人工関節円板器官及び脊椎すべり症の治療法
【解決手段】 脊椎分離症の椎間空間へ挿入するための人工器官が提供されている。この人工器官は、第1椎骨に対して縦方向に挿入する際に第1椎骨と縦方向に係合させるための第1フランジを有する第1要素と、第2椎骨に対して縦方向に挿入する際に第2椎骨と縦方向に係合させるための第2フランジを有する第2要素と、を含んでいる。第1及び第2要素の一方には突起部が、他方には陥凹部があり、突起部と陥凹部は互いに係合するようになっている。突起部と陥凹部の一方が他方に対してオフセットしており、それによって第1及び第2椎骨の間の脊椎分離症の関係に対応している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、整形外科並びに脊椎外科処置の分野に関し、また、本開示内容は、いくつかの実施形態では、自然の椎間板との全体的又は部分的交換に使用される椎間板人工関節器官、及びそれと共に使用される方法と工具に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2003年2月12日出願の米国仮特許出願第60/446,963号の恩典を主張する。また、全ての順法的目的のため同米国仮特許出願第60/446,963号を参考文献として本願に援用する。
【0003】
脊椎運動体節に影響を及ぼす、特に円板組織に影響を及ぼす、疾病、傷害、又は奇形を治療する場合、従来から、変形した、裂けた、或いはその他不具合の生じている円板の一部又は全部を除去することが知られている。椎間円板組織が脊椎運動体節から取り除かれ或いは何らかの事由でそこに存在していない場合、取り除かれた円板組織によって以前は分離されていた椎骨間の正しい間隔を確保するために矯正の対策が講じられる。
【0004】
或る場合には、2つの隣接する椎骨が、移植した骨組織、人工融合構成材、又はその他の構造又は装置を使って一体に融合される。しかしながら、脊椎融合処置では、椎間融合の生体力学的硬直性によって、隣接する脊椎運動体節の急速な悪化を招き易いことが医学界で懸念されている。より具体的には、自然の椎間円板とは異なり、脊椎融合では融合された椎骨同士が互いに軸回転及び回転することが妨げられる。このように運動性を欠くことにより、隣接する脊椎運動体節の応力が増すことになる。
【0005】
更に、隣接する脊椎運動体節に、円板変性、円板ヘルニア形成、不安定性、脊椎狭窄、脊椎症、面関節炎を含む各種症状が起き易くなる。その結果、多くの患者で、脊椎融合の結果として更に円板を取り除くこと、及び/又は別の種類の外科処置が必要となってくる。従って、脊椎融合に代わる方法が望ましい。特に、本開示内容は、側方進入法によって挿入することのできる関節式人工円板器官に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
脊椎分離症を患う一対の椎骨の間に画定された椎間板空間へ縦方向に挿入するための人工装置が提供されている。この人工装置は、第1支承面に沿って縦方向に伸張する第1フランジと、第1関節面から伸張している突起部とを備えた第1要素を含んでおり、この突起部は第1関節面に対してオフセットしている。この人工装置は、第1要素と係合するようになっている第2要素を更に含んでおり、この第2要素は、第2要素が第1要素と係合すると第1フランジと実質的に整列することになる第2支承面に沿って縦方向に伸張する第2フランジと、第2関節面に形成された陥凹部とを備えており、この陥凹部は第2関節面に対してオフセットしていて、これにより第1椎骨とこれに隣接する第2椎骨の間の脊椎分離症の関係に対応するように構成されている。突起部と陥凹部は互いに係合して第1要素と第2要素の間に関節運動を提供する。
【0007】
別の実施形態では、椎間空間へ挿入するための人工装置が提供されている。この人工装置は、第1椎骨に縦方向に挿入する際に縦方向に係合させるための手段を有する第1要素と、第2椎骨に縦方向に挿入する際に縦方向に係合させるための手段を有する第2要素を含んでおり、第1及び第2要素の一方には突起部が、他方には陥凹部があり、突起部と陥凹部は互いに係合するように構成されている。この突起部と陥凹部の一方が他方に対してオフセットしている。
【0008】
更に別の実施形態では、脊椎分離症の脊柱の一部を安定させるための装置が提供されている。この装置は、脊椎分離症の隣接する椎体に係合するようになっている人口関節器官を含んでおり、この人工関節器官は、第1要素と、オフセットしている第2要素を備えており、第1及び第2要素は、協働して第1及び第2要素の間で関節運動ができるようにしている。この装置は、人工関節装置に隣接して設けられた人工靭帯を更に含んでおり、この人工靭帯は各椎体に係合している。
【0009】
更に別の実施形態では、前方進入法により脊椎すべり症を矯正するための方法が提供されている。この方法は、オフセットした突起部を備えている第1関節要素と、このオフセットした突起部に係合するようになっているオフセットした陥凹部を備えている第2関節要素と、を有する人工装置を用意する段階と、第1関節要素を第1椎骨に縦方向に挿入する段階と、第2関節要素を第1椎骨に隣接する第2椎骨に縦方向に挿入する段階と、を含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の原理の理解を深めるために、これより図面に示す実施形態、実施例を参照してゆくが、説明に際して特別な用語を使用する。しかしながら、これによって本発明の範囲を限定するものではない。本発明の関係する技術分野における当業者であれば、ここに示す実施形態に対する様々な変更及び修正、並びにここに示す発明の原理の別の用途が、当然のこととして想起されるであろう。而して、ここに別々に示す実施形態の個々の特徴を組み合わせて別の実施形態と成すこともできる。更には、脊椎すべり症のような変形症の例を論じているが、ここで説明している各種人工装置は根性脊椎症の椎骨間のみならず実質的に整列している椎骨にも使用できるよう適合させることができるものと理解されたい。
I.側方矯正
脊椎すべり症のような多くの変形症例では、1つ又は複数の椎体が他の椎骨又は仙骨に関して変位していることが多い。このような変形症では、変位した椎体をそれまでの位置から配置し直すことにより、変位の範囲を小さくするのが望ましい。脊椎すべり症の整復は、神経を傷つけたり周辺の軟組織を損なうことのないように十分な配慮を要する技術的に難易度の高い処理である。
【0011】
さて図1は、脊柱10の一部の側面図であり、自然の椎間円板D1、D2、D3で分離された隣接する上下の椎骨V1、V2、V3、V4の群を示している。4つの椎骨は一例として示しただけである。別の例としては、仙骨と1つの椎骨が考えられる。図に示すように、椎骨V2は椎骨V1から矢印22で示す方向にずれている。同じく、椎骨V3は矢印23で示す方向にずれており、椎骨V4は矢印24で示す方向にずれている。椎骨V2、V3、V4の位置は、それら椎骨をそれぞれ矢印22、23、24と反対の方向に移動させることにより矯正するのが望ましい。
【0012】
次に図2では、別の例として、下側椎骨VLと上側椎骨VUとして示す2つの変位している椎骨について論じる。或る実施形態では、2つの椎骨VL、VUの間にあった自然の円板の一部又は全てが、通常は椎間板切除術又は同様の外科的処置により切除されるが、その詳細は当業者には既知である。疾病の又は変性した円板を除去した結果、上側と下側の椎骨VL、VUの間には椎間空間Sが生じる。
【0013】
本実施形態では、2002年1月9日出願の米国特許出願第10/042,589号に記載の人工関節と同様の人工関節を椎間空間Sに挿入するのが望ましく、同出願を参考文献としてここに援用する。しかしながら、この人工関節には或る種の変更を加える必要がある。以下の説明では、議論と説明の対象とする人工関節は、以下の説明と示唆を除き前記特許出願に記載のものと同一と考えてもよい。これまで脊椎すべり症は、側方外科的進入法では矯正されてこなかった。しかしながら、場合によっては、脊椎すべり症の矯正は、血管及び/又は神経叢が存在することから、側方進入によるのが望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、脊椎の腰部領域の脊椎すべり症を矯正する場合に側方進入が特に適しているが、脊椎の他の領域も考えられるものと理解されたい。
【0014】
図3aと図3bでは、側方進入によって、例えば椎骨VL、VUに挿入するためにそれぞれ骨ねじ30、32を設けることにより、脊椎すべり症の矯正に対処している。或る実施形態では、骨ねじ30、32は双皮質性である。しかしながら、骨ねじは代わりに単皮質性でもよい。更に、骨ねじ30、32は、何らかの吸収性材料、チタニウム、PEEKの様な各種材料で形成することもできる。PEEKの実施形態は、PEEK材料を使用した場合に得られる放射線透過性質により好都合である。また、骨ねじ30、32は、他のどの様な機械的構造体であってもよく、例えばピンやリベットなどの形態を取ってもよい。また、骨ねじ30、32は、椎骨VL、VUと係合させるのに、ねじ付き部分を有する構成に限定されるものではない。
【0015】
骨ねじ30、32は、両方の骨ねじを中心に回転するよう構成されたロッド34を介して互いに連結されている。なお、ロッド34以外の各種接続部材を使用してもよい。例えば、骨ねじ30、32を連結するのに、不均一なリンク部材を使用してもよい。不均一なリンク部材は、骨ねじを中心とした回転を支援するために係合させることのできる複数のスロット及び/又は溝を提供する。ロッド34は、骨ねじ30、32を椎骨VL、VUに挿入する前に接続してもよいし、或いはねじを配置した後で接続してもよい。ロッド34に矢印36の方向の回転力を加えることにより、上側椎骨VUは下側椎骨VLに対して望ましい位置に復帰するよう付勢される。この回転力は、例えば、外科医が使用する回転レンチ(図示せず)により加えることができる。なお、上側椎骨VUが下側椎骨VLに対する完全な矯正位置まで一杯に戻らなくとも、変位は少なくとも整復されるものと理解されたい。
【0016】
図示しないが、別の実施形態では、根性脊椎症の椎骨VU、VLに対して両側方から対処することを考えている。この場合、骨ねじ30、32と実質的に同一の一対の骨ねじを、椎骨VU、VLに、互いに反対側から相対する方向に挿入する。このような装置では、ロッド34を、骨ねじ対のそれぞれに係合するラチェットシステムに置き換え、その状態で椎骨VU、VLを互いに対して回転させ互いに対して望ましい位置に戻ることができるようにする。
【0017】
また、ロッド34は、外科医が使用する任意の数及び型式の回転工具を受け入れるための任意の数及び型式の係合手段を含んでいてもよい。例えば、ロッド34を対応する回転工具に係合させるとき、キー付き接続部であれば安定性が高まる。別の例では、クランプ工具を使用し、クランプ工具を受け入れるための対応するクランプ用ノッチをロッド34に形成している。このような装置は、回転に必要な力を実現する際に役立つ。
【0018】
また、根性脊椎症の椎骨VU、VLを回転させて互いに対して望ましい位置に復帰させるのに使用するものとして、追加的なロッド34と骨ねじ30、32が考えられる。追加的なロッド34と骨ねじ30、32は、処置の間の安定性を更に高める。
【0019】
更に、実質的に側方挿入として示しているが、骨ねじ30、32の椎骨VU、VLへの挿入は、側方方向に対して僅かに斜めであってもよい。挿入時にねじ30、32をこのように傾斜させると、外科医が椎骨VU、VLの互いに対する回転を開始することができる好適な把持角を作り出すことができる。
【0020】
図4a、図5、及び図6では、椎間空間S(図2)に挿入して脊椎すべり症の矯正を支援するためのオフセット型椎間関節式人工関節40の或る実施形態を示している。関節式人工関節40は、概ね縦軸Lに沿って伸張しており、第1関節要素42と第2関節要素44を含んでいる。関節要素42、44は、協働して、隣接する椎体VU、VL(図2)の間の椎間空間S(図2)に配置するのに適した寸法形状に作られた人工関節40を形成する。
【0021】
人工関節40は、隣接する椎体の間で相対的な軸回転及び回転運動ができるようにして、自然の椎間板により与えられる正常な生体力学的動作と実質的に同様の動作を維持又は回復させる。より具体的には、関節要素42、44は、縦軸L回りに側方又は一方の側から他方の側への軸回転運動、及び横軸Tを中心とする前後の軸回転運動を含む、多数の軸回りに互いに対して軸回転することができる。なお、本開示の或る実施形態では、関節要素42、44は、縦軸L及び横軸Tと交差する平面内にあるどの様な軸の回りにでも互いに対して軸回転できるようになっているものと理解されたい。
【0022】
更に、関節要素42、44は回転軸R回りに互いに対して回転することができる。人工関節40は関節動作の特定の組み合わせを提供するものとして図示及び説明してきたが、その他の関節運動の組み合わせも可能であり、例えば、相対的な並進的又は直線的な動作なども可能であり、そのような運動は本開示の範囲内に含まれると考えることができるものと理解されたい。
【0023】
人工関節40の関節要素42、44は、多種多様な材料から製作することができるが、本開示の或る実施形態では、関節要素42、44は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、本開示の別の実施形態では、関節要素42、44は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明であるはずの何らかの他の生体適合性材料で製作されている。
【0024】
関節要素42、44は、それぞれ支承面46、48を含んでおり、支承面は椎骨に直接接触した状態で配置され、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。また、関節要素42、44の支承面46、48は、それぞれ、骨の成長を更に強化するため骨成長促進物質を被覆する前に粗される。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0025】
関節要素42は、関節面52と反対側の支承面46を有する支持プレート50を含んでいる。支持プレート50は、隣接する椎体VL(図2)の椎骨終板の寸法形状に実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート50は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れ又はこれと係合し、隣接する椎体VU、VL(図2)の間の椎間空間S(図2)内で人工関節40を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ54又は他の型式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、人工関節40の操作と挿入の際に関節要素42、44を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に関節要素42、44が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0026】
本開示の或る実施形態では、関節要素42は凸形状を有する突起部56を含んでおり、この突起部は球形のボール(その半分を図示)として構成されている。なお、突起部56の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節要素42の残りの部分は、平面でも非平面でもよく、例えば、突起部56の周囲に伸張する傾斜又は円錐型の形状であってもよいものと理解されたい。
【0027】
フランジ部材即ちキール58は、支承面46から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。支承面46と同様に、キール58は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されている。キール58は、骨の成長を更に強化するため骨成長促進物質で被覆される前に粗される。或る実施形態では、キール58は横軸Tに沿って伸張し、支承面46に沿って実質的に中心合わせされている。しかしながら、キール58には、この他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。
【0028】
或る実施形態では、キール58は、関節要素42の大部分に亘って横方向に伸張している。このような実施形態では、例えば前方進入法ではなく側方進入法を使用して人工関節40を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール58は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール58は、キール58の本体部分と交差して伸張する側方部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0029】
或る実施形態では、キール58には、隣接する椎体VU、VL(図2)に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように3つの孔60が貫通して形成されている。しかしながら、キール58を貫通して形成される孔60の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、2つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔60は必ずしもキール58を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール58には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔60が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔60は円形形状を有するものとして示しているが、孔60の形状寸法はこれ以外でもよいものと理解されたい。
【0030】
或る実施形態では、関節要素44は、関節面72と反対側の支承面48とを有する支持プレート70を含んでいる。支持プレート70は、隣接する椎体VUの椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート70は、関節要素42に関連して先に論じた様な、外科処置器具の対応する部分を受け入れてこれと係合するための1つ又は複数のノッチ74又は他の型式の割出し部を含んでいる。或る実施形態では、関節面72には陥凹部76が設けられている。或る実施形態では、陥凹部76は、凹型形状を有し、球状のソケットとして構成されている。しかしながら、陥凹部76の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面72の残りの部分は、傾斜状又は人工器官の挿入及び/又は使用をやり易くするように構成されたその他の形状であってもよい。
【0031】
凹状の陥凹部76は、概ね滑らかで連続する関節面を有するものとして示しているが、当接する関節要素42、44の間に存在する粒子状の屑の様な物質を除去するための手段を提供するため、表面くぼみ又は空洞を陥凹部76の一部に沿って形成してもよい。その場合、突起部56の凸状関節面が、代わりに概ね滑らかで連続する関節面を形成する。別の実施形態では、当接する関節要素42、44の間に存在する粒子状物質を除去し易くするため、凸型突起部56と凹型陥凹部76のそれぞれに表面くぼみが形成されている。
【0032】
フランジ部材即ちキール68は、関節要素42のキール58と同様に構成され、支承面48から伸張している。或る実施形態では、キール68は、横軸Tに沿って伸張し、支承面48の中心からオフセットしている。このような実施形態では、側方進入法を使用して人工関節40を挿入できるようになる。しかしながら、キール68は、この他の形状、配置、及び向きも考えられると理解されたい。例えば、図4bと図4cでは、キール58と68は、静脈、動脈、骨部分、又は人工関節40を挿入する際に存在する他の障害物を迂回し易いように、横軸Tに対して角度が付いている。別の実施形態では、キール68は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール68は、キール68の本体部分と交差して伸張する横方向部分を含む有翼キールとして構成されている。
【0033】
或る実施形態では、図5に示すように、キール68にも、隣接する椎骨に対する固定を強化するため骨が中を通って成長し易いように3つの孔70が貫通して形成されている。しかしながら、キール70を貫通して形成される孔70の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、2つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔70は必ずしもキール68を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール68には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔70が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔70は円形形状を有するものとして示しているが、孔70の形状寸法はこれ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、椎骨に直接接触する支承面46、48は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面48とキール68の面は、隣接する椎体VUとの骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。先に論じたように、支承面48とキール68の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗される。実施形態の中には、キール58、68の一方又は両方が、図4の縁部68aで示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キールを関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部68aは、隣接する椎体にキール68を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできるが、これについては後に詳しく述べる。
【0034】
図7に示すように、根性脊椎症の椎間空間内に、オフセットした人工関節40を挿入できるようにするため、部分矯正される上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節40(図7aに断面を示す)を受け入れるための前処理が施される。具体的には、細長い開口部又はスロット80、82を、上側及び下側の椎骨VU、VLそれぞれの椎骨終板に沿って、所定の幅及び所定の深さで形成する。スロット80、82は、変位した椎骨VL及び/又はVUに対応するため互いに側方にオフセットさせることができる。或る実施形態では、細長いスロット80、82は、矩形形状であり、椎骨VL、VUそれぞれを貫いて側方に伸張している。或る特定の実施形態では、スロット80、82は、のみ加工又は掻爬加工で形成される。しかしながら、スロット80、82の形成方法としては、当業者であれば想起されるであろう、例えば穿孔加工やリーマ加工など他の方法も考えられる。更に、人工関節40の実施形態の中には、キール58及び/又は68が、それぞれ自身に対応するスロット80、82を形成できるものもある。図8に示すように、或る実施形態では、上側及び下側の椎骨VU、VLが完全に矯正され、従って脊椎すべり症の矯正に別の関節式人工関節90が使用されている。関節式関節90は、関節式関節90の各種要素の配置以外は、人工関節40と実質的に同じである。例えば、完全矯正を施す上側及び下側の椎骨VU、VLへの挿入に対応するため、関節式関節90は、関節式関節の上側関節要素94に実質的に中心が合わされた側方に伸張するキール92と、下側関節要素98に実質的に中心が合わされた側方に伸張するキール96を含んでいる。また、上側関節要素94は、下側関節要素98から伸張する実質的に中心合わせされた突起部102に対応するよう実質的に中心合わせされた陥凹部100を含んでいる。或る実施形態では、上側及び下側の関節要素94、98は、完全に矯正された上側及び下側の椎骨VU、VLの間に配置されたとき互いに実質的に面一となる。
【0035】
オフセットした人工関節90を挿入できるようにするため、完全矯正される上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節90を受け入れるために前処理が施される。具体的には、細長い開口部又はスロット104、106を上側及び下側の椎骨VU、VLそれぞれの椎骨終板に沿って、所定の幅及び所定の深さで形成する。スロット104、106は、完全矯正される上側及び下側の椎骨VU、VLに対応するため互いに対して実質的に整列した状態に設けられる。或る実施形態では、細長いスロット104、106は、矩形形状であり、椎骨VU、VLそれぞれを貫いて側方に伸張している。或る特定の実施形態では、スロット104、106は、のみ加工又は掻爬加工により形成される。しかしながら、スロット104、106の形成方法としては、当業者であれば想起されるであろう、例えば穿孔加工やリーマ加工など他の方法も考えられる。更に、人工関節の実施形態の中には、キール92及び/又は96が、それぞれ自身に対応するスロット80、82を形成できるものもある。
【0036】
図9に示すように、別の実施形態では、脊椎すべり症を治療する際に側方進入をやり易くするため、滑動可能な人工関節110を使用している。滑動式関節110は、概ね縦軸Lに沿って伸張しており、第1滑動可能要素112と第2滑動可能要素114を含んでいる。滑動可能要素112、114は、協働して滑動式関節110を形成しており、この関節は隣接する椎体の間の椎間空間内に配置できる寸法形状に作られている。
【0037】
滑動式関節110は、隣接する椎体の間で運動が行えるようにして、自然の椎間円板により与えられる正常な生体力学的動作と同様の動作を或る程度維持又は回復させる。より具体的には、滑動可能要素112、114は、軸方向平面内で互いに対して並進運動できるようになっている。
【0038】
人工関節110の滑動可能要素112、114は、各種材料で製作することができ、或る実施形態では、滑動可能要素112、114は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、別の実施形態では、滑動可能要素112、114は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明の生体適合性を有するその他何らかの材料で製作してもよい。滑動可能要素112、114の椎骨と直接接触して配置される面は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤のような、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。また、滑動可能要素112、114の椎骨と直接接触して配置される面は、骨の成長を更に強化するため、骨成長促進物質で被覆する前に粗すのが望ましい。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0039】
滑動可能要素112は、滑動可能面118及び反対側の支承面120を有する支持プレート116を含んでいる。支持プレート116は、隣接する椎体の椎骨終板の寸法形状に実質的に対応する寸法形状に作られているのが望ましい。支持プレート116は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合し、隣接する椎体の間の椎間空間内で人工関節110を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ122又は他の形式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、人工関節110の操作と挿入の際に滑動可能要素112、114を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に滑動可能要素112、114が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0040】
フランジ部材即ちキール124は、支承面120から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。或る実施形態では、キール124は支承面120から垂直方向に伸張しており、支承面120に沿って概ね中心に配置されている。しかしながら、キール124には、この他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。或る実施形態では、キール124は、支持プレート114の大部分に亘って横方向に伸びている。このような実施形態では、側方進入法を使用して人工関節110を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール124は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール124は、キール124の本体部分と交差して伸張する横方向部分を含む有翼キールとして構成することもできる。
【0041】
キール124には、隣接する椎体に対する固定を強化するため骨が中を通って成長し易いように孔126が貫通して形成されている。しかしながら、キール124を貫通して形成される孔126の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔104は必ずしもキール124を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール124には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔126が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔126は円形形状を有するものとして示しているが、孔126の寸法形状はこれ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、滑動可能要素112の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面120とキール124の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。先に論じたように、支承面120とキール面124は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗される。
【0042】
或る実施形態では、滑動可能要素114は、滑動可能面130と反対側の支承面132を有する支持プレート128を含んでいる。支持プレート128は、隣接する椎体の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート128は、滑動可能要素112に関連して先に論じたような、外科処置器具の対応する部分を受けいれてこれと係合するための1つ又は複数のノッチ134又は他の形式の割出し部を含んでいる。
【0043】
滑動可能要素112のキール124と同じように構成されたフランジ部材即ちキール136は、支承面132から伸張している。或る実施形態では、キール136は支承面132から垂直方向に伸張し、椎骨の根性脊椎症による変位に適応するため、支承面132沿いにオフセットしている。また、キール136をオフセットして配置することにより、静脈、動脈、骨部分、又は人工関節110を挿入する際に存在する他の障害物を迂回し易くなる。なお、キール136には、この他の位置、形状、向き及び量も考えられるものと理解されたい。また、キール136は、位置、形状、又は向きが異なっていてもよいし、或いは同様の理由又は別の理由から複数のキール136を使用してもよい。
【0044】
或る実施形態では、キール136は、支持プレート128の大部分に亘って横方向に伸張している。このような実施形態では、前方進入法ではなく側方進入法を使用して人工関節110を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール136は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール136は、キール136の本体部分と交差して伸張する横方向部分を含む有翼キールとして構成されている。
【0045】
キール136には、隣接する椎体に対する固定を強化するため骨が中を通って成長し易いように3つの孔138が貫通して形成されている。しかしながら、キール136を貫通して形成される孔138の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔138は必ずしもキール136を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール136には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔138が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔138は円形形状を有するものとして示しているが、孔138の寸法形状はこれ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、滑動可能要素114の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面132とキール136の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。先に論じたように、支承面132とキール136の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆される前に粗される。
【0046】
実施形態の中には、キール124、136の一方又は両方が、縁部124a、136aで示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キール124、136を関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部124a、136aは、隣接する椎体にキール124、136を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできる、これについては後に詳しく述べる。
【0047】
図10に示すように、根性脊椎症の椎間空間内に人工関節110を挿入できるようにするため、下側及び上側の椎骨VL、VUには、間に人工関節110を受け入れるための前処理が施される。具体的には、細長い開口部又はスロット142、144を下側及び上側の椎骨VL、VUそれぞれの椎骨終板に沿って、所定の幅及び所定の深さで形成する。スロット142、144は、変位した椎骨VL及び/又はVUに対応するため互いに側方にオフセットさせることができる。本開示の或る実施形態では、細長いスロット142、144は、矩形形状であり、椎骨VL、VUそれぞれを貫いて側方に伸張している。或る特定の実施形態では、スロット142、144はのみ加工又は掻爬加工で形成される。しかしながら、スロット142、144の形成方法としては、当業者であれば想起されるであろう、例えば穿孔加工やリーマ加工など他の方法も考えられる。また、人工関節の実施形態の中には、キール124及び/又は136が、それぞれ自身に対応するスロットを形成できるものもある。
【0048】
図11に示すように、或る実施形態では、上側及び下側の椎骨VU、VLは完全に矯正され、従って脊椎すべり症の矯正に別の関節式関節150が使用されている。関節式関節150は、キールの配置以外は、人工関節110と実質的に同じである。例えば、完全矯正を施す上側及び下側の椎骨VU、VLへの挿入に対応するため、関節式関節150は、関節式関節の上側関節要素154に実質的に中心が合わされたキール152と、下側関節要素158に実質的に中心が合わされたキール156を含んでいる。或る実施形態では、上側及び下側の関節要素154、158は、完全に矯正された上側及び下側の椎骨VU、VLの間に配置されたとき互いに実質的に面一となる。
【0049】
オフセットした人工関節150を挿入できるようにするため、完全矯正される上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節150を受け入れるための前処理が施される。具体的には、細長い開口部又はスロット160、162を上側及び下側の椎骨VU、VLそれぞれの椎骨終板に沿って、所定の幅及び所定の深さで形成する。スロット160、162は、完全矯正される椎骨VU、VLに対応するため互いに対して実質的に整列した状態に設けられる。或る実施形態では、細長いスロット160、162は、矩形形状であり、椎骨VU、VLそれぞれを貫いて側方に伸張している。或る特定の実施形態では、スロット160、162は、のみ加工又は掻爬加工により形成される。しかしながら、スロット160、162の形成方法としては、当業者であれば想起されるであろう、例えば穿孔加工やリーマ加工など他の方法も考えられる。更に、人工関節の実施形態の中には、キール152及び/又は156が、それぞれ自身に対応するスロット160、162を形成できるものもある。
【0050】
図12及び図13に示すように、融合プレート及びケージの外側に1つ又はそれ以上のキールを装着し、従来の融合装置よりも優れた上記の動作維持型の実施形態に従ったやり方で側方挿入することもできる。具体的に図12を参照すると、側方人工器官170は、ケージ172、上側キール174及び下側キール176を含んでいる。ケージ172は、上側及び下側のキール174、176に、それぞれ支持プレート178、180を通して接続されている。ケージ172は、テネシー州メンフィスのMeditronics Sofamor Danek社が提供しているLT−CAGETM腰部テーパ付き融合装置の多くの特徴を含んでおり、生体材料及び/又は他の骨成長促進物質を中に入れておくために使用される。更に、側方キール174、176は、融合が起きている間、矯正された椎骨の変位を維持するのを支援する。図13を参照すると、人工器官190は、プレート192、上側キール194、下側キール196、上側支持プレート198及び下側支持プレート200を含んでいる。プレート192は、2つの支持プレート198、200の間の望ましい距離を保つと共に融合を促進するために使用される。プレート192は、比較的薄いので、円板空間の残り部分には生体材料、骨材料、及び他の骨成長促進材料を充填することができる。
II.前方矯正
症例によっては、脊椎すべり症の矯正は前方進入によるのが望ましい場合がある。図14から図16では、本発明の別の実施形態による椎間関節式人工関節210を示している。人工関節210は、概ね縦軸Lに沿って伸張し、第1関節要素212と第2関節要素214を含んでいる。関節要素212、214は、協働して滑動式関節210を形成しているが、この関節は、隣接する椎体VU、VLの間の椎間空間Sの様な、一対の椎体の間の椎間空間内に配置できる寸法形状に作られている。
【0051】
人工関節210は、隣接する椎体の間で相対的な軸回転及び回転運動ができるようにして、自然の椎間円板が作り出す正常な生体力学的動作と実質的に同様な動作を維持又は回復させる。より具体的には、関節要素212、214は、縦軸L回りの側方又は一方の側から他方の側への軸回転運動、及び横軸T回りの前後軸回転運動を含め、数多くの軸回りに互いに対して軸回転することができる。なお、或る実施形態では、関節要素212、214は、縦軸L及び横軸Tと交差する平面内のどの様な軸の回りにでも互いに対して軸回転することができるものと理解されたい。また、関節要素212、214は、回転軸R回りに互いに対して回転することができる。人工関節210は関節動作の特定の組み合わせを提供するものとして図示し説明してきたが、他の関節運動の組み合わせ、例えば相対的並進又は直線運動なども行うことができ、これらも本開示の範囲内に含まれるものと理解されたい。
【0052】
人工関節210の関節要素212、214は、多種多様な材料で製作することができ、或る実施形態では、関節要素212、214は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、別の実施形態では、関節要素212、214は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明の生体適合性を有するその他何らかの材料で製作されている。関節要素212、214の椎骨に直接接触して配置される面は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されている。また、関節要素212、214の椎骨に直接接触して配置される面は、骨の成長を更に強化するため、骨成長促進物質で被覆される前に粗される。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0053】
関節要素212は、関節面218と反対側の支承面220を有する支持プレート216を含んでいる。支持プレート216は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート216は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合し、隣接する椎骨の間の椎間空間内で人工関節210を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ22又は他の形式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、人工関節210の操作と挿入の際に関節要素212、214を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に関節要素212、214が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0054】
本開示の或る実施形態では、関節面218は、凸形状を有する突起部224を含んでおり、この突起部は球形のボール(その半分を図示)として構成されている。なお、突起部224の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面218の残りの部分は、平面でも非平面でもよく、例えば、突起部224の周囲に伸張する傾斜又は円錐型の形状であってもよいものと理解されたい。
【0055】
或る実施形態では、突起部224の凸状関節面は、突起部224に沿って伸張する表面くぼみ又はキャビティ226で中断されている。或る実施形態では、この表面くぼみ226は、溝として構成されている。しかしながら、他の型式の表面くぼみも考えられ、くぼみの全くない構成も考えられるものと理解されたい。溝226の目的のひとつは、関節要素212、214の当接する部分の間に存在する物質を除去し易くすることである。より具体的には、溝226は、例えば要素212、214の当接する関節面の間に存在する粒子状物質の様な物質を取り除き易くする。
【0056】
フランジ部材即ちキール230は、支承面220から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。或る実施形態では、キール230は支承面230から垂直方向に伸張し、支承面230に沿ってほぼ中央に配置されている。しかしながら、キール230には、この他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。或る実施形態では、キール230は、支持プレート216の実質的に全長に沿って伸張している。このような実施形態では、前方進入を使用して人工関節210を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール230は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール230は、キール230の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0057】
キール230には、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の孔232が貫通して形成されている。しかしながら、キール230を貫通して形成される孔232の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔232は必ずしもキール230を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール230には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔232が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔232は円形形状を有するものとして示しているが、孔232の寸法形状は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素212の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面220とキール230の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆ことができる。先に論じたように、支承面220とキール230の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0058】
或る実施形態では、関節要素214は、関節面242と反対側の支承面244を有する支持プレート240を含んでいる。支持プレート240は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート240は、関節要素212に関連して先に論じたように、外科処置器具の対応する部分を受け入れこれと係合するための1つ又は複数のノッチ246又は他の形式の割出し部を含んでいる。
【0059】
或る実施形態では、関節面242には陥凹部250があり、この陥凹部250は、球形ソケット形状の様な凹型形状を有している。しかしながら、陥凹部250の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面242の残りの部分は、傾斜状又は関節式関節210の挿入及び/又は使用をやり易くするように構成されたその他の形状であってもよい。
【0060】
凹状の陥凹部250は、概ね滑らかで連続する関節面を有するものとして示しているが、関節要素212、214の当接する関節面の間に存在する粒子状の屑の様な物質を除去し易くするため、表面くぼみ又は空洞を陥凹部250の一部に沿って形成してもよい。その場合、ボール224の凸状関節面が、代わりに概ね滑らかで連続する関節面を形成する。別の実施形態では、当接する関節面の間に存在する粒子状物質を除去し易くするため、凸型突起部224と凹型陥凹部250のそれぞれに表面くぼみが形成されている。
【0061】
フランジ部材即ちキール260は、関節要素212のキール230と同様に構成され、支承面244から伸張している。或る実施形態では、キール260は、支承面244から垂直方向に伸張しており、支承面244に沿ってほぼ中央に配置されている。しかしながら、キール260はこの他の配置及び向きも考えられると理解されたい。なお、関節要素214は、支承面244から伸張する2つ又はそれ以上のキール260を含んでいてもよいものと理解されたい。
【0062】
或る実施形態では、キール260は、支持プレート240の実質的に全長に沿って伸張している。このような実施形態では、前方進入法を使用して人工関節210を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール260は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール260は、キール260の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0063】
キール260には、更に、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の貫通孔262が形成されている。しかしながら、キール260を貫通して形成される孔262の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔262は必ずしもキール260を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール260には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔262が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔262は円形形状を有するものとして示しているが、孔262の形状寸法はこれ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素214の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面244とキール260の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面244とキール260の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗される。
【0064】
実施形態の中には、キール230、260の一方又は両方が、図14の縁部260aで示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キールを関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部260aは、椎体にキール260を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできるが、これについては後に詳しく述べる。
【0065】
図1の椎骨V1−V5の様な、脊椎すべり症に伴う転位した椎骨を処置する場合、根性脊椎症体節を完全に矯正及び整列させる作業は、外科医にとって実現できかねること又は望ましくないことであると認識されている。従って、本願に援用している同時係属の米国特許出願第10/042,589号に記載の基本的な関節構造に、ここでは椎骨変位に対応する変位を持たせている。すなわち、2つの隣接する根性脊椎症の椎骨の間の変位量に合わせて、人口関節210の関節構造をこれに対応させている。実施形態の中には、このような変位を、1つ又はそれ以上の突起部224を関節要素212の関節面218上のオフセットした位置に配置し、1つ又はそれ以上の陥凹部250を関節要素214の関節面242上のオフセットした位置に配置することにより実現しているものもある。これによって、未矯正の又は部分的に矯正された変位部を動くようにすることができる。
【0066】
より具体的には、図14から図17に示すように、突起部224が関節面218に対してオフセットしている。例えば、下側椎骨(図17のVL)が後方(図17の矢印Pで図示)にオフセットしている場合、関節要素212は、突起224が関節面218に対して前方にオフセットするように構成される。引き続きこの例を説明すると、上側椎骨VUは、従って下側椎骨VLから前方にオフセットしており(図17の矢印Aで図示)、従って関節要素214は、陥凹部250が関節面242に対して後方にオフセットするように構成されている。このように、関節要素212、214は、突起部224と陥凹部250を介して互いに係合し、尚かつ互いにオフセットして図17の上側及び下側の椎骨VUとVLの根性脊椎症の関係に適応するように構成されている。次に図16に示すように、別の実施形態では、関節式関節210は、支持プレート216が、図17に比べてより顕著な変位に対応し、及び/又不全脱臼に抗して安定性を高めるために、延長部270を備えるように変更されている。関節要素212、214の間の更に顕著な変位に備えて、延長部270に突起部24が配置されている。
【0067】
図2と図17に示すように、椎間空間S内に人工関節210を挿入できるようにするために、上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節210を受け入れるための前処理が施される。具体的には、細長い開口部又はスロット280、282を上側及び下側の椎骨VU、VLそれぞれの椎骨終板に沿って、所定の幅及び所定の深さで形成する。或る実施形態では、細長いスロット280、282は、矩形形状であり、椎骨VU、VLそれぞれの前方側284から後方側に向けて伸張している。或る特定の実施形態では、スロット280、282はのみ加工又は掻爬加工により形成される。しかしながら、スロット280、282の形成方法としては、当業者であれば想起されるであろう、例えば穿孔加工やリーマ加工など他の方法も考えられる。また、人工関節210の実施形態によっては、キール230及び/又は260が、それぞれ自身に対応するスロット280、282を形成できるものもある。スロット280、282の前処理及びその寸法例については、本願に援用している同時係属の米国特許出願第10/042,589に詳しく説明されている。
【0068】
次に図18から図20に示すように、他の実施形態では、関節要素212、214の一方又は両方が、様々な個数のキール及び/又は変更されたキールを含んでいる。具体的に図18では、290及び292として示す2つのキールが支承面244から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるよう構成されている。或る実施形態では、2つのキール290、292は、支承面244から垂直に伸張し、支承面244の中央部分に沿って平行且つ等間隔に配置されている。
【0069】
図19では、294及び296として示す2つのキールが支承面224から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。或る実施形態では、2つのキール294、296は、支承面224から垂直に伸張し、支承面224の中央部分に沿って平行且つ等間隔に配置されている。なお、キール290、292、294、296については、他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。
【0070】
図20では、キール298は、支承面244に相対する側方に伸張する「有翼」部300を含んでいる点を除いて、図14のキール260と同様に支承面244から伸張している。有翼部分300は、支承面244を椎体VUに密に押し当てて維持すること、並びに関節要素214の縦方向の運動を実質的に防ぐことを含め、幾つかの機能を提供することができる。同様に、キール302は、支承面224から伸張し、支承面224に相対する有翼部分304を含んでいる。有翼部分304は、支承面224を椎体VLに密に押し当てて維持すること、並びに関節要素212の縦方向の運動を実質的に防ぐことを含め、幾つかの機能を提供することができる。
【0071】
図21から図23では、椎間板空間S内に上記代替人工関節210を挿入できるようにするため、上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に関節式関節210のそれぞれを受け入れるための前処理が施される。図21では、図18の人工関節210の構成に合わせて、上側椎骨VUの椎骨終板に沿って複数のスロット310と312が形成され、下側椎骨VLの椎骨終板に沿って1つのスロット314が形成されている。図22では、図19の人工関節210の構成に合わせて、上側椎骨VU及び下側椎骨VLそれぞれの椎骨終板に沿って複数のスロット316、318及び320、322が形成されている。図23では、図20の人工関節210の構成に合わせて、上側椎骨VU及び下側椎骨VLそれぞれの椎骨終板に沿って、有翼スロット324、326が形成されている。スロット310、312、314、316、318、320、324、326の前処理は、図17に関連して先に論じたのと同様のやり方で行うことができる。有翼スロット324、326では、標準的なのみを使用してもよいし、或いは専用の翼形状ののみを使用してもよい。
【0072】
図24では、人工関節210に加えて、2つの椎骨VUVLの間の人口靭帯の役目を果たす整形外科用織移植片330が使用されている。織移植片の1つの実施形態については、参考文献として本願に援用している米国特許出願第10/082,579号に開示されている。移植片330は、自然の靭帯が機能するように機能し、2つの椎骨VU、VLを安定させて更に一体に固定するのを支援するとともに、それ以上変位しないようにする(又は変位が術前の状態に復帰しないようにする)。
【0073】
図25と図26では、前方進入法による脊椎すべり症の矯正時に、関節突起334の様な後方要素を椎骨VLに接続している骨要素332の骨折により示される様な周辺骨折部を治療することを考えている。骨折した骨要素332は、分かり易くするために図25では誇張されているものと理解されたい。周辺骨折部は、ねじ部336aと非ねじ部336bを有するラグねじ336を、骨要素332を通して椎体VLの孔338にねじ込み、更に関節突起334にねじ込むことにより修復される。実施形態によっては、孔338の全て又は一部を、ドリル又はのみ(図示せず)で事前に穿孔しておくこともできる。ラグねじ336は、前方向から挿入されアクセスされるが、複数の突起部を修復する場合には複数のねじを使用してもよい。骨折した後方要素を捕捉してラグねじ336を締め付けることにより、椎骨VLは修復される。
III.孔横断式人工関節
症例の中には、神経根、硬膜、黄色靭帯、棘間靭帯の様な重要な解剖学的構造を傷つけてしまう危険性のため、欠陥のある椎間円板空間に進入して清掃するのが難しいこともしばしばある。例えば、靭帯構造の保存は、体節及びそれに隣接する対応部位の生体力学的安定性の回復には非常に重要である。そのような状況では、経孔式進入法(transforaminal insertion)を使えば、神経孔の一方に開口を設けることにより椎間円板空間全体を清掃することができる。清掃が適切に行われた後、後方経脊椎茎伸延により、清掃された椎間区間を更に拡張することができる。この進入法は、経孔腰椎内融合術即ちTLIFの様な融合術に使用されてきたが、運動維持移植片ではこれまで使用されていない。
【0074】
図27に示すように、経孔侵入では、円板Vに対し、矢印400で示すように進入が行われる。この進入法は、後方進入法と側方進入法の間にあり、症例によっては、この処置を実施するのに、円板の一方の側(右又は左)しか露出する必要がない場合もある。
【0075】
図28から図30では、本開示の別の形態による椎間関節式人工関節410を示している。この関節式関節410は、概ね縦軸Lに沿って伸張しており、第1関節要素412と第2関節要素414を含んでいる。関節要素412、414は、協働して関節式関節410を形成しており、この関節は、隣接する椎体の間の椎間空間内に配置できる寸法形状に作られている。
【0076】
人工関節410は、隣接する椎体の間で相対的な軸回転及び回転運動ができるようにして、自然の椎間円板が作り出す正常な生体力学的動作と実質的に同様な動作を維持又は回復させる。より具体的には、関節要素412、414は、縦軸L回りの側方又は一方の側から他方の側への軸回転運動、及び横軸T回りの前後軸回転運動を含め、数多くの軸回りに互いに対して軸回転することができる。なお、或る実施形態では、関節要素412、414は、縦軸L及び横軸Tと交差する平面内のどの様な軸の回りにでも互いに対して軸回転することができるものと理解されたい。加えて、関節要素412、414は、回転軸R回りに互いに対して回転できるのが望ましい。人工関節410は関節動作の特定の組み合わせを提供するものとして図示し説明してきたが、他の関節運動の組み合わせも可能であり、本開示内容の範囲に入るものと考えられる旨理解されたい。また、他の種類の関節運動、例えば相対的な並進又は直線運動なども考えられるものと理解されたい。
【0077】
人工関節410の関節要素412、414は、多種多様な材料で製作することができ、或る実施形態では、関節要素412、414は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、別の実施形態では、関節要素412、414は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明の生体適合性を有するその他何らかの材料で製作されている。関節要素412、414の椎骨に直接接触して配置される面は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。また、関節要素412、414の椎骨に直接接触して配置される面は、骨の成長を更に強化するため、骨成長促進物質で被覆される前に粗されるのが望ましい。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0078】
関節要素412は、関節面418と反対側の支承面420を有する支持プレート416を含んでいる。支持プレート416は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。或る実施形態では、支持プレート416は、経孔挿入進入法をやり易くする形状に作られている。その場合、支持プレート416は、湾曲した側部422a、422bを含んでおり、それら側部は、所持プレート416の関節面418と支承面420の間に伸張する概ね細長い部分として形成されている。図示していないが、支持プレート416は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合し、隣接する椎骨の間の椎間空間内で人工関節410を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ又は他の形式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、人工関節410の操作と挿入の際に関節要素412、414を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に関節要素412、414が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0079】
或る実施形態では、関節面418は、凸形状を有する突起部424を含んでおり、この突起部は球形のボール(その半分を図示)として構成されている。なお、突起部424の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面418の残りの部分は、平面でも非平面でもよく、例えば、突起部424の周囲に伸張する傾斜又は円錐型の形状であってもよいものと理解されたい。
【0080】
フランジ部材即ちキール426は、支承面410から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。或る実施形態では、キール426は、支承面420から垂直に伸張し、支承面420に沿ってほぼ中央に配置されている。しかしながら、キール426には、この他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。或る実施形態では、キール426は、支持プレート416の大部分に沿って横方向に伸張している。キール426は、図27の矢印400に概ね準じた方向に湾曲している。キール426の曲率の程度は、側部422a、422bの曲率の程度と実質的に同じで一致している。このような実施形態では、上記の前方又は側方進入法ではなく経孔進入法を使用して人工関節410を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール426は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール426は、キール426の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0081】
キール426にも、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように3つの孔428が貫通して形成されている。しかしながら、キール426を貫通して形成される孔428の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔428は必ずしもキール426を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール426には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔428が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔428は円形形状を有するものとして示しているが、孔428の形状寸法は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素412の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面420とキール426の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面420とキール426の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0082】
或る実施形態では、関節要素414は、関節面432と反対側の支承面434を有する支持プレート430を含んでいる。支持プレート430は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。或る実施形態では、支持プレート430は、経孔挿入進入法をやり易くする形状に作られている。その場合、支持プレート416は湾曲した側部436a、436bを含んでおり、それら側部は、支持プレート430の関節面432と支承面434の間に伸張する概ね細長い部分として形成されている。図示はしていないが、所持プレート430は、関節要素412に関連して先に論じたように、外科処置器具の対応する部分を受け入れこれと係合するための1つ又は複数のノッチ74又は他の形式の割出し部を含んでいる。
【0083】
或る実施形態では、関節面432には凹形状を有する陥凹部440があり、球状ソケットとして構成されている。しかしながら、陥凹部440の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面432の残りの部分は、傾斜状又は人工器官の挿入及び/又は使用をやり易くするように構成されたその他の形状であってもよい。
【0084】
凹状の陥凹部440は、概ね滑らかで連続する関節面を有するものとして示しているが、関節要素412、414の当接する関節面の間に存在する粒子状の屑の様な物質を除去するための手段を提供するために、表面くぼみ又は空洞を陥凹部440の一部に沿って形成してもよい。その場合、ボール424の凸状関節面が、代わりに概ね滑らかで連続する関節面を形成する。別の実施形態では、当接する関節面の間に存在する粒子状物質を除去し易くするため、凸型突起部424と凹型陥凹部440はそれぞれに表面くぼみが形成されている。
【0085】
フランジ部材即ちキール450は、関節要素412のキール426と同様に構成され、支承面434から伸張している。或る実施形態では、キール450は、中央に位置し、キール450と一直線上に、又は平行に配置されている。キール450は、キール426と同じく図27の矢印400の方向に湾曲している。キール450の曲率の程度は、側部436a、436bの曲率の程度と実質的に同じで一致している。このような実施形態では、上記の前方又は側方進入法ではなく経孔進入法を使用して人工関節410を挿入できるようになる。実施形態の中には、キール450をオフセットして配置することにより、静脈、動脈、骨部分、又は人工関節410の挿入の際に存在する他の障害物を迂回し易くしているものもある。なお、キール450は、位置、形状、又は向きが異なっていてもよいし、或いは同様の理由又は別の理由から複数のキール450を使用してもよい。また、キール450は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール450は、キール450の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0086】
或る実施形態では、キール450には、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように3つの孔452が貫通して形成されている。しかしながら、キール450を貫通して形成される孔452の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔452は必ずしもキール450を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール450には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔452が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔452は円形形状を有するものとして示しているが、孔452の形状寸法は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素414の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面434とキール450の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面434とキール450の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0087】
実施形態の中には、キール426、450の一方又は両方が、図28cの縁部460、462それぞれにより示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キールを関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部460、462は、椎体にキール426、450を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできるが、これについては後に詳しく述べる。
【0088】
図31aと図31bに示すように、椎間空間内に人工関節410を挿入できるようにするために、上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節410を受け入れるための前処理が施される。具体的に図31aでは、図28から図30の人工関節410の構成に合わせて、複数のスロット470、472が上側椎骨VUと下側椎骨VLの椎骨終板に沿って形成されている。スロット470、472は、キール426、450自身で形成してもよいし、事前に前処理で形成しておいてもよい。
【0089】
図32では、人工関節410を上側及び下側の椎骨VU、VLの間に挿入する前に、1つ又はそれ以上のスロット470、472を前処理で形成しておくのが望ましい。スロット470、472は、挿入時に人工関節410を動かし易くするため、スロット472で示すように、湾曲したキール426、450に従って湾曲している。
【0090】
図33から図35では、真っ直ぐなスロットしか切削できないのみ加工に代えて、ミリングガイド500をミリング工具502と共に使用して、上側及び下側の椎骨VU、VLに湾曲したスロット470、472(図32では472で図示)を切削している。ミリングガイド500とミリング工具502は、チタニウムの様な生体適合性材料を含め、どの様な材料で形成してもよい。ミリングガイド500は、スロット470、472の望ましい湾曲の形状に対応する湾曲した開口部504を画定する細長い湾曲した部材503を含んでいる。無論、ミリングガイドの曲率、従って湾曲した開口部504の曲率は、スロット470、472の望ましい湾曲によって異なる。或る実施形態では、ミリングガイド500は、湾曲した開口部504の曲率の程度がミリングガイドを交換することなく変更できるように、矯正すれば剛性のある形状を維持するしなやかな材料で形成されている。ミリングガイド500、従って湾曲した開口部504は、スロット470、472を連続的に椎骨の後方要素内へ伸ばす必要がある場合には、そのようなスロットの延長が同時に行えるように、十分な長さを持っている。
【0091】
具体的に図34a及び図34bに示すように、或る実施形態では、ミリング工具502は、湾曲した開口部504内で回転及び並進運動するように配置されたミリングビット510を含んでいる。或る実施形態では、ミリングビット510は、二重溝付きルーティングビットであり、上側及び下側の椎骨VU、VL内に同時に切り込むことができる。
【0092】
ミリングビット510は、ミリングビットを湾曲した開口部504内で前後に動かせるようにするため、並進力も受けられるようになっている。図34bに示すように、或る実施形態では、ミリングビット530は、何らかの従来的なやり方でハウジング522(一部を図示)に接続されている。ハンドル530は、ハウジング522から、ミリングガイド500の外科医(非図示)に対して近位側の端部534に形成されたスロット532を通って伸張している。この様になっているので、外科医がハンドル530を並進運動させると、ミリングビット510が湾曲した開口部504を通って並進運動する。この様に、ハンドル530は、並進運動をミリングビット510に伝えることができるようになっている。ミリングビット510が湾曲した開口部504内で動けるようにするため、一対の軸受アッセンブリ512、514がハウジング522に隣接して配置され、ミリングビット510を湾曲した開口部に沿って案内するようになっている。
【0093】
ハウジング522は、回転機構アッセンブリを収納しており、或る実施形態では、これはギヤアッセンブリ524である。ギヤアッセンブリ524は、回転軸528に接続されその周りに環状に伸張している駆動ギヤ526を含んでいる。軸528は、動力供給源516(図35)で表されている外部動力源で回転させることができる。或る実施形態では、軸528は、ハンドル530内に収納されている。
【0094】
ギヤアッセンブリ524は、更に、ビットギヤ530を含んでおり、ビットギヤは、ミリングビット510に接続されその周りに環状に伸張している。ビットギヤ530は、ビットギヤが駆動ギヤ526に直交し且つこれに接触した状態になるように、ミリングビット510上に配置されている。従って、軸528が回転すると、ギヤアッセンブリ524を介してミリングビット510に回転が伝えられる。図34bで見て上下方向に滑ることなく、ミリングビットが湾曲した開口部504内で前後に容易に移動できるように、ミリングビット510には一対の環状肩部534、536も接続されている。なお、ギヤアッセンブリ524は、ミリングビット510に回転運動を伝えるために使用されるアッセンブリの一例に過ぎない旨理解されたい。本開示の範囲に入るものとして、空圧式システムの様な他の型式の回転伝達アッセンブリも考えられる。
【0095】
図34cに示すように、この様な実施形態の一例では、ミリングビット510に回転を伝えるために空圧システム538を採用している。或る実施形態では、空圧システムに動力(Pで表示)を供給するためにMedtronic Midas Rex LegendTMモーターが使用されている。ミリングビット510を回転させるために供給される空気の流れと圧力を制御するため従来型の弁539が使用されている。更に他の実施形態では、好適な動力供給源516(図34b)及びP(図34c)として、手動又は組み合わせ動力供給源を考えている。
【0096】
図34aと図34bに戻るが、ミリングビット510に対してミリングガイド500を独立して動かせるようにするため、ガイドハンドル540が更に設けられている。而して、或る実施形態では、一方の手でガイドハンドル540を介してミリングガイド500を保持しながら、他方の手でハンドル530を介してミリングビット510を湾曲した開口部504内で動かすことができる。実施形態の中には、図34bに示すように、ハンドル530がガイドハンドル540を通って伸びているものもある。この結果、図35に示すように、ミリングビット510は、矢印R1で示す方向に回転させることができ、矢印R2で示す方向に湾曲した開口部504内を並進移動させることができるようになる。
【0097】
作動時、ミリングガイド500とミリング工具502を使用して、椎体VLにスロット472の様なスロットを切削し、人工関節410の下側部分を受け入れるための前処理を施す。外科医は、先ず、スロット472に与える望ましい曲率の量を選択して、対応するミリングガイド500を選択又は構成する。次に、外科医は、経孔進入法により椎体VLに進入し、ミリングガイド500を上側及び下側の椎骨VU、VLの間の円板空間内に配置して、ミリングビット510を上側及び下側の椎骨VU、VLに当接させる。正しく位置決めしたら、外科医は、動力供給源516を介してミリング工具502を作動させ、ミリングビット510で上側及び下側の椎骨VU、VLを切削開始する。
【0098】
ミリングビット510がミリングガイドを通って並進運動している間に、ミリングガイドが動かないように、ミリングガイド500は、外科医によって、又は外部器具を介して保持される。ミリングガイド500の曲率によって、ミリングビット510は、経孔的に上側及び下側の椎骨VU、VLを通るように案内され、図32の下側椎骨VLに示すスロット472の様な経孔的スロットを切削して、経孔式人工関節(transforaminal prosthetic joint)410を受け入れるための前処理を上側及び下側の椎骨に施す。
【0099】
別の実施形態では、人工関節410のキールは、関節の挿入時に使用される湾曲した経孔的進入を支援するために、別の形状と構成を採用している。図36から図38では、キール550及び560が、支承面434及び420からそれぞれ伸張している。キール550、560は、図28から図30のキール450、426に比較すると短く、従ってそれぞれ支承面434、420の短い区間に沿って伸張している。キール550、560が比較的短かいと、そのようなキールを開口部470、472に追随させ易くなる。加えて、キール550、560が短かく、そのようなキールは開口部470、472に追随させ易いことにより、キールを真っ直ぐなキール又は湾曲したキールの何れにも作れるようになり、人工関節410の設計オプションの幅が広がる。キール550、560は、上側及び下側の椎骨VU、VLにキールを挿入し易いように先細にしてもよい。
IV.前方傾斜型人工関節
神経根、硬膜、黄色靭帯、棘間靱帯の様な重要な解剖学的構造を傷つけてしまう危険性を回避するために使用できる別の進入法として、前方斜め進入法がある。例えば、椎骨L4とL5並びに上位円板レベルの椎骨の間の円板空間に対する直線的な前方からの進入法では、脊椎の前面に主要な血管が付着していることから、全円板交換移植片の挿入時には外科処置上の危険性が高くなる。
【0100】
図39から図41に、本開示の別の形態による椎間関節式人工関節600を示す。人工関節600は、概ね縦軸Lに沿って伸張し、第1関節要素602と第2関節要素604を含んでいる。関節要素602、604は協働して人工関節600を形成しており、この関節は隣接する椎体の間の椎間空間内に配置できる寸法形状に作られている。
【0101】
人工関節600は、隣接する椎体の間で相対的な軸回転及び回転運動ができるようにして、自然の椎間円板が作り出す正常な生体力学的動作と実質的に同様な動作を維持又は回復させる。より具体的には、関節要素602、604は、縦軸L回りの側方又は一方の側から他方の側への軸回転運動、及び横軸T回りの前後軸回転運動を含め、数多くの軸回りに互いに対して軸回転することができる。なお、或る好適な実施形態では、関節要素602、604は、縦軸L及び横軸Tと交差する平面内のどの様な軸の回りにでも互いに対して軸回転することができるものと理解されたい。加えて、関節要素602、604は、回転軸R回りに互いに対して回転することができる。関節式関節600は関節動作の特定の組み合わせを提供するものとして図示し説明してきたが、他の関節運動の組み合わせも可能であり、本開示内容の範囲に入るものと考えられる旨理解されたい。また、他の種類の関節運動、例えば相対的な並進又は直線運動なども考えられるものと理解されたい。
【0102】
人工関節600の関節要素602、604は、多種多様な材料で製作することができ、或る実施形態では、関節要素602、604は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、本発明の別の実施形態では、関節要素602、604は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明の生体適合性を有するその他何らかの材料で製作されている。関節要素602、604の椎骨に直接接触して配置される面は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。また、関節要素602、604の椎骨に直接接触して配置される面は、骨の成長を更に強化するため、骨成長促進物質で被覆される前に粗されるのが望ましい。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0103】
関節要素602は、関節面612と反対側の支承面614を有する支持プレート610を含んでいる。支持プレート610は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。或る実施形態では、支持プレート610は、脊椎の左側又は右側何れかからの斜め方向挿入進入をやり易くするため三角形様の形状に作られており、従って辺部分P1、P2、P3を含んでいる。辺部分P1、P2、P3は、湾曲(P2で図示)又は直線(P1及びP3で図示)形状を含め、各種形状を採ることができる。
【0104】
支持プレート610は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合し、隣接する椎骨の間の椎間空間内で人工関節600を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ616又は他の形式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、人工関節600の操作と挿入の際に関節要素602、604を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に関節要素602、604が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0105】
或る実施形態では、関節面612は、凸形状を有する突起部620を含んでおり、この突起部は球形のボール(その半分を図示)として構成されている。なお、突起部620の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面612の残りの部分は、平面でも非平面でもよく、例えば、突起部620の周囲に伸張する傾斜又は円錐型の形状であってもよいものと理解されたい。フランジ部材即ちキール640は、支承面614から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。或る実施形態では、キール640は支承面614から垂直に伸張し、支承面614に沿ってほぼ中央に配置されている。しかしながら、キール640には、この他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。更に、同様の理由又は追加の理由により、使用するキールの個数を増やしてもよい。
【0106】
或る実施形態では、キール640は、支持プレート610の大部分に沿って伸張している。キール640は、真っ直ぐであるが、ノッチ616に向かう方向に沿って伸張しており、支持プレート610の辺部分の1つP1と平行である。本例では、キール640は横軸Tと縦軸Lの間に配置されている。このような実施形態では、上記の前方、側方又は経孔式進入法ではなく斜め方向からの進入法を使用して人工関節600を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール640は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール640は、キール640の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0107】
キール640にも、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の孔646が貫通して形成されている。加えて、更に骨が中を通って成長し易いように、キール640には間隙648も形成されている。間隙648は、人口関節600の挿入時に、X線を使って支持プレート602の位置と整列を評価することができるようにするための基準点も提供する。なお、キール640を貫通する孔646又は間隙648の個数は幾つでもよく、1つの孔又は間隙でも、複数の孔と間隙でもよいと理解されたい。また、孔646と間隙648は必ずしもキール640を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよいと理解されたい。また、キール640には、部分的な彫り込み又は完全に貫通する孔646又は間隙648が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。加えて、孔646は円形形状を有するものとして示しているが、孔646の寸法形状は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素602の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されている。特に、支承面614とキール640の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面614とキール640の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0108】
或る実施形態では、関節要素604は、関節面652と反対側の支承面654を有する支持プレート650を含んでいる。支持プレート650は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。或る実施形態では、支持プレート610は、脊椎の左側又は右側何れかからの斜め方向挿入進入をやり易くするために三角形様の形状に作られており、従って辺部分P4、P5、P6を含んでいる。辺部分P4、P5、P6は、湾曲(P5で図示)又は直線(P4及びP6で図示)形状を含め各種形状を採ることができる。支持プレート650は、関節要素602に関連して先に論じたように、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合するための1つ又は複数のノッチ656又は他の形式の割出し部を含んでいる。
【0109】
或る実施形態では、関節面652には凸形状を有する陥凹部660があり、球状のソケットとして構成されている。しかしながら、陥凹部660の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面652の残りの部分は、傾斜状又は人工器官の挿入及び/又は使用をやり易くするように構成されたその他の形状であってもよい。
【0110】
凹状の陥凹部660は、概ね滑らかで連続する関節面を有するものとして示しているが、要素602、604の当接する関節面の間に存在する粒子状の屑の様な物質を除去するための手段を提供するために、表面くぼみ又は空洞を陥凹部660の一部に沿って形成してもよい。その場合、ボール620の凸状関節面が、代わりに概ね滑らかで連続する関節面を形成する。別の実施形態では、当接する関節面の間に存在する粒子状物質を除去し易くするため、凸型突起部620と凹型陥凹部660のそれぞれに表面くぼみが形成されている。
【0111】
フランジ部材即ちキール670は、関節要素602のキール640と同様に構成され、支承面654から伸張している。或る実施形態では、キール670は、中央に位置し、キール640と一直線上に、又は平行に配置されている。キール640は、真っ直ぐであるが、ノッチ656に向かう方向に沿って伸張しており、支持プレート650の辺部分の1つP4と平行である。このような実施形態では、上記の前方、側方又は経孔式進入法ではなく斜め方向からの進入法を使用して人工関節600を挿入できるようになる。実施形態の中には、キール670をオフセットして配置することにより、静脈、動脈、骨部分、又は人工関節600の挿入の際に存在する他の障害物を迂回し易くしているものもある。
【0112】
なお、キール670には、この他の位置、形状、向き及び量も考えられるものと理解されたい。また、同様の理由又は追加の理由により、使用するキール670の個数を増すこともできると理解されたい。また、キール670は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール670は、キール670の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。或る実施形態では、キール670にも、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の孔676が貫通して形成されている。加えて、更に骨が中を通って成長し易いように、キール670には間隙678も形成されている。間隙678は、人口関節600の挿入時に、X線を使って支持プレート604の位置と整列を評価することができるようにするための基準点も提供する。なお、キール670を貫通する孔676又は間隙678の個数は幾つでもよく、1つの孔又は間隙でも、複数の孔又は間隙でもよいと理解されたい。また、孔676と間隙678は必ずしもキール670を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよいと理解されたい。また、キール670には、部分的な彫り込み又は完全に貫通する孔676又は間隙678が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。加えて、孔676又は円形形状を有するものとして示しているが、孔676の形状寸法は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素602の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面654とキール670の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面654とキール670の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0113】
実施形態の中には、キール640、670の一方又は両方が、縁部680、682により示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キール640、670を関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部680、682は、椎体にキール640、670を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできるが、これについては後に詳しく述べる。
【0114】
図42から図44aに示すように、椎間空間内に人工関節600を挿入できるようにするために、上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節600を受け入れるための前処理が施される。具体的に図43では、図38から図40の人工関節600の構成に合わせて、複数のスロット690、692が、上側及び下側の椎骨VU、VLの椎骨終板に沿ってそれぞれ形成されている。スロット690、692は、キール640、670自身で形成してもよいし、上記方法の1つ又はそれ以上のやり方で事前に前処理で形成してもよい。図42から図44で分かるように、1つ又は複数の血管694が直線的な前方からの進入の障害となる場合は、斜め方向からの進入により前方/側方挿入が可能になる。移植辺600の設計も、椎骨VU、VLの骨終板との接触に関し十分な接触面積を確保できるようにしている。
【0115】
図44bに示すように、或る実施形態では、人工関節600は、同時係属中の米国特許出願第10/430,473号に開示しているガイドの様な器具を介して椎間空間に挿入することができ、同出願をここに援用する。人工関節600を挿入するための挿入過程の或る例では、画像化装置を使用して椎骨VU、VLの中心線Mを見つけ出し、中心線に沿って上側椎骨VUにピン695を挿入する。次いで、フランジ697を介して傾斜ガイド部材696をピン695に接続し、傾斜ガイド部材696に付帯しているハンドル(図示せず)を正しい位置に調整する。次に、傾斜ガイド部材696の傾斜ピン698を上側椎骨VUに叩き込んで、傾斜ガイド部材を固定し、これにより人工関節600の移植辺挿入の進入基準点と方向が示される。ここで、前方斜め方向からの進入法により椎間空間に人工関節600を移植するためにガイド(図示せず)を使用するが、その詳細は同時係属中の米国特許出願第10/430,473号に記載されている。
V.可動軸受型人工関節
別の実施形態では、上記人工関節は、並進運動並びに回転運動ができるように変更されている。例えば、図42から図47に、前方挿入用の可動軸受型人工関節を、全体として参照番号700で示している。なお、分かり易くするために、可動軸受型人工関節700を前方挿入に関して説明するが、可動軸受型人工関節には様々な挿入方向が考えられるものと理解されたい。
【0116】
人工関節700は、概ね縦軸Lに沿って伸張し、第1関節要素702と第2関節要素704を含んでいる。関節要素702、704は、協働して関節式関節700を形成しており、この関節は、隣接する椎体VS、VI(図48)の間の椎間空間S1の様な一対の椎体の間の椎間空間内に配置できる寸法形状に作られている。
【0117】
人工関節700は、隣接する椎体VS、VIの間で相対的な軸回転及び回転運動ができるようにして、自然の椎間円板が作り出す正常な生体力学的運動と実質的に同様な動作を維持又は回復させるものであるが、並進運動の要素を更に備えている。より具体的には、関節要素702、704は、縦軸L回りの側方又は一方の側から他方の側への軸回転運動、及び横軸T回りの前後軸回転運動を含め、数多くの軸回りに互いに対して軸回転することができる。なお、或る実施形態では、関節要素702、704は、縦軸L及び横軸Tと交差する平面内のどの様な軸の回りにでも互いに対して軸回転することができるものと理解されたい。加えて、関節要素702、704は回転軸R回りに互いに対して回転することができる。更に、関節要素702、704は、互いに対して並進運動できるようになっているが、これについては後で詳しく説明する。
【0118】
人工関節700の関節要素702、704は、多種多様な材料で製作することができ、或る実施形態では、関節要素702、704は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、別の実施形態では、関節要素702、704は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明の生体適合性を有するその他何らの材料で製作されている。関節要素702、704の椎骨に直接接触して配置される面は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されている。また、関節要素702、704の椎骨に直接接触して配置される面は、骨の成長を更に強化するため、骨成長促進物質で被覆される前に粗される。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0119】
関節要素702は、関節面708と反対側の支承面710を有する支持プレート706を含んでいる。支持プレート706は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート706は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合し、隣接する椎体の間の椎間空間内で人工関節700を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ712又は他の形式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、関節式関節700の操作及び挿入の際に関節要素702、704を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に関節要素702、704が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0120】
或る実施形態では、図49aと図49bに示すように、関節面708に陥凹部714が形成されている。関節面708に沿って陥凹部714を画定している円周縁部716は、陥凹面718と同心関係にあるが、末広がりの円周側面部720(図49b)により陥凹面に比較して直径が小さくなっている。円形状を有するように説明しているが、陥凹部714は、方形、三角形、又は矩形形状の様ないくつもの形状を採ることができるものと理解されたい。
【0121】
図50aと50bに示すように、陥凹部714(図49b)は、モジュール式突起部材722の一部を受け入れるように設計されている。突起部材722は、陥凹部714の形状に対応する形状に作られたフランジ部724を含んでいる。而して、フランジ部724は、実質的に平坦な係合面728で終端する末広がりの円周側面部726を含んでいる。係合面728は、実質的に平坦な陥凹面718(図49b)と係合するようになっている。なお、実質的に平坦であるものとして説明しているが、係合面728と陥凹面718はその他多くの対応する形状を採ることができるものと理解されたい。係合面728の直径は、陥凹面718の直径よりも小さく、従ってモジュール式突起部材722が関節要素702に対して並進運動できるようになっている。
【0122】
モジュール式突起部材722の残り部分は、凸形状を有する突起部730を形成しており、球形のボールとして構成されている(その半分を図示)。なお、突起部730の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面708の残りの部分は、平面でも非平面でもよく、例えば、突起部224の周囲に伸張する傾斜又は円錐型の形状であってもよいものと理解されたい。
【0123】
或る実施形態では、突起部730の凸状の関節面は、突起部730に沿って伸張する表面くぼみ又は空洞732で中断されている。或る実施形態では、表面くぼみ732は、溝として構成されている。しかしながら、表面くぼみを一切設けない構成を含め、他の型式の表面くぼみも考えられるものと理解されたい。溝732の1つの目的は、関節要素702、704の当接する部分の間に存在する物質を除去し易くすることである。より具体的には、溝732は、例えば構成要素702、704の当接する関節面の間に存在する粒子状物質の様な物質を取り除くのに役立つ。
【0124】
図45と図49bに示すように、フランジ部材即ちキール740は、支承面710から伸張し、隣接する椎骨終板(図47のVIなど)に事前に形成されている孔に配置されるように構成されている。或る実施形態では、キール740は、支承面710から垂直に伸張し、支承面710に沿ってほぼ中央に配置されている。しかしながら、キール740の配置と向きは他にも考えられるものと理解されたい。
【0125】
或る実施形態では、キール740は、支持プレート706の実質的に全長に沿って伸張している。このような実施形態では、前方進入法を使用して人工関節700を挿入できるようになる。しかしながら、先に論じたように、人工関節700の挿入には、側方、経孔式、又は前方斜め方向からの進入法の様な他の進入法も考えられる。別の実施形態では、キール740は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール740は、キール740の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0126】
キール740には、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の孔742が貫通して形成されている。しかしながら、キール740を貫通して形成される孔742の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔742は必ずしもキール740を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよいと理解されたい。更に、キール740には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔742が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔742は円形形状を有するものとして示しているが、孔232の形状寸法は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素702の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面710とキール740の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面710とキール740の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0127】
図45から図47に示すように、或る実施形態では、関節要素704は、関節面752と反対側の支承面754を有する支持プレート750を含んでいる。支持プレート750は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート750は、関節要素702に関連して先に説明したように、外科処置器具の対応する部分を受け入れこれと係合するための1つ又は複数のノッチ756又は他の形式の割出し部を含んでいる。
【0128】
或る実施形態では、関節面752には陥凹部758(図47)が形成されており、球状のソケットの様な凸形状を有している。しかしながら、陥凹部758の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。関節面752の残りの部分は、傾斜状、又は関節式関節700の挿入及び/又は使用をやり易くするように構成されたその他の形状であってもよい。凹状の陥凹部758は、概ね滑らかで連続する関節面を有するものとして示しているが、関節要素702、704の当接する関節面の間に存在する粒子状の屑の様な物質を除去し易くするために、表面くぼみ又は空洞を陥凹部758の一部に沿って形成してもよい。その場合、突起部730の凸状関節面が、代わりに、概ね滑らかで連続する関節面を形成する。別の実施形態では、当接する関節面の間に存在する粒子状物質を除去し易くするため、凸型突起部730と凹型陥凹部758のそれぞれに表面くぼみが形成されている。
【0129】
フランジ部材即ちキール760は、関節要素702のキール740と同様に構成され、支承面754から伸張している。或る実施形態では、キール760は、支承面754から垂直方向に伸張し、支承面754に沿って概ね中央に位置している。しかしながら、キール760には、他の配置及び向きも考えられるものと理解されたいまた、関節要素704は、支承面から伸張するキール760を2つ以上含んでいてもよいと理解されたい。
【0130】
或る実施形態では、キール760は、支持プレート750の実質的に全長に沿って伸張している。このような実施形態では、前方進入法を使用して人工関節700を挿入できるようになる。しかしながら、先に論じたように、人工関節700の挿入には、側方、経孔式、又は前方斜め方向からの進入法の様な他の進入法も考えられる。別の実施形態では、キール760は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール760は、キール760の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0131】
キール760にも、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の孔762が貫通して形成されている。しかしながら、キール760を貫通して形成される孔762の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔762は必ずしもキール760を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよいと理解されたい。更に、キール760には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔762が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔762は円形形状を有するものとして示しているが、孔762の形状寸法は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素704の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面754とキール760の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面754とキール760の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0132】
実施形態の中には、キール740、760の一方又は両方が、図45及び図46の縁部760aにより示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キール740、760を関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部760aは、椎体にキール760を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできるが、これについては後に詳しく述べる。
【0133】
図45に示すように、関節要素702の関節面708に形成された陥凹部714にモジュール式突起部722部材を挿入することにより、可動軸受け人工関節700が組み立てられる。組み立てられると、人工関節700は、隣接する椎体VS、VI(図48)の間の円板空間S1に挿入する準備が整う。
【0134】
図48に示すように、椎間空間S1内に人工関節700を挿入するために、隣接する椎体VS、VIには、その間に人工関節700を受け入れるための前処理が施される。図45から図47の人工関節700の構成に合わせて、スロット770、772が、椎骨VSと椎骨VIそれぞれの椎骨終板に沿って形成されている。スロット770、772は、キール740、760自身で形成してもよいし、上記方法の1つ又はそれ以上のやり方で事前に前処理で形成してもよい。
【0135】
人工関節700を円板空間S1に挿入すると、モジュール式突起部722が関節要素704の凹状陥凹部758に係合しているので、関節要素704は、関節要素702に対して並進運動することができる。例えば、図51は、モジュール式突起部材722が後方位置にある状態(関節要素704が後方P方向に動いた結果)を示しており、図52は、モジュール式突起部材722が前方位置にある状態(関節要素704が前方A方向に動いた結果)を示している。図51と図52は、無論、突起部材722とその対応する陥凹部714の装着により許容される並進運動の代表例を示したものに過ぎず、モジュール式突起部材722の、従って関節要素704の関節要素702に対する並進運動の量は、P方向及びA方向以外の方向も含めて変えることができる。更に、関節要素702の陥凹部714内にモジュール式突起部材722を配置することにより、モジュール式突起部が関節要素702に対して旋回できるようになる。つまり、このような実施形態では、モジュール式突起部材722は、関節要素704に与えられた並進運動とは独立して、(陥凹部758との係合を介して)関節要素704に回転を与えることができるという利点を更に提供している。並進運動と回転運動の間にこのような独立的関係があることにより、この人工関節700では、並進運動が回転運動に依存しているか又はその逆の人工関節に比べて、もたらされる可動性の量が更に増える。
【0136】
以上、本開示内容を幾つかの好適な実施形態に関連付けて説明してきた。この開示内容を読んだ後で当業者に想起されるであろう改良点又は変更点は、本出願の精神と範囲内に含まれるものと考えられる。例えば、上記関節式関節の関節要素は、本開示内容の当該態様から逸脱することなく、逆にすることができる。従って、上記開示内容では、幾つかの修正、変更及び置換えができるものと考えられ、例を挙げると、開示内容のある種の特徴は他の特徴と対応付けて使用することなく、採用することができる。また、「縦方向」及び「横方向」の様な空間を示す用語は全て説明を目的としたものであり、本開示内容の範囲内で変更が可能であると理解されたい。従って、特許請求の範囲に述べる内容は、本開示の範囲に矛盾の無いやり方で広義に解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】根性脊椎症の脊柱の一部分の側面図である。
【図2】図1の一対の隣接する椎骨終板の側面図である。
【図3a】ロッドとねじ装置が装着された図2の一対の隣接する椎骨終板の側面図である。
【図3b】図3aの一対の隣接する椎体の縦部分断面図である。
【図4a】本開示の一の実施形態による側方挿入用関節式人工関節の斜視図である。
【図4b】本開示の他の実施形態による側方挿入用関節式人工関節の斜視図である。
【図4c】図4bの側方挿入用関節式人工関節の前面図である。
【図5】図4aの人工関節の縦面図である。
【図6】図4aの人工関節の側面図である。
【図7】一対の根性脊椎症椎骨終板の間に配置された図4aの人工関節の側方部分断面図である。
【図8】一対の椎骨終板の間に配置された代わりの関節式人工関節の側方部分断面図である。
【図9】本開示の他の実施形態による代わりの関節式人工関節の斜視図である。
【図10】一対の根性脊椎症椎骨終板の間に配置された図9の人工関節の側方部分断面図である。
【図11】一対の椎骨終板の間に配置された代わりの関節式人工関節の側方部分断面図である。
【図12】本開示の他の実施形態による人工円板器官の斜視図である。
【図13】本開示の他の実施形態による代わりの人工円板器官の斜視図である。
【図14】本開示の他の実施形態による前方挿入用の代わりの関節式人工関節の斜視図である。
【図15】図14の人工関節の縦面図である。
【図16】図14の人工関節の側面図である。
【図17】一対の根性脊椎症椎骨終板の間に配置された図14の人工関節の側面図である。
【図18】本開示の他の実施形態による前方進入用の代わりの関節式人工関節の縦面図である。
【図19】本開示の更に他の実施形態による前方進入用の代わりの関節式人工関節の縦面図である。
【図20】本開示の更に他の実施形態による前方進入用の代わりの関節式人工関節を縦面図である。
【図21】図18の人工関節を受け入れるためのスロットを有する一対の椎骨終板の縦面図である。
【図22】図19の人工関節を受け入れるためのスロットを有する一対の椎骨終板の縦面図である。
【図23】図20の人工関節を受け入れるためのスロットを有する一対の椎骨終板の縦面図である。
【図24】一対の根性脊椎症椎骨終板の間に配置された図14の人工関節と矯正移植片の側方部分断面図である。
【図25】一対の根性脊椎症椎骨終板の間に配置された図14の人工関節とラグスクリューの側方部分断面図である。
【図26】図25に示した装置の概略上面図である。
【図27】孔横断式挿入用の経路を示している、椎体の概略上面図である。
【図28】本開示の他の実施形態による孔横断式挿入用の代わりの関節式人工関節の斜視図である。
【図29】図28の人工関節の側面図である。
【図30】図28の人工関節の縦面図である。
【図31a】一対の椎骨終板間に配置された図28の人工関節の側方部分断面図である。
【図31b】一対の椎骨終板間に配置された図28の人工関節の縦部分断面図である。
【図32】椎骨終板に形成された孔横断スロットを示している概略上面図である。
【図33】椎骨終板上方に挿入されたミリング装置を示す概略上面図である。
【図34a】一対の隣接する椎骨終板間に配置された図33のミリング装置の側面図である。
【図34b】図34aのミリング装置のミリング工具の詳細図である。
【図34c】代わりのミリング工具の詳細図である。
【図35】図33のミリング装置の概略図である。
【図36】本開示の他の実施形態による孔横断挿入用の代わりの関節式人工関節の斜視図である。
【図37】図36の人工関節の側面図である。
【図38】図36の人工関節の縦面図である。
【図39】本開示の他の実施形態による前斜方向挿入用の代わりの関節式人工関節の斜視図である。
【図40】図39の人工関節の縦面図である。
【図41】図39の人工関節の側面図である。
【図42】一対の椎骨終板間に配置された図39の人工関節の側方部分断面図である。
【図43】一対の椎骨終板間に配置された図39の人工関節の縦部分断面図である。
【図44a】図39の人工関節を受け入れるための椎骨終板に形成されたスロットを示している上面概略図である。
【図44b】図39の人工関節の挿入に伴うアライメント過程を示す概略図である。
【図45】本開示の更に他の実施形態による代わりの人工関節の分解組立図である。
【図46】図45の人工関節の斜視図である。
【図47】図46の人工関節の縦面図である。
【図48】一対の隣接する椎骨終板の縦面図である。
【図49a】図45の人工関節の関節要素の平面図である。
【図49b】図49aの関節要素の49b−49b線に沿う断面図である。
【図50a】図45の人工関節のモジュール式突起部材の平面図である。
【図50b】図50aのモジュール式突起部材の50b−50b線に沿う断面図である。
【図51】図49aの関節要素に挿入された図50aのモジュール式突起部材の平面図である。
【図52】図49aの関節要素に挿入された図50aのモジュール式突起部材の、図51に対して異なる位置にあるモジュール式突起部材を示している平面図である。
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、整形外科並びに脊椎外科処置の分野に関し、また、本開示内容は、いくつかの実施形態では、自然の椎間板との全体的又は部分的交換に使用される椎間板人工関節器官、及びそれと共に使用される方法と工具に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2003年2月12日出願の米国仮特許出願第60/446,963号の恩典を主張する。また、全ての順法的目的のため同米国仮特許出願第60/446,963号を参考文献として本願に援用する。
【0003】
脊椎運動体節に影響を及ぼす、特に円板組織に影響を及ぼす、疾病、傷害、又は奇形を治療する場合、従来から、変形した、裂けた、或いはその他不具合の生じている円板の一部又は全部を除去することが知られている。椎間円板組織が脊椎運動体節から取り除かれ或いは何らかの事由でそこに存在していない場合、取り除かれた円板組織によって以前は分離されていた椎骨間の正しい間隔を確保するために矯正の対策が講じられる。
【0004】
或る場合には、2つの隣接する椎骨が、移植した骨組織、人工融合構成材、又はその他の構造又は装置を使って一体に融合される。しかしながら、脊椎融合処置では、椎間融合の生体力学的硬直性によって、隣接する脊椎運動体節の急速な悪化を招き易いことが医学界で懸念されている。より具体的には、自然の椎間円板とは異なり、脊椎融合では融合された椎骨同士が互いに軸回転及び回転することが妨げられる。このように運動性を欠くことにより、隣接する脊椎運動体節の応力が増すことになる。
【0005】
更に、隣接する脊椎運動体節に、円板変性、円板ヘルニア形成、不安定性、脊椎狭窄、脊椎症、面関節炎を含む各種症状が起き易くなる。その結果、多くの患者で、脊椎融合の結果として更に円板を取り除くこと、及び/又は別の種類の外科処置が必要となってくる。従って、脊椎融合に代わる方法が望ましい。特に、本開示内容は、側方進入法によって挿入することのできる関節式人工円板器官に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
脊椎分離症を患う一対の椎骨の間に画定された椎間板空間へ縦方向に挿入するための人工装置が提供されている。この人工装置は、第1支承面に沿って縦方向に伸張する第1フランジと、第1関節面から伸張している突起部とを備えた第1要素を含んでおり、この突起部は第1関節面に対してオフセットしている。この人工装置は、第1要素と係合するようになっている第2要素を更に含んでおり、この第2要素は、第2要素が第1要素と係合すると第1フランジと実質的に整列することになる第2支承面に沿って縦方向に伸張する第2フランジと、第2関節面に形成された陥凹部とを備えており、この陥凹部は第2関節面に対してオフセットしていて、これにより第1椎骨とこれに隣接する第2椎骨の間の脊椎分離症の関係に対応するように構成されている。突起部と陥凹部は互いに係合して第1要素と第2要素の間に関節運動を提供する。
【0007】
別の実施形態では、椎間空間へ挿入するための人工装置が提供されている。この人工装置は、第1椎骨に縦方向に挿入する際に縦方向に係合させるための手段を有する第1要素と、第2椎骨に縦方向に挿入する際に縦方向に係合させるための手段を有する第2要素を含んでおり、第1及び第2要素の一方には突起部が、他方には陥凹部があり、突起部と陥凹部は互いに係合するように構成されている。この突起部と陥凹部の一方が他方に対してオフセットしている。
【0008】
更に別の実施形態では、脊椎分離症の脊柱の一部を安定させるための装置が提供されている。この装置は、脊椎分離症の隣接する椎体に係合するようになっている人口関節器官を含んでおり、この人工関節器官は、第1要素と、オフセットしている第2要素を備えており、第1及び第2要素は、協働して第1及び第2要素の間で関節運動ができるようにしている。この装置は、人工関節装置に隣接して設けられた人工靭帯を更に含んでおり、この人工靭帯は各椎体に係合している。
【0009】
更に別の実施形態では、前方進入法により脊椎すべり症を矯正するための方法が提供されている。この方法は、オフセットした突起部を備えている第1関節要素と、このオフセットした突起部に係合するようになっているオフセットした陥凹部を備えている第2関節要素と、を有する人工装置を用意する段階と、第1関節要素を第1椎骨に縦方向に挿入する段階と、第2関節要素を第1椎骨に隣接する第2椎骨に縦方向に挿入する段階と、を含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の原理の理解を深めるために、これより図面に示す実施形態、実施例を参照してゆくが、説明に際して特別な用語を使用する。しかしながら、これによって本発明の範囲を限定するものではない。本発明の関係する技術分野における当業者であれば、ここに示す実施形態に対する様々な変更及び修正、並びにここに示す発明の原理の別の用途が、当然のこととして想起されるであろう。而して、ここに別々に示す実施形態の個々の特徴を組み合わせて別の実施形態と成すこともできる。更には、脊椎すべり症のような変形症の例を論じているが、ここで説明している各種人工装置は根性脊椎症の椎骨間のみならず実質的に整列している椎骨にも使用できるよう適合させることができるものと理解されたい。
I.側方矯正
脊椎すべり症のような多くの変形症例では、1つ又は複数の椎体が他の椎骨又は仙骨に関して変位していることが多い。このような変形症では、変位した椎体をそれまでの位置から配置し直すことにより、変位の範囲を小さくするのが望ましい。脊椎すべり症の整復は、神経を傷つけたり周辺の軟組織を損なうことのないように十分な配慮を要する技術的に難易度の高い処理である。
【0011】
さて図1は、脊柱10の一部の側面図であり、自然の椎間円板D1、D2、D3で分離された隣接する上下の椎骨V1、V2、V3、V4の群を示している。4つの椎骨は一例として示しただけである。別の例としては、仙骨と1つの椎骨が考えられる。図に示すように、椎骨V2は椎骨V1から矢印22で示す方向にずれている。同じく、椎骨V3は矢印23で示す方向にずれており、椎骨V4は矢印24で示す方向にずれている。椎骨V2、V3、V4の位置は、それら椎骨をそれぞれ矢印22、23、24と反対の方向に移動させることにより矯正するのが望ましい。
【0012】
次に図2では、別の例として、下側椎骨VLと上側椎骨VUとして示す2つの変位している椎骨について論じる。或る実施形態では、2つの椎骨VL、VUの間にあった自然の円板の一部又は全てが、通常は椎間板切除術又は同様の外科的処置により切除されるが、その詳細は当業者には既知である。疾病の又は変性した円板を除去した結果、上側と下側の椎骨VL、VUの間には椎間空間Sが生じる。
【0013】
本実施形態では、2002年1月9日出願の米国特許出願第10/042,589号に記載の人工関節と同様の人工関節を椎間空間Sに挿入するのが望ましく、同出願を参考文献としてここに援用する。しかしながら、この人工関節には或る種の変更を加える必要がある。以下の説明では、議論と説明の対象とする人工関節は、以下の説明と示唆を除き前記特許出願に記載のものと同一と考えてもよい。これまで脊椎すべり症は、側方外科的進入法では矯正されてこなかった。しかしながら、場合によっては、脊椎すべり症の矯正は、血管及び/又は神経叢が存在することから、側方進入によるのが望ましい場合がある。幾つかの実施形態では、脊椎の腰部領域の脊椎すべり症を矯正する場合に側方進入が特に適しているが、脊椎の他の領域も考えられるものと理解されたい。
【0014】
図3aと図3bでは、側方進入によって、例えば椎骨VL、VUに挿入するためにそれぞれ骨ねじ30、32を設けることにより、脊椎すべり症の矯正に対処している。或る実施形態では、骨ねじ30、32は双皮質性である。しかしながら、骨ねじは代わりに単皮質性でもよい。更に、骨ねじ30、32は、何らかの吸収性材料、チタニウム、PEEKの様な各種材料で形成することもできる。PEEKの実施形態は、PEEK材料を使用した場合に得られる放射線透過性質により好都合である。また、骨ねじ30、32は、他のどの様な機械的構造体であってもよく、例えばピンやリベットなどの形態を取ってもよい。また、骨ねじ30、32は、椎骨VL、VUと係合させるのに、ねじ付き部分を有する構成に限定されるものではない。
【0015】
骨ねじ30、32は、両方の骨ねじを中心に回転するよう構成されたロッド34を介して互いに連結されている。なお、ロッド34以外の各種接続部材を使用してもよい。例えば、骨ねじ30、32を連結するのに、不均一なリンク部材を使用してもよい。不均一なリンク部材は、骨ねじを中心とした回転を支援するために係合させることのできる複数のスロット及び/又は溝を提供する。ロッド34は、骨ねじ30、32を椎骨VL、VUに挿入する前に接続してもよいし、或いはねじを配置した後で接続してもよい。ロッド34に矢印36の方向の回転力を加えることにより、上側椎骨VUは下側椎骨VLに対して望ましい位置に復帰するよう付勢される。この回転力は、例えば、外科医が使用する回転レンチ(図示せず)により加えることができる。なお、上側椎骨VUが下側椎骨VLに対する完全な矯正位置まで一杯に戻らなくとも、変位は少なくとも整復されるものと理解されたい。
【0016】
図示しないが、別の実施形態では、根性脊椎症の椎骨VU、VLに対して両側方から対処することを考えている。この場合、骨ねじ30、32と実質的に同一の一対の骨ねじを、椎骨VU、VLに、互いに反対側から相対する方向に挿入する。このような装置では、ロッド34を、骨ねじ対のそれぞれに係合するラチェットシステムに置き換え、その状態で椎骨VU、VLを互いに対して回転させ互いに対して望ましい位置に戻ることができるようにする。
【0017】
また、ロッド34は、外科医が使用する任意の数及び型式の回転工具を受け入れるための任意の数及び型式の係合手段を含んでいてもよい。例えば、ロッド34を対応する回転工具に係合させるとき、キー付き接続部であれば安定性が高まる。別の例では、クランプ工具を使用し、クランプ工具を受け入れるための対応するクランプ用ノッチをロッド34に形成している。このような装置は、回転に必要な力を実現する際に役立つ。
【0018】
また、根性脊椎症の椎骨VU、VLを回転させて互いに対して望ましい位置に復帰させるのに使用するものとして、追加的なロッド34と骨ねじ30、32が考えられる。追加的なロッド34と骨ねじ30、32は、処置の間の安定性を更に高める。
【0019】
更に、実質的に側方挿入として示しているが、骨ねじ30、32の椎骨VU、VLへの挿入は、側方方向に対して僅かに斜めであってもよい。挿入時にねじ30、32をこのように傾斜させると、外科医が椎骨VU、VLの互いに対する回転を開始することができる好適な把持角を作り出すことができる。
【0020】
図4a、図5、及び図6では、椎間空間S(図2)に挿入して脊椎すべり症の矯正を支援するためのオフセット型椎間関節式人工関節40の或る実施形態を示している。関節式人工関節40は、概ね縦軸Lに沿って伸張しており、第1関節要素42と第2関節要素44を含んでいる。関節要素42、44は、協働して、隣接する椎体VU、VL(図2)の間の椎間空間S(図2)に配置するのに適した寸法形状に作られた人工関節40を形成する。
【0021】
人工関節40は、隣接する椎体の間で相対的な軸回転及び回転運動ができるようにして、自然の椎間板により与えられる正常な生体力学的動作と実質的に同様の動作を維持又は回復させる。より具体的には、関節要素42、44は、縦軸L回りに側方又は一方の側から他方の側への軸回転運動、及び横軸Tを中心とする前後の軸回転運動を含む、多数の軸回りに互いに対して軸回転することができる。なお、本開示の或る実施形態では、関節要素42、44は、縦軸L及び横軸Tと交差する平面内にあるどの様な軸の回りにでも互いに対して軸回転できるようになっているものと理解されたい。
【0022】
更に、関節要素42、44は回転軸R回りに互いに対して回転することができる。人工関節40は関節動作の特定の組み合わせを提供するものとして図示及び説明してきたが、その他の関節運動の組み合わせも可能であり、例えば、相対的な並進的又は直線的な動作なども可能であり、そのような運動は本開示の範囲内に含まれると考えることができるものと理解されたい。
【0023】
人工関節40の関節要素42、44は、多種多様な材料から製作することができるが、本開示の或る実施形態では、関節要素42、44は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、本開示の別の実施形態では、関節要素42、44は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明であるはずの何らかの他の生体適合性材料で製作されている。
【0024】
関節要素42、44は、それぞれ支承面46、48を含んでおり、支承面は椎骨に直接接触した状態で配置され、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。また、関節要素42、44の支承面46、48は、それぞれ、骨の成長を更に強化するため骨成長促進物質を被覆する前に粗される。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0025】
関節要素42は、関節面52と反対側の支承面46を有する支持プレート50を含んでいる。支持プレート50は、隣接する椎体VL(図2)の椎骨終板の寸法形状に実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート50は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れ又はこれと係合し、隣接する椎体VU、VL(図2)の間の椎間空間S(図2)内で人工関節40を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ54又は他の型式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、人工関節40の操作と挿入の際に関節要素42、44を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に関節要素42、44が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0026】
本開示の或る実施形態では、関節要素42は凸形状を有する突起部56を含んでおり、この突起部は球形のボール(その半分を図示)として構成されている。なお、突起部56の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節要素42の残りの部分は、平面でも非平面でもよく、例えば、突起部56の周囲に伸張する傾斜又は円錐型の形状であってもよいものと理解されたい。
【0027】
フランジ部材即ちキール58は、支承面46から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。支承面46と同様に、キール58は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されている。キール58は、骨の成長を更に強化するため骨成長促進物質で被覆される前に粗される。或る実施形態では、キール58は横軸Tに沿って伸張し、支承面46に沿って実質的に中心合わせされている。しかしながら、キール58には、この他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。
【0028】
或る実施形態では、キール58は、関節要素42の大部分に亘って横方向に伸張している。このような実施形態では、例えば前方進入法ではなく側方進入法を使用して人工関節40を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール58は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール58は、キール58の本体部分と交差して伸張する側方部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0029】
或る実施形態では、キール58には、隣接する椎体VU、VL(図2)に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように3つの孔60が貫通して形成されている。しかしながら、キール58を貫通して形成される孔60の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、2つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔60は必ずしもキール58を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール58には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔60が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔60は円形形状を有するものとして示しているが、孔60の形状寸法はこれ以外でもよいものと理解されたい。
【0030】
或る実施形態では、関節要素44は、関節面72と反対側の支承面48とを有する支持プレート70を含んでいる。支持プレート70は、隣接する椎体VUの椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート70は、関節要素42に関連して先に論じた様な、外科処置器具の対応する部分を受け入れてこれと係合するための1つ又は複数のノッチ74又は他の型式の割出し部を含んでいる。或る実施形態では、関節面72には陥凹部76が設けられている。或る実施形態では、陥凹部76は、凹型形状を有し、球状のソケットとして構成されている。しかしながら、陥凹部76の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面72の残りの部分は、傾斜状又は人工器官の挿入及び/又は使用をやり易くするように構成されたその他の形状であってもよい。
【0031】
凹状の陥凹部76は、概ね滑らかで連続する関節面を有するものとして示しているが、当接する関節要素42、44の間に存在する粒子状の屑の様な物質を除去するための手段を提供するため、表面くぼみ又は空洞を陥凹部76の一部に沿って形成してもよい。その場合、突起部56の凸状関節面が、代わりに概ね滑らかで連続する関節面を形成する。別の実施形態では、当接する関節要素42、44の間に存在する粒子状物質を除去し易くするため、凸型突起部56と凹型陥凹部76のそれぞれに表面くぼみが形成されている。
【0032】
フランジ部材即ちキール68は、関節要素42のキール58と同様に構成され、支承面48から伸張している。或る実施形態では、キール68は、横軸Tに沿って伸張し、支承面48の中心からオフセットしている。このような実施形態では、側方進入法を使用して人工関節40を挿入できるようになる。しかしながら、キール68は、この他の形状、配置、及び向きも考えられると理解されたい。例えば、図4bと図4cでは、キール58と68は、静脈、動脈、骨部分、又は人工関節40を挿入する際に存在する他の障害物を迂回し易いように、横軸Tに対して角度が付いている。別の実施形態では、キール68は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール68は、キール68の本体部分と交差して伸張する横方向部分を含む有翼キールとして構成されている。
【0033】
或る実施形態では、図5に示すように、キール68にも、隣接する椎骨に対する固定を強化するため骨が中を通って成長し易いように3つの孔70が貫通して形成されている。しかしながら、キール70を貫通して形成される孔70の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、2つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔70は必ずしもキール68を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール68には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔70が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔70は円形形状を有するものとして示しているが、孔70の形状寸法はこれ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、椎骨に直接接触する支承面46、48は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面48とキール68の面は、隣接する椎体VUとの骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。先に論じたように、支承面48とキール68の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗される。実施形態の中には、キール58、68の一方又は両方が、図4の縁部68aで示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キールを関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部68aは、隣接する椎体にキール68を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできるが、これについては後に詳しく述べる。
【0034】
図7に示すように、根性脊椎症の椎間空間内に、オフセットした人工関節40を挿入できるようにするため、部分矯正される上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節40(図7aに断面を示す)を受け入れるための前処理が施される。具体的には、細長い開口部又はスロット80、82を、上側及び下側の椎骨VU、VLそれぞれの椎骨終板に沿って、所定の幅及び所定の深さで形成する。スロット80、82は、変位した椎骨VL及び/又はVUに対応するため互いに側方にオフセットさせることができる。或る実施形態では、細長いスロット80、82は、矩形形状であり、椎骨VL、VUそれぞれを貫いて側方に伸張している。或る特定の実施形態では、スロット80、82は、のみ加工又は掻爬加工で形成される。しかしながら、スロット80、82の形成方法としては、当業者であれば想起されるであろう、例えば穿孔加工やリーマ加工など他の方法も考えられる。更に、人工関節40の実施形態の中には、キール58及び/又は68が、それぞれ自身に対応するスロット80、82を形成できるものもある。図8に示すように、或る実施形態では、上側及び下側の椎骨VU、VLが完全に矯正され、従って脊椎すべり症の矯正に別の関節式人工関節90が使用されている。関節式関節90は、関節式関節90の各種要素の配置以外は、人工関節40と実質的に同じである。例えば、完全矯正を施す上側及び下側の椎骨VU、VLへの挿入に対応するため、関節式関節90は、関節式関節の上側関節要素94に実質的に中心が合わされた側方に伸張するキール92と、下側関節要素98に実質的に中心が合わされた側方に伸張するキール96を含んでいる。また、上側関節要素94は、下側関節要素98から伸張する実質的に中心合わせされた突起部102に対応するよう実質的に中心合わせされた陥凹部100を含んでいる。或る実施形態では、上側及び下側の関節要素94、98は、完全に矯正された上側及び下側の椎骨VU、VLの間に配置されたとき互いに実質的に面一となる。
【0035】
オフセットした人工関節90を挿入できるようにするため、完全矯正される上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節90を受け入れるために前処理が施される。具体的には、細長い開口部又はスロット104、106を上側及び下側の椎骨VU、VLそれぞれの椎骨終板に沿って、所定の幅及び所定の深さで形成する。スロット104、106は、完全矯正される上側及び下側の椎骨VU、VLに対応するため互いに対して実質的に整列した状態に設けられる。或る実施形態では、細長いスロット104、106は、矩形形状であり、椎骨VU、VLそれぞれを貫いて側方に伸張している。或る特定の実施形態では、スロット104、106は、のみ加工又は掻爬加工により形成される。しかしながら、スロット104、106の形成方法としては、当業者であれば想起されるであろう、例えば穿孔加工やリーマ加工など他の方法も考えられる。更に、人工関節の実施形態の中には、キール92及び/又は96が、それぞれ自身に対応するスロット80、82を形成できるものもある。
【0036】
図9に示すように、別の実施形態では、脊椎すべり症を治療する際に側方進入をやり易くするため、滑動可能な人工関節110を使用している。滑動式関節110は、概ね縦軸Lに沿って伸張しており、第1滑動可能要素112と第2滑動可能要素114を含んでいる。滑動可能要素112、114は、協働して滑動式関節110を形成しており、この関節は隣接する椎体の間の椎間空間内に配置できる寸法形状に作られている。
【0037】
滑動式関節110は、隣接する椎体の間で運動が行えるようにして、自然の椎間円板により与えられる正常な生体力学的動作と同様の動作を或る程度維持又は回復させる。より具体的には、滑動可能要素112、114は、軸方向平面内で互いに対して並進運動できるようになっている。
【0038】
人工関節110の滑動可能要素112、114は、各種材料で製作することができ、或る実施形態では、滑動可能要素112、114は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、別の実施形態では、滑動可能要素112、114は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明の生体適合性を有するその他何らかの材料で製作してもよい。滑動可能要素112、114の椎骨と直接接触して配置される面は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤のような、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。また、滑動可能要素112、114の椎骨と直接接触して配置される面は、骨の成長を更に強化するため、骨成長促進物質で被覆する前に粗すのが望ましい。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0039】
滑動可能要素112は、滑動可能面118及び反対側の支承面120を有する支持プレート116を含んでいる。支持プレート116は、隣接する椎体の椎骨終板の寸法形状に実質的に対応する寸法形状に作られているのが望ましい。支持プレート116は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合し、隣接する椎体の間の椎間空間内で人工関節110を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ122又は他の形式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、人工関節110の操作と挿入の際に滑動可能要素112、114を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に滑動可能要素112、114が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0040】
フランジ部材即ちキール124は、支承面120から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。或る実施形態では、キール124は支承面120から垂直方向に伸張しており、支承面120に沿って概ね中心に配置されている。しかしながら、キール124には、この他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。或る実施形態では、キール124は、支持プレート114の大部分に亘って横方向に伸びている。このような実施形態では、側方進入法を使用して人工関節110を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール124は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール124は、キール124の本体部分と交差して伸張する横方向部分を含む有翼キールとして構成することもできる。
【0041】
キール124には、隣接する椎体に対する固定を強化するため骨が中を通って成長し易いように孔126が貫通して形成されている。しかしながら、キール124を貫通して形成される孔126の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔104は必ずしもキール124を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール124には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔126が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔126は円形形状を有するものとして示しているが、孔126の寸法形状はこれ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、滑動可能要素112の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面120とキール124の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。先に論じたように、支承面120とキール面124は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗される。
【0042】
或る実施形態では、滑動可能要素114は、滑動可能面130と反対側の支承面132を有する支持プレート128を含んでいる。支持プレート128は、隣接する椎体の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート128は、滑動可能要素112に関連して先に論じたような、外科処置器具の対応する部分を受けいれてこれと係合するための1つ又は複数のノッチ134又は他の形式の割出し部を含んでいる。
【0043】
滑動可能要素112のキール124と同じように構成されたフランジ部材即ちキール136は、支承面132から伸張している。或る実施形態では、キール136は支承面132から垂直方向に伸張し、椎骨の根性脊椎症による変位に適応するため、支承面132沿いにオフセットしている。また、キール136をオフセットして配置することにより、静脈、動脈、骨部分、又は人工関節110を挿入する際に存在する他の障害物を迂回し易くなる。なお、キール136には、この他の位置、形状、向き及び量も考えられるものと理解されたい。また、キール136は、位置、形状、又は向きが異なっていてもよいし、或いは同様の理由又は別の理由から複数のキール136を使用してもよい。
【0044】
或る実施形態では、キール136は、支持プレート128の大部分に亘って横方向に伸張している。このような実施形態では、前方進入法ではなく側方進入法を使用して人工関節110を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール136は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール136は、キール136の本体部分と交差して伸張する横方向部分を含む有翼キールとして構成されている。
【0045】
キール136には、隣接する椎体に対する固定を強化するため骨が中を通って成長し易いように3つの孔138が貫通して形成されている。しかしながら、キール136を貫通して形成される孔138の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔138は必ずしもキール136を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール136には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔138が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔138は円形形状を有するものとして示しているが、孔138の寸法形状はこれ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、滑動可能要素114の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面132とキール136の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。先に論じたように、支承面132とキール136の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆される前に粗される。
【0046】
実施形態の中には、キール124、136の一方又は両方が、縁部124a、136aで示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キール124、136を関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部124a、136aは、隣接する椎体にキール124、136を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできる、これについては後に詳しく述べる。
【0047】
図10に示すように、根性脊椎症の椎間空間内に人工関節110を挿入できるようにするため、下側及び上側の椎骨VL、VUには、間に人工関節110を受け入れるための前処理が施される。具体的には、細長い開口部又はスロット142、144を下側及び上側の椎骨VL、VUそれぞれの椎骨終板に沿って、所定の幅及び所定の深さで形成する。スロット142、144は、変位した椎骨VL及び/又はVUに対応するため互いに側方にオフセットさせることができる。本開示の或る実施形態では、細長いスロット142、144は、矩形形状であり、椎骨VL、VUそれぞれを貫いて側方に伸張している。或る特定の実施形態では、スロット142、144はのみ加工又は掻爬加工で形成される。しかしながら、スロット142、144の形成方法としては、当業者であれば想起されるであろう、例えば穿孔加工やリーマ加工など他の方法も考えられる。また、人工関節の実施形態の中には、キール124及び/又は136が、それぞれ自身に対応するスロットを形成できるものもある。
【0048】
図11に示すように、或る実施形態では、上側及び下側の椎骨VU、VLは完全に矯正され、従って脊椎すべり症の矯正に別の関節式関節150が使用されている。関節式関節150は、キールの配置以外は、人工関節110と実質的に同じである。例えば、完全矯正を施す上側及び下側の椎骨VU、VLへの挿入に対応するため、関節式関節150は、関節式関節の上側関節要素154に実質的に中心が合わされたキール152と、下側関節要素158に実質的に中心が合わされたキール156を含んでいる。或る実施形態では、上側及び下側の関節要素154、158は、完全に矯正された上側及び下側の椎骨VU、VLの間に配置されたとき互いに実質的に面一となる。
【0049】
オフセットした人工関節150を挿入できるようにするため、完全矯正される上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節150を受け入れるための前処理が施される。具体的には、細長い開口部又はスロット160、162を上側及び下側の椎骨VU、VLそれぞれの椎骨終板に沿って、所定の幅及び所定の深さで形成する。スロット160、162は、完全矯正される椎骨VU、VLに対応するため互いに対して実質的に整列した状態に設けられる。或る実施形態では、細長いスロット160、162は、矩形形状であり、椎骨VU、VLそれぞれを貫いて側方に伸張している。或る特定の実施形態では、スロット160、162は、のみ加工又は掻爬加工により形成される。しかしながら、スロット160、162の形成方法としては、当業者であれば想起されるであろう、例えば穿孔加工やリーマ加工など他の方法も考えられる。更に、人工関節の実施形態の中には、キール152及び/又は156が、それぞれ自身に対応するスロット160、162を形成できるものもある。
【0050】
図12及び図13に示すように、融合プレート及びケージの外側に1つ又はそれ以上のキールを装着し、従来の融合装置よりも優れた上記の動作維持型の実施形態に従ったやり方で側方挿入することもできる。具体的に図12を参照すると、側方人工器官170は、ケージ172、上側キール174及び下側キール176を含んでいる。ケージ172は、上側及び下側のキール174、176に、それぞれ支持プレート178、180を通して接続されている。ケージ172は、テネシー州メンフィスのMeditronics Sofamor Danek社が提供しているLT−CAGETM腰部テーパ付き融合装置の多くの特徴を含んでおり、生体材料及び/又は他の骨成長促進物質を中に入れておくために使用される。更に、側方キール174、176は、融合が起きている間、矯正された椎骨の変位を維持するのを支援する。図13を参照すると、人工器官190は、プレート192、上側キール194、下側キール196、上側支持プレート198及び下側支持プレート200を含んでいる。プレート192は、2つの支持プレート198、200の間の望ましい距離を保つと共に融合を促進するために使用される。プレート192は、比較的薄いので、円板空間の残り部分には生体材料、骨材料、及び他の骨成長促進材料を充填することができる。
II.前方矯正
症例によっては、脊椎すべり症の矯正は前方進入によるのが望ましい場合がある。図14から図16では、本発明の別の実施形態による椎間関節式人工関節210を示している。人工関節210は、概ね縦軸Lに沿って伸張し、第1関節要素212と第2関節要素214を含んでいる。関節要素212、214は、協働して滑動式関節210を形成しているが、この関節は、隣接する椎体VU、VLの間の椎間空間Sの様な、一対の椎体の間の椎間空間内に配置できる寸法形状に作られている。
【0051】
人工関節210は、隣接する椎体の間で相対的な軸回転及び回転運動ができるようにして、自然の椎間円板が作り出す正常な生体力学的動作と実質的に同様な動作を維持又は回復させる。より具体的には、関節要素212、214は、縦軸L回りの側方又は一方の側から他方の側への軸回転運動、及び横軸T回りの前後軸回転運動を含め、数多くの軸回りに互いに対して軸回転することができる。なお、或る実施形態では、関節要素212、214は、縦軸L及び横軸Tと交差する平面内のどの様な軸の回りにでも互いに対して軸回転することができるものと理解されたい。また、関節要素212、214は、回転軸R回りに互いに対して回転することができる。人工関節210は関節動作の特定の組み合わせを提供するものとして図示し説明してきたが、他の関節運動の組み合わせ、例えば相対的並進又は直線運動なども行うことができ、これらも本開示の範囲内に含まれるものと理解されたい。
【0052】
人工関節210の関節要素212、214は、多種多様な材料で製作することができ、或る実施形態では、関節要素212、214は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、別の実施形態では、関節要素212、214は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明の生体適合性を有するその他何らかの材料で製作されている。関節要素212、214の椎骨に直接接触して配置される面は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されている。また、関節要素212、214の椎骨に直接接触して配置される面は、骨の成長を更に強化するため、骨成長促進物質で被覆される前に粗される。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0053】
関節要素212は、関節面218と反対側の支承面220を有する支持プレート216を含んでいる。支持プレート216は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート216は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合し、隣接する椎骨の間の椎間空間内で人工関節210を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ22又は他の形式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、人工関節210の操作と挿入の際に関節要素212、214を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に関節要素212、214が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0054】
本開示の或る実施形態では、関節面218は、凸形状を有する突起部224を含んでおり、この突起部は球形のボール(その半分を図示)として構成されている。なお、突起部224の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面218の残りの部分は、平面でも非平面でもよく、例えば、突起部224の周囲に伸張する傾斜又は円錐型の形状であってもよいものと理解されたい。
【0055】
或る実施形態では、突起部224の凸状関節面は、突起部224に沿って伸張する表面くぼみ又はキャビティ226で中断されている。或る実施形態では、この表面くぼみ226は、溝として構成されている。しかしながら、他の型式の表面くぼみも考えられ、くぼみの全くない構成も考えられるものと理解されたい。溝226の目的のひとつは、関節要素212、214の当接する部分の間に存在する物質を除去し易くすることである。より具体的には、溝226は、例えば要素212、214の当接する関節面の間に存在する粒子状物質の様な物質を取り除き易くする。
【0056】
フランジ部材即ちキール230は、支承面220から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。或る実施形態では、キール230は支承面230から垂直方向に伸張し、支承面230に沿ってほぼ中央に配置されている。しかしながら、キール230には、この他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。或る実施形態では、キール230は、支持プレート216の実質的に全長に沿って伸張している。このような実施形態では、前方進入を使用して人工関節210を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール230は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール230は、キール230の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0057】
キール230には、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の孔232が貫通して形成されている。しかしながら、キール230を貫通して形成される孔232の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔232は必ずしもキール230を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール230には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔232が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔232は円形形状を有するものとして示しているが、孔232の寸法形状は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素212の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面220とキール230の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆ことができる。先に論じたように、支承面220とキール230の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0058】
或る実施形態では、関節要素214は、関節面242と反対側の支承面244を有する支持プレート240を含んでいる。支持プレート240は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート240は、関節要素212に関連して先に論じたように、外科処置器具の対応する部分を受け入れこれと係合するための1つ又は複数のノッチ246又は他の形式の割出し部を含んでいる。
【0059】
或る実施形態では、関節面242には陥凹部250があり、この陥凹部250は、球形ソケット形状の様な凹型形状を有している。しかしながら、陥凹部250の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面242の残りの部分は、傾斜状又は関節式関節210の挿入及び/又は使用をやり易くするように構成されたその他の形状であってもよい。
【0060】
凹状の陥凹部250は、概ね滑らかで連続する関節面を有するものとして示しているが、関節要素212、214の当接する関節面の間に存在する粒子状の屑の様な物質を除去し易くするため、表面くぼみ又は空洞を陥凹部250の一部に沿って形成してもよい。その場合、ボール224の凸状関節面が、代わりに概ね滑らかで連続する関節面を形成する。別の実施形態では、当接する関節面の間に存在する粒子状物質を除去し易くするため、凸型突起部224と凹型陥凹部250のそれぞれに表面くぼみが形成されている。
【0061】
フランジ部材即ちキール260は、関節要素212のキール230と同様に構成され、支承面244から伸張している。或る実施形態では、キール260は、支承面244から垂直方向に伸張しており、支承面244に沿ってほぼ中央に配置されている。しかしながら、キール260はこの他の配置及び向きも考えられると理解されたい。なお、関節要素214は、支承面244から伸張する2つ又はそれ以上のキール260を含んでいてもよいものと理解されたい。
【0062】
或る実施形態では、キール260は、支持プレート240の実質的に全長に沿って伸張している。このような実施形態では、前方進入法を使用して人工関節210を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール260は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール260は、キール260の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0063】
キール260には、更に、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の貫通孔262が形成されている。しかしながら、キール260を貫通して形成される孔262の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔262は必ずしもキール260を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール260には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔262が必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔262は円形形状を有するものとして示しているが、孔262の形状寸法はこれ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素214の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面244とキール260の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面244とキール260の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗される。
【0064】
実施形態の中には、キール230、260の一方又は両方が、図14の縁部260aで示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キールを関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部260aは、椎体にキール260を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできるが、これについては後に詳しく述べる。
【0065】
図1の椎骨V1−V5の様な、脊椎すべり症に伴う転位した椎骨を処置する場合、根性脊椎症体節を完全に矯正及び整列させる作業は、外科医にとって実現できかねること又は望ましくないことであると認識されている。従って、本願に援用している同時係属の米国特許出願第10/042,589号に記載の基本的な関節構造に、ここでは椎骨変位に対応する変位を持たせている。すなわち、2つの隣接する根性脊椎症の椎骨の間の変位量に合わせて、人口関節210の関節構造をこれに対応させている。実施形態の中には、このような変位を、1つ又はそれ以上の突起部224を関節要素212の関節面218上のオフセットした位置に配置し、1つ又はそれ以上の陥凹部250を関節要素214の関節面242上のオフセットした位置に配置することにより実現しているものもある。これによって、未矯正の又は部分的に矯正された変位部を動くようにすることができる。
【0066】
より具体的には、図14から図17に示すように、突起部224が関節面218に対してオフセットしている。例えば、下側椎骨(図17のVL)が後方(図17の矢印Pで図示)にオフセットしている場合、関節要素212は、突起224が関節面218に対して前方にオフセットするように構成される。引き続きこの例を説明すると、上側椎骨VUは、従って下側椎骨VLから前方にオフセットしており(図17の矢印Aで図示)、従って関節要素214は、陥凹部250が関節面242に対して後方にオフセットするように構成されている。このように、関節要素212、214は、突起部224と陥凹部250を介して互いに係合し、尚かつ互いにオフセットして図17の上側及び下側の椎骨VUとVLの根性脊椎症の関係に適応するように構成されている。次に図16に示すように、別の実施形態では、関節式関節210は、支持プレート216が、図17に比べてより顕著な変位に対応し、及び/又不全脱臼に抗して安定性を高めるために、延長部270を備えるように変更されている。関節要素212、214の間の更に顕著な変位に備えて、延長部270に突起部24が配置されている。
【0067】
図2と図17に示すように、椎間空間S内に人工関節210を挿入できるようにするために、上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節210を受け入れるための前処理が施される。具体的には、細長い開口部又はスロット280、282を上側及び下側の椎骨VU、VLそれぞれの椎骨終板に沿って、所定の幅及び所定の深さで形成する。或る実施形態では、細長いスロット280、282は、矩形形状であり、椎骨VU、VLそれぞれの前方側284から後方側に向けて伸張している。或る特定の実施形態では、スロット280、282はのみ加工又は掻爬加工により形成される。しかしながら、スロット280、282の形成方法としては、当業者であれば想起されるであろう、例えば穿孔加工やリーマ加工など他の方法も考えられる。また、人工関節210の実施形態によっては、キール230及び/又は260が、それぞれ自身に対応するスロット280、282を形成できるものもある。スロット280、282の前処理及びその寸法例については、本願に援用している同時係属の米国特許出願第10/042,589に詳しく説明されている。
【0068】
次に図18から図20に示すように、他の実施形態では、関節要素212、214の一方又は両方が、様々な個数のキール及び/又は変更されたキールを含んでいる。具体的に図18では、290及び292として示す2つのキールが支承面244から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるよう構成されている。或る実施形態では、2つのキール290、292は、支承面244から垂直に伸張し、支承面244の中央部分に沿って平行且つ等間隔に配置されている。
【0069】
図19では、294及び296として示す2つのキールが支承面224から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。或る実施形態では、2つのキール294、296は、支承面224から垂直に伸張し、支承面224の中央部分に沿って平行且つ等間隔に配置されている。なお、キール290、292、294、296については、他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。
【0070】
図20では、キール298は、支承面244に相対する側方に伸張する「有翼」部300を含んでいる点を除いて、図14のキール260と同様に支承面244から伸張している。有翼部分300は、支承面244を椎体VUに密に押し当てて維持すること、並びに関節要素214の縦方向の運動を実質的に防ぐことを含め、幾つかの機能を提供することができる。同様に、キール302は、支承面224から伸張し、支承面224に相対する有翼部分304を含んでいる。有翼部分304は、支承面224を椎体VLに密に押し当てて維持すること、並びに関節要素212の縦方向の運動を実質的に防ぐことを含め、幾つかの機能を提供することができる。
【0071】
図21から図23では、椎間板空間S内に上記代替人工関節210を挿入できるようにするため、上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に関節式関節210のそれぞれを受け入れるための前処理が施される。図21では、図18の人工関節210の構成に合わせて、上側椎骨VUの椎骨終板に沿って複数のスロット310と312が形成され、下側椎骨VLの椎骨終板に沿って1つのスロット314が形成されている。図22では、図19の人工関節210の構成に合わせて、上側椎骨VU及び下側椎骨VLそれぞれの椎骨終板に沿って複数のスロット316、318及び320、322が形成されている。図23では、図20の人工関節210の構成に合わせて、上側椎骨VU及び下側椎骨VLそれぞれの椎骨終板に沿って、有翼スロット324、326が形成されている。スロット310、312、314、316、318、320、324、326の前処理は、図17に関連して先に論じたのと同様のやり方で行うことができる。有翼スロット324、326では、標準的なのみを使用してもよいし、或いは専用の翼形状ののみを使用してもよい。
【0072】
図24では、人工関節210に加えて、2つの椎骨VUVLの間の人口靭帯の役目を果たす整形外科用織移植片330が使用されている。織移植片の1つの実施形態については、参考文献として本願に援用している米国特許出願第10/082,579号に開示されている。移植片330は、自然の靭帯が機能するように機能し、2つの椎骨VU、VLを安定させて更に一体に固定するのを支援するとともに、それ以上変位しないようにする(又は変位が術前の状態に復帰しないようにする)。
【0073】
図25と図26では、前方進入法による脊椎すべり症の矯正時に、関節突起334の様な後方要素を椎骨VLに接続している骨要素332の骨折により示される様な周辺骨折部を治療することを考えている。骨折した骨要素332は、分かり易くするために図25では誇張されているものと理解されたい。周辺骨折部は、ねじ部336aと非ねじ部336bを有するラグねじ336を、骨要素332を通して椎体VLの孔338にねじ込み、更に関節突起334にねじ込むことにより修復される。実施形態によっては、孔338の全て又は一部を、ドリル又はのみ(図示せず)で事前に穿孔しておくこともできる。ラグねじ336は、前方向から挿入されアクセスされるが、複数の突起部を修復する場合には複数のねじを使用してもよい。骨折した後方要素を捕捉してラグねじ336を締め付けることにより、椎骨VLは修復される。
III.孔横断式人工関節
症例の中には、神経根、硬膜、黄色靭帯、棘間靭帯の様な重要な解剖学的構造を傷つけてしまう危険性のため、欠陥のある椎間円板空間に進入して清掃するのが難しいこともしばしばある。例えば、靭帯構造の保存は、体節及びそれに隣接する対応部位の生体力学的安定性の回復には非常に重要である。そのような状況では、経孔式進入法(transforaminal insertion)を使えば、神経孔の一方に開口を設けることにより椎間円板空間全体を清掃することができる。清掃が適切に行われた後、後方経脊椎茎伸延により、清掃された椎間区間を更に拡張することができる。この進入法は、経孔腰椎内融合術即ちTLIFの様な融合術に使用されてきたが、運動維持移植片ではこれまで使用されていない。
【0074】
図27に示すように、経孔侵入では、円板Vに対し、矢印400で示すように進入が行われる。この進入法は、後方進入法と側方進入法の間にあり、症例によっては、この処置を実施するのに、円板の一方の側(右又は左)しか露出する必要がない場合もある。
【0075】
図28から図30では、本開示の別の形態による椎間関節式人工関節410を示している。この関節式関節410は、概ね縦軸Lに沿って伸張しており、第1関節要素412と第2関節要素414を含んでいる。関節要素412、414は、協働して関節式関節410を形成しており、この関節は、隣接する椎体の間の椎間空間内に配置できる寸法形状に作られている。
【0076】
人工関節410は、隣接する椎体の間で相対的な軸回転及び回転運動ができるようにして、自然の椎間円板が作り出す正常な生体力学的動作と実質的に同様な動作を維持又は回復させる。より具体的には、関節要素412、414は、縦軸L回りの側方又は一方の側から他方の側への軸回転運動、及び横軸T回りの前後軸回転運動を含め、数多くの軸回りに互いに対して軸回転することができる。なお、或る実施形態では、関節要素412、414は、縦軸L及び横軸Tと交差する平面内のどの様な軸の回りにでも互いに対して軸回転することができるものと理解されたい。加えて、関節要素412、414は、回転軸R回りに互いに対して回転できるのが望ましい。人工関節410は関節動作の特定の組み合わせを提供するものとして図示し説明してきたが、他の関節運動の組み合わせも可能であり、本開示内容の範囲に入るものと考えられる旨理解されたい。また、他の種類の関節運動、例えば相対的な並進又は直線運動なども考えられるものと理解されたい。
【0077】
人工関節410の関節要素412、414は、多種多様な材料で製作することができ、或る実施形態では、関節要素412、414は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、別の実施形態では、関節要素412、414は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明の生体適合性を有するその他何らかの材料で製作されている。関節要素412、414の椎骨に直接接触して配置される面は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。また、関節要素412、414の椎骨に直接接触して配置される面は、骨の成長を更に強化するため、骨成長促進物質で被覆される前に粗されるのが望ましい。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0078】
関節要素412は、関節面418と反対側の支承面420を有する支持プレート416を含んでいる。支持プレート416は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。或る実施形態では、支持プレート416は、経孔挿入進入法をやり易くする形状に作られている。その場合、支持プレート416は、湾曲した側部422a、422bを含んでおり、それら側部は、所持プレート416の関節面418と支承面420の間に伸張する概ね細長い部分として形成されている。図示していないが、支持プレート416は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合し、隣接する椎骨の間の椎間空間内で人工関節410を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ又は他の形式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、人工関節410の操作と挿入の際に関節要素412、414を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に関節要素412、414が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0079】
或る実施形態では、関節面418は、凸形状を有する突起部424を含んでおり、この突起部は球形のボール(その半分を図示)として構成されている。なお、突起部424の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面418の残りの部分は、平面でも非平面でもよく、例えば、突起部424の周囲に伸張する傾斜又は円錐型の形状であってもよいものと理解されたい。
【0080】
フランジ部材即ちキール426は、支承面410から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。或る実施形態では、キール426は、支承面420から垂直に伸張し、支承面420に沿ってほぼ中央に配置されている。しかしながら、キール426には、この他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。或る実施形態では、キール426は、支持プレート416の大部分に沿って横方向に伸張している。キール426は、図27の矢印400に概ね準じた方向に湾曲している。キール426の曲率の程度は、側部422a、422bの曲率の程度と実質的に同じで一致している。このような実施形態では、上記の前方又は側方進入法ではなく経孔進入法を使用して人工関節410を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール426は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール426は、キール426の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0081】
キール426にも、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように3つの孔428が貫通して形成されている。しかしながら、キール426を貫通して形成される孔428の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔428は必ずしもキール426を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール426には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔428が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔428は円形形状を有するものとして示しているが、孔428の形状寸法は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素412の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面420とキール426の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面420とキール426の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0082】
或る実施形態では、関節要素414は、関節面432と反対側の支承面434を有する支持プレート430を含んでいる。支持プレート430は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。或る実施形態では、支持プレート430は、経孔挿入進入法をやり易くする形状に作られている。その場合、支持プレート416は湾曲した側部436a、436bを含んでおり、それら側部は、支持プレート430の関節面432と支承面434の間に伸張する概ね細長い部分として形成されている。図示はしていないが、所持プレート430は、関節要素412に関連して先に論じたように、外科処置器具の対応する部分を受け入れこれと係合するための1つ又は複数のノッチ74又は他の形式の割出し部を含んでいる。
【0083】
或る実施形態では、関節面432には凹形状を有する陥凹部440があり、球状ソケットとして構成されている。しかしながら、陥凹部440の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面432の残りの部分は、傾斜状又は人工器官の挿入及び/又は使用をやり易くするように構成されたその他の形状であってもよい。
【0084】
凹状の陥凹部440は、概ね滑らかで連続する関節面を有するものとして示しているが、関節要素412、414の当接する関節面の間に存在する粒子状の屑の様な物質を除去するための手段を提供するために、表面くぼみ又は空洞を陥凹部440の一部に沿って形成してもよい。その場合、ボール424の凸状関節面が、代わりに概ね滑らかで連続する関節面を形成する。別の実施形態では、当接する関節面の間に存在する粒子状物質を除去し易くするため、凸型突起部424と凹型陥凹部440はそれぞれに表面くぼみが形成されている。
【0085】
フランジ部材即ちキール450は、関節要素412のキール426と同様に構成され、支承面434から伸張している。或る実施形態では、キール450は、中央に位置し、キール450と一直線上に、又は平行に配置されている。キール450は、キール426と同じく図27の矢印400の方向に湾曲している。キール450の曲率の程度は、側部436a、436bの曲率の程度と実質的に同じで一致している。このような実施形態では、上記の前方又は側方進入法ではなく経孔進入法を使用して人工関節410を挿入できるようになる。実施形態の中には、キール450をオフセットして配置することにより、静脈、動脈、骨部分、又は人工関節410の挿入の際に存在する他の障害物を迂回し易くしているものもある。なお、キール450は、位置、形状、又は向きが異なっていてもよいし、或いは同様の理由又は別の理由から複数のキール450を使用してもよい。また、キール450は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール450は、キール450の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0086】
或る実施形態では、キール450には、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように3つの孔452が貫通して形成されている。しかしながら、キール450を貫通して形成される孔452の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔452は必ずしもキール450を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよい。更に、キール450には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔452が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔452は円形形状を有するものとして示しているが、孔452の形状寸法は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素414の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面434とキール450の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面434とキール450の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0087】
実施形態の中には、キール426、450の一方又は両方が、図28cの縁部460、462それぞれにより示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キールを関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部460、462は、椎体にキール426、450を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできるが、これについては後に詳しく述べる。
【0088】
図31aと図31bに示すように、椎間空間内に人工関節410を挿入できるようにするために、上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節410を受け入れるための前処理が施される。具体的に図31aでは、図28から図30の人工関節410の構成に合わせて、複数のスロット470、472が上側椎骨VUと下側椎骨VLの椎骨終板に沿って形成されている。スロット470、472は、キール426、450自身で形成してもよいし、事前に前処理で形成しておいてもよい。
【0089】
図32では、人工関節410を上側及び下側の椎骨VU、VLの間に挿入する前に、1つ又はそれ以上のスロット470、472を前処理で形成しておくのが望ましい。スロット470、472は、挿入時に人工関節410を動かし易くするため、スロット472で示すように、湾曲したキール426、450に従って湾曲している。
【0090】
図33から図35では、真っ直ぐなスロットしか切削できないのみ加工に代えて、ミリングガイド500をミリング工具502と共に使用して、上側及び下側の椎骨VU、VLに湾曲したスロット470、472(図32では472で図示)を切削している。ミリングガイド500とミリング工具502は、チタニウムの様な生体適合性材料を含め、どの様な材料で形成してもよい。ミリングガイド500は、スロット470、472の望ましい湾曲の形状に対応する湾曲した開口部504を画定する細長い湾曲した部材503を含んでいる。無論、ミリングガイドの曲率、従って湾曲した開口部504の曲率は、スロット470、472の望ましい湾曲によって異なる。或る実施形態では、ミリングガイド500は、湾曲した開口部504の曲率の程度がミリングガイドを交換することなく変更できるように、矯正すれば剛性のある形状を維持するしなやかな材料で形成されている。ミリングガイド500、従って湾曲した開口部504は、スロット470、472を連続的に椎骨の後方要素内へ伸ばす必要がある場合には、そのようなスロットの延長が同時に行えるように、十分な長さを持っている。
【0091】
具体的に図34a及び図34bに示すように、或る実施形態では、ミリング工具502は、湾曲した開口部504内で回転及び並進運動するように配置されたミリングビット510を含んでいる。或る実施形態では、ミリングビット510は、二重溝付きルーティングビットであり、上側及び下側の椎骨VU、VL内に同時に切り込むことができる。
【0092】
ミリングビット510は、ミリングビットを湾曲した開口部504内で前後に動かせるようにするため、並進力も受けられるようになっている。図34bに示すように、或る実施形態では、ミリングビット530は、何らかの従来的なやり方でハウジング522(一部を図示)に接続されている。ハンドル530は、ハウジング522から、ミリングガイド500の外科医(非図示)に対して近位側の端部534に形成されたスロット532を通って伸張している。この様になっているので、外科医がハンドル530を並進運動させると、ミリングビット510が湾曲した開口部504を通って並進運動する。この様に、ハンドル530は、並進運動をミリングビット510に伝えることができるようになっている。ミリングビット510が湾曲した開口部504内で動けるようにするため、一対の軸受アッセンブリ512、514がハウジング522に隣接して配置され、ミリングビット510を湾曲した開口部に沿って案内するようになっている。
【0093】
ハウジング522は、回転機構アッセンブリを収納しており、或る実施形態では、これはギヤアッセンブリ524である。ギヤアッセンブリ524は、回転軸528に接続されその周りに環状に伸張している駆動ギヤ526を含んでいる。軸528は、動力供給源516(図35)で表されている外部動力源で回転させることができる。或る実施形態では、軸528は、ハンドル530内に収納されている。
【0094】
ギヤアッセンブリ524は、更に、ビットギヤ530を含んでおり、ビットギヤは、ミリングビット510に接続されその周りに環状に伸張している。ビットギヤ530は、ビットギヤが駆動ギヤ526に直交し且つこれに接触した状態になるように、ミリングビット510上に配置されている。従って、軸528が回転すると、ギヤアッセンブリ524を介してミリングビット510に回転が伝えられる。図34bで見て上下方向に滑ることなく、ミリングビットが湾曲した開口部504内で前後に容易に移動できるように、ミリングビット510には一対の環状肩部534、536も接続されている。なお、ギヤアッセンブリ524は、ミリングビット510に回転運動を伝えるために使用されるアッセンブリの一例に過ぎない旨理解されたい。本開示の範囲に入るものとして、空圧式システムの様な他の型式の回転伝達アッセンブリも考えられる。
【0095】
図34cに示すように、この様な実施形態の一例では、ミリングビット510に回転を伝えるために空圧システム538を採用している。或る実施形態では、空圧システムに動力(Pで表示)を供給するためにMedtronic Midas Rex LegendTMモーターが使用されている。ミリングビット510を回転させるために供給される空気の流れと圧力を制御するため従来型の弁539が使用されている。更に他の実施形態では、好適な動力供給源516(図34b)及びP(図34c)として、手動又は組み合わせ動力供給源を考えている。
【0096】
図34aと図34bに戻るが、ミリングビット510に対してミリングガイド500を独立して動かせるようにするため、ガイドハンドル540が更に設けられている。而して、或る実施形態では、一方の手でガイドハンドル540を介してミリングガイド500を保持しながら、他方の手でハンドル530を介してミリングビット510を湾曲した開口部504内で動かすことができる。実施形態の中には、図34bに示すように、ハンドル530がガイドハンドル540を通って伸びているものもある。この結果、図35に示すように、ミリングビット510は、矢印R1で示す方向に回転させることができ、矢印R2で示す方向に湾曲した開口部504内を並進移動させることができるようになる。
【0097】
作動時、ミリングガイド500とミリング工具502を使用して、椎体VLにスロット472の様なスロットを切削し、人工関節410の下側部分を受け入れるための前処理を施す。外科医は、先ず、スロット472に与える望ましい曲率の量を選択して、対応するミリングガイド500を選択又は構成する。次に、外科医は、経孔進入法により椎体VLに進入し、ミリングガイド500を上側及び下側の椎骨VU、VLの間の円板空間内に配置して、ミリングビット510を上側及び下側の椎骨VU、VLに当接させる。正しく位置決めしたら、外科医は、動力供給源516を介してミリング工具502を作動させ、ミリングビット510で上側及び下側の椎骨VU、VLを切削開始する。
【0098】
ミリングビット510がミリングガイドを通って並進運動している間に、ミリングガイドが動かないように、ミリングガイド500は、外科医によって、又は外部器具を介して保持される。ミリングガイド500の曲率によって、ミリングビット510は、経孔的に上側及び下側の椎骨VU、VLを通るように案内され、図32の下側椎骨VLに示すスロット472の様な経孔的スロットを切削して、経孔式人工関節(transforaminal prosthetic joint)410を受け入れるための前処理を上側及び下側の椎骨に施す。
【0099】
別の実施形態では、人工関節410のキールは、関節の挿入時に使用される湾曲した経孔的進入を支援するために、別の形状と構成を採用している。図36から図38では、キール550及び560が、支承面434及び420からそれぞれ伸張している。キール550、560は、図28から図30のキール450、426に比較すると短く、従ってそれぞれ支承面434、420の短い区間に沿って伸張している。キール550、560が比較的短かいと、そのようなキールを開口部470、472に追随させ易くなる。加えて、キール550、560が短かく、そのようなキールは開口部470、472に追随させ易いことにより、キールを真っ直ぐなキール又は湾曲したキールの何れにも作れるようになり、人工関節410の設計オプションの幅が広がる。キール550、560は、上側及び下側の椎骨VU、VLにキールを挿入し易いように先細にしてもよい。
IV.前方傾斜型人工関節
神経根、硬膜、黄色靭帯、棘間靱帯の様な重要な解剖学的構造を傷つけてしまう危険性を回避するために使用できる別の進入法として、前方斜め進入法がある。例えば、椎骨L4とL5並びに上位円板レベルの椎骨の間の円板空間に対する直線的な前方からの進入法では、脊椎の前面に主要な血管が付着していることから、全円板交換移植片の挿入時には外科処置上の危険性が高くなる。
【0100】
図39から図41に、本開示の別の形態による椎間関節式人工関節600を示す。人工関節600は、概ね縦軸Lに沿って伸張し、第1関節要素602と第2関節要素604を含んでいる。関節要素602、604は協働して人工関節600を形成しており、この関節は隣接する椎体の間の椎間空間内に配置できる寸法形状に作られている。
【0101】
人工関節600は、隣接する椎体の間で相対的な軸回転及び回転運動ができるようにして、自然の椎間円板が作り出す正常な生体力学的動作と実質的に同様な動作を維持又は回復させる。より具体的には、関節要素602、604は、縦軸L回りの側方又は一方の側から他方の側への軸回転運動、及び横軸T回りの前後軸回転運動を含め、数多くの軸回りに互いに対して軸回転することができる。なお、或る好適な実施形態では、関節要素602、604は、縦軸L及び横軸Tと交差する平面内のどの様な軸の回りにでも互いに対して軸回転することができるものと理解されたい。加えて、関節要素602、604は、回転軸R回りに互いに対して回転することができる。関節式関節600は関節動作の特定の組み合わせを提供するものとして図示し説明してきたが、他の関節運動の組み合わせも可能であり、本開示内容の範囲に入るものと考えられる旨理解されたい。また、他の種類の関節運動、例えば相対的な並進又は直線運動なども考えられるものと理解されたい。
【0102】
人工関節600の関節要素602、604は、多種多様な材料で製作することができ、或る実施形態では、関節要素602、604は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、本発明の別の実施形態では、関節要素602、604は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明の生体適合性を有するその他何らかの材料で製作されている。関節要素602、604の椎骨に直接接触して配置される面は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。また、関節要素602、604の椎骨に直接接触して配置される面は、骨の成長を更に強化するため、骨成長促進物質で被覆される前に粗されるのが望ましい。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0103】
関節要素602は、関節面612と反対側の支承面614を有する支持プレート610を含んでいる。支持プレート610は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。或る実施形態では、支持プレート610は、脊椎の左側又は右側何れかからの斜め方向挿入進入をやり易くするため三角形様の形状に作られており、従って辺部分P1、P2、P3を含んでいる。辺部分P1、P2、P3は、湾曲(P2で図示)又は直線(P1及びP3で図示)形状を含め、各種形状を採ることができる。
【0104】
支持プレート610は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合し、隣接する椎骨の間の椎間空間内で人工関節600を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ616又は他の形式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、人工関節600の操作と挿入の際に関節要素602、604を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に関節要素602、604が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0105】
或る実施形態では、関節面612は、凸形状を有する突起部620を含んでおり、この突起部は球形のボール(その半分を図示)として構成されている。なお、突起部620の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面612の残りの部分は、平面でも非平面でもよく、例えば、突起部620の周囲に伸張する傾斜又は円錐型の形状であってもよいものと理解されたい。フランジ部材即ちキール640は、支承面614から伸張し、隣接する椎骨終板に事前に形成されている開口部内に配置されるように構成されている。或る実施形態では、キール640は支承面614から垂直に伸張し、支承面614に沿ってほぼ中央に配置されている。しかしながら、キール640には、この他の配置及び向きも考えられるものと理解されたい。更に、同様の理由又は追加の理由により、使用するキールの個数を増やしてもよい。
【0106】
或る実施形態では、キール640は、支持プレート610の大部分に沿って伸張している。キール640は、真っ直ぐであるが、ノッチ616に向かう方向に沿って伸張しており、支持プレート610の辺部分の1つP1と平行である。本例では、キール640は横軸Tと縦軸Lの間に配置されている。このような実施形態では、上記の前方、側方又は経孔式進入法ではなく斜め方向からの進入法を使用して人工関節600を挿入できるようになる。別の実施形態では、キール640は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール640は、キール640の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0107】
キール640にも、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の孔646が貫通して形成されている。加えて、更に骨が中を通って成長し易いように、キール640には間隙648も形成されている。間隙648は、人口関節600の挿入時に、X線を使って支持プレート602の位置と整列を評価することができるようにするための基準点も提供する。なお、キール640を貫通する孔646又は間隙648の個数は幾つでもよく、1つの孔又は間隙でも、複数の孔と間隙でもよいと理解されたい。また、孔646と間隙648は必ずしもキール640を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよいと理解されたい。また、キール640には、部分的な彫り込み又は完全に貫通する孔646又は間隙648が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。加えて、孔646は円形形状を有するものとして示しているが、孔646の寸法形状は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素602の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されている。特に、支承面614とキール640の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面614とキール640の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0108】
或る実施形態では、関節要素604は、関節面652と反対側の支承面654を有する支持プレート650を含んでいる。支持プレート650は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。或る実施形態では、支持プレート610は、脊椎の左側又は右側何れかからの斜め方向挿入進入をやり易くするために三角形様の形状に作られており、従って辺部分P4、P5、P6を含んでいる。辺部分P4、P5、P6は、湾曲(P5で図示)又は直線(P4及びP6で図示)形状を含め各種形状を採ることができる。支持プレート650は、関節要素602に関連して先に論じたように、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合するための1つ又は複数のノッチ656又は他の形式の割出し部を含んでいる。
【0109】
或る実施形態では、関節面652には凸形状を有する陥凹部660があり、球状のソケットとして構成されている。しかしながら、陥凹部660の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面652の残りの部分は、傾斜状又は人工器官の挿入及び/又は使用をやり易くするように構成されたその他の形状であってもよい。
【0110】
凹状の陥凹部660は、概ね滑らかで連続する関節面を有するものとして示しているが、要素602、604の当接する関節面の間に存在する粒子状の屑の様な物質を除去するための手段を提供するために、表面くぼみ又は空洞を陥凹部660の一部に沿って形成してもよい。その場合、ボール620の凸状関節面が、代わりに概ね滑らかで連続する関節面を形成する。別の実施形態では、当接する関節面の間に存在する粒子状物質を除去し易くするため、凸型突起部620と凹型陥凹部660のそれぞれに表面くぼみが形成されている。
【0111】
フランジ部材即ちキール670は、関節要素602のキール640と同様に構成され、支承面654から伸張している。或る実施形態では、キール670は、中央に位置し、キール640と一直線上に、又は平行に配置されている。キール640は、真っ直ぐであるが、ノッチ656に向かう方向に沿って伸張しており、支持プレート650の辺部分の1つP4と平行である。このような実施形態では、上記の前方、側方又は経孔式進入法ではなく斜め方向からの進入法を使用して人工関節600を挿入できるようになる。実施形態の中には、キール670をオフセットして配置することにより、静脈、動脈、骨部分、又は人工関節600の挿入の際に存在する他の障害物を迂回し易くしているものもある。
【0112】
なお、キール670には、この他の位置、形状、向き及び量も考えられるものと理解されたい。また、同様の理由又は追加の理由により、使用するキール670の個数を増すこともできると理解されたい。また、キール670は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール670は、キール670の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。或る実施形態では、キール670にも、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の孔676が貫通して形成されている。加えて、更に骨が中を通って成長し易いように、キール670には間隙678も形成されている。間隙678は、人口関節600の挿入時に、X線を使って支持プレート604の位置と整列を評価することができるようにするための基準点も提供する。なお、キール670を貫通する孔676又は間隙678の個数は幾つでもよく、1つの孔又は間隙でも、複数の孔又は間隙でもよいと理解されたい。また、孔676と間隙678は必ずしもキール670を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよいと理解されたい。また、キール670には、部分的な彫り込み又は完全に貫通する孔676又は間隙678が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。加えて、孔676又は円形形状を有するものとして示しているが、孔676の形状寸法は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素602の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面654とキール670の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面654とキール670の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0113】
実施形態の中には、キール640、670の一方又は両方が、縁部680、682により示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キール640、670を関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部680、682は、椎体にキール640、670を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできるが、これについては後に詳しく述べる。
【0114】
図42から図44aに示すように、椎間空間内に人工関節600を挿入できるようにするために、上側及び下側の椎骨VU、VLには、その間に人工関節600を受け入れるための前処理が施される。具体的に図43では、図38から図40の人工関節600の構成に合わせて、複数のスロット690、692が、上側及び下側の椎骨VU、VLの椎骨終板に沿ってそれぞれ形成されている。スロット690、692は、キール640、670自身で形成してもよいし、上記方法の1つ又はそれ以上のやり方で事前に前処理で形成してもよい。図42から図44で分かるように、1つ又は複数の血管694が直線的な前方からの進入の障害となる場合は、斜め方向からの進入により前方/側方挿入が可能になる。移植辺600の設計も、椎骨VU、VLの骨終板との接触に関し十分な接触面積を確保できるようにしている。
【0115】
図44bに示すように、或る実施形態では、人工関節600は、同時係属中の米国特許出願第10/430,473号に開示しているガイドの様な器具を介して椎間空間に挿入することができ、同出願をここに援用する。人工関節600を挿入するための挿入過程の或る例では、画像化装置を使用して椎骨VU、VLの中心線Mを見つけ出し、中心線に沿って上側椎骨VUにピン695を挿入する。次いで、フランジ697を介して傾斜ガイド部材696をピン695に接続し、傾斜ガイド部材696に付帯しているハンドル(図示せず)を正しい位置に調整する。次に、傾斜ガイド部材696の傾斜ピン698を上側椎骨VUに叩き込んで、傾斜ガイド部材を固定し、これにより人工関節600の移植辺挿入の進入基準点と方向が示される。ここで、前方斜め方向からの進入法により椎間空間に人工関節600を移植するためにガイド(図示せず)を使用するが、その詳細は同時係属中の米国特許出願第10/430,473号に記載されている。
V.可動軸受型人工関節
別の実施形態では、上記人工関節は、並進運動並びに回転運動ができるように変更されている。例えば、図42から図47に、前方挿入用の可動軸受型人工関節を、全体として参照番号700で示している。なお、分かり易くするために、可動軸受型人工関節700を前方挿入に関して説明するが、可動軸受型人工関節には様々な挿入方向が考えられるものと理解されたい。
【0116】
人工関節700は、概ね縦軸Lに沿って伸張し、第1関節要素702と第2関節要素704を含んでいる。関節要素702、704は、協働して関節式関節700を形成しており、この関節は、隣接する椎体VS、VI(図48)の間の椎間空間S1の様な一対の椎体の間の椎間空間内に配置できる寸法形状に作られている。
【0117】
人工関節700は、隣接する椎体VS、VIの間で相対的な軸回転及び回転運動ができるようにして、自然の椎間円板が作り出す正常な生体力学的運動と実質的に同様な動作を維持又は回復させるものであるが、並進運動の要素を更に備えている。より具体的には、関節要素702、704は、縦軸L回りの側方又は一方の側から他方の側への軸回転運動、及び横軸T回りの前後軸回転運動を含め、数多くの軸回りに互いに対して軸回転することができる。なお、或る実施形態では、関節要素702、704は、縦軸L及び横軸Tと交差する平面内のどの様な軸の回りにでも互いに対して軸回転することができるものと理解されたい。加えて、関節要素702、704は回転軸R回りに互いに対して回転することができる。更に、関節要素702、704は、互いに対して並進運動できるようになっているが、これについては後で詳しく説明する。
【0118】
人工関節700の関節要素702、704は、多種多様な材料で製作することができ、或る実施形態では、関節要素702、704は、コバルトクロムモリブデン合金(ASTM F−799又はF−75)で製作されている。しかしながら、別の実施形態では、関節要素702、704は、チタニウム又はステンレス鋼の様な他の材料、ポリエチレンの様な高分子材料、又は当業者には自明の生体適合性を有するその他何らの材料で製作されている。関節要素702、704の椎骨に直接接触して配置される面は、例えばリン酸カルシウムから成るヒドロキシアパタイトコーティング剤の様な骨成長促進物質で被覆されている。また、関節要素702、704の椎骨に直接接触して配置される面は、骨の成長を更に強化するため、骨成長促進物質で被覆される前に粗される。このように表面を粗すのは、例えば、酸腐食、ローレット切り、ビーズコーティングの塗布、又は当業者であれば想起できるその他の粗面加工法で行うことができる。
【0119】
関節要素702は、関節面708と反対側の支承面710を有する支持プレート706を含んでいる。支持プレート706は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート706は、外科処置器具(図示せず)の対応する部分を受け入れこれと係合し、隣接する椎体の間の椎間空間内で人工関節700を操作及び挿入し易くするための1つ又は複数のノッチ712又は他の形式の割出し部を含んでいる。外科処置器具(図示せず)は、関節式関節700の操作及び挿入の際に関節要素702、704を互いに対して所定の向き及び空間関係に保持し、隣接する椎骨の間に関節要素702、704が正しく配置されたら係合を解くように構成されているのが望ましい。
【0120】
或る実施形態では、図49aと図49bに示すように、関節面708に陥凹部714が形成されている。関節面708に沿って陥凹部714を画定している円周縁部716は、陥凹面718と同心関係にあるが、末広がりの円周側面部720(図49b)により陥凹面に比較して直径が小さくなっている。円形状を有するように説明しているが、陥凹部714は、方形、三角形、又は矩形形状の様ないくつもの形状を採ることができるものと理解されたい。
【0121】
図50aと50bに示すように、陥凹部714(図49b)は、モジュール式突起部材722の一部を受け入れるように設計されている。突起部材722は、陥凹部714の形状に対応する形状に作られたフランジ部724を含んでいる。而して、フランジ部724は、実質的に平坦な係合面728で終端する末広がりの円周側面部726を含んでいる。係合面728は、実質的に平坦な陥凹面718(図49b)と係合するようになっている。なお、実質的に平坦であるものとして説明しているが、係合面728と陥凹面718はその他多くの対応する形状を採ることができるものと理解されたい。係合面728の直径は、陥凹面718の直径よりも小さく、従ってモジュール式突起部材722が関節要素702に対して並進運動できるようになっている。
【0122】
モジュール式突起部材722の残り部分は、凸形状を有する突起部730を形成しており、球形のボールとして構成されている(その半分を図示)。なお、突起部730の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。また、関節面708の残りの部分は、平面でも非平面でもよく、例えば、突起部224の周囲に伸張する傾斜又は円錐型の形状であってもよいものと理解されたい。
【0123】
或る実施形態では、突起部730の凸状の関節面は、突起部730に沿って伸張する表面くぼみ又は空洞732で中断されている。或る実施形態では、表面くぼみ732は、溝として構成されている。しかしながら、表面くぼみを一切設けない構成を含め、他の型式の表面くぼみも考えられるものと理解されたい。溝732の1つの目的は、関節要素702、704の当接する部分の間に存在する物質を除去し易くすることである。より具体的には、溝732は、例えば構成要素702、704の当接する関節面の間に存在する粒子状物質の様な物質を取り除くのに役立つ。
【0124】
図45と図49bに示すように、フランジ部材即ちキール740は、支承面710から伸張し、隣接する椎骨終板(図47のVIなど)に事前に形成されている孔に配置されるように構成されている。或る実施形態では、キール740は、支承面710から垂直に伸張し、支承面710に沿ってほぼ中央に配置されている。しかしながら、キール740の配置と向きは他にも考えられるものと理解されたい。
【0125】
或る実施形態では、キール740は、支持プレート706の実質的に全長に沿って伸張している。このような実施形態では、前方進入法を使用して人工関節700を挿入できるようになる。しかしながら、先に論じたように、人工関節700の挿入には、側方、経孔式、又は前方斜め方向からの進入法の様な他の進入法も考えられる。別の実施形態では、キール740は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール740は、キール740の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0126】
キール740には、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の孔742が貫通して形成されている。しかしながら、キール740を貫通して形成される孔742の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔742は必ずしもキール740を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよいと理解されたい。更に、キール740には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔742が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔742は円形形状を有するものとして示しているが、孔232の形状寸法は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素702の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面710とキール740の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面710とキール740の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0127】
図45から図47に示すように、或る実施形態では、関節要素704は、関節面752と反対側の支承面754を有する支持プレート750を含んでいる。支持プレート750は、隣接する椎骨の椎骨終板の寸法形状と実質的に対応する寸法形状に作られている。支持プレート750は、関節要素702に関連して先に説明したように、外科処置器具の対応する部分を受け入れこれと係合するための1つ又は複数のノッチ756又は他の形式の割出し部を含んでいる。
【0128】
或る実施形態では、関節面752には陥凹部758(図47)が形成されており、球状のソケットの様な凸形状を有している。しかしながら、陥凹部758の構成は他にも考えられ、例えば、筒状、楕円形又は他の弓形の形状、又は非弓形の形状も考えられる。関節面752の残りの部分は、傾斜状、又は関節式関節700の挿入及び/又は使用をやり易くするように構成されたその他の形状であってもよい。凹状の陥凹部758は、概ね滑らかで連続する関節面を有するものとして示しているが、関節要素702、704の当接する関節面の間に存在する粒子状の屑の様な物質を除去し易くするために、表面くぼみ又は空洞を陥凹部758の一部に沿って形成してもよい。その場合、突起部730の凸状関節面が、代わりに、概ね滑らかで連続する関節面を形成する。別の実施形態では、当接する関節面の間に存在する粒子状物質を除去し易くするため、凸型突起部730と凹型陥凹部758のそれぞれに表面くぼみが形成されている。
【0129】
フランジ部材即ちキール760は、関節要素702のキール740と同様に構成され、支承面754から伸張している。或る実施形態では、キール760は、支承面754から垂直方向に伸張し、支承面754に沿って概ね中央に位置している。しかしながら、キール760には、他の配置及び向きも考えられるものと理解されたいまた、関節要素704は、支承面から伸張するキール760を2つ以上含んでいてもよいと理解されたい。
【0130】
或る実施形態では、キール760は、支持プレート750の実質的に全長に沿って伸張している。このような実施形態では、前方進入法を使用して人工関節700を挿入できるようになる。しかしながら、先に論じたように、人工関節700の挿入には、側方、経孔式、又は前方斜め方向からの進入法の様な他の進入法も考えられる。別の実施形態では、キール760は、角度を付け、先細にし、又はキールに対する機能的要求を実現し易くする何か別の形状にしてもよい。更に別の実施形態では、キール760は、キール760の本体部分と交差して伸張する横方向部分(図示せず)を含む有翼キールとして構成されている。
【0131】
キール760にも、隣接する椎骨に対する固定を強化するために骨が中を通って成長し易いように一対の孔762が貫通して形成されている。しかしながら、キール760を貫通して形成される孔762の個数は幾つでもよく、1つの孔でも、3つ以上の孔でもよいと理解されたい。また、孔762は必ずしもキール760を貫通している必要はなく、代わりに部分的に彫り込まれていてもよいと理解されたい。更に、キール760には、部分的に彫り込まれた孔、又は完全に貫通する孔762が、必ずしも形成されていなくてもよいものと理解されたい。また、孔762は円形形状を有するものとして示しているが、孔762の形状寸法は、これ以外でもよいものと理解されたい。先に論じたように、関節要素704の椎骨に直接接触する面は、骨成長促進物質で被覆されているのが望ましい。特に、支承面754とキール760の面は、隣接する椎骨との骨係合を促すためにヒドロキシアパタイトで被覆することができる。これも先に論じたように、支承面754とキール760の面は、ヒドロキシアパタイトで被覆する前に粗らされる。
【0132】
実施形態の中には、キール740、760の一方又は両方が、図45及び図46の縁部760aにより示している鋭利な前方縁部を含んでいるものもある。このような縁部を設けることにより、キール740、760を関係する椎体へ挿入し易くなる。更に、縁部760aは、椎体にキール760を受け入れるためのスロットが不要になる程度に鋭利な縁部とすることもできるが、これについては後に詳しく述べる。
【0133】
図45に示すように、関節要素702の関節面708に形成された陥凹部714にモジュール式突起部722部材を挿入することにより、可動軸受け人工関節700が組み立てられる。組み立てられると、人工関節700は、隣接する椎体VS、VI(図48)の間の円板空間S1に挿入する準備が整う。
【0134】
図48に示すように、椎間空間S1内に人工関節700を挿入するために、隣接する椎体VS、VIには、その間に人工関節700を受け入れるための前処理が施される。図45から図47の人工関節700の構成に合わせて、スロット770、772が、椎骨VSと椎骨VIそれぞれの椎骨終板に沿って形成されている。スロット770、772は、キール740、760自身で形成してもよいし、上記方法の1つ又はそれ以上のやり方で事前に前処理で形成してもよい。
【0135】
人工関節700を円板空間S1に挿入すると、モジュール式突起部722が関節要素704の凹状陥凹部758に係合しているので、関節要素704は、関節要素702に対して並進運動することができる。例えば、図51は、モジュール式突起部材722が後方位置にある状態(関節要素704が後方P方向に動いた結果)を示しており、図52は、モジュール式突起部材722が前方位置にある状態(関節要素704が前方A方向に動いた結果)を示している。図51と図52は、無論、突起部材722とその対応する陥凹部714の装着により許容される並進運動の代表例を示したものに過ぎず、モジュール式突起部材722の、従って関節要素704の関節要素702に対する並進運動の量は、P方向及びA方向以外の方向も含めて変えることができる。更に、関節要素702の陥凹部714内にモジュール式突起部材722を配置することにより、モジュール式突起部が関節要素702に対して旋回できるようになる。つまり、このような実施形態では、モジュール式突起部材722は、関節要素704に与えられた並進運動とは独立して、(陥凹部758との係合を介して)関節要素704に回転を与えることができるという利点を更に提供している。並進運動と回転運動の間にこのような独立的関係があることにより、この人工関節700では、並進運動が回転運動に依存しているか又はその逆の人工関節に比べて、もたらされる可動性の量が更に増える。
【0136】
以上、本開示内容を幾つかの好適な実施形態に関連付けて説明してきた。この開示内容を読んだ後で当業者に想起されるであろう改良点又は変更点は、本出願の精神と範囲内に含まれるものと考えられる。例えば、上記関節式関節の関節要素は、本開示内容の当該態様から逸脱することなく、逆にすることができる。従って、上記開示内容では、幾つかの修正、変更及び置換えができるものと考えられ、例を挙げると、開示内容のある種の特徴は他の特徴と対応付けて使用することなく、採用することができる。また、「縦方向」及び「横方向」の様な空間を示す用語は全て説明を目的としたものであり、本開示内容の範囲内で変更が可能であると理解されたい。従って、特許請求の範囲に述べる内容は、本開示の範囲に矛盾の無いやり方で広義に解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】根性脊椎症の脊柱の一部分の側面図である。
【図2】図1の一対の隣接する椎骨終板の側面図である。
【図3a】ロッドとねじ装置が装着された図2の一対の隣接する椎骨終板の側面図である。
【図3b】図3aの一対の隣接する椎体の縦部分断面図である。
【図4a】本開示の一の実施形態による側方挿入用関節式人工関節の斜視図である。
【図4b】本開示の他の実施形態による側方挿入用関節式人工関節の斜視図である。
【図4c】図4bの側方挿入用関節式人工関節の前面図である。
【図5】図4aの人工関節の縦面図である。
【図6】図4aの人工関節の側面図である。
【図7】一対の根性脊椎症椎骨終板の間に配置された図4aの人工関節の側方部分断面図である。
【図8】一対の椎骨終板の間に配置された代わりの関節式人工関節の側方部分断面図である。
【図9】本開示の他の実施形態による代わりの関節式人工関節の斜視図である。
【図10】一対の根性脊椎症椎骨終板の間に配置された図9の人工関節の側方部分断面図である。
【図11】一対の椎骨終板の間に配置された代わりの関節式人工関節の側方部分断面図である。
【図12】本開示の他の実施形態による人工円板器官の斜視図である。
【図13】本開示の他の実施形態による代わりの人工円板器官の斜視図である。
【図14】本開示の他の実施形態による前方挿入用の代わりの関節式人工関節の斜視図である。
【図15】図14の人工関節の縦面図である。
【図16】図14の人工関節の側面図である。
【図17】一対の根性脊椎症椎骨終板の間に配置された図14の人工関節の側面図である。
【図18】本開示の他の実施形態による前方進入用の代わりの関節式人工関節の縦面図である。
【図19】本開示の更に他の実施形態による前方進入用の代わりの関節式人工関節の縦面図である。
【図20】本開示の更に他の実施形態による前方進入用の代わりの関節式人工関節を縦面図である。
【図21】図18の人工関節を受け入れるためのスロットを有する一対の椎骨終板の縦面図である。
【図22】図19の人工関節を受け入れるためのスロットを有する一対の椎骨終板の縦面図である。
【図23】図20の人工関節を受け入れるためのスロットを有する一対の椎骨終板の縦面図である。
【図24】一対の根性脊椎症椎骨終板の間に配置された図14の人工関節と矯正移植片の側方部分断面図である。
【図25】一対の根性脊椎症椎骨終板の間に配置された図14の人工関節とラグスクリューの側方部分断面図である。
【図26】図25に示した装置の概略上面図である。
【図27】孔横断式挿入用の経路を示している、椎体の概略上面図である。
【図28】本開示の他の実施形態による孔横断式挿入用の代わりの関節式人工関節の斜視図である。
【図29】図28の人工関節の側面図である。
【図30】図28の人工関節の縦面図である。
【図31a】一対の椎骨終板間に配置された図28の人工関節の側方部分断面図である。
【図31b】一対の椎骨終板間に配置された図28の人工関節の縦部分断面図である。
【図32】椎骨終板に形成された孔横断スロットを示している概略上面図である。
【図33】椎骨終板上方に挿入されたミリング装置を示す概略上面図である。
【図34a】一対の隣接する椎骨終板間に配置された図33のミリング装置の側面図である。
【図34b】図34aのミリング装置のミリング工具の詳細図である。
【図34c】代わりのミリング工具の詳細図である。
【図35】図33のミリング装置の概略図である。
【図36】本開示の他の実施形態による孔横断挿入用の代わりの関節式人工関節の斜視図である。
【図37】図36の人工関節の側面図である。
【図38】図36の人工関節の縦面図である。
【図39】本開示の他の実施形態による前斜方向挿入用の代わりの関節式人工関節の斜視図である。
【図40】図39の人工関節の縦面図である。
【図41】図39の人工関節の側面図である。
【図42】一対の椎骨終板間に配置された図39の人工関節の側方部分断面図である。
【図43】一対の椎骨終板間に配置された図39の人工関節の縦部分断面図である。
【図44a】図39の人工関節を受け入れるための椎骨終板に形成されたスロットを示している上面概略図である。
【図44b】図39の人工関節の挿入に伴うアライメント過程を示す概略図である。
【図45】本開示の更に他の実施形態による代わりの人工関節の分解組立図である。
【図46】図45の人工関節の斜視図である。
【図47】図46の人工関節の縦面図である。
【図48】一対の隣接する椎骨終板の縦面図である。
【図49a】図45の人工関節の関節要素の平面図である。
【図49b】図49aの関節要素の49b−49b線に沿う断面図である。
【図50a】図45の人工関節のモジュール式突起部材の平面図である。
【図50b】図50aのモジュール式突起部材の50b−50b線に沿う断面図である。
【図51】図49aの関節要素に挿入された図50aのモジュール式突起部材の平面図である。
【図52】図49aの関節要素に挿入された図50aのモジュール式突起部材の、図51に対して異なる位置にあるモジュール式突起部材を示している平面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の根性脊椎症の椎骨の間に画定された椎間空間へ縦方向に挿入するための人工器官において、
第1要素であって、
第2支承面に沿って縦方向に伸張している第1フランジと、
第1関節面から、前記第1関節面に対してオフセットして伸張している突起部と、を備えている第1要素と、
前記第1要素と係合するようになっている第2要素であって、
第2支承面に沿って縦方向に伸張しており、前記第2要素が前記第1要素と係合すると前記第1フランジと実質的に整列することになる第2フランジと、
第2関節面に、前記第2関節面に対してオフセットして形成され、これにより第1椎骨と前記第1椎骨に隣接する第2椎骨の間の根性脊椎症の関係に適応している陥凹部と、を備えている第2要素、とを備えており、
前記突起部と前記陥凹部は互いに係合して、前記第1及び第2要素の間で関節運動ができるようにする人工器官。
【請求項2】
前記第1及び第2フランジには、それぞれ少なくとも1つの孔が貫通して形成されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項3】
前記第1及び第2支承面は、それぞれ骨成長促進物質で被覆されており、前記第1及び第2支承面は、それぞれ前記第1及び第2椎骨に係合するようになっている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項4】
前記第1及び第2フランジは、それぞれ骨成長促進物質で被覆されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項5】
前記第1及び第2フランジは、それぞれ前記第1及び第2椎骨に貫入するための鋭利な部分を備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項6】
前記第1及び第2要素は、コバルトクロムモリブデン合金で製作されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項7】
前記第1及び第2要素は、それぞれ外科処置器具を受け入れるための少なくとも1つのノッチが縦方向に形成されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項8】
前記突起部は凸型部分であり前記陥凹部は凹型部分である、請求項1に記載の人工器官。
【請求項9】
前記第1要素は、前記第1支承面に沿って縦方向に伸張する追加のフランジを備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項10】
前記第2要素は、前記第2支承面に沿って縦方向に伸張する追加のフランジを備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項11】
前記第1フランジは、前記第1支承面と実質的に平行な側方伸長部を備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項12】
前記第2フランジは、前記第2支承面と実質的に平行な側方伸長部を備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項13】
椎間空間へ挿入するための人工器官において、
縦方向に挿入する際に第1椎骨に縦方向に係合させるための手段を有する第1要素と、
縦方向に挿入する際に第2椎骨に縦方向に係合させるための手段を有する第2要素と、を備えており、
前記第1及び第2要素の一方は突起部を備え、他方は陥凹部を備えており、前記突起部と前記陥凹部は互いに係合するようになっており、前記突起部と前記陥凹部の一方が他方に対してオフセットしている人工器官。
【請求項14】
前記突起部は第1方向にオフセットしており、前記陥凹部は前記第1方向とは実質的に逆の第2方向にオフセットしている、請求項13に記載の人工器官。
【請求項15】
前記第1及び第2椎骨と縦方向に係合させるための前記第1及び第2手段は、それぞれ縦方向に伸張するフランジである、請求項13に記載の人工器官。
【請求項16】
前記第1要素は、第1関節面の反対側にあり、前記第1椎骨と係合するようになっている第1支承面を更に備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項17】
前記第1フランジは、前記第1支承面に沿って伸張している、請求項16に記載の人工器官。
【請求項18】
前記突起部又は前記陥凹部の一方は前記第1関節面に形成されている、請求項16に記載の人工器官。
【請求項19】
前記第2要素は、第2関節面の反対側にあり、前記第2椎骨に係合するようになっている第2支承面を更に備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項20】
前記第2フランジは前記第2支承面に沿って伸張している、請求項19に記載の人工器官。
【請求項21】
前記突起部と前記陥凹部のうちの一方は前記第2関節面に形成されている、請求項19に記載の人工器官。
【請求項22】
前記第1及び第2フランジには、それぞれ少なくとも1つの孔が貫通して形成されている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項23】
前記第1支承面及び前記第1フランジは、それぞれ骨成長促進物質で被覆されている、請求項16に記載の人工器官。
【請求項24】
前記第2支承面及び前記第2フランジは、それぞれ骨成長促進物質で被覆されている、請求項19に記載の人工器官。
【請求項25】
前記第1及び第2フランジは、それぞれ前記第1及び第2椎骨に貫入するための鋭利な部分を備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項26】
前記第1及び第2要素は、コバルトクロムモリブデン合金で製作されている、請求項14に記載の人工器官。
【請求項27】
前記第1及び第2要素は、それぞれ外科処置器具を受け入れるための少なくとも1つのノッチが縦方向に形成されている、請求項14に記載の人工器官。
【請求項28】
前記突起部は凸型部分であり前記陥凹部は凹型部分である、請求項14に記載の人工器官。
【請求項29】
前記第1要素は、前記第1支承面に沿って縦方向に伸張する追加のフランジを備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項30】
前記第2要素は、前記第2支承面に沿って縦方向に伸張する追加のフランジを備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項31】
前記第1フランジは、前記第1支承面と実質的に平行な側方伸長部を備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項32】
前記第2フランジは、前記第2支承面と実質的に平行な側方伸長部を備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項33】
根性脊椎症の脊柱の一部を安定させるための装置において、
隣接する根性脊椎症の椎体同士を係合させるようになっている人工関節器官であって、第1要素と、オフセットしている第2要素とを備えていて、前記第1及び第2要素は、協働して、前記第1及び第2要素の間で関節運動ができるようにしている人工関節器官と、
前記人工関節器官に隣接して配置された人工靭帯と、を備えており、
前記人工靭帯は各椎体に係合している、装置。
【請求項34】
前記人工靭帯は織布移植片である、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記根性脊椎症の椎体に付随する骨折部を修復するためのねじ部材を更に備えている、請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記ねじ部材はラグねじである、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前方進入により脊椎すべり症を矯正するための方法において、
オフセットした突起部を備えている第1関節要素、及び前記オフセットした突起部と係合するようになっているオフセットした陥凹部を備えている第2関節要素を有する人工装置を用意する段階と、
前記第1関節要素を第1椎骨に縦方向に挿入し、前記第2関節要素を前記第1椎骨に隣接する第2椎骨に縦方向に挿入する段階と、を備える方法。
【請求項38】
前記突起は前記第1関節要素の面から伸張し、前記突起は前記第1関節要素の面に対してオフセットした位置にある、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記陥凹部は、第2関節要素の面に形成され、前記陥凹部は、前記第2関節要素の面に対してオフセットした位置にあり、前記第1関節要素の突起部に対して実質的に逆方向にオフセットしている、請求項37に記載の方法。
【請求項1】
一対の根性脊椎症の椎骨の間に画定された椎間空間へ縦方向に挿入するための人工器官において、
第1要素であって、
第2支承面に沿って縦方向に伸張している第1フランジと、
第1関節面から、前記第1関節面に対してオフセットして伸張している突起部と、を備えている第1要素と、
前記第1要素と係合するようになっている第2要素であって、
第2支承面に沿って縦方向に伸張しており、前記第2要素が前記第1要素と係合すると前記第1フランジと実質的に整列することになる第2フランジと、
第2関節面に、前記第2関節面に対してオフセットして形成され、これにより第1椎骨と前記第1椎骨に隣接する第2椎骨の間の根性脊椎症の関係に適応している陥凹部と、を備えている第2要素、とを備えており、
前記突起部と前記陥凹部は互いに係合して、前記第1及び第2要素の間で関節運動ができるようにする人工器官。
【請求項2】
前記第1及び第2フランジには、それぞれ少なくとも1つの孔が貫通して形成されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項3】
前記第1及び第2支承面は、それぞれ骨成長促進物質で被覆されており、前記第1及び第2支承面は、それぞれ前記第1及び第2椎骨に係合するようになっている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項4】
前記第1及び第2フランジは、それぞれ骨成長促進物質で被覆されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項5】
前記第1及び第2フランジは、それぞれ前記第1及び第2椎骨に貫入するための鋭利な部分を備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項6】
前記第1及び第2要素は、コバルトクロムモリブデン合金で製作されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項7】
前記第1及び第2要素は、それぞれ外科処置器具を受け入れるための少なくとも1つのノッチが縦方向に形成されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項8】
前記突起部は凸型部分であり前記陥凹部は凹型部分である、請求項1に記載の人工器官。
【請求項9】
前記第1要素は、前記第1支承面に沿って縦方向に伸張する追加のフランジを備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項10】
前記第2要素は、前記第2支承面に沿って縦方向に伸張する追加のフランジを備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項11】
前記第1フランジは、前記第1支承面と実質的に平行な側方伸長部を備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項12】
前記第2フランジは、前記第2支承面と実質的に平行な側方伸長部を備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項13】
椎間空間へ挿入するための人工器官において、
縦方向に挿入する際に第1椎骨に縦方向に係合させるための手段を有する第1要素と、
縦方向に挿入する際に第2椎骨に縦方向に係合させるための手段を有する第2要素と、を備えており、
前記第1及び第2要素の一方は突起部を備え、他方は陥凹部を備えており、前記突起部と前記陥凹部は互いに係合するようになっており、前記突起部と前記陥凹部の一方が他方に対してオフセットしている人工器官。
【請求項14】
前記突起部は第1方向にオフセットしており、前記陥凹部は前記第1方向とは実質的に逆の第2方向にオフセットしている、請求項13に記載の人工器官。
【請求項15】
前記第1及び第2椎骨と縦方向に係合させるための前記第1及び第2手段は、それぞれ縦方向に伸張するフランジである、請求項13に記載の人工器官。
【請求項16】
前記第1要素は、第1関節面の反対側にあり、前記第1椎骨と係合するようになっている第1支承面を更に備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項17】
前記第1フランジは、前記第1支承面に沿って伸張している、請求項16に記載の人工器官。
【請求項18】
前記突起部又は前記陥凹部の一方は前記第1関節面に形成されている、請求項16に記載の人工器官。
【請求項19】
前記第2要素は、第2関節面の反対側にあり、前記第2椎骨に係合するようになっている第2支承面を更に備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項20】
前記第2フランジは前記第2支承面に沿って伸張している、請求項19に記載の人工器官。
【請求項21】
前記突起部と前記陥凹部のうちの一方は前記第2関節面に形成されている、請求項19に記載の人工器官。
【請求項22】
前記第1及び第2フランジには、それぞれ少なくとも1つの孔が貫通して形成されている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項23】
前記第1支承面及び前記第1フランジは、それぞれ骨成長促進物質で被覆されている、請求項16に記載の人工器官。
【請求項24】
前記第2支承面及び前記第2フランジは、それぞれ骨成長促進物質で被覆されている、請求項19に記載の人工器官。
【請求項25】
前記第1及び第2フランジは、それぞれ前記第1及び第2椎骨に貫入するための鋭利な部分を備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項26】
前記第1及び第2要素は、コバルトクロムモリブデン合金で製作されている、請求項14に記載の人工器官。
【請求項27】
前記第1及び第2要素は、それぞれ外科処置器具を受け入れるための少なくとも1つのノッチが縦方向に形成されている、請求項14に記載の人工器官。
【請求項28】
前記突起部は凸型部分であり前記陥凹部は凹型部分である、請求項14に記載の人工器官。
【請求項29】
前記第1要素は、前記第1支承面に沿って縦方向に伸張する追加のフランジを備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項30】
前記第2要素は、前記第2支承面に沿って縦方向に伸張する追加のフランジを備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項31】
前記第1フランジは、前記第1支承面と実質的に平行な側方伸長部を備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項32】
前記第2フランジは、前記第2支承面と実質的に平行な側方伸長部を備えている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項33】
根性脊椎症の脊柱の一部を安定させるための装置において、
隣接する根性脊椎症の椎体同士を係合させるようになっている人工関節器官であって、第1要素と、オフセットしている第2要素とを備えていて、前記第1及び第2要素は、協働して、前記第1及び第2要素の間で関節運動ができるようにしている人工関節器官と、
前記人工関節器官に隣接して配置された人工靭帯と、を備えており、
前記人工靭帯は各椎体に係合している、装置。
【請求項34】
前記人工靭帯は織布移植片である、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記根性脊椎症の椎体に付随する骨折部を修復するためのねじ部材を更に備えている、請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記ねじ部材はラグねじである、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前方進入により脊椎すべり症を矯正するための方法において、
オフセットした突起部を備えている第1関節要素、及び前記オフセットした突起部と係合するようになっているオフセットした陥凹部を備えている第2関節要素を有する人工装置を用意する段階と、
前記第1関節要素を第1椎骨に縦方向に挿入し、前記第2関節要素を前記第1椎骨に隣接する第2椎骨に縦方向に挿入する段階と、を備える方法。
【請求項38】
前記突起は前記第1関節要素の面から伸張し、前記突起は前記第1関節要素の面に対してオフセットした位置にある、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記陥凹部は、第2関節要素の面に形成され、前記陥凹部は、前記第2関節要素の面に対してオフセットした位置にあり、前記第1関節要素の突起部に対して実質的に逆方向にオフセットしている、請求項37に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図32】
【図33】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図51】
【図52】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図32】
【図33】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図51】
【図52】
【公表番号】特表2006−517458(P2006−517458A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503543(P2006−503543)
【出願日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/004213
【国際公開番号】WO2004/071347
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(500273034)エスディージーアイ・ホールディングス・インコーポレーテッド (48)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/004213
【国際公開番号】WO2004/071347
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(500273034)エスディージーアイ・ホールディングス・インコーポレーテッド (48)
【Fターム(参考)】
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