説明

代掻き作業機

【課題】畦もしくは畦際の斜面上に載置されたり、トラクタに牽引されて畦の斜面を下る際にレベラが上方に向かって回動してもレベラを元の整地姿勢に戻すことができる代掻き作業機の提供。
【解決手段】操作ロッド1bを動作させてレベラ5を整地姿勢と土引き作業姿勢とに切換自在な土寄せ操作装置1とを備えた代掻き作業機10において、土寄せ操作装置1に、整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動したレベラ5に押圧されることにより、レベラ5を整地姿勢に戻る方向に向かって回動させる付勢力をレベラ5に加える引っ張りコイルバネ1jを有したレベラ姿勢制御部1hを設ける。これにより、畦もしくは畦際の斜面上に載置されたり、トラクタに牽引されて畦の斜面を下る際に上方に回動したレベラ5は、その泥土面が水平になるに連れて引っ張りコイルバネ1jの付勢力により整地姿勢に戻されるので、代掻き作業機1を畦際まで近づけることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラクタの後部に装着され、圃場を耕耘し耕土表面を均す代掻き作業機に関し、特に代掻き作業機が畦際から代掻き作業を行う際のレベラの姿勢制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ後部の3点リンク機構に装着され、圃場を耕耘する耕耘ロータと、この耕耘ロータの後方にて圃場の耕土表面(泥面)を均す整地体(エプロン及びレベラ)とを有する代掻き作業機が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の代掻き作業機の整地体6は、耕耘ロータカバー51の後端に水平方向の第1整地体回動軸62により上下回動自在に設けられた第1整地体(エプロン)60と、この第1整地体(エプロン)60後端に水平方向の第2整地体回動軸63により上下回動自在に設けられた第2整地体(レベラ)61とを備え、耕耘ロータ5で砕土された泥土を鎮圧均平する。この整地体6の姿勢制御はトップマスト2部分に設けられた整地体操作レバー22と、この整地体操作レバー22と整地体6とを接続する操作ロッドとを有する土寄せ操作装置によって行われる。
【0004】
特許文献1の図1、図2に示すように、操作ロッドは上下2段とされ、上側操作ロッドと下側操作ロッドとの継ぎ手部分が、トップマスト2の後部から後方に向かって斜め上方に延びた揺動アームによって回動自在に支持される。整地体6の姿勢制御を行う図示しないバネが上側操作ロッドの上部側に沿って配される。そして、整地体操作レバー22により操作ロッドをトップマスト2側に向かって引き込み動作させると整地体6は代掻き作業を行うための整地姿勢(第2整地体(レベラ)61の上下方向の回動がフリーな状態となる回動自由位置のこと)をとり、操作ロッドを整地体6側に繰り出し動作させると整地体6は土引き作業姿勢(第2整地体(レベラ)61が上下方向に立った状態)をとるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−125381号公報(段落0016、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の代掻き作業機を用いて畦際の代掻き作業を行う場合、代掻き作業機はトラクタの3点リンク機構の油圧揚力により上方に回動させられた状態のまま、トラクタの後退により畦際に近づけられる。畦際に達したら代掻き作業機は3点リンク機構により下方に向けて回動されて、整地体6は畦の上面もしくは畦の斜面に着地することになる。
しかしながら、第2整地体(レベラ)61は、代掻き作業を行うために整地姿勢とされているので、畦の上面もしくは畦の斜面に着地した際に上方に向かって回動し(跳ね上げられ)、第1整地体(エプロン)60の上で倒立する虞がある(本願の図5(c)参照)。
また、畦の上面もしくは畦の斜面に着地した際に上方に向かって回動しなくても、第2整地体(レベラ)61はトラクタの牽引により畦の斜面を下る際に上方に向かって回動する虞がある。
第2整地体(レベラ)61が上方に向かって回動して第1整地体(エプロン)60の上に載った状態では、耕耘ロータ5を回転させてトラクタを前進走行させても第2整地体(レベラ)61では耕土表面を均平にすることはできないことになる。従って、そのままの状態で代掻き作業を行うと第1整地体(エプロン)60のみでの代掻き作業となり、整地、均平が不十分となってしまう。
【0007】
本発明は上記背景より、畦もしくは畦際の斜面上に載置されたり、トラクタに牽引されて畦の斜面を下る際に上方に向かって回動したレベラを元の整地姿勢に戻すことができる代掻き作業機を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明の代掻き作業機は、トラクタの後部にトップマストを介して装着され、前記トラクタからの動力を受けて水平軸回りに回転する耕耘ロータとその後方に配されるレベラと、前記トップマストの後部から後方に延びた揺動アームとその揺動アームに回動自在に支持され、前記トップマストと前記レベラとを接続する操作ロッドとを有し、前記操作ロッドを動作させて前記レベラを整地姿勢と土引き作業姿勢とに切換自在な土寄せ操作装置とを備えた代掻き作業機において、
前記土寄せ操作装置に、前記整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動した前記レベラに押圧されることにより、前記レベラを前記整地姿勢に戻る方向に向かって回動させる付勢力を前記レベラに加える付勢部材を有したレベラ姿勢制御手段が備えられていることを構成要件とする。
【0009】
前記のように整地姿勢とされているレベラは、上下方向の回動がフリーな状態となっているので、トラクタの3点リンク機構により畦の上面もしくは畦の斜面に載置されたり、トラクタに牽引されて畦の斜面を下る際に上方に向かって回動してエプロンに載ったままとなってしまうことがある。レベラが整地姿勢にあるときの上方への回動を規制することなく、そのレベラが上方に向かって回動した際の回動量に応じてレベラを整地姿勢に戻す力を生じさせてその力をレベラに加えることで、上方に向かって回動したレベラを整地姿勢に戻すことが可能となる。そこで、土寄せ操作作業装置に、整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動したレベラに押圧されることにより、レベラを整地姿勢に戻る方向に向かって回動させる付勢力をレベラに加える付勢部材を有したレベラ姿勢制御手段を備えることでレベラが接する泥土面が水平になればレベラを元の整地姿勢に戻すことが可能となる。その結果として、代掻き作業機を畦際に近づけてレベラが畦上に乗り上げた状態から代掻き作業を開始したとしても上方に向かって回動したレベラを下方に向かって回動させて元の整地姿勢に戻すことができるので、所望の代掻き作業を行うことができる。
【0010】
操作ロッドは、その上部側(トップマスト部分)に沿って配された図示しない圧縮コイルバネにより、動作(トップマスト側への引き込み動作及びレベラ側への繰り出し動作)することが可能とされる。この操作ロッドの動作(引き込み、繰り出し動作)を切換えるのは、手動の操作レバーが用いられる場合と、リモコン操作によるモータ(電動モータ、電動油圧モータ、油圧モータ等)が用いられる場合とがある。操作レバーもしくはモータはトップマスト部分において操作ロッドの上部側に接続されて操作ロッドの動作(引き込み、繰り出し動作)を切換えることで、レベラは整地姿勢と土引き作業姿勢とに切り換えられる。
【0011】
レベラを整地姿勢に戻す方向に向かって回動させる付勢力をレベラに加えるとは、レベラに付勢力を直接的もしくは間接的に加えることであり、付勢力をレベラそのものに加える場合(直接的)と、付勢力を操作ロッドに加えて動作(繰り出し動作)させることでレベラを整地姿勢に戻す場合(間接的)とがある(請求項2)。
【0012】
レベラを整地姿勢に戻す方向に向かって回動させる付勢力をレベラに加える付勢部材としては、操作ロッドの長さ方向に沿って配置すれば泥土の付着防止や破損防止につながることから、例えばバネ部材(引っ張りコイルバネ、圧縮コイルバネ、薄板バネ)、シリンダ(ガス、オイル)、ゴム等が適切である。これらの何れかを単独もしくは組み合わせて用いるのは、任意である。
【0013】
付勢部材として引っ張りコイルバネ、圧縮コイルバネを用いる場合、そのバネ定数は、レベラの上方への回動を規制することなく、また、レベラが上方に向かって回動した際の回動量に応じてレベラを整地姿勢に戻す力を生じるように適宜設定される。
また、引っ張りコイルバネ、圧縮コイルバネの線径、外径、自由高は、任意である。
【0014】
付勢部材の付勢力をレベラに直接的に加える場合にあっては、付勢部材に引っ張りコイルバネを用いた方が圧縮コイルバネを用いた場合よりも構造が簡素化される点で有利である。
そこで、レベラ姿勢制御手段は、操作ロッドの下端部とレベラ上面との間に水平軸回りに回動自在に設けられた回動部材と、この回動部材と操作ロッドとの間に架設された付勢部材(引っ張りコイルバネ)とを有している。そして、回動部材は、その回動軸を挟んで機体の進行方向前側(トラクタ側)に付勢部材(引っ張りコイルバネ)の一端部が係止され、また、機体の進行方向後側(反トラクタ側)に整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動したレベラが当接する当接部が形成されていることで(請求項3)、整地姿勢にあるレベラを上方へ回動させることができ、しかも、レベラが整地姿勢から上向きに所定角度を超えて上方に向かって回動した際の回動量に応じてレベラを整地姿勢に戻す力を発生させることが可能となる。
【0015】
操作ロッドの下端部とレベラ上面との間に回動部材が水平軸回りに回動自在に設けられるとは、操作ロッドの下端部とレベラ上面とは互いに水平軸回りに回動自在に接続されており、その回動軸を回動中心軸とする回動部材が操作ロッドの下端部とレベラ上面との接合部分であるヒンジ部に設けられることを意味する。また、この回動部材と操作ロッドとの間に架設された付勢部材(引っ張りコイルバネ)は、その一端部が回動部材の進行方向前側(トラクタ側)に係止され、他端部が操作ロッドの長さ方向中間部側に係止される。
回動部材の進行方向後側(反トラクタ側)に形成された当接部に、整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動したレベラが当接するとは、レベラが所定角度を超えて上向きに回動しなければ当接部とレベラとは接しないということであり、整地姿勢にあるレベラに対して回動部材から付勢力が加わることはない。
なお、付勢部材の付勢力をレベラに直接的に加える場合において、付勢部材に引っ張りコイルバネと圧縮コイルバネのうちどちらかを用いるかは、任意である。
また、回動部材を回動させる引っ張りコイルバネの代わりに、ねじりコイルバネ、ダブルトーションバネを用いて回動部材を回動させることが可能である。
【0016】
また、付勢部材の付勢力をレベラに間接的に加える場合、すなわち付勢力を操作ロッドに加える場合にあっては、付勢部材に圧縮コイルバネを用い方が引っ張りコイルバネを用いた場合よりも構造が簡素化される点で有利である。
そこで、レベラ姿勢制御手段は、揺動アームと操作ロッドとの間に両端部が回動自在に架設されたリンク部材と、このリンク部材の長さ方向に沿って配され、一端部が操作ロッドにより抜け止めされた付勢部材(圧縮コイルバネ)とを有している。さらに、リンク部材は、その長さ方向中間部に整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動したレベラによって操作ロッドと共に付勢部材(圧縮コイルバネ)の他端部を圧縮する係止部を有していることで(請求項4)、整地姿勢にあるレベラを上方へ回動させることができ、しかも、レベラが整地姿勢から上向きに所定角度を超えて上方に向かって回動した際の回動量に応じて操作ロッドを整地姿勢に戻す力、言い換えればレベラを整地姿勢に戻す力を発生させることが可能となる。
【0017】
スイングアームと操作ロッドとの間にリンク部材の両端部が回動自在に架設されるとは、リンク部材の両端部がそれぞれ揺動アームと操作ロッドとに回動自在に接続されることで揺動アーム及び操作ロッド、つまりレベラの動作にリンク部材が追従でき、かつ、それらの動作を規制するものではないことを意味する。また、このリンク部材の長さ方向に沿って配された付勢部材(圧縮コイルバネ)は、その一端部(下端部)が操作ロッドにより下方への抜け止めがなされ、他端部(上端部)はフリーとされ、整地姿勢にあるレベラが上向きに所定角度を超えて回動した際にリンク部材の係止部に当接して付勢部材(圧縮コイルバネ)を圧縮する。すなわち、レベラが上向きに回動した際に所定角度を超えなければ、係止部と付勢部材(圧縮コイルバネ)とは接することがなく、付勢部材(圧縮コイルバネ)は圧縮されないので、整地姿勢にあるレベラに対して操作ロッドから付勢力が加わることはない。
なお、付勢部材の付勢力をレベラに間接的に加える場合において、付勢部材に引っ張りコイルバネと圧縮コイルバネのうちどちらかを用いるかは、任意である。
【発明の効果】
【0018】
土寄せ操作装置に、整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動したレベラに押圧されることにより、レベラを整地姿勢に戻る方向に向かって回動させる付勢力をレベラに加える付勢部材を有したレベラ姿勢制御手段を備えたので、上方に回動してエプロンに載ったレベラを下方に回動させて元の整地姿勢に戻すことが可能となる。
この結果、レベラは上方に回動してもレベラが接する泥土面が水平になれば元の整地姿勢に戻るので、代掻き作業機を圃場の一番うしろとなる畦際に着けることが可能となり、畦際の代掻きを十分行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】付勢部材として引っ張りコイルバネを有したレベラ姿勢制御手段が操作ロッドに沿って配設された代掻き作業機において、(a)は作業機本体に接続されている延長作業機を折り畳み、格納した様子を示した側面図であり、レベラが整地姿勢と土引き作業姿勢(図中1点鎖線で示す)にある状態を示し、(b)は折り畳んだ延長作業機を省略した側面図であり、レベラが整地姿勢にある状態と跳ね上げられた状態を示している。
【図2】図1(a)に示す延長作業機を展開させた代掻き作業機の背面図である。
【図3】(a)は図1、図2のレベラ姿勢制御手段の側断面図、(b)はストッパ(回動部材)の斜視図である。
【図4】図3(a)の背面図である。
【図5】圧縮コイルバネを有したレベラ姿勢制御手段を操作ロッドとスイングアームとの間に架設した状態を示した側面図であり、(a)はレベラが土引き作業姿勢にある状態、(b)はレベラが整地姿勢にある状態、(c)はレベラが上方に跳ね上げられた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0021】
図1(a)、(b)はトラクタ20の後部にトップマスト11を介して装着され、トラクタ20からの動力を受けて水平軸回りに回転する耕耘ロータ6とその後方に配されるレベラ5と、トップマスト11の後部から後方に延びたスイングアーム(揺動アーム)1aとそのスイングアーム1aに回動自在に支持され、トップマスト11とレベラ5とを接続する操作ロッド1bとを有し、操作ロッド1bを動作させてレベラ5を整地姿勢と土引き作業姿勢とに切換自在な土寄せ操作装置1とを備えた代掻き作業機(以下、作業機)10において、
土寄せ操作装置1に、整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動したレベラ5に押圧されることにより、レベラ5を整地姿勢に戻る方向に向かって回動させる付勢力をレベラ5に加える引っ張りコイルバネ(付勢部材)1jを有したレベラ姿勢制御部1h(レベラ姿勢制御手段)が備えられた作業機10を示している。
【0022】
作業機10の本体10Aは図1(a)に示すようにトラクタ20後部のトップリンクとロアリンクからなる3点リンクヒッチ機構に連結されるトップマスト11と、ロアリンク連結部12を備え、この3点リンクヒッチ機構を介してトラクタ20の後部に昇降可能に装着される。トップマスト11の下端部には、トラクタ20のPTO出力軸にユニバーサルジョイント、伝動シャフト等を有するジョイント軸を介して連結されるギアボックス13が配置され、ギアボックス13から本体10Aの幅方向に伝動フレーム14と支持フレーム15が架設される(図2参照)。PTO出力軸からの動力はギアボックス13のPIC入力軸13aに伝達され、PIC入力軸13aで受けた動力は伝動フレーム14の内部を挿通する伝動シャフトに伝達される。
【0023】
伝動フレーム14の先端部にはチェーン伝動ケース16が垂下する形で固定され、支持フレーム15の先端にはチェーン伝動ケース16に対向する端部カバー17が固定される。このチェーン伝動ケース16と端部カバー17との間に耕耘ロータ6のロータリ軸7が水平軸回りに回転自在に架設される。チェーン伝動ケース16とロータリ軸7間にはチェーンが張架され、チェーンを通じて伝動シャフトの動力がロータリ軸7に伝達される。シールドカバー2はその両端部の端板21、21においてチェーン伝動ケース16と端部カバー17に接合される。
【0024】
ロータリ軸7の外周には周方向に適度な間隔を置いて耕耘爪8が突設され、ロータリ軸7と耕耘爪8から耕耘ロータ6が構成される。耕耘爪8はロータリ軸7の軸方向には互いに干渉しない程度の間隔を置いて配置される。ロータリ軸7の軸方向に隣接する耕耘爪8、8は例えば軸の中心に関して互いに角度が付いて配列し、耕耘ロータ6の全体では耕耘爪8の先端部が図1(a)に2点鎖線で示す回転軌跡を描く。
【0025】
伝動フレーム14と支持フレーム15の下には耕耘爪8の回転範囲を覆い、作業機10の本体10Aを土砂から保護するシールドカバー2が配置される(図2参照)。シールドカバー2は図2に示すようにその上面(外周面)に突設された連結材2aに、伝動フレーム14と支持フレーム15の下に突設された下部ブラケット14a、15aが接合されることにより両フレーム14、15に支持される。
【0026】
シールドカバー2の後部には圃場の耕土表面を均す整地板3が水平軸回りに回動自在に接続される。整地体3は、シールドカバー2の後部に水平軸回りに回動自在に接続されたエプロン4と、このエプロン4の後部に水平軸回りに回動自在に接続されたレベラ5とを有する。この整地体3の姿勢制御はトップマスト11部分に設けられた図示しないモータと、このモータと整地体3とを接続する操作ロッド1bを有する土寄せ操作装置1によって行われる。なお、土寄せ操作装置1についての説明は後述する。
【0027】
図2は本体10Aの幅方向両側に折り畳み自在に連結された延長作業機30を展開した場合の様子を示している。
【0028】
延長作業機30は図2に示すように展開時に耕耘ロータ6と同時に回転する耕耘ロータ34とその上方を覆うシールドカバー31と、シールドカバー31の幅方向両側に位置する端板32(図1(a)参照)を持ち、端板32において本体10Aの端板21に展開と折り畳みが自在な状態に連結される。延長作業機30は例えば図1(a)に示すように進行方向に対して鉛直方向側へ傾斜した軸の回りに回転自在に本体10Aに連結される。延長作業機30の耕耘ロータ34は展開時に本体10Aの耕耘ロータ6のロータリ軸7にクラッチを介して連結されることにより耕耘ロータ6からの動力を受ける。
【0029】
延長作業機30はその端板32の上部側に突設されたブラケット33において、本体10Aにおける端板21の上部側の後方寄りの位置に突設されたブラケット22にピン23等により連結されることにより展開と格納が自在な状態に連結される。延長作業機30の展開状態と格納状態はそれぞれの状態を保持する拘束装置35によって拘束される。
【0030】
図2に示すように本体10Aの後方には圃場の泥面を均す整地板3が接続されるが、延長作業機30の後方には、その展開状態で本体10Aの整地板3に連続し得る整地板36が接続される。整地板36は、シールドカバー31の後部に水平軸回りに回動自在に接続されたエプロン37と、このエプロン37の後部に水平軸回りに回動自在に接続されたレベラ38とを有する。また、延長作業機30の整地板36の幅方向外側には、作業機10の後方に存在する泥水や藁等の浮遊物を作業機10の幅方向中央部側へ押し流す補助整地板39が連結される。
【0031】
ここで、土寄せ操作装置1について説明を行う。
図1(b)に示すように操作ロッド1bは上下2段とされ、上側操作ロッド1b1と下側操作ロッド1b2の継ぎ手部分が、トップマスト11の後部から機体後方に向かって斜め上方に延びたスイングアーム(揺動アーム)1aによって回動自在(曲折自在)に支持される。トップマスト11側に配される上側操作ロッド1b1には丸パイプ材が用いられるのに対し、レベラ5側に配される下側操作ロッド1b2は、進行方向前側(トラクタ側)に向かって開口したコ型のチャンネル材が用いられ、その内部に後述する引っ張りコイルバネ1jが架設される。
【0032】
上側操作ロッド1b1には、整地体3の姿勢制御を行う図示しない圧縮コイルバネがその長さ方向に配されており、操作ロッド1bの、トップマスト11側への引き込み動作及びレベラ5側への繰り出し動作が可能とされている。この操作ロッド1bの動作(引き込み、繰り出し動作)の切換えは、トップマスト11に配された図示しない電動モータにより行われる。
【0033】
上側操作ロッド1b1と電動モータとは、トップマスト11に揺動自在に支持された揺動部材1dを介して接続される。揺動部材1dには、操作ロッド1bの上端部のロック部1cを摺接移動させる係合孔1eが形成されており、電動モータにより揺動部材1dを揺動させて係合孔1eの形状に沿ってロック部1cを摺接移動させることで、操作ロッド1bの動作(引き込み、繰り出し動作)が切り換えられ、レベラ5及びレベラ38を整地姿勢と土引き作業姿勢とに切換えることが可能とされる。この場合、電動モータを作動させて操作ロッド1aをトップマスト11側に向かって引き込み動作させるとレベラ5及びレベラ38は代掻き作業を行うための整地姿勢(レベラ5及びレベラ38の上下方向の回動がフリーな状態となる回動自由位置のこと)をとり、操作ロッド1bをレベラ5側に向かって繰り出し動作させるとレベラ5及びレベラ38は土引き作業姿勢(図1(a)中、1点鎖線で示すようにレベラ5が上下方向に立った状態)をとる。
【0034】
図1〜図4に示すように操作ロッド1bの下端部、すなわち下側操作ロッド1b2の下端部はレベラ5上面のヒンジ部5aにより機体幅方向両側から挟み込まれた状態で水平軸回りに回動自在に接続される。この下側操作ロッド1b2の下端部とヒンジ部5aとはピン5bにより接続され、そのピン5bに近接してレベラ姿勢制御部(レベラ姿勢制御手段)1hが配される。
【0035】
レベラ姿勢制御部1hは、ピン5bを回動中心軸とするストッパ(回転部材)1iと、このストッパ1i及び操作ロッド1bの間に架設された引っ張りコイルバネ(付勢部材)1jを有する。
【0036】
ストッパ1iは、下側操作ロッド1b2の下端部とヒンジ部5aとの間に配されるものであって、その長さ方向中間部にピン5bが挿通されるピン孔1kが穿設される。このピン孔1kよりも進行方向前側(トラクタ側)かつ上方側には、引っ張りコイルバネ1jの下端部が係止される係止部1mが配され、また、進行方向後側(反トラクタ側)かつ下方側には、整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動したレベラ5が当接する当接部1nが配される。この当接部1nは、レベラ5が所定角度を超えて上向きに回動しなければレベラ5には接することはなく、整地姿勢にあるレベラ5に対して付勢力を加えることはない。また、引っ張りコイルバネ1jの上端部は操作ロッド1aの長さ方向中間部側に設けられた係止ピン1oに係止される。
【0037】
これにより、整地姿勢にあるレベラ5はレベラ5が接する泥土面に応じて上方へ回動することができ、しかも、レベラ5が整地姿勢から上向きに所定角度を超えて上方に向かって回動した際にはレベラ5に押圧されてストッパ1iが回動し、その回動したストッパ1iにより引っ張りコイルバネ1jが引っ張られることでレベラ5を整地姿勢に戻す力(付勢力)がレベラ5の回動量に比例して発生し、その力が当接部1nからレベラ5に整地姿勢に戻す力として加えられる。レベラ5の接している泥土面によりレベラ5を上向きに回動させる力が加えられている間はレベラ5を整地姿勢に戻す力がレベラ5に加え続けられる。
【0038】
従って、レベラ5は、畦もしくは畦際の斜面上に載置されたり、トラクタ20に牽引されて畦の斜面を下る際に上方に向かって回動してエプロン4上に載ってしまうことがあっても、レベラ5の接している泥土面が水平になるに連れて跳ね上げられた状態から元の整地姿勢に戻される。つまり、上方に向かって回動したレベラ5を下方に向かって回動させて元の整地姿勢に戻すことができるので、代掻き作業機10を圃場の一番うしろとなる畦際に着けることが可能となり、畦際の代掻きを十分行うことができるようになる。
【0039】
次に、圧縮コイルバネを用いたレベラ姿勢制御部1hについての説明を行う。
図5(a)〜(c)に示すように、このレベラ姿勢制御部1hは、スイングアーム(揺動アーム)1aと下側操作ロッド1b2との間に両端部が回動自在に架設されたリンク部材1pと、このリンク部材1pの長さ方向に沿って配され、一端部が下側操作ロッド1b2により抜け止めされた圧縮コイルバネ(付勢部材)1qとを有している。これは、図5(a)に示すようにレベラ5が土引き作業姿勢にあったり、図5(b)に示すようにレベラ5が整地姿勢にあっても、リンク部材1pはスイングアーム1a及び下側操作ロッド1b2、つまりはレベラ5の動作に追従して揺動自在とされ、それらの動作を規制することがないことを意味している。
【0040】
さらに、リンク部材1pは、その長さ方向中間部に整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動したレベラ5によって上方に向かって押圧された操作ロッド1bと共に圧縮コイルバネ1qを圧縮する係止部1rを有している。すなわち、圧縮コイルバネ1qは、その下端部が操作ロッド1bにより下方への抜け止めがなされ、上端部はフリーとされ、図5(c)に示すように整地姿勢にあるレベラ5が上向きに所定角度を超えて回動した際に下側操作ロッド1b2がトップマスト11側に引き込み動作されることでその上端部がリンク部材1pの係止部1rに当接して圧縮される。
【0041】
すなわち、レベラ5が上向きに回動した際に所定角度を超えなければ、圧縮コイルバネ1qは係止部1rとは接することがなく、圧縮されもしないので、整地姿勢にあるレベラ5に対して下側操作ロッド1b2から付勢力が加わることはない。これに対し、整地姿勢にあるレベラ5が上向きに所定角度を超えて回動した際には下側操作ロッド1b2がトップマスト11側に引き込み動作されることで圧縮コイルバネ1qの上端部がリンク部材1pの係止部1rに当接し圧縮されることで、レベラ5が整地姿勢から上向きに所定角度を超えて上方に向かって回動した際の回動量に応じて下側操作ロッド1b2を整地姿勢に戻す力、言い換えればレベラ5を整地姿勢に戻す力を発生させることが可能となる。レベラ5が接している泥土面の形状によりレベラ5を上向きに回動させる力が加えられている間はレベラ5を整地姿勢に戻す力がレベラ5に加え続けられる。
【0042】
従って、レベラ5は、畦もしくは畦際の斜面上に載置されたり、トラクタ20に牽引されて畦の斜面を下る際に上方に向かって回動してエプロン4上に載ってしまうことがあっても、レベラ5の接している泥土面が水平になるに連れて跳ね上げられた状態から元の整地姿勢に戻される。つまり、上方に向かって回動したレベラ5を元の整地姿勢に戻すことができるので、代掻き作業機10を圃場の一番うしろとなる畦際に着けることが可能となり、畦際の代掻きを十分行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0043】
1……土寄せ操作装置、1a……スイングアーム(揺動アーム)、1b……操作ロッド、1b1……上側操作ロッド、1b2……下側操作ロッド、1c……ロック部、1d……揺動部材、1e……係合孔、

1h……レベラ姿勢制御部(レベラ姿勢制御手段)、1i……ストッパ(回動部材)、1j……引っ張りコイルバネ(付勢部材)、1k……ピン孔、1m……係止部、1n……当接部、1o……係止ピン、1p……リンク部材、1q……圧縮コイルバネ、1r……係止部、

2……シールドカバー、2a……連結材、21……端板、22……ブラケット、23……ピン、
3……整地板、4……エプロン、5……レベラ、5a……ヒンジ部、5b……ピン、
6……耕耘ロータ、7……ロータリ軸、8……爪、

10……代掻き作業機、10A……本体、11……トップマスト、12……ロアリンク連結部、13……ギアボックス、13a……PIC入力軸、
14……伝動フレーム、14a……下部ブラケット、
15……支持フレーム、15a……下部ブラケット、
16……チェーン伝動ケース、17……端部カバー、
20……トラクタ、
30……延長作業機、31……シールドカバー、32……端板、33……ブラケット、34……耕耘ロータ、35……拘束装置、36……整地板、37……エプロン、38……レベラ、39……補助整地板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後部にトップマストを介して装着され、前記トラクタからの動力を受けて水平軸回りに回転する耕耘ロータとその後方に配されるレベラと、
前記トップマストの後部から後方に延びた揺動アームとその揺動アームに回動自在に支持され、前記トップマストと前記レベラとを接続する操作ロッドとを有し、前記操作ロッドを動作させて前記レベラを整地姿勢と土引き作業姿勢とに切換自在な土寄せ操作装置とを備えた代掻き作業機において、
前記土寄せ操作装置に、前記整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動した前記レベラに押圧されることにより、前記レベラを前記整地姿勢に戻る方向に向かって回動させる付勢力を前記レベラに加える付勢部材を有したレベラ姿勢制御手段が備えられていることを特徴とする代掻き作業機。
【請求項2】
前記レベラ姿勢制御手段の前記付勢部材による付勢力は、前記レベラに直接的、もしくは間接的に加えられることを特徴とする請求項1に記載の代掻き作業機。
【請求項3】
前記レベラ姿勢制御手段は、前記操作ロッドの下端部と前記レベラ上面との間に水平軸回りに回動自在に設けられた回動部材と、前記操作ロッド及び前記回動部材の間に架設された付勢部材とを有し、
前記回動部材は、その回動軸を挟んで機体の進行方向前側に前記付勢部材の一端部が係止され、機体の進行方向後側に整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動した前記レベラが当接する当接部が形成されていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の代掻き作業機。
【請求項4】
前記レベラ姿勢制御手段は、前記揺動アームと前記操作ロッドとの間に両端部が回動自在に架設されたリンク部材と、前記リンク部材の長さ方向に沿って配され、一端部が前記操作ロッドにより抜け止めされた前記付勢部材とを有し、
前記リンク部材は、その長さ方向中間部に整地姿勢から上向きに所定角度を超えて回動した前記レベラによって前記操作ロッドと共に前記付勢部材の他端部を圧縮する係止部を有していることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の代掻き作業機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−193757(P2010−193757A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40921(P2009−40921)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】