説明

伝導性高分子組成物及び伝導性高分子組成物を用いてなる膜を備えた電子素子

【課題】伝導性高分子組成物及びそれから得た膜を備えた電子素子を提供する。
【解決手段】下記化学式1に示されるシロキサン系物質及び伝導性高分子を含む伝導性高分子組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝導性高分子組成物及び伝導性高分子組成物を用いてなる膜を備えた電子素子に係り、さらに具体的には、シロキサン系物質及び伝導性高分子を含む伝導性高分子組成物及び伝導性高分子組成物を用いてなる膜を備えた電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代型の電子素子として、例えば、発光素子、太陽電池素子、電気変色性素子、電気泳動素子、有機薄膜トランジスタまたは有機メモリ素子などの多様な電子素子についての活発な研究が進められつつある。
【0003】
前記電子素子のうち、発光素子は、自発光型素子であって、視野角が広く、コントラストが優秀であるだけでなく、応答時間が速いという長所を有している。前記発光素子は、発光層に無機化合物を使用する無機発光素子と、有機化合物を使用する有機発光素子(OLED)と、に分類されうるが、有機発光素子は、無機発光素子に比べて、輝度、駆動電圧及び応答速度特性に優れ、かつ多色化が可能であるという点で多くの研究がなされている。
【0004】
有機発光素子は、一般的にアノード/有機発光層/カソードからなる積層構造を有し、アノード/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/カソード、またはアノード/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/カソードなどのような多様な構造も有しうる。
【0005】
特許文献1には、Cu電極/PEDOT−PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(4−スルホン酸スチレン))から得た膜/発光層/カソードからなる構造を有する有機薄膜半導体素子が開示されている。
【0006】
しかし、PSSは吸湿性が非常に強く(空気中で約25%である)、PEDOT−PSSからなる膜には、水分が存在し易い。さらに、PEDOT−PSSの合成過程で使われた触媒、Naイオンなどの金属イオン、硫酸塩などの副産物が存在しうる。そして触媒、金属イオンといった前記副産物は、電子と反応してPEDOT−PSSから得た膜に硫酸塩を生成しうる。また、PEDOT−PSSから得た膜の下部のアノードとしてITO(酸化インジウムスズ)またはIZO(酸化インジウム亜鉛)を使用する場合、PEDOT−PSSの強酸性(pH約1.8)によって、前記アノードがエッチングされ、これにより発生したインジウム、スズ、亜鉛、酸素などがPEDOT−PSSから得た膜に不純物として存在しうる。すなわち、PEDOT−PSSから得た膜は、前述したような理由などにより、各種の不純物及び水分を含み、これらが発光層に広がる場合、素子の効率及び寿命の低下をもたらしうる。したがって、その改善が必要である。
【特許文献1】国際公開第00/65653号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点を解決するために、ITOやIZOなどの電極との接着力が向上した膜を形成するための伝導性高分子組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、伝導性高分子鎖の間にネットワークが形成されることにより、ITOやIZOなどの電極との接着力を向上しうることを見いだし本発明を完成させた。
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の第1態様は、下記化学式1を有するシロキサン系物質及び伝導性高分子を含む伝導性高分子組成物を提供する:
【0010】
【化1】

【0011】
前記化学式1のうち、Aは、C−C20のアルキル基、C−C30のアリール基、C−C20のアルコキシ基、C−C30のアルキルアリール基、C−C30のアラルキル基または−(CH−MZであり、前記nは、0または1〜20の整数であり、Mは、Si、Ti、SnまたはAlであり、前記Z、Z及びZは、互いに独立にC−C20のアルキル基、C−C30のアリール基、C−C30のアルキルアリール基、C−C30のアラルキル基、架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位または発光単位であり、aは、2〜1000の整数である。
【0012】
前記本発明の他の目的を達成するために、本発明の第2態様は、前述したような伝導性高分子組成物を用いてなる膜を備えた電子素子を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の伝導性高分子組成物は、シロキサン系物質が、伝導性高分子鎖の間にネットワークを形成することができるため、ITOやIZOなどの電極との接着力が向上した膜を形成することができる。
【0014】
本発明の伝導性高分子組成物を用いてなる膜は、優れた電気的特性及び耐久性を備えうる。したがって、このような膜を利用すれば、向上した電気的特性及び寿命を有する電子素子が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明による伝導性高分子組成物は、シロキサン系物質及び伝導性高分子を含む。前記シロキサン系物質は、伝導性高分子鎖の間にネットワークを形成する役割を担う。ネットワークが形成されることにより、伝導性高分子鎖の移動性が制限されて、各種の不純物(例えば、アノード由来の不純物など)及び水分が他の層に移動することが防止されうる。それだけでなく、前記シロキサン系物質は、ITOまたはIZOのような各種の電極材料との接着力が優秀である。したがって、前記伝導性高分子組成物から得た膜を備えた電子素子の電気的特性及び寿命が向上しうる。
【0016】
さらに具体的には、本発明による伝導性高分子組成物は、下記化学式1を有するシロキサン系物質及び伝導性高分子を含みうる。
【0017】
【化2】

【0018】
前記化学式1のうち、Aは、C−C20のアルキル基、望ましくは、C−C10のアルキル基、C−C30のアリール基、望ましくは、C−C20のアリール基、C−C20のアルコキシ基、望ましくは、C−C10のアルコキシ基、C−C30アルキルアリール基、望ましくは、C−C20のアルキルアリール基、C−C30のアラルキル基、望ましくは、C−C20のアラルキル基または−(CH−MZであるが、前記nは、0または1〜20の整数であり、Mは、Si、Ti、SnまたはAlであり、前記Z、Z及びZは、互いに独立にC−C20のアルキル基、望ましくは、C−C10のアルキル基、C−C30のアリール基、望ましくは、C−C20のアリール基、C−C30のアルキルアリール基、望ましくは、C−C20のアルキルアリール基、C−C30のアラルキル基、望ましくは、C−C20のアラルキル基、架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位または発光単位である。前記化学式1で表示されるシロキサン系物質は、Si及びOが原子の個数の比が1:1.5となるように存在し、Siに、前述したような−A基が連結された物質である。
【0019】
前記化学式1のうち、aは、2〜1000の整数である。
【0020】
前記化学式1のうち、前記架橋性単位は、脱水縮合反応のような各種の架橋結合を起こせる単位ならば、特別に制限されない。例えば、水酸基、C−C20のアルコキシ基またはハロゲン原子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
前記正孔輸送単位は、
【0022】
【化3】

【0023】
からなる群から選択される化合物の誘導体であることが好ましい。前記Q、Q、Q、Q及びQは、互いに独立にN、OまたはSである。前記誘導体とは、前記化合物に一本の結合手が形成された構造体のことであり、結合手の位置は特に限定されない。
【0024】
前記電子輸送単位は、
【0025】
【化4】

【0026】
からなる群から選択される化合物の誘導体であることが好ましい。Q、Q及びQは、互いに独立にN、OまたはSである。前記誘導体とは、前記化合物に一本の結合手が形成された構造体のことであり、結合手の位置は特に限定されない。
【0027】
前記発光単位は、C−C30の芳香族またはC−C30のヘテロ芳香族であって、前記芳香族またはヘテロ芳香族は、1つの環または2以上の環を含み、前記2以上の環は、縮合環であるか、環構造が単結合またはビニレン基によって連結されている構造を有する。
【0028】
さらに具体的には、前記発光単位は、例えば、
【0029】
【化5】

【0030】
からなる群から選択される化合物の誘導体であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。前記誘導体とは、前記化合物に一本の結合手が形成された構造体のことであり、結合手の位置は特に限定されない。
【0031】
前記発光単位の少なくとも一部は、前述したような正孔輸送単位または電子輸送単位にも含まれうるが、これらは、正孔輸送能力または電子輸送能力も有し、かつ発光能力も有する単位と理解されうる。
【0032】
本発明の一例によれば、前記化学式1を有するシロキサン系物質は、下記化学式2で示される。
【0033】
【化6】

【0034】
前記化学式2で示されるシロキサン系物質は、化学式1のうち、aが8であり、−Aで示される基が−(CHMZである物質であって、かご構造(cage structure)を有する。前記n、M、Z、Z及びZについての詳細な説明は、前述したとおりである。このとき、8個の−(CHMZは、互いに同一であってもよいし異なってもよい。
【0035】
さらに具体的に、前記化学式1を有するシロキサン系物質は、下記化学式2a、化学式2bまたは化学式2cで示されることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0036】
【化7】

【0037】
前記化学式2a〜cで示されるシロキサン系物質は、従来公知の方法を利用して合成することができる。
【0038】
また、前記化学式1で示されるシロキサン系物質は、下記化学式2で示される化合物、下記化学式3で示される化合物、下記化学式4で示される化合物、下記化学式5で示される化合物及び下記化学式6で示される化合物からなる群から選択された一つ以上の化合物の加水分解物または縮合反応物でありうる。
【0039】
【化8】

【0040】
前記化学式2〜6において、nは、0または1〜20の整数でありうる。
【0041】
前記化学式2〜6において、Mは、Si、Ti、SnまたはAlでありうる。
【0042】
前記化学式2〜6において、Z、Z及びZは、互いに独立にC−C20のアルキル基、望ましくは、C−C10のアルキル基、C−C30のアリール基、望ましくは、C−C20のアリール基、C−C30のアルキルアリール基、望ましくは、C−C20のアルキルアリール基、C−C30のアラルキル基、C−C20のアラルキル基、架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位または発光単位でありうる。化学式2における、8個の−(CH−MZは、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。
【0043】
前記化学式のうち、R及びRは、互いに独立に−CH(CHSiX、−O−SiX、架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位、発光単位、水素、ハロゲン原子、C−C20のアルキル基またはC−C30のアリール基でありうる。このとき、前記R及びRのうち少なくとも一つは、−CH(CHSiX、−O−SiXまたは架橋性単位でありうる。
【0044】
前記化学式のうち、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21、X22及びX23は、互いに独立に架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位、発光単位、水素、ハロゲン原子またはC−C20のアルキル基でありうる。このとき、X、X及びXのうち少なくとも一つは架橋性単位であり、X、X及びXのうち少なくとも一つは架橋性単位であり、X、X、X、X10、X11、X12、X13及びX14のうち少なくとも一つは架橋性単位であり、X15、X16、X17、X18、X19及びX20のうち少なくとも一つは架橋性単位であり、X21、X22及びX23のうち少なくとも一つは架橋性単位でありうる。
【0045】
前記化学式のうち、Dは、単結合または−O−であり、Dは、C−C20のアルキレン基、一つ以上の水素がハロゲン原子で置換されたC−C20のアルキレン基、−(CF−O−で示される基、一つ以上の水素が正孔輸送単位、電子輸送単位または発光単位で置換されたC−C20のアルキレン基または2価の正孔輸送単位でありうる。このとき、前記bは、1〜20の整数である。一方、Dは、単結合、C−C20のアルキレン基または一つ以上水素がのハロゲン原子で置換されたC−C20のアルキレン基でありうる。このとき、ハロゲン原子がフッ素であることが望ましい。
【0046】
前記化学式のうち、pは、3〜8の整数でありうる。
【0047】
前記化学式のうち、mは、1〜10の整数でありうる。
【0048】
前記化学式のうち、qは、0または1〜10の整数でありうる。
【0049】
前記化学式のうち、rは、0または1〜10の整数でありうる。
【0050】
前記化学式のうち、q個のX10は、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。
【0051】
前記化学式のうち、q個のX11は、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。
【0052】
前記化学式のうち、r個のDは、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。
【0053】
このとき、前記化学式のうち、架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位及び発光単位は、前述したところを参照する。前記架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位及び発光単位は、前記化学式2〜6の化学式構造によって、1価の基または2価の基の形態で前記化学式に含まれうるということを当業者は容易に認識できる。例えば、前記化学式5のうち、“2価の正孔輸送単位”という表現は、前記化学式5のうち、Dが2価であることを考慮した表現である。
【0054】
前記アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルアリール基、アラルキル基、正孔輸送単位、電子輸送単位、発光単位は、一つ以上の水素が置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。一つ以上の水素が置換されている場合、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;非置換または一つ以上の水素が−F、−Cl、−Br、−CN、−NOもしくは−OHで置換されたC−C20のアルキル基;非置換または一つ以上の水素が−F、−Cl、−Br、−CN、−NOもしくは−OHで置換されたC−C20のアルコキシ基;非置換または一つ以上の水素がC−C20のアルキル基、C−C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOもしくは−OHで置換されたC−C30のアリール基;非置換または一つ以上の水素がC−C20のアルキル基、C−C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOもしくは−OHで置換されたC2−C30のへテロアリール基;非置換または一つ以上の水素がC−C20のアルキル基、C−C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOもしくは−OHで置換されたC−C20のシクロアルキル基;または;非置換または一つ以上の水素がC−C20のアルキル基、C−C20のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NOもしくは−OHで置換されたC−C30のへテロ環アルキル基などで置換されていることが好ましい。
【0055】
本明細書の化学式のうち、アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、イソ−アミル、へキシルなどが挙げられる。
【0056】
本明細書の化学式のうち、アリール基は、一つ以上の環を含む炭素環芳香族を意味し、このうち2以上の環を含む場合には、これらの環は縮合環の構造を有していてもよいし、環構造が単結合または2価以上の基によって連結されているペンダント型の構造を有していてもよい。さらに、アリールという用語には、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルのような芳香族ラジカルを含む。
【0057】
本明細書の化学式のうち、アルキルアリール基は、前述したようなアリール基の一つ以上の水素が前述したようなアルキル基で置換された置換基を示す。
【0058】
本明細書の化学式のうち、アラルキル基は、前述したようなアルキル基の末端に前述したようなアリール基が含まれている置換基を示す。
【0059】
本発明の一例によれば、前記化学式3で示される化合物は、下記化学式3a、下記化学式3b、下記化学式3c、下記化学式3d、下記化学式3e、下記化学式3fまたは下記化学式3gで示される化合物であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0060】
【化9】

【0061】
本発明の他の一例では、前記化学式4で示される化合物は、下記化学式4a、下記化学式4b、下記化学式4cまたは下記化学式4dで示されることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0062】
【化10】

【0063】
本発明によるさらに他の一例では、前記化学式5で示される化合物は、下記化学式5a、下記化学式5b、下記化学式5c、下記化学式5d、下記化学式5e、下記化学式5fまたは、下記化学式5gで示されることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0064】
【化11】

【0065】
本発明によるさらに他の一例では、前記化学式6で示される化合物は、下記化学式6aまたは6bで示されることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0066】
【化12】

【0067】
前述したように、本発明によるシロキサン系物質は、化学式2で示される化合物、または化学式2〜6で示される化合物の一種以上の加水分解物または縮合反応物であることが好ましい。前記シロキサン系物質の製造のための加水分解反応または縮合反応は、公知の多様な方法を利用して行われうる。例えば、前記加水分解反応または縮合反応は、有機溶媒下で酸または塩基触媒及び水を利用して行われうる。
【0068】
前記加水分解反応または縮合反応時に使われる酸または塩基触媒は、塩酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、炭酸水素ナトリウム、およびピリジンからなる群から選択された一種以上でありうるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
前記加水分解反応または縮合反応時に使われる触媒の量は、化学式2〜6を有する化合物のうち一種以上の化合物の総量と触媒の総量とのモル比が1:0.000001〜1:10の範囲となるように選択されることが好ましい。
【0070】
前記加水分解反応または縮合反応時に使われる水の量は、化学式2〜6を有する化合物のうち一つ以上の化合物の総量と水の総量とのモル比が、1:1〜1:1000の範囲となるように選択されうる。
【0071】
前記加水分解反応または縮合反応時の反応温度は、0℃〜200℃であることが好ましい。また、前記加水分解反応または縮合反応時の反応時間は、0.1時間〜100時間であることが好ましい。
【0072】
前記加水分解反応または縮合反応時に使われる有機溶媒として、へキサンなどの炭化水素溶媒;アニソール、メスチレンもしくはキシレンなどの芳香族系炭化水素溶媒;メチルイソブチルケトン、1−メチル−2−ピロリジノンもしくはアセトンなどのケトン系溶媒;シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルもしくはイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒;エチルアセテート、ブチルアセテートもしくはプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのアセテート系溶媒;イソプロピルアルコール、もしくはブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;ジメチルアセトアミド、もしくはジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;シリコン系溶媒またはこれらの二種以上の混合物などが使われうるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
前述したような化学式1を有するシロキサン系物質の重量平均分子量は、好ましくは500,000以下、より好ましくは、100〜10,000である。前記シロキサン系物質の重量平均分子量が500,000を超える場合、伝導性高分子組成物にシロキサン系物質が溶解及び/または分散され難くて、膜形成が難しくなる虞があるためである。
【0074】
本発明による伝導性高分子組成物は、前記シロキサン系物質以外に、伝導性高分子を含む。前記伝導性高分子は、伝導性を有する高分子ならば、特に限定されないが、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリビニレンフェニレン、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(アリールアミン)及びこれらの誘導体からなる群から選択されうる。
【0075】
本発明による伝導性高分子組成物のうち、前記化学式1を有するシロキサン系物質と前記伝導性高分子とは、好ましくは0.01:99.9〜20:80の質量比、より好ましくは0.1:99.9〜10:90の質量比で存在する。前記シロキサン系物質の含量が前述したような比を逸脱して過度に少ない場合、伝導性高分子鎖間のネットワーク形成効果が小さくなる虞がある。前記シロキサン系物質の含量が前述したような質量比の範囲を逸脱して過度に多い場合、それから得た膜の伝導度が大きく低下する虞がある。
【0076】
本発明による伝導性高分子組成物は、酸をさらに含みうる。前記酸は、C、S、N、O、Si、F、Cl及びHからなる群から選択された一種以上の原子を含み、水酸基、C−C20のヒドロキシアルキレン基、C−C20のアルコキシ基、C−C20のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C−C30のアリール基、C−C20のアルキルアミノ基、C−C30のアリールオキシ基、C−C30のアリールアミノ基、C−C20のアルキルエポキシ基、ビニル基、C−C20のアルキルメルカプト基、アセトキシ基、チオール基及びイミド基からなる群から選択された一種以上の作用基を含みうる。
【0077】
さらに具体的に、前記酸は、スルホン酸イオン、ホスホン酸イオンまたはカルボン酸イオンなどの有機イオンと、Hまたはアルカリ金属イオンなどの対イオンとを含みうる。
【0078】
前記酸は、前記伝導性高分子と対をなしうるが、例えば、Pani/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スルホン酸スチレン))、Pani/CSA(ポリアニリン/ショウノウスルホン酸)、PANI/PSS(ポリアニリン/ポリ(4−スルホン酸スチレン))またはPani/PAAMPSA(ポリアニリン/ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸))のような形態で存在しうる。以下に、PEDOT/PSSの化学構造、およびPani/DBSAの化学構造を示す。
【0079】
【化13】

【0080】
本発明による伝導性高分子組成物は、硬化剤をさらに含みうる。前記硬化剤は、シロキサン系物質を補助して、伝導性高分子間のネットワークの形成を促進できる。前記硬化剤としては、公知の通常の物質を使用できる。例えば、エポキシ硬化剤、アクリレート硬化剤などを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0081】
本発明による伝導性高分子組成物は、金属ナノ粒子をさらに含みうる。前記金属ナノ粒子は、伝導性高分子組成物から得た膜の導電性をさらに向上させる役割を担うことができる。
【0082】
前記金属ナノ粒子は、Au、Ag、Cu、Pd及びPtからなる群から選択された一つ以上の粒子であることが好ましい。前記金属ナノ粒子は、5nm〜50nmの平均粒径を有しうる。前記金属ナノ粒子の平均粒径が5nm未満である場合、ナノ粒子同士が凝集しやすくなる虞がある。前記金属ナノ粒子の平均粒径が50nmを超える場合、膜の表面平滑性が調節し難くなる虞がある。
【0083】
また、本発明による伝導性高分子組成物は、無機物ナノ粒子をさらに含みうる。前記無機物ナノ粒子は、これを含む伝導性高分子組成物を利用して膜を形成する際に、前記膜に分散されて、伝導性高分子鎖間のネットワークにおける伝導を補助したり、またはネットワークを強化する役割を担うことができる。
【0084】
前記無機物ナノ粒子は、SiOナノ粒子またはTiOナノ粒子であることが好ましい。前記無機物ナノ粒子は、5nm〜50nmの平均粒径を有しうる。前記無機物ナノ粒子の平均粒径が5nm未満である場合、ナノ粒子同士が凝集しやすくなる虞がある。前記無機物ナノ粒子の平均粒径が50nmを超える場合、膜の表面平滑性が調節し難くなる虞がある。
【0085】
上述の伝導性高分子組成物を用いて膜を形成することが好ましい。前記伝導性高分子組成物を利用して膜を形成する場合、例えば、前記組成物を所定の溶媒に溶解または分散させた後、これを所定の基板の上部にコーティングして、乾燥及び/または熱処理する段階を経るという製造方法が挙げられる。
【0086】
前記溶媒は、前述したような伝導性高分子組成物を所定の粘度にする役割を担う。前記溶媒は、前記伝導性高分子組成物を溶解または分散させうるものならば、特別に限定されない。前記溶媒の例には、水、アルコール、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、またはジメチルスルホキシドなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。この後、前記伝導性高分子組成物を所定の基板の上部にコーティングする場合、公知の多様なコーティング法、例えば、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェットプリンティング法、またはノズルプリンティング法などを使用できる。この後、コーティングされた膜を乾燥及び/または熱処理することによって膜を完成することができる。
【0087】
前述したような伝導性高分子組成物から得た膜は、各種の電子素子の伝導性膜に適する。前記電子素子の例には、有機発光素子、太陽電池素子、電気変色性素子、電気泳動素子、または有機薄膜トランジスタまたは有機メモリ素子などが含まれるが、これらに限定されるものではない。 特に、前記電子素子は、有機発光素子であることが好ましい。前記有機発光素子は、通常に第1電極、第2電極及び第1電極と第2電極との間に発光層を備え、前記第1電極と第2電極との間に正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子阻止層、電子輸送層及び電子注入層からなる群から選択された一種以上の層をさらに備えうるなど、非常に多様な構造を有しうる。前記電子素子が有機発光素子である場合、本発明による伝導性高分子組成物から得た膜は、正孔注入層または正孔輸送層に適する。
【0088】
さらに具体的に、本発明による電子素子のうち一例である有機発光素子の断面概略図を、図1A、図1B及び図1Cに例示する。図1Aの有機発光素子は、第1電極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極からなる構造を有し、図1Bの有機発光素子は、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極からなる構造を有する。また、図1Cの有機発光素子は、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/第2電極からなる構造を有する。これらの構造以外にも、第1電極/正孔注入層/発光層/第2電極からなる構造を有しうるなど、多様な組み合わせが可能である。
【0089】
本発明による有機発光素子の発光層は、赤色、緑色、青色または白色を含む燐光ドーパントまたは蛍光ドーパントを含みうる。このうち、前記燐光ドーパントは、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb及びTmからなる群から選択された種以上の元素を含む有機金属化合物であることが好ましい。
【0090】
以下、本発明による有機発光素子の製造方法の一例を、図1Cに示した有機発光素子を参照して説明する。
【0091】
まず、基板の上部に大きな仕事関数を有する第1電極用物質を蒸着法またはスパッタリング法などによって形成して第1電極を形成する。前記第1電極は、アノードでありうる。ここで、基板としては一般的な有機発光素子で使われる基板を使用するが、機械的強度、熱的安定性、透明性、表面平滑性、取扱容易性及び防水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板が望ましい。第1電極用物質としては、透明で伝導性に優れたITO、IZO、酸化スズ(SnO)、または酸化亜鉛(ZnO)などを使用することが好ましい。
【0092】
次いで、前記第1電極の上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェットプリンティング法、ノズルプリンティング法、スプレイプリンティング法、有機蒸気ジェットプリンティング法、有機蒸気相蒸着法、キャスト法、またはLB法のような多様な方法を利用して正孔注入層を形成できる。
【0093】
真空蒸着法によって正孔注入層を形成する場合、その蒸着条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性によって異なるが、蒸着温度は100〜500℃、真空度は10−8〜10−3torr(1.33×10−6〜1.33×10−1Pa)、蒸着速度は0.01〜100Å/secの範囲で適切に選択することが望ましい。
【0094】
スピンコーティング法によって正孔注入層を形成する場合、そのコーティング条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性によって異なるが、2000rpm〜5000rpmのコーティング速度、コーティング後の溶媒除去のための熱処理温度は、80℃〜200℃の温度範囲で適切に選択することが望ましい。
【0095】
前記正孔注入層は、前述したような本発明による伝導性高分子組成物を利用して形成できる。これとは別個に、前記正孔注入層物質は、公知の正孔注入層物質、例えば、米国特許第4,356,429号明細書に開示された銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物またはAdvanced Material,6,p.677(1994)に記載されているスターバースト型アミン誘導体類であるTCTA、m−MTDATA、m−MTDAPB、Pani/DBSA、PEDOT/PSS、例えば、H.C.Starck GmbH社のBaytron P series製品など)、Pani/CSA、PANI/PSSまたはPani/PAAMPSAなどが使われうるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
前記正孔注入層の厚さは、約50Å〜10000Å、望ましくは、100Å〜1000Åでありうる。前記正孔注入層の厚さが50Å未満である場合、正孔注入特性が低下する虞がある。前記正孔注入層の厚さが10000Åを超える場合、駆動電圧が上昇する虞がある。
【0097】
次いで、前記正孔注入層の上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェットプリンティング法、ノズルプリンティング法、スプレイプリンティング法、有機蒸気ジェットプリンティング法、有機蒸気相蒸着法、キャスト法、LB法のような多様な方法を利用して正孔輸送層を形成できる。真空蒸着法及びスピンティング法によって正孔輸送層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に、正孔注入層の形成と同じ条件を適用することができる。
【0098】
前記正孔輸送層は、前述したような本発明による伝導性高分子組成物を利用して形成されうる。これとは別個に、正孔輸送層物質は、公知の正孔輸送層材料、例えば、N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)などの芳香族縮合環を有する通常的なアミン誘導体、PEDOT/PSS(例えば、H.C.Starck GmbH社のBaytron P series製品)などの公知の正孔輸送物質を使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
前記正孔輸送層の厚さは、好ましくは50Å〜1000Åであり、より好ましくは、100Å〜600Åである。前記正孔輸送層の厚さが50Å未満である場合、正孔輸送特性が低下する虞がある。前記正孔輸送層の厚さが1000Åを超える場合、駆動電圧が上昇する虞がある。
【0100】
次いで、前記正孔輸送層の上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェットプリンティング法、ノズルプリンティング法、キャスト法、LB法のような方法を利用して発光層を形成できる。真空蒸着法及びスピンコーティング法によって発光層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲から選択される。
【0101】
前記発光層は、公知の発光層形成材料を利用できる。前記発光層形成材料としては、ポリフルオレン系高分子、ポリフェニレン系高分子、ポリフェニレンビニレン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリキノリン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリアセチレン系高分子、スピロフルオレン系高分子(例えば、スピロアントラセン構造を有するインデノフルオレン反復単位を含むスピロフルオレン系高分子)、シクロペンタフェナントレン系高分子、インドールカルバゾール単位またはフェノキサジン単位を含むポリアリーレン系高分子及びこれらの誘導体からなる群から選択された一種以上の高分子が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、低分子またはオリゴマー形態の発光材料も使用できる。ホスト材料の場合、例えば、Alq3またはCBP(4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル)、PVK(ポリ(n−ビニルカルバゾール))、mCP(N,N’−ジカルバゾリル−3,5−ベンゼン)などを使用できるが、これに限定されるものではない。ドーパント材料の場合、蛍光ドーパントとしては、出光興産株式会社から購入可能なIDE102、IDE105及び林原社から購入可能なC545Tなどを使用でき、燐光ドーパントとしては、赤色燐光ドーパントPtOEP、UDC社のRD 61、緑色燐光ドーパントIr(PPy)3(PPyは、2−フェニルピリジン)、青色燐光ドーパントのF2Irpicなどを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0102】
使用可能な発光層形成材料は、例えば、韓国特許公開2005−0077367号公報、韓国特許公開2005−0056001号公報、韓国特許公開2005−0032691号公報、韓国特許公開2004−0056662号公報、韓国特許公開2003−0097658号、米国特許第6,900,285号明細書、米国特許第6,605,373号明細書、または米国特許第5,728,801号明細書に開示されており、本願発明は前記各文献を引用することができる。
【0103】
ドーピング濃度は、特に制限されていないが、ホスト100重量部を基準として前記ドーパントの含量は、0.01〜15重量部であることが好ましい。
【0104】
前記発光層の厚さは、好ましくは100Å〜3000Åであり、より好ましくは、200Å〜1000Åである。前記発光層の厚さが100Å未満である場合、発光特性が低下する虞がある。前記発光層の厚さが3000Åを超える場合、駆動電圧が上昇する虞がある。
【0105】
燐光ドーパントを使用する場合には、三重項励起子または正孔が電子輸送層に広がる現象を防止するために、前記発光層の上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェットプリンティング法、ノズルプリンティング法、スプレープリンティング法、有機蒸気ジェットプリンティング法、有機蒸気相蒸着法、キャスト法、またはLB法のような方法を利用して正孔阻止層を形成することもできる。真空蒸着法及びスピンコーティング法によって正孔阻止層を形成する場合、その条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成と同じ条件範囲から選択することができる。使用可能な公知の正孔阻止材料として、例えば、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、BCPなどが挙げられる。
【0106】
前記正孔阻止層の厚さは、約50Å〜1000Å、望ましくは、100Å〜300Åでありうる。前記正孔阻止層の厚さが50Å未満である場合、正孔阻止特性が低下し、前記正孔阻止層の厚さが1000Åを超える場合、駆動電圧が上昇しうるためである。
【0107】
次いで、電子輸送層を真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェットプリンティング法、ノズルプリンティング法、スプレープリンティング法、有機蒸気ジェットプリンティング法、有機蒸気相蒸着法、キャスト法などの多様な方法を利用して形成する。真空蒸着法及びスピンコーティング法によって電子輸送層を形成する場合、その条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に、正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲から選択される。前記電子輸送層の材料は、電子注入電極(カソード)から注入された電子を安定的に輸送する機能を行うものであって、キノリン誘導体、特にAlq3、TAZ、Balqなどのような公知の材料を使用してもよい。
【0108】
前記電子輸送層の厚さは、好ましくは100Å〜1000Åであり、より好ましくは、200Å〜500Åである。前記電子輸送層の厚さが100Å未満である場合、電子輸送特性が低下する虞がある。前記電子輸送層の厚さが1000Åを超える場合、駆動電圧が上昇する虞がある。
【0109】
また、電子輸送層の上部に陰極から電子の注入を容易にする機能を有する物質である電子注入層が積層されてもよく、電子注入層の構成材料は特に制限されい。
【0110】
電子注入層としては、LiF、NaCl、CsF、Li2O、BaOのような電子注入層形成材料として公知物質を利用できる。前記電子注入層の蒸着条件は、使用する化合物によって異なるが、真空蒸着によって形成されることが好ましく、蒸着速度は、好ましくは0.01Å/s〜1Å/sであり、より好ましくは、0.1Å/s〜0.5Å/sの範囲内で選択されうる。蒸着速度が0.01Å/s未満である場合、正確な厚さを保証できない虞や、蒸着工程時間長くかかる虞がある。蒸着速度が1Å/sを超える場合、電子注入層の厚さの調節が困難となる虞がある。
【0111】
前記電子注入層の厚さは、好ましくは1Å〜500Åであり、より好ましくは、5Å〜50Åである。前記電子注入層の厚さが1Å未満である場合、電子注入特性が低下する虞がある。前記電子注入層の厚さが500Åを超える場合、駆動電圧が上昇する虞がある。
【0112】
最後に、電子注入層の上部に真空蒸着法やスパッタリング法などの方法を利用して第2電極を形成できる。前記第2電極は、カソードとして使われうる。前記第2電極形成用金属としては、小さな仕事関数を有する金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの組合わせを使用できる。具体的な例としては、リチウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−バリウム、カルシウム、マグネシウム−インジウム、またはマグネシウム−銀などが挙げられる。また、前記第2電極は、単一層構造または多層構造を有しうるなど、多様な変形例が可能であり、前面発光素子を得るために、ITO、IZOを使用した透過型カソードを使用してもよい。
【実施例】
【0113】
以下に、本発明による合成例及び実施例を具体的に例示するが、本発明は、下記の合成例及び実施例に限定されるものではない。
【0114】
(合成例1:化学式2aで示される化合物Aの合成)
オクタ(クロロシリルエチル)−POSS(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane)7.194mmol(10.0g)をテトラヒドロフラン500mlで希釈させた後、トリエチルアミン63.310mmol(6.41g)を添加した。次いで、反応温度を−78℃に下げ、メチルアルコール63.310mmol(2.03g)を徐々に加えた後、反応温度を徐々に常温まで上げた。常温で20時間反応を進めた後、セライトを通じてフィルタリングし、0.1Torrほどの減圧下で揮発性物質を除去した。ここに、ペンタン100mlを加えて1時間攪拌した後、セライトを通じてフィルタリングして無色の澄んだ溶液を得た後、再びこの溶液を0.1Torrほどの減圧下でペンタンを除去することによって、下記化学式2aで示される化合物Aを製造した。
【0115】
合成された化合物AをCDClに溶かしてNMR測定した結果は、下記の通りである:H−NMR(300MHz)data;δ0.11(s,48H,8×[CH)、0.54〜0.68(m,32H,8×CHCH−)、3.43(s,24H,8×OCH−)。
【0116】
【化14】

【0117】
(合成例2:化学式3aで示される化合物Bの合成)
2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン29.014mmol(10.0g)とキシレン溶液に溶けているプラチナム(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン化合物0.164gとをフラスコに投入した後、ジエチルエーテル300mlを入れて希釈した。次いで、フラスコの温度を−78℃に下げた後、トリクロロシラン127.66mmol(17.29g)を徐々に加えた後、反応温度を徐々に常温まで昇温させた。以後、常温で20時間反応を進め、0.1Torrほどの減圧下で揮発性物質を除去した。ここに、ペンタン100mlを加えて1時間攪拌した後、セライトを通じて濾過して溶液を得、再びこの溶液から0.1Torrほどの減圧下でペンタンを除去して、下記の構造を有する液状化合物を得た。
【0118】
【化15】

【0119】
前記液状化合物11.28mmol(10.0g)をテトラヒドロフラン500mlで希釈し、トリエチルアミン136.71mmol(13.83g)を添加した。次いで、反応温度を−78℃に下げ、メチルアルコール136.71mmol(4.38g)を徐々に加えた後、反応温度を徐々に常温まで昇温させた。常温で15時間反応を進めた後、セライトを通じて濾過し、0.1Torrほどの減圧下で揮発性物質を除去した。ここに、ペンタン100mlを加えて1時間攪拌した後、セライトを通じて濾過して無色の澄んだ溶液を得、再びこの溶液から0.1Torrほどの減圧下でペンタンを除去して、下記化学式3aで示される化合物Bを得た。
【0120】
【化16】

【0121】
前記化学式3aで示される化合物BをCDClに溶かして測定したNMR結果は、次の通りである:H−NMR(300MHz):δ0.09(s,12H,4×−CH)、0.52〜0.64(m,16H,4×−CHCH−)、3.58(s,36H,4×−[OCH)。
【0122】
(合成例3:化学式4aで示される化合物Cの合成)
1,3−ジクロロテトラメチルジシロキサン249.208mmol(10.0g)をフラスコに投入した後、テトラヒドロフラン500mlを入れて希釈し、フラスコの温度を−78℃に下げた後、トリエチルアミン108.212mmol(10.95g)を添加する。次いで、メチルアルコール107.990mmol(3.46g)を徐々に加えた後、反応温度を徐々に常温まで上げる。常温で15時間反応を進めた後、セライトを通じてフィルタリングし、0.1Torrほどの減圧下で揮発性物質を除去する。ここに、へキサン100mlを加えて1時間攪拌した後、セライトを通じてフィルタリングし、この溶液を0.1Torrほどの減圧下でヘキサンを除去して、得た無色の液体を単純蒸留して下記化学式4aで示される化合物Cを無色の液体として得た。
【0123】
【化17】

【0124】
前記化学式4aで示される化合物CをCDClに溶かしてNMR測定した結果は、下記の通りである:H−NMR(300MHz)data;δ0.068(s,12H,4×−CH)、3.45(s,6H,2×−OCH)。
【0125】
(合成例4:シロキサン系物質の合成(I))
前記合成例1から得た化合物A(かご構造を有し、化学式2aで示される)、前記合成例2から得た化合物B(環状構造を有し、化学式3aで示される)、前記合成例3から得た化合物C(直線型構造を有し、化学式4aで示される)、テトラメトキシシラン(Aldrich Co.社製であって化学式6aで表示される、以下、“化合物D”という)及びメチルトリメトキシシラン(Aldrich Co.社製であって化学式6bで表示される、以下、“化合物E”という)を下記表1に記載されたように定量して、8個のフラスコにそれぞれ入れ、各フラスコに入れた全体化合物の含量の15倍ほどのテトラヒドロフランを各フラスコに添加した後、フラスコの内部温度を−78℃まで下げた。−78℃で一定量の塩酸(HCl)及び水を入れて、反応器の温度を70℃まで徐々に上げた。その後、70℃で反応を20時間進めた。反応溶液を分別じょうごに移した後、最初に入れたテトラヒドロフランと同量のジエチルエーテルとテトラヒドロフランとを添加し、総溶媒の1/10倍ほどの水で3回洗浄した後、減圧下で揮発性物質を除去して白色の粉末状の重合体を得た。前記の方法で得た重合体を完全に澄んだ溶液となるまで少量のアセトンを入れて溶解させた。この溶液を気孔が0.2μmであるフィルタを利用して、微細な粉末及びその他の異物を除去し、澄んだ溶液部分のみを取った後、水を徐々に添加した。このとき、生成された白色の粉末と溶液部分(アセトンと水の混合溶液)とを分離した後、0〜20℃、0.1Torr)減圧下で10時間白色の粉末を乾燥して分別されたシロキサン系物質1〜8を得た。シロキサン系物質の合成に使われた化合物、酸触媒、水及び得られたシロキサン系物質の含量は、下記表1の通りである。
【0126】
【表1】

【0127】
前記シロキサン系物質の分子量、Si−OHの含量、Si−OCHの含量、Si−CHの含量測定値は、下記の表2の通りである:
【0128】
【表2】

【0129】
※分子量:ゲル透過クロマトグラフィ(Waters社)で分析した。
※Si−OHの含量、Si−OCHの含量、Si−CHの含量:核磁気共鳴分析装置(NMR、Bruker社)で分析した。
Si−OH(%)=[Area(Si−OH)÷Area(Si−OH)+Area(Si−OCH)/3+Area(Si−CH)/3]×100、
Si−OCH(%)=[Area(Si−OCH)/3÷Area(Si−OH)+Area(Si−OCH)/3+Area(Si−CH)/3]×100、
Si−CH(%)=[Area(Si−CH)/3÷Area(Si−OH)+Area(Si−OCH)/3+Area(Si−CH)/3]×100の式で計算した。
【0130】
(合成例5:化学式2bを有する化合物(シロキサン系物質9)の合成−シロキサン系物質の合成(II))
中間体Bの合成
下記の反応式1によって中間体Bを合成した:
【0131】
【化18】

【0132】
POSSを1g(1.57mmol)とキシレン溶液に溶けている錯化合物Aであるプラチナム(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯物0.164gとをフラスコに投入した後、ジエチルエーテル300mlを入れて希釈した。次いで、フラスコの温度を−78℃に下げた後、6当量の中間体Aを徐々に加えた後、反応温度を徐々に常温まで昇温させた。この後、常温で20時間反応を進め、0.1Torrほどの減圧下で揮発性物質を除去した。ここに、ペンタン100mlを加えて1時間攪拌した後、セライトを通じて濾過して溶液を得て、再びこの溶液から0.1Torrほどの減圧下でペンタンを除去して中間体Bを得た。
【0133】
化学式2bを有する化合物の合成
【0134】
【化19】

【0135】
前記中間体B、及びキシレン溶液に溶けている錯化合物Aであるプラチナム(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン化合物0.164gをフラスコに投入した後、ジエチルエーテル300mlを入れて希釈した。次いで、フラスコの温度を−78℃に下げた後、2当量のトリクロロシラン(SiHCl)を徐々に加えた後、反応温度を徐々に常温まで昇温させた。この後、常温で20時間反応を進め、0.1Torrほどの減圧下で揮発性物質を除去した。ここに、ペンタン100mlを加えて1時間攪拌した後、セライトを通じて濾過して溶液を得、再びこの溶液から0.1Torrほどの減圧下でペンタンを除去して得た化合物をTHF 100mlで溶かした後、トリエチルアミンを入れてエタノール10当量を徐々に入れた後に常温で10時間反応させた。これをセライトを通じて濾過して溶液を得、再びこの溶液から0.1Torrほどの減圧下で溶媒を除去して、化学式2bを有する化合物を得た。
【0136】
H−NMR(300MHz,CDCl)d(ppm)0.1(Si−(CH)、0.4(POSS−CHCHSi)、0.54(POSS−CHCHSi)、1.06(Si−OCHCH)、3.67(Si−OCHCH)、6.8−7.08(N−Phenyl)
前記化合物をシロキサン系物質9という。
【0137】
(実施例1)
伝導性高分子と、酸としてPEDOT−PSSと、前記合成例4から得たシロキサン系物質1とを含む伝導性高分子組成物を利用して得た正孔注入層を含む有機発光素子を製作した。前記有機発光素子を次のような構造を有する:IZO/PEDOT−PSS+シロキサン系物質1(500Å)/DowGreen K2(Lumation1300)(800Å)/Ba(50Å)Al(1500Å)。
【0138】
アノードは、15Ω/cm(1000Å)のIZOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmサイズに切断してアセトン、イソプロピルアルコール及び純水の中で各15分間超音波洗浄した後、30分間UVオゾン洗浄して使用した。一方、アルコールと水とに伝導性高分子と、酸としてのBaytron社のPEDOT−PSS(商品名は、Baytron P ETV2(H.C.Starch,GmbH社)である、PEDOTとPSSとの重量比は1:16である、水とアルコールとの混合溶液である)と、シロキサン系物質1とをジメチルホルムアミド(DMF)に溶かして(このとき、PEDOT−PSSとシロキサン系物質1とを97:3の重量比で添加する)、伝導性高分子組成物を準備した。前記伝導性高分子組成物を前記基板の上部に2000rpmでスピンコーティングした後、200℃で5分間大気中で熱処理することによって、500Åの正孔注入層を形成した。前記正孔注入層の上部に、緑色発光物質として1.2wt%でトルエンに溶解されたDowGreen K2(DowChemical社製品である、商品名は、Lumation 1300である)を2000rpmでスピンコーティングした後に100℃で15分間熱処理して、800Å厚の発光層を形成した。この後、前記発光層の上部にカソードとしてBa 50ÅとAl 1500Åとを順次に真空蒸着して、有機発光素子を製造した。これをサンプル1とする。
【0139】
(実施例2)
前記実施例1のうち、シロキサン系物質1の代わりに合成例4から得たシロキサン系物質2を使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法でIZO/PEDOT−PSS+シロキサン系物質2(500Å)/DowGreen K2(Lumation1300)(800Å)/Ba(50Å)Al(1500Å)の構造を有する有機発光素子を製造した。これをサンプル2とする。
【0140】
(実施例3)
前記実施例1のうち、シロキサン系物質1の代わりに合成例4から得たシロキサン系物質3を使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法でIZO/PEDOT−PSS+シロキサン系物質3(500Å)/DowGreen K2(Lumation1300)(800Å)/Ba(50Å)Al(1500Å)の構造を有する有機発光素子を製造した。これをサンプル3とする。
【0141】
(実施例4)
前記実施例1のうち、シロキサン系物質1の代わりに合成例4から得たシロキサン系物質4を使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法でIZO/PEDOT−PSS+シロキサン系物質4(500Å)/DowGreen K2(Lumation1300)(800Å)/Ba(50Å)Al(1500Å)の構造を有する有機発光素子を製造した。これをサンプル4とする。
【0142】
(実施例5)
前記実施例1のうち、シロキサン系物質1の代わりに合成例4から得たシロキサン系物質5を使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法でIZO/PEDOT−PSS+シロキサン系物質5(500Å)/DowGreen K2(Lumation1300)(800Å)/Ba(50Å)Al(1500Å)の構造を有する有機発光素子を製造した。これをサンプル5とする。
【0143】
(実施例6)
前記実施例1のうち、シロキサン系物質1の代わりに合成例4から得たシロキサン系物質6を使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法でITO/PEDOT−PSS+シロキサン系物質6(500Å)/DowGreen K2(Lumation1300)(800Å)/Ba(50Å)Al(1500Å)の構造を有する有機発光素子を製造した。これをサンプル6とする。
【0144】
(実施例7)
前記実施例1のうち、シロキサン系物質1の代わりに合成例4から得たシロキサン系物質7を使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法でIZO/PEDOT−PSS+シロキサン系物質7(500Å)/DowGreen K2(Lumation1300)(800Å)/Ba(50Å)Al(1500Å)の構造を有する有機発光素子を製造した。これをサンプル7とする。
【0145】
(実施例8)
前記実施例1のうち、シロキサン系物質1の代わりに合成例4から得たシロキサン系物質8を使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法でIZO/PEDOT−PSS+シロキサン系物質8(500Å)/DowGreen K2(Lumation1300)(800Å)/Ba(50Å)Al(1500Å)の構造を有する有機発光素子を製造した。これをサンプル8とする。
【0146】
(実施例9)
前記実施例1のうち、シロキサン系物質1の代わりに合成例5から得たシロキサン系物質9を使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法でIZO/PEDOT−PSS+シロキサン系物質9(500Å)/DowGreen K2(Lumation1300)(800Å)/Ba(50Å)Al(1500Å)の構造を有する有機発光素子を製造した。これをサンプル9とする。
【0147】
(比較例1)
前記実施例1のうち、正孔注入層を形成しなかったという点を除いては、前記実施例1と同じ方法でIZO/DowGreen K2(Lumation1300)(800Å)/Ba(50Å)Al(1500Å)の構造を有する有機発光素子を製造した。これを比較サンプルAとする。
【0148】
(比較例2)
前記実施例1のうち、PEDOT−PSSのみを利用して正孔注入層を形成した点を除いては、前記実施例1と同じ方法でIZO/PEDOT−PSS(500Å)/DowGreen K2(Lumation1300)(800Å)/Ba(50Å)Al(1500Å)の構造を有する有機発光素子を製造した。これを比較サンプルBとする。
【0149】
(評価例)
サンプル1〜9及び比較サンプルA及びBに対して、Keithley Source Measurment Unit 238とPR650(Spectroscan)Source Measurement Unit.を利用して、しきい電圧、色純度、輝度、最大効率をそれぞれ評価し、McScience Lifetime Tester Polaroni(登録商標)M6000で寿命を評価して、その結果を下記の表3に示した。輝度(cd/m)は、6Vでの輝度を観察したものであり、CIEは、1000cd/mでの色座標を観察したものであり、寿命(時間)は、初期輝度(1000cd/m)を100%としたとき、輝度が半減(すなわち、初期輝度の50%に該当する輝度を表す時)されるのにかかる時間を測定したものである。特に、サンプル9、サンプルA及びサンプルBの電圧−電流密度グラフ、電圧−輝度(cd/m)グラフ及び時間−輝度(%)グラフは、それぞれ図2〜4に示す。
【0150】
【表3】

【0151】
前記表3及び図2〜4から本発明によるサンプル1〜9は、優れた電気的特性はもとより、長寿命を有するということが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1A】本発明による電子素子のうち、有機発光素子の一例の構造を概略的に示す図面である。
【図1B】本発明による電子素子のうち、有機発光素子の一例の構造を概略的に示す図面である。
【図1C】本発明による電子素子のうち、有機発光素子の一例の構造を概略的に示す図面である。
【図2】本発明による電子素子のうち、有機発光素子の一例及び従来の有機発光素子の電圧−電流密度グラフを示す図面である。
【図3】本発明による電子素子のうち、有機発光素子の一例及び従来の有機発光素子の電圧−輝度グラフを示す図面である。
【図4】本発明による電子素子のうち、有機発光素子の一例及び従来の有機発光素子の時間−輝度グラフを示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で示されるシロキサン系物質及び伝導性高分子を含む伝導性高分子組成物:
【化1】

前記化学式1において、
前記Aは、C−C20のアルキル基、C−C30のアリール基、C−C20のアルコキシ基、C−C30のアルキルアリール基、C−C30のアラルキル基または−(CH−MZであり、
前記nは、0または1〜20の整数であり、
前記Mは、Si、Ti、SnまたはAlであり、
前記Z、Z及びZは、互いに独立にC−C20のアルキル基、C−C30のアリール基、C−C30のアルキルアリール基、C−C30のアラルキル基、架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位または発光単位であり、
aは、2〜1000の整数である。
【請求項2】
前記架橋性単位は、水酸基、C−C20のアルコキシ基またはハロゲン原子であることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項3】
前記正孔輸送単位は、
【化2】

からなる群から選択される化合物の誘導体であり、前記Q、Q、Q、Q及びQは、互いに独立にN、OまたはSであることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項4】
前記電子輸送単位は、
【化3】

からなる群から選択される化合物の誘導体であり、Q、Q及びQは、互いに独立にN、OまたはSであることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項5】
前記発光単位は、C−C30の芳香族またはC−C30のヘテロ芳香族であって、
前記芳香族または前記ヘテロ芳香族は、1つの環または2以上の環を含み、前記2以上の環は、縮合環であるか、または環構造が単結合もしくはビニレン基によって連結されていることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項6】
前記シロキサン系物質は、化学式2で示されることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物:
【化4】

前記化学式2において、
nは、0または1〜20の整数であり、
Mは、Si、Ti、SnまたはAlであり、
、Z及びZは、互いに独立にC−C20のアルキル基、C−C30のアリール基、C−C30のアルキルアリール基、C−C30のアラルキル基、架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位または発光単位であり、
各−(CH−MZは、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。
【請求項7】
前記シロキサン系物質は、化学式2a、化学式2bまたは化学式2cで示されることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【化5】

【請求項8】
前記シロキサン系物質は、化学式2で示される化合物、化学式3で示される化合物、化学式4で示される化合物、化学式5で示される化合物及び化学式6で示される化合物からなる群から選択された一種以上の化合物の加水分解物または縮合反応物であることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物:
【化6】

前記化学式2〜6において、
nは、0または1〜20の整数であり、
Mは、Si、Ti、SnまたはAlであり、
、Z及びZは、互いに独立にC−C20のアルキル基、C−C30のアリール基、C−C30のアルキルアリール基、C−C30のアラルキル基、架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位または発光単位であり、各−(CH−MZは、互いに同一であってもよいし、異なってもよく、
及びRは、互いに独立に−CH(CHSiX、−O−SiX、架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位、発光単位、水素、ハロゲン原子、C−C20のアルキル基またはC−C30のアリール基であるが、前記R及びRのうち少なくとも一つは、−CH(CHSiX、−O−SiXまたは架橋性単位であり、
、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21、X22及びX23は、互いに独立に架橋性単位、正孔輸送単位、電子輸送単位、発光単位、水素、ハロゲン原子またはC−C20のアルキル基であるが、X、X及びXのうち少なくとも一つは架橋性単位であり、X、X及びXのうち少なくとも一つは架橋性単位であり、X、X、X、X10、X11、X12、X13及びX14のうち少なくとも一つは架橋性単位であり、X15、X16、X17、X18、X19及びX20のうち少なくとも一つは架橋性単位であり、X21、X22及びX23のうち少なくとも一つは架橋性単位であり、
は、単結合または−O−であり、
は、C−C20のアルキレン基、一つ以上の水素がハロゲン原子で置換されたC−C20のアルキレン基、−(CF−O−で示される基、一つ以上の水素が正孔輸送単位、電子輸送単位または発光単位で置換されたC−C20のアルキレン基または2価の正孔輸送単位であるが、
前記bは、1〜20の整数であり、
は、単結合、C−C20のアルキレン基または一つ以上の水素がハロゲン原子で置換されたC−C20のアルキレン基であり、
pは、3〜8の整数であり、
mは、1〜10の整数であり、
qは、0または1〜10の整数であり、
rは、0または1〜10の整数であり、
q個のX10は、互いに同一であってもよいし、異なってもよく、
q個のX11は、互いに同一であってもよいし、異なってもよく、
r個のDは、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。
【請求項9】
前記化学式3で示される化合物は、化学式3a、化学式3b、化学式3c、化学式3d、化学式3e、化学式3fまたは化学式3gで示されることを特徴とする請求項8に記載の伝導性高分子組成物。
【化7】

【請求項10】
前記化学式4で示される化合物は、化学式4a、化学式4b、化学式4cまたは化学式4dで示されることを特徴とする請求項8に記載の伝導性高分子組成物。
【化8】

【請求項11】
前記化学式5で示される化合物は、化学式5a、化学式5b、化学式5c、化学式5d、化学式5e、化学式5fまたは化学式5gで示されることを特徴とする請求項8に記載の伝導性高分子組成物。
【化9】

【請求項12】
前記化学式6で示される化合物は、化学式6aまたは化学式6bで示されることを特徴とする請求項8に記載の伝導性高分子組成物。
【化10】

【請求項13】
前記シロキサン系物質の重量平均分子量は、500,000以下であることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項14】
前記伝導性高分子は、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリビニレンフェニレン、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(アリールアミン)及びこれらの誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項15】
前記化学式1で示されるシロキサン系物質及び前記伝導性高分子は、0.01:99.9〜20:80の質量比で存在することを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項16】
酸をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項17】
前記酸は、
C、S、N、O、Si、F、Cl及びHからなる群から選択された一種以上の原子を含み、
水酸基、C−C20のアルキル基、C−C20のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C−C30のアリール基、C−C20のアルキルアミノ基、C−C30のアリールオキシ基、C−C30のアリールアミノ基、C−C20のアルキルエポキシ基、ビニル基、C−C20のアルキルメルカプト基、C−C20のヒドロキシアルキレン基、アセトキシ基、チオール基及びイミド基からなる群から選択された一種以上の作用基を含むことを特徴とする請求項16に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項18】
前記酸は、
スルホン酸イオン、ホスホン酸イオンまたはカルボン酸イオンと、
Hまたはアルカリ金属イオンと、
を含むことを特徴とする請求項16に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項19】
硬化剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項20】
金属ナノ粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項21】
無機物ナノ粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子組成物。
【請求項22】
請求項1〜21の何れか1項に記載の伝導性高分子組成物を用いてなる膜を備えていることを特徴とする電子素子。
【請求項23】
前記電子素子は、有機発光素子であることを特徴とする請求項22に記載の電子素子。
【請求項24】
前記膜は、正孔注入層または正孔輸送層であることを特徴とする請求項23に記載の電子素子。
【請求項25】
前記電子素子は、太陽電池素子、電気変色性素子、電気泳動素子、有機薄膜トランジスタまたは有機メモリ素子であることを特徴とする請求項22に記載の電子素子。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−169593(P2007−169593A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222696(P2006−222696)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】