工知能システム
111 学習データベースa1
112 学習データベースa2
113 学習データベースb
120 アプリケーション
121 属性情報
122 解析プログラム
123 予測プログラム
124 仮想環境プログラム
200 観測装置
300 入力端末
310 脳波観測装置
320 心拍観測装置
330 呼吸観測装置
390 その他観測装置
400 再生装置
410 脳波誘導装置
411 光刺激装置
412 電気刺激装置
420 生命維持装置
430 除細動器
490 その他医療装置
500 出力端末
600 マザーコンピューター
900 小型コンピューター
910 CPU、又はマイコン
990 記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上のコンピュータと学習内容を相互補完する通信端末と、各種生理機能のための観測端末と、を備えたコンピューターを用いて、
医療においてあらゆる状況下の生体について学習でき、必要な学習量とその学習期間の満了に応じて利用方法を拡張する医学用グリッドコンピュータシステムであって、
端末入力された各種観測データを、人工知能推論に基づいて精度変換し、該要素同士を結合リストに基づいて結合した結合要素パターンを学習する手段と、
前記精度変換と、前記結合リストと、を適宜可変して、且つ、予測精度を掛け合わせられる手段と、
を具備したことを特徴とした医学用グリッドコンピュータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−195994(P2007−195994A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43059(P2007−43059)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【分割の表示】特願2006−141046(P2006−141046)の分割
【原出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(305049399)
【Fターム(参考)】