説明

伝導性高分子複合体を用いた高容量/高出力の電気化学エネルギー貯蔵素子

本発明は、(a)伝導性高分子粒子;及び、(b)前記伝導性高分子より高い伝導性を有する無機物ナノ粒子を含み、前記伝導性高分子粒子の表面、内部又はこれらの全部に伝導性無機物ナノ粒子が散布されていることを特徴とする複合体粒子、前記複合体粒子を含む電極及び前記電極を備える電気化学素子を提供する。
本発明では、優れた接着力及び伝導度を有する高分子内に、伝導性ナノ粒子が均一に分散された複合体粒子を電極成分として用いることで、電極活物質の使用量の増加による電気化学素子の高容量及び長寿の特性を具現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた電極の結着性及び接着性、伝導性を付与し得る新規な複合体粒子、並びに前記複合体粒子を備えて性能を向上させた吸脱着方式の電気化学エネルギー貯蔵素子に関する。
【背景技術】
【0002】
吸脱着方式のエネルギー貯蔵素子は、二つの電極、前記両電極間に位置してこれらを電気的に絶縁させる分離膜、電解質及びこれらを受容するアウターケーシング(outer casing)からなる。従来には電池が酸化還元反応により化学的エネルギーを電気的エネルギーに転換させるのに対し、前記エネルギー貯蔵素子は、電荷の表面吸着によりエネルギーを貯蔵する。このとき、電荷の吸着は、電極及び電解質間の界面で発生し得るため、充放電の速度が従来の電池に比べて非常に速いという長所がある。
【0003】
一般に、吸脱着に基づいた電気化学素子の核心素材は電極である。電極は、一般に集電体及び前記集電体上に接着された電極活物質からなる。このとき、集電体及び電極活物質は、それぞれ電子を伝導する役割及び電解質から電荷を吸着する役割を果す。吸脱着電気化学素子の電極活物質としては活性炭素が最も広く用いられ、一般に活性炭素の非表面積を広める研究が多く進行されている。その他、蓄電容量を増加させるために、ファラデー的な反応(faradic reactions)を含むRuO、IrO、MnO及び伝導性高分子が新規な電極活物質として用いられている。
【0004】
一方、電気化学素子の性能は、蓄電容量、電圧及び内部抵抗などに依存する。イオンの吸脱着方式により充放電を行う電気化学素子において、放電エネルギーを高める方法としては、大きく3つに分類され得るが、これらはセル電圧を高める方法、セル内の内部抵抗を低減する方法及び新規な電極物質を開発する方法などがある。このうち、吸脱着電気化学素子を用いるシステムにおいて電圧を高める方法としては、複数のセルを直列に連結する方法が主に用いられている。また、電気化学素子の内部抵抗を低減するための研究としては、集電体上に電極活物質を結着させるバインダーの物性を改善する技術などがある。さらに、新規な電極活物質の開発に関するものがある。しかしながら、電気化学素子の高容量、高出力及び内部抵抗の減少を同時に満足させる技術は、まだ提示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、良質のバインダー及び導電剤の役割を果す新規な物質を電極成分として導入すれば、電気化学素子の高容量、高出力及び内部抵抗の減少を図ることができることを見出した。
【0006】
実際に、優れた接着力及び伝導度を有する高分子粒子の表面及び/又は内部に、前記高分子より高い伝導性を有するナノサイズの無機物粒子を均一に分布した伝導性複合体粒子を電極の一構成成分として使用すれば、従来の電極製造時に用いられる導電剤及び高分子バインダーの使用量が減少すると共に、電極活物質の役割を補助することで、電極活物質の使用量の増加及び電気化学素子の性能の向上が図られることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、これに基づいたものである。
【0008】
本発明は、(a)伝導性高分子粒子;及び(b)前記伝導性高分子より高い伝導性を有する無機物ナノ粒子を含み、前記伝導性高分子粒子の表面、内部又はこれらの全部に伝導性無機物ナノ粒子が散布されることを特徴とする複合体粒子、前記複合体粒子を含む電極及び前記電極を備える電気化学素子、好ましくは吸脱着方式の電気化学素子を提供する。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
吸脱着方式の電気化学素子は、電極活物質の表面に電荷を吸着させることによりエネルギーを貯蔵する。このような素子の容量を増加させるための方案は大きく2つがある。第一は、約80%程度を占有する電極活物質の比蓄電容量を増加させる方法であり、第二は、良質のバインダー及び導電剤の役割を果す新規な物質を導入して、約80%水準の電極活物質の重量比を増大させる方法である。
【0011】
前記素子の電極活物質としては、活性炭素が用いられる。このような活性炭素は、伝導性が低いが、比表面積が大きい物質である。このよう活性炭素を良質のフィルム状で集電体にコートするために、約10%程度のバインダー、例えば従来の非伝導性バインダーが必要である。また、内部抵抗を減少するために 約10%程度の導電剤が導入される。よって、電極内で電極活物質が占有する重量比は約80%程度であり、残りの約20%程度は電気化学素子の容量に寄与できなくなる。
【0012】
したがって、本発明では、電極活物質、バインダー、導電剤の機能を全部遂行できる伝導性複合体粒子を電極成分として導入することで、素子の容量に寄与する電極内の構成比率を増加させることを特徴とする。
【0013】
従来には、電極活物質(活性炭素)、導電剤及び伝導性高分子を単純混合して電極を構成する場合、ナノ単位の粒子である導電剤は強い凝集力を示す。こうした強い凝集力は、導電剤が電極活物質粒子の周囲に均一に分布することを阻害する。よって、電極内で電極活物質を電気的に連結し、イオンや電荷を引き付けて電極活物質に移動及び伝達させる導電剤の役割を充実に遂行できないので、伝導性高分子及び電極活物質が多量存在しても、電気化学素子の容量及び出力の低下を発生させることになる。
【0014】
これに対し、本発明の複合体粒子は、優れた結着力及び伝導性を有する高分子粒子の表面及び/又は内部に、前記高分子より高い伝導性を有する無機物ナノ粒子が均一に分布している(図1参照)。
【0015】
このような複合体粒子を電極成分として使用するとき、前記複合体粒子における伝導性高分子は、電極活物質粒子間、電極活物質及び集電体間を物理的且つ電気的に連結するバインダーの役割を遂行し得る。また、前記複合体粒子における伝導性無機物ナノ粒子は、電荷を活発に移動させる導電剤の役割を遂行し得る(図1参照)。
【0016】
実際に、本発明の複合体粒子は、バインダー及び導電剤の役割を遂行できる物性、例えば、10g/cm以上の接着力及び10−2〜10S/cmの伝導度を全部保有する。これにより、電極を導入するとき、カーボン系列の導電剤を使用しなくても、導電剤と対等乃至優れた伝導性を発揮して内部抵抗が減少できる。このとき、接着力は10〜100g/cmであり、好ましくは30〜50g/cmである。
【0017】
一方、伝導性高分子は一般の導電剤に比べて伝導度が小さく、導電剤は伝導性が高くて電荷を引き付ける力が強いが、非表面積が小さくて電荷の捕集の程度が小さい。本発明では、従来の導電剤と対等な伝導度を有する伝導性無機物ナノ粒子を複合体成分として含む。このような伝導性無機物ナノ粒子の伝導性は、電極−溶液内に配列される多数の電荷を強く引き付けることになる。このように引き付けた多数の電荷は、前記伝導性無機物ナノ粒子と物理的且つ電気的に連結している伝導性高分子を介して、表面積が広い電極活物質に迅速に移動及び伝達され得る。これにより、従来の導電剤及び伝導性高分子が単純に混合された電極に比べて、素子の高出力及び高容量の効果を発揮できる。
【0018】
このとき、伝導性無機物ナノ粒子により捕集した電荷の一部は、伝導性高分子の繰返し単位内にドープ又はアンドープされ得る。よって、伝導性高分子が電荷の移動に関与する電極活物質としての役割を補助できるので、素子の容量の増加を有意的に上昇させることができる(図3参照)。
【0019】
本発明の伝導性無機物ナノ粒子は、伝導性高分子内に均一に分散し得る直径を有すると共に、伝導性を有する無機物であれば、その成分や形態などは特別に制限がない。
【0020】
このとき、無機物は、公知された通常の無機物を含む成分であって、例えば一元素物質である炭素材、金属、金属酸化物、金属合金などを含む。使用可能な伝導性粒子の非制限的な例としては、金属、金属酸化物、金属合金、炭素材又はこれらの混合物などが挙げられる。このうち、炭素材の具体例としては、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバーなどがある。
【0021】
伝導性無機物ナノ粒子は、球状であり得る。その他、チューブ状、ファイバー状、ロード状又は板状であり得る。また、伝導性高分子内での無機物粒子の分散度を向上させるために、前記伝導性粒子は、ナノ単位のサイズを有することが好ましい。一例として、球状の伝導性粒子である場合、直径は0.1〜500nm、好ましくは0.1〜100nmである。また、球状を除いた伝導性無機物粒子は、幅が0.1〜500nmであり、長さが0.1〜10μmである。好ましくは、幅が0.1〜100nmであり、長さが0.1〜2μmである。チューブ状、ファイバー状、ロード状、板状の粒子は、マイクロ単位の長さを有しても、電極製造時に超音波処理、破砕、pH調節などを実施すれば、ナノ単位に切断及び粉砕できるため、特別に前述した範囲に制限されるものではない。
【0022】
前述したように、伝導性無機物粒子がナノ水準のサイズを有する場合、質量当り表面積が増加することになる。このような表面積の増加は、電極内での電子の移動通路を増加させることで、素子の高出力の向上を図ることができる。
【0023】
また、電気化学素子内の電荷移動の向上及びこれによる性能の向上を図るために、伝導性無機物粒子は、できるだけ伝導性が高いことが好ましい。一例として、1S/cm〜10S/cmの伝導度を有することができる。
【0024】
本発明の複合体粒子における伝導性高分子は、公知された通常の伝導性高分子を使用できる。
【0025】
電極活物質粒子を互いに物理的且つ電気的に連結及び固定するバインダーの役割を充実に遂行するために、伝導性高分子の分子量の範囲は1,000〜1,000,000であるのが好ましい。
【0026】
また、電極製造時に用いられる分散媒や素子の電解液に含浸時、膨潤(swelling)されてゲル化する高分子は、電極活物質粒子の全体を囲むことなく、電極活物質粒子間に位置するだけで、これらを連結及び固定できる。これにより、電極活物質粒子の全体を囲む従来のバインダーに比べて少量使用しても均一な接着力を持続させることができる。よって、伝導性高分子は、通常の素子用電解液により含浸時に膨潤されてゲル化できることが好ましい。
【0027】
複合体粒子は、ドパント(dopant)の投入により、電子伝導性が改質されたものであり得る。
【0028】
このとき、ドパントは、伝導性高分子の繰返し単位内に流入されて移動性電荷キャリアを導入する物質を意味するもので、高分子の繰返し単位で発生する電荷移動を活性化できるものであれば、特別に制限がない。一例として、水系又は非水系に溶解可能な塩、酸化剤、還元剤などが用いられる。
【0029】
ドパントは、素子内の溶液で解離されて伝導性高分子間の部分電荷移動を発生させて、伝導性高分子の伝導率を増加させることができる。よって、最終の複合体の伝導度の上昇効果を有意的に倍加させることができる。
【0030】
使用可能な伝導性高分子の非制限的な例としては、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール、ポリチオフェン、PEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene)、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリチエニレンビニレン(poly(thienylene vinylene)、又はこれらの混合物などがある。
【0031】
本発明の複合体における伝導性ナノ粒子及び伝導性高分子の重量比は、特別に制限のないが、0.01〜50:50〜99.9が好ましい。
【0032】
前述したように構成される本発明の複合体粒子は、直径や形態などに特別に制限がない。好ましくは100〜1,000nmの直径を有する粒子であり得る。
【0033】
前述した伝導性粒子及び伝導性高分子の以外に、本発明の複合体は、公知された通常の添加剤をさらに含むことができる。
【0034】
本発明による伝導性複合体粒子は、伝導性高分子を適切な溶媒に溶解させて伝導性高分子溶液を製造した後、伝導性ナノ粒子を投入して凝結及び乾燥して製造できる。しかしながら、これに制限されるものではない。
【0035】
このとき、投入される伝導性粒子がナノ単位のサイズを有していない場合、伝導性粒子を破砕した後、高分子溶液に添加することもできる。破砕方法としては、通常の方法が用いられ、特にボールミル(ball mill)法が好ましい。また、凝結及び乾燥方法は、公知された通常の方法を遂行できる。
前記溶媒としては、使用したい伝導性高分子と溶解度指数が類似しているのが好ましい。使用可能な溶媒の非制限的な例としては、アセトン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、シクロヘキサン、水又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0036】
伝導性無機物粒子の分散安全性は、伝導性粒子の表面の電荷量によって変化する。表面に電荷を帯びた粒子は、静電気力(electrostatic force)によって溶液上で安定化できるが、このような伝導性粒子の表面の電荷は溶液の酸度(pH)によって一般的に決定される。したがって、伝導性高分子溶液内の伝導性粒子の分散度を向上させるために、公知された通常の添加剤又はpH調節剤が用いられる。ph調節剤の非制限的な例としては、塩酸、窒酸、硫酸、酢酸、フッ酸などの通常の酸性物質がある。
【0037】
また、伝導性高分子溶液の酸度は、粒子特性によって異なるが、伝導性粒子の分散性を向上させる範囲内で調節可能である。好ましくはpH1〜6範囲である。
【0038】
また、本発明は、(a)電極活物質;及び、(b)前述した複合体粒子を含む電極を含む。
【0039】
本発明では、電極活物質及び前述した複合体粒子だけを使用して製造可能であるため、製造工程の単純化及び経済性の向上を図ることができる。
【0040】
また、従来の伝導性高分子は、電極活物質として使用するとき、充放電サイクル特性に問題があった。しかしながら、本発明の複合体粒子は、充放電安全性が多少問題が発生しても、バインダー及び導電剤としての主要機能が生きているので、全体セルの充放電サイクル特性にあまり影響を及ぼさない。
【0041】
複合体における伝導性高分子及び伝導性粒子の含量は、それぞれ電極物質100重量部当り0.01〜10重量部が好ましいが、これに限定されるものではない。また、本発明の電極は、前述したバインダー成分の以外に、公知された通常のバインダー及び導電剤をさらに含むことができる。
【0042】
バインダーの非制限的な例としては、テフロン(登録商標)、PVdF(polyvinylidene fluoride)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、セルロース系高分子又はこれらの混合物などがあり、導電剤も公知された通常の成分から選択して使用できる。これらの含量も特別に制限がない。従来の電極に用いられる範囲より小さい範囲、例えば、導電剤10重量部未満、バインダー10重量部未満に適用することが好ましい。
【0043】
本発明の複合体粒子が適用された電極は、公知された通常の方法により製造可能であり、一例として、電極活物質及び前記複合体粒子を含む電極スラリーを電流集全体に結着させた形態で製造できる。
【0044】
電極活物質のうち、正極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の正極に用いられる通常の正極活物質を使用でき、特に、金属、金属合金、金属酸化物、石油コークス、活性炭素、グラファイト又はその他の炭素類などが好ましい。また、負極活物質も、前述した正極活物質と同様であり得る。
【0045】
正極電流集全体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケル又はこれらの組合により製造されるホイルなどがあり、負極電流集全体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル、銅合金又はこれらの組合により製造されるホイルなどがある。
【0046】
また、本発明は、正極、負極、分離膜及び電解質を含む電気化学素子において、前記正極、負極又は両電極は、前述した複合体が導入された電極であることを特徴とする電気化学素子を提供する。
【0047】
電気化学素子は、電気化学反応を行う全ての素子を含み、具体例としては、全ての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はキャパシタなどがある。特に、電荷が両電極の表面に吸脱着してエネルギーを貯蔵する吸脱着方式の電気化学素子が好ましく、その制限的な例としては、電気二重層キャパシタ、スーパーキャパシタ(super capacitor)、シュードキャパシタ(pseudo capacitor)などがある。
【0048】
電気化学素子は、公知された通常の方法により製造でき、その一実施例によれば、一対の電極、例えば正極及び負極間に分離膜を介在させて組立てた後、電解液を注入することにより製造できる。
【0049】
本発明で用いられる電解液は、イオン伝導性を有するものであれば、特別に制限がなく、一例として電解質塩が電解液溶媒に溶解又は解離されたものであり得る。
【0050】
電解質塩は、Aのような構造の塩であって、AはLi、Na、Kのようなアルカリ金属正イオン又はこれらの組合からなるイオンを含み、BはPF、BF、Cl、Br、I、ClO、AsF、CHCO、CFSO、N(CFSO)、C(CFSO)のような負イオン又はこれらの組合からなるイオンを含む塩であり得る。その他、(CH)N塩、(C)N塩などが用いられる。
【0051】
電解液溶媒は、水系又は非水系溶媒が適用可能である。これらの非制限的な例としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン 、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトン又はこれらの混合物であり得る。
【0052】
分離膜としては、両電極の接触が防止されるように、公知された通常の微孔分離膜、例えばポリオレフィン系及び/又はセルロース系分離膜が用いられる。
【発明の効果】
【0053】
本発明では、伝導性高分子内に伝導性無機物ナノ粒子が散布された複合体粒子を電極成分として用いることで、既存の電極システムに比べて少量のバインダー及び導電剤を用いても、同等以上の電極フィルムの均一性を発揮できる。
【0054】
また、電極製造時に要求される高分子バインダー及び導電剤の使用量を著しく低減できるため、既存の電気化学素子に比べて電極活物質の質量比率が増加して全体的な容量の上昇を図ることができる。
【0055】
さらに、伝導性カーボン及び/又は伝導性高分子自体が容量に寄与できるため、電気化学素子の性能の向上を極大化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明は、下記の実施例及び実験例に基づいてより詳細に説明される。但し、実施例及び実験例は、本発明を例示するためのものであり、これらに限定されるものではない。
【0057】
実施例1
1−1.複合体(伝導性カーボン/伝導性高分子)の製造
伝導性高分子PEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene)水溶液に、カーボンナノチューブ(厚さ:20nm、長さ:5μm)2wt%を分散させた後、分散度を向上させるために溶液の酸性度を3に変化させて固定した。均一に混合されたPEDOT/カーボンナノチューブスラリーを凝結乾燥過程によりPEDOT/カーボンナノチューブ複合体を製造した。このとき、最終の複合体粒子の直径は500nm範囲であった。
【0058】
1−2. 電極の製造
電極活物質として活性炭素(MSP20、関西熱化学株式会社)85wt%、導電剤として球状の粒子でありながら500nmのサイズを有するスーパー−p(カーボンブラック)5wt%、非伝導性バインダーとしてPTFE 5wt%、前記実施例1−1で製造されたPEDOT/CNT複合体5wt%を、溶剤である蒸溜水に添加して5成分系混合物スラリーを製造した。前記混合物スラリーを正極集電体である20μm程度の厚さを有するアルミニウム(Al)薄膜及び負極集電体である銅薄膜に塗布及び乾燥して、正極及び負極として用いた。
【0059】
1−3. 電池の製造
前記正極、分離膜、負極フィルムをスタッキング(stacking)方式により組立て、組み立てられた電池に1Mのテトラフルオロほう酸テトラエチルアンモニウム(TEABF)が溶解されたプロピレンカーボネート(PC)を注入して、単位セルを有する電気二重層キャパシタを製造した。
【0060】
実施例2
電極活物質として活性炭素95wt%、前記実施例1−1で製造されたPEDOT/CNT複合体5wt%を用いて製造した外は、前記実施例1と同様な方法により電気二重層キャパシタを製造した。製造された実施例2のキャパシタの性能は、前記実施例1のキャパシタとほぼ対等であった。
【0061】
比較例1
電極活物質として活性炭素75wt%、導電剤としてスーパー−p 10wt%、非伝導性バインダーとしてPTFE 15wt%を用いて電極を製造した以外は、前記実施例1と同様な方法により電気二重層キャパシタを製造した。
【0062】
比較例2
PEDOT/CNT複合体の代りに、伝導性高分子PEDOTだけを用いて電極を製造した以外は、前記実施例1と同様な方法により電気二重層キャパシタを製造した。
【0063】
比較例3
PEDOT/CNT複合体の代りに、伝導性カーボン(CNT)を用いて電極を製造した以外は、前記実施例1と同様な方法を遂行した。しかしながら、電極フィルムの剥離現象が激しくて電気二重層キャパシタを製造できなかった。
【表1】

【0064】
実験例1.接着力テスト
実施例1の複合体粒子を含む電極の接着力テストを以下のように遂行した。その対照群として従来の通常のバインダーを備える比較例1の電極と、伝導性ナノ粒子と伝導性高分子とをそれぞれ単独に使用する比較例2及び比較例3の電極とを用いた。
【0065】
フィルムの接着力テストは、各電極の電極活物質層にテープを貼付及び剥離することにより進行し、以後、テープを取り除いた後にテープに残っている電極活物質層の程度(電極のしみの程度)を下記表2に示す。
【0066】
実験の結果、比較例1では、非伝導性バインダー(PTFE)の含量を3倍以上用いるにも拘らず、テープ上に電極活物質層の脱着が発見された。これに比べ、複合体粒子を使用する実施例1の電極は、電極のしみ現象が全く発見されないことを確認できた(表2参照)。
【表2】

【0067】
実験例2.吸脱着方式の電気化学素子の性能の評価
本発明の複合体粒子を含む電気化学素子の性能を以下のように評価した。
【0068】
2−1.寿命特性の評価の実験
実施例1及び実施例2で製造された電気二重層キャパシタを用いて充放電を進行し、以後、充放電の回数に従う放電容量挙動を測定した(図2及び図5参照)。
【0069】
実験の結果、実施例1の電気二重層キャパシタは、400サイクルが経過した後にも、初期の放電容量がそのまま維持された。これにより長寿特性を有することを確認できた(図5参照)。また、このような長寿特性は、実施例2の電気二重層キャパシタでも類似している様相を示した。
【0070】
2−2.比蓄電容量の評価の実験
実施例1、比較例1及び比較例2で製造された電気二重層キャパシタを用いて放電比蓄電容量及び放電速度に従う比蓄電容量挙動を観察した。
【0071】
放電比蓄電容量を全体電極重量当り計算した時、実施例1の電気二重層キャパシタは、比較例1の電気二重層キャパシタに比べて電極活物質の量が約10%以上増加したので、相対的に大きい放電容量を示した。特に、同量の電極活物質を含む比較例2に比べて優れた放電容量を示した(図3参照)。
【0072】
これに比べ、複合体(PEDOT/CNT)粒子の代りに、伝導性高分子だけを使用する比較例2の電気二重層キャパシタは、比較例1のキャパシタに比べて電極活物質の量が10%以上増加したにも拘らず、素子の性能が低下したことが分かる(図3参照)。これは、素子の容量は、電極活物質の量と関連付けているが、このような電極活物質に電荷を移動させて高容量の効果を発揮させるには、優れた伝導性を有する物質が電極成分として存在すべきであることを意味する。
【0073】
一方、図4は、電極活物質である活性炭素の重量当り放電比蓄電容量を示すものである。
【0074】
実施例1の電気二重層キャパシタは、非伝導性バインダー及び導電剤の量が大きく低減したにも拘らず、比較例1の電気二重層キャパシタより活性炭素の容量が大きいことが分かる。これは、本発明で導入した複合体が活物質の容量寄与を極大化するだけでなく、複合体における伝導性高分子及び伝導性ナノ粒子も、それぞれ容量に寄与することを立証する。実施例2で製造された電気二重層キャパシタも、実施例1の結果と類似している挙動を示した。
【0075】
なお、本発明の詳細な説明では具体的な実施例について説明したが、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で多様に変形・実施が可能である。よって、本発明の範囲は、前述の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】(a)は伝導性高分子内に伝導性粒子が散布された複合体粒子の構造を示す概略図であり、(b)は(a)に示す複合体粒子を含む電極の構造を示す概略図である。
【図2】伝導性高分子内に伝導性粒子が散布された複合体粒子を含む電気二重層キャパシタの充放電グラフである。
【図3】実施例1、比較例1及び比較例2の電気二重層キャパシタでの総電極物質の質量当り放電容量を比較したグラフである。
【図4】実施例1、比較例1及び比較例2の電気二重層キャパシタでの活物質の質量当り放電容量を比較したグラフである。
【図5】伝導性高分子内に伝導性粒子が散布された複合体粒子を用いて製造された単位セルの充放電回数に従う放電容量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)伝導性高分子粒子と、及び、
(b)前記伝導性高分子より高い伝導性を有する無機物ナノ粒子とを含んでなり、
前記伝導性高分子粒子の表面、内部又はこれらの全部に伝導性無機物ナノ粒子が散布されていることを特徴とする、複合体粒子。
【請求項2】
前記複合体粒子が、10g/cm以上の接着力、及び10−2〜10S/cmの伝導度を有することを特徴とする、請求項1に記載の複合体粒子。
【請求項3】
前記伝導性無機物ナノ粒子が、球状、チューブ状、ファイバー状、ロード状又は板状であることを特徴とする、請求項1に記載の複合体粒子。
【請求項4】
前記球状の伝導性無機物ナノ粒子の直径が、0.1〜500nmであることを特徴とする、請求項3に記載の複合体粒子。
【請求項5】
前記チューブ状、ファイバー状、ロード状又は板状の伝導性無機物ナノ粒子の厚さが0.1〜500nmであり、長さが0.01〜5μmであることを特徴とする、請求項3に記載の複合体粒子。
【請求項6】
前記伝導性無機物ナノ粒子が、金属、金属酸化物、金属合金、炭素材からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の複合体粒子。
【請求項7】
前記伝導性高分子の分子量(Mw)が、1,000〜1,000,000であることを特徴とする、請求項1に記載の複合体粒子。
【請求項8】
前記伝導性高分子が、分散媒又は素子用溶媒に含浸時にゲル化することを特徴とする、請求項1に記載の複合体粒子。
【請求項9】
前記伝導性高分子が、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、PEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene)、ポリアセチレン、ポリフェニレン及びポリチエニレンビニレンからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の複合体粒子。
【請求項10】
前記複合体粒子が、ドパントの投入により電子伝導性が改質されることを特徴とする、請求項1に記載の複合体粒子。
【請求項11】
前記伝導性無機物ナノ粒子及び伝導性高分子の重量比が、0.01〜50:50〜99.9であることを特徴とする、請求項1に記載の複合体粒子。
【請求項12】
前記伝導性無機物ナノ粒子、伝導性高分子又はこれらの全部が、電荷を吸着する電極活物質としての役割を遂行できることを特徴とする、請求項1に記載の複合体粒子。
【請求項13】
(a)電極活物質、及び、
(b)請求項1〜12の何れか一項に記載の複合体粒子を含んでなることを特徴とする、電極。
【請求項14】
前記電極が、吸脱着式エネルギー貯蔵素子用電極であることを特徴とする、請求項13に記載の電極。
【請求項15】
前記電極における伝導性高分子の含量が、電極物質100重量部当り0.01〜10重量部であることを特徴とする、請求項13に記載の電極。
【請求項16】
前記電極における伝導性無機物ナノ粒子の含量が、電極物質100重量部当り0.01〜10重量部であることを特徴とする、請求項13に記載の電極。
【請求項17】
前記電極が、非伝導性バインダー、導電剤又はこれらの全部をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の電極。
【請求項18】
正極、負極、分離膜及び電解質を備えてなる電気化学素子であって、
前記正極、負極及び両電極が、請求項13に記載の電極であることを特徴とする、電気化学素子。
【請求項19】
前記電気化学素子が、電荷が両電極の表面に吸脱着してエネルギーを貯蔵する方式によることを特徴とする、請求項18に記載の電気化学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−535477(P2009−535477A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509423(P2009−509423)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002208
【国際公開番号】WO2007/129841
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】