説明

什器

【課題】押釦錠装置付きの開閉体のロック解除及び開き操作性を向上させた什器を提供する。
【解決手段】 開口部にロック可能なラッチ爪とこれを少なくとも解錠方向に動くように手動操作する作動軸18及び指掛け体10とを扉3に備え、押釦錠装置11は、選択された組合せの押釦を押下することにより、解錠すべき暗証が予め設定されるように構成され、押釦錠装置11に設けられた第1作動体40及び回動主軸は施錠時には作動不能で、解錠可能時には解錠方向に作動可能に構成され、指掛け体と第1作動体40とはカムフォロア54とカム部55及び付勢手段により、施錠方向に姿勢保持され、解錠すべき暗証の押釦を押下した状態で指掛け体10を解錠方向に操作したとき、指掛け体10と作動軸18を介してラッチ爪にアンロック方向の作動力を伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、押釦による暗証情報(数字(番号),文字,記号,符号を含む。以下同じ)を予め設定し、その暗証情報に基づいて押釦を押下して解錠可能とすることができる機械式の暗証情報設定機構付きの押釦錠装置を備えたオートロック式の什器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の押釦錠装置として、1回の解錠及び再施錠毎に異なる暗証番号(暗証)を設定することができる番号設定機構の運用方式(以下ワンタイム式という)のもの(特許文献1及び2)や、複数回の解錠及び再施錠にわたって同一の暗証番号(暗証)を使用できる運用方式(以下フルタイム式という)のもの(特許文献3)や、ワンタイム式とフルタイム式とに切替えることができるもの(特許文献4)が種々考案されていた。
【0003】
ワンタイム式の押釦錠装置では、例えばゴルフ場のロッカーの扉用に適用することができる。他方、フルタイム式の押釦錠装置では、オフィスの個人用ロッカーの扉用に適用できる。そして、上記両方式に切り替えることができる押釦錠装置では、ロッカーなどの什器製造の際に準備すべき種類数を少なくしても、ユーザーの要望に即座に対応できるというメリットがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2803804号公報
【特許文献2】特開2003−328613公報
【特許文献3】特開2006−241931公報
【特許文献4】特開2010−19056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に開示された押釦錠装置は、いずれも、予め設定された暗証情報に一致する押釦を押した後、操作レバーやハンドルなどの操作部材を解錠方向に回動またはスライド移動させることにより、デッドボルトやサムターンを解錠方向に移動させて解錠するというものであった。
【0006】
しかしながら、ロッカー、キャビネット、などの什器における開閉扉や抽斗の前面板に設けられた指掛け体をユーザーが操作して開き動作するものにおいて、上記従来の押釦錠装置をそのまま適用すると、操作レバーやハンドルなどの操作部材を解錠操作したのち、指掛け体にて開き動作するという二度手間が掛かり、操作性が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、押釦錠装置と指掛け体などの手動操作体とを関連させた構成を開発することにより、より一層使い勝手の良い(操作性の良い)什器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に開示の発明は、本体の開口部を開閉する開閉体に押釦錠装置を備えた什器であって、前記開閉体には、前記開口部にロック可能なラッチ手段と、前記ラッチ手段を少なくともアンロック方向に動くように手動操作する手動操作体とを有し、前記押釦錠装置は、暗証情報をそれぞれ有する複数の押釦のうち選択された組合せの押釦を押下することにより、解錠すべき暗証が予め設定されるように構成され、前記手動操作体及び前記押釦錠装置に設けられた解錠作動体は付勢手段により常時施錠方向に姿勢保持され、前記解錠作動体は施錠時には作動不能で、解錠可能時には解錠方向に作動可能に構成され、前記解錠すべき暗証の押釦を押下した状態で前記手動操作体を解錠方向に操作したときのみ、前記手動操作体を介して前記解錠作動体が解錠方向に作動するとともに、前記ラッチ手段にアンロック方向の作動力が伝達されて前記開閉体を前記開口部から開放可能に構成されているものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の什器において、前記手動操作体は前記解錠作動体に常時押圧されて施錠方向に姿勢保持されているものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の什器において、前記解錠作動体は、回動主軸とこの回動主軸に連動連結されて直線往復動可能な第1作動杆とからなり、前記回動主軸または前記第1作動杆のいずれか一方もしくは双方は、付勢手段により前記ラッチ手段をロックする方向に付勢され、前記解錠すべき暗証の押釦を押下した状態で前記手動操作体を解錠方向に操作したとき、前記第1作動杆に常時押圧されて施錠方向に付勢されている前記手動操作体を介して前記ラッチ手段にアンロック方向の作動力が伝達されて前記開閉体を前記開口部から開放可能に構成されているものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の什器において、前記解錠作動体は、回動主軸とこの回動主軸に連動連結されて直線往復動可能な第1作動杆と前記回動主軸に取付けられた第2作動杆とからなり、前記第2作動杆を介してラッチ手段を備え、前記回動主軸、前記第1作動杆及び前記第2作動杆の少なくとも1つが付勢手段により前記ラッチ手段をロックする方向に付勢され、前記解錠すべき暗証の押釦を押下した状態で前記手動操作体を解錠方向に操作したとき、前記少なくとも手動操作体を介して前記第2作動杆に解錠方向の作動力が伝達されて前記開閉体を前記開口部から開放可能に構成されているものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の什器において、前記手動操作体から手を離すと、前記押釦が施錠状態にリセットされるように前記手動操作体と前記押釦錠装置とが連係されているものである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の什器において、前記ラッチ手段は、前記手動操作体が施錠姿勢に保持された状態で、前記開口部に蹴り込み可能に構成されているものである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の什器において、前記押釦錠装置と手動操作体とがユニットケース内に収納され、このユニットケースが前記開閉体に着脱可能に装着されるものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜3のいずれの構成においても、開閉体を開放するとき、解錠すべき暗証の押釦を押下した状態で、手動操作体を開閉体の開き方向に動作させるだけで、開閉体をワンタッチで開くことができ、従来のように、操作レバーやハンドルなどの操作部材を解錠操作したのち、指掛け体にて開き動作するという二度手間が無くなり、操作性が向上するという効果を奏する。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、解錠作動体に設けた付勢手段で手動操作体が施錠方向に保持されるため、部品点数が削減できる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、手動操作体から手を離すと、前記押釦が施錠状態にリセットされるように前記手動操作体と前記押釦錠装置とが連係されているものであるから、開閉体を開いた後に、解錠すべき暗証の押釦のリセット作業を別途行う必要がなく、セキュリティが向上するという効果を奏する。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、ラッチ手段は、前記手動操作体が施錠姿勢に保持された状態で、前記開口部に蹴り込み可能に構成されているものであるから、開閉体を閉じてロックする時には、手動操作体を操作することなく開閉体を閉じ方向に移動させるだけで良い。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、押釦錠装置と手動操作体とがユニットケース内に収納され、このユニットケースが前記開閉体に着脱可能に装着されるものであるから、開閉体に対する押釦錠装置と手動操作体との装着作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(A)は本発明の第1実施例を適用する什器の斜視図、(B)はラッチ部分を示す斜視図である。
【図2】第1実施例の扉体の裏面側斜視図であり、押釦錠装置などを収納するユニットケースのうちのカバー体を外した状態を示す。
【図3】同じく扉体の裏面側斜視図であり、ユニットケースを外した状態を示す。
【図4】扉体の裏面側から見た押釦錠装置と手動操作体との関連を示す斜視図である。
【図5】扉の開き可能時の状態を示し、(A)は図4のA−A矢視の個所で示す断面図、(B)は図4のB−B矢視の個所で示す断面図、(C)は手動操作体の姿勢と押釦錠装置との関連を示す斜視図である。
【図6】ロック時(施錠時)の状態を示し、(A)は図4のA−A矢視の個所で示す断面図、(B)は図4のB−B矢視の個所で示す断面図、(C)は手動操作体の姿勢と押釦錠装置との関連を示す斜視図である。
【図7】(A)はロック時(施錠時)の押釦錠装置の内部構造を示す図、(B)は解錠可能時の押釦錠装置の内部構造を示す図である。
【図8】(A)はロック時(施錠時)から解錠可能時への変更を示す説明図、(B)は図8(A)の VIIIB−VIIIB 線矢視断面図である。
【図9】暗証情報(暗証番号)変更のための構成を示し、(A)は図4のA−A矢視の個所で示す断面図、(B)は図4のB−B矢視の個所で示す断面図、(C)は手動操作体の姿勢を固定するためのスイッチ棒とストッパブロックとの位置関係を示す斜視図である。
【図10】第1実施例の変形例を示す概略図である。
【図11】ラッチ手段の蹴り込み構成の第1実施例を示す説明図である。
【図12】ラッチ手段の蹴り込み構成の第2実施例を示す説明図で、(A)はロック時の断面図、(B)はアンロック時の断面図である。
【図13】ラッチ手段の蹴り込み構成の第3実施例を示す説明図で、(A)はロック時の断面図、(B)はアンロック時の断面図、(C)は蹴り込み時の断面図である。
【図14】ラッチ手段の蹴り込み構成の第3実施例部品分解図である。
【図15】第2実施例の什器を示す斜視図である。
【図16】第2実施例の扉体の裏面側斜視図であり、押釦錠装置などを収納するユニットケースを外した状態を示す。
【図17】第2実施例の押釦錠装置を示す裏面図である。
【図18】(A)はラッチ手段の要部を示す図、(B)は図18(A)のXVIIIB−XVIIIB線断面図である。
【図19】第2実施例の変形例を示す概略図であり、(A)は平断面図、(B)は扉の裏面から見た図である。
【図20】(A)は第3実施例の抽斗付きキャビネット(什器)を示す斜視図、(B)はラッチ部を示す斜視図である。
【図21】指掛け体及び押釦錠装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において、「什器」とは、金属板製、木製などの材料の如何に拘らず、ロッカー、キャビネットなどをいう。「開閉体」とは、什器の本体の開口部を開閉可能に覆うための扉や抽斗の前面部材をいう。「手動操作体」とは、開閉体の表面側から人の指を掛けて開閉体を開き方向に移動させるための指掛け体などの部材をいう。「ラッチ手段」とは、什器の本体の開口部(の係止部)に対して係脱して開閉体を本体の開口部から開放(アンロック)したり、開口部を閉止した状態(ロック状態)に保持するための手段をいう。「暗証情報」とは、暗証情報(数字(番号),文字,記号,符号を含むもので、本発明では、押釦の前面に刻印または印刷などにより付されたものをいう。「暗証」とは、一般に秘密保持者にのみ開示されうる暗証情報、例えば4桁の数字の組合せなどを言い、パスワードまたは暗証番号ともいう。「暗証」が一致すれば、本発明では解錠可能となる。「解錠すべき暗証」とはユーザー(使用者)または管理者が予め設定した暗証をいう。
【0022】
次に、図1〜図9を参照ししながら、本発明の第1実施例について説明する。図1(A)は第1実施例の什器としてのキャビネット1を示し、その本体2の開口部2aは開閉部材としての2枚の扉3が観音開き式に設けられている。一方の扉2には、本発明の手動操作体の一例としての指掛け体10(引手ともいう)と押釦錠装置11とがユニットケース12に収納されている。
【0023】
ユニットケース12は、図2〜6等に示されているように、扉3の裏面に取付けられるケース本体13と、このケース本体13に着脱可能に取付けられる裏カバー体14とからなり、合成樹脂の射出成形品等である。ケース本体13には押釦錠装置11の取付け部16や指掛け体10の回動軸15の軸受部17並びにラッチ手段の作動軸18の挿通部19や引手孔20が形成されている。
【0024】
扉3には押釦錠装置11の押釦31等の前面や引手孔20が臨むように、ケース本体13の前面が露出する孔が穿設されている。なお、指掛け体10の回動軸15には、連動体21が指掛け体10と一体的に回転するように取付けられている。連動体21に取付けられる作動軸18は回動軸15と平行であり、扉3の裏面近傍に配置される。作動軸18を中心に一体的に回動する作動体22は連動体21に押されて回動する構成である(図4、図5(C)、図6(C)参照)。非常解錠用の作動体22の動きについては後述する。
【0025】
このように、ユニットケース12に、押釦錠装置11や指掛け体10、回動軸15、連動体21、作動体22等の部材を予め収容したものを、開閉部材(扉3)に着脱可能に装着できる構成であると、複数の部品の取付け作業が簡単になるし、部品相互間の取付け寸法誤差も少なくできるという効果を奏する。
【0026】
ラッチ手段の第1実施例では、図1(B)、図2、及び図3に示すように、扉3の裏面においてその上下端部の軸受部23に断面矩形状など作動軸18が回動可能に軸支されている。作動軸18の上下端部にラッチ爪24が一体的に回動するように取付けられ、両ラッチ爪24は本体2の開口部2aに設けられた係止部25に係脱できる構成である。ラッチ爪24が係止部25に係止した状態がロック状態であり、ラッチ爪24が係止部25から外れた状態がアンロック(ロック解除ともいう、以下同じ)状態である。
【0027】
[押釦錠装置の構成]
本発明に適用する押釦錠装置11は、特許文献1及び2に開示されている構成のものや、特許文献3や特許文献4に開示されている構成を有するものなどいずれにも適用できる。
【0028】
一般に、押釦錠装置11は、暗証情報が表面に刻印または印刷などにより付された複数個の押釦31が、ハウジング32の表面に一部突出されて複数行、複数列のマトリクス状に配置されている。押釦31の下端には扁平板状または丸軸状などの軸体33が設けられ、ハウジング32の背面カバー32aに一部突出するようになっている。実施例では、数字の0〜9及び♯の11個の暗証情報が表面に刻設された暗証用釦と、ローマ文字Cの付いた設定キャンセル用釦を有する。解錠すべき暗証は1〜5桁などの任意の桁数とすることができる。本実施例では、複数回の解錠及び再施錠にわたって同一の暗証(暗証番号)を使用するための、予め解錠すべき暗証を決め、その釦を任意の順で押し込んでセットすることができる。
【0029】
各軸体33の長手方向(押釦31を押下する軸線方向)の中途部には解錠切欠き部(不図示)が形成され、ハウジング32内には軸体33や解錠切欠き部が通過しうる通孔を有するガイドプレート(不図示)、開閉プレート36、リセットプレート35が軸体33の軸線と直交する平面で多層状に移動可能に配置されている。本発明において、部品の配置関係を示す「前面(側)」とは、押釦錠装置11の押釦31が扉3等に突出している側を言い、「背面(側)」とは押釦31の押し込み下流側(扉3の裏面から遠い側)をいう。また、上下、左右とは図7(A)、図8(A)及び図7(B)における上下、左右を言う。図7(A)、図8(A)及び図7(B)はハウジング32の背面カバー32aを外して見た内部構造であり、リセットプレート35が最も背面側に配置され、その前面側に開閉プレート36が配置されている。リセットプレート35と開閉プレート36とは図7(A)、図8(A)及び図7(B)においてそれぞれ独立的に上下動する。開閉プレート36には各軸体33の端部が挿通可能で、解錠可能時に軸体33の端部が係止しうる係止孔34が穿設されている。なお、図8(A)では係止孔34を図示省略している。
【0030】
[手動操作体(指掛け体10)と押釦錠装置11との連動機構]
施錠状態(図7(A)及び図8(A)参照)では、全ての押釦31が突出状態に保持されている。また、施錠状態では、開閉プレート36が、ハウジング32の移動可能空間37内で、下位置に保持されて、移動可能空間37の上部と開閉プレート36の上端との間に寸法H1の隙間が形成されている。
【0031】
第1実施例では、押釦錠装置11に設けられた解錠作動体は施錠時には作動不能で、解錠可能時には解錠方向に作動可能に構成され、手動操作体である指掛け体10と解錠作動体とは連動機構及び付勢手段により、施錠方向に姿勢保持されている。解錠すべき暗証と一致する押釦31を押下した(但し、押下の順序は問わない)状態で手動操作体を解錠方向に操作したときのみ、手動操作体を介して解錠作動体が解錠方向に作動するとともに、ラッチ手段にアンロック方向の作動力が伝達されて開閉体である扉3を開口部2aから開放可能に構成されている。第1実施例における解錠作動体とは、下記の回動主軸39と第1作動杆40とを含む。
【0032】
図7(A)及び図8(A)において移動可能空間37の下方にキャリア38が上下動可能に配置されている。キャリア38の下方には、ハウジング32内で左右に往復直線移動可能な第1作動杆40と往復回動可能な回動主軸39とが配置されている。回動主軸39の外周に設けられた円周の一部のみの扇状歯車41と第1作動杆40の一側面(下面)に形成されたラック部42とが噛み合って、第1作動杆40の往復直線移動と回動主軸39の往復回動とが連動する。
【0033】
図示実施例では、第1作動杆40とユニットケース12の一側の支持部12aとの間には、請求項にいう付勢手段の一例としての圧縮ばね44が配置されて、第1作動杆40を常時図7(A)、図8(A)の左方向(施錠方向)に姿勢付勢している。キャリア38の下面の下向き凸部43は第1作動杆40の上面に摺動可能に当接され、且つキャリア38と開閉プレート36とに装架された連結バネ(圧縮バネ)45により、キャリア38と開閉プレート36とが上下方向に突っ張り合うように構成されている。また、キャリア38の下面の下向き凸部43が第1作動杆40の上面に設けられた凹部46に嵌まっている時(施錠状態に相当)、移動可能空間37の上部と開閉プレート36の上端との間に寸法H1の隙間が形成されるように、不図示のストッパ機構により、開閉プレート36が下位置に保持されるものとする。なお、リセットプレート35とキャリア38とも別の連結バネ(圧縮バネ)47にて連結されている(図7(A)及び図7(B)にのみ示す)。
【0034】
扇状歯車41を有する円筒体48の背面側端面には、円弧型段付き状の係止部49が形成されている(図7(A)、図7(B)、図8(A)、図8(B)参照)。この係止部49は、図7(A)、図8(A)及び図8(B)において、左側が高く、右側が低い円弧である。
【0035】
リセットプレート35の背面側には、ストッパ杆50が開閉プレート36と係止部49との間に橋渡しされている。ストッパ杆50の上端の鉤部51は開閉プレート36に穿設された係合孔52に係合され、ストッパ杆50の中途部は案内片53に沿って上下方向に摺動可能である(図8(B)参照)。案内片53は押釦錠装置11の裏カバー11aに支持されることが好ましい。ストッパ杆50の下端は、施錠時は係止部49に係止されて回動主軸39が解錠方向(図7(A)、図8(A)において時計回り方向)に可動するのを阻止している。
【0036】
そして、指掛け体10に設けられたコロ状または傾斜面を有するカムフォロア54と第1作動体40の先端に連結または形成された傾斜面を有するカム部55(図3、図5(A)、図6(A)、図9(A)等参照)とが付勢手段である圧縮ばね44の付勢力によりほぼ常時接触されている。カム部55が押釦錠装置11の側面から突出する施錠状態(ロック時)では指掛け体10の全体が引手孔20内に位置する等、指掛け体10に扉開きのためのユーザーの力が作用していない姿勢(引手非操作姿勢という)に保持される。請求項にいう施錠方向に姿勢保持されるための手動操作体である指掛け体10と解錠作動体(回動主軸39と第1作動杆40とを含む)との「連動機構」は第1実施例においては上記カムフォロア54とカム部55を含む構成である。「付勢手段」とは、この実施例では圧縮ばね44である。圧縮ばね44に代えて、回動主軸39を施錠方向に付勢する捩じりばねであっても良い。なお、図示実施例では、回動主軸39にはこれと一体的に回動する回動プレート60が設けられ、この回動プレートの先端部(回動半径外周側)にはストッパブロック61が固着されている(図5(B)、図5(C)、図6(C)など参照)。
【0037】
上記の構成により、圧縮ばね44により施錠方向(ロック方向)に付勢された第1作動杆40のカム部55及びカムフォロア54を介して、指掛け体10は引手非操作姿勢に保持される(図6(A)、図6(C)参照)。指掛け体10と一体的な連動体21はユニットケース12内にて扉3の裏面側に離間した姿勢であり、この連動体21により押圧される作動体22は扉3の裏面と略平行状態に保持される(図6(B)、図6(C)参照)。作動体22に取付く作動軸18に固着されたラッチ爪24は本体2における開口部2aの係止部25に嵌まり込み、扉3は閉止状態を保持する。そして、図6(B)に示すように、作動体22とケース本体13の内面との間に蹴り込み用バネ30を装架することで、ラッチ爪24が係止部25に蹴り込み逃げ回動した後、係止部25に係止保持されるように付勢している。この場合、作動体22は連動体21から離れるので、連動体21及び指掛け体10は引手非操作姿勢に保持される。蹴り込み用バネとして、作動軸18またはラッチ爪24に捩じりばねを設けても良い。なお、指掛け体10の姿勢保持のため、圧縮ばね44に加え、指掛け体10にさらに補助的な付勢手段を設けてもよい。
【0038】
[施錠時(ロック時、施錠状態、ロック状態ともいう)の各部材の動作の説明]
上記の構成において、施錠時には、全ての押釦31が突出状態となり、扉3の表面からは、解錠すべき暗証となる押釦31がいずれであるか判別できないようになっている。そして、ユーザーが扉3を開口部2aに対して閉止するように押すと、ラッチ爪24の斜面部が係止部25の一側縁に当たり、これによりラッチ爪24が係止部25から一旦逃げ回動(図6(C)で反時計回り方向に可動)したのちラッチ爪24が係止部25に嵌まる。この場合、ラッチ爪24と一体的に回動する作動軸18を介して作動体22だけが連動体21から離れて図6(C)で反時計回り方向に可動することができる。
【0039】
他方、押釦錠装置11内では、不図示のストッパ機構により下位置に保持された開閉プレート36に従いストッパ杆50も下位置にあるので、図7(A)及び図8(A)に示すように、段付き状の係止部49にストッパ杆50の下端側面が当接しているから、回動主軸39はロック解除方向(解錠可能方向、図7(A)及び図8(A)において時計回り方向)に回動できないし、第1作動体40も(解錠可能方向、図7(A)及び図8(A)において右方向)に可動できない。従って、ユーザーが指掛け体10に指を掛けて、当該指掛け体10を扉開き方向(図5(A)のように扉3の前方向へ引き回そうとして、カムフォロア54及びカム部55を介して第1作動体40を解錠方向(図7(A)及び図8(A)の右方向)に押しても、ロックされた状態が保持できるのである。
【0040】
[解錠時((ロック解除時)、解錠状態、アンロック状態ともいう)の各部材の動作の説明]
扉3を開くには、予め設定された暗証と一致する押釦31を押下する(但し、押下する順序は問わない)。これにより、不図示のストッパ機構の作動により開閉プレート36は図7(B)に示すように上昇し、ストッパ杆50も上昇する。これにより、ストッパ杆50の下端側面が段付き状の係止部49よりも半径外側に位置し、回動主軸39はロック解除方向(解錠可能方向、図7(A)及び図8(A)において時計回り方向)に回動可能であり、第1作動体40も(解錠可能方向、図7(A)及び図8(A)において右方向)に可動できる状態となる。
【0041】
この状態で、ユーザーが指掛け体10に指を掛けて、当該指掛け体10を解錠方向(図5(A)のように扉3の前方向へ引き回すと、カムフォロア54及びカム部55を介して第1作動体40を解錠方向(図7(B)の状態))に押すことができる。
【0042】
この時同時に、指掛け体10の扉開き動作方向である解錠方向への回動につれて、連動体21も図5(B)のように同方向に回動し、作動体22を同じ方向に回動させるから、作動軸18を介してラッチ爪24を係止部25から外れるように回動させることができる。これにて、扉3を開くことができる。このように、本実施例では、解錠すべき暗証の押釦を押下した後は、指掛け体10の扉開き動作だけで、ロック解除して扉を簡単に開くことができるという効果を奏する。
【0043】
なお、指掛け体10から手を離すと、圧縮ばね44の付勢力により第1作動杆40は施錠方向(ロック方向)に移動し、カムフォロア54及びカム部55を介して、指掛け体10は引手非操作姿勢に戻される(図6(A)、図6(C)参照)。
【0044】
他方、図7(A)のように、第1作動体40の左移動につれて、その凹部46へ凸部43が嵌まり、キャリア38が下降し、開閉プレート36が下降するので、全ての押釦31が突出するので、押釦錠装置11としては施錠状態となり、解錠すべき暗証が何であったか、扉3の外からはわからないようにできる。
【0045】
[非常解錠操作]
ユーザーが解錠すべき暗証を忘れたために扉3を開くことができない事態であっても、ロッカーや、キャビネットなどを緊急に開かなければならない非常解錠操作時について説明する。この場合、管理者は押釦錠装置11における回動主軸39の前面側に設けられ、扉3の前面にキー差し込み口が露出しているシリンダ錠62をマスターキーで回動する。これにより、シリンダ錠62の内筒62aが解錠方向に回動する。すると、内筒62aに固定された回動プレート60も一体的に回動する。この回動プレート60の先端に固定されたストッパブロック61は、図5(B)、図5(C)に示すように、作動体22をロック解錠方向に回動させるから、作動軸18を介してラッチ爪24を係止部25から外れるように回動させることができる。なお、この場合、回動主軸39は非回転であり、指掛け体も引手非操作姿勢に保持されたまま回動不能である。この非常解錠操作時には指掛け体10を扉開き方向に引く必要がないので、指掛け体10の故障時の扉開きにも役立つ。
【0046】
[暗証情報(暗証番号)の変更操作用機構]
暗証情報(暗証番号)を変更するには、一旦扉3を開き、且つ押釦錠装置11を解錠状態に保持して実行する必要がある。第1実施例においては、回動主軸39や第1作動体40がロック方向に付勢されており、この付勢力が連動機構を介して指掛け体10を扉3の表面から引いた状態に対して反対向きの力として作用するから、指掛け体10を解錠所定位置に保持することは、作業性が悪くなる。
【0047】
そこで、指掛け体10を引手非操作姿勢に保持したまま、押釦錠装置11を解錠可能状態に保持するため、ユニットケース12における裏カバー体14に上下長手の案内溝58を設け、この案内溝58に沿って上下移動可能なスイッチ棒59の先端側をユニットケース12内に臨ませる。他方、回動主軸39には回動プレート60を固着する。回動プレート60の先端にストッパブロック61を取り付ける。
【0048】
この構成により、指掛け体10を引いた状態のまま扉3を開くと、回動主軸39が解錠方向に回動することで、回動プレート60の先端のストッパブロック61は傾き回動した作動体22の当接部22aに近接または当接する。この状態のとき、ユニットケース12の裏カバー体14の案内溝58に沿ってスイッチ棒59を移動させて、該スイッチ棒59と当接部22aとでストッパブロック61を挟み付け状態に保持する(図9(B)及び図9(C)参照)。これにより、ストッパブロック61、回動プレート60ひいては回動主軸39が施錠状態に戻らないので、作業者は、扉3の裏面のユニットケース12における裏カバー体14に設けられた窓57を介して、押釦錠装置11の背面に設けられた切換スイッチ56(図2、図9(C)に示す)を一旦「固定位置」から「自由位置」へ回動した状態で、暗証情報(暗証番号)の変更作業を実行し、その後、切換スイッチ56を「固定位置」に戻すことで完了する。
【0049】
このようにして、指掛け体10から手を離した状態で、押釦錠装置11の暗証情報(暗証番号)の変更作業を迅速に、且つ1人であってもできるのである。この構成は、押釦錠装置11や指掛け体10等の交換作業においても利用できる。
【0050】
図10は第1実施例の変形例を示す概略図であり、この実施例では、押釦錠装置11に設けられた解錠作動体としての回動主軸39は施錠時には作動不能で、解錠可能時には解錠方向に作動可能に構成され、回動主軸39と手動操作体である指掛け体10とは、連動機構と及び付勢手段により、施錠方向(ロック方向)に姿勢保持され、解錠すべき暗証の押釦31を押下した状態で指掛け体10を扉開き方向に操作したとき、この指掛け体10を介してラッチ手段にアンロック方向の作動力が伝達されて開閉体である扉3を開口部2aから開放可能に構成されている。この実施例における連動機構は作動軸18と回動主軸39から作動軸18に平行な回動軸65とこの回動軸65に作動力を方向変換して伝達する傘歯車対66と回動軸65と作動軸18とを連結するリンク機構67とからなる。指掛け体10を解錠方向に引き回すとき、回動主軸39も解錠方向に回動する構成であれば良い。付勢手段は回動主軸39、リンク機構67、回動軸65等に設けられた引きバネ、捩じりバネなどで、最終的に指掛け体10を引手非操作姿勢に保持され、回動主軸39を施錠方向(ロック方向)に付勢するものであれば良い。
【0051】
図11〜図14は、ラッチ手段の別例である。図11の実施例では、扉3に回動可能に支持された作動軸18の両端にラッチ爪24が一体的に回動するように取付けられている。図11において、ラッチ爪24が開口部2aの係止部25に係止する方向(ロック方向)は反時計回りであり、係止解除の方向(アンロック方向、ロック解除方向ともいう)は時計回りとする。他方、作動軸18の中途部において、指掛け体10の基部10aに隣接して作動軸18と一体的に回動可能に被嵌するボス体70には、アーム71が半径外方向に突設される。アーム71と扉3の裏面との間に、作動軸18をロック方向に付勢する復帰バネ72が設けられている。指掛け体10を扉開き動作方向であるロック解除方向に回動させるときのみ、基部10aに設けられた突起73がボス体70に設けられた当接部74をロック解除方向に押して、復帰バネ72の付勢力に抗して作動軸18及びラッチ爪24をロック解除方向に回すことができる構成である。この構成によれば、扉3の閉止回動時には、指掛け体10を操作することなく、扉3を本体2の開口部2aに当接するように閉じ回動するだけで、ラッチ爪24が係止部25に対して蹴り込まれた後ロックすることができる。
【0052】
図12(A)、図12(B)に示す実施例は、ラッチ爪24に対する開口部2aの係止部75に蹴り込み機構を設けたものである。即ち、係止部取付け枠76の内側に開口部2aと平行に移動可能に設けられた係止体77を付勢バネ78にてラッチ爪24に接近する方向に付勢する。係止体77の先端部にはラッチ爪24の先端外側の蹴り込み案内用の傾斜面と対面する傾斜面77aが形成されている。ラッチ爪24は作動軸18と一体的に回動するように取付けられている。図12(A)は、図示しない指掛け体を操作することなく、扉3を本体2の開口部2aに当接するように閉じ回動し、ラッチ爪24が係止体77に対して蹴り込まれた後のロック状態を示す。図12(B)は図示しない指掛け体をロック解錠方向に回して、ラッチ爪24が係止体77から外れた状態(ロック解除状態)を示す。
【0053】
図13(A)〜図13(C)及び図14は、開口部2aにおける傾斜面を有する係止部25に対する同じく蹴り込み案内用の傾斜面を有するラッチ爪24の蹴り込み機構の他の実施例を示す。図示するように、ロック解除作動体80のボス部80aに作動軸18が嵌め入れられて、両者が一体的に回動可能に構成されている。ボス部80aの外周にラッチ爪24の基部24aが被嵌して、作動軸18に対してラッチ爪24が相対的に回動可能となっている。ラッチ爪24の基部24aには、付勢バネ81の受け部82と、ロック解除作動体80の突起部83に当接可能な当接部84とが設けられている。受け部82と当接部84とは基部24aの回動軸線(中心線)を挟んで互いに逆側に設けられている。付勢バネ81は、扉3の裏面とラッチ爪24の受け部82との間に装架される。
【0054】
図13(A)は、係止部25に対するラッチ爪24のロック状態を示し、図13(C)は、図示しない指掛け体を操作することなく、扉3を本体2の開口部2aに当接するように閉じ回動し、ラッチ爪24が係止部25に対して蹴り込まれた状態を示す。他方、図13(B)は、不図示の指掛け体をロック解除方向に回動させることで、ロック解除作動体80の突起部83にて当接部84を押し、付勢バネ81に抗してラッチ爪24を係止部25から外した状態を示す。これらのいずれの蹴り込み機構でも、扉3を本体2の開口部2aに対して閉止させるときに、指掛け体を操作する必要がない。
【0055】
図15〜図18に示す第2実施例では、ロッカーなどの什器の本体2における開口部2aを開閉する開閉体の一例としての片開き式の扉86に押釦錠装置11を備える。押釦錠装置11の基本的構成は上記第1実施例と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0056】
扉86には、開口部2aにロック可能なラッチ手段87と、このラッチ手段87を少なくとも解錠方向に動くように手動操作する手動操作体としての指掛け体10とを有する。
【0057】
第2実施例における解錠作動体は、回動主軸39とこの回動主軸39に連動連結されて直線往復動可能な第1作動杆40と回動主軸39に取付けられて一体的に回動可能な第2作動杆としての回動プレート60とからなる。
【0058】
回動プレート60の先端部に設けられるラッチ手段87は、先端のみ開放された矩形筐状のガイドケース88とこれに対して進退同可能なラッチ爪89を備える。ガイドケース88の一対の側面にラッチ爪89の進退方向に長いガイド孔90が穿設され、ラッチ爪89を貫通する軸91がガイド孔90に嵌まり、ガイド孔90に沿って移動可能となるように構成されている。そして、ガイドケース88内にはラッチ爪89を突出方向に付勢するバネ92が内装されている。なお、ラッチ爪89における蹴り込み案内用の傾斜面89aは、扉86の閉止動時に開口部2aにおける係止部93と対面する側に設けられている(図18(B)参照)。また、回動プレート60は、扉86の閉止動時において、開口部2aを含む本体2の前面と平行な平面に沿って回動するものである(図17参照)。
【0059】
指掛け体10の回動軸94は扉86の回動軸線と平行であり、押釦錠装置11を収納するユニットケース12の本体ケース13に設けられた軸受95に回動可能に支持される(図16参照)。指掛け体10には、第1実施例と同じく、カムフォロア54が設けられている。このカムフォロア54は直線往復移動する第1作動体40の先端のカム部55に当接している。指掛け体10は引手非操作姿勢方向に付勢する付勢バネ(不図示)が設けられている。従って、カムフォロア54はカム部55を常時押していることになる。
【0060】
他方、押釦錠装置11においては、第1実施例と同じく、回動主軸39、第1作動杆40及び第2作動杆である回動プレート60の少なくとも1つが付勢手段によりラッチ手段をロックする方向に付勢されている。
【0061】
押釦錠装置11は、暗証情報をそれぞれ有する複数の押釦31のうち選択された組合せの押釦31を押下することにより、解錠すべき暗証が予め設定されるように構成され、押釦錠装置11に設けられた解錠作動体は施錠時には作動不能で、解錠可能時には解錠方向に作動可能に構成されている点は第1実施例と同じである。
【0062】
次に、上記の構成により、扉86が開いた状態から閉止する際には、押釦錠装置11における回動プレート60はロック方向に位置するため、ラッチ手段87は扉86の回動半径外方向に突出していることになる(図17の実線状態参照)。この状態で扉86を閉め方向に回動すると、図18(B)のように、ラッチ爪89の蹴り込み案内用の傾斜面89aが係止部93に当たると、バネ92の付勢力に抗して後退した後、係止部93を越えてからラッチ爪89が突出し、ロック状態となる。
【0063】
[解錠操作]
解錠すべき暗証の押釦31を押下した状態で指掛け体10を解錠方向に操作したとき、少なくとも指掛け体10を介して回動プレート60に解錠方向の作動力が伝達されて扉86を開口部から開放可能に構成されている。
【0064】
より詳しく説明すると、第1実施例と同様に、扉86を解錠するには、予め設定された暗証と一致する押釦31を押下する(但し、押下する順序は問わない)。これにより、不図示のストッパ機構の作動により開閉プレート36は図7(B)に示すように上昇すると、ストッパ杆50も上昇する。これにより、ストッパ杆50の下端側面が段付き状の係止部49よりも半径外側に位置し、回動主軸39はロック解除方向(解錠可能方向、図7(A)及び図8(A)において時計回り方向)に回動可能であり、第1作動体40も(解錠可能方向、図7(A)及び図8(A)において右方向)に可動できる状態となる。
【0065】
この状態で、ユーザーが指掛け体10に指を掛けて、当該指掛け体10を扉開き動作方向(扉86の前方向)へ引き回すと、カムフォロア54及びカム部55を介して第1作動体40を解錠方向に押すことができる。この時同時に、第2作動体である回動プレート60が、図17の二点鎖線で示すようにロック解除方向に回動してラッチ爪88が係止部89から外れるのである。この実施例においても、解錠用の押釦31の操作の後は、指掛け体10の扉開き動作だけで扉86を簡単に開くことができるという効果を奏する。なお、図15に示す扉86の前面に露出するレバー96はシリンダ錠を備えた非常解錠用のものまたは暗証情報の変更のためのものである。
【0066】
図19(A)、図19(B)は第2実施例の変形例であり、指掛け体10の扉開き動作と回動主軸39との連動機構は、押釦錠装置11に設けられた解錠作動体としての回動主軸39は施錠時には回動不能で、解錠可能時には解錠方向に作動可能に構成され、回動主軸39と手動操作体である指掛け体10とは、連動機構と及び付勢手段により、施錠方向に姿勢保持され、解錠すべき暗証の押釦を押下した状態で指掛け体10を解錠方向に操作したとき、この指掛け体10を介してラッチ手段に解錠方向の作動力が伝達されて開閉体である扉3を開口部2aから開放可能に構成されている。この実施例における連動機構は指掛け体10の回動軸94と回動主軸39から回動軸94に平行な回動軸65とこの回動軸65に作動力を方向変換して伝達する傘歯車対66と回動軸65と回動軸94とを連結するリンク機構67とからなる。指掛け体10を扉86の開き方向に引き回すとき、回動主軸39も解錠方向に回動する構成であれば良い。ラッチ手段87は第2実施例と同じであるので、詳細な説明は省略する。また、作用効果も第2実施例と同じである。付勢手段は回動主軸39、リンク機構67、回動軸65等に設けられた引きバネ、捩じりバネなどで、最終的に指掛け体10を引手非操作姿勢に保持され、回動主軸39をロック方向に付勢するものであれば良い。
【0067】
図20、図21に示すものは、抽斗99付きのキャビネット(什器)98に適用したものである。開閉体としての抽斗99の前面部材100の裏面には手動操作体としての指掛け体10と押釦錠装置11とが設けられて、これらはユニットケース12内に収納されている。指掛け体10のための引手孔101が前面部材100に穿設されている。指掛け体10と一体的に回動する作動軸102は前面部材100の裏面側において左右に延びて、前面部材100の両端にて作動軸102の両端の作用部102aが下向きに屈曲されている。前面部材100の両端に設けられて水平回動可能なラッチ爪103の縦回動杆104の被押圧部104aに上記作用部102aが当接している。指掛け体10に設けられたカムフォロア54は押釦錠装置11のカム55に常時当接している。カム55が先端に設けられた第1作動杆(不図示)はロック方向に付勢されていると共に、ラッチ爪103または縦回動杆104に設けられた付勢手段(捩じりバネ等)により、ラッチ爪103もキャビネット98の本体98aの内面の係止部(不図示)に係止する方向に付勢されている。
【0068】
抽斗99を解錠するには、第1実施例と同様に、予め設定された暗証と一致する押釦31を押下する(但し、押下する順序は問わない)。これにより、不図示のストッパ機構の作動により開閉プレート36は図7(B)に示すように上昇すると、ストッパ杆50も上昇する。これにより、ストッパ杆50の下端側面が段付き状の係止部49よりも半径外側に位置し、回動主軸39はロック解除方向(解錠可能方向、図7(A)及び図8(A)において時計回り方向)に回動可能であり、第1作動体40も(解錠可能方向、図7(A)及び図8(A)において右方向)に可動できる状態となる。
【0069】
この状態で、ユーザーが指掛け体10に指を掛けて、当該指掛け体10を抽斗開き動作方向である解錠方向(抽斗99の前方向)へ引き回すと、カムフォロア54及びカム部55を介して第1作動体40を解錠方向に押すことができる。
【0070】
この時同時に、指掛け体10を抽斗99の開き方向に引き回動すると、作動軸102及び縦回動杆104が図20(B)の矢印方向に回動して、ラッチ爪103がロック解除される。この実施例においても、解錠用の押釦31の操作の後は、指掛け体10の抽斗開き動作だけで抽斗99を簡単に開くことができるという効果を奏する。
【0071】
前記抽斗99の施錠及び解錠の別の実施例として、第1実施例で示す指掛け体10を、その回動軸が前面部材100の裏面と平行で且つ水平となるように引手孔101内に配置し、指掛け体10の回動軸には、連動体21が指掛け体10と一体的に回転するように取付けられている。回動軸と平行(水平)に配置された作動軸102と一体的に回動する作動体22は連動体21に押されて回動する構成である。作動軸102や縦回動杆104、ラッチ爪103の構成は、図20(B)に示すものと同じである。
【0072】
押釦錠装置11の構成は第1実施例で示すものと同様で、押釦31の表面の数字などの暗証情報の向きのみ異なり、同じ構成には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施例でも、指掛け体10と第1作動体40とはカムフォロア54とカム部55及び付勢手段により、施錠方向に姿勢保持され、解錠すべき暗証の押釦31を押下した状態で指掛け体10を解錠方向に操作したとき、指掛け10と作動軸102を介してラッチ爪103にアンロック方向の作動力を伝達することができるのである。
【符号の説明】
【0073】
2 本体
3、86 開閉体としての扉
10 手動操作体としての指掛け体
11 押釦錠装置
12 ユニットケース
18、102 作動軸
24、89、103 ラッチ爪
31 押釦
39 回動主軸
40 第1作動体
60 第2作動体としての回動プレート
54 カムフォロア
55 カム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の開口部を開閉する開閉体に押釦錠装置を備えた什器であって、
前記開閉体には、前記開口部にロック可能なラッチ手段と、前記ラッチ手段を少なくともアンロック方向に動くように手動操作する手動操作体とを有し、
前記押釦錠装置は、暗証情報をそれぞれ有する複数の押釦のうち選択された組合せの押釦を押下することにより、解錠すべき暗証が予め設定されるように構成され、
前記手動操作体及び前記押釦錠装置に設けられた解錠作動体は付勢手段により常時施錠方向に姿勢保持され、
前記解錠作動体は施錠時には作動不能で、解錠可能時には解錠方向に作動可能に構成され、
前記解錠すべき暗証の押釦を押下した状態で前記手動操作体を解錠方向に操作したときのみ、前記手動操作体を介して前記解錠作動体が解錠方向に作動するとともに、前記ラッチ手段にアンロック方向の作動力が伝達されて前記開閉体を前記開口部から開放可能に構成されている、什器。
【請求項2】
前記手動操作体は前記解錠作動体に常時押圧されて施錠方向に姿勢保持されている、請求項1に記載の什器。
【請求項3】
前記解錠作動体は、回動主軸とこの回動主軸に連動連結されて直線往復動可能な第1作動杆とからなり、前記回動主軸または前記第1作動杆のいずれか一方もしくは双方は、付勢手段により前記ラッチ手段をロックする方向に付勢され、
前記解錠すべき暗証の押釦を押下した状態で前記手動操作体を解錠方向に操作したとき、前記第1作動杆に常時押圧されて施錠方向に付勢されている前記手動操作体を介して前記ラッチ手段にアンロック方向の作動力が伝達されて前記開閉体を前記開口部から開放可能に構成されている、請求項1または2に記載の什器。
【請求項4】
前記解錠作動体は、回動主軸とこの回動主軸に連動連結されて直線往復動可能な第1作動杆と前記回動主軸に取付けられた第2作動杆とからなり、
前記第2作動杆を介してラッチ手段を備え、
前記回動主軸、前記第1作動杆及び前記第2作動杆の少なくとも1つが付勢手段により前記ラッチ手段をロックする方向に付勢され、
前記解錠すべき暗証の押釦を押下した状態で前記手動操作体を解錠方向に操作したとき、前記少なくとも手動操作体を介して前記第2作動杆に解錠方向の作動力が伝達されて前記開閉体を前記開口部から開放可能に構成されている、請求項1または2に記載の什器。
【請求項5】
前記手動操作体から手を離すと、前記押釦が施錠状態にリセットされるように前記手動操作体と前記押釦錠装置とが連係されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の什器。
【請求項6】
前記ラッチ手段は、前記手動操作体が施錠姿勢に保持された状態で、前記開口部に蹴り込み可能に構成されている、請求項1乃至5のいずれかに記載の什器。
【請求項7】
前記押釦錠装置と手動操作体とがユニットケース内に収納され、このユニットケースが前記開閉体に着脱可能に装着される、請求項1乃至6のいずれかに記載の什器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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