説明

伝達可能なDNA−結合タンパク質

【課題】伝達可能なDNA−結合タンパク質の提供。
【解決手段】a)複数のジンクフィンガードメイン;およびb)細胞膜を通じてタンパク質を移動させるのに効果的な異種のタンパク質伝達ドメイン(protein transduction domain; PTD)を含むキメラタンパク質が開示された。このキメラタンパク質は、培養された真核細胞内に効果的に伝達されて特定の標的遺伝子を調節できる。したがって、PTDを含む人工転写因子は内因性遺伝子を調節するタンパク質薬物および試験管内および生体内での細胞の挙動を変更させるタンパク質薬物を生産するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA結合タンパク質に関する。
関連する出願の相互参照
本出願は、2003年6月10日に出願された米国出願第60/477,459号を優先権として主張しており、その内容の全体は引用された本明細書の範囲に含まれる。
【背景技術】
【0002】
DNAに結合する多くの転写因子はDNA−結合ドメインおよびエフェクター(effector)ドメインを含むモジュール(module)構造を有する。多くのタイプのDNA−結合ドメインが存在する。ジンクフィンガードメイン(zinc finger domain)は真核転写因子のうち最も数多いタイプのDNA−結合ドメイン中の一つである。ジンクフィンガードメインがモジュール性を有するため、このようなドメインは有用な特性を有する人工DNA−結合タンパク質を製造するのに理想的である。
【発明の開示】
【0003】
本明細書は、タンパク質伝達ドメイン(protein transduction domain; PTD)を含む外因性ジンクフィンガータンパク質が培養された哺乳動物細胞内に効果的に伝達されて特定の標的遺伝子を調節できるという証拠を含む。したがって、PTDを含む人工転写因子は内因性遺伝子を調節するタンパク質薬物、および試験管内および生体内で細胞の挙動を変更させるタンパク質薬物を生産するために使用され得る。タンパク質薬物の一つの利点は限定された持続性を有するということである。これらの濃度および結果的にその効果は精巧に調節され、制限され得る。
【0004】
ジンクフィンガードメインは亜鉛イオンと配位結合しているので、本明細書以前にはジンクフィンガードメインが生物学的膜を介して移動(translocation)できるか、そしてこれらの機能を保持できるかどうかは明らかでなかった。即ち、移動中にドメインの構造が崩れると亜鉛イオンが放出されて消失され得、反対に、フォールディングされた状態はドメインの移動を妨げ得ると考えられた。また、細胞外環境の酸化条件にジンクフィンガードメインが晒される場合はシステイン残基の間に有害な二硫化結合(disulfide bond)が形成してDNA結合活性を失う可能性もある。本発明者らは、ジンクフィンガードメインが事実上生物学的膜を介して移動できることを発見した。また、移動後、前記ドメインが機能を維持し、細胞内で内因性遺伝子を調節できることを発見した。
【0005】
したがって、一つの態様において、本発明は、a)ジンクフィンガードメイン;およびb)異種のタンパク質伝達ドメインを含むタンパク質(例、キメラおよび/または分離されたタンパク質)に関する。このタンパク質は、複数のジンクフィンガードメイン、たとえば、二つ、三つ、四つ、五つまたは六つのジンクフィンガードメイン、または二つ、三つ、四つ、五つまたは六つ以上のジンクフィンガードメインを含む。一つの実施形態において、このタンパク質はジンクフィンガードメインの整列(array)を含む。
【0006】
該タンパク質はまた一つ以上の以下の特徴を含み得る:核位置シグナル、二量化ドメイン、細胞標的化ドメイン、細胞表面タンパク質結合ドメイン、精製道具およびエフェクタードメイン。このタンパク質はまた一つ以上の非−ペプチド中心(backbone)結合または人工アミノ酸を含み得る。前記細胞標的化ドメインは免疫グロブリン可変ドメイン、成長因子、ウイルスタンパク質の細胞結合ドメイン、または細胞外タンパク質の細胞結合ドメインを含み得る。前記精製道具はシステインがなく、金属と配位結合できるアミノ酸配列、たとえば、ペンタ−またはヘキサ−ヒスチジンを含み得る。
【0007】
一つの実施形態において、ジンクフィンガードメインは天然型、たとえば、ヒトのものである。他の実施形態において、それは天然型ではない。たとえば、多くの非−DNA結合残基をヒトジンクフィンガードメインにある相応する残基と同じく変更することによってジンクフィンガードメインをヒト化できる。一つの実施形態では、タンパク質伝達ドメインとジンクフィンガードメインが一つのポリペプチド鎖に構成要素として含まれる。該タンパク質伝達ドメインおよびジンクフィンガータンパク質は10、20、または50アミノ酸以上分離されていてもよい。たとえば、それらは柔軟性リンカー、部位特異的プロテアーゼ(例、部位特異的細胞内プロテアーゼ)に対するプロテアーゼ切断部位、または機能性ドメインのうち一つ以上によって分離され得る。
【0008】
他の実施形態において、それらは別々のポリペプチド鎖の構成要素になる。たとえば、鎖は還元可能な結合(例、二硫化結合)または細胞に入るときに切断される他の結合によって連結されていてもよい。
【0009】
一つの実施形態において、前記タンパク質伝達ドメインはウイルス配列、たとえば、自然にヒトに感染するウイルス、たとえば、HIVウイルスからの配列を含む。例示的なタンパク質伝達ドメインはHIV TATタンパク質伝達ドメイン、たとえば、アミノ酸配列:YGRKKRRQRRR(配列番号:1)である。ウイルス配列は5−50、または8−20アミノ酸を含み得る。他の実施形態において、前記タンパク質伝達ドメインは哺乳動物配列、たとえば、ヒトタンパク質からの配列を含む。他の実施形態において、前記タンパク質伝達ドメインは人工配列、たとえば、ディスプレイライブラリーから伝達ドメインとして同定された配列を含む。一つの実施形態において、前記タンパク質伝達ドメインは細胞−特異的伝達ドメインである。用語「異種の」はタンパク質伝達ドメインとジンクフィンガードメインが同じタンパク質から由来しなかったことを示す。たとえば、ジンクフィンガードメインは人工である反面、タンパク質伝達ドメインは、たとえば、ウイルスタンパク質から由来してもよい。
【0010】
一つの実施形態において、前記タンパク質は該タンパク質が細胞の外部と接触した後細胞内の一つ以上の内因性遺伝子の転写を調節できる。このタンパク質は、たとえば、細胞表面でまたは小嚢(vesicle)形成後に、細胞の原形質膜を通過して内部に入ることができる。たとえば、前記タンパク質は細胞の外部と接触した後、細胞内で一つ以上の内因性遺伝子を調節できるが、調節できる細胞内遺伝子は全体の1%、0.01%、または0.001%である。前記タンパク質によって調節される遺伝子の数は、たとえば、核酸マイクロアレイを用いて決定され得る。多くの特別な場合に、前記タンパク質は、該タンパク質伝達ドメインを欠いていることを除いては同じタンパク質が調節する遺伝子を調節する。
【0011】
通常、前記タンパク質は他の要素、たとえば、細胞透過試薬(例、洗剤)のような人工因子の不在下で外部環境から哺乳動物細胞内に移動できる。
【0012】
一つの実施形態において、前記タンパク質はタンパク質の他のドメインの機能が外因性化合物の存在または不在によって変化するように前記機能を調節する条件付きドメインを含む。この条件付きドメインは、たとえば、ステロイド、FK506などの小分子(small molecule)に結合する。ここで「小分子」は、4kDa以下の分子量を有する分子である。また、前記条件付きドメインはFK506結合ドメインを含み得る。
【0013】
一つの実施形態において、前記タンパク質は、細胞外培地での濃度が100μg/ml、または100μg/ml、50μg/ml、5μg/ml、または0.50μg/ml以下の条件で培養されたヒト胚芽腎臓(HEK)293細胞が3×10細胞/mlの50、75、80、90、または95%以上に伝達され得る。
【0014】
前記と関連する実施形態において、本発明は、a)細胞内で天然型標的部位に75、50、25、20、10、5、2.5、1、0.5、または0.05nM以下の親和度(K)で結合する人工DNA結合ドメイン;およびb)分離されたタンパク質を細胞の外部膜を通過して細胞内に入らせることができる異種のタンパク質伝達ドメイン;およびc)核位置シグナルを含む分離されたタンパク質を提供する。
【0015】
本発明はまた本願に記述された移動可能なタンパク質と薬剤学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。該組成物は、組成物の酸化還元電位を安定化させる薬剤、たとえば、タンパク質のジンクフィンガードメインのシステイン残基との間の二硫化結合形成を除去するのに効果的な量の還元剤、たとえば、ジチオトレイトール(DTT)またはβ−メルカプトエタノールをさらに含み得る。たとえば、前記組成物は亜鉛、たとえば、塩化亜鉛または酢酸亜鉛のような亜鉛塩をさらに含む。亜鉛塩の有用な濃度は1μM〜5mM、1μM〜500μM、1μM〜200μM、0.05μM〜50μM、および0.5μM〜30μMを含む。他の実施形態において、組成物は亜鉛の濃度が0.5mM以下など実質的に亜鉛塩を含んでいない。
【0016】
前記伝達可能なタンパク質は大腸菌または他の原核細胞において、たとえば、封入体(inclusion bodies)としてまたは分泌タンパク質として発現され得る。他の例において、伝達可能なタンパク質は真核細胞、たとえば、哺乳動物細胞、植物細胞、または酵母細胞で発現される。伝達可能なタンパク質は、たとえば、一つまたは二つ以上の精製段階、たとえば、二つ以上のクロマトグラフィー段階、たとえば、親和性クロマトグラフィー段階およびイオン交換クロマトグラフィー段階を用いて精製され得る。得られたタンパク質は十分純粋であり、ヒト組織培養細胞(例、HEK293細胞)において0.5、1、2、3、6、12、24、48または60時間以上安定である。このタンパク質はテスト期間以降に検出できるならば実質的な分解が起こらないなど安定であるといえる。約10μgのこのタンパク質を一つのレインにローディングされたときクーマシー(Coomassie)ゲル上で検出可能なバンドが唯一である場合、該タンパク質は少なくとも十分純粋であるといえる。
【0017】
本発明はまた前記医薬組成物を、たとえば、対象の細胞内で遺伝子発現を変更させるのに効果的な量で、または対象で表現型変化を引き起すのに効果的な量で対象に投与することを含む方法に関する。前記方法は前記組成物を複数の投与量で、たとえば、二つ、三つ、六つ、十または二十個の投与量で別途の時間にまたは同時に(たとえば、医薬器具または静脈内伝達システムを用いて)投与することを含む。前記組成物が複数の投与量で投与される場合に、この投与量は、たとえば、12、24、48、60、72または96時間以上、たとえば、24〜96時間、または120時間以上隔てて投与され得る。たとえば、前記方法は対象において、たとえば、新生物疾患を有するか、有すると疑われる対象において、血管形成を減少させるために使用され得る。前記タンパク質はVEGF−A遺伝子内の部位に特異的に結合でき、たとえば、VEGF−A遺伝子を抑制できる抑制ドメインをさらに含み得る。前記方法はまた、たとえば、前記タンパク質伝達ドメインと物理的に結合した本願に記述されたジンクフィンガータンパク質を用いて、米国出願第10/314,609号および第10/669,861号に記述された任意の疾患を治療するために使用され得る。このようなタンパク質は、たとえば、前述のように間をおいて複数の投与量を用いて投与され得る。
【0018】
他の態様において、本発明は内因性遺伝子を調節する方法に関する。この方法は、細胞をa)DNA−結合ドメイン(たとえば、一つ以上のジンクフィンガードメイン);およびb)異種タンパク質伝達ドメインを含むポリペプチドと接触させることを含む。この方法は前記ポリペプチドを前記接触から12、24、48、60、72、または96時間以降に検出することをさらに含み得る。前記細胞は試験管内または生体内に存在し得る。
【0019】
本発明はまた本願に記述されたポリペプチドをコーディングするコーディング配列を含む核酸に関する。このコーディング配列は、たとえば、a)ジンクフィンガードメイン;およびb)該ジンクフィンガードメインに対して異種であるタンパク質伝達ドメインを含むポリペプチドをコーディングする。前記ポリペプチドはまたN−末端にコーディングされたポリペプチドの分泌を誘導できるシグナル配列を含み得る。このシグナル配列はシグナル配列を除去するためのシグナルペプチダーゼなどのプロセシング部位を含み得る。他の例において、前記核酸は一つ以上のコーディング配列を含み得、たとえば、DNA結合整列を含む第1ポリペプチド鎖をコーディングする第1コーディング配列およびタンパク質伝達ドメインを含む第2ポリペプチド鎖をコーディングする第2コーディング配列を含む。本発明はまた上述したポリペプチドをコーディングするコーディング配列を有する核酸を含む宿主細胞に関する。たとえば、前記コーディング配列はa)ジンクフィンガードメイン;およびb)該ジンクフィンガードメインに対して異種であるタンパク質伝達ドメインを含むポリペプチドをコーディングする。このポリペプチドはまたシグナル配列を含み得、前記宿主細胞は、たとえば、シグナルペプチドの切断後にポリペプチドを分泌することによってキメラDNA結合タンパク質を分泌できる。前記宿主細胞は、たとえば、医薬組成物に含ませるためのポリペプチドを生産するのに有用である。前記宿主細胞はまたそれ自体が治療剤として使用され得る。たとえば、前記宿主細胞(例、適した繊維芽細胞または造血細胞)を対象内に導入することによって対象にキメラDNA結合タンパク質を提供できる。
【0020】
また、シグナル配列、複数のジンクフィンガードメイン、およびタンパク質伝達ドメインを含むポリペプチドをコーディングする核酸を細胞、たとえば、対象内の細胞に伝達することもできる。前記核酸は組織特異的プロモーター、たとえば、上皮細胞特異的、B−またはT−細胞特異的プロモーターなどに作動可能に連結され得る。核酸を伝達する方法は公知である。たとえば、文献[Hollingsworth(1999) Lancet 1999 Apr;353 Suppl 1:SI19-20; Kremer (1995) British Medical Bulletin 51(1):31-44およびAnderson (1992) Science 256:808-813]を参照されたい。
【0021】
他の態様において、本発明は遺伝子の発現を調節する方法に関する。この方法は、(1)a)遺伝子に係わる標的部位を特異的に認識するDNA結合ドメイン;およびb)該DNA結合ドメインに対して異種であるタンパク質伝達ドメインを含むタンパク質を提供する段階;および(2)該タンパク質を、それが細胞内に入って遺伝子の発現を調節できるようにする条件下で細胞と接触させる段階を含む。一つの実施形態において、DNA結合ドメインは一つまたは複数のジンクフィンガードメインを含み得る。タンパク質はエフェクタードメインを含み得る。タンパク質は本明細書に記述された他の特徴を含み得る。一つの実施形態において、使用されるタンパク質の量は100μg/ml、50μg/ml、0.50μg/ml、または5ng/ml以下であり得る。
【0022】
一つの実施形態において、接触後に、遺伝子の発現が0.5、1、2、2.5、5、10、20または100倍以上変更(たとえば、増加または減少)される。いくつかのタンパク質は複数の遺伝子の発現を変更させ得る。ある場合には、これらの遺伝子の一部または全部がまた標的部位と関連していることもある。標的部位は遺伝子の転写開始部位の10、5、3、または1kbまたは500、300、または200bp内に、たとえば、開始部位の上流(upstream)または下流(downstream)にあり得る。一つの実施形態において、標的部位は遺伝子の調節部位、たとえば、内因性因子の結合部位と1bp以上重なり合う。標的部位はまたイントロンまたはコーディング領域に存在し得る。特定の実施形態においては、前記タンパク質が結合する特定の標的部位を知っている必要がない。たとえば、前記タンパク質が遺伝子の発現を調節できることを示すために他の特異性および機能性テストを使用し得る。
【0023】
一つの実施形態において、前記方法は細胞を評価することをさらに含む。たとえば、遺伝子の発現によって細胞を評価し得る。他の例において、細胞は表現型、たとえば、遺伝子の発現または抑制に依存する表現型によって評価される。
【0024】
一つの実施形態において、前記方法は細胞を対象内に導入することをさらに含む。 たとえば、タンパク質がMHCタンパク質発現を減少させるならば、細胞はMHC適合性に対する配慮なしで対象内に一時的移植のために使用され得る。
【0025】
他の態様として、本発明は、細胞の表現型を調節する方法に関する。この方法は、(1)a)DNA結合ドメイン;およびb)該DNA結合ドメインに対して異種であるタンパク質伝達ドメインを含むタンパク質を提供する段階;および(2)該タンパク質を、それが細胞内に入って細胞の表現型状態を調節できるようにする条件下で細胞と接触させる段階を含む。一つの実施形態において、DNA結合ドメインは一つまたは複数のジンクフィンガードメインを含み得る。前記タンパク質はエフェクタードメインを含み得る。前記タンパク質は本明細書に記述された他の特徴を含み得る。一つの実施形態において、使用されるこのタンパク質の量は100μg/ml、50μg/ml、0.50μg/ml、または5ng/ml以下であり得る。一つの実施形態において、提供段階は表現型スクリーンを用いて該タンパク質を細胞の表現型を調節できるタンパク質として同定することを含み得る。
【0026】
一つの実施形態において、接触後に、細胞の定量可能な形質が0.5、1、2、2.5、5、10、20または100倍以上変更(たとえば、増加または減少)される。一つの実施形態において、前記方法は細胞を評価することをさらに含む。たとえば、細胞は一つ以上の遺伝子または一つ以上のタンパク質の発現によって評価され得る。他の例において、細胞は表現型、たとえば、遺伝子の発現または抑制に依存する表現型によって評価される。
【0027】
一つの実施形態において、前記方法は前記細胞を対象内に導入することをさらに含む。たとえば、前記タンパク質がMHCタンパク質発現を減少させるならば、前記細胞はMHC適合性に対する配慮なしで対象内に一時的移植のために使用され得る。他の例において、前記タンパク質がインシュリン発現を増加させるならば、前記タンパク質が対象内のインシュリン濃度を増加させるように細胞を変形させるか、前記タンパク質によって変形された細胞を対象に投与してインシュリン濃度を増加させ得る。
【0028】
他の態様において、本発明は新生物疾患を有するか有するおそれのある対象を治療する方法に関する。この方法は癌促進遺伝子、たとえば、発癌遺伝子またはVEGF−Aを調節(例、抑制)できる伝達可能なタンパク質を含む組成物を対象に投与することを含む。たとえば、この伝達可能なタンパク質はジンクフィンガードメインの整列のようなDNA結合ドメイン、タンパク質伝達ドメイン、および任意にエフェクタードメインを含む。前記タンパク質は新生物疾患のおそれを減少させるために、腫瘍の成長を減少させるために、血管生成を減少させるために、または新生物疾患の症状を一つ以上緩和させるために効果的な量で投与され得る。前記減少は検出可能であるか統計的に有意義な減少である。たとえば、前記対象は、ヒト、たとえば、成人または青少年である。対象は癌腫または肉腫を有し得る。
【0029】
他の態様として、本発明は対象の細胞内で遺伝子発現を変更させる方法に関する。この方法は、DNA結合ドメインおよび異種のタンパク質伝達ドメインを含み、該対象の細胞内で内因性遺伝子の転写を調節できるキメラDNA結合タンパク質を提供する段階、および第1投与量の前記DNA結合タンパク質を対象に投与する段階を含む。この方法は第2投与量の前記DNA結合タンパク質を対象に投与する段階をさらに含み得る。たとえば、第1および第2投与量は約6、12、18、24、48、96または120時間以上間をおいて投与され得る。一つの実施形態において、第1投与量は第2投与量よりも10、25、40、50、または80%以上少ない。他の実施形態において、第1投与量は第2投与量と同じである。また他の実施形態において、第1投与量と第2投与量は同じである。
【0030】
一つの実施形態において、対象は新生物疾患を有するか有すると疑われ、前記DNA結合タンパク質はそれがその対象の細胞内で血管生成を調節する遺伝子(例、VEGF−A)の転写を調節するようにエフェクタードメインをさらに含む。
【0031】
他の態様において、本発明は、DNA結合ドメインおよびタンパク質伝達ドメインを含むDNA結合タンパク質の投与量を細胞と接触させることを含む。前記タンパク質は細胞において内因性遺伝子の転写を調節でき、投与量は内因性遺伝子の転写を6、12、18、24、48、96、または120時間以上調節するのに効果的である。この方法は接触から6、12、18、24、48、96、または120時間以上後に、前記細胞を第2投与量のDNA結合タンパク質と接触させることをさらに含み得る。
【0032】
他の態様において、本発明は外因性ポリペプチドを含み、前記外因性ポリペプチドをコーディングする核酸は含んでいない哺乳動物細胞に関するものであって、ここで前記外因性ポリペプチドがDNA結合ドメインおよび前記DNA結合ドメインに対して異種であるタンパク質伝達ドメインを含む。この外因性ポリペプチドは細胞内に導入された後、6、12、24、36、48、または96時間以上(たとえば、12〜96時間または48〜96時間)細胞内で内因性遺伝子の選択されたサブセット(subset)の転写を調節する機能がある。一つの実施形態において、DNA結合ドメインはジンクフィンガードメイン、たとえば、複数のジンクフィンガードメインを含む。たとえば、ジンクフィンガードメインは天然型ジンクフィンガードメイン、たとえば、ヒトジンクフィンガードメインである。哺乳動物細胞はヒト細胞、たとえば、繊維芽細胞、造血細胞、神経細胞、内皮細胞、または表皮細胞であり得る。哺乳動物細胞は、この哺乳動物細胞が外因性ポリペプチドを含んでいない場合には存在しなかったり、あるいは変更されたはずの表現形質を特徴とする。たとえば、哺乳動物細胞の増殖状態は外因性ポリペプチドによって変化し得る。哺乳動物細胞は対象哺乳動物に(例、哺乳動物自身の細胞としてまたは外生的に導入された細胞として)存在し得る。たとえば、哺乳動物細胞はヒトに存在し得る。例示的な哺乳動物培養細胞はHEK293細胞である。他の例において、哺乳動物細胞は対象を治療するために用いられる主要細胞である。他の実施形態において、前記外因性ポリペプチドはMHCタンパク質の発現を抑制する。
【0033】
他の態様において、本発明は一つ以上の変形された細胞を含むヒトでない哺乳動物に関する。細胞はDNA結合ドメインおよび前記DNA結合ドメインに対して異種であるタンパク質伝達ドメインを含むポリペプチドの導入によって変形される。変形された細胞は前記ポリペプチドをコーディングする核酸を含まない。たとえば、前記哺乳動物は前記外因性ポリペプチドを含む医薬組成物で処理されるか、前記外因性ポリペプチドと接触した細胞で処理されていてもよい。前記外因性ポリペプチドは細胞内に導入された後、6、8、12、24、36、48、または96時間以上細胞内で機能を有し得る。このポリペプチドは本願に記述されたポリペプチドであり得る。
【0034】
他の態様において、本発明は特定のDNA部位に75、50、25、20、10、5、2.5、1、0.5、または0.05nM以下の親和度で結合するDNA結合ドメインを含むポリペプチドをコーディングする第1配列を含む核酸を提供する段階;およびタンパク質伝達ドメインを含む前記ポリペプチドをコーディングする第2配列を第1配列と解読フレームが合うように含み、前記DNA結合ドメインとタンパク質伝達ドメインを含む融合タンパク質をコーディングするように核酸を変形させる段階を含む方法に関する。この方法は伝達可能な転写因子を製造するために使用され得る。
【0035】
前記変形段階は、連結、試験管内または生体内組換え、およびPCR増幅のうち一つ以上を含み得る。たとえば、この変形段階は、第1配列の一つの領域またはその相補物および第1配列の一つの領域またはその相補物にアニーリング(annealing)するオリゴヌクレオチドを用いたPCR増幅を含む。
【0036】
前記方法は変形された核酸を細胞(例、原核または真核細胞)に導入し、変形された核酸が発現され、融合タンパク質が生産される条件の下で前記細胞を保持することをさらに含み得る。
【0037】
前記方法は、前記融合タンパク質を変形された核酸を含まない細胞と接触させることをさらに含み得る。前記方法は細胞の他の成分、たとえば、細胞膜から前記融合ポリペプチドを放出精製することをさらに含み得る。前記方法は細胞周囲の培地を分離し、任意に培地を加工して該ポリペプチドを培地でよりも濃縮された形で得ることをさらに含み得る。前記方法は、前記融合ポリペプチドを水以外の薬剤学的に許容される担体と配合することをさらに含み得る。該組成物は水をさらに含み得る。
【0038】
他の態様において、本発明は、1)a)ジンクフィンガードメイン;およびb)異種タンパク質伝達ドメインを含むポリペプチドをコーディングするコーディング配列、および2)前記コーディング配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む核酸を含む宿主細胞を提供する段階;前記核酸を前記ポリペプチドが合成される条件の下で宿主細胞内で発現させる段階;および前記宿主細胞または宿主細胞周囲の培地から前記ポリペプチドを分離する段階を含む、伝達可能なDNA結合ポリペプチドの製造方法に関する。
【0039】
他の態様において、本発明は複数の核酸を含む核酸のライブラリーであって、複数のうち各核酸がジンクフィンガードメインおよびタンパク質伝達ドメインを含むポリペプチドをコーディングするライブラリーに関する。複数の核酸は各核酸が互いに異なるジンクフィンガードメインを有するポリペプチドをコーディングするように各位置で多様に変化する。たとえば、複数は10、10、10、または10以上の異なる構成員を含む。一つの実施形態において、複数の構成員はジンクフィンガードメインに異なるDNA接触残基を含むポリペプチドをコーディングし得る。これらの複数の核酸によってコーディングされるポリペプチドは本願に記載された他の特徴を含み得る。
【0040】
他の態様において、本発明はポリペプチドのライブラリーであって、複数のポリペプチドを含み、複数の各ポリペプチドは(a)複数の他のポリペプチドと多様に異なるジンクフィンガードメイン、および(b)タンパク質伝達ドメインを含むことを特徴とするライブラリーに関する。たとえば、複数は10、10、10、または10以上の異なる構成員を含む。複数のポリペプチドは本願に記載された他の特徴を含み得る。一つの実施形態において、複数の構成員はジンクフィンガードメインに異なるDNA接触残基を有する。関連する態様において、前記ライブラリーは複数のポリペプチドを含み、複数の各ポリペプチドは(a)複数の他のポリペプチドと多様に異なるDNA結合ドメイン、および(b)タンパク質伝達ドメインを含む。
【0041】
本発明はまたジンクフィンガータンパク質の選別方法に関する。この方法はポリペプチド(例、本明細書に記載された伝達可能なポリペプチド)のライブラリーを提供する段階;前記ライブラリーからの複数のポリペプチドを、複数のポリペプチドの各々が個々の細胞内に入り、各細胞はその内部に入るポリペプチドをコーディングする核酸を含まないように一つ以上の細胞と接触させる段階;および一つ以上の細胞の特性を評価する段階を含み得る。
【0042】
一つの実施形態において、複数のうち各ポリペプチドを異なる細胞と接触させ、各々の異なる細胞の特性を評価する。たとえば、評価段階はマイクロアレイ、RT−PCR、ノーザン分析、またはウェスタン分析を含み得る。
【0043】
他の態様において、本発明は伝達可能なDNA結合タンパク質を評価する方法に関し、この方法は伝達可能なDNA結合タンパク質を提供する段階;前記伝達可能なDNA結合タンパク質を対象に投与する段階;および前記対象を調査する段階を含む。この対象は前記伝達可能なDNA結合タンパク質によって影響を受ける変数に対して調査される。たとえば、前記対象内の一つ以上の細胞、組織または部位を評価することによって対象を調査できる。一つの実施形態において、調査段階は前記対象を映像化することを含む。たとえば、前記伝達可能なDNA結合タンパク質が、たとえば、非−浸透性映像化によって検出可能な標識、たとえば、MRI検出可能な標識として標識される。
【0044】
他の態様において、本発明は、真核細胞内で遺伝子発現を変更(例、増加または減少)させる方法に関する。この方法は、前記真核細胞をジンクフィンガードメインおよびタンパク質伝達ドメインを含むキメラDNA結合タンパク質と接触させることを含む。前記タンパク質は前記細胞内で内因性遺伝子の転写を調節できる。この真核細胞は通常哺乳動物細胞、たとえば、ヒト、齧歯類、牛またはイヌ科細胞である。前記細胞は培養細胞であり得、たとえば、組織培養で保持される。ある場合には、前記細胞は対象、たとえば、ヒト対象から得られるか対象内にある。たとえば、接触は試験管内または生体内で行い得る。
【0045】
一つの実施形態において、キメラDNA結合タンパク質は複数のジンクフィンガードメインを含む。該タンパク質は複数のジンクフィンガードメイン、たとえば、二つ、三つ、四つ、五つ、または六つのジンクフィンガードメイン、または二つ、三つ、四つ、五つ、または六つ以上のジンクフィンガードメインを含む。一つの実施形態において、前記タンパク質はジンクフィンガードメインのアレイ(array)を含む。
【0046】
前記タンパク質はまた一つ以上の以下の特徴を含み得る:核位置シグナル、二量化ドメイン、細胞標的化ドメイン、細胞表面タンパク質結合ドメイン、精製道具およびエフェクタードメイン。また、前記タンパク質は、一つ以上の非−ペプチド中心(backbone)結合または人工アミノ酸を含み得る。前記細胞標的化ドメインは免疫グロブリン可変ドメイン、成長因子、ウイルスタンパク質の細胞結合ドメイン、または細胞外タンパク質の細胞結合ドメインを含み得る。
【0047】
一つの実施形態において、前記タンパク質伝達ドメインはウイルス配列、たとえば、自然にヒトに感染するウイルス、たとえば、HIVウイルスからの配列を含む。例示的なタンパク質伝達ドメインはHIV TATタンパク質伝達ドメイン、たとえば、アミノ酸配列:YGRKKRRQRRR(配列番号:1)である。前記ウイルス配列は5−50、または8−20アミノ酸長であり得る。他の実施形態において、前記タンパク質伝達ドメインは哺乳動物配列、たとえば、ヒトタンパク質からの配列を含む。他の実施形態において、前記タンパク質伝達ドメインは人工配列、たとえば、ディスプレイライブラリーから伝達ドメインとして同定された配列を含む。たとえば、前記タンパク質伝達ドメインは配列番号:69〜72のいずれか一つのアミノ酸配列を有する変異されたtatタンパク質伝達ドメイン、6〜12個のアルギニン残基からなるポリアルギニンオリゴペプチドを含み得る。
【0048】
前記内因性遺伝子は任意の内因性遺伝子、たとえば、ジュンB原癌遺伝子、タンパク質キナーゼC、レクチン、脳−特異的Na−依存性無機リン酸塩共輸送体、細胞レチノイン酸−結合タンパク質1、細胞レチノイン酸−結合タンパク質2、カドヘリン13、H−カドヘリン(心臓)、血管内皮細胞成長因子(VEGF−A)、色素上皮−由来因子(PEDF)、分化−関連遺伝子−1(Drg−1)、転写因子E2F、初期成長反応−1(EGR−1)、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)、A20、Fas、黒色腫分化関連遺伝子−7(MDA−7)、プレセニリン−1(PS−1)、アンジオテンシン転換酵素、アンジオポイエチン−2、b−セクリターゼ(BACE1)、mmp3、CHFR(checkpoint with forkhead associated and ring finger)、ペルオキシゾーム増殖因子−活性化されたレセプターガンマ(PPAR−gamma)、TNF−関連アポトーシス−誘導リガンド(TRAIL)、Ku−80、ATM(ataxia-telangiectasia mutated)、BRCA、CC−ケモカインレセプター5(CCR5)、脳−由来神経栄養因子(BDNF)、腫瘍壊死因子アルファ−誘導されたタンパク質−3(TNFAIP3)(A20)、c−myc、ハイポキシア−誘導性因子−1アルファ(HIF−1アルファ)、カスパーゼ−3、細胞間接着分子タイプI(ICAM−1)、アンジオテンシンIIレセプター1(AT−1R)、血小板−由来成長因子、インシュリン−類似成長因子−Iおよび−II、神経成長因子、aFGF、bFGF、表皮細胞成長因子(EGF)、TNF−αおよびTNF−β、エリトロポイエチン、トロンボポイエチン、ムシン、成長ホルモン、プロインシュリン、インシュリンA−鎖、インシュリンB−鎖、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、チロキシン、卵胞促進ホルモン、カルシトニン、因子VIII、造血成長因子、エンケファリナーゼ、MIS(Mullerian-inhibiting substance)、ゴナドトロピン−関連ペプチド、組織因子タンパク質、インヒビン、アクチビン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、M−CSF、GM−CSF、G−CSF、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12およびIL−13であり得る。
【0049】
一つの実施形態において、前記キメラDNA結合タンパク質は標的遺伝子に特異的に結合する。他の実施形態において、キメラDNA結合タンパク質は転写開始部位の1000、500、300、100、70、50、20または10塩基対内の部位、たとえば、上流または下流に特異的に結合する。他の実施形態において、キメラDNA結合タンパク質はTATAボックスの1000、500、300、100、70、50、20または10塩基対内の部位に特異的に結合する。また他の実施形態において、前記キメラDNA結合タンパク質は内因性遺伝子の調節領域で天然型転写因子が結合する部位の100、80、70、50、30、20、または10塩基対内の部位または前記結合部位と重なり合う部位に特異的に結合する。一つの実施形態において、前記キメラDNA結合タンパク質は内因性遺伝子の発現を、たとえば、25、50、80、100、150、200、または500%以上増加させる。他の実施形態において、前記キメラDNA結合タンパク質は内因性遺伝子の発現をたとえば、80、70、60、50、40、30、20、10、5または2%未満に減少させる。
【0050】
他の実施形態において、前記調査段階は対象内で伝達可能なDNA結合タンパク質の半減期を決定することを含む。他の実施形態において、前記調査段階は対象内で一つ以上の細胞に対して転写プロファイル(profile)を決定することを含む。他の実施形態において、前記調査段階は対象内で一つ以上の細胞に対してタンパク質発現または変形状態のプロファイルを決定することを含む。
【0051】
用語「解離定数(dissociation constant)」は、分析中のポリペプチドに対する一つの標的部位を含む28−bp二本鎖DNAに結合するポリペプチドの平衡(equilibrium)解離定数(K)をいう。たとえば、ポリペプチドが3−フィンガーDNA結合ドメインを有するならば、DNAはポリペプチドが特異的に認識する9−bpまたはそれよりも大きな標的部位を含むであろう。解離定数は20mM Tris pH7.7、120mM NaCl、5mM MgCl、20μM ZnSO、10% グリセロール、0.1%ノニデット(Nonidet)P−40、5mM DTT、および0.10mg/mL BSA(bovine serum albumin)、室温の条件で結合する精製されたタンパク質を用いたゲル移動分析(gel shift analysis)によって決定される。詳細は、下記実施例およびレバーとパボの論文(Rebar and Pabo(1994) Science 263: 671-673)に提供されている。28−bpよりも大きな部位に結合するポリペプチドはさらに大きい二本鎖DNAを用いて分析できる。例示的な解離定数は10−7、10−8、10−9、10−10、10−11または10−12M以下であり得る。
【0052】
用語「ハイブリッド」および「キメラ」は(i)二つ以上の異なる天然型配列、または同じ天然型配列の隣接していない領域であって、ハイブリッド内で隣接するようになったもの;(ii)一つ以上の人工配列(すなわち、天然型ではない配列)および一つ以上の天然型配列;または(iii)二つ以上の人工配列(同一または異なる)に由来するアミノ酸配列を含む非−天然型ポリペプチドをいう。
【0053】
配列を記述するとき、用語「天然型」は天然の有機体、すなわち、分子生物学的技術によって変形されていない有機体の細胞に存在する配列(例、核酸またはアミノ酸配列)をいう。たとえば、遺伝子導入マウスは天然の有機体ではないが、分子生物学的技術によって変形されていない高度に近親交配させたマウスは天然型としてみなされる。配列を記述するとき、用語「ウイルス性」は天然型ウイルス、すなわち、分子生物学的技術によって変形されていないウイルスの配列をいう。本発明の一つの実施形態はヒト(Homo sapiens)、ネズミ(Mus musculus)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、大腸菌(Escherichia coli)、酵母(Saccharomyces cerevisiae)、およびイネ(Oryza sativa)からのジンクフィンガードメインを含むタンパク質を含む。
【0054】
「人工配列」は人工的な手段によって製造された配列である。人工配列の例は部位特異的突然変異または無作為突然変異によって生成した天然型配列の変異体および新たに(de novo)考案された配列を含む。
【0055】
用語「融合」は融合される構成要素を含む単一ポリペプチド鎖をいう。例示的な融合タンパク質はDNA結合タンパク質およびタンパク質伝達ドメインである。融合された成分は直接連結されている必要はない。たとえば、他の配列(例、リンカーまたは機能性ドメイン)が融合した要素の間に位置し得る。
【0056】
用語「外因性ポリペプチド」または「外因性タンパク質」は人工的に細胞内に導入されたポリペプチドまたはタンパク質をいう。
【0057】
用語「分離された」とは、試料(例、天然試料または細胞、たとえば、組換え細胞)または分離された組成物が得られる合成反応物の一つ以上の成分の90%以上から分離された組成物をいう。人工的にまたは自然的に生産された本明細書に記述された組成物は関心種(species)の種または集団が重量基準で各々5、10、25、50、75、80、90、95、98、または99%以上純粋すれば特定純度「以上の組成物」であり得る。
【0058】
用語「伝達可能な」は、生物学的膜を通過して哺乳動物細胞に入ることができる化合物を形容する。用語「タンパク質伝達ドメイン」および「PTD」は生物学的膜、特に細胞膜を通過できるアミノ酸配列をいう。異種ポリペプチドに付着する場合、PTDは異種ポリペプチドの生物学的膜を介しての移動を向上させる。用語「PTD」は核外皮にある気孔を介しての化合物の輸送を容易にする核位置シグナルをいうものではない。核に入るタンパク質は実際的な膜二重層を通過しない。
【0059】
用語「ポリペプチド」はペプチド結合によって連結された三つ以上のアミノ酸の重合体をいう。ポリペプチドは一つ以上の非天然型アミノ酸を含み得る。通常、ポリペプチドは天然型アミノ酸のみを含む。用語「ペプチド」は3〜32個アミノ酸長であるポリペプチドをいう。「タンパク質」は一つ以上のポリペプチド鎖を含み得る。したがって、用語「タンパク質」はポリペプチドおよびペプチドを包括する。タンパク質またはポリペプチドは一つ以上の変形、たとえば、天然的変形または人工的変形をまた含み得る。用語「ドメイン」はポリペプチド内の機能性単位をいう。ドメインの3次構造は折り畳まれているか広げられていてもよい。
【0060】
用語「外因性」とは、外部から供給された因子をいう。「内因性」は、たとえば、ウイルス、および染色体遺伝子、たとえば、変形されていない細胞内に存在する天然型染色体遺伝子によって導入されたウイルス遺伝子を含む、細胞内の任意の遺伝子をいう。本明細書に記載された方法および組成物は天然型内因性遺伝子、特に変形されていない細胞内にあるものを調節するために使用され得る。また、内因性遺伝子を調節するための方法は外因性遺伝子、たとえば、レポーター遺伝子および加工された組換え核酸のように人工によって細胞内に導入された遺伝子を調節するためにまた拡張され得る。
【0061】
用語「ライブラリー」は異なる分子の集合を意味する。ライブラリーは様々な形で貯蔵され得る。たとえば、集合の各構成員は集合の他の構成員とともに、たとえば、集合のすべての他の構成員とともに容器(container)内に存在し得る。他の例において、集合の各構成員を集合の他の構成員から分離する。たとえば、ライブラリー構成員は整列するかウェルまたはバイアルに分離して貯蔵してもよい。ライブラリーは特定の性質を有する複数の構成員を含み得る。このようなライブラリーはまた他の構成員、たとえば、特定性質を有しない他の複数の構成員を含み得る。ライブラリーに関する情報、特にライブラリーの構成員に関する情報をコンピュータデータベースに貯蔵してもよい。
【0062】
本明細書に記述された全ての特許、特許出願、および参考文献はその全体が引用されて本明細書の範囲に含まれる。次の特許出願、すなわち、WO01/60970(Kimら);2002年8月19日に出願された米国出願第10/223,765号、2002年12月9日に出願された米国出願第10/314,669号、2002年12月9日に出願された米国出願第60/431,892号、および2003年3月7日に出願された米国出願第60/453,111号、米国出願第60/477,459号は全ての目的で全体として明白に引用される。一つ以上の本発明の実施形態の具体的な内容は添付図面および下記の記載に示されている。本明細書に記載された任意の特徴はまた本明細書に記載された他の混用可能な特徴とともに組合せて使用され得る。本発明の他の特徴、目的および利点はこの記載および図面から、そして請求範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明は、部分的に、生物学的膜を通過できる人工DNA結合タンパク質を提供する。一つの実施形態において、前記タンパク質は細胞外環境に伝達される治療剤として使用され得る。このタンパク質は細胞内に入って目的とする治療効果を発揮する。前記伝達可能なDNA結合タンパク質は通常タンパク質伝達ドメイン(PTD)を含む。
【0064】
本発明は、前記伝達可能なDNA結合タンパク質が細胞内に入って遺伝子発現を調節できるということを立証する実際的な結果を含む。したがって、前記伝達可能なDNA結合タンパク質はタンパク質性製剤、特に細胞に伝達され得るタンパク質性薬物として使用され得る。該タンパク質は任意の適用可能な経路または多重経路を通じて伝達され得る。したがって、PTD−ZFP融合タンパク質のような伝達可能なDNA結合タンパク質は疾患、疾病または他の異常を治療するために使用され得る。また、このようなタンパク質は試験管内および生体内研究道具として使用され得る。
【0065】
一つの実施形態において、前記伝達可能なDNA結合タンパク質は一つ以上のジンクフィンガードメイン、たとえば、天然型ジンクフィンガードメインを含む。たとえば、天然型ジンクフィンガードメインを含む人工ジンクフィンガータンパク質が哺乳動物細胞において内因性VEGFを調節するために考案され得る。
【0066】
一つの実施形態において、前記伝達可能なDNA結合タンパク質は選択された細胞、組織または器官を標的とする。
【0067】
タンパク質伝達ドメイン
「タンパク質伝達ドメイン」または「PTD」は生物学的膜、特に細胞膜を通過できるアミノ酸配列である。異種ポリペプチドに付着すると、PTDは生物学的膜を介しての異種ポリペプチドの移動を促進できる。PTDは典型的に異種DNA結合ドメインに(たとえば、ペプチド結合によって)共有結合している。たとえば、PTDと異種DNA結合ドメインは単一核酸によって、たとえば、共通のオープン・リーディング・フレーム(open reading frame)または共通遺伝子の一つ以上のエクソンによってコードされ得る。例示的なPTDは10−30個のアミノ酸を含み、両親媒性螺旋を形成できる。多くのPTDは塩基性特性を有する。たとえば、塩基性PTDは4、5、6、または8個以上の塩基性残基(アルギニンまたはリジン)を有する。PTDは細胞壁のない細胞または特定種の細胞、たとえば、真核細胞、たとえば、脊椎動物細胞、たとえば、ヒト、類人猿、ネズミ、ウシ、ウマ、ネコ、ヒツジ科細胞のような哺乳動物細胞内にポリペプチドの移動を促進できる。
【0068】
PTDは、たとえば、フレキシブルリンカー(flexible linker)を用いて人工転写因子と連結され得る。フレキシブルリンカーは自由回転を与えるために一つまたはそれ以上のグリシン(glycine)残基を含み得る。たとえば、PTDは転写因子のDNA結合ドメインから10、20、または50個アミノ酸以上間隔を置いてもよい。PTDはDNA結合ドメインを基準にN−またはC−末端に位置し得る。
【0069】
特定ドメインに対してN−またはC−末端に位置することはその特定ドメインに隣接することを要求することではない。たとえば、DNA結合ドメインに対してN−末端にあるPTDはスペーサーおよび/または他の形態のドメインによってDNA結合ドメインから分離され得る。
【0070】
PTDは化学的に合成されてリンカーペプチドの存在または不在の下で、別途に製造されたDNA結合ドメインに化学的に接合され得る。
【0071】
人工転写因子はまた複数のPTD(たとえば、複数の異なるPTDまたは少なくとも2つのコピーの同じPTD)を含み得る。
【0072】
例示的なPTDはアンテナペディア(antennapedia)タンパク質、ヘルペスシンプレックスウイルスVP22タンパク質とHIV TATタンパク質由来の下記の切片を含む。
【0073】
Tat.ヒト免疫欠乏ウイルスタイプI(HIV−I)に由来するTatタンパク質は外部から加えられるときに細胞内に入る驚くべき能力を有している(Frankel A.D. and Pabo C.O. (1988) Cell 55: 1189-1193、Mann D.A and Frankel A.D. (1991) EMBO J. 10: 1733-1739、Fawell et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 664-668)。最小Tat PTDはヒト免疫欠乏ウイルスTatタンパク質の47−57番残基を含む:
【0074】
YGRKKRRQRRR(配列番号:1)
【0075】
該ペプチド配列は本明細書において「TAT」として言及される。該ペプチドは試験管内および生体内で100kDa以上の異種ペプチドおよびタンパク質を哺乳動物細胞内に導入することを成功的に媒介すると明らかにされている(Ho et al. (2001) Cancer Res 61(2):474-7)。シュワルツ(Schwarze)らは、TATと融合された120kDa β−ガラトキシダーゼタンパク質をマウスの腹腔内に注入したと、融合タンパク質が甚だしくは血液−脳−障壁のため困難であるとされていた脳を含む全てのタイプの細胞および組織から発見されたことを報告している(Schwarze et al. (1999) Science 285(5433):1466-7)。
【0076】
アンテナペディア(Antennapedia).アンテナペディアホメオドメインもPTDペプチドを含む(Derossi et al. (1994) J. Bio. Chem. 269:10444-10450)。「ペネトラチン(penetratin)」とも呼ばれるこのペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:
【0077】
AKIWFQNRRMKWKKEN(配列番号:2)
【0078】
VP22.HSV VP22タンパク質もPTDを含む。該PTDはVP22 C−末端34アミノ酸残基に位置する:
【0079】
DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPRRPVE(配列番号:3)
【0080】
エリオットおよびオーヘア(Elliott and O’Hare, 1997, Cell 88:223-234)および米国特許第6,184,038号を参照されたい。
【0081】
ヒトPTD.一つの実施形態において、PTDはヒトまたは他の哺乳動物タンパク質から得られる。例示的な哺乳動物PTDはWO03/059940(ヒトSIM−2)およびWO03/059941(Mph)に記載されている。
【0082】
細胞−特異的PTD.いくつかのPTDは特定タイプの細胞或いは状態において特異性を有する。細胞−特異的PTDの一つの例示として、米国出願公開第2002−0102265号に記載されたHn1合成ペプチドがある。Hn1はヒト頭頸部扁平細胞癌(head and neck squamous carcinoma)細胞によって内部に取り入れられ、人工転写因子が頭頸部癌腫のような癌腫を標的とするのに使用され得る。Hn1合成ペプチドの配列は以下の配列または密接に関連する配列を含む:
【0083】
TSPLNIHNGQKL(配列番号:4)
【0084】
また、米国出願公開第2002−0102265号は、ファージディスプレイを用いて細胞−特異的PTDとして機能できる他のペプチドまたはタンパク質を同定する一般的な方法を開示している。ニューイングランドバイオレイプス社(New England BioLabs; Beverly、Mass.)からのM13ファージペプチドライブラリーPhD−12のような無作為ペプチドを展示するファージディスプレイライブラリーを培養培地で標的細胞、たとえば、癌細胞とともに培養する。内部に入ったファージをTX−100(1%)で37℃で30分間溶解することによって回収し、宿主大腸菌菌株で増幅させる。TX−100は核酸を溶解させないが、核膜を破壊できるイオン性洗剤はファージを不活性化させ得るので避ける。その後、分離されたファージを正常なヒト繊維芽細胞のような非−標的細胞に対して対応選別する。標的細胞にのみ入るファージを配列分析し、再試験する。他の例示的な方法については米国特許第6,451,527号を参照されたい。
【0085】
合成PTD.最小Tat PTD(aa47−57)はタンパク質伝達能力を最適化するように変形された(Ho et al. (2001) Cancer Res 61(2):474-7)。一連の合成PTDと結合したFITCが、培養されたTリンパ球を用いて試験された。いくつかの合成PTDはTat PTDに比べて向上したタンパク質伝達を示した。このようなPTDとしては以下の配列が含まれる:
【0086】
YARKARRQARR(配列番号:69)
YARAARRAARR(配列番号:70)
YARAARRAARA(配列番号:71)
YARAAARQARA(配列番号:72)
【0087】
特に、合成PTD(YARAAARQARA;配列番号:72)と結合したFITCが、腹腔内注射したマウスにおいて全血(whole blood cells)による増加した吸収を示した。
【0088】
6〜12個のアルギニン残基から構成されたポリ−アルギニンペプチドもまたいくつかの場合にタンパク質伝達を媒介できる。ポリ−アルギニンについての追加の情報については、たとえば、文献[Rothbard JB et al. Nat Med. 2000 6 (11):1253-7; Wender PA et al. Proc Natl Acad Sci U.S.A. 2000 97(24):13003-8]を参照されたい。
【0089】
PTDについての追加的情報のために米国出願公開第2003−0082561号、第2002−0102265号および第2003−0040038号、Schwarze et al. (1999) Science 285:1569-1572; Derossi et al. (1996) J. Biol. Chem. 271:18188; Hancock et al. (1991) EMBO J. 10:4033-4039; Buss et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8:3960-3963; Derossi et al. (1998) Trends in Cell Biology 8:84-87; Lindgren et al. (2000) Trends in Pharmacological Sciences 21:99-103; Kilic et al. (2003) Stroke 34:1304-10; Asoh et al. (2002) Proc Natl Acad Sci USA 99(26):17107-12; Tanaka et al. (2003) J Immunol. 170(3):1291-8もまた参照されたい。
【0090】
PTD以外にも、細胞吸収シグナルが使用され得る。このようなシグナルは細胞レセプターまたは他の表面タンパク質によって特異的に認識されるアミノ酸配列を含む。細胞吸収シグナルと細胞との相互作用は、細胞吸収シグナルを含む人工転写因子の内部導入を引き起す。いくつかのPTDはまた細胞レセプターまたは他の表面タンパク質と相互作用して機能し得る。
【0091】
タンパク質伝達分析.どのアミノ酸配列がPTDとして機能できるかを決定するために複数の分析法が用いられる。たとえば、アミノ酸配列をβ−ガラトキシダーゼのようなレポータータンパク質と融合させて融合タンパク質を形成できる。融合タンパク質を培養細胞と接触させる。細胞を洗浄した後レポーター活性に対して分析する。この分析法の特定の実施形態が実施例2(1)に記述されている。
【0092】
他の分析法は問題のアミノ酸配列または他の検出可能な配列、たとえば、エピトープタグ(tag)を含む融合タンパク質の存在を検出する。該融合タンパク質を培養細胞と接触させる。細胞を洗浄した後細胞において検出可能な配列の存在を検出するためにウェスタンブロットまたは免疫蛍光によって分析する。該分析法の特定の実施形態が実施例2(1)に記述されている。
【0093】
また他の分析法が推定PTD、問題のアミノ酸、DNA結合ドメイン、および任意にエフェクタードメインを含む融合タンパク質の転写調節活性を検出するために使用され得る。たとえば、前記融合タンパク質と接触した細胞を、たとえば、マイクロアレイ、質量分析法および高効率技術を用いて、mRNAまたはタンパク質の存在または水準に対して分析できる。
【0094】
人工転写因子の構成要素
人工転写因子は一つまたは複数のDNA結合ドメイン、たとえば、複数のジンクフィンガードメインを含むDNA結合領域を含み得る。転写因子はまた核位置シグナルおよびエフェクタードメイン、たとえば、転写調節ドメインを含み得る。
【0095】
DNA結合ドメイン.様々なタンパク質構造物が高い親和度および高い特異性で核酸に結合すると知られている。このような構造物は、核酸の機能を特異的に調節するために無数の異なるタンパク質において反復的に用いられる(二本鎖DNAを認識する構造的モチーフについての概説は、たとえば、文献[PaboとSauer (1992) Annu. Rev. Biochem. 61:1053-95; PatikoglouとBurley(1997) Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26:289-325; Nelson (1995) Curr Opin Genet Dev. 5:180-9]を参照されたい。DNA結合ドメインの例は、へリックス−ループ−へリックスドメイン、ヘリックス−ターン−ヘリックスドメイン、ホメオドメイン、およびジンクフィンガードメインを含む。有用なDNA結合ドメインを同定する方法を以下に論ずる。
【0096】
ジンクフィンガー.ジンクフィンガードメイン(ZFD)は約30個のアミノ酸残基からなる小さいポリペプチドドメインであって、そのうち、システインまたはヒスチジンである四つのアミノ酸残基が適切に配置されて亜鉛イオンと配位結合ができる(概説については、たとえば、文献[Klug and Rhodes (1987) Trends Biochem. Sci. 12: 464-469 (1987); Evans and Hollenberg、(1988) Cell 52: 1-3; Payre and Vincent (1988) FEBS Lett. 234: 245-250; Miller et al.、(1985) EMBO J. 4:1609-1614; Berg (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:99-102;およびRosenfeld and Margalit、(1993) J. Biomol. Struct. Dyn. 11: 557-570]を参照されたい。したがって、ジンクフィンガードメインは亜鉛イオンと配位結合する残基の種類によって、たとえば、Cys−His類、Cys−Cys類、Cys−CysHis類などに分類できる。Cys−Hisジンクフィンガーにおいて亜鉛と配位結合する残基は典型的に次のように配置されている:
【0097】
C−X2−5−C−X−X−X−ψ−X−H−X3−5−H(配列番号:5)
【0098】
ここで、Ψ(プサイ)は疎水性残基であり(Wolfe et al., (1999) Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 3:183-212)、「X」は任意のアミノ酸を示し、Xは任意のアミノ酸(たとえば、フェニルアラニンまたはチロシン)を示し、下付きはアミノ酸の個数を示し、ハイフンでつないだ2つの下付きは介入アミノ酸の典型的な範囲を示す。通常、介入するアミノ酸はフォールディングされてα−へリックスに対して充填される逆平行(anti-parallel)β−シートを形成するが、逆平行(anti-parallel)β−シートは短く、非理想的、または存在しない場合もある。フォールディングによって、亜鉛と配位結合する側鎖は亜鉛イオンと配位結合するのに適合な四面体構造を有するように配置される。このようなフォールディングは塩基接触残基がDNA二重螺旋にある塩基対を特異的に認識するのに適当な配列に置かれるようにする。
【0099】
便宜のために、ジンクフィンガードメインの主なDNA接触残基は次の例に基づいて−1、2、3および6として番号付けた。
【0100】
-1 1 2 3 4 5 6
C-X2-5-C-X3-Xa-X-R-X-D-E-Xb-X-R-H-X3-5-H(配列番号:6)、
【0101】
前記例に示したように、DNA接触残基はアルギニン(R)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、およびアルギニン(R)である。前記モチーフはRDERに略記し得る。本明細書に使用されたそのような略記は、一番目のシステインの2つ前の残基(配列番号:6の開始残基)から最後の金属−キレートヒスチジン(配列番号:6の最後の残基)までの特定のポリペプチド配列の圧縮型である。前記または他のモチーフにおいて、Xは通常芳香族であり、Xは通常疎水性である。2つの異なる配列が同じモチーフを有する場合、各配列を区別するために数字を使用し得る(例:RDER1またはRDER2)。
【0102】
文脈から明らかに分かる場合、4文字の圧縮型は一般的にモチーフを指す。言い換えれば、モチーフは−1、2、3および6番位置のアミノ酸を特定化する反面、他の位置は任意のアミノ酸であり得、典型的に、非−システインアミノ酸であるが、必ずしもそうとは限らない。モチーフ前の小文字「m」は前記略語がモチーフ(motif)を指すことを明白にするために使用され得る。たとえば、mRDERは−1位置にR、2位置にD、3位置にE、6位置にRが現れるモチーフを指す。
【0103】
ジンクフィンガーDNA結合タンパク質は二つ以上のジンクフィンガードメイン、通常三つ以上のジンクフィンガードメインを含む。たとえば、該タンパク質は四つ、五つ、六つ、八つ、十二またはそれ以上のジンクフィンガードメインを含む。一つの実施形態において、ジンクフィンガードメインは、たとえば、三つ以上のジンクフィンガードメインの直列式整列を含む。直列式整列は互いに10個アミノ酸内にあり、他のタイプの機能性ドメインによって分離されていないドメインを含む。
【0104】
ジンクフィンガードメインは酵母から高等植物およびヒトに至る様々な種から発見される。ヒトゲノムにのみ数千個以上、たぶん4,500個以上のジンクフィンガードメインが存在すると推測される。天然型ジンクフィンガードメインはジンクフィンガータンパク質から同定されるか、それから単離できる。ジンクフィンガータンパク質の非制限的な例としては、CF2−II;クルッペル(Kruppel);WT1;バソヌクリン(basonuclin);BCL−6/LAZ−3、赤血球クルッペル−類似転写因子;転写因子Sp1、Sp2、Sp3およびSp4;転写抑制剤YY1;EGR1/Krox24;EGR2/Krox20;EGR3/Pilot;EGR4/AT133;Evi−1;GLI1;GLI2;GLI3;HIV−EP1/ZNF40;HIV−EP2;KR1;ZfX;ZfY;およびZNF7などがある。
【0105】
活性化ドメイン.エフェクタードメイン中の一つのタイプは転写活性化ドメインである。転写活性化ドメインは遺伝子の調節領域に導入されたとき、遺伝子の転写量を増加させる。例示的な活性化ドメインは酵母のGal4活性化ドメインおよびヘルペスシンプレックスウイルスのVP16ドメインを含む。転写を活性化するドメインの効能は前記ドメインを周知のDNA結合ドメインと融合させ、前記周知のDNA結合ドメインが認識する部位に作動可能なように連結されたレポーター遺伝子が前記融合タンパク質によって活性化されるかを測定して決定できる。
【0106】
一つの例示的活性化ドメインは以下のp65ドメインである:
YLPDTDDRHRIEEKRKRTYETFKSIMKKSPFSGPTDPRPPPRRIAVPSRSSASVPKPAPQPYPFTSSLSTINYDEFPTMVFPSGQISQASALAPAPPQVLPQAPAPAPAPAMVSALAQAPAPVPVLAPGPPQAVAPPAPKPTQAGEGTLSEALLQLQFDDEDLGALLGNSTDPAVFTDLASVDNSEFQQLLNQGIPVAPHTTEPMLMEYPEAITRLVTAQRPPDPAPAPLGAPGLPNGLLSGDEDFSSIADMDFSALLSQ(配列番号:7)
【0107】
例示的なGal4活性化ドメインの配列は以下の通りである:
NFNQSGNIADSSLSFTFTNSSNGPNLITTQTNSQALSQPIASSNVHDNFMNNEITASKIDDGNNSKPLSPGWTDQTAYNAFGITTGMFNTTTMDDVYNYLFDDEDTPPNPKKEISMAYPYDVPDYAS(配列番号:8)
【0108】
バクテリアにおいての活性化ドメインの機能は、野生型RNA重合酵素アルファサブユニットC−末端ドメインまたは突然変異アルファサブユニットC−末端ドメイン、たとえば、タンパク質相互作用ドメインに融合されたC−末端ドメインを召集するドメインを融合させることによって模倣できる。
【0109】
抑制ドメイン.必要な場合、活性化ドメインの代わりに、抑制ドメインをDNA結合ドメインに融合できる。真核細胞抑制ドメインの例としては、Kid、UME6、オレンジ(ORANGE)、グローチョ(groucho)、およびWRPW[Dawson et al (1995) Mol. Cell Biol. 15:6923-31]由来の抑制ドメインが含まれる。転写を抑制するドメインの効能は前記ドメインを周知のDNA結合ドメインと融合させ、前記周知のDNA結合ドメインが認識する部位に作動可能に連結されたレポーター遺伝子が前記融合タンパク質によって抑制されるかを測定して確認できる。
【0110】
例示的抑制ドメインはUME6タンパク質に由来する以下のドメインである:
NSASSSTKLDDDLGTAAAVLSNMRSSPYRTHDKPISNVNDMNNTNALGVPASRPHSSSFPSKGVLRPILLRIHNSEQQPIFESNNSTACI(配列番号:9)
【0111】
他の例示的抑制ドメインはKidタンパク質に由来するものである:
VSVTFEDVAVLFTRDEWKKLDLSQRSLYREVMLENYSNLASMAGFLFTKPKVISLLQQGEDPW(配列番号:10)
【0112】
KOX抑制ドメイン:このドメインは、ヒトKox1タンパク質(ジンクフィンガータンパク質10;NCBIタンパク質データベースAAH24182;GI:18848329)由来の「KRAB」ドメイン、すなわち、Kox1の2−97番アミノ酸を含む:
DAKSLTAWSRTLVTFKDVFVDFTREEWKLLDTAQQIVYRNVMLENYKNLVSLGYQLTKPDVILRLEKGEEPWLVEREIHQETHPDSETAFEIKSSV(配列番号:11)
【0113】
また、他のキメラ転写因子は活性化ドメインまたは抑制ドメインを有さない。その代わりに、このような転写因子は、結合した内因性転写因子(たとえば、活性化因子または抑制因子)を代替するか、それと競争して転写を変化させる。
【0114】
他のタイプのエフェクタードメインは一つ以上の下記活性に係わるドメインを含む:ヒストン修飾(たとえば、アセチル化、脱アセチル化、ユビキチン化)、クロマチン構造パッケージング、DNA切断、トポイソメラーゼ活性、およびDNAメチル化状態(たとえば、メチル化または脱メチル化)などが含まれる。
【0115】
考案された転写因子の追加的な特徴
リンカー.DNA結合ドメインは様々なリンカーによって連結され得る。リンカーの有用性とデザインは当該技術分野でよく知られている。特に有用なリンカーは核酸によってコーディングされるペプチドリンカーである。したがって、第1DNA結合ドメイン、ペプチドリンカー、および第2DNA結合ドメインをコーディングする合成遺伝子を製造できる。このようなデザインは大規模の合成多数−ドメインDNA結合タンパク質を製造するために繰り返すことができる。国際特許出願第WO99/45132号およびキムおよびパボ(Kim and Pabo, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:2812-7)は、ジンクフィンガードメインを連結するのに適したペプチドリンカーのデザインを記述している。ジンクフィンガードメインを活用した実施のために、ジンクフィンガーの間で自然的に発見されるペプチドをフィンガーと共に連結するためのリンカーとして使用できる。このような自然的に発見されるリンカーとして典型的なものはThr−Gly−(Glu−Gln)−(Lys−Arg)−Pro−(Tyr−Phe)である。
【0116】
無作為コイル、α−螺旋またはβ−ひだ状の3次構造を形成する追加的なペプチドリンカーを使用できる。適した柔軟性のあるリンカーを形成するポリペプチドはこの技術分野でよく知られている(たとえば、Robinsonら(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95:5929-34参照)。柔軟性のあるリンカーは典型的にグリシンを含むが、これはグリシンが側鎖を欠いているため回転自由度を有する唯一のアミノ酸であるためである。親水性を増加させるためにセリンまたはトレオニンをリンカーに挿入できる。また、結合親和度を増加させるためにDNAのリン酸骨格と相互作用できるアミノ酸を使用できる。このようなアミノ酸の適切な使用によって親和度の増加と配列特異性の減少との間のバランスを取ることができる。もし、リンカーが厳格な伸張性を要求する場合、文献[Pantoliano et al. (1991) Biochem. 30:10117-10125]に記述された螺旋状リンカーのようなα−螺旋リンカーを使用できる。また、リンカーはコンピュータモデリングによってデザインできる(米国特許第4,946,778号参照)。分子モデリングのためのソフトウエアは市販のものを使用できる(たとえば、Molecular Simulation, Inc., San Diego, CA)。このようなリンカーは、タンパク質工学分野で実施される標準的な突然変異誘導技術および適切な生物理学的テスト、および本明細書に記述された機能的分析法を用いて、たとえば、抗原性を減少させ/減少させるか、安定性を増加させるための目的などに任意に最適化する。上述のように、フレキシブルリンカーはPTDをDNA結合ドメインに連結させるか、人工DNA結合タンパク質の他のドメインに連結させるためにもまた使用され得る。
【0117】
ペプチドリンカーの代用物は他のタイプの化学的結合を使用するリンカーである。したがって、PTDおよびDNA結合ドメインは、合成非−ペプチド性リンカーによって連結され得る。PTDを含むポリペプチドは、合成反応においてDNA結合ドメインを含むポリペプチドに結合され得る。同種(homo)−または異種二官能性(heterobifunctional)交差リンカーが使用され得る。一つの実施形態において、合成リンカーは細胞内で切断される。たとえば、合成リンカーは還元性チオール結合を含む。合成リンカーの例はBM[PEO](1,8−ビス−マレイミドトリエチレングリコール)、OCOES(ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン)、およびDSG(ジスクシンイミジルグルタレート)を含む。
【0118】
二量化ドメイン. DNA結合ドメインを連結するまた他の方法は二量化ドメイン、特に異種二量化ドメイン(Pomerantz et al. (1998) Biochemistry 37: 965-970を参照)を用いることである。このような例においては、DNA結合ドメインが別個のポリペプチド鎖として存在する。たとえば、一番目のポリペプチドはDNA結合ドメインA、リンカーおよびドメインBをコードする反面、二番目のポリペプチドはドメインC、リンカーおよびドメインDをコードする。また、前記ポリペプチドのうち一つまたは両方ともPTDを含み得る。
【0119】
当業者は特性が明らかになった多くの二量化ドメインから一つの二量化ドメインを選別できる。同種二量体が好ましくない場合、異種二量化を選好するドメインを使用できる。特に、適用可能な二量化ドメインはコイル化されたコイルモチーフ、たとえば、二量体平衡または逆平衡コイル化されたコイルである。優先的に異種二量体を形成するコイル化されたコイル配列をまた利用できる(Lumb and Kim, (1995) Biochemistry 34: 8642-8648)。二量化ドメインのまた他の種類として二量化が小分子によってまたは信号伝達経路を通じて誘発されるものがある。たとえば、FK506の二量体形態は2つのFK506結合タンパク質(FKBP)ドメインを二量化するのに使用できる。このような二量化ドメインは追加的な調節段階を提供するために利用できる。
【0120】
システイン残基を二量化境界面上の反対の位置で処理する場合、二量化は二硫化結合によって安定化され得る。DNA結合ドメインが二硫化結合によって連結される場合、一つのポリペプチド上のPTDは、パートナーポリペプチドを外部環境から細胞内に導入するのに使用され得る。一応、細胞内にあれば、二硫化結合は還元され得、二量化は他の相互作用、たとえば、非−共有的相互作用によって安定化され得る。
【0121】
新しいDNA結合タンパク質のデザイン
人工DNA−結合タンパク質は混合−適合(mixing and matching)方法によって特性が確認されたジンクフィンガードメインによって標的配列が認識されるように推論的に製作され得る。ジンクフィンガードメインは様々な方法を用いて単離され、特性が確認され得る。人工DNA−結合タンパク質を製作するための一つの公知の方法は変更されたDNA−結合特異性を有するジンクフィンガードメインを選択するためにファージディスプレイを使用することを含む(たとえば、Pomerantz et al. (1998) Biochemistry 37:965-970)参照)。標的配列と相互作用するドメインが選択されて標的配列に結合するDNA結合タンパク質を製造するために用いられる。
【0122】
ベーら(Bae KH et al. (2003) Nat Biotechnol. 21(3):275-80)は、細胞内でDNA−結合タンパク質の特異性を評価する方法およびこのような細胞内分析を用いて新しいDNA−結合タンパク質を製作する方法を記載している。国際特許公開第WO01/60970号および第WO03/016571号は、DNA−結合タンパク質をデザインする方法をまた記載している。ジンクフィンガードメインの組立構造は新しいDNA−結合タンパク質を製造するためのこれらの再整列を容易にする。天然型Zif268タンパク質内のジンクフィンガードメインはDNA二重螺旋に沿って直列に位置している。各ドメインは独立的に3−4塩基対のDNA部分を認識する。三つ以上のジンクフィンガードメインを連結することによって、9−bpまたはそれよりも長いDNA配列を特異的に認識するDNA結合タンパク質を製作できる。
【0123】
ジンクフィンガードメインのデータベース.国際特許公開第WO01/60970号に記述されたワン−ハイブリッド選別システムは、可能な3または4−塩基対結合部位の各々に対して、または代表的な数の前記結合部位に対して、一つ以上のジンクフィンガードメインを同定するのに使用できる。この過程の結果は、ジンクフィンガードメインとそれが選好する3または4−塩基対の結合部位間の一連の連関性として蓄積され得る。そのような連関性の例を表1に示す。
【0124】
その結果は、たとえば、相関的なデータベース、スプレッドシート、またはテキストファイルなどのデータベースとして機械に格納できる。そのようなデータベースの各記録は、ジンクフィンガードメインの表示をそのドメインの一つ以上の選好結合部位の配列を表示するストリングと連関させる。データベースの記録は、各部位に結合するジンクフィンガードメインの相対的な親和性の表示を含み得る。ある実施形態において、データベースの記録は特定のジンクフィンガードメインをコードする核酸の実際位置を示す情報を含み得る。そのような実際位置は、たとえば、冷凍庫に貯蔵されたマイクロプレートの特定のウェル(well)であってもよい。
【0125】
データベースは、SQL作動環境、(PERLまたはMicrosoft Excel(登録商標)macroのような)スクリプティング言語、またはプログラミング言語を用いて質問するか、フィルターできるように配置できる。そのようなデータベースは、使用者が特定の3または4−塩基対の結合部位を認識する一つ以上のジンクフィンガードメインを同定できるようにする。データベース、およびデータベースサーバーに格納可能な他の情報は、ある装置によって翻訳できる命令または他のシグナルを用いて各装置と意思疎通されるように配置できる。このシステムのコンピュータに基づく態様では、デジタル電子回路、或いは、コンピュータハードウエア、ファームウエア、ソフトウエア、またはこれらの組合せで行われる。本発明のデータベースサーバーなどの装置は、プログラム可能なプロセッサーによって実行するための機械読み取り可能な貯蔵装置に明白に具体化されたコンピュータプログラム産物によって実現させることができ;方法動作は、入力データに作動して出力することによって、本発明の機能を果たすための指示プログラムを実行するプログラム可能なプロセッサーによって行い得る。実行環境の非制限的例の一つはウィンドウXP(登録商標)またはウィンドウNT4.0(登録商標)(Microsoft, Redmond WA)またはそれ以上、またはソラリス2.6またはそれ以上(Sun Mycrosystems)のオペレーティングシステムによって作動されるコンピュータを含む。
【0126】
また、前記ジンクフィンガードメインの特異性を立証するために、これらを複数の異なる融合タンパク質内に融合された状況で試験できる。さらに、少量のドメインが利用可能な特定の結合部位は追加的な選別スクリーニングの標的となり得る。そのような選別のためのライブラリーは、類似するが明らかに区別できる部位に結合するジンクフィンガードメインを突然変異させることによって製造できる。利用可能なドメインを最大限活用するために標的結合部位に対してドメインをずらすようにできるので、各々の可能な結合部位に対するジンクフィンガードメインの完全なマトリックスは必須的なものでない。このようなずれは、最も有用な3または4塩基対の結合部位において結合部位を分解し、また、ジンクフィンガードメインの間のリンカーの長さを変化させることによって達成できる。考案されたポリペプチドが選択性および高い親和度をすべて有するようにするためには、目的とする部位に対して高い特異性を有するジンクフィンガードメインの両側に、さらに高い親和度を有するが特異性に劣る他のドメインを連結できる。本明細書に記述された生体内スクリーニング法は人為的に組み立てられたジンクフィンガータンパク質およびこれらの誘導体の生体内機能、親和度、および特異性を試験するのに利用され得る。同じように、本方法は、たとえば、多様化されたリンカー組成、ジンクフィンガードメインモジュール、ジンクフィンガードメイン組成などのライブラリーを製造することによって、そのような組み立てられたタンパク質を最適化するのに使用され得る。
【0127】
標的部位の分解.標的9−bpまたはより長いDNA配列は3−または4−bp断片に分解される。各々の分解された3−または4−bp断片を認識するジンクフィンガードメインを(たとえば、前述のデータベースから)同定する。さらに長い標的配列、たとえば、20bp〜500bp配列も、内在する9bp、12bp、および15bp下位配列を同定できるので、標的配列として適する。特に、データベースに明示されている部位に分解され得る下位配列は最初のデザイン標的として機能することができる。
【0128】
考案された特定のキメラジンクフィンガータンパク質が細胞内で標的部位を認識する可能性を推定できるように点数制を利用できる。この点数は、前記考案されたタンパク質において各構成フィンガーの選好サブセットに対する親和性、特異性およびその成功度の関数であり得る。
【0129】
コンピュータプログラム.前述の機械で読み取り可能なデータベースを用いるため、標的部位を分解するため、そして一つ以上のキメラジンクフィンガータンパク質の考案を出力するためにコンピュータシステムとソフトウエアが使用できる。
【0130】
前記技術は、移動または固定コンピュータのようなプログラム可能な機械と、プロセッサー、そのプロセッサーによって読み取り可能な貯蔵媒体および一つ以上の出力装置を含む同様な装置上で実行されるプログラムで実現できる。各プログラムは、機械システムと意思疎通するために高度の過程または目的志向的プログラミング言語によって実行できる。コンピュータ言語のいくつかの非制限的例はC、C++、ジャバ(登録商標)、フォートラン、およびビジュアルベーシック(Visual Basic)(登録商標)である。
【0131】
このような各プログラムは、CD−ROM(compact disc read only memory)、ハードディスク、磁気ディスケット、またはそれと類似する媒体または装置などの貯蔵媒体または装置に貯蔵できるが、これらは本明細書に記述された過程を行うためにコンピュータが貯蔵媒体または装置を読み取るとき、機械を配置し、作動させるために一般的または特定の目的のプログラム可能な機械によって読み取ることができる。このシステムは、プログラムとともに配置された、機械で読み取り可能な貯蔵媒体で実行できるが、このように配置された貯蔵媒体が機械を特定的で予定された方式で作動するようにする。
【0132】
コンピュータシステムは内部または外部のネットワークに連結できる。たとえば、コンピュータシステムは、HTTP、HTTPS、またはXMLプロトコールを用いて遠く離れた顧客システムから要求を受け取ることができる。このような要求は、公知の標的遺伝子、または標的核酸の配列を代表するストリングに対する識別子(identifier)であってもよい。前者の場合は、コンピュータシステムがGENBANK(登録商標)のような配列データベースに入って標的遺伝子の調節領域の核酸配列を検索できる。次いで、調節領域の配列または直接受取った標的核酸配列はサブセットに分解され、前述のようにキメラジンクフィンガータンパク質を考案する。
【0133】
システムは遠く離れた顧客に結果を通報できる。一方、システムは、キメラジンクフィンガータンパク質をコードする核酸を実際に検索するようにロボットを調整することもできる。この実施形態において、キメラジンクフィンガータンパク質をコードする核酸のライブラリーを製造して冷凍精製DNA、または核酸を含む冷凍細菌菌株として貯蔵する。ロボットは、ライブラリーの特定のアドレスを見つけることによって、コンピュータシステムのシグナルに反応する。次いで、検索された核酸はプロセスされ、包装されて顧客に配達され得る。一方、検索された核酸を細胞に挿入して分析できる。コンピュータシステムはネットワークを通じて顧客に分析結果を通報できる。
【0134】
選択されたモジュールからのタンパク質の製造.複数のジンクフィンガードメインを含むキメラポリペプチド配列を一旦デザインすると、デザインされたポリペプチド配列をコードする核酸配列を合成できる。合成遺伝子を製造する方法はこの技術分野においては周知のものである。前記方法は注文合成されたオリゴヌクレオチド、PCR媒介されたクローニング、およびメガ−プライマーPCRからの遺伝子製造を含む。追加の配列を、考案されたポリペプチド配列をコードする核酸に付け加えることができる。追加の配列は調節機能または目的とする機能のアミノ酸配列をコードする配列を提供できる。このような追加配列の例が本明細書に記載される。
【0135】
PTD−融合物のライブラリー.各々ジンクフィンガードメインおよびPTDを含む複数のポリペプチドを含むポリペプチドライブラリーを製造することによって複数のジンクフィンガードメインの組合せを評価することもできる。ライブラリーは細胞の変数、たとえば、遺伝子の発現または識別可能な表現型を変更させる多数のうち各タンパク質の能力を評価することによってスクリーニングされ得る。
【0136】
表現形質スクリーニングまたは選別
目的とする表現型効果を算出する機能性DNA結合ドメインを含むポリペプチドを同定するため、異なる組合せのジンクフィンガードメインをコーディングする核酸のライブラリーをスクリーニングすることもできる。2002年12月9日に出願された米国出願第10/314,669号は、スクリーニングまたは選別によって有用なジンクフィンガータンパク質を同定する例示的方法を記載する。一般的に、異なる組合せのジンクフィンガードメインおよびエフェクタードメインを含むポリペプチドをコーディングする核酸のライブラリーが製造され、細胞内に導入される。ライブラリー構成員を発現させた後、対照細胞(たとえば、形質転換されていない細胞またはベクター核酸で形質転換された細胞)に比べて変更された表現型を示す細胞を分離する。細胞内のライブラリー核酸を回収し、特性を確認する。次いで、DNA結合ドメインおよびPTDを含むポリペプチドをコーディングする核酸を生産するように核酸を変形できる。
【0137】
例示的なジンクフィンガードメイン
一つの人工転写因子はジンクフィンガードメインのキメラを含み得る。一つの実施形態において、一つ以上のジンクフィンガードメインは天然型である。多くのヒトジンクフィンガードメインの例が国際特許公開第WO01/60970号、第WO03/16571号、および米国出願第10/223,765号に記載されている。また、以下の表1を参照されたい。最後のカラムに列挙されている各ドメインの結合特異性が特定の特異性を有する転写因子を考案するのに使用され得る。
【0138】
【表1−1】

【表1−2】

【0139】
有用なDNA結合ドメインを作る特定の組合せのジンクフィンガードメインが記述されている。たとえば、国際特許公開第WO01/60970号、第WO03/16571号、米国出願第10/314,669号、および米国出願第60/431,892号を参照されたい。
【0140】
米国出願第60/431,892号および第10/732,620号は、特にVEGF遺伝子の調節配列に結合してVEGF遺伝子転写を調節できるDNA結合ドメインを記述している。F121およびF475はVEGF遺伝子の調節配列に結合できる二つの例示的DNA結合ドメインである。
【0141】
例示的なF475タンパク質は以下のアミノ酸配列を含み得る:
YKCGQCGKFYSQVSHLTRHQKIHTGEKPFQCKTCQRKFSRSDHLKTHTRTHTGEKPYICRKCGRGFSRKSNLIRHQRTHTGEK(配列番号:67)
【0142】
例示的なF121タンパク質は以下のアミノ酸配列を含み得る:
YKCEECGKAFRQSSHLTTHKIIHTGEKPYKCMECGKAFNRRSHLTRHQRIHTGEKPFQCKTCQRKFSRSDHLKTHTRTHTGEK(配列番号:68)
【0143】
ジンクフィンガードメインF475およびF121にあるジンクフィンガードメインのものと同じDNA接触残基を有する少なくとも2つのジンクフィンガードメイン(たとえば、同じ各順に、二つまたは三つのドメイン)を有するジンクフィンガードメインを含むDNA結合ドメインがまた使用され得る。
ジンクフィンガードメインの追加の例は以下の表2に記載されたものを含む。
【0144】
【表2−1】

【表2−2】

【0145】
表2に記載されたジンクフィンガータンパク質のうち好ましいものとしては、F475、F121、F435、F547、F2825、F109、F2604、F2605、F2607、F2615、F2633、F2634、F2636、F2644、F2646、F2650およびF2679が挙げられる。
【0146】
前記の例示的タンパク質は少なくとも二つ、三つまたは四つのカラム3の特定ドメインを含むものまたは二つ、三つまたは四つのカラム2の同じモチーフを含むものを含む。 他の例は、標的部位、たとえば、VEGF−A遺伝子に結合するために前記タンパク質と競争するタンパク質である。
【0147】
米国出願第10/314,669号は、特に(1)分泌タンパク質(例、インシュリン)の生産、(2)ストレス抵抗性、(3)分化状態(例、神経または骨形成分化)、および(4)増殖を調節できるDNA結合ドメインを記載している。
【0148】
機能性分析(Functional Assays)および用途
伝達可能なDNA結合タンパク質の機能は試験管内または生体内で分析され得る。人工転写因子に対する例示的な機能性分析は試験管内での結合分析、SELEX、生体内レポーター遺伝子調節、および転写プロファイリングを含む。
【0149】
結合部位選好度分析.各ドメインの結合部位選好度はEMSA、DNaseフットプリンティング(footprinting)、表面プラスモン共鳴法、SELEX、またはカラム結合のような生化学的分析法によって確認できる。結合のための基質としては標的部位を含む合成オリゴヌクレオチドを使用できる。前記分析は、非特定DNAを競争体としてまたは特定のDNA配列を競争体として含み得る。特定の競争体DNAは一つ、二つ、または三つのヌクレオチド突然変異を有する認識部位を含み得る。したがって、生化学的分析によって所定部位に対するドメインの親和度だけでなく、他の部位に対する所定部位の相対的親和度も測定できる。レバーおよびパボ(Rebar and Pabo, 1994, Science 263:671-673)は、EMSAからジンクフィンガードメインに対するK定数を得る方法を記述している。
【0150】
特定の例において、本発明者らは、ジンクフィンガータンパク質をコーディングするDNA切片をpGEX−4T2(Pharmacia Biotech)のSalIおよびNotI部位の間に挿入した。ジンクフィンガータンパク質はGST(グルタチオン−S−伝達酵素)に連結された融合タンパク質として大腸菌菌株BL21で発現された。融合タンパク質をグルタチオン親和性クロマトグラフィー(Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)で精製した後、GST残基とジンクフィンガータンパク質との間の連結部位を切断するトロンビンで切断する。
【0151】
様々な量のジンクフィンガータンパク質を20mM Tris(pH7.7)、120mM NaCl、5mM MgCl、20μM ZnSO、10%グリセロール、0.1%ノニデットP−40(Nonidet P-40)、5mM DTTおよび0.10mg/ml BSA(bovine serum albumin)を含有する緩衝溶液中で、放射性同位元素で標識されたDNAプローブと室温で1時間反応させた後、前記反応混合物をゲル電気泳動で分析した。放射性シグナルをPHOSPHORIMAGER(登録商標)分析(Molecular Dynamics)によって定量し、解離定数(dissociation constant, Kd)は文献に記述された通りに決定した(RebarおよびPabo(1994) Science 263: 671-673)。
【0152】
DNA結合ドメインがPTDと結合(すなわち、共有結合で連結)しているかどうかにかかわらずDNA結合ドメインのDNA結合親和度を決定できる。いくつかの実施例のために、PTD存在下のドメインのDNA結合親和度をPTD不在下の親和度と比較することが有用である。50、10、5、または1nM未満の親和度で結合するDNA結合ドメインが特に有用である。70−90%同一である標的部位と非標的部位を区別できるDNA結合ドメインがまた有用である。このようなドメインは2−、5−、10−、または100−倍以上区別できる。
【0153】
SELEX.SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)は、DNA結合ドメインによって特異的に認識される核酸を増殖する方法である。まず、両末端に保存配列(conserved sequences)が隣接した20−ヌクレオチド長の無作為領域を含む鋳型オリゴヌクレオチドを製造する。鋳型オリゴヌクレオチドを、DNAポリメラーゼのクレノー断片(Klenow fragment)および保存された3’末端にアニーリングするプライマーを用いた拡張によって二本鎖DNAに転換する。次いで、二本鎖DNAの群集をDNA結合ドメインとともに培養する。たとえば、100μgのGST−融合タンパク質を100μl結合緩衝溶液(25mM Hepes pH 7.9、40mM KCl、3mM MgCl、1mM DTT)中で10pmolの二本鎖DNAと混合して室温で1時間反応させる。GST−樹脂(10μl)を前記混合物に添加する。室温で30分間反応させた後、前記樹脂を2.5%脱脂油を含む結合緩衝溶液で3回洗浄する。前記樹脂を室温で10分間1M KCl 100μlと反応させて結合された二本鎖鋳型オリゴマーを樹脂から分離する。溶出物をPCRで増幅させる。増幅された核酸を次回のSELEXに使用できる。たとえば、クローニングおよび配列分析前に8回のSELEXを行い得る。ジンクフィンガータンパク質に対するSELEXの適用は、2002年12月9日に出願された米国出願第60/431,892号に記載されている。
【0154】
細胞分析.伝達可能なDNA結合ドメインの機能はレポーター遺伝子を用いて生体内で分析され得る。レポーター遺伝子は調節位置、たとえば、キムおよびパボ(KimおよびPabo, (1997) J. Biol. Chem. 272:29795-29800)の構造物においてZif268部位の位置に相応する部位にDNA結合タンパク質が特異的に認識するDNA標的部位を含むように操作される。伝達可能なDNA結合タンパク質を細胞と接触させた後、ルシフェラーゼレポーター活性を評価する。実施例4をまた参照されたい。タンパク質のDNA結合および転写調節機能を特異的に分析するために細胞内で伝達可能なDNA結合タンパク質を発現させた後、このタンパク質が細胞内に伝達され得るかを評価するために他の分析法を使用してもよい。
【0155】
内因性遺伝子を調節する伝達可能なDNA結合タンパク質の能力は、細胞を伝達可能なDNA結合タンパク質と接触させた後、または伝達可能なDNA結合タンパク質を細胞内で発現させた後、内因性遺伝子の転写を分析することによってまた評価できる。内因性遺伝子の転写を評価する方法は、ノーザン分析、RT−PCR、および転写プロファイリングを含む(後述する)。
【0156】
内因性遺伝子を調節する伝達可能なDNA結合タンパク質の能力を評価する他の方法は、伝達可能なDNA結合タンパク質を細胞と接触させ、細胞の変数、たとえば、内因性遺伝子によって影響を受けると知られている変数を評価することである。たとえば、VEGFプロモーターに結合する伝達可能なDNA結合タンパク質を細胞に接触させた後VEGF生産能に対して細胞を評価できる。
【0157】
安定性.伝達可能なDNA結合タンパク質の細胞内での安定性を決定するために様々な方法を利用できる。たとえば、タンパク質を(たとえば、放射性同位元素で)標識した後細胞と接触させる。細胞内に存在する標識の量を時間の関数でモニターできる。各時点前にタンパク質分解によって溶出される標識を除去するために細胞を洗浄できる。一方、接触された細胞の試料を各時点に製造し、ゲル上で電気泳動させて全長タンパク質を正確に検出できる。他の方法として、標識されていないタンパク質を異なる時点に、たとえば、タンパク質を特異的に認識する抗体を用いて検出する。タンパク質はエピトープタグを含み得る。
【0158】
安定したタンパク質を生産するために、分解シグナル(例、「PEST」シグナル)またはユビキチネーション部位に対してアミノ酸配列を調査することが有用である。このシグナルおよび部位は、タンパク質の安定性を増加させるために変形され得る。いくつかの特別な実施形態では、不安定なタンパク質を有することが好ましく、この場合、前記シグナルおよび部位をそのまま保持するか、または精巧に導入できる。
【0159】
キメラジンクフィンガータンパク質の調節特性のプロファイリング
キメラジンクフィンガータンパク質の特性を確認し、このタンパク質が哺乳動物細胞のような細胞において一つ以上の内因性遺伝子を調節できるかを決定できる。キメラジンクフィンガータンパク質をコードする核酸をまず抑制または活性化ドメインに連結した後、対象細胞内に導入できる。適当な培養およびコーディング核酸の発現誘導後、細胞からmRNAを抽出し、核酸マイクロアレイを通じて分析する。
【0160】
核酸マイクロアレイは、たとえば、フォトリソグラフィック法(例:米国特許第5,510,270号参照)、機械的方法(例:米国特許第5,384,261号に記載された直接流れ[directed flow]法)またはピン基盤(pin based)法(米国特許第5,288,514号に記載)などの様々な方法によって製作できる。このアレイは、発現された特定の遺伝子に対する核酸を検出するのに適した特別な捕獲プローブ(capture probe)を各アドレスに有するように製作される。
【0161】
mRNAは、たとえば、文献[Current Protocols in Molecular Biology John Wiley & Sons, N.Y]等に記述されたように、DNaseを処理し、ゲノムDNAを除去し、オリゴ−dTを結合した固体基質にハイブリッド化することを含む一般の方法で分離できる。基質を洗浄した後、mRNAを溶出させる。分離されたmRNAを米国特許第4,683,202号に記載されたように、rtPCRなどによって逆転写させ、任意に増殖させる。増殖または逆転写過程中に標識されたヌクレオチドの挿入によって核酸を認識させ得る。好ましい標識の例は赤色蛍光染料Cy5(Amersham)または緑色蛍光染料Cy3(Amersham)のような蛍光標識を含む。一方、核酸をバイオチンで標識し、ストレプトアビジン−ピコエリトリン(Molecular Probes)などの標識されたストレプトアビジンとのハイブリダイゼーションで検出できる。
【0162】
次いで、標識された核酸をアレイに接触させ得る。さらに、対照核酸または参考核酸を同じアレイに接触させ得る。対照核酸または参考核酸を標本核酸の標識とは異なる標識、たとえば、異なる最大放出(emission)波長を有する標識で認識できる。標識された核酸をハイブリダイゼーションの条件でアレイと接触させる。アレイを洗浄した後、アレイの各アドレスで蛍光を検出するために映像化する。
【0163】
イメージを映像化することによって得られた情報はプロファイルの製作に使用できる。たとえば、各アドレスのハイブリダイゼーションの程度は数字で表示してベクター、一次元マトリックス、または一次元アレイで貯蔵する。ベクターxはアレイの各アドレスに対する値を有する。たとえば、特定のアドレスでハイブリダイゼーションの程度に対する数値はxという変数で貯蔵される。この数値は、各地域の背景水準、標本量および他の変異条件に合わせて調節できる。また、対照標本から核酸を準備し、同一または異なるアレイにハイブリッド化できる。ベクターyはベクターxと等しく製作する。たとえば、2つのベクターの関数である数学式を用いて標本発現プロファイルを対照プロファイルと比較できる。この比較は、2つのプロファイルの類似性を示す点数などのスカラー(scalar)値として評価できる。アレイによって検出される異なる遺伝子に加重値を与えるために前記ベクターのいずれかまたはすべてはマトリックスによって変換し得る。
【0164】
発現データはデータベース、たとえば、SQLデータベース(例:オラクル(Oracle)またはサイベース(Sybase)データベース環境)のような関連データベースに貯蔵できる。データベースは数個の表を有する。たとえば、処理されていない(raw)発現データを、各縦列は分析される遺伝子(例:アドレスまたはアレイ)に該当し、各横列は標本に該当する一つの表に貯蔵できる。別途の表は、識別子、および使用したアレイのバッチ(batch)数字、日付および他の品質管理情報などの標本情報を貯蔵できる。
【0165】
同様に調節される遺伝子は共に調節される遺伝子を同定するために発現データをクラスタリング(clustering)することによって同定できる。このようなクラスターは、キメラジンクフィンガータンパク質によって同等に調節される遺伝子セットを表示する。遺伝子は階層的クラスタリング(hierarchical clustering)[例:Sokal and Michener (1958) Univ. Kans. Sci. Bull. 38:1409参照]、ベイジアンクラスタリング(Bayesian clustering)、カッパー平均クラスタリング(k-means clustering)、および自体組織地図(self-organizing maps)[Tamayo et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 2907参照]を用いてクラスタリングできる。
【0166】
標本発現プロファイルの対照発現プロファイル(例:対照細胞)との類似性は、たとえば、標本発現水準のログをプレディクター(predictor)または対照発現値のログと比較し、この比較結果をプロファイル内の例示値のすべての遺伝子に対する重要度によって調整することによって決定できる。
【0167】
遺伝子調節の標的
細胞内の一つ以上の遺伝子が遺伝子調節の標的となり得る。たとえば、病原体に有利な遺伝子、腫瘍の増殖に必要な遺伝子は抑制され、また反対に発現されないか、不安定なタンパク質をコードする遺伝子は活性化または過発現され得る。特定の標的遺伝子の例は以下のタンパク質をコーディングする遺伝子を含む:細胞表面タンパク質(例:糖鎖化した表面タンパク質)、腫瘍−関連タンパク質、腫瘍抑制剤、サイトカイン(cytokines)、ケモカイン(chemokines)、ペプチドホルモン(peptide hormones)、神経伝達物質(neurotransmitters)、細胞表面レセプター (cell surface receptors)、細胞表面レセプターキナーゼ(cell surface receptor kinases)、7膜貫通レセプター(seven transmembrane receptors)、ウイルスレセプターと補助レセプター(virus receptors and co-receptors))、細胞外結合タンパク質(extracellular matrix binding proteins)、細胞結合タンパク質(cell-binding proteins)、病原体の抗原(たとえば、バクテリア抗原、マラリア抗原など)。その他の標的タンパク質はエノラーゼ(enolases)、シトクロムP450s、アシルトランスフェラーゼ(acyltransferase)、メチラーゼ(methylase)、TIM障壁(barrel)酵素、イソメラーゼ(isomerase)などがある。
【0168】
さらに具体的な例は次を含む:インテグリン(integrins)、細胞付着分子(cell attachment molecules)または「CAMs」(例:カドヘリン(cadherins)、セレクチン(selectin)、N−CAM、E−CAM、U−CAM、I−CAMなど);プロテアーゼ(例:サブチリシン、トリプシン、キモトリプシン;プラスミノゲン活性剤(plasminogen activator)(例:ウロキナーゼ(urokinase)、ヒト組織型プラスミノゲン活性剤など);ボンベシン(bombesin);因子IX、トロンビン;CD−4;血小板−由来成長因子;インシュリン−類似成長因子−Iおよび−II;神経成長因子;繊維芽細胞成長因子(例:aFGFおよびbFGF);表皮細胞成長因子(EGF);VEGFa;色素上皮細胞−由来因子(PEDF);形質転換成長因子(TGF、例:TGF−αおよびTGF−β;インシュリン−類似成長因子結合タンパク質;脳−由来神経栄養因子(BDNF);エリスロポイエチン;トロンボポイエチン;ムチン(mucins);ヒト血清アルブミン;レクチン;成長ホルモン(例:ヒト成長ホルモン);プロインシュリン、インシュリンA−鎖およびインシュリンB−鎖;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;チロキシン(thyroxine);卵胞促進ホルモン(follicle stimulating hormone);カルシトニン;ANP(atrial natriuretic peptides)A、BまたはC;黄体ホルモン(leutinizing hormone);グルカゴン;因子VIII;造血成長因子;腫瘍壊死因子(例:TNF−αおよびTNF−β);エンケファリナーゼ(enkephalinase);ジュンB原癌遺伝子(jun B proto-oncogene);タンパク質キナーゼC;レクチン;脳−特異的Na−依存性無機リン酸塩共輸送体;細胞レチノイン酸−結合タンパク質1;細胞レチノイン酸−結合タンパク質2;分化−関連遺伝子−1(Drg−1);転写因子E2F;初期成長反応−1(EGR−1);タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B);Fas;黒色腫分化関連遺伝子−7(MDA−7);プレセニリン−1(PS−1);アンジオテンシン転換酵素;アンジオポイエチン−2;b−
セクリターゼ(BACE1);mmp3;CHFR(checkpoint with forkhead associated and ring finger);ペルオキシゾーム増殖因子−活性化されたレセプターガンマ(PPAR-gamma);TNF−関連アポトーシス−誘導リガンド(TRAIL);Ku−80;ATM(ataxia-telangiectasia mutated);BRCA;CC−ケモカインレセプター5(CCR5);腫瘍壊死因子アルファ−誘導されたタンパク質−3(TNFAIP3);c−myc;ハイポキシア−誘導性因子−1アルファ(HIF−1アルファ);カスパーゼ−3;細胞間接着分子タイプI(ICAM−1);アンジオテンシンIIレセプター1(AT−1R);MIS(Mullerian-inhibiting substance);ゴナドトロピン−関連ペプチド;組織因子タンパク質;インヒビン(inhibin);アクチビン(activin);ホルモンまたは成長因子レセプター;リウマチ因子(rheumatoid factor);骨誘導因子(osteoinductive factors);インターフェロン(例:インターフェロン−α,β,γ);コロニー刺激因子(CSFs)(例:M−CSF、GM−CSF、およびG−CSF);インターロイキン(ILs)(例:IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、およびIL−13など);DAF(decay accelerating factor);および免疫グロブリン。いくつかの例において、標的タンパク質は、たとえば、癌、感染性疾患、または心血管系疾患のような疾病と係わっている。
【0169】
いくつかの標的遺伝子は細胞内に導入された外来ゲノムまたは他の核酸、たとえば、レトロウイルスゲノム、遺伝子治療ベクター、DNAウイルスなどによってコーディングされ得る。
【0170】
伝達可能な転写因子の生産
伝達可能なDNA結合タンパク質を発現するために標準組換え核酸方法が使用され得る。一つの実施形態において、伝達可能なタンパク質をコーディングする核酸配列が、たとえば、適当なシグナルおよびプロセッシング配列および転写および翻訳のための調節配列とともに、核酸発現ベクター内にクローニングされ得る。他の実施形態では、タンパク質は自動化された有機合成方法を用いて合成され得る。タンパク質生産のための合成方法は、たとえば、文献[Methods in Enzymology, Volume 289: Solid-Phase Peptide Synthesis by Gregg B. Fields (Editor), Sidney P. Colowick, Melvin I. Simon (Editor), Academic Press;(November 15, 1997) ISBN: 0121821900]に記載されている。
【0171】
伝達可能なタンパク質のための発現ベクターは、たとえば、伝達可能なタンパク質をコーディングする配列に作動可能なように連結されたプロモーターを含む調節配列を含み得る。使用され得る誘導性プロモーターの非制限的例はステロイド−ホルモン反応性プロモーター(例、エクジソン(ecdysone)−反応性、エストロゲン−反応性、およびグルタコルチノイド−反応性プロモーター)、テトラサイクリン「Tet-on」および「Tet-Off」システム、および金属−反応性プロモーターを含む。この構造物は適切な宿主細胞、たとえば、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または組織培養細胞内に導入され得る。この構造物はまたモデル対象として遺伝子転移有機体を生成するために胚芽幹細胞内に導入され得る。多くの数の適切なベクターおよびプロモーターが当分野の熟練者に公知であり、本発明の組換え構造物を生成するために市販のものを利用できる。
【0172】
本発明のポリヌクレオチドおよび適切な転写/翻訳調節シグナルを含むベクターを構築するために公知の方法を使用できる。この方法は、試験管内組換えDNA技術、合成技術、および生体内組換え/遺伝子組換えを含む。たとえば、文献[Sambrook & Russell、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、3rd Edition、Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y. (2001)およびAusubel et al.、Current Protocols in Molecular Biology (Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y. (1989)]に記載された技術を参照されたい。
【0173】
伝達可能なタンパク質を生産するのに適当な宿主細胞は細菌細胞および真核細胞(例:真菌、昆虫、植物および哺乳動物細胞)を含む。宿主細胞は凍結−解凍の繰り返し、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤を含む任意の通常の方法によって破壊できる。文献[Scopes (1994) Protein Purification: Principles and Practice、New York:Springer-Verlag]は、組換え(および非−組換え)タンパク質を精製するための複数の一般的な方法を提供する。この方法は、たとえば、イオン−交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、選択的沈澱、透析、および疎水性相互作用クロマトグラフィーを含み得る。この方法は、伝達可能なタンパク質のための精製戦略を考案するために改造され得る。伝達可能なタンパク質がエピトープタグまたは金属キレート配列のような精製道具を含むならば、親和性クロマトグラフィーがタンパク質を高度に精製するために使用され得る。
【0174】
生産されたタンパク質の量は伝達可能なタンパク質を(たとえば、ウェスタン分析を用いて)直接的にまたは(たとえば、EMSAによって特異的DNA結合活性のために細胞からの物質を分析することによって)間接的に検出することによって評価できる。タンパク質は精製前に、精製途中の任意の段階で、または精製後に検出され得る。ある実施形態では、精製または完全な精製が必要でないこともある。
【0175】
タンパク質伝達に使用されるものの他に、伝達可能なDNA結合タンパク質は内因性遺伝子を調節するために対象細胞または対象有機体内で生産され得る。伝達可能なDNA結合タンパク質は上述のように内因性遺伝子の領域に結合し、転写活性化または抑制機能を提供するように配置され得る。カン(Kang)およびキム(Kim)(前記文献参照)に記載されたように、考案されたタンパク質をコーディングする核酸は誘導可能なプロモーターに作動可能に連結され得る。プロモーターに対する誘導剤の濃度を調節することによって内因性遺伝子の発現を濃度依存的方式で調節できる。
【0176】
他の例においては、伝達可能なDNA結合タンパク質が一つの細胞によって分泌タンパク質として生産され、このタンパク質が拡散されて他の細胞に入って遺伝子調節の変更を引き起し得る。拡散は対象内で、たとえば、対象の一つの細胞から他の細胞へ起こり得る。
【0177】
細胞標的化残基
伝達可能なDNA結合タンパク質は一つの特定細胞タイプ(たとえば、一つ以上の特定分化した細胞または感染した細胞)、または一つ以上の細胞状態(たとえば、増殖状態)に特異的な細胞標的化残基を含み得る。たとえば、細胞標的化残基は疾病状態、分化状態、または増殖状態に対して特異的であり得る。細胞標的化残基の例は抗体またはレセプター認識ペプチドのようなタンパク質を含み得る。
【0178】
細胞標的化残基によって特異的に認識され得るいくつかの抗原は腫瘍または癌細胞特異的抗原を含む。例示的な抗原は腫瘍−関連糖タンパク質(TAG72)、癌胎児性抗原(CEA)、180kDa糖タンパク質多形成上皮細胞ムシンHMFG1(PEM or MUC1)、上皮細胞膜抗原(EMA)、表皮成長因子レセプター(EGFR)、HER2/c−erb−B2、前立腺−特異的膜抗原(PSMA)、CD33、およびCD20を含む。抗原断片は、ファージ−ディスプレイ技術または免疫化によって製造できる。抗体の様々な生産、変形、分析および使用方法は文献[Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988; Alting-Mees et al., “Monoclonal Antibody Expression Libraries: A Rapid Alternative to Hybridomas”, Strategies in Molecular Biology 3:1-9 (1990); and Larrick et al., Biotechnology, 7:394(1989)]に記述されている。
【0179】
一つの実施形態において、細胞標的化残基は腫瘍回帰性ペプチドを含み得る。腫瘍回帰性ペプチドの例はPCT/US00/01602およびUS出願公開第2001−0046498号に記載されている。
【0180】
一つの実施形態において、細胞標的化残基は細胞−特異的タンパク質と相互作用するポリペプチドを含む。たとえば、天然型ポリペプチドは細胞表面タンパク質、たとえば、細胞表面レセプターと特異的に相互作用する成長因子、サイトカイン、または他のタンパク質の全部または一部を含み得る。
【0181】
医薬組成物
他の態様において、本発明は、薬剤学的に許容可能な担体とともに製剤化された、伝達可能な人工DNA結合タンパク質、たとえば、伝達可能な人工ジンクフィンガータンパク質または本願に記載された他のタンパク質を含む組成物、たとえば、薬剤学的に許容される組成物を提供する。本願に用いられる「医薬組成物」は治療用だけでなく、診断用組成物を含む。
【0182】
本明細書に使用されたように、「薬剤学的に許容可能な担体」は任意またはすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗バクテリアおよび抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤、および生理的に交換され得る類似のものを含む。好ましくは、担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊椎、上皮の投薬(たとえば、注射または注入)に適したものである。投薬の経路によって、活性物質はその物質を不活性化できる酸或いは他の自然的環境の作用からその物質を保護するための材料中でコーティングされ得る。
【0183】
「薬剤学的に許容可能な塩」とは、原物質の好ましい生物学的活性を保持し、何らの好ましくない毒性効果(Berge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19参照)を与えない塩を指す。このような塩の例には酸付加塩(acid addition salt)と塩基付加塩(base addition salt)を含む。酸付加塩は塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、3価リン酸などから誘導された無毒性無機酸だけでなく、脂肪族モノ−およびジカルボン酸、フェニルで置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などのような無毒性有機酸に由来する塩を含む。塩基付加塩はナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属から誘導されたものだけでなく、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの無毒性アミンから誘導されたものを含む。
【0184】
一つの実施形態において、伝達可能な人工DNA結合タンパク質は持続放出のために製剤化できる。たとえば、伝達可能なDNA結合タンパク質はマトリックス、たとえば、固体に伝達するために脂質−タンパク質−糖マトリックス内にカプセル化できる。カプセル化された伝達可能なDNA結合タンパク質は小さい粒子、たとえば、5マイクロメーター〜50ナノメーターのサイズに形成し得る。前記脂質−タンパク質−糖粒子は通常、界面活性剤、リン脂質、または類似する疎水性または両親媒性分子;タンパク質;単純および/または複合糖;および伝達可能な人工DNA結合タンパク質を含む。一例として、脂質はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)であり、タンパク質はアルブミンであり、糖はラクトースである。他の例において、合成ポリマーが脂質−タンパク質−糖粒子の少なくとも一つの構成要素、たとえば、脂質、タンパク質、および/または糖を代替する。LPSPsを製造するために用いられた化合物は天然型であるので、改善された生体適合性を有し得る。粒子は噴霧乾燥を含む当分野に公知の技術を用いて製造できる。たとえば、米国出願公開第2002−0150621号を参照されたい。
【0185】
医薬組成物は様々な形態になり得る。これらは、たとえば、液体溶液(たとえば、注射または注入可能な溶液)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、リポソームおよび座薬のような液体、半固体および固体剤形を含む。前記剤形は目的とする投与の方法と治療的適用によって異なる。組成物は、たとえば、組成物を安定化するために、陰イオン性または陰電荷を帯びる担体を含み得る。たとえば、組成物はポリA−ポリT DNA二重螺旋の小さい断片を含み得る。
【0186】
通常の組成物は人体に抗体を投与するために、使用されるものと類似する組成物のような注射または注入可能な溶液の形態である。通常の投与方法としては非経口(たとえば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)投与がある。一つの実施形態において、伝達可能な人工DNA結合タンパク質は静脈内注入または注射によって投与される。他の実施形態において、伝達可能な人工DNA結合タンパク質は筋肉内または皮下注射によって投与される。例示的な投与経路は経口投与、表皮組織(例:皮膚)または粘膜(例:目) 投与、または吸入を含む。他の投与経路がまた使用され得る。
【0187】
本明細書に使用された「非経口投与」および「非経口で投与される」という文章は、腸内(enteral)および局部の投与を除く、一般的に注射による方法および静脈内、筋肉内、動脈内、包膜(脳、脊椎)内、包皮内、眼窩内(intraorbital)、心臓内(intracardiac)、皮膚内、腹腔内、呼吸管内、皮下内、上皮下、関節内、皮膜下、くも膜下、脊椎内、硬膜外および胸骨内注射および注入を含むが、これらに限定されない。
【0188】
医薬組成物は、典型的に生産と保管の条件下で無菌および安定でなければならない。医薬組成物はまた投与に対する規定および産業標準を満たすかを保証するために試験され得る。たとえば、製剤中のエンドトキシンの水準はUSP24/NF19法によってリミュラスアメボサイトライセート試験(たとえば、Bio Whittaker lot # 7L3790のキットを用いて検出限界0.125EU/ml)でテストされ得る。医薬組成物の無菌性はUSP24/NF19法によってチオグリコレート培養液を用いて特定され得る。たとえば、準備された試料はチオグリコレート培養液に接種するのに使用され、35℃で14日またはそれ以上培養する。前記培養液は微生物の増殖を検出するために周期的に検査される。
【0189】
前記組成物は溶液、微細懸濁液、分散液、リポソーム、または他の高濃度の薬に適した整頓された構造を有するように剤形化され得る。無菌の注射可能な溶液は活性合成物(すなわち、伝達可能なDNA結合タンパク質)を必要な量で一つの成分または上で列挙した成分の組合せで適切な溶媒内に混合して製造され得、必要に応じて、フィルターを用いて殺菌できる。一般的に、分散液(dispersion)は活性合成物を基本的に分散媒質を含む無菌の運搬体および上に列挙した他の必要な成分に混合して準備される。無菌注射可能な溶液を準備するために無菌粉末を使用する場合、通常の製造方法は予め無菌フィルターされた溶液から活性成分と付加的な好ましい成分の粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥法が好ましい。溶液の適切な流動性は、たとえば、レシチンのようなコーティングを用い、分散の場合、好ましい粒子サイズを保持し、界面活性剤を用いることによって保持され得る。注射可能な組成物の長期間吸収は、たとえば、モノステアリン酸塩およびゼラチンのような吸収を遅延させる薬品を成分に含ませて可能にすることができる。
【0190】
種々の適用において投与の経路/方法は静脈注射または注入であるが、伝達可能な人工DNA結合タンパク質は公知の様々な方法で投与され得る。たとえば、治療的適用のために、伝達可能な人工DNA結合タンパク質は30、20、10、5、3、1、または0.1mg/分以下の速度の静脈注入によって投与され、1〜100mg/m、7〜25mg/m、または0.5〜15mg/mの量を投与できる。投与の経路および/または方法は期待する結果によって変化し得る。ある実施形態においては、活性成分は迅速な放出から成分を保護できる、たとえば、調節性放出剤形、すなわち、移植、微細カプセル伝達システムのような担体とともに製造され得る。エチレンビニルアセテート、ポリアンハイドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生分解性、生体適合性ポリマーが使用され得る。このような剤形の準備のための多くの方法が特許されているか、一般的に知られている。たとえば、文献(Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R. Robinson、ed.、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978)を参照されたい。
【0191】
特定の実施形態において、前記伝達可能な人工DNA結合タンパク質は、たとえば、不活性希釈剤または同化し得る食用担体とともに経口投与され得る。前記化合物(および好ましい場合、他の成分)はまた硬質または軟質ゼラチンカプセルの外皮内に封入するか、錠剤形に圧縮するか、または対象者の飲食内に直接混合し得る。治療用経口投与のために、化合物は賦形剤とともに混合されて消化可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ剤、カプセル、エリクシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハなどの形態に使用され得る。本明細書に記載された化合物を非経口投与以外の方法で投与するために、化合物を不活性化防止物質とともにコーティングするか、または共に投与することが必要であり得る。
【0192】
医薬組成物は公知の医療器具で投与され得る。たとえば、医薬組成物は、米国特許第5,399,163号に開示された器具のような針のない皮下注射器具で投与され得る。本発明においてよく知られた有用な移植装置とモジュールは徐放性速度で薬物を分散させるための、移植可能な微細−注入ポンプ(米国特許第4,487,603号);皮膚を通過して薬を投与する治療器具(米国特許第4,486,194号);正確な注入速度で薬を伝達するための薬物注入ポンプ(第4,447,233号);継続的な薬物の伝達のための可変流速移植可能な注入装置(第4,447,224号);多重チャンバー分画を有する浸透性薬物伝達システム(第4,439,196号);および浸透性薬物伝達システム(第4,475,196号)を含み、他の公知の移植体、伝達システム、そしてモジュールもよく知られている。
【0193】
一つの実施形態において、伝達可能な人工DNA結合タンパク質を静脈内に投与して神経細胞、たとえば、脳細胞に入れる。たとえば、伝達可能な人工DNA結合タンパク質は神経細胞、たとえば、脳細胞、たとえば、GNDF(glial line-derived neurotrophic factor)に結合するタンパク質と物理的に連結される。他の実施形態において、伝達可能な人工DNA結合タンパク質は造血細胞、たとえば、リンパ球、たとえば、T細胞と接触して細胞内で遺伝子発現を調節する。たとえば、タンパク質は特定の細胞毒性T細胞において遺伝子発現を調節するために、たとえば、感染性疾病および癌を治療するために使用され得る。
【0194】
ある実施形態において、伝達可能な人工DNA結合タンパク質は生体内での適切な分布のために剤形化され得る。たとえば、血液−脳障壁(BBB)は多い強親水性化合物を排除させる。伝達可能な人工DNA結合タンパク質のBBB通過を保障するために(好ましい場合)、たとえば、化合物はリポソーム内に剤形化され得る。リポソーム産生方法は、米国特許第4,522,811号;第5,374,548号および第5,399,331号に記載されている。リポソームは特定の細胞或いは器官に選別的に運搬される一つまたはそれ以上の部分を含み得、標的化された薬物伝達を増進できる(たとえば、V.V. Ranade(1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685参照)。
【0195】
投与処方計画は最適の好ましい反応(たとえば、治療反応)を提供するために調整され得る。たとえば、一回の錠剤が投与され得、数回にわたって長期間投与されるか、投与量は治療状況における必要性によって一定の比率で減少または増加させ得る。非経口用組成物を投与単位の形態で調製することは投与の容易性と投与量の一貫性のために特に利点がある。本明細書に使用された投与単位形態は治療対象者に単一投与量として適した物理的に分離された単位であって;各単位は目的とする治療効果を得るために計算された、定量の活性混合物と必要な薬剤学的担体を含む。投与単位形態の設計は、(a)活性成分の固有な特性と成就しようとする特殊な治療効果、および(b)個人別敏感性の治療のためにこのような活性成分を混合する当分野の固有の制限点による。
【0196】
投与量の値は緩和または予防されなければならない疾患の種類と深刻性によって変化し得ることを念頭に置く必要がある。任意の特定対象に対して特異的投与計画は個人の必要と投与するヒトまたは組成物の投与を監督する者の専門的判断によって十分な時間を置いて調整しなければならず、本明細書で説明する投与量の範囲はただ例であり、請求された組成物の範囲または実施を制限しようとするものではない。
【0197】
医薬組成物は「治療的に効果的な量」または「予防的に効果的な量」の伝達可能な人工DNA結合タンパク質を含み得る。「治療的に効果的な量」とは、投与量および必要な時間周期で目的とする治療結果が得られる有効量を指す。組成物の治療的に効果的な量は、個人の疾病の段階、年齢、性別、および体重によって、そして前記伝達可能な人工DNA結合タンパク質が個人において好ましい反応を導き出す能力によって変化し得る。治療的に効果的な量はまた治療的に有益な効果を提供するものであり、通常組成物の任意の毒性または有害な効果よりも有益な効果がさらに大きい量である。たとえば、伝達可能な人工DNA結合タンパク質は測定可能な変数、たとえば、腫瘍細胞の成長速度を阻害できる。測定可能な変数は任意の対象、たとえば、ヒトまたはヒト対象、たとえば、患者、対照群対象などにおいて薬効を予測できる動物モデルシステムで評価され得る。一方、組成物のこのような特性は目的とする効果、たとえば、細胞成長を抑制するかサイトカインまたは成長因子のようなタンパク質の水準を変更(例:増加または減少)させる化合物の能力を検査することによって評価され得る。このような測定可能な変数のための多くの分析法が熟練者に知られている。
【0198】
「予防的に効果的な量」とは、投与量および必要な時間周期の間、目的とする予防的結果を達成するために効果的な量を指す。典型的に、予防的投与は疾病の初期段階以前または初期段階で用いられるため、予防的に効果的な量は治療的に効果的な量よりも少ないであろう。
【0199】
本発明の範囲には、伝達可能なDNA結合タンパク質を含むキットと使用法、たとえば、処理、予防または診断の用途の使用法もある。一つの実施形態において、治療的適用の使用法は疾患、疾病、または異常を有する患者に提案される投与量および/または投与方法を含む。前記キットは診断用または治療用試薬のような一つ以上の追加的試薬を含み得るが、たとえば、本明細書に記載された診断用または治療用試薬および/または一つ以上の区別された薬剤学的調製で、適切に剤形化された一つ以上の追加的伝達可能な製剤を含み得る。
【0200】
一つの実施形態において、伝達可能な人工DNA結合タンパク質は循環系、たとえば、血液、血清、リンパ、または他の組織でこの安定化および/または保持を改善する残基と物理的に連結される。この残基は循環半減期を少なくとも2倍、4倍または6倍以上改善できる。たとえば、伝達可能な人工DNA結合タンパク質はポリマー、たとえば、ポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシドのような実質的に非抗原性であるポリマーと連結され得る。適当なポリマーは分子量によって実質的に変化し得る。数平均分子量が約200〜約35,000のポリマーが通常選択される。約1,000〜約15,000または約2,000〜約12,500の分子量が使用され得る。一つの実施形態において、ポリマーは伝達可能な人工DNA結合タンパク質が細胞内に入るとき切断される可逆的結合によって連結される。たとえば、二硫化結合または他のチオール結合が細胞内で還元されてポリマーを伝達可能な人工DNA結合タンパク質から分離する。
【0201】
たとえば、伝達可能な人工DNA結合タンパク質は水溶性ポリマー、たとえば、親水性ポリビニルポリマー、たとえば、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンに結合し得る。このようなポリマーの非制限的例はポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールのようなポリアルキレンオキシドホモポリマー、ポリエチル化されたポリオール、これらの共重合体および、親水性が保持される限り、これらのブロック共重合体である。追加の有用なポリマーはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体(Pluronics)のようなポリオキシアルキレン;ポリメタクリレート;カルボマー;分岐または非分岐の多糖類;ラクトース、アミロペクチン、澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、アミロース、硫酸デキストロース、デキストラン、デキストリン、グリコゲンまたは酸ムコ多糖体、たとえば、ヒアルロン酸の多糖類サブユニットのようなヘテロポリサッカライド;ポリソルビトールおよびポリマンニトールのような糖アルコールのポリマー;ヘパリンまたはヘパロンを含む。他の化合物がまた同じポリマー、たとえば、標識または標的化剤に付着し得る。
【0202】
他の実施形態において、ポリマーはしばしば交差結合前に水溶性である。一般的に、交差結合後、産物は水溶性であり、たとえば、少なくとも約0.01mg/ml、0.1mg/ml、または1mg/mlの水溶性を示す。また、ポリマーは結合体の形態において免疫原性が高くてはならず、静脈内注入または注射によって投与されるならば、このような投与経路に適さない粘度を有してもならない。ポリマーの分子量は約500,000ダルトン(D)、たとえば、少なくとも約20,000D、30,000D、または40,000Dに至り得る。
【0203】
共有交差結合が伝達可能な人工DNA結合タンパク質をポリマーに付着させるが、たとえば、N−末端アミノ基およびリジン残基上のイプシロンアミノ基だけでなく、他のアミノ、イミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、ヒドロキシル、または他の親水性基に交差結合させるのに使用され得る。伝達可能な人工DNA結合タンパク質に付着し得る機能化されたPEGポリマーはシーアワーターポリマー社(Shearwater Polymers Inc., Huntsville, Ala)から入手できる。
【0204】
伝達可能な人工DNA結合タンパク質およびポリマーの結合体はたとえば、ゲル濾過またはイオン交換クロマトグラフィー、たとえば、HPLCによって未反応の出発物質から分離される。異種の結合体が同一な方式で互いに精製され得る。未反応のアミノ酸のイオン特性の差によって異なる種(たとえば、一つまたは二つのPEG残基を含む)の分離もまた可能である。WO96/34015参照。
【0205】
貯蔵.精製された伝達可能なジンクフィンガータンパク質を貯蔵するために様々な方法を使用できる。たとえば、タンパク質は一つ以上の(i)凍結抑制剤(例:グリセロール、たとえば、5−12%グリセロール)、(ii)亜鉛、たとえば、1mM〜5mM、1mM〜500mM、1mM〜200mM、0.05mM〜50mM、および0.5mM〜30mM亜鉛、および(iii)還元剤(例:DTT、たとえば、約0.05−5mM、たとえば、0.5−2mM)の存在下で貯蔵され得る。タンパク質は、たとえば、4℃未満、たとえば、−20℃未満、たとえば、約−60℃〜−90℃で貯蔵され得る。
【0206】
治療(Treatments)
内因性遺伝子を調節できる伝達可能なDNA結合タンパク質、特に、VEGF−A遺伝子を調節できるタンパク質は治療および予防用途に使用され得る。たとえば、伝達可能なジンクフィンガータンパク質は試験管内や生体外培養細胞に投与するか、生体内でのように対象に投与することによって、癌、特に転移性癌、炎症性疾患と血管生成に係わる疾病を治療、予防または診断するのに使用され得る。
【0207】
本明細書に使用されたように、「治療する」または「治療」は疾病、疾病の症状または兆しを治療するか、傷を治療、弱化、減少、変化、治癒、除去、改善または影響を与えるためにジンクフィンガータンパク質が細胞内に入って対象、たとえば、患者の細胞内で遺伝子発現を調節できるようにジンクフィンガータンパク質を加えるか投与すること、または患者のような対象から分離した組織や細胞株のような細胞に薬物を加えるか投与することと定義されるが、この際、患者は疾病(例:本文に用いられた疾病)を患っているか、疾病の症状または兆しを示す対象をいう。
【0208】
一つの実施形態において、「細胞を治療すること」または「組織を治療すること」は、VEGF−A産生、血管生成の促進、細胞増殖のように細胞の活性が少なくとも一つ以上減少すること、または過多増殖する細胞または腫瘍のような組織内や周辺細胞のような細胞の活性を減少させることを意味する。このような減少には細胞や組織(例:転移組織)の活性や細胞の個数や組織のサイズ、および組織に供給される血の量の減少、たとえば、統計的に意味ある減少を含み得る。活性減少の例としては、細胞の移動(例:細胞外基質を通じた移動)、血管形成の減少、または細胞分化の減少がある。他の例としては、直接または間接的に炎症や炎症の標識を減少させるものがある。
【0209】
本明細書に使用されたように、伝達可能なジンクフィンガータンパク質の治療に効果的な量または「治療効果量」は細胞の治療において対象に単一投与や繰り返し投与を通じて効果を示すタンパク質の量をいう。
【0210】
本明細書に使用されたように、疾病の予防に効果的なジンクフィンガータンパク質の量またはタンパク質の「予防効果量」は単一投与や反復投与を通じて疾病(例:癌、血管生成関連疾病、または炎症疾患)の発病の開始を防ぐか、遅延させる効果を示すタンパク質の量をいう。
【0211】
本明細書に使用されたように、「対象」はヒトやヒト以外の動物を含む。例示的対象は非正常な細胞増殖や分化として特徴付けられる疾病を有するヒト患者を含む。「ヒト以外の動物」はヒト以外のすべての脊椎動物、たとえば、非哺乳動物(例:ニワトリ、両棲類、爬虫類)およびヒツジ、イヌ、ウシ、ブタなどのようなヒト以外の霊長類のような哺乳動物を含む。
【0212】
一つ実施形態において、対象はヒトである。一つの実施形態において、伝達可能なジンクフィンガータンパク質の組成物は獣医学的な目的やヒトの疾病に対する動物モデルとして使用するためにヒト以外の動物(例:霊長類、ブタまたはマウス)に投与され得る。動物モデルのような後者の場合は組成物の治療効果(例:投与量や投与時間の推移)を評価するのに有用であり得る。
【0213】
一つの実施形態において、本発明は、新生物性疾患を治療する方法を提供する。この方法は、たとえば、新生物性疾患を治療するか、予防するほど十分な量で、VEGF−Aまたはそれをコードする遺伝子を調節するジンクフィンガータンパク質のようなジンクフィンガータンパク質で対象の細胞と接触する段階を含む。タンパク質はタンパク質伝達ドメインを含む。たとえば、この疾病は発癌性細胞、腫瘍細胞または転移性細胞によって誘発され得る。この方法は試験管内や生体外培養細胞に使用され得る。たとえば、発癌性細胞や転移性細胞(例:腎臓、膀胱、大腸、直腸、肺、乳房、子宮内膜、卵巣、前立腺、または肝の癌または転移性細胞)は細胞培養液中で試験管内で培養され得、接触段階はジンクフィンガータンパク質またはそれをコードする核酸を培養液に入れることによって影響を受け得る。この方法は生体内(例:治療用または予防用)プロトコールの一部であって、対象(例:ヒト)に存在する細胞(例:発癌性または転移性細胞)に適用され得る。生体内での実施形態の場合、接触段階は対象内で影響を与え、対象の細胞にあるVEGF−A遺伝子を調節する効果を示す条件下で伝達可能なジンクフィンガータンパク質を対象に投与することを含む。
【0214】
前記方法は癌を治療するのに使用され得る。本明細書に使用されたように、「癌」、「過多増殖」、「悪性」および「新生物性」は互いに同じ意味で用いられ、速い増殖または新生物によって特徴付けられる非正常な状態や条件を意味する。この用語は、組織病理学的な形態と進行程度に関わらず、すべての形態の発癌性成長、発癌過程、転移組織または悪性に形質転換された細胞、組織または器官を含む。「病理学的な過多増殖」細胞は悪性腫瘍成長として特徴付けられる疾病の状態で現れる。
【0215】
「組織新生」という用語の一般的な医学的意味は新生物性細胞のような細胞に対する正常な成長調節に対する反応を欠く結果を示す「新しい細胞の成長」である。「増生」とは、非正常に成長速度が速くなった細胞を意味する。しかし、本明細書に使用するように、新生物と増生は互いに混用され得るが、内容が示すように、一般的に非正常な細胞の増殖速度を有する細胞を言う。新生物と増生は腫瘍を含み、これは陽性であるか、若しくは悪性転移または悪性であり得る。
【0216】
癌の例としては、固形癌、軟組織癌(soft tissue tumors)、転移性損傷(lesion)などを含むが、これに制限されない。固形癌の例としては、肺、乳房、リンパ系、胃腸(例;大腸)および泌尿器官(例:腎臓、尿道細胞)、咽頭、前立腺、卵巣などの種々の器官に発生する肉腫(sarcoma)、腺癌(adenocarcinomas)と癌腫(carcinomas)などの悪性腫瘍(malignancy)だけでなく、大部分の大腸癌、直腸癌、腎臓細胞癌、肝癌、非細胞性肺癌、小腸癌などを含む腺癌(adenocarcinoma)が含まれる。前述した癌の転移性損傷は本明細書に記述されている方法または組成物によって治療または予防され得る。
【0217】
前記方法は、肺、乳房、リンパ系、胃腸(例:大腸)、そして泌尿生殖器官(例:腎臓、尿道)、前立腺、卵巣、咽頭などの種々の器官に発生する悪性腫瘍および、大部分の大腸癌、腎臓細胞癌、前立腺癌、睾丸癌、非細胞性肺癌、小腸癌および食道癌などの悪性腫瘍を含む腺癌(adenocarcinoma)を治療するのに有用である。「癌または癌腫」は当業界の熟練者によって発見され得、呼吸系腫瘍、胃腸系腫瘍、泌尿器系腫瘍、睾丸腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、内分泌系腫瘍と黒色腫を含む上皮または内分泌系組織の悪性腫瘍を言う。癌腫の例としては絨毛癌と子宮頸部、肺、前立腺、乳房、子宮内膜、頭および首、大腸および卵巣などの組織から生成する癌を含む。この用語はまた、癌腫性および肉腫性組織から構成された悪性腫瘍などの癌肉腫を含む。「腺癌」は腺組織に由来する癌であるか、特徴的な腺構造を有している癌を言う。「肉腫」は当業界の熟練者によって発見され得、間葉細胞由来組織の悪性腫瘍を言う。
【0218】
前記方法はVEGF−Aを発現する造血器官由来細胞の増殖を調節するために(たとえば、増加または抑制するために)また使用され得る。たとえば、この方法は増生/新生細胞の増殖を抑制するために使用され得る。
【0219】
伝達可能なジンクフィンガータンパク質を投与する方法は「医薬組成物」の部分に記述されている。用いられる物質の適正投与量は対象の年齢と体重、用いられる特定薬物によって異なる。
【0220】
伝達可能なジンクフィンガータンパク質は対象に導入された後に対象内イメージングのために標識物質と連結され得る。適当な標識物質としてはMRIで検出可能なものまたは放射線標識を含む。
【0221】
伝達可能なジンクフィンガータンパク質は単独投与するか、既存に存在する治療法と並行して投与し得、既存の方法は手術を初めて放射線療法、化学療法などを含む。たとえば、伝達可能なジンクフィンガータンパク質は他の血管新生抑制剤とともに投与され得る。例示的な血管新生抑制剤は次のものを含む:2ME2、アンジオスタチン、アンジオザイム、抗−VEGFRhuMAb、Apra(CT−2584)、アビシン(Avicine)、ベネフィン(Benefin)、BMS275291、カルボキシアミドトリアゾール、CC4047、CC5013、CC7085、CDC801、CGP−41251(PKC412)、CM101、コンブレタスタチン(Combretastatin)A−4プロドラッグ、EMD121974、エンドスタチン、フラボピリドル、ゲニステイン(GCP)、緑茶抽出物、IM−862、ImmTher、インターフェロンアルファ、インターロイキン−12、イレッサ(ZD1839)、マリマスタット(Marimastat)、メタスタット(Metastat)(Col−3)、ネオバスタット(Neovastat)、オクトレオチド(Octreotide)、パクリタキセル(Paclitaxel)、ペニシラミン(Penicillamine)、フォトフリン(Photofrin)、フォトポイント(Photopoint)、PI−88、プリノマスタット(Prinomastat)(AG−3340)、PTK787(ZK22584)、R0317453、ソリマスタット(Solimastat)、スクアラミン(Squalamine)、SU101、SU5416、SU−6668、スラディスタ(Suradista)(FCE26644)、スラミン(Suramin)(Metaret)、テトラチオモリブデン酸塩(Tetrathiomolybdate)、サリドマイド(Thalidomide)、TNP−470およびバイタクシン(Vitaxin)。追加の血管新生抑制剤は文献[Kerbel、J. Clin. Oncol. 19(18s):45s-51s、2001]に記述されている。
【0222】
組織新生疾患を治療するために、前記タンパク質は次のもののうち一つ以上とともに配合して投与され得る:他の治療剤の例はタキソール(taxol)、サイトカラシン(cytochalasin)B、グラミシジン(gramicidin)D、エチジウムブロミド、エメチン(emetine)、ミトマイシン(mitomycin)、エトポシド(etoposide)、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、コルヒチン(colchicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ミトラマイシン(mithramycin)、アクチノマイシン(actinomycin)D、1−デヒドロテストステロン(dehydrotestosterone)、グルココルチコイド(glucocorticoids)、プロカイン(procaine)、テトラカイン(tetracaine)、リドカイン(lidocaine)、プロプラノール(propranolol)、ピューロマイシン(puromycin)、メイタンシノイド(maytansinoids)、たとえば、メイタンシノール(maytansinol)またはDM1(米国特許第5,208,020号参照)、CC−1065(米国特許第5,475,092号、第5,585,499号、第5,846,545号参照)、カリケアミシン(calicheamicin)、およびこれらの類似体または同族体を含む。本明細書において用語「配合」は、異なる薬剤が実質的に同時的に、同時にまたは順次に与えられることを意味する。順次に与えられるならば、第2化合物の投与時に二つのうち第1薬剤は好ましくは依然として治療部位で効果的な濃度で検出可能である。
【0223】
伝達可能なジンクフィンガータンパク質、特にVEGF−A遺伝子を調節(例:発現抑制)することは炎症性疾患や疾病を治療するために単独投与するか、一つ以上の既存の治療方法と並行して投与し得る。代表的な炎症性疾患や疾病はリウマチ様関節炎、青少年慢性関節炎、乾癬、移植片対宿主病(GVHD)、皮膚硬化症、糖尿病、アレルギーのような急性および慢性免疫疾患および自家免疫性疾患;喘息、同種異系移植(例:腎臓移植、心臓移植、脊髄移植、肝移植、膵臓移植、小腸移植、肺移植と皮膚移植など)に係わる急性または慢性免疫疾患;類肉腫症、慢性炎症性腸疾病、潰瘍性大腸炎、クローン病変異や疾病のような慢性炎症性病変;播種性血管内凝固、動脈硬化、カワサキ病変および血管炎症候群(例:結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ−シェンライン紫斑病、巨大細胞関節炎および腎臓微細血管炎など)の血管炎症性病変;慢性活性肝炎;シェーグレン症候群;乾癬性関節炎;腸疾患性関節炎;反応性関節炎と炎症性腸疾病に係わる関節炎;ぶどう膜炎などを含む。
【0224】
炎症性腸疾病(IBD)は一般的な慢性、再発性胃腸炎を含む。IBDはクローン疾病と潰瘍性大腸炎の二つの特徴的な疾病をいう。IBDの臨床的な症状は間歇的な直腸出血、痙攣性腹痛、体重減少および下痢を含む。潰瘍性大腸炎の臨床活性指数(Clinical Activity Index)のような臨床的指標がIBDをモニターするために使用され得る(文献[Walmsley et al. Gut. 1998 Jul;43(1):29-32]および[Jowett et al. (2003) Scand J Gastroenterol. 38(2):164-71]参照)。
【0225】
伝達可能なジンクフィンガータンパク質は前述の疾病のうち一つを治療または予防するのに使用され得る。たとえば、このタンパク質は各々の疾病の少なくとも一つの症状を緩和させるのに効果的な量が(局部的または全身的に)投与され得る。このタンパク質はまた局部体温、浮腫(例:測定されるもの)、赤み、局部または全身の白血球の数、好中球の存在有無、サイトカイン水準などのような炎症の標識のような炎症を緩和できる。タンパク質投与前、投与中、投与後に前述した対象の炎症標識のうち一つまたはそれ以上を評価できる。
【0226】
伝達可能なジンクフィンガータンパク質、特にVEGF−A遺伝子を調節(例:VEGF−A遺伝子発現活性化)することは傷の治癒を向上させることのように傷を治療するために単独で投与するか、既存の治療方法のうち一つまたはそれ以上と並行投与できる。たとえば、一般的にVEGF−A活性化は新しい血管や毛細血管の形成を増加させる。そのタンパク質や核酸は手術、火傷、外傷、潰瘍、骨折および血管生成を増加させることが必要な他の疾病を緩和させるのに使用され得る。
【0227】
伝達可能なジンクフィンガータンパク質、特にVEGF−A遺伝子を調節(たとえば、VEGF−A遺伝子の発現増加)できることは虚血性心臓疾患、四肢動脈疾患または心臓動脈疾患のような心血管疾患の治療のために単独投与するか、既存の治療方法のうち一つまたはそれ以上と並行して投与し得る。ジンクフィンガータンパク質を投与する方法はまた糖尿病性網膜症または心筋梗塞患者を治療するために使用できる。
【0228】
伝達可能なDNA結合タンパク質のいくつかの態様を下記の具体的でかつ非制限的な実施例によってさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0229】
TAT−ZFP融合タンパク質の製作、発現および精製
三つ或は四つのフィンガーを有するキメラタンパク質をコードする核酸を以下の通り製造した。哺乳類細胞においてキメラジンクフィンガータンパク質を発現させるためにベクターP3(Toolgen, Inc.)を用いた。P3はベクターpcDNA3(Invitrogen, San Diego CA)の変形を通じて製作した。連結が可能な突出末端(overhangs)を有する合成オリゴヌクレオチド二本鎖をHindIIIおよびXhoIで切断されたpcDNA3ベクターに連結した。前記二本鎖はヘマグルチニン(hemagglutinin, HA)タグ(tag)と核位置信号(nuclear localization signal、NLS)をコーディングする核酸を含む。前記二本鎖はまたBamHI、EcoRI、NotIおよびBglII切断部位および停止コドンを含む。さらに、前記で生成したベクターをXmaIで切断し、切断部位の突出末端を埋めた後、両末端を再連結することによって、このベクターのSV40複製起源中のXmaI切断部位を除去した。
【0230】
前記表2に示したような多重ジンクフィンガードメインを有するキメラジンクフィンガータンパク質をコーディングするプラスミドを製作する一つの例示的な方法を下記に示す。まず、単一ジンクフィンガードメインをコーディングする挿入体(insert)を一つのジンクフィンガードメインをコーディングする配列を有するベクター(P3ベクター)に挿入した。前記クローニングの結果として、二つのジンクフィンガードメインを有するジンクフィンガータンパク質をコーディングするプラスミドが得られた。二つのジンクフィンガードメインからなるジンクフィンガードメイン挿入体を前記方法によって製造した後、一つまたは二つのジンクフィンガードメインを有するAgeI/NotI切断によって線形化されたベクターP3にクローニングして3つまたは4つのジンクフィンガードメインからなるキメラジンクフィンガータンパク質遺伝子を含むプラスミドを得た。
【0231】
予め組み立てられたZFPsをコーディングする核酸をpTATプラスミド(たとえば、Dowdy et al. (1999) Science 285: 1569-1572参照)に以下の通り挿入した。まず、5’配列にKpnI部位を含む正方向プライマーを用いたPCRによって前記ZFP−コーディング配列にKpnI切断部位を付加した。前記挿入体とベクター(pTAT)をKpnIおよびXhoIで切断し、連結した後、pTAT−ZFPs構造物の配列を分析した。pTAT−ZFPプラスミドの挿入後に、(N末端からC末端に)ATG(開始コドン)、六つのヒスチジンタグ、HIV Tat PTD配列、核位置信号(NLS)および機能性ドメイン(p65、KRABまたはKOX)を有するジンクフィンガードメインの整列を含むポリペプチドをコーディングする配列が製造された。
【0232】
大腸菌BL21(DE3)細胞をpTAT−ZFPプラスミドで形質転換させた後、これらのOD値が0.3〜0.4に至るまで選別培地で培養した。その後、前記細胞を1mM IPTGで3時間処理して発現を誘導した。TAT−ZFPタンパク質試料を製造社の一般的な指示に従ってNi−NTAアガロース(Qiagen)を用いて製造した。簡略に説明すると、前記BL21細胞を沈澱させた後、細胞ペレットを溶血緩衝溶液(100mM NaHPO、10mM Tris・Cl、8Mウレア、pH8.0)で溶解し、10秒間の超音波粉砕後30秒間の停止期が続くサイクルを5回行って(Fischer Scientific 550)超音波粉砕を行った。この非精製の溶解物を一連の実験のために保管するか、親和カラムを用いて精製した。前記溶解物を40分間Ni−NTAアガロース(Qiagen)とともに培養した後、洗浄液(100mM NaHPO、10mM Tris−Cl、8Mウレア、pH6.3)で2回洗浄した。その後、タンパク質を溶出緩衝溶液(100mM NaHPO、10mM Tris−Cl、8Mウレア、pH4.5)で溶出した後、PBSで透析した。精製されたタンパク質を−70℃で10%グリセロールとともに保管した。
【0233】
精製の際、各段階で得られた溶出物(flow-through)と精製されたTAT−ZFPsをコマシーブルー染色を用いてSDS−PAGEで分析した。溶出されたタンパク質は約35kDaサイズのバンドで優勢種として移動し、非常に純粋なものに精製された。図1および図2(陰イオン交換カラムによる2次精製)参照。
【実施例2】
【0234】
TAT−ZFP融合タンパク質の哺乳類細胞培養物への伝達
(1)TAT融合タンパク質の伝達効率の評価
TAT融合タンパク質の培養された細胞への伝達効率を決定するために、本発明者らは精製されたTAT−lacZタンパク質を用いた。遺伝的TAT−lacZ融合物をlacZオープン・リーディング・フレームDNAをpTAT−HAプラスミドに挿入することによって製造した。たとえば、ドウディらの方法を参照されたい(Dowdy et al. (1999) Science 285: 1569-1572)。その後、前記融合物はBL21(DE3)LysS細菌(Novagen)に形質転換された。TAT−lacZ融合タンパク質の発現を1mM IPTGで3時間誘導し、BL21(DE3)LysS細胞を沈澱させた後、細胞ペレットを溶血緩衝溶液(100mM NaHPO、10mM Tris・Cl、8Mウレア、pH8.0)で溶解し、10秒間の超音波粉砕後30秒間の停止期が続くサイクルを5回行って超音波粉砕を行った(Fischer Scientific 550)。前記溶解物をNi−NTAアガロース(Qiagen)とともに40分間培養した後、洗浄液(100mM NaHPO、10mM Tris−Cl、8Mウレア、pH6.3)で2回洗浄した。前記タンパク質を溶出緩衝溶液(100mM NaHPO、10mM Tris−Cl、8Mウレア、pH4.5)で溶出した後、PBSで透析した。精製されたタンパク質を10%グリセロールとともに−70℃で保管した。ヒト胚芽腎臓(HEK)293細胞を24−ウェル培養プレートに3×10/Mlの濃度で接種した後、TAT融合タンパク質と接触する前に24時間培養した。その後、TAT−lacZを発現する大腸菌培養液から得られた総溶解物を100μg/Ml〜800μg/Ml範囲の濃度で培養培地に添加し、37℃で4時間培養した。前記細胞をPBSで二回洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定した後、X−galで染色した。観察された染色強度は濃度依存的であった。本発明者らは、最も低い濃度(100μg/Ml)でも前記細胞への約100%伝達効率を観察した。これらの結果は、TAT−ドメインがlacZのような高分子タンパク質(約120kD)を細胞内に伝達できることを示す。
【0235】
(2)TAT−ZFP融合タンパク質の培養された細胞内への伝達
精製されたTAT−ZFP融合タンパク質がHEK293細胞内に伝達されるかについて調査した。前記HEK293細胞を24−ウェル培養プレート上に3×10/Mlの密度で24時間予備培養した後、20μgのTAT−ZFPsを前記培養培地に添加した。前記細胞を収穫し、PBSで3回洗浄した後、氷で冷却された溶血緩衝溶液を添加した。前記試料をSDS−PAGEで分析した後、ゲルをHYBOND−P(登録商標)膜(Amersham Pharmacia Biotech)に移した。1次抗体としてマウス抗−HA抗体、二次抗体として抗−マウスIgG−HRPを用いたウェスタンブロッティング分析を行い、ECL(登録商標)キット(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて結果を観察した。前記ウェスタンブロットは、TAT−ZFP融合タンパク質がHEK293細胞の内部で検出されたことを明らかに示した。
【実施例3】
【0236】
レポーター遺伝子活性および内因性遺伝子発現のTAT−ZFP媒介調節
伝達されたTAT−ZFP融合タンパク質が細胞内で転写因子として作用するかを確認するために、本発明者らは調査対象のTAT−ZFPsに特異的なZFP−結合配列を含む一連のホタルルシフェラーゼレポーターで細胞をトランスフェクトした。 この実験において、本発明者らは、VEGFプロモーターに結合するZFPsを用いた。2003年12月9日付で出願された米国特許出願第60/431,892号において、本発明者らはこれらのタンパク質が内因性VEGF遺伝子を調節できることを報告している。
【0237】
本発明者らは、次のようにトランスフェクト細胞を製造した。ヒト胚芽腎臓293細胞を100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および10%牛胎児血清(FBS)が補充されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle medium)で保持した。ルシフェラーゼ分析のために、ウェル当り10細胞を96−ウェルプレートで予め培養した。293細胞をLIPOFECTAMINE(登録商標)トランスフェクトキット(Life Technologies, Rockville, MD)を用いて25ngのレポータープラスミドでトランスフェクトした。前記レポータープラスミドは、pGL3−basic(Promega)内のルシフェラーゼ遺伝子に融合した天然のVEGFプロモーターを含む。
【0238】
本発明者らは、前記細胞を24時間培養した後、TAT−ZFPタンパク質含有溶解物が含まれている培養培地とさらに24時間接触させた。前記培養培地は40μgまたは80μgの溶解物を含む。その後、本発明者らはTD−20/20照度計(Turner Designs Inc., Sunnyvale, CA)を用いて二重ルシフェラーゼ分析キット(Promega)で細胞のレポーター発現について分析した。
【0239】
前記TAT−F475−KRAB溶解物は、相応するTAT−唯一タンパク質(すなわち、ジンクフィンガードメインを含まないタンパク質)の溶解物に伝達された対照群培養物に比べて1.5倍(40μgが用いられたとき)および2.0倍(80μg)レポーター活性を抑制した。TAT−F475−KRABとは異なるDNA結合特異性を有する、TAT−F83−KRABの溶解物がレポーター活性を抑制しなかったため、観察された抑制は配列特異的なDNA結合に起因するものであった。本発明者らの以前の研究においてキメラジンクフィンガードメインF83が天然のヒトVEGFプロモーター配列を含むルシフェラーゼレポーターの発現を変化させなかったため(Bae et al. Nat Biotechnol. 2003, 21(3): 275-80)、本実験において前記ドメインを陰性対照群として用いた。これと同様に、TAT−mF475−KRABの溶解物はレポーター活性を抑制しなかった。mF475は二番目および三番目のジンクフィンガードメイン内にDNA結合ができない突然変異(アルギニンからアラニン)を含む。これは、レポーター遺伝子発現の調節がTATタンパク質伝達ドメインによってではなく、特異的なジンクフィンガータンパク質に基づくものであることを示す。
【0240】
これらの結果は、TAT−F475−KRABのtatドメインが前記タンパク質を細胞内に効果的に伝達し、この伝達されたタンパク質は配列特異的な方式でこれらの細胞内でその標的遺伝子の転写を調節できることを立証するものである。
【実施例4】
【0241】
転写調節ドメインを含むタンパク質の伝達
本発明者らは、次に転写調節ドメインを含むタンパク質もまた細胞内に伝達され得るかどうかを調査した。本発明者らは、タンパク質伝達ドメイン、ジンクフィンガードメインの整列、およびp65転写活性因子またはKRAB転写抑制因子ドメインを含むタンパク質を製造した。TAT−ZFP融合タンパク質をコーディングするプラスミドを実施例1に指示されたように、大腸菌BL21(DE3)形質転換体から発現させた。本発明者らは、このタンパク質をF475ジンクフィンガーが認識する天然のヒトVEGFプロモーター配列を含むルシフェラーゼレポーター構造物(Bae et al. Nat Biotechnol. 2003、21(3): 275-80)で一時的にトランスフェクトされた293細胞と接触させた。TAT−F475−p65の溶解物は(ジンクフィンガードメインを含まないTatタンパク質を含む)対照群溶解物に伝達された細胞に比べて2.5(±0.48)倍増加したレポーター活性を惹起した。精製されたTAT−F121−KRABは2.1(±0.14)倍減少したレポーター活性を惹起した。
【実施例5】
【0242】
伝達されたDNA結合タンパク質による内因性遺伝子の調節
本発明者らはまた、伝達されたDNA結合タンパク質が内因性VEGF mRNAの発現を調節できるかどうかを評価した。本発明者らは、TAT−F475−KRABタンパク質またはTAT−F121−KRABタンパク質を含む溶解物を24時間予め培養した3×10 293細胞培養物(12−ウェル培養プレート)に添加した。接触してから4時間経過後に、前記溶解物を含む培養培地を新鮮な新しい培地に取り替えた。前記細胞を溶解物と接触させ、24時間経過後に収穫した。総細胞性RNAを製造社(Life Technologies)の指針に従ってTRIZOL(登録商標)−溶解物を製造することによって前記細胞から抽出した。
【0243】
mRNAのための第1ストランド合成プライマーとしてオリゴ−dTおよびSUPERSCRIPT(登録商標)第1ストランド合成システム(Life Technologies)内に提供されるmMLV逆転写重合酵素を用いて4μgの総RNAで逆転写反応を行った。mRNA量を分析するために、前記RT反応から形成された第1ストランドcDNAs各々の1μlをVEGF−特異的であるプライマーを用いて増幅させた。RNAの初期量をグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)−特異的なプライマーを用いた特異的増幅によって計算されたGAPDH mRNA濃度に標準化した。VEGFおよびGAPDH cDNAsの増幅は、QUANTITECT(登録商標)SYBRキット(Qiagen, Valencia, CA)およびROTORGENE2000(登録商標)実時間サイクラー(Corbett, Sydney, Australia)を用いて実時間で観察し、分析した。mRNA濃度は前記反応物内に含まれた標準物質の連続的な希釈を用いて定量化した。
【0244】
TAT−F475−KRABおよびTAT−F121−KRABのいずれもTATドメインは含むが、ジンクフィンガードメインは含まない対照群タンパク質に比べて内因性VEGF mRNA水準を各々3.1(±0.4)倍および1.7(±0.01)倍抑制した。前記結果は、伝達されたZFPsが細胞内で人工転写因子として作用できることを証明する。
【0245】
本発明者らはまた、伝達されたTAT−ZFPタンパク質が他の内因性遺伝子の調節に影響を及ぼすかどうかを調査した。本発明者らは、F121−KRABおよび突然変異変形体mF121−KRABを安定的に発現する細胞に対するDNA微細配列結果を用いて得られた転写プロファイルを比較した。mF121−KRAB(QSHT−ASHR−ADHT)は、DNAと接触するアミノ酸部位でF121(QSHT−RSHR−RDHT)に比べて二つのアミノ酸置換(ArgからAla)を含む。このような突然変異は、DNA結合の特異性を変化させるか、または破壊すると期待される。
【0246】
前記転写プロファイルからVEGF mRNAがF121−KRABによって下向きに調節されることを確認した。また、これらのプロファイルは、F121−KRABがアネキシン(Annexin)A3およびサイクリン(Cyclin)A遺伝子を含む遺伝子のグループの活性化をもたらすことを立証するものである。mF121−KRAB処理された細胞の転写プロファイルは、アネキシンA3およびサイクリンA遺伝子活性化の如何なる活性も、VEGF mRNA発現における如何なる変化も示さなかった。前記と同様な結果がRT−PCRによっても得られた。これらの結果は、TAT PTDに融合され、大腸菌で発現されたキメラジンクフィンガータンパク質が哺乳類細胞内に成功的に伝達され得、伝達後転写調節子として作用できることを最初に証明するものである。
【実施例6】
【0247】
エフェクタードメインに応じて転写活性因子および抑制因子として作用するTAT−ZFP融合タンパク質
本発明者らは、一定のDNA結合ドメインが前記DNA結合ドメインに作動的に連結されたエフェクタードメインの特性に応じて転写の活性因子および抑制因子として作用することを観察した。たとえば、TAT−F435は、これがp65活性ドメインまたはKRAB抑制ドメインに融合されるかによって内因性VEGF−Aの発現を活性化させ、または抑制させ得る。BL21(DE3)LysS細菌(Novagen)をTAT−F435−KRABまたはTAT−F435−p65をコーディングするプラスミドで形質転換させた。前記融合タンパク質TAT−F435−KRABまたはTAT−F435−p65を形質転換体から発現させた。実施例1参照。TAT−F435−p65を用いた実験において、本発明者らは、その低い発現水準に基づいてTAT−F435−p65タンパク質を含む100μgの細菌性溶解物で293細胞を処理した。前記細胞を溶解物とともに3時間培養した後、培養培地を新鮮な新しい培地に取り替えた。しかし、これは、伝達後48時間目に分泌されたVEGFによって測定されたVEGF発現を細菌性溶解物で処理されたがTAT−F435−p65を発現しなかった細胞に比べて2.5(±0.5)倍増加させるのに十分であった(図3のA参照)。
【0248】
個別的な実験においては、400μg/mlの精製されたTAT−F435−KRABタンパク質を293細胞(12−ウェルプレート)に3時間晒した。前記細胞を新鮮な培養培地で48時間さらに培養した。前記培養上澄液と細胞をVEGFタンパク質生産およびVEGF mRNA量を分析するために収穫した。本発明者らは、TAT−F435−KRABが、RT−PCR方法(GAPDH mRNA量に対して標準化される)によって測定されたVEGF mRNA水準をPBSで処理された対照群培養液と比較して3.1(±0.35)倍抑制したことを観察した(図3のB参照)。VEGF生産はまたPBSで処理された対照群培養液に比べてTAT−F435−KRABで処理された培養液で2.7(±0.2)倍減少した(図3のC参照)。
【実施例7】
【0249】
ヒト肺癌細胞株H460においてVEGF−A発現を減少させるTAT−F435−KOXタンパク質
VEGF−Aは、非−小細胞肺癌細胞株H460およびヒト結腸癌細胞株HCT116およびHM−7のように血管が高度に発達した発癌性細胞株で過発現される。VEGF−Aの発現はHEK293F細胞での発現に比べてこれらの細胞において5〜10倍程度高い。癌治療剤として伝達可能なジンクフィンガータンパク質の一般的な適応性を調査するために、本発明者らはH460細胞において非正常なVEGF−A過発現を誘発する癌−特異的な転写回路を無効化するTAT−F435−KOXタンパク質の能力を評価した。本発明者らの観察はまたTAT−ZFP−KOXおよびこれに関連する形状が内因性遺伝子を調節するための伝達可能タンパク質を考案するのに使用され得ることを確認する。
【0250】
本発明者らは、H460細胞をTAT−F435−KOXタンパク質で処理した。TAT−F435−KOXタンパク質は対照群に比べてVEGF−Aタンパク質の発現水準を3倍程度減少させた。前記H460細胞を3時間40μg/ウェルのTAT−F435−KOXタンパク質に晒した。次いで、分泌されたVEGF−Aタンパク質の濃度を様々な時点で測定した。処理された細胞周辺の培地内VEGF−A濃度は伝達12時間後処理されていない対照群に比べて約3.8倍、24時間後は約3.4倍、48時間後は約1.9倍減少した。図4参照。これらの結果は、TAT−F435−KOXが癌細胞でVEGF−Aの発現を抑制できることを示す。TAT−F435−KOXの調節効果は単一試験管内処理以降に少なくとも48時間持続された。TAT−F435−KOXは10μg/ウェルの容量で使用されたとき、H460細胞株において同様な効果を示した。
【実施例8】
【0251】
TAT−F435−KOXタンパク質の安定性
本発明者らは、無細胞培養培地でTAT−F435−KOXタンパク質の安定性を研究した。前記TAT−F435−KOXタンパク質をNi−NTAカラムで精製した。その後、前記タンパク質をDMEM(10%FBS、1%NEAA)で37℃で培養した。得られた混合物をHA−特異的抗体を用いたウェスタンブロット分析によって様々な時点でTAT−F435−KOXタンパク質に対して評価した。
【0252】
ウェスタンブロットはTAT−F435−KOXタンパク質(単一Ni−NTAカラムで精製された)は迅速に失われ、長期間その活性を保持しないことを示した。図5のA参照。本方法によって精製されたタンパク質の消失がプロテアーゼ活性に起因するかどうかを調査するために、本発明者らは培養培地に添加する前にTAT−F435−KOXタンパク質をプロテアーゼ抑制剤カクテル(P8849, Sigma)で処理した。プロテアーゼ抑制剤処理は培養条件でのTAT−F435−KOXタンパク質の安定性を著しく増加させた。図5のB参照。
【0253】
本発明者らは少なくとも二つのカラムを用いて精製された同じタンパク質の挙動に対する観察を比較した。この場合、Ni−NTA親和カラム後に、前記タンパク質をイオン−交換カラムでさらに精製した。
【0254】
それから、本発明者らは、約5×10個の細胞と80μgのTAT−F435−Koxを用いてH460ヒト結腸癌細胞において前記タンパク質の安定性を評価した。この細胞を前記の2次精製されたTAT−F435−KOXタンパク質で3時間処理し、新鮮な成長培地に取り替えた。その後、前記処理した細胞を様々な時点で収穫した。対照群細胞はTAT−F435−KOXタンパク質とともに5分以内培養して収穫した。
【0255】
ウェスタンブロットによって検出されたタンパク質が細胞内に流入されたのではなく、培地中に残っている残存するTAT−F435−KOXタンパク質ではないということを立証するために、細胞表面に結合したタンパク質を除去するために前記細胞をトリプシンで処理し、よく洗浄して細胞溶解物を製造した。各溶解物80μgをSDS−PAGEゲル上で電気泳動させ、ゲルをHYBOND−P(登録商標)膜(Amersham Pharmacia Biotech)に移した後、検出のために抗体と接触させた。元来のTAT−F435−KOXタンパク質がこれらの細胞溶解物内で検出された。具体的に、Ni−NTA親和カラムおよびイオン−交換カラムで連続的に精製された前記タンパク質(TAT−F435−KOX)は細胞内で少なくとも48時間安定であることが観察された。図6参照。
【0256】
TAT−F435−KOXタンパク質(および本発明に記述された他の伝達可能タンパク質)は封入体からまたは水溶性タンパク質として発現され、精製され得る。本発明者らは、封入体から精製されたTAT−F435−KOXタンパク質の特性を水溶性発現システムを用いて生産された同じタンパク質と比較した。封入体または他のシステムから得られたジンクフィンガータンパク質は亜鉛の存在下で再重畳され得る。たとえば、前記タンパク質は(たとえば、ウレアのようなカオトロープ(chaotrope)内で)変性された後、亜鉛含有緩衝溶液、たとえば、PBS(20mM ZnCl、1mM DTT含有)で透析される。前記透析は2時間ごとに緩衝溶液(4l)を交換、たとえば、総4回の交換で行われ得る。前記過程は典型的に4℃で行われる。
【0257】
水溶性発現のために、TAT−F435−KOXをコーディングする核酸配列を変形されたpET43.1Bプラスミド(Novagen)にサブクローニングした。前記プラスミドは、六つのヒスチジンタグをコーディングする配列を含む。前記タンパク質は、大腸菌BL21(DE3)でHis6−NusA−TAT−F435−KOXの融合タンパク質として発現された。前記融合タンパク質をNi−NTAカラム上で精製した。前記TATドメインと同じ起源のトロンビン切断部位N−末端が存在するので、NusAドメインをトロンビン切断によって除去した。放出されたTAT−F435−KOXはイオン交換カラム上でさらに精製し得る。
【0258】
293F細胞を封入体から精製されたTAT−F435−KOXタンパク質および水溶性発現システムから精製された同じタンパク質で処理した。二つのタンパク質はいずれもVEGF−Aタンパク質の生産を抑制したが、抑制程度の違いは大きくなかった。
【0259】
本発明に係る多くの実施態様を記述した。それにもかかわらず、本発明の真意および範囲を外れない様々な変形が可能であることを理解しなければならない。したがって、他の実施態様も特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【図1】Ni−NTA親和性クロマトグラフィー後の精製されたTAT−F435−KOXタンパク質のゲルを示す。
【図2】イオン交換クロマトグラフィー後の精製されたTAT−F435−KOXタンパク質のゲルを示す。
【図3】TAT−F435−p65またはTAT−F435−KOXによる内因性VEGF発現の活性化または抑制を示す。
【図4】H460細胞においてTAT−F435−KOXによるVEGF−Aタンパク質生産の抑制を示す。
【図5】Ni−NTA精製されたTAT−F435−KOXの安定性を示すものであって、Aは培養培地で培養されたタンパク質を用いたウェスタンブロットの結果を示し、Bは培養培地で培養する前にプロテアーゼ阻害剤カクテルで処理されたタンパク質を用いたウェスタンブロットの結果を示す。
【図6】伝達後、多様な時点でH460細胞から検出されたTAT−F435−KOXタンパク質を用いたウェスタンブロットの結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)複数のジンクフィンガードメイン;および
b)細胞膜を介してタンパク質を移動(translocation)させるのに効果的な異種のタンパク質伝達ドメイン(protein transduction domain)を含む、
キメラタンパク質。
【請求項2】
前記タンパク質伝達ドメインが複数のジンクフィンガードメインのN−末端またはC−末端にあることを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項3】
前記複数のジンクフィンガードメインが3〜6個のジンクフィンガードメインを含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項4】
前記キメラタンパク質がVEGF−A遺伝子の一つの部位に特異的に結合し、細胞内でVEGF−A遺伝子の転写を調節できることを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項5】
前記キメラタンパク質が、以下のタンパク質からなる群から選ばれるタンパク質をコーディングする遺伝子の一つの部位に特異的に結合し、細胞内で前記遺伝子の転写を調節できることを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質:
ジュンB原癌遺伝子(jun B proto-oncogene)、タンパク質キナーゼC、レクチン、脳−特異的Na−依存性無機リン酸塩共輸送体、細胞レチノイン酸−結合タンパク質1、細胞レチノイン酸−結合タンパク質2、カドヘリン(cadherin)13、H−カドヘリン(心臓)、血管内皮細胞成長因子(VEGF−A)、色素上皮−由来因子(PEDF)、分化−関連遺伝子−1(Drg−1)、転写因子E2F、初期成長反応−1(EGR−1)、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)、A20、Fas、黒色腫分化関連遺伝子−7(MDA−7)、プレセニリン−1(PS−1)、アンジオテンシン転換酵素、アンジオポイエチン−2、b−セクリターゼ(BACE1)、mmp3、CHFR(checkpoint with forkhead associated and ring finger)、ペルオキシゾーム増殖因子−活性化されたレセプターガンマ(PPAR−gamma)、TNF−関連アポトーシス−誘導リガンド(TRAIL)、Ku−80、ATM(ataxia-telangiectasia mutated)、BRCA、CC−ケモカインレセプター5(CCR5)、脳−由来神経栄養因子(BDNF)、腫瘍壊死因子アルファ−誘導されたタンパク質−3(TNFAIP3)(A20)、c−myc、ハイポキシア−誘導性因子−1アルファ(HIF−1アルファ)、カスパーゼ−3、細胞間接着分子タイプI(ICAM−1)、アンジオテンシンIIレセプター1(AT−1R)、血小板−由来成長因子、インシュリン−類似成長因子−Iおよび−II、神経成長因子、aFGF、bFGF、表皮細胞成長因子(EGF)、TNF−αおよびTNF−β、エリトロポイエチン、トロンボポイエチン、ムシン(mucins)、成長ホルモン、プロインシュリン、インシュリンA−鎖、インシュリンB−鎖、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、チロキシン(thyroxine)、卵胞促進ホルモン(follicle stimulating hormone)、カルシトニン、因子VIII、造血成長因子、エンケファリナーゼ(enkephalinase)、MIS(Mullerian-inhibiting substance)、ゴナドトロピン−関連ペプチド、組織因子タンパク質、インヒビン(in
hibin)、アクチビン(activin)、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、M−CSF、GM−CSF、G−CSF、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12およびIL−13。
【請求項6】
前記複数のジンクフィンガードメインが表2の一つの列にある一セットのモチーフのDNA−接触残基に該当するDNA接触残基を有するドメインを含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項7】
前記複数のジンクフィンガードメインが下記からなる群から選ばれる一セットのモチーフのDNA−接触残基に該当するDNA接触残基を有するドメインを含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質:mQSHR−mRDHT−mRSNR;mQSHT−mRSHR−mRDHT;mQSHR−mRDHT−mRSHR;mRSHR−mRDHT−mVSNV;mQSHV−mRDHR−mRDHT;mRDER−mQSSR−mQSHT−mRSNR;mDSAR−mRSNR−mRDHT−mVSSR;mQSHT−mDSAR−mRSNR−mRDHT;mRDHT−mVSNV−mQSHT−mDSAR;mRSHR−mDSCR−mQSHT−mDSCR;mQSNR−mQSHR−mRDHT−mRSNR;mCSNR−mRDHT−mRSNR−mRSHR;mRSHR−mQSHT−mRSHR−mRDER;mQSNR−mRSHR−mQSSR−mRSHR;mQSHT−mDSCR−mRDHT−mCSNR;mQSHT−mWSNR−mRSHR−mWSNR;およびmVSNV−mRSHR−mRDER−mQSNV。
【請求項8】
核位置シグナルをさらに含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項9】
前記複数のジンクフィンガードメインのうち少なくとも一つが天然型ジンクフィンガードメインの配列を有することを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項10】
前記複数のジンクフィンガードメインのうち少なくとも一つがヒトのものであることを特徴とする請求項9記載のキメラタンパク質。
【請求項11】
前記タンパク質伝達ドメインがウイルス配列またはヒト配列を含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項12】
前記タンパク質伝達ドメインがHIV tatタンパク質伝達ドメイン、HSV VP22タンパク質、またはアンテナペディアホメオドメイン(Antennapedia homeodomain)を含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項13】
前記HIV tatタンパク質伝達ドメインがアミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:1)を含むことを特徴とする請求項12記載のキメラタンパク質。
【請求項14】
前記タンパク質伝達ドメインが変異または合成されたタンパク質伝達ドメインを含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項15】
前記タンパク質伝達ドメインが配列番号:69〜72のいずれか一つのアミノ酸配列を有する変異されたtatタンパク質伝達ドメイン、6〜12個のアルギニン残基からなるポリアルギニンオリゴペプチド、または配列番号:4のアミノ酸配列を有するHN1合成ペプチドを含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項16】
前記キメラタンパク質が細胞の膜と接触した後、その細胞内で少なくとも一つの内因性遺伝子を調節できることを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項17】
前記キメラタンパク質が、細胞内遺伝子全体の1%を超えない範囲で細胞内で少なくとも一つの細胞内遺伝子の転写を調節できることを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項18】
前記キメラタンパク質が、細胞内遺伝子全体の0.01%を超えない範囲で細胞内で少なくとも一つの細胞内遺伝子の転写を調節できることを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項19】
前記キメラタンパク質が細胞透過試薬の不在下で外部環境から哺乳動物細胞内に移動(translocate)できることを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項20】
前記タンパク質伝達ドメインと複数のジンクフィンガードメインが同一のポリペプチド鎖の構成要素であることを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項21】
細胞標的化(targeting)ドメインをさらに含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項22】
前記細胞標的化ドメインが免疫グロブリン可変ドメイン、成長因子、ウイルスタンパク質の細胞結合ドメイン、または細胞外タンパク質の細胞結合ドメインを含むことを特徴とする請求項21記載のキメラタンパク質。
【請求項23】
細胞表面タンパク質結合ドメインをさらに含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項24】
精製道具(handle)をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項25】
前記精製道具が金属をキレートできるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項24記載のキメラタンパク質。
【請求項26】
前記複数の各ジンクフィンガードメインが亜鉛原子に結合していることを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項27】
転写活性化ドメインをさらに含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項28】
前記転写活性化ドメインがp65またはVP16活性化ドメインを含むことを特徴とする請求項27記載のキメラタンパク質。
【請求項29】
転写抑制ドメインをさらに含むことを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項30】
前記転写抑制ドメインがKidまたはKOX抑制ドメインを含むことを特徴とする請求項29記載のキメラタンパク質。
【請求項31】
前記タンパク質が100μg/mlの濃度で細胞外培地の存在下で、3×10細胞/ml濃度のヒト胚芽腎臓(HEK)293細胞を培養する分析において、前記タンパク質が培養された前記細胞の50%以上に伝達されることを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項32】
前記キメラタンパク質がヒト組織培養細胞において0.5時間以上安定であることを特徴とする請求項1記載のキメラタンパク質。
【請求項33】
請求項1記載のキメラタンパク質および薬剤学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項34】
前記タンパク質のジンクフィンガードメインのシステイン残基間の二硫化結合の結形成を減少させるのに効果的な量の還元剤をさらに含むことを特徴とする請求項33記載の組成物。
【請求項35】
前記還元剤がグルタチオンまたはDTTを含むことを特徴とする請求項34記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物が細胞培養培地と配合されたとき、前記タンパク質が細胞培養培地で12時間以上安定であることを特徴とする請求項34記載の組成物。
【請求項37】
約1μM〜500μMの塩化亜鉛をさらに含むことを特徴とする請求項34記載の組成物。
【請求項38】
新生物疾患、炎症性疾患または血管生成−基盤疾患を患っているか、患っていると疑われる対象(subject)の治療に用いられ、前記キメラタンパク質が対象の細胞内でVEGF−A転写を調節するようにエフェクター(effector)ドメインをさらに含むことを特徴とする請求項33記載の組成物。
【請求項39】
a)ジンクフィンガードメイン;およびb)前記ジンクフィンガードメインに対してN−末端に位置する異種のタンパク質伝達ドメインを含むポリペプチドをコーディングするコーディング配列を含む核酸。
【請求項40】
複数のジンクフィンガードメインおよび異種のタンパク質伝達ドメインを含み、対象の細胞内で内因性遺伝子の転写を調節できるキメラDNA結合タンパク質を対象に投与することを含む、対象の細胞内で遺伝子発現を変更させる方法。
【請求項41】
前記キメラタンパク質が第1投与量として投与され、更に第2投与量の前記キメラタンパク質を対象に投与することを含むことを特徴とする請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記第1および第2投与量が約48時間以上間をおいて投与されることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記第1投与量が第2投与量よりも25%以上少ないことを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記内因性遺伝子がVEGF−Aであることを特徴とする請求項40記載の方法。
【請求項45】
前記対象が新生物疾患、炎症性疾患または血管生成−基盤疾患を患っているか、患っていると疑われ、前記DNA結合タンパク質が対象の細胞内でVEGF−A転写を調節するようにエフェクタードメインをさらに含むことを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項46】
複数のジンクフィンガードメインおよびタンパク質伝達ドメインを含み、細胞内で内因性遺伝子の転写を調節できるキメラDNA結合タンパク質を内因性遺伝子の転写を48時間以上調節するのに効果的な量で細胞と接触させることを含む、真核培養細胞内で遺伝子発現を変更させる方法。
【請求項47】
前記接触から48時間以上後に、前記細胞を第2投与量のDNA結合タンパク質と接触させることをさらに含むことを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記内因性遺伝子がVEGF−Aであることを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項49】
外因性ポリペプチドを含み、前記外因性ポリペプチドをコーディングする核酸を含んでない真核細胞であって、ここで、前記外因性ポリペプチドが複数のジンクフィンガードメインおよび前記DNA結合ドメインに対して異種であるタンパク質伝達ドメインを含み、前記外因性ポリペプチドが細胞内に導入された後、12時間以上細胞内で内因性遺伝子の選択されたサブセット(subset)の転写を調節する機能があることを特徴とする細胞。
【請求項50】
前記複数のジンクフィンガードメインが天然型ジンクフィンガードメインを含むことを特徴とする請求項49記載の細胞。
【請求項51】
前記複数のジンクフィンガードメインがヒトジンクフィンガードメインを含むことを特徴とする請求項49記載の細胞。
【請求項52】
前記外因性ポリペプチドが細胞内で48時間以上機能を維持することを特徴とする請求項49記載の細胞。
【請求項53】
1)ジンクフィンガードメインおよび異種タンパク質伝達ドメインを含むポリペプチドをコーディングするコーディング配列、および2)前記コーディング配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む核酸を含む宿主細胞を提供する段階;
前記核酸をポリペプチドが合成される条件下で宿主細胞内で発現させる段階;および
前記宿主細胞または宿主細胞周囲の培地からポリペプチドを分離する段階を含む、
伝達可能なDNA結合ポリペプチドの製造方法。
【請求項54】
前記分離段階が封入体(inclusion bodies)の精製を含むことを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記分離段階が親和性クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーを含むことを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項56】
前記分離されたポリペプチドを薬剤学的に許容される担体と配合することによって医薬組成物を製造する段階をさらに含むことを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項57】
真核細胞を、複数のジンクフィンガードメインおよびタンパク質伝達ドメインを含み、細胞内で内因性遺伝子の転写を調節できるキメラDNA結合タンパク質と接触させることを含む、真核細胞内で遺伝子発現を変更させる方法。
【請求項58】
前記真核細胞が哺乳動物細胞であることを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記真核細胞がヒト細胞であることを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項60】
前記真核細胞が培養細胞であることを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項61】
前記細胞が対象から得られるか、対象内にあることを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項62】
前記対象がヒトであることを特徴とする請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記キメラDNA結合タンパク質が複数のジンクフィンガードメインを含むことを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項64】
前記タンパク質伝達ドメインがウイルス配列またはヒト配列を含むことを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項65】
前記タンパク質伝達ドメインがHIV tatタンパク質伝達ドメイン、HSV VP22タンパク質、またはアンテナペディアホメオドメインを含むことを特徴とする請求項64記載の方法。
【請求項66】
前記HIV tatタンパク質伝達ドメインがアミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:1)を含むことを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記タンパク質伝達ドメインが変異または合成されたタンパク質伝達ドメインを含むことを特徴とする請求項57記載のキメラタンパク質。
【請求項68】
前記タンパク質伝達ドメインが配列番号:69〜72のいずれか一つのアミノ酸配列を有する変異されたtatタンパク質伝達ドメイン、6〜12個のアルギニン残基からなるポリアルギニンオリゴペプチド、または配列番号:4のアミノ酸配列を有するHN1合成ペプチドを含むことを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項69】
前記タンパク質伝達ドメインと複数のジンクフィンガードメインが同一ポリペプチド鎖の構成要素であることを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項70】
前記キメラDNA結合タンパク質が細胞標的化ドメインをさらに含むことを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項71】
前記細胞標的化ドメインが免疫グロブリン可変ドメイン、成長因子、ウイルスタンパク質の細胞結合ドメイン、または細胞外タンパク質の細胞結合ドメインを含むことを特徴とする請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記内因性遺伝子が以下のタンパク質からなる群から選ばれるタンパク質をコーディングする遺伝子であることを特徴とする請求項57記載の方法:
ジュンB原癌遺伝子、タンパク質キナーゼC、レクチン、脳−特異的Na−依存性無機リン酸塩共輸送体、細胞レチノイン酸−結合タンパク質1、細胞レチノイン酸−結合タンパク質2、カドヘリン13、H−カドヘリン(心臓)、血管内皮細胞成長因子(VEGF−A)、色素上皮−由来因子(PEDF)、分化−関連遺伝子−1(Drg−1)、転写因子E2F、初期成長反応−1(EGR−1)、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)、A20、Fas、黒色腫分化関連遺伝子−7(MDA−7)、プレセニリン−1(PS−1)、アンジオテンシン転換酵素、アンジオポイエチン−2、b−セクリターゼ(BACE1)、mmp3、CHFR(checkpoint with forkhead associated and ring finger)、ペルオキシゾーム増殖因子−活性化されたレセプターガンマ(PPAR−gamma)、TNF−関連アポトーシス−誘導リガンド(TRAIL)、Ku−80、ATM(ataxia-telangiectasia mutated)、BRCA、CC−ケモカインレセプター5(CCR5)、脳−由来神経栄養因子(BDNF)、腫瘍壊死因子アルファ−誘導されたタンパク質−3(TNFAIP3)(A20)、c−myc、ハイポキシア−誘導性因子−1アルファ(HIF−1アルファ)、カスパーゼ−3、細胞間接着分子タイプI(ICAM−1)、アンジオテンシンIIレセプター1(AT−1R)、血小板−由来成長因子、インシュリン−類似成長因子−Iおよび−II、神経成長因子、aFGF、bFGF、表皮細胞成長因子(EGF)、TNF−αおよびTNF−β、エリトロポイエチン、トロンボポイエチン、ムシン、成長ホルモン、プロインシュリン、インシュリンA−鎖、インシュリンB−鎖、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、チロキシン、卵胞刺激ホルモン、カルシトニン、因子VIII、造血成長因子、エンケファリナーゼ、MIS(Mullerian-inhibiting substance)、ゴナドトロピン−関連ペプチド、組織因子タンパク質、インヒビン、アクチビン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、M−CSF、GM−CSF、G−CSF、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12およびIL−13。
【請求項73】
前記キメラDNA結合タンパク質が転写開始部位の1000、500、300、または100塩基対内の部位に特異的に結合することを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項74】
前記キメラDNA結合タンパク質がTATAボックスの1000、500、300、または100塩基対内の部位に特異的に結合することを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項75】
前記キメラDNA結合タンパク質が、内因性遺伝子の調節領域で天然型転写因子が結合する部位の20塩基対内の部位または前記結合部位と重なり合う部位に特異的に結合することを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項76】
前記キメラDNA結合タンパク質が内因性遺伝子の発現を増加させることを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項77】
前記キメラDNA結合タンパク質が内因性遺伝子の発現を減少させることを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項78】
前記細胞が新生物細胞であることを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項79】
コーディング配列および前記コーディング配列に作動可能に連結されたプロモーターを有する核酸を含む宿主細胞であって、前記コーディング配列がシグナル配列、複数のジンクフィンガードメインおよびタンパク質伝達ドメインを含むポリペプチドをコーディングすることを特徴とする宿主細胞。
【請求項80】
一つ以上の細胞に、シグナル配列、複数のジンクフィンガードメインおよびタンパク質伝達ドメインを含むキメラタンパク質をコーディングするコーディング配列および前記コーディング配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む核酸を導入して、前記細胞が前記核酸を発現して、前記キメラタンパク質を生産および分泌するようにことによって、前記キメラタンパク質が他の細胞に入ってその細胞の内因性遺伝子の発現を調節できるようにすることを含む、内因性遺伝子の発現を変更させる方法。
【請求項81】
前記核酸が導入される前記細胞が対象内にあることを特徴とする請求項80記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−526999(P2006−526999A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516918(P2006−516918)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001385
【国際公開番号】WO2004/108883
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(504058950)トゥールゲン・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】