人工関節用手術器具
【課題】手術用部材に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供する。
【解決手段】本体11には、手術用部材103への係合部11aと把持部11bとが設けられる。固定部材12は、本体11に対して突出方向及び退避方向に移動自在に支持され、先端側が手術用部材103に嵌合することで手術用部材103と本体11とを固定する。磁石ユニット13は、本体11に取り付けられた第1磁石15と固定部材に取り付けられた第2磁石16とを有し、両磁石間の磁力によって固定部材12を突出方向に付勢する。解除機構14は、固定部材12に固定され、手動操作されることで、固定部材12を退避方向に付勢して手術用部材103と本体11との固定を解除する。
【解決手段】本体11には、手術用部材103への係合部11aと把持部11bとが設けられる。固定部材12は、本体11に対して突出方向及び退避方向に移動自在に支持され、先端側が手術用部材103に嵌合することで手術用部材103と本体11とを固定する。磁石ユニット13は、本体11に取り付けられた第1磁石15と固定部材に取り付けられた第2磁石16とを有し、両磁石間の磁力によって固定部材12を突出方向に付勢する。解除機構14は、固定部材12に固定され、手動操作されることで、固定部材12を退避方向に付勢して手術用部材103と本体11との固定を解除する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術において用いられ、関節部分に配置される手術用部材に対して着脱されるとともに手術用部材を保持するための人工関節用手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工膝関節置換術等のように、関節に異常が認められた患者に対してその関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術である人工関節置換術が行われている。このような手術においては、関節部分に人工関節のインプラントである骨コンポーネントを設置するに際して、関節部分の骨に対する切削や穴あけ、掘削等の処置を施したり、適切なサイズの骨コンポーネントを選択して人工関節の適切な配置合わせを実現したりといった種々の目的に応じて関節部分に種々の手術用部材を配置することが行われる。
【0003】
上述した手術用部材としては、例えば、カットガイド、トライアル部材、スペーサ、ローテーションガイド、クラッシャー等がある。カットガイドは、骨を切断する際に切削工具を誘導するためのガイドとなるスリット部が形成された部材である。トライアル部材は、人工関節の配置合わせの際に用いられる部材である。スペーサは、人工関節を配置するためのスペースを確認する際に用いられる部材である。ローテーションガイドは、骨内に一端側が挿入されるロッド部材の他端側の回転角度を調整するために用いられる部材である。クラッシャーは、骨を掘削する際にハンマーで打ちつけられる工具として用いられる部材である。このように、上記の手術を行う術者は、骨コンポーネントを設置する前に、種々の手術用部材を用いることによって、骨に対して切削や掘削等の処置を行なったり、適切な骨コンポーネントのサイズを検討して決定したり、関節部分における骨コンポーネントの適切な配置状態や配置スペースを確保したり、といった作業等を行なう。また、このような手術中においては、術者は、手術用部材を何度も取り替えながら、上記の作業や検討を行うことが多い。
【0004】
上述のように手術用部材を関節部分に配置したり取り替えたりする場合には、術者は、手術用部材に対して着脱されるとともに手術用部材を保持するための人工関節用手術器具を用いる。このような人工関節置換術において用いられる人工関節用手術器具として、特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1では、人工膝関節置換術において用いられ、手術用部材のうちのトライアル部材である脛骨トレートライアルに対して着脱されるとともにこの脛骨トレートライアルを保持するための人工関節用手術器具である配置合わせハンドルが開示されている。そして、特許文献1においては、この配置合わせハンドルを脛骨トレートライアルに固定する機構として、ネジを用いたものとバネを用いたものとが開示されている。
【0005】
上記のネジを用いた配置合わせハンドルでは、配置合わせハンドルの接続端を脛骨トレートライアルに係合させた状態で、つまみネジを操作して脛骨トレートライアルのネジ切り部に螺合させて、配置合わせハンドルと脛骨トレートライアルとを固定する。そして、この固定を解除して脛骨トレートライアルから配置合わせハンドルを取り外すことも、つまみネジの操作により行われる。また、上記のバネを用いた配置合わせハンドルでは、脛骨トレートライアルに形成された穴に嵌合するボルトを付勢するバネが設けられ、ボルトにはリリースボタンが連結されている。そして、リリースボタンをバネの付勢力に抗して手前に引いた状態で、配置合わせハンドルの接続端を脛骨トレートライアルに係合させ、次いで、リリースボタンを放すことでバネの付勢力によってボルトを脛骨トレートライアルの穴に嵌合させる。これにより、配置合わせハンドルと脛骨トレートライアルとが固定される。一方、この固定を解除して脛骨トレートライアルから配置合わせハンドルを取り外す場合には、リリースボタンを手前に引き、ボルトの嵌合を外すことになる。
【0006】
【特許文献1】特許第3987148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1におけるネジを用いた配置合わせハンドル(人工関節用手術器具)では、ネジを回す操作を行って配置合わせハンドルと脛骨トレートライアル(手術用部材)との固定と解除とを行うように構成されている。このため、操作が非常に面倒であり、多くの手間を要してしまうこととなり、手術用部材に対して人工関節用手術器具を素早く確実に着脱することが困難となる。また、人工関節用手術器具を取り付けて手術用部材を関節部分に配置した状態で、電動工具を用いた骨の切削等の処置が行われると、ネジが緩んでしまい、人工関節用手術器具と手術用部材との固定が術者の意図に反して解除されてしまう虞がある。
【0008】
一方、特許文献1におけるバネを用いた配置合わせハンドル(人工関節用手術器具)では、バネとリリースボタンとを備える構成により、脛骨トレートライアル(手術用部材)に対して人工関節用手術器具を素早く着脱することができる。しかしながら、繰り返し使用されることに伴い、バネがへたってその付勢力が弱まってしまい、人工関節用手術器具と手術用部材との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することが困難になる虞がある。また、人工関節用手術器具においてバネを配置するために長い直線状のスペースが必要となるため、人工関節用手術器具の大型化を招いてしまい易いという問題がある。この場合、人工関節用手術器具が大型化することで、関節の周囲における手術用のスペースを小さくしてしまうことになる。
【0009】
尚、人工関節用手術器具と手術用部材とを固定する機構について、上述したネジやバネを用いた機構以外として、クランプ機構によるものも考えられる。しかしながら、クランプ機構を用いた人工関節用手術器具の場合、機構上大きなスペースを必要とするクランプ機構を設けることになるため、人工関節用手術器具の大型化を招いてしまい、手術用のスペースを小さくしてしまうことになる。また、クランプ機構の作動に板バネが必要となるため、繰り返し使用されることに伴い、板バネがへたってその付勢力が弱まってしまい、人工関節用手術器具と手術用部材との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することが困難になる虞がある。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、手術用部材に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための第1発明に係る人工関節用手術器具は、関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術において用いられ、関節部分に配置される手術用部材に対して着脱されるとともに前記手術用部材を保持するための人工関節用手術器具に関する。そして、第1発明に係る人工関節用手術器具は、前記手術用部材に対して係合する係合部が一端側に設けられるとともに、手動操作の際に把持される把持部が他端側に設けられた本体と、前記本体に対して当該本体から一端側に向かって突出する突出方向及び他端側に向かって退避する退避方向において移動自在に支持され、前記本体から突出する先端側が前記手術用部材に対して嵌合することで、前記係合部が係合した前記手術用部材と前記本体とを固定する固定部材と、前記本体に対して取り付けられた第1磁石と前記固定部材に対して取り付けられた第2磁石とを有し、前記第1磁石と前記第2磁石との間で作用する磁力によって前記固定部材を前記本体に対して前記突出方向に付勢する磁石ユニットと、前記固定部材に対して固定されて又は一体に設けられ、直接に手動操作されることで、又は、前記把持部が手動操作されることで、前記固定部材とともに変位して前記固定部材を前記本体に対して前記退避方向に付勢し、前記手術用部材と前記本体との固定を解除する解除機構と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、本体に取り付けられた第1磁石と固定部材に取り付けられた第2磁石との間で作用する磁力によって固定部材を突出方向に付勢し、固定部材の先端側を手術用部材に嵌合させることができる。これにより、人工関節用手術器具と手術用部材とを素早く固定することができる。そして、解除機構の操作により、又は、把持部の操作による解除機構の作動により、固定部材を退避方向に付勢し、人工関節用手術器具と手術用部材との固定を素早く解除することができる。このため、ネジを用いた人工関節用手術器具のような手間を要することがなく、手術用部材に対して人工関節用手術器具を素早く着脱することができる。また、磁石ユニットを用いるものであるため、人工関節用手術器具を取り付けて手術用部材を関節部分に配置した状態で、電動工具を用いた骨の切削等の処置が行われても、ネジのように緩む箇所がそもそもなく、人工関節用手術器具と手術用部材との固定が術者の意図に反して解除されてしまうこともない。
【0013】
また、本発明によると、第1磁石と第2磁石との間で作用する磁力を利用して固定部材を付勢する構成のため、バネやクランプ機構を用いた人工関節用手術器具とは異なり、繰り返し使用されても、固定部材を付勢する付勢力が弱まってしまうことがない。このため、人工関節用手術器具と手術用部材との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することができる。また、本発明によると、人工関節用手術器具と手術用部材とを固定する機構において、第1磁石と第2磁石とを有する磁石ユニットを配置するだけの小さなスペースを確保すればよく、人工関節用手術器具の小型化を図ることができる。このため、バネやクランプ機構を用いた人工関節用手術器具のように大型化してしまうことを抑制でき、小さいスペースでの使用が可能となり、関節の周囲における手術用のスペースを小さくしてしまうことも抑制できる。
【0014】
従って、本発明によると、手術用部材に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0015】
第2発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明の人工関節用手術器具において、前記手術用部材は、関節を人工関節に置換する手術において骨を切削することにより形成された骨面に配置されることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、骨を切削することで形成された骨面に配置される手術用部材に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0017】
第3発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明又は第2発明の人工関節用手術器具において、前記手術用部材は、骨を切断する際に切削工具を誘導するためのガイドとなるスリット部が形成されたカットガイドと、人工関節の配置合わせの際に用いられるトライアル部材と、人工関節を配置するためのスペースを確認する際に用いられるスペーサと、骨内に一端側が挿入されるロッド部材の他端側の回転角度を調整するために用いられるローテーションガイドと、骨を掘削する際にハンマーで打ちつけられる工具として用いられるクラッシャーと、のうちのいずれかであることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、カットガイド、トライアル部材、スペーサ、ローテーションガイド、及びクラッシャーのうちのいずれかとして構成された手術用部材に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0019】
第4発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明乃至第3発明のいずれかの人工関節用手術器具において、前記解除機構は、前記固定部材に対して固定されるとともに、前記本体から外部に突出するよう配置された操作用ボタンであることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、解除機構は、固定部材に固定されて本体から外部に突出する操作用ボタンとして設けられる。このため、操作用ボタンを一方向に動かすだけで、素早く且つ容易に人工関節用手術器具と手術用部材との固定を解除する操作を行うことができる。
【0021】
第5発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明乃至第3発明のいずれかの人工関節用手術器具において、前記解除機構は、前記固定部材の先端側において前記突出方向に対して傾斜した面として又は湾曲した面として当該固定部材に一体に形成され、前記係合部と前記手術用部材との係合が解除される方向に前記本体が移動するように前記把持部が手動操作されることで、前記手術用部材と摺接しながら前記本体に対して変位して前記固定部材を前記退避方向に付勢することを特徴とする。
【0022】
この発明によると、解除機構は、固定部材の先端側における傾斜面又は湾曲面として設けられ、把持部の操作に伴って手術用部材と摺接しながら本体に対して変位して固定部材を退避させることになる。このため、把持部を一方向に動かすだけで、素早く且つ容易に人工関節用手術器具と手術用部材との固定を解除する操作を行うことができる。また、解除機構が固定部材と一体に形成されるため、人工関節用手術器具における手術用部材に固定される部分の構造を更に簡素化することができる。
【0023】
第6発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明乃至第5発明のいずれかの人工関節用手術器具において、前記磁石ユニットは、前記第2磁石が前記第1磁石に対して前記本体における一端側に配置されるとともに、前記第1磁石及び前記第2磁石における同極側同士が対向するように配置されていることを特徴とする。
【0024】
この発明によると、第2磁石が第1磁石の本体における一端側に配置されるとともに、第1磁石及び第2磁石が同極側同士で対向するように配置される。このため、第1磁石と第2磁石との間で反発力が生じ、本体に対して固定部材を磁力により突出方向に付勢する構成を容易に実現することができる。
【0025】
第7発明に係る人工関節用手術器具は、第6発明の人工関節用手術器具において、前記固定部材は、長手方向が前記突出方向及び前記退避方向に沿って配置される丸棒状のシャフト部材として形成され、前記本体には、摺接するように配置される前記固定部材を支持するとともに、当該固定部材の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴が形成され、前記第2磁石は、前記固定部材の端部において、前記本体に取り付けられた前記第1磁石に対向するように取り付けられていることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、本体に形成された円形断面の支持穴において丸棒状のシャフト部材として形成された固定部材が摺接するよう支持されるとともに、本体側の第1磁石に対して固定部材の端部の第2磁石が突出方向に反発して付勢される。このため、磁石の反発力を効率よく活用するとともに、突出方向に沿った姿勢が安定して保たれた状態で、固定部材の突出動作を円滑に行うことができる。
【0027】
第8発明に係る人工関節用手術器具は、第6発明の人工関節用手術器具において、前記本体は、前記第1磁石が配置される第1磁石配置部と、前記第1磁石配置部に対して一端側に配置されて前記固定部材に取り付けられた前記第2磁石が配置される第2磁石配置部と、前記第1磁石と前記第2磁石とが対向する磁石対向空間を迂回するように延びて前記第1磁石配置部と前記第2磁石配置部とを連結する迂回連結部と、が設けられ、前記磁石対向空間が前記迂回連結部の側方において外部に開放されるように形成されていることを特徴とする。
【0028】
この発明によると、固定部材は、磁石対向空間を介して配置された第1磁石と第2磁石との間で生じる反発力によって突出方向に付勢される。そして、第1磁石配置部及び第2磁石配置部を連結する迂回連結部の側方において外部に開放するように磁石対向空間が形成されている。このため、本体において、第2磁石と固定部材とが配置される一端側の第2磁石配置部から第1磁石が配置される他端側の第1磁石配置部までが直線状に連続して形成されず、直線状に連続して延びる部分の長さを小さくすることができる。これにより、手術の際に、人体内において関節の近傍に存在する腱等の骨以外の生体組織を避けて人工関節用手術器具を挿入することができる。従って、本発明によると、手術用のスペースを更に効率よく確保することができる。
【0029】
第9発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明乃至第5発明のいずれかの人工関節用手術器具において、前記磁石ユニットは、前記第2磁石が前記第1磁石に対して前記本体における他端側に配置されるとともに、前記第1磁石及び前記第2磁石における異極側同士が対向するように配置されていることを特徴とする。
【0030】
この発明によると、第2磁石が第1磁石の本体における他端側に配置されるとともに、第1磁石及び第2磁石が異極側同士で対向するように配置される。このため、第1磁石と第2磁石との間で引力が生じ、本体に対して固定部材を磁力により突出方向に付勢する構成を容易に実現することができる。
【0031】
第10発明に係る人工関節用手術器具は、第9発明の人工関節用手術器具において、前記固定部材は、長手方向が前記突出方向及び前記退避方向に沿って配置される丸棒状のシャフト部材として形成され、前記本体には、摺接するように配置される前記固定部材を支持するとともに、当該固定部材の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴が形成され、前記第1磁石は、前記固定部材が貫通するリング状に配置されていることを特徴とする。
【0032】
この発明によると、本体に形成された円形断面の支持穴において丸棒状のシャフト部材として形成された固定部材が摺接するよう支持されるとともに、リング状に配置された第1磁石を貫通する固定部材に取り付けられた第2磁石が第1磁石に対して突出方向に引き付けられて付勢される。このため、磁石の引力を効率よく活用するとともに、突出方向に沿った姿勢が安定して保たれた状態で、固定部材の突出動作を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、手術用部材に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、以下の実施形態では、本発明が膝関節を人工膝関節に置換する人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に用いられる人工関節用手術器具に対して適用される場合を例にとって説明する。そして、以下の説明では、人工膝関節置換術において脛骨を切削することにより形成された脛骨面に配置される手術用部材のうちのトライアル部材である脛骨トレートライアルに対して着脱されるとともに脛骨トレートライアルを保持するための配置合わせハンドルとしての人工関節用手術器具に対して適用される場合を例にとって説明するが、この例に限らず本発明を適用することができる。即ち、本発明は、人工膝関節置換術に限らず関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術において用いられ、関節部分に配置される手術用部材に対して着脱されるとともに手術用部材を保持するための人工関節用手術器具に関して広く適用することができるものである。
【0035】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係る人工関節用手術器具1と、本実施形態の手術用部材である脛骨トレートライアル101(手術用部材101ともいう)とを示す斜視図である。尚、脛骨トレートライアル101は、人工関節の配置合わせの際に用いられる本実施形態のトライアル部材を構成している。図1及び図2に示す人工関節用手術器具1は、本実施形態においては、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に使用される配置合わせハンドルとして用いられる。そして、この人工関節用手術器具1は、脛骨トレートライアル101に対して着脱されてこの脛骨トレートライアル101を保持するために用いられる。図1では、人工関節用手術器具1が脛骨トレートライアル101に対して取り付けられて脛骨トレートライアル101が人工関節用手術器具1によって保持された状態を示している。一方、図2では、人工関節用手術器具1が脛骨トレートライアル101から取り外された状態を示している。人工関節用手術器具1は、後述するように、人工膝関節置換術を行う術者の操作によって、脛骨トレートライアル101に対して自在に着脱されるように構成されている。
【0036】
図3は、人工膝関節置換術において人工関節用手術器具1で保持された脛骨トレートライアル101が膝関節部分に配置された状態を示す斜視図である。また、図4は、図3と同じ状態を示す側面図である。尚、図3及び図4においては、人体における脛骨102以外の生体組織については図示を省略している。人工膝関節置換術においては、脛骨102における人工膝関節が配置される部分に対して、脛骨102を切削することにより平坦な脛骨面(本実施形態における骨面)102aが形成される。そして、この脛骨面102aに対して脛骨トレートライアル101が、人工膝関節の配置合わせのために配置されることになる。尚、人工膝関節置換術においては、適切な人工膝関節用骨コンポーネント(図示せず)の適切なサイズを決定してその骨コンポーネントの適切な配置状態や配置スペースを確保するために、何度も脛骨トレートライアル101の取り替えが人工関節用手術器具1を用いて行われる。そのため、術者は、脛骨トレートライアル101に対して人工関節用手術器具1を取り付けたり取り外したりする操作を何度も行うことになる。
【0037】
また、図2によく示すように、脛骨トレートライアル101は、プレート状に形成され、その周囲に沿って部分的に設けられた周壁部101aや、脛骨面102aに穴あけ等の処置を施す際に用いられるガイド開口101b等が設けられている。そして、脛骨トレートライアル101の側部には、周方向に沿って延びる周壁部101aの中央付近において、係合凹部101c及び嵌合穴101dが形成されている。係合凹部101cは、後述する人工関節用手術器具1の本体11の係合部11aの外周に沿った断面形状の溝部分として形成され、摺接しながら嵌め込まれた係合部11aに対して係合可能に構成されている。嵌合穴101dは、後述する人工関節用手術器具1の固定部材12の先端側の端部12aに嵌合可能な円形断面の嵌合穴として形成されている。
【0038】
次に、人工関節用手術器具1の構成について詳しく説明する。図5は人工関節用手術器具1の平面図であり、図6は人工関節用手術器具1の側面図である。図1、図2、図5、及び図6に示すように、人工関節用手術器具1は、本体11と、固定部材12と、磁石ユニット13と、操作用ボタン14とを備えて構成されている。尚、磁石ユニット13以外の要素(本体11、固定部材12、操作用ボタン14)については、磁性体でない材料(例えば、樹脂や磁性体でないステンレス鋼等)によって形成されている。
【0039】
本体11は、全体形状が細長いプレート状に形成されており、脛骨トレートライアル101に対して着脱自在に取り付けられる側である一端側に係合部11aが設けられ、その反対側である他端側に把持部11bが設けられている。
【0040】
係合部11aは、脛骨トレートライアル101において溝状に形成された係合凹部101cに対して脛骨トレートライアル101の厚み方向に沿って摺接しながら嵌め込まれることで、脛骨トレートライアル101に対して係合する部分として形成されている。この係合部11aは、本体11の一端側から突出するように形成され、その突出する先端側において、係合凹部101cと摺接する方向と垂直な方向において両側に広がった形状に形成されている。これにより、係合部11aは、係合凹部101cに嵌め込まれた状態で脛骨トレートライアル101に係合するように構成されている。一方、把持部11bは、術者が人工関節用手術器具1を用いて脛骨トレートライアル101を取り扱う手動操作の際に把持される柄の部分として形成されている。また、本体11では、係合部11aと把持部11bとが、湾曲するように凹む湾曲凹部11cを区画するように延びる経路を介して連結されるように形成されている。このように係合部11aと把持部11bとの間において湾曲凹部11cが設けられることで、人工膝関節置換術の際における手術用のスペースをより確保し易くするように構成されている。
【0041】
固定部材12は、本体11に対して支持される丸棒状のシャフト部材として設けられている。この固定部材12は、本体11に対して、本体11から一端側に向かって突出する突出方向(図5に示す矢印A方向)及び他端側に向かって退避する退避方向(図5に示す矢印B方向)において移動自在に支持されている。尚、本体11には、図5及び図6によく示すように、摺接するように配置される丸棒状の固定部材12を支持するとともに、固定部材12の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴としての第1支持穴11d及び第2支持穴12eが形成されている。第1支持穴11dと第2支持穴11eとは、本体11の側部の一部において切欠き状に形成された切欠き部分11fを介して、同一中心線上において並んで配置されている。そして、固定部材12は、この本体11に形成された支持穴(11d、11e)において、その長手方向が前記の突出方向及び退避方向に沿うように配置されている。
【0042】
また、固定部材12は、係合部11aが脛骨トレートライアル101の係合凹部101cに係合した状態で、本体11から突出する先端側の端部12aが脛骨トレートライアル101の嵌合穴101dに対して嵌合可能に設けられている。このように、固定部材12は、先端側の端部12aが本体11から突出して嵌合穴101dに嵌合することで、係合部11aが係合した脛骨トレートライアル101と本体11とを固定するように構成されている。
【0043】
図7は、本体11の係合部11aが脛骨トレートライアル101の係合凹部101cに係合した状態において、固定部材12の先端側の端部12aが本体11内に退避した状態を部分的に示す平面図(図7(a))、及び、端部12aが本体11から突出して嵌合穴101dに嵌合した状態を部分的に示す平面図(図7(b))である。また、図8は、図7(a)のC−C線矢視断面図(図8(a))、及び、図7(b)のD−D線矢視断面図(図8(b))である。図5乃至図8に示す磁石ユニット13は、永久磁石として形成された第1磁石15と第2磁石16とを備えて構成されている。
【0044】
第1磁石15は、本体11に対して第2支持穴11eの底部において固定して取り付けられている。一方、第2磁石16は、固定部材12に対して先端側の端部12aとは反対側の端部に固定して取り付けられ、更に、この固定部材12の端部において、本体11に取り付けられた第1磁石15に第2支持穴11e内で対向するように取り付けられている。これにより、磁石ユニット13においては、第2磁石16が第1磁石15に対して本体11における一端側に配置されている。また、磁石ユニット13においては、第1磁石15における第2磁石16に対向する対向面15aと、第2磁石16における第1磁石15に対向する対向面16aとが、N極同士又はS極同士で対向するように配置されている。即ち、磁石ユニット13は、第1磁石15及び第2磁石16における同極側同士が対向するように配置されている。このように第1磁石15及び第2磁石16が本体11及び固定部材12に対して取り付けられていることで、磁石ユニット13は、第1磁石15と第2磁石16との間で作用する反発力の磁力によって固定部材12を本体11に対して突出方向に付勢するように構成されている。
【0045】
図1、図2、図5乃至図8に示す操作用ボタン14は、脛骨トレートライアル101の嵌合穴101dに端部12aが嵌合した固定部材12を退避方向に移動させ、脛骨トレートライアル101と本体11との固定を解除する本実施形態の解除機構として設けられている。この操作用ボタン14は、固定部材12に対して固定されるとともに本体11から外部に突出するように配置され、取付部14aと操作部14bとが設けられている。取付部14aは、固定部材12に取り付けられる部分として設けられ、本体11の切欠部分11fにおいて固定部材12に対して固定されている。操作部14bは、本体11の外部に突出して配置され、術者によって直接に手動操作される部分として設けられている。この操作部14bには、術者の指が引っ掛けられる湾曲面が形成されている。この操作用ボタン14が術者によって直接に手動操作されることで、操作用ボタン14が固定部材12とともに変位して固定部材12を本体11に対して退避方向に付勢し、脛骨トレートライアル101と本体11との固定が解除される解除操作が行われることになる。尚、術者は、本体11の把持部11bを片手で把持した状態でその同じ手の指を操作部14bに引っ掛けて引っ張ることで、素早く且つ簡単に上記の解除操作を行うことができる。
【0046】
次に、上述した人工関節用手術器具1の作動について説明する。人工関節用手術器具1は、本実施形態では、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に用いられ、脛骨トレートライアル101に対して着脱される。まず、人工関節用手術器具1を脛骨トレートライアル101に取り付ける場合には、術者は、本体11を把持部11aにおいて把持した状態で、図2において一点鎖線の矢印で示すように、係合部11aを係合凹部101cに嵌め合わせるよう人工関節用手術器具1を脛骨トレートライアル101に対して移動させる。このとき、術者は、操作用ボタン14の操作部14bに指を引っ掛けて引っ張っておき、第1磁石15と第2磁石16との反発力に抗して固定部材12を本体11内に退避させておく。
【0047】
固定部材12を本体11に退避させた状態で係合部11aと係合凹部101cとの係合が完了すると、図7(a)及び図8(a)に示す状態となる。この状態では、固定部材12は、操作用ボタン14によって退避方向に付勢されて本体11内に退避しており、固定部材12の先端側の端部12aと脛骨トレートライアル101の嵌合穴101dとは嵌合していない。この状態から、術者が操作用ボタン14の操作部14bに引っ掛けていた指を離すことで、固定部材12を退避方向に付勢していた操作力が解除される。これにより、第1磁石15と第2磁石16との間で生じている反発力によって、固定部材12が突出方向に付勢されて本体11から突出することになる。そして、図7(b)及び図8(b)に示すように、固定部材12の先端側の端部12aが嵌合穴101dに嵌合し、本体11と脛骨トレートライアル101とが固定される。これにより、術者は、人工関節用手術器具1を脛骨トレートライアル101に対して素早く取り付けることができる。
【0048】
一方、人工関節用手術器具1を脛骨トレートライアル101から取り外す場合には、術者は、把持部11bを把持した状態で、操作用ボタン14の操作部14bに指を掛け、第1磁石15と第2磁石16との反発力に抗して一方向に引っ張る操作を行う。この操作が行われることで、固定部材12が上記の反発力に抗して退避方向に付勢され、嵌合穴101dに嵌合していた固定部材12の先端側の端部12aが嵌合穴101dから外れて本体11の第1支持穴11d内に退避することになる。これにより、図7(b)及び図8(b)に示す状態から、図7(a)及び図8(a)に示す状態へと移行し、本体11と脛骨トレートライアル101との固定が解除されることになる。そして、術者が、係合部11aを係合凹部101cの溝方向に沿ってずらすように人工関節用手術器具1を脛骨トレートライアル101に対して移動させることで、人工関節用手術器具1が脛骨トレートライアル101から取り外されることになる。
【0049】
以上説明した人工関節用手術器具1によると、本体11に取り付けられた第1磁石15と固定部材12に取り付けられた第2磁石16との間で作用する磁力によって固定部材12を突出方向に付勢し、固定部材12の先端側を脛骨トレートライアルとして構成されたトライアル部材である手術用部材101に嵌合させることができる。これにより、本体11の係合部11aを手術用部材101に係合させた状態で、人工関節用手術器具1と手術用部材101とを素早く固定することができる。そして、解除機構である操作用ボタン14の操作により、固定部材12を退避方向に付勢し、人工関節用手術器具1と手術用部材101との固定を素早く解除することができる。このため、ネジを用いた人工関節用手術器具のような手間を要することがなく、手術用部材101に対して人工関節用手術器具1を素早く着脱することができる。また、磁石ユニット13を用いるものであるため、人工関節用手術器具1を取り付けて手術用部材101を関節部分に配置した状態で、電動工具を用いた骨の切削等の処置が行われても、ネジのように緩む箇所がそもそもなく、人工関節用手術器具1と手術用部材101との固定が術者の意図に反して解除されてしまうこともない。
【0050】
また、人工関節用手術器具1によると、第1磁石15と第2磁石16との間で作用する磁力を利用して固定部材12を付勢する構成のため、バネやクランプ機構を用いた人工関節用手術器具とは異なり、繰り返し使用されても、固定部材12を付勢する付勢力が弱まってしまうことがない。このため、人工関節用手術器具1と手術用部材101との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することができる。また、人工関節用手術器具1によると、人工関節用手術器具1と手術用部材101とを固定する機構において、第1磁石15と第2磁石16とを有する磁石ユニット13を配置するだけの小さなスペースを確保すればよく、人工関節用手術器具1の小型化を図ることができる。このため、バネやクランプ機構を用いた人工関節用手術器具のように大型化してしまうことを抑制でき、小さいスペースでの使用が可能となり、関節の周囲における手術用のスペースを小さくしてしまうことも抑制できる。
【0051】
従って、人工関節用手術器具1によると、手術用部材101に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0052】
また、人工関節用手術器具1によると、本体11と手術用部材101との固定を解除する解除機構は、固定部材12に固定されて本体11から外部に突出する操作用ボタン14として設けられる。このため、操作用ボタン14を一方向に動かすだけで、素早く且つ容易に人工関節用手術器具1と手術用部材101との固定を解除する操作を行うことができる。
【0053】
また、人工関節用手術器具1によると、第2磁石16が第1磁石15の本体11における一端側に配置されるとともに、第1磁石15及び第2磁石16が同極側同士で対向するように配置される。このため、第1磁石15と第2磁石16との間で反発力が生じ、本体11に対して固定部材12を磁力により突出方向に付勢する構成を容易に実現することができる。
【0054】
また、人工関節用手術器具1によると、本体11に形成された円形断面の支持穴(11d、11e)において丸棒状のシャフト部材として形成された固定部材12が摺接するよう支持されるとともに、本体11側の第1磁石15に対して固定部材12の端部の第2磁石16が突出方向に反発して付勢される。このため、磁石の反発力を効率よく活用するとともに、突出方向に沿った姿勢が安定して保たれた状態で、固定部材12の突出動作を円滑に行うことができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係る人工関節用手術器具2と、本実施形態の手術用部材であるトライアル部材を構成する脛骨トレートライアル103(手術用部材103ともいう)の一部とを示す平面図である。図9に示す人工関節用手術器具2は、本実施形態においても、第1実施形態の人工関節用手術器具1と同様に、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に使用される配置合わせハンドルとして用いられる。そして、この人工関節用手術器具2は、脛骨トレートライアル103に対して着脱されてこの脛骨トレートライアル103を保持するために用いられる。
【0056】
脛骨トレートライアル103は、第1実施形態の脛骨トレートライアル101と同様に構成されている。そして、脛骨トレートライアル103には、脛骨トレートライアル101の係合凹部101cと同様に構成されて、後述する人工関節用手術器具2の本体21の係合部21aと係合する係合凹部103aが設けられている。また、脛骨トレートライアル103には、後述する人工関節用手術器具2の固定部材12の端部に嵌合可能な半球面状の穴として形成された嵌合穴103bが設けられている。
【0057】
図9に示す人工関節用手術器具2は、本体21と、固定部材22と、第1磁石25及び第2磁石26を有する磁石ユニット23と、固定部材22に一体に設けられる解除機構を構成する湾曲面24(図12参照)とを備えて構成されている。尚、磁石ユニット23以外の要素(本体21、固定部材22)については、磁性体でない材料(例えば、樹脂や磁性体でないステンレス鋼等)によって形成されている。
【0058】
本体21は、全体形状が細長いプレート状に形成されており、脛骨トレートライアル103に対して着脱自在に取り付けられる側である一端側に係合部21aが設けられ、その反対側である他端側に把持部21bが設けられている。係合部21aは、第1実施形態の人工関節用手術器具1の係合部11aと同様に構成され、脛骨トレートライアル103において溝状に形成された係合凹部103aに対して脛骨トレートライアル103の厚み方向に沿って摺接しながら嵌め込まれることで、脛骨トレートライアル103に対して係合する部分として設けられている。把持部11bも、第1実施形態の人工関節用手術器具1の把持部11bと同様に構成され、術者が人工関節用手術器具2を用いて脛骨トレートライアル103を取り扱う手動操作の際に把持される柄の部分として形成されている。
【0059】
また、本体21においては、第1実施形態の人工関節用手術器具1の本体11とは異なり、第1磁石配置部21c、第2磁石配置部21d、及び迂回連結部21eが更に設けられている。第1磁石配置部21cは、把持部21bの一端側の部分であって、第1磁石25が配置される部分として設けられている。第2磁石配置部21dは、第1磁石配置部21cに対して一端側に配置されており、後述する固定部材22に取り付けられた第2磁石26が配置される部分として設けられている。迂回連結部21eは、第1磁石25と第2磁石26とが対向する空間である磁石対向空間27を迂回するように延びて第1磁石配置部21cと第2磁石配置部21dとを連結する部分として設けられている。そして、磁石対向空間27は、第1磁石配置部21c、第2磁石配置部21d、及び迂回連結部21eによって三方を区画されるように形成され、迂回連結部21eの側方において外部に開放されるように形成されている。
【0060】
固定部材22は、本体21に対して支持される円形断面のプランジャー状の部材として設けられている。この固定部材22は、本体21に対して、本体21から一端側に向かって突出する突出方向(図9に示す矢印A方向)及び他端側に向かって退避する退避方向(図9に示す矢印B方向)において移動自在に支持されている。尚、本体21には、摺接するように配置されるプランジャー状の固定部材22を支持するとともに、固定部材22の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴21fが形成されている。固定部材22は、この本体21に形成された支持穴21fにおいて、その長手方向が上記の突出方向及び退避方向に沿って配置されている。
【0061】
また、固定部材22は、係合部21aが脛骨トレートライアル103の係合凹部103aに係合した状態で、本体21から突出する先端側の端部22aが脛骨トレートライアル103の嵌合穴103bに対して嵌合可能に設けられている。この固定部材22の先端側の端部22aは、半球状の端部として形成されている。図10は、固定部材22の先端側の端部22aが本体21内に退避した状態を部分的に示す平面図(図10(a))と、本体21の係合部21aが脛骨トレートライアル103の係合凹部103aに係合した状態において、端部22aが本体21から突出して嵌合穴103bに嵌合した状態を部分的に示す平面図(図10(b))とを示したものである。固定部材22は、係合部21aが係合凹部103aに嵌め込まれるように把持部21bが操作されることで、後述するように先端側の端部22aが脛骨トレートライアル103の縁部と摺接して退避方向に付勢され、図10(a)に示すように、本体21の支持穴21f内に一旦退避する。そして、係合部21aが係合凹部103aに最後まで嵌め込まれた状態では、固定部材22は、図10(b)に示すように、先端側の端部22aが本体21から突出して嵌合穴103bに嵌合し、係合部21aが係合した脛骨トレートライアル103と本体21とを固定することになる。
【0062】
磁石ユニット23は、永久磁石として形成された第1磁石25と第2磁石26とを備えて構成されている。第1磁石25は、本体21に対して前述の第1磁石配置部21dおいて固定して取り付けられている。一方、第2磁石26は、前述の第2磁石配置部21cに配置されるとともに、固定部材22に対して先端側の端部22aとは反対側の端部に固定して取り付けられている。また、第2磁石26は、固定部材22の端部において、本体21に取り付けられた第1磁石25に磁石対向空間27を介して対向するように取り付けられている。このように、磁石ユニット23においては、第2磁石26が第1磁石25に対して磁石対向空間27を介して本体21における一端側に配置されている。また、磁石ユニット23においては、第1磁石25における第2磁石26に対向する対向面25aと、第2磁石26における第1磁石25に対向する対向面26aとが、N極同士又はS極同士で対向するように配置されている。即ち、磁石ユニット23は、第1磁石25及び第2磁石26における同極側同士が対向するように配置されている。このように第1磁石25及び第2磁石26が本体21及び固定部材22に対して取り付けられていることで、磁石ユニット23は、第1磁石25と第2磁石26との間で作用する反発力の磁力によって固定部材22を本体21に対して突出方向に付勢するように構成されている。
【0063】
図11及び図12は、図9のE−E線矢視位置に対応する部分拡大断面図であって、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103に対して取り付ける操作を説明する断面図(図11)、及び、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103から取り外す操作を説明する断面図(図12)である。人工関節用手術器具2においては、固定部材22とともに変位して固定部材22を本体21に対して退避方向に付勢して脛骨トレートライアル103と本体21との固定を解除する解除機構は、固定部材22に一体に設けられている。そして、図12によく示すように、この解除機構は、固定部材22の先端側の端部22aにおいて突出方向に対して湾曲した半球面状の湾曲面24として固定部材22に一体に形成されている。
【0064】
次に、上述した人工関節用手術器具2の作動について説明する。人工関節用手術器具2は、本実施形態では、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に用いられ、脛骨トレートライアル103に対して着脱される。まず、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103に取り付ける場合には、術者は、本体21を把持部21aにおいて把持した状態で、係合部21aを係合凹部103aに嵌め合わせるように、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103に対してその厚み方向に沿って移動させる。即ち、術者は、図11(a)に示すように、係合部21aと脛骨トレートライアル103の溝状の係合凹部103aとが嵌まり合う方向(図11にて矢印Faで示す方向)に本体21が移動するように把持部21bを操作する。
【0065】
上述したように把持部21bの操作が行われることで、図11(b)に示すように、固定部材22の先端側の端部22aに一体に形成された半球面状の湾曲面24が脛骨トレートライアル103の縁部と摺接しながら本体21に対して変位する。この湾曲面24の本体21に対する変位に伴って、固定部材22の端部22aが退避方向に付勢され、第1磁石25と第2磁石26との反発力に抗して固定部材22が本体21の支持穴21f内に退避する。そして、固定部材22を退避させたまま更に係合部21aを係合凹部103aに嵌め込むように本体21を矢印Faの方向に移動させると、固定部材22の端部22aが嵌合穴103bに対向する位置まで移動することになる。これにより、脛骨トレートライアル103と干渉することで生じていた固定部材22の端部22aの退避方向への付勢力が解除される。そして、第1磁石25と第2磁石26との間で生じている反発力によって、固定部材22が突出方向に付勢されて本体21から突出し、図11(c)に示すように固定部材22の端部22aが嵌合穴103bに嵌合し、図10(b)に示すように本体21と脛骨トレートライアル103とが固定される。このようにして、術者は、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103に対して素早く取り付けることができる。
【0066】
一方、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103から取り外す場合には、術者は、把持部21bを把持した状態で、係合部21aと係合凹部103aとの係合が解除されるように、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103に対してその厚み方向に沿って移動させる。即ち、術者は、図12(a)に示すように、係合部21aと脛骨トレートライアル103の溝状の係合凹部103aとが外れる方向(図12にて矢印Fbで示す方向)に本体21が移動するように把持部21bを操作する。
【0067】
上述したように把持部21bの操作が行われることで、図12(b)に示すように、固定部材22の先端側の端部22aに一体に形成された解除機構である半球面状の湾曲面24が脛骨トレートライアル103の嵌合穴103bの縁部と摺接しながら本体21に対して変位する。この湾曲面24の本体21に対する変位に伴って、固定部材22の端部22aが退避方向に付勢され、第1磁石25と第2磁石26との反発力に抗して固定部材22が本体21の支持穴21f内に退避する。そして、固定部材22を退避させたまま更に本体21を矢印Fbの方向に移動させることで、係合部21aが係合凹部103aから外れることになる。尚、固定部材22の端部22aが脛骨トレートライアル103に対向しなくなる位置まで移動すると、端部22aは第1磁石25と第2磁石26との反発力によって本体21から突出したままの状態となる。このように、把持部21bの操作によって、係合部21aが係合凹部103aから外れるとともに、固定部材22の端部22aによる本体21と脛骨トレートライアル103との固定も解除されることになる。これにより、術者は、把持部21bを所定の方向に動かすだけで、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103から素早く取り外すことができる。
【0068】
以上説明した人工関節用手術器具2によると、第1磁石25と第2磁石26との間で作用する磁力によって固定部材22を突出方向に付勢し、固定部材22の先端側を脛骨トレートライアルとして構成されたトライアル部材である手術用部材103に嵌合させることができる。これにより、人工関節用手術器具2と手術用部材103とを素早く固定することができる。そして、把持部21bの操作による解除機構(湾曲面24)の作動により、固定部材22を退避方向に付勢し、人工関節用手術器具2と手術用部材103との固定を素早く解除することができる。また、人工関節用手術器具2によると、第1磁石25と第2磁石26との間で作用する磁力を利用して固定部材22を付勢する構成のため、繰り返し使用されても、固定部材22を付勢する付勢力が弱まってしまうことがない。このため、人工関節用手術器具2と手術用部材103との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することができる。また、人工関節用手術器具2によると、人工関節用手術器具2と手術用部材103とを固定する機構において、第1磁石25と第2磁石26とを有する磁石ユニット23を配置するだけの小さなスペースを確保すればよく、人工関節用手術器具2の小型化を図ることができる。このため、小さいスペースでの使用が可能となり、関節の周囲における手術用のスペースを小さくしてしまうことも抑制できる。
【0069】
従って、人工関節用手術器具2によると、第1実施形態と同様に、手術用部材101に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0070】
また、人工関節用手術器具2によると、解除機構は、固定部材22の先端側における湾曲面24として設けられ、把持部21bの操作に伴って手術用部材103と摺接しながら本体21に対して変位して固定部材22を退避させることになる。このため、把持部21bを所定の方向に動かすだけで、素早く且つ容易に人工関節用手術器具2と手術用部材103との固定を解除する操作を行うことができる。また、湾曲面24として構成される解除機構が固定部材22と一体に形成されるため、人工関節用手術器具2における手術用部材103に固定される部分の構造を更に簡素化することができる。
【0071】
また、人工関節用手術器具2によると、固定部材22は、磁石対向空間27を介して配置された第1磁石25と第2磁石26との間で生じる反発力によって突出方向に付勢される。そして、第1磁石配置部21c及び第2磁石配置部21dを連結する迂回連結部21eの側方において外部に開放するように磁石対向空間27が形成されている。このため、本体21において、第2磁石26と固定部材22とが配置される一端側の第2磁石配置部21cから第1磁石25が配置される他端側の第1磁石配置部21cまでが直線状に連続して形成されず、直線状に連続して延びる部分の長さを小さくすることができる。これにより、手術の際に、人体内において関節の近傍に存在する腱等の骨以外の生体組織を避けて人工関節用手術器具2を挿入することができる。従って、人工関節用手術器具2によると、手術用のスペースを更に効率よく確保することができる。
【0072】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図13は、本発明の第3実施形態に係る人工関節用手術器具3を示す側面図である。また、図14は、人工関節用手術器具3の一部と、本実施形態の手術用部材であるトライアル部材を構成する脛骨トレートライアル101(手術用部材101ともいう)の一部とを示す平面図である。図13及び図14に示す人工関節用手術器具3は、第1実施形態の人工関節用手術器具1と同様に、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に使用される配置合わせハンドルとして用いられる。そして、この人工関節用手術器具3は、第1実施形態と同様の脛骨トレートライアル101に対して着脱されてこの脛骨トレートライアル101を保持するために用いられる。
【0073】
図13及び図14に示す人工関節用手術器具3は、第1実施形態の人工関節用手術器具1と同様に構成され、本体11と、固定部材12と、磁石ユニット33と、解除機構である操作用ボタン14とを備えて構成されている。そして、磁石ユニット13以外の要素(本体11、固定部材12、操作用ボタン14)については、磁性体でない材料(例えば、樹脂や磁性体でないステンレス鋼等)によって形成されている。但し、人工関節用手術器具3は、磁石ユニット33の構成において、第1実施形態の人工関節用手術器具1と異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成については、脛骨トレートライアル101も含め、図面において第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる構成ついて説明する。
【0074】
図15は、図14におけるG−G線矢視位置に対応する断面を示す断面図である。尚、図15は、本体11の係合部11aが脛骨トレートライアル101の係合凹部101cに係合した状態において、固定部材12の先端側の端部12aが本体11内に退避した状態を部分的に示す断面図(図15(a))と、端部12aが本体11から突出して嵌合穴101dに嵌合した状態を部分的に示す断面図(図15(b))とを示している。図13乃至図15に示す磁石ユニット33は、永久磁石として形成された第1磁石35と第2磁石36とを備えて構成されている。
【0075】
第1磁石35は、リング状に形成された磁石として設けられており、本体11に対して第2支持穴11eの切欠き部分11fへの開口部分において固定して取り付けられている。一方、第2磁石36は、固定部材12に対して先端側の端部12aとは反対側の端部に固定して取り付けられている。尚、固定部材12は、第1実施形態と同様に、長手方向が突出方向及び退避方向に沿って配置される丸棒状のシャフト部材として形成され、本体11に形成された支持穴(11d、11e)に対して摺接するように配置されて支持されている。しかし、第3実施形態においては、固定部材12は、リング状に配置された第1磁石35を貫通した状態で本体11において突出方向及び退避方向に移動自在に支持されている。
【0076】
上述のように、磁石ユニット33においては、第1磁石35は固定部材12が貫通するリング状に配置され、固定部材12の端部に取り付けられた第2磁石36が第2支持穴11e内で第1磁石35に対向するように配置されている。これにより、磁石ユニット33においては、第2磁石36が第1磁石35に対して本体11における他端側に配置されている。また、磁石ユニット33においては、第1磁石35における第2磁石36に対向する対向面35aと、第2磁石36における第1磁石35に対向する対向面36aとが、N極とS極の組み合わせで対向するように配置されている。即ち、磁石ユニット33は、第1磁石35及び第2磁石36における異極側同士が対向するように配置されている。このように第1磁石35及び第2磁石36が本体11及び固定部材12に対して取り付けられていることで、磁石ユニット33は、第1磁石35と第2磁石36との間で作用する引力の磁力によって固定部材12を本体11に対して突出方向に付勢するように構成されている。
【0077】
次に、上述した人工関節用手術器具3の作動について説明する。人工関節用手術器具3は、本実施形態では、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に用いられ、脛骨トレートライアル101に対して着脱される。まず、人工関節用手術器具3を脛骨トレートライアル101に取り付ける場合には、術者は、本体11を把持部11aにおいて把持した状態で、係合部11aを係合凹部11aに嵌め合わせるように、人工関節用手術器具3を脛骨トレートライアル101に対してその厚み方向に沿って移動させる。このとき、術者は、操作用ボタン14の操作部14bに指を引っ掛けて引っ張っておき、第1磁石35と第2磁石36との引力に抗して固定部材12を本体11内に退避させておく。
【0078】
固定部材12を本体11に退避させた状態で係合部11aと係合凹部101aとの係合が完了すると、図15(a)に示す状態となる。この状態では、固定部材12は、操作用ボタン14によって退避方向に付勢されて本体11内に退避しており、固定部材12の先端側の端部12aと脛骨トレートライアル101の嵌合穴101dとは嵌合していない。この状態から、術者が操作用ボタン14の操作部14bに引っ掛けていた指を離すことで、固定部材12を退避方向に付勢していた操作力が解除される。これにより、第1磁石35と第2磁石36との間で生じている引力によって、固定部材12が突出方向に付勢されて本体11から突出することになる。そして、図14及び図15(b)に示すように、固定部材12の先端側の端部12aが嵌合穴101dに嵌合し、本体11と脛骨トレートライアル101とが固定される。これにより、術者は、人工関節用手術器具3を脛骨トレートライアル101に対して素早く取り付けることができる。
【0079】
一方、人工関節用手術器具3を脛骨トレートライアル101から取り外す場合には、術者は、把持部11bを把持した状態で、操作用ボタン14の操作部14bに指を掛け、第1磁石35と第2磁石36との引力に抗して一方向に引っ張る操作を行う。この操作が行われることで、固定部材12が上記の引力に抗して退避方向に付勢され、嵌合穴101dに嵌合していた固定部材12の先端側の端部12aが嵌合穴101dから外れて本体11の第1支持穴11d内に退避することになる。これにより、図14及び図15(b)に示す状態から、図15(a)に示す状態へと移行し、本体11と脛骨トレートライアル101との固定が解除されることになる。そして、術者が、係合部11aを係合凹部101cの溝方向に沿ってずらすように人工関節用手術器具3を脛骨トレートライアル101に対して移動させることで、人工関節用手術器具3が脛骨トレートライアル101から取り外されることになる。
【0080】
以上説明した人工関節用手術器具3によると、第1磁石35と第2磁石36との間で作用する磁力によって固定部材12を突出方向に付勢し、固定部材12の先端側を手術用部材101に嵌合させることができる。これにより、本体11の係合部11aを手術用部材101に係合させた状態で、人工関節用手術器具3と手術用部材101とを素早く固定することができる。そして、解除機構である操作用ボタン14の操作により、固定部材12を退避方向に付勢し、人工関節用手術器具3と手術用部材101との固定を素早く解除することができる。また、人工関節用手術器具3によると、第1磁石35と第2磁石36との間で作用する磁力を利用して固定部材12を付勢する構成のため、繰り返し使用されても、固定部材12を付勢する付勢力が弱まってしまうことがない。このため、人工関節用手術器具3と手術用部材101との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することができる。また、人工関節用手術器具3によると、人工関節用手術器具3と手術用部材101とを固定する機構において、第1磁石35と第2磁石36とを有する磁石ユニット33を配置するだけの小さなスペースを確保すればよく、人工関節用手術器具3の小型化を図ることができる。このため、小さいスペースでの使用が可能となり、関節の周囲における手術用のスペースを小さくしてしまうことも抑制できる。
【0081】
従って、人工関節用手術器具3によると、第1実施形態と同様に、手術用部材101に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0082】
また、人工関節用手術器具3によると、第2磁石36が第1磁石35の本体11における他端側に配置されるとともに、第1磁石35及び第2磁石36が異極側同士で対向するように配置される。このため、第1磁石35と第2磁石36との間で引力が生じ、本体11に対して固定部材12を磁力により突出方向に付勢する構成を容易に実現することができる。
【0083】
また、人工関節用手術器具3によると、本体11に形成された円形断面の支持穴(11d、11e)において丸棒状のシャフト部材として形成された固定部材12が摺接するよう支持されるとともに、リング状に配置された第1磁石35を貫通する固定部材12に取り付けられた第2磁石36が第1磁石35に対して突出方向に引き付けられて付勢される。このため、磁石の引力を効率よく活用するとともに、突出方向に沿った姿勢が安定して保たれた状態で、固定部材12の突出動作を円滑に行うことができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0085】
(1)上述の実施形態では、人工膝関節置換術において用いられる人工関節用手術器具を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、人工膝関節置換術以外の人工関節置換術において用いられるものであってもよい。また、本発明は、脛骨トレートライアル以外のトライアル部材を保持するための人工関節用手術器具において適用されてもよい。
【0086】
(2)上述の実施形態では、第1磁石及び第2磁石がそれぞれ1つの磁石として構成される場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、第1磁石及び第2磁石がそれぞれ複数の磁石を組み合わせて構成されるものであってもよい。また、第3実施形態においては、リング状に形成された第1磁石を例にとって説明したが、複数の磁石がリング状に配置されて第1磁石が構成されているものであってもよい。
【0087】
(3)第1実施形態及び第2実施形態については、操作用ボタンとして設けられる解除機構に限らず、第3実施形態と同様に、固定部材に一体に形成された解除機構を適用することもできる。また、第3実施形態については、固定部材に一体に形成された解除機構に限らず、第1及び第2実施形態と同様に、操作用ボタンとして設けられる解除機構を適用することもできる。
【0088】
(4)第3実施形態では、解除機構が、半球面状の湾曲した面として固定部材に一体に形成される場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、解除機構が、固定部材に対して半球面状以外の形状の湾曲した面として一体に形成されていてもよい。また、解除機構が、固定部材の先端側において突出方向に対して傾斜した面として固定部材に一体に形成されていてもよい。
【0089】
(5)尚、第1磁石及び第2磁石の形状や配置については、上述の実施形態で例示したものに限らず、両磁石間で作用する反発力又は引力を利用して固定部材を本体から突出させる構成であれば、適宜変更して実施することができる。また、固定部材の形状については、シャフト状やプランジャー状以外の形状を選択してもよい。
【0090】
(6)また、上述の第1乃至第3実施形態では、手術用部材がトライアル部材である場合を例にとって説明したが、この例に限らず、本発明の人工関節用手術器具は、トライアル部材以外の手術用部材を保持するための人工関節用手術器具として用いられるものであってもよい。トライアル部材以外の手術用部材としては、例えば、カットガイド、スペーサ、ローテーションガイド、クラッシャー等が挙げられる。カットガイドは、人工関節置換術において、骨を切断する際に切削工具を誘導するための(切削方向を規定するための)ガイドとなるスリット部が形成された手術用部材として用いられ、関節部分に配置される。このカットガイドに対して着脱されるとともにカットガイドを保持するための人工関節用手術器具として、上述した人工関節用手術器具(1、2、3)を用いることができる。この場合、カットガイドには、係合凹部101c或いは係合凹部103aと同様の係合凹部が設けられるとともに、嵌合孔101d或いは嵌合孔103bと同様の嵌合孔が設けられる。そして、人工関節用手術器具(1、2、3)を適用することで、カットガイドに対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具(1、2、3)を提供することができる。
【0091】
また、上述した人工関節用手術器具(1、2、3)をスペーサに対して適用してもよい。スペーサは、人工関節置換術において、人工関節を配置するためのスペースを確認する際に用いられる手術用部材であり、関節部分に配置される。図16は、第1実施形態の人工関節用手術器具1が手術用部材であるスペーサ104に対して取り付けられてスペーサ104が人工関節用手術器具1によって保持された状態を示す斜視図である。第1実施形態と同様の構成については、図面において同一の符号を付して説明を省略する。スペーサ104には、脛骨トレートライアル101と同様に、係合凹部101cと同様の係合凹部104aが設けられるとともに、嵌合孔101dと同様の嵌合孔(図示せず)が設けられる。そして、人工関節用手術器具1は、このスペーサ104に対して着脱されるとともにスペーサ104を保持するための人工関節用手術器具として用いられる。このように、人工関節用手術器具1を適用することで、スペーサ104に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具1を提供することができる。
【0092】
また、上述した人工関節用手術器具(1、2、3)をローテーションガイドに対して適用してもよい。ローテーションガイドは、人工関節置換術において、骨内に一端側が挿入されるロッド部材の他端側の回転角度を調整するために用いられる手術用部材であり、関節部分に配置される。図17は、第1実施形態の人工関節用手術器具1が手術用部材であるローテーションガイド105に対して取り付けられてローテーションガイド105が人工関節用手術器具1によって保持された状態を示す斜視図である。第1実施形態と同様の構成については、図面において同一の符号を付して説明を省略する。尚、ローテーションガイド105には前述したロッド部材(図示せず)の他端側に対してスライド嵌合するガイドバー(図示せず)が挿入される挿入孔105bが形成されており、ガイドバーを介してローテーションガイド105がロッド部材の他端側に取り付けられる。そして、二股状に形成された平坦なプレート部分105cが骨に当接することで、ロッド部材の回転角度が調整される。このローテーションガイド105には、脛骨トレートライアル101と同様に、係合凹部101cと同様の係合凹部105aが設けられるとともに、嵌合孔101dと同様の嵌合孔(図示せず)が設けられる。そして、人工関節用手術器具1は、このローテーションガイド105に対して着脱されるとともにローテーションガイド105を保持するための人工関節用手術器具として用いられる。このように、人工関節用手術器具1を適用することで、ローテーションガイド105に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具1を提供することができる。
【0093】
また、上述した人工関節用手術器具(1、2、3)をクラッシャーに対して適用してもよい。クラッシャーは、人工関節置換術において、骨を掘削する際にハンマーで打ちつけられる工具として用いられる手術用部材であり、関節部分に配置される。図18は、第1実施形態の人工関節用手術器具1が手術用部材であるクラッシャー106に対して取り付けられてクラッシャー106が人工関節用手術器具1によって保持された状態を示す斜視図である。第1実施形態と同様の構成については、図面において同一の符号を付して説明を省略する。尚、クラッシャー106には関節部分に対して所定の部材を介して取り付けられたピン部材が挿入されるピン用孔106bが形成されており、ピン部材を介してクラッシャー106が関節部分に対してピン部材に沿って移動自在な状態で配置される。そして、クラッシャー106は、先端部106cが骨に当接した状態で配置されるとともにハンマーで打ちつけられることで、骨を掘削することになる。このクラッシャー106には、脛骨トレートライアル101と同様に、係合凹部101cと同様の係合凹部106aが設けられるとともに、嵌合孔101dと同様の嵌合孔(図示せず)が設けられる。そして、人工関節用手術器具1は、このクラッシャー106に対して着脱されるとともにクラッシャー106を保持するための人工関節用手術器具として用いられる。このように、人工関節用手術器具1を適用することで、クラッシャー106に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具1を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術において用いられ、関節部分に配置される手術用部材に対して着脱されるとともに手術用部材を保持するための人工関節用手術器具として、広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態に係る人工関節用手術器具と手術用部材とを示す斜視図である。
【図2】図1に示す人工関節用手術器具と手術用部材とを示す斜視図である。
【図3】図1に示す人工関節用手術器具と手術用部材とが膝関節部分に配置された状態を示す斜視図である。
【図4】図3と同じ状態を示す側面図である。
【図5】図1に示す人工関節用手術器具の平面図である。
【図6】図1に示す人工関節用手術器具の側面図である。
【図7】図1に示す人工関節用手術器具の本体と手術用部材とを固定する機構を説明するための図である。
【図8】図7のC−C線矢視断面図及びD−D線矢視断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る人工関節用手術器具と手術用部材の一部とを示す平面図である。
【図10】図9に示す人工関節用手術器具の本体と手術用部材とを固定する機構を説明するための図である。
【図11】図9のE−E線矢視位置に対応する部分拡大断面図である。
【図12】図9のE−E線矢視位置に対応する部分拡大断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る人工関節用手術器具を示す側面図である。
【図14】図13に示す人工関節用手術器具及び手術用部材の一部を示す平面図である。
【図15】図14におけるG−G線矢視位置に対応する断面図である。
【図16】図1に示す人工関節用手術器具と手術用部材であるスペーサとを示す斜視図である。
【図17】図1に示す人工関節用手術器具と手術用部材であるローテーションガイドとを示す斜視図である。
【図18】図1に示す人工関節用手術器具と手術用部材であるクラッシャーとを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0096】
1 人工関節用手術器具
11 本体
11a 係合部
11b 把持部
12 固定部材
13 磁石ユニット
14 操作用ボタン(解除機構)
15 第1磁石
16 第2磁石
101 脛骨トレートライアル(手術用部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術において用いられ、関節部分に配置される手術用部材に対して着脱されるとともに手術用部材を保持するための人工関節用手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工膝関節置換術等のように、関節に異常が認められた患者に対してその関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術である人工関節置換術が行われている。このような手術においては、関節部分に人工関節のインプラントである骨コンポーネントを設置するに際して、関節部分の骨に対する切削や穴あけ、掘削等の処置を施したり、適切なサイズの骨コンポーネントを選択して人工関節の適切な配置合わせを実現したりといった種々の目的に応じて関節部分に種々の手術用部材を配置することが行われる。
【0003】
上述した手術用部材としては、例えば、カットガイド、トライアル部材、スペーサ、ローテーションガイド、クラッシャー等がある。カットガイドは、骨を切断する際に切削工具を誘導するためのガイドとなるスリット部が形成された部材である。トライアル部材は、人工関節の配置合わせの際に用いられる部材である。スペーサは、人工関節を配置するためのスペースを確認する際に用いられる部材である。ローテーションガイドは、骨内に一端側が挿入されるロッド部材の他端側の回転角度を調整するために用いられる部材である。クラッシャーは、骨を掘削する際にハンマーで打ちつけられる工具として用いられる部材である。このように、上記の手術を行う術者は、骨コンポーネントを設置する前に、種々の手術用部材を用いることによって、骨に対して切削や掘削等の処置を行なったり、適切な骨コンポーネントのサイズを検討して決定したり、関節部分における骨コンポーネントの適切な配置状態や配置スペースを確保したり、といった作業等を行なう。また、このような手術中においては、術者は、手術用部材を何度も取り替えながら、上記の作業や検討を行うことが多い。
【0004】
上述のように手術用部材を関節部分に配置したり取り替えたりする場合には、術者は、手術用部材に対して着脱されるとともに手術用部材を保持するための人工関節用手術器具を用いる。このような人工関節置換術において用いられる人工関節用手術器具として、特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1では、人工膝関節置換術において用いられ、手術用部材のうちのトライアル部材である脛骨トレートライアルに対して着脱されるとともにこの脛骨トレートライアルを保持するための人工関節用手術器具である配置合わせハンドルが開示されている。そして、特許文献1においては、この配置合わせハンドルを脛骨トレートライアルに固定する機構として、ネジを用いたものとバネを用いたものとが開示されている。
【0005】
上記のネジを用いた配置合わせハンドルでは、配置合わせハンドルの接続端を脛骨トレートライアルに係合させた状態で、つまみネジを操作して脛骨トレートライアルのネジ切り部に螺合させて、配置合わせハンドルと脛骨トレートライアルとを固定する。そして、この固定を解除して脛骨トレートライアルから配置合わせハンドルを取り外すことも、つまみネジの操作により行われる。また、上記のバネを用いた配置合わせハンドルでは、脛骨トレートライアルに形成された穴に嵌合するボルトを付勢するバネが設けられ、ボルトにはリリースボタンが連結されている。そして、リリースボタンをバネの付勢力に抗して手前に引いた状態で、配置合わせハンドルの接続端を脛骨トレートライアルに係合させ、次いで、リリースボタンを放すことでバネの付勢力によってボルトを脛骨トレートライアルの穴に嵌合させる。これにより、配置合わせハンドルと脛骨トレートライアルとが固定される。一方、この固定を解除して脛骨トレートライアルから配置合わせハンドルを取り外す場合には、リリースボタンを手前に引き、ボルトの嵌合を外すことになる。
【0006】
【特許文献1】特許第3987148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1におけるネジを用いた配置合わせハンドル(人工関節用手術器具)では、ネジを回す操作を行って配置合わせハンドルと脛骨トレートライアル(手術用部材)との固定と解除とを行うように構成されている。このため、操作が非常に面倒であり、多くの手間を要してしまうこととなり、手術用部材に対して人工関節用手術器具を素早く確実に着脱することが困難となる。また、人工関節用手術器具を取り付けて手術用部材を関節部分に配置した状態で、電動工具を用いた骨の切削等の処置が行われると、ネジが緩んでしまい、人工関節用手術器具と手術用部材との固定が術者の意図に反して解除されてしまう虞がある。
【0008】
一方、特許文献1におけるバネを用いた配置合わせハンドル(人工関節用手術器具)では、バネとリリースボタンとを備える構成により、脛骨トレートライアル(手術用部材)に対して人工関節用手術器具を素早く着脱することができる。しかしながら、繰り返し使用されることに伴い、バネがへたってその付勢力が弱まってしまい、人工関節用手術器具と手術用部材との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することが困難になる虞がある。また、人工関節用手術器具においてバネを配置するために長い直線状のスペースが必要となるため、人工関節用手術器具の大型化を招いてしまい易いという問題がある。この場合、人工関節用手術器具が大型化することで、関節の周囲における手術用のスペースを小さくしてしまうことになる。
【0009】
尚、人工関節用手術器具と手術用部材とを固定する機構について、上述したネジやバネを用いた機構以外として、クランプ機構によるものも考えられる。しかしながら、クランプ機構を用いた人工関節用手術器具の場合、機構上大きなスペースを必要とするクランプ機構を設けることになるため、人工関節用手術器具の大型化を招いてしまい、手術用のスペースを小さくしてしまうことになる。また、クランプ機構の作動に板バネが必要となるため、繰り返し使用されることに伴い、板バネがへたってその付勢力が弱まってしまい、人工関節用手術器具と手術用部材との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することが困難になる虞がある。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、手術用部材に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための第1発明に係る人工関節用手術器具は、関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術において用いられ、関節部分に配置される手術用部材に対して着脱されるとともに前記手術用部材を保持するための人工関節用手術器具に関する。そして、第1発明に係る人工関節用手術器具は、前記手術用部材に対して係合する係合部が一端側に設けられるとともに、手動操作の際に把持される把持部が他端側に設けられた本体と、前記本体に対して当該本体から一端側に向かって突出する突出方向及び他端側に向かって退避する退避方向において移動自在に支持され、前記本体から突出する先端側が前記手術用部材に対して嵌合することで、前記係合部が係合した前記手術用部材と前記本体とを固定する固定部材と、前記本体に対して取り付けられた第1磁石と前記固定部材に対して取り付けられた第2磁石とを有し、前記第1磁石と前記第2磁石との間で作用する磁力によって前記固定部材を前記本体に対して前記突出方向に付勢する磁石ユニットと、前記固定部材に対して固定されて又は一体に設けられ、直接に手動操作されることで、又は、前記把持部が手動操作されることで、前記固定部材とともに変位して前記固定部材を前記本体に対して前記退避方向に付勢し、前記手術用部材と前記本体との固定を解除する解除機構と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、本体に取り付けられた第1磁石と固定部材に取り付けられた第2磁石との間で作用する磁力によって固定部材を突出方向に付勢し、固定部材の先端側を手術用部材に嵌合させることができる。これにより、人工関節用手術器具と手術用部材とを素早く固定することができる。そして、解除機構の操作により、又は、把持部の操作による解除機構の作動により、固定部材を退避方向に付勢し、人工関節用手術器具と手術用部材との固定を素早く解除することができる。このため、ネジを用いた人工関節用手術器具のような手間を要することがなく、手術用部材に対して人工関節用手術器具を素早く着脱することができる。また、磁石ユニットを用いるものであるため、人工関節用手術器具を取り付けて手術用部材を関節部分に配置した状態で、電動工具を用いた骨の切削等の処置が行われても、ネジのように緩む箇所がそもそもなく、人工関節用手術器具と手術用部材との固定が術者の意図に反して解除されてしまうこともない。
【0013】
また、本発明によると、第1磁石と第2磁石との間で作用する磁力を利用して固定部材を付勢する構成のため、バネやクランプ機構を用いた人工関節用手術器具とは異なり、繰り返し使用されても、固定部材を付勢する付勢力が弱まってしまうことがない。このため、人工関節用手術器具と手術用部材との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することができる。また、本発明によると、人工関節用手術器具と手術用部材とを固定する機構において、第1磁石と第2磁石とを有する磁石ユニットを配置するだけの小さなスペースを確保すればよく、人工関節用手術器具の小型化を図ることができる。このため、バネやクランプ機構を用いた人工関節用手術器具のように大型化してしまうことを抑制でき、小さいスペースでの使用が可能となり、関節の周囲における手術用のスペースを小さくしてしまうことも抑制できる。
【0014】
従って、本発明によると、手術用部材に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0015】
第2発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明の人工関節用手術器具において、前記手術用部材は、関節を人工関節に置換する手術において骨を切削することにより形成された骨面に配置されることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、骨を切削することで形成された骨面に配置される手術用部材に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0017】
第3発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明又は第2発明の人工関節用手術器具において、前記手術用部材は、骨を切断する際に切削工具を誘導するためのガイドとなるスリット部が形成されたカットガイドと、人工関節の配置合わせの際に用いられるトライアル部材と、人工関節を配置するためのスペースを確認する際に用いられるスペーサと、骨内に一端側が挿入されるロッド部材の他端側の回転角度を調整するために用いられるローテーションガイドと、骨を掘削する際にハンマーで打ちつけられる工具として用いられるクラッシャーと、のうちのいずれかであることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、カットガイド、トライアル部材、スペーサ、ローテーションガイド、及びクラッシャーのうちのいずれかとして構成された手術用部材に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0019】
第4発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明乃至第3発明のいずれかの人工関節用手術器具において、前記解除機構は、前記固定部材に対して固定されるとともに、前記本体から外部に突出するよう配置された操作用ボタンであることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、解除機構は、固定部材に固定されて本体から外部に突出する操作用ボタンとして設けられる。このため、操作用ボタンを一方向に動かすだけで、素早く且つ容易に人工関節用手術器具と手術用部材との固定を解除する操作を行うことができる。
【0021】
第5発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明乃至第3発明のいずれかの人工関節用手術器具において、前記解除機構は、前記固定部材の先端側において前記突出方向に対して傾斜した面として又は湾曲した面として当該固定部材に一体に形成され、前記係合部と前記手術用部材との係合が解除される方向に前記本体が移動するように前記把持部が手動操作されることで、前記手術用部材と摺接しながら前記本体に対して変位して前記固定部材を前記退避方向に付勢することを特徴とする。
【0022】
この発明によると、解除機構は、固定部材の先端側における傾斜面又は湾曲面として設けられ、把持部の操作に伴って手術用部材と摺接しながら本体に対して変位して固定部材を退避させることになる。このため、把持部を一方向に動かすだけで、素早く且つ容易に人工関節用手術器具と手術用部材との固定を解除する操作を行うことができる。また、解除機構が固定部材と一体に形成されるため、人工関節用手術器具における手術用部材に固定される部分の構造を更に簡素化することができる。
【0023】
第6発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明乃至第5発明のいずれかの人工関節用手術器具において、前記磁石ユニットは、前記第2磁石が前記第1磁石に対して前記本体における一端側に配置されるとともに、前記第1磁石及び前記第2磁石における同極側同士が対向するように配置されていることを特徴とする。
【0024】
この発明によると、第2磁石が第1磁石の本体における一端側に配置されるとともに、第1磁石及び第2磁石が同極側同士で対向するように配置される。このため、第1磁石と第2磁石との間で反発力が生じ、本体に対して固定部材を磁力により突出方向に付勢する構成を容易に実現することができる。
【0025】
第7発明に係る人工関節用手術器具は、第6発明の人工関節用手術器具において、前記固定部材は、長手方向が前記突出方向及び前記退避方向に沿って配置される丸棒状のシャフト部材として形成され、前記本体には、摺接するように配置される前記固定部材を支持するとともに、当該固定部材の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴が形成され、前記第2磁石は、前記固定部材の端部において、前記本体に取り付けられた前記第1磁石に対向するように取り付けられていることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、本体に形成された円形断面の支持穴において丸棒状のシャフト部材として形成された固定部材が摺接するよう支持されるとともに、本体側の第1磁石に対して固定部材の端部の第2磁石が突出方向に反発して付勢される。このため、磁石の反発力を効率よく活用するとともに、突出方向に沿った姿勢が安定して保たれた状態で、固定部材の突出動作を円滑に行うことができる。
【0027】
第8発明に係る人工関節用手術器具は、第6発明の人工関節用手術器具において、前記本体は、前記第1磁石が配置される第1磁石配置部と、前記第1磁石配置部に対して一端側に配置されて前記固定部材に取り付けられた前記第2磁石が配置される第2磁石配置部と、前記第1磁石と前記第2磁石とが対向する磁石対向空間を迂回するように延びて前記第1磁石配置部と前記第2磁石配置部とを連結する迂回連結部と、が設けられ、前記磁石対向空間が前記迂回連結部の側方において外部に開放されるように形成されていることを特徴とする。
【0028】
この発明によると、固定部材は、磁石対向空間を介して配置された第1磁石と第2磁石との間で生じる反発力によって突出方向に付勢される。そして、第1磁石配置部及び第2磁石配置部を連結する迂回連結部の側方において外部に開放するように磁石対向空間が形成されている。このため、本体において、第2磁石と固定部材とが配置される一端側の第2磁石配置部から第1磁石が配置される他端側の第1磁石配置部までが直線状に連続して形成されず、直線状に連続して延びる部分の長さを小さくすることができる。これにより、手術の際に、人体内において関節の近傍に存在する腱等の骨以外の生体組織を避けて人工関節用手術器具を挿入することができる。従って、本発明によると、手術用のスペースを更に効率よく確保することができる。
【0029】
第9発明に係る人工関節用手術器具は、第1発明乃至第5発明のいずれかの人工関節用手術器具において、前記磁石ユニットは、前記第2磁石が前記第1磁石に対して前記本体における他端側に配置されるとともに、前記第1磁石及び前記第2磁石における異極側同士が対向するように配置されていることを特徴とする。
【0030】
この発明によると、第2磁石が第1磁石の本体における他端側に配置されるとともに、第1磁石及び第2磁石が異極側同士で対向するように配置される。このため、第1磁石と第2磁石との間で引力が生じ、本体に対して固定部材を磁力により突出方向に付勢する構成を容易に実現することができる。
【0031】
第10発明に係る人工関節用手術器具は、第9発明の人工関節用手術器具において、前記固定部材は、長手方向が前記突出方向及び前記退避方向に沿って配置される丸棒状のシャフト部材として形成され、前記本体には、摺接するように配置される前記固定部材を支持するとともに、当該固定部材の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴が形成され、前記第1磁石は、前記固定部材が貫通するリング状に配置されていることを特徴とする。
【0032】
この発明によると、本体に形成された円形断面の支持穴において丸棒状のシャフト部材として形成された固定部材が摺接するよう支持されるとともに、リング状に配置された第1磁石を貫通する固定部材に取り付けられた第2磁石が第1磁石に対して突出方向に引き付けられて付勢される。このため、磁石の引力を効率よく活用するとともに、突出方向に沿った姿勢が安定して保たれた状態で、固定部材の突出動作を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、手術用部材に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、以下の実施形態では、本発明が膝関節を人工膝関節に置換する人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に用いられる人工関節用手術器具に対して適用される場合を例にとって説明する。そして、以下の説明では、人工膝関節置換術において脛骨を切削することにより形成された脛骨面に配置される手術用部材のうちのトライアル部材である脛骨トレートライアルに対して着脱されるとともに脛骨トレートライアルを保持するための配置合わせハンドルとしての人工関節用手術器具に対して適用される場合を例にとって説明するが、この例に限らず本発明を適用することができる。即ち、本発明は、人工膝関節置換術に限らず関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術において用いられ、関節部分に配置される手術用部材に対して着脱されるとともに手術用部材を保持するための人工関節用手術器具に関して広く適用することができるものである。
【0035】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係る人工関節用手術器具1と、本実施形態の手術用部材である脛骨トレートライアル101(手術用部材101ともいう)とを示す斜視図である。尚、脛骨トレートライアル101は、人工関節の配置合わせの際に用いられる本実施形態のトライアル部材を構成している。図1及び図2に示す人工関節用手術器具1は、本実施形態においては、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に使用される配置合わせハンドルとして用いられる。そして、この人工関節用手術器具1は、脛骨トレートライアル101に対して着脱されてこの脛骨トレートライアル101を保持するために用いられる。図1では、人工関節用手術器具1が脛骨トレートライアル101に対して取り付けられて脛骨トレートライアル101が人工関節用手術器具1によって保持された状態を示している。一方、図2では、人工関節用手術器具1が脛骨トレートライアル101から取り外された状態を示している。人工関節用手術器具1は、後述するように、人工膝関節置換術を行う術者の操作によって、脛骨トレートライアル101に対して自在に着脱されるように構成されている。
【0036】
図3は、人工膝関節置換術において人工関節用手術器具1で保持された脛骨トレートライアル101が膝関節部分に配置された状態を示す斜視図である。また、図4は、図3と同じ状態を示す側面図である。尚、図3及び図4においては、人体における脛骨102以外の生体組織については図示を省略している。人工膝関節置換術においては、脛骨102における人工膝関節が配置される部分に対して、脛骨102を切削することにより平坦な脛骨面(本実施形態における骨面)102aが形成される。そして、この脛骨面102aに対して脛骨トレートライアル101が、人工膝関節の配置合わせのために配置されることになる。尚、人工膝関節置換術においては、適切な人工膝関節用骨コンポーネント(図示せず)の適切なサイズを決定してその骨コンポーネントの適切な配置状態や配置スペースを確保するために、何度も脛骨トレートライアル101の取り替えが人工関節用手術器具1を用いて行われる。そのため、術者は、脛骨トレートライアル101に対して人工関節用手術器具1を取り付けたり取り外したりする操作を何度も行うことになる。
【0037】
また、図2によく示すように、脛骨トレートライアル101は、プレート状に形成され、その周囲に沿って部分的に設けられた周壁部101aや、脛骨面102aに穴あけ等の処置を施す際に用いられるガイド開口101b等が設けられている。そして、脛骨トレートライアル101の側部には、周方向に沿って延びる周壁部101aの中央付近において、係合凹部101c及び嵌合穴101dが形成されている。係合凹部101cは、後述する人工関節用手術器具1の本体11の係合部11aの外周に沿った断面形状の溝部分として形成され、摺接しながら嵌め込まれた係合部11aに対して係合可能に構成されている。嵌合穴101dは、後述する人工関節用手術器具1の固定部材12の先端側の端部12aに嵌合可能な円形断面の嵌合穴として形成されている。
【0038】
次に、人工関節用手術器具1の構成について詳しく説明する。図5は人工関節用手術器具1の平面図であり、図6は人工関節用手術器具1の側面図である。図1、図2、図5、及び図6に示すように、人工関節用手術器具1は、本体11と、固定部材12と、磁石ユニット13と、操作用ボタン14とを備えて構成されている。尚、磁石ユニット13以外の要素(本体11、固定部材12、操作用ボタン14)については、磁性体でない材料(例えば、樹脂や磁性体でないステンレス鋼等)によって形成されている。
【0039】
本体11は、全体形状が細長いプレート状に形成されており、脛骨トレートライアル101に対して着脱自在に取り付けられる側である一端側に係合部11aが設けられ、その反対側である他端側に把持部11bが設けられている。
【0040】
係合部11aは、脛骨トレートライアル101において溝状に形成された係合凹部101cに対して脛骨トレートライアル101の厚み方向に沿って摺接しながら嵌め込まれることで、脛骨トレートライアル101に対して係合する部分として形成されている。この係合部11aは、本体11の一端側から突出するように形成され、その突出する先端側において、係合凹部101cと摺接する方向と垂直な方向において両側に広がった形状に形成されている。これにより、係合部11aは、係合凹部101cに嵌め込まれた状態で脛骨トレートライアル101に係合するように構成されている。一方、把持部11bは、術者が人工関節用手術器具1を用いて脛骨トレートライアル101を取り扱う手動操作の際に把持される柄の部分として形成されている。また、本体11では、係合部11aと把持部11bとが、湾曲するように凹む湾曲凹部11cを区画するように延びる経路を介して連結されるように形成されている。このように係合部11aと把持部11bとの間において湾曲凹部11cが設けられることで、人工膝関節置換術の際における手術用のスペースをより確保し易くするように構成されている。
【0041】
固定部材12は、本体11に対して支持される丸棒状のシャフト部材として設けられている。この固定部材12は、本体11に対して、本体11から一端側に向かって突出する突出方向(図5に示す矢印A方向)及び他端側に向かって退避する退避方向(図5に示す矢印B方向)において移動自在に支持されている。尚、本体11には、図5及び図6によく示すように、摺接するように配置される丸棒状の固定部材12を支持するとともに、固定部材12の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴としての第1支持穴11d及び第2支持穴12eが形成されている。第1支持穴11dと第2支持穴11eとは、本体11の側部の一部において切欠き状に形成された切欠き部分11fを介して、同一中心線上において並んで配置されている。そして、固定部材12は、この本体11に形成された支持穴(11d、11e)において、その長手方向が前記の突出方向及び退避方向に沿うように配置されている。
【0042】
また、固定部材12は、係合部11aが脛骨トレートライアル101の係合凹部101cに係合した状態で、本体11から突出する先端側の端部12aが脛骨トレートライアル101の嵌合穴101dに対して嵌合可能に設けられている。このように、固定部材12は、先端側の端部12aが本体11から突出して嵌合穴101dに嵌合することで、係合部11aが係合した脛骨トレートライアル101と本体11とを固定するように構成されている。
【0043】
図7は、本体11の係合部11aが脛骨トレートライアル101の係合凹部101cに係合した状態において、固定部材12の先端側の端部12aが本体11内に退避した状態を部分的に示す平面図(図7(a))、及び、端部12aが本体11から突出して嵌合穴101dに嵌合した状態を部分的に示す平面図(図7(b))である。また、図8は、図7(a)のC−C線矢視断面図(図8(a))、及び、図7(b)のD−D線矢視断面図(図8(b))である。図5乃至図8に示す磁石ユニット13は、永久磁石として形成された第1磁石15と第2磁石16とを備えて構成されている。
【0044】
第1磁石15は、本体11に対して第2支持穴11eの底部において固定して取り付けられている。一方、第2磁石16は、固定部材12に対して先端側の端部12aとは反対側の端部に固定して取り付けられ、更に、この固定部材12の端部において、本体11に取り付けられた第1磁石15に第2支持穴11e内で対向するように取り付けられている。これにより、磁石ユニット13においては、第2磁石16が第1磁石15に対して本体11における一端側に配置されている。また、磁石ユニット13においては、第1磁石15における第2磁石16に対向する対向面15aと、第2磁石16における第1磁石15に対向する対向面16aとが、N極同士又はS極同士で対向するように配置されている。即ち、磁石ユニット13は、第1磁石15及び第2磁石16における同極側同士が対向するように配置されている。このように第1磁石15及び第2磁石16が本体11及び固定部材12に対して取り付けられていることで、磁石ユニット13は、第1磁石15と第2磁石16との間で作用する反発力の磁力によって固定部材12を本体11に対して突出方向に付勢するように構成されている。
【0045】
図1、図2、図5乃至図8に示す操作用ボタン14は、脛骨トレートライアル101の嵌合穴101dに端部12aが嵌合した固定部材12を退避方向に移動させ、脛骨トレートライアル101と本体11との固定を解除する本実施形態の解除機構として設けられている。この操作用ボタン14は、固定部材12に対して固定されるとともに本体11から外部に突出するように配置され、取付部14aと操作部14bとが設けられている。取付部14aは、固定部材12に取り付けられる部分として設けられ、本体11の切欠部分11fにおいて固定部材12に対して固定されている。操作部14bは、本体11の外部に突出して配置され、術者によって直接に手動操作される部分として設けられている。この操作部14bには、術者の指が引っ掛けられる湾曲面が形成されている。この操作用ボタン14が術者によって直接に手動操作されることで、操作用ボタン14が固定部材12とともに変位して固定部材12を本体11に対して退避方向に付勢し、脛骨トレートライアル101と本体11との固定が解除される解除操作が行われることになる。尚、術者は、本体11の把持部11bを片手で把持した状態でその同じ手の指を操作部14bに引っ掛けて引っ張ることで、素早く且つ簡単に上記の解除操作を行うことができる。
【0046】
次に、上述した人工関節用手術器具1の作動について説明する。人工関節用手術器具1は、本実施形態では、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に用いられ、脛骨トレートライアル101に対して着脱される。まず、人工関節用手術器具1を脛骨トレートライアル101に取り付ける場合には、術者は、本体11を把持部11aにおいて把持した状態で、図2において一点鎖線の矢印で示すように、係合部11aを係合凹部101cに嵌め合わせるよう人工関節用手術器具1を脛骨トレートライアル101に対して移動させる。このとき、術者は、操作用ボタン14の操作部14bに指を引っ掛けて引っ張っておき、第1磁石15と第2磁石16との反発力に抗して固定部材12を本体11内に退避させておく。
【0047】
固定部材12を本体11に退避させた状態で係合部11aと係合凹部101cとの係合が完了すると、図7(a)及び図8(a)に示す状態となる。この状態では、固定部材12は、操作用ボタン14によって退避方向に付勢されて本体11内に退避しており、固定部材12の先端側の端部12aと脛骨トレートライアル101の嵌合穴101dとは嵌合していない。この状態から、術者が操作用ボタン14の操作部14bに引っ掛けていた指を離すことで、固定部材12を退避方向に付勢していた操作力が解除される。これにより、第1磁石15と第2磁石16との間で生じている反発力によって、固定部材12が突出方向に付勢されて本体11から突出することになる。そして、図7(b)及び図8(b)に示すように、固定部材12の先端側の端部12aが嵌合穴101dに嵌合し、本体11と脛骨トレートライアル101とが固定される。これにより、術者は、人工関節用手術器具1を脛骨トレートライアル101に対して素早く取り付けることができる。
【0048】
一方、人工関節用手術器具1を脛骨トレートライアル101から取り外す場合には、術者は、把持部11bを把持した状態で、操作用ボタン14の操作部14bに指を掛け、第1磁石15と第2磁石16との反発力に抗して一方向に引っ張る操作を行う。この操作が行われることで、固定部材12が上記の反発力に抗して退避方向に付勢され、嵌合穴101dに嵌合していた固定部材12の先端側の端部12aが嵌合穴101dから外れて本体11の第1支持穴11d内に退避することになる。これにより、図7(b)及び図8(b)に示す状態から、図7(a)及び図8(a)に示す状態へと移行し、本体11と脛骨トレートライアル101との固定が解除されることになる。そして、術者が、係合部11aを係合凹部101cの溝方向に沿ってずらすように人工関節用手術器具1を脛骨トレートライアル101に対して移動させることで、人工関節用手術器具1が脛骨トレートライアル101から取り外されることになる。
【0049】
以上説明した人工関節用手術器具1によると、本体11に取り付けられた第1磁石15と固定部材12に取り付けられた第2磁石16との間で作用する磁力によって固定部材12を突出方向に付勢し、固定部材12の先端側を脛骨トレートライアルとして構成されたトライアル部材である手術用部材101に嵌合させることができる。これにより、本体11の係合部11aを手術用部材101に係合させた状態で、人工関節用手術器具1と手術用部材101とを素早く固定することができる。そして、解除機構である操作用ボタン14の操作により、固定部材12を退避方向に付勢し、人工関節用手術器具1と手術用部材101との固定を素早く解除することができる。このため、ネジを用いた人工関節用手術器具のような手間を要することがなく、手術用部材101に対して人工関節用手術器具1を素早く着脱することができる。また、磁石ユニット13を用いるものであるため、人工関節用手術器具1を取り付けて手術用部材101を関節部分に配置した状態で、電動工具を用いた骨の切削等の処置が行われても、ネジのように緩む箇所がそもそもなく、人工関節用手術器具1と手術用部材101との固定が術者の意図に反して解除されてしまうこともない。
【0050】
また、人工関節用手術器具1によると、第1磁石15と第2磁石16との間で作用する磁力を利用して固定部材12を付勢する構成のため、バネやクランプ機構を用いた人工関節用手術器具とは異なり、繰り返し使用されても、固定部材12を付勢する付勢力が弱まってしまうことがない。このため、人工関節用手術器具1と手術用部材101との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することができる。また、人工関節用手術器具1によると、人工関節用手術器具1と手術用部材101とを固定する機構において、第1磁石15と第2磁石16とを有する磁石ユニット13を配置するだけの小さなスペースを確保すればよく、人工関節用手術器具1の小型化を図ることができる。このため、バネやクランプ機構を用いた人工関節用手術器具のように大型化してしまうことを抑制でき、小さいスペースでの使用が可能となり、関節の周囲における手術用のスペースを小さくしてしまうことも抑制できる。
【0051】
従って、人工関節用手術器具1によると、手術用部材101に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0052】
また、人工関節用手術器具1によると、本体11と手術用部材101との固定を解除する解除機構は、固定部材12に固定されて本体11から外部に突出する操作用ボタン14として設けられる。このため、操作用ボタン14を一方向に動かすだけで、素早く且つ容易に人工関節用手術器具1と手術用部材101との固定を解除する操作を行うことができる。
【0053】
また、人工関節用手術器具1によると、第2磁石16が第1磁石15の本体11における一端側に配置されるとともに、第1磁石15及び第2磁石16が同極側同士で対向するように配置される。このため、第1磁石15と第2磁石16との間で反発力が生じ、本体11に対して固定部材12を磁力により突出方向に付勢する構成を容易に実現することができる。
【0054】
また、人工関節用手術器具1によると、本体11に形成された円形断面の支持穴(11d、11e)において丸棒状のシャフト部材として形成された固定部材12が摺接するよう支持されるとともに、本体11側の第1磁石15に対して固定部材12の端部の第2磁石16が突出方向に反発して付勢される。このため、磁石の反発力を効率よく活用するとともに、突出方向に沿った姿勢が安定して保たれた状態で、固定部材12の突出動作を円滑に行うことができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係る人工関節用手術器具2と、本実施形態の手術用部材であるトライアル部材を構成する脛骨トレートライアル103(手術用部材103ともいう)の一部とを示す平面図である。図9に示す人工関節用手術器具2は、本実施形態においても、第1実施形態の人工関節用手術器具1と同様に、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に使用される配置合わせハンドルとして用いられる。そして、この人工関節用手術器具2は、脛骨トレートライアル103に対して着脱されてこの脛骨トレートライアル103を保持するために用いられる。
【0056】
脛骨トレートライアル103は、第1実施形態の脛骨トレートライアル101と同様に構成されている。そして、脛骨トレートライアル103には、脛骨トレートライアル101の係合凹部101cと同様に構成されて、後述する人工関節用手術器具2の本体21の係合部21aと係合する係合凹部103aが設けられている。また、脛骨トレートライアル103には、後述する人工関節用手術器具2の固定部材12の端部に嵌合可能な半球面状の穴として形成された嵌合穴103bが設けられている。
【0057】
図9に示す人工関節用手術器具2は、本体21と、固定部材22と、第1磁石25及び第2磁石26を有する磁石ユニット23と、固定部材22に一体に設けられる解除機構を構成する湾曲面24(図12参照)とを備えて構成されている。尚、磁石ユニット23以外の要素(本体21、固定部材22)については、磁性体でない材料(例えば、樹脂や磁性体でないステンレス鋼等)によって形成されている。
【0058】
本体21は、全体形状が細長いプレート状に形成されており、脛骨トレートライアル103に対して着脱自在に取り付けられる側である一端側に係合部21aが設けられ、その反対側である他端側に把持部21bが設けられている。係合部21aは、第1実施形態の人工関節用手術器具1の係合部11aと同様に構成され、脛骨トレートライアル103において溝状に形成された係合凹部103aに対して脛骨トレートライアル103の厚み方向に沿って摺接しながら嵌め込まれることで、脛骨トレートライアル103に対して係合する部分として設けられている。把持部11bも、第1実施形態の人工関節用手術器具1の把持部11bと同様に構成され、術者が人工関節用手術器具2を用いて脛骨トレートライアル103を取り扱う手動操作の際に把持される柄の部分として形成されている。
【0059】
また、本体21においては、第1実施形態の人工関節用手術器具1の本体11とは異なり、第1磁石配置部21c、第2磁石配置部21d、及び迂回連結部21eが更に設けられている。第1磁石配置部21cは、把持部21bの一端側の部分であって、第1磁石25が配置される部分として設けられている。第2磁石配置部21dは、第1磁石配置部21cに対して一端側に配置されており、後述する固定部材22に取り付けられた第2磁石26が配置される部分として設けられている。迂回連結部21eは、第1磁石25と第2磁石26とが対向する空間である磁石対向空間27を迂回するように延びて第1磁石配置部21cと第2磁石配置部21dとを連結する部分として設けられている。そして、磁石対向空間27は、第1磁石配置部21c、第2磁石配置部21d、及び迂回連結部21eによって三方を区画されるように形成され、迂回連結部21eの側方において外部に開放されるように形成されている。
【0060】
固定部材22は、本体21に対して支持される円形断面のプランジャー状の部材として設けられている。この固定部材22は、本体21に対して、本体21から一端側に向かって突出する突出方向(図9に示す矢印A方向)及び他端側に向かって退避する退避方向(図9に示す矢印B方向)において移動自在に支持されている。尚、本体21には、摺接するように配置されるプランジャー状の固定部材22を支持するとともに、固定部材22の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴21fが形成されている。固定部材22は、この本体21に形成された支持穴21fにおいて、その長手方向が上記の突出方向及び退避方向に沿って配置されている。
【0061】
また、固定部材22は、係合部21aが脛骨トレートライアル103の係合凹部103aに係合した状態で、本体21から突出する先端側の端部22aが脛骨トレートライアル103の嵌合穴103bに対して嵌合可能に設けられている。この固定部材22の先端側の端部22aは、半球状の端部として形成されている。図10は、固定部材22の先端側の端部22aが本体21内に退避した状態を部分的に示す平面図(図10(a))と、本体21の係合部21aが脛骨トレートライアル103の係合凹部103aに係合した状態において、端部22aが本体21から突出して嵌合穴103bに嵌合した状態を部分的に示す平面図(図10(b))とを示したものである。固定部材22は、係合部21aが係合凹部103aに嵌め込まれるように把持部21bが操作されることで、後述するように先端側の端部22aが脛骨トレートライアル103の縁部と摺接して退避方向に付勢され、図10(a)に示すように、本体21の支持穴21f内に一旦退避する。そして、係合部21aが係合凹部103aに最後まで嵌め込まれた状態では、固定部材22は、図10(b)に示すように、先端側の端部22aが本体21から突出して嵌合穴103bに嵌合し、係合部21aが係合した脛骨トレートライアル103と本体21とを固定することになる。
【0062】
磁石ユニット23は、永久磁石として形成された第1磁石25と第2磁石26とを備えて構成されている。第1磁石25は、本体21に対して前述の第1磁石配置部21dおいて固定して取り付けられている。一方、第2磁石26は、前述の第2磁石配置部21cに配置されるとともに、固定部材22に対して先端側の端部22aとは反対側の端部に固定して取り付けられている。また、第2磁石26は、固定部材22の端部において、本体21に取り付けられた第1磁石25に磁石対向空間27を介して対向するように取り付けられている。このように、磁石ユニット23においては、第2磁石26が第1磁石25に対して磁石対向空間27を介して本体21における一端側に配置されている。また、磁石ユニット23においては、第1磁石25における第2磁石26に対向する対向面25aと、第2磁石26における第1磁石25に対向する対向面26aとが、N極同士又はS極同士で対向するように配置されている。即ち、磁石ユニット23は、第1磁石25及び第2磁石26における同極側同士が対向するように配置されている。このように第1磁石25及び第2磁石26が本体21及び固定部材22に対して取り付けられていることで、磁石ユニット23は、第1磁石25と第2磁石26との間で作用する反発力の磁力によって固定部材22を本体21に対して突出方向に付勢するように構成されている。
【0063】
図11及び図12は、図9のE−E線矢視位置に対応する部分拡大断面図であって、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103に対して取り付ける操作を説明する断面図(図11)、及び、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103から取り外す操作を説明する断面図(図12)である。人工関節用手術器具2においては、固定部材22とともに変位して固定部材22を本体21に対して退避方向に付勢して脛骨トレートライアル103と本体21との固定を解除する解除機構は、固定部材22に一体に設けられている。そして、図12によく示すように、この解除機構は、固定部材22の先端側の端部22aにおいて突出方向に対して湾曲した半球面状の湾曲面24として固定部材22に一体に形成されている。
【0064】
次に、上述した人工関節用手術器具2の作動について説明する。人工関節用手術器具2は、本実施形態では、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に用いられ、脛骨トレートライアル103に対して着脱される。まず、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103に取り付ける場合には、術者は、本体21を把持部21aにおいて把持した状態で、係合部21aを係合凹部103aに嵌め合わせるように、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103に対してその厚み方向に沿って移動させる。即ち、術者は、図11(a)に示すように、係合部21aと脛骨トレートライアル103の溝状の係合凹部103aとが嵌まり合う方向(図11にて矢印Faで示す方向)に本体21が移動するように把持部21bを操作する。
【0065】
上述したように把持部21bの操作が行われることで、図11(b)に示すように、固定部材22の先端側の端部22aに一体に形成された半球面状の湾曲面24が脛骨トレートライアル103の縁部と摺接しながら本体21に対して変位する。この湾曲面24の本体21に対する変位に伴って、固定部材22の端部22aが退避方向に付勢され、第1磁石25と第2磁石26との反発力に抗して固定部材22が本体21の支持穴21f内に退避する。そして、固定部材22を退避させたまま更に係合部21aを係合凹部103aに嵌め込むように本体21を矢印Faの方向に移動させると、固定部材22の端部22aが嵌合穴103bに対向する位置まで移動することになる。これにより、脛骨トレートライアル103と干渉することで生じていた固定部材22の端部22aの退避方向への付勢力が解除される。そして、第1磁石25と第2磁石26との間で生じている反発力によって、固定部材22が突出方向に付勢されて本体21から突出し、図11(c)に示すように固定部材22の端部22aが嵌合穴103bに嵌合し、図10(b)に示すように本体21と脛骨トレートライアル103とが固定される。このようにして、術者は、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103に対して素早く取り付けることができる。
【0066】
一方、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103から取り外す場合には、術者は、把持部21bを把持した状態で、係合部21aと係合凹部103aとの係合が解除されるように、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103に対してその厚み方向に沿って移動させる。即ち、術者は、図12(a)に示すように、係合部21aと脛骨トレートライアル103の溝状の係合凹部103aとが外れる方向(図12にて矢印Fbで示す方向)に本体21が移動するように把持部21bを操作する。
【0067】
上述したように把持部21bの操作が行われることで、図12(b)に示すように、固定部材22の先端側の端部22aに一体に形成された解除機構である半球面状の湾曲面24が脛骨トレートライアル103の嵌合穴103bの縁部と摺接しながら本体21に対して変位する。この湾曲面24の本体21に対する変位に伴って、固定部材22の端部22aが退避方向に付勢され、第1磁石25と第2磁石26との反発力に抗して固定部材22が本体21の支持穴21f内に退避する。そして、固定部材22を退避させたまま更に本体21を矢印Fbの方向に移動させることで、係合部21aが係合凹部103aから外れることになる。尚、固定部材22の端部22aが脛骨トレートライアル103に対向しなくなる位置まで移動すると、端部22aは第1磁石25と第2磁石26との反発力によって本体21から突出したままの状態となる。このように、把持部21bの操作によって、係合部21aが係合凹部103aから外れるとともに、固定部材22の端部22aによる本体21と脛骨トレートライアル103との固定も解除されることになる。これにより、術者は、把持部21bを所定の方向に動かすだけで、人工関節用手術器具2を脛骨トレートライアル103から素早く取り外すことができる。
【0068】
以上説明した人工関節用手術器具2によると、第1磁石25と第2磁石26との間で作用する磁力によって固定部材22を突出方向に付勢し、固定部材22の先端側を脛骨トレートライアルとして構成されたトライアル部材である手術用部材103に嵌合させることができる。これにより、人工関節用手術器具2と手術用部材103とを素早く固定することができる。そして、把持部21bの操作による解除機構(湾曲面24)の作動により、固定部材22を退避方向に付勢し、人工関節用手術器具2と手術用部材103との固定を素早く解除することができる。また、人工関節用手術器具2によると、第1磁石25と第2磁石26との間で作用する磁力を利用して固定部材22を付勢する構成のため、繰り返し使用されても、固定部材22を付勢する付勢力が弱まってしまうことがない。このため、人工関節用手術器具2と手術用部材103との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することができる。また、人工関節用手術器具2によると、人工関節用手術器具2と手術用部材103とを固定する機構において、第1磁石25と第2磁石26とを有する磁石ユニット23を配置するだけの小さなスペースを確保すればよく、人工関節用手術器具2の小型化を図ることができる。このため、小さいスペースでの使用が可能となり、関節の周囲における手術用のスペースを小さくしてしまうことも抑制できる。
【0069】
従って、人工関節用手術器具2によると、第1実施形態と同様に、手術用部材101に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0070】
また、人工関節用手術器具2によると、解除機構は、固定部材22の先端側における湾曲面24として設けられ、把持部21bの操作に伴って手術用部材103と摺接しながら本体21に対して変位して固定部材22を退避させることになる。このため、把持部21bを所定の方向に動かすだけで、素早く且つ容易に人工関節用手術器具2と手術用部材103との固定を解除する操作を行うことができる。また、湾曲面24として構成される解除機構が固定部材22と一体に形成されるため、人工関節用手術器具2における手術用部材103に固定される部分の構造を更に簡素化することができる。
【0071】
また、人工関節用手術器具2によると、固定部材22は、磁石対向空間27を介して配置された第1磁石25と第2磁石26との間で生じる反発力によって突出方向に付勢される。そして、第1磁石配置部21c及び第2磁石配置部21dを連結する迂回連結部21eの側方において外部に開放するように磁石対向空間27が形成されている。このため、本体21において、第2磁石26と固定部材22とが配置される一端側の第2磁石配置部21cから第1磁石25が配置される他端側の第1磁石配置部21cまでが直線状に連続して形成されず、直線状に連続して延びる部分の長さを小さくすることができる。これにより、手術の際に、人体内において関節の近傍に存在する腱等の骨以外の生体組織を避けて人工関節用手術器具2を挿入することができる。従って、人工関節用手術器具2によると、手術用のスペースを更に効率よく確保することができる。
【0072】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図13は、本発明の第3実施形態に係る人工関節用手術器具3を示す側面図である。また、図14は、人工関節用手術器具3の一部と、本実施形態の手術用部材であるトライアル部材を構成する脛骨トレートライアル101(手術用部材101ともいう)の一部とを示す平面図である。図13及び図14に示す人工関節用手術器具3は、第1実施形態の人工関節用手術器具1と同様に、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に使用される配置合わせハンドルとして用いられる。そして、この人工関節用手術器具3は、第1実施形態と同様の脛骨トレートライアル101に対して着脱されてこの脛骨トレートライアル101を保持するために用いられる。
【0073】
図13及び図14に示す人工関節用手術器具3は、第1実施形態の人工関節用手術器具1と同様に構成され、本体11と、固定部材12と、磁石ユニット33と、解除機構である操作用ボタン14とを備えて構成されている。そして、磁石ユニット13以外の要素(本体11、固定部材12、操作用ボタン14)については、磁性体でない材料(例えば、樹脂や磁性体でないステンレス鋼等)によって形成されている。但し、人工関節用手術器具3は、磁石ユニット33の構成において、第1実施形態の人工関節用手術器具1と異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成については、脛骨トレートライアル101も含め、図面において第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる構成ついて説明する。
【0074】
図15は、図14におけるG−G線矢視位置に対応する断面を示す断面図である。尚、図15は、本体11の係合部11aが脛骨トレートライアル101の係合凹部101cに係合した状態において、固定部材12の先端側の端部12aが本体11内に退避した状態を部分的に示す断面図(図15(a))と、端部12aが本体11から突出して嵌合穴101dに嵌合した状態を部分的に示す断面図(図15(b))とを示している。図13乃至図15に示す磁石ユニット33は、永久磁石として形成された第1磁石35と第2磁石36とを備えて構成されている。
【0075】
第1磁石35は、リング状に形成された磁石として設けられており、本体11に対して第2支持穴11eの切欠き部分11fへの開口部分において固定して取り付けられている。一方、第2磁石36は、固定部材12に対して先端側の端部12aとは反対側の端部に固定して取り付けられている。尚、固定部材12は、第1実施形態と同様に、長手方向が突出方向及び退避方向に沿って配置される丸棒状のシャフト部材として形成され、本体11に形成された支持穴(11d、11e)に対して摺接するように配置されて支持されている。しかし、第3実施形態においては、固定部材12は、リング状に配置された第1磁石35を貫通した状態で本体11において突出方向及び退避方向に移動自在に支持されている。
【0076】
上述のように、磁石ユニット33においては、第1磁石35は固定部材12が貫通するリング状に配置され、固定部材12の端部に取り付けられた第2磁石36が第2支持穴11e内で第1磁石35に対向するように配置されている。これにより、磁石ユニット33においては、第2磁石36が第1磁石35に対して本体11における他端側に配置されている。また、磁石ユニット33においては、第1磁石35における第2磁石36に対向する対向面35aと、第2磁石36における第1磁石35に対向する対向面36aとが、N極とS極の組み合わせで対向するように配置されている。即ち、磁石ユニット33は、第1磁石35及び第2磁石36における異極側同士が対向するように配置されている。このように第1磁石35及び第2磁石36が本体11及び固定部材12に対して取り付けられていることで、磁石ユニット33は、第1磁石35と第2磁石36との間で作用する引力の磁力によって固定部材12を本体11に対して突出方向に付勢するように構成されている。
【0077】
次に、上述した人工関節用手術器具3の作動について説明する。人工関節用手術器具3は、本実施形態では、人工膝関節置換術において人工膝関節の配置合わせの際に用いられ、脛骨トレートライアル101に対して着脱される。まず、人工関節用手術器具3を脛骨トレートライアル101に取り付ける場合には、術者は、本体11を把持部11aにおいて把持した状態で、係合部11aを係合凹部11aに嵌め合わせるように、人工関節用手術器具3を脛骨トレートライアル101に対してその厚み方向に沿って移動させる。このとき、術者は、操作用ボタン14の操作部14bに指を引っ掛けて引っ張っておき、第1磁石35と第2磁石36との引力に抗して固定部材12を本体11内に退避させておく。
【0078】
固定部材12を本体11に退避させた状態で係合部11aと係合凹部101aとの係合が完了すると、図15(a)に示す状態となる。この状態では、固定部材12は、操作用ボタン14によって退避方向に付勢されて本体11内に退避しており、固定部材12の先端側の端部12aと脛骨トレートライアル101の嵌合穴101dとは嵌合していない。この状態から、術者が操作用ボタン14の操作部14bに引っ掛けていた指を離すことで、固定部材12を退避方向に付勢していた操作力が解除される。これにより、第1磁石35と第2磁石36との間で生じている引力によって、固定部材12が突出方向に付勢されて本体11から突出することになる。そして、図14及び図15(b)に示すように、固定部材12の先端側の端部12aが嵌合穴101dに嵌合し、本体11と脛骨トレートライアル101とが固定される。これにより、術者は、人工関節用手術器具3を脛骨トレートライアル101に対して素早く取り付けることができる。
【0079】
一方、人工関節用手術器具3を脛骨トレートライアル101から取り外す場合には、術者は、把持部11bを把持した状態で、操作用ボタン14の操作部14bに指を掛け、第1磁石35と第2磁石36との引力に抗して一方向に引っ張る操作を行う。この操作が行われることで、固定部材12が上記の引力に抗して退避方向に付勢され、嵌合穴101dに嵌合していた固定部材12の先端側の端部12aが嵌合穴101dから外れて本体11の第1支持穴11d内に退避することになる。これにより、図14及び図15(b)に示す状態から、図15(a)に示す状態へと移行し、本体11と脛骨トレートライアル101との固定が解除されることになる。そして、術者が、係合部11aを係合凹部101cの溝方向に沿ってずらすように人工関節用手術器具3を脛骨トレートライアル101に対して移動させることで、人工関節用手術器具3が脛骨トレートライアル101から取り外されることになる。
【0080】
以上説明した人工関節用手術器具3によると、第1磁石35と第2磁石36との間で作用する磁力によって固定部材12を突出方向に付勢し、固定部材12の先端側を手術用部材101に嵌合させることができる。これにより、本体11の係合部11aを手術用部材101に係合させた状態で、人工関節用手術器具3と手術用部材101とを素早く固定することができる。そして、解除機構である操作用ボタン14の操作により、固定部材12を退避方向に付勢し、人工関節用手術器具3と手術用部材101との固定を素早く解除することができる。また、人工関節用手術器具3によると、第1磁石35と第2磁石36との間で作用する磁力を利用して固定部材12を付勢する構成のため、繰り返し使用されても、固定部材12を付勢する付勢力が弱まってしまうことがない。このため、人工関節用手術器具3と手術用部材101との十分な固定力を常時確保して確実な着脱を実現することができる。また、人工関節用手術器具3によると、人工関節用手術器具3と手術用部材101とを固定する機構において、第1磁石35と第2磁石36とを有する磁石ユニット33を配置するだけの小さなスペースを確保すればよく、人工関節用手術器具3の小型化を図ることができる。このため、小さいスペースでの使用が可能となり、関節の周囲における手術用のスペースを小さくしてしまうことも抑制できる。
【0081】
従って、人工関節用手術器具3によると、第1実施形態と同様に、手術用部材101に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具を提供することができる。
【0082】
また、人工関節用手術器具3によると、第2磁石36が第1磁石35の本体11における他端側に配置されるとともに、第1磁石35及び第2磁石36が異極側同士で対向するように配置される。このため、第1磁石35と第2磁石36との間で引力が生じ、本体11に対して固定部材12を磁力により突出方向に付勢する構成を容易に実現することができる。
【0083】
また、人工関節用手術器具3によると、本体11に形成された円形断面の支持穴(11d、11e)において丸棒状のシャフト部材として形成された固定部材12が摺接するよう支持されるとともに、リング状に配置された第1磁石35を貫通する固定部材12に取り付けられた第2磁石36が第1磁石35に対して突出方向に引き付けられて付勢される。このため、磁石の引力を効率よく活用するとともに、突出方向に沿った姿勢が安定して保たれた状態で、固定部材12の突出動作を円滑に行うことができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0085】
(1)上述の実施形態では、人工膝関節置換術において用いられる人工関節用手術器具を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、人工膝関節置換術以外の人工関節置換術において用いられるものであってもよい。また、本発明は、脛骨トレートライアル以外のトライアル部材を保持するための人工関節用手術器具において適用されてもよい。
【0086】
(2)上述の実施形態では、第1磁石及び第2磁石がそれぞれ1つの磁石として構成される場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、第1磁石及び第2磁石がそれぞれ複数の磁石を組み合わせて構成されるものであってもよい。また、第3実施形態においては、リング状に形成された第1磁石を例にとって説明したが、複数の磁石がリング状に配置されて第1磁石が構成されているものであってもよい。
【0087】
(3)第1実施形態及び第2実施形態については、操作用ボタンとして設けられる解除機構に限らず、第3実施形態と同様に、固定部材に一体に形成された解除機構を適用することもできる。また、第3実施形態については、固定部材に一体に形成された解除機構に限らず、第1及び第2実施形態と同様に、操作用ボタンとして設けられる解除機構を適用することもできる。
【0088】
(4)第3実施形態では、解除機構が、半球面状の湾曲した面として固定部材に一体に形成される場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、解除機構が、固定部材に対して半球面状以外の形状の湾曲した面として一体に形成されていてもよい。また、解除機構が、固定部材の先端側において突出方向に対して傾斜した面として固定部材に一体に形成されていてもよい。
【0089】
(5)尚、第1磁石及び第2磁石の形状や配置については、上述の実施形態で例示したものに限らず、両磁石間で作用する反発力又は引力を利用して固定部材を本体から突出させる構成であれば、適宜変更して実施することができる。また、固定部材の形状については、シャフト状やプランジャー状以外の形状を選択してもよい。
【0090】
(6)また、上述の第1乃至第3実施形態では、手術用部材がトライアル部材である場合を例にとって説明したが、この例に限らず、本発明の人工関節用手術器具は、トライアル部材以外の手術用部材を保持するための人工関節用手術器具として用いられるものであってもよい。トライアル部材以外の手術用部材としては、例えば、カットガイド、スペーサ、ローテーションガイド、クラッシャー等が挙げられる。カットガイドは、人工関節置換術において、骨を切断する際に切削工具を誘導するための(切削方向を規定するための)ガイドとなるスリット部が形成された手術用部材として用いられ、関節部分に配置される。このカットガイドに対して着脱されるとともにカットガイドを保持するための人工関節用手術器具として、上述した人工関節用手術器具(1、2、3)を用いることができる。この場合、カットガイドには、係合凹部101c或いは係合凹部103aと同様の係合凹部が設けられるとともに、嵌合孔101d或いは嵌合孔103bと同様の嵌合孔が設けられる。そして、人工関節用手術器具(1、2、3)を適用することで、カットガイドに対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具(1、2、3)を提供することができる。
【0091】
また、上述した人工関節用手術器具(1、2、3)をスペーサに対して適用してもよい。スペーサは、人工関節置換術において、人工関節を配置するためのスペースを確認する際に用いられる手術用部材であり、関節部分に配置される。図16は、第1実施形態の人工関節用手術器具1が手術用部材であるスペーサ104に対して取り付けられてスペーサ104が人工関節用手術器具1によって保持された状態を示す斜視図である。第1実施形態と同様の構成については、図面において同一の符号を付して説明を省略する。スペーサ104には、脛骨トレートライアル101と同様に、係合凹部101cと同様の係合凹部104aが設けられるとともに、嵌合孔101dと同様の嵌合孔(図示せず)が設けられる。そして、人工関節用手術器具1は、このスペーサ104に対して着脱されるとともにスペーサ104を保持するための人工関節用手術器具として用いられる。このように、人工関節用手術器具1を適用することで、スペーサ104に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具1を提供することができる。
【0092】
また、上述した人工関節用手術器具(1、2、3)をローテーションガイドに対して適用してもよい。ローテーションガイドは、人工関節置換術において、骨内に一端側が挿入されるロッド部材の他端側の回転角度を調整するために用いられる手術用部材であり、関節部分に配置される。図17は、第1実施形態の人工関節用手術器具1が手術用部材であるローテーションガイド105に対して取り付けられてローテーションガイド105が人工関節用手術器具1によって保持された状態を示す斜視図である。第1実施形態と同様の構成については、図面において同一の符号を付して説明を省略する。尚、ローテーションガイド105には前述したロッド部材(図示せず)の他端側に対してスライド嵌合するガイドバー(図示せず)が挿入される挿入孔105bが形成されており、ガイドバーを介してローテーションガイド105がロッド部材の他端側に取り付けられる。そして、二股状に形成された平坦なプレート部分105cが骨に当接することで、ロッド部材の回転角度が調整される。このローテーションガイド105には、脛骨トレートライアル101と同様に、係合凹部101cと同様の係合凹部105aが設けられるとともに、嵌合孔101dと同様の嵌合孔(図示せず)が設けられる。そして、人工関節用手術器具1は、このローテーションガイド105に対して着脱されるとともにローテーションガイド105を保持するための人工関節用手術器具として用いられる。このように、人工関節用手術器具1を適用することで、ローテーションガイド105に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具1を提供することができる。
【0093】
また、上述した人工関節用手術器具(1、2、3)をクラッシャーに対して適用してもよい。クラッシャーは、人工関節置換術において、骨を掘削する際にハンマーで打ちつけられる工具として用いられる手術用部材であり、関節部分に配置される。図18は、第1実施形態の人工関節用手術器具1が手術用部材であるクラッシャー106に対して取り付けられてクラッシャー106が人工関節用手術器具1によって保持された状態を示す斜視図である。第1実施形態と同様の構成については、図面において同一の符号を付して説明を省略する。尚、クラッシャー106には関節部分に対して所定の部材を介して取り付けられたピン部材が挿入されるピン用孔106bが形成されており、ピン部材を介してクラッシャー106が関節部分に対してピン部材に沿って移動自在な状態で配置される。そして、クラッシャー106は、先端部106cが骨に当接した状態で配置されるとともにハンマーで打ちつけられることで、骨を掘削することになる。このクラッシャー106には、脛骨トレートライアル101と同様に、係合凹部101cと同様の係合凹部106aが設けられるとともに、嵌合孔101dと同様の嵌合孔(図示せず)が設けられる。そして、人工関節用手術器具1は、このクラッシャー106に対して着脱されるとともにクラッシャー106を保持するための人工関節用手術器具として用いられる。このように、人工関節用手術器具1を適用することで、クラッシャー106に対して素早く確実に着脱することができるとともに、小型化を図れて小さいスペースでの使用が可能な人工関節用手術器具1を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術において用いられ、関節部分に配置される手術用部材に対して着脱されるとともに手術用部材を保持するための人工関節用手術器具として、広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態に係る人工関節用手術器具と手術用部材とを示す斜視図である。
【図2】図1に示す人工関節用手術器具と手術用部材とを示す斜視図である。
【図3】図1に示す人工関節用手術器具と手術用部材とが膝関節部分に配置された状態を示す斜視図である。
【図4】図3と同じ状態を示す側面図である。
【図5】図1に示す人工関節用手術器具の平面図である。
【図6】図1に示す人工関節用手術器具の側面図である。
【図7】図1に示す人工関節用手術器具の本体と手術用部材とを固定する機構を説明するための図である。
【図8】図7のC−C線矢視断面図及びD−D線矢視断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る人工関節用手術器具と手術用部材の一部とを示す平面図である。
【図10】図9に示す人工関節用手術器具の本体と手術用部材とを固定する機構を説明するための図である。
【図11】図9のE−E線矢視位置に対応する部分拡大断面図である。
【図12】図9のE−E線矢視位置に対応する部分拡大断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る人工関節用手術器具を示す側面図である。
【図14】図13に示す人工関節用手術器具及び手術用部材の一部を示す平面図である。
【図15】図14におけるG−G線矢視位置に対応する断面図である。
【図16】図1に示す人工関節用手術器具と手術用部材であるスペーサとを示す斜視図である。
【図17】図1に示す人工関節用手術器具と手術用部材であるローテーションガイドとを示す斜視図である。
【図18】図1に示す人工関節用手術器具と手術用部材であるクラッシャーとを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0096】
1 人工関節用手術器具
11 本体
11a 係合部
11b 把持部
12 固定部材
13 磁石ユニット
14 操作用ボタン(解除機構)
15 第1磁石
16 第2磁石
101 脛骨トレートライアル(手術用部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術において用いられ、関節部分に配置される手術用部材に対して着脱されるとともに前記手術用部材を保持するための人工関節用手術器具であって、
前記手術用部材に対して係合する係合部が一端側に設けられるとともに、手動操作の際に把持される把持部が他端側に設けられた本体と、
前記本体に対して当該本体から一端側に向かって突出する突出方向及び他端側に向かって退避する退避方向において移動自在に支持され、前記本体から突出する先端側が前記手術用部材に対して嵌合することで、前記係合部が係合した前記手術用部材と前記本体とを固定する固定部材と、
前記本体に対して取り付けられた第1磁石と前記固定部材に対して取り付けられた第2磁石とを有し、前記第1磁石と前記第2磁石との間で作用する磁力によって前記固定部材を前記本体に対して前記突出方向に付勢する磁石ユニットと、
前記固定部材に対して固定されて又は一体に設けられ、直接に手動操作されることで、又は、前記把持部が手動操作されることで、前記固定部材とともに変位して前記固定部材を前記本体に対して前記退避方向に付勢し、前記手術用部材と前記本体との固定を解除する解除機構と、
を備えていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項2】
請求項1に記載の人工関節用手術器具であって、
前記手術用部材は、関節を人工関節に置換する手術において骨を切削することにより形成された骨面に配置されることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の人工関節用手術器具であって、
前記手術用部材は、骨を切断する際に切削工具を誘導するためのガイドとなるスリット部が形成されたカットガイドと、人工関節の配置合わせの際に用いられるトライアル部材と、人工関節を配置するためのスペースを確認する際に用いられるスペーサと、骨内に一端側が挿入されるロッド部材の他端側の回転角度を調整するために用いられるローテーションガイドと、骨を掘削する際にハンマーで打ちつけられる工具として用いられるクラッシャーと、のうちのいずれかであることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の人工関節用手術器具であって、
前記解除機構は、前記固定部材に対して固定されるとともに、前記本体から外部に突出するよう配置された操作用ボタンであることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の人工関節用手術器具であって、
前記解除機構は、前記固定部材の先端側において前記突出方向に対して傾斜した面として又は湾曲した面として当該固定部材に一体に形成され、前記係合部と前記手術用部材との係合が解除される方向に前記本体が移動するように前記把持部が手動操作されることで、前記手術用部材と摺接しながら前記本体に対して変位して前記固定部材を前記退避方向に付勢することを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項6】
請求項1乃至請求5のいずれか1項に記載の人工関節用手術器具であって、
前記磁石ユニットは、前記第2磁石が前記第1磁石に対して前記本体における一端側に配置されるとともに、前記第1磁石及び前記第2磁石における同極側同士が対向するように配置されていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項7】
請求項6に記載の人工関節用手術器具であって、
前記固定部材は、長手方向が前記突出方向及び前記退避方向に沿って配置される丸棒状のシャフト部材として形成され、
前記本体には、摺接するように配置される前記固定部材を支持するとともに、当該固定部材の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴が形成され、
前記第2磁石は、前記固定部材の端部において、前記本体に取り付けられた前記第1磁石に対向するように取り付けられていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項8】
請求項6に記載の人工関節用手術器具であって、
前記本体は、
前記第1磁石が配置される第1磁石配置部と、前記第1磁石配置部に対して一端側に配置されて前記固定部材に取り付けられた前記第2磁石が配置される第2磁石配置部と、前記第1磁石と前記第2磁石とが対向する磁石対向空間を迂回するように延びて前記第1磁石配置部と前記第2磁石配置部とを連結する迂回連結部と、が設けられ、
前記磁石対向空間が前記迂回連結部の側方において外部に開放されるように形成されていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の人工関節用手術器具であって、
前記磁石ユニットは、前記第2磁石が前記第1磁石に対して前記本体における他端側に配置されるとともに、前記第1磁石及び前記第2磁石における異極側同士が対向するように配置されていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項10】
請求項9に記載の人工関節用手術器具であって、
前記固定部材は、長手方向が前記突出方向及び前記退避方向に沿って配置される丸棒状のシャフト部材として形成され、
前記本体には、摺接するように配置される前記固定部材を支持するとともに、当該固定部材の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴が形成され、
前記第1磁石は、前記固定部材が貫通するリング状に配置されていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項1】
関節の一部又は全部を人工関節に置換する手術において用いられ、関節部分に配置される手術用部材に対して着脱されるとともに前記手術用部材を保持するための人工関節用手術器具であって、
前記手術用部材に対して係合する係合部が一端側に設けられるとともに、手動操作の際に把持される把持部が他端側に設けられた本体と、
前記本体に対して当該本体から一端側に向かって突出する突出方向及び他端側に向かって退避する退避方向において移動自在に支持され、前記本体から突出する先端側が前記手術用部材に対して嵌合することで、前記係合部が係合した前記手術用部材と前記本体とを固定する固定部材と、
前記本体に対して取り付けられた第1磁石と前記固定部材に対して取り付けられた第2磁石とを有し、前記第1磁石と前記第2磁石との間で作用する磁力によって前記固定部材を前記本体に対して前記突出方向に付勢する磁石ユニットと、
前記固定部材に対して固定されて又は一体に設けられ、直接に手動操作されることで、又は、前記把持部が手動操作されることで、前記固定部材とともに変位して前記固定部材を前記本体に対して前記退避方向に付勢し、前記手術用部材と前記本体との固定を解除する解除機構と、
を備えていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項2】
請求項1に記載の人工関節用手術器具であって、
前記手術用部材は、関節を人工関節に置換する手術において骨を切削することにより形成された骨面に配置されることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の人工関節用手術器具であって、
前記手術用部材は、骨を切断する際に切削工具を誘導するためのガイドとなるスリット部が形成されたカットガイドと、人工関節の配置合わせの際に用いられるトライアル部材と、人工関節を配置するためのスペースを確認する際に用いられるスペーサと、骨内に一端側が挿入されるロッド部材の他端側の回転角度を調整するために用いられるローテーションガイドと、骨を掘削する際にハンマーで打ちつけられる工具として用いられるクラッシャーと、のうちのいずれかであることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の人工関節用手術器具であって、
前記解除機構は、前記固定部材に対して固定されるとともに、前記本体から外部に突出するよう配置された操作用ボタンであることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の人工関節用手術器具であって、
前記解除機構は、前記固定部材の先端側において前記突出方向に対して傾斜した面として又は湾曲した面として当該固定部材に一体に形成され、前記係合部と前記手術用部材との係合が解除される方向に前記本体が移動するように前記把持部が手動操作されることで、前記手術用部材と摺接しながら前記本体に対して変位して前記固定部材を前記退避方向に付勢することを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項6】
請求項1乃至請求5のいずれか1項に記載の人工関節用手術器具であって、
前記磁石ユニットは、前記第2磁石が前記第1磁石に対して前記本体における一端側に配置されるとともに、前記第1磁石及び前記第2磁石における同極側同士が対向するように配置されていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項7】
請求項6に記載の人工関節用手術器具であって、
前記固定部材は、長手方向が前記突出方向及び前記退避方向に沿って配置される丸棒状のシャフト部材として形成され、
前記本体には、摺接するように配置される前記固定部材を支持するとともに、当該固定部材の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴が形成され、
前記第2磁石は、前記固定部材の端部において、前記本体に取り付けられた前記第1磁石に対向するように取り付けられていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項8】
請求項6に記載の人工関節用手術器具であって、
前記本体は、
前記第1磁石が配置される第1磁石配置部と、前記第1磁石配置部に対して一端側に配置されて前記固定部材に取り付けられた前記第2磁石が配置される第2磁石配置部と、前記第1磁石と前記第2磁石とが対向する磁石対向空間を迂回するように延びて前記第1磁石配置部と前記第2磁石配置部とを連結する迂回連結部と、が設けられ、
前記磁石対向空間が前記迂回連結部の側方において外部に開放されるように形成されていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の人工関節用手術器具であって、
前記磁石ユニットは、前記第2磁石が前記第1磁石に対して前記本体における他端側に配置されるとともに、前記第1磁石及び前記第2磁石における異極側同士が対向するように配置されていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【請求項10】
請求項9に記載の人工関節用手術器具であって、
前記固定部材は、長手方向が前記突出方向及び前記退避方向に沿って配置される丸棒状のシャフト部材として形成され、
前記本体には、摺接するように配置される前記固定部材を支持するとともに、当該固定部材の長手方向に沿って延びる円形断面の支持穴が形成され、
前記第1磁石は、前記固定部材が貫通するリング状に配置されていることを特徴とする、人工関節用手術器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−125202(P2010−125202A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305130(P2008−305130)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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