説明

伝送特性判別装置

【課題】データ判別に用いるチャネル信号から、伝送特性を表すパルス応答を判別することである。
【解決手段】 チャネル信号とニ値化信号を、ともにチャネル信号の変動に同期した同一周波数でサンプリングを行い、ニ値化信号とチャネル信号との間の誤差指標を最小とするようなFIRフィルタの係数値ベクトルを求める。この係数値ベクトルはパルス応答波形を該サンプリングレートでサンプリングしたものと概一致するので、パルス応答を求めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信データを伝送したチャネル信号を検出してデータを判別する装置において、チャネル信号の伝送特性を判別する方法および装置、ならびに判別された伝送特性に従って適切な方法でデータの復号を行う方法および装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、例えば、特許文献1及び2がある。
特許文献1では、PR形式の理想波形と入力波形との二乗誤差が最小となるように係数が制御された線形等化器を用いることによって、PR形式と伝送路のインパルス応答との誤差を補正するものである。また特許文献2は、入力波形に対して最適になるように、ビタビ復号に用いる振幅基準値を制御するものである。
【0003】
【特許文献1】特開平9−245436号公報
【特許文献2】特開2004−178627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にデータ転送においては、送信されたデータが受信機で検出される間には伝送路が存在する。そのため、検出される信号は送信データに対応した矩形波から、伝送路の伝達特性に従って変形した波形となる。
【0005】
ところで、このように伝送によって変形した信号(以下チャネル信号と表記する)からのデータ判別に適した手法のひとつとして、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)が知られている。PRMLでは、伝送路を一種の畳み込み符号器とみなし、この畳み込み符号形式(Partial Response形式 / 以下ではPR形式と表記する)に従ったビタビ復号をチャネル信号に対して行うことによって、伝送による変形の大きい条件においても正確なデータ検出を可能とする。
【0006】
通例、このPR形式としては、伝送路の1チャネルビットのデータに対するパルス応答波形に近いものを適用する。たとえば、パルス応答波形がチャネルビット間隔で((0,・・・0,1,2,2,1,0,・・・,0)のように近似される伝送条件では、このように4チャネルビット幅の応答を基準とした、PR(1,2,2,1)形式と表記されるPR形式を適用するとよい。
【0007】
ただし、この手法でデータを正しく判別するためには、予め定めたPR形式と伝送路のパルス応答との整合が要求される。すなわち、送信器、伝送路、検出器の応答特性および伝達特性のばらつきが大きいと、エラーが発生しやすくなる。
【0008】
従来は、予め理論計算や実験によるパルス応答波形を元に定めたPR形式を基本として、特許文献1や特許文献2のような学習処理によって実信号との整合を図る手法がとられてきた。
【0009】
前記の2つの従来技術では、いずれも学習処理によるものであるから、初期値が適切ではない場合は誤動作を生じることがある。このような問題を回避するためには、予め適切な初期値を設定できるようにするために、パルス応答波形が判別できることが望ましい。
【0010】
本発明ではチャネル信号から、伝送特性を表すパルス応答を求める装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、例えば、特許請求の範囲に記載の発明により解決することができる。
【発明の効果】
【0012】
伝送路のパルス応答波形を精度よく求めることを可能となる。これによって、たとえばPRML方式でデータ判別を行う装置においては、より適正なPR形式の選択が可能となり、より正確なデータ判別が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では光ディスクドライブ装置を例に実施例を説明する。本実施形態における光ディスクドライブ装置は、送信されたデータもしくは判別されたデータに従った2値信号を入力とし、線形等化器において、その出力とチャネル信号との間の誤差指標値が最小となる線形等化器のタップ係数値の組を求めることができる。このタップ係数値を、タップ配列の順に並べたものが伝送路におけるパルス応答波形である。パルス応答波形がもとまることは、伝送特性(伝達関数)が判別されることと等価であるから、本実施形態の光ディスクドライブ装置は、チャネル信号から、伝送特性を表すパルス応答を求めることができる。
【0014】
光ディスクドライブ装置では、回転しているディスクに螺旋状に記録されたピット(もしくはマーク)に対してレーザ光を照射し、戻り光を光ピックアップ上の光検出器で光電変換し、フレキシブルケーブルや基板パターンなどの電気的な伝送路を経てチャネル信号を得る。
光ディスクドライブでのチャネル信号の振幅値は、概ねディスク上の照射位置を横切るピットパターンと類似の変動を示すが、光スポットの大きさはピットの基準長の数倍の大きさをもつので、相応の符号間干渉が与えられている。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施形態の第一の実施例を図1に示す。
本実施例の装置は、ニ値化手段(101)と、チャネル信号サンプル手段(102)と、チャネル信号格納メモリ(103)と二値化信号サンプル手段(104)と復号データ信号格納メモリ(105)とマイクロプロセッサ(106)とを有する。
【0016】
本実施例では、チャネル信号格納メモリ(103)と復号データ信号格納メモリ(105)に格納された値から、マイクロプロセッサ(106)が二値化信号(107)を入力、チャネル信号(106)を目標としたウィナーフィルタの係数を、マイクロプロセッサ(106)を用いて求める。
【0017】
ニ値化手段(101)は、元データを伝送したチャネル信号(106)から、元データに対応した二値化信号(107)を得る手段である。チャネル信号サンプル手段(102)は、チャネル信号(106)をサンプリングクロック(108)のタイミングでサンプリングする。チャネル信号格納メモリ(103)は、格納期間指示信号(109)に従った期間において、チャネル信号サンプル手段(102)によって得られた振幅情報を順に格納する。二値化信号サンプル手段(104)は、二値化信号(107)をサンプリングクロック(108)のタイミングでサンプリングする。復号データ信号格納メモリ(105)は格納期間指示信号(109)に従った期間において、二値化信号サンプル手段(104)によって得られたニ値化信号情報を順に格納する。
【0018】
マイクロプロセッサ(106)は、サンプリング期間の完了後、チャネル信号格納メモリ(103)と復号データ信号格納メモリ(105)から格納値を取得し、数1式の右辺に従った演算を行う。
【0019】
【数1】

数1式において、Xはニ値化波形のサンプル値x[n]による行列であり、サンプル番号n_smplと定数n_coefを用いて数2式のように定められる。
【0020】
【数2】

また、Yはチャネル信号のサンプル値y[n]により形成される行列であり、サンプル番号n_smplと定数n_coefを用いて数3式のように定められる。
【0021】
【数3】

【0022】
このようにして、数1式によって求められるCbestはn_coef次の行ベクトルであり、ニ値化信号を入力、チャネル信号を目標とした誤差自乗値を最小とする、連続n_coefタップの適応等化器の最適係数値である。さらに、この各要素は1bitの送信データに対するパルス応答波形をサンプリングクロック(108)の周期でサンプリングした値とも等価であるので、伝送路のパルス応答波形が得ることが可能である。たとえば、図2に示すようなパルス応答波形が得られる伝送条件下で、1チャネル周期のサンプリングを行ったときに得られるCbestは図2の実線波形を1チャネル周期でサンプリングしたものに等しくなり、サンプリング位相が適切であれば、
Cbest = {・・・, 0, 0, 0, 0.05, 0, 0.5, 2.8, 6.2, 7.8, 6.2, 2.8, 0.5, 0, 0.05, 0, 0, 0, ・・・}のように求まる。
【0023】
これらの演算は伝送路の伝達特性に等しい特性をもつ等化器の係数を求めることとも言い換えることができ、得られた等化器の伝達関数を計算することによって、伝送路の伝達特性を求めることができる。
【0024】
本実施形態の第二の実施例を図3に示す。
【0025】
本実施例の装置は、ニ値化手段(101)とチャネル信号サンプル手段(102)と二値化信号サンプル手段(104)と線形等化器(301)と最適タップ係数算出手段(302)とを有する。本発明では、最適タップ係数算出手段(302)はLMS法に従い、タップ係数の値を随時更新する。
ニ値化手段(101)とチャネル信号サンプル手段(102)と二値化信号サンプル手段(104)とは実施例1のものと同一である。線形等化器(301)は二値化信号(107)を入力としたn_coef個だけの連続タップをもつ図3のようなFIRフィルタである。
最適タップ係数算出手段(302)は、タップ値(304)と線形等化器により等化された復号データ波形(303)から、数4式に従った演算を行って、係数値を演算する。
【0026】
【数4】

ここで、Ci[n]は時刻nTにおける線形等化器の入力側からn番目のタップ係数の値を表す。また、xi[n]は時刻nTにおける入力側からn番目のタップ入力値を表す。さらに、vch[n]はチャネル信号を時刻nTにおいてサンプリングしたサンプル値である。μは、学習係数である。
この方法では各タップ係数値はLMS法に従い更新され、やがて実施例1の方法で求められるウィナーフィルタの係数値の近傍に収束する。したがって、これらの係数値を取得することによって、パルス応答波形ならびに伝達関数を求めることができる。
【0027】
以下では、以上に述べた構成の各要素について、より詳細に説明する。
図4(a),(b)はともにニ値化手段(101)の一例である。
【0028】
図4(a)はチャネル信号(106)が一相のみのときに適用できる回路であり、ハイパスフィルター(図中では抵抗RとコンデンサCからなる)とコンパレータ(401)を有する。コンパレータ(401)はチャネル信号(106)の交流成分が正の値をとるときにハイレベル、負の値をとるときにローレベルの値となる二値化信号(107)を出力する。
【0029】
図4(b)はチャネル信号(106)が正相チャネル信号(402)と逆相チャネル信号(403)の2相の信号で伝送されるときに適用できる回路であり、同様にハイパスフィルターとコンパレータ(401)を有する。各々の交流成分を比較して、正相チャネル信号(402)の交流成分の振幅値のほうが大きい瞬間はハイレベル、逆相チャネル信号(403)の交流成分の振幅値のほうが大きい瞬間はローレベルとなる二値化信号(107)を出力する。
【0030】
図5はニ値化手段(101)の別の一例であり、PRMLと呼ばれる処理により二値化処理を行う。この例の構成では、A/D変換手段(501)と位相誤差検出手段(502)とループフィルタ(503)と発振器(504)からなるPLL(505)と、線形等化器(506)と、ビタビ復号器(507)を有する。
【0031】
PLL(505)では、A/D変換手段(501)においてチャネル信号(106)に対してデータ転送をチャネルビット周期で位相同期したタイミングでサンプリングするためのチャネルクロックを生成する。このため、A/D変換手段(501)でサンプリングした信号から位相誤差検出手段(502)により、サンプリング位相ずれ量を検出し、ループフィルタにより平滑化して周波数制御信号を生成し、発振器(504)のクロック周波数を随時制御する。
【0032】
ビタビ復号器(507)では、チャネル信号(106)の伝送特性に応じて、適当な形式の畳み込み符号形式に対応したビタビ復号処理を行う。線形等化器(506)では、ビタビ復号器(507)の適用する畳み込み符号形式と、チャネル信号(106)の伝送特性との間と差を補償し、よりビタビ復号器(507)の処理に適した信号となるように波形等化を行う。
【0033】
なお、図5の例のように、ニ値化手段(101)の内部においてチャネル信号(106)のサンプリング処理を行い、さらに当該サンプリングレートと同一の処理レートでニ値化判別を行うニ値化手法を適用する場合においては、チャネル信号サンプル手段(102)と二値化信号サンプル手段(104)はニ値化手段(101)の内部のものと共用してもよい。
【0034】
ところで、図5の例のようにチャネル周期でサンプリングを行ったチャネル信号(106)をもとにして本発明の処理を行う場合、得られるパルス応答波形もチャネル周期でサンプリングされたものとなる。このような場合、図6のような構成にすることによって精度の向上が可能である。図6では、チャネルクロックでサンプリングされたチャネル信号(106)と二値化信号(107)に対してオーバーサンプリングを行ったものを、パルス応答を求める処理に適用する。
【0035】
図6の構成では、図5の構成に加えて、復号データオーバーサンプリング手段(601)とチャネル信号オーバーサンプリング手段(602)とを有する。また、PLL(505)には内部に分周器(603)が追加され、逓倍チャネルクロック(604)を生成できるようにしている。なお、分周器(603)は分周比を1/Nとした場合、N進バイナリカウンタ回路の最上位ビットで実現できる。ここでは、分周比を1/4とし、4進バイナリカウンタの最上位の反転信号をチャネルクロック(508)として適用する。また、このバイナリカウンタの値である分周カウンタ信号(604)は、復号データオーバーサンプリング手段(601)とチャネル信号オーバーサンプリング手段(602)へも出力される。
【0036】
図7はチャネル信号オーバーサンプリング手段(602)構成の一例であり、チャネル信号に対して4倍オーバーサンプリング処理を行う。本構成では、チャネルクロック(508)に同期して動作し異なるタップ係数値をもつ3つの4タップFIRフィルタである補間器1(702), 補間器2(703), 補間器3(704)と、これらの補間器の処理遅延時間と等しい遅延時間を与える遅延回路(701)を有し、さらに各々の出力を逓倍チャネルクロック(604)の周期で切換えて出力するパラレルtoシリアル変換手段(701)を有する。ここでは、補間器の係数をそれぞれ入力に近いものから順に、{ -5, 35, 105, -7}, { -1, 9, 9, -1}, {-7, 105, 35, -5}としている。このような補間器は、チャネルクロック(508)のタイミングでサンプリングされた連続4サンプルのチャネル信号を3次関数で補間し、その中央の1サイクル間を4分割する3サンプルのオーバーサンプル値が得られる。また、補間方法として、2点間の直線補間を適用する場合は図9に示す構成で実現できる。この構成では、補間器1(902), 補間器2(903), 補間器3(904)が2タップのFIRである点が図7の構成と異なり、その係数が入力に近いものから順に、{1, 3}, {1, 1}, {3, 1}となる。
【0037】
図10(a)と図10(b)はそれぞれパラレルtoシリアル変換手段(701)の構成の一例とその動作のタイミングチャートを表している。この構成においては、分周カウンタ信号(604)の値が3から0になるタイミングで立ち上がるチャネルクロック(508)の立ち上がりタイミングで値が更新される4並列のサンプリング信号が主とする入力である。入力信号X0[n]、X1[n]、X2[n]、X3[n]を、セレクタにより分周カウンタ信号(604)に同期して繰り返し切換えを行った上、逓倍チャネルクロック(603)に同期したDフリップフロップを通すことによって4並列の入力信号をシリアル化した出力信号を得る。
【0038】
次に、復号データオーバーサンプリング手段(601)の構成例を示す。
【0039】
第一の構成例は、ビタビ復号器(507)によって判別されたデータをそのまま用いる方式である。特別な装置を要さないため、図示は省略する。求める波形は二値であるため、補間器等による振幅補間などは行わなくてよい。
【0040】
しかしながら、光ディスク装置においては、ディスク上に形成されたピットもしくはマークのエッジ位置に関して、記録時の条件により誤差を生じる。より正確に伝送特性を求めるためには、ニ値化信号のエッジにもこの誤差量を反映した方がよい。
【0041】
この点を改善し、エッジ位置の誤差量の反映を可能とする第二の構成例を図11に示す。この例では、アシンメトリ量検出手段(1101)と、エッジずれ量判別手段(1102)と、エッジ補正手段(1103)とを有する。アシンメトリ量とは、光ディスク再生時の再生信号振幅の上下非対称性を表す値であり、例えばBlu-rayディスクの規格では数5式のように定義されている。
【0042】
【数5】

ただし、
I8H : 8T top レベル
I8L : 8T bottom レベル
I8pp : 8T peak-to-peak レベル
I2H : 2T top レベル
I2L : 2T bottom レベル
を表す(Tは1チャネルビットに対応した基準長さを表す単位とする)。アイパターン波形との対応は図12のとおりである。
【0043】
アシンメトリ量は、ピットのエッジ位置が理想的であればほぼ0となるが、ピットの長さのずれ量に従い大きくなる。シミュレーションの結果、ピットのエッジ位置のずれ量とアシンメトリ量の関係は図13(a)のとおり単調増加な関係であった。 これによれば、アシンメトリの大きさが得られれば、この関係から逆にピットのエッジずれ量を推定できる。
【0044】
図14はアシンメトリの検出手段の一例であり、遅延手段(1401)とデータパタン生成手段(1402)とデマルチプレクサ(1409)と2T-Top振幅保持手段(1403)と2T-Bottom 振幅保持手段(1404)と8T-Top振幅保持手段(1405)と8T-Bottom振幅保持手段(1406)と平均化手段(1407)と演算手段(1408)とを有する。データパタン生成手段(1402)は、復号データ(1105)を連続10サンプル分だけ保持し、これによって得られる10ビットのデータパタンによってデマルチプレクサ(1409)は振り分け処理を行う。振り分け処理が行われるのは、遅延手段(1401)によって規定の遅延量を与えられたチャネル信号サンプル値(1104)である。ここで与える遅延量は線形等化器(506)により与えられる遅延量とビタビ復号器(507)により与えられる遅延量の和と等しくする。これによって、例えば判別された10ビットのデータパタンが8TのTopレベルを示す「01111111100」となるのと同時に、デマルチプレクサ(1409)で振り分けされるチャネル信号サンプル値(1104)が丁度8TのTopレベルの振幅となるように、チャネル信号サンプル値(1104)とデータパタンのタイミングの整合を実現する。
【0045】
2T-Top振幅保持手段(1403)と2T-Bottom 振幅保持手段(1404)と8T-Top振幅保持手段(1405)と8T-Bottom振幅保持手段(1406)は、各々デマルチプレクサ(1409)で振り分けられた振幅値を、その次に値が振り分けられるまでの間にわたって保持する。また、平均化手段(1407)は適当なカットオフ周波数を有するローパスフィルタである。演算手段(1408)は4つの平均化手段(1407)の出力として得られるI2H, I2L, I8H, I8Lの4値を入力として、アシンメトリの定義式である数5式に沿った演算を行う。以上のようにして、アシンメトリ量検出手段(1101)は実現される。
【0046】
エッジずれ量判別手段(1102)はアシンメトリ量検出手段(1101)によって求められたアシンメトリ量から、図13(a)の関係に基づいてエッジずれ量を判別する。ただし、実現できるエッジずれ量の分解能は逓倍チャネルクロック(603)の周期で限定されてしまうので、例えば、4逓倍のチャネルクロックを適用するのであれば、図13(b)のようにアシンメトリ量に応じて離散的に二値化信号(107)の位置を設定するように、制御信号を生成する。
【0047】
図15と図16は,それぞれエッジ補正手段(1103)の構成の一例と、その動作のタイミングチャートである。本構成はエッジ検出手段(1501)とRise-Edgeタイミング信号生成手段(1502)とFall-Edgeタイミング信号生成手段(1503)とRSフリップフロップ(1506)を有する。なお、図示を省略しているが、動作クロックは逓倍チャネルクロック(603)である。エッジ検出手段(1501)では、復号データ(1105)に対してRise-EdgeとFall-Edgeを検出して各々に対応した1クロック幅のパルス信号であるRise-Edge検出信号(1504)とFall-Edge検出信号(1505)を生成する。Rise-Edgeタイミング信号生成手段(1502)とFall-Edgeタイミング信号生成手段(1503)では、逓倍チャネルクロック(603)で動作するシフトレジスタを用いてRise-Edge検出信号(1504)とFall-Edge検出信号(1505)を逓倍クロック周期の刻みで遅延させたRise-Edgeタイミング信号(図中ではRise-Edgeタイミング信号-4〜Rise-Edgeタイミング信号+4)とFall-Edgeタイミング信号(図中ではFall-Edgeタイミング信号4〜Fall-Edgeタイミング信号+4)を生成するとともに、エッジずれ量判別手段(1102)により生成されるエッジタイミング補正量選択信号(1507)に従い、エッジずらし量にしたがって、これらのいずれかを選択する。RSフリップフロップ(1506)では、前記Rise-Edgeタイミング信号生成手段(1502)とFall-Edgeタイミング信号生成手段(1503)の選択結果にしたがって値のセットとリセットを行う。かようにして得られる二値化信号(107)は、図17に示すごとくに復号データ(1105)に対してエッジタイミング補正量選択信号(1507)にしたがったエッジタイミングの補正が加えられたものとなる。
【0048】
また、エッジの時間分解能が不足している場合は、二値化信号(107)に振幅情報をもたせ、エッジの逓倍クロック1周期分だけ、量子化誤差量に応じて他の部分と異なる振幅値を与えるようにしてもよい。たとえば、図13(b)の表において中央値として示されている値と実際に検出されたアシンメトリ量との差分に応じて、数6式に従った振幅変調を与える。
【0049】
【数6】

このような処理を可能とするエッジ補正手段(1103)の一例を図18に示す。なお、このような処理を行う場合は、エッジずれ量判別手段(1102)にて数6式の演算を行い、その結果がエッジ振幅値設定信号(1801)としてエッジ補正手段(1103)に入力されるものとする。この構成では、図15の構成から更に後段にエッジ振幅変調回路(1805)が追加される。エッジ振幅変調回路(1805)は3入力のアナログスイッチであり、制御端子A,B,CにそれぞれRise-Edgeパルス(1802)、仮二値化信号(1803)、Fall-Edgeパルス(1804)が接続される。また、被選択信号端子にはエッジ振幅値信号(1801)と、二値化信号(107)のハイレベルに相当する振幅値”1”、ローレベルに相当する振幅値”0”の3種の信号が接続され、それぞれ制御端子A,B,Cの値に対して、(A | C ) == 1となるとき、B&(~(A | C ))==1となるとき、その他のときに選択されるようにする。このようにすれば、図19のごとく二値化信号(107)のエッジの1逓倍クロック周期分に関してエッジタイミング誤差量を反映した波形を得られる。
【0050】
次に、復号データオーバーサンプリング手段(601)の第三の構成例を図20に示す。前記の第二の構成では、再生信号のアシンメトリ量の測定を行い、その結果から求められる当該期間における平均的なエッジずれ量に応じて一律して全エッジタイミングの補正を行う。しかしながら、ピットやマークの形成の方式や条件によってはずれ量はエッジごとに異なることがあるので、エッジごとに異なる量の補正を行うほうがより正確な処理を行うことができる。図20の例では、各エッジに対するサンプリングタイミングのずれ量の検出とニ値化信号のエッジ補正を随時行うことを可能とする。
【0051】
本構成は、位相誤差検出手段(2001)とエッジ補正手段(1103)を有する。位相誤差検出手段(2001)は、位相誤差検出方法が同一であれば、PLL(505)に設けられた位相誤差検出手段(502)と兼用してもよい。また、位相誤差検出手段(2001)の入力であるチャネル信号サンプル値(1104)は、線形等化器(506)の前段の信号を用いるのが望ましいが、線形等化器(506)の与える群遅延量が一定か、もしくは周波数成分ごとのずれが無視できるのであれば、線形等化器(506)の後段の信号を用いても良い。エッジ補正手段(1103)は、前記の構成例と同様のものを用いる。
【0052】
チャネル信号のゼロクロスする時刻がサンプリング間隔の中央に位置するようにサンプリングを行う場合の位相誤差検出法の例を図21に示す。図21において、再生信号は時刻(k+1)Tと(k+2)Tの間でゼロクロスしており、ゼロクロス前後のそれぞれ2サンプルのチャネル信号サンプル値s(kT), s((k+1)T), s((k+2)T), s((k+3)T)を用いてタイミング誤差量を求める。
【0053】
ここで、時刻(k+1)Tと(k+2)Tの中間点である時刻(k+3/2)Tにおいてはタイミングずれ量Δtがゼロであれば再生信号はちょうどゼロクロス点となるが、サンプリングするタイミングの誤差により、この時刻のサンプル値はゼロ点からずれる。このサンプル値の振幅ずれ量をΔsとおくと、タイミングずれ量は数7式のように近似できる。
【0054】
【数7】

【0055】
ただし、4サンプル間を3次関数で補間することにより、分子と分母は各々数8,数9のように近似される。
【0056】
【数8】

【0057】
【数9】

【0058】
もしくは、精度を要求しないならば、ゼロクロス前後1点ずつに対する一次関数での補間によって数10,数11のように求めることができる。
【0059】
【数10】

【0060】
【数11】

【0061】
以上に示した方法によって、A/D変換器でのサンプリングタイミングのずれ量(クロックの位相誤差)を検出できる。このようにして得られたズレ量をオーバーサンプリングレートに応じて離散化して、エッジタイミング補正量選択信号(1507)を得るとともに、エッジ補正手段(1103)において前記第二の構成例と同様な処理を行うことによって、各エッジに対するサンプリングタイミングのずれ量の検出とニ値化信号のエッジ補正を随時行うことを可能である。
【0062】
以上に述べた方法により、パルス応答波形を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明を実現する装置の全体構成の一例である
【図2】パルス応答とそのサンプル値の一例である
【図3】本発明を実現する装置の全体構成の第二の例である
【図4】ニ値化手段(101)の第一の例である
【図5】ニ値化手段(101)の第二の例である
【図6】ニ値化手段(101)の第三の例である
【図7】チャネル信号オーバーサンプリング手段(602)の第一の例である
【図8】チャネル信号のサンプル値と、補間波形ならびに補間値の関係を表している
【図9】チャネル信号オーバーサンプリング手段(602)の第二の例である
【図10】パラレルtoシリアル変換手段(705)の一例である
【図11】復号データオーバーサンプリング手段(601)の第二の例である
【図12】アイパターンと、アシンメトリを規定する各振幅値との位置関係を表している
【図13】マークエッジずれ量とアシンメトリ量の関係の一例を表している
【図14】アシンメトリ量検出手段(1101)の一例を表している
【図15】エッジ補正手段(1103)の第一の例を表している。
【図16】図15のエッジ補正手段(1103)のタイミングチャートの一例である
【図17】チャネル信号と、図15のエッジ補正手段(1103)により得られるニ値化信号の対応を表している
【図18】エッジ補正手段(1103)の第二の例を表している。
【図19】チャネル信号と、図18の復号データオーバーサンプリング手段(601) により得られるニ値化信号の対応を表している
【図20】復号データオーバーサンプリング手段(601)の第三の例である
【図21】位相誤差検出手段(2001)における位相検出方法の一例を表している
【符号の説明】
【0064】
101 ニ値化手段、 102 チャネル信号サンプル手段、 103 チャネル信号格納メモリ、
104 二値化信号サンプル手段、 105 ニ値化信号格納メモリ、 106 マイクロプロセッサ、
107 二値化信号、 108 サンプリングクロック、 109 格納期間指示信号、
301 線形等化器、 302 最適タップ係数算出手段、 303 等化された復号データ波形、 304 タップ値、
305 タップ係数、
401 コンパレータ、 402 正相チャネル信号、 403 逆相チャネル信号、
501 A/D変換手段、 502 位相誤差検出手段、 503 ループフィルタ、 504 発振器、 505 PLL、
506 線形等化器、 507 ビタビ復号器、 508 チャネルクロック、
601 復号データオーバーサンプリング手段、 602 チャネル信号オーバーサンプリング手段、 603 分周器、
604 逓倍チャネルクロック、 605 分周カウンタ信号、
701 遅延手段、 702 補間器1、 703 補間器2、 704 補間器3、 705 パラレルtoシリアル変換手段、
901 遅延手段、 902 補間器1、 903 補間器2、 904 補間器3、
1101 アシンメトリ量検出手段、 1102 エッジずれ量判別手段、 1103 エッジ補正手段、
1104 チャネル信号サンプル値、 1105 復号データ、
1401 遅延手段、 1402 データパタン生成手段、 1403 2T-Top振幅保持手段、
1404 2T-Bottom振幅保持手段、 1405 8T-Top振幅保持手段、 1406 8T-Bottom振幅保持手段、
1407 平均化手段、 1408 演算手段、 1409 デマルチプレクサ、
1501 エッジ検出手段、 1502 Rise-Edgeタイミング信号生成手段、
1503 Fall-Edgeタイミング信号生成手段、 1504 Rise-Edge検出信号、 1505 Fall-Edge検出信号、
1506 RSフリップフロップ、 1507 エッジタイミング補正量選択信号、
1801 エッジ振幅値信号、 1802 Rise-Edgeパルス、 1803 仮二値化信号、 1804 Fall-Edgeパルス、
1805 エッジ振幅変調回路、
2001 位相誤差検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二値化手段と
チャネル信号サンプル手段と
チャネル信号格納メモリと
二値化信号サンプル手段と
二値化信号格納メモリと
マイクロプロセッサとを有し、
該二値化手段は転送された二値化データに対応した二値化信号を、チャネル信号から生成し、
該チャネル信号サンプル手段と該二値化信号サンプル手段とは、前記チャネル信号のチャネルレートの変動に追従した同一周波数のクロックで、それぞれチャネル信号と二値化信号のサンプリングを行い、
該チャネル信号格納メモリと該二値化信号格納メモリは、同一の格納期間だけそれぞれ前記チャネル信号サンプル手段と前記二値化信号サンプル手段によりサンプリングされた信号値の格納を行い、
該マイクロプロセッサは、前記格納期間の終了後に前記チャネル信号格納メモリと前記二値化信号格納メモリから格納値を読み出すとともに、
前記二値化信号のサンプル値と前記チャネル信号のサンプル値との間の二乗誤差値を最小とするように該二値化信号のサンプル値を入力とした波形等化を行う等化器の係数値を求める演算を行い、
その結果得られる最適係数から、パルス応答波形を得ることを特徴とする伝送特性判別装置。
【請求項2】
二値化手段と
チャネル信号サンプル手段と
二値化信号サンプル手段と
線形等化器と
最適タップ係数算出手段とを有し、
該二値化手段は転送された二値化データに対応した二値化信号を、チャネル信号から生成し、
該チャネル信号サンプル手段と該二値化信号サンプル手段とは、前記チャネル信号のチャネルレートの変動に追従した同一周波数のクロックで、それぞれチャネル信号と二値化信号のサンプリングを行い、
該線形等化器は該サンプリングされた二値化データを入力とし、
該最適タップ係数算出手段はLMS法に基づいて、前記線形等化器の出力と前記サンプリングされたチャネル信号との間の平均的な二乗誤差が最小になるように、前期線形等化器の係数の更新を繰り返し、
その結果収束した前記線形等化器の係数から、パルス応答波形を得ることを特徴とする伝送特性判別装置。
【請求項3】
前記二値化手段はハイパスフィルターとコンパレータを有し、
該ハイパスフィルターは前記チャネル信号を入力とし、
その出力を該コンパレータで基準電位と比較した大小関係から前記二値化信号を得ることを特徴とする請求項1又は2記載の伝送特性判別装置。
【請求項4】
二値化手段と
チャネル信号格納メモリと
二値化信号格納メモリと
マイクロプロセッサとを有し、
該二値化手段は内部にPLLとデジタル復号手段を有し、
該PLLではチャネル信号に位相同期したクロックを生成するとともに、該クロックのタイミングで前記チャネル信号のサンプリングを行い、
前記デジタル復号手段では、該チャネル信号のサンプル値を前記位相同期したクロックと同一レートでの処理によって二値化信号を生成し、
該チャネル信号格納メモリと該二値化信号格納メモリは、同一の格納期間だけそれぞれ前記チャネル信号のサンプル値と前記二値化信号の格納を行い、
該マイクロプロセッサは、前記格納期間の終了後に前記チャネル信号格納メモリと前記二値化信号格納メモリから格納値を読み出すとともに、
前記二値化信号のサンプル値と前記チャネル信号のサンプル値との間の二乗誤差値を最小とするように該二値化信号のサンプル値を入力とした波形等化を行う等化器の係数値を求める演算を行い、
その結果得られる最適係数から、パルス応答波形を得ることを特徴とする伝送特性判別装置。
【請求項5】
二値化手段と
線形等化器と
最適タップ係数算出手段とを有し、
該二値化手段は内部にPLLとデジタル復号手段を有し、
該PLLではチャネル信号に位相同期したクロックを生成するとともに、該クロックのタイミングで前記チャネル信号のサンプリングを行い、
前記デジタル復号手段では、該チャネル信号のサンプル値を前記位相同期したクロックと同一レートでの処理によって二値化信号を生成し、
前記線形等化器は該二値化データを入力とし、
該最適タップ係数算出手段はLMS法に基づいて、前記第一の線形等化器の出力と前記サンプリングされたチャネル信号との間の平均的な二乗誤差が最小になるように、前期線形等化器の係数の更新を繰り返し、
その結果収束した前記線形等化器の係数から、パルス応答波形を得ることを特徴とする伝送特性判別装置。
【請求項6】
二値化手段と
第一の線形等化器と、
最適タップ係数算出手段とを有し、
該二値化手段は内部にPLLと、
デジタル復号手段と、
チャネル信号オーバーサンプリング手段と、
復号データオーバーサンプリング手段とを有し、
該PLLではチャネル信号に位相同期したクロックを生成するとともに、該クロックのタイミングで前記チャネル信号のサンプリングを行い、
前記デジタル復号手段では、該チャネル信号のサンプル値を前記位相同期したクロックと同一レートでの処理によって二値化信号を生成し、
前記チャネル信号オーバーサンプリング手段では、前記サンプリングされたチャネル信号のオーバーサンプリングを行い、
前記復号データオーバーサンプリング手段では、前記チャネル信号オーバーサンプリングと同一の処理レートで前記二値化信号のオーバーサンプリングを行い、
前記線形等化器は該オーバーサンプリングされた二値化データを入力とし、
該最適タップ係数算出手段はLMS法に基づいて、前記第一の線形等化器の出力と前記オーバーサンプリングされたチャネル信号との間の平均的な二乗誤差が最小になるように、前期線形等化器の係数の更新を繰り返し、
その結果収束した前記線形等化器の係数から、パルス応答波形を得ることを特徴とする伝送特性判別装置。
【請求項7】
前記チャネル信号は光ディスクの再生信号であって、
前記復号データオーバーサンプリング手段は、アシンメトリ量検出手段を有し、
該アシンメトリ量検出手段は、前記サンプリングされたチャネル信号の振幅から、チャネル信号のアシンメトリ量を求め、
前記復号データオーバーサンプリング手段では該アシンメトリ量に応じてマークエッジ位置のズレ量を推定し、
二値化信号のエッジ位置をオーバーサンプリング時のサンプリング周期単位で調整することを特徴とする請求項6記載の伝送特性判別装置。
【請求項8】
前記チャネル信号は光ディスクの再生信号であって、
前記二値化手段には位相誤差検出手段を有し、
該位相誤差検出手段では、前記サンプリングされたチャネル信号から、ゼロクロス時刻の理想位置からのズレ量を検出し、
前記復号データオーバーサンプリング手段は、
該ゼロクロス時刻に基づいて、マークエッジ位置のズレ量を推定して二値化信号のエッジ位置をオーバーサンプリング時のサンプリング周期単位で調整することを特徴とする、請求項6記載の伝送特性判別装置。
【請求項9】
前記エッジ位置をオーバーサンプリング時のサンプリング周期単位で調整された二値化信号に対応したマークエッジ位置と、前記推定されたマークエッジ位置のズレ量との間の量子化誤差に応じて二値化信号のエッジ振幅を変化させることを特徴とする請求項7又は8記載の伝送特性判別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2010−176717(P2010−176717A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14885(P2009−14885)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】