説明

伊達皮及びその製造方法、並びに伊達皮用の焼成鍋

【課題】 寿司等に巻きつけるだけで簡便に美麗な外観の伊達巻寿司等が得られ、しかも、伊達巻寿司等に用いて保管流通に供しても、保管・流通時の押圧により凹凸条の形状が扁平になり難く美麗な外観を維持できる伊達皮及びその製造方法並びに伊達皮用の焼成鍋を提供する。
【解決手段】 片面全面に複数の凹凸条2、3・・・を等間隔で施してある伊達皮1であって、前記凹条部2、2・・・の窪みの深さを3〜10mmとしてあり、かつ伊達皮1の肉部4の含気率を5〜50%としてあることを特徴とする伊達皮1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿司等に巻きつけるだけで簡便に美麗な外観の伊達巻寿司等が得られ、しかも、伊達巻寿司等に用いて保管流通に供しても、保管・流通時の押圧により凹凸条の形状が扁平になり難く美麗な外観を維持できる伊達皮及びその製造方法並びに伊達皮用の焼成鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、伊達皮は液卵に魚のすり身や調味液等を加えた原料混合液を鍋で焼成して調製される。そして、鬼すだれを用いてこの伊達皮で寿司飯を強く巻くことにより表面に凹凸条を形成した伊達巻寿司にされている。
【0003】
しかしながら、このようにして得られる伊達巻寿司は、まず伊達皮を作り、これを鬼すだれで強く巻きつけるという手間がかかるうえ、凹凸条の彫りが一定ではなく浅く形成され易いという問題があった。また、保管や流通に供した際には、伊達皮に形成した凹凸条に押圧力がかかると凹凸条が扁平になり一層彫りが浅くなり、見栄えが落ちて商品価値が下がるという問題があった。
【0004】
一方、特許文献1には、長方形のフライパン状の本体の内底面全面に、短手方向の凹凸条を一定間隔で連続的に形成した卵焼き器が開示され、この卵焼き器で卵焼きを製することで、鬼すだれを必要とせずに伊達巻風卵焼きを容易に調製できることが提案されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の卵焼き器は、平板から半円凸条部が突出したような波型形状とすることにより、卵液へ効率よく熱を加えるとともに、卵焼き器の凹条部で焼いた部分に焼き色をつけて卵焼き表面に筋状模様をつけるようにしてあるものである。従って、このように調製された卵焼きは、手巻きする際に鬼すだれを使用することなしに一応伊達巻卵風の商品を得ることはできるものの、卵焼き表面には、焼き色による不自然な筋状模様があり、また、卵焼表面に形成された凸条間の隣接間隔が大きく間延びした形状となり、商品として本来の豪華さと美麗さを備えた伊達巻卵にならないという問題があった。また、保管や流通に供したものは凹凸条が扁平になり、一層見た目の美麗さに欠けるものであった。
【0006】
【特許文献1】 特開2001−252201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、寿司等に巻きつけるだけで簡便に美麗な外観の伊達巻寿司等が得られ、しかも、伊達巻寿司等に用いて保管流通に供しても、保管・流通時の押圧により凹凸条の形状が扁平になり難く美麗な外観を維持できる伊達皮及びその製造方法並びに伊達皮用の焼成鍋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべく、鋭意研究を重ねた結果、原料混合液を含気させ、これを内底面に複数の凹凸条を等間隔で施してあり、かつ凸条部突端から凹条部の内底面までの距離を特定範囲としてある焼成鍋で焼成して伊達皮を得るならば、得られた伊達皮は、凹凸条の彫りの深さが鮮明で焼き色もムラ無く良好なものとなり、しかも、伊達巻寿司等に用いて保管流通に供しても、保管・流通時の押圧により凹凸条の形状が扁平になり難く美麗な外観を維持できることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0009】
つまり、本発明は、
(1) 片面全面に複数の凹凸条を等間隔で施してある伊達皮であって、前記凹条部の窪みの深さを3〜10mmとしてあり、かつ伊達皮の肉部の含気率を5〜50%としてある伊達皮、
(2) (1)記載の伊達皮を巻きつけた伊達巻食品、
(3) (1)記載の伊達皮を用いた伊達巻寿司、
(4) 液卵を含む原料混合液を含気させた後、当該原料混合液を内底面に複数の凹凸条を等間隔で施してあり、かつ凸条部突端から凹条部の内底面までの距離を3〜10mmとしてある焼成鍋に充填し、該焼成鍋を加熱することにより原料混合液を焼成する伊達皮の製造方法、
(5) 原料混合液を含気率が5〜50%となるように含気させる(4)記載の伊達皮の製造方法、
(6) 前記焼成鍋の凹条部の曲率半径を凸条部突端の曲率半径の3〜70倍としてある(4)又は(5)記載の伊達皮の製造方法、
(7) 焼成鍋の内底面の凹条部の曲率半径を3〜7mm、凸条部の突端の曲率半径を0.1〜1mmとした略波形状に形成してある伊達皮用の焼成鍋、である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の伊達皮を用いれば、例えば、惣菜工場等において、従来のようにスラリー焼成後に鬼すだれによって巻締めて表面に凹凸をつけるという面倒な作業も必要なく、これを寿司等に巻きつけるだけで簡便に美麗な外観の伊達巻寿司等を得ることができる。しかも、得られた伊達巻寿司等は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの惣菜売り場等で販売するために保管流通に供しても保管・流通時の押圧により凹凸条の形状が扁平になり難く美麗な外観を維持できるものとなる。したがって、伊達皮の更なる需要拡大が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の伊達皮及びその製造方法、並びに伊達皮用の焼成鍋を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
本発明において、伊達皮とは、伊達巻寿司等の表皮に多く用いられる卵焼きであり、液卵に魚のすり身、更に必要に応じて調味料等を加えた原料混合液(以下、たんに「スラリー」ともいう)を焼成して加熱凝固させたものをいう。
【0013】
本発明の伊達皮は、片面全面に複数の凹凸条を等間隔で施してある伊達皮であって、前記凹条部の窪みの深さを3〜10mm、好ましくは3〜7mmとしてあり、かつ伊達皮の肉部の含気率を5〜50%、好ましくは5〜40%としてあることを特徴とする。このような本発明の一実施例としては、図1に示すような形状の伊達皮1が挙げられる。図中、符号2は凹条部、3は凸条部、4は肉部を示している。また、前記凹条部の窪みの深さは図1に示すα部分の測定値である。
【0014】
前記伊達皮の肉部4は、原料混合液を含気させた後焼成して多孔質状に加熱凝固させたものであり、この伊達皮の肉部の含気率は例えば次のようにして測定することができる。まず、製された伊達皮(品温20℃)を5mm角にカットしたもの約20gを、メスシリンダー(100mL容量)に入れた水60mLに投入し、水面変化から外層のカット品の容積V1を測定する。次に、伊達皮のカット品を投入したメスシリンダーを真空乾燥機(東京理科器械社製、VOS−450D)に入れ、真空度が70mmHg以上となるまで脱気処理を行い、カット品の多孔質状組織の孔内部に水を含浸させる。そして、そのときの水面変化から外層の孔の容積V2を測定し、次式
気孔率(%)=V2/V1×100
により、含気率を求めることができる。
【0015】
このような本発明の伊達皮は、外観のよい凹凸条が施してあることから、寿司等に巻きつけるだけで美麗な外観の伊達巻寿司等を簡便に得ることができる。更に、伊達皮肉部が多孔質状に加熱凝固した弾力性に富んだものとなっていることから、伊達巻寿司等に用いて保管流通に供しても、保管・流通時の押圧により凹凸条の形状が扁平になり難く美麗な外観を維持できるものとなる。
【0016】
これに対して、伊達皮の凹条部の窪みの深さが前記範囲より浅いと美麗さに欠ける上に保管・流通時の押圧により凹凸条の形状が扁平になり易く、前記範囲より深すぎても保管・流通時の押圧により割れたりして形状が崩れる場合がある。
【0017】
また、伊達皮肉部の含気率が前記範囲よりも低いと、保管・流通時の押圧により凹凸条の形状が扁平になり易く、前記範囲よりも高いと食感が不自然となったり、巻曲げた際にひび割れ等が生じ易くなる。
【0018】
本発明の伊達皮を形成する原料混合液(スラリー)は、液卵を主成分とし、これに魚のすり身、更に必要により種々の調味成分、添加剤、清水等を加えたものである。ここで、液卵としては、殻付生卵を割卵して溶きほぐして調製した生液全卵、殻付生卵を割卵して卵黄と卵白を分離してこれらをそれぞれ溶きほぐして調製した生液卵黄、生液卵白及びこれらの混合物、並びに乾燥卵を乾燥前の液卵の水分含量となるように水戻ししたもの等を使用することができる。また、本発明において液卵は、卵の調理特性である加熱凝固性能を有するものであればよく、アルコール抽出法や超臨界二酸化炭素抽出法等により脂質やコレステロールを低減処理した液卵、バッチ式殺菌タンクやプレート式熱交換機やジュール加熱装置等で殺菌処理した液卵、脱塩処理した液卵等を使用することができる。
【0019】
液卵に加える魚のすり身としては、スケトウダラ、ホッケ、タイウオ、イワシ、グチ類、サメ類等の魚類の落し身を主原料としたすり身を使用することができる。また、すり身は冷凍すり身であってもよい。
【0020】
液卵に添加する調味成分としては、例えば、砂糖、醤油、食塩及びグルタミン酸ナトリウム等の調味料、カツオやコンブ等の動植物から抽出したエキス等をあげることができる。また、液卵に添加する添加剤としては、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘多糖類やゼラチン等の増粘剤、乳蛋白分解物や大豆蛋白分解物等の蛋白分解物等をあげることができる。これにより、含気させた状態を長時間保持させることができ大量生産する場合であっても得られる製品の含気率を一定に保つことができる。この他、添加剤としては、澱粉等の品質改良剤、食酢やクエン酸等のpH調整剤、着色料、保存料等も適宜添加することができる。
【0021】
液卵のスラリーに対する配合量は、適度な食感と風味とする点から、生換算で好ましくは30〜90%、より好ましくは40〜80%とするとよい。
【0022】
また、すり身のスラリーに対する配合量は、適度な食感と風味とする点から、好ましくは3〜50%、より好ましくは5〜40%である。
【0023】
本発明の伊達皮は、外観のよい凹凸条が施してあることから、種々の食品に巻きつけるだけで美麗な外観の種々の伊達巻食品を調製することができる。しかも、調製したこれらの伊達巻食品は、保管流通に供しても、保管・流通時の押圧により凹凸条の形状が扁平になり難く美麗な外観を維持できるものとなる。このような本発明の伊達巻食品としては、例えば、図2に示すような伊達巻寿司5が挙げられる。図中、符号1は伊達皮、9は寿司を示す。この他にも、本発明の伊達巻食品としては、薩摩揚げ等の水産練り製品、肉料理、乳製品等に伊達皮を巻きつけた食品等が挙げられる。
【0024】
本発明の伊達皮は次のように製造することができる。
【0025】
まず、原料である液卵、すり身、調味料及び清水等を、ミキサー、ホモゲナイザー等の撹拌装置を用いて攪拌混合し、スラリーを調製する。
【0026】
次に、スラリーを含気させる。含気量は、次式で表せられる含気率(卵混合液に占める気泡の容積率)として、好ましくは5〜50%、より好ましくは5〜40%以上である。焼成条件や配合等にもよるが、おおよそ、スラリーの含気率と焼成後の伊達皮の含気率は一致するので、スラリーの含気率を前記範囲とすることにより、焼成後の伊達皮肉部を上述した含気率とすることができる。
【0027】
【数1】

【0028】
スラリーを含気させる方法には特に制限はなく、公知の含気方法を用いて行えばよい。例えば、ホバートミキサー、ビーター、カッティングマシーン等の攪拌機を用いて気泡を抱き込むように攪拌して気泡を含有させる方法、あるいは、気泡を吹き込むことにより気泡を含有させる方法等が挙げられる。
【0029】
ここで、含気量の調整方法としては、例えば、攪拌機を用いて気泡を抱き込むように攪拌して気泡を含有させる場合には、攪拌の強さや攪拌時間を変えることで調整することができる。また、気泡を吹き込むことにより気泡を含有させる場合には、気泡を吹き込む量や時間を変えることで調整することができる。
【0030】
次に、含気させたスラリーを、内底面に複数の凹凸条を等間隔で施してあり、かつ凸条部突端から凹条部の内底面までの距離を3〜10mmとしてある焼成鍋に充填し、当該焼成鍋を加熱することにより原料混合液を焼成して加熱凝固させる。このような本発明の焼成鍋の一実施例としては、図3に示すような形状の焼成鍋8が挙げられる。図3は本発明伊達皮の焼成鍋の一実施例を示す側断面及び平面説明図であり、図4は図3(A)の要部拡大図である。図中、符号6は焼成鍋の凹条部、7は焼成鍋の凸条部を示している。また、前記凸条部突端から凹条部の内底面までの距離は図4に示すβ部分の測定値である。
【0031】
本発明においては、上述の含気させたスラリーを前記特定形状の焼成鍋で焼成することで、得られた伊達皮の焼成面を全体に熱が伝わった均一な色合いの焼成状態するとともに、凹凸条の凹条部の窪みの深さを3〜10mmとした彫りの深さが鮮明な美麗な外観のものとすることができる。しかも、含気させて焼成することで押圧に強く弾力性に富んだものとして調製できる。
【0032】
これに対して、後述の比較例に示すように、スラリーを含気させず単に前記特定形状の焼成鍋で焼成しても、得られた伊達皮は、鍋との接触面においてスラリーの沸騰が激しいためか、焼成面に形成される焼き色や凹凸条が不均一となり美麗な外観が得られない。しかも、これを伊達巻寿司等に用いて保管流通に供しても、凸条部が扁平になり易い。つまり、本発明においては、単に、凹凸条を等間隔で施した前記特定形状の焼成鍋で焼成するだけではなく、スラリーを含気させた後焼成することにより、はじめて美麗な外観であって、しかも、伊達巻寿司等に用いて保管流通に供しても、保管・流通時の押圧により凹凸条の形状が扁平になり難い伊達皮が得られるものである。
【0033】
なお、含気させたスラリーを、前記凹凸条を等間隔で施した焼成鍋ではなく、従来の平坦な焼成鍋で焼成して伊達皮を得て、これを鬼すだれで強く巻き締めることにより凹凸を形成して伊達巻寿司した場合は、従来の伊達巻寿司と同様に伊達皮の凹条部の窪みの深さは2mm程度となる。そして、これを保管流通に供しても、従来の伊達巻寿司と同様に、保管・流通時の押圧により凹凸条の形状が扁平になり易いものとなる。
【0034】
前記焼成鍋としては、凹条部6の曲率半径を凸条部突端7の曲率半径の3〜70倍としてあることが好ましく、具体的には、焼成鍋の内底面の凹条部6の曲率半径を3〜7mm、凸条部の突端7の曲率半径を0.1〜1mmとした略波形状に形成してあることが好ましい。このような焼成鍋で焼成することにより、得られる伊達皮の形状は凸条同士の間隔が密になり彫りの深い美麗で食欲をそそるものになり、しかも、伊達巻寿司等に用いて保管流通に供しても、凹凸条の形状がより扁平になり難く彫りの深い美麗な商品外観を維持できるのでさらによい。
【0035】
前記焼成鍋を焼成する方法は、特に制限はなく、直火、電熱線、オーブン等により焼成することができる。焼成温度は、卵が加熱凝固する温度とし、具体的には、焼成鍋の温度を、好ましくは80〜300℃、より好ましくは100〜200℃とする。
【0036】
このようにして得られた本発明の伊達皮は、0〜15℃に冷却し、必要に応じてパウチ等に容器詰めして、0〜15℃で流通させるチルド品とすることができる。また、凍結処理し、必要に応じてパウチ等に容器詰めして、冷凍品とすることができる。
【0037】
以下、本発明の実施例、比較例及び試験例により、本発明を更に説明する。
【実施例】
【0038】
[実施例1](伊達皮)
(1)スラリーの製造
下記原料をミキサーで泡立てないように混合してスラリーを製造した。
【0039】

【0040】
次にこのスラリーを、ホバートミキサー(ホバート社製)で、中速で10分間攪拌して含気させた。この含気前のスラリーの比重は1.1であり、含気後の卵混合液の比重は0.8であった。したがって、含気後のスラリーの含気率は27%である。
【0041】
(2)伊達皮の製造
底面に凹凸条を等間隔で施した焼成鍋、つまり、内底面の凹条部の曲率半径を5mm、凸条部の突端の曲率半径を0.5mmとした略波形状に形成してあり、凸条部突端から凹条部の内底面までの距離4mmとした焼成鍋[縦・横・高さ(230mm×209mm×22mm)]を直火で加熱し、焼成鍋の温度を120℃程度に加熱した。次に、焼成鍋に食用油脂を噴霧した後、(1)で製造した、含気したスラリーを500g注入した。続いて、下火に加えて上面から上火をあてて10分間焼成してスラリー全体を加熱凝固させた。焼成鍋から取り出したところ、片面に凹凸条を施された伊達皮が得られた。得られた伊達皮の質量は480gであった。得られた伊達皮は、凹凸条の彫りの深さが鮮明で焼き色もムラ無く良好であり美麗な外観であった。また、凹条部の窪みの深さが4mmであり、その肉部の含気率は25%であった。
【0042】
[実施例2](伊達巻寿司)
寿司飯、海老、三つ葉を実施例1で得られた伊達皮で巻いて伊達巻寿司を製造した。得られた伊達巻寿司は、伊達皮の凹凸条の彫りの深さが鮮明で焼き色もムラ無く良好であり外観上好ましいものであった。また、得られた伊達巻寿司を10℃の冷蔵庫に2日間保管したところ、伊達巻寿司の底面においても凹凸条が明瞭に保持されていた。
【0043】
[実施例3](伊達皮)
実施例1において、スラリーの含気率を7%とした他は同様にして伊達皮を製造した。得られた伊達皮は、凹凸条の彫りの深さが鮮明で焼き色もムラ無く良好であり美麗な外観であった。得られた伊達皮は、凹凸条の窪みの深さが4mmであり、その肉部の含気率は5%であった。
【0044】
[実施例4](伊達巻寿司)
実施例3の伊達皮を用いた他は、実施例2と同様にして伊達巻寿司を製造した。得られた伊達巻寿司は、伊達皮の凹凸条の彫りの深さが鮮明で焼き色もムラ無く良好であり外観上好ましいものであった。また、得られた伊達巻寿司を10℃の冷蔵庫に2日間保管したところ、伊達巻寿司の底面においても凹凸条が明瞭に保持されていた。
【0045】
[実施例5](伊達皮)
実施例1において、焼成鍋として、内底面の凹条部6の曲率半径を5mm、凸条部の突端7の曲率半径を0.5mmとした略波形状に形成してある焼成鍋であって、その凸条部突端から凹条部の内底面までの距離を5mmとしたもの[縦・横・高さ(230mm×209mm×22mm)]を用いた他は同様にして伊達皮を製造した。得られた伊達皮は、凹凸条の彫りの深さが鮮明で焼き色もムラ無く良好であり美麗な外観であった。得られた伊達皮は、凹凸条の窪みの深さが5mmであり、その肉部の含気率は5%であった。
【0046】
[実施例6](伊達巻寿司)
実施例5の伊達皮を用いた他は、実施例2と同様にして伊達巻寿司を製造した。得られた伊達巻寿司は、伊達皮の凹凸条の彫りの深さが鮮明で焼き色もムラ無く良好であり外観上好ましいものであった。また、得られた伊達巻寿司を10℃の冷蔵庫に2日間保管したところ、伊達巻寿司の底面においても凹凸条が明瞭に保持されていた。
【0047】
[比較例1](伊達皮)
実施例1において、スラリーを含気せずに用いた他は、同様にして伊達皮を製造した。得られた伊達皮は、焼成面に形成される焼き色にムラがあり、また、焼成面がごつごつした形状であったため、外観状好ましくなかった。また、得られた伊達皮は、凹凸条の窪みの深さが4mmであり、その肉部の含気率は0%であった。
【0048】
[比較例2](伊達巻寿司)
比較例1で得られた伊達皮を用い、実施例2と同様にして伊達巻寿司を製造した。得られた伊達巻寿司は、伊達皮焼成面に形成される焼き色にムラがあり、また、焼成面がごつごつした形状であったため、外観状好ましくなかった。
【0049】
[比較例3](伊達皮)
実施例1において、底面に凹凸条を等間隔で施してある焼成鍋に換えて、底面が平坦な焼成鍋を用いた他は同様にして、伊達皮を製造した。得られた伊達皮は、平坦であり、その肉部の含気率は25%であった。
【0050】
[比較例4](伊達巻寿司)
鬼すだれ(断面の一辺が約1cmの略三角形で構成されている竹製の三角柱を並列に連接した一般的なすだれ)を用い、寿司飯、海老、三つ葉を比較例3で得られた伊達皮で強く巻いて伊達巻寿司を製造した。なお、鬼すだれを強く巻くことにより伊達皮に形成された凹凸条の窪みの深さは2mmであった。得られた伊達巻寿司は、実施例2で得られた伊達巻寿司に比べると凹凸条の窪みの深さが浅く美麗さに欠けていた。
【0051】
[比較例5](伊達皮)
実施例1において、スラリーを含気せずに用い、更に、底面に凹凸条を等間隔で施してある焼成鍋に換えて、底面が平坦な焼成鍋を用いた他は同様にして、伊達皮を製造した。得られた伊達皮は、平坦であり、その肉部の気孔率は0%であった。
【0052】
[比較例6](伊達巻寿司)
比較例5で得られた伊達皮を用いた他は、比較例4と同様にして伊達巻寿司を製造した。なお、鬼すだれを強く巻くことにより伊達皮に形成された凹凸条の窪みの深さは2mmであった。得られた伊達巻寿司は、実施例2で得られた伊達巻寿司に比べると凹凸条の窪みの深さが浅く美麗さに欠けていた。
【0053】
[試験例1]
実施例1、3及び比較例1で得られた伊達皮と、比較例4及び6の伊達巻寿司から剥がした伊達皮について、押圧がかかった時の凹凸条の変化を調べるために以下の試験を行った。
【0054】
(試験方法)
伊達皮を、4cm四方にカットする。この伊達皮の上に、200gの重り(底面が伊達皮の上面(4×4cm)の正方形よりも大きい重り)を、その重りの荷重が伊達皮の上面全体に均等にかかるように載せ、10℃で1日及び3日間放置した後の凹凸条の状態を下記評価基準により評価した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
凹凸条の状態の評価記号
A:大変明瞭である。
B:明瞭である。
C:やや不明瞭である。
D:不明瞭である。
【0057】
表1より、含気させたスラリーを、凹凸条を等間隔で施した焼成鍋で焼成し、凹条部の窪みの深さを3mm以上、かつ伊達皮の肉部の含気率を5%以上とした実施例1、3、5の伊達皮は、押圧がかかっても凹凸条の形状が扁平になり難いことが理解できる。これに対して、スラリーを含気させず単に凹凸条を等間隔で施した焼成鍋で焼成して、伊達皮の肉部の含気率を前記範囲より低くした比較例1の伊達皮は、押圧がかかると扁平になり易かった。また、含気させたスラリーを、従来の平坦な焼成鍋を用いて焼成して、これを、鬼すだれで巻き締めることにより凹凸状を形成した場合(比較例4)は、従来の伊達巻寿司(比較例6)と同様に伊達皮凹条部の窪みの深さは2mm程度となる。そして、これら比較例4、6の伊達皮は、いずれも押圧がかかると凹凸条の形状が扁平になり易かった。
【0058】
[実施例5](伊達皮のミートローフ包み)
まず、下記原料を用意した。
【0059】
配合
牛ひき肉 120g
豚挽き肉 60g
玉ねぎ 70g
バター 10g
卵 50g
パン粉 10g
牛乳 30g
塩・胡俶・ナツメグ 少量
【0060】
次に、常法により、上記原料を混合した生地をミートローフの型に詰めて、200℃のオーブンで焼成して厚さ5cmのミートローフを得た。続いて、ミートローフを型から取り出して幅5cmにカットし、これに実施例1で得た伊達皮を巻きつけて包み、伊達皮のミートローフ包みを得た。得られた伊達皮のミートローフ包みは、伊達皮の凹凸条が明瞭であり外観上好ましいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明伊達皮の一実施例を示す斜視断面図。
【図2】図1の伊達皮を用いて製した伊達巻寿司の一実施例を示す斜視図(写真)。
【図3】本発明伊達皮の焼成鍋の一実施例を示す(A)は側断面図、(B)は平面図。
【図4】図3の要部拡大図。
【符号の説明】
【0062】
1.伊達皮
2.凹条部
3.凸条部
4.肉部
5.伊達巻寿司
6.焼成鍋の凹条部
7.焼成鍋の凸条部
8.焼成鍋
9.寿司
10.焼成鍋の取手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面全面に複数の凹凸条を等間隔で施してある伊達皮であって、前記凹条部の窪みの深さを3〜10mmとしてあり、かつ伊達皮の肉部の含気率を5〜50%としてあることを特徴とする伊達皮。
【請求項2】
請求項1記載の伊達皮を巻きつけた伊達巻食品。
【請求項3】
請求項1記載の伊達皮を用いた伊達巻寿司。
【請求項4】
液卵を含む原料混合液を含気させた後、該原料混合液を内底面に複数の凹凸条を等間隔で施してあり、かつ凸条部突端から凹条部の内底面までの距離を3〜10mmとしてある焼成鍋に充填し、該焼成鍋を加熱することにより原料混合液を焼成することを特徴とする伊達皮の製造方法。
【請求項5】
原料混合液を含気率が5〜50%となるように含気させる請求項4記載の伊達皮の製造方法。
【請求項6】
前記焼成鍋の凹条部の曲率半径を凸条部突端の曲率半径の3〜70倍としてある請求項4又は5記載の伊達皮の製造方法。
【請求項7】
焼成鍋の内底面の凹条部の曲率半径を3〜7mm、凸条部の突端の曲率半径を0.1〜1mmとした略波形状に形成してあることを特徴とする伊達皮用の焼成鍋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−228718(P2008−228718A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106541(P2007−106541)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(593145009)株式会社カナエフーズ (11)
【Fターム(参考)】