説明

伸縮ブーム

【課題】ライン状部材ガイドの着脱作業を簡便に効率良く行うことができる伸縮ブームを提供する。
【解決手段】伸縮ブーム30は、第1ブームが走行体に取り付けられて第4ブーム31dの先端部に作業台が取り付けられたブーム本体と、ブーム本体内に設けられて走行体と作業台とを繋ぐライン状部材と、ブーム本体が伸縮動するときのブーム本体の長さ変化を吸収するようにライン状部材を移動可能に保持するライン状部材ガイド70とを有し、ライン状部材ガイド70に係合突起76が形成され、第4ブーム31dに係合孔32aが形成された突起受容部32が形成され、ライン状部材ガイド70が第4ブーム31d内に挿入されたときに、係合突起76が係合孔32aに係合されてライン状部材ガイド70の先端部の移動が規制され、ライン状部材ガイド70の基端部が第4ブーム31dに固定されて、ライン状部材ガイド70が第4ブーム31d内に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車やクレーン車等の作業車において、作業台や懸吊装置の移動手段
として走行体に取り付けられる伸縮ブームに関し、さらに詳細には、内部にライン状部材が通されて構成される伸縮ブームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高所作業車やクレーン車等において、作業者が搭乗する作業台や懸吊装置等を所望の高所に移動させる装置として伸縮ブームが知られている。この伸縮ブームは、中空柱状で外径及び内径が順次小さくなる複数のブーム部材が入れ子式に組み合わされて構成されており、最も外径の大きい第1ブームが走行体に取り付けられている。第1ブームと走行体との間には、起伏シリンダが跨設されており、この起伏シリンダの伸縮作動によって伸縮ブーム全体を起伏動させることができるようになっている。また、伸縮ブームには伸縮シリンダが設けられており、この伸縮シリンダの伸縮作動によって伸縮ブーム全体をブーム長手方向に伸縮動させることができるようになっている。
【0003】
この伸縮ブームの内部には、走行体側から作業装置(高所作業車であれば作業台)側に各種信号を送信するための信号伝送ケーブルや、作業装置側へ圧油を供給するための送油ホース等からなるライン状部材が通されている。このライン状部材は、通常複数のケーブルやホースから構成されており、これらを纏めるとともに損傷を防ぐために、折り曲げ自在な保護案内部材に挿通された状態で伸縮ブーム内に配設されている。例えば特許文献1には、ブーム本体31内にライン状部材52が延びて設けられた伸縮ブーム30が開示されている。
【0004】
図9(a)に、本出願人が従来開発した伸縮ブーム500の断面図を示している。この伸縮ブーム500は、第1ブーム510、第2ブーム520、第3ブーム530及び第4ブーム540が入れ子式に挿入されて構成される。最も内側に位置した第4ブーム540の内側には、伸縮ブーム500の伸縮動によって伸縮ブーム500の全体長さが変化するときに、その長さ変化を吸収するようにライン状部材600を移動可能に保持するライン状部材ガイド541が固定されている。この構成により、例えば図9(a)に示す全縮状態(最も縮小させた状態)から図9(b)に示す状態にまで伸縮ブーム500を伸長させた場合、その伸長分だけライン状部材ガイド541および伸縮ブーム500内でライン状部材600が移動されて、ライン状部材600による走行体側と作業装置側との接続状態が維持できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−206242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図9に示す伸縮ブーム500において、ライン状部材ガイド541を第4ブーム540内に固定するときに例えば締結ボルトを用いて左右側方から固定しようとすると、第1ブーム510〜第3ブーム530の左右部分に工具を挿入するためのメンテナンス用穴を形成する必要があった。このメンテナンス用穴は、異物侵入防止のために普段は塞がれているが、このメンテナンス用穴から内部に異物が侵入して少なからず伸縮ブームの故障の原因となる虞があった。
【0007】
また、第1ブーム510〜第3ブーム530の左右部分よりも異物侵入の可能性が低い底部分にメンテナンス用穴を形成して、第4ブーム540の底部分にライン状部材ガイド541を固定しようとすると、全縮状態では第1ブーム510と第2ブーム520との間に延びるライン状部材600が邪魔になるため(図9(a)参照)、例えば1m程度伸縮ブーム500を伸長させた状態でライン状部材ガイド541の固定および取り外し(着脱)作業を行う必要があり(図9(b)参照)、着脱作業が煩雑となって作業効率が低下するという課題もあった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、伸縮ブームの故障を低減しつつ、ライン状部材ガイドの着脱作業を簡便に効率良く行うことができる伸縮ブームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するため、本発明に係る伸縮ブームは、走行体に起伏動自在に取り付けられて、先端部に作業装置(例えば、実施形態における作業台40)を備える作業車(例えば、実施形態における高所作業車1)の伸縮ブームであって、中空状に形成された複数のブームが入れ子式に挿入されて伸縮可能に構成され、前記複数のブームのうち基端側ブーム(例えば、実施形態における第1ブーム31a)が前記走行体に取り付けられるとともに、前記複数のブームのうち先端側ブーム(例えば、実施形態における第4ブーム31d)の先端部に前記作業装置が取り付けられたブーム本体と、前記ブーム本体内に設けられて、前記走行体と前記作業装置とを繋ぐライン状部材と、前記先端側ブーム内に固定されて設けられるとともに、前記ブーム本体が伸縮動するときの前記ブーム本体の軸線方向における長さ変化を吸収するように前記ライン状部材を移動可能に保持する保持部材(例えば、実施形態におけるライン状部材ガイド70)とを有して構成されており、前記先端側ブームが基端側に開口する中空空間を有し、前記保持部材が前記開口から前記中空空間内に挿入されて前記先端側ブームに固定されるように構成され、前記保持部材の先端部および前記先端側ブームの中空空間内のいずれか一方に、前記軸線方向に延びる係合突起が形成され、前記保持部材の先端部および前記先端側ブームの中空空間内の他方には、前記係合突起と係合可能な係合孔が形成された突起受容部が形成され、前記保持部材が前記先端側ブームの中空空間内に挿入されたときに、前記係合突起が前記係合孔に係合されて前記先端側ブームに対する前記保持部材の先端部の前記軸線方向に直交する面内における移動が規制されるとともに、前記保持部材の基端部が前記先端側ブームに固定されることにより前記保持部材が前記先端側ブーム内に固定されるように構成される。
【0010】
なお、上述の伸縮ブームにおいて、前記保持部材の先端側に前記係合突起が形成されるとともに、前記先端側ブームの中空空間内に前記突起受容部が形成されることが好ましい。
【0011】
また、前記保持部材の基端側に、前記保持部材に対して基端側へ突出して把持可能となった取っ手部が設けられたことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る伸縮ブームは、軸方向に延びた係合突起を突起受容部の係合孔に係合させることで、先端側ブームに対する保持部材の先端部の移動を規制して、保持部材を先端側ブーム内に固定するように構成されている。この構成により、先端側ブーム以外のブームに対して保持部材の先端部に対応する位置にメンテナンス用穴を形成する必要がないので、このメンテナンス用穴から伸縮ブーム内への異物侵入を低減して、伸縮ブームの故障を減らすことが可能になる。また、先端側ブーム内に保持部材を軸線方向に挿入するだけで、係合突起を係合孔に係合させて保持部材の先端部の移動を規制することができるので、ライン状部材ガイドの着脱作業を簡便に効率良く行うことが可能である。
【0013】
なお、保持部材の先端側に係合突起が形成されるとともに、先端側ブームの中空空間内に突起受容部が形成された構成が好ましい。このように保持部材に対して軸線方向に延びた係合突起を形成すると、保持部材に突起受容部を形成する場合と比較して、外方への突出部分を極力なくした保持部材を構成することができ、よって保持部材の取り扱いが容易となる。
【0014】
また、保持部材の基端側に、保持部材に対して基端側へ突出して把持可能となった取っ手部を設けた構成が好ましい。このように構成すると、例えば先端側ブームの内部のライン状部材ガイドを取り出すときにこの取っ手部を掴むことで、ライン状部材ガイドの取り出し作業を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る伸縮ブームを備えた高所作業車の側面図である。
【図2】本発明に係る伸縮ブームの側面図であって、(a)は全縮状態を、(b)は全縮状態から伸長した状態をそれぞれ示す。
【図3】ライン状部材ユニット斜視図である。
【図4】ライン状部材ガイドの斜視図である。
【図5】上記ライン状部材ガイドの基端側の拡大斜視図である。
【図6】図2(a)中のVI−VI部分の断面図である。
【図7】図2(a)中のVII−VII部分の断面図(一部省略)である。
【図8】伸縮ブームを組み立てる途中の状態を示した側面図である。
【図9】従来の伸縮ブームの断面図であって、(a)は全縮状態を、(b)は全縮状態から伸長した状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る伸縮ブーム30を備えた作業車の一例としての高所作業車1を示しており、以下においては図1を参照しながら高所作業車1の概要構成について説明する。
【0017】
高所作業車1は、走行用車輪11,11,・・・を備えて運転キャブ12から走行運転が可能なトラック式の走行体10と、走行体10上に設けられた旋回台20に起伏動自在に取り付けられた伸縮ブーム30と、伸縮ブーム30の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台40とを有して構成される。
【0018】
旋回台20は、走行体10の後部に上下軸まわり360度回動自在に取り付けられている。走行体10の内部にはブーム旋回モータ(油圧モータ)51が設けられており、このブーム旋回モータ51を回転作動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を水平旋回させることができる。
【0019】
伸縮ブーム30は、中空柱状で順次外径及び内径が小さくなる複数のブーム部材(後述するように第1ブーム31a、第2ブーム31b、第3ブーム31c及び第4ブーム31d)が入れ子式に挿入されて構成されるブーム本体31を備え、その基端部が旋回台20の支柱21にフートピン22を介して取り付けられている。伸縮ブーム30の下面側にはブーム伸縮シリンダ(油圧シリンダ)52が設けられており、このブーム伸縮シリンダ52を伸縮作動させることにより各ブーム部材を相対的に移動させて、伸縮ブーム30全体を伸縮ブーム30の軸方向(以下においては、単に「軸方向」と称す)に伸縮させることができる。
【0020】
伸縮ブーム30と旋回台20の支柱21との間にはブーム起伏シリンダ(油圧シリンダ)53が跨設されており、このブーム起伏シリンダ53を伸縮作動させることにより伸縮ブーム30全体を起伏させることができる。このように、伸縮ブーム30の外側(下面側)にブーム伸縮シリンダ52を設ける構成とすることで、伸縮ブーム30の内部にブーム伸縮シリンダ52を配設する構成と比較して伸縮ブーム30の断面積を小さくしてコンパクトに構成できるとともに伸縮ブーム30の軽量化を図ることが可能である。
【0021】
伸縮ブーム30(第4ブーム31d)の先端部には垂直ポスト38が上方に延びて設けられており、作業台40はこの垂直ポスト38の上端部に設けられた作業台支持プレート39に対して水平旋回自在に取り付けられている。垂直ポスト38は、伸縮ブーム30の先端部と作業台支持プレート39との間に介装されたレベリングシリンダ(油圧シリンダ)55の伸縮作動によって伸縮ブーム30の姿勢によらず常時垂直姿勢が保持されるようになっており、これにより作業台40の床面は常に水平姿勢が保たれるようになっている。なお、レベリングシリンダ55の伸縮作動は、図示しない傾き角度検出器によって検出される作業台40の水平姿勢からの傾き角度がほぼ零になるように制御装置(図示せず)によって自動制御される。
【0022】
作業台40は、平板状の床部材40a及びこの床部材40aの外周部に立設された手摺り40bとから構成されている。作業台支持プレート39内に設けられた作業台旋回モータ(油圧モータ)54を回転作動させることによって、床部材40aを作業台支持プレート39に対して(すなわち垂直ポスト38に対して)水平旋回させることができる。
【0023】
作業台40には上部操作装置41が設置されており、作業台40に搭乗したオペレータ(作業者)OPはこの上部操作装置41に備えられたレバーやスイッチ等の操作手段の操作により伸縮ブーム30の起伏、伸縮、旋回操作と作業台40の水平旋回操作を行うことができ、自身の乗った作業台40を自在に移動させて高所での作業を行うことが可能である。なお、走行体10の前後左右計4箇所にはアウトリガジャッキ13が設けられており、作業を始める前にこれらアウトリガジャッキ13を接地させておくことにより、高所作業時に作用する転倒モーメントに抗して走行体10が安定支持されるようになっている。
【0024】
以上ここまでは、高所作業車1の概要構成について説明した。このように構成される高所作業車1においては、伸縮ブーム30の内部に走行体10側から作業台40側に各種信号を送信するための信号伝送ケーブルや、作業台40側へ圧油を供給するための送油ホース等のライン状部材61が通されている(図2参照)。本発明に係る伸縮ブーム30は、伸縮ブーム30内におけるライン状部材61の取付構造に特徴を有しており、以下において図2〜図7を追加参照して伸縮ブーム30の構造について詳しく説明する。
【0025】
なお、以下においては、伸縮ブーム30内におけるライン状部材61の取付構造を中心に説明するが、実際には伸縮ブーム30の内部に、ブーム伸縮シリンダ52の伸縮作動に応じてブーム部材同士を相対的に軸方向に移動させるための例えばチェーンやスプロケット等も配設されている。
【0026】
伸縮ブーム30は、図2に示すように、入れ子式に挿入された第1ブーム31a、第2ブーム31b、第3ブーム31c及び第4ブーム31dからなるブーム本体31と、このブーム本体31の内部に配設されたライン状部材ユニット60とから構成される。
【0027】
ライン状部材ユニット60は、図2および3に示すように、信号伝送ケーブルや送油ホース等からなるライン状部材61と、このライン状部材61を保持するためのライン状部材ガイド70とから構成される。
【0028】
ライン状部材61は、図3に示すように先端側および基端側に折り返された状態でブーム本体31内に配設されており、走行体10側に接続されるとともに第1ブーム31aの先端近傍からブーム本体31の内部に挿入されて基端側に延びる第1ライン部61a、第1ライン部61aの基端側端部と繋がって先端側に延びる第2ライン部61b、第2ライン部61bの先端側端部と繋がって基端側に延びる第3ライン部61c、および第3ライン部61cの基端側端部と繋がって先端側に延びるとともに作業台40側に接続される第4ライン部61dから構成される。
【0029】
このライン状部材61のうちで、第1ライン部61a、第2ライン部61bおよび第3ライン部61cに該当する部分は、折り曲げ自在な保護案内部材62に挿通されており、この保護案内部材62によりライン状部材が纏められるとともに損傷を受けないように保護されている。また、第2ライン部61bの基端側部分には、ライン状部材61をブーム本体31(第3ブーム31c)に固定するためのライン固定部材63が取り付けられている。なお、本実施形態では、第1ライン部61aに相当する部分と、第2ライン部61b〜第4ライン部61dに相当する部分との2つの部分からなり、この2つの部分がライン固定部材63の位置で接続されたライン状部材61を用いた構成を例示しているが、この2つの部分からなる構成に代えて、1つ(1本)の連続したライン状部材61を用いた構成でも良い。
【0030】
ライン状部材ガイド70は、図4に示すように、左右一対の側板71,71が、側板71の上下端部に設けられた複数の連結部材72によって連結されて構成されており、左右方向に略保護案内部材62の幅分の所定間隔を有し、また全体としてライン状部材61を保持可能な強度を有している。図5に示すようにライン状部材ガイド70の基端側端部には、ライン状部材ガイド70を第4ブーム31dに固定するためのガイド固定部材73、ライン状部材61(第4ライン部61d)を側板71の左右側方に保持するためのライン保持部材74、および第3ライン部61cの基端側端部をライン状部材ガイド70に固定するための端部固定部材75が取り付けられている。また、ライン状部材ガイド70の先端部下部には、連結部材72から軸方向先端側に延びる係合突起76が形成されている(図7参照)。
【0031】
ガイド固定部材73は、断面視略コの字状に形成されて側板71の上部に取り付けられており、左右側面部分には締結ボルトが締結されるボルト孔(図示せず)が形成されている。ライン保持部材74は、軸方向に延びる複数の溝が形成された一対の保持部材半体74a,74bから構成され、両方の側板71の左右側面部分に取り付けられている。この保持部材半体74a,74bは、互いの溝を向かい合わせて軸方向に貫通した複数の保持用孔74cが形成された状態となって、側板71に取り付けられている。端部固定部材75は、側板71の下部に取り付けられており、例えば丸棒をリング状に折曲させて形成された取っ手部75aが端部固定部材75から基端側へ延びて取り付けられている。なお、基端側端部に設けられたライン保持部材74以外にも、複数のライン保持部材77が側板71に取り付けられている。
【0032】
このように構成されるライン状部材61をライン状部材ガイド70に取り付けることでライン状部材ユニット60が構成されるが、この取付構成について以下に説明する。まず、第3ライン部61cの基端側端部を端部固定部材75に固定して内部のライン状部材を引き出し、この引き出したライン状部材(第4ライン部61d)を左右に振り分ける。このとき、側板71に固定された保持部材半体74bに対して、保持部材半体74a取り外しておき、保持部材半体74bの溝(保持用孔74c)に左右に振り分けられたライン状部材を嵌め込む。この状態で、溝同士を向かい合わせるように、保持部材半体74bに対して保持部材半体74aを取り付けることで、軸方向に延びた状態にライン状部材を保持する。また、ライン保持部材77にライン状部材を挿通させることで、第4ライン部61dを基端側から先端側に延びた状態に固定する。
【0033】
このように、第3ライン部61cの基端側端部から引き出されたライン状部材は、無理な力が作用しないようにある程度大きくU字状に引き回された状態で保持用孔74cに保持される。ここで、取っ手部75aが設けられていない従来の構成においては、例えばブーム本体が伸縮動されるときに、ライン状部材における左右に振り分けられてU字状に引き回された部分が互いに絡み合って干渉することがあったが、一方、本発明に係る伸縮ブーム30は取っ手部75aが設けられているので、ライン状部材61におけるU字状に引き回された部分同士の干渉が防止され、ブーム本体31の確実な伸縮動が確保されている。
【0034】
そして、上述のように第3ライン部61cの基端側端部を固定しておき、ライン状部材ガイド70の内部(側板71および連結部材72によって囲まれる空間)に対して基端側からライン状部材61を挿入して、ライン状部材61を先端側で折曲させた状態でライン状部材ガイド70の内部に収容させる(図3参照)。すなわち、ライン状部材ガイド70に対してライン状部材61は第3ライン部61cの基端側端部で固定されているが、その他の部分はライン状部材ガイド70内において移動自在となって収容されている。そのため、ブーム伸縮シリンダ52を伸縮動させてブーム本体31を軸方向に伸縮させた場合であっても、ブーム本体31の軸方向の長さ変化を吸収するようにライン状部材ガイド70内でライン状部材61が軸方向に移動して、走行体10側から作業台40側へのライン状部材61の接続状態が確保される。
【0035】
具体的には、図2(a)に示す全縮状態において第1ブーム31aと第2ブーム31bとの間に位置する第1ライン部61aが、ブーム本体31の伸長に応じて第2ブーム31bの内部に入り込んでいくことで、第1ブーム31aに対する第2ブーム31bおよび第3ブーム31cの伸長分を吸収可能となっている(図2(b)参照)。また、ライン状部材ガイド70内に軸方向に移動自在に保持された第2ライン部61bおよび第3ライン部61cが、ブーム本体31の伸長に応じて第3ブーム31bの内部に引き出されることで、第2ブーム31bに対する第3ブーム31cの伸長分を吸収可能となっている。このように、伸縮ブーム30の伸縮に応じてブーム本体31内でライン状部材61が軸方向に移動されることにより、常時走行体10側から作業台40側へのライン状部材61の接続が確保されている。
【0036】
以上ここまでは、ライン状部材ガイド70に対するライン状部材61の取付構成について説明した。以下においては、ブーム本体31について説明する。
【0037】
ブーム本体31は、図6に示すように、軸方向に貫通して内部に中空空間が形成された第1ブーム31a、第2ブーム31b、第3ブーム31c及び第4ブーム31dからなり、これらの断面形状は略六角形で互いに略相似形状となっている。この図6から分かるように、第4ブーム31dには、底部31f、およびこの底部31fの左右側方に繋がって斜め上方に延びる傾斜部31e,31eが形成されている。また、図2および図7に示すように、底部31fにおける軸方向中央部分には、第4ブーム31dの中空空間に向けて立設された突起受容部32が形成されている。この突起受容部32には、軸方向に貫通した係合孔32aが形成されており、この係合孔32aに対して係合突起76が軸方向に挿入可能となっている。
【0038】
また、図6に示すように、ブーム本体31を構成する各ブームの隙間には、例えばスライダからなる摺動部材33が複数配設されており、ブーム同士が相対的に軸方向に真っ直ぐ伸縮可能となっている。なお、第4ブーム31dの底部31fの左右幅は、ライン状部材ガイド70の左右幅と略同一となっており、また第4ブーム31dは、ライン状部材ユニット60を収容可能な大きさの中空空間を有して構成される。
【0039】
以上、ブーム本体31について説明した。以下においては、このように構成されるブーム本体31にライン状部材ユニット60を取り付けて伸縮ブーム30を組み立てるときの組立手順について、図8を参照しながら説明する。
【0040】
まず、図2(a)および図8に示すように、組立作業を行いやすいようにブーム本体31を全縮状態にする。その上で、ライン状部材ガイド70に形成された係合突起76を先端側に向けて、第1ライン部61aを第1ブーム31aの底部と第2ブーム31bの底部との隙間に位置させるとともに、第4ライン部61dを第4ブーム31dの内部に位置させておき、この状態で第4ブーム31dの基端側開口部から中空空間内へ向けてライン状部材ガイド70を挿入する。
【0041】
このとき、ライン状部材ガイド70は、第4ブーム31dの底部31fおよび傾斜部31eによってガイドされて軸方向に真っ直ぐ挿入され、所定位置まで挿入されると係合突起76が突起受容部32の係合孔32aに係合される(図7参照)。すなわち、組立作業者は、ライン状部材ガイド70の挿入方向をコントロールする必要がなく、単に先端側に向けて押し込むだけで確実に係合突起76を係合孔32aに係合させることができる。このように、係合突起76が係合孔32aに係合されると、ライン状部材ガイド70の先端側が第4ブーム31dの内方に向けて移動することが規制される。
【0042】
このように、ライン状部材ガイド70の先端側の移動を規制した上で、第1ブーム31a〜第3ブーム31cに形成されたメンテナンス用穴(図示せず)から工具を挿入して締結ボルト73aを締結することで、ライン状部材ガイド70(ガイド固定部材73)を第4ブーム31dに固定する。このときに、予めライン状部材ガイド70の先端側の移動が規制されているので、ライン状部材ガイド70を第4ブーム31dに簡単に固定することができる。
【0043】
また、ライン状部材ガイド70によりライン状部材ユニット60がユニット化されているので、このライン状部材ユニット60を一体的に第4ブーム31dに挿入することができ、作業を簡便に行えて作業効率を向上させることが可能である。この状態で、ライン固定部材63を第3ブーム31cに固定する。そして、第1ライン部61aの先端側端部を伸縮ブーム30の外部に引き出すとともに、伸縮ブーム30および旋回台20を介して走行体10に引き回して走行体10と接続する。一方、第4ライン部61dの先端側端部を作業台40側と接続することで、伸縮ブーム30の組立作業は完了する。
【0044】
このようにして伸縮ブーム30が組み立てられると、第1ブーム31aの底部と第2ブーム31bの底部との隙間に、ガタつかないように保持された状態で第1ライン部61aが収容される(図6参照)。また、ライン状部材ガイド70に保持された第2ライン部61b〜第4ライン部61dは、ライン状部材ガイド70が第4ブーム31dに固定されることにより、ライン状部材ガイド70内にガタつかないように保持される。そのため、例えば伸縮ブーム30が起伏動や旋回動等される場合であっても、ブーム本体31内においてライン状部材61がガタつくことがない。
【0045】
一方、上述のようにしてブーム本体31内に固定されたライン状部材ユニット60を取り外す際には、走行体10側と第1ライン部61aとの接続部分を外すとともに作業台40側と第4ライン部61dとの接続部分を外し、第3ブーム31cと第2ライン部61bとの接続部分(ライン固定部63)を外し、さらに第4ブーム31dとガイド固定部材73とを締結する締結ボルト73aを取り外した上で、ブーム本体31の基端側から手を挿入して取っ手部75aを掴み、ライン状部材ユニット60を一体的に基端側へ引き出す。このように取っ手部75aは、上述したライン状部材61同士が絡み合うことを防止する機能に加えて、ライン状部材ユニット60を引き出す際の取っ手としての機能をも有している。そのため、ブーム本体31の基端側からそれほど奥にまで手を挿入することなく簡単にライン状部材ユニット60を引き出すことができる。
【0046】
ところで、ライン状部材ガイドの先端部を第4ブームの底部に固定する従来の構成においては、第1ブームと第2ブームの間に挿入されたライン状部材が邪魔になるので、全縮状態のままでライン状部材ガイドの着脱作業を行えず、着脱作業のために全縮状態から約1m程度伸長させる必要があり、着脱作業が煩雑となり作業効率が低下していた。これに対して本発明に係る伸縮ブーム30は、係合孔32aに係合突起76を係合させてライン状部材ガイド70の先端側の移動を規制する構成となっているので、全縮状態のままで着脱作業が可能となり、着脱作業を簡便にして作業効率を向上させることができる。
【0047】
また、第1ブーム〜第3ブームの各々の左右側部にメンテナンス用穴を形成し、締結ボルトを用いてライン状部材ガイドの先端部を第4ブームに固定する従来構成においては、第1ブーム〜第3ブームにおけるライン状部材ガイドの先端部に対応する部分にメンテナンス用穴を形成する必要があり、このメンテナンス用穴から伸縮ブームの内部に異物が侵入して伸縮ブームの故障原因となる虞があった。これに対して本発明に係る伸縮ブーム30は、係合孔32aに係合突起76を係合させてライン状部材ガイド70の先端側の移動を規制する構成となっているので、第1ブーム〜第3ブームにおけるライン状部材ガイドの先端部に対応する部分にメンテナンス用穴を形成する必要がなく、その分異物侵入を減らすことができる。
【0048】
また、本発明に係る伸縮ブーム30は、係合孔32aに係合突起76を係合させる構成となっているため、ライン状部材ガイドの先端部を固定するための締結ボルトが不要となり、部品点数を減らして製造コストの低減を図ることが可能である。
【0049】
上述の実施形態においては、伸縮ブーム30の先端部に作業台40を備える高所作業車1に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの構成の高所作業車に限定して適用されるものではない。すなわち、ブーム本体の内部にライン状部材が通された構成の伸縮ブーム全般に適用でき、例えば伸縮ブームの先端部に懸吊装置を備えたクレーン車やアースオーガを備えた穴掘り建柱車等に対しても、同様に適用可能である。
【0050】
また、上述の実施形態において、ブーム本体31の外部にブーム伸縮シリンダ52を設けた構成の伸縮ブーム30を例示して説明したが、本発明はこの構成の伸縮ブームに限定して適用されるものではない。例えば、ブーム本体の内部にブーム伸縮シリンダを設けた構成の伸縮ブームにも適用可能である。
【0051】
上述の実施形態では、第1ブーム31a〜第4ブーム31dから構成される4段の伸縮ブーム30に本発明を適用した場合を説明したが、これに限らず4段以外の複数段の伸縮ブーム全般に対しても同様に本発明を適用可能である。
【0052】
また、上述の実施形態においては、ライン状部材ガイド70に係合突起76が形成され、第4ブーム31dに突起受容部32が形成された構成を例示して説明したが、この構成に代えて、ライン状部材ガイド70に突起受容部32が形成され、第4ブーム31dに係合突起76が形成された構成でも良い。
【0053】
上述の実施形態では、ライン状部材ガイド70の先端部下部に係合突起76が形成された構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、ライン状部材ガイド70の先端部上部や先端部(左右)側部等に、係合突起76を設けた構成でも良い。このような構成の場合には、係合突起76の形成位置に対応させて、第4ブーム31dに突起受容部32を形成しておく。そうすることで、第4ブーム31dに対してライン状部材ガイド70挿入されたときに、突起受容部32に係合突起76を係止させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 高所作業車(作業車)
10 走行体
30 伸縮ブーム
31 ブーム本体
31a 第1ブーム(基端側ブーム)
31d 第4ブーム(先端側ブーム)
32 突起受容部
32a 係合孔
40 作業台(作業装置)
61 ライン状部材
70 ライン状部材ガイド(保持部材)
75a 取っ手部
76 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体に起伏動自在に取り付けられて、先端部に作業装置を備える作業車の伸縮ブームであって、
中空状に形成された複数のブームが入れ子式に挿入されて伸縮可能に構成され、前記複数のブームのうち基端側ブームが前記走行体に取り付けられるとともに、前記複数のブームのうち先端側ブームの先端部に前記作業装置が取り付けられたブーム本体と、
前記ブーム本体内に設けられて、前記走行体と前記作業装置とを繋ぐライン状部材と、
前記先端側ブーム内に固定されて設けられるとともに、前記ブーム本体が伸縮動するときの前記ブーム本体の軸線方向における長さ変化を吸収するように前記ライン状部材を移動可能に保持する保持部材とを有して構成されており、
前記先端側ブームが基端側に開口する中空空間を有し、前記保持部材が前記開口から前記中空空間内に挿入されて前記先端側ブームに固定されるように構成され、
前記保持部材の先端部および前記先端側ブームの中空空間内のいずれか一方に、前記軸線方向に延びる係合突起が形成され、
前記保持部材の先端部および前記先端側ブームの中空空間内の他方には、前記係合突起と係合可能な係合孔が形成された突起受容部が形成され、
前記保持部材が前記先端側ブームの中空空間内に挿入されたときに、前記係合突起が前記係合孔に係合されて前記先端側ブームに対する前記保持部材の先端部の前記軸線方向に直交する面内における移動が規制されるとともに、前記保持部材の基端部が前記先端側ブームに固定されることにより前記保持部材が前記先端側ブーム内に固定されるように構成されたことを特徴とする伸縮ブーム。
【請求項2】
前記保持部材の先端側に前記係合突起が形成されるとともに、前記先端側ブームの中空空間内に前記突起受容部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の伸縮ブーム。
【請求項3】
前記保持部材の基端側に、前記保持部材に対して基端側へ突出して把持可能となった取っ手部が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮ブーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−12128(P2012−12128A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147763(P2010−147763)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】