説明

代謝制御の工学設計

【課題】代謝産物及び代謝産物流速の調節制御下で細胞の異種分子を生産する方法を提供する。
【解決手段】代謝産物及び代謝産物流速の調節制御下で細胞の異種分子を生産する方法をその特徴とする。該方法は、異種ポリペプチド及び異種代謝産物の合成を高めることができる。具体的には、生産物がイソプレノイドがリコピン、β−カロテン、アスタキサンチン、またはそれらの前駆体の1つであり、イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ、1−デオキシキシルロースー5−リン酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸シンターゼの遺伝子を大腸菌に導入することにより生産される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代謝産物及び代謝産物流速の調節制御下で細胞の異種分子を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組換DNA技術の利用により、宿主細胞を工学設計し、ポリペプチドや二次代謝産物のような所望の化合物を生産することが可能になっている。工学設計された細胞におけるポリペプチドの大規模生産により、製薬的用途のタンパク質及び工業的用途の酵素が生産される。二次代謝産物は、その生物学的及び医薬としての重要性で長く知られている天然由来の産物である。そのような分子の構造が本来複雑であるために、従来の化学合成では、化合物を調製するために多大な努力や高価な前駆体及び補因子の使用をしばしば必要とする。近年、細胞における異種タンパク質の発現は、安価な開始物質から代謝産物を生産する、微生物における異種生合成経路の工学設計を促進した。この方法で、ポリケチド、β−ラクタム系抗生物質、モノテルペン、ステロイド及び芳香族を始めとする様々な化合物が生産されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、一部において、二次代謝産物(例えばアセチルリン酸)の濃度により調節されるプロモーターを使用したポリペプチド(例えば生合成酵素)の調節的発現により、異種ポリペプチド及び異種代謝産物の生産が高められるという発見に基づいている。用語「異種」とは、技術を用いて導入されるポリペプチド又は代謝産物のことを指す。異種ポリペプチド又は代謝産物は、天然に存在する内因性物質と同一であってもよい。用語「代謝産物」とは、1又は複数の生化学反応の産物である有機化合物のことを指す。代謝産物はそれ自体他の反応のための前駆体であってもよい。二次代謝産物は、別の生化学反応に由来する代謝産物である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、1つの態様では、本発明は、プロモーターと、異種ポリペプチドをコードする核酸配列とを含む核酸配列を有する細菌宿主細胞をその特徴とする。
細菌宿主細胞の例としては、エシェリシア コリ(Escherichia coli)、バチルス サブチリス(Bacillus subutilis)、サルモネラ チフィムリウム(Salmonella typhimurimum)、アグロバクテリウム
チュメファシエンス(Agrobacterium
tumefaciens)、サーマス サーモフィルス(Thermus thermophilus)及びリゾビウム リグミノサルム(Rhizobium leguminosarum)細胞が包含される。該核酸配列は、応答調節タンパク質により制御されるプロモーターと機能的に連結される。言いかえれば、核酸配列は、ヌクレオチド配列のインビトロ及びインビボでの発現発現を許容する様式でプロモーター配列に連結される。「プロモーター」とは、遺伝子物質の転写を指図する任意のDNA断片のことを指す。プロモーターは、応答調節タンパク質(例えばE.coliのntrC、phoB、phoP、ompR、cheY、E creB、又はtorRあるいは他の細菌種由来のその同族体)によって制御される。さらに応答調節タンパク質は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/COG/(Tatusovら、Nucleic Acids Res.(2000);28:33−36)に定義されるようなクラスターオルソロガスグループ(COG)COG0745の別のメンバーであり得る。ある実行では、プロモーターはE.coli ntrCにより結合される。用語「ntrC」とは、E.c
oli ntrCタンパク質(SWISSPROT:P06713、http://www.expasy.ch/)及び適切な他の細菌におけるその同族体の両方を指す。本明細書で使用する場合、「結合」とは、100未満nM、好ましくは1nM未満の平衡結合定数(KD)を有する物理的会合のことを指す。プロモーターの1例はE.coli g
lnAp2プロモーター(例えば公表されたDNA配列中の約93〜約323の領域、GenBankアクセッション番号M10421(Reitzer&Magasanik(1985)Proc Nat Acad Sci USA 82:1979−1983))である。この領域は、glnA遺伝子由来の非翻訳配列を含んでいる。さらに、gInAのコード配列と異種ポリペプチドのコード配列の間には翻訳の融合物を構築することができる。
【0005】
宿主細胞は、窒素飢餓がない状態でプロモーターがアセチルリン酸により調節されるように遺伝子修飾される。例えば、宿主細胞は、ヒスチジンプロテインキナーゼ((例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/COG/;Tatusovら、前掲)により定義されるようなCOG0642のメンバー、例えばglnL、phoR、phoQ、creC、又はenvZ)をコードする遺伝子の欠失や突然変異により遺伝的に修飾される。別の例において、ヒスチジンプロテインキナーゼは、プロモーターを制御する応答調節タンパク質に対して特異性を有している。ヒスチジンプロテインキナーゼは、glnL(例えばE.coli glnL(SWISSPROT PO6712;http://www.expasy.ch/))によりコードされ得る。
【0006】
宿主細胞は、異種ポリペプチド又は代謝産物の発現のために、窒素飢餓がない状態でプロモーターがアセチルリン酸により調節されるように遺伝子修飾されるが、宿主細胞は任意の所望の条件下で(例えば窒素飢餓状態、窒素が不十分な状態、あるいは窒素が豊富な状態)増殖させることが可能である。
【0007】
核酸配列によってコードされる異種ポリペプチドは、代謝産物の生産のために必要な生合成酵素であり得る。異種ポリペプチドは、哺乳類のタンパク質(例えば分泌増殖因子、モノクローナル抗体、細胞外マトリックス成分)であり得る。
【0008】
さらに別の例では、異種ポリペプチドは、ワクチンに使用される所望の抗原(例えばウイルス、細菌、真菌、原生生物病原体由来の表面タンパク質)であり得る。
本発明の別の態様は、応答調節タンパク質によって制御されるプロモーターを有する核酸配列を含むキットをその特徴とする。該キットはさらに、窒素飢餓がない状態でプロモーターがアセチルリン酸により調節されるように遺伝子修飾される細菌宿主細胞を、任意に含む。キットはさらに、その使用に対する使用説明書を提供できる。核酸配列は、制限酵素ポリリンカーに挿入された配列が、応答調節タンパク質により制御されるプロモーターに機能的に連結するように、プロモーターに3’位置に配置された制限酵素ポリリンカーを含み得る。キットの1つの実施では、プロモーターがE.coli glnAp2プロモーターであり、細菌宿主細胞はglnL遺伝子の変異か欠失を含むE.coli細胞である。
【0009】
本発明の別の態様は、第1の発現カセットを含む宿主細胞をその特徴とする。第1の発現カセットは、上述したののうち任意のもののようなプロモーターと、異種代謝産物の生合成に必要な酵素をコードする核酸配列とを有している。本明細書で使用する場合、「酵素」とは、1つの化学反応か複数の反応を触媒する能力を有するポリペプチドのことを指す。核酸配列は、窒素飢餓がない状態でアセチルリン酸により調節されるプロモーターに機能的に連結されている。宿主細胞は、代謝産物の生合成に必要な他の酵素の発現のための追加の複数の核酸配列も含み得る。そのような追加の配列は、内因性酵素を発現する内因性配列であってもよいし、異種酵素を発現する導入配列であってもよい。
【0010】
1例において、異種代謝産物はイソプレノイド、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリケチド、β−ラクタム系抗生物質、芳香族、または前駆体(例えば上流代謝産物)もしくはその誘導体(例えば下流代謝産物)である。例えば、イソプレノイドは、カロチノイド、ステロール、タキソール(商標)、ジテルペン、ジベレリン及びキノンであり得る。イソプレノイドの特定の例には、イソペンチル二リン酸、ジメチルアリル二リン酸、ゲラニル二リン酸、ファルネシル二リン酸、ゲラニルゲラニル二リン酸及びフィトエンが包含される。カロチノイドの特定の例には、β−カロテン、ζ−カロテン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ゼアキサンチン−β−グルコシド、フィトフルエン、ニューロスポレン、ルテイン及びトルエンが包含される。所望の異種代謝産物がイソプレノイドである場合、異種酵素はイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ、または1−デオキシキシルロース 5−リン酸シンターゼであり得る。所望の異種代謝産物がポリヒドロキシアルカン酸である場合、異種酵素は、3−ケトアシル還元酵素またはポリ−3−ヒドロキシアルカン酸ポリメラーゼであり得る。
【0011】
宿主細胞は細菌細胞(例えばE.coli細胞)であり得る。上述したように、宿主細胞は、遺伝子(例えばヒスチジンプロテインキナーゼをコードする遺伝子)の欠失あるいは突然変異により任意に遺伝子修飾される。1つの特定の例において、宿主細胞はは、アセチルリン酸濃度により調節されたプロモーター(例えばglnAp2)に機能的に連結されたホスホエノールピルビン酸シンターゼをコードする核酸配列を含む第2の発現カセットをさらに含む。
【0012】
本発明の別の態様は、宿主細胞中で異種イソプレノイドを生産する方法をその特徴とする。該方法は、ホスホエノールピルビン酸シンターゼを過剰発現し、異種イソプレノイドの合成に必要な生合成酵素を発現する工程から成る。1つの実施では、ピルビン酸キナーゼまたはホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする宿主細胞中の遺伝子が、遺伝子学的に削除されるか弱められる。別の実施では、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子が宿主細胞中で過剰発現される。本発明のさらに別の態様は、宿主細胞でリコピンを生産する方法をその特徴とする。該方法は次の異種酵素を発現する工程から成る:l−デオキシ−D−キシルロース 5−リン酸シンターゼ、ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ、フィトエンシンターゼ、およびフィトエンサチュラーゼ。この方法の1つの実施では、例えばglnAp2プロモーターを使用して、イソペンテニル二リン酸イソメラーゼが過剰発現される。別の実施では、例えばglnAp2プロモーターを使用して、ホスホエノールピルビン酸シンターゼが過剰発現される。
【0013】
本発明の別の態様は、プロモーターと、第1の代謝産物の生産に必要な生合成酵素をコードする配列とを含む核酸配列をその特徴とする。プロモーターは、該配列に機能的に連結され、その濃度が第1の代謝産物の生合成のための前駆体の有効性を示す第2の代謝産物によって調節される。1例において、第2の代謝産物は、第1の代謝産物の生合成のための前駆体から生産された排泄物質である。
【0014】
1つの実施では、第1の代謝産物がポリヒドロキシアルカン酸(例えばポリヒドロキシブチル酸)であり、核酸配列は生合成酵素(例えば、3−ケトアシル補酵素A(coA)還元酵素またはポリ−3−ヒドロキシオクタノイル−CoAポリメラーゼ)をコードする。別の場合では、第1の代謝産物がポリケチド、β−ラクタム系抗生物質、または芳香族である。さらに別の場合では、第1の代謝産物がイソプレノイド(例えば本明細書で言及したイソプレノイド)である。核酸配列は、イソプレノイドの生産に必要な整合性酵素(例えばイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ、1−デオキシキシルロース 5−リン酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ、ファルネシル二リン酸シンターゼ、ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ、フィトエン
シンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、リコピンシクラーゼ)をコードし得る。イソプレノイドの前駆体の1つはピルビン酸であり得る。ピルビン酸濃度は酢酸及びアセチルリン酸濃度と関係がある。従って、この例では、第2の代謝産物はアセチルリン酸である。アセチルリン酸に応答するプロモーターは、応答調節タンパク質(例えば上述した応答調節タンパク質)により制御され得る。そのようなプロモーターは、特定の宿主細胞中のアセチルリン酸にしか応答しないようにし得る。特定の例において、アセチルリン酸濃度に応答するプロモーターは、E.coli ntrC(例えばE.ccli glnAp2プロモーター)により結合される。
【0015】
プロモーターはcAMPにより制御可能である。プロモーターは、CAP(カタボライトアクチベータータンパク質)に結合する細菌プロモーターであり得る。哺乳動物では、プロモーターが、CREB、CREMあるいはATF−1タンパク質に結合するcAMP応答エレメント(CRE)を含むプロモーターであり得る。酵母細胞では、プロモーターが、cAMPにより調節されるプロモーターか、Gisl、Msn2またはMsn4タンパク質により結合されるプロモーターであり得る。プロモーターの別の考えられる調節シグナルは、フルクトース 1−リン酸、またはフルクトース 6−リン酸であり得る。E.coli FruRタンパク質はそのようなプロモーターを調節する。
【0016】
核酸配列はプラスミドに含まれ得る。プラスミドはさらに、細菌の複製起点と選択マーカーを含み得る。核酸配列はさらに、酵母や他の真核生物の複製起点と適切な選択マーカーを含み、ゲノムへ組み込まれ得る。
【0017】
宿主細胞中の異種化合物の生合成の最適化は、細胞生理学のパラメータを感知することと、生合成の調節のためにそのようなパラメータを利用すること依存している。当該技術分野における1つの標準的技術は、細胞を成長させ、ユーザーが所望の産物の生合成に必要な遺伝子をオンにするために外因的に薬剤(例えば誘導物質)を加えることである。成長遅延及び代謝活性の減少を引き起こす組換えタンパク質または経路の高レベルの誘導が広く観察された(KurlandとDong(1996)Mol Microbiol 21:1−4)。外因的に誘導物質を供給する実施行為は経験的なものであり、生合成用の細胞の資源の有効性をモニタしない。対照的に、天然経路はそのようなプロセスを制御するフィードバック機構に依存する。特定のプロモーターと、本発明における特定の遺伝学的に定義された宿主細胞及び異種ポリペプチドとを組み合わせると、細胞の代謝期に応じて異種ポリペプチドや代謝産物合成への速度を調節する高度に精密かつ用途の広い制御回路が期せずして得られる。確かに、動的に抑制された組換え経路は、生産の増大と、最小限の成長遅延と、有害な副産物生成の減少とを提供する。生理的状態に応じた遺伝子発現の調節は、遺伝子治療のような他の用途にも有用であろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の1又は複数の実施形態の詳細を、以下の詳細な説明で述べる。本発明の他の特徴、目的及び利点が以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
(詳細な説明)
本発明は、代謝制御を工学設計する方法(例えばタンパク質生産あるいは代謝産物合成のいずれかのためのタンパク質発現を最適化するために特定宿主細胞中のプロモーターを利用する方法)を提供する。
【0019】
本発明の中心となる構成要素は、プロモーターと、発現が望まれる異種ポリペプチドをコードする核酸配列とを含む発現カセットである。発現カセットはコードする核酸配列がプロモーターと機能的に連結される(例えばプロモーターにより調節される)ように、当該技術分野における標準的方法を用いて構築される。プロモーターは、細胞生理学か細胞代謝期のパラメータによりプロモーターが調節されるように選択される。様々なプロモー
ターを使用することが可能である。いくつかの用途では、発現カセットが、細菌の複製起点と選択マーカーを備えた細菌性プラスミドのようなプラスミド内に含まれる。発現カセットは当該技術分野における標準的技術を使用して、細胞のゲノムへ組み込むことができる。
【0020】
後期対数増殖期中または定常期中の異種ポリペプチドの調節的生産を工学設計するために発現カセットが使用される場合、それに従ってプロモーターも選択され得る。例えば小分子シグナル(例えばセカンドメッセンジャー)(後期対数増殖期中または定常期中にそのレベルは蓄積する)に応答するプロモーターが選択される。セカンドメッセンジャーは、生化学経路の前駆体、中間体、または排泄物質として蓄積する分子であり得る。細菌では、小分子シグナルが解糖の中間体(例えばフルクトース 1−リン酸、フルクトース 6−リン酸)、または解糖の排泄物質(例えば酢酸、アセチルリン酸))であり得る。真核細胞では、cAMP濃度が栄養状態の有名なシグナルである。
【0021】
発現カセット中のプロモーターは、多量発現分析実験(例えば遺伝子チップ実験)の結果に基いて選択することが可能である。アセチルリン酸により誘導される遺伝子は、酢酸で成長中の細胞より調製したマイクロアレイ標識cDNAにハイブリダイズさせ、そのシグナルを基準シグナル(例えば初期対数成長期の細胞より調製したcDNAに関して得られたシグナル)と比較することにより同定することが可能である。その実験は、原核細胞と真核細胞の両方(例えば、細菌、酵母、植物、哺乳類細胞)で実行できる。原核生物におけるそのような実験の例については、Talaatら(2000) Nat Biotechnol 18:679−82とOh&Liao(2000)Biotechnol
Prog.16:278−86を参照されたい。所望の条件下で発現されている遺伝子がひとたび同定されると、そのプロモーターが発現カセットにて利用され得る。代わりに、所望の分子(例えば代謝経路中の前駆体)の外因的追加により行われるか、実験条件(例えば後期対数期までの成長または生合成酵素が過剰生産されている間の成長)の操作により行われる。プロモーターは、誘導した遺伝子に基づいて同定できる。
【0022】
1例において、発現カセットは細菌細胞中の代謝産物の調節的生産を工学設計するために使用される。その濃度が第1の代謝産物の生合成のための前駆体の有効性を示す、第2の代謝産物により調節されるプロモーターを選択することが可能である。例えば、第1の代謝産物が前駆体、ピルビン酸及びグリセルアルデヒド 3−リン酸から合成されるイソプレノイドである場合、第2の代謝産物はアセチルリン酸であり得る。豊富な環境では、細胞は、ピルビン酸の生成物であるアセチルCoAの過剰量を生産する。過剰アセチルCoAは、ATPと酢酸(排泄物質として分泌される)を生産するために使用される。酢酸濃度は細胞密度と共に増加する。酢酸、アセチルCoA、及びアセチルリン酸濃度は、以下の生化学反応に相互に関連付けられる。
(1)アセチルCoA+Pi<−>アセチルリン酸+CoA
(2)アセチルリン酸+ADP<−>酢酸+ATP
このように、アセチルリン酸濃度が高いことは、アセチルCoAとピルビン酸が過剰であることを示す。glnLの欠失あるいは突然変異により遺伝子修飾された宿主細胞は、例えば、ntrC機能をアセチルリン酸依存的にさせる(Fengら、(1992)J Bacteriol 174:6061−6070)。この方法では、ntrCにより調節されるプロモーター(例えばglnAp2プロモーター)が、アセチルリン酸に応じて遺伝子発現を制御するために使用できる。glnAp2プロモーターは当該技術分野における標準的技術を使用して得ることが可能である。例えば、glnAp2プロモーターとアニールするプライマーを設計かつ合成することが可能である。glnAp2プロモーターを含む核酸断片を増幅するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することが可能である。この断片はここではさらなる構築のために使用できる。同様に、ヒスチジンプロテインキナーゼ遺伝子(例えばglnL)の欠失を含むE.coli株を容易に調製
できる。1つの考えられる方法に関する詳細な説明については、Linkら(1997)J Bacteriol.l79(20):6228−6237を参照されたい。所望の異種ポリペプチドをコードする配列は、該配列がglnAp2プロモーターに機能的に連結されるように、glnAp2プロモーターの下流にクローニングすることが可能である。その後、不活性化されたglnL遺伝子を備えた宿主細胞は、該配列で形質転換され得る。形質転換株を成長させ、成長している経過中のポリペプチドの生産をモニタすることができる。FarmerとLiao(2000)Nat.Biotechnol 18:533−537におけるように高い細胞密度では強いタンパク質発現を観察することができる。上記文献の内容は参照により本明細書に組込まれる。
【0023】
ポリペプチドか代謝産物の生産のための宿主細胞として、哺乳類細胞を使用できる。プロモーターは、選択可能である(例えばcAMPに応答するプロモーター)。そのようなプロモーターは、CREB、CREMあるいはATF−lタンパク質に結合するcAMP応答エレメント(CRE)を含み得る。当該技術分野における標準的技術を使用して、所望のコード配列を、プロモーターの制御下に置き、哺乳類細胞中で形質転換することができる。いくつかの例では、構チク物をウイルス(例えば不活性化ウイルス)に挿入できる。そのような実施により、遺伝子治療シナリオにおいて異種生合成酵素により生産されるタンパク質または代謝産物の調節的生産が許容される。植物細胞も宿主細胞として使用することが可能である。繰り返し述べるが、適切なプロモーターは、選択可能である(例えば植物ホルモン、代謝産物、または所望の代謝産物の生産のための前駆体に応答するプロモーター)。プロモーターはマイクロアレイ実験により同定することが可能である。適切なベクターの所望のコード配列へ所望のプロモーターを融合させた後に、その構築物をAgrobacterium tumefaciensへ電気穿孔して入れ、当該技術分野における標準的方法を使用して植物細胞を形質転換するために使用することができる。また別の例では、酵母細胞を操作して、代謝制御下で異種ポリペプチドまたは代謝産物を発現させることができる。例えば、Saccharomyces cerevisiaeプロモーターは、cAMPにより調節されるプロモーター(例えばGis1、Msn2またはMsn4タンパク質により結合されるプロモーター)であり得る。様々な代謝条件に応じたすべての酵母遺伝子の調節は、ますます詳しく研究されるようになっている。例えばDeRisiら(1997)Science 278:680−686は、様々な代謝条件下に設定されたSaccharomyces cerevisiae遺伝子のほぼ全体の転写プロファイルに続く実験について記載している。そのようなデータに基づいて、所望の代謝産物により調節されるプロモーターを選択できる。酵母プラスミドの生成及び酵母の形質転換は当該技術分野において周知である。
【0024】
上述の発現技術を使用して、種々の代謝経路を再構築することができる。例えば、以下の遺伝子用の発現ベクターを構築することにより、リコピンを生産する経路をE.coliに導入することができる:E.coli由来のdxs(1−デオキシ−D−キシルロース 5−リン酸シンターゼについてコードしている)、Archaeoglobus fulgidus由来のgps(ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)シンターゼについてコードしている)及びErwinia uredovora由来のcrtBI(フィトエンシンターゼ及びデサチュラーゼのそれぞれについてコードしている)。それらの遺伝子は、単一又は多数のプラスミド上で存在できるか、E.coli染色体内に組み込まれる。さらに、ホスホエノールピルビン酸シンターゼは、どんな方法(例えばglnAp2プロモーターへの融合により)を使用しても、過剰発現させることができる。イソペンチル二リン酸イソメラーゼは、どんな方法(例えばglnAp2プロモーターへの融合により)を使用しても、過剰発現させることができる。
【0025】
別の例において、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)(例えばポリヒドロブチル酸)を生産する経路は、E.coliにおいて実施できる。PHAは、様々な熱可塑的性質と
商業的用途を備えたヒドロキシ酸の線形ポリエステルのファミリーである。アセチルCoAレベルがPHA合成用の前駆体有効性を示し得るため、3−ケトアシル補酵素A還元酵素及びポリ−3ヒドロキシアルカン酸ポリメラーゼをコードするPseudomonas
aeruginosa遺伝子は、所望のプロモーター(例えばglnAp2)の制御下に置くことが可能である。
【0026】
さらに詳細に論じなくても、上記の記載は本発明を十分に実施可能にしていると考えられる。以下の例は単に例証的なものであって、開示の残りを如何様にも制限するものではないと解釈すべきである。本明細書に引用した刊行物はすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
方法
成長条件
すべてのE.coli株を、37℃で、水浴振とう機(G76型;New Brunswich Scietific社、ニュージャージー州Edison)に入れて、指定培地を含む振とうフラスコ中で成長させた。培養物を、0.5%(重量/体積)グルコースを含むM9規定塩類34又は1.5%(重量/体積)グルコースを含むYE規定塩類から成る最小培地にて成長させた。YE規定塩類は、(1リットル当たり)14g K2HP
4、16g KH2PO4、5g (NH42SO4、1g MgSO4及び1mg チア
ミンより構成された。細胞の濁度を、550mnにて分光光度計でモニタした。
代謝産物測定
酢酸、ピルビン酸、及び他の有機酸を、65℃に維持した有機酸カラム(Aminex
HPX−87H、Bio−Rad Laboratories社、カリフォルニア州Hercules)に載せてHPLC(Constametric 3500 Solvent Delivery SystemとSpectromonitor 3100 Variable Wavelength Detector;LDC Analytical、フロリダ州Riviera Beach)を用いて測定した。流動相は0.01NのH2SO4から成り、その流量は0.6ml/分に維持した。カラムから離れたピークは、210nmで検出した。グルコースを、Sigmaキット315−100番を用いて測定した。リコピンの量を測定するために、1mlの細菌培養物をアセトンで抽出し、遠心し、上清の吸光度を474nmで測定した。リコピン濃度を、標準曲線と吸光度を比較することにより計算した。
SDS−PAGE及び酵素分析
SDS−PAGEに対するプロトコルは、Laemmli(1970)Nature 227:680−685に記述されている通りである。β−ガラクトシダーゼ活性の測定は、Miller(1992)A Short Course
in Bacterial Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor NYによって記述されている通りに本質的に行われた。
結果 異質融合物におけるlacZに対するE.coliのglnAp2プロモーターの使用
アセチルリン酸レベルの増大は、過剰グルコース流出の指標である。本発明は、過剰炭素流束を完全に利用し、かつ流束を有毒生成物である酢酸から遠ざけて再誘導するための、宿主細胞、核酸配列、及び、所望の代謝経路中の速度制御酵素の発現を調節するシグナルとしてのアセチルリン酸の使用方法をその特徴とする。
【0027】
生成物発現の動的制御物としてのglnAp2の可能性を調べるために、電位を検討するglnAp2プロモーターに機能的に連結される異種lacZ遺伝子を含む核酸分子を構築した。プロモーターと2つのntrC−結合部位を含むglnAp2プロモーター領域は、当該技術分野で周知の標準方法により容易に得ることが可能である。glnAp2プロモーターは、正方向プライマー5’−CAGCTGCAAAGGTCATTGCAC
CAAC(工学設計されたPvuII部位を含む)及び逆方向プライマー5’−GGTACCAGTACGT−GTTCAGCGGACATAC(工学設計されたKpnI部位を含む)を使用して、E.coliゲノムDNAよりPCR増幅した。これらの2つのプライマーは、公表されたDNA配列16(GenBankアクセッション番号M10421)の位置93と343の間の領域を増幅した。
【0028】
glnAp2 PCR断片もpRS55lのEcoRI部位に入れてクローニングされ、それによりp2GFPuvが生成した。これは、プロモーターがないlacZ遺伝子の前にglnAp2を含んでいる。glnAp2−lacZ領域は相同組換えを介してλRS45に移動され(Simonら(1987)Gene53:85−96)、λp2GFPuvを生成した。JCL1595とJCL1596を、感染によりにglnAp2−lacZ融合物を組み込むことにより構築し(silhavyら、(1984)、Experments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州Cold Spring Harbor)λp2GFPuvファージを染色体BWl37l1(lacX74)及びBW18302(lacX glnL200l;Fengら、前掲)へそれぞれ組み込む。この株は、glnLコード配列のコドン23〜182の間の内部欠失から成り、おそらく無効突然変異が生じる(Fengら、前掲)、glnL200l対立遺伝子を含んでいる。
【0029】
β−ガラクトシダーゼ(β−gal)活性の時間経過を、野生型及びglnL突然変異体について測定した。glnAp2−β−gal活性は、glnL宿主(JCL1596)からの排泄された酢酸濃度と類似した時間依存的方法で増加するが、同質遺伝子の野生型対照(JCLl595)に対してはプロモーター活性の誘導は見出されなかった。
【0030】
【表1】

【0031】
このように、glnLがないと、glnAp2は、酢酸排泄によって示される過剰の炭素流出に応答できる。細胞が後期指数成長期に近づくにつれて、生合成要求は減少し、酢酸生成の増加により実証されるように、細胞は過剰炭素流出を示し始めた。約6時間目のこの時点で、glnAp2−β−gal−活性は期せずして上昇し始め(〜700nmol/分・mgタンパク質、表1参照)たが、野生型株(JCL1595)のglnAp2−β−gal−活性は比較的低く、始終一定に保たれた(〜100nmol/分・mgタンパク質、表1)。10時間超過後、glnLがない場合のgInAp2−β−gal活性は著しかった(1500nmol/分・mgタンパク質、表1)。glnAp2の誘導プロフィルは、さらにlacプロモーター(Plac)のそれと明確に対照的である。株V
JS632(lac+)の染色体Plac活性はIPTG(イソプロピル)−β−D−チオ−ガラクトピラノシド)による誘導後急速に増大し、細胞での一定レベルの発現を達成した(〜550nmol/分・mgタンパク質、表1を参照)。これは成長期とは無関係である。
【0032】
ppsおよびaroGに対する異質融合物におけるE.coliのglnAp2プロモーターの使用方法
2つの異なる代謝性酵素である、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ(pps)と3−デオキシ−D−アラビノヘプチュロソネート 7−リン酸(DAHP)シンターゼ(aroG)をglnAp2プロモーターの制御下に配置した。対照として、これらの同じ2つのタンパク質を、同じ遺伝的背景及び環境要因下で、静的制御を示すtacプロモーター(Ptac)から過剰発現させた。ppsを発現する標準的方法は、成長遅延(Patn
aikら(1992)J Bacteriol 174:7527−7532)を引き起こす。
【0033】
プラスミドpAROGを、pJF118EHのEcoRI−BamHI部位へaroG
pRW5tktを含むPCR断片を入れてクローニングすることにより構築した。プラスミドpPS706はPatnaikら、前掲に上述した。両方のプラスミドは、Ptac
プロモーターの下で各遺伝子を発現する。glnAp2プロモーターを含むPCR断片を、プラスミドpAROGおよびpPS706のEcoRV−EcoRI部位に入れてクローニングし、glnAp2プロモーターの下に各遺伝子をそれぞれ含むプラスミドp2AROG3及びpPSG706を生成した。
【0034】
宿主株BW18302(lacX glnL200l)を4つのプラスミド全部で形質転換した。各プラスミドを備えた株をM9塩類グルコース培地で成長させた。成長を5時間後に比較した。
【0035】
【表2】

【0036】
上に示したように、Ptac−ppsを用いたppsの過剰発現は顕著な成長遅
延を引き起こした。しかしながら、glnAp2の使用は、期せずして正常な成長に近かった(表2)。15時間後、タンパク質を各菌株より分離し、10%SDS−PAGEゲルで分析した。pps遺伝子がglnAp2プロモーターによって制御された時、Ptac
プロモーターと比較して、少なくとも500%多くのppsタンパク質が発現された。別の驚くべき発見では、AroGタンパク質(その従来の過剰発現は明白に有害でない)も、発現のためのglnAp2プロモーターを利用する細胞からの抽出物において、Ptac
プロモーターと比較して、
少なくとも300%より豊富だった。
【0037】
idi過剰発現によるE.coliにおけるリコピンの生産
E.coli由来の(1−デオキシ−D−キシルロース 5−リン酸シンターゼをコードする)dxs、Archaeoglobus fulgidus由来の(ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)シンターゼをコードする)gps、およびErwinia u
redovora由来の(フィトエンシンターゼおよびデサチュラーゼをそれぞれコードする)crtBIにおいて組換えリコピン経路を再構築した。これらの遺伝子を低コピー数プラスミドであるpCL1920に挿入してpCW9を形成し、同時に過剰発現させた。
【0038】
idi(イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ)の発現を制御するためにglnAp2プロモーターを使用した。idi遺伝子を含む構築物は、プロモーターのないベクターであるpJFl18に由来するものであった。glnAp2プロモーターを挿入して、p2IDIを形成した。対照として、Ptacプロモーター
を挿入してpTacIDIを形成した。これらのプラスミドを、pCW9を含むglnL株(BWl8302)へ別々に導入した。P2IDI含有株(glnAp2−idi)はグルコースを含む規定培地において100mg/Lリコピンを生産した。他方、Ptac
jdiを含む株は、同一条件下では少量のリコピン(<5mg/L)しか生産しなかった。さらに、p2IDI株はpTacIDIよりほぼ3倍少ない酢酸を生産したが、これは酢酸への炭素流出がリコピンに再び向けられていることを示す。
【0039】
【表3】

【0040】
リコピン生産を高めるためのppsの使用
別の適合性があるプラスミドであるpPSG18由来のglnAp2からppsを過剰発現させ、リコピン経路の残り(dxx、gps、crtBI)をpCLl920を用いて発現させた。リコピン経路に関するpps及びidiの同時発現は、リコピンの最終濃度を50%増大し、その生産力を0.05mg/(mL・h)から0.16mg/(mL・h)まで3倍増大させた(表3)。これは、生産量に有意な改良が観察されず実質的な成長阻害が起こらないptacIDIおよびpPS184(Ptac−idi+Ptac−pps)を共に含む菌株と対照的である。
リコピン生産に対する追加の宿主細胞
2つの単一突然変異体(JCL1610(pykF)及びJCL1612(pykA))と1つの二重突然変異株(JCL1613(pykF pykA)を生成するために、pykF::cat及びpykA::kan対立遺伝子を野生型株に導入した(Ponceら(1995)J Bacteriol l77:5719−5722)。二重突然変異株は約14mgリコピン/g乾燥菌体の最終リコピン濃度を達成することができたが、単一の突然変異株の各々は約2.5mgリコピン/g乾燥菌体のリコピン濃度を得た。単一のpyk突然変異体は、野生型菌株と同様のレベルの〜4mgリコピン/g乾燥菌体のリコピンを生産した。さらに、Pck(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)の過剰発現は、リコピンの採集濃度を約3倍増加させた。Ppc(ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ)の過剰発現はリコピン生産を約30%減少させた。
他の実施形態
本発明の多くの実施形態を説明してきた。しかしながら、様々な修正が、本発明の精神
及び範囲から逸脱せずになされ得ることが理解される。従って、他の実施形態が特許請求の範囲の範囲内にある。例えば、言及されたポリペプチド及び遺伝子のすべての同族体は、本発明の範囲内に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロモーターと異種代謝産物の生合成に必要な第1の酵素をコードする核酸配列とを含む第1の発現カセットを含む宿主細胞であって、核酸配列は窒素飢餓がない状態でのアセチルリン酸により制御されるプロモーターに機能的に連結され、複数の核酸配列が代謝産物の生合成に必要な他の酵素を発現している、宿主細胞。
【請求項2】
代謝産物がイソプレノイドである、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項3】
イソプレノイドがカロチノイドである、請求項2に記載の宿主細胞。
【請求項4】
イソプレノイドがリコピン、β−カロテン、アスタキサンチン、またはそれらの前駆体の1つである、請求項2に記載の宿主細胞。
【請求項5】
第1の酵素がイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ、または1−デオキシキシルロース 5−リン酸シンターゼである、請求項2に記載の宿主細胞。
【請求項6】
第1の酵素がホスホエノールピルビン酸シンターゼである、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項7】
宿主細胞が細菌細胞である、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項8】
細菌細胞がE.coli細胞である、請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
細胞が機能的ヒスチジンプロテインキナーゼ遺伝子を欠いている、請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項10】
ntrC、phoB、ompR、cheY、creB、phoPまたはtorRによりプロモーターが制御される、請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項11】
プロモーターがntrCにより結合される、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
プロモーターがglnAp2である請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
宿主細胞が、アセチルリン酸濃度により調節されるプロモーターに機能的に連結されたホスホエノールピルビン酸シンターゼをコードする核酸配列を含む第2の発現カセットをさらに含んでいる、請求項2に記載の宿主細胞。
【請求項14】
宿主細胞中で異種イソプレノイドを生産する方法であって、
異種ホスホエノールピルビン酸シンターゼを過剰発現する工程と、
異種イソプレノイドの合成に必要な生合成酵素を発現する工程とから成る方法。
【請求項15】
宿主細胞中でリコピンを生産する方法であって、
異種1−デオキシ−D−キシルロース 5−リン酸シンターゼ、異種ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ、異種フィトエンシンターゼ及び異種フィトエンデサチュラーゼを発現する工程
から成る方法。
【請求項16】
プロモーターが一定の宿主細胞中でアセチルリン酸により調節されるよう、応答調節タンパク質により制御されたプロモーターを有する核酸配列を含むキットであって、前記一定
の宿主細胞は、ヒスチジンプロテインキナーゼ遺伝子の欠失あるいは突然変異により遺伝子修飾されている、キット。
【請求項17】
プロモーターと、第1の代謝産物の生産に必要な整合性酵素をコードする配列とを含む核酸配列であって、前記配列は、その濃度が第1の代謝産物の生合成のための前駆体の有効性を示す第2の代謝産物により調節されるプロモーターに機能的に連結される、核酸配列。
【請求項18】
前記第2の代謝産物が、第1の代謝産物の生合成のための前駆体から生じた排泄物質である、請求項17に記載の核酸配列。
【請求項19】
第1の代謝産物がイソプレノイドである、請求項17に記載の核酸配列。
【請求項20】
イソプレノイドがカロチノイドである、請求項19に記載の核酸配列。
【請求項21】
イソプレノイドがβ−カロテン、アスタキサンチン、またはそれらの前駆体の1つである、前駆体の請求項20に記載の核酸配列。
【請求項22】
第2の代謝産物がアセチルリン酸、cAMP、フルクトース
1−リン酸またはフルクトース 6−リン酸である、請求項17に記載の核酸配列。
【請求項23】
第2の代謝産物がアセチルリン酸である、請求項22に記載の核酸配列。
【請求項24】
ntrC、phoB、ompR、cheY、creB、phoPまたはtorRによりプロモーターが制御される、請求項23に記載の核酸配列。
【請求項25】
プロモーターがntrCにより結合される、請求項24に記載に記載の核酸配列。
【請求項26】
プロモーターがglnAp2である請求項25に記載の核酸配列。
【請求項27】
生合成酵素がイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ、1−デオキシキシルロース 5−リン酸シンターゼ、またはホスホエノールピルビン酸シンターゼである、請求項11に記載の核酸配列。

【公開番号】特開2010−284173(P2010−284173A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188609(P2010−188609)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【分割の表示】特願2001−521952(P2001−521952)の分割
【原出願日】平成12年7月27日(2000.7.27)
【出願人】(500115169)フード インダストリー リサーチ アンド ディヴェロップメント インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】