説明

任意のステアリング中にコヒーレントな合成ビームを保持するための方法及び装置

光学系の送信経路の位相差を明らかにするための方法及びシステムが提供される。送信制御システムが、コヒーレント光源から位相サンプラまで伝搬し、送信機センサに戻される信号内の位相誤差を無くす。各開口のフィードファイバに小さな時間依存性長変調が適用され、この変調によって、ヒルクライミングサーボループが、検出される強度を増加できるようにするか、場合によっては最大にできるようにする。この結果として、全ての位相サンプリング点において、位相間に特定の関係が生じる。その後、光学系が照準に合わせられるときに、この関係が同相ビームに対応するように、光学系が較正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において記述される構造及び技法は光送受信システムに関し、より詳細には、自由空間レーザ/光送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野において知られているように、たとえば光通信システムのような光送受信システムにおける受信動作の場合、光開口のアレイに入射するときに位相波面が均一であり、システムの受信経路が、受信経路内の位相誤差を微調整して補償するための役割を果たす。位相誤差を補償することによって、受信機に入射する電力を最大にすることができる。
【0003】
送信動作中に、コヒーレント光源が光送信信号(たとえば、光通信信号)を与え、その信号は複数の光開口間で分割され、それらの開口を通じて放射される。送信信号は、位相波面が1つの面を形成するような位相で各開口から出射するのが理想的である。しかしながら、送信動作に伴う1つの問題は、所望のサイズ、重量及び電力(SWaP)制約を満たしながら、システムが送信信号のコヒーレンスに関する一定の要件を満たすことができるように、開口間波面誤差(全体的な、すなわち「ピストン(piston)」位相誤差を含む)を動的、且つ連続的に測定し、補償する能力である。たとえば、或る通信システムでは、システムは、動作プラットフォームの指定されたSWaP制約を満たしながら、十分なリンクマージンを達成するために、一定の要件を満たさなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書において記述される技法及び概念によれば、本明細書において位相サンプラと呼ばれる局所後方結合機構が光送信システム内の各開口に配置され、送信経路内の全ての開口から放射される光信号間のコヒーレンスを得るために用いられる信号を与える。送信信号が各開口から出射するときに、該送信信号の一部を遮断し、その捕捉された信号部分を反射するか、又は他の方法で方向を変更して開口内に戻し、それゆえ、送信経路を通じてその捕捉された信号部分の方向を変更する。後方に反射された信号部分は、それぞれの送信経路の中を進み、送信機センサ及び送信制御システムに送られ、送信制御システムはそれらの信号を解析し、制御信号を与えて、個々の送信経路長を制御する。
【0005】
この特定の構成によれば、光学系の送信経路内の位相差を明らかにするための技法が提供される。送信制御システムはコヒーレント光源から位相サンプラまで進み、そして送信機センサに戻される任意の位相誤差を無くす。送信制御システムは、各開口に結合されるフィードファイバを介して結合される光に、小さな時間依存位相変調を適用する。この変調は、ヒルクライミングサーボループが、送信信号経路の位相長を調整することによって、後方に反射される信号部分の検出強度を最大にできるようにする。この結果として、位相サンプリング点における位相間に特定の関係が生じる。システムが照準に合わせられるときにこの関係が同相ビームに対応するように、その後、システムが較正される。一実施形態では、その変調はファイバストレッチャを介して与えられるが、当然、適切な変調を与えることができる任意の技法又は装置を用いることもできる。
【0006】
後方に反射された信号部分(制御ビームとも呼ばれる)は送信経路を2回(各方向において1回ずつ)通るので、送信制御システムは、相対的な往復送信経路長が送信波長(λTx)の整数倍であること、又は別の言い方をすると、相対位相(Δθnm)が2πの整数倍だけ離れるのを確実にする。しかしながら、送信経路を2回通るので、各開口の出口面における相対位相はπの整数倍になるが、必ずしも2πの整数倍にはならない。これは、位相サンプラによって画定される面における相対位相がλTx/2に対してしか制御されず、所望の全波に対して制御されないことを意味する。これは、πの不確かさ、又は曖昧さをもたらす。概念上、システムは、遠隔端末から報告される強度を記憶しながら、種々の起こり得る位相シフトを試験し、その後、結果として最大強度を生成する位相シフトを選択する。システムが適切に初期化されると、送信制御システムは任意の不連続な位相変化を防ぐので、曖昧さはそれ以上、何の影響も及ぼさない。
【0007】
曖昧さが解決されるものと仮定すると、特定の時点において、開口のそれぞれから送信されるビームの波面は、その位相サンプラによって規定される点を通る。この例のために、位相サンプラによって規定されるこれらの点は、照準に対して垂直を成す面内に存在するものと仮定されるが、これは必要条件ではない。その制御方法は、所与の時点において、各開口の送信波面が位相サンプラによって規定される固定点を含むことを保証する。任意の経路長外乱は直ちに相殺され、「波面が照準に対して垂直である」状態を保持する。波面は照準に固定されるので、ステアリング角から生じる相対的な位相変化を補正するために、その送信手法にさらなる機構が必要とされる。これは、送信ビームのステアリングに起因する開口位相誤差を計算し(すなわち、幾何学的に計算される位相シフト補正)、幾何学的に計算された位相シフトを送信ビームに直に適用することによって成し遂げられる。この幾何学的に計算された位相シフト補正は、送信ビームのみに適用され、制御ビームには適用されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】光学系の送信経路のブロック図である。
【図2】2開口システムのブロック図である。
【図2A】波面が補正されていない図2の2開口システムのブロック図である。
【図2B】波面が補正されている図2の2開口システムのブロック図である。
【図3】制御過程の機能を示す機能ブロック図である。
【図4】開ループステアリング角補正を用いる制御過程の機能を示す機能ブロック図である。
【図5】多開口システムの一部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
任意のステアリング中にコヒーレントな合成ビームを保持するための光送信システム及び光通信方法を記述する前に、いくつかの入門的な概念及び用語を説明する。
本明細書において「後方結合機構」又は「位相サンプラ」がたびたび参照される。本明細書において用いられるときに、用語「位相サンプラ」は、光路内の下流点から到来する光の一部を遮断し(又は結合するか、又は別の方法で捕捉し)、そのように遮断された光を、光路を通じて後方に送信する(すなわち、その光を、光路を通じて上流に送信する)ことができる任意の素子又は構造を指す。典型的には、位相サンプラは、任意の上流にある構成要素の熱又は経時変化のためにドリフトする場合がある位相シフトを有する光を遮断し、そのように遮断した光を、光学的な構成要素列を通じて所定の点(たとえば、信号が単一の光源ファイバから分割されるか、又は単一の受信ファイバに合成される場所)まで後方に(上流に)送信し、フィードバック制御を用いて位相ドリフトを相殺することによって、コヒーレントに合成された位相安定複合出力ビームが達成されるようにする。
【0010】
「後方結合機構」又は「位相サンプラ」は、複数の方法において提供される場合がある。1つの位相サンプラ実施形態は、メイン送信ビームがステアリングされるときに、送信開口の一部(たとえば、1つの象限)がステアリングされないように構成することによって提供される。角度を変更するために光フェーズドアレイ(OPA)を用いるシステムでは、たとえば、OPAの制御電極構造を適切に形成することによって、開口の一部がビームをステアリングしないように構成することができる。一般的に、必要とされるのは、ビームの一部がビームステアリングシステムを迂回することだけである。その部分はミラーに入射し、ミラーはその光の方向を変更して正反対の方向に送信する。これらのミラーの相対的な位置は全体的な位相安定性を決定するので、それらのミラーは全て、個々のミラーを支持する軽量で、硬質のフレームとすることができる単一の構成要素の一部であるか、又は残りの部分に反射防止コーティングを有する単一のオプティカルフラットの表面の高反射性の部分であることが好都合である。
【0011】
第2の位相サンプラ実施形態では、送信開口全体にわたって、ステアリングされない光部分が存在する。OPAに基づく電子ビームステアリングを用いるビームステアリングシステムでは、これは、或る量の光がステアリングされることなく通り抜けられるように、送信開口内に具現される電子ビームステアリング装置への制御信号を変更することによって果たすことができる。この場合、第1の実施形態におけるオプティカルフラットと同じように配置されるミラーが、高反射及び低反射の部分の代わりに、全体を通じて、部分的に反射性のコーティングを設けられる。
【0012】
第3の実施形態では、たとえば、http://en.wikipedia.org/wiki/Retroreflectorにおいて記述されるタイプから成る場合がある逆反射デバイスが、送信開口の一部の前面に配置され、それによって出射ビームの一部を遮断し、逆反射する。そのような実施形態では、送信ビームステアリングシステムの機能への変更は不要である。
【0013】
ここで図1を参照すると、1つの例示的な光学系の送信部分10が、光源又は送信機12を備えており、光源又は送信機12は信号経路13(たとえば、光ファイバ)に沿って結合器14の入力ポート14aに光信号を与え、結合器14aは、たとえば、ファイバ方向性結合器として設けられる場合がある。ここでは、結合器14は2×2結合器として示される。しかしながら、一般的には、N個の出力を有する結合器14が設けられる。ただし、Nは、システム10に含まれる開口の数に対応する。したがって、結合器14は、包括的に、2×N結合器と呼ばれる場合がある。他の構成要素(ファイバ光結合器と機能的に同等である単一の構成要素又は構成要素の組み合わせ)が用いられる場合があることも当然理解されたい。以下の説明では、本発明人は、Nを2とするが、3つ以上の開口を有するシステムの場合にも当てはまるように、Nは2よりも大きな数である場合があることを理解されたい。
【0014】
結合器14は、出力ポート14b、14cにおいて等しい電力の出力信号を与え(典型的にはそうであるが、必須ではない)、それらの出力は、信号経路16a、16bを介して、一対の光開口18a、18bのそれぞれの第1の端部に結合される。その光信号は、それぞれの開口18a、18bの中を伝搬し、各開口はビーム19a、19bを生成する。開口ビームは同じ方向に送られるので、ビームを構成する波面は平行である。本明細書において説明する本システム及び技法の目的は、これらのビームの波面が、平行なだけではなく、同一平面内にあるように構成することである。そのような共通の波面は波面20として示される。
【0015】
開口18a、18bのそれぞれは、その開口に関連付けられる位相サンプラを有する。それらの位相サンプラは、それぞれ開口において信号を結合し、それらの信号の方向を変更して、それぞれの送信信号経路を通じて戻すように配置される。後にさらに詳細に説明するように、これらの方向を変更された信号は処理され、システム要件を満たすために必要とされる全ての開口間の送信経路コヒーレンスを得るために用いられる。各位相サンプラは1つの開口に関連付けられ、それゆえ、その開口に対して「局所的である」ので、「局所」後方結合機構と呼ばれることもある。
【0016】
一実施形態では、位相サンプラ21a、21bは、それぞれの送信される信号(又はビーム)がそれぞれの開口18a、18bからそれぞれ出るのに応じて、それらの信号のそれぞれの一部を遮断し、遮断された信号部分の方向を変更して、それぞれの開口に戻す。
【0017】
方向を変更されてそれぞれの開口18a、18bに戻される送信信号の部分は、それぞれの信号経路16a、16bを通って伝搬して結合器14b、14cに戻り、結合器14を通ってポート14dまで伝搬する。その信号は、結合器ポート14dから信号経路22を通って送信機センサ24に結合される。
【0018】
上記のように、位相サンプラ21a、21bは、種々の異なる構造及び/又は技法を用いて実現することができる。しかしながら、位相サンプラが実現される具体的な態様にかかわりなく、捕捉され、方向を変更される送信信号の部分は、好ましくは、他の光学構成要素から反射される任意の迷光よりも著しく強くすべきである。一般的に、方向を変更される部分は、送信される信号電力の約5パーセント(5%)〜約25パーセント(25%)の範囲とすることができる。必要とされる光の量は、限定はしないが、用いられる変調のタイプ、迷光の振幅のドリフト量、及び特定の応用例にとって特有である場合がある他の工学要因を含む、種々の要因に依存することは当然理解されたい。したがって、実施形態によっては、方向を変更される部分は、上記で言及された例示的な範囲から外れる場合もある。
【0019】
送信機センサ24は、結合器ポート14dから該センサに与えられる信号を検出し、送信制御システム26にセンサ出力信号を与える。位相サンプラ21a、21bによって開口18a、18bから方向を変更される信号部分間の位相関係に応じて異なる信号特性(たとえば、信号強度)を有するセンサ出力信号が与えられる。その変化は、結合器14が光電界に作用し、N個の入射電界の和に依存する出力電界を生成するという事実から自然に生じる結果である。この電界の和の強度を送信機センサ内の光検出器によって検出することによって、当該技術分野においてよく知られているように、不可欠な位相依存信号が生成される。送信制御システム26(本明細書において制御モジュール26とも呼ばれる)は、送信機センサ24から与えられる信号に関する位相検出、復調及び解析を実行する。この過程は、ヒルクライミングサーボ制御の分野においてよく知られているように、センサ24に結合される信号を最大にするか、又は最小にすることに向かって、それゆえ、それぞれ、光源12に戻される信号を最小にするか、又は最大にすることに向かって、制御システムが、開口の相対的な位相シフトを動かす信号を生成できるようにする。
【0020】
センサ出力信号を解析した後に、制御モジュール26は、信号経路27に沿って、複数の位相変調器28a、28bのそれぞれに制御信号を与える(各位相変調器は自らの制御信号を受信する)。位相変調器28a、28bは、それぞれの信号経路16a、16bに結合される。位相変調器28a、28bは、与えられる制御信号に応答して、それぞれの信号経路16a、16bの経路長を調整する。
【0021】
送信制御システム26は、送信源12(それはコヒーレント光源として設けられる場合がある)から位相サンプラ20a、20bに送られ、そして送信機センサ24に戻される任意の位相誤差を無くす。これは、フィードファイバを介して各開口に結合される光に、小さな時間依存位相変調を適用することによって達成される。一実施形態では、これは、ファイバストレッチャを介して、各開口のフィードファイバ、たとえば、ファイバ16a、16bに小さな時間依存経路長変調を適用することによって達成される。この変調は、「位相ディザ」と呼ばれる。N個の開口を有するシステムでは、N個の異なるディザ信号が用いられる。これらの信号は、N個の異なる周波数を有する正弦波とすることができるか、又は適切に設計される(たとえば、ウォルシュ符号化、http://en.wikipedia.org/wiki/Walsh_codeを参照されたい)直交デジタル信号とすることができる。したがって、合成出力ポート14dにおいて、それらの信号は、区別可能な強度変調を与え、それゆえ、全体の和の位相に対する各ビームの位相は、同期検波によって抽出することができる。
【0022】
それゆえ、当該技術分野においてよく知られているように、送信センサ24における時間依存信号振幅の適切な復調を用いて、ヒルクライミングサーボループが、方向を変更された送信信号部分の検出強度を最大にできるようになる。当該技術分野においてよく知られているように、位相ディザ信号発生器によって復調回路に与えられる基準信号の位相を変更することによって、「ヒルクライミング」サーボは、所望により、検出される信号の最大値ではなく、代わりに、最小値まで駆動できるようになる。そのようなループは、センサ24、制御システム26、及び制御システムが位相変調器28に適用する変調によって具現される。したがって、変調器28は2つの機能を実行するので、実際には、一方又は他方の機能にとってそれぞれ最適な2つ以上の構成要素から構成される場合がある。一方の機能は、位相シフトの小振幅変調を提供することである。他方の機能は、位相シフト(典型的には、より低速で変化するが、より大きな振幅から成る)を適用して、2つの経路の全体的な位相を等しくすることである。
【0023】
出射する光には小振幅変調も存在し、その振幅は、遠距離場における合成ビーム振幅への影響が無視できるほど十分に小さいが(典型的には、1ラジアンの何分の1かのわずかな量)、システム26内の復調過程において十分な信号対雑音比を与えるほど十分に大きく選択される。この結果として、最終的に、全ての位相サンプリング点における位相間の特定の関係が生じる。その後、そのシステムは、システムが照準に合わせられるときに、この関係が同相ビームに対応するように較正される。
【0024】
方向を変更された送信信号部分(すなわち、制御ビーム)は送信経路を2回(各方向において1回ずつ)通るので、送信制御システム26は、相対的な往復経路長が送信波長(λTx)の整数倍であること、又は別の言い方をすると、ビームnとmとの間の相対位相(Δθnm)が2πの整数倍だけ離れるのを確実にする。ここで、n及びmは1とNとの間の開口識別番号である。その経路を2回通るので、各開口の出口面における相対位相はπの整数倍になるが、必ずしも2πの整数倍にはならない。これは、位相サンプラによって画定される面における相対位相がλTx/2に対してしか制御されず、所望の全波に対して制御されないことを意味する。これによって、πの不確かさ、又は曖昧さが生じる。概念上、システムは、遠隔端末から報告される強度を記憶しながら、種々の起こり得る位相シフトを試験し、その後、結果として最大強度を生成し、それにより送信位相経路が同じ位相長を有することを指示する位相シフトを選択する。システムが適切に初期化されると、その送信制御システムは任意の不連続な位相変化を防ぐので、曖昧さはそれ以上、何の影響も及ぼさない。
【0025】
曖昧さが解決されるものと仮定すると、特定の時点において、開口のそれぞれから送信されるビームの波面は、その位相サンプラによって規定される点を通る。本明細書において記述される例示的な実施形態のために、位相サンプラは、照準に対して垂直を成す面内に存在するものと仮定される。しかしながら、これは必要条件ではないことを理解されたい。位相サンプラが相対的にどの位置にあっても、波面を選択された一定の方向、たとえば、照準方向に対して垂直な方向に保持できるように、較正を用いて、制御システム26が適用しなければならない相対的な位相シフトを見つけることができる。
【0026】
位相アクチュエータ技術が、相対位相を制御し、それにより開口間のコヒーレンスを保持する1つの鍵である。本明細書において記述される例示的な実施形態では、各開口経路は、2つのタイプの位相アクチュエータを含む。1つのタイプの位相アクチュエータは短期(short-throw)圧電ファイバ移相器(FPS)と呼ばれ、高速の位相変化のために用いられる。ビームステアリングのためにOPAを用いる実施形態では、それよりも低速であるが、はるかに大きい場合もある位相変化は、開口のOPAによって処理される。代替的には、より大きな位相変化は、FPSがその範囲の限界に達した時点を検出する手段を組み込み、そして、整数の個数の波だけFPS位相シフトを動かす迅速な「リセット」信号を適用することによって、FPSによって処理することもできる。多開口システムでは、FPSリセット中に生じる送信ビームの短い外乱は許容可能である場合がある。OPAは、米国特許第4,964,701号明細書(Dorschner他)において記述される。
【0027】
OPAに基づく移相器における帯域幅制限を回避するための手段を示すために、本実施態様の詳細を説明する。高速の短期移相器が低速の「エンドレス」OPA移相器と直列に配置される。両方の移相器に制御ループが関連付けられ、これらのデバイスの長期位相の処理をOPAに任せながら、高速の移相器を用いて高速の(たとえば、振動によって引き起こされる)外乱を相殺する。簡単に述べると、OPAのエンドレス位相シフト能力は、開口にわたって鋸歯位相パターンを動かすことによって実現することができる。完全に1周期だけシフトする結果として、2πラジアンの位相変化が生じる。
【0028】
ここで図3を参照すると、2つの開口から放射されるビーム間に一定の位相関係を達成するために用いられる位相制御システム50の機能ブロック図が示される。上記のように、適切な較正技法を用いて、全てのビームの位相波面が同一平面上にあり、それにより遠距離場において最大強度が達成されるのを確実にするように、一定の位相関係を作り出すことができる。位相サンプラの相対的な位置が徐々にドリフトする(たとえば、熱による)ために、必要とされる「一定の」位相関係は、実際には、徐々に変化する場合がある。したがって、実際のシステムでは、遠隔端末又は目標物と狭い帯域幅で情報交換するための手段が望まれる。
【0029】
内部経路長(たとえば、ファイバ)の急激な変動に起因して、遠方の目標物との間で光が往復するのにあまりにも時間がかかりすぎて、要求されるコヒーレンス度を保持することができないことから、本明細書において記述されるような制御方式が必要とされる。ここで、その制御システムは、そのような急激な変動があっても、送信波面が同一平面を成すのに影響を及ぼさないようにする。すなわち、位相サンプラ内でドリフトから生じる低速の変動は、上記の狭帯域幅の情報交換によって処理されなければならない。典型的には、低速の変動の場合、1Hzの何分の1かのわずかな帯域幅で十分であり、それは、一連の再較正機能と見なすことができる。対照的に、振動、そして同様に内部ファイバの温度変化によって引き起こされる位相シフトは典型的には、数百Hzの帯域幅を有し、本明細書において開示されるようなシステムでしか相殺することができない。位相制御システム(図3において示され、それとの関連で説明されるシステム等)は、ハードウエア、ソフトウエアにおいて、又はハードウエア及びソフトウエアの組み合わせで実現される場合があることを理解されたい。
【0030】
図3に示される信号経路は、位相を搬送するものと理解されたい(たとえば、光電力ではない)。位相センサ52が、各出力ビーム65から位相誤差を検出する。上記のように、各ビームは位相ディザ信号を与えられており、その信号は全ての他のビームの位相ディザと周波数が異なる。ビーム全体の位相に対する各出力ビームの位相は、当該技術分野においてよく知られているように、同期検波器を用いることによって検出される。位相センサ52は、ヒルクライミングサーボループ動作との関連で上記で説明された復調を組み込む。要求される位相ディザは別個に与えられること、及び当該技術分野においてよく知られているように、同期復調できるようにするために同期信号が必要とされることを理解されよう。位相センサ52は、経路53に沿って、システムプロセッサユニット(SPU)54に位相誤差信号を与える。この信号は、同期検波技術の慣例的手段に従って、位相センサ52内でローパスフィルタにかけられる場合があるが、それ以外の点では、全てのビームの全体に対する出力ビームの位相を忠実に表している。詳細には、センサ52からの信号は、システムプロセッサユニット(SPU)54の開口位相誤差抽出プロセッサ56に与えられる。
【0031】
開口位相誤差抽出プロセッサ56は、位相センサ52から信号を受信し、位相センサ52から供給される入力位相誤差から開口毎の位相誤差を導出する。開口位相誤差抽出プロセッサ56は、感度行列を介して各開口に誤差を再分配する。
【0032】
感度行列は、再分配される位相誤差信号が全ての開口にとって同じになるように処理することを可能にすることを意図している。感度行列は、種々の位相変調器の相対感度を含み、開口から結合器14への信号経路内の任意の不均衡も明らかにする。感度行列は機能的には、単一の開口から戻される光の位相の小さな変化が、結果として全ての位相センサの出力の変化をもたらし、その結果としてその単一の開口の移相器に信号が加えられ、その結果として同一の位相シフトが生じるという要件によって定義される。この行列は、以下のような較正手順によって求められる。小さな既知の摂動信号(たとえば、電圧)が第1の開口のための移相器に加えられ、全ての開口の場合に、結果として生成された位相検波器出力が記録される。このリストは、行列Mの第1の行を含む。残りのN−1行は、残りの開口のそれぞれに同様の摂動信号を順に加えることによって求められる。その際、感度行列は、行列Mの数学的な擬似逆行列である。当該技術分野においてよく知られているように、そのような擬似逆行列は、平均的な平均二乗位相シフトが最小にされること等の移相器出力に関する或る要件を取り込むことによって求めることができる。
【0033】
その後、開口位相誤差抽出プロセッサ56は、比例/積分/微分(PID)プロセッサ58に信号を与え、PIDプロセッサ58は標準的なPID技法を実施して、位相センサ52によって測定される位相外乱を相殺するために必要とされる位相補正値を生成する。PIDプロセッサ演算の比例部は、開口位相誤差のスケーリングされた部分を補正項として直に適用することによって、位相外乱に直ちに反応できるようにする(ループ帯域幅の上限に近い周波数の場合)。積分器は、任意の誤差が残存する場合に時間と共に増加し続ける補正値を生成し、その誤差を0にする。サーボ制御の分野においてよく知られているように、2つの補正項(すなわち、比例部及び積分部)は加算され、出力値が生成される。
【0034】
PIDプロセッサ58は、出力値を、FPS位相補正プロセッサ60に与える。FPS位相補正プロセッサ60は、第1の加算回路62に補正信号を与え、第1の加算回路は、FPSオフロードプロセッサ66からの出力も受信する。FPSオフロードプロセッサは、要求される位相シフトの狭帯域幅部分の処理をOPAに「任せる」ことによって、FPS位相シフトをFPSの制御範囲内に保持するように設計される。したがって、全位相シフトは、FPSを通じて適用される広帯域幅部分と、OPAを通じて適用される狭帯域幅部分との和である。この和が、加算ブロック62によって表される。
【0035】
サーボ制御ループ図において一般的であるように、加算ブロック62から出力される加算された位相は、出力ビームに適用される前に、加算ブロック64によって表されるように環境の影響によって摂動を受ける。環境による摂動が迅速に解消されるように、システム内の種々の利得係数が設計される。ブロック62からの出力は、環境による外乱を引いたもの(the negative of environmental disturbance)となる。
【0036】
FPSオフロードループが存在しないとき、FPSが無限の制御範囲(throw)を有する場合には、コヒーレンスを保持することができる。FPSではなく、OPAが無限の制御範囲を有するので、上記のように、処理サイクル毎に、FPS位相補正の一部を開口のOPA対に適用することによって、OPAを用いて、FPSが中心に保持されるようにする。これは、位相オフロード過程と呼ばれ、図3において参照番号66で示される。PID位相オフロードプロセッサ68は、PID係数を適切に選択することによって、位相補正信号の狭帯域幅部分を抽出し、その後、これをOPAに適用し、位相をOPA制御信号に変換するために必要な処理は、FPS位相オフロード−OPAプロセッサ70によって実行される。FPS位相オフロード−OPAプロセッサの処理は、OPAの構造にも影響を及ぼし、McManamon他(Proc. IEEE vol 84 no 2, pp. 268-298, Feb. 1996)を参照することによって理解することができる。
【0037】
アクチュエータ(たとえば、FPS及びOPA)毎に位相補正が適用されると、理想的な静的システムが、0位相誤差を検知するであろう。しかしながら、環境的な要因によって、位相外乱が常に引き起こされている。これにより、コヒーレンスを保持するために、システム位相誤差を絶えず監視して補正することが常に必要とされる。
【0038】
要するに、SPU54は、位相検知システムから開口毎の位相誤差を受信する。開口毎の位相誤差は、入力位相誤差から導出され、感度行列を介して、SPU内の各開口の処理ブロックに再分配される。この手法を用いるとき、開口毎に必要な位相補正項は、共通の補正関数を用いて計算することができる。位相補正計算を、全ての開口に対して用いられる1つの標準化された関数として書くことによって、その制御過程は、大きな多開口システムのために容易に拡張できるようになる。
【0039】
図3との関連で上記で説明された技法は静的なシステムにおいてコヒーレンスを保持するが、実用的な光送受信システムのための目的は、ビーム角を変更しながら、コヒーレンスを持続させることである。すなわち、そのシステムは、位相制御をリアルタイムに動的に実行しなければならない。
【0040】
これまでに説明されたように動作する制御システム26(図1)によって、任意の経路長外乱が直ちに相殺され、「照準に対して垂直な波面」条件が保持される。実際のシステムでは、波面は照準に固定されないので、ステアリング角から生じる相対的な位相変化を補正するために、その送信手法にさらなる機構が必要とされる。
【0041】
これを例示するために、ここで図2〜図2Bが参照され、それらの図面では、類似の素子はいくつかの図面を通じて類似の参照記号を設けられ、システム30が2つの開口32a、32bを有し(図2〜図2Bでは、一対のプレート38a、38bから設けられるように示されており、それらのプレート間には材料層39がある;これらのプレート及び材料はOPA又はOPA対を概略的に表す)、それぞれの送信ビーム35a、35b及び関連する位相波面36a、36bがステアリングされない状態で出射している(すなわち、各送信開口の照準と位置合わせされ、且つ軸37a、37bによってそれぞれ規定される方向において、送信信号36a、36bが開口32a、32bからそれぞれ出射する)。位相サンプラ34a、34bが、それぞれの開口32a、32bの中央部分40a、40b(たとえば、中心部)に配置され、各開口において、方向変更された2つの後方結合信号(それらは、反射して結合器41に向かって戻されるので、図2〜図2Bでは見ることができない)を生成する。方向変更された後方結合信号は、本明細書において制御ビームとも呼ばれる。これらの制御ビームは位相同期され(phase locked)、開口間で一定の位相差を与える(すなわち、制御ビームは、図1において素子21及び18を通じて戻され、ファイバ16の中に入り、制御システムはそれらのビームを変調し、その後、送信センサ24上に結果として生成される時間依存信号を用いて、位相を制御する)。制御ビームを作り出す手段に関する上記の検討に鑑みて、その部分が開口の中心に位置する必要はなく、ここでは、説明を明確にするために示されるにすぎないことを理解されたい。
【0042】
図2、図2Aでは、信号源42(たとえば、レーザ信号源)が結合器41を介して開口32a、32bに信号を与えることを理解されたい。また、結合器41は、図1に示される結合器14と同じ、又は類似のタイプから成る場合があり、素子34は図1に示されるビームステアリングサブシステム21の一部であることも理解されたい。
【0043】
制御ループ(図1において、結合器14、送信機センサ24及び送信制御システムモジュール26によって形成されるループ、並びに図4に示されるようなループ等)が、制御ビームを絶えず監視し、熱的な変動及び振動のような環境的な影響によって引き起こされる相対経路長の変化を補正する(たとえば、位相変調器28a、28bを介して送信信号経路位相長を調整することによる)。
【0044】
位相センサ52(図3)の出力においてローパスフィルタの出力にオフセットを適用したシステムによれば、原理的には、位相を微調整できるようになるが、これには、ハードウエア損失、増幅器利得及び検出器感度(すなわち、電圧対位相又は位相対電圧伝達関数)を極めて正確に知る必要があり、且つ/又はシステムの動作寿命にわたってこれらのパラメータを絶えず較正する必要がある。
【0045】
好都合なことに、光フェーズドアレイ(OPA)は、簡単な代替の解決策を提供する。具体的には、各開口内の空間分割を用いることによって、送信ビームに適用される位相シフトとは異なる位相シフトを制御ビームに適用することができる。そのような空間分割は、図2〜図2Bにおいて40a、40bによって示される。この技法によれば、各ビームの位相を独立して制御できるようになる。開口を分割することによって、プラットフォームが環境による摂動を受けても、制御ループは、制御ビームを用いて相対開口経路長を2πの整数倍に保持するという目的通りに動作できるようになる。
【0046】
送信ビーム及び制御ビームの両方に共通である位相アクチュエータを介して、送信ビームに同一の位相補正を適用することは、局所化した熱ドリフト及び振動による外乱が等しく補償されることを保証する。極めて正確な移相器及びビーム導波器として、送信ビームにおいてのみ存在するOPAのエリアを利用するとき、必要とされる、角度によって引き起こされる位相変化を、ステアリング角更新と同期して適用することができる。送信ビームが制御ビームから空間的に分離されるので、ステアリング角位相補正は、制御ビームとは無関係である。この手法のさらなる利点は、位相サンプラを較正できるようになることである。位相サンプラの機械的な位置決めに起因する任意の面外誤差を求めることができ、その誤差を、OPAを介して電子工学的に除去することができる。これは、位相サンプラアレイを製造するための機械的な制約を大幅に緩和する。
【0047】
図1〜図2Bとの関連で上記で説明されたシステムは、本明細書において記述される位相制御概念及び技法が応用されるプラットフォームを提供するが、それは、各開口から放射される送信信号のコヒーレントな合成を達成できるようにする制御過程及びその実施態様である。一実施形態では、その制御過程は、遠隔端末から受信されるか、又は遠隔端末に送信される均一な位相面を保持するための制御機構を提供する処理デバイスにおいて実行されるソフトウエアを介して実施される。
【0048】
非走査式の多開口システムでは、開口間の経路長差を生成する環境による外乱(すなわち、温度及び振動)に起因して全ての位相変化が生じる。走査及び指向が用いられるとき、遠距離場内の波面傾斜に起因して、付加的な開口間経路長変化がもたらされる。走査と共に、位相同期を保持するために用いられる技法を、図4〜図5との関連で後に検討する。
【0049】
ここで図2Aを参照すると、送信ビーム35a、35bが照準軸37a、37bから離れるようにステアリングされるとき、ステアリング角が送信ビーム上に、図2AにおいてΔで示される経路長差をもたらすので、送信ビームの位相波面36a、36bはもはや同一平面を成さなくなる。
【0050】
しかしながら、遠隔端末において最大電力束を保持するには、送信される全てのビームにわたって均一な位相を達成する必要がある。すなわち、位相波面36aは、Δだけオフセットされるのではなく、位相波面36bと同じ平面内に存在しなければならない。これが図2Bに示されており、図2Bでは、2つの送信ビーム35a、35bの位相波面36a、36bは、基準線39によって示されるように揃えられる。
【0051】
ステアリングされる波面を再び揃えるために、送信機能は、角度によって引き起こされる位相シフトを補正するために位相オフセットを必要とする。本明細書において上記で記述された技法は、後方結合される全電力を最大又は最小に保持するように、すなわち、0(又はπ)の位相オフセットを保持するように良好に機能する。位相変化Δを実現するために、上記のような位相制御システムを用いることができるが、図5との関連で後に説明するように計算される位相を加える必要がある。
【0052】
基本的な位相制御の実施態様は、走査を用いない場合にコヒーレンスを達成するために用いられる手法を検討することによって、最も良く理解することができる。
したがって、ここで図4を参照すると、開ループステアリング角補正を提供するために用いられる位相制御システム80の機能図が示される。ここで図3の類似の素子は類似の参照記号を設けられる。図4において要素82によって示されるように、環境による外乱が、図3との関連で説明されたのと概ね同じようにして取り扱われるが、図1との関連で説明されたように合成開口ビームをまとめてステアリングすることによって生成される位相誤差を明らかにするために、付加的な開ループ機能84が含まれる。そのような機能は、たとえば、位相補正プロセッサ84によって提供される場合があり、位相補正プロセッサ84は、ステアリング角86及びシステム較正値88を利用して、ステアリングのための開口位相補正値90を生成し、それは、その後、加算回路91に与えられ、さらにその後、出力ビーム65に適用される。
【0053】
環境による外乱72とは異なり、ステアリング角に起因する位相誤差の閉ループ測定は、遠隔端末からのフィードバックを必要とする。遠隔端末から情報を受信することができるが、データ転送において大きな時間遅延が引き起こされるので、厳密なコヒーレンス制御には不十分である。
【0054】
しかしながら、この問題に対する解決策は正確な位相制御にあり、それはOPAで達成可能であることがわかっている。これにより、計算された位相シフトを開ループに適用して、走査中にコヒーレンスを保持できるようになる。
【0055】
ここで図5を参照すると、ステアリングベクトル(k)が与えられるとき、空間内の点rにおける電界Eは、式(1)において示されるように定義される。
E(r)∝exp(jk・r−jωt) (式1)
ただし、
kはステアリングベクトル(所望のステアリングされるビームの方向における単位ベクトル)であり、
rは電界が測定されている空間内の点であり、
ωはラジアン単位の光周波数であり、
tは時間である。
【0056】
従来通りに、全ての電界は同じ依存性を有するので、式(1)は、式(2)において示されるように書き換えることができる。
E(r)∝exp(jk・r) (式2)
多開口システムでは、式(2)は、開口毎に、ステアリング及び位相オフセット項に分けられる。図5に示されるように、アレイの名目上の中心r、及び第iの開口のOPAステアリング座標の原点(たとえば、中心)をもたらすとき、式(2)は、式(3)として書き換えることができる。
【0057】
exp(jk・r)=exp(jk・r)exp(jk・(r−r))exp(jk・(r−r)) (式3)
これは3つの異なる位相項を残す。
【0058】
k・r:全体として一定の位相であり、除外される;
k・(r−r):その中心がrである開口から放射される通常の形の波であり、すなわち、開口i内のOPAが通常の動作において生成する波である;及び
k・(r−r):ステアリングに起因する位相オフセットであり、それは、全ての開口ビームを1つのコヒーレントビームに合成するのを確実にするために適用されなければならないものである。
【0059】
位相オフセット項をさらに位相シフトしない場合、経路長差が、遠隔端末において開口間位相誤差を引き起こす(図5に示される)。式(4)において表されるように、この誤差は、ステアリングに起因する開口位相誤差を計算し、それを全開口位相から減算することによって除去される。すなわち、位相オフセット項として計算された位相が、各(第iの)開口に適用される位相に加算され、それにより、遠距離場においてビームをコヒーレントに重ね合わせるために必要とされる平面波全体の波面を、あたかもそれらのビームが単一の大きな開口から到来してきたかのように保持する。
【0060】
ステアリングに起因する開口位相誤差=k・(r−r) (式4)
この補正の1つの重要な態様は、それが送信/受信ビームにのみ適用されることである。この補正が制御ビームにも適用される場合、FPSのための制御ループが、送信ビームへの効果を相殺して無効にすることになる。こうして、各開口内のOPAは、制御ビームの位相に影響を及ぼす部分(たとえば、40a、40b、図2、図2A、図2B)、及びメイン送信/受信ビームの位相に影響を及ぼす部分(たとえば、43a、43b)に分割される。必要とされる補正(式4)は局所端末制御システムによって検出することができないので、ステアリング位相誤差を補正するための過程は開ループ過程である。
【0061】
OPAによって適用される位相シフトは約0.01波まで正確であるので、遠距離場複合ビーム(全ての開口からの振幅の和)は、不完全なコヒーレントから無視できるほどの損失しか受けない。
【0062】
本特許の主題である種々の概念、構造及び技法を例示するための役割を果たす好ましい実施形態を説明してきたが、これらの概念、構造及び技法を組み込む他の実施形態が用いられる場合もあることは、ここで当業者には明らかになるであろう。
【0063】
たとえば、図1との関連で上記で説明された例示的な実施形態において、2つの開口を有する光送信システム10が示されることを理解されたい。当業者は、実用的なシステムが典型的には3つ以上の開口(たとえば、N個の開口)を含むことは当然理解されよう。したがって、光学系がN個の開口を含む場合には、結合器14は、N個の開口のそれぞれに送信信号の一部を結合するために、2×N結合器として設けられる。したがって、2つの開口を有する送信システム10を上記で参照したことは、説明を容易にし、説明を明確にするために行なわれたにすぎず、上記の、そして後述の概念は2つ以上の開口を含むシステムに明らかに当てはまるので、システム10を参照することは制限するものと解釈されるべきではない。
【0064】
したがって、一実施形態では、位相サンプラは、各開口から出射する送信信号(又はビーム)の一部を遮断し、遮断した信号部分の方向を変更して開口に戻し、送信信号経路を通じて戻す。後方に反射された信号を用いて、個々の経路長を制御する。このようにして、光学系の送信経路内の位相差を明らかにするための技法が提供される。
【0065】
したがって、本特許の範囲は説明された実施形態に限定されるべきではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲によってのみ限定されるべきであると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系内の送信経路の位相を較正するためのシステムであって、
(a)出力ポートを有する送信機光源と、
(b)前記送信機光源の前記出力ポートに結合される入力ポートを有し、且つ複数の出力ポートを有する結合器と、
(c)それぞれ、前記複数の結合器出力ポートのうちのそれぞれ1つに結合される第1の端部と、第2の端部とを有する、同数の複数の光路と、
(d)同数の複数の位相変調器であって、該位相変調器のそれぞれは、前記光路のうちの対応する光路に結合される、該同数の複数の位相変調器と、
(e)前記それぞれの光路の前記第2の端部にそれぞれ結合される同数の複数の光開口と、
(f)前記光開口のうちの対応する光開口にそれぞれ結合される同数の複数の位相サンプラと、
(g)前記複数の結合器出力ポートのうちの1つに結合される送信機センサと、
(h)前記送信機センサからセンサ信号を受信し、前記複数の位相変調器のそれぞれに制御信号を与えるように結合される送信制御システムとを備える、光学系内の送信経路の位相を較正するためのシステム。
【請求項2】
光送信システムの送信経路を位相較正する方法であって、該方法は、
(a)送信信号を生成すること、
(b)複数の送信信号経路を通じて前記送信信号を送ることであって、該複数の送信信号経路のそれぞれは1つの光開口を有する、送ること、
(c)前記それぞれの開口からの各送信信号の一部の方向を変更して、前記複数の送信信号経路のうちのそれぞれ1つを通じて戻すこと、
(d)方向を変更された各前記信号の位相を検知すること、及び
(e)方向を変更された各前記信号の前記検知された位相に従って前記複数の送信信号経路のうちの少なくとも1つの位相長を調整することを含む、光送信システムの送信経路を位相較正する方法。
【請求項3】
光送信機の送信経路に位相補正を適用する方法であって、該方法は、
(a)制御範囲が短い移相器(short-throw phase shifter)を調整して第1の位相外乱を相殺すること、及び
(b)OPAを調整して長い位相シフトを相殺することを含む、光送信機の送信経路に位相補正を適用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−507319(P2011−507319A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536018(P2010−536018)
【出願日】平成20年11月30日(2008.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/013242
【国際公開番号】WO2009/073158
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】