説明

伴奏作成システム及び伴奏作成方法,プログラム

【課題】ユーザが他のパートの音に頼ることなく演奏できる個人練習用の伴奏を作成して、ユーザの演奏スキルの向上を図る伴奏作成システム及び伴奏作成方法,プログラムを提供する。
【解決手段】合奏データ読出手段22aが伴奏再生端末1からの伴奏指令に対応する合奏データを合奏データ記憶部21から読み出して、同期リズム抽出手段22bがこの合奏データのうち、ユーザに指定されたパートの全てと、その他の各パート内の当該指定パートとリズムが重なっている部分と抽出し、伴奏データ作成手段22cが、抽出された他のパートの一部と指定パートの全てを無音にして伴奏データを作成して伴奏再生端末1へ送信し、伴奏再生部13が伴奏データを音声信号に変換して音声出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパートからなる合奏曲から指定のパートを消音して伴奏を作成する伴奏作成システム及び伴奏作成方法,プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
管弦楽や吹奏楽,合唱など、複数のパートからなる合奏曲の練習は、全パートの演奏者が一同に集まって行われる必要があるが、演奏者及び指導者の全員が集まれる日時及び場所を確保するのは容易ではない。
【0003】
これに対し、演奏者各々が自分のパートの演奏を個人練習するために使用する技術として、複数のパートからなる合奏曲のデータを、ユーザが指定したパートの音だけを消して再生するパート練習用のカラオケ装置が知られている。
【0004】
この技術は、合奏曲毎に各パートのデータを個別に記録しておき、合奏曲を再生する際に、指定されたパートのデータをミュート処理することで、指定のパート以外を再生することができる技術である。これにより、ユーザは自分のパートを除く伴奏に合わせた合奏練習を、一人だけで自主的に、時間と場所を問わず、繰り返し行うことができるようになった。
【0005】
これに関連した技術として、楽曲毎に各パートの演奏データを個別に記憶し、指定のパートの演奏データに対して処理を施す技術が、特許文献1及び2に開示されている。
【0006】
この特許文献1に開示された関連技術は、各楽曲毎に複数のパートの演奏データ格納した楽音情報記憶手段と、各演奏データを再生する際の楽器音の種類情報を複数記憶した楽器情報記憶手段と、楽音情報記憶手段に記憶された楽曲中からの再生楽曲の選択及び楽器情報記憶手段に格納された楽器音の種類情報からの所定の演奏パートの再生楽器の指定を行うための入力手段とを含み、各パートの楽器音を変更可能にした技術である。
【0007】
また、特許文献2に開示された関連技術は、CPUがリモコンによって楽器の指定がなされたことを検知すると、HDDからカラオケ曲データを読み出し、該指定された楽器に対応するパートを除いた楽音データを再生装置及びアンプを介してスピーカから出力すると共に、インターフェースを介して接続されたMIDI楽器(MIDIは登録商標)から操作信号が入力されたことを検知すると、該MIDI楽器に対応した楽器演奏音を自動演奏部にて作成し、該作成された楽器演奏音を再生装置及びアンプを介してスピーカから出力させるといった技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−168493号公報
【特許文献2】特開平10−282957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した各関連技術は、1つの曲に対して複数のパートの演奏データを用意しパート毎に音を加工する技術であり、合奏曲内の指定のパートの演奏データのみを消音した伴奏を作成できるが、この伴奏に合わせてユーザがパート練習を行った場合、同じリズムのフレーズを持つ他のパートの音に頼った演奏をしてしまう可能性が高く、ユーザの演奏スキル向上を妨げてしまうという課題があった。
【0010】
これは、合奏曲の多くが、木管楽器,金管楽器,絃楽器が共同で同時に同じリズム(譜割り)のフレーズを発して和音を形成しているためであり、例えば、図8に示す楽譜のような、フルートのパートとトロンボーンのパートとがある曲の場合、トロンボーンの1小節目の「ソ」の音(図8のX)と、フルートの1小節目の「ラ」の音(図8のK)とが、同じタイミングにあると共に同じ音価であり、同様に、トロンボーンの3小節目の「レ」の音(図8のY)と、フルートの3小節目の「ミ」(図8のL)の音とが重なっており、トロンボーンの5小節目の「ソ」の音(図8のZ)と、フルートの5小節目の「ミ」の音(図8のM)とが重なっている。
【0011】
この曲におけるフルートのパートのみをミュートした音を伴奏にして、ユーザがフルートパートの練習を行った場合、ユーザは、フルートパートと重なっているトロンボーンパートの音(図8のX,Y,Z)に頼って演奏してしまい、音を出すタイミングを意識しないまま練習を繰り返してしまう恐れがあり、高いレベルの合奏力を身につけることが困難であった。
【0012】
そこで、本発明は、上記関連技術が有する課題を改善して、ユーザが他のパートに頼ることなく演奏できるような個人練習用の伴奏を得られるようにし、これにより、ユーザの演奏スキルの向上を図り得る伴奏作成システム及び伴奏作成方法,プログラムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の伴奏作成システムは、合奏曲の各パートの演奏データを含む合奏データを予め記憶した合奏データ記憶部と、ユーザの操作に従って伴奏指令を入力する入力部と、この入力された伴奏指令で指定された曲の合奏データを前記合奏データ記憶部から読み出す合奏データ読出手段と、この読み出された合奏データにおける前記伴奏指令で指定されたパートとその他の各パートとの演奏データを個別に比較照合して、この他の各パート内の当該指定パートとリズムが重なっている部分を抽出する同期リズム抽出手段と、前記伴奏指令で指定されたパートの演奏データの全てと、前記同期リズム抽出手段に抽出された他の各パートの演奏データの一部分と、を無音にするように変換して前記伴奏指令で指定された曲の伴奏データを作成する伴奏データ作成手段と、この作成された伴奏データを予め設定された音色の音声信号に変換してスピーカへ出力する伴奏再生部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の伴奏作成方法は、合奏曲の各パートの演奏データを含む合奏データを予め記憶した合奏データ記憶部から指定の曲の合奏データを読み出し、この読み出された合奏データにおける指定のパートとその他の各パートとの演奏データを個別に比較照合し、この比較照合の結果に基づいて、前記他の各パート内の前記指定のパートとリズムが重なっている部分を抽出し、前記指定のパートの演奏データの全てと前記抽出された他の各パートの演奏データの一部分とを無音にするように変換して前記指定の曲の伴奏データを作成し、この作成された伴奏データを予め設定された音色の音声信号に変換してスピーカへ出力することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の伴奏作成用プログラムは、合奏曲の各パートの演奏データから成る合奏データを予め記憶した合奏データ記憶部と、ユーザの操作に従って伴奏指令を入力する入力部と、この入力された伴奏指令で指定された曲の合奏データから同じく伴奏指令で指定されたパートの音を消した伴奏データを作成する伴奏データ作成部と、この作成された伴奏データを予め設定された音色の音声信号に変換してスピーカへ出力する伴奏再生部と備えた伴奏作成システムにあって、前記伴奏指令で指定された曲の合奏データを前記合奏データ記憶部から読み出す読出機能と、この読み出された合奏データにおける前記伴奏指令で指定されたパートとその他の各パートとの演奏データを個別に比較照合しこの他の各パート内の当該指定パートとリズムが重なっている部分を抽出する抽出機能と、この抽出された前記他の各パートの演奏データの一部分と前記指定されたパートの演奏データの全てとを無音にするように変換して前記指定された曲の伴奏データを作成し前記伴奏再生部へ出力する伴奏データ作成機能とを、前記伴奏データ作成部が備えているコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように、複数のパートからなる合奏曲の合奏データのうち、ユーザに指定されたパートの全てと、その他の各パート内の当該指定パートとリズムが重なっている部分と、を無音にして伴奏データを作成し、この伴奏データを音声信号に変換して音声出力するので、この伴奏に合わせて指定のパートを練習するユーザに対し、他のパートに頼ることのない自立した演奏での練習を実行させることができ、これにより、ユーザの演奏スキルの向上を有効に促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる一実施形態の伴奏作成システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に開示した実施形態における演奏データの一例のイメージを示す図である。
【図3】図1に開示した実施形態における伴奏作成センターの伴奏作成処理について示す説明図である。
【図4】図1に開示した実施形態における合奏データと作成される伴奏データとの対応関係を示す説明図である。
【図5】図1に開示した実施形態における合奏データの一例のイメージを示す図である。
【図6】図5に開示した合奏データを基に作成される伴奏データの一例のイメージを示す図である。
【図7】図1に開示した実施形態の伴奏作成システムの動作を示すシーケンス図である。
【図8】2つのパートからなる合奏曲の一例の総譜を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる一実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の伴奏作成システムの構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、本実施形態の伴奏作成システムは、ユーザ伴奏再生端末1と、伴奏作成センター2とがネットワーク3を介して接続した構成である。
【0020】
伴奏再生端末1は、ネットワーク3を介して伴奏作成センター2と通信を行う通信制御部10と、ユーザの操作に従って伴奏指令を入力する入力操作盤11と、この伴奏指令を通信制御部10を介して伴奏作成センター2へ送信する主制御部12と、伴奏指令に応じて伴奏作成センター2から送られてきた伴奏データを予め設定された音色の音声信号に変換する伴奏再生部13と、この音声信号に対応して音声を出力するスピーカ14と、この音声信号を記憶する伴奏メモリ15と、音を音声信号に変換して出力するマイク16と、マイク16からの音声信号を録音メモリ18に記録する録音部17と、主制御部12からの画像情報を表示する表示部19とを備えている。
【0021】
主制御部12は、伴奏可能な合奏曲リスト,曲を構成する各パートのリストを表示部に表示させる機能と、入力操作盤11から入力された伴奏指令を伴奏作成センター2へ送信する機能と、伴奏指令に応じて伴奏作成センター2から送信されてくる伴奏データ及び当該指令で指定されたパートの演奏データを受け取り、伴奏データを伴奏再生部13へ送出する機能と、伴奏データに対応する伴奏譜画像情報、および指定のパートの演奏データに対応するパート譜画像情報を作成し表示部19に表示させる機能と、伴奏の部分繰り返し又は速度調整、伴奏とユーザの演奏の同時録音、メトロノーム音の出力、の指令を入力操作盤11から入力し指令にしたがって伴奏再生部13を制御する機能とを備えている。
【0022】
伴奏再生部13は、ピアノ音源などの音源を予め保持しており、伴奏データを音源を用いて音声信号に変換し出力する機能と、伴奏の部分繰り返し又は速度調整を伴奏メモリに記憶した音声信号データを用いて実行する機能と、伴奏とユーザの演奏の同時録音を録音部に指示する機能と、メトロノーム音を出力する機能とを備えている。この伴奏再生部13は、例えば、シンセサイザーであればよい。
【0023】
伴奏作成センター2は、ネットワーク3を介して伴奏再生端末1と通信を行う通信制御部20と、合奏曲の各パートの演奏データを含む合奏データを予め記憶した合奏データ記憶部21と、伴奏再生端末1から送られてくる伴奏指令で指定された曲の合奏データを合奏データ記憶部21から読み出し伴奏指令で指定されたパートの音を消して伴奏データを作成する伴奏データ作成部22と、この作成された伴奏データを記憶する伴奏データ記憶部23とを備えている。
【0024】
さらに、伴奏データ作成部22は、伴奏再生端末1からの伴奏指令で指定された曲の合奏データを合奏データ記憶部21から読み出す合奏データ読出手段22aと、この読み出された合奏データのうちの伴奏指令で指定されたパートとその他の各パートとの演奏データを個別に比較照合してこの他の各パート内の当該指定パートとリズムが重なっている部分を抽出する同期リズム抽出手段22bと、伴奏指令で指定されたパートの演奏データの全てと同期リズム抽出手段22bに抽出された他の各パートの演奏データの一部分とを無音にするように変換して指定曲の伴奏データを作成する伴奏データ作成手段22cとを備えている。
【0025】
ここで、合奏データは、合奏曲を構成する複数のパート毎の演奏データからなる情報であり、各演奏データには、曲の識別子とパートの識別子が付されている。また、この演奏データは、曲の各構成音の開始点と長さ,音高を記録した情報であり、伴奏再生端末1における伴奏再生部13に対して楽譜の役割をする情報である。
【0026】
具体的に、本実施形態における演奏データは、曲の識別子,パート識別子,曲の拍子を示す基本情報と、各構成音の高さ(音高)を示す実音譜情報と、各構成音の開始点と長さ(音価)を示すリズム体形譜情報とからなるデータであり、リズム体形譜情報は、曲を構成する音それぞれのタイミングとその相対的な長さ、及び無音部分のタイミングと相対的な長さを示す情報であり、すなわち、パート譜の五線を取り除いた音符と休符に相当する情報である。
【0027】
図2は、本実施形態における演奏データの一例をイメージ化した図である。図2は、4分の4拍子の曲のうち4小節分の演奏データを表しており、音高を「ド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ,シ」で表し、全音符を「◇」、2分音符を「□」、4分音符を「○」、8分音符を「△」で表している。
【0028】
図2に示すように、本実施形態の演奏データは、音の音高を示す実音譜情報と、音のタイミングと長さを示すリズム体形譜情報とからなり、リズム体形譜情報は、曲の拍子に対応して音の長さを示している。
【0029】
また、伴奏再生端末1から伴奏作成センター2へ送られる伴奏指令には、曲の識別子とパートの識別子が含まれており、合奏データ読出手段22aは、受けた伴奏指令に含まれている曲の識別子を基に、合奏データ記憶部21に記憶された情報を検索して、曲の識別子が一致する合奏データを読み出し、同期リズム抽出手段22bへ送出する機能を備えている。
【0030】
同期リズム抽出手段22bは、合奏データ読出手段22aに読み出された合奏データを受けて、前述した伴奏指令に含まれているパート識別子を基に、それと同じパート識別子が付された演奏データを合奏データから特定する機能と、この伴奏指令に応じて特定した演奏データとその合奏データにおける他の各演奏データとを個別に比較照合する照合機能と、この特定した演奏データのリズムと他の各演奏データのリズムとが一致した部分をその他の演奏データから抽出する抽出機能とを備えている。
【0031】
この抽出機能が抽出する、他の演奏データの一部分とは、伴奏指令で指定されたパートの演奏データにおける音符と、タイミング及び長さが共に一致する音符の部分である。
【0032】
ここで、同期リズム抽出手段22bの照合機能は、演奏データのリズム体形譜情報のみを互いに比較照合する機能であってもよい。このように構成することで、同期リズム抽出手段22bに対する負荷を軽減し照合処理を迅速に実行することが可能となり、伴奏データ作成部22による伴奏データ作成処理を高速化することができる。
【0033】
また、同期リズム抽出手段22bの照合機能は、互いの演奏データを1小節ごとに比較照合してもよい。
【0034】
伴奏データ作成手段22cは、合奏データ読出手段22aに読み出された合奏データのうち、伴奏指令に指定されたパートの演奏データの全てと、同期リズム抽出手段22bによって抽出された他の各パートの演奏データの一部分とを無音にするように変換して伴奏データを作成する機能と、この伴奏データと指定パートの演奏データとを通信制御部20に伴奏再生端末1へ送信させる機能とを備えている。
【0035】
図3は、伴奏データ作成部22が実行する伴奏データ作成処理を表す説明図である。図3では、合奏データ読出手段22aが読み出した合奏データに「第1パート」と「第2パート」の演奏データが含まれており、伴奏指令に「第1パート」の識別子が示されていたとする場合の、伴奏データ作成処理を表している。また、「第1パート」と「第2パート」の演奏データにおけるリズム体形譜情報については、全音符を「◇」、2分音符を「□」、4分音符を「○」、8分音符を「△」、全休符を「◆」、2分休符を「■」、4分休符を「●」、8分休符を「▲」で示している。
【0036】
図3に示すように、同期リズム抽出手段22bは、第1パートと第2パートとの演奏データを比較照合すると、第2パートにおける第1小節目の第1音と、第3小節目の第1音と、第6小節目の第1音及び第2音とを抽出することになり、伴奏データ作成手段22cは、第1パートの全てを消音し、第2パートの抽出された部分を消音して、図3に示す伴奏データを作成することになる。
【0037】
本実施形態においては、1つの合奏曲における複数のパートをその音域の高低に応じて予めグループ分けし、各演奏データに対し、そのパートが属するグループの識別子を付すようにしてもよい。例えば、ベートーベンの交響曲第7番であれば、フルート(第1,第2),オーボエ(第1,第2),クラリネット(第1,第2),トランペット,トロンボーン,ホルン,バイオリン(第1,第2)を高音域グループと設定すると共に、ファゴット,チューバ,ビオラ,チェロ,コントラバスを低音域グループと設定し、各パートの演奏データに対し予めグループ識別子を付すようにしてもよい。
【0038】
この場合、同期リズム抽出手段22bは、伴奏指令に応じて特定した演奏データに付されたグループ識別子と同じグループ識別子を持つ他の演奏データを合奏データ内から選出する機能を有し、前述の照合機能を、この選出した各演奏データを対象として、伴奏指令に応じて特定した演奏データとその他の全ての演奏データとを個別に比較照合する機能とするように構成する。このようにすると、同期リズム抽出手段22bに対する負荷がより軽減され照合処理を迅速に実行することが可能となる。
【0039】
さらにこの場合、伴奏データ作成手段22cは、同期リズム抽出手段22bで選出された同一グループの各演奏データに対して、伴奏指令に指定されたパートの演奏データの全てと、同期リズム抽出手段22bによって抽出された他の各パートの演奏データの一部分とを無音にするように変換して、別のグループの各演奏データをそのまま加えて伴奏データを作成するように構成するとよい。このようにすると、前述した例のように、演奏データを高音域グループと低音域グループに分類しておけば、高音域グループを伴奏の高音記号譜パートとし、低音域グループを低音記号譜パートとすることができる。この例の説明図を、図4に示している。図4においては、フルート(第1,第2),オーボエ(第1,第2),クラリネット(第1,第2),トランペット,トロンボーン,ホルン,バイオリン(第1,第2)の各パートを伴奏データにおける高音記号譜パートとし、ファゴット,チューバ,ビオラ,チェロ,コントラバスの各パートを伴奏データにおける低音記号譜パートに設定している。
【0040】
ここで、本実施形態における伴奏データ作成部22の伴奏データ作成の具体例について図5及び図6に基づいて説明する。図5は、合奏データの一例のイメージを示す図である。図6は、フルートを指定パートとして図5に示す合奏データを変換し得られる伴奏データのイメージを示す図である。図5及び図6は、ベートーベンの交響曲第7番の冒頭の6小節分の演奏データを表しており、音高を「ド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ,シ」で表し、全音符を「◇」、2分音符を「□」、4分音符を「○」、8分音符を「△」、全休符を「◆」、2分休符を「■」、4分休符を「●」、8分休符を「▲」で表している。
【0041】
本実施形態の伴奏データ作成部22においては、同期リズム抽出手段22bが、フルートと同じ高音域グループのオーボエ,トランペット,トロンボーン,第1バイオリン,第2バイオリンの各パートを選出し、この選出した中でフルートパートと他の各パートとを個別に比較照合すると、トランペットパートの第1小節目の第1音,第3小節目の第1音を抽出し、トロンボーンパートの第1小節目の第1音,第3小節目の第1音,第5小節目の第1音を抽出し、第1バイオリンパートの第1小節目の第1音,第3小節目の第1音,第5小節目の第1音を抽出し、第2バイオリンパートの第1小節目の第1音,第3小節目の第1音,第5小節目の第1音を抽出する。
【0042】
そして、伴奏データ作成手段22cが、この抽出された各音とフルートの全ての音を休符に変換し、別のグループであるファゴット,チューバ,ビオラ,チェロ,コントラバスの各パートの演奏データはそのままにして、伴奏データを作成する。この結果、図6に示すように、フルートとトロンボーンと第1バイオリンのパートが排除され、オーボエパートと、トランペットパートの第5小節,第6小節と、第2バイオリンパートの第2小節,第4小節,第6小節と、ファゴットとチューバとビオラとチェロとコントラバスの各パートの音からなる伴奏データが作成される。
【0043】
このように、本実施形態の伴奏作成システムによれば、合奏曲の合奏データを、指定のパートの音を消した伴奏データに変換して音声出力するので、ユーザは、この伴奏に合わせて自分のパートの練習を実行でき、一人で、いつどこでも、繰り返し、合奏の練習をすることができる。
【0044】
さらに、本実施形態の伴奏作成システムは、合奏曲から指定のパートだけでなく、他の各パート内の指定パートと同じタイミングで同じ長さの有音を無音に変換して伴奏データを作成するので、ユーザは、自身のパートと同じリズムの音が無い伴奏で練習することができる。このような伴奏に合わせた練習では、他のパートに頼れず、自分の演奏の音程が正しいこと、音量があること、リズム感が正しいこと、音のメリハリおよび強弱をつけることを確実に意識した演奏をしないと、合奏がアンバランスなままなので、ユーザ自身が客観的に合奏練習の成果を実感でき、自らの音で他パートをリードする心意気と自立心を養成することができる。
【0045】
また、本実施形態の伴奏作成システムによれば、交響曲などの合奏曲の演奏会を一人だけで催すことも可能である。
【0046】
次に、本実施形態の伴奏作成システムの動作について説明する。ここで、以下の動作説明は、本発明の伴奏作成方法の実施形態となる。
【0047】
図7は、本実施形態の伴奏作成システムの動作を示すシーケンス図である。図7に示すように、本実施形態の伴奏作成システムは、まず、伴奏再生端末1におけて、入力操作盤11がユーザの操作に従って伴奏指令を入力し(図7のステップs1)、この入力された伴奏指令を主制御部12が通信制御部10に伴奏作成センター2へ送信させる(図7のステップs2)。
【0048】
続いて、伴奏作成センター2において、通信制御部20が伴奏再生端末1からの伴奏指令を受信し、合奏データ読出手段22aが伴奏指令に係る指定曲の識別子を基に、指定曲の合奏データを合奏データ記憶部21から読み出す(図7のステップs3)。
【0049】
続いて、同期リズム抽出手段22bが、この読み出された合奏データにおける各パートの演奏データから、伴奏指令に係る指定パートの演奏データを特定し、この指定パートの演奏データに付されたグループ識別子と同じグループ識別子を持つ各パートの演奏データを選出する(図7のステップs4)。この選出した中で指定パートと他のパートとの演奏データを個別に比較照合し(図7のステップs5)、指定パートと他のパートとの各構成音のタイミングと長さが一致していないか否かを判別し(図7のステップs6)、一致していた場合は、他の各パート内のその音部分を抽出する(図7のステップs7)。そして、他のパート全てに対して比較照合を行ったか否か判断し(図7のステップs8)、否の場合は、まだ照合していない他のパートとしてのパートを比較する。
【0050】
他のパート全てに対して比較照合が完了した場合(図7のステップs8のはい)、伴奏データ作成手段22cが、指令のパートと同一のグループの各演奏データのうち、伴奏指令に指定されたパートの演奏データの全てと、同期リズム抽出手段22bに抽出された他の各パートの演奏データの一部分とを無音にするように変換すると共に、別のグループの各演奏データをそのまま足して伴奏データを作成し(図7のステップs9)、この伴奏データと指定パートの演奏データとを通信制御部20が伴奏再生端末1へ送信する(図7のステップs10)。このとき、伴奏データを伴奏メモリに格納する。
【0051】
続いて、伴奏データを伴奏作成センター2から受けた伴奏再生端末1においては、主制御部12が、受けた伴奏データを伴奏再生部13へ送出し、伴奏再生部13が、伴奏データを予め設定された音色の音声信号に変換し(図7のステップs11)、伴奏メモリ15に格納する。
【0052】
そして、主制御部12が、伴奏準備完了の通知を表示部19に表示させる(図7のステップs12)。ユーザの操作によって入力操作盤11から、練習すべき箇所(小節)と再生速度(テンポ)と繰り返し回数(リピート数)と録音の有無を指定する伴奏開始指令を入力すると(図7のステップs13のはい)、主制御部12が指令に従って伴奏再生部13を制御して、伴奏再生部13が伴奏の音声出力をスタートする(図7のステップs14)。このとき、表示部19に対して伴奏譜及び指定のパート譜を表示させる。この表示される伴奏譜及びパート譜は、指定された練習箇所だけの範囲であってもよい。
【0053】
本実施形態の伴奏作成システムは、このように動作するので、ユーザは合奏練習を一人で、いつどこでも、何回でもできる。また、交響曲の1パートであっても、独奏気分且つ自立した練習ができる。この理由は、伴奏作成時に、指定のパートと同じリズムで同時進行する他のパート内の音を排除するため、指定パートと同じ動きをする他のパートの音がなくなり、指定のパートを演奏するユーザは、正しい音程で、正しいリズムで、しっかりした音量で合奏しないと、合奏のアンバランスが解消できず、客観的に合奏の不足が体感できるからである。
【0054】
ここで、本実施形態における伴奏作成センター2の伴奏作成部22、すなわち、合奏データ読出手段22a,同期リズム抽出手段22b,伴奏データ作成手段22cについては、その機能内容をプログラム化して、コンピュータに実行させるように構成してもよく、合奏データにおける各演奏データは、MIDIデータ(MIDIは登録商標)などであればよい。
【0055】
以上のように、本実施形態の伴奏作成システムによれば、伴奏再生端末1から、指定のパートと同時に進行する同一リズムの実音のすべてを消した伴奏が出力されるので、ユーザは、この伴奏に乗せてパート練習することで、自分のパートではない他のパートに頼ることができなくなり、通常の合奏曲のごとく、自分で自分の演奏を導かざるを得ない練習を個人で繰り返し行うことができ、結果的に、演奏スキルを高いレベルにすることが可能である。
【0056】
また、本実施形態における伴奏作成センター2は、各演奏データのリズム体形譜情報を主体にして伴奏データを作成し、高速に伴奏データを作成できる。
【0057】
また、本実施形態においては、合奏データにおける各パートの演奏データを高音域グループと低音域グループに分けて、指定されたパートのグループのみの音を変換して伴奏データとするようにしてもよく、この場合は、伴奏の高音部と低音部の音の配置をアンバランスにしたことで、指定のパートを正しい音程,正確なリズム,適量な音量,強弱のメリハリをもって演奏しないと、合奏の高低音はアンバランスのままなので、ユーザは自立した感性で合奏練習ができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、楽団員の一人合奏練習や一人演奏会用に伴奏を出力するためのシステムといった用途に適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 伴奏再生端末
2 伴奏作成センター
3 ネットワーク
10 通信制御部
11 入力操作盤
12 主制御部
13 伴奏再生部
14 スピーカ
15 伴奏メモリ
16 マイク
17 録音部
18 録音メモリ
19 表示部
20 通信制御部
21 合奏データ記憶部
22 伴奏データ作成部
22a 合奏データ読出手段
22b 同期リズム抽出手段
23c 伴奏データ作成手段
23 伴奏データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合奏曲の各パートの演奏データを含む合奏データを予め記憶した合奏データ記憶部と、
ユーザの操作に従って伴奏指令を入力する入力部と、
この入力された伴奏指令で指定された曲の合奏データを前記合奏データ記憶部から読み出す合奏データ読出手段と、
この読み出された合奏データにおける前記伴奏指令で指定されたパートとその他の各パートとの演奏データを個別に比較照合して、この他の各パート内の当該指定パートとリズムが重なっている部分を抽出する同期リズム抽出手段と、
前記伴奏指令で指定されたパートの演奏データの全てと、前記同期リズム抽出手段に抽出された他の各パートの演奏データの一部分と、を無音にするように変換して前記伴奏指令で指定された曲の伴奏データを作成する伴奏データ作成手段と、
この作成された伴奏データを予め設定された音色の音声信号に変換してスピーカへ出力する伴奏再生部と、を備えたことを特徴とする伴奏作成システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載の伴奏作成システムにおいて、
前記合奏データにおける各パートの演奏データは、予めグループ分けされ且つその属するグループの識別子が付されおり、
前記同期リズム抽出手段は、前記読み出された合奏データ内を検索し前記指定されたパートの演奏データと同じグループ識別子を付された各パートの演奏データを選出する機能を備えると共にこの選出した中で前記指定されたパートとその他の各パートとの演奏データを比較照合しこの他の各パート内の当該指定パートとリズムが重なっている部分を抽出するように構成したことを特徴とする伴奏作成システム。
【請求項3】
前記請求項2に記載の伴奏作成システムにおいて、
前記演奏データが、各構成音の高さを示す実音譜情報と、各構成音の開始点と長さを示すリズム体形譜情報とからなり、
前記同期リズム抽出手段は、前記指定されたパートとその他の各パートとの演奏データの比較照合に際して、両演奏データのリズム体形譜情報のみを比較するように構成したことを特徴とする伴奏作成システム。
【請求項4】
前記請求項3に記載の伴奏作成システムにおいて、
前記合奏データにおける各パートの演奏データの前記グループ分けは、音域の高いグループと低いグループとに分類されたものであることを特徴とする伴奏作成システム。
【請求項5】
合奏曲の各パートの演奏データを含む合奏データを予め記憶した合奏データ記憶部から指定の曲の合奏データを読み出し、
この読み出された合奏データにおける指定のパートとその他の各パートとの演奏データを個別に比較照合し、
この比較照合の結果に基づいて、前記他の各パート内の前記指定のパートとリズムが重なっている部分を抽出し、
前記指定のパートの演奏データの全てと前記抽出された他の各パートの演奏データの一部分とを無音にするように変換して前記指定の曲の伴奏データを作成し、
この作成された伴奏データを予め設定された音色の音声信号に変換してスピーカへ出力することを特徴とする伴奏作成方法。
【請求項6】
前記請求項5に記載の伴奏作成方法において、
前記合奏データにおける各パートの演奏データが、予めグループ分けされ且つその属するグループの識別子を付されおり、
前記指定の曲の合奏データを前記合奏データ記憶部から読み出した後に、
前記読み出された合奏データ内を検索し前記指定されたパートと同じグループ識別子を付された各パートの演奏データを選出し、
前記指定のパートとその他の各パートとの比較照合に際しては、
前記選出されたグループの中で前記指定されたパートとその他の各パートとの演奏データを比較照合することを特徴とする伴奏作成方法。
【請求項7】
前記請求項6に記載の伴奏作成方法において、
前記演奏データが、音の高さを示す実音譜情報と、音の開始点と長さを示すリズム体形譜情報とからなるデータであると共に、
前記指定のパートとその他の各パートとの比較照合に際しては、
前記指定のパートとその他の各パートとのリズム体形譜情報を比較照合することを特徴とする伴奏作成方法。
【請求項8】
合奏曲の各パートの演奏データから成る合奏データを予め記憶した合奏データ記憶部と、ユーザの操作に従って伴奏指令を入力する入力部と、この入力された伴奏指令で指定された曲の合奏データから同じく伴奏指令で指定されたパートの音を消した伴奏データを作成する伴奏データ作成部と、この作成された伴奏データを予め設定された音色の音声信号に変換してスピーカへ出力する伴奏再生部と備えた伴奏作成システムにあって、
前記伴奏指令で指定された曲の合奏データを前記合奏データ記憶部から読み出す読出機能と、
この読み出された合奏データにおける前記伴奏指令で指定されたパートとその他の各パートとの演奏データを個別に比較照合しこの他の各パート内の当該指定パートとリズムが重なっている部分を抽出する抽出機能と、
この抽出された前記他の各パートの演奏データの一部分と前記指定されたパートの演奏データの全てとを無音にするように変換して前記指定された曲の伴奏データを作成し前記伴奏再生部へ出力する伴奏データ作成機能とを、
前記伴奏データ作成部が備えているコンピュータに実行させることを特徴とする伴奏作成用プログラム。
【請求項9】
前記請求項8に記載の伴奏作成用プログラムにおいて、
前記合奏データにおける各パートの演奏データは、予めグループ分けされ且つその属するグループの識別子を付されており、
前記抽出機能を、前記読み出された合奏データ内を検索し前記指定されたパートと同じグループ識別子を付された各パートの演奏データを選出すると共に、この選出した中で前記指定されたパートとその他の各パートとの演奏データを比較照合し、この他の各パート内の当該指定されたパートとリズムが重なる部分を抽出する機能として、前記コンピュータに実行させることを特徴とする伴奏作成用プログラム。
【請求項10】
前記請求項9に記載の伴奏作成用プログラムにおいて、
前記演奏データが、音の高さを示す実音譜情報と、音の開始点と長さを示すリズム体形譜情報とからなるデータであり、
前記抽出機能は、前記比較照合に際して、前記指定されたパートとその他の各パートとのリズム体形譜情報を比較照合する機能であることを特徴とする伴奏作成用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−266680(P2010−266680A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117803(P2009−117803)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000232140)NECフィールディング株式会社 (373)
【Fターム(参考)】