説明

人工顎骨及びその製造方法

【課題】従来のプロテーゼは、全てシリコンゴム或いはE−PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で作られ、人の顎骨と共通な所が一切無い為、永久異物として体内に長期的に存在し人体と共存できるが、宿主と一体に生長することができなく、容易に位置移動、磨耗、突出、露出し、刺激により患者に不快感を与える。
【解決手段】
一種の生体人工顎骨であって、下記の手順による方法にて作られている。牛或いは豚から動物材料を集め、動物材料を顎骨の原材料とする、動物材料を顎骨に植込みできるような形状に加工する、動物材料に対して脱細胞処理を行う、動物材料に対してエポキシ架橋固定処理を行う、動物材料に対して抗原除去処理を行う、動物材料に対して組織を誘導するアルカリ処理を行う、カップリング活性物質を動物材料に取り入れて、生長因子と幹細胞が活性を維持するようにする、最後に動物材料を消毒液が入れた容器の中に入れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体植込機器の医用プロテーゼの分野に関わるもので、具体的に言うと、顎骨の補修と美容整形に用いる人工顎骨に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
美容整形術において、常に顎骨に対して修正、延長するニーズにより、人工顎骨或いは仮顎骨等のプロテーゼが必要となっている。現在これらのプロテーゼは、全てシリコンゴム或いはE−PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で作られているが、残念ながらこれら合成材料のプロテーゼは、その組成と構造から見ると、人の顎骨と共通な所が一切無い為、永久異物として体内に長期的に存在するものとして、人体と共存できるが、宿主と一体に生長することができなく、容易に位置移動、磨耗、突出と露出する。それ以外にもこれら人工合成材料は、刺激により患者に不快感を与える。
【0003】
その故、上記欠点が避けられる新たな顎骨用生体プロテーゼが依然と必要となるのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的を実現するために、本発明では、人工顎骨用生体プロテーゼの製造方法を提供するのである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その製造方法には下記の手順が含まれる。
【0006】
牛或いは豚から動物材料を集め、動物材料を顎骨用の原材料とする、
動物材料を顎骨に植込みできるような形状に加工する、
動物材料に対して脱細胞処理を行う、
動物材料に対して架橋固定処理を行う、
動物材料に対して抗原除去処理を行う、
動物材料に対してアルカリ処理を行う、
生長因子と幹細胞が付着する能力のあるカップリング活性物質を動物材料に取り入れて、及び、
動物材料を消毒液を含む容器の中に入れる。
【0007】
本発明において、生体人工顎骨は、成分及び構造の上で、いずれも天然骨と似ているので、多方面の抗原除去プロセス及び組織誘導技術により処理された後は、免疫拒否反応が起きなく、組織の親和性が優れている。本発明のプロテーゼは、植込みしてから長期間、宿主の顎骨組織と共存し、宿主の顎骨組織の一部となるので、異物の不快感がなく、位置移動、磨耗、露出のような欠点が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例における生体人工顎骨の横方向の斜視図である。
【図2】図1における生体人工顎骨の縦方向の正面図である。
【図3】生体人工顎骨の裏面の写真である。
【図4】生体人工顎骨の正面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記の詳細な説明は、本発明において実施した最適な形態である。本説明は制限的な定義を採用したのではなく、本実施例の場合の一般原則を説明するわけである。本発明の要旨は添付の特許請求の範囲により適正に定義される。
【0010】
本発明は、動物の骨をプロテーゼの原材料として生体人工顎骨を製造する方式を提供するのである。先ず、原材料に対して浄化処理を行ってから、脱細胞処理(細胞除去)を行い、更にエポキシ化合物にて固定する。その後、抗原除去技術、組織誘導技術及び一連の生体技術処理を応用して、原材料に対して処理を行い、最後に、プロテーゼを洗浄して包装する。重要な生体化学処理において、高浸透技術を応用して、処理試薬を骨の組織の微小空間にまで深く浸透するようにして、その効果を高めている。高浸透反応器は、超音波振動及び真空パルスを組み合わせたもので、処理試薬が高浸透反応器内で効果を発揮させるようにしている。
【0011】
具体的な技術的準備作業は、以下の通りである。
1. 前処理を行う(消毒及び異物除去)、
2. 機械加工/成型、
3. 脱細胞処理、
4. 架橋と固定処理、
4a. NaOH処理(牛骨にて製造する時のみ)
5. 抗原除去処理、
6. 組織誘導技術処理、
7. 洗浄、
8. 消毒、密封、包装。
【0012】
手順1:前処理段階において、顎骨材料は、周知の技術にて、豚或いは牛から取ったものである。骨材料は、広域スペクトラム抗菌剤にて浸して消毒し、必要に応じて、骨膜等の不純物を切り除く。
【0013】
手順2:機械加工或いは成型の段階において、骨材料は要求によって、周知の工具と方法にて必要な形状に加工する。例えば、図1に示す人の顎骨に最適な形状に加工する。
【0014】
手順3:脱細胞処理の段階において、細胞(骨材料の中の全てのタイプの細胞を指す)を、酵素性分解、及び/又は、洗浄剤(界面活性剤)にて洗浄するのである。酵素性分解をする酵素は、ペプシン或いはトリプシンである。洗浄処理を行う洗浄剤として用いる界面活性剤には、ツイン(Tween)20、乳化剤OP-10とトリトン(Triton)X-100がある。
【0015】
手順4:架橋と固定段階において、架橋固定剤として用いるエポキシ化合物と、人工骨の中野基礎物質との間で架橋反応を生じさせる。架橋反応は、5℃〜50℃の温度条件で、8〜96時間とし、上記エポキシ化合物は、化学式1に示す物質で、R=CnH2n+1、或いは化学式2で、nは0〜12の中の整数とし、試薬の濃度を0.1−1.5Nとする。
【化1】

【化2】

【0016】
手順5:現代免疫学の原理によって、動物組織の抗原性は、主に、特定部位に位置し、特定構造の活性基から来る。それらの活性基には、-H2*、-OH*、-SH*等が含まれる。特定構造は、主に、螺旋タンパク質の鎖から形成される、いくつかの特定の水素結合により来る。その特定部位と特定構造は、抗原の決定要素と呼ばれる。抗原除去手順は、複合試薬を採用して活性基の運動を制止し、特定構造を変える。特定活性基を封鎖するのに用いる抗原除去剤は、主に、-H2*、-OH*、-SH*、その他の基と反応しやすい求核試薬である、それらの試薬は、カルボン酸無水物、アシルクロライド、アシルアミド、エポキシ化合物等である。特定構造を変えるのに用いる試薬は、グアニジン類化合物は、例えば、グアニジン ハイドロクロライドのようなクラスワンの強水素結合形成剤である。特定構造は、主に、螺旋構造のタンパク質の鎖により形成されるいくつかの特定の水素結合よりから来るので、強水素結合形成剤を用いて、特定の水素結合を置きかえることにより、特定構造を変更することができる。基に付された“*”印は、それらが、特定部位に位置する少数の特定基であることを示し、また、免疫信号に対して反応することができ、-H2、-OH、-SHの標準的な基ではないことを示す。これらの特定基は、高いエネルギーの活性状態にあり、例えば、触媒の活性中心では、反応物質或いは毒素反応が好適であるように、求核試薬開始反応が好ましい。
【0017】
手順6:組織誘導処理において、生長因子及び幹細胞を付着させる能力のある活性物質を結合させ、インプラントの人体の自己修復機能により解放された生長因子及び幹細胞の蓄積を促進し、傷区域に生長因子及び幹細胞に輸送する。一方、長時間、高い発現を促進し、人工顎骨と宿主顎骨を同化させる。導入される活性物質としては、いくつかの、特定ポリペプチド或いはグリコサミノグリカン化合物がある。主特定ポリペプチドには、主に、例えばlys(16)-Gly-Arg-Asp-Ser-Pro-Cysのような、16リシンとアルギンニンのオリゴペプチド、グリシン、アスパラギン酸からなるポリペプチドである。グリコサミノグリカンズの例としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、アセチルヘパリン硫酸がある。取入れ方法には、カップリング、化学吸着、物理吸着とコラーゲン膜包み等がある。カップリングを優先として選択できるが、カップリング結合剤としては、ジカルボン酸無水物、ジアシルジアミン、ジアシルジクロライド、ジエポキサイド、カルボジイミド等の二官能基化合物が使用される。
【0018】
手順7:洗浄段階において、純水にて余分の化学剤と生体剤を洗い流す。
【0019】
手順8:消毒、密封、包装段階において、プロテーゼを、生理塩水が貯蔵できる二層のビニール袋の中に入れる。包装した製品は最低25kGyのγ射線照射での消毒にも耐えられる。この消毒方法により、プリオン以外の既存病原体が除去できることは既に証明されている。
【0020】
手順4a:追加手順“NaOH処理”において、牛骨を原材料とした場合、架橋固定処理及び複合型抗原除去において必要となるものである。この手順において、原材料を摂氏25−50℃、濃度1NのNaOH溶液中で60分間以上浸して、存在する可能性のあるプリオンウィルスを殺す。
【0021】
手順3-7:上記に言及されている処理方法は、高浸透反応器の中で実行できる。その高浸透反応器は、超音波振動装置と真空パルス装置を具備した密閉容器である。真空パルスにより、原材料の中の空気を取り除くことができ、超音波振動装置とあわせると、高浸透試薬が骨材料の微小空間に深く浸入できる。これにより、原材料に対して、試薬による徹底的な処理が確保できる。この面から見ると、当然ながら、相違する手順には相違する試薬を採用するが、手順3-7の全ての処理は、同じ反応容器で処理できる。
【0022】
本発明において、生体人工顎骨は、現在応用されているシリコンゴム或いはE-PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)により作られた仮顎骨に比べて、その特徴は、生体人工顎骨が純天然材料により作られ、その組成及び構造が人体の顎骨と似ているので、優れた生物親和性を有し、免疫拒否反応がなく、植え込み後、宿主顎骨に入り成長し、宿主組織と一体になり、宿主顎骨の一部となるので、異物の刺激感がなく、位置移動が発生しなく、皮膚組織の穿孔、磨耗による露出等の欠点がない等、新型の生体人工顎骨である。
【実施例】
【0023】
健康で新鮮な豚骨を選別し、0.1%濃度の臭化ベンザルコニウム消毒液の中に浸し消毒してから、取り出して、骨膜を切り除き、要求された寸法に応じて切り取り、洗浄された特殊工具にて骨を図1に示すような形状に加工して洗浄する。その後、この物品を高浸透反応器の中に入れ、濃度40‐200mg/Lのペプシン或いはトリプシン溶液を加え、18−45℃の温度で2−16時間、酵素性分解する。酵素が溶出し、不活性化した後、高浸透反応器の中に入れ、0.1−2Nのエポキシ化合物の溶液を加え、5−40℃の温度で8−96時間反応させる。エポキシ化合物の分子式は、化学式1に示す物質で、ここで、R=CnH2n+1、或いは化学式2で、、nは0〜12の中の整数となる。
【化1】

【化2】

【0024】
エポキシ化合物を中和して洗浄し、物品を洗浄し、高浸透反応器(上記の反応器と同じものを採用しても良い)の中に入れ、抗原除去試薬を入れ、5−50℃の温度で2−24時間、抗原除去反応をさせる。使用する抗原除去試薬の例としては、カルボキシル無水物、アシルクロライド、エポキシ化合物とグアニジン・ハイドロクロライドがある。二種類或いはそれ以上の抗原除去剤にて、抗原性を十分に除去してもよい。取り出して洗浄し、高浸透反応器(上記の反応器と同じものを採用しても良い)の中に入れ、二種類の活性物質、すなわち、Lys(16)-Gly-Arg-Asp-Ser-Pro-Cysにより組成されたポリペプチド及びグルタリック酸無水物カップリング剤を入れ、5−30℃の温度で2−24時間反応させる。反応が完了した後、取り出して洗浄し、密封して放射線照射にて消毒し、完成品を得る。
【0025】
上記の記述は本発明の好適な実施例であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲を逸脱することなく、多数の変化と修飾が可能である。以下の特許請求の範囲は、そのような変化と修飾を含むと解され、すべて本発明の技術的範囲内とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体人工顎骨の製造方法であって、以下の手順により作られる。
牛或いは豚から動物材料を集め、この動物材料は顎骨である、
動物材料を顎骨に植込みできるような形状に加工する、
動物材料に対して脱細胞処理を行う、
動物材料に対して架橋処理を行う、
動物材料に対して抗原除去処理を行う、
動物材料に対してアルカリ処理を行う、
生長因子と幹細胞を付着させることができる活性物質を動物材料に取り入れ、及び
動物材料を消毒液が入った容器の中に入れて消毒する。
【請求項2】
前記の動物材料に対して脱細胞処理を行う手順において、酵素性分解を行う、及び/又は、界面活性剤を用いて洗浄することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記酵素性分解において、トリプシンとペプシンを用いて反応させることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記界面活性剤には、トリトン(Triton)X100、ツイン(Tween)20、乳化剤OP-10の中のいずれかが含まれることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
動物材料に対して架橋処理を行う手順において、架橋剤として、下記のエポキシ化合物を採用することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【化1】


ここで、R=CnH2n+1或いは、
【化2】


n=0、1、2、3…12である。
【請求項6】
動物材料に対して抗原除去処理を行う手順において、求核試薬と強水素結合形成剤を採用することにより、−NH2、−OH、−SHその他の基と水素反応を生じさせ、特定基をブロックし、特定構造を変化させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記求核試薬には、カルボン酸無水物、アシルクロライド、アシルアミド、エポキシ化合物等が含まれることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記強水素結合形成剤には、グアニジン化合物が含まれることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記活性物質には、アルギニン、グリシン、アスパラギン酸とともに16リシンオリゴペプチドを含むポリペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
下記手順による製造方法にて作られる一種の顎骨用のプロテーゼ。
牛或いは豚から動物材料を集め、動物材料は顎骨である、
動物材料を顎骨に植込みできるような形状に加工する、
動物材料に対して脱細胞処理を行う、
動物材料に対して架橋処理を行う、
動物材料に対して抗原除去処理を行う、
動物材料に対してアルカリ処理を行う、
生長因子と幹細胞が付着することができる活性物質を動物材料に取り入れ、及び、
動物材料を消毒液が入った容器の中に入れて消毒する。
【請求項11】
前記の動物材料に対して脱細胞処理を行う手順において、酵素性分解を行う、及び/又は、界面活性剤を用いて洗浄することを特徴とする請求項10に記載のプロテーゼ。
【請求項12】
動物材料に対して架橋処理を行う手順において、架橋剤として、下記のエポキシ化合物を採用することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【化1】


ここで、R=CnH2n+1或いは、
【化2】


n=0、1、2、3…12である。
【請求項13】
動物材料に対して抗原除去処理を行う手順において、求核試薬と強水素結合形成剤を採用することにより、−NH2、−OH、−SHその他の基と水素反応を生じさせ、特定基をブロックし、特定構造を変化させることを特徴とする請求項10に記載のプロテーゼ。
【請求項14】
前記活性物質には、アルギニン、グリシン、アスパラギン酸とともに16リシンオリゴペプチドを含むポリペプチドであることを特徴とする請求項10に記載のプロテーゼ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−508599(P2012−508599A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535854(P2011−535854)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000817
【国際公開番号】WO2010/054527
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(511018594)グランドホープ バイオテック カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】