説明

伝熱板の製造方法及び伝熱板

【課題】熱交換効率が高い伝熱板の製造方法及び伝熱板を提供する。
【解決手段】ベース部材2の表面3側に開口する蓋溝6の底面に形成された凹溝8に、熱媒体用管16を挿入する挿入工程と、蓋溝6に挿入される本体部とこの本体部の底面12に凸設され凹溝8に挿入される凸部15とを有する蓋板10を、蓋溝6に挿入する蓋溝閉塞工程と、蓋溝6の側壁と蓋板10の側面との突合部V,Vに沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う本接合工程とにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱交換器や加熱機器あるいは冷却機器などに用いられる伝熱板の製造方法及び伝熱板に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換、加熱あるいは冷却すべき対象物に接触し又は近接して配置される伝熱板は、その本体であるベース部材に例えば高温液や冷却水などの熱媒体を循環させる熱媒体用管を挿通させて形成されている。
【0003】
図21は、従来の伝熱板を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。従来の伝熱板100は、表面に開口する断面視矩形の蓋溝106と蓋溝106の底面に開口する凹溝108とを有するベース部材102と、凹溝108に挿入される熱媒体用管116と、蓋溝106に挿入される蓋板110と、を備え、蓋溝106における両側壁105,105と蓋板110の両側面113,114とのそれぞれの突合せ面に沿って摩擦攪拌接合を施すことにより、塑性化領域W,Wが形成されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−314115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図21の(b)に示すように、伝熱板100には、凹溝108と熱媒体用管116の外周面及び蓋板110の下面とによって空隙部120が形成されているが、伝熱板100の内部に空隙部120が存在していると、熱媒体用管116から放熱された熱が蓋板110及びベース部材102に伝わりにくくなるため、伝熱板100の熱交換効率が低下するという問題があった。
【0006】
このような観点から、本発明は、熱交換効率が高い伝熱板の製造方法及び熱交換効率が高い伝熱板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明に係る伝熱板の製造方法は、ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する挿入工程と、前記蓋溝に挿入される本体部とこの本体部の底面に凸設され前記凹溝に挿入される凸部とを有する蓋板を、前記蓋溝に挿入する蓋溝閉塞工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う本接合工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
かかる製造方法によれば、蓋溝に蓋板を挿入すると凹溝に蓋板の凸部が挿入されるため、凹凸のない平板状の蓋板を蓋溝に挿入した場合に比べて熱媒体用管の周囲の空隙を小さくすることができ、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0009】
また、前記本接合工程では、前記凸部の少なくとも一部に対して摩擦攪拌を行い、摩擦熱により塑性化した塑性流動材と前記熱媒体用管とを接触させることが好ましい。
【0010】
かかる製造方法によれば、摩擦熱によって蓋板の凸部が塑性化することにより、熱媒体用管の周囲の空隙に塑性流動材が流入し、熱媒体用管と蓋板とが接触する。これにより、熱媒体用管の周囲の空隙をより小さくすることができ、伝熱板の熱交換率を高めることができる。
【0011】
また、前記蓋板の前記凸部の底面は、前記熱媒体用管の形状に沿う形状に形成されていることが好ましい。かかる製造方法によれば、本接合工程によって熱媒体用管が押圧された際に熱媒体用管が変形するのを防止することができる。
【0012】
また、前記本接合工程では、前記接合用回転ツールの先端を、前記蓋溝の底面よりも深く挿入することが好ましい。かかる製造方法によれば、攪拌用回転ツールで蓋板の底面よりも深い部分まで確実に塑性流動化することができる。
【0013】
また、前記ベース部材の前記蓋溝よりも表面側に、前記蓋溝よりも幅広に形成された上蓋溝が形成されている場合には、前記本接合工程後に、前記上蓋溝に上蓋板を挿入する上蓋溝閉塞工程と、前記上蓋溝の側壁と前記上蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う上蓋接合工程と、を含むことが好ましい。
【0014】
かかる製造方法によれば、蓋板の表面側において、蓋板よりも幅広の上蓋板を用いてさらに摩擦攪拌接合を施すため、より深い位置に熱媒体用管を配置させることができる。
【0015】
また、本発明に係る伝熱板は、表面側に開口する蓋溝とこの蓋溝の底面に開口する凹溝とを有するベース部材と、前記凹溝に挿入された熱媒体用管と、前記蓋溝に挿入される本体部とこの本体部の底面に凸設され前記凹溝に挿入される凸部とを有する蓋板と、を有し、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って、摩擦攪拌接合によって形成された塑性化領域が形成されていることを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、蓋溝に蓋板を挿入すると凹溝に蓋板の凸部が挿入されるため、凹凸のない平板状の蓋板を蓋溝に挿入した場合に比べて熱媒体用管の周囲の空隙を小さくすることができ、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0017】
また、前記塑性化領域と前記熱媒体用管とが接触していることが好ましい。かかる構成によれば、熱媒体用管の周囲の空隙をより小さくすることができ、伝熱板の熱交換率を高めることができる。
【0018】
また、前記蓋溝よりも表面側に、前記蓋溝よりも幅広に形成された上蓋溝を備えたベース部材と、前記上蓋溝に配置される上蓋板と、を有し、前記上蓋溝の側壁と前記上蓋板の側面との突合部に沿って、摩擦攪拌接合によって形成された塑性化領域が形成されていることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、蓋板の表面側において、蓋板よりも幅広の上蓋板を用いてさらに摩擦攪拌接合を施すため、より深い位置に熱媒体用管を配置させることができる。
【0020】
また、本発明に係る伝熱板の製造方法は、ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する挿入工程と、前記蓋溝に挿入される本体部とこの本体部の底面に凸設され前記凹溝に挿入される凸部とを有する蓋板を、前記蓋溝に挿入する蓋溝閉塞工程と、前記蓋板の表面で、前記凹溝に沿って攪拌用回転ツールを移動させて、前記凸部の少なくとも一部に対して摩擦攪拌を行い、摩擦熱により塑性化した塑性流動材と前記熱媒体用管とを接触させる攪拌工程と、を含むことを特徴とする。
【0021】
かかる製造方法によれば、摩擦熱によって蓋板の凸部が塑性化することにより、熱媒体用管の周囲の空隙に塑性流動材が流入し、熱媒体用管と蓋板とが接触するため、熱媒体用管の周囲の空隙をより小さくすることができ、伝熱板の熱交換率を高めることができる。
【0022】
また、前記蓋板の前記凸部の底面は、前記熱媒体用管の形状に沿う形状に形成されていることが好ましい。かかる製造方法によれば、本接合工程によって熱媒体用管が押圧された際に熱媒体用管が変形するのを防止することができる。
【0023】
また、前記攪拌工程前に、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて、前記ベース部材と前記蓋板との摩擦攪拌接合を行う接合工程をさらに含むことが好ましい。かかる製造方法によれば、蓋板とベース部材を予め接合するため、蓋板を固定した状態で攪拌工程を行うことができ、精度の高い伝熱板を製造することができる。
【0024】
また、前記接合工程では、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って間欠的に摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、接合工程に要する手間と時間を低減することができる。
【0025】
また、前記攪拌用回転ツールは、前記接合用回転ツールよりも大きいことが好ましい。かかる製造方法によれば、攪拌用回転ツールで蓋板の底面よりも深い部分まで塑性流動化することができるとともに、接合工程での摩擦攪拌接合における塑性化領域は小さくて済むので、施工が容易になる。
【0026】
また、前記攪拌工程において、前記攪拌用回転ツールの先端を、前記蓋溝の底面よりも深く挿入することが好ましい。かかる製造方法によれば、攪拌用回転ツールで蓋板の底面よりも深い部分まで確実に塑性流動化することができる。
【0027】
また、前記攪拌工程において、前記接合工程にて形成された塑性化領域を、前記攪拌用回転ツールによって再度攪拌することが好ましい。かかる製造方法によれば、蓋板を確実に固定した状態で流入攪拌工程を行うことができるとともに、伝熱板の表面に露出される塑性化領域を攪拌用回転ツールによるものだけとすることができる。
【0028】
また、前記ベース部材の前記蓋溝よりも表面側に、前記蓋溝よりも幅広に形成された上蓋溝が形成されている場合には、前記攪拌工程後に、前記上蓋溝に前記蓋板を挿入する上蓋溝閉塞工程と、前記上蓋溝の側壁と前記上蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて前記ベース部材と前記上蓋板との摩擦攪拌接合を行う上蓋接合工程と、をさらに有することを特徴とする。
【0029】
かかる製造方法によれば、伝熱板の表面側において、蓋板よりも幅広の上蓋板を用いてさらに摩擦攪拌接合を施すため、伝熱板のより深い位置に熱媒体用管を配置させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る伝熱板の製造方法によれば、熱交換効率が高い伝熱板を製造することができる。また、本発明に係る伝熱板によれば、熱交換効率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
[第一実施形態]
本発明の最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、第一実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。図2は、第一実施形態に係る伝熱板を示した分解側面図である。図3は、第一実施形態に係る伝熱板を示した拡大側面図である。
【0032】
第一実施形態に係る伝熱板1は、図1乃至図3に示すように、表面3及び裏面4を有する厚板形状のベース部材2と、ベース部材2の表面3に開口した蓋溝6に配置される蓋板10と、蓋溝6の底面に開口する凹溝8に挿入される熱媒体用管16とを主に備え、摩擦攪拌接合により形成された塑性化領域W,Wによって一体形成されている。ここで、「塑性化領域」とは、回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
【0033】
ベース部材2は、例えば、アルミニウム合金(JIS:A6061)で形成されている。ベース部材2は、熱媒体用管16に流れる熱媒体の熱を外部に伝達させる役割、あるいは、外部の熱を熱媒体用管16に流れる熱媒体に伝達させる役割を果たすものであって、図2に示すように、熱媒体用管16を内部に収容する。ベース部材2の表面3には、蓋溝6が凹設されており、蓋溝6の底面5cの中央には、蓋溝6よりも幅狭の凹溝8が凹設されている。蓋溝6は、熱媒体用管16を覆う蓋板10が配置される部分であって、ベース部材2の長手方向に亘って連続して形成されている。蓋溝6は、断面視矩形を呈しており、蓋溝6の底面5cから垂直に立ち上がる側壁5a,5bを備えている。
【0034】
凹溝8は、熱媒体用管16が挿入される部分であって、ベース部材2の長手方向に亘って連続して形成されている。凹溝8は、上方が開口した断面視U字状の溝であって、下端には熱媒体用管16の外周と同等の曲率半径を有する半円形の底部7が形成されている。これにより、熱媒体用管16と凹溝8の底部7とを密接させることができる。凹溝8の開口部分は、熱媒体用管16の外径と略同等の幅で形成されている。
【0035】
蓋板10は、図2及び図3に示すように、ベース部材2と同様のアルミニウム合金からなり、略平板状を呈する本体部14と、本体部14の下面12から凸設された凸部15とを有する。本体部14は、ベース部材2の蓋溝6の断面と略同じ矩形断面を呈し、上面(表面)11、下面(底面)12、側面13a及び側面13bを有する。
【0036】
凸部15は、本体部14の下面12の中央から、凹溝8と略同等の幅で下方に延設されており、底面15aが凹面状に形成されている。底面15aの曲率は、熱媒体用管16の外周の曲率と同等に形成されている。
【0037】
したがって、図2に示すように、蓋板10を蓋溝6に配置すると、凹溝8と熱媒体用管16とで形成される空隙部P,Pに蓋板10の凸部15が挿入される。凸部15の底面15aは、熱媒体用管16の外周の曲率と略同等に形成されているため、熱媒体用管16と面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。また、蓋板10の側面13a,13bは、蓋溝6の側壁5a,5bと面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。図2及び図3に示すように、側面13aと側壁5aとの突合せ面を突合部Vとし、側面13bと側壁5bとの突合せ面を突合部Vとする。
【0038】
熱媒体用管16は、例えば、銅管にて構成されており、図2に示すように、断面視円形の中空部18を有する円筒管である。熱媒体用管16の外径は、凹溝8の幅と略同等に形成されており、図3に示すように、熱媒体用管16の下半部と凹溝8の底部7とが面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。また、熱媒体用管16の上半部と蓋板10の凸部15の底面15aとが面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。
【0039】
熱媒体用管16は、中空部18に、例えば高温液や高温ガスなどの熱媒体を循環させて、ベース部材2及び蓋板10に熱を伝達させる部材、あるいは中空部18に、例えば冷却水や冷却ガスなどの熱媒体を循環させて、ベース部材2及び蓋板10から熱を伝達される部材である。また、熱媒体用管16の中空部18に、例えばヒーターを通して、ヒーターから発生する熱をベース部材2及び蓋板10に伝達させる部材として利用してもよい。
【0040】
なお、本実施形態においては、凹溝8と熱媒体用管16の下半部を面接触させるとともに、凸部15の底面15aと熱媒体用管16の上半部を面接触させるように形成したが、これに限定さるものではない。例えば、凹溝8の深さを、熱媒体用管16の外径と同等か、あるいはその1.2倍までの範囲となるようにしてもよい。また、凹溝8の幅を、熱媒体用管16の外径と同等か、あるいはその1.1倍までの範囲となるようにしてもよい。また例えば、凸部15の底面15aの曲率が、熱媒体用管16の外周の曲率よりも小さくなるように形成してもよい。即ち、ベース部材2に熱媒体用管16及び蓋板10を挿入した際に、熱媒体用管16の周囲に空隙が生じるように各部材の寸法を設定してもよい。
【0041】
塑性化領域W,Wは、図1及び図3に示すように、突合部V,Vに対して後記する本接合工程を行った際に、ベース部材2及び蓋板10の一部が塑性流動して一体化された領域である。突合部V,Vに沿って、後記する接合用回転ツール20を用いて本接合工程を行うと、突合部V,Vの周辺にかかるベース部材2、蓋板10の金属材料が摩擦熱により塑性流動化した後、再び固まって一体化される。
【0042】
本実施形態では、接合用回転ツール20(図4参照)を熱媒体用管16に近接させて摩擦攪拌接合を行うことにより、蓋板10の凸部15の底面15aまで塑性流動化され、熱媒体用管16と流動化された塑性流動材とが接触していることを特徴とする。
【0043】
摩擦攪拌接合を行う際には、接合用回転ツール20の大きさ、熱媒体用管16の外径、蓋板10の厚み等に応じて、接合用回転ツール20の挿入位置、押込み量を設定すればよい。なお、本実施形態では、熱媒体用管16が変形しないように形成したが、熱媒体用管16が潰れるように押圧しながら摩擦攪拌接合を行ってもよい。
【0044】
次に、伝熱板1の製造方法について、図4を用いて説明する。図4は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程を示した図であり、(b)は、熱媒体用管を挿入した挿入工程を示した図であり、(c)は、蓋溝閉塞工程を示した図であり、(d)は、本接合工程を示した図であり、(e)は、完成図である。
【0045】
第一実施形態に係る伝熱板の製造方法は、ベース部材2を形成する切削工程と、ベース部材2に形成された凹溝8に熱媒体用管16を挿入する挿入工程と、蓋溝6に蓋板10を挿入する蓋溝閉塞工程と、突合部V,Vに沿って接合用回転ツール20を移動させて摩擦攪拌接合を施す本接合工程とを含むものである。
【0046】
(切削工程)
まず、図4の(a)に示すように、公知のエンドミル加工により、厚板部材に蓋溝6を形成する。そして、蓋溝6の底面に、エンドミル加工等により半円形断面を備えた凹溝8を形成する。これにより、蓋溝6と、蓋溝6の底面に開口された凹溝8を備えたベース部材2が形成される。凹溝8は、断面半円形の底部7を備えており、底部7の上端から一定の幅で上方に向けて開口されている。
なお、ベース部材2を第一実施形態においては切削加工により形成したが、アルミニウム合金の押出形材を用いてもよい。
【0047】
(挿入工程)
次に、図4の(b)に示すように、凹溝8に熱媒体用管16を挿入する。熱媒体用管16の下半部は、凹溝8の下半分を形成する底部7と面接触する。
【0048】
(蓋溝閉塞工程)
次に、図4の(c)に示すように、ベース部材2の蓋溝6内に、アルミニウム合金からなる蓋板10を配置する。この際、蓋板10の凸部15が、凹溝8に挿入されるとともに、蓋板10の上面11が、ベース部材2の表面3と面一なる。また、蓋溝6の側壁5a,5b(図4の(a)参照)と蓋板10の側面13a,13bによって突合部V,Vが形成される。
【0049】
(本接合工程)
次に、図4の(d)に示すように、突合部V,Vに沿って、摩擦攪拌接合を行う。摩擦攪拌接合は、公知の接合用回転ツール20を用いて行う。
接合用回転ツール20は、例えば、工具鋼からなり、円柱形のツール本体22と、その底面24の中心部から同心軸で垂下するピン26とを有する。ピン26は、先端に向けて幅狭となるテーパ状に形成されている。なお、ピン26の周面には、その軸方向に沿って図示しない複数の小溝や径方向に沿ったネジ溝が形成されていてもよい。
【0050】
ここで、図5は、第一実施形態に係る伝熱板と接合用回転ツールとの位置関係を示した模式断面図である。例えば、接合用回転ツール20は、ツール本体22の直径が6〜22mm、ピン26の長さが3〜10mm、ピン26の先端の直径が2〜8mmである。また、接合用回転ツール20の回転数は、50〜1500rpm、送り速度は、0.05〜2m/分であり、接合用回転ツール20の軸方向に加える押し込み力は、1kN〜20kNである。
【0051】
図5に示すように、ピン26の長さをピンの長さGとし、また、接合用回転ツール20を押し込んだ時に、ベース部材2の表面3から接合用回転ツール20の底面24までの距離(押込み量)を押込み量Hとする。また、熱媒体用管16の外周面に接する仮想鉛直面とピン26の先端までの最近接距離をオフセット量Iとする。
【0052】
本接合工程では、ベース部材2及び蓋板10を図示しない冶具により拘束した状態で、突合部V,Vと、接合用回転ツール20の軸の中心とが重なるようにして、高速回転する接合用回転ツール20を押し込み、突合部V,Vに沿って移動させる。高速回転するピン26により、その周囲のベース部材2及び蓋板10の凸部15の一部が摩擦熱によって加熱され流動化する。そして、この流動化した金属材料(塑性流動材Q)が、熱媒体用管16と接触する。
【0053】
本実施形態では、蓋板10の凸部15の底面15aと熱媒体用管16の外周の曲率を同等に形成しているが、現実には蓋板10及び熱媒体用管16の公差等により、熱媒体用管16と蓋板10との間には微細な空隙が存在する。この空隙に塑性流動材Qが流入することにより、熱媒体用管16とベース部材2及び蓋板10との密接度を高めることができる。
【0054】
押込み量H及びオフセット量Iは、各部材の寸法に応じて適宜設定するのが好ましい。即ち、熱媒体用管16と接合用回転ツール20との距離が近いほど、より確実に熱媒体用管16と蓋板10とを隙間なく接合することができるが、逆に、当該距離が近すぎると、熱媒体用管16が潰れる可能性がある。
【0055】
接合用回転ツール20の押込み量Hは、ツール本体22が押し退ける蓋板10及びベース部材2の金属の体積と、塑性化領域W(W)の幅方向両側に発生するバリの体積との和と同等になるような長さとなっている。なお、本接合工程後に、塑性化領域W,Wの幅方向両側に発生したバリを切削除去したり、面削加工したりして表面を平滑に形成してもよい。
【0056】
以上のような伝熱板1によれば、図2に示すように、凹溝8と熱媒体用管16とで囲まれた空隙部P,Pに、蓋板10の凸部15が挿入されるため、空隙部P,Pを埋めることができ、伝熱板1の熱交換率を高めることができる。また、本接合工程では、接合用回転ツール20を熱媒体用管16に近接させて摩擦攪拌を行うことで、凸部15の底面15aが摩擦熱によって塑性化され、熱媒体用管16と蓋板10とが接触する。これにより、熱媒体用管16、ベース部材2及び蓋板10との密接性を高めることができるため、より伝熱板1の熱交換率を高めることができる。
【0057】
また、蓋板10の凸部15の底面15aは、本実施形態では、熱媒体用管16の外周の曲率と略同等に形成されている。これにより、熱媒体用管16と蓋板10との密接性を高めるとともに、熱媒体用管16が変形することを防止することができる。
【0058】
図6は、第一実施形態に係る伝熱板を用いた伝熱ユニットを示した平面図である。
伝熱板1は、例えば、図6に示すように、複数の伝熱板1を連結して伝熱ユニット90を形成して使用される。伝熱ユニット90は、複数の伝熱板1をベース部材2の短手方向に並設し、各ベース部材2の長手方向の両端から突出した熱媒体用管16を平面視U字状の連結パイプ91で連結して形成される。このような、伝熱ユニット90によれば、一の連通した熱媒体用管96が形成されているため、熱媒体用管96に熱媒体を流通させることにより、ベース部材2及び蓋板10に接触又は近接する図示しない対象物を迅速に冷却又は加熱することができる。
【0059】
なお、伝熱板1の連結方法は、あくまで例示であって他の連結方法によって伝熱ユニットを形成してもよい。また、伝熱ユニット90においては、連結パイプ91が伝熱板1の外部に露出しているが、熱媒体用管16をS字状に形成して熱媒体用管16が伝熱板1の内部に納まるように形成してもよい。
【0060】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る伝熱板について説明する。図7は、第二実施形態に係る伝熱板を示した分解断面図である。図8は、第二実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。
図8に示す第二実施形態に係る伝熱板31は、前記した伝熱板1と略同等の構造を内包し、蓋板10の表面側にさらに上蓋板40を配置して、摩擦攪拌接合を施して接合した点で第一実施形態と相違する。
なお、前記した伝熱板1と同等の構造を下蓋部Mともいう。また、第一実施形態に係る伝熱板1と重複する部材については、同等の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0061】
伝熱板31は、ベース部材32と、凹溝8に挿入された熱媒体用管16と、蓋板10と、蓋板10の表面側に配置された上蓋板40とを有し、塑性化領域W〜Wで摩擦攪拌接合により一体化されている。
ベース部材32は、図7及び図8に示すように、例えばアルミニウム合金からなり、ベース部材32の表面33に、長手方向に亘って形成された上蓋溝36と、上蓋溝36の底面35cに長手方向に亘って連続して形成された蓋溝6と、蓋溝6の底面に長手方向に亘って形成された凹溝8とを有する。上蓋溝36は、断面視矩形を呈し、底面35cから垂直に立ち上がる側壁35a,35bを備えている。上蓋溝36の幅は、蓋溝6の幅よりも大きく形成されている。
【0062】
図7に示すように、ベース部材32の下部に形成された凹溝8には、熱媒体用管16が挿入されており、蓋板10によって閉塞され、摩擦攪拌接合により塑性化領域W,Wで接合されている。即ち、ベース部材32の内部に形成された下蓋部Mは、第一実施形態に係る伝熱板1と略同等に形成されている。
【0063】
なお、上蓋溝36の底面35cには、摩擦攪拌接合を行ったことにより、段差(溝)やバリが発生している可能性がある。したがって、例えば塑性化領域W,Wの表面を基準に、上蓋溝36の底面35cに面削加工を施して平滑に形成することが好ましい。これにより、上蓋板40の下面42と、面削後の上蓋溝36の底面とを隙間なく配置することができる。
【0064】
上蓋板40は、図7及び図8に示すように、例えば、アルミニウム合金からなり、上蓋溝36の断面と略同じ矩形断面を形成し、下面42から垂直に形成された側面43a及び側面43bを有する。上蓋板40は、上蓋溝36に嵌合される。即ち、上蓋板40の側面43a,43bは、上蓋溝36の側壁35a,35bと面接触されるか又は微細な隙間をあけて配置されている。ここで、側面43aと側壁35aとの突合せ面を、上側突合部Vとする。また、側面43bと側壁35bとの突合せ面を、上側突合部Vとする。上側突合部V,Vは、摩擦攪拌接合により、塑性化領域W,Wで一体化されている。
【0065】
伝熱板31の製造方法は、伝熱板1と同等の製造方法により、ベース部材32の下部に下蓋部Mを形成した後、上蓋溝36の底面35cを面削する面削工程と、上蓋板40を配置する上蓋溝閉塞工程と、上側突合部V,Vに沿って摩擦攪拌接合を施す上蓋本接合工程を含むものである。
【0066】
(面削工程)
面削工程では、上蓋溝36の底面35cに形成された段差(溝)やバリを切削除去して、底面35cを平滑にする。
【0067】
(上溝閉塞工程)
上蓋溝閉塞工程では、面削工程をした後、上蓋溝36の底面に上蓋板40を配置する。面削工程を行ったことにより、上蓋板40の下面42と、上蓋溝36の底面とを隙間なく配置することができる。
【0068】
(上蓋本接合工程)
上蓋本接合工程では、上側突合部V,Vに沿って接合用回転ツール(図示省略)を移動させて摩擦攪拌接合を施す。接合用回転ツールは、本実施形態では、接合用回転ツール20よりも小型の回転ツールである。上蓋本接合工程における接合用回転ツールの埋設深さは、当該接合用回転ツールのピンの長さ及び上蓋板40の厚みを考慮して適宜設定すればよい。なお、上蓋本接合工程では、接合用回転ツール20を用いて摩擦攪拌接合を行ってもよい。
【0069】
実施形態に係る伝熱板31によれば、下蓋部Mの上方にさらに上蓋板40を配置して、摩擦攪拌接合を施すことにより、より深い位置に熱媒体用管16を配置させることができる。
【0070】
以上、本発明に係る第二実施形態について説明したが、これに限定されるものではなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更が可能である。例えば、前記した実施形態においては、蓋板10及び上蓋板40は、ベース部材2,32の上面側に配置したが、下面側に配置させてもよい。また、本実施形態では、蓋板10及び上蓋板40と二つの蓋板を用いたが、三つ以上の蓋板を用いてもよい。
【0071】
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図9は、第三実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。図10は、第三実施形態に係る伝熱板を示した分解断面図である。図11は、第三実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。
第三実施形態に係る伝熱板1Aは、蓋板10の幅が第一実施形態に係る蓋板10に比べて幅広に形成されている点及び四箇所の塑性化領域が形成されている点で第一実施形態と相違する。なお、第三実施形態に係る伝熱板1Aは、蓋板10の寸法と、塑性化領域の形成位置を除いては第一実施形態と同等であるため、重複する部分については説明を省略する。
【0072】
第三実施形態に係る伝熱板1Aは、図9乃至図11に示すように、表面3及び裏面4を有する厚板形状のベース部材2と、ベース部材2の表面3に開口した蓋溝6に挿入される蓋板10と、蓋溝6の底面に開口する凹溝8に挿入される熱媒体用管16とを主に備えている。ベース部材2と蓋板10は、摩擦攪拌接合により形成された塑性化領域W,Wによって一体形成されている。塑性化領域W,Wは、蓋溝6の側壁5a,5bと蓋板10の側面13a,13bとの突合部V,Vに沿って形成されている。一方、蓋板10には、前記の塑性化領域W,Wよりも深く、ベース部材2まで達する塑性化領域W,Wが形成されている。この塑性化領域W,Wは、蓋板10の表面において、下方に形成された凹溝8の長手方向に沿って形成されている。
【0073】
ベース部材2は、例えば、アルミニウム合金(JIS:A6061)で形成されている。ベース部材2の表面3には、蓋溝6が凹設されており、蓋溝6の底面の中央には、蓋溝6よりも幅狭の凹溝8が凹設されている。
【0074】
蓋板10は、図10及び図11に示すように、ベース部材2と同様のアルミニウム合金からなり、略平板状を呈する本体部14と、本体部14の下面12から凸設された凸部15とを有する。本体部14は、ベース部材2の蓋溝6の断面と略同じ矩形断面を形成する上面(表面)11、下面(底面)12、側面13a及び側面13bを有する。
【0075】
凸部15は、本体部14の下面12から、凹溝8と略同等の幅で下方に延設されており、底面15aが凹面状となるように形成されている。底面15aの曲率は、熱媒体用管16の外周の曲率と同等に形成されている。
【0076】
図10に示すように、蓋板10を蓋溝6に配置すると、凹溝8と熱媒体用管16とで形成される空隙部P,Pに蓋板10の凸部15が挿入される。凸部15の底面15aは、熱媒体用管16の外周の曲率と略同等に形成されているため、熱媒体用管16と面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。また、蓋板10の側面13a,13bは、蓋溝6の側壁5a,5bと面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。ここで、図10及び図11に示すように、側面13aと側壁5aとの突合せ面を突合部Vとし、側面13bと側壁5bとの突合せ面を突合部Vとする。
【0077】
熱媒体用管16は、例えば、銅管にて構成されており、図10に示すように、断面視円形の中空部18を有する円筒管である。
【0078】
塑性化領域W,Wは、図9及び図11に示すように、突合部V,Vに摩擦攪拌接合を施した際に、ベース部材2及び蓋板10の一部が塑性流動して一体化された領域である。即ち、突合部V,Vに沿って、後記する接合用回転ツール200(図12参照)を用いて摩擦攪拌接合を施すと、突合部V,Vの周辺にかかるベース部材2及び蓋板10の金属材料が、接合用回転ツール200の摩擦熱により流動化して一体化されることで、ベース部材2と蓋板10が接合される。
【0079】
塑性化領域W,Wは、図9及び図11に示すように、蓋板10の上面(表面)11で、下方の凹溝8の長手方向に沿って攪拌用回転ツール250(図12参照)を移動させることで生成されている。本実施形態では、攪拌用回転ツール250を熱媒体用管16に近づけて摩擦攪拌を行うことにより、蓋板10の凸部15の一部が塑性流動化され、熱媒体用管16と塑性化領域W7,とが接触していることを特徴とする。
【0080】
次に、伝熱板1Aの製造方法について、図12を用いて説明する。
図12は、第三実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程を示した図であり、(b)は、熱媒体用管を挿入した挿入工程を示した図であり、(c)は、蓋溝閉塞工程を示した図であり、(d)は、接合工程を示した図であり、(e)は、攪拌工程を示した図であり、(f)は、完成図である。図13は、第三実施形態に係る伝熱板を用いた伝熱ユニットを示した平面図である。図14は、第三実施形態に係る伝熱板を用いた伝熱ユニットを示した断面図である。
【0081】
第三実施形態に係る伝熱板の製造方法は、ベース部材2を形成する切削工程と、ベース部材2に形成された凹溝8に熱媒体用管16を挿入する挿入工程と、蓋溝6に蓋板10を配置する蓋溝閉塞工程と、突合部V,Vに沿って接合用回転ツール200を移動させて摩擦攪拌接合を施す接合工程と、蓋板10の表面で、凹溝8に沿って攪拌用回転ツール250を移動させて摩擦攪拌を行う攪拌工程と、を含むものである。
【0082】
(切削工程)
まず、図12の(a)に示すように、公知のエンドミル加工により、厚板部材に蓋溝6を形成する。そして、蓋溝6の底面に、切削加工等により半円形断面を備えた凹溝8を形成する。これにより、蓋溝6と、蓋溝6の底面に開口された凹溝8を備えたベース部材2が形成される。凹溝8は、下半部に断面半円形の底部7を備えており、底部7の上端から一定の幅で上方に向けて開口されている。なお、第三実施形態においては、ベース部材2をエンドミル加工及び切削加工により形成したが、アルミニウム合金製の押出形材や鋳造品を用いてもよい。
【0083】
(挿入工程)
次に、図12の(b)に示すように、凹溝8に熱媒体用管16を挿入する。このとき、熱媒体用管16の下半部は、凹溝8の下半分を形成する底部7と面接触する。
【0084】
(蓋溝閉塞工程)
次に、図12の(c)に示すように、ベース部材2の蓋溝6内に、アルミニウム合金からなる蓋板10を配置する。この際、蓋板10の凸部15が、凹溝8に挿入されるとともに、蓋板10の上面11が、ベース部材2の表面3と面一なる。また、蓋溝6の側壁5a,5b(図12の(a)参照)と蓋板10の側面13a,13bによって突合部V,Vが形成される。
【0085】
(接合工程)
次に、図12の(d)に示すように、突合部V,Vに沿って、摩擦攪拌接合を施す。摩擦攪拌接合は、接合用回転ツール200(公知の回転ツール)を用いて行う。接合用回転ツール200は、例えば、工具鋼からなり、円柱形のツール本体210と、その底面220の中心部から同心軸で垂下するピン230とを有する。ピン230は、先端に向けて幅狭となるテーパ状に形成されている。なお、ピン230の周面には、その軸方向に沿って図示しない複数の小溝や径方向に沿ったネジ溝が形成されていてもよい。
【0086】
摩擦攪拌接合は、ベース部材2及び蓋板10を図示しない治具により拘束した状態で、各突合部V,Vに高速回転する接合用回転ツール200を押し込み、突合部V,Vに沿って移動させる。高速回転するピン230により、その周囲のベース部材2及び蓋板10のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化した後に冷却されて一体化する。
【0087】
(攪拌工程)
次に、図12の(e)に示すように、蓋板10の上面(表面)11で、下方の凹溝8の長手方向に沿って摩擦攪拌接合を行う。即ち、熱媒体用管16の斜め上方で摩擦攪拌を行う。攪拌工程では、接合用回転ツール200よりも大きく形成された攪拌用回転ツール250を用いて摩擦攪拌を行う。
【0088】
攪拌工程における摩擦攪拌接合は、蓋板10の上面(表面)11で、高速回転する攪拌用回転ツール250を押し込み、下方の凹溝8に沿って攪拌用回転ツール250を移動させる。攪拌用回転ツール250は、ツール本体260の底面270の投影部分の一部が熱媒体用管16と重なるように配置される。このとき、攪拌用回転ツール250の先端が、蓋溝6の底面5cよりも深く挿入され、高速回転するピン280により、その周囲の蓋板10及びベース部材2のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化される。そして、この流動した金属材料(塑性流動材Q)が熱媒体用管16と接触する。
【0089】
以上のような伝熱板1Aによれば、図10に示すように、凹溝8と熱媒体用管16とで囲まれた空隙部P,Pに、蓋板10の凸部15が挿入されるため、空隙部P,Pを埋めることができ、伝熱板1Aの熱交換率を高めることができる。また、本接合工程では、攪拌用回転ツール250を熱媒体用管16に近接させて摩擦攪拌を行うことで、凸部15の底面15aが摩擦熱によって塑性化され、熱媒体用管16と蓋板10とが接触する。これにより、熱媒体用管16と蓋板10との密接性を高めることができるため、より伝熱板1Aの熱交換率を高めることができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、比較的小型の接合用回転ツール200を用いて、予め蓋板10をベース部材2に接合しているので、攪拌工程では、蓋板10が確実に固定された状態で摩擦攪拌接合を施すことができる。したがって、比較的大型の攪拌用回転ツール250を用いて大きい押込み力がかかる摩擦攪拌接合を、安定した状態で行うことができる。
【0091】
また、本実施形態では、接合工程において、突合部V,Vの全長に亘って、摩擦攪拌接合を施しているが、これに限定されるものではなく、突合部V,Vに沿って所定の間隔を隔てて摩擦攪拌接合を間欠的に行って、ベース部材2に蓋板10の仮付けを施すようにしてもよい。このような伝熱板の製造方法によれば、接合工程に要する手間と時間を低減することができる。
【0092】
図13は、第三実施形態に係る伝熱板を用いた伝熱ユニットを示した平面図である。
伝熱板1Aは、例えば、図13に示すように、複数の伝熱板1Aを連結して伝熱ユニット900を形成して使用される。伝熱ユニット900は、複数の伝熱板1Aをベース部材2の短手方向に並設し、各ベース部材2の長手方向の両端から突出した熱媒体用管16を平面視U字状の連結パイプ910で連結して形成される。このような、伝熱ユニット900によれば、一の連通した熱媒体用管960が形成されているため、熱媒体用管960に熱媒体を流通させることにより、ベース部材2及び蓋板10に接触又は近接する図示しない対象物を迅速に冷却又は加熱することができる。
【0093】
なお、伝熱板1Aの連結方法は、一例であって他の連結方法によって伝熱ユニットを形成してもよい。また、伝熱ユニット900においては、連結パイプ910が伝熱板1Aの外部に露出しているが、熱媒体用管16をS字状に形成して熱媒体用管16が伝熱板1Aの内部に納まるように形成してもよい。
【0094】
さらに、本実施形態では、連結パイプ910を介して複数の伝熱板1Aを連結して伝熱ユニット900を形成しているが、これに限られるものではない。例えば、図14に示すように、一つのベース部材71に複数の凹溝8,8・・を有する蓋溝73を形成して、一枚の蓋板74を接合用回転ツール(図示せず)でベース部材71に固定して、蓋板74の上面(表面)75から攪拌用回転ツール(図示せず)を各凹溝8の長手方向に沿って移動させることで、熱媒体用管16と塑性化領域W,Wとを接触させるようにしてもよい。このようにすれば、蓋板74の接合工程を一度行うだけで、複数の熱媒体用管16,16・・を固定することができる。
【0095】
[第四実施形態]
次に、第四実施形態に係る伝熱板について説明する。図15は、第四実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。図16は、第四実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した側面図であって、(a)は、攪拌工程の攪拌用回転ツールの押込み前の状態を示した図、(b)は、攪拌工程の攪拌用回転ツールの押込み中の状態を示した図である。第四実施形態に係る伝熱板1Bは、塑性化領域W,Wの内部に、接合工程で形成される塑性化領域W,W10が含まれている点で第三実施形態と相違する。
【0096】
図15及び図16に示すように、第四実施形態に係る伝熱板1Bは、蓋板52と、ベース部材54の蓋溝55とが、第三実施形態よりも幅が狭く形成されている。具体的には、蓋板52の側面53と、ベース部材54の蓋溝55の側壁56との突合部V,V10が、攪拌工程における摩擦攪拌接合によって生成される塑性化領域W,Wに含まれるように、蓋板52と、ベース部材54の蓋溝55の幅が形成されている。即ち、接合工程にて生成した塑性化領域W,W10上を、攪拌工程において攪拌用回転ツール250が移動し、塑性化領域W,W10が再攪拌されるようになっている。攪拌用回転ツール250は、第三実施形態と同様のものが用いられる。なお、その他の構成については、第三実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0097】
次に、第四実施形態に係る伝熱板の製造方法を説明する。本実施形態の伝熱板の製造方法は、ベース部材54を形成する切削工程と、ベース部材54に形成された凹溝8に熱媒体用管16を挿入する挿入工程と、蓋溝55に蓋板52を配置する蓋溝閉塞工程と、突合部V,V10に沿って接合用回転ツール(図示せず)を移動させて摩擦攪拌接合を施す接合工程と、蓋板52の表面で、凹溝8に沿って攪拌用回転ツール250(図16参照)を移動させて摩擦攪拌を行う攪拌工程と、を含むものである。
【0098】
切削工程、挿入工程及び蓋溝閉塞工程は、蓋板52と、ベース部材54の蓋溝55の幅が狭い構成以外は、第三実施形態と同様である。
【0099】
接合工程では、図15及び図16の(a)に示すように、突合部V,V10に沿って摩擦攪拌接合を間欠的に行い、破線で示す塑性化領域W,W10を形成し、蓋板52をベース部材54に仮止めしておく。このとき用いられる接合用回転ツール(図示せず)は、第三実施形態の接合用回転ツール200と同様のものであって、攪拌用回転ツール250よりも小型のものである。
【0100】
次に、図16の(b)に示すように、蓋板52の上面(表面)で、下方に形成されている凹溝8の長手方向に沿って摩擦攪拌接合を施す。即ち、熱媒体用管16の斜め上方で摩擦攪拌を行う。攪拌工程では、第三実施形態と同様に、熱媒体用管16に、摩擦攪拌接合によって流動化させた塑性流動材Qを接触させる工程であって、その摩擦攪拌接合は、攪拌用回転ツール250を用いて行う。
【0101】
攪拌工程では、蓋板10の上面(表面)側から、高速回転する攪拌用回転ツール250を押し込み、下方の凹溝8の長手方向に沿って攪拌用回転ツール250を移動させる。攪拌用回転ツール250は、ツール本体260の底面270の投影部分の一部が熱媒体用管16及び接合工程で生成された塑性化領域W(W10)と重なるように配置する。攪拌用回転ツール250の先端は、蓋溝6の底面5cよりも深く挿入され、高速回転するピン280により、その周囲のベース部材2及び蓋板52の凸部58の底面58aが摩擦熱によって加熱され塑性流動化する。そして、この流動化した金属材料(塑性流動材Q)が熱媒体用管16と接触する。これにより、塑性化領域W(W10)は、攪拌用回転ツール250によって生成される塑性化領域W(W)に含まれることとなり、再攪拌される。
【0102】
以上説明した伝熱板1Bによれば、第一実施形態に係る伝熱板1で得られた効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。即ち、蓋板52をベース部材54に固定した状態で安定して攪拌工程を行うことができるとともに、図15に示すように、突合部V,V10(図16の(a)参照)に沿って塑性化領域W,W10が形成されて、ベース部材54と蓋板52とで熱媒体用管16が密閉され、さらに、塑性化領域W,Wには、塑性化領域W,W10が含まれて、ベース部材54と蓋板52とが接合される。このように塑性化領域W,W10は、攪拌用回転ツール250で再攪拌されて塑性化領域W,Wに含まれるので、伝熱板1Bの表面に露出される塑性化領域を少なくすることができる。
【0103】
[第五実施形態]
次に、第五実施形態に係る伝熱板について説明する。図17の(a)は、第五実施形態に係る伝熱板を示した分解側面図で、(b)は、第五実施形態に係る伝熱板を示した側面図である。
【0104】
第五実施形態に係る伝熱板1Cは、第三実施形態に係る伝熱板1A(図11参照)と略同等の構造を内包し、蓋板10の表面側にさらに上蓋板80を配置して、摩擦攪拌接合を施して接合した点で第三実施形態と相違する。
【0105】
なお、第三実施形態に係る伝熱板1A(図11参照)と同等の構造を下蓋部M’ともいう。また、第三実施形態に係る伝熱板1Aと重複する部材については、同等の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0106】
伝熱板1Cは、ベース部材62と、凹溝8に挿入された熱媒体用管16と、蓋板10と、蓋板10の表面側に配置された上蓋板80とを有し、塑性化領域W11,W12で摩擦攪拌接合により一体化されている。
【0107】
ベース部材62は、図17の(a)及び(b)に示すように、例えばアルミニウム合金からなり、ベース部材62の表面63に、長手方向に亘って形成された上蓋溝64と、上蓋溝64の底面65cに長手方向に亘って連続して形成された蓋溝6と、蓋溝6の底面に長手方向に亘って形成された凹溝8とを有する。上蓋溝64は、断面視矩形を呈し、底面から垂直に立ち上がる側壁65a,65bを備えている。上蓋溝64の幅は、蓋溝6の幅よりも大きく形成されている。上蓋溝64の底面65cは、塑性化領域W,Wの生成後に、面削加工されて、塑性化領域W,Wの表面と面一となっている。
【0108】
ベース部材62の下部に形成された凹溝8には、熱媒体用管16が挿入されている。凹溝8の上方は蓋板10によって閉塞され、摩擦攪拌接合により塑性化領域W,Wで接合されている。さらに蓋板10の表面から、蓋溝6の底面5cの下側まで塑性化領域W,Wが形成されて熱媒体用管16と塑性化領域W,Wとが接触している。即ち、ベース部材62の内部に形成された下蓋部M’は、第三実施形態に係る伝熱板1Aと面削された部分を除いて略同等に形成されている。
【0109】
上蓋板80は、図17の(a)及び(b)に示すように、例えば、アルミニウム合金からなり、上蓋溝64の断面と略同じ矩形断面を形成し、上面81と、下面82と、この下面82から垂直に形成された側面83a及び側面83bとを有する。上蓋板80は、上蓋溝64に挿入される。即ち、上蓋板80の側面83a,83bは、上蓋溝64の側壁65a,65bと面接触されるか又は微細な隙間をあけて配置されている。ここで、側面83aと側壁65aとの突合せ面を上側突合部V11とし、側面83bと側壁65bとの突合せ面を上側突合部V12とする。上側突合部V11,V12は、摩擦攪拌接合により、塑性化領域W11,W12で一体化されている。
【0110】
伝熱板1Cの製造方法は、第三実施形態に係る伝熱板1Aと同等の製造方法により、ベース部材62の下部に下蓋部M’を形成した後、上蓋板80を配置する上蓋溝閉塞工程と、上側突合部V11,V12に沿って摩擦攪拌接合を施す上蓋接合工程を含むものである。
【0111】
(上蓋溝閉塞工程)
上蓋溝閉塞工程では、下蓋部M’を形成した後、上蓋溝64に上蓋板80を配置する。この際、上蓋溝64の底面65c、蓋板10及び塑性化領域W〜Wの上面は、前記した接合工程により平面状でない(凹凸がある)ので、上蓋溝64の底面65c、蓋板10及び塑性化領域W〜Wの上面を削って平坦にする面削加工を施す。
【0112】
(上蓋接合工程)
上蓋接合工程では、上側突合部V11,V12に沿って接合用回転ツール(図示せず)を移動させて摩擦攪拌接合を施す。上蓋接合工程における接合用回転ツールの埋設深さは、ピンの長さ及び上蓋板80の厚み等の各種条件によって、適宜設定すればよい。
【0113】
実施形態に係る伝熱板1Cによれば、下蓋部M’の上方にさらに上蓋板80を配置して、摩擦攪拌接合を施すことにより、より深い位置に熱媒体用管16を配置させることができる。
【0114】
[第六実施形態]
次に、第六実施形態に係る伝熱板について説明する。図18は、第六実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。第六実施形態に係る伝熱板1Dは、熱媒体用管16と塑性化領域W,Wとの重複面積が第一実施形態の伝熱板1よりも大きい点で相違する。なお、第六実施形態に係る伝熱板1Dの説明においては、第一実施形態と重複する点は説明を省略する。
【0115】
第六実施形態の本接合工程では、熱媒体用管16と接触する仮想鉛直面とピン26の先端までの最近接距離であるオフセット量Iを第一実施形態よりも小さく設定した点を特徴とする。即ち、本接合工程では、接合用回転ツール20の軸方向の中心を、突合部Vよりも熱媒体用管16側に配置させて摩擦攪拌を行う。これにより、接合用回転ツール20で形成された塑性化領域W,Wは、熱媒体用管16に近い位置に形成されるため、熱媒体用管16と塑性化領域W,Wとの接触面積を大きくすることができる。よって、熱媒体用管16の周囲の空隙をより確実に埋めることができ、伝熱板1Dの熱交換率を高めることができる。なお、オフセット量Iについては、熱媒体用管16が極力潰れない程度に近接させることが好ましい。
【0116】
[第七実施形態]
次に、第七実施形態に係る伝熱板について説明する。図19は、第七実施形態の製造方法を示した図であって、(a)は、蓋溝閉塞工程を示した断面図であり、(b)は、本接合工程を示した断面図である。第七実施形態に係る伝熱板は、蓋板400を蓋溝6に配置すると、空隙部P,Pが形成される点で第一実施形態と相違する。なお、伝熱板1Eの説明においては、第一実施形態と重複する点は説明を省略する。
【0117】
蓋板400は、略平板状の本体部410と、本体部410の下面から凸設された凸部420とを有する。本体部410は、断面視矩形を呈し、蓋溝6に挿入される。凸部420は、凹溝8の幅と略同等の幅を有し、凹溝8に挿入される。凸部420の底面420aは、熱媒体用管16の外周の曲率よりも小さい曲率で形成されている。したがって、蓋溝6に蓋板400を挿入すると、図19の(a)に示すように、凹溝8、熱媒体用管16及び凸部420で囲まれた空隙部P,Pが形成される。
【0118】
第七実施形態に係る本接合工程では、図19の(a)に示すように、接合用回転ツール20を熱媒体用管16に近接させて摩擦攪拌接合を行うことにより、ベース部材2及び蓋板10が摩擦熱により流動化された塑性流動材Qを空隙部P(P)に流入させる。塑性流動材Qは、熱媒体用管16の周囲に形成される微細な隙間に流入されるため、空隙部P,Pを埋めて伝熱板1Eの熱交換率を高めることができる。蓋板400の下面に凸部420を備えることで、空隙部P,Pに塑性流動材Qを流入させやすい。
【0119】
以上説明した、第七実施形態に係る伝熱板1Eのように、凸部420の底面420aの曲率が、熱媒体用管16の外周の曲率よりも小さくなるように蓋板400を形成してもよい。
【0120】
[第八実施形態]
次に、第八実施形態に係る伝熱板について説明する。図20は、第八実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。第八実施形態に係る伝熱板1Fは、蓋板10及びベース部材2の形状は第一実施形態と同等であるが、蓋板10の凸部15を摩擦攪拌しない点で第一実施形態と相違する。なお、第八実施形態に係る伝熱板1Fの説明においては、第一実施形態と重複する点は説明を省略する。
【0121】
即ち、第一乃至第七実施形態では、本接合工程又は攪拌工程の際に、蓋板10の凸部15の少なくとも一部が塑性変形するように設定したが、第八実施形態に係る伝熱板1Fのように、凸部15に対して摩擦攪拌を行わなくてもよい。
【0122】
本接合工程を行う際には、突合部V,Vに対して接合用回転ツール20で押圧するため、熱媒体用管16が蓋板10に押されて熱媒体用管16の周囲の空隙を小さくすることができる。これにより、伝熱板1Fの熱交換率を高めることができる。
【0123】
以上、本発明の実施形態について説明したが、発明の趣旨に反しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、熱媒体用管16は、断面視円形のものを用いたが、他の形状であっても構わない。また、熱媒体用管16の断面形状に伴って、蓋板の凸部の底面の形状を変更するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】第一実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る伝熱板を示した分解側面図である。
【図3】第一実施形態に係る伝熱板を示した拡大側面図である。
【図4】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した側面図であって、(a)は、切削工程を示した図であり、(b)は、熱媒体用管を挿入した挿入工程を示した図であり、(c)は、蓋溝閉塞工程を示した図であり、(d)は、本接合工程を示した図であり、(e)は、完成図である。
【図5】第一実施形態に係る伝熱板と接合用回転ツールとの位置関係を示した模式断面図である。
【図6】第一実施形態に係る伝熱板を用いた伝熱ユニットを示した平面図である。
【図7】第二実施形態に係る伝熱板を示した分解断面図である。
【図8】第二実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。
【図9】第三実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。
【図10】第三実施形態に係る伝熱板を示した分解断面図である。
【図11】第三実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。
【図12】第三実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、切削工程を示した図であり、(b)は、熱媒体用管を挿入した挿入工程を示した図であり、(c)は、蓋溝閉塞工程を示した図であり、(d)は、接合工程を示した図であり、(e)は、攪拌工程を示した図であり、(f)は、完成図である。
【図13】第三実施形態に係る伝熱板を用いた伝熱ユニットを示した平面図である。
【図14】第三実施形態に係る伝熱板を用いた伝熱ユニットを示した断面図である。
【図15】第四実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。
【図16】第四実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した側面図であって、(a)は、攪拌工程の攪拌用回転ツールの押込み前の状態を示した図、(b)は、攪拌工程の攪拌用回転ツールの押込み中の状態を示した図である。
【図17】(a)は、第五実施形態に係る伝熱板を示した分解側面図で、(b)は、第五実施形態に係る伝熱板を示した側面図である。
【図18】第六実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。
【図19】第七実施形態の製造方法を示した図であって、(a)は、蓋溝閉塞工程を示した断面図であり、(b)は、本接合工程を示した断面図である。
【図20】第八実施形態に係る伝熱板を示した断面図である。
【図21】従来の伝熱板を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、断面図である。
【0125】
1 伝熱板
2 ベース部材
5a (蓋溝の)側壁
5b (蓋溝の)側壁
6 蓋溝
8 凹溝
10 蓋板
13a (蓋板の)側面
13b (蓋板の)側面
15 凸部
15a 底面
16 熱媒体用管
20 接合用回転ツール
31 伝熱板
36 上蓋溝
35a 側壁
35b 側壁
40 上蓋板
43a 側面
43b 側面
1B 伝熱板
52 蓋板
53 (蓋板の)側面
54 ベース部材
55 蓋溝
56 (蓋溝の)側壁
1C 伝熱板
62 ベース部材
64 上蓋溝
65a (上蓋溝の)側壁
65b (上蓋溝の)側壁
80 上蓋板
83a (上蓋板の)側面
83b (上蓋板の)側面
200 接合用回転ツール
250 攪拌用回転ツール
P 空隙部
Q 塑性流動材
V 突合部
W 塑性化領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する挿入工程と、
前記蓋溝に挿入される本体部とこの本体部の底面に凸設され前記凹溝に挿入される凸部とを有する蓋板を、前記蓋溝に挿入する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う本接合工程と、を含むことを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項2】
前記本接合工程では、前記凸部の少なくとも一部に対して摩擦攪拌を行い、摩擦熱により塑性化した塑性流動材と前記熱媒体用管とを接触させることを特徴とする請求項1に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項3】
前記蓋板の前記凸部の底面は、前記熱媒体用管の形状に沿う形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項4】
前記本接合工程では、前記接合用回転ツールの先端を、前記蓋溝の底面よりも深く挿入することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項5】
前記本接合工程後に、
前記蓋溝よりも表面側に、前記蓋溝よりも幅広に形成された上蓋溝に上蓋板を挿入する上蓋溝閉塞工程と、
前記上蓋溝の側壁と前記上蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う上蓋接合工程と、を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項6】
表面側に開口する蓋溝とこの蓋溝の底面に開口する凹溝とを有するベース部材と、
前記凹溝に挿入された熱媒体用管と、
前記蓋溝に挿入される本体部とこの本体部の底面に凸設され前記凹溝に挿入される凸部とを有する蓋板と、を有し、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って、摩擦攪拌接合によって形成された塑性化領域が形成されていることを特徴とする伝熱板。
【請求項7】
前記塑性化領域と前記熱媒体用管とが接触していることを特徴とする請求項6に記載の伝熱板。
【請求項8】
前記蓋溝よりも表面側に、前記蓋溝よりも幅広に形成された上蓋溝を備えたベース部材と、前記上蓋溝に配置される上蓋板と、を有し、
前記上蓋溝の側壁と前記上蓋板の側面との突合部に沿って、摩擦攪拌接合によって形成された塑性化領域が形成されていることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の伝熱板。
【請求項9】
ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する挿入工程と、
前記蓋溝に挿入される本体部とこの本体部の底面に凸設され前記凹溝に挿入される凸部とを有する蓋板を、前記蓋溝に挿入する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋板の表面で、前記凹溝に沿って攪拌用回転ツールを移動させて、前記凸部の少なくとも一部に対して摩擦攪拌を行い、摩擦熱により塑性化した塑性流動材と前記熱媒体用管とを接触させる攪拌工程と、を含むことを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項10】
前記蓋板の前記凸部の底面は、前記熱媒体用管の形状に沿う形状に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項11】
前記攪拌工程前に、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて、前記ベース部材と前記蓋板との摩擦攪拌接合を行う接合工程をさらに含むことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項12】
前記接合工程では、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って間欠的に摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする請求項11に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項13】
前記攪拌用回転ツールは、前記接合用回転ツールよりも大きいことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項14】
前記攪拌工程では、前記攪拌用回転ツールの先端を、前記蓋溝の底面よりも深く挿入することを特徴とする請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項15】
前記攪拌工程では、前記接合工程にて形成された塑性化領域を、前記攪拌用回転ツールによって再度攪拌することを特徴とする請求項11乃至請求項14のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項16】
前記攪拌工程後に、前記ベース部材の前記蓋溝よりも表面側に、前記蓋溝よりも幅広に形成された上蓋溝に前記蓋板を覆う上蓋板を配置する上蓋溝閉塞工程と、
前記上蓋溝の側壁と前記上蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて前記ベース部材と前記上蓋板との摩擦攪拌接合を行う上蓋接合工程と、をさらに有することを特徴とする請求項9乃至請求項15のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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