説明

伸縮性シートの製造方法

【課題】伸縮領域と低又は非伸縮領域を有し、外観が良好であり、伸び量の変動を抑えた搬送を行うことができる伸縮性シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】延伸により伸縮性が向上する帯状シート120’を、一対の歯溝ロール31,32間に噛み込ませて延伸する延伸工程及び延伸後の帯状シート120を第2の帯状シート130と接合する接合工程を具備し、延伸工程においては、一対の歯溝ロール31,32として、帯状シート120'をその長手方向に延伸させる延伸部31H,32Hと、該帯状シートを低倍率に延伸又は延伸させない低又は非延伸部31L,32Lを有するものを用い、該帯状シートの長手方向に、伸縮領域12Hと低又は非伸縮領域12Lとをそれぞれ間欠的に形成し、接合工程においては、延伸後の帯状シート120を実質的に伸長しない第2の帯状シート130と接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性シートの製造方法及びパンツ型着用物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンツ型使い捨ておむつとして、ウエスト開口部の周縁部(以下、ウエスト部ともいう)や、該ウエスト部よりも下方に位置しレッグ開口部よりも上方に位置する胴回り部に弾性伸縮部を形成したものが知られている。弾性伸縮部の形成方法としては、実質的に非弾性の2枚のシート間に糸状又は帯状の弾性部材を伸張状態で固定し、該弾性部材の収縮によりギャザーを形成させる方法が一般的である。
【0003】
また、パンツ型使い捨ておむつ等に弾性伸縮部を形成する他の方法として、ギャザーを形成させない方法で得られた伸縮性シートを用いる方法が知られている。例えば、特許文献1には、ウエスト部とそれ以外の部分とに別々の伸縮性シートを使用することによって、それぞれに異なる伸縮特性を与えることが記載されている。
更に、特許文献2には、歪ゼロの延伸積層ウエブを、互いに噛み合う立体的な表面を有する加圧装置間に供給し、該装置による加圧により、前記ウエブの一部に延伸処理を施して弾性化する方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特表2005−517496号公報
【特許文献2】特許第3516679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した弾性部材の収縮によりギャザーを形成させる方法は、弛緩状態の弾性伸縮部においては、非弾性のシートがひだ寄せされた状態となっており、外観が良好とは言えない。
【0006】
他方、上述した伸縮性シートを用いて弾性伸縮部を形成する方法は、糸状又は帯状の弾性部材を固定してギャザーを形成させる方法に比べて、弾性部材及びその接着のための接着剤を削減可能であり、接着剤により伸縮性シートやおむつが硬くなることが防止され、製造コストの低減を図ることも可能である。
しかし、従来の伸縮性シートにおいては、伸縮性シート自体又はそれを用いたパンツ型使い捨ておむつ等の一部分のみ伸縮性に富む領域としたり、反対に一部分のみを実質的に伸縮性を有しない領域とする場合には、一枚の伸縮性シートで対応することができず、一枚の伸縮性シートを、他の伸縮性シートや他の非伸縮性のシート等を組み合わせる必要があり、そのため、使用材料数が増加したり、複数のシート間の位置調整が必要となる等、製造工程が複雑化したりする不都合がある。
【0007】
更に、長手方向の伸縮性をその幅方向の全域に有する帯状シートを用いて、いわゆる横流れ方式(おむつが、おむつの幅方向に連続した構成のおむつ連続体を経ておむつを製造する方式)で、使い捨ておむつを製造しようとした場合、搬送時に、該シートに加わる張力によって、該シートが伸び、その伸び量が張力の変動に伴って変動するため、該シートに対する吸収性本体の接合位置や、該シートに対するレッグホールの形成位置、該シートを2つ折りする際の折り曲げ位置、2つ折した該シートの所定箇所をシールする際のシール位置等にズレが生じやすく、仕上がり精度の高いパンツ型使い捨ておむつを安定して製造することが困難である。伸縮性シートに張力を加えないように搬送することも考えられるが、設備が過大となり現実的ではない。このような伸縮性シートの伸び量の問題は、該伸縮性シートを他の用途に使用する場合も同様に存在する。
【0008】
従って、本発明の目的は、伸縮領域とそれより低伸縮性の低又は非伸縮領域を有し、外観が良好であり、伸び量の変動を抑えた搬送を行うことのできる伸縮性シートを製造することのできる、伸縮性シートの製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、伸縮領域とそれより低伸縮性の低又は非伸縮領域とを有する外包材を有し、外観が良好であり、仕上がり精度が高いパンツ型着用物品を安定して効率よく製造することができるパンツ型着用物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、延伸により伸縮性が向上する帯状シートを、互いに噛み合う歯溝を有する一対の歯溝ロール間に噛み込ませて長手方向に延伸し、該帯状シートの伸縮性を向上させる延伸工程、及び、延伸後の該帯状シートを第2の帯状シートと接合する接合工程を具備し、前記両帯状シートが積層された構造の伸縮性シートを得る伸縮性シートの製造方法であって、前記延伸工程においては、一対の歯溝ロールとして、前記帯状シートをその長手方向に延伸させる延伸部と、該延伸部に比して該帯状シートをその長手方向に低倍率に延伸させるか又は該帯状シートをその長手方向に延伸させない低又は非延伸部を有するものを用いて、該帯状シートの長手方向に、伸縮領域と低又は非伸縮領域とをそれぞれ間欠的に形成し、前記接合工程においては、延伸後の前記帯状シートを、長手方向に実質的に伸長しない第2の帯状シートと接合する伸縮性シートの製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0010】
また、本発明は、外包材を具備するパンツ型着用物品の製造方法であって、延伸により伸縮性が向上する帯状シートを、互いに噛み合う歯溝を有する一対の歯溝ロール間に噛み込ませて長手方向に延伸し、該帯状シートの伸縮性を向上させる延伸工程、延伸後の該帯状シートを第2の帯状シートと接合する接合工程、前記両帯状シートを含む外包材連続体をその幅方向に2つ折りする2つ折り工程、2つ折りした前記外包材連続体にシール加工を施しサイドシール部を形成するシール工程、及び2つ折りした前記外包材連続体を切断し、個々のパンツ型着用物品に分離する工程を具備し、前記延伸工程においては、一対の歯溝ロールとして、前記帯状シートをその長手方向に延伸させる延伸部と、該延伸部に比して該帯状シートをその長手方向に低倍率に延伸させるか又該帯状シートをその長手方向に延伸させない低又は非延伸部を有するものを用いて、該帯状シートの長手方向に、伸縮領域と低又は非伸縮領域とをそれぞれ間欠的に形成し、前記接合工程においては、延伸後の前記帯状シートを、長手方向に実質的に伸長しない第2の帯状シートと接合するパンツ型着用物品の製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の伸縮性シートの製造方法によれば、伸縮領域とそれより低伸縮性の低伸縮領域又は非伸縮領域とを有し、外観が良好であり、伸び量の変動を抑えた搬送を行うことのできる伸縮性シートを効率よく製造することができる。
本発明のパンツ型着用物品の製造方法によれば、伸縮領域とそれより低伸縮性の低伸縮領域又は非伸縮領域とを有する外包材を有し、外観が良好であり、仕上がり精度が高いパンツ型着用物品を安定して効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本実施形態の伸縮性シートの製造方法は、図1に示すように、延伸により伸縮性が向上する帯状シート120’を、軸線方向に延び且つ互いに噛み合う歯溝を有する一対の歯溝ロール31,32間に噛み込ませて延伸し、該帯状シート120’の少なくとも一部に伸縮性を向上させる延伸工程と、延伸後の帯状シート120を第2の帯状シート130と接合する接合工程とを具備し、両帯状シート120,130が積層された構造の伸縮性シート110を得るものである。
【0013】
延伸により伸縮性が向上する帯状シートには、延伸前には伸縮性を有さず延伸により伸縮性を発現するものと、延伸前にも多少の伸縮性を有し延伸により伸縮性が向上するものとの両者が含まれるが、延伸前には実質的に伸縮性を有さず延伸により伸縮性を発現するものが好ましい。
なお、ここでいう「伸縮性が向上する」とは、小さな力でより伸びやすくなることであり、具体的には1.0N/25mm荷重をかけたときの伸度が大きくなること、または破断伸度が大きくなることを意味する。
例えば、1.0N/25mm荷重をかけたときの伸度は、以下のようにして測定することができる。幅(帯状シートの幅方向と同方向の長さ)が25mm、長さ(帯状シートの長手方向と同方向の長さ)が75〜100mmの試験片を切り出し、引張り試験機により、該試験片をその長さ方向に荷重1.0Nとなるまで伸長させたときの伸度を測定する(初期長50mm)。破断伸度も、同様にして、幅25mmの試験片を、引っ張り試験機により引っ張り、破断したときの伸度を測定する。
【0014】
延伸により伸縮性が向上する帯状シートとしては、弾性繊維と非弾性繊維が混合されたタイプや、弾性伸縮性を有する弾性層と実質的に非弾性の非弾性繊維層とが積層されたタイプで、延伸により、非弾性繊維や非弾性繊維層が、弾性繊維や弾性層の伸縮を阻害しにくい構造に変化するもの等を好ましく用いることができる。
伸縮を阻害しにくい構造への変化としては、非弾性繊維の伸張や切断、非弾性繊維層の分断、非弾性繊維層の構成繊維の伸長や切断、構成繊維同士の接合点の破壊等が挙げられる。
積層タイプの場合、非弾性繊維層は、弾性層の両面に配されていても良いし、片面のみに配されていても良い。
【0015】
弾性層は、単独の状態又は延伸後の伸縮性シートの状態において、平面方向に伸ばすことができ且つ伸ばした力から解放したときに収縮する性質を有するものであり、少なくとも面と平行な一方向において、100%伸長後に収縮させたときの残留歪みが20%以下、特に10%以下であることが好ましい。この値は、少なくとも、帯状シートの延伸方向と同方向において満足していることが好ましく、帯状シートの長手方向及び/又は幅方向において満足していることが好ましい。
【0016】
弾性層は、弾性材料を含有する弾性繊維を含む弾性繊維層であることが好ましい。弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、ゴム、エチレン・プロピレン共重合体等が挙げられ、これらの中でも、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン、スチレン系(SBS,SIS,SEBS,SEPS等)、オレフィン系(エチレン、プロピレン、ブテン等の共重合体等)、塩化ビニル系、ポリエステル系等を挙げることができる。これらは一種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
弾性層としては、繊維層からなるものに代えて、フィルム状のもの、ネット状のもの等を用いることもできる。フィルムやネットの形成材料としては、上記各種の弾性材料を用いることができる。
弾性層が弾性繊維を含む繊維層である場合、該弾性層中の弾性繊維の含有率は50〜100重量%、特に75〜100重量%であることが好ましい。弾性層が、弾性繊維と共に非弾性繊維を含む場合の非弾性繊維としては、後述する非弾性繊維層を構成する繊維を挙げることができる。弾性繊維は、メルトブローン法、スパンボンド法、メルトブローン法にスパンボンド法を組み合わせたスピニングブローン法等により得られる。弾性繊維層は、例えば、スピニングブローン法、スパンボンド法、メルトブローン法等によって形成されたウエブや不織布であり得る。
【0017】
非弾性繊維層は、伸長性を有するが、実質的に非弾性のものである。ここでいう、伸長性は、構成繊維自体が伸長する場合と、構成繊維自体は伸張しなくても、構成繊維同士の交点において熱融着していた両繊維同士が離れたり、繊維同士の熱融着等により複数本の繊維で形成されていた立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたりして、繊維層として伸長する場合の何れであっても良い。
【0018】
非弾性繊維層を構成する繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(PETやPBT)、ナイロン等のポリアミド等からなる繊維、ポリ乳酸等の生分解樹脂からなる繊維等が挙げられる。非弾性繊維層を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でも良く、親水性でも撥水性でも良い。また、芯鞘型の複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は一種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
弾性層と非弾性繊維層との間は全面的又は部分的に接合されている。繊維層と非弾性繊維層との接合方法としては、これらを積層して、スパンレース法により両層の繊維同士を交絡させる方法、エアースルー法等の熱風処理により両層の繊維同士の交点を熱融着させる方法、熱エンボス、接着剤、超音波エンボス等によって両層間を接合させる方法等が挙げられる。
弾性繊維層の片面又は両面に非弾性繊維層が一体化されているものを用いる場合、弾性繊維層と非弾性繊維層とは、両層の界面及びその近傍において、弾性繊維層の構成繊維と、非弾性繊維層の構成繊維との交点が熱融着しており、実質的に全面で均一に接合されていることが好ましい。このような接合はエアースルー法等により達成できる。全面で接合されていることによって、弾性繊維層と非弾性繊維層との間に浮きが生じること、つまり、両層が離間して空間が形成されることが防止される。また、弾性繊維層は、その構成繊維が繊維形態を保った状態で非弾性繊維層と一体化されていることが好ましい。また、エアースルー法による全面的な接合に加え、熱エンボス等による部分的な接合を行っても良い。部分的に接合されている態様としては、円形や矩形等の任意の形状の接合部が、平面方向に散点状に分布しているもの等が挙げられる。
【0020】
延伸により伸縮性が向上する帯状シートとしては、各種公知のものを用いることもでき、例えば、上述した特許文献2や、特開2003−73967号公報、特開2001−18309号公報に記載のもの等を使用することもできる。
【0021】
図1は、本発明の伸縮性シート及びパンツ型着用物品の製造方法の一実施形態を示す図であり、図1には、延伸により伸縮性が発現する帯状シート120’及び長手方向に実質的に伸長しない第2の帯状シート130を用いて、伸縮性シート110を製造する様子及びさらにその伸縮性シート110を用いてパンツ型使い捨ておむつ1を製造する様子が示されている。
【0022】
本実施形態においては、図1に示すように、延伸前には実施的に伸縮性を有しないが延伸により伸縮性が発現する帯状シート120’を、延伸装置30における一対の歯溝ロール31,32間に噛み込ませて延伸し、それにより、長手方向に、伸縮領域12Hとそれより低伸縮性の低又は非伸縮領域12Lとがそれぞれ間欠的に形成された伸縮性の帯状シート120を得ている。また、延伸により伸縮性が発現する帯状シート120’としては、弾性繊維からなる弾性繊維層の両面に実質的に非弾性の非弾性繊維層を有する構造のものを用いている。
【0023】
一対の歯溝ロール31,32は、それぞれの周面部に、軸線方向に延び且つ互いに噛み合う歯溝を有している。また、一対の歯溝ロール31,32それぞれの周面部には、図1及び図2に示すように、それぞれの周方向に並ぶように、高延伸部31H,32Hと低又は非延伸部31L,32Lとが交互に形成されている。歯溝ロール31の高延伸部31Hと歯溝ロール32の高延伸部32Hとが、また歯溝ロール31の低又は非延伸部31Lと歯溝ロール32の低又は非延伸部32Lとが、互いに対応するように、歯溝ロール31,32が配置されている。
高延伸部31H,32Hには、図3に示すように、一対の歯溝ロール31,32の噛み合いの深さDが大きくなるように、比較的高さHの高い歯31a,31bが形成されており、帯状シート120’における、高延伸部31H,32H間に噛み込まれた部分は、流れ方向に大きく延伸されて優れた伸縮性を発現する伸縮領域12Hとなる。
他方、本実施形態における低又は非延伸部31L,32Lには、図4に示すように歯が形成されておらず、帯状シート120’における、低又は非延伸部31L,32L間を通った部分は、流れ方向に殆ど延伸されず実質的に伸長性も伸縮性も発現しない低又は非伸縮領域12Lとなる。
【0024】
尚、本実施形態における一対の歯溝ロール31,32は、図2に示すように、それぞれの周方向における50%超の部分(好ましくは70%超の部分)が高延伸部31H,32Hとなっており、後述するおむつ1の外包材1の幅方向の広い範囲に良好な伸縮性を付与することができる。他方、低又は非延伸部31L,32Lは、各歯溝ロール31,32の軸中心を挟む2箇所に形成されている。
【0025】
一対の歯溝ロールの高延伸部31H,32Hにおける噛み合い深さD(図3参照)は、帯状シートの延伸倍率を高め、伸縮性シートに良好な伸縮性を与えるために、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上が一層好ましい。一対の歯溝ロール31,32の噛み合い深さDは、図2や図3に示すように、歯溝ロール31,32どうしを噛み合わせて回転させるとき、隣接する歯31a,32aが重なり合う長さである。高延伸部31H,32H同士が噛み合う部分における延伸倍率は1.5〜5.0倍が好ましい。また、高延伸部31H,32H同士が噛み合う部分における延伸倍率H1と、低延伸部31L、32L同士が噛み合う部分における延伸倍率H2との比(H1/H2)は1.1〜5.0であることが好ましく、2.0〜3.0であることがより好ましい。ここで、延伸倍率とは、(歯溝を有するロールの噛み合いによって材料が延伸されたときの長さ)/(該ロールの噛み合いによって延伸される前の材料長さ)で定義される。
【0026】
また、各歯溝ロール31,32の高延伸部31H,32Hは、隣接する歯のピッチPが、好ましくは1.0mm〜5.0mmであり、前記各歯の幅Wが前記ピッチPの好ましくは1/2未満であり、且つ前記歯の高さHが、好ましくは前記ピッチP以上である。
各歯溝ロールにおける歯溝の形態がこのような条件を満たすものであると、これら歯溝ロール31,32間に供給される帯状シート120’に従来にない高い伸縮性を付与することができる。歯溝ロール31,32における隣接する歯のピッチとは、1つの歯の中心線とそれと隣り合う歯の中心線との距離をいう。歯溝ロールの歯の幅とは、1つの歯の幅をいう。歯の幅は均等でなく、図3のように、歯の根元から歯の先端に向って細くなる台形型の歯が好ましい。そのほか、長方形型、三角型の歯であってもよい。この場合、各歯の幅Wは、歯の根元の幅を示す。ロールの歯の高さとは、歯の根元から先端までの長さをいう。
【0027】
各歯溝ロール31,32において、歯31a、32aの先端のロール周方向の角部は、31a、32aの角部によって帯状シート120’にダメージが与えられないようにするために、面取りしておくことが好ましい。面取りの曲率半径は0.1〜0.3mmが好ましい。また、高延伸部31H,32Hと低又は非延伸部31L,32Lとの境界部は、高延伸部31H,32Hから非延伸部31L,32Lに向かって歯の高さが漸次減少し、非延伸部31L,32Lから高延伸部31H,32Hに向かって歯の高さが漸次増加するようにすることが、帯状シート120’のダメージ防止の点から好ましい。
【0028】
歯溝ロール31,32は、何れか一方の回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって噛み合って回転する。歯溝ロール31,32の各軸に歯31a,32aとは別に、一般的な、JIS B1701に規定されているギアを駆動用のギアとして取り付けられている。この場合、歯溝ロール31,32の歯31a,32aは接触することなく、それら駆動用のギアが噛み合うことによって、歯溝ロール31,32を回転させることができる。
本発明における歯溝ロール同士の噛み合いには、このように、一方のロールの歯と他方のロールの歯とが接触しない場合も含まれる。
【0029】
上述した一対の歯溝ロール31,32により、帯状シート120’に延伸加工を施すには、図1や図4に示すように、延伸装置30における一対の歯溝ロール31,32を回転させながら、両ロールの噛み合い部分P(図2参照)に帯状シート120’を供給する。
【0030】
本実施形態においては、図1に示すように、延伸装置30の前後に、歯溝ロール31,32による延伸加工前後の帯状シート120’に張力を加える張力付与手段34,35を配置してある。張力付与手段34は、歯溝ロール31,32の上流側に配された一組のテンションロール34a,34bを備えている。張力付与手段35は、歯溝ロール31,32の下流側に配された一組のテンションロール35a、35bを備えている。
【0031】
帯状シート120’に一層効果的に伸縮性を付与する観点から、延伸加工前の帯状シート120’にテンションロール34a,34bによって張力を加えた状態で、歯溝ロール31,32間に帯状シート120’を供給することが好ましい。供給する帯状シート120’に加える張力は、延伸加工前の帯状シート120’の破断応力の10%〜80%が好ましく、20%〜70%が一層好ましい。
【0032】
同様の観点から、延伸加工済みの帯状シート120にテンションロール35a,35bによって張力を加えて歯溝ロール31,32間から該シートを引き出すことが好ましい。供給する帯状シート120’に加える張力は、延伸加工後の帯状シート120の破断応力の5%〜80%が好ましく、10%〜70%が一層好ましい。シートの破断応力は歯溝延伸加工の加工前に比べて、加工後では小さくなる。また、歯溝延伸加工によって伸縮性を付与された延伸加工済みの帯状シート120はわずかな張力でも伸びやすい。そのような観点から、延伸加工済みの帯状シート120に加える張力を、延伸加工前の帯状シート120’に加える張力よりも弱くすることが好ましい。
【0033】
本実施形態においては、帯状シート120’に、このようにして延伸加工を施すことで、伸縮性に優れた伸縮領域12Hと、実質的に伸長性も伸縮性も有しない非伸縮領域12Lとが長手方向に交互に形成された伸縮性の帯状シート120が得られる。
伸縮領域12Hと低又は非伸縮領域12Lとは、延伸の程度が異なることによって、各領域を帯状シートの長手方向と同方向に引っ張ったときの伸長のし易さ(特に荷重1.0N/25mmとなるまで伸長させたときの伸度)が異なっている。
【0034】
また、伸縮領域12Hと低又は非伸縮領域12Lとは、延伸の程度が異なることによって、それらの領域における最大破断強度又は突き抜け強度が異なっている。即ち、伸縮領域12Hの最大破断強度又は突き抜け強度が、低又は非伸縮領域12Lの最大破断強度又は突き抜け強度よりも小さくなっている。
最大破断強度の大小は、例えば、延伸加工を施した帯状シートにおける前記領域12H,12Lそれぞれから、幅(帯状シートの幅方向と同方向の長さ)が25mm、長さ(帯状シートの長手方向と同方向の長さ)が75〜100mmの試験片を切り出し、該試験片を、帯状シートの長手方向(機械流れ方向,試験片の長手方向と同じ)が引っ張り方向となるように、引張り試験機にて引っ張り、破断したときの荷重を測定して判断することができる。
また、突き抜け強度の大小は、例えば、それぞれの領域から試験片を作製し、プッシュプルゲージにて該試験片の突き抜けに要する力を測定して判断することができる。
【0035】
本実施形態においては、上述のようにして得られた帯状シート120(以下、第1帯状シート120ともいう)を、連続搬送しながら、張力付与手段35とニップロール36との間で伸長させ、伸長状態の第1帯状シート120と、連続搬送されてきた第2帯状シート130とを貼り合わせている。
ニップロール36は、一対のロールからなる。ニップロール36を構成する一対のロールは、張力付与手段35を構成する一対のロール35a,35bよりも回転速度(周速度、シートの送り速度)が速くなるように駆動される。
【0036】
第1帯状シート120は、張力付与手段35とニップロール36との間において、上述した伸縮領域12Hが該シート120の長手方向に伸長する一方、上述した低又は非伸縮領域12Lは該シート120の長手方向に殆ど伸長しない。また、第2帯状シート130は、実質的に伸長しないシートである。
そのため、第1帯状シート120と第2帯状シート130とは、第1帯状シート120の伸縮領域12Hが伸長する一方、第1帯状シート120の低又は非伸縮領域12Lと第2帯状シート130とが実質的に伸長されていない状態において、互いに接合されることになる。
【0037】
本実施形態における第1帯状シート120と第2帯状シート130との貼り合わせは、図1に示すように、両シート間に、レッグ部弾性部材61a,61b及びウエスト部弾性部材51を挟みこんだ状態で行っている。具体的には、両帯状シート120、130を重ね合わせる前に、両帯状シート120、130の何れか一方又は双方の相対向する面の所定の部位に、弾性部材固定用の接着剤を塗工しておき、弾性部材61a,61b,51を伸長状態で挟んだ状態で、両帯状シート120、130を、ニップロール37で狭圧して、弾性部材61a,61b,51を固定すると共に両帯状シート120、130間を接合する。尚、レッグ部弾性部材61a,61bは、帯状シート120,130の流れ方向に直交する方向に公知の揺動ガイドで揺動させながら、両帯状シート間に導入する。
【0038】
本実施形態においては、このようにして、延伸工程により伸縮性を付与した第1帯状シート120を、連続搬送しながら、張力付与手段35とその下流側に設けたニップロール36との間で、伸長率50〜150%で伸長させ、実質的に伸長しない第2帯状シート130とを貼り合わせて、両帯状シート120,130が積層された構造の伸縮性シート110を得ている。
得られた伸縮性シート110は、弛緩状態としても、第1帯状シート120の側の面には、該第1帯状シート120に起因するひだが形成されない。そのため、第1帯状シート120側の面の外観が良好となる。また、帯状シート120の伸縮領域12Hと低又は非伸縮領域12Lとが一枚のシート中に存在して連続しているため、第1帯状シート120側の面の外感が一層良好である。
また、得られた伸縮性シート110には、帯状シート120の伸縮領域12Hを含み伸縮性に富む伸縮領域110Hと、帯状シート120の低又は非伸縮領域12Lを含み伸縮性に劣る伸縮領域110Lとが、該シート110の長手方向に交互に形成されている。そのため、伸縮性シート110は、伸縮性に富む部位と伸縮性に劣る部位とを有するパンツ型着用物品等の物品を連続して多数製造するのに適している。
【0039】
本実施形態のパンツ型着用物品の製造方法においては、上述のようにして得られた伸縮性シート110を、パンツ型使い捨ておむつ1の製造に用いている。
本実施形においては、図1に示すように、上記の伸縮性シート110を、外包材連続体(外包材11の原反)として用いている。伸縮性シート110は、帯状シート120が、外包材11のおむつ外面側を構成する外層シート12となり、第2帯状シート130が、外包材11のおむつ内面側を構成する内層シート13となるように使用する。
【0040】
パンツ型使い捨ておむつ1は、上述のようにして得られた伸縮性シート110を外包材連続体として用いる以外は、従来の、いわゆる横流れ方式のパンツ型使い捨ておむつの製造方法と同様にして製造することができる。
例えば、図1に示すように、外包材連続体110上に、吸収性本体連続体を切断して得た吸収性本体10を、それぞれ90度回転して、間欠的に接着固定し、また、ロータリーカッター、レーザーカッター等により、レッグ開口部形成用のトリム111を除去して、おむつ連続体100を得る。次いで、おむつ連続体100における外包材連続体110の両側部12a,12bを、吸収性本体10の両端部を覆うように折り返して該両端部を固定した後、おむつ連続体100を2つ折りし、次いで、サイドシール部S,Sを、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等により形成した後、あるいはサイドシール部S,Sを形成すると同時に、個々のおむつに切断することにより、パンツ型使い捨ておむつ1を得る。
吸収性本体10を外包材連続体110に固定する接着剤15は、吸収性本体10及び外包材連続体110の何れか一方又は双方に塗工しておくことができる。また、レッグ開口部形成用のトリム111の除去は、吸収性本体10の固定前に行うこともできる。
【0041】
本実施形態の製造方法によれば、上述のようにして得た伸縮性シート110を外包材連続体として用いることで、吸収性物品幅方向(図6中の左右方向)に良好な伸縮性を有する、仕上がり精度が高いパンツ型吸収性物品を安定して連続生産することができる。
即ち、第1帯状シート120がその長手方向に優れた伸縮性を有するシートであっても、それを伸長状態で、実質的に伸長しない第2帯状シート130と貼り合わせることによって得られる外包材連続体110は、それ以上は殆ど伸びないか、あるいは僅かに伸びたところでそれ以上の伸びが急激に抑制される(いわゆる伸びどまり)。そのため、外包材連続体110にある程度以上の張力を加えて搬送すれば、搬送中に外包材連続体110に加わる張力が変動しても、外包材連続体110の伸び量(伸長率)には変動が生じにくい。そのため、例えば、外包材連続体110に対して吸収性本体10を接合する際の接合位置や、吸収性本体10を固定する前後の外包材連続体110にレッグホール112を形成する際の形成位置、吸収性本体10を固定した外包材連続体110(おむつ連続体100)を2つ折りする際の折り曲げ位置、吸収性本体10を固定した外包材連続体110(おむつ連続体100)の所定箇所をシールしてサイドシールSを形成する際のシール位置、おむつ連続体100を個々のおむつに切断分割する際の切断位置等に、ずれが生じることが防止され、仕上がり精度の高いパンツ型使い捨ておむつを安定して製造することができる。
【0042】
また、第1帯状シート120と第2帯状シート130とが後述するように部分的に接合しているため、第1帯状シート120の伸縮性に由来する外包材連続体110の伸縮性が接着剤により損なわれないか損なわれたとしてもその程度が僅かであるため、得られた使い捨ておむつ1は、第1帯状シート120の伸縮性に由来して外包材11がおむつ幅方向(図5の左右方向)に良好に伸縮し、着用者の胴回りに対して良好なフィット性を示し、装着感や漏れ防止性に優れたものとなる。
【0043】
図5には、本実施形態の製造方法により製造されたパンツ型使い捨ておむつ1の斜視図が示されている。図6には、図5に示すおむつの展開状態の平面図が示されている。図7には、図6のII−II線断面図が示されている
【0044】
パンツ型使い捨ておむつ1(以下、おむつ1ともいう)は、液透過性の表面シート2、液不透過性又は撥水性の裏面シート3及び両シート2、3間に介在配置された液保持性の吸収性コア4を有する実質的に縦長の吸収体本体10と、該吸収体本体10の裏面シート3側に配され該吸収性本体10を固定している外包材11とを備えている。
【0045】
外包材11は、その両側縁が、長手方向中央部において内方に括れた砂時計形の形状をしており、おむつの輪郭を画成している。おむつ1は、展開状態におけるその長手方向において、着用者の腹側に配される腹側部Aと背側に配される背側部Bとその間に位置する股下部Cとに区分される。外包材11は、腹側部Aにおける両側縁部A1,A2と背側部Bにおける両側縁部B1,B2とが互いに接合されており、その接合によって、おむつ1に、一対のサイドシール部S,S、ウエスト開口部5及び一対のレッグ開口部6が形成されている。
【0046】
上述した本実施形態の製造方法においては、図1に示すように、外包材連続体として用いた伸縮性シート110における、帯状シート120の低又は非伸縮領域12Lが配されている部分110Lにサイドシール部形成用のシール加工を施している。当該部分110Lにおける、帯状シート120は、伸縮性シート110を伸長状態としても、伸長していないか、あるいは相対的に低倍率にしか伸長していないため、当該部分110Lにシール加工を施すことで、帯状シート120がシール加工による圧力や熱により切断されたり損傷したりすることが防止される。ここでいう切断や損傷は、おむつの製造途中で生じる場合の他、完成したおむつのウエスト開口部を、消費者が着用するために拡げたとき等にも生じうるが、非伸縮領域12Lが配された部位110Lにシール加工を施すことは、すなわちほとんど伸長されていない状態で材料強度が強い部分にシール加工を施すことであり、より強いシール強度が期待できる。したがって、着用の際や着用中の損傷等も防止することができる。シール加工は、パンツ型使い捨ておむつ等のサイドシール部を形成するために従来汎用されている各種の方法を用いることができ、例えば、一方又は双方が加熱された2つのシール部材間に2つ折りした外包材連続体を挟み、その両面から加熱加圧することで形成される。
【0047】
表面シート2、裏面シート3及び吸収性コア4は、一体化されて縦長の吸収体本体10を形成している。表面シート2、裏面シート3及び吸収性コア4としては、それぞれ、従来この種のおむつに用いられているものと同様のものを用いることができる。例えば、吸収性コア4としては、高吸収性ポリマーの粒子及び繊維材料から構成され、ティッシュペーパ(図示せず)によって被覆されているもの等を用いることができる。図6及び図7に示すように、吸収体本体10の長手方向の左右両側には、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成された側方カフス8、8が形成されている。各側方カフス8の自由端部の近傍には、側方カフス弾性部材81が伸張状態で配されている。おむつ着用時には、弾性部材81が縮むことにより側方カフス8が起立して、吸収体本体10の幅方向への液の流出が阻止される。
【0048】
外包材11は、図7に示すように、延伸加工により伸縮性を発現した上記帯状シート120からなる外層シート12と、上記第2帯状シート130からなる内層シート13とが積層された構造を有している。外層シート12はおむつ1の外面をなし、内層シート13は外層シート12の内面側に配され部分的に接合されている。
【0049】
おむつ1においては、外層シート12と内層シート13との間は、腹側部A、背側部B及び股下部Cそれぞれの大部分において接合されていない。具体的には、外層シート12と内層シート13とは、腹側部A及び背側部Bそれぞれの両側縁部A1,A2,B1,B2において、ヒートシール、高周波シール又は超音波シールにより互いに接合されており、また、ウエスト開口部5の周縁部50及び一対のレッグ開口部6それぞれの周縁部60において、ホットメルト型接着剤等の接着剤により互いに接合されており、更に、腹側部A、背側部B及び股下部Cそれぞれのおむつ幅方向中央部において接合されている。そして、それらの以外の部分においては接合されていない。
【0050】
このように、腹側部A及び背側部Bの大部分において、外層シート12と内層シート13との間を接合しない構成とすることにより、外包材11が接着剤で硬くなる部分を最小限に抑えることができ、おむつの外面や、外包材11の内面における吸収性本体10に覆われていない部分を、柔らかで肌触りの良いものとすることができる。また、外包材11の通気性が良好に維持されるので、ムレにくいおむつを提供することができる。
【0051】
腹側部A、背側部B及び股下部Cそれぞれにおける外層シート12と内層シート13との間でウエスト部、サイドシール部、レッグ弾性部材以外の接合されていない部分の面積は、腹側部A、背側部B及び股下部Cのそれぞれの面積に対して、60〜100%であることが好ましく、70〜100%であることがより好ましい。この条件を満たすものを「大部分」というものとする。
【0052】
腹側部A及び背側部Bそれぞれにおける、ウエスト開口部5の周縁部50には、ウエスト開口部5の開口周縁端に沿って、複数のウエスト部弾性部材51,51が配されている。これらのウエスト部弾性部材51,51は、接着剤を介して外層シート12と内層シート13との間に伸長状態で固定されている。また、腹側部A、股下部C及び背側部Bに亘って存在するレッグ開口部の周縁部60,60にも、各開口部の周縁端に沿って、レッグ部弾性部材61a,61bが配されている。これらのレッグ部弾性部材61a,61bは、接着剤62を介して外層シート12と内層シート13との間に伸長状態で固定されている。ウエスト部弾性部材51及びレッグ部弾性部材61a,61bとしては、それぞれ、天然ゴム、ポリウレタン系樹脂、発泡ウレタン系樹脂、ホットメルト系伸縮部材等の伸縮性素材を糸状(糸ゴム)又は帯状(平ゴム)に形成したものが好ましく用いられる。
【0053】
本明細書に記載の各部の寸法や比等は、図6に示すようにおむつを展開状態とし、ウエスト開口部及びレッグ開口部の弾性部材による収縮力を解除した自然状態(張力等の外力を作用させない状態)において測定した値又はそれに基づくものである。
【0054】
吸収性本体10は、その長手方向両端部を除く部分においては、図7に示すように、幅方向中央部のみが本体接合部15により外包材11の内層シート13に接合されている。外包材11の伸縮が、吸収性本体10の接合によって阻害されにくくなるため、胴回り部に良好なフィット性が得られる。外包材11のおむつ幅方向中央部における外層シート12と内層シート13との間の接合部14の幅W1は、腹側部A及び背側部Bのそれぞれにおいて、吸収性本体10の幅W2の0〜40%であることが好ましく、0〜30%であることがより好ましい。
【0055】
また、本体接合部15の幅は、腹側部A及び背側部Bのそれぞれにおいて、吸収性本体10の幅W2の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%である。
吸収性本体10の長手方向両端部は、ウエスト開口部の開口周縁端5a,5bにおいて、おむつ内面側に折り返した外層シートの折り返し部分12a,12bと内層シート13との間に挟まれて固定されている。
【0056】
おむつ1における外包材11は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおける幅方向の略全域、並びに股下部Cにおける外包材11の全域に、帯状シート120の伸縮領域12Hが位置している。そのため、腹側部A及び背側部Bそれそれに、おむつ幅方向の良好な伸縮性が得られる。
【0057】
実質的に伸長しない第2帯状シート130は、手で引っ張る程度では、殆ど伸長しないか又は伸長しても僅かにしか伸長しないシートである。
第2帯状シート130は、該シートの25mm幅当たりの引張荷重が1.0Nとなるまで、長手方向に伸長させたときの伸長率(1.0N/25mm時点の伸長率)が120%以下であることが好ましく、より好ましくは伸長率が100〜110%である。
【0058】
前記伸長率は、以下のようにして測定する。
テンシロン等の引っ張り試験機にて、例えば、該シート25mm幅、長さ50mmのサンプルを用意する。該サンプル50mmの間を1.0Nの荷重/25mm幅で引っ張り、伸長後のサンプル長さをAと測定する。そして、その時の伸長率は、該サンプル50mmの場合は次の通り定義される。(A−50)/50×100。つまり、(1.0Nで伸長後のサンプル長さ−伸長前のサンプル長さ)/(伸長前のサンプル長さ)×100である。伸長後のサンプル長さが100mmの場合は伸長率は100%、伸長後のサンプル長さが150mmの場合は伸長率は200%である。
【0059】
実質的に伸長しないシートとしては、不織布、不織布と樹脂フィルムとの積層材、多孔性フィルム等が好ましい。本実施形態においては、実質的に伸長しないシートは外包体連続体110のうち装着者の肌に直接あたる側であり、さらには排泄物の漏れ防止の観点から、撥水性の不織布がより好ましい。
【0060】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されない。
例えば、上述した伸縮性シート110及びおむつ1の製造方法においては、高延伸部31H,32Hと、歯が形成されていない低又は非延伸部31L,32Lとを設けた一対の歯溝ロールを用い、帯状シートの長手方向に、伸縮領域12Hと低又は非伸縮領域12Lとをそれぞれ間欠的に形成したが、それに代えて、図8に示すように、高延伸部31H,32Hと、該高延伸部における歯よりも高さが低い低又は非延伸部31L,L32とを設けた一対の歯溝ロールを用いて、長手方向に、伸縮領域12Hと該伸縮領域12よりも低伸縮性の低又は非伸縮領域12Lとをそれぞれ間欠的に形成した伸縮性シートを製造することもできる。
【0061】
図8に示す低又は非延伸部31L,L32は、帯状シート120’を延伸させるものの、高延伸部31H,31Lに比べて伸長の倍率が低くなっている。より具体的には、高延伸部31H,32Hは、各ロールの軸中心線(図示せず)から歯先までの距離が、低又は非延伸部31L、32Lにおける、各ロールの軸中心線(図示せず)から歯先までの距離より長くなっている。それにより、一対の歯溝ロール31,32の噛み合いの深さは、高延伸部31H、32Hにおける噛み合いの方が、低延伸部31L、32Lにおける噛み合いよりも大きくなっている。この場合においては、低又は非延伸部31L、32Lに噛み込まれて生じた低又は非伸縮領域12Lを含む部分にサイドシール部用のシール加工を施すことで、伸縮領域12Hを含む部分にシール加工を施す場合に比べて帯状シート12の損傷防止が得られる。
【0062】
また、上述したおむつの製造方法においては、帯状シート120の伸縮領域12Hが、おむつ1の腹側部A及び背側部Bの略全幅に亘って存在するようにしたが、これに代えて、おむつ1の幅方向における中央部に低又は非伸長領域12Lを配置し、その両側に、帯状シート120の伸縮領域12Hを配置しても良い。幅方向中央部に低又は非伸長領域を有することで、股下部が収縮により狭くなることが防止できる一方、腹側部A及び背側部Bには必要な収縮性が得られる。
このように、本発明のパンツ型着用物品の製造方法によれば、伸縮特性が異なる複数の領域を有する一枚のシートを用いて、外包材に様々パターンで、伸縮特性が相異なる複数の部分を形成したパンツ型着用物品を製造することができる。
【0063】
また、歯溝ロールの噛み合いの深さを部分的に異ならせるのに代えて、一対の歯溝ロールそれぞれに、歯のピッチがそれぞれのロールにおける他の部分とは異なる部分を形成することにより、帯状シートの一部を大きく延伸すると共に他の一部をそれより低い倍率に延伸することもできる。更に、噛み合いの深さ及び歯のピッチの両者を部分的に異ならせて伸縮特性の相異なる伸縮領域を形成することもできる。
【0064】
また、上述したおむつ1の製造方法においては、伸縮性の帯状シート120と、実質的に伸長しない第2帯状シート130とを接合する際に両者間に弾性部材を固定していたが、そのような弾性部材を導入しないで伸縮性シートやパンツ型着用物品を製造しても良い。また、シール工程と外包材連続体を切断する工程とはこの順に行っても良いし同時に行っても良い。
【0065】
本発明のパンツ型着用物品の製造方法は、パンツ型の使い捨ておむつ、パンツ型の生理用ナプキン、パンツ型の失禁パッド等のパンツ型の吸収性物品の製造に特に適しているが、吸収性本体ないし吸収性コアを具備しない、サニタリーショーツその他のパンツ型着用物品の製造にも好ましく使用することができる。
また、本発明の伸縮性シートの製造方法は、パンツ型着用物品の外包材の全部又は一部を構成する伸縮性シートを製造するものに限られず、パンツ型着用物品における他の部位を構成するシート、更には、テープ型おむつ、生理用ナプキン、湿布、サポーター、マスク等を製造するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の伸縮性シート及びパンツ型着用物品の製造方法の一実施形態を示す図である。
【図2】図2は、延伸装置における歯溝ロールの表面形状をロール軸線方向から見た図である。
【図3】図3は、延伸装置における歯溝ロールの歯溝の説明図である。
【図4】図4は、延伸装置における歯溝ロールによって帯状シートに延伸加工を施す様子を示す模式図である。
【図5】本発明の製造方法により製造されるパンツ型使い捨ておむつの一例を示す斜視図である。
【図6】図5に示すおむつの展開状態を示す平面図である。
【図7】図6のII−II線断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に使用される一対の歯溝ロールを示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 パンツ型使い捨ておむつ(パンツ型着用物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収性コア
5 ウエスト開口部
50 ウエスト開口部の周縁部
6 レッグ開口部
60 レッグ開口部の周縁部
7 胴回り部
10 吸収性本体
11 外包材
12 外層シート
13 内層シート
30 延伸装置
31,32 歯溝ロール
31a,32a 歯
110 外包材連続体(伸縮性シート)
120’ 延伸加工により伸縮性が向上する帯状シート
12H 伸縮領域
12L 低又は非伸縮領域
120 延伸加工により伸縮性が向上し帯状シート
130 第2帯状シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸により伸縮性が向上する帯状シートを、互いに噛み合う歯溝を有する一対の歯溝ロール間に噛み込ませて長手方向に延伸し、該帯状シートの伸縮性を向上させる延伸工程、及び、延伸後の該帯状シートを第2の帯状シートと接合する接合工程を具備し、前記両帯状シートが積層された構造の伸縮性シートを得る伸縮性シートの製造方法であって、
前記延伸工程においては、一対の歯溝ロールとして、前記帯状シートをその長手方向に延伸させる延伸部と、該延伸部に比して該帯状シートをその長手方向に低倍率に延伸させるか又は該帯状シートをその長手方向に延伸させない低又は非延伸部を有するものを用いて、該帯状シートの長手方向に、伸縮領域と低又は非伸縮領域とをそれぞれ間欠的に形成し、
前記接合工程においては、延伸後の前記帯状シートを、長手方向に実質的に伸長しない第2の帯状シートと接合する伸縮性シートの製造方法。
【請求項2】
前記接合工程においては、延伸後の前記帯状シートを、少なくとも前記伸縮領域を伸長させた状態で前記第2の帯状シートと接合する、請求項1記載の伸縮性シートの製造方法。
【請求項3】
一対の前記歯溝ロールそれぞれの周方向の一部に下記条件(1)を満たす高延伸部が形成されている請求項1又は2記載の伸縮性シートの製造方法。
(1)隣接する歯のピッチが1.0mm〜5.0mmであり、前記各歯の幅が前記ピッチの1/2未満であり、且つ前記各歯の高さHが、前記ピッチ以上である。
【請求項4】
外包材を具備するパンツ型着用物品の製造方法であって、
延伸により伸縮性が向上する帯状シートを、互いに噛み合う歯溝を有する一対の歯溝ロール間に噛み込ませて長手方向に延伸し、該帯状シートの伸縮性を向上させる延伸工程、延伸後の該帯状シートを第2の帯状シートと接合する接合工程、前記両帯状シートを含む外包材連続体をその幅方向に2つ折りする2つ折り工程、2つ折りした前記外包材連続体にシール加工を施しサイドシール部を形成するシール工程、及び2つ折りした前記外包材連続体を切断し、個々のパンツ型着用物品に分離する工程を具備し、
前記延伸工程においては、一対の歯溝ロールとして、前記帯状シートをその長手方向に延伸させる延伸部と、該延伸部に比して該帯状シートをその長手方向に低倍率に延伸させるか又該帯状シートをその長手方向に延伸させない低又は非延伸部を有するものを用いて、該帯状シートの長手方向に、伸縮領域と低又は非伸縮領域とをそれぞれ間欠的に形成し、
前記接合工程においては、延伸後の前記帯状シートを、長手方向に実質的に伸長しない第2の帯状シートと接合するパンツ型着用物品の製造方法。
【請求項5】
前記シール工程においては、前記外包材連続体における前記低又は非伸縮領域が配されている部位にシール加工を施す、請求項4記載のパンツ型着用物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−61692(P2008−61692A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240069(P2006−240069)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】