説明

仕込み用撹拌装置

【課題】 原料を良好に撹拌することができると共に、原料に含まれる繊維質を比較的容易に除去することができる仕込み用撹拌装置を提供する。
【解決手段】 円筒形状の仕込みタンク100の中央部に垂直方向に回転可能に設けられる軸部材20と、軸部材20の上端側に固定されると共に軸部材20の回転方向に対して後方側が下側となるように傾斜する撹拌羽根31を有する第1の撹拌翼30とを具備し、且つ第1の撹拌翼30の撹拌羽根31のそれぞれの表面には、第1の撹拌翼30に対して交差する方向に延びる棒状の撹拌部材32が所定間隔で固定されていると共に、撹拌部材32の下端部側には、軸部材20の回転方向前方に向かって湾曲する湾曲部33が設けられているようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼酎の仕込みに用いられる仕込み用撹拌装置に関し、特に、芋類を原料とする焼酎の二次仕込みに好適に用いられる仕込み用撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
焼酎は、例えば、米、芋等の原料として、麹菌によりデンプン質を糖化させ、この糖分を酵母によってアルコール発酵させることにより造られる。例えば、芋を原料とした焼酎の製造方法としては、まず、一次仕込みとして、米麹に水と酵母を加えて熟成させることにより、米のデンプン質を糖化させると共に、酵母によりこの糖分をアルコール発酵させる、いわゆる並行複発酵により一次もろみを造る。次に、二次仕込みとして、この一次もろみに原料となる破砕した蒸し芋と仕込み水を加え、芋のデンプン質を発酵させて二次もろみを造る。その後、この二次もろみを蒸留し、所定期間貯蔵して熟成させることで焼酎が造られる。
【0003】
ここで、二次仕込みにおいては、もろみを撹拌する必要がある。すなわち、もろみの温度がある一定以上の温度を超えると酵母菌が死滅してしまうため、もろみを撹拌すること等によって冷却して一定の温度以下に維持する必要がある。また、例えば、冷却水等によってもろみを冷却する場合でも、もろみ全体の温度を均一にしておくために撹拌は必要となる。
【0004】
このようなもろみの撹拌を行うために使用可能な装置としては、例えば、原料を投入する容体内に、軸体を回動自在に立設し、この軸体に水平方向に回動する撹拌羽根体を縦多段に設けた清酒醪の製造装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上述した二次仕込みの際に、特許文献1の清酒醪の製造装置等を撹拌装置として用いれば、もろみをある程度は撹拌することはできる。しかしながら、芋類等の繊維質の多い原料を用いた場合、もろみの粘度が比較的高くなるため、このような装置で十分に撹拌するのは難しいという問題がある。
【0006】
また、芋類等を原料として焼酎を製造する場合、原料に含まれる繊維質によってもろみの発酵が妨げられ、発酵に時間がかかってしまう問題がある。さらには、もろみを蒸留する際に、加熱に時間がかかり蒸留効率が低くなってしまうという問題もある。
【0007】
【特許文献1】特開平9−107944号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、原料を良好に撹拌することができると共に、原料に含まれる繊維質を比較的容易に除去することができる仕込み用撹拌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、円筒形状の仕込みタンクの中央部に垂直方向に回転可能に設けられる軸部材と、該軸部材の上端側に固定されると共に前記軸部材の回転方向に対して後方側が下側となるように傾斜する撹拌羽根を有する第1の撹拌翼とを具備し、且つ該第1の撹拌翼の前記撹拌羽根のそれぞれの表面には、当該第1の撹拌翼に対して交差する方向に延びる棒状の撹拌部材が所定間隔で固定されていると共に、該撹拌部材の下端部側には、前記軸部材の回転方向前方に向かって湾曲する湾曲部が設けられていることを特徴とする仕込み用撹拌装置にある。
【0010】
かかる第1の態様では、撹拌部材によって、仕込みタンク内のもろみを良好に撹拌できると共に、原料に含まれる繊維質を比較的容易に取り除くことができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記撹拌部材が、前記撹拌羽根の表面上をスライド可能に固定されていることを特徴とする仕込み用撹拌装置にある。
【0012】
かかる第2の態様では、撹拌部材の位置を容易に移動させることができるため、もろみの量に拘わらず、常に良好にもろみを撹拌することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、各撹拌羽根に固定される前記撹拌部材が、前記軸部材に対して非点対称となる位置に固定されていることを特徴とする仕込み用撹拌装置にある。
【0014】
かかる第3の態様では、各撹拌部材の軌跡が異なるため、もろみがさらに良好に撹拌される。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記軸部材の下端部側に固定されると共に前記軸部材の回転方向に対して前方側が下側になるように傾斜する撹拌羽根を有する少なくとも一つの第2の撹拌翼をさらに具備することを特徴とする仕込み用撹拌装置にある。
【0016】
かかる第4の態様では、もろみ全体を効率的に撹拌することができ、もろみ全体を一定の温度に保持することができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記第1の撹拌翼と前記第2の撹拌翼とは、前記軸部材の回転方向での両者の交差角度が略90°となるように配置されていることを特徴とする仕込み用撹拌装置にある。
【0018】
かかる第5の態様では、もろみをさらに良好に撹拌することができる。
【発明の効果】
【0019】
このような本発明の仕込み用撹拌装置を、焼酎の製造に用いることで、もろみを良好に撹拌することができる。また、繊維質を多く含む材料、例えば、芋類等を原料とした焼酎の製造に用いる場合には、もろみを良好に撹拌すると同時に、撹拌部材によって原料に含まれる繊維質を取り除くことができる。これにより、製造効率を向上することができると共に、良質な焼酎を製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の仕込み用撹拌装置について詳細に説明する。なお、図1は、本発明の一実施形態に係る仕込み用撹拌装置の概略斜視図であり、図2は、その正面図であり、図3は、その平面図である。また、図4は、撹拌部材を説明する概略図である。
【0021】
本発明の仕込み用撹拌装置は、焼酎を製造する際に、略円筒形状を有する仕込み用タンク内に投入された原料を撹拌するためのものであり、特に、繊維質を多く含む材料、例えば、芋類等を原料とした焼酎の製造に好適に用いられるものである。
【0022】
図1〜3に示すように、本実施形態に係る仕込み用撹拌装置1は、固定部材10と、固定部材10に回転可能に保持される軸部材20と、この軸部材20に固定される第1の撹拌翼30及び第2の撹拌翼40と、固定部材10上に設けられて軸部材20を駆動するための駆動手段50とを有する。また、本実施形態の仕込み用撹拌装置1は、仕込みタンク100とは全く別体として形成されており、仕込みタンク100に、取り外し可能に固定されている。
【0023】
具体的には、仕込み用撹拌装置1を構成する固定部材10が、仕込みタンク100の開口中央部を跨いで設けられ、その両端部近傍には水平方向に移動可能に設けられた一対の把持部11を有する。そして、固定部材10の一対の把持部11が仕込みタンク100の外周面を挟み込むことで、仕込み用撹拌装置1が仕込みタンク100に固定されるようになっている。
【0024】
軸部材20は、このように仕込みタンク100に固定された固定部材10に回転可能に保持されている。また、この軸部材20は、仕込みタンク100の中央部に配置され、仕込みタンク100の底面に達しない程度の長さを有する。すなわち、軸部材20は、仕込みタンク100とは接触することなく回転可能に固定部材10に保持されている。
【0025】
また、固定部材10上には、例えば、ギヤードモータ等の駆動手段50が設けられており、軸部材20はこの駆動手段50によって駆動され、所定の回転数で回転するようになっている。
【0026】
第1の撹拌翼30は、軸部材20の上部側に固定され、軸部材20を挟んだ両側にそれぞれ撹拌羽根31を有する。なお、これらの撹拌羽根31は、軸部材20の回転方向に対して、後方側が下側となるように傾斜して設けられている。なお、この傾斜角度は、特に限定されないが、本実施形態では、約45°となるようにしている。
【0027】
また、撹拌羽根31の表面には、第1の撹拌翼30に対して交差する方向に延びる棒状の撹拌部材32が所定間隔でスライド可能に固定されている。本実施形態では、上述したように、撹拌羽根31の傾斜角度が約45°であるため、この撹拌羽根31の表面に固定される各撹拌部材32も、同様の角度で傾斜している。
【0028】
また、軸部材20を挟んだ両側の各撹拌羽根31に固定される各撹拌部材32は、軸部材20を基準として非点対称となる位置に固定されていることが好ましい。すなわち、軸部材20を挟んで両側の各撹拌羽根31に設けられる各撹拌部材32は、それぞれ軸部材20からの距離が一致しないように配置されていることが好ましい。例えば、本実施形態では、一方の撹拌羽根31には5本の撹拌部材32が一定間隔で固定されている。また、他方の撹拌羽根31には4本の撹拌部材32が、第1の撹拌翼30(軸部材20)を180°回転させたときに一方の撹拌羽根31に固定されている5本の撹拌部材32の隙間に対応する位置にくるように一定間隔で配置されて固定されている。
【0029】
さらに、図4に示すように、このような各撹拌部材32の下端部側には、軸部材20の回転方向先端側に向かって湾曲、例えば、本実施形態では、略U字形状に湾曲する湾曲部33が設けられている。この湾曲部33は、詳しくは後述するが、焼酎の原料に含まれる繊維質を捕獲するために設けられている。
【0030】
なお、本実施形態では、第1の撹拌翼30の基端部に、第1の撹拌翼30と軸部材20との角部を塞ぐように撹拌羽根34がさらに設けられている。
【0031】
第2の撹拌翼40は、軸部材20の下端部近傍に固定され、第1の撹拌翼30と同様に、軸部材20を挟んだ両側にそれぞれ撹拌羽根41を有する。ただし、この第2の撹拌翼40の撹拌羽根41は、第1の撹拌翼30の撹拌羽根31とは逆に、軸部材20の回転方向に対して前方側が下側となるように傾斜して設けられている。なお、この傾斜角度は、特に限定されないが、本実施形態では、約45°となるようにしている。
【0032】
また、第2の撹拌翼40は、第1の撹拌翼30と交差する方向で軸部材20に固定されていることが好ましく、特に、軸部材20の回転方向での第1の撹拌翼30と第2の撹拌翼40との交差角度が約90°となっていることが望ましい。
【0033】
そして、焼酎の製造工程における、いわゆる二次仕込みの際に、このような仕込み用撹拌装置1を用いることで、以下に説明するように、仕込みタンク100内のもろみを良好に撹拌することができると共に、原料に含まれる繊維質を良好に除去することができるため、良質な焼酎を製造することができる。
【0034】
上述したように、本発明の仕込み用撹拌装置1は、第1の撹拌翼30の撹拌羽根31が、軸部材20の回転方向に対して後方側が下側となるように傾斜すると共に、第2の撹拌翼40の撹拌羽根41が、軸部材20の回転方向に対して前方側が下側となるように傾斜するように設けられている。このため、軸部材20を所定の方向で回転させることで、もろみは第2の撹拌翼40によって上方に向かう流れが生じる。一方、第1の撹拌翼30によって下方に向かう流れが生じる。すなわち、本発明の仕込み用撹拌装置1によってもろみを撹拌することで、もろみを良好に循環させてもろみ全体の温度を略均一に維持することができるため、発酵効率が向上する。
【0035】
特に、本実施形態では、軸部材20の回転方向での第1の撹拌翼30と第2の撹拌翼40との交差角度が約90°となるようにしたので、もろみを良好に撹拌することができる。また、本実施形態では、第1の撹拌翼30の基端部に設けた撹拌羽根34によってももろみに流れを生じさせているため、もろみをさらに良好に循環させることができる。
【0036】
なお、図示しないが、実際には、仕込みタンク100の外側に、例えば、冷却水を循環させること等によって仕込みタンク100内のもろみを冷却する冷却装置が設けられている。そして、この冷却装置によって仕込みタンク100内のもろみの温度を下げつつ、仕込み用撹拌装置1によってもろみを撹拌することで、もろみ全体の温度を所定温度以下、具体的には、35℃以下の一定の温度に維持させている。
【0037】
なお、この軸部材20(第1の撹拌翼30、第2の撹拌翼40)の回転速度は、比較的遅くすることが好ましく、例えば、本実施形態では、約9(rpm)とした。これにより、もろみが自然な状態でゆっくりと撹拌されるため、発酵が促進され発酵効率がさらに向上する。
【0038】
また、仕込みタンク100内に投入された原料、例えば、サツマイモは、二次仕込みの初期段階では比較的短時間で溶解されるが、サツマイモが溶解されてもろみの粘度が高くなるにつれて、サツマイモは仕込みタンク内でかたまりとなって存在するようになり、サツマイモが溶解される速度は徐々に低下してしまう。しかしながら、本発明の仕込み用撹拌装置1では、第1の撹拌翼30の撹拌羽根31に固定されている複数の撹拌部材32によって、サツマイモのかたまりが細かく砕かれるため、溶解速度の低下を抑えることができる。
【0039】
特に、本実施形態では、各撹拌部材32が、軸部材20を基準として非点対称となる位置に固定されているため、サツマイモのかたまりがより細かく砕かれるため、溶解速度の低下が確実に抑えられる。したがって、二次仕込みにおける製造効率が著しく向上する。
【0040】
さらに、本発明の仕込み用撹拌装置1では、このように二次もろみを造る際に、原料であるサツマイモの繊維質を同時に除去することができる。すなわち、軸部材20を回転させていると、図5に模式的に示すように、サツマイモの繊維質は、第1の撹拌翼30に固定されている複数の撹拌部材32に引っ掛かることで、もろみから実質的に取り除かれる。また、撹拌部材32に引っ掛かった繊維質は、最終的に、撹拌部材32の下端部側に設けられた湾曲部33に集まるため、繊維質の回収も極めて容易に行うことができる。すなわち、撹拌部材33は、上述したように、軸部材20の回転方向に対して後方側が下側となるように傾斜している。このため、撹拌部材32に引っ掛かったサツマイモの繊維質は、軸部材20が回転するに連れて徐々に下方に移動し、最終的に湾曲部33に到達する。そして、撹拌部材33に引っ掛かった繊維質は、最終的に全てこの湾曲部33に集まって保持されるため、繊維質を極めて容易に回収することができる。
【0041】
そして、このように繊維質をもろみから取り除くことにより、もろみの粘度が実質的に低下して流動性が高まるため、もろみをより良好に撹拌して、もろみ全体の温度をさらに均一に維持することができる。また、もろみの流動性が高まることで、原料であるサツマイモがさらに効率的に溶解されるため、製造効率が大幅に向上する。また、その後の蒸留工程においても、二次もろみの取扱いが容易になると共に熱効率が高まるため、製造効率がさらに向上する。また、このように繊維質を取り除いておくことで、焼酎の品質も向上することができる。
【0042】
以上、本発明の仕込み用撹拌装置の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、この実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、上述の実施形態では、第2の撹拌翼40が一段で設けられているが、これに限定されず、例えば、必要に応じて、第2の撹拌翼40を二段で設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る仕込み用撹拌装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る仕込み用撹拌装置の正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る仕込み用撹拌装置の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る撹拌部材の概略図である。
【図5】もろみの撹拌状態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 仕込み用撹拌装置
10 固定部材
11 把持部
20 軸部材
30 第1の撹拌翼
31 撹拌羽根
32 撹拌部材
33 湾曲部
40 第2の撹拌翼
41 撹拌羽根
100 仕込みタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の仕込みタンクの中央部に垂直方向に回転可能に設けられる軸部材と、該軸部材の上端側に固定されると共に前記軸部材の回転方向に対して後方側が下側となるように傾斜する撹拌羽根を有する第1の撹拌翼とを具備し、且つ該第1の撹拌翼の前記撹拌羽根のそれぞれの表面には、当該第1の撹拌翼に対して交差する方向に延びる棒状の撹拌部材が所定間隔で固定されていると共に、該撹拌部材の下端部側には、前記軸部材の回転方向前方に向かって湾曲する湾曲部が設けられていることを特徴とする仕込み用撹拌装置。
【請求項2】
請求項1において、前記撹拌部材が、前記撹拌羽根の表面上をスライド可能に固定されていることを特徴とする仕込み用撹拌装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、各撹拌羽根に固定される前記撹拌部材が、前記軸部材に対して非点対称となる位置に固定されていることを特徴とする仕込み用撹拌装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記軸部材の下端部側に固定されると共に前記軸部材の回転方向に対して前方側が下側になるように傾斜する撹拌羽根を有する少なくとも一つの第2の撹拌翼をさらに具備することを特徴とする仕込み用撹拌装置。
【請求項5】
請求項4において、前記第1の撹拌翼と前記第2の撹拌翼とは、前記軸部材の回転方向での両者の交差角度が略90°となるように配置されていることを特徴とする仕込み用撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−34213(P2006−34213A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221420(P2004−221420)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(595106512)明新工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】