説明

伝送路決定システム、ネットワーク管理装置及び伝送路決定方法

【課題】伝送路の特性値の調整を行う際に、光信号の特性劣化を抑えるように経路を決定することができる伝送路決定システム、ネットワーク管理装置及び伝送路決定方法を提供すること
【解決手段】本発明の伝送路決定システムは、光信号の送信端点及び受信端点のノードの間における複数の伝送路候補を抽出する伝送路候補抽出部11と、伝送路候補の伝送路特性値を計測する伝送路特性計測部12と、抽出された複数の伝送路候補それぞれの伝送路特性補正値を算出し、伝送路特性補正値を抽出された複数の伝送路候補を形成するノードに適用する伝送路特性補正部22と、伝送特性補正値を適用された伝送路の伝送路特性値を測定する品質測定部24と、伝送特性補正値を適用された伝送路候補における伝送路特性値の測定結果に応じて、送信端点と受信端点との間の前記光信号の伝送路を決定する伝送路決定部25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路特性知を用いて、複数のノードを用いて形成される光信号の伝送路を決定する伝送路決定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの急速な発展に伴い、ネットワークを流れるトラヒックが増加している。さらに、動画コンテンツを用いたサービス等の普及により、伝送速度の向上が望まれている。そのため、伝送速度の向上を実現することができる光トランスポートシステムを用いたメッシュネットワーク構築の必要性が高まっている。
【0003】
光トランスポートシステムにおける信号導通には、伝送路特性値の調整が必須となる。また、光トランスポートシステムの伝送路に障害が発生した場合等に、伝送路プロテクション制御が発生すると、新規伝送路にて再度伝送路特性の測定及び調整を実施する必要がある。伝送路特性の測定及び調整には時間がかかるが、伝送路プロテクション制御時における伝送路断時間の要求は、数10〜数100ms程度である。そのため、伝送路特性の測定及び調整にかかる時間を短縮させる必要性が高い。
【0004】
特許文献1には、光通信路のエンド間による分散補償を光信号の受信前に開始させることにより、受信データ再生遅延時間の短縮化を図った動的な制御を行う光通信路の分散補償システムが開示されている。具体的には、分散補償システムは、データ伝送網とネットワーク制御網とを備えている。ネットワーク制御網は、データ伝送網に設定されるLSP(Label Switch Path)の経路が決定されると、LSPの経路上の受信端又は送信端において補償すべき分散値を求める。さらに、ネットワーク制御網は、補償すべき分散値を求める処理をLSP生成処理以前に行うことにより、パス切替時のオーバヘッドを短縮し、通信路制御の時間を短縮することができる。
【0005】
特許文献2には、光ネットワークを構成する次のような処理を行うノード装置が開示されている。ノード装置は、OSPF等のルーティングプロトコルを用いて経路が決定されると、その経路の分散量を算出する。次に、ノード装置は、分散量に関して予め定められたパラメータを用いて可変分散補償器を設定し、分散量を調整する。これにより、ノード装置により形成される光ネットワークの経路において、算出された分散量に応じた分散補償値を設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−274238号公報
【特許文献2】特開2007−201953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び2に開示されている光ネットワークは、決定された経路における分散量を調整し、光信号の送受信を行っている。そのため、分散量の調整が適切でなく、光信号の特性が劣化してしまう場合においても、決定された経路を用いて光信号を送受信しなくてはならないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために、伝送路の特性値の調整を行う際に、光信号の特性劣化を抑えるように経路を決定することができる伝送路決定システム、ネットワーク管理装置及び伝送路決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様にかかる伝送路決定システムは、複数のノードを用いて形成される光信号の伝送路を決定する伝送路決定システムであって、前記光信号の送信端点のノードと受信端点のノードとの間の複数の伝送路候補を抽出する伝送路候補抽出手段と、前記伝送路候補における伝送路特性値を計測する伝送路特性計測手段と、前記抽出された複数の伝送路候補それぞれにおける前記伝送路特性補正値を算出し、前記算出された伝送路特性補正値を前記抽出された複数の伝送路候補を形成するノードに適用する伝送路特性補正手段と、前記伝送特性補正値を適用されたそれぞれの伝送路の伝送路特性値を測定する品質測定手段と、前記それぞれの前記伝送特性補正値を適用された伝送路候補における前記伝送路特性値の測定結果に応じて、前記送信端点と受信端点との間の前記光信号の伝送路を決定する伝送路決定手段と、を備えるものである。
【0010】
本発明の第2の態様にかかるネットワーク管理装置は、複数のノードを用いて形成される光信号の伝送路を決定する伝送路決定システムにおいて用いられるネットワーク管理装置であって、前記光信号の送信端点のノードと受信端点のノードとの間の複数の伝送路候補における伝送路特性値を収集する伝送路特性収集手段と、前記収集された前記伝送路特性値に基づいて、前記複数の伝送路候補それぞれにおける伝送路特性補正値を算出し、前記算出した伝送路特性補正値を前記伝送路候補を形成するノードに適用する伝送路特性補正手段と、前記伝送路特性補正値を適用されたそれぞれの伝送路において計測された伝送路特性値に応じて、前記送信端点のノードと前記受信端点のノードとの間の前記光信号の伝送路を決定する伝送路決定手段と、を備えるものである。
【0011】
本発明の第3の態様にかかる伝送路決定方法は、複数のノードを用いて形成される光信号の伝送路を決定する伝送路決定システムにおいて用いられるネットワーク管理装置の伝送路決定方法であって、前記光信号の送信端点のノードと受信端点のノードとの間の複数の伝送路候補における伝送路特性値を収集し、前記収集された前記伝送路特性値に基づいて、前記複数の伝送路候補それぞれにおける伝送路特性補正値を算出し、前記算出した伝送路特性補正値を前記伝送路候補を形成するノードに通知し、前記伝送路特性補正値を適用されたそれぞれの伝送路において計測された伝送路特性値に応じて、前記送信端点のノードと前記受信端点のノードとの間の前記光信号の伝送路を決定するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、伝送路の特性値の調整を行う際に、光信号の特性劣化を抑えるように経路を決定することができる伝送路決定システム、ネットワーク管理装置及び伝送路決定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1にかかるノード装置及びネットワーク管理装置の構成図である。
【図2】実施の形態1にかかる伝送路決定システムの全体構成図である。
【図3】実施の形態1にかかる伝送路決定システムにおける伝送路決定処理のシーケンスである。
【図4】実施の形態1にかかるノード装置の伝送路適用処理の流れを示めす図である。
【図5】実施の形態2にかかるネットワーク管理装置の伝送路決定処理の流れを示めす図である。
【図6】実施の形態3にかかるネットワーク管理装置の伝送路決定処理の流れを示めす図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1を用いて本発明の実施の形態1にかかる伝送路決定システムの構成例について説明する。伝送路決定システムは、ノード装置1と、ネットワーク管理装置20とを備えている。また、伝送路システムは、ノード装置を複数備えており、複数のノード装置を用いて、光トランスポートシステム上に光信号の伝送路が形成される。
【0015】
ノード装置1は、伝送路候補抽出部11と、伝送路特性計測部12と、伝送路特性値適用部13と、通信部14と、伝送路適用部15と、を有している。ネットワーク管理装置20は、伝送路特性収集部21と、伝送路特性補正部22と、通信部23と、品質測定部24と、伝送路決定部25と、とを有している。ここで、伝送路候補抽出部11と、伝送路特性計測部12と、伝送路特性値適用部13と、通信部14と、伝送路適用部15と、伝送路特性収集部21と、伝送路特性補正部22と、通信部23と、品質測定部24と、伝送路決定部25とは、上述のようなノード装置1及びネットワーク管理装置20への機能分担に制限されるわけではない。例えば、伝送路候補抽出部11や、品質測定部24等が、ノード装置1やネットワーク管理装置20の外部に設置される外部装置等に搭載されていてもよい。また、ノード装置1の一部の機能がネットワーク管理装置20に搭載されてもよく、ネットワーク管理装置20の一部の機能がノード装置1に搭載されてもよい。
【0016】
以下に、ノード装置1の構成について説明する。伝送路候補抽出部11は、伝送路候補抽出手段を構成する。伝送路候補抽出部11は、光信号の送信端点となるノード装置と受信端点となるノード装置との間の複数の伝送路候補を抽出する。送信端点となるノード装置と受信端点となるノード装置との間には、複数のノード装置が存在する。そのため、送信端点となるノード装置から、受信端点となるノード装置までの間の経路も複数存在する。伝送路候補は、OSPF等のルーティングプロトコルを用いて動的に設定された経路でもよく、ノード装置間の経路を固定的に設定された経路であってもよい。伝送路候補抽出部11は、抽出した伝送路候補に関する情報を伝送路特性計測部12と、伝送路特性値適用部13と、伝送路適用部15とに出力する。
【0017】
伝送路特性計測部12は、伝送路候補抽出部11によって抽出された伝送路候補における伝送路特性値を計測する。伝送路特性計測部12は、伝送路候補抽出部11によって抽出された伝送路候補上のノード装置、例えば、ノード装置1に隣接するノード装置、との間の伝送路特性値を計測する。伝送路特性値は、例えば、分散値(もしくは分散量)や、利得率等を含む。伝送路特性計測部12は、計測した伝送路特性値を通信部14へ出力する。伝送路特性値は、通信部14を介してネットワーク管理装置20へ送信される。
【0018】
伝送路特性値適用部13は、伝送路候補上の複数のノード装置から収集された伝送路特性値に基づいて定められた伝送路特性補正値を通信部14から受け取る。伝送路特性補正値は、ネットワーク管理装置20において算出され、ネットワーク管理装置20から通信部14へ送信される。伝送路特性値適用部13は、通信部14を介して受け取った伝送路特性補正値を設定する。伝送路特性補正値は、例えば、ノード装置1と隣接するノード間との間において、信号を送受信する際に発生する分散値を低減させるように補正する値である。また、伝送路特性補正値は、ノード装置1から隣接するノード装置に対して送信される信号の利得が十分でない場合に、隣接するノード装置が誤りなく信号を受け取ることができる程度の利得率である。
【0019】
伝送路適用部15は、ネットワーク管理装置20において決定された伝送路に関する情報を、通信部14を介して受け取り設定する。以後、ノード装置1は、決定された伝送路上であって、隣接するノード装置との間において、光信号の通信を実行する。
【0020】
続いて、ネットワーク管理装置20の構成要素について説明する。通信部23は、ノード装置1の通信部14との間において通信を実行する。なお、ノード装置1とネットワーク管理装置20との間の通信は、光トランスポートシステムが用いられてもよく、もしくは、無線通信システム等が用いられてもよい。
【0021】
伝送路特性収集部21は、ノード装置1から送信される伝送路特性値を受け取る。なお、伝送路特性収集部21は、ノード装置1以外にも複数のノード装置から伝送路特性値を受け取る。伝送路特性収集部21は、受け取った伝送路特性値を伝送路特性補正部22へ出力する。
【0022】
伝送路特性補正部22は、受け取った伝送路特性値を用いて、複数の伝送路候補それぞれにおける伝送路特性補正値を算出する。例えば、伝送路特性値として分散値を受け取った場合に、複数の伝送路候補それぞれにおいて、分散値を減少させるようにそれぞれのノード装置における分散補償値を算出する。また、伝送路特性値として、利得率を受け取った場合に、複数の伝送路候補それぞれにおいて、利得率を上昇させるように、もしくは利得率を予め定められた適切な値に近づけるように、それぞれのノード装置における利得率の補償値を算出する。伝送路特性補正値は、分散補償値及び利得率の補償値の少なくとも一方を含む。伝送路特性補正部22は、伝送路特性値と伝送路特性補正値とが予め定められたデータテーブルを保持し、受け取った伝送路特性値に応じた伝送路特性補正値を抽出してもよい。伝送路特性補正部22は、算出もしくは抽出した伝送路特性補正値を通信部23へ出力する。伝送路特性補正値は、通信部23を介してノード装置1へ送信される。
【0023】
品質測定部24は、伝送路特性補正値が適用されたそれぞれの伝送路における品質を計測する。品質測定部24は、測定する品質として、例えば、伝送路特性値を計測する。品質測定部24は、例えば、伝送路候補を形成するそれぞれのノードに対して、測定信号等を出力させ、出力された測定信号を用いて、伝送路特性値を計測してもよい。品質測定部24は、伝送路候補を形成するそれぞれのノード間の伝送路特性値を計測してもよく、伝送路候補毎に、送信端点となるノード装置から受信端点となるノード装置との間の伝送路特性値を計測してもよい。品質測定部24は、伝送路候補を形成するそれぞれのノード間の伝送路特性値を計測した場合、計測した伝送路特性値を組み合わせて、送信端点となるノード装置から受信端点となるノード装置との間の伝送路特性値を算出する。
【0024】
品質測定部24は、伝送路特性値として算出した分散値又は利得率、もしくは分散値及び利得率を伝送路決定部25へ出力する。
【0025】
伝送路決定部25は、伝送特性補正値を適用されたそれぞれの伝送路候補における伝送路特性値の測定結果に応じて、送信端点のノードと受信端点のノードとの間の光信号の伝送路を決定する。伝送路決定部25は、複数の伝送路候補のうち、分散値の小さい伝送路候補を伝送路として決定してもよく、利得率が大きい伝送路候補を伝送路として決定してもよい。また、分散値を用いて決定された伝送路と、利得率を用いて決定された伝送路が異なる場合に、分散値と利得率とに優先順位を設定し、優先順位が高い方のパラメータを用いて決定された伝送路を採用するようにしてもよい。伝送路決定部25は、決定された伝送路に関する情報を通信部23へ出力する。決定された伝送路に関する情報は、通信部23を介してノード装置1へ送信される。
【0026】
続いて、図2を用いて本発明の実施の形態1にかかる伝送路決定システムの全体構成例について説明する。伝送路決定システムは、ノード装置1〜7と、ネットワーク管理装置20とを備えている。ノード装置1〜7は、光トランスポートシステムを構築している。つまり、ノード装置1〜7は、光信号を送受信することによりデータ通信を行っている。さらに、ノード装置1〜7は、ネットワーク管理装置20とそれぞれ接続されている。ノード装置1〜7と、ネットワーク管理装置20との接続は、光トランスポートシステムが用いられてもよく、それ以外の例えば無線通信システム等が用いられてもよい。
【0027】
ノード装置1はノード装置2と接続されている。ノード装置2は、ノード装置1及びノード装置3〜5と接続されている。ノード装置3〜5は、ノード装置2及びノード装置6と接続されている。ノード装置6は、ノード装置3〜5及びノード装置7と接続されている。図2においては、ノード装置1が送信端点となるノード装置であり、ノード装置7が受信端点となるノード装置とする。そのため、ノード装置1とノード装置7との間の経路は、ノード装置3を経由する経路と、ノード装置4を経由する経路と、ノード装置5を経由する経路と3つの伝送路候補が存在する。
【0028】
続いて、図3を用いて本発明の実施の形態にかかる伝送路決定システムにおける伝送路決定処理の流れについて説明する。はじめに、ネットワーク管理装置20は、ノード装置1に対して、ノード装置1及び2の間の伝送路特性値測定指示を送信する(S1)。同様に、ネットワーク管理装置20は、ノード装置2に対してノード装置2及び3の間の伝送路特性値測定指示を送信し(S2)、ノード装置6に対してノード装置5及び6の間の伝送路特性値測定指示を送信し(S3)、ノード装置7に対してノード装置6及び7の間の伝送路特性値測定指示を送信する(S4)。なお、図3においては省略しているが、ノード装置3〜5に対しても同様に、伝送路特性値測定指示を送信する。以下の説明においても、ノード装置3〜5における処理の説明を省略する。
【0029】
次に、ノード装置1は、伝送路特性値測定指示を受け取った後、測定した伝送路特性値の測定結果をネットワーク管理装置20へ送信する(S5)。同様に、ノード装置2、6及び7も、伝送路特性値の測定結果をネットワーク管理装置20へ送信する(S6〜S8)。
【0030】
次に、ネットワーク管理装置20は、ノード装置1〜7から受け取った伝送路特性値に基づいて、ノード装置1に対して伝送路特性補正値を送信する(S9)。また、ネットワーク管理装置20は、ノード装置2に対して伝送路特性補正値を送信する(S10)。ここで、ノード装置2は、ノード装置3〜5と接続されている。そのため、ノード装置2は、ノード装置3と接続される場合の伝送路特性補正値と、ノード装置4と接続される場合の伝送路特性補正値と、ノード装置5と接続される場合の伝送路特性補正値とを受け取る。さらに、ネットワーク装置20は、ノード装置6及び7に対しても伝送路特性補正値を送信する(S11、S12)。
【0031】
次に、ネットワーク管理装置20は、伝送路特性補正値を適用した区間における伝送路特性値をノード装置1〜7から受け取る(S13〜S16)。例えば、ノード装置2は、ノード装置3との間の伝送路特性値、ノード装置4との間の伝送路特性値及びノード装置5との間の伝送路特性値をネットワーク管理装置20へ送信する。ここで、ネットワーク管理装置20は、伝送路特性値を品質測定結果としてノード装置1〜7から受け取る。
【0032】
次に、ネットワーク管理装置20は、収集した伝送路特性値に基づいて、伝送路を決定し、決定した伝送路をノード装置1〜7へ通知する(S17〜S20)。たとえば、ノード装置3を経由する伝送路に決定された場合、ネットワーク管理装置20は、ノード装置1〜7に対して、ノード装置3を経由する伝送路に決定されたことを通知する。もしくは、ネットワーク管理装置20は、それぞれのノード装置に対して、隣接するノード装置を通知してもよい。たとえば、ノード装置1に対してはノード装置2と接続されることを通知し、ノード装置2に対してはノード装置1及び3と接続されることを通知し、ノード装置3に対しては、ノード装置2及び6と接続されることを通知し、ノード装置6に対してはノード装置3及び7と接続されることと通知し、ノード装置7に対しては、ノード装置6と接続されることを通知してもよい。
【0033】
以上説明したように、本発明の実施の形態1にかかる伝送経路決定システムを用いることにより、伝送路特性値を考慮して、伝送経路を決定することができる。そのため、決定された伝送路に対して伝送路特性値を調整する場合と比較して、品質の良い伝送路を選択して光信号の送受信を行うことができる。
【0034】
(実施の形態2)
続いて、図4を用いて本発明の実施の形態2にかかるノード装置1の処理の流れについて説明する。実施の形態2においては、ノード装置3とノード装置6との間のリンクに障害が発生した場合のノード装置2における伝送路決定処理について説明する。リンクの障害箇所については、ノード装置3とノード装置6との間に制限されるものではない。また、ノード装置2の構成は、図1におけるノード装置1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0035】
はじめに、ノード装置2は、ノード装置3とノード装置6との間に障害が発生したことを検出する(S11)。ノード装置2は、ノード装置3から障害発生通知を受け取ることにより、ノード装置3とノード装置6との間に障害が発生したことを検出する。又は、ノード装置2は、所定の期間ノード装置3を介してデータを受け取らなかった場合にノード装置3とノード装置7との間のいずれかのリンクもしくはノード装置に障害が発生したと判定してもよい。又は、ノード装置2は、ノード装置3を経由して送信したデータについて、ノード装置3から送信エラー信号を受け取った場合に、ノード装置3とノード装置7との間のいずれかのリンクもしくはノード装置に障害が発生したと判定してもよい。ノード装置2は、OSPF等のルーティングプロトコルにおける障害検出機能を用いて、障害発生を検出してもよい。
【0036】
次に、ノード装置2の伝送路候補抽出部11は、伝送路候補を抽出する(S12)。例えば、伝送路候補抽出部11は、ノード装置4を経由してノード装置6と通信を行う伝送路候補1及び、ノード装置5を経由してノード装置6と通信を行う伝送路候補2を抽出する。伝送路候補抽出部11は、伝送路候補を抽出する際に、あらかじめ代替経路として設定されていたルートを抽出してもよく、OSPF、GMPLS等の動的なルーティングプロトコルを用いて伝送路候補を抽出してもよい。
【0037】
次に、伝送路特性計測部12は、ノード装置4との間の分散値及びノード装置5との間の分散値を計測する(S13)。実施の形態2においては、伝送路特性として分散値を計測する例について説明するが、伝送路特性として利得率を計測してもよい。伝送路特性計測部12において計測された分散値は、ネットワーク管理装置20へ送信され、ネットワーク管理装置20において分散補償値が算出される。
【0038】
次に、伝送路特性値適用部13は、ネットワーク管理装置20から分散補償値を受け取る(S14)。具体的には、伝送路特性値適用部13は、ノード装置4との間の経路に適用する分散補償値と、ノード装置5との間の経路に適用する分散補償値とを受け取る。
【0039】
次に、伝送路特性値適用部13は、受け取った分散補償値を予め定められた閾値と比較する(S15)。分散補償値が、予め定められた閾値よりも低い場合、伝送路特性値適用部13は、分散補償値を用いて、該当する伝送路の分散値を調整する(S16)。例えば、4つの伝送路候補が抽出された場合に、その内の2つの伝送路における分散補償値が閾値よりも低い場合、その2つの伝送路における分散値を調整する。閾値よりも低い分散補償値がない場合、伝送路特性値適用部13は、抽出された伝送路候補全ての分散値を調整する(S17)。このようにすることにより、伝送路の分散値が小さく、品質の良い伝送路を選択することができる。さらに、分散値が相対的に大きく、補償しきれないような伝送路候補を、代替経路から排除することもできる。
【0040】
次に、伝送路特性計測部12は、分散値が補償された伝送路候補における分散値を計測する(S18)。例えば、伝送路特性計測部12は、ノード装置4との間の伝送路における分散値と、ノード装置5との間の伝送路における分散値とを計測する。伝送路特性計測部12は、計測した結果をネットワーク管理装置20へ送信する。ステップS15において、分散値を調整する伝送路候補が絞られている場合、つまり、ステップS15においてYESと判定された場合、伝送路特性計測部12は、全ての伝送路候補における伝送路特性値を計測する必要がないため、伝送路特性値の計測にかかる時間を短縮することができる。
【0041】
次に、伝送路適用部15は、伝送路特性計測部12における計測結果に基づいて、選択された伝送路に関する情報をネットワーク管理装置20から受け取り、伝送路候補の中から、代替となる伝送路を選択し適用する(S19)。
【0042】
続いて、図5を用いて本発明の実施の形態2にかかるネットワーク管理装置20における伝送路決定処理の流れについて説明する。はじめに、伝送路特性収集部21は、それぞれのノード装置から、ノード装置間における分散値を受け取る(S21)。次に、伝送路特性補正部22は、ノード装置1からノード装置7までのそれぞれの経路における分散を抑制させるように、各ノード装置に通知する分散補償値を算出する(S22)。伝送路特性補正部22において算出された分散補償値は、各ノードへ送信される。
【0043】
続いて、品質測定部24は、分散値が調整されたそれぞれの伝送路における分散値を、各ノード装置から受け取る(S23)。次に、伝送路決定部25は、受け取った分散値に基づいて、障害箇所の代替経路となる伝送路を決定し、各ノード装置へ通知する(S24)。
【0044】
以上説明したように、本発明の実施の形態2にかかる伝送路決定システムを用いることにより、光信号の伝送路網の一部に障害が発生した場合においても、伝送路の品質が良好な経路を動的に選択することができる。つまり、分散値が調整された後の伝送路における分散値を計測し、その計測結果に基づいて伝送路を決定することにより、伝送路の品質を考慮して伝送路を決定することができる。
【0045】
(実施の形態3)
続いて、図6を用いて本発明の実施の形態3にかかるネットワーク管理装置20の伝送路決定処理の流れについて説明する。実施の形態3においては、伝送路特性として分散値及び利得率を用いた伝送路を決定する。
【0046】
はじめに、伝送路特性収集部21は、それぞれのノード装置から、伝送路特性値として分散値及び利得率を受け取る(S31)。次に、伝送路特性補正部22は、ノード装置1からノード装置7までのそれぞれの経路における分散を抑制させるように各ノード装置に通知する分散補償値を算出し、さらに、ノード装置1からノード装置7までの伝送において光信号の減衰を抑制させるように各ノード装置に通知する利得率の補償値を算出する(S32)。伝送路特性補正部22において算出された分散補償値及び利得率の補償値は、各ノード装置へ送信される。
【0047】
次に、品質測定部24は、分散値が調整されたそれぞれの伝送路における分散値を、各ノード装置から受け取る(S33)。次に、伝送路決定部25は、分散値と利得率とのどちらの優先度が高いかを確認する(S34)。分散値と利得率との優先度は、例えば、ネットワーク管理装置20内メモリ等に予め格納されていてもよい。分散値の優先度が高い場合には、伝送路決定部25は、複数の伝送路候補の中から、分散値に基づいて伝送路を決定する(S35)。利得率の優先度が高い場合には、伝送路決定部25は、複数の伝送路候補の中から、利得率に基づいて伝送路を決定する(S36)。
【0048】
以上説明したように、本発明の実施の形態3にかかる伝送路決定システムを用いることにより、複数の伝送路候補の中から、複数の伝送路特性値に基づいて、伝送路を決定することができる。つまり、伝送路を決定するために用いる伝送路特性に優先度を設定することにより、ネットワークの運用ポリシー等に基づいて伝送路を決定することができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、伝送路特性値の調整は、上述したように伝送路上の各区間のノード装置において行われてもよく、もしくは、送信端点及び受信端点のノード装置において行われてもよい。送信端点及び受信端点のノード装置において伝送路特性値の調整を行うことにより、全てのノード装置において伝送路特性値の調整処理を行う必要がなくなるため、伝送路決定システム全体の処理量を低下させることができ、更には、伝送路決定システムのコストを低下させることができる。
【0050】
また、上記の説明においては、伝送路の障害発生時の処理について説明したが、計画的に伝送路の変更を行う支障移転においても同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1〜7 ノード装置
11 伝送路候補抽出部
12 伝送路特性計測部
13 伝送路特性値適用部
14 通信部
15 伝送路適用部
20 ネットワーク管理装置
21 伝送路特性収集部
22 伝送路特性補正部
23 通信部
24 品質測定部
25 伝送路決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードを用いて形成される光信号の伝送路を決定する伝送路決定システムであって、
前記光信号の送信端点のノードと受信端点のノードとの間の複数の伝送路候補を抽出する伝送路候補抽出手段と、
前記伝送路候補における伝送路特性値を計測する伝送路特性計測手段と、
前記抽出された複数の伝送路候補それぞれにおける前記伝送路特性補正値を算出し、前記算出された伝送路特性補正値を前記抽出された複数の伝送路候補を形成するノードに適用する伝送路特性補正手段と、
前記伝送特性補正値を適用されたそれぞれの伝送路の伝送路特性値を測定する品質測定手段と、
前記それぞれの前記伝送特性補正値を適用された伝送路候補における前記伝送路特性値の測定結果に応じて、前記送信端点と受信端点との間の前記光信号の伝送路を決定する伝送路決定手段と、を備える伝送路決定システム。
【請求項2】
前記伝送路特性値は、分散値及び利得率の少なくとも一方を含む、請求項1記載の伝送路決定システム。
【請求項3】
前記伝送路決定手段は、
前記伝送路を決定するために用いられる前記分散値及び前記利得率に優先度を設定し、高い優先度が設定されている前記分散値又は前記利得率の測定結果に応じて、前記送信端点と受信端点との間の前記光信号の伝送路を決定する、請求項2記載の伝送路決定システム。
【請求項4】
前記品質測定手段は、
前記複数の伝送路候補のうち、前記伝送路特性補正値が所定の値を下回る伝送路候補に対して、前記伝送特性補正値を適用された後の伝送路特性値を測定する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の伝送路決定システム。
【請求項5】
前記伝送路候補抽出手段は、
前記光信号の伝送路に障害が発生した際に、前記伝送路の代替え経路となる前記複数の伝送路候補を抽出する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の伝送路決定システム。
【請求項6】
前記伝送路特性補正手段は、
前記送信端点のノードと、前記受信端点のノードとに前記伝送路特性値を適用する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の伝送路決定システム。
【請求項7】
前記伝送路決定システムは、前記複数のノードを管理するネットワーク管理装置を備え、
前記ネットワーク管理装置は、
前記伝送路特性補正手段と、前記伝送路決定手段とを有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の伝送路決定システム。
【請求項8】
複数のノードを用いて形成される光信号の伝送路を決定する伝送路決定システムにおいて用いられるネットワーク管理装置であって、
前記光信号の送信端点のノードと受信端点のノードとの間の複数の伝送路候補における伝送路特性値を収集する伝送路特性収集手段と、
前記収集された前記伝送路特性値に基づいて、前記複数の伝送路候補それぞれにおける伝送路特性補正値を算出し、前記算出した伝送路特性補正値を前記伝送路候補を形成するノードに適用する伝送路特性補正手段と、
前記伝送路特性補正値を適用されたそれぞれの伝送路において計測された伝送路特性値に応じて、前記送信端点のノードと前記受信端点のノードとの間の前記光信号の伝送路を決定する伝送路決定手段と、を備えるネットワーク管理装置。
【請求項9】
複数のノードを用いて形成される光信号の伝送路を決定する伝送路決定システムにおいて用いられるネットワーク管理装置の伝送路決定方法であって、
前記光信号の送信端点のノードと受信端点のノードとの間の複数の伝送路候補における伝送路特性値を収集し、
前記収集された前記伝送路特性値に基づいて、前記複数の伝送路候補それぞれにおける伝送路特性補正値を算出し、
前記算出した伝送路特性補正値を前記伝送路候補を形成するノードに通知し、
前記伝送路特性補正値を適用されたそれぞれの伝送路において計測された伝送路特性値に応じて、前記送信端点のノードと前記受信端点のノードとの間の前記光信号の伝送路を決定する伝送路決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222789(P2012−222789A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90180(P2011−90180)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】