付着物除去装置
【課題】中心部が非円筒形状となるように巻回された拭き取りシートを、円筒状の巻芯に巻き付け直すことなく容易に収容できるようにした付着物除去装置を提供する。
【解決手段】付着物Pの拭き取りに使用された後で巻回された拭き取りシートSは、収容ユニット20に収容される。巻回された拭き取りシートSの中心部には、軸部材25が挿通されており、拭き取りシートSが引き出されて回転すると、巻回された拭き取りシートSの中心部内を軸部材25が相対的に摺動しながら移動する。
【解決手段】付着物Pの拭き取りに使用された後で巻回された拭き取りシートSは、収容ユニット20に収容される。巻回された拭き取りシートSの中心部には、軸部材25が挿通されており、拭き取りシートSが引き出されて回転すると、巻回された拭き取りシートSの中心部内を軸部材25が相対的に摺動しながら移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、メタルマスク版を用いて印刷配線基板にクリーム半田や部品接着用の接着剤を印刷する技術が知られている。クリーム半田を印刷配線基板上に印刷した後は、特許文献1に示すように、所定回数や所定時間ごとにメタルマスク版の基板側表面にはみ出した半田を不織布で拭き取るようにしている。
【0003】
そして、特許文献2に示すように、半田等の付着物を拭き取った拭き取りシートは、円筒状の巻芯に巻き付けられ、この巻芯の内筒部分が上流側ローラのローラ軸に嵌合されることで、ロール状の拭き取りシートが上流側ローラに取り付けられる。その後、上流側ローラから拭き取りシートを引き出して搬送しつつ、液媒体を介して振動ユニットの振動を拭き取りシート及び付着物に対して伝搬させることで、付着物を剥離させるようにしている。これにより、付着物の拭き取りに使用した拭き取りシートを何度でも再利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−301809号公報
【特許文献2】特開2009−291733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、付着物の拭き取りに使用された拭き取りシートは、必ずしも巻芯に巻き付けられた状態であるとは限らない。つまり、巻芯を用いることなく拭き取りシートのみを巻き取った場合には、拭き取りシートの中心部が自重によって撓んでしまい、非円筒形状(例えば、上下方向が短くなった長孔状)となる。
【0006】
そのため、中心部が非円筒形状となるように巻回された拭き取りシートを上流側ローラに取り付ける場合には、拭き取りシートを巻芯に巻き付け直す作業が別途必要となり、手間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、中心部が非円筒形状となるように巻回された拭き取りシートを、円筒状の巻芯に巻き付け直すことなく容易に収容できるようにした付着物除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、付着物の拭き取りに使用された後で、中心部が非円筒形状となるように巻回された長尺の拭き取りシートから該付着物を除去するための付着物除去装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明は、前記巻回された拭き取りシートを収容する収容ユニットと、
前記収容ユニットから引き出された前記拭き取りシートを搬送しながら搬送下流側でロール状に巻き取るための下流側ローラと、
前記収容ユニットと前記下流側ローラとの間に配設され、振動伝達媒体としての液媒体が貯留された貯留槽と、
前記貯留槽に対向して上方に配設され、前記拭き取りシートに染み込んだ液媒体に対して振動を与える超音波振動子を有する振動ユニットとを備え、
前記収容ユニットは、
前記巻回された拭き取りシートの中心部の内周長さよりも短い外周長さに形成されて該中心部に挿通されるとともに、該中心部の内周面に対して摺動自在な軸部材と、
前記拭き取りシートの幅方向の両端側にそれぞれ立設し、該拭き取りシート及び前記軸部材の幅方向への移動を規制する一対の幅規制板と、
前記収容ユニットにおける搬送下流側に配設され、上面側に前記拭き取りシートが巻き掛けられる下部ローラと、
前記下部ローラの上方に配設され、前記拭き取りシートを該下部ローラ側に押圧させながら挟持する上部ローラとを有していることを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記軸部材には、軸方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記収容ユニットは、前記軸部材の貫通孔に挿通されて該軸部材を支持し且つ該貫通孔の内周面に対して摺動自在な支持軸を有していることを特徴とするものである。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記幅規制板は、前記拭き取りシートの幅方向に移動して、該一対の幅規制板間の距離を調整可能に構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、中心部が非円筒形状となるように巻回された拭き取りシートを、円筒状の巻芯に巻き付け直すことなく収容ユニットに収容して、巻回された拭き取りシートを引き出して搬送することができる。
【0013】
具体的に、従来の付着物除去装置では、中心部が非円筒形状(例えば、拭き取りシートが自重によって撓んで上下方向が短くなった長孔状)となるように巻回された拭き取りシートを上流側ローラに取り付ける場合には、拭き取りシートを巻芯に巻き付け直す作業が別途必要となり、手間がかかってしまうという問題があった。
【0014】
また、巻芯に巻き付け直すことなく、中心部が非円筒形状のままで上流側ローラを挿通させた場合には、拭き取りシートを引き出して搬送している間に、中心部が変形してその内径が徐々に小さくなっていき、最終的に上流側ローラの外周面に絡み付いてしまい、拭き取りシートを引き出すことができなくなるという問題があった。
【0015】
これに対し、本発明では、巻回された拭き取りシートの中心部に軸部材を摺動自在に挿通させているから、拭き取りシートを引き出して搬送している間に、軸部材が中心部内を摺動することで、中心部の内径が小さくなるのを抑制して拭き取りシートをスムーズに引き出すことができる。
【0016】
さらに、拭き取りシートを引き出して搬送している間に、巻回された拭き取りシートが上部ローラ及び下部ローラの間に挟まってしまうのを防止することができる。
【0017】
具体的に、巻回された拭き取りシートの中心部に軸部材を挿通させることなく収容ユニットに収容して、拭き取りシートを引き出して搬送すると、拭き取りシートを引き出す際に、巻回された拭き取りシート全体が持ち上がり、上部ローラ及び下部ローラの間に拭き取りシートの巻回部分(つまり、拭き取りシートが何層にも積層された厚みを有する部分)が挟まってしまい、拭き取りシートが引き出せなくなるおそれがある。
【0018】
これに対し、本発明では、軸部材が、巻回された拭き取りシートの持ち上がりを抑制する重りとして機能するため、巻回された拭き取りシートの姿勢を整えながらスムーズに回転させることができる。また、拭き取りシートの中心部の内径は、軸部材によって所定の大きさに維持されるため、巻回された拭き取りシートが持ち上がった場合でも、上部ローラ及び下部ローラの間に挟まってしまうのを防止することができる。
【0019】
さらに、一対の幅規制板によって拭き取りシート及び軸部材の幅方向への移動を規制しているから、拭き取りシートが幅方向に蛇行するのを抑制してスムーズに搬送することができる。
【0020】
第2の発明によれば、軸部材の貫通孔に支持軸を挿通させ、巻回された拭き取りシート及び軸部材を支持軸で支持するとともに、貫通孔の内周面と支持軸の外周面とを摺動自在としたから、拭き取りシートをスムーズに引き出すことができる。
【0021】
つまり、拭き取りシートを引き出して搬送している間に、中心部が変形してその内径が徐々に小さくなっていき、最終的に軸部材の外周面に絡み付いて拭き取りシートと軸部材とが一体となった場合でも、軸部材の内周面と支持軸の外周面とが摺動自在であるため、巻回された拭き取りシートを引き続き回転させてスムーズに引き出すことができる。
【0022】
第3の発明によれば、一対の幅規制板間の距離を調整可能とすることで、様々な幅の拭き取りシートを収容ユニットに収容することが可能となり、汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態1に係る付着物除去装置の構成を示す正面図である。
【図2】付着物除去装置の構成を示す平面図である。
【図3】収容ユニット周りの構成を示す正面図である。
【図4】巻回された拭き取りシートの下流側が軸部材とともに持ち上がった状態を示す図3相当図である。
【図5】拭き取りシートの中心部の内周面に沿って軸部材が摺動している状態を示す図3相当図である。
【図6】拭き取りシートの中心部の底部に軸部材が位置している状態を示す図3相当図である。
【図7】本実施形態2に係る収容ユニット周りの構成を示す正面図である。
【図8】巻回された拭き取りシートの下流側が持ち上がった状態を示す図7相当図である。
【図9】拭き取りシートの中心部の内周面が軸部材の外周面に沿って摺動している状態を示す図7相当図である。
【図10】拭き取りシートが軸部材に支持された状態を示す図7相当図である。
【図11】その他の実施形態に係る収容ユニットの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る付着物除去装置の構成を示す正面図、図2は平面図である。図1及び図2に示すように、この付着物除去装置10は、付着物Pの拭き取りに使用された拭き取りシートSから付着物Pを除去するものである。
【0026】
具体的に、拭き取りシートSは、メタルマスク版を用いて印刷配線基板にクリーム半田を印刷した際に、メタルマスク版の基板側の表面にはみ出した付着物Pとしてのクリーム半田を拭き取るのに用いられる。なお、本実施形態では、拭き取りシートSとして不織布を用いているが、繊維を織り込んで作成した織物シートを用いても構わない。また、付着物Pの一例として半田を記載しているが、その他の粉状物や粒状物等であってもよい。
【0027】
付着物除去装置10は、巻回された長尺の拭き取りシートSを収容する収容ユニット20と、収容ユニット20から引き出された拭き取りシートSを搬送しながら搬送下流側でロール状に巻き取るための下流側ローラ60と、拭き取りシートSに対して振動伝達媒体としての液媒体を供給する液供給ユニット30と、液媒体を介して拭き取りシートS及び付着物Pに対して振動を与える振動ユニット40と、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を吸引除去する吸引除去ユニット50とを備えている。これらのユニットは、本体架台11上に配置されるとともに、本体カバー15により覆われている。本体カバー15は、図示しない中心軸を中心に回動することで開閉される。
【0028】
拭き取りシートSは、付着物Pの拭き取りに使用された後で付着物Pが付着した面を外側にして巻回されている。巻回された拭き取りシートSの中心部は、非円筒形状となっている。具体的に、拭き取りシートSは、円筒状の巻芯を用いることなく巻き取られており、拭き取りシートSの中心部が自重によって撓んで上下方向が短くなった長孔状となっている。
【0029】
収容ユニット20は、本体架台11の幅方向に間隔をあけて3つ配置されている。収容ユニット20は、本体架台11の幅方向に延びるスライドレール12上に載置されている。スライドレール12は、搬送方向に間隔をあけて2本配置されている。収容ユニット20は、スライドレール12に沿って幅方向に移動可能に構成され、収容ユニット20の位置調整を自由に行うことができる。
【0030】
収容ユニット20は、拭き取りシートSの幅方向の両端側にそれぞれ立設する一対の幅規制板21と、一対の幅規制板21間の上方を覆う開閉蓋22と、搬送下流側に設けられた下部ローラ23と、下部ローラ23の上方に配設された上部ローラ24と、巻回された拭き取りシートSの中心部に挿通される軸部材25とを備えている。
【0031】
幅規制板21の搬送上流側及び下流側の下部位置には、一対の幅規制板21に跨って幅調整軸26が取り付けられている。この幅調整軸26によって、一対の幅規制板21間の距離が設定される。つまり、軸長の異なる幅調整軸26に交換することで、収容ユニット20の収容幅を調整することができ、様々な幅の拭き取りシートSを収容することができる。幅規制板21の上部には、搬送上流側に向かって斜め上方に開口する切欠部21aが形成されている。
【0032】
一対の幅規制板21の間には、巻回された拭き取りシートSが収容されている。拭き取りシートSは、下流側ローラ60の回転駆動に連動して収容ユニット20内で回転しながら引き出されるが、このとき、一対の幅規制板21によって拭き取りシートS及び軸部材25の幅方向への移動が規制される。これにより、拭き取りシートSが幅方向に蛇行するのを抑制できる。
【0033】
幅規制板21の搬送上流側の上部位置には、開閉蓋22の回転中心となる中心軸22aが、一対の幅規制板21に跨って取り付けられている。開閉蓋22の上面には、収容された拭き取りシートSを視認可能な開口孔22bが形成されている。
【0034】
幅規制板21の搬送下流側の上部位置には、一対の幅規制板21に跨って下部ローラ23が取り付けられている。下部ローラ23の上面側には、拭き取りシートSの外周面が巻き掛けられている。
【0035】
下部ローラ23の上方には、上部ローラ24が配設されている。上部ローラ24は、開閉蓋22に取り付けられ、開閉蓋22の開閉動作に連動して、拭き取りシートSを下部ローラ23側に押圧して挟持する閉位置と、押圧を解除する開位置とに位置付けられる。
【0036】
開閉蓋22の上方には、プランジャ29が配設されている。プランジャ29は、本体カバー15に取り付けられ、本体カバー15を閉じたときに開閉蓋22を上方から押圧する。つまり、開閉蓋22の閉位置では、開閉蓋22及び上部ローラ24の自重による押圧力と、プランジャ29による押圧力とが下部ローラ23側に加わることとなる。これにより、下部ローラ23と上部ローラ24とで拭き取りシートSが挟持される。
【0037】
軸部材25は、巻回された拭き取りシートSの中心部の内周長さよりも短い外周長さの円筒状部材で構成されている。軸部材25には、軸方向に貫通する貫通孔25aが形成されている。また、軸部材25は、樹脂材等の摩擦係数の小さな材質の部材で形成されている。これにより、軸部材25は、拭き取りシートSの中心部の内周面に対して摺動自在となっている。なお、本実施形態1では、軸部材25を円柱状部材で構成してもよい。
【0038】
収容ユニット20の搬送下流側の近傍には、終端検出センサ38が設けられている。この終端検出センサ38は、収容ユニット20の下部ローラ23及び上部ローラ24に挟持されていた拭き取りシートSの終端が、下部ローラ23及び上部ローラ24から離脱したことを検出するものである。
【0039】
収容ユニット20から引き出された拭き取りシートSは、搬送下流側に配設された液供給ユニット30の供給パイプ31の上方を通過し、振動ユニット40の上流側下部の湾曲面に沿って巻き掛けられている。そして、振動ユニット40の下流側に配設された位置調整ローラ18の下側から外周面に沿って巻き掛けられている。
【0040】
液供給ユニット30は、拭き取りシートSの幅方向に延びる供給パイプ31を備え、供給パイプ31には、軸方向に間隔をあけて複数の噴射孔(図示省略)が形成されている。液媒体としては、例えばアルコールが用いられる。
【0041】
液供給ユニット30には、液媒体を貯留する貯留タンク80から液媒体が供給される。具体的に、液供給ユニット30と貯留タンク80との間には供給配管81が設けられ、供給配管81には供給ポンプ82が接続されている。そして、供給ポンプ82を駆動させて貯留タンク80内の液媒体を汲み上げることで、供給配管81を介して液供給ユニット30に対して液媒体が供給されるようになっている。
【0042】
貯留タンク80には、液供給ユニット30に接続された供給配管81の他にも、後述する貯留槽41の底板に連通する回収配管83と、後述する分離タンク85の底板に連通する分離配管88とが接続されている。そして、回収配管83及び分離配管88を介してそれぞれ回収された液媒体は、貯留タンク80に貯留され、液供給ユニット30に供給すべく再利用される。
【0043】
振動ユニット40は、液供給ユニット30から供給された液媒体を貯留する貯留槽41に対向して上方に配設され、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体に対して振動を与える振動板45aと、振動板45aの上面に取り付けられた超音波振動子46とを備えている。
【0044】
貯留槽41は、液供給ユニット30から供給された液媒体を貯留するものであり、より詳細には、液媒体を拭き取りシートSに染み込ませたときに、拭き取りシートSで吸収しきれずに表面から漏れ出した液媒体を受けて貯留している。
【0045】
貯留槽41の底板における下流側には、貯留槽41内の液媒体を回収する回収配管83が接続されている。この回収配管83の排出側端部は、貯留タンク80と接続され、貯留槽41内に貯留された液媒体が回収配管83を介して貯留タンク80に排出されるようになっている。
【0046】
振動板45aは、貯留槽41の上方に配設された中空の振動ボックス45の底板で構成されている。振動ボックス45の上流側の下部には、拭き取りシートSを巻き掛ける湾曲面が形成されている。振動ボックス45内には、超音波振動子46が複数配置されている。なお、超音波振動子46の配置は、3つの拭き取りシートSの幅方向全面に振動が均一に伝搬されるように適宜設定される。
【0047】
また、振動ボックス45は、位置調整機構16を介して本体カバー15に取り付けられ、振動板45aの高さ位置を調整できるようになっている。位置調整ローラ18も同様に、位置調整機構17を介して本体カバー15に取り付けられている。ここで、拭き取りシートSは、振動ボックス45の湾曲面に巻き掛けられることで振動板45aに接触し、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を介して振動が伝搬される。なお、位置調整ローラ18の高さ位置を調整することで、拭き取りシートSに染み込んで表面に膜状に存在する液媒体と振動板45aとを接触させるようにしてもよい。
【0048】
超音波振動子46は、振動板45aを厚さ方向に振動させるように動作するものであり、超音波振動子46で発生させた振動が縦方向の振動波となり、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を介して拭き取りシートS及び付着物Pに伝搬される。
【0049】
このとき、拭き取りシートSを伝搬する振動と付着物Pを伝搬する振動との間には、その材質の違いから伝搬速度差による振幅変動が生じる。すなわち、半田等の金属材である付着物Pの方が、不織布である拭き取りシートSよりも振動の伝搬速度が速いため、付着物Pの方が超音波振動による振幅が激しくなる。この振幅変動によって、拭き取りシートSから付着物Pが剥離される。
【0050】
このように、拭き取りシートSに付着した付着物Pを超音波振動させるだけで、付着物Pを拭き取りシートS表面から剥離することができるため、拭き取りシートSを再利用することができる。
【0051】
振動ユニット40で付着物Pが除去された拭き取りシートSは、位置調整ローラ18の下側から外周面に沿って巻き掛けられ、続いて、吸引除去ユニット50の吸引ノズル51の上側から外周面に沿って巻き掛けられている。この吸引除去ユニット50は、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体や、振動ユニット40で剥離した後、拭き取りシートSの搬送途中で表面に再付着した付着物Pを吸引除去するためのものである。なお、拭き取りシート表面の繊維が毛羽立っている場合には、その毛羽立った繊維が引きちぎられて吸引除去される。
【0052】
吸引除去ユニット50は、拭き取りシートSの幅方向に延びる筒状の吸引ノズル51と、吸引ノズル51内の空気を吸引する吸引ポンプ52とを備えている。吸引ノズル51の上側の外周面、すなわち拭き取りシートSが巻き掛けられる面には、軸方向に延びるスリット形状の吸引孔51aが開口している。この吸引孔51aは、軸方向に間隔をあけて複数設けられている。さらに、軸方向に並ぶ吸引孔51aの列が、吸引ノズル51の周方向にも間隔をあけて設けられている。
【0053】
吸引ノズル51は、吸引配管84を介して中空の分離タンク85と接続されている。分離タンク85の上面には排気ダクト86が接続され、底面には分離配管88が接続されている。排気ダクト86には吸引ポンプ52が接続され、この吸引ポンプ52により排気ダクト86から分離タンク85内の空気を吸引することで、分離タンク85内が負圧となる。その結果、吸引配管84を介して吸引ノズル51内の空気が吸引され、吸引孔51aから液媒体及び付着物Pが吸引除去される。
【0054】
分離配管88の排出側端部は、貯留タンク80と接続され、貯留槽41内に貯留された液媒体が分離配管88を介して貯留タンク80に排出されるようになっている。
【0055】
分離タンク85は、吸引ノズル51から吸引した液媒体と付着物Pとを分離させるためのものである。具体的に、分離タンク85内に付着物Pを含んだ液媒体が流入されると、液媒体は分離配管88を介して貯留タンク80に排出される一方、付着物Pは分離タンク85の底板に堆積する。
【0056】
排気ダクト86には、フィルタ機能付きの消音マフラ87が接続されており、空気の吸い込み音を消音して騒音を防止するとともに、液媒体と一緒に吸引した粒子状の付着物Pが排気ダクト86を介して外部環境に排気されないように遮断している。なお、図1に示す例では、吸引ポンプ52の上流側に消音マフラ87を設置しているが、下流側に設置しても構わない。
【0057】
吸引除去ユニット50で乾燥された拭き取りシートSは、本体カバー15に取り付けられた方向変換ローラ55の下側から外周面に沿って巻き掛けられ、下流側ローラ60にロール状に巻き取られる。
【0058】
下流側ローラ60は、軸受部材61によって両端支持されるとともに駆動モータ62に連結されていて、駆動モータ62の回転駆動に連動して、収容ユニット20から引き出した拭き取りシートSを巻き取るように構成されている。下流側ローラ60には、軸方向に間隔をあけてフランジ部63が設けられている。フランジ部63は、収容ユニット20の配置数(本実施形態では3つ)に対応して、下流側ローラ60のローラ軸を3つの巻き取り領域に区画している。
【0059】
−付着物の剥離動作−
次に、拭き取りシートSに付着した付着物Pを付着物除去装置10で剥離するための動作手順について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0060】
まず、本体カバー15を開いた状態とし、付着物Pを拭き取った後で巻回された拭き取りシートSを収容ユニット20に収容する。そして、収容ユニット20から拭き取りシートSを引き出し、吸引除去ユニット50の吸引ノズル51の上側を通過させて下流側ローラ60に巻き付ける。その後、本体カバー15を閉じることで、拭き取りシートSを振動ユニット40の振動ボックス45の湾曲面、位置調整ローラ18、吸引除去ユニット50の吸引ノズル51、方向変換ローラ55にそれぞれ巻き掛ける。
【0061】
次に、駆動モータ62を駆動させて下流側ローラ60を回転駆動させ、収容ユニット20に収容された拭き取りシートSを下流側ローラ60に巻き取っていく。このとき、液供給ユニット30の供給パイプ31から拭き取りシートSに向かって液媒体が供給される。拭き取りシートSに供給された液媒体は、拭き取りシートSに染み込む一方、吸収しきれなかった液媒体は、拭き取りシートS表面から漏れ出して貯留槽41に貯留される。
【0062】
そして、振動ユニット40の超音波振動子46で振動を発生させ、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を介して拭き取りシートS及び付着物Pに振動を伝搬する。ここで、拭き取りシートSを伝搬する振動と付着物Pを伝搬する振動との伝搬速度差により、両者の間には振幅変動が生じる。すなわち、付着物Pの方が激しく振動するため、拭き取りシートS表面から付着物Pが剥離する。
【0063】
次に、振動ユニット40で付着物Pが除去された拭き取りシートSは、吸引除去ユニット50に搬送される。吸引除去ユニット50では、吸引ノズル51から空気を吸引することで、拭き取りシートSに染み込んでいる液媒体や、表面に再付着している付着物Pが吸引除去される。
【0064】
吸引除去ユニット50で乾燥した拭き取りシートSは、下流側ローラ60においてロール状に巻き取られる。このような付着物Pの除去、拭き取りシートSの乾燥、巻き取りを連続して行い、収容ユニット20の搬送下流側の近傍に配設した終端検出センサ38で拭き取りシートSの終端が検出されると、振動ユニット40による付着物Pの剥離作業が停止し、下流側ローラ60に拭き取りシートSが完全に巻き取られて作業が完了する。
【0065】
−拭き取りシートの回転動作及び軸部材の摺動動作−
次に、巻回された拭き取りシートSの収容ユニット20内における回転動作及び軸部材25の摺動動作について、図3〜図6を用いて説明する。まず、図3に示すように、巻回された拭き取りシートSは、収容ユニット20の底板上に載置され、その中心部が自重により撓んで上下方向が短い長孔状となる。中心部の下流側寄りの位置には、軸部材25が挿通されている。
【0066】
拭き取りシートSが引き出されて回転すると、図4に示すように、巻回された拭き取りシートSの下流側が軸部材25とともに持ち上がる。この状態からさらに回転すると、図5に示すように、巻回された拭き取りシートSの中心部の内周面に沿って、軸部材25が摺動しながら落下していく。このように、拭き取りシートSの中心部内を軸部材25が相対的に摺動しながら移動することで、中心部の内径が小さくなるのが抑制される。
【0067】
さらに回転が進むと、図6に示すように、巻回された拭き取りシートSの中心部が上下方向に長い長孔状となり、その中心部の底部に軸部材25が位置している。ここで、軸部材25は、巻回された拭き取りシートSの持ち上がりを抑制する重りとして機能する。そして、図3〜図6に示す拭き取りシートSの回転動作が、その後も連続的に行われる。
【0068】
−実施形態1の効果−
以上のように、本実施形態1に係る付着物除去装置10によれば、中心部が非円筒形状となるように巻回された拭き取りシートSの中心部に軸部材25を摺動自在に挿通させているから、拭き取りシートSを引き出して搬送している間に、軸部材25が中心部内を摺動することで、中心部の内径が小さくなるのを抑制して拭き取りシートSをスムーズに引き出すことができる。これにより、拭き取りシートSを、円筒状の巻芯に巻き付け直すことなく収容ユニット20に収容して、巻回された拭き取りシートSを引き出して搬送することができる。
【0069】
さらに、軸部材25が、巻回された拭き取りシートSの持ち上がりを抑制する重りとして機能するため、巻回された拭き取りシートSの姿勢を整えながらスムーズに回転させることができる。また、拭き取りシートSの中心部の内径は、軸部材25によって所定の大きさに維持されるため、巻回された拭き取りシートSが持ち上がった場合でも、上部ローラ24及び下部ローラ23の間に挟まってしまうのを防止することができる。
【0070】
《実施形態2》
図7は、本実施形態2に係る収容ユニット周りの構成を示す正面図である。前記実施形態1との違いは、拭き取りシートS及び軸部材25を支持軸28で支持するようにした点であるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0071】
図7に示すように、軸部材25には、軸方向に貫通する貫通孔25aが形成されている。軸部材25の貫通孔25aには、支持軸28が挿通されている。支持軸28の外周面は、軸部材25の貫通孔25aの内周面に対して摺動自在となっている。
【0072】
支持軸28は、一対の幅規制板21の上部に形成された切欠部21aによって両端支持されている。これにより、巻回された拭き取りシートS及び軸部材25が、支持軸28によって回転自在に支持される。ここで、巻回された拭き取りシートSは、中心部の内周面が軸部材25の上面側に巻き掛けられて自重により垂れ下がった姿勢となり、中心部が上下方向に長い長孔状となっている。
【0073】
拭き取りシートSが引き出されて回転すると、図8に示すように、巻回された拭き取りシートSの下流側が持ち上がる。この状態からさらに回転すると、図9に示すように、巻回された拭き取りシートSの内周面が軸部材25の外周面に沿って摺動しながら、拭き取りシートSが落下していく。このように、拭き取りシートSの中心部内を軸部材25が相対的に摺動しながら移動することで、中心部の内径が小さくなるのが抑制される。
【0074】
さらに回転が進むと、図10に示すように、巻回された拭き取りシートSは、自重により落下して、中心部の内周面が軸部材25の上面側に巻き掛けられて支持される。そして、図7〜図10に示す拭き取りシートSの回転動作が、その後も連続的に行われる。
【0075】
−実施形態2の効果−
以上のように、本実施形態2に係る付着物除去装置10によれば、軸部材25の貫通孔25aに支持軸28を挿通させ、巻回された拭き取りシートS及び軸部材25を支持軸28で支持するとともに、貫通孔25aの内周面と支持軸28の外周面とを摺動自在としたから、拭き取りシートSをスムーズに引き出すことができる。
【0076】
つまり、拭き取りシートSを引き出して搬送している間に、中心部が変形してその内径が徐々に小さくなっていき、最終的に軸部材25の外周面に絡み付いて拭き取りシートSと軸部材25とが一体となった場合でも、軸部材25の内周面と支持軸28の外周面とが摺動自在であるため、巻回された拭き取りシートSを引き続き回転させてスムーズに引き出すことができる。
【0077】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0078】
図11は、収容ユニットの構成を示す側面図である。図11に示すように、3つの収容ユニット20を貫通するように幅方向に延びるガイド軸27が設けられている。ガイド軸27は、前記実施形態における幅調整軸26の代わりに、幅規制板21の搬送上流側及び下流側の下部位置に取り付けられている。
【0079】
具体的に、幅規制板21には、ガイド孔21bが形成されており、このガイド孔21bにガイド軸27が挿通されている。幅規制板21は、ガイド軸27に沿って拭き取りシートSの幅方向に移動して、一対の幅規制板21間の距離を調整可能に構成されている。このような構成とすれば、様々な幅の拭き取りシートSを収容ユニット20に収容することが可能となり、汎用性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明は、中心部が非円筒形状となるように巻回された拭き取りシートを、円筒状の巻芯に巻き付け直すことなく容易に収容できるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0081】
10 付着物除去装置
20 収容ユニット
21 幅規制板
23 下部ローラ
24 上部ローラ
25 軸部材
25a 貫通孔
28 支持軸
40 振動ユニット
41 貯留槽
46 超音波振動子
60 下流側ローラ
P 付着物
S 拭き取りシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、メタルマスク版を用いて印刷配線基板にクリーム半田や部品接着用の接着剤を印刷する技術が知られている。クリーム半田を印刷配線基板上に印刷した後は、特許文献1に示すように、所定回数や所定時間ごとにメタルマスク版の基板側表面にはみ出した半田を不織布で拭き取るようにしている。
【0003】
そして、特許文献2に示すように、半田等の付着物を拭き取った拭き取りシートは、円筒状の巻芯に巻き付けられ、この巻芯の内筒部分が上流側ローラのローラ軸に嵌合されることで、ロール状の拭き取りシートが上流側ローラに取り付けられる。その後、上流側ローラから拭き取りシートを引き出して搬送しつつ、液媒体を介して振動ユニットの振動を拭き取りシート及び付着物に対して伝搬させることで、付着物を剥離させるようにしている。これにより、付着物の拭き取りに使用した拭き取りシートを何度でも再利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−301809号公報
【特許文献2】特開2009−291733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、付着物の拭き取りに使用された拭き取りシートは、必ずしも巻芯に巻き付けられた状態であるとは限らない。つまり、巻芯を用いることなく拭き取りシートのみを巻き取った場合には、拭き取りシートの中心部が自重によって撓んでしまい、非円筒形状(例えば、上下方向が短くなった長孔状)となる。
【0006】
そのため、中心部が非円筒形状となるように巻回された拭き取りシートを上流側ローラに取り付ける場合には、拭き取りシートを巻芯に巻き付け直す作業が別途必要となり、手間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、中心部が非円筒形状となるように巻回された拭き取りシートを、円筒状の巻芯に巻き付け直すことなく容易に収容できるようにした付着物除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、付着物の拭き取りに使用された後で、中心部が非円筒形状となるように巻回された長尺の拭き取りシートから該付着物を除去するための付着物除去装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明は、前記巻回された拭き取りシートを収容する収容ユニットと、
前記収容ユニットから引き出された前記拭き取りシートを搬送しながら搬送下流側でロール状に巻き取るための下流側ローラと、
前記収容ユニットと前記下流側ローラとの間に配設され、振動伝達媒体としての液媒体が貯留された貯留槽と、
前記貯留槽に対向して上方に配設され、前記拭き取りシートに染み込んだ液媒体に対して振動を与える超音波振動子を有する振動ユニットとを備え、
前記収容ユニットは、
前記巻回された拭き取りシートの中心部の内周長さよりも短い外周長さに形成されて該中心部に挿通されるとともに、該中心部の内周面に対して摺動自在な軸部材と、
前記拭き取りシートの幅方向の両端側にそれぞれ立設し、該拭き取りシート及び前記軸部材の幅方向への移動を規制する一対の幅規制板と、
前記収容ユニットにおける搬送下流側に配設され、上面側に前記拭き取りシートが巻き掛けられる下部ローラと、
前記下部ローラの上方に配設され、前記拭き取りシートを該下部ローラ側に押圧させながら挟持する上部ローラとを有していることを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記軸部材には、軸方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記収容ユニットは、前記軸部材の貫通孔に挿通されて該軸部材を支持し且つ該貫通孔の内周面に対して摺動自在な支持軸を有していることを特徴とするものである。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記幅規制板は、前記拭き取りシートの幅方向に移動して、該一対の幅規制板間の距離を調整可能に構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、中心部が非円筒形状となるように巻回された拭き取りシートを、円筒状の巻芯に巻き付け直すことなく収容ユニットに収容して、巻回された拭き取りシートを引き出して搬送することができる。
【0013】
具体的に、従来の付着物除去装置では、中心部が非円筒形状(例えば、拭き取りシートが自重によって撓んで上下方向が短くなった長孔状)となるように巻回された拭き取りシートを上流側ローラに取り付ける場合には、拭き取りシートを巻芯に巻き付け直す作業が別途必要となり、手間がかかってしまうという問題があった。
【0014】
また、巻芯に巻き付け直すことなく、中心部が非円筒形状のままで上流側ローラを挿通させた場合には、拭き取りシートを引き出して搬送している間に、中心部が変形してその内径が徐々に小さくなっていき、最終的に上流側ローラの外周面に絡み付いてしまい、拭き取りシートを引き出すことができなくなるという問題があった。
【0015】
これに対し、本発明では、巻回された拭き取りシートの中心部に軸部材を摺動自在に挿通させているから、拭き取りシートを引き出して搬送している間に、軸部材が中心部内を摺動することで、中心部の内径が小さくなるのを抑制して拭き取りシートをスムーズに引き出すことができる。
【0016】
さらに、拭き取りシートを引き出して搬送している間に、巻回された拭き取りシートが上部ローラ及び下部ローラの間に挟まってしまうのを防止することができる。
【0017】
具体的に、巻回された拭き取りシートの中心部に軸部材を挿通させることなく収容ユニットに収容して、拭き取りシートを引き出して搬送すると、拭き取りシートを引き出す際に、巻回された拭き取りシート全体が持ち上がり、上部ローラ及び下部ローラの間に拭き取りシートの巻回部分(つまり、拭き取りシートが何層にも積層された厚みを有する部分)が挟まってしまい、拭き取りシートが引き出せなくなるおそれがある。
【0018】
これに対し、本発明では、軸部材が、巻回された拭き取りシートの持ち上がりを抑制する重りとして機能するため、巻回された拭き取りシートの姿勢を整えながらスムーズに回転させることができる。また、拭き取りシートの中心部の内径は、軸部材によって所定の大きさに維持されるため、巻回された拭き取りシートが持ち上がった場合でも、上部ローラ及び下部ローラの間に挟まってしまうのを防止することができる。
【0019】
さらに、一対の幅規制板によって拭き取りシート及び軸部材の幅方向への移動を規制しているから、拭き取りシートが幅方向に蛇行するのを抑制してスムーズに搬送することができる。
【0020】
第2の発明によれば、軸部材の貫通孔に支持軸を挿通させ、巻回された拭き取りシート及び軸部材を支持軸で支持するとともに、貫通孔の内周面と支持軸の外周面とを摺動自在としたから、拭き取りシートをスムーズに引き出すことができる。
【0021】
つまり、拭き取りシートを引き出して搬送している間に、中心部が変形してその内径が徐々に小さくなっていき、最終的に軸部材の外周面に絡み付いて拭き取りシートと軸部材とが一体となった場合でも、軸部材の内周面と支持軸の外周面とが摺動自在であるため、巻回された拭き取りシートを引き続き回転させてスムーズに引き出すことができる。
【0022】
第3の発明によれば、一対の幅規制板間の距離を調整可能とすることで、様々な幅の拭き取りシートを収容ユニットに収容することが可能となり、汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態1に係る付着物除去装置の構成を示す正面図である。
【図2】付着物除去装置の構成を示す平面図である。
【図3】収容ユニット周りの構成を示す正面図である。
【図4】巻回された拭き取りシートの下流側が軸部材とともに持ち上がった状態を示す図3相当図である。
【図5】拭き取りシートの中心部の内周面に沿って軸部材が摺動している状態を示す図3相当図である。
【図6】拭き取りシートの中心部の底部に軸部材が位置している状態を示す図3相当図である。
【図7】本実施形態2に係る収容ユニット周りの構成を示す正面図である。
【図8】巻回された拭き取りシートの下流側が持ち上がった状態を示す図7相当図である。
【図9】拭き取りシートの中心部の内周面が軸部材の外周面に沿って摺動している状態を示す図7相当図である。
【図10】拭き取りシートが軸部材に支持された状態を示す図7相当図である。
【図11】その他の実施形態に係る収容ユニットの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る付着物除去装置の構成を示す正面図、図2は平面図である。図1及び図2に示すように、この付着物除去装置10は、付着物Pの拭き取りに使用された拭き取りシートSから付着物Pを除去するものである。
【0026】
具体的に、拭き取りシートSは、メタルマスク版を用いて印刷配線基板にクリーム半田を印刷した際に、メタルマスク版の基板側の表面にはみ出した付着物Pとしてのクリーム半田を拭き取るのに用いられる。なお、本実施形態では、拭き取りシートSとして不織布を用いているが、繊維を織り込んで作成した織物シートを用いても構わない。また、付着物Pの一例として半田を記載しているが、その他の粉状物や粒状物等であってもよい。
【0027】
付着物除去装置10は、巻回された長尺の拭き取りシートSを収容する収容ユニット20と、収容ユニット20から引き出された拭き取りシートSを搬送しながら搬送下流側でロール状に巻き取るための下流側ローラ60と、拭き取りシートSに対して振動伝達媒体としての液媒体を供給する液供給ユニット30と、液媒体を介して拭き取りシートS及び付着物Pに対して振動を与える振動ユニット40と、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を吸引除去する吸引除去ユニット50とを備えている。これらのユニットは、本体架台11上に配置されるとともに、本体カバー15により覆われている。本体カバー15は、図示しない中心軸を中心に回動することで開閉される。
【0028】
拭き取りシートSは、付着物Pの拭き取りに使用された後で付着物Pが付着した面を外側にして巻回されている。巻回された拭き取りシートSの中心部は、非円筒形状となっている。具体的に、拭き取りシートSは、円筒状の巻芯を用いることなく巻き取られており、拭き取りシートSの中心部が自重によって撓んで上下方向が短くなった長孔状となっている。
【0029】
収容ユニット20は、本体架台11の幅方向に間隔をあけて3つ配置されている。収容ユニット20は、本体架台11の幅方向に延びるスライドレール12上に載置されている。スライドレール12は、搬送方向に間隔をあけて2本配置されている。収容ユニット20は、スライドレール12に沿って幅方向に移動可能に構成され、収容ユニット20の位置調整を自由に行うことができる。
【0030】
収容ユニット20は、拭き取りシートSの幅方向の両端側にそれぞれ立設する一対の幅規制板21と、一対の幅規制板21間の上方を覆う開閉蓋22と、搬送下流側に設けられた下部ローラ23と、下部ローラ23の上方に配設された上部ローラ24と、巻回された拭き取りシートSの中心部に挿通される軸部材25とを備えている。
【0031】
幅規制板21の搬送上流側及び下流側の下部位置には、一対の幅規制板21に跨って幅調整軸26が取り付けられている。この幅調整軸26によって、一対の幅規制板21間の距離が設定される。つまり、軸長の異なる幅調整軸26に交換することで、収容ユニット20の収容幅を調整することができ、様々な幅の拭き取りシートSを収容することができる。幅規制板21の上部には、搬送上流側に向かって斜め上方に開口する切欠部21aが形成されている。
【0032】
一対の幅規制板21の間には、巻回された拭き取りシートSが収容されている。拭き取りシートSは、下流側ローラ60の回転駆動に連動して収容ユニット20内で回転しながら引き出されるが、このとき、一対の幅規制板21によって拭き取りシートS及び軸部材25の幅方向への移動が規制される。これにより、拭き取りシートSが幅方向に蛇行するのを抑制できる。
【0033】
幅規制板21の搬送上流側の上部位置には、開閉蓋22の回転中心となる中心軸22aが、一対の幅規制板21に跨って取り付けられている。開閉蓋22の上面には、収容された拭き取りシートSを視認可能な開口孔22bが形成されている。
【0034】
幅規制板21の搬送下流側の上部位置には、一対の幅規制板21に跨って下部ローラ23が取り付けられている。下部ローラ23の上面側には、拭き取りシートSの外周面が巻き掛けられている。
【0035】
下部ローラ23の上方には、上部ローラ24が配設されている。上部ローラ24は、開閉蓋22に取り付けられ、開閉蓋22の開閉動作に連動して、拭き取りシートSを下部ローラ23側に押圧して挟持する閉位置と、押圧を解除する開位置とに位置付けられる。
【0036】
開閉蓋22の上方には、プランジャ29が配設されている。プランジャ29は、本体カバー15に取り付けられ、本体カバー15を閉じたときに開閉蓋22を上方から押圧する。つまり、開閉蓋22の閉位置では、開閉蓋22及び上部ローラ24の自重による押圧力と、プランジャ29による押圧力とが下部ローラ23側に加わることとなる。これにより、下部ローラ23と上部ローラ24とで拭き取りシートSが挟持される。
【0037】
軸部材25は、巻回された拭き取りシートSの中心部の内周長さよりも短い外周長さの円筒状部材で構成されている。軸部材25には、軸方向に貫通する貫通孔25aが形成されている。また、軸部材25は、樹脂材等の摩擦係数の小さな材質の部材で形成されている。これにより、軸部材25は、拭き取りシートSの中心部の内周面に対して摺動自在となっている。なお、本実施形態1では、軸部材25を円柱状部材で構成してもよい。
【0038】
収容ユニット20の搬送下流側の近傍には、終端検出センサ38が設けられている。この終端検出センサ38は、収容ユニット20の下部ローラ23及び上部ローラ24に挟持されていた拭き取りシートSの終端が、下部ローラ23及び上部ローラ24から離脱したことを検出するものである。
【0039】
収容ユニット20から引き出された拭き取りシートSは、搬送下流側に配設された液供給ユニット30の供給パイプ31の上方を通過し、振動ユニット40の上流側下部の湾曲面に沿って巻き掛けられている。そして、振動ユニット40の下流側に配設された位置調整ローラ18の下側から外周面に沿って巻き掛けられている。
【0040】
液供給ユニット30は、拭き取りシートSの幅方向に延びる供給パイプ31を備え、供給パイプ31には、軸方向に間隔をあけて複数の噴射孔(図示省略)が形成されている。液媒体としては、例えばアルコールが用いられる。
【0041】
液供給ユニット30には、液媒体を貯留する貯留タンク80から液媒体が供給される。具体的に、液供給ユニット30と貯留タンク80との間には供給配管81が設けられ、供給配管81には供給ポンプ82が接続されている。そして、供給ポンプ82を駆動させて貯留タンク80内の液媒体を汲み上げることで、供給配管81を介して液供給ユニット30に対して液媒体が供給されるようになっている。
【0042】
貯留タンク80には、液供給ユニット30に接続された供給配管81の他にも、後述する貯留槽41の底板に連通する回収配管83と、後述する分離タンク85の底板に連通する分離配管88とが接続されている。そして、回収配管83及び分離配管88を介してそれぞれ回収された液媒体は、貯留タンク80に貯留され、液供給ユニット30に供給すべく再利用される。
【0043】
振動ユニット40は、液供給ユニット30から供給された液媒体を貯留する貯留槽41に対向して上方に配設され、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体に対して振動を与える振動板45aと、振動板45aの上面に取り付けられた超音波振動子46とを備えている。
【0044】
貯留槽41は、液供給ユニット30から供給された液媒体を貯留するものであり、より詳細には、液媒体を拭き取りシートSに染み込ませたときに、拭き取りシートSで吸収しきれずに表面から漏れ出した液媒体を受けて貯留している。
【0045】
貯留槽41の底板における下流側には、貯留槽41内の液媒体を回収する回収配管83が接続されている。この回収配管83の排出側端部は、貯留タンク80と接続され、貯留槽41内に貯留された液媒体が回収配管83を介して貯留タンク80に排出されるようになっている。
【0046】
振動板45aは、貯留槽41の上方に配設された中空の振動ボックス45の底板で構成されている。振動ボックス45の上流側の下部には、拭き取りシートSを巻き掛ける湾曲面が形成されている。振動ボックス45内には、超音波振動子46が複数配置されている。なお、超音波振動子46の配置は、3つの拭き取りシートSの幅方向全面に振動が均一に伝搬されるように適宜設定される。
【0047】
また、振動ボックス45は、位置調整機構16を介して本体カバー15に取り付けられ、振動板45aの高さ位置を調整できるようになっている。位置調整ローラ18も同様に、位置調整機構17を介して本体カバー15に取り付けられている。ここで、拭き取りシートSは、振動ボックス45の湾曲面に巻き掛けられることで振動板45aに接触し、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を介して振動が伝搬される。なお、位置調整ローラ18の高さ位置を調整することで、拭き取りシートSに染み込んで表面に膜状に存在する液媒体と振動板45aとを接触させるようにしてもよい。
【0048】
超音波振動子46は、振動板45aを厚さ方向に振動させるように動作するものであり、超音波振動子46で発生させた振動が縦方向の振動波となり、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を介して拭き取りシートS及び付着物Pに伝搬される。
【0049】
このとき、拭き取りシートSを伝搬する振動と付着物Pを伝搬する振動との間には、その材質の違いから伝搬速度差による振幅変動が生じる。すなわち、半田等の金属材である付着物Pの方が、不織布である拭き取りシートSよりも振動の伝搬速度が速いため、付着物Pの方が超音波振動による振幅が激しくなる。この振幅変動によって、拭き取りシートSから付着物Pが剥離される。
【0050】
このように、拭き取りシートSに付着した付着物Pを超音波振動させるだけで、付着物Pを拭き取りシートS表面から剥離することができるため、拭き取りシートSを再利用することができる。
【0051】
振動ユニット40で付着物Pが除去された拭き取りシートSは、位置調整ローラ18の下側から外周面に沿って巻き掛けられ、続いて、吸引除去ユニット50の吸引ノズル51の上側から外周面に沿って巻き掛けられている。この吸引除去ユニット50は、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体や、振動ユニット40で剥離した後、拭き取りシートSの搬送途中で表面に再付着した付着物Pを吸引除去するためのものである。なお、拭き取りシート表面の繊維が毛羽立っている場合には、その毛羽立った繊維が引きちぎられて吸引除去される。
【0052】
吸引除去ユニット50は、拭き取りシートSの幅方向に延びる筒状の吸引ノズル51と、吸引ノズル51内の空気を吸引する吸引ポンプ52とを備えている。吸引ノズル51の上側の外周面、すなわち拭き取りシートSが巻き掛けられる面には、軸方向に延びるスリット形状の吸引孔51aが開口している。この吸引孔51aは、軸方向に間隔をあけて複数設けられている。さらに、軸方向に並ぶ吸引孔51aの列が、吸引ノズル51の周方向にも間隔をあけて設けられている。
【0053】
吸引ノズル51は、吸引配管84を介して中空の分離タンク85と接続されている。分離タンク85の上面には排気ダクト86が接続され、底面には分離配管88が接続されている。排気ダクト86には吸引ポンプ52が接続され、この吸引ポンプ52により排気ダクト86から分離タンク85内の空気を吸引することで、分離タンク85内が負圧となる。その結果、吸引配管84を介して吸引ノズル51内の空気が吸引され、吸引孔51aから液媒体及び付着物Pが吸引除去される。
【0054】
分離配管88の排出側端部は、貯留タンク80と接続され、貯留槽41内に貯留された液媒体が分離配管88を介して貯留タンク80に排出されるようになっている。
【0055】
分離タンク85は、吸引ノズル51から吸引した液媒体と付着物Pとを分離させるためのものである。具体的に、分離タンク85内に付着物Pを含んだ液媒体が流入されると、液媒体は分離配管88を介して貯留タンク80に排出される一方、付着物Pは分離タンク85の底板に堆積する。
【0056】
排気ダクト86には、フィルタ機能付きの消音マフラ87が接続されており、空気の吸い込み音を消音して騒音を防止するとともに、液媒体と一緒に吸引した粒子状の付着物Pが排気ダクト86を介して外部環境に排気されないように遮断している。なお、図1に示す例では、吸引ポンプ52の上流側に消音マフラ87を設置しているが、下流側に設置しても構わない。
【0057】
吸引除去ユニット50で乾燥された拭き取りシートSは、本体カバー15に取り付けられた方向変換ローラ55の下側から外周面に沿って巻き掛けられ、下流側ローラ60にロール状に巻き取られる。
【0058】
下流側ローラ60は、軸受部材61によって両端支持されるとともに駆動モータ62に連結されていて、駆動モータ62の回転駆動に連動して、収容ユニット20から引き出した拭き取りシートSを巻き取るように構成されている。下流側ローラ60には、軸方向に間隔をあけてフランジ部63が設けられている。フランジ部63は、収容ユニット20の配置数(本実施形態では3つ)に対応して、下流側ローラ60のローラ軸を3つの巻き取り領域に区画している。
【0059】
−付着物の剥離動作−
次に、拭き取りシートSに付着した付着物Pを付着物除去装置10で剥離するための動作手順について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0060】
まず、本体カバー15を開いた状態とし、付着物Pを拭き取った後で巻回された拭き取りシートSを収容ユニット20に収容する。そして、収容ユニット20から拭き取りシートSを引き出し、吸引除去ユニット50の吸引ノズル51の上側を通過させて下流側ローラ60に巻き付ける。その後、本体カバー15を閉じることで、拭き取りシートSを振動ユニット40の振動ボックス45の湾曲面、位置調整ローラ18、吸引除去ユニット50の吸引ノズル51、方向変換ローラ55にそれぞれ巻き掛ける。
【0061】
次に、駆動モータ62を駆動させて下流側ローラ60を回転駆動させ、収容ユニット20に収容された拭き取りシートSを下流側ローラ60に巻き取っていく。このとき、液供給ユニット30の供給パイプ31から拭き取りシートSに向かって液媒体が供給される。拭き取りシートSに供給された液媒体は、拭き取りシートSに染み込む一方、吸収しきれなかった液媒体は、拭き取りシートS表面から漏れ出して貯留槽41に貯留される。
【0062】
そして、振動ユニット40の超音波振動子46で振動を発生させ、拭き取りシートSに染み込んだ液媒体を介して拭き取りシートS及び付着物Pに振動を伝搬する。ここで、拭き取りシートSを伝搬する振動と付着物Pを伝搬する振動との伝搬速度差により、両者の間には振幅変動が生じる。すなわち、付着物Pの方が激しく振動するため、拭き取りシートS表面から付着物Pが剥離する。
【0063】
次に、振動ユニット40で付着物Pが除去された拭き取りシートSは、吸引除去ユニット50に搬送される。吸引除去ユニット50では、吸引ノズル51から空気を吸引することで、拭き取りシートSに染み込んでいる液媒体や、表面に再付着している付着物Pが吸引除去される。
【0064】
吸引除去ユニット50で乾燥した拭き取りシートSは、下流側ローラ60においてロール状に巻き取られる。このような付着物Pの除去、拭き取りシートSの乾燥、巻き取りを連続して行い、収容ユニット20の搬送下流側の近傍に配設した終端検出センサ38で拭き取りシートSの終端が検出されると、振動ユニット40による付着物Pの剥離作業が停止し、下流側ローラ60に拭き取りシートSが完全に巻き取られて作業が完了する。
【0065】
−拭き取りシートの回転動作及び軸部材の摺動動作−
次に、巻回された拭き取りシートSの収容ユニット20内における回転動作及び軸部材25の摺動動作について、図3〜図6を用いて説明する。まず、図3に示すように、巻回された拭き取りシートSは、収容ユニット20の底板上に載置され、その中心部が自重により撓んで上下方向が短い長孔状となる。中心部の下流側寄りの位置には、軸部材25が挿通されている。
【0066】
拭き取りシートSが引き出されて回転すると、図4に示すように、巻回された拭き取りシートSの下流側が軸部材25とともに持ち上がる。この状態からさらに回転すると、図5に示すように、巻回された拭き取りシートSの中心部の内周面に沿って、軸部材25が摺動しながら落下していく。このように、拭き取りシートSの中心部内を軸部材25が相対的に摺動しながら移動することで、中心部の内径が小さくなるのが抑制される。
【0067】
さらに回転が進むと、図6に示すように、巻回された拭き取りシートSの中心部が上下方向に長い長孔状となり、その中心部の底部に軸部材25が位置している。ここで、軸部材25は、巻回された拭き取りシートSの持ち上がりを抑制する重りとして機能する。そして、図3〜図6に示す拭き取りシートSの回転動作が、その後も連続的に行われる。
【0068】
−実施形態1の効果−
以上のように、本実施形態1に係る付着物除去装置10によれば、中心部が非円筒形状となるように巻回された拭き取りシートSの中心部に軸部材25を摺動自在に挿通させているから、拭き取りシートSを引き出して搬送している間に、軸部材25が中心部内を摺動することで、中心部の内径が小さくなるのを抑制して拭き取りシートSをスムーズに引き出すことができる。これにより、拭き取りシートSを、円筒状の巻芯に巻き付け直すことなく収容ユニット20に収容して、巻回された拭き取りシートSを引き出して搬送することができる。
【0069】
さらに、軸部材25が、巻回された拭き取りシートSの持ち上がりを抑制する重りとして機能するため、巻回された拭き取りシートSの姿勢を整えながらスムーズに回転させることができる。また、拭き取りシートSの中心部の内径は、軸部材25によって所定の大きさに維持されるため、巻回された拭き取りシートSが持ち上がった場合でも、上部ローラ24及び下部ローラ23の間に挟まってしまうのを防止することができる。
【0070】
《実施形態2》
図7は、本実施形態2に係る収容ユニット周りの構成を示す正面図である。前記実施形態1との違いは、拭き取りシートS及び軸部材25を支持軸28で支持するようにした点であるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0071】
図7に示すように、軸部材25には、軸方向に貫通する貫通孔25aが形成されている。軸部材25の貫通孔25aには、支持軸28が挿通されている。支持軸28の外周面は、軸部材25の貫通孔25aの内周面に対して摺動自在となっている。
【0072】
支持軸28は、一対の幅規制板21の上部に形成された切欠部21aによって両端支持されている。これにより、巻回された拭き取りシートS及び軸部材25が、支持軸28によって回転自在に支持される。ここで、巻回された拭き取りシートSは、中心部の内周面が軸部材25の上面側に巻き掛けられて自重により垂れ下がった姿勢となり、中心部が上下方向に長い長孔状となっている。
【0073】
拭き取りシートSが引き出されて回転すると、図8に示すように、巻回された拭き取りシートSの下流側が持ち上がる。この状態からさらに回転すると、図9に示すように、巻回された拭き取りシートSの内周面が軸部材25の外周面に沿って摺動しながら、拭き取りシートSが落下していく。このように、拭き取りシートSの中心部内を軸部材25が相対的に摺動しながら移動することで、中心部の内径が小さくなるのが抑制される。
【0074】
さらに回転が進むと、図10に示すように、巻回された拭き取りシートSは、自重により落下して、中心部の内周面が軸部材25の上面側に巻き掛けられて支持される。そして、図7〜図10に示す拭き取りシートSの回転動作が、その後も連続的に行われる。
【0075】
−実施形態2の効果−
以上のように、本実施形態2に係る付着物除去装置10によれば、軸部材25の貫通孔25aに支持軸28を挿通させ、巻回された拭き取りシートS及び軸部材25を支持軸28で支持するとともに、貫通孔25aの内周面と支持軸28の外周面とを摺動自在としたから、拭き取りシートSをスムーズに引き出すことができる。
【0076】
つまり、拭き取りシートSを引き出して搬送している間に、中心部が変形してその内径が徐々に小さくなっていき、最終的に軸部材25の外周面に絡み付いて拭き取りシートSと軸部材25とが一体となった場合でも、軸部材25の内周面と支持軸28の外周面とが摺動自在であるため、巻回された拭き取りシートSを引き続き回転させてスムーズに引き出すことができる。
【0077】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0078】
図11は、収容ユニットの構成を示す側面図である。図11に示すように、3つの収容ユニット20を貫通するように幅方向に延びるガイド軸27が設けられている。ガイド軸27は、前記実施形態における幅調整軸26の代わりに、幅規制板21の搬送上流側及び下流側の下部位置に取り付けられている。
【0079】
具体的に、幅規制板21には、ガイド孔21bが形成されており、このガイド孔21bにガイド軸27が挿通されている。幅規制板21は、ガイド軸27に沿って拭き取りシートSの幅方向に移動して、一対の幅規制板21間の距離を調整可能に構成されている。このような構成とすれば、様々な幅の拭き取りシートSを収容ユニット20に収容することが可能となり、汎用性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明は、中心部が非円筒形状となるように巻回された拭き取りシートを、円筒状の巻芯に巻き付け直すことなく容易に収容できるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0081】
10 付着物除去装置
20 収容ユニット
21 幅規制板
23 下部ローラ
24 上部ローラ
25 軸部材
25a 貫通孔
28 支持軸
40 振動ユニット
41 貯留槽
46 超音波振動子
60 下流側ローラ
P 付着物
S 拭き取りシート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着物の拭き取りに使用された後で、中心部が非円筒形状となるように巻回された長尺の拭き取りシートから該付着物を除去するための付着物除去装置であって、
前記巻回された拭き取りシートを収容する収容ユニットと、
前記収容ユニットから引き出された前記拭き取りシートを搬送しながら搬送下流側でロール状に巻き取るための下流側ローラと、
前記収容ユニットと前記下流側ローラとの間に配設され、振動伝達媒体としての液媒体が貯留された貯留槽と、
前記貯留槽に対向して上方に配設され、前記拭き取りシートに染み込んだ液媒体に対して振動を与える超音波振動子を有する振動ユニットとを備え、
前記収容ユニットは、
前記巻回された拭き取りシートの中心部の内周長さよりも短い外周長さに形成されて該中心部に挿通されるとともに、該中心部の内周面に対して摺動自在な軸部材と、
前記拭き取りシートの幅方向の両端側にそれぞれ立設し、該拭き取りシート及び前記軸部材の幅方向への移動を規制する一対の幅規制板と、
前記収容ユニットにおける搬送下流側に配設され、上面側に前記拭き取りシートが巻き掛けられる下部ローラと、
前記下部ローラの上方に配設され、前記拭き取りシートを該下部ローラ側に押圧させながら挟持する上部ローラとを有していることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記軸部材には、軸方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記収容ユニットは、前記軸部材の貫通孔に挿通されて該軸部材を支持し且つ該貫通孔の内周面に対して摺動自在な支持軸を有していることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記幅規制板は、前記拭き取りシートの幅方向に移動して、該一対の幅規制板間の距離を調整可能に構成されていることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項1】
付着物の拭き取りに使用された後で、中心部が非円筒形状となるように巻回された長尺の拭き取りシートから該付着物を除去するための付着物除去装置であって、
前記巻回された拭き取りシートを収容する収容ユニットと、
前記収容ユニットから引き出された前記拭き取りシートを搬送しながら搬送下流側でロール状に巻き取るための下流側ローラと、
前記収容ユニットと前記下流側ローラとの間に配設され、振動伝達媒体としての液媒体が貯留された貯留槽と、
前記貯留槽に対向して上方に配設され、前記拭き取りシートに染み込んだ液媒体に対して振動を与える超音波振動子を有する振動ユニットとを備え、
前記収容ユニットは、
前記巻回された拭き取りシートの中心部の内周長さよりも短い外周長さに形成されて該中心部に挿通されるとともに、該中心部の内周面に対して摺動自在な軸部材と、
前記拭き取りシートの幅方向の両端側にそれぞれ立設し、該拭き取りシート及び前記軸部材の幅方向への移動を規制する一対の幅規制板と、
前記収容ユニットにおける搬送下流側に配設され、上面側に前記拭き取りシートが巻き掛けられる下部ローラと、
前記下部ローラの上方に配設され、前記拭き取りシートを該下部ローラ側に押圧させながら挟持する上部ローラとを有していることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記軸部材には、軸方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記収容ユニットは、前記軸部材の貫通孔に挿通されて該軸部材を支持し且つ該貫通孔の内周面に対して摺動自在な支持軸を有していることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記幅規制板は、前記拭き取りシートの幅方向に移動して、該一対の幅規制板間の距離を調整可能に構成されていることを特徴とする付着物除去装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−52328(P2013−52328A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190808(P2011−190808)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(591230675)株式会社サワーコーポレーション (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(591230675)株式会社サワーコーポレーション (9)
【Fターム(参考)】
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