説明

他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造

【課題】 外管に対する内管の位置決めが簡単に行なわれ、これにより、他部材に対する溶接作業を迅速かつ効率的に行なうことができる他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造の提供。
【解決手段】 深絞りプレス成形時にディフューザ1を構成する異径管11の大径側管端に残る母材部11aの一部を外向き係止フランジ11bとして残し、この外向き係止フランジ部11bに遮熱パイプ2の大径側管端を係止させた状態で触媒コンバータ3の外筒31への溶接を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深絞りプレス成形による内管とその外周を覆う外管による二重管の両管端を他部材の外面側に対し溶接により接続するための他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二重管101、102を他部材である接続管体103に対して接続するためには、図4(イ)に示すように、二重管101、102の両管端を重ねた状態で他部材である接続管体103の外側に装着し、二重管101、102の両管端を接続管体に対し溶接104することによって、二重管101、102の両管端部を同時に接続固定するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−276356号公報 (明細書1頁、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二重管を構成する内管101と外管102における両管端の位置決め手段がなかったため、図4(ロ)に示すように、内管101が外管102に対し内側にずれていると、溶接不良が生じるという問題がある。
そこで、溶接不良をなくすためには、溶接時に両管端を一致させる必要があるが、外管102と他部材である接続管体103との間に挟まれる内管101を位置決めすることは困難であると共に、その位置決め状態を維持させた状態で溶接作業を行なう必要があったため、作業が煩雑となって作業効率が悪いという問題点があった。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、溶接不良の発生を防止することができると共に、外管に対する内管の位置決めが簡単に行なわれ、これにより、他部材に対する溶接作業を迅速かつ効率的に行なうことができる他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造は、内管とその外周を覆う外管による二重管の両管端を他部材の外面側に対し溶接により接続するための二重管管端接続部位置決め構造であって、前記内管の管端に外向きに凸部が形成され、前記外管の管端を前記凸部に当接させて係止させた状態で他部材に対して溶接を行なうように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0007】
請求項2記載の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造は、請求項1に記載の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造において、前記内管が深絞りプレス成形により形成され、前記深絞りプレス成形時に前記内管の管端に残る母材の一部を環状の前記凸部として残し、該環状の凸部に前記外管の管端を係止させた状態で他部材への溶接を行なうように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0008】
請求項3記載の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造は、請求項1または2に記載の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造において、前記凸部の突出長さが前記外管の板厚以下であることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造では、上述のように、前記内管の管端に外向きに凸部が形成され、外管の管端を凸部に当接させて係止させた状態で他部材に対して溶接を行なうように構成することで、溶接不良の発生を防止することができると共に、外管に対する内管の位置決めが簡単に行なわれるため、他部材に対する溶接作業を迅速かつ効率的に行なうことができるようになるという効果が得られる。
【0010】
請求項2記載の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造では、上述のように、前記内管が深絞りプレス成形により形成され、深絞りプレス成形時に内管の管端に残る母材の一部を環状の凸部として残し、該環状の凸部に前記外管の管端を係止させた状態で他部材への溶接を行なうように構成することにより、深絞りプレス成形時に内管の管端に残る母材の一部を有効利用することができると共に、凸部が全周に亘る環状に形成されることで、溶接を周方向均一に行なうことができるようになる。
【0011】
請求項3記載の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造では、上述のように、前記凸部の突出長さが前記外管の板厚以下に設定されることにより、二重管における内管と外管の両管端にほぼ均一に溶接ビードをのせることができ、これにより、接続強度を高めることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
この実施例の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造は、請求項1および2に記載の発明に対応する。
まず、この実施例の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1はこの実施例の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造を示す図、図2は内管のプレス成形時の状態を示す斜視図、図3はプレス成形時に内管の管端に残る母材の一部を外向き係止フランジとして切り残す状態を示す断面図である。
この実施例の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造は、ディフューザ(内管)1と、遮熱パイプ(外管)2と、触媒コンバータ(他部材)3と、を備えている。
【0015】
さらに詳述すると、前記ディフューザ1は、異径管11と小径曲管12とで構成されている。
前記異径管11は、図2に示すように、板状の母材から深絞りプレス成形によって形成されるもので、小径側に形成される底部分をカットすると共に、図3に示すように、大径側管端に残る母材部11aの一部を大径側管端に形成される外向き係止フランジ(凸部)11bとして残した状態でカットすることにより形成される。
【0016】
前記小径曲管12は、一方の管端が異径管11の小径側管端の内側に差し込まれた状態で接続されると共に、もう一方の管端側は図示を省略したエキゾーストマニホールドにおける集合パイプの下流側管端に対し遮熱パイプ2と共にフランジ接続されるようになっている。
【0017】
前記遮熱パイプ2は、エンジンから排気された排気ガスの温度が触媒コンバータ3より上流側のディフューザ1内を流れる際に外気温によって低下しないようにその外側を覆って保温する役目をなすもので、前記ディフューザ1における異径管11の大径管端と小径曲管12の上流側管端外周面に両管端をそれぞれ当接させた状態で中間部分に断熱空気層aが形成されるようになっている。
【0018】
そして、遮熱パイプ2の大径側管端をディフューザ1における異径管11の大径管端に形成された外向き係止フランジ11bに係止させることにより、ディフューザ1と遮熱パイプ2による二重管の下流側管端(二重管管端)の位置決めが行なわれるもので、この位置決めされた状態で触媒コンバータ3の外筒31に接続するための溶接が行なわれるようになっている。
【0019】
即ち、前記異径管11の大径側管端は、前記遮熱パイプ2の大径側管端と共に触媒コンバータ3の外筒31に対し溶接により接続される。
なお、前記外向き係止フランジ11の外向き突出長さとしては、溶接ビードb内で溶け込む大きさに設定することが望ましく、このため、この実施例では、遮熱パイプ2の大径側管端部分の板厚以下の長さに設定されている。
【0020】
次に、この実施例の作用・効果を説明する。
この実施例では上述のように、深絞りプレス成形時にディフューザ1を構成する異径管11の大径側管端に残る母材部11aの一部を外向き係止フランジ11bとして残し、この外向き係止フランジ部11bに遮熱パイプ2の大径側管端を係止させた状態で触媒コンバータ3の外筒31への溶接を行なうように構成するようにしたことで、両管端の位置ずれ、特に遮熱パイプ2に対し異径管11が内側にずれることによって生じる溶接不良の発生を防止することができると共に、遮熱パイプ2に対する異径管11の位置決めが簡単に行なわれるため、触媒コンバータ3に対する溶接作業を迅速かつ効率的に行なうことができるようになるという効果が得られる。
【0021】
また、深絞りプレス成形時にディフューザ1の管端に残る母材の一部を係止フランジ11bとして有効利用することができると共に、該係止フランジ11bが全周に亘る環状に形成されることで、溶接を周方向均一に行なうことができるようになる。
【0022】
また、上述のように、前記外向き係止フランジ11bの突出長さが遮熱パイプ2の板厚以下に設定されることにより、異径管11と遮熱パイプ2の大径側両管端にほぼ均一に溶接ビードbをのせることができ、これにより、接続強度を高めることができるようになる。
【0023】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、実施例では、ディフューザ1と遮熱パイプ2による二重管を例にとって説明したが、全ての二重管の管端を他部材の外周に対し溶接固定する場合に適用することができる。
【0024】
また、実施例では、異径管(内管)11における外向き係止フランジ11bの突出長さを遮熱パイプ(外管)2の大径側管端部分の板厚以下の長さに設定する場合を例にとったが、溶接ビードb内で溶け込む程度の長さであれば遮熱パイプ(外管)2の大径側管端部分の板厚より長くすることができる。
【0025】
また、実施例では、係止フランジ11bとして環状に形成したが、内管を構成するディフューザ1のプレス成形時に、該ディフューザ1の管端に凸部を複数個形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この実施例の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造を示す図である。
【図2】内管のプレス成形時の状態を示す斜視図である。
【図3】プレス成形時に内管の管端に残る母材の一部を外向き係止フランジとして切り残す状態を示す断面図である。
【図4】従来例の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ディフューザ(内管)
11 異径管
11a 母材部
11b 外向き係止フランジ(凸部)
12 小径曲管
2 遮熱パイプ(外管)
3 触媒コンバータ(他部材)
31 外筒
a 断熱空気層
b 溶接ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管とその外周を覆う外管による二重管の両管端を他部材の外面側に対し溶接により接続するための二重管管端接続部位置決め構造であって、
前記内管の管端に外向きに凸部が形成され、
前記外管の管端を前記凸部に当接させて係止させた状態で他部材に対して溶接を行なうように構成されていることを特徴とする他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造。
【請求項2】
前記内管が深絞りプレス成形により形成され、
前記深絞りプレス成形時に前記内管の管端に残る母材の一部を環状の前記凸部として残し、
該環状の凸部に前記外管の管端を係止させた状態で他部材への溶接を行なうように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造。
【請求項3】
前記凸部の突出長さが前記外管の板厚以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の他部材への溶接による二重管管端接続部位置決め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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