説明

人間又は動物の器官を再構成するための縫合可能な組織移植片構造

本発明は、人間又は動物の器官を再構成するための組織移植片構造に関する。この組織移植片構造(5)は、(a)生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第一の皮膜(2)と、生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第二の皮膜(3)とで構成される皮膜結合体(1)であって、第一の皮膜(2)と第二の皮膜(3)の平坦な側面が互いに接しており、第一の皮膜(2)が馬又は牛を起源とし、第二の皮膜(3)が動物又は人を起源とし、第二の皮膜(3)の起源が第一の皮膜(2)と異なる、一つの皮膜結合体と、(b)この皮膜結合体(1)の片方又は両方の外側の平坦な側面上の粘膜組織細胞の一つ以上の層(4)とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間又は動物の器官を再構成するための縫合可能な組織移植片構造、その組織移植片構造の製造方法及びその組織移植片構造の使用方法に関する。特に、本発明は、泌尿器、特に、膀胱、尿管又は尿道、食道、眼表面、或いは口の組織欠陥を再構成するための組織移植片構造に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞組織をベースとする組織移植片構造を移植する場合に防止しなければならない技術的な基本問題は、器官、例えば、膀胱、尿管又は食道の正常な蠕動による組織移植片構造の剥離である。膀胱と尿道を再構成する場合の別の問題は、尿の流れが移植片を創傷床上に適切に堅く固定することを必要としていることである。それは、同じく食物と飲物の摂取に関して、口の領域又は食道の領域での再構成にも言える。眼表面を再構成する場合、眼の動きのために、そのような移植片の適切な堅い固定が必要である。
【0003】
そのような移植片の適切な堅い固定は、移植片により十分に機能的な成果を達成するとともに、更に、出血と感染のリスクを防止することを保証する好適な縫合技術によってのみ実現できる。移植片を固定するためには、使用する針を構造及び隣接する組織に通して、その針により通した糸を用いて、縫合した縫い目を作成しなければならない。それらの糸を十分に堅く引っ張って、移植片の縁と隣接する組織との適切な適合を実現しなければならない。傷ついた浮腫が大きくなった場合、糸に加える引張力を高めなければならない。更に、傷口の収縮を低減するためには、何倍もサイズの大きい糸と、より大きく深い縫合とが必要である。
【0004】
前記の実情のために、移植片の機能性又は耐久性を損なうこと無く、サイズの大きい糸と、より大きく深い縫合とを実際に実現できる程度に移植片の安定性を向上させる必要がある。移植片と隣接組織の間に十分な数の糸を通した場合、通常は縁の縫合を可能にするとともに、傷口の縁とケロイドの相互剥離を防止するのに十分な応力が結び目に加わることとなる。
【0005】
前述した理由から必要な移植片の大きな抗張力のために、組織移植片構造は、高い機械的な安定性を持たなければならない。これまで、細胞組織をベースとする組織移植片構造用骨格としての役割を果たす様々な材料が使用されてきた。しかし、それら全ての材料は、必要な機械的安定性と縫合可能性が不足していた。大抵の場合、引っ張って合わせることをしない結び目しか用いることができなった。
【0006】
小腸粘膜下組織などの幾つかの皮膜が有り、それらが大きな機械的強度を有することが報告されている。しかし、そのような皮膜の三次元コラーゲン構造は、乾燥凍結させた形では変化してしまう。そのような理由から、そのような皮膜の長い区画上で細胞を培養して、複数の層を形成することは不可能であった(非特許文献1と2参照)。
【0007】
更に、馬(ティッシュフォイル)又は牛(マトリダーム)のコラーゲン/フィブロネクチンの基質上で培養した自己由来の口の粘膜細胞から構成された組織移植片構造が知られている。これらの基質は、組織再生後には完全に吸収されて、複雑な表面に対応した。ティッシュフォイルとマトリダームは、バクスター社とスウェラック社の承認された医薬製品であり、人間への使用を許されている。それらは、その表面への非常に良好な細胞の付着と繁殖を可能としている。
【0008】
特許文献1は、人工器官又はその他の補完装具への皮膜の付着を防止する縫合可能な皮膜を記載している。それらの皮膜は、コラーゲンの不織布から成る第一の層とコラーゲンから成る海綿層とで構成されている。二つの層のコラーゲンは、共通のソースから得られたものである。例えば、二つの層に使用可能なコラーゲンは、牛、豚、鶏、魚、兎、羊、尿、及び人から得ることができる。
【0009】
特許文献2により、組織の成長を支援する無細胞の皮膜が周知である。この皮膜は、それぞれコラーゲンの繊維を有する第一の層と第二の層で構成されている。これらのコラーゲンの繊維は、詳しく記載されていない自然のソースから得たものである。更に、一つの同じソースのコラーゲンから構成される複数層から成る皮膜が特許文献3に開示されている。
【0010】
しかし、引張力を加えた場合のこれらの周知の基質の機械的な安定性は、組織移植片構造の有効な固定に関して不十分である。より大きい抗張力と改善された縫合可能性を有する組織移植片構造に対する需要が生じている。更に、高い生体適合性を有し、人間に応用する際の医薬製品の適法要件を満たす組織移植片構造を提供することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許公開第1002031号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2007/0161109号明細書
【特許文献3】米国特許第7,393,437号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Wei R et al., Grafts of Porcine Small Intestinal Submucosa with Cultured Autologous Oral Mucosal Epithelial Cells for Esophageal Repair in a Canine Model., … Experimental biology and medicine. 2009:234. 453-461
【非特許文献2】Lindberg K et al., Porcine small intestinal submucosa (SIS): a bioscaffold supporting in vitro primary human epidermal cell differentiation and synthesis of basement membrane proteins. Burns. 2003:254-266
【非特許文献3】Corneal collagen cross linking with riboflavin und ultraviolet A light for keratoconus: Results in Indian eyes. Agrawal V. Indian Journal of Ophtalmology. 2008:57(2).111 114
【非特許文献4】Ronagnoll G et al., Onestep treatment of proximal hypospadias by the autologous graft of cultured urethral epithelium. Jounal of Urology, 1993:150(4), 1204-1207
【非特許文献5】El Kassaby AW et al., Urethral stricture repair with an off the shelf collagen matrix. Journal of urology. 2003:169(1).170 173
【非特許文献6】Badylak SF et al., The extrazellular matrix as a biologic scaffold material. Biomaterials. 2007:28.3587 3593
【非特許文献7】Bhargava et al.,. Gewebe-Engineered Buccal Mucosa Urethroplasty Clinical Outcomes. European Urology.2008:53(6).1263 1271
【非特許文献8】Palminteri E et al., Small intestinal submucosa (SIS) graft urethroplast: shortterm results. European Urology. 2007:51(6).1695 1701
【非特許文献9】Fiala R et al.,. Porcine small intestinal submucosa graft for repair of anterior urethral strictures. European Urology. 2007:51(6).1702 1708
【非特許文献10】Midterm results on ocular surface reconstructoin using cultivated autolog oral mucosa epithelial transplantaion. Inatomi T, Nakamura T, Koizumi N,... American Journal of ophtalmology. 2006:141(2). 267 276
【非特許文献11】The use of autolgous serumirt the development of corneal und oral epithelial equivalents in patients with Steven Johnson Syndrome. Nakamura T, Ang L, Rigby H, Sekiyama E,... Investigative ohtalmology und visual science. 2006:47(3). 909 914
【非特許文献12】3 Clinical und Histopathological Analysis of Healing Process of Intraoral Reconstruction with ex vivo Produced Oral Mucosa Equivalent. HOTTA T, YOKOO 5, TERASHI H. Kobe Journal of medical science. 2007: 53(1).1 14
【非特許文献13】Grafts of Porcine Small Intestinal Submucosa with Cultured Autolog Oral Mucosa Epithelial Cells for Esophageal Repair in a Canine Model. Wei R, Tan B, Tan M, Luo J, Deng L,... Experimental biology und medicine. 2009:234. 453 461
【非特許文献14】Esophagus Tissue engineering: in vitro generation of esophageal epithelial cell sheets und viability on scaffold. Saxena A Ainoedhofer H,Hoellwarth M. Journal of pediatric surgery. 2009:44. 896 901
【非特許文献15】Esophageal epithelial cell interaction with synthetic und natural scaffolds for tissue engineering. Beckstead Ba, Pan 5, Bhrany A, Bratt Leal A, ... Biomateri-als.2005:26(31).6217 6228
【非特許文献16】Development of a tissue engineered human oral mucosa equivalent based on an acellular allogeneic dermal matrix: A preliminary report of clinical application to burn wounds. Takuya L, Takami V. Yamaguchi R, Shimazaki 5,... Scandinavian Journal of Plastic und Reconstructive Surgery und Hand Surgery. 2005: 39(3).138 146
【非特許文献17】Lauer G, Schimming R, Klinische Anwendung von im Tissue Engineering gewonnenen autologen Mundschleimhauttransplantaten. Mund Kiefer Gesichtschirur-gie.2002. 6:379-393
【非特許文献18】Lauer G, Schimming R, Klinische Anwendung von im Tissue Engineering gewonnenen autologen Mundschleimhauttransplantaten. Mund Kiefer Gesichtschirurgie.2002. 6:379-393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、従来技術の欠点を解消することである。特に、改善された機械的特性を有すると同時に、細胞の培養に適した組織移植片構造を提示することである。更に、その組織移植片構造の製造方法とその組織移植片構造の使用方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、請求項1、8及び11の特徴によって解決される。本発明の目的に適う実施形態は、請求項2〜7、9〜10及び12〜15から明らかとなる。
【0015】
本発明では、人間又は動物の器官を再構成するための組織移植片構造において、
(a)生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第一の皮膜と、生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第二の皮膜とで構成される皮膜結合体であって、第一の皮膜と第二の皮膜の平坦な側面が互いに接しており、第一の皮膜が馬又は牛を起源とし、第二の皮膜が動物又は人を起源とし、第二の皮膜の起源が第一の皮膜と異なる、一つの皮膜結合体と、
(b)この皮膜結合体の片方又は両方の外側の平坦な側面上の粘膜組織細胞の一つ以上の層と、
から構成される組織移植片構造を規定する。
【0016】
この皮膜結合体は、一つ以上の第一の皮膜を備えることができる。同様に、この皮膜結合体は、一つ以上の第二の皮膜を備えることができる。有利な実施構成では、この皮膜結合体は、二つの第一の皮膜とこれらの二つの第一の皮膜の間に配置された一つの第二の皮膜とで構成される。このようにして、サンドイッチ構造を有する三層から成る皮膜結合体が得られる。この場合、第二の皮膜の上側の側面は、一方の第一の皮膜によって覆われており、第二の皮膜の下側の側面と上側の側面は互いに逆側に有る。第二の皮膜の下側の側面は、他方の第一の皮膜によって覆われており、第二の皮膜の上側の側面と下側の側面は互いに逆側に有る。
【0017】
第一の皮膜と第二の皮膜は異なる皮膜である、即ち、異種を起源とすることが重要である。ここで、「起源」との用語は、第一の皮膜と第二の皮膜が分類学上の同じ種から由来しないことを意味するものとする。馬を起源とする皮膜は、馬から由来したものである。牛を起源とする皮膜は、牛から由来したものである。豚を起源とする皮膜は、豚から由来したものである。
【0018】
本発明による組織移植片構造は、一方では良好な機械的特性を引き出し、他方では細胞を良好に付着させ、細胞を速く繁殖させて、皮膜結合体の外側表面上に密な層の形成が可能な表面を有する皮膜結合体を採用したために、改善された機械的特性、特に、優れた縫合可能性と機械的な安定性を提供する。第一の皮膜は、特に、試験環境での細胞の良好な成長を可能とする。細胞の良好な成長とは、例えば、細胞の一つ以上の層が第一の皮膜の外側表面上に成長して、皮膜の表面積が5cm2 を上回り、48時間を超える時間長の間の細胞の生存率が少なくとも90%となる場合である。
【0019】
良好な機械的特性は、第二の皮膜の特性から引き出される一方、細胞の付着と繁殖に関する良好な特性は、第一の皮膜の特性から引き出される。第二の皮膜は防水性ではない。第二の皮膜が透水性である場合、傷口からの分泌液の流れを皮膜結合体に通し、その結果、傷口からの分泌液が組織移植片構造の粘膜組織細胞と、組織移植片構造と接するか、或いはそこに埋め込まれた細胞とに到達することが可能となる。更に、第二の皮膜の液体を通す特性は、浮腫の形成とそれに関連する創傷床からの移植片の分離を防止する。
【0020】
本発明による組織移植片構造は、高い生体適合性を有し、医薬製品の法律規定に適合している。
【0021】
有利には、第一の皮膜は馬又は牛を起源とする。コラーゲン、特に、コラーゲン繊維の外に、第一の皮膜は、例えば、フィブロネクチンなどの別の成分も含むことができる。好適な第一の皮膜は、商品名「ティッシュフォイル」(製造業者:ドイツ国バクスター・ドイチュランド有限会社)で販売されている馬由来のコラーゲンを含む皮膜と、商品名「マトリダーム」(製造業者:ドイツ国ドクトル・スウェラック・スキンアンドヘルスケア株式会社)で販売されているコラーゲン/フィブロネクチンの皮膜とである。
【0022】
有利な第二の皮膜は、温血動物又は人間から由来した皮膜である。非常に有利には、第二の皮膜は、豚を起源とする皮膜である。有利で好適な第二の皮膜は、豚の小腸粘膜下組織、特に、乾燥凍結させた豚の小腸粘膜下組織である。第二の皮膜は、コラーゲン、特に、コラーゲン繊維の外に、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンなどの別の成分を含むことができる。
【0023】
第一の皮膜は、一つの層又は複数の層から構成することができる。同様に、第二の皮膜は、一つの層又は複数の層から構成することができる。特に、第二の皮膜は、一つの層〜多数の層から構成することができる。ここで、皮膜とは、特に、平坦な多孔質の構造物であると解釈する。
【0024】
この皮膜結合体は、生物を起源とし、合成物を起源としない皮膜から構成される。従って、本発明による組織移植片構造の皮膜結合体は、血管移植片(所謂、「代用血管」)と異なり、完全に分解することが可能であり、そのことは、移植後の期間における組織移植片構造の石灰化又は拒絶反応を防止する。生きた細胞が皮膜上に存在することよって、体内細胞が新しい組織を再生することが可能である。それによって、人工器官又は基質材料を長期間保持可能とする必要性がなくなる。
【0025】
本発明の発明者は、驚くべきことに、コラーゲンを含む二つの第一と第二の皮膜から成る皮膜結合体が第一と第二の皮膜の押圧及び/又は第一と第二の皮膜の架橋、特に、光活性化架橋によって製造できることを立証した。そのようにして得られた皮膜結合体は、十分な機械的安定性を有し、その結果、特に、動物及び/又は人間の器官の上皮組織の代わりに使用可能な組織移植片構造の製造にそれを使用することができる。従って、本発明による皮膜結合体と本発明による皮膜結合体を使用して製造した組織移植片構造は、特に、上皮組織の再構成に適している。本発明による組織移植片構造は、泌尿器、特に、膀胱又は尿道、並びに食道、眼表面又は口の組織欠陥の再構成に特に適している。
【0026】
本発明で規定する粘膜組織細胞は、有利には、自己由来の粘膜組織細胞、特に有利には、自己由来の口の粘膜組織細胞である。本発明による組織移植片構造は、自己由来の粘膜組織細胞を使用しているために、特に、上皮組織の修復及び/又は代用に適している。
【0027】
特に適した自己由来の粘膜組織細胞は、口の粘膜組織細胞である。口の粘膜組織細胞は、強い繁殖能力を持っており、比較的非侵襲性の生検により入手可能であり、そのことは、口の粘膜上皮組織を自己由来の治療に関して魅力的な細胞源としている。
【0028】
自己由来の口の粘膜組織細胞に関する詳細は、後の「自己由来の口の粘膜組織細胞」の節から理解することができる。
【0029】
更に、本発明では、組織移植片構造の製造方法を規定しており、その方法は、
(a)生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第一の皮膜と、生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第二の皮膜とで構成される皮膜結合体であって、第一の皮膜と第二の皮膜の平坦な側面が互いに接しており、第一の皮膜が馬又は牛を起源とし、第二の皮膜が動物又は人を起源とし、第二の皮膜の起源が第一の皮膜と異なる皮膜結合体を製造する工程と、
(b)この皮膜結合体の片方又は両方の外側の平坦な側面上に粘膜組織細胞の一つ以上の層を成長させる工程と、
を有する。
【0030】
この場合、この方法の工程(a)は、有利には、次の部分工程で構成される。
(a1)二つの第一の皮膜を準備して、これらの第一の皮膜をふやけた状態に移行させる部分工程、
(a2)第二の皮膜を準備して、この第二の皮膜を乾燥凍結させる部分工程、
(a3)二つの第一の皮膜の間に第二の皮膜を配置する部分工程、
(a4)第一の皮膜と第二の皮膜から成る結合体を製造する部分工程。
【0031】
有利には、この皮膜結合体は、第一と第二の皮膜の押圧及び/又は架橋によって製造される。この押圧は、有利には、5〜5,000kN/cm2 、更に有利には、10〜1,000kN/cm2 、より一層有利には、50〜150kN/cm2 、最も有利には、100kN/cm2 の圧力で行なわれる。5kN/cm2 以内の圧力では、場合によっては、皮膜の十分に堅固な結合を実現できない一方、5,000kN/cm2 を超える圧力では、皮膜、特に、その骨格構造と多孔質構造を損傷させる可能性が有る。
【0032】
この押圧は、周囲温度と比べて僅かに高い温度、有利には、25〜50°C、更に有利には、35〜40°Cで実施することが有利である。この僅かに高い温度は、コラーゲン繊維の三次元構造を変化させること無く、その可動性を促進する。この押圧は、有利には、10分〜2時間、更に有利には、0.5〜1.5時間、特に有利には、3〜13分の時間長で実施される。
【0033】
押圧に代わって、或いは押圧に追加して、第一と第二の皮膜のコラーゲン繊維の架橋を実現するために、皮膜結合体に光化学処理を施すことができる。コラーゲン繊維を光化学的に架橋する方法は、特に、円錐角膜を処理するための眼科技術として知られている。そのような角膜のコラーゲンの架橋方法は、感光性の物質(リボフラビン又はビタミンB2)とA紫外線(UVA)の複合作用により基質繊維を光重合させることから構成される。この光重合は、角膜のコラーゲンの剛性と角膜拡張に対する堅牢性を高める(非特許文3献参照)。
【0034】
光化学的な架橋は、有利には、可視光によって実施される。その光は、有利には、380〜600nm、更に有利には、425〜525nm、特に有利には、475nmの波長を有する。この架橋は、有利には、10分〜2時間、特に有利には、0.5〜1.5時間の時間長で実施される。
【0035】
[自己由来の口の粘膜組織細胞]
a)泌尿器再構成時における自己由来の口の粘膜細胞の使用
尿道狭窄及び尿管狭窄は、その器官が狭まることであり、炎症、瘢痕組織、留置カテーテル、器具の取付、外傷、手術によって起こる。そのような場合、瘢痕組織が正常な尿道又は尿管の上皮組織に置き換わってしまう。切開する尿道整形手術と尿管整形手術は、尿道狭窄及び尿管狭窄の標準的な治療法と見做されている。口の粘膜移植片は、泌尿器の最も有望な代用物として認められている。しかし、口の部位に関するドナー部位罹病率は主要な関心事である。
【0036】
泌尿器再構成時の組織化技術は、1955年のブンゲ社の上皮移行細胞の試験培養の1回目の報告以来、長い道程を歩んで来た。当然のことながら、成功する尿道置換整形手術を実現するためには、組織化技術に基づく生成物は、生体に適合した、頑丈で、引っ張って縫合することが可能であると同時に、尿道整形手術個所への細胞の最適な授受と、移植部位と傷口安定個所への移植片の正しい固定とを可能とする基質を入手する必要がある。培養した口の粘膜細胞が、組織化技術に基づく泌尿器に関する最適な細胞候補である一方、臨床と実験構成においては、尿道と尿管の代用物を準備するために、複数の材料を(有機材料でも合成材料でも)使用しており、それらの材料には、無細胞の膀胱基質、無細胞の豚の小腸粘膜下組織(SIS)、デクソンから成る組織、コラーゲン基質、並びにポリテトラフロオロエチレン(GORE−TEX)が含まれる(非特許文献4〜5参照)。これらの材料は、一般的に機械的な、構造上の、或いは生体適合性の問題のために、限定的にしか成功していない。最近、細胞を植付けていないSISが、その機械的な抗張力のために非常に有望であるが、尿道の短い区画に欠陥を持つ患者でしか良好な結果が得られていないことが示されている(非特許文献7参照)。より長い区画や尿閉を持つ患者の場合、細胞を植付けていないタンパク質の骨格による再生は完全には成功しなかった(非特許文献8と9参照)。バルガバ氏他は、尿道置換整形手術における表皮を剥いで消毒したドナーの皮膚の基質上に組織化技術に基づく自己由来の頬の粘膜を配置することに関する技術の臨床経過を報告している。この研究で使用しているタンパク質の骨格(表皮を剥がした真皮)は、国立血液サービスの皮膚バンクを介して、保護された臓器提供者から得られた。しかし、このタンパク質の骨格は、乏しい死体の材料を必要としている。更に、この尿道整形手術の研究成果は、人の場合には最適でなかった。その刊行物では、移植片収縮と線維症に関する別の理由としてのタンパク質の骨格に対する早期の炎症反応を考察していた。実際、タンパク質の骨格から成る表皮を剥がした真皮は、生体内で短時間(1〜2週間)には分解されず、そのため、結局は、体内に大きな炎症反応を引き起こす可能性が有る。
【0037】
b)眼表面を再構成するための自己由来の口の粘膜細胞の使用
スチーブンス・ジョンソン症候群及び眼の瘢痕による類天疱瘡などの症状によって起こる眼表面の重大な病気は、症状が著しく目に見える破滅的な状態となる可能性が有る。そのような場合、角膜の縁の上皮幹細胞が壊れ、そのことは、角膜表面への周囲の結膜の侵襲、新生血管形成、慢性の炎症、繊維組織の成長、並びに基質瘢痕化を引き起こす。そのような患者では、従来の角膜移植は酷い結果となる。培養した角膜上皮幹細胞の移植などのそれに代わる方法が提示された。その手法では、片目の角膜を損傷した患者は、健康な対側性の眼から取得した角膜上皮幹細胞を培養した移植片を移植された。しかし、その眼の健康は、主要な関心事である。両目を損傷した患者では、死んだドナー又は生きているドナーの眼の角膜上皮幹細胞を培養した移植片が必要である。幾つかの成功例にも関わらず、免疫による拒絶反応と、同種移植後の免疫抑制治療の結果としての病原菌の感染及び誘発とが起こっている。再生医療という意味において、自己由来の細胞源から生成して培養した粘膜上皮幹細胞膜の移植は、自己由来の角膜上皮幹細胞を使用できない両目を損傷した場合の発展可能な代替策である。口の粘膜細胞は、細胞源として注目されており、動物と人に採用する試験的研究において、肯定的な成果を得た。この方法は、移植に対する拒絶反応のリスクと長期間のステロイド投与又は免疫抑制の必要性とを低減する(非特許文献10と11参照)。角膜又は口の上皮細胞を培養するための現在の有利な方法は、機械的に不安定な材料、大抵は羊膜の皮膜を使用する必要が有る(上記の非特許文献10と11参照)。羊膜の皮膜を使用する場合にも、帝王切開した女性の同種の胎盤が必要であり、そして、そのような材料は乏しい。この問題は、同じく死体の材料を必要とするEVPOMEなどのその他の提案されている口の粘膜細胞構造の場合でも起こっている(非特許文献12参照)。
【0038】
c)ドナーの耳を再構成するための自己由来の口の粘膜細胞の使用
無細胞の基質が動物をモデルとする食道整形手術で使用された。しかし、それは、完全に上皮を形成するには至らなかった。従って、改善された再構成のためには、細胞の構成要素が必要である。動物のモデルでは、無細胞の小腸粘膜下組織上に口の粘膜上皮細胞を使用することが、約5cmの短い食道欠陥を再構成する場合に多くの有望な成果を示した。しかし、小腸粘膜下組織の乾燥凍結させた形状のために、皮膜の長い区画上で細胞を複数の層に培養することは常に可能であるとは限らない(非特許文献13参照)。それ以外に報告されている、コラーゲンから成る食道整形手術用皮膜も、人に使用するには機械的に不安定過ぎる(非特許文献14参照)。ポリL乳酸(PLLA)、乳酸グリコール酸共重合体(75:25)(PLGA75)、乳酸グリコール酸共重合体(50:50)(PLGA50)及びポリカプロラクトン/ポリL乳酸(50:50)(PCL/PLLA)などの別の食道整形手術用合成材料は、食道に関する組織化技術には適していないことが分かった(非特許文献15参照)。
【0039】
d)皮膚再構成のための自己由来の口の粘膜細胞の使用(熱傷)
口のケラチノサイトは、複数の独特の特徴を持っており、表皮(皮膚)のケラチノサイトと比べて利点を提供する可能性が有る。口のケラチノサイトは、表皮のケラチノサイトよりも増殖速度が速く、最終的な分化速度が遅い。そのために、体外増幅を用いた比較的小さいドナー部位が、非常に大きな傷口を覆うのに十分な細胞量を提供することができる。更に、口のケラチノサイトは、移植部位との速い統合を促進するVEGFやIL8などの血管新生促進因子を分泌する。従って、口の粘膜細胞は、皮膚再構成に適した候補であることが分かった(非特許文献16参照)。この再構成の欠点は、前述した通り、死人の材料を使用することである。
【0040】
以下において、本発明を制限するものではない実施例に基づき、符号を参照して本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による皮膜結合体の第一の実施構成の横断面の模式図
【図2】本発明による組織移植片構造の第一の実施構成の模式図
【図3】本発明による組織移植片構造の第二の実施構成の模式図
【図4】本発明による皮膜結合体の第二の実施構成の横断面の模式図
【図5】本発明による皮膜結合体の第三の実施構成の横断面の模式図
【発明を実施するための形態】
【0042】
[実施例1]皮膜結合体の製造
二つの第一の皮膜と一つの第二の皮膜を備えた皮膜結合体を製造し、これらの二つの第一の皮膜の間に第二の皮膜を配置した。
【0043】
第一の皮膜として、生物学的に分解可能な二つの馬のコラーゲン皮膜(ドイツ国バクスター・ドイチュランド有限会社の商品名「ティッシュフォイル」)又は二つの牛のコラーゲン/フィブロネクチン皮膜(ドイツ国ドクトル・スウェラック・スキンアンドヘルスケア株式会社の商品名「マトリダーム」)を使用した。これらの皮膜は、承認された医薬製品であり、そのため患者への使用を許されている。
【0044】
第二の皮膜として、特に、コラーゲン、糖タンパク質、プロテオグリカン及びグリコサミノグリカンを含む乾燥凍結させた豚の小腸粘膜下組織を使用した。
【0045】
二つの第一の皮膜をリン酸緩衝食塩液内に24時間置き、それによって、ふやけた多孔質の形状に移行させた。その後、二つの第一の皮膜の間に第二の皮膜を配置した。そのようにして得られた三層から成る構造物は、皮膜結合体を得るために、35〜40°Cの温度と100kN/cm2 の圧力の下で圧縮した(圧縮の時間長:5分)。次に、この皮膜結合体をビタミン(リボフラビン)5%の溶液に1時間浸した。その後、この皮膜結合体の剛性を高めるとともに、移植後の収縮を低減するために、この皮膜結合体に波長475nmの可視光を1時間当てた。
【0046】
次の構成の皮膜結合体が得られた。
1.1:馬の皮膜/豚の小腸粘膜下組織/馬の皮膜
1.2:牛の皮膜/豚の小腸粘膜下組織/牛の皮膜
【0047】
これらの皮膜結合体1.1の構成と皮膜結合体1.2の構成の横断面が図1に模式的に図示されている。そこに図示された皮膜結合体1は、二つの第一の皮膜2と一つの第二の皮膜3を有する。第二の皮膜3は、二つの第一の皮膜2の間にサンドイッチ構造で配置されている。
【0048】
[実施例2]本発明による粘膜移植片として使用するための組織移植片構造の製造
本発明による粘膜移植片として使用される組織移植片構造を製造するために、実施例1により製造した皮膜結合体(皮膜結合体1.1又は皮膜結合体1.2)に粘膜ケラチノサイトを植付けた。そのために、直径2〜4mmの生検サンプルを40人の患者の頬の粘膜から採取した。更に、それらの患者の静脈完全血サンプルから、30mlの自己由来の血清を抽出した。これらの主要培養物は、通常の通り(非特許文献17参照)添加剤と自己由来の血清を含む(ドイツ国エッゲンシュタインのギブコ社の)ダルベッコ改良型イーグル培地と必須栄養素F12内で三週間周知の手法(非特許文献18参照)で培養した。次に、口の粘膜細胞の複数の層を有する粘膜移植片を構成するために、実施例1で得た皮膜結合体上で継代培養した。
【0049】
この培養した粘膜組織細胞を皮膜結合体の両側の平坦な側面上に展開して、そこで培養した。48時間後、MTT染色法による細胞分布の分析は、皮膜結合体の両側で90%を上回る皮膜のカバー率を示した。カルセイン/臭化エチジウム蛍光染色法による細胞の生存率に関する評価分析は、90%を上回る皮膜上の細胞の生存率を示した。更に、30%を上回る細胞が、プロモデオキシウリジン(BrdU)と肯定的な反応を示し、従って、繁殖能力を有した。
【0050】
次の構成の組織移植片構造が得られた。
2.1:粘膜組織細胞から成る一つ以上の層/馬の皮膜/豚の小腸粘膜下組織/馬の皮膜/粘膜組織細胞から成る一つ以上の層
2.2:粘膜組織細胞から成る一つ以上の層/牛の皮膜/豚の小腸粘膜下組織/牛の皮膜/粘膜組織細胞から成る一つ以上の層
【0051】
図2には、実施例2により製造された組織移植片構造5の構成が横断面で模式的に図示されている。図1に図示された皮膜結合体1の外側の平坦な側面、即ち、図1と関連して、その上側と下側が粘膜組織細胞から成る複数の層4で覆われている。
【0052】
[実施例3]
実施例2と同じ手法で、実施例1で得られた皮膜結合体の両側の平坦な側面に異なる培養細胞を植付けた。この場合、各皮膜結合体の一方の外側の平坦な側面にケラチノサイトを培養する一方、皮膜結合体の他方の平坦な側面上では、口の組織の線維芽細胞と粘膜組織の内皮細胞の混合物を培養した(細胞のソース:口の粘膜組織の生検;口の線維芽と内皮細胞の混合比率1:3)。皮膜結合体の一方の平坦な側面へのケラチノサイトの植付けに続いて、30分後に、この混合物の母集団を皮膜結合体の他方の平坦な側面上に展開した。その他の点は、実施例2の細胞を培養する方法の工程と同じであった。
【0053】
次の構成の組織移植片構造が得られた。
2.1:ケラチノサイトから成る一つ以上の層/馬の皮膜/豚の小腸粘膜下組織/馬の皮膜/口の線維芽と内皮細胞の混合物から成る一つ以上の層
2.2:ケラチノサイトから成る一つ以上の層/牛の皮膜/豚の小腸粘膜下組織/牛の皮膜/口の線維芽と内皮細胞の混合物から成る一つ以上の層
【0054】
図3には、実施例3により製造した組織移植片構造15の横断面が模式的に図示されている。図1に図示された皮膜結合体1の上側の平坦な側面1は、ケラチノサイトから成る複数の層6で覆われている。皮膜結合体1の下側の平坦な側面は、口の線維芽と内皮細胞の混合物から成る複数の層7で覆われている。
【0055】
[比較実施例1]
比較のために、実施例2と実施例3に記載した培養細胞を比較用皮膜上に展開した。比較用皮膜として、i)豚の小腸粘膜下組織、ii)馬の皮膜(商品名「ティッシュフォイル」)及びiii )牛の皮膜(商品名「マトリダーム」)を使用した。これらの比較用皮膜は、皮膜結合体を製造しなかったこと以外、実施例1で使用した第一又は第二の皮膜と同じである。細胞の培養条件は、実施例2と同じとした。未処理の馬の皮膜(ティッシュフォイル)又は牛の皮膜(マトリダーム)上の細胞の成長が、実施例2で記載した本発明による皮膜結合体上での培養プロセスと同様であったことを確認する一方、皮膜として小腸粘膜下組織を使用した場合、細胞の生存率が約70%で、繁殖能力が10%を下回り、より小さい皮膜カバー率(約50%)を観測したことを確認した。
【0056】
次の比較構成が得られた。
i)粘膜組織細胞から成る一つ以上の層/豚の小腸粘膜下組織/粘膜組織細胞から成る一つ以上の層
ii)粘膜組織細胞から成る一つ以上の層/馬の皮膜/粘膜組織細胞から成る一つ以上の層
iii )粘膜組織細胞から成る一つ以上の層/牛の皮膜/粘膜組織細胞から成る一つ以上の層
【0057】
[実施例4]本発明による組織移植片構造の機械的特性
細胞の植付けから48時間後に、実施例2と比較実施例1で製造した組織移植片構造の安定性と抗張力を調査した。実施例2で製造された本発明による組織移植片構造が、裂けることがないと同時に、優れた縫合可能性、抗張力、糸引張強度、撚目形成強度を示すことを確認した。比較実施例1により製造した小腸粘膜下組織による比較構成は、同様の機械的な安定性を示した。同様に比較実施例1により製造した馬の皮膜(ティッシュフォイル)と牛の皮膜(マトリダーム)による比較構成は、低い機械的な安定性と、糸引張処理又は撚目形成時に引っ張ると容易に裂けることが分かった。
【0058】
[実施例5と6]別の皮膜結合体の構成
図4に図示された皮膜結合体1は、図1に図示された皮膜結合体と比べて、一つの第一の皮膜2だけを有する。従って、第二の皮膜の一方の平坦な側面だけが覆われている。図5に図示された皮膜結合体1は、図1に図示された皮膜結合体と比べて、複数の層から成る第二の皮膜13を有する。それらの点を除いて、これらの構成とこれらの皮膜結合体の製造方法は、実施例1と同じである。
【符号の説明】
【0059】
1 皮膜結合体
2 第一の皮膜
3 第二の皮膜
4 粘膜組織細胞から成る層
5 組織移植片構造
6 ケラチノサイトから成る層
7 口の線維芽と内皮細胞の混合物から成る層
13 複数の層から成る第二の皮膜
15 組織移植片構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間又は動物の器官を再構成するための組織移植片構造において、
(a)生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第一の皮膜(2)と、生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第二の皮膜(3)とで構成される皮膜結合体(1)であって、第一の皮膜(2)と第二の皮膜(3)の平坦な側面が互いに接しており、第一の皮膜(2)が馬又は牛を起源とし、第二の皮膜(3)が動物又は人を起源とし、第二の皮膜(3)の起源が第一の皮膜(2)と異なる、一つの皮膜結合体と、
(b)この皮膜結合体(1)の片方又は両方の外側の平坦な側面上の粘膜組織細胞の一つ以上の層(4,5,6)と、
から構成される組織移植片構造。
【請求項2】
皮膜結合体(1)が二つの第一の皮膜(2)と一つの第二の皮膜(3)から構成され、この第二の皮膜(3)が二つの第一の皮膜(2)の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の組織移植片構造。
【請求項3】
第一の皮膜(2)が馬又は牛を起源とし、第二の皮膜(3)が豚を起源とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の組織移植片構造。
【請求項4】
第一の皮膜(2)が、コラーゲンの外に、フィブロネクチンも含むことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の組織移植片構造。
【請求項5】
皮膜結合体(1)の第一と第二の皮膜(2,3)が、互いに圧縮された皮膜か、互いに架橋された皮膜か、或いは互いに圧縮され架橋された皮膜であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の組織移植片構造。
【請求項6】
当該の粘膜組織細胞が自己由来の粘膜組織細胞であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の組織移植片構造。
【請求項7】
当該の粘膜組織細胞が自己由来の口の粘膜組織細胞であることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の組織移植片構造。
【請求項8】
組織移植片構造のための皮膜結合体において、
生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第一の皮膜(2)と、生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第二の皮膜(3)とで構成され、
第一の皮膜(2)と第二の皮膜(3)の平坦な側面が互いに接しており、
第一の皮膜(2)が馬又は牛を起源とし、第二の皮膜(3)が動物又は人を起源とし、第二の皮膜(3)の起源が第一の皮膜(2)と異なる、
皮膜結合体。
【請求項9】
この皮膜結合体が二つの第一の皮膜(2)と一つの第二の皮膜(3)から構成され、この第二の皮膜(3)が二つの第一の皮膜(2)の間に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の皮膜結合体。
【請求項10】
皮膜結合体(1)の第一と第二の皮膜(2,3)が、互いに圧縮された皮膜か、互いに架橋された皮膜か、或いは互いに圧縮され架橋された皮膜であることを特徴とする請求項8又は9に記載の皮膜結合体。
【請求項11】
請求項1から7までのいずれか一つに記載の組織移植片構造の製造方法において、
(a)生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第一の皮膜(2)と、生体に適合する、コラーゲンを含む少なくとも一つの第二の皮膜(3)とで構成される皮膜結合体(1)を製造する工程であって、第一の皮膜(2)と第二の皮膜(3)の平坦な側面が互いに接しており、第一の皮膜(2)が馬又は牛を起源とし、第二の皮膜(3)が動物又は人を起源とし、第二の皮膜(3)の起源が第一の皮膜(2)と異なる工程と、
(b)この皮膜結合体(1)の片方又は両方の外側の平坦な側面上に粘膜組織細胞の一つ以上の層(4)を形成する工程と、
を有する方法。
【請求項12】
当該の工程(a)が、
(a1)二つの第一の皮膜(2)を準備して、これらの第一の皮膜(2)をふやけた状態に移行させる部分工程と、
(a2)第二の皮膜(3)を準備して、この第二の皮膜(3)を乾燥凍結させる部分工程と、
(a3)二つの第一の皮膜(2)の間に第二の皮膜(3)を配置する部分工程と、
(a4)第一の皮膜(2)と第二の皮膜(3)から成る結合体(1)を製造する部分工程と、
で構成されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第一と第二の皮膜(2,3)の圧縮と架橋の一方又は両方によって皮膜結合体(1)を製造することを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
皮膜結合体(1)の片方又は両方の外側の平坦な側面上に粘膜組織細胞を展開して、そこで培養することによって、一つ以上の層(4)を形成することを特徴とする請求項11から13までのいずれか一つに記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−517854(P2013−517854A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550320(P2012−550320)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【国際出願番号】PCT/DE2011/075010
【国際公開番号】WO2011/091796
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(510301301)ウロティス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】