説明

伝熱装置

【課題】被処理物を均一に加熱又は冷却できる伝熱装置を提供する。
【解決手段】伝熱部4の側部に加熱媒体供給部5を有し、前記伝熱部4は被処理物20との接触面に凹部6を有し、前記加熱媒体供給部5は流動性のある加熱媒体12の供給穴8を有し、前記凹部6と加熱媒体供給穴8とは連通孔9で連通しており、前記加熱媒体供給穴8に供給された流動性のある加熱媒体12が連通孔9を通じて前記伝熱部4の凹部6に充填され、前記加熱媒体12が充填された凹部6の開口面は薄いシート状被覆物7で密封状態に閉塞されており、前記伝熱部4と加熱媒体供給部5が傾斜可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を均一に加熱又は冷却できる伝熱装置に関し、例えば半田付け装置に使用して有効なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半田付け装置として例えば特許文献1及び特許文献2に示すものがある。この半田付け装置は、チャンバー内に熱板と冷却板とを有し、熱板は内部に加熱手段を備え、熱板の表面に基板が配置される。チャンバー内を排気し、加熱手段によって熱板が加熱され、基板上の半田が溶融する。その後、加熱を停止し、冷却板を熱板に接触させて基板を冷却し、溶融した半田を固化させて基板と電子部品が半田付けされる。また、特許文献3では、半田付け時に真空脱泡を行なう真空脱泡装置を備え、半田の加熱手段としてホットプレートを使用したリフロー半田付け装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−233934号公報
【特許文献2】特開2006−82112号公報
【特許文献3】特開2005−353965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の半田付け装置において、半田を加熱する熱板の加熱能力は、熱板表面と基板との接触度合いに左右される。したがって、熱板は、基板が熱板表面と隙間なく接触するように平面度を高める必要がある。しかしながら、基板に多少の反り等がある場合、熱板表面と基板とを隙間なく密着させることは困難である。その結果、熱板は基板全体に熱を均一に伝達することができない問題があった。加熱手段としてホットプレートを使用したものについても同様である。
【0005】
本発明の目的は、被処理物を均一に加熱又は冷却できる伝熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は次の解決手段を採る。すなわち、
本発明の伝熱装置は、加熱手段によって加熱される伝熱体を有し、前記伝熱体の被処理物との接触面部に流動性のある加熱媒体が存在し、その表面が薄いシート状被覆物で覆われていることを特徴とする。
【0007】
本発明の伝熱装置は、伝熱部の側部に加熱媒体供給部を有し、前記伝熱部は被処理物との接触面部に凹部を有し、前記加熱媒体供給部は流動性のある加熱媒体の供給穴を有し、前記凹部と加熱媒体供給穴とは連通孔で連通しており、前記加熱媒体供給穴に供給された流動性のある加熱媒体が連通孔を通じて前記伝熱部の凹部に充填され、前記加熱媒体が充填された凹部の開口面は薄いシート状被覆物で密封状態に閉塞されており、前記伝熱部と加熱媒体供給部が傾斜可能に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱又は冷却時に、被処理物が接触する薄いシート状被覆物の内側には流動性のある加熱媒体が存在しているので、被処理物は薄いシート状被覆物に隙間なく均一に接触して均一に加熱又は冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の状態から装置本体を傾けた状態を示す図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0011】
1は真空チャンバーで、例えばリフロー半田付け装置におけるリフロー室とリフロー室の間に設けられている。真空チャンバー1内には伝熱装置2が設置されている。
【0012】
伝熱装置2の本体3は伝熱部4と加熱媒体供給部5とを備えている。伝熱部4は平面視が長方形の平盤形状に形成されている伝熱体である。伝熱部4は熱伝導度の良好な金属、セラミックスその他の材料から形成されている。加熱媒体供給部5は平面視が長方形の柱形状に形成されており、伝熱部4の幅よりも小さい幅を有している。加熱媒体供給部5は伝熱部4の短辺側の中央部の側部に一体的に形成されており、伝熱部4よりも上方に鉛直に突出している。
【0013】
伝熱部4の上面には平面視で長方形の凹部6が同心に配されて一定深さで形成されている。伝熱部4の上面における凹部6の周囲に、薄いシート状被覆物、本実施形態ではポリイミド樹脂等からなる薄い耐熱性樹脂シート7の周縁が固定されて、耐熱性樹脂シート7が凹部6の開口面を密封状態で閉塞している。
【0014】
加熱媒体供給部5には長方形穴形状の供給穴8が同心に配されて鉛直に形成されている。供給穴8は、加熱媒体供給部5の上面に開口し、伝熱部4の凹部6の底面よりも深い深さを有している。伝熱部4の凹部6内と、加熱媒体供給部5の供給穴8の中空部内とは連通孔9によって連通されている。連通孔9は断面が円形形状であり、一端部が伝熱部4の凹部6の一側面に接続し、他端部が加熱媒体供給部5の供給穴8の一側面に接続している。
【0015】
伝熱部4の凹部6の下側には加熱手段として電熱ヒータ10が埋め込まれ、図示外の電源に接続されている。また、加熱媒体供給部5の供給穴8の内部にも電熱ヒータ11が挿入され、図示外の電源に接続されている。
【0016】
加熱媒体供給部5の供給穴8から流動性のある加熱媒体、本実施形態では半田12が供給される。半田12は加熱媒体供給部5の供給穴8に設置されている電熱ヒータ11で加熱されて溶融され、連通孔9を通って伝熱部4の凹部6に流入する。半田12が伝熱部4の凹部6に供給されて、凹部6内は半田12で充填される。伝熱部4の凹部6に充填された半田12は、伝熱部4の凹部6の下側に埋め込まれている電熱ヒータ10で加熱されて溶融される。凹部6内の溶融した半田12の表面は耐熱性樹脂シート7で覆われている。
【0017】
装置本体3の下面には一対の扇状板部材13が間隔をおいて固定されている。扇状板部材13は正面視が扇状の板部材であり、伝熱部4の下面における加熱媒体供給部5側の端部に固定されて、加熱媒体供給部5よりも突出して配置されている。扇状板部材13の突出した先端面には複数の歯14が形成されている。15はラックで、一対の各扇状板部材13にそれぞれ対向配置されて一対設けられており、真空チャンバー1の内側の側面に固定されている。ラック15は鉛直方向に延びており、扇状板部材13と対向する面に多数の歯16が形成されている。ラック15の歯16は扇状板部材13の歯14と噛合っている。
【0018】
装置本体3の伝熱部4の下側には、支持ロッド17が一対の扇状板部材13に両端が支持されて一対の扇状板部材13間に配置している。支持ロッド17の中央部に昇降ロッド18が上端部を回動可能に支持され、下方に垂下している。昇降ロッド18は図示外のシリンダ装置等の駆動手段によって昇降可能に構成されている。
【0019】
したがって、昇降ロッド18が図1の状態から所定位置まで下降すると、図2に示されているように、扇板状部材13とラック15との噛合位置が変更することによって、装置本体3が所定高さだけ下降するとともに、所定角度傾いて配置される。この状態から、昇降ロッド18が所定高さ上昇すると、図1に示されているように、扇板状部材13とラック15との噛合位置が変更することによって、装置本体3が所定高さだけ上昇するとともに、水平状態に保持される。
【0020】
真空チャンバー1内は半田の脱泡が行なわれる所定の減圧雰囲気まで真空ポンプ(図示せず)によって減圧されるように構成されている。
【0021】
19は真空チャンバー1内に左右一対設けられている基板搬送コンベヤである。20は電子部品を搭載したプリント基板で、半田付け箇所にペースト状のクリーム半田が塗られている。プリント基板20の真空チャンバー1での搬送は基板搬送コンベヤ19で行われる。
【0022】
以下、上記伝熱装置2の作動を説明する。
【0023】
電子部品を搭載したプリント基板20は、リフロー半田付け装置の炉内を搬送されながら、プリント基板20上のクリーム半田が予熱室(図示せず)で所定の温度に加熱され、半田部がリフロー室(図示せず)で加熱溶融され、更に、真空チャンバー1内で伝熱装置2によって加熱溶融されるとともに、脱泡される。前記プリント基板20は、更に、半田部がその後のリフロー室(図示せず)で加熱溶融され、続いて、冷却室で溶融半田が冷却固化され、電子部品が基板上に半田付けされる。
【0024】
以下、真空チャンバー1内での伝熱装置2によるプリント基板20の加熱について説明する。真空チャンバー1内は真空ポンプの作動によって半田部の脱泡が行なわれる所定の減圧雰囲気にされている。
【0025】
真空チャンバー1内では、伝熱部4の凹部6内の半田12と加熱媒体供給部5の供給穴8内の半田12は、伝熱部4の電熱ヒータ10と加熱媒体供給部5の電熱ヒータ11とによって加熱されて溶融されている。
【0026】
伝熱装置2の装置本体3は図1で示されている水平状態で、昇降ロッド18が所定高さ下降する。これにより、図2に示されているように、扇板状部材13とラック15との噛合位置が変更することによって、装置本体3が所定高さだけ下降するとともに、所定角度傾いて配置される。
【0027】
伝熱装置2の装置本体3が図2に示されているように、所定角度傾斜することによって、伝熱部4の凹部6内の溶融半田12と耐熱性樹脂シート7との間に空気が存在していた場合に空気が連通孔9を通って加熱媒体供給部5の加熱媒体供給穴8に移動し、加熱媒体供給穴8を上方に移動して真空チャンバー1内に排出される。これにより、伝熱部4の凹部6内の溶融半田12と耐熱性樹脂シート7は隙間なく密着するので、被処理物の均一加熱をより良好に行える。
【0028】
電子部品を搭載したプリント基板20は基板搬送コンベヤ19で真空チャンバー1内の所定位置に搬送されて保持される。このとき、伝熱装置2の装置本体3は図2で示されているように、所定角度傾いて配置されている。
【0029】
上記の状態で、昇降ロッド18が所定高さ上昇する。これにより、図1に示されているように、扇板状部材13とラック15との噛合位置が変更することによって、装置本体3が所定高さだけ上昇するとともに、水平に保持される。
【0030】
伝熱装置2の装置本体3が水平に保持されると、プリント基板20が伝熱部4の凹部6内に充填されている溶融半田12の表面を覆っている耐熱性樹脂シート7に接触する。この際、プリント基板20に多少の反り等があった場合においても、耐熱性樹脂シート7の内側には流動性のある溶融半田12が存在しているので、プリント基板20は耐熱性樹脂シート7に隙間なく均一に接触する。
【0031】
したがって、プリント基板20は、電熱ヒータ10で加熱された溶融半田12によって均一に加熱されるので、電子部品を搭載したプリント基板20は真空チャンバー1内で半田部が均一に溶融され、同時に脱泡される。その後、昇降ロッド18が所定高さ下降し、装置本体3が所定高さだけ下降するとともに、所定角度傾いて配置される。その後、プリント基板20は基板搬送コンベヤで次のリフロー室に送られる。
【0032】
上記実施形態では、伝熱装置2を加熱装置として使用した場合を説明したが、本発明の伝熱装置は冷却装置として使用することもできる。例えば、上記実施形態で半田12に融点の低い低温半田を使用すれば、前記伝熱装置をリフロー半田付け装置において冷却室に設置し、電熱ヒータ10の加熱温度を低くすることによって、リフロー室を通って加熱溶融された半田付け部を伝熱装置2の伝熱部4の凹部6内の溶融半田12で冷却することが可能である。
【0033】
また、本実施形態では、流動性のある加熱媒体として半田を使用したが、これに限られることはない。
【0034】
また、本実施形態では、流動性のある加熱媒体の加熱手段として電熱ヒータを使用したが、これに限られることはない。例えば遠赤外線ヒータを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1・・真空チャンバー、2・・伝熱装置、3・・装置本体、4・・伝熱部、5・・加熱媒体供給部、6・・凹部、7・・耐熱性樹脂シート、8・・加熱媒体供給穴、9・・連通孔、10・・電熱ヒータ、11・・電熱ヒータ、12・・半田、13・・扇状板部材、14・・歯、15・・ラック、16・・歯、17・・支持ロッド、18・・昇降ロッド、19・・基板搬送コンベヤ、20・・電子部品を搭載したプリント基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段によって加熱される伝熱体を有し、前記伝熱体の被処理物との接触面部に流動性のある加熱媒体が存在し、その表面が薄いシート状被覆物で覆われていることを特徴とする伝熱装置。
【請求項2】
伝熱部の側部に加熱媒体供給部を有し、前記伝熱部は被処理物との接触面部に凹部を有し、前記加熱媒体供給部は流動性のある加熱媒体の供給穴を有し、前記凹部と加熱媒体供給穴とは連通孔で連通しており、前記加熱媒体供給穴に供給された流動性のある加熱媒体が連通孔を通じて前記伝熱部の凹部に充填され、前記加熱媒体が充填された凹部の開口面は薄いシート状被覆物で密封状態に閉塞されており、前記伝熱部と加熱媒体供給部が傾斜可能に設けられていることを特徴とする伝熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−235311(P2011−235311A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108948(P2010−108948)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(500379509)有限会社ヨコタテクニカ (31)
【Fターム(参考)】