説明

仕切壁をもつ二重管型伝熱装置

【課題】 各エレメントを同一の金型で形成し、量産性の高い仕切壁を持つ二重管型伝熱装置の提供。
【解決手段】 両管を周方向に離間して、2以上に等分し、同一形状の複数の細長いエレメント1を形成する。各エレメント1は、外管の直径に整合する横断面弧状の第1溝部2と、内管の直径に整合する横断面弧状の第2溝部3とを有し、それらの一端縁どうしが断面鈎方に連結される仕切壁4を有する。そして、一方のエレメント1の他端縁が他方のエレメント1の仕切壁4に接続されて、全体が環状に形成され、それらの各接続部が液密に接合され、複数の流路がその仕切壁4により形成される。そして、各流路の端部間が連通手段5、6を介して連通され、第1流体が各流路をU字状に流通するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内管と外管とが同芯に被嵌され且つ、両管の内部に流路を分割する仕切壁を有し、その軸方向両端部が閉塞された二重管型伝熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の仕切壁を有する二重管型伝熱装置は、その外管の端部に一対の出入口が設けられ、内管と外管との間に第1流体が流通し、内管の内側と外管の外側に第2流体が流通して、両流体間に熱交換が行なわれるものである。あるいは、少なくとも一方の管の外側に加熱体が配置される。このような伝熱装置は、ラジエータタンク等に挿入されてオイルクーラに用いられ、或いは改質器、その改質器に付随する脱硫器その他に用いることもできる。
【0003】
下記特許文献1には、オイルクーラとしての二重管型熱交換器が記載され、その内外管の流路を仕切壁によって2分割し、仕切壁の一端部でオイルがUターンする構造のものが記載されている。それにより、オイル流路を長くし、熱交換を促進させている。
この二重管型熱交換器は、内管が円筒状に形成され、外管は2分割されて、その両縁部が半径方向内側に折り曲げられ、仕切壁を形成している。
上記構造に加えて、両管の仕切壁の数をさらに増やし、オイルを蛇行状に流通させることも考えられる。その場合には、内管と外管とを円筒状に形成し、それらの間に等分に仕切壁を配置することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−28968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の仕切壁をもつ二重管型熱交換器で、内部流路が2分割あるいは、多分割されたものは何れも、部品点数が多くなり、多数の金型を必要とする。そのため、コスト高となる欠点がある。さらに、多数の仕切壁を有する二重管型熱交換器では、その仕切壁のシールの信頼性が問題となる。
そこで、本発明はかかる問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、内管の外周に外管が同芯に被嵌され且つ、両管の内部を分割する仕切壁を有し、その軸方向の両端部間が閉塞されて、両管の内部に第1流体が流通し、少なくとも一方の管の外面側に第2流体が流通または、加熱体が配置された仕切壁をもつ二重管型伝熱装置において、
両管が周方向に離間して2以上に等分に、軸線に平行に分割された同一形状の複数の細長いエレメント(1)からなり、
各エレメント(1)は、外管の直径に整合する横断面弧状の第1溝部(2)と、内管の直径に整合する横断面弧状の第2溝部(3)と、それらの一端縁どうしが連結される仕切壁(4)とを有し、
一方のエレメント(1)の他端縁が他方のエレメント(1)の仕切壁(4)に接続されて、全体が環状に形成され、それらの各接続部が液密に接合され、複数の流路がその仕切壁(4)により形成され、
各流路の端部間が連通手段(5)(6)を介し連結され、第1流体(11)が各流路をU字状に流通することを特徴とする仕切壁をもつ二重管型伝熱装置である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の仕切壁をもつ二重管型伝熱装置において、
各エレメント(1)の第1溝部(2)の他端縁が半径方向中心側に折り曲げられた第1縁部(2a)を有し、第2溝部(3)の他端縁が半径方向外側に折り曲げられた第2縁部(3a)を有する仕切壁をもつ二重管型伝熱装置である。
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載の仕切壁をもつ二重管型伝熱装置において、
各エレメントの接触部が互いにろう付けされてなる仕切壁をもつ二重管型伝熱装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の仕切壁をもつ二重管型伝熱装置によれば、同一形状のエレメント1を複数組合わせることにより、伝熱装置を形成できる。そのため、1つの金型で各エレメント1を形成でき、二重管型伝熱装置の主要部を完成できる。従って、低コストで量産性の高い仕切壁をもつ二重管型伝熱装置を提供できる。さらに、各エレメント1は、その継目が伝熱装置の外面に現れるため、各流路間の漏れ検査が容易で、信頼性の高い伝熱装置を提供できる。そして、各流路の端部間が連結され、第1流体が各流路をU字状に流通するため、その流路長が長くなり、熱交換を促進できる。
【0009】
上記構成において、請求項2に記載のように、エレメント1の第1溝部2の縁部に第1縁部2aを形成し、第2溝部3の縁部に第2縁部3aを形成した場合には、各エレメントの接合面を十分確保し、信頼性の高い伝熱装置となる。
上記構成において、請求項3に記載のように、各エレメントの接触部をろう付けした場合には、さらに量産性の高い伝熱装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の仕切壁をもつ二重管型伝熱装置の分解斜視図。
【図2】同組立て説明図。
【図3】同組立て状態を示す横断面図。
【図4】同端蓋の一つを取り除いた斜視説明図。
【図5】同展開図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に図面に基づいて、本発明の実施の形態につき説明する。
この実施例では、4つの同一形状のエレメント1と一対の端蓋7とを具備する。
各エレメント1は、外管の直径に整合する横断面弧状の第1溝部2と、内管の直径に整合する横断面弧状の第2溝部3と、それらの一端どうしが連結される仕切壁4とからなる。そして、第1溝部2と第2溝部3は、それぞれ周方向に外側に延在し、断面鈎型に形成される。1つのエレメント1を除き、他のエレメント1は仕切壁4の長手方向一端部または他端部に連通手段5、6として矩形孔が穿設されている。そして、第1溝部2の端部には、第1縁部2aが半径方向内側に曲折され、第2溝部3の縁部に第2縁部3aが半径方向外側に曲折され、それら全体が帯状金属板のプレス成形体からなる。その材質は、アルミニウム板、ステンレス鋼板、銅板等を使用できる。
【0012】
上下一対の端蓋7は、環状に形成され、その内周縁および外周縁に立ち上げ縁が形成され、その両縁内に第1溝部2、第2溝部3の軸方向両端が嵌着される。上部側の端蓋7には、一対の入口パイプ8、出口パイプ9が連通されている。
【0013】
図2は、本発明の伝熱装置の組立て説明図であり、各エレメント1の第2溝部3の第2縁部3aおよび第1溝部2の第1縁部2aは、隣接する各エレメント1の仕切壁4に、図2のごとく接触する。それぞれの第1溝部2の表面には予めろう材が被覆され、あるいはろう材が塗布され、図3および図4のごとく組立てられる。そして、全体を炉内に挿入し、一体的にろう付けして、その接触部は図3のごとく、ろうフィレット10が形成され、全体が液密に構成される。
【0014】
図4および図5において、一方の入口パイプ8から第1流体11が流入し、4分割された流路内を連通手段5、6を介して、それぞれU字状に流通し、全体として蛇行状に流れて、出口パイプ9からそれが流出する。そして、各管の外周および内周に第2流体として冷却水が流通し、内部の第1流体11との間に熱交換が行なわれる。
なお、本発明の仕切壁を有する二重管型伝熱装置は、オイルクーラに限らず、改質器としても用いることができる。その場合、内管の内側には、燃料電池からの排ガスまたはボイラの排ガスを流通し、内管と外管の間には改質触媒を充填し、その内部に水蒸気を含む原料ガスを流通して、水素リッチな改質ガスを取り出すことができる。各仕切壁の存在により、原料ガスを改質触媒にまんべんなく接触させると共に、その流路長を長くし、水蒸気改質を完全に行うことができる。
【0015】
さらには、本発明の仕切壁を有する二重管型伝熱装置は、改質装置の脱硫器として用いることができる。その場合、二重管型の脱硫器の内側に改質器を配置し、改質器外周の温度を利用して、脱硫器を内管側から加熱し、脱硫剤を有する脱硫器の内部に原料ガスを流通して、それを脱硫することができる。なお脱硫器の熱源としては、ヒータ等の他の熱源を配置し、または排ガスを用いることもできる。
【0016】
(他の実施例)
なお、この実施例では、内管と外管とを4分割したが、それを2分割、3分割、あるいは5分割以上とすることもできる。また、この例では一対の端蓋7を用いたが、それに替えて、第1溝部2または第2溝部3に部分的な蓋上部を突設し、それにより端蓋7を構成しても良い。さらには、端蓋を各流路分に分割したものとし、その分割蓋を各仕切壁間に嵌着して、ろう付けすることもできる。その場合、接合部を外部から目視でき、仕切壁とのろう付けの良否を外部から容易に判定できる。
また、この例では連通手段5、6を各エレメント1の仕切壁4に設けたが、これに替えて、一対の端蓋7にそれぞれ連結用パイプを取り付け、各流路間を連通してもよい。また、連通手段5、6を孔としたが、それに替えて、仕切壁4の端部に欠切部を形成しても良い。
【0017】
実施例では第1縁部2a、第2縁部3aを半径方向に突設したが、それに代えて、それらの縁部を周方向に延在させ、それを隣接するエレメントの第1溝部2または第2溝部3に重ね合わせることもできる。さらには、その重ね合わせ部に段部ができないように、その板厚分だけ第1溝部2、第2溝部3の縁に段付き凹部を形成してもよい。
実施例では、これらの内管および外管を円筒状としたが、それに替えて、多角形状としても良い。
【符号の説明】
【0018】
1 エレメント
2 第1溝部
2a 第1縁部
3 第2溝部
3a 第2縁部
4 仕切壁
【0019】
5 連通手段
6 連通手段
7 端蓋
8 入口パイプ
9 出口パイプ
10 ろうフィレット
11 第1流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管の外周に外管が同芯に被嵌され且つ、両管の内部を分割する仕切壁を有し、その軸方向の両端部間が閉塞されて、両管の内部に第1流体が流通し、少なくとも一方の管の外面側に第2流体が流通または、加熱体が配置された仕切壁をもつ二重管型伝熱装置において、
両管が周方向に離間して2以上に等分に、軸線に平行に分割された同一形状の複数の細長いエレメント(1)からなり、
各エレメント(1)は、実質的に同一形状で、外管の直径に整合する横断面弧状の第1溝部(2)と、内管の直径に整合する横断面弧状の第2溝部(3)と、それらの一端縁どうしが連結される仕切壁(4)とを有し、
一方のエレメント(1)の他端縁が他方のエレメント(1)の仕切壁(4)に接続されて、全体が環状に形成され、それらの各接続部が液密に接合され、複数の流路がその仕切壁(4)により形成され、
各流路の端部間が連通手段(5)(6)を介し連結され、第1流体(11)が各流路をU字状に流通することを特徴とする仕切壁をもつ二重管型伝熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の仕切壁をもつ二重管型伝熱装置において、
各エレメント(1)の第1溝部(2)の他端縁が半径方向中心側に折り曲げられた第1縁部(2a)を有し、第2溝部(3)の他端縁が半径方向外側に折り曲げられた第2縁部(3a)を有する仕切壁をもつ二重管型伝熱装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の仕切壁をもつ二重管型伝熱装置において、
各エレメントの接触部が互いにろう付けされてなる仕切壁をもつ二重管型伝熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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