説明

人形の関節構造及び人形構成機構

【課題】関節の動きを確保しつつ、人体により近い外観を実現する人形を提供する。
【解決手段】人形の関節構造は、例えば肩関節において、間に可動関節を形成する胸部20と上腕部30と、連結部材81と、連結部材81の端部が可動に嵌め込まれる嵌合部材80、90とを有している。胸部20と上腕部30は、上腕部30の端部が胸部20の内側に摺動可能に挿入され、胸部20と上腕部30の内部には、嵌合部材80、90がそれぞれ配置され、当該嵌合部材80、90同士が連結部材81により連結されている。嵌合部材90は、上腕部30に対して相対的に移動可能であり、当該嵌合部材90には、胸部20と上腕部30が、少なくとも互いに離れる方向に移動した時に反発力を生じさせる弾性部材94が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動関節を有する玩具人形やマネキン人形等の関節構造及び人形構成機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば着せ替え人形は、腕や脚の関節が動くものが一般的である。かかる可動関節を有する人形の関節構造は、関節の可動の中心が球心と一致した構造となっており、例えば、腕や脚の部位の接続端部同士、もしくは間の関節部材とを軸支させて軸周りに可動させたり、球心を通る面で分割した半球を重ね合わせた真球等を関節部材として固定軸周りに可動させたり、真球状の関節部位の当該表面に沿って可動させるもの等が一般的である。あるいは、関節の可動の中心が一定方向に移動可能であったとしても、その可動の誘導線に合わせたスリットや溝等が関節部や腕や脚の部位自体を貫いて表面上に形成されるものが一般的である(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−119768号公報
【特許文献2】特開2006−346285号公報
【特許文献3】特開2000−37567号公報
【特許文献4】特開2008−23046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような関節構造の場合、上記関節部材と腕や脚の部位との間等に人体には無い不自然な隙間や段差(凹凸)ができたり、関節自体にネジ穴や直線的な分断線(合わせ面)、腕や脚の部位の外面に、内部の構造体(ゴムひもや板状部材等)を通すためのスリット等の不自然な線や隙間ができる。また、例えば関節を伸ばした時等に関節部材の真球状の球体部分等が不自然な方向に突出したり、関節を曲げた時に部材同士が干渉しないよう、あらかじめ各部材の外形が不自然な形状に大きく削られている等、人体と異なる不自然な外観となる。このように従来の関節構造では、人体と比べて不自然な部分が多くリアリティに欠け、これによって例えば人形の美しさや魅力を損ねることがあった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、関節の動きを確保しつつ、様々な姿勢においても人体により近い外観を実現可能な新しい人形の関節構造や、当該人形を構成可能な人形構成機構を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、人形の関節構造であって、間に可動関節を形成する2つの人形構成部位と、連結部材と、前記連結部材の端部と可動に嵌合する嵌合部材と、を有し、前記2つの人形構成部位は、一方の人形構成部位の端部が他方の人形構成部位の内側に摺動可能に挿入され、前記各人形構成部位の内部には、前記嵌合部材がそれぞれ配置され、当該嵌合部材同士が前記連結部材により連結され、前記嵌合部材の少なくとも一方は、当該嵌合部材のある前記人形構成部位に対して相対的に移動可能であり、当該嵌合部材には、前記2つの人形構成部位が少なくとも互いに離れる方向に移動した時に反発力を生じさせる反発力発生機構が設けられていることを特徴とする。なお、人形構成部位に対して相対的に移動可能でない嵌合部材がある場合、当該嵌合部材には、人形構成部位に固定されているもの、人形構成部位と一体化しているものも含まれる。
【0007】
本発明によれば、一方の人形構成部位が他方の人形構成部位に挿入され、その内部に嵌合部材とそれらを連結する連結部材があるので、各種内部部材が表面に露出せず従来のような人体と異なる不自然な線や隙間を低減でき、また、外観の形状に影響を及ぼすことなく、連結部材や嵌合部材の種類を変えて、特定の関節に適した動きを実現できる。また、連結部材の両端が嵌合部材と可動に嵌合することにより、関節内部の可動の支点が少なくとも2ケ所でき、自由度が高く複雑な関節可動を実現できる。また、嵌合部材が移動可能であることにより、上記可動の支点そのものが移動可能となり、さらに自由度が高く複雑な関節可動を実現できる。また可動の支点が固定されていないため、前記一方の人形構成部位の端部の外形や、当該端部が挿入される前記他の人形構成部位の内形を、従来のような球心が固定された真球状の球面に限らず、例えば、挿入方向に対し、扁平楕円体形状の球面、扁長楕円体形状の球面、中間に一部同径部を有する略円筒状の曲面、挿入方向から見た断面が菱型に近い略楕円体形状、あるいは一定の球心や正軸を持たない上下左右斜それぞれに異なる曲面を描く複雑な湾曲面、好ましくは、より人体に近い外観および可動の軌跡を誘導するような様々な形状等に、設定できる。また、反発力発生機構を有することで、様々な形態及び構成の関節部の様々な角度や位置(姿勢)に応じて、反発力発生機構が連携して動き、かつ反発力発生機構により反発力が働くので、2つの人形構成部位が互いに当接(付勢)され、両部位の隙間を低減できる。よって、関節の動きを確保しつつ、人体により近い外観の人形の関節を実現できる。
【0008】
前記連結部材は、棒状体を有し、当該棒状体の両端に球状体又は凹状体のいずれかを有し、前記嵌合部材は、前記球状体又は前記凹状体に回動可能に嵌合されてもよい。かかる場合、自由度が高く複雑な関節可動を、簡便かつ少ない部材で、実現できる。なお、例えば凹状体もしくは球状体のいずれかを可撓性を有する素材で構成した場合には、脱着も容易となり、各人形構成部位同士の設置、交換も簡便に行なうことができる。
【0009】
前記連結部材の棒状体が屈曲していてもよい。かかる場合、例えば関節を曲げた時等の人形構成部位の端部と連結部材との干渉が抑制できるので、関節の屈曲角度を広げることができる。また、屈曲した連結部材が両端点で回動するため、例えば人形構成部位等が連結部材に接触した場合にも、連結部材そのものが回転して(屈曲部分が大きく移動して)、人形構成部位から退避できる。この結果、人形構成部位の多様な形状や動きに柔軟に対応できる。
【0010】
前記一方の人形構成部位の端部の外形、及び/又は、当該端部が挿入される前記他方の人形構成部位の内形は、一定の球心を持たない湾曲形状に形成されていてもよい。かかる場合、関節における外観を、より人体に近く設定できる。また、かかる場合、関節における可動の方向性や範囲が、誘導もしくは抑制されるため、より人体に近い可動を実現できる。例えば、前記一方の人形構成部位の端部の外形が、挿入方向に長い略楕円体形状を有する場合、関節の角度に応じて、他方の人形構成部位から引き出されつつ、一方の人形構成部位と他方の人形構成部位が隙間を開けずに可動できる。また、前記一方の人形構成部位の端部の外形と当該端部が挿入される前記他の人形構成部位の内形の、挿入方向から見た断面が略楕円形状に形成される場合、人形構成部位同士の軸方向(挿入方向)周りの回動が抑制され、関節においてより人体に近い動きを実現できる。
【0011】
前記嵌合部材と前記連結部材との嵌合における角度保持力は、前記反発力発生機構による反発力より大きく設定されていてもよい。かかる場合、反発力発生機構の反発力に関わらず、前記一方の人形構成部位と当該端部が挿入される前記他の人形構成部位との位置および角度を所望の状態に設定できる。
【0012】
前記他方の人形構成部位に挿入された前記一方の人形構成部位の嵌合部材の嵌合部が、前記他方の人形構成部位の内側に位置していてもよい。かかる場合、例えば連結部材の可動が前記一方の人形構成部位の端部により拘束されないので、連結部材の広い可動範囲を確保できる。また、例えば前記一方の人形構成部位の外周面を広く設定でき、外観上の隙間を低減できる。
【0013】
別の観点による本発明は、人形の関節構造であって、可動関節を形成する2つの人形構成部位の間に配置され、端部が人形構成部位の内側に挿入されるか又は端部内に前記人形構成部位が挿入され、当該人形構成部位に対して摺動可能な関節部材と、連結部材と、前記各人形構成部位の内部に配置され、前記連結部材の端部と可動に嵌合する嵌合部材と、を有し、前記関節部材の両端部には、前記連結部材の端部と可動に嵌合する嵌合部が形成され、前記一方の人形構成部位の嵌合部材と前記関節部材の一方の嵌合部と、前記関節部材の他方の嵌合部と前記他方の人形構成部位の嵌合部材とが前記連結部材により連結され、前記嵌合部材の少なくとも一方は、当該嵌合部材のある前記人形構成部位に対して相対的に移動可能であり、当該嵌合部材には、前記2つの人形構成部位が少なくとも互いに離れる方向に移動した時に反発力を生じさせる反発力発生機構が設けられていてもよい。
【0014】
本発明によれば、2つの人形構成部位と関節部材が互いに挿入され、それらの内部に嵌合部材とそれらを連結する連結部材があるので、従来のような人体と異なる不自然な線や隙間を低減でき、また、外観の形状に影響を及ぼすことなく、連結部材や嵌合部材の種類を変えて、特定の関節に適した動きを実現することもできる。また、各連結部材の両端が、各嵌合部材や各嵌合部と可動に嵌合することにより、可動の支点が少なくとも4ケ所でき、より自由度が高く複雑な関節可動を実現することができる。また、嵌合部材が移動可能であることにより、上記可動の支点そのものが移動可能となり、さらに自由度が高く複雑な関節可動を実現できる。また、可動の支点が固定されていないため、前記関節部材の端部の外形や、当該端部が挿入される各人形構成部位の内形を、又は、各人形構成部位の端部の外形や、当該端部が挿入される関節部材の内形を、従来のような球心が固定された真球状の球面に限らず、例えば、挿入方向に対し、扁平楕円体形状の球面、扁長楕円体形状の球面、中間に一部同径部を有する略円筒状の曲面、挿入方向から見た断面が菱型に近い略楕円体形状、あるいは一定の球心や正軸を持たない上下左右斜それぞれに異なる曲面を描く複雑な湾曲面、好ましくは、より人体に近い外観および可動の軌跡を誘導するような様々な形状等に、設定することができる。また、反発力発生機構を有することで、様々な形態及び構成の関節部の様々な角度や位置(姿勢)に応じて、反発力発生機構が連携して動き、かつ反発力発生機構により反発力が働くので、2つの人形構成部位や関節部材が互いに当接(付勢)され、それぞれの隙間を低減できる。よって、関節の動きを確保しつつ、人体により近い外観の人形の関節を実現できる。
【0015】
前記連結部材は、棒状体を有し、当該棒状体の両端に球状体又は凹状体のいずれかを有し、前記嵌合部材と前記嵌合部は、前記球状体又は前記凹状体に回動可能に嵌合されてもよい。かかる場合、自由度が高く複雑な関節可動を、簡便かつ少ない部材で実現できる。また、凹状体もしくは球状体のいずれかを可撓性を有する素材で構成した場合には、脱着も容易となり、各人形構成部位同士の設置、交換も簡便に行なうことができる。
【0016】
前記関節部材の端部の外形と、当該端部が挿入される前記人形構成部位の内形、或いは前記関節部材の端部の内径と、当該端部に挿入される前記人形構成部位の外形の、少なくともいずれかは、真球状ではない、例えば一定の球心を持たない湾曲形状に形成されていてもよい。かかる場合、関節における可動の方向性や範囲、外観をより人体に近く設定できる。例えば、前記関節部材の端部の外形が、挿入方向に長い略楕円体形状を有する場合、関節の角度に応じて、前記各人形構成部位から引き出されつつ、関節部材と各人形構成部位が隙間を開けずに可動できる。また例えば、前記関節部材の端部の外形と、当該端部が挿入される前記人形構成部位の内形の、挿入方向から見た断面が略楕円形状に形成されている場合、人形構成部位と関節部材との軸方向(挿入方向)周りの回動が抑制されるため、関節においてより人体に近い動きを実現できる。
【0017】
前記関節部材の嵌合部と前記連結部材との嵌合及び前記嵌合部材と前記連結部材との嵌合における角度保持力は、前記反発力発生機構による反発力より大きく設定されていてもよい。かかる場合、反発力発生機構の反発力に関わらず、関節部材を挟んだ一方の人形構成部位と他の人形構成部位との位置および角度を所望の状態に設定できる。
【0018】
前記人形構成部位に前記関節部材が挿入されており、前記関節部材の嵌合部が、当該人形構成部位の内側に位置していてもよい。かかる場合、例えば連結部材の可動が前記関節部材の端部に拘束されないので、連結部材の広い可動範囲を確保できる。また、例えば前記一方の人形構成部位の外周面を広く設定でき、外観上の隙間を低減できる。
【0019】
別の観点による本発明は、可動関節を有する人形の人形構成機構であって、連結部材と、前記連結部材の端部と可動に嵌合する嵌合部材と、を有し、両側に可動関節が形成される人形構成部位には、長手方向に貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔には、両側から挿入された前記嵌合部材を係止可能な係止部が形成され、前記人形構成部位の前記貫通孔には、前記両側の嵌合部材同士を接続する反発力発生機構が設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、人形構成部位の内部に、嵌合部材とそれらを連結する連結部材を配置できるので、各人形構成部位や関節部材を連結して関節を構成した場合に、従来のような人体と異なる不自然な線や隙間を低減できる。また、各人形構成部位や関節部材が互いに離れようとすると、反発力発生機構により反発力が働くので、各部材の間に隙間ができることを防止できる。よって、関節の動きを確保しつつ、人体により近い外観の人形の関節を実現できる。また、当該貫通孔には、両側から挿入された前記嵌合部材を係止可能な係止部が形成されていてもよい。かかる場合、例えば係止部によって各人形構成部位毎に各反発力発生機構の反発力が係止されるため、各反発力発生機構単位に独立した適切な反発力の強弱をつけることが可能となり、それぞれの人形構成部位毎に自律した回動や姿勢維持ができる。また、関節の角度(姿勢)に応じて、例えば一方の人形構成部位あるいは関節部材が他方の人形構成部位の内部へ深く入りこもうとする際には、嵌合部材が人形構成部位内部の係止部によって係止されることで、一方の人形構成部位や関節部材が極端に深く入り込むことを防ぐことができる。また、各人形構成部位をそれぞれ個別に、脱着、設置、交換等する場合においても(人形構成部位を単独に外した状態においても)、中心へと付勢される両嵌合部材が係止部によって係止されるため、両嵌合部材が人形構成部材内部の中心へと極端に入り込むことがなく、各部材の設置等をより簡便かつ容易に行なうことができる。また、例えば複数の人形構成部位を様々に接続して、複数の可動関節の接続を簡便に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、人体により近い外観の人形の関節を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】人形の構成の概略を示す正面模式図である。
【図2】人形の構成の概略を示す側面模式図である。
【図3】肩の関節構造を示す正面図であり、(a)の右肩は肩を下げている態様、左肩は可動範囲のほぼ中間の角度に肩を挙げ開いている態様を示す。(b)の右肩は鉛直面方向に振り上げている態様、左肩は肩を横に大きく挙げ開いている態様を示す。
【図4】肩の関節構造を示す真上から見た図であり、(a)は可動範囲のほぼ中間の角度に両肩が位置する態様、(b)は右肩が後方へ、左肩が前方へ移動している態様を示す。
【図5】腕の関節構造を示す側面図であり、(a)は可動範囲のほぼ中間の角度に肘を曲げ、手首を伸ばした態様、(b)は肘を大きく曲げ、手首を親指方向へ回転させた態様、(c)は肘を伸ばし、手首を小指方向へ回転させた態様を示す。
【図6】手首の関節構造を示す正面図であり、(a)は可動範囲のほぼ中間の角度に手首が位置する態様、(b)は手の平方向へ手首を曲げた態様、(c)は手の甲方向へ手首を曲げた態様を示す。
【図7】股関節の構造を示す正面図であり、(a)の左脚は膝が正面を向いている態様、右脚は膝が外側を向くよう、右脚を90度回転させた態様を示す。(b)の左脚は外側方向へ開いた態様、右脚は内側方向へ曲げた態様を示す。
【図8】股関節の構造を示す側面図であり、(a)及び(c)は可動範囲のほぼ中間の角度に股関節を曲げた態様、(b)は股関節を大きく曲げた態様を示す。 なお、(c)は本案件の別の実施例を示す。
【図9】膝関節の構造を示す側面図であり、(a)は可動範囲のほぼ中間の角度に膝を曲げた態様、(b)は膝を大きく曲げた態様、(c)は膝を伸ばした態様を示す。
【図10】足首の関節構造を示す側面図であり、(a)は可動範囲のほぼ中間の角度に足首が位置する態様、(b)は足首を前方に上げ、足指(親指以外の四指)を上方へ屈折させた態様、(c)は足首を後方に曲げ、足指を下方へ屈折させた態様を示す。
【図11】足首の関節構造を示す正面図であり、(a)は可動範囲のほぼ中間の角度に足首が位置する態様、(b)は足首を外側方向へ曲げた態様、(c)は足首を内側方向へ曲げた態様を示す。
【図12】(a)は人形の正面外観図であり、(b)は人形の背面外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1及び図2は、本実施の形態にかかる人形の関節構造が適用された人形1の構成の概略を示す説明図である。なお、ここで示す態様は本発明の一実施形態にすぎず、本発明は何等これに限定して解釈されるものではない。例えば、ここで示される一つの関節の構成を別の関節で実施したり、挿入する側と挿入される側の関係や嵌合部材同志の凹凸の関係を逆転する等、本明細書の記載に基づいて当業者であれば可能な設計変更は本発明の範囲内である。
【0024】
人形1は、頭部10と、首部11と、胴部12と、腕部13と、脚部14を有している。胴部12は、頭部10と両腕部13が接続される胸部20と、両脚部14が接続される腰部21と、胸部20と腰部21の間の腹部22を有している。また、腕部13は、胸部20に接続される上腕部30と、前腕部31と、手部32を有している。脚部14は、腰部21に接続される膝上部40と、膝下部41と、足部42を有している。本実施の形態では、可動関節を形成する人形構成部位としての、胸部20と上腕部30、上腕部30と前腕部31、前腕部31と手部32、腰部21と膝上部40、膝上部40と膝下部41、及び膝下部41と足部42に、本発明に係る人形の関節構造を適用している。
【0025】
先ず、胴部12の構成について説明する。図1及び2に示すように、胴部12の上方、胸部20の中空部50の中央には、胸内部嵌合部材80が設けられている。胸内部嵌合部材80は、上部がゴム等の弾性部材83に接続され、例えば遊動可能に吊止されている。弾性部材83は、例えば胸部20の上方に位置する首部11の貫通孔11aを貫通し、その上部の頭部10に接続されている。また、胸内部嵌合部材80は、下部が腹部22内部の上部球体84に接続されている。上部球体84は、弾性部材85を介在して、後述する下部球体86を有する腰内部嵌合部材180に接続されている。下部球体86の上面は、弾性部材85の周りに設けられた腹部22内部の円筒状の係止部87に係止されている。こうして、胸部20と腹部22と腰部21は、弾性部材85によって中央側に付勢されつつ接続され、全体としての胴部12を構成する。
【0026】
次に、肩関節の構造について説明する。図3に示すように、胸部20の内側には中空部50が形成され、上腕部30との接続部分には、中空部50に通じる肩側開口部51が形成されている。肩側開口部51の内面51aは、上腕部30の回動や出入を妨げず、動きを誘導するような湾曲形状に形成され、開口部51に挿入される上腕部30の外面30aは、胸部20の内面51a又は肩側開口部51の端部(へり)のいずれかの少なくとも一部と当接し、様々な位置及び角度においても隙間が低減するような、外側に凸の湾曲形状に形成されている。よって、上腕部30が胸部20に対して出入の動き等を伴いつつ回動できる。
【0027】
上腕部30の内部には、腕の長手方向に沿って貫通孔60が形成されている。貫通孔60の両端部には、径の大きい大径部60aが形成され、その大径部60a内にそれぞれ肩内部嵌合部材90と肘上嵌合部材91がスライド可能に配置されている。なお、両嵌合部材90、91は、貫通孔60内で軸周りに回転しないよう側面の一部に平坦面が形成されていてもよい。
【0028】
肩内部嵌合部材90と肘上嵌合部材91は、貫通孔60内を通る、反発力発生機構としての弾性部材94によって接続され、貫通孔60の中央側に付勢されている。また、貫通孔60における大径部60aと小径部60bの境界には、係止部95がそれぞれ形成されている。この係止部95により、両嵌合部材が貫通孔60の内部へ必要以上に入り込む事を防ぐことができる。かかる場合、各人形構成部位を交換、設置する場合等に、各嵌合部材90、91が適切な位置に置かれ、好都合である。
【0029】
連結部材81は、棒状体81aの両端に球状体81bが形成された形状を有している。肩内部嵌合部材90の胸部20側の面には、球状体81bが回動自在に嵌め込まれる嵌合部分としての嵌合凹部92が形成され、胸内部嵌合部材80の左右両側には、嵌合凹部82が形成されている。嵌合凹部92、82を連結部材81により連結することで、胸部20と上腕部30を接続できる。各嵌合部の摩擦等により、胸部20に対して所望の角度、位置に上腕部30を維持できる。
【0030】
嵌合凹部82、92と、連結部材81との嵌合における角度保持力は、弾性部材94による反発力より大きく設定されており、かかる場合、弾性部材94による反発力に関わらず、上腕部30と胸部20を所望の角度に保持できる。
【0031】
また、上腕部30が胸部20の奥まで挿入され、嵌合凹部92は、上腕部30の胸部20に挿入された部分の内側に位置している。かかる場合、上腕部30の外面30aにおける、胸部20と摺動しつつ露出する範囲を広く設定することができるため、胸部20に対し上腕部30を大きく曲げた時にも外観上の隙間ができにくくなる。また、例えば連結部材81の可動が上腕部30の端部に拘束されることがないので、連結部材81の広い可動範囲を確保できる。よって、外観上の隙間を低減しつつ、可動範囲を大きく確保できる。
【0032】
続いて、肩関節の動作及びそれを誘導する形状について説明する。肩関節を動かす際には、連結部材81の両端の球状体81bが、嵌合凹部82、92に対し回動する。この時、連結部材81が両端の2点で回動可能なため、胸部20と上腕部30の角度が様々であっても連動して対応し、肩関節は自由度の高い動作を確保できる。例えば、肩を大きく開いた場合(図3(b))等、嵌合凹部92は、胸部20内を相対的に移動するが、連結部材81もそれに連動して角度を変えることができる。
【0033】
また、肩内部嵌合部材90がスライド可能であり、かつ弾性部材94が伸縮可能であることにより、すなわち、連結部材81(ひいては関節部)の可動の支点そのものが流動的かつ相対的に移動可能であることにより、さらに大きな可動範囲と自由な動作を確保できる。例えば、上腕部30が胸部20に対し側面方向へ開閉する場合(図3)や、前後に移動する(肩をすくめたり、胸を張るような仕種等)場合(図4)や、前後の鉛直面内で回転する(腕を上に高く振り挙げる)場合(図3(b))等、胸部20と上腕部30の角度や位置が様々であっても、嵌合凹部92の位置は、連結部材81に対し適切な状態に保たれる。以上により、人体により近い複雑な動作を様々に実現できる。
【0034】
また、肩関節の形状、分割線、分割方法等を様々に設定し、上記動作に対応させることもできる。例えば、より人体に近い外観および可動の軌跡を誘導するような形状であってもよい。本実施例において、上腕部30の外面30aは、挿入方向にやや長い略楕円体形状をベースに、肩を挙げ開く際に上面側より下面側が長い弧を描くよう設定されている。これにより、上腕部30が胸部20から引き出されつつ、両部材間の隙間を低減した状態で、広く回動することができる。また、他の実施例として、より広く可動範囲を確保するため、肩を構成する各人形構成部材等が複数に分割されていてもよい。
【0035】
また、弾性部材94により反発力が働くため、様々な姿勢においても、胸部20と上腕部30が互いに当接(付勢)され、両部位の隙間を低減することができる。例えば、胸部20から上腕部30が引き出される方向へ移動した場合、肘上嵌合部材91が上腕部30内の下方の係止部95に係止されるか、もしくは上腕部30が後述する肘関節部材100との当接部分において係止され、胸部20と上腕部30を近づける方向に弾性部材94による反発力が生じる。また、上腕部30が胸部20の内側へ意図する以上に入り込もうとする際には、肩内部嵌合部材90が上腕部30の内面の上方の係止部95によって係止され、それを防ぐ。
【0036】
また、一定の角度において上腕部30が胸部20へ深く挿入可能である場合、その角度において両部材の設置を簡便に行なうことができる。例えば、連結部材81及び/又は各嵌合部(嵌合凹部82、92)が可撓性を有して脱着可能である場合等には、例えば、係止部95によって係止された肩内部嵌合部材90の嵌合凹部92を、胸内部嵌合部材80の嵌合凹部82に接続された連結部材81の他端である球状体81bへ、簡便には上腕部30を胸部20に押し込む事で連結可能となる。
【0037】
次に、肘関節の構造について説明する。図5に示すように、上腕部30と前腕部31との間には、肘関節部材100が設けられている。肘関節部材100は、側面から見て中心線が屈曲する略楕円体形状を有し、両端部が、上腕部30の貫通孔60内と後述する前腕部31の貫通孔61内にそれぞれ挿入されている。上腕部30と前腕部31に当接する肘関節部材100の両側の表面の一部は、様々な位置及び角度においても隙間が低減するような、外側に凸の湾曲形状に形成され、上腕部30と前腕部31の内周面も、肘関節部材100の回動や出入を妨げず、動きを誘導するような湾曲形状に形成されている。よって、上腕部30と前腕部31は、出入の軌道を描きながら肘関節部材100の表面に沿って摺動できる。また、肘関節部材100の内角側の中央付近は、径が小さくなっており、肘関節が大きく曲げられた際(図5(b))には、その小径部100aに上腕部30と前腕部31の端部が当接する。
【0038】
前腕部31の内部には、腕の長手方向に沿って貫通孔61が形成され、貫通孔61の肘関節部材100側の端部には、大径部61aが形成され、当該大径部61aに肘下嵌合部材120が、スライド可能に配置されている。なお、肘下嵌合部材120は、貫通孔61内で軸周りに回転しないよう側面の一部に平坦面が形成されていてもよい。また、貫通孔61の手首関節部材140側には、小径部61bが形成され、当該小径部61bに手首上嵌合部材121が、スライド可能に配置されている。
【0039】
肘下嵌合部材120と手首上嵌合部材121は、貫通孔61内を通る弾性部材132によって接続され、貫通孔61の中央側に付勢されている。貫通孔61の大径部61aと小径部61bの境界には、肘下嵌合部材120を係止する係止部133が形成されている。また、小径部61b内には、小径部61bより径が小さい円筒状係止部材134が、スライド可能に配置されている。手首上嵌合部材121は、例えば円筒状係止部材134の端部の係止部135によって係止される。
【0040】
また、円筒状係止部材134及び手首上嵌合部材121はそれぞれ前腕部31とは独立してスライド可能、抜き差し可能とされていてもよい。かかる場合、例えば、開口部の径が狭く、嵌合部材の設置位置が奥深い場合や、人形構成部位の長さに対し各係止部間の距離が極端に短く、そこに設置される弾性部材の伸びた長さが人形構成部位の長さに満たない場合等、各部材の設置が困難な条件であっても、それを容易に行なうことができる。例えば、図6(a)では、前腕部31の内部に肘下嵌合部材120と手首上嵌合部材121がそれぞれ深く挿入されることで、両嵌合部材間の距離が、人形構成部位としての前腕部31の長さの半分以下に設定されている。また、反発力を発生させるため、弾性部材132の自然長の長さは両嵌合部材間の距離以下に設定されている。例えば弾性部材132の伸び率が1、5倍に留まる場合等には、伸ばした弾性部材132の長さは前腕部31の長さに足りず、結果、弾性部材132を前腕部31から引き出して各嵌合部材に接続するといった作業が極めて困難になる。かかる場合においても、あらかじめ適切な長さの円筒状係止部材134に各嵌合部材120、121を弾性部材132によって接続しておき、後に前腕部31を手首側から差し込むといった手段をとれば、前腕部31の長さ、形状に関わらず、適宣な長さ、伸び率を有した弾性部材132を設置することができる。
【0041】
なお、円筒状係止部材134は、前腕部31以外の他の人形構成部位の内部に設けてもよい。また、円筒状係止部材134は、可撓性を有する素材、例えばゴム製等であってもよい。かかる場合、円筒状係止部材134自体が湾曲することで、例えば図3(b)に示したような上腕部30の屈折した貫通孔61内においても設置でき、弾性部材94が上腕部30の内壁(角)等に接触して破損しないようにする保護部材としての機能を果たすこともできる。
【0042】
肘関節部材100の両端部には嵌合凹部110、111が形成され、肘上嵌合部材91には嵌合凹部93が形成され、肘下嵌合部材120には嵌合凹部130が形成されている。嵌合凹部110と嵌合凹部93、嵌合凹部111と嵌合凹部130を、2つの連結部材81により連結することで、上腕部30、前腕部31及び肘関節部材100を接続できる。各嵌合部の摩擦等により、肘関節部材100に対し所望の角度、位置に上腕部30、前腕部31を維持できる。
【0043】
また、嵌合凹部93、110、111、130と、連結部材81との嵌合における角度保持力は、弾性部材94や弾性部材132による反発力より大きく設定されており、かかる場合、弾性部材94、132による反発力に関わらず、上腕部30と前腕部31を所望の角度に保持できる。
【0044】
また、肘関節部材100が上腕部30及び前腕部31の奥まで挿入され、嵌合凹部110は上腕部30の内側へ、嵌合凹部111は前腕部31の内側へ入り込んでいる。かかる場合、肘関節部材100の外面における、上腕部30及び前腕部31と摺動しつつ露出する範囲を広く設定することができるため、肘関節部材100に対し上腕部30や前腕部31を大きく曲げた時等にも外観上の隙間ができにくくなる。また、例えば連結部材81の可動が肘関節部材100の端部に拘束されることがないので、連結部材81の広い可動範囲を確保できる。よって、外観上の隙間を低減しつつ、可動範囲を大きく確保できる。
【0045】
続いて、肘関節の動作及びそれを誘導する形状について説明する。肘関節を動かす際には、2つの連結部材81の球状体81bが、嵌合凹部93と嵌合凹部110、嵌合凹部111と嵌合凹部130に対し回動する。この時、2つの連結部材81がそれぞれ両端の2点の、計4点で回動可能なため、肘関節部材100と上腕部30や前腕部31との角度が様々であっても連動して対応し、肘関節は自由度の高い動作を確保できる。例えば、図5(b)の肘を大きく曲げた時や図5(c)の肘を伸ばした時等、肘関節部材100の嵌合凹部110、111の位置は、上腕部30や前腕部31内を相対的に移動するが、それぞれの連結部材81も連動して角度を変えることができる。このように肘関節は、肘関節部材100を差し挟み、上腕部30側と前腕部31側の二ケ所で可動するため、より大きな可動範囲を確保でき、かつ、例えば、上腕部30と肘関節部材100との当接部において肘を屈曲させた状態で、前腕部31と肘関節部材100との当接部において、後述する手部32を含む前腕部31以下の人形構成部材を軸方向に回転させたり(手の平を裏返す仕種等)、あるいは前腕部31と肘関節部材100との当接部において肘を屈曲させた状態で、前腕部31を含む肘関節部材100以下の人形構成部材を軸方向に回転させる(曲げた前腕部を左右に大きく振る仕種)等、上腕部30側と前腕部31とでそれぞれ別の可動をすることができ、より自由で複雑な姿勢をとることができる。
【0046】
また、肘上嵌合部材91や肘下嵌合部材120がそれぞれスライド可能であり、かつ弾性部材94、132がそれぞれ伸縮可能であることにより、すなわち、連結部材81の可動の支点そのものが流動的かつ相対的に移動可能であることにより、さらに大きな可動範囲と自由な動作を確保できる。例えば図5(b)に示すように、肘を大きく曲げることで、肘関節部材100が上腕部30や前腕部31から引き出されつつ大きく外側へ移動する(肘がせり出される)場合等、肘関節部材100と上腕部30や前腕部31との角度や位置が様々であっても、嵌合凹部93や嵌合凹部130の位置は、連結部材81に対し適切な状態に保たれる。以上により、人体により近い複雑な動作を様々に実現できる。
【0047】
また、肘関節の形状、分割線、分割方法等を様々に設定し、上記動作に対応させることもできる。本実施例において、肘関節部材100両端部の外面は、肘を曲げる際に前面側より背面側が長い弧を描くよう設定されている。これにより、肘関節部材100が上腕部30や前腕部31からへ引き出され、上腕部30と前腕部31が互いに干渉することなく、両部材間の隙間を低減した状態で、広く回動することができる。
【0048】
また、他の実施例において、肘関節部材100の後面(肘の突出部側)を、上腕部30及び/又は前腕部31が覆いつつ互いに当接するような形状をしていてもよい。かかる場合、両部材の当接部において、後方への屈曲が規制される等、肘関節が人体の可動とそぐわない方向へ折れ曲がる事を防ぐことができ、かつ、腕を伸ばした際に、後面部に外観上表れる分割線が少なくなり、より人体に近い外観となる。また、他の実施例として、例えば肩関節と同様に関節部材を設けない構成にして分割線を減らしてもよく、かかる場合、より人体に近い外観となる。
【0049】
また、弾性部材94、132にそれぞれ反発力が働くため、様々な姿勢においても、肘関節部材100と上腕部30や前腕部31とが互いに当接(付勢)され、各部位の隙間を低減することができる。例えば、上腕部30から肘関節部材100が引き出される方向へ移動した場合、肩内部嵌合部材90が上腕部30内上方の係止部95に係止されるか、もしくは上腕部30が胸部20との当接部分において係止され、上腕部30と肘関節部材100を近づける方向に弾性部材94による反発力が生じる。また、肘関節部材100が前腕部31から引き出される方向へ移動した場合、手首上嵌合部材121が円筒状係止部材134に係止されるか、もしくは前腕部31が後述の手首関節部材140との当接部分において係止され、肘関節部材100と前腕部31を近づける方向に弾性部材132による反発力が生じる。また、肘関節部材100が、上腕部30や前腕部31の内側へ意図する以上に入り込もうとする際には、肘上嵌合部材91が上腕部30の肘側の係止部95によって、肘下嵌合部材120が前腕部31の係止部133によって、それぞれ係止され、それを防ぐ。
【0050】
また、一定の角度において肘関節部材100の端部が、上腕部30や前腕部31に深く挿入可能である場合、その角度において隣り合う部材の設置を簡便に行なうことができる。例えば、各連結部材81及び/又は各嵌合部(嵌合凹部93、110、111、130)が可撓性を有して脱着可能である場合等には、まず上腕部30側においては、例えば、肘関節部材100の嵌合凹部110に接続された連結部材81の他端である球状体81bを、係止部95によって係止された肘上嵌合部材91の嵌合凹部93へ、また前腕部31側においては、例えば、肘関節部材100の嵌合凹部111に接続された連結部材81の他端である球状体81bを、係止部133によって係止された肘下嵌合部材120の嵌合凹部130へ、簡便には肘関節部材100を、上腕部30や前腕部31に押し込む事で連結可能となる。
【0051】
次に、手首関節の構造について説明する。図5、図6に示すように、前腕部31と手部32との間には、手首関節部材140が設けられている。手首関節部材140の両端部は縮径しており、前腕部31の貫通孔61と手部32の開口された中空部62に挿入されている。前腕部31や手部32に当接する手首関節部材140の両側の表面は、様々な位置及び角度においても隙間が低減するような、外側に凸の湾曲形状に形成され、前腕部31と手部32の内周面も、手首関節部材140の動きを誘導するような湾曲形状に形成されている。よって、前腕部31と手部32は、当該表面に沿って摺動できる。
【0052】
手首関節部材140の両端部には、嵌合凹部150、151が形成され、手首上嵌合部材121には、嵌合凹部131が形成され、手部32の中空部62には、嵌合凹部152が形成されている。嵌合凹部150と嵌合凹部131、嵌合凹部151と嵌合凹部152を、2つの連結部材81で連結することで、前腕部31、手部32及び手首関節部材140を接続できる。各嵌合部の摩擦等により、手首関節部材140に対し所望の角度、位置に前腕部31、手部32を維持できる。
【0053】
また、嵌合凹部150、131と、連結部材81との嵌合における角度保持力は、弾性部材132による反発力より大きく設定されており、かかる場合、弾性部材132による反発力に関わらず、手首関節部材140と前腕部31を所望の角度に保持できる。
【0054】
また、手首関節部材140が前腕部31及び手部32の奥まで挿入され、嵌合凹部150は前腕部31の内側へ、嵌合凹部151は手部32の内側へ入り込んでいる。かかる場合、手首関節部材140の外面における、前腕部31または手部32と摺動しつつ露出する範囲を広く設定することができるため、手首関節部材140に対し前腕部31や手部32を大きく曲げた時にも外観上の隙間ができにくくなる。また、例えば連結部材81の可動が手首関節部材140の端部に拘束されることがないので、連結部材81の広い可動範囲を確保できる。よって、外観上の隙間を低減しつつ、可動範囲を大きく確保できる。
【0055】
続いて、手首関節の動作及びそれを誘導する形状について説明する。手首関節を動かす際には、2つの連結部材81の球状体81bが、嵌合凹部131と嵌合凹部150、嵌合凹部151と嵌合凹部152に対し回動する。この時、2つの連結部材81がそれぞれ両端の2点の、計4点で回動可能なため、手首関節部材140と前腕部31や手部32との角度が様々であっても連動して対応し、手首関節は自由度の高い動作を確保できる。例えば、図5(b)の手首を親指方向へ大きく曲げた時や図5(c)の手首を小指方向へ大きく曲げた時、図6(b)の手の平を腹面方向へ大きく曲げた時や図6(c)の手の平を背面方向へ大きく曲げた時等、手首関節部材140の嵌合凹部150、151の位置は前腕部31や手部32内を相対的に移動するが、それぞれの連結部材81がそれに連動して角度を変えることができる。このように手首関節は、手首関節部材140を差し挟み、前腕部31側と手部32側の二ケ所で可動するため、より大きな可動範囲を確保でき、かつ、例えば、手の平を内方向に屈折しつつ小指方向へ回動させる等、前腕部31側と手部32側とでそれぞれ別の可動をすることもでき、より自由で複雑な姿勢をとることができる。
【0056】
また、手首上嵌合部材121がスライド可能であり、かつ弾性部材132が伸縮可能であることにより、すなわち、連結部材81の可動の支点そのものが流動的かつ相対的に移動可能であることにより、さらに大きな可動範囲と自由な動作を確保できる。例えば図5に示すように、手首関節部材140を前腕部31から引き出しつつ、親指方向や小指方向へ回動させたり、図6に示すように、手の平の表面方向や背面方向へ大きく回動させる等、手首関節部材140と前腕部31との角度や位置が様々であっても、嵌合凹部131の位置は、連結部材81に対し適切な状態に保たれる。以上により、人体により近い複雑な動作を様々に実現できる。
【0057】
また、手首関節の形状、分割線、分割方法等を様々に設定し、上記動作に対応させることもできる。手首関節部材140の端部の外形と、当該端部が挿入される前腕部31と手部32の端部の内形の、挿入方向から見た断面が、扁平楕円形状に設定されていてもよい。かかる場合、より人体の形状に近い外観を再現できる。また、手部32の前腕部31に対する軸周りの回転が制限される。これにより、意図しない方向へ手首関節が回転することなく、より人体に近い手首関節の動きが実現される。例えば人体において、手部を含む手首関節を前腕部に対し軸周りに回転させる場合(手の平を裏返す仕種等)には、前腕部自体の回転(捻れ)を必要とするが、これと同様に本構成においても、手首を長手方向の軸周りに回転させたい場合は、肘関節の説明で上述したように、例えば、それを前腕部31と肘関節部材100との当接部において、すなわち前腕部31の回転によって行なってもよい。
【0058】
また、弾性部材132により反発力が働くため、様々な姿勢においても、前腕部31と手首関節部材140が当接(付勢)され、両部位の隙間を低減することができる。例えば、前腕部31から手首関節部材140が引き出される方向へ移動した場合、例えば肘下嵌合部材120が係止部133に係止されるか、肘関節部材100と前腕部31との当接部分において係止され、前腕部31と手首関節部材140を近づける方向に弾性部材132による反発力が生じる。また、手首関節部材140が前腕部31の内側へ意図する以上に入り込もうとする際には、手首上嵌合部材121が、円筒状係止部材134の係止部135によって係止され、それを防ぐ。
【0059】
また、一定の角度において手首関節部材140が前腕部31に深く挿入可能である場合、その角度において両部材の設置を簡便に行なうことができる。例えば、連結部材81及び/又は各嵌合部(嵌合凹部131、150)が可撓性を有して脱着可能である場合等には、手首関節部材140の嵌合凹部150に接続された連結部材81の他端である球状体81bを、円筒状係止部材134の係止部135によって係止された手首上嵌合部材121の嵌合凹部131へ、簡便には手首関節部材140を前腕部31に押し込む事で連結可能となる。
【0060】
また、他の実施例として、例えば肩関節と同様に関節部材を設けない構成にして分割線を減らしてもよく、かかる場合、より人体に近い外観となる。あるいは、例えば手部32の中空部62内に、連結部材81が嵌合する独立した嵌合部を設け、その嵌合部と手部32本体を弾性部材で連結する等、肘関節と同様の構成を採用してしてもよい。かかる場合、さらに大きく自由度の高い手首の回動を実現できる。
【0061】
次に、股関節の構造について説明する。例えば図7、図8に示すように、胴部12の下方、腰部21の内側には中空部50が形成され、腰部21の下部には、膝上部40が挿入される開口部160が形成されている。開口部160の内面160aは、膝上部40の回動や出入を妨げず、動きを誘導するような湾曲形状に形成され、膝上部40の上方端部の外面40aは、腰部21の内面160a又は開口部160の端部(へり)のいずれかの少なくとも一部と当接し、様々な位置及び角度においても隙間が低減するような、外側に凸の湾曲形状に形成されている。よって、膝上部40が、腰部21に対して出入の動きを伴いつつ回動できる。
【0062】
膝上部40の内部には、脚の長手方向に沿って貫通孔170が形成されている。貫通孔170の両端部には、径の大きい大径部170aが形成され、大径部170a内には、それぞれ股関節嵌合部材190と膝上嵌合部材191がスライド可能に配置されている。また、股関節嵌合部材190は、貫通孔170内で軸周りに回転しないよう側面の一部に平坦面が形成されていてもよい。
【0063】
股関節嵌合部材190と膝上嵌合部材191は、貫通孔170内を通る弾性部材194によって接続され、貫通孔170の中央側に付勢されている。また、大径部170aと小径部170bの境界には、係止部195がそれぞれ形成されている。この係止部195により、股関節嵌合部材190や膝上嵌合部材191が、貫通孔170の内部へ必要以上に入り込む事を防ぐことができる。
【0064】
腰部21の中空部50の中央には、腰内部嵌合部材180が設けられている。腰内部嵌合部材180の左右両側には、嵌合凹部182が形成され、股関節嵌合部材190には、嵌合凹部192が形成されている。嵌合凹部182、192を連結部材181により連結することで、腰部21と膝上部40を接続できる。各嵌合部の摩擦等により、腰部21に対して所望の角度、位置に膝上部40を維持できる。
【0065】
嵌合凹部182、192と、連結部材181との嵌合における角度保持力は、弾性部材194による反発力より大きく設定されており、弾性部材194による反発力に関わらず、腰部21と膝上部40を所望の角度に保持できる。
【0066】
連結部材181は、例えば途中で屈曲した棒状体181aの両端に球状体181bが形成された形状を有している。この場合、連結部材181が屈曲しているので、膝上部40の腰部21側の端部と連結部材181との干渉が抑制され、膝上部40は、その分広角に曲げることができる。また、屈曲した連結部材181が両端点で回動するため、例えば膝上部40が連結部材181に接触した場合にも、連結部材181そのものが回転して(屈曲部分が大きく移動して)、膝上部40から退避することができる。この結果、膝上部40の多様な形状や動きに柔軟に対応できる。
【0067】
続いて、股関節の動作及びそれを誘導する形状について説明する。股関節を動かす際には、連結部材181の両端の球状体181bが、嵌合凹部182、192に対し回動する。この時、連結部材181が両端の2点で回動可能なため、腰部21と膝上部40の角度が様々であっても連動して対応し、股関節は自由度の高い動作を確保できる。例えば、図8(b)の膝上部40を腹面(正面)方向へ大きく曲げた時等、腰部21と膝上部40との位置関係に応じて、嵌合凹部192の位置は腰部21及び/又は膝上部40内を相対的に移動するが、連結部材181がそれに連動して角度を変えることができる。
【0068】
また、股関節嵌合部材190がスライド可能であり、かつ弾性部材194が伸縮可能であることにより、すなわち、連結部材181の可動の支点そのものが流動的かつ相対的に移動可能であることにより、さらに大きな可動範囲と自由な動作を確保できる。例えば図7(b)に示すように、膝上部40が腰部21に対し側面方向へ開閉する場合や、図7(a)に示すように、膝上部40を長軸方向で回転させる(膝や足首を含む脚全体を側面方向へ向ける)場合や、図8に示すように、前後の鉛直面内で回転する(脚を上に振り挙げる)場合等、膝上部40と腰部21との角度や位置が様々であっても、嵌合凹部192の位置は、連結部材181に対し適切な状態に保たれる。以上により、人体により近い複雑な動作を様々に実現できる。
【0069】
また、股関節の形状、分割線、分割方法等を様々に設定し、上記動作に対応させることもできる。本実施例において、膝上部40端部の外面40aは、脚を挙げる際に前面側より背面側が長い弧を描くよう設定されている。これにより、膝上部40が腰部21から引き出されつつ、両部材間の隙間を低減した状態で、広く回動することができる。また、他の実施例として、より広く可動範囲を確保するため、股関節を構成する各人形構成部材等が複数に分割されていてもよい。
【0070】
また、反発力発生機構としての弾性部材194により反発力が働くため、様々な姿勢においても、腰部21と膝上部40が互いに当接(付勢)され、両部位の隙間を低減することができる。例えば、腰部21から膝上部40が引き出される方向へ移動した場合、膝上嵌合部材191が膝上部40内下方の係止部195に係止されるか、もしくは膝上部40が後述する膝関節部材200との当接部分において係止され、腰部21と膝上部40を近づける方向に弾性部材194による反発力が生じる。また、膝上部40が腰部21の内側へ意図する以上に入り込もうとする際には、股関節嵌合部材190が膝上部40内上方の係止部195によって係止され、それを防ぐ。
【0071】
また、一定の角度において膝上部40が腰部21に深く挿入可能である場合、その角度において両部材の設置を簡便に行なうことができる。例えば、連結部材181及び/又は各嵌合部(嵌合凹部182、192)が可撓性を有して脱着可能である場合等には、係止部195によって係止された股関節嵌合部材190の嵌合凹部192を、腰内部嵌合部材180の嵌合凹部182に接続された連結部材181の他端である球状体181bへ、簡便には膝上部40を腰部21側に押し込む事で連結可能となる。
【0072】
なお、本実施例においては、屈曲した連結部材181を用いたが、他の実施例として、例えば図8(c)に示すように、嵌合部材180の側に屈曲部を設け、屈曲しない連結部材81を用いてもよい。かかる場合、他部位と共通の連結部材を用いることができ、部材の生産等が容易となる。
【0073】
次に、膝関節の構造について説明する。図9に示すように、膝上部40と膝下部41との間には、膝関節部材200が設けられている。膝関節部材200の両端部は、端部に近づくにつれて縮径しており、膝上部40の貫通孔170と後述する膝下部41の貫通孔171に挿入されている。膝上部40と膝下部41に当接する膝関節部材200の両側の表面は、様々な位置及び角度においても隙間が低減するような、外側に凸の湾曲形状に形成され、膝上部40と膝下部41の内周面も膝関節部材200の回動や出入を妨げず、動きを誘導するような湾曲形状に形成されている。よって、膝上部40と膝下部41は、出入の動きを伴いながら当該表面に沿って摺動できる。また、膝関節部材200の内角側の中央付近は、径が小さくなっており、図9(b)に示すように膝関節部材200が大きく曲げられた際には、その小径部200aに、膝上部40と膝下部41の端部が当接する。
【0074】
図9(b)及び図10に示すように、膝下部41の内部には、脚の長手方向に沿って貫通孔171が形成されている。貫通孔171の両端部には、大径部171aが形成され、当該大径部171aに膝下嵌合部材220と足首内嵌合部材221がそれぞれスライド可能に配置されている。
【0075】
膝下嵌合部材220と足首内嵌合部材221は、貫通孔171内を通る弾性部材232によって接続され、貫通孔171の中央側に付勢されている。また、貫通孔171の大径部171aと小径部171bの境界には、係止部233がそれぞれ形成されている。この係止部233により、膝下嵌合部材220や足首内嵌合部材221が、貫通孔171の内部へ必要以上に入り込む事を防ぐことができる。
【0076】
膝関節部材200の両端部には嵌合凹部210、211が形成され、膝上嵌合部材191には嵌合凹部193が形成され、膝下嵌合部材220には嵌合凹部230が形成されている。嵌合凹部210と嵌合凹部193、嵌合凹部211と嵌合凹部230を、2つの連結部材81で連結することにより、膝上部40、膝下部41及び膝関節部材200を接続できる。各嵌合部の摩擦等により、膝関節部材200に対し所望の角度、位置に膝上部40、膝下部41を維持できる。
【0077】
また、嵌合凹部193、210、211、230と、各連結部材81との嵌合における角度保持力は、弾性部材194や弾性部材232による反発力より大きく設定されており、弾性部材194、232による反発力に関わらず、膝上部40と膝下部41を所望の角度に保持できる。
【0078】
また、膝関節部材200が膝上部40及び膝下部41の奥まで挿入され、嵌合凹部210は膝上部40の内側へ、嵌合凹部211は膝下部41の内側へ入り込んでいる。かかる場合、膝関節部材200の外面における、膝上部40及び膝下部41と摺動しつつ露出する範囲を広く設定することができるため、膝関節部材200に対し膝上部40や膝下部41を大きく曲げた時にも外観上の隙間ができにくくなる。また、例えば連結部材81の可動が膝関節部材200の端部に拘束されることがないので、連結部材81の広い可動範囲を確保できる。よって、外観上の隙間を低減しつつ、可動範囲を大きく確保できる。
【0079】
また、図9(c)に示すように膝関節部材200の両端部には、可動時に連結部材81の棒状体81aが当接する回動抑制部200bが形成されている。これにより、嵌合凹部210、211における関節部材81の所定方向の回転、例えば膝関節部材200に対する膝上部40や膝下部41の前方への回転角度を抑制し、関節の当該方向の動きを規制できる。かかる場合、膝上部40や膝下部41の形状に関わらず、膝関節が人体の可動と異なる方向(例えば前方)へ折れ曲がる事を防ぐ。また他の実施例において、膝関節部材200の前面を、膝上部40及び/又は膝下部41が覆うような形状をしていた場合、前方への回転角度の抑制は、膝上部40と膝下部41の先端部での互いの当接によっても行なわれるが、その場合であっても、膝関節部材200に回動抑制部200bが形成されていれば、回動抑制部200bにおける回転角度の抑制を利用することができ、薄い部材で形成されることの多い膝上部40と膝下部41の前面部での当接部付近に大きな負荷がかかることもなく、結果、膝上部40や膝下部41の端部の破損等も低減され、耐久性上も都合がよい。
【0080】
続いて、膝関節の動作及びそれを誘導する形状について説明する。膝関節を動かす際には、2つの連結部材81の球状体81bが、嵌合凹部193と嵌合凹部210、嵌合凹部211と嵌合凹部230に対し回動する。この時、2つの連結部材81がそれぞれ両端の2点の、計4点で回動可能なため、膝関節部材200と膝上部40や膝下部41との角度が様々であっても連動して対応し、膝関節は自由度の高い動作を確保できる。例えば、図9(b)の膝を大きく曲げた時や図9(c)の膝を伸ばした時等、膝関節部材200の嵌合凹部210、211の位置は膝上部40や膝下部41内を相対的に移動するが、それぞれの連結部材81がそれに連動して角度を変えることができる。
【0081】
また、膝上嵌合部材191や膝下嵌合部材220がそれぞれスライド可能であり、かつ弾性部材194、232がそれぞれ伸縮可能であることにより、すなわち、連結部材81の可動の支点そのものが流動的かつ相対的に移動可能であることにより、さらに大きな可動範囲と自由な動作を確保できる。例えば図9(b)に示すように、膝を大きく曲げることで、膝関節部材200が膝上部40や膝下部41から引き出されつつやや外側へ移動する(膝がせり出される)場合等、膝関節部材200と膝上部40や膝下部41との角度や位置が様々であっても、嵌合凹部193、230の位置は、各連結部材81に対し適切な状態に保たれる。以上により、人体により近い複雑な動作を様々に実現できる。
【0082】
また、膝関節の形状、分割線、分割方法等を様々に設定し、上記動作に対応させることもできる。本実施例において、膝関節部材200両端部の外面は、膝を曲げる際に背面側より前面側が長い弧を描くよう設定されている。これにより、膝関節部材200が膝上部40や膝下部41から引き出され、膝上部40と膝下部41が互いに干渉することなく、両部材間の隙間を低減した状態で、広く回動することができる。また、膝関節部材200の端部の外形と、当該端部が挿入される膝上部40と膝下部41の端部の内形の、挿入方向から見た断面が略楕円形状に設定されていてもよい。かかる場合、より人体の形状に近い外観を再現できる。また、かかる場合、膝関節部材200の膝下部41や膝上部40に対する軸周りの回転が制限される。これにより、意図しない方向へ膝関節が回転することなく、さらに人体に近い膝関節の動きが実現される。
【0083】
また、前述したように、別の実施例において、膝関節部材200の前面(膝側)を、膝上部40及び/又は膝下部41が覆いつつ当接するような形状をしていてもよい。かかる場合、脚を伸ばした際に、前面部に外観上表れる分割線が少なくなり、より人体に近い外観となる。また、他の実施例として、例えば肩関節等と同様に関節部材のない構成にして、分割線を減らしてもよく、かかる場合、より人体に近い外観となる。
【0084】
また、弾性部材194、232にそれぞれ反発力が働くため、様々な姿勢においても、膝関節部材200と膝上部40や膝下部41とが互いに当接(付勢)され、各部位の隙間を低減することができる。例えば、膝上部40から膝関節部材200が引き出される方向へ移動した場合、股関節嵌合部材190が膝上部40内上方の係止部195に係止されるか、もしくは膝上部40が腰部21との当接部分において係止され、膝上部40と膝関節部材200を近づける方向に弾性部材194による反発力が生じる。また、膝関節部材200から膝下部41が離れる方向へ移動した場合、足首内嵌合部材221が膝下部41内下方の係止部233に係止されるか、もしくは膝下部41が後述の足部42との当接部分において係止され、膝下部41と膝関節部材200を近づける方向に弾性部材232による反発力が生じる。また、膝関節部材200が、膝上部40や膝下部41の内側へ意図する以上に入り込もうとする際には、膝上嵌合部材191が膝上部40の膝側の係止部195によって、膝下嵌合部材220が膝下部41の膝側の係止部233によって、それぞれ係止され、それを防ぐ。
【0085】
また、一定の角度において膝関節部材200の端部が、膝上部40や膝下部41に深く挿入可能である場合、その角度において隣り合う部材の設置を簡便に行なうことができる。例えば、各連結部材81及び/又は各嵌合部(嵌合凹部193、210、211、230)が可撓性を有して脱着可能である場合等には、まず膝上部40側においては、例えば、膝関節部材200の嵌合凹部210に接続された連結部材81の他端である球状体81bを、係止部195によって係止された膝上嵌合部材191の嵌合凹部193へ、また例えば、膝下部41側においては、膝関節部材200の嵌合凹部211に接続された連結部材81の他端である球状体81bを、係止部233によって係止された膝下嵌合部材220の嵌合凹部230へ、簡便には膝関節部材200を膝上部40や膝下部41に押し込む事で連結可能となる。
【0086】
次に、足首関節の構造について説明する。例えば図10、11に示すように、足部42の内側には中空部172が形成され、中空部172の上方には、膝下部41が挿入される開口部が形成されている。当該開口部の内面42aは、膝下部41の回動を妨げず、動きを誘導するような湾曲形状に形成され、膝下部41の下方端部の外面41aは、足部42の内面42a又は開口部の端部(へり)のいずれかの少なくとも一部と当接し、様々な位置及び角度においても隙間が低減するような、湾曲形状に形成されている。よって、足部42は、出入の動きを伴いながら当該表面に沿って摺動できる。
【0087】
足部42の中空部172には、足部42に固定される足部嵌合部材240が設けられ、足部嵌合部材240の上部には、嵌合凹部241が形成されている。また、足首内嵌合部材221には、嵌合凹部231が形成されている。嵌合凹部231、241を連結部材81により連結することで、膝下部41と足部42を接続できる。各嵌合部の摩擦等により、膝下部41に対して所望の角度、位置に足部42を維持できる。
【0088】
嵌合凹部231、241と、連結部材81との嵌合における角度保持力は、弾性部材232による反発力より大きく設定されており、弾性部材232による反発力に関わらず、膝下部41と足部42を所望の角度に保持できる。
【0089】
なお、足部嵌合部材240は、足部42本体から取り外し可能な足裏部242に固定され、足部嵌合部材240及び足裏部242は、足部42に対し足部底面より挿入、係止、脱着可能であってもよい。例えば、足裏部242及び足部嵌合部材240の側面から見た形状は、足首関節を可動させた際等に、膝下部41の端部が干渉しないよう中央付近が凹んだ、下面の面積が広い略台形を有し、足部42本体における、足裏部242や足部嵌合部材240との当接部は、これを係止可能な形状に形成されている。これにより、足裏部242及び足部嵌合部材240は、足部42の裏面から取り外すことができる。かかる場合、例えば人形の台座や靴等に固定しやすく設定したような様々な足裏部242等に容易に交換できる。また、他の実施例として、例えば足裏部242は足部42本体から取り外し可能でなく、連続形成されていてもよい。かかる場合、外観上の分割線が減り、より人体に近い外観となる。
【0090】
足部嵌合部材240の前部には、嵌合凹部243が設けられている。足部嵌合部材240の前方側には、中間部材244が設けられている。中間部材244の後部には、球状部245が形成され、中間部材244の前部には、嵌合凹部246が形成されている。中間部材244の球状部245は、足部嵌合部材240の嵌合凹部243に嵌合されている。足部42の先端側には、開口部250が形成されている。開口部250には、足指部251が挿入されている。足指部251には、嵌合凹部252が形成され、当該嵌合凹部252と嵌合凹部246が連結部材81によって連結されている。これにより、足指部251が足部42に対して連結、屈曲できる。
【0091】
連結部材81の球状体81bがそれぞれ、中間部材244の嵌合凹部246や足指部251の嵌合凹部252に対し回動して、足指部251が足部42に対し所望の方向に曲げられる。この時、連結部材81が両端の2点で回動可能なため、足部42本体に対する足指部251の角度が様々であっても連動して対応し、足指関節は自由度の高い動作を確保できる。
【0092】
足指部251は複数に分割されていてもよい。本実施例では、親指とそれ以外の四指が別の部材として分割されている。かかる場合、指部が独立して可動するため、人形を安定して自立させる場合等に都合がよい。また、足指部251が中間部材244と脱着可能に設置されてもよい。かかる場合、適宜なサイズの足指部251と交換、もしくは外した状態を維持できるため、例えば、より小さな靴を履かせたい場合などに都合がよい。なお、他の実施例として、例えば中間部材244を分割して形成し、分割された両部材を弾性部材で連結してもよい。かかる場合、さらに大きく自由度の高い足指の回動を実現できる。
【0093】
続いて、足首関節の動作及びそれを誘導する形状について説明する。足首関節を動かす際には、連結部材81の両端の球状体81bが、嵌合凹部231、241に対し回動する。この時、連結部材81が両端の2点で回動可能なため、膝下部41と足部42の角度が様々であっても連動して対応し、足首関節は自由度の高い動作を確保できる。例えば、足首を大きく伸ばした場合(図10(c))等、嵌合凹部241は、膝下部41内を相対的に移動するが、連結部材81もそれに連動して角度を変えることができる。
【0094】
また、足首内嵌合部材221がスライド可能であり、かつ弾性部材232が伸縮可能であることにより、すなわち、連結部材81の可動の支点そのものが流動的かつ相対的に移動可能であることにより、さらに大きな可動範囲と自由な動作を確保できる。例えば、膝下部41が足部42から引き出されつつ、足部42が膝下部41に対し前後の鉛直面内で回転する場合(図10)や、左右の鉛直面内で回転する場合(図11)等、膝下部41と足部42の角度や位置が様々であっても、嵌合凹部231の位置は、連結部材81に対し適切な状態に保たれる。以上により、人体により近い複雑な動作を様々に実現できる。
【0095】
また、足首関節の形状、分割線、分割方法等を様々に設定し、上記動作に対応させることもできる。例えば、膝下部41の外形41aや、当該端部が挿入される足部42の内面42aの、挿入方向から見た断面が、菱形に近い略楕円形状に設定されていてもよい。かかる場合、より人体の形状に近い外観を再現できる。また、かかる場合、足部42の膝下部41に対する軸周りの回転が制限される。これにより、意図しない方向へ足首関節が回転することなく、より人体に近い足首関節の動きが実現される。とりわけ人形1全体の自重が最もかかる部位である足首関節において、意図しない方向への回転が抑制されることは、姿勢維持の観点からも好都合である。なお、例えば人体において、足裏を地面に接地した状態で、足部を含む足首関節を脚の長手方向の軸周りに大きく回転させる場合には、脚部全体の回転を必要とするが、同様に、本構成においても、その動きを、前述したように膝上部40と腰部21との当接部において、すなわち膝上部40の回転によって行なってもよい。また、他の実施例として、例えばより広く可動範囲を確保するため、足首を構成する各人形構成部材が複数に分割されていてもよい。
【0096】
なお、本実施例においては、膝関節部材200の膝上部40及び膝下部41との当接部を、共に軸方向での回転が抑制される形状に設定したが、他の実施例として、当該当接部を、回転を抑制しない形状に設定してもよい。かかる場合、膝上部40と腰部21との当接部での回転によらずとも、足部42及び膝下部41、膝関節部材200を脚の長手方向の軸周りに回転させることができるため、例えば、膝上部40と腰部21との当接部の形状等により、膝上部40の軸周りの回転が難しい場合等に、軸周りの回転を補うことができる。
【0097】
また、弾性部材232により反発力が働くため、様々な姿勢においても、膝下部41と足部42が当接(付勢)され、両部位の隙間を低減することができる。例えば、足部42から膝下部41が引き出される方向へ移動した場合、膝下嵌合部材220が膝下部41内上方の係止部233に係止されるか、もしくは膝下部41が関節部材200との当接部分において係止され、膝下部41と足部42を近づける方向に弾性部材232による反発力が生じる。また、膝下部41が足部42の内側へ意図する以上に入り込もうとする際には、足首内嵌合部材221が膝下部41内下方の係止部233によって係止され、それを防ぐ。
【0098】
また、一定の角度において膝下部41が足部42に深く挿入可能である場合、その角度において両部材の設置を簡便に行なうことができる。例えば、連結部材81及び/又は各嵌合部(嵌合凹部231、241)が可撓性を有して脱着可能である場合等には、足部嵌合部材240の嵌合凹部241に接続された連結部材81の他端である球状体81bを、係止部233によって係止された足首内嵌合部材221の嵌合凹部231へ、簡便には膝下部41を足部42に押し込む事で連結可能となる。
【0099】
また本機構は、各人形構成部位毎に各反発力発生機構の反発力が係止されるため、各反発力発生機構を交換することで、それぞれに独立した適切な反発力の強弱をつけることが可能となり、各人形構成部位毎に自律した回動や姿勢維持ができる。例えば、ポーズを頻繁に変える部位である手首関節において、動かしやすいよう弾性部材132の反発力を弱めたり、人形1を腹部22を掴んで持ち上げた際に隙間が開かないよう、脚全体の自重がかかる股関節における反発力を強めたり、人形1を自立させて展示する際に、足首関節の強度を高めるため弾性部材232の反発力を強める場合等、展示する際の姿勢等の設定に応じて、各関節部位における反発力の強度を変えることもできる。
【0100】
以上の実施の形態によれば、例えば肩関節の関節構造において、連結部材81と、連結部材81の端部が可動に嵌め込まれる嵌合部材80、90と、を有し、上腕部30の端部が胸部20の内側に摺動可能に挿入され、上腕部30と胸部20の内部には、嵌合部材80、90がそれぞれ配置され、当該嵌合部材80、90同士が連結部材81により連結され、嵌合部材90は、上腕部30に対して相対的にスライド可能であり、嵌合部材90には、少なくとも上腕部90が胸部20から引き出される方向に移動した時に反発力を生じさせる弾性部材94が接続されている。また、股関節の関節構造についても、連結部材181と、嵌合部材180、190と、弾性部材194等を有し、ほぼ同様の構成を有している。さらに、足首関節の関節構造についても、連結部材81と、嵌合部材221、240と、弾性部材232等を有し、ほぼ同様の構成を有している。
【0101】
本実施の形態のかかる構成によれば、可動関節を形成する一方の人形構成部位(上腕部30、膝上部40、膝下部41等)が他方の人形構成部位(胸部20、腰部21、足部42等)に挿入され、その内部に嵌合部材とそれらを連結する連結部材があるので、図12に示すように、従来の人形のような人体と異なる不自然な線や隙間を低減でき、また、外観の形状に影響を及ぼすことなく、連結部材や嵌合部材の種類を変えて、特定の関節に適した動きを実現することもできる。また、連結部材の両端が嵌合部材と可動に嵌合することにより、可動の支点が少なくとも2ケ所でき、自由度が高く複雑な関節可動を実現することができる。また、嵌合部材が移動可能であることにより、上記可動の支点そのものが移動可能となり、さらに自由度が高く複雑な関節可動を実現することができる。また、可動の支点が固定されていないため、前記一方の人形構成部位の端部の外形や、当該端部が挿入される前記他方の人形構成部位の内形を、球心が固定された真球状の球面に限らず、各関節部それぞれに適した、人体に近い外観および可動の軌跡を誘導するような様々な形状に、設定することができる。さらに、反発力発生機構としての弾性部材を有することで、例えば、挿入された一方の人形構成部位が他方の人形構成部位から引き出される態様等、様々な形態及び構成の関節部の様々な角度や位置(姿勢)に応じて、弾性部材が連携して伸び、かつ反発力が働くので、2つの人形構成部位が互いに当接(付勢)され、両部位の隙間を低減できる。よって、関節の動きを確保しつつ、人体により近い外観の人形の関節を実現できる。
【0102】
連結部材81、181は、棒状体81a、181aと、当該棒状体81a、181aの両端に球状体81b、181bを有し、嵌合部材は、球状体81b、181bに回動可能に嵌合されるので、自由度が高く複雑な関節可動を、簡便かつ少ない部材で、実現することができる。また、球状体及び/又は嵌合部材を可撓性を有する素材で構成した場合には、脱着も容易となり、各人形構成部位同士の設置、交換も簡便に行なうことができる。なお、必ずしも連結部材の両端は球状体である必要はなく、凹状体であってよく、この場合、嵌合部材は、当該凹状体に回動可能に嵌合される。
【0103】
例えば股関節においては、連結部材181の棒状体181aが屈曲しているので、例えば関節を曲げた時の膝上部40の端部と連結部材181との干渉が抑制でき、股関節の屈曲角度を広げることができる。また、屈曲した連結部材181が両端点で回動するため、例えば膝上部40の端部が連結部材181に接触した場合に、連結部材181の屈曲部分も大きく回転し、膝上部40から退避することができる。この結果、膝上部40の多様な形状や動きに柔軟に対応できる。
【0104】
本実施の形態によれば、上記一方の人形構成部位(上腕部30、膝上部40、膝下部41等)の端部の外形、及び/又は、当該端部が挿入される上記他方の人形構成部位(胸部20、腰部21、足部42等)の内形は、一定の球心を持たない湾曲形状に形成されている。かかる場合、関節における外観を、より人体に近く設定することができる。また、かかる場合、関節における可動の方向性や範囲が、誘導もしくは抑制されるため、より人体に近い可動を実現することができる。例えば、前記一方の人形構成部位の端部の外形が、挿入方向に長い略楕円体形状を有する場合、関節の角度に応じて、他方の人形構成部位から引き出されつつ、一方の人形構成部位と他方の人形構成部位が隙間を開けずに可動できる。また、前記一方の人形構成部位の端部の外形と、当該端部が挿入される前記他方の人形構成部位の内形の、挿入方向から見た断面が略楕円形状に形成されている場合、人形構成部位同士の軸方向(挿入方向)周りの回動が抑制され、関節においてより人体に近い動きを実現できる。
【0105】
また、肩関節における連結部材81と嵌合凹部82、92との嵌合や、股関節における連結部材181と嵌合凹部182、192との嵌合、足首関節における連結部材81と嵌合凹部231、241との嵌合、による角度保持力はそれぞれ、弾性部材94、194、232、による反発力より大きく設定されているので、弾性部材による反発力に関わらず、一方の人形構成部位と当該端部が挿入される他の人形構成部位との位置および角度を所望の状態に設定できる。
【0106】
なお、以上の実施の形態では、上記関節構造を肩関節、股関節、足首関節に用いていたが、肘関節、手首関節、膝関節等の他の関節に用いてもよい。
【0107】
本実施の形態の例えば肘関節では、上腕部30と前腕部31の間に配置され、端部が上腕部30、前腕部31の内側に摺動可能に挿入される肘関節部材100と、連結部材81と、上腕部30、前腕部31の内部に配置され、連結部材81の端部が可動に嵌め込まれる嵌合部材91、120とを有し、肘関節部材100の両端部には、連結部材81の端部が可動に嵌め込まれる嵌合凹部110、111が形成され、嵌合部材91と嵌合凹部110、嵌合凹部111と嵌合部材120とが2つの連結部材81により連結され、嵌合部材91、120は、当該嵌合部材のある上腕部30、前腕部31に対して相対的にスライド可能であり、当該嵌合部材91、120には、少なくとも上腕部30や前腕部31から肘関節部材100が引き出される方向に移動した時に反発力を生じさせる弾性部材94、132が接続されている。また、膝関節も、膝関節部材200等を有するほぼ同様の構成を有している。また、手首関節の本実施例においては、手首関節部材140の前腕部31側において、ほぼ同様の構成を有している。
【0108】
本実施形態のかかる構成によれば、関節部材(肘関節部材100、膝関節部材200、手首関節部材140)の両端部が2つの人形構成部位(上腕部30と前腕部31、膝上部40と膝下部41、前腕部31と手部32)に挿入され、それらの内部に嵌合部材とそれらを連結する連結部材があるので、従来のような、人体と異なる不自然な線や隙間を低減でき、また、外観の形状に影響を及ぼすことなく、連結部材や嵌合部材の種類を変えて、特定の関節に適した動きを実現することもできる。また、各連結部材の両端が、各嵌合部材や各嵌合部と可動に嵌合することにより、可動の支点が少なくとも4ケ所でき、より自由度が高く複雑な関節可動を実現することができる。また、嵌合部材が移動可能であることにより、上記可動の支点そのものが移動可能となり、さらに自由度が高く複雑な関節可動を実現することができる。また、可動の支点が固定されていないため、前記関節部材の端部の外形や、当該端部が挿入される各人形構成部位の内形を、球心が固定された真球状の球面に限らず、より人体に近い外観および可動の軌跡を誘導するような様々な形状に、設定することができる。また、反発力発生機構を有することで、様々な形態及び構成の関節部の様々な角度(姿勢)に応じて、反発力発生機構が連携して伸び、かつ反発力発生機構により反発力が働くので、2つの人形構成部位や関節部材が互いに当接(付勢)され、それぞれの隙間を低減できる。よって、関節の動きを確保しつつ、人体により近い外観の人形の関節を実現できる。
【0109】
また、球状体を有する連結部材と、当該球状体が回動可能に嵌め込まれる嵌合部材により、各人形構成部位と関節部材が連結されるので、簡便かつシンプルな構成で、自由度が高く複雑な関節可動を実現することができる。
【0110】
また、肘関節における各連結部材81と、嵌合凹部93、110との嵌合、嵌合凹部111、130との嵌合における角度保持力はそれぞれ、弾性部材94、132による反発力より大きく設定され、膝関節における各連結部材81と、嵌合凹部193、210との嵌合、嵌合凹部211、230との嵌合による角度保持力はそれぞれ、弾性部材194、232による反発力より大きく設定され、手首関節における連結部材81と嵌合凹部131、150との嵌合による角度保持力は、弾性部材132による反発力より大きく設定されているので、弾性部材による反発力に関わらず、各関節部材と当該端部が挿入される各人形構成部位との位置および角度を所望の状態に設定できる。
【0111】
例えば肘関節部材100の嵌合凹部110、111が、上腕部30、前腕部31の内側に位置し、膝関節部材200の嵌合凹部210、211が、膝上部40、膝下部41の内側に位置し、手首関節部材140の嵌合凹部150、151が、前腕部31、手部32の内側に位置している。このため、例えば連結部材81の可動が関節部材の端部により拘束されることがなくなり、連結部材81の広い可動範囲を確保できる。また、例えば関節部材の外周面を広く設定することができ、外観上の隙間を低減できる。
【0112】
上記実施の形態では、関節部材を、比較的広角の曲げ角度が必要な肘関節、手首関節、膝関節に用いたので、関節の曲げ角度を十分に確保しつつ、人形構成部位の間の隙間を低減できる。なお、関節部材は、肘関節、手首関節、膝関節以外の肩関節、股関節、足首関節等の他の関節にも用いてもよい。
【0113】
また、本実施の形態における可動関節を有する人形1を構成する人形構成機構において、例えば両側に可動関節が形成される上腕部30と、連結部材81と、連結部材81の端部が可動に嵌め込まれる嵌合部材90、91と、を有し、上腕部30には、長手方向に貫通する貫通孔60が形成され、当該貫通孔60には、両側から挿入された嵌合部材90、91を係止可能な係止部95が形成され、貫通孔60には、両側の嵌合部材90、91同士を接続する弾性部材94が設けられている。また、前腕部31、膝上部40及び膝下部41等も同様の構成を有している。
【0114】
本実施の形態によれば、人形構成部位の内部に、嵌合部材とそれらを連結する連結部材を配置できるので、各人形構成部位や関節部材を連結して関節を構成した場合に、従来のような人体と異なる不自然な線や隙間を低減できる。また、各人形構成部位や関節部材が互いに離れようとすると、反発力発生機構により反発力が働くので、各部材の間に隙間ができることを防止できる。よって、関節の動きを確保しつつ、人体により近い外観の人形の関節を実現できる。また、当該貫通孔には、両側から挿入された前記嵌合部材を係止可能な係止部が形成されている。これにより、例えば係止部によって各人形構成部位毎に各反発力発生機構の反発力が係止されるため、各反発力発生機構単位に独立した適切な反発力の強弱をつけることが可能となり、それぞれの人形構成部位毎に自律した回動や姿勢維持ができる。また、関節の角度(姿勢)に応じて、例えば一方の人形構成部位あるいは関節部材が他方の人形構成部位の内部へ深く入りこもうとする際には、嵌合部材が人形構成部位内部の係止部によって係止されることで、一方の人形構成部位や関節部材が極端に深く入り込むことを防ぐことができる。また、各人形構成部位をそれぞれ個別に、脱着、設置、交換等する場合においても、中心へと付勢される両嵌合部材が係止部によって係止されるため、両嵌合部材が人形構成部材内部の中心へと極端に入り込むことがなく、各部材の設置等をより簡便かつ容易に行なうことができる。また、例えば複数の人形構成部位を様々に接続して、複数の可動関節の接続を簡便に行うことができる。
【0115】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0116】
例えば以上の実施の形態において、股関節に屈曲した連結部材181を用いたが、直線的な連結部材81を用いてもよい。また、他の関節に、連結部材181を用いてもよい。連結部材は、例えば両端部が球状体でない形状のもの、全体が棒状体のもの、棒状体に回動部があるもの、回動部が複数あるもの等、他の形状のものであってもよい。
【0117】
また、上述の連結部材と、嵌合部材或いは嵌合部の凹凸の関係が、一部もしくは全体が逆転していてもよい。例えば連結部材の両端もしくは一端が凹状体に形成され、それに対応する嵌合部材或いは嵌合部側が、球状体に形成されていてもよい。また、連結部材は、一か所の連結部に並列的及び/又は直列的、上下左右前後非対称に、複数設けられていてもよい。
【0118】
また、弾性部材は、必ずしも人形構成部位の貫通孔内を貫通している必要はなく、人形構成部位の両端から有底孔が開けられ、当該有底孔にそれぞれ設けられていてもよい。つまり、弾性部材は、人形構成部位内で分断されていてもよい。また、反発力発生機構は弾性部材に限られず、反発力を生じさせるものであれば、バネ等や、シリンダー等の電気的、機械的に紳縮するものであってもよい。また、反発力発生機構により生じる反発力は、2つの人形構成部位が少なくとも互いに離れる方向に移動した時に生じればよく、2つの人形構成部位が離れる方向に移動していない時には、生じていても、生じていなくてもよい。
【0119】
以上の実施の形態の関節構造は、人形の首部、胴部、頭部、指部等の他の部分に関節を設けた場合に、当該関節に適用してもよい。また、以上の実施の形態において、関節部材の両端部が、人形構成部位に挿入されていたが、関節部材の両端部に人形構成部位の端部が挿入されていてもよい。また、関節部材の片方の端部が人形構成部位に挿入され、関節部材のもう片方の端部には、人形構成部位が挿入されていてもよい。また、各人形構成部位の当接する湾曲面は、真球状であってもよい。
【0120】
また、上記人形構成部位、関節部材、嵌合部材等は、大きさ、素材等は問わない。例えば人形構成部位、関節部材等が、可塑性或いは可撓性を有する素材であってもよい。また、人形は、マネキン、義肢、ロボット等でもよく、同様の関節構造を有していれば、例えば動物や昆虫、生物/無生物を問わない。
【符号の説明】
【0121】
1 人形
12 胴部
20 胸部
30 上腕部
31 前腕部
32 手部
40 膝上部
41 膝下部
42 足部
80 胸内部嵌合部材
81 連結部材
90 肩内部嵌合部材
94 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形の関節構造であって、
間に可動関節を形成する2つの人形構成部位と、
連結部材と、
前記連結部材の端部と可動に嵌合する嵌合部材と、を有し、
前記2つの人形構成部位は、一方の人形構成部位の端部が他方の人形構成部位の内側に摺動可能に挿入され、
前記各人形構成部位の内部には、前記嵌合部材がそれぞれ配置され、当該嵌合部材同士が前記連結部材により連結され、
前記嵌合部材の少なくとも一方は、当該嵌合部材のある前記人形構成部位に対して相対的に移動可能であり、当該嵌合部材には、前記2つの人形構成部位が少なくとも互いに離れる方向に移動した時に反発力を生じさせる反発力発生機構が設けられていることを特徴とする、人形の関節構造。
【請求項2】
前記連結部材は、棒状体を有し、当該棒状体の両端に球状体又は凹状体のいずれかを有し、前記嵌合部材は、前記球状体又は前記凹状体に回動可能に嵌合することを特徴とする、請求項1に記載の人形の関節構造。
【請求項3】
前記連結部材の棒状体が屈曲していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の人形の関節構造。
【請求項4】
前記一方の人形構成部位の端部の外形、及び/又は、当該端部が挿入される前記他方の人形構成部位の内形は、一定の球心を持たない湾曲形状に形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の人形の関節構造。
【請求項5】
前記嵌合部材と前記連結部材との嵌合における角度保持力は、前記反発力発生機構による反発力より大きく設定されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の人形の関節構造。
【請求項6】
前記他方の人形構成部位に挿入された前記一方の人形構成部位の嵌合部材の嵌合部分が、前記他方の人形構成部位の内側に位置していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の人形の関節構造。
【請求項7】
人形の関節構造であって、
可動関節を形成する2つの人形構成部位の間に配置され、端部が人形構成部位の内側に挿入されるか又は端部内に前記人形構成部位が挿入され、当該人形構成部位に対して摺動可能な関節部材と、
連結部材と、
前記各人形構成部位の内部に配置され、前記連結部材の端部と可動に嵌合する嵌合部材と、を有し、
前記関節部材の両端部には、前記連結部材の端部と可動に嵌合する嵌合部が形成され、
一方の人形構成部位の嵌合部材と前記関節部材の一方の嵌合部と、前記関節部材の他方の嵌合部と他方の人形構成部位の嵌合部材とが前記連結部材により連結され、
前記嵌合部材の少なくとも一方は、当該嵌合部材のある前記人形構成部位に対して相対的に移動可能であり、当該嵌合部材には、前記2つの人形構成部位が少なくとも互いに離れる方向に移動した時に反発力を生じさせる反発力発生機構が設けられていることを特徴とする、人形の関節構造。
【請求項8】
前記連結部材は、棒状体を有し、当該棒状体の両端に球状体又は凹状体のいずれかを有し、前記嵌合部材と前記嵌合部は、前記球状体又は前記凹状体に回動可能に嵌合されることを特徴とする、請求項7に記載の人形の関節構造。
【請求項9】
前記関節部材の端部の外形、及び/又は、当該端部が挿入される前記人形構成部位の内形、或いは、前記関節部材の端部の内径、及び/又は、当該端部に挿入される前記人形構成部位の外形は、一定の球心を持たない湾曲形状に形成されていることを特徴とする、請求項7又は8のいずれかに記載の人形の関節構造。
【請求項10】
前記関節部材の嵌合部と前記連結部材との嵌合及び前記嵌合部材と前記連結部材との嵌合における角度保持力は、前記反発力発生機構による反発力より大きく設定されていることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の人形の関節構造。
【請求項11】
前記人形構成部位に前記関節部材が挿入されており、
前記関節部材の嵌合部が、当該人形構成部位の内側に位置していることを特徴とする、請求項7〜10のいずれかに記載の人形の関節構造。
【請求項12】
可動関節を有する人形を構成する人形構成機構であって、
連結部材と、
前記連結部材の端部と可動に嵌合する嵌合部材と、を有し、
両側に可動関節が形成される人形構成部位には、長手方向に貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔には、両側から挿入された前記嵌合部材を係止可能な係止部が形成され、
前記人形構成部位の前記貫通孔には、前記両側の嵌合部材同士を接続する反発力発生機構が設けられていることを特徴とする、人形構成機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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