説明

仮想物体表示装置

【課題】仮想物体表示装置において、仮想物体の表示位置は観察者の位置と姿勢によって一意に決定されるため、観察者は自分の求める仮想物体を取得するためには、仮想物体が表示される位置に自らが赴き、姿勢をあわす必要がある。
【解決手段】三次元仮想空間の仮想物体を生成し、二つ以上の画像表示方式を備えることを特徴とするものであり、観察者の位置姿勢と、複数の画像表示方式から、選択された表示方式に基づいて三次元仮想空間内での提示対象とする仮想物体の提示位置の基準となる座標系を決定し、基準座標系と観察者の位置姿勢から三次元仮想空間内での提示対象の仮想物体の座標変換を行い、座標計算部306の計算した結果である仮想物体を基準座標決定部305により決定された座標系で観察者に提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元仮想空間の仮想物体を生成し、観察者に表示する仮想物体表示装置に関する。さらに詳しくは、観察者の位置姿勢から仮想物体の表示位置を決定して表示する仮想物体表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、現実空間上にCG(Computer Graphics)や文字情報などの仮想物体を重畳して表示する拡張現実感(Augmented Reality)を用いたサービスが盛んに行われている。拡張現実には、ビデオカメラ等で撮影された現実空間の画像に仮想物体を重畳するビデオシースルー方式と、現実空間をハーフミラーを通して直接見て仮想物体と重ね合わせる光学シースルー方式がある。
【0003】
視覚情報を提示するデバイスとしては、携帯電話等の小型情報端末や、ヘッドマウンテッドディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)等が利用される。
【0004】
このような拡張現実感を利用したサービスの一つに頓智ドット株式会社が提供するアプリケーション、「セカイカメラ」やオランダのSPRXmobile社が提供する「Layar」などがある(「セカイカメラ」、「Layar」は、各社の商標または登録商標である)。これらのアプリケーションでは、GPS(Global Positioning System)等で得られる位置情報を利用し、携帯電話を現実空間にかざすと、携帯のカメラで撮影している風景に施設情報が重畳して表示される。
【0005】
また、画像認識技術を用いて、特定のパターン(マーカー)を認識し、その上に仮想物体を重畳して表示する技術も多く見られる。
【0006】
上記に代表されるような、拡張現実の世界においては、仮想物体を三次元空間上のどこに重畳するかを決定することが重要になる。
【0007】
位置情報と観察者の姿勢に基づいて仮想物体の表示位置を決定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、現実世界と仮想物体の位置あわせを容易にするための技術を考案している。
【0008】
図1は、従来の仮想物体表示装置の簡単な構成をあらわしたものである。
【0009】
図1において、姿勢センサ101は観察者の姿勢計測をする。姿勢情報出力部102でセンサ座標系から世界座標系に仮想物体の座標系を変換する際に、必要に応じてメモリ103に保存された補正情報を取得し、画像生成部105で出力画像の生成を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3840171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら従来の構成では、観察者に対し、仮想物体を正確に連動させることは可能であるが、仮想物体の表示位置は観察者の位置と姿勢位置によって一意に決定され、ユーザーは仮想物体の位置をユーザーの好きなように移動させることができない。このため、観察者は自分の求める仮想物体を取得するためには、仮想物体が表示される位置に自らが赴き、姿勢をあわす必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来の課題を解決するために、本発明の仮想物体表示装置は、観察者の位置姿勢を取得する位置姿勢取得部と、複数の画像表示方式から一つの表示方式を決定する表示方式決定部と、表示方式決定部で決定された表示方式に表示方式を切り替える表示方式切替部と、表示方式決定部で決定された表示方式に基づいて表示対象とする仮想物体の三次元仮想空間内での表示位置の基準となる座標系を決定する基準座標系決定部と、仮想物体のデータを取得するデータ取得部と、基準座標系決定部により決定された基準となる座標系と位置姿勢取得部により取得された観察者の位置姿勢から、三次元仮想空間内での表示対象の仮想物体の座標変換を行う座標計算部と、データ取得部で取得した仮想物体のデータを基準座標系決定部で決定された座標系によって座標計算部で座標変換された三次元仮想空間内での所定の位置に重畳して表示部に表示する表示画面合成部とを備える。
【0013】
かかる構成によって、用途に合わせて仮想物体の表示位置を柔軟に切り替えることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、仮想物体を観察者の嗜好に合わせて表示位置を容易に変更することが可能になり、容易に所望の仮想物体を取得することが可能になる。例えば、旅先の観光地で取得できるランドマークに関する仮想物体をそのランドマークを写した写真に紐付けて表示させたりすることで、あたかも仮想物体を持ち歩いたり、ブックマークしたような感覚を観察者に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の仮想物体表示装置の構成を表す図である。
【図2】本発明にかかる仮想物体表示装置の使用形態を示す図である。
【図3】表示装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】各表示方式で基準座標をどのように決定するかについて説明した図である。
【図5】位置固定表示方式が選択された際の表示画面の一例を表す図である。
【図6】オブジェクト固定表示方式が選択された際の表示画面の一例を表す図である。
【図7】常時表示方式が選択された際の表示画面の一例を表す図である。
【図8】姿勢固定表示方式が選択された際の表示画面の一例を表す図である。
【図9】実施の形態1における基準座標を設定するまでの処理手順を説明するフローチャートである。
【図10】仮想物体の状態遷移を表す図である。
【図11】観察者が表示方式を選択する際の表示画面の一例を表す図である。
【図12】仮想物体データを取得して表示部に表示するまでの処理手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図2は、本発明にかかる実施の形態の一例である仮想物体表示装置を説明するための図である。
【0018】
表示装置200は、例えば、撮像部201、表示部202、センサ群203、システム制御部204により形成され、サーバー205と通信する。観察者は、表示装置200をメガネのようにかけることにより、表示部202に表示された画像を観察することができる。センサ群203は、例えば位置センサ、姿勢センサなどを有するものである。
【0019】
本実施の形態では、表示装置はヘッドマウントディスプレイ(HMD)を想定するが、本実施の形態の変形としては撮像部201とセンサ群203を備えていれば、表示装置は観察者が観察可能な装置であれば良い(例えば携帯電話端末)。
【0020】
また、本実施の形態では、撮像部201および表示部202をそれぞれ左右二つずつ備え、左右で別々の画像を表示することにより、両眼立体視で視聴することができることを前提として説明するが、本実施の形態の変形としては両眼立体視画像に限定するものではない。
【0021】
次に本実施の形態にかかる表示装置200の詳細について説明する。
【0022】
図3は、表示装置200の内部構成を示すブロック図である。本発明の仮想物体表示装置を用いたシステムは、位置センサ301、姿勢センサ302、撮像部201、位置姿勢取得部303、表示方式切替部304、基準座標決定部305、座標計算部306、イベント検出部307、表示方式決定部308、表示画像合成部309、データ取得部310、表示部202、サーバー205によって構成される。
【0023】
位置姿勢取得部303、表示方式切替部304、基準座標決定部305、座標計算部306、イベント検出部307、表示方式決定部308、表示画像合成部309、データ取得部310は例えば、図2のシステム制御部204に組み込まれるような構成としても良い。この場合、仮想物体表示装置を用いたシステムは、表示装置200とサーバー205とを有する構成となる。
【0024】
または、位置姿勢取得部303、表示方式切替部304、基準座標決定部305、座標計算部306、イベント検出部307、表示方式決定部308、表示画像合成部309、データ取得部310は例えば、表示装置200とは別の観察者が観察可能な装置(例えば、携帯電話端末)に含まれるような構成としても良い。この場合、仮想物体表示装置を用いたシステムは、表示装置200と、表示装置200とは別の観察者が観察可能な装置(図示せず)と、サーバ205とを有する構成となる。
【0025】
位置センサ301とは、例えばGPSのような観察者が地球上のどこにいるかの絶対値を計測するするセンサである。姿勢センサ302とは、例えば、ジャイロセンサと加速器センサを組み合わせたものであり、観察者の姿勢を少なくとも3自由度以上で測定するためのセンサである。なお、姿勢センサ302を備える代わりに、ユーザーの視野をステレオカメラで撮影することでユーザーの姿勢を求めても構わない。
【0026】
データ取得部310は、サーバー205と通信する。サーバー205には、表示する仮想物体のデータが格納されている。
【0027】
本実施の形態では、データ取得部310がサーバー205と通信することで仮想物体データを取得するが、本実施の形態の変形としては、通信部を備えず、表示データ記録部を備えることで仮想物体データを取得しても構わない。
【0028】
表示部202は、観察者に合成した画像を表示する。この表示部202は、合成画像を表示し、観察者に計算された三次元画像を見せる。また、以降の説明では、実世界を撮像した映像に仮想物体を重畳することを前提として説明するが、本実施の形態の変形としてはディスプレイ素子がそのまま透明で素通しで見える光学シースルー方式であっても良いし、仮想世界の映像に仮想物体を重畳するVR(Virtual Reality)空間での使用であっても構わない。
【0029】
撮像部201は、観察者の視野に入る像を撮影する。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を表示装置200としている場合には、表示装置200を装着していないときの観察者の視野に入る像を撮像部201は、撮影することになる。
【0030】
表示装置200において、表示部202を構成するディスプレイ素子がそのまま透明で素通しで見える光学シースルー方式を採用する場合には、観察者の視野に入る実世界の像を撮像部201は、撮影することになる。
【0031】
イベント検出部307は、例えば撮像部201で撮影された画像を用いて観察者のジェスチャを認識し、イベントが入力されたか否かを監視する。イベント入力が発生すると、表示方式決定部308が仮想物体の表示方式を決定する。
【0032】
表示方式決定部308は、例えばイベントに関連付けた表示方式に関する情報を保持している。
【0033】
イベント検出部307において、イベントが検出されたとき、表示方式決定部308は、保持する情報の中から検出されたイベントに対応する表示方式を調べ、表示方式の決定を行う。
【0034】
本実施の形態では、撮像した画像からイベント入力の有無を判断しているが、本実施の形態の変形としては、観察者の視線入力や、表示装置に取り付けられた物理デバイス、その他のリモートコントローラ等の入力デバイスを使用してイベント入力の有無を判断しても構わない。
【0035】
表示方式切替部304は、表示方式決定部308の決定に従って表示方式を切り替えるとともに、切り替えた表示方式に関する情報を格納する記憶部(図示せず)を有する。記憶部を有することにより、表示方式決定部308から送られる表示方式に関する情報と、記憶部に記憶されている情報とを比較することにより、表示方式決定部308から新たに送られる表示方式に関する情報が、以前の表示方式と同じかどうかの判断ができる。
【0036】
基準座標決定部305は、選択された表示方式に基づいて三次元仮想空間内での提示対象とする仮想物体の提示位置の基準となる座標系を決定する。
【0037】
データ取得部310は、表示すべき仮想物体を判定し、サーバー205から仮想物体のデータを取得する。
【0038】
座標計算部306は、計測された観察者の位置、姿勢、撮影された映像から、表示対象の仮想物体の座標変換を行う。UI画像生成部311は、イベント検出部の結果を判断して、種々のグラフィックユーザーインターフェースを生成する。表示画像合成部309は、UI画像生成部311で生成されたグラフィックユーザーインターフェース、座標変換された仮想物体、撮像された現実世界の映像を重畳、合成して表示部202に出力する。
【0039】
本発明にかかる仮想物体表示装置は、複数の表示方式を有する。表示方式には、例えば以下の4つの形式がある。
【0040】
1、仮想物体を物理的な位置(例えば、GPSでとった情報)に表示する位置固定表示方式
2、仮想物体をマーカーなどの特定の物体(オブジェクト)からの相対位置で表示することオブジェクト固定表示方式
3、観察者の視界に常に表示し続ける常時表示方式
4、物理的な位置や、特定の物体には紐づかず、観察者が特定の姿勢をした場合に仮想物体を表示する表示する姿勢固定表示方式
ここで、特定の姿勢とは、例えば、上、下、左、右、後方のことであり、観察者は上を向いたと判断されたときのみ仮想物体を表示するといった表示方式である。
【0041】
本実施の形態では、上記4つの表示方式を備えることを前提として説明するが、もちろんこの4つの形式全てを備えなくてもかまわない。また、上記4つの表示方式以外の表示方式を備えていても構わない。
【0042】
図4を用いて各表示方式で基準座標をどのように決定するか説明する。
【0043】
同図において、固定の世界座標系400におけるセンサ座標系401の姿勢をRBW、センサ座標系401における姿勢センサ302の姿勢をRSB、姿勢センサ302から見た観察者の視点403の相対的な姿勢をRvs、世界座標系400における観察者の姿勢をRVWとする。ここで世界座標系400は観察者位置を原点とする座標系である。
【0044】
ここでRは4×4の行列であって、RBAは、座標系Aにおける対象Bの姿勢記述するものであり、すなわち座標系AからBへの変換行列である。
【0045】
また、行列Rは、X軸周りの回転角θによって定義される回転行列R、Y軸周りの回転角φによって定義されるR、Z軸周りの回転角ψによって定義されR、平行移動を表すRの積により構成されており、R=Rの関係が成立する。
【0046】
このとき、世界座標系400における観察者の視点RVWは、RVW=RVS・RSB・RBWで表すことができる。
【0047】
物理的な位置に仮想物体を表示する位置固定表示方式の場合、基準座標を物理的な位置Bを原点とする座標系404に置く。座標系404における観察者の視線は、位置センサから取得できる位置Aの値と位置Bの値を用いて得られる座標系401から座標系404への変換行列RBWを用いてRVB=RBW・Rvw=RBW・RVS・RSB・RBWで表すことができる。
【0048】
マーカーなど、特定のオブジェクトを原点にした座標系を基準座標として仮想物体を表示するオブジェクト固定表示方式の場合は、基準座標系をオブジェクトの上面の中心Cを原点とする座標系405に置く。観察者の視点から見た位置Cは、撮像部201で得られる画像から画像認識技術等を用いて得ることができる。
【0049】
観察者の視界に常に表示し続ける常時表示方式および観察者の姿勢に合わせて表示する姿勢固定表示方式の場合は、基準座標を視線座標系に固定する。
【0050】
図5は、位置固定表示方式で表示した場合の観察者の視界を示す。
【0051】
現実世界のある地点を原点に基準座標系が設けられ、この座標系で描画された仮想物体が表示される。
【0052】
図6は、オブジェクト固定表示方式で表示した場合の観察者の視界を示す。
【0053】
現実世界のあるオブジェクトを原点に基準座標系が設けられ、この座標系で描画された仮想物体が表示される。
【0054】
図7は、常時表示方式で表示した場合の観察者の視界を示す。
【0055】
観察者の位置、姿勢に関わらず、観察者の視界の特定の位置に仮想物体が表示される。
【0056】
図8は、姿勢固定表示方式で表示した場合の観察者の視界を示す。観察者が特定の姿勢をした場合にのみ、観察者の視界の特定の位置に仮想物体が描画される。
【0057】
次に、仮想物体を描画する際の具体的な処理を説明する。
【0058】
図9は、本実施の形態1における基準座標を設定するまでの処理手順を説明するフローチャートである。
【0059】
まず、ステップS900において、イベント検出部307が、表示方式切替イベントが発生したか否かを監視する。イベント入力が発生したことを検出すると、表示方式決定部308は、発生したイベントに対応する表示方式を決定し、表示方式切替部304に決定した表示方式に関する情報を送る。表示方式切替部304は記憶部(図示せず)に格納された表示方式が現在の表示方式と同一かどうか判断する(S901)。同一でない場合は、表示方式決定部308で決められた表示方式に変更し、変更した表示方式に関する情報を記憶部(図示せず)に記憶するとともに、基準座標決定部305に通知する(S902)。切り替えた表示方式が、位置固定表示方式の場合は(S903のYes)、表示方式が仮想物体の属性情報に仮想物体を表示する位置情報を書き込む(S904)。仮想物体の属性情報は、例えば、XML(eXtensible Markup Language)により記述される。切り替えた表示方式がオブジェクト固定表示方式の場合は(S905のYes)、撮像データより、三次元仮想空間内での表示位置の基準となるオブジェクトの特徴点を抽出し(S906)、仮想物体の属性情報に基準となるオブジェクトの特徴点データを追加する(S907)。切り替えた表示方式が姿勢固定表示方式の場合(S908のYes)は、姿勢センサ302より観察者の姿勢を取得し(S909)、取得した姿勢を仮想物体表示姿勢として仮想物体の属性情報に追加する(S910)。前記基準座標の決定フローにより、仮想物体を表示する座標系を基準座標に設定する(S911)。
【0060】
なお、ステップS903、ステップS905およびステップS908のいずれもNoの場合、切り替えた表示方式は常時表示方式であり、この場合はステップS911の処理を行うことになる。
【0061】
以上の説明により、観察者のジェスチャに基づいて表示方式を制御することができる。
【0062】
上述の説明では、観察者のジェスチャ対応する表示方式を決めるような構成としたが、観察者の一つまたは複数のジェスチャにより、表示方式を選択するための画面をUI画面表示し、UI画面から表示方式の切替命令を入力する構成としても良い。
【0063】
以下に、UI画面を介して表示方式の切替命令が発生する際の本装置の動作について説明する。
【0064】
図10は、仮想物体の状態遷移を表す。仮想物体は初期状態では非選択状態にある。使用者が仮想物体を手でつまむ動作を行うことをイベント検出部307が検出すると、仮想物体は選択状態に遷移する。使用者が仮想物体をつまんだ状態を維持したまま、オブジェクトを動かす動作をイベント検出部307が検出すると、例えばコンピュータ上でのドラッグ操作と同一の処理が行われ、仮想物体は移動状態に遷移する。次に、使用者が仮想物体をつまむ操作を終了し、手を放す動作をイベント検出部307が検出すると、ドラッグ処理が終了したと判断し、仮想物体は表示方式選択状態に遷移する。表示方式選択状態に遷移するとイベント検出部307は、UI画像生成部311にUI画面を作成するための命令を出力する。
【0065】
UI画像生成部311は、イベント検出部307からの出力を受け、観察者が表示方式を選択するためのグラフィックユーザーインターフェース画面(つまりUI画面)を作成する。UI画像生成部311により作成されたUI画面は、表示画像合成部309により合成される。合成された画像は、表示部202により表示される。
【0066】
図11は、表示方式選択状態の際に表示部に現れる画面の一例を表す。グラフィックユーザーインターフェースは、各々の表示方式を表すアイコンを表示する。使用者は、表示された選択肢の中から、表示方式を選択する。表示方式が選択されると、イベント検出部307は表示方式切替イベントを検知し、仮想物体は再び非選択状態に遷移する。
【0067】
このとき、表示方式決定部308は、選択された表示方式を表示方式切替部308に出力する。
【0068】
次に、本装置が仮想物体のデータを取得して、表示部202に表示するまでの処理を図12を用いて説明する。データ取得部310は、表示方式決定部より、現在の表示方式を取得する(S1200)。
【0069】
取得した表示方式が位置固定表示方式の場合(S1201のYes)、位置姿勢取得部303より、観察者の現在の地球上での位置Pcを取得する(S1202)。次にステップS703により保存された基準座標の位置情報Poを取得し(S1203)、PoがPcと十分近いか判定する。ここで、十分近いとする範囲は、あらかじめ定められた固定値でも良いし、基準座標ごとに定められていても良い。PoとPcが十分の近いと判断された場合、Poは表示範囲内に含まれていると判断され(S1204)、サーバー205から仮想物体のデータが取得される(S1213)。
【0070】
取得した表示方式がオブジェクト固定表示方式の場合(S1205のYes)は、ステップS906で保存された基準座標の特徴点を取得する。撮像部201で取得された観察者の視野画像中に、前記特徴点と一致する特徴点があるか照合する(S1207)。特徴点が一致すると判断された場合(S1208のYes)サーバー205から仮想物体のデータが取得される(S1213)。
【0071】
取得した表示方式が姿勢固定表示方式の場合(S1209のYes)は、位置姿勢取得部303より、観察者の現在の姿勢を取得する(S1210)。次にステップS909で仮想物体の属性情報に保存された仮想物体表示姿勢Aoを取得する(S1211)。AcとAoが同一の方向を向いているか否か(つまり、Acは表示範囲か否か)を判断し(S1212)、同一の方向を向いている場合(つまり、Acは表示範囲である場合)は、サーバー205から仮想物体のデータが取得される(S1213)。座標計算部306は、基準となる座標系と位置姿勢取得部303により取得された観察者の位置姿勢から、取得されたデータより生成される仮想物体の三次元仮想空間内での座標変換を行う(S1214)、座標変換された仮想物体は、表示部でレンダリングされる(S1215)。
【0072】
(変形例1)
本実施の形態の変形例として、位置情報を利用した拡張現実サービスを応用しても良い。位置情報を利用した拡張現実サービスでは、現在の位置情報をサーバー送信し、表示する仮想物体を取得する。位置固定表示方式において位置Pで表示される仮想物体について、位置固定表示方式から異なる表示方式が選択された場合、ステップS1213において、サーバーに擬似的に位置Pを送信し、所望の仮想物体を取得するという方法をとっても構わない。
【0073】
かかる構成により、位置固定表示方式でない表示方式においても、位置情報を利用した拡張現実サービスを利用することができる。
【0074】
(変形例2)
本実施の形態では、一つの仮想物体を表示する際の処理について説明したが、仮想物体は一つに限定されるものではなく、複数あって良い。この場合、仮想物体Aは位置固定モードであるが、仮想オブジェクトBは姿勢固定モードとするように、仮想物体によって表示方式を変えても良いし、各々の仮想物体に基準座標が定められて良い。
【0075】
かかる構成により、複数の仮想物体を複数の表示方式で重畳表示することができるため、観察者にさらに多彩な拡張現実感を提供できる。
【0076】
(変形例3)
本実施の形態では、観察者入力のよって表示方式を切り替えることを前提に説明したが、切替判定は観察者の入力ではなく、システムが仮想物体の属性から自動的に判断しても構わない。例えば、TODOリストのような仮想物体であれば常時表示方式、カレンダーや時計のような仮想物体であれば左を向いたときに表示する姿勢固定表示方式、商品の広告に関する仮想物体であればオブジェクト固定表示方式、不動産広告に関する仮想物体であれば、位置固定表示方式に自動的に判断するといった具合である。
【0077】
下記に、表示方式を自動的に判断する処理の一例を説明する。
【0078】
仮想物体の属性情報には、表示方式に関するフラグが表示方式の数だけ存在し、各々の表示方式に対応する。表示方式フラグは排他的であり、ある表示方式のフラグが1(TRUE)に設定されると、その他のフラグは0(FALSE)に設定される。本フラグは、例えば仮想物体を追加または編集する際に、設定することが可能である。表示方式決定部308は仮想物体の属性情報より表示方式フラグ群を取得し、フラグが1に設定されている表示形式を仮想物体の表示形式として決定する。表示方式を決定した後はステップS901以降と同じ処理を行う。
【0079】
かかる構成により、観察者の煩わしさを低減させながら、仮想物体の特性に応じた最もふさわしい表示形式を自動的に表示させることができる。
【0080】
(変形例4)
本実施の形態では、位置固定表示方式、オブジェクト固定表示方式、常時表示方式、姿勢固定表示方式の4つの表示方式を持つことを前提として説明したが、もちろんこの4つの形式全てを備えなくても構わない。また、上記4つの表示方式以外の表示方式を備えていても構わない。
【0081】
例えば、他に、第三者の視界画像、姿勢位置、位置情報等を受信して、第三者の視界に表示される仮想オブジェトを自分の視界にも表示する他者目線表示方式等があっても良い。
【0082】
かかる構成により、別の場所にいる他者の視界情報を得られ、疑似体験等をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の仮想物体表示装置によれば、仮想物体の操作を容易且つ高自由度で操作することが可能になる。拡張現実を利用したクーポンサービスや、コミュニケーションサービス、アイテムを集めるような仮想空間内でのゲーム等への応用が期待される。
【符号の説明】
【0084】
101 姿勢センサ
102 姿勢情報出力部
103 メモリ
105 画像生成部
106 表示画像
200 表示装置
201 撮像部
202 表示部
203 センサ群
204 システム制御部
205 サーバー
301 位置センサ
302 姿勢センサ
303 位置姿勢取得部
304 表示方式切替部
305 基準座標決定部
306 座標計算部
307 イベント検出部
308 表示方式決定部
309 表示画像合成部
310 データ取得部
311 UI画像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者の位置姿勢を取得する位置姿勢取得部と、
複数の画像表示方式から、一つの表示方式を決定する表示方式決定部と、
前記表示方式決定部で決定された表示方式に、前記表示方式を切り替える表示方式切替部と、
前記表示方式決定部で決定された表示方式に基づいて、表示対象とする仮想物体の三次元仮想空間内での表示位置の基準となる座標系を決定する基準座標系決定部と、
前記仮想物体のデータを取得するデータ取得部と、
前記基準座標系決定部により決定された基準となる座標系と前記位置姿勢取得部により取得された前記観察者の位置姿勢から、三次元仮想空間内での表示対象の前記仮想物体の座標変換を行う座標計算部と、
前記データ取得部で取得した前記仮想物体のデータを、前記基準座標系決定部で決定された座標系によって、前記座標計算部で座標変換された三次元仮想空間内での所定の位置に重畳して表示部に表示する表示画面合成部と、
を備える仮想物体表示装置。
【請求項2】
前記表示方式決定部は、前記観察者からのイベント入力に応じて表示方式を決定する請求項1に記載の仮想物体表示装置。
【請求項3】
前記表示方式決定部は、前記観察者が画像表示方式を選択するためのグラフィックユーザーインターフェースを表示する請求項2に記載の仮想物体表示装置。
【請求項4】
前記表示方式決定部は、表示対象の前記仮想物体の特徴に応じて表示方式を決定する請求項1に記載の仮想物体表示装置。
【請求項5】
前記複数の画像表示方式の一つは、前記仮想物体を地球上の緯度、経度、高度のような絶対値の位置に表示する請求項1から4のいずれか1項に記載の仮想物体表示装置。
【請求項6】
前記複数の画像表示方式の一つは、現実または仮想の特定の物体が前記観察者の視界に入っている場合に、前記仮想物体を特定の物体からの相対位置で表示する請求項1から4のいずれか1項に記載の仮想物体表示装置。
【請求項7】
前記複数の画像表示方式の一つは、前記観察者の位置姿勢に関わらず、常に前記観察者の視界の特定の位置に前記仮想物体を表示する請求項1から4のいずれか1項に記載の仮想物体表示装置。
【請求項8】
前記複数の画像表示方式の一つは、前記観察者の位置に関わらず、前記観察者の姿勢が、特定の姿勢と一致した場合に前記仮想物体を表示する請求項1から4のいずれか1項に記載の仮想物体表示装置。
【請求項9】
前記データ取得部で取得される前記仮想物体のデータには、前記仮想物体に対応した表示方式を決定するための属性情報が含まれ、
前記表示方式決定部は、前記属性情報を用いて前記表示方式を自動的に決定する請求項1記載の仮想物体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−128779(P2012−128779A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281590(P2010−281590)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】