説明

伸縮性部材および伸縮性不織布積層体

【課題】紙おむつなどの衛生材料の伸縮部、湿布剤などの基布などに適した伸縮性部材および伸縮性不織布積層体を提供すること。
【解決手段】伸縮性部材は、190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜2000g/10分であり、密度が0.890〜0.915g/cm3 であり、ブテンが70モル%以上であるブテン系重合体(F)から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなるフィルムである。伸縮性不織布積層体は上記伸縮性部材層と、少なくとも1層の横方向の伸長率が100%以上である伸長性不織布層とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性部材および伸縮性不織布積層体に関し、さらに詳しくは、紙おむつなどの衛生材料の伸縮性部材、湿布剤等の基布などに適した伸縮性部材および伸縮性不織布積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布は通気性、柔軟性に優れているため各種用途に用いられ、またその用途が拡大されている。そして、その用途に応じて各種の特性が求められるとともに、特性の向上が要求されている。たとえば紙おむつのギャザー、生理用ナプキン等の衛生材料の一部、湿布剤の基布等に用いられる不織布は、使用される箇所によっては通気性に優れるとともに、伸縮性に優れることが要求される。また、工業的生産における加工成形に際して適度な強度を有することが要求されることもある。
【0003】
ところで、伸縮性を有する不織布としては、熱可塑性エラストマーおよび/またはポリオレフィンを含む組成物を用い、メルトブローン法によって成形した不織布、潜在捲縮繊維からなる不織布等が知られている。
【0004】
しかし、このような従来の伸縮性不織布は、一般的なポリオレフィンからなる不織布と比べて、破断強度/目付量の比が小さい。そのため、所要の強度のものを得るためには、高目付量にしなければならず、高コストとなる。また、縦方向にも低応力で伸長性を有し、不織布原反の巻出し時に原反の幅落ち、巻取り時の巻物の硬さ等の問題があり、加工成形に適するものではなかった。一方、潜在捲縮繊維からなる伸縮性不織布における伸縮性は、繊維の捲縮と伸長に伴う構造変化によって発現するため、その伸縮性には限界があり、小さいものにとどまり、また、所要の強度のものを得るためには、ある程度高目付量のものにする必要があり、高コストにならざるを得なかった。
【0005】
本願出願人は、かかる欠点を改良した複合不織布として、ポリプロピレンからなる伸長性不織布と熱可塑性エラストマーからなる伸縮性不織布とを積層した横方向に100%伸長のヒステリシスループの測定による永久歪みが30%以下、かつ縦方向に5%伸長したときの引張強度が250g/25mm以上である複合不織布を先にとして提案した(特許文献1参照)。
【0006】
本発明者らは、さらに検討した結果、特定の樹脂を用いてフィルムまたは不織布を形成すると優れた伸縮性部材が得られ、この伸縮性部材と伸長性不織布を用いることにより、より伸縮性に優れた不織布積層体が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【特許文献1】特開平9−78435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような従来技術のもとなされたものであって、柔軟性に優れ、伸縮性を有する伸縮性部材およびこの伸縮性部材を含む伸縮性不織布積層体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る伸縮性部材は、下記(A)ないし(F)から選ばれる少なくとも1種の樹脂のフィルムから形成されることを特徴としている;
(A)スチレンまたはその誘導体の重合体ブロック(a-1)、炭素原子数が2〜20のα
−オレフィンの重合体ブロック(a-2)、ならびにスチレンまたはその誘導体および炭素原子数が2〜20のα−オレフィンの共重合体ブロック(a-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロックと、
イソプレン重合体ブロックまたはイソプレン・ブタジエン共重合体ブロックであって、イソプレン重合体部分における1,2結合および3,4結合含有量が25重量%以上である重合体または共重合体ブロック(a-4)、ならびにブタジエン重合体ブロックであって、1,2および3,4ビニル結合量が25重量%以上である重合体ブロック(a-5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロックとからなる水素添加されていてもよいブロック共重合体
(B)エチレンと炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体であって、190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が10〜200g/10分であり、密度が0.850〜0.895g/cm3 であるエチレン・α−オレフィン共重合体
(C)(c-1)下記一般式〔1〕または〔2〕で表される少なくとも1種の環状オレフィンと、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとの共重合体からなるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体、
(c-2)下記一般式〔1〕または〔2〕で表される少なくとも1種の環状オレフィンの開環(共)重合体もしくはその水素添加物、および
(c-3)前記α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体(c-1)または環状オレフィンの開環(共)重合体もしくはその水素添加物(c-2)のグラフト変性物
からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン系樹脂であって、ガラス転移温度が30℃以下であり、メルトフローレート(MFR)が10〜2000g/10分である環状オレフィン系樹脂、
【0009】
【化1】

[式〔1〕において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R1 〜R18ならびにRa およびRb は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表し、R15とR16は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつこの単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。ここでqが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。]
【0010】
【化2】

[式〔2〕において、pは0または正の整数であり、hは0または正の整数であり、jおよびkは0、1または2であり、R7 〜R15およびR17〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表し、R19〜R27は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基およびアルコキシ基からなる群から選ばれる原子または基を表す。]
(D)芳香族モノマーと、α−オレフィンとの共重合体であって、ガラス転移温度が30℃以下であり、メルトフローレートが10〜2000g/10分である芳香族系共重合体
(E)プロピレン、1-ブテンおよび炭素原子数が5〜12のα−オレフィンの共重合体であって、各構成成分の組成がプロピレン10〜85モル%、1-ブテン3〜60モル%および炭素原子数が5〜12のα−オレフィン10〜85モル%であり、メルトフローレートが10〜2000g/10分であるオレフィン系共重合体
(F)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜2000g/10分であり、密度が0.890〜0.915g/cm3 であるブテン系ポリマー
本発明に係る伸縮性不織布積層体は、少なくとも1層の前記伸縮性部材層と、少なくとも1層の横方向の伸長率が100%以上である伸長性不織布層とからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る伸縮性部材は、伸縮性に優れている。
本発明に係る伸縮性不織布積層体は、伸縮性および横方法の伸長性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る伸縮性部材および伸縮性不織布積層体について具体的に説明する。
本発明に係る伸縮性部材は、特定の樹脂繊維から形成される不織布または特定の樹脂から形成されるフィルムである。
【0013】
まず、本発明に係る伸縮性部材を形成する樹脂(A)ないし(F)について説明する。なお、本明細書において「重合」という語は、単独重合だけでなく、共重合をも包含した意味で用いられることがあり、「重合体」という語は、単独重合体だけでなく、共重合体をも包含した意味で用いられることがある。
【0014】
ブロック共重合体(A)
本発明で用いられるブロック共重合体(A)は、後述のブロック(a-1)〜(a-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロックと、後述のブロック(a-4)および(a-5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロックとからなり、水素添加されていてもよい。
【0015】
上記ブロック(a-1)はスチレンまたはその誘導体の重合体ブロックまたは共重合体ブロックである。ブロック(a-1)を構成する重合体成分は、スチレンまたはその誘導体である。スチレンの誘導体としては、具体的にはα−メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレンなどが挙げられる。ブロック(a-1)を構成する重合体成分としては、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0016】
前記ブロック(a-2)は炭素原子数が2〜20のα−オレフィンの重合体ブロックまたは共重合体ブロックである。ブロック(a-2)を構成する重合体または共重合体成分としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素原子数が2〜20のα−オレフィンが挙げられる。これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を組合せて使用することもできる。
【0017】
またブロック(a-2)を構成する重合体は、イソプレン重合体またはブタジエン重合体であって、1,4結合が75重量%以上である重合体に水素添加した重合体であってもよい。
【0018】
前記ブロック(a-3)はスチレンまたはその誘導体、および炭素原子数が2〜20のα−オレフィンの共重合体ブロックである。ブロック(a-3)を構成する共重合体成分としては、前記(a-1)および(a-2)を構成する重合体成分として例示した化合物と同様の化合物が挙げられる。
【0019】
前記ブロック(a-4)はイソプレン重合体ブロックまたはイソプレン・ブタジエン共重合体ブロックである。ブロック(a-4)を構成する重合体または共重合体は、イソプレン重合体またはイソプレン・ブタジエン共重合体であって、下記に示すイソプレン重合体部分における1,2結合および3,4結合含有量が25重量%以上、好ましくは30重量%以上である。
【0020】
【化3】

前記ブロック(a-5)はブタジエン重合体ブロックであって、1,2および3,4ビニル結合量が25重量%以上、好ましくは30重量%以上の重合体または共重合体ブロックである。
【0021】
ブロック共重合体(A)におけるブロック(a-1)〜(a-3)の合計の含有割合は、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜45重量%の範囲である。また、ブロック(a-4)および(a-5)の合計の含有割合は、好ましくは95〜50重量%、さらに
好ましくは90〜55重量%の範囲である。
【0022】
本発明においては、水素添加されたブロック共重合体(A)が好ましい。水素添加されたブロック共重合体(A)を用いると、ハードセグメントであるブロック(a-1)〜(a-3)が架橋点として働き優れた伸縮性部材が得られる。
【0023】
本発明で用いられるブロック共重合体(A)のメルトフローレート(MFR;ASTM
D 1238、230℃、2.16kg荷重)は、不織布を形成する繊維に用いる場合には、10〜2000g/10分、好ましくは30〜1000g/10分の範囲にあり、フィルムに用いる場合には0.1〜100g/10分、好ましくは1.0〜50g/10分の範囲にある。
【0024】
本発明で用いられるブロック共重合体(A)のブロック形態としては、ブロック(a-1)〜(a-3)−ブロック(a-4)または(a-5)−ブロック(a-1)〜(a-3)のトリブロックの形態が最も好ましいが、これに限られるものではなく、例えばジブロックの形態や4つ以上のブロックを含んだ形態でもよい。
【0025】
このようなブロック共重合体(A)は、たとえば以下のような方法により製造することができる。
(1)アルキルリチウム化合物を開始剤としてスチレンまたはその誘導体、イソプレンまたはイソプレン・ブタジエン混合物を逐次重合させる方法。
(2)スチレンまたはその誘導体、次いでイソプレンまたはイソプレン・ブタジエン混合物を重合し、これをカップリング剤によりカップリングする方法。
(3)ジリチウム化合物を開始剤としてイソプレンまたはイソプレン・ブタジエン混合物、次いでスチレンまたはその誘導体を逐次重合させる方法。
【0026】
上記ブロック共重合体(A)の製造方法の詳細は、たとえば特開平2−300250号、特開平3−45646号等に記載されている。また、上記のような方法により得られたブロック共重合体(A)に水添処理を行えば、水素添加されたブロック共重合体(A)が得られる。水添されるブロックは、イソプレン重合体ブロックまたはイソプレン・ブタジエン共重合体ブロック(a-4)、あるいはブタジエン重合体ブロック(a-5)である。
【0027】
(B)エチレン・α−オレフィン共重合体
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、エチレンと炭素原子数が3〜20、好ましくは3〜16のα−オレフィンとの共重合体であり、密度が0.850〜0.895g/cm3 、好ましくは0.860〜0.890g/cm3 のエチレン・α−オレフィン共重合体である。エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のMFR(ASTM D 1238、190℃、2.16kg荷重)は、不織布を形成する繊維に用いる場合には、10〜2000g/10分、好ましくは30〜1000g/10分の範囲にあり、フィルムに用いる場合には0.1〜100g/10分、好ましくは1.0〜50g/10分の範囲にある。
【0028】
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)としては、エチレン単位が主成分、例えば70〜95モル%、好ましくは75〜95モル%であり、X線回折法による結晶化度が約0〜50%程度、好ましくは0〜20%の物性のものが望ましい。
【0029】
炭素原子数が3〜20α−オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン
、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が例示される。コモノマーとしてのα−オレフィンは1種類に限らず、ターポリマーのように2種類以上用いることもできる。
【0030】
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、通常遷移金属触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとを気相または液相下で重合または共重合して得ることができる。製造のための触媒には特に制約はなく、例えばチーグラー型触媒、フィリップス型触媒、メタロセン型触媒などが使用できるが、メタロセン型触媒が好ましい。また重合方法も特に制限はなく、気相法、溶液法、バルク重合法などの重合方法により重合することができる。また(B)成分として市販品を用いてもよい。
【0031】
環状オレフィン系樹脂(C)
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂(C)としては、
(c-1)炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、下記一般式〔1〕または〔2〕で表される少なくとも1種の環状オレフィンとのランダム共重合体、
(c-2)下記一般式〔1〕または〔2〕で表される少なくとも1種の環状オレフィンの開環(共)重合体またはその水素添加物、あるいは
(c-3)上記(c-1)または(c-2)のグラフト変性物
などが挙げられる。
【0032】
環状オレフィン系樹脂(C)は、ガラス転移温度(Tg)が+30℃以下、好ましくは+30〜−30℃である。
環状オレフィン系樹脂(C)は、サーマル・メカニカル・アナライザーで測定した軟化温度(TMA)が通常は50℃以下であり、好ましくは+40〜−20℃であるものが望ましい。なお軟化温度(TMA)は、シート上に直径1.0mmの石英製針を載せ、荷重49gをかけ、5℃/分の速度で昇温させたときに、針がシートに0.635mm侵入した温度である。
【0033】
またX線回折法によって測定した結晶化度が、通常0〜50%、好ましくは0〜20%であるものが望ましい。
環状オレフィン系樹脂(C)のMFR(ASTM D 1238、190℃、2.16kg荷重)は、不織布を形成する繊維に用いる場合には、10〜2000g/10分、好ましくは30〜1000g/10分の範囲にあり、フィルムに用いる場合には0.1〜100g/10分、好ましくは1.0〜50g/10分の範囲にある。
【0034】
環状オレフィン系樹脂(C)としては、上記物性値がすべて好ましい範囲にあるものが好ましいが、ある物性が好ましい範囲にあり、他の物性が好ましい範囲より広い範囲にあるものも使用できる。
【0035】
上記のような環状オレフィン系樹脂(C)を形成する際に用いられる環状オレフィンとしては下記一般式〔1〕または〔2〕で表される少なくとも1種の環状オレフィンを使用する。
【0036】
【化4】

前記一般式〔1〕において、nは0または1であり、mは0または正の整数である。
また、R1 〜R18ならびにRa 、Rb は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表す。
【0037】
ここで、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
また炭化水素基としては、炭素原子数が1〜20のアルキル基、炭素原子数が1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数が3〜15のシクロアルキル基および炭素原子数が6〜20の芳香族炭化水素基などが挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、へキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基などが挙げられ、
ハロゲン化アルキル基としては、上記のようなアルキル基を形成している水素原子の少なくとも一部がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基が挙げられる。
【0038】
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基などが挙げられ、
芳香族炭化水素基としては、フェニル基およびナフチル基などが挙げられる。
さらに前記一般式〔1〕において、R15とR16とが、R17とR18とが、R15とR17とが、R16とR18とが、R15とR18とが、あるいはR16とR17とがそれぞれ結合して(互いに共同して)、単環または多環を形成していてもよく、しかもこのようにして形成された単環または多環が二重結合を有していてもよい。ここで形成される単環または多環としては、具体的に以下のようなものが挙げられる。
【0039】
【化5】

なお上記例示において、1または2の番号を付した炭素原子は、式〔1〕においてそれぞれR15(R16)またはR17(R18)が結合している炭素原子を表す。また、R15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常は炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基など
を挙げることができる。
【0040】
前記一般式〔1〕の中で好ましい環状オレフィンとして、下記一般式〔1-1〕で表される環状オレフィンを挙げることができる。
【0041】
【化6】

上記一般式〔1-1〕において、n、m、R1 〜R18は前記一般式〔1〕と同じものを表す。さらに、環状オレフィンとしては下記一般式〔2〕で表される化合物を使用することもできる。
【0042】
【化7】

前記一般式〔2〕において、pは0または正の整数であり、hは0または正の整数であり、jおよびkは0、1または2である。また、R7 〜R15およびR17〜R18は一般式〔1〕と同じものを表す。さらに、R19〜R27はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基およびアルコキシ基からなる群から選ばれる原子または基を表す。
【0043】
ここでハロゲン原子は、前記一般式〔1〕におけるハロゲン原子と同じである。
また一般式〔2〕のR19〜R27の炭化水素基としては、炭素原子数が1〜20のアルキル基、炭素原子数が1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数が3〜15のシクロアルキル基および炭素原子数が6〜20の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0044】
より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、へキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基などが挙げられ、
ハロゲン化アルキル基としては、上記のようなアルキル基を形成している水素原子の少なくとも一部がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基が挙げられ、
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基などが挙げられ、
芳香族炭化水素基としては、アリール基およびアラルキル基などが挙げられ、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基などが挙げられる。
【0045】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基などが挙げられる。
ここで、R17およびR18が結合している炭素原子と、R21が結合している炭素原子またはR19が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち、上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、R17およびR21で表される基が、またはR18およびR19で表される基が互いに共同して、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)またはトリメチレン基(−CH2CH2CH2−)の内のいずれかのアルキレン基を形成している。
【0046】
さらに、j=k=0のとき、R23とR20またはR23とR27とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。この場合の単環または多環の芳香族環の例としては、R23とR20がさらに芳香族環を形成している以下に記載する基などを挙げることができる。
【0047】
【化8】

上記式において、hは一般式〔2〕におけるhと同じものを表す。
上記のような一般式〔1〕または〔2〕で表される環状オレフィンとしては、具体的には、
ビシクロ[2.2.1] へプト-2-エンまたはその誘導体、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンまたはその誘導体、
ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-へプタデセンまたはその誘導体、
オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,6.012,17]-5-ドコセンまたはその誘導体、
ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセンまたはその誘導体、
へプタシクロ-5-エイコセンまたはその誘導体、
へプタシクロ-5-へンエイコセンまたはその誘導体、
トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセンまたはその誘導体、
トリシクロ[1.4.0.12,5]-3-ウンデセンまたはその誘導体、
ペンタシクロ[6.5.1.13,5.02,7.03,13]-4-ペンタデセンまたはその誘導体、
ペンタシクロペンタデカジエンまたはその誘導体、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ペンタデセンまたはその誘導体、
へプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]-4-エイコセンまたはその誘導体、
ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,13]-5-ペンタコセンまたはその誘導体、
ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ヘキサデセンまたはその誘導体、
へプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-へンエイコセンまたはその誘導体、
ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]-5-ヘキサコセンまたはその誘導体、
1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンまたはその誘導体、
1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-へキサヒドロアントラセンまたはその誘導体、および
シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物などを挙げることができる。
【0048】
前記一般式〔1〕または〔2〕で表される環状オレフィンは、シクロペンタジエン類と対応する構造を有するオレフィン類とのディールス・アルダー反応により製造することができる。
【0049】
これらの環状オレフィンは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
(c-1)〜(c-3)の環状オレフィン系樹脂(C)は、前記一般式〔1〕または〔2〕で表される少なくとも1種の環状オレフィンを用いて、例えば特開昭60−168708号公報、特開昭61−120816号公報、特開昭61−115912号公報、特開昭61−115916号公報、特開昭61−271308号公報、特開昭61−272216号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開昭64−106号公報、特開平1−156308号公報および特開平1−197511号公報などにおいて本出願人が提案した方法に従い、適宜条件を選択することにより製造することができる。
【0050】
《(c-1)α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体》
環状オレフィン系樹脂(C)として用いられる(c-1)α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、通常、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を70〜99.9モル%、好ましくは75〜99.5モル%の量で、環状オレフィンから誘導される構成単位を0.1〜30モル%、好ましくは0.5〜25モル%の量で含有している。なお、α−オレフィン組成および環状オレフィン組成は13C−NMRによって測定される。
【0051】
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-へキセン、3-エチル-1-へキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。炭素原子数が2〜20のα−オレフィンの中ではエチレンが好ましい。
【0052】
この(c-1)α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体では、上記のようなα−オレフィンから誘導される構成単位と環状オレフィンから誘導される構成単位とが、ランダムに配列して結合し、実質的に線状構造を有している。この共重合体が実質的に線状であって、実質的にゲル状架橋構造を有していないことは、この共重合体が有機溶媒に溶解し、不溶分を含まないことにより確認することができる。たとえば極限粘度[η]を測定する際に、この共重合体が135℃、デカリンに完全に溶解することにより確認することができる。
【0053】
(c-1)α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、前記一般式〔1〕または〔2〕で表される環状オレフィンから誘導される構成単位の少なくとも一部は、それぞれ下記構造式〔1-a〕または〔2-a〕で示される構造を有していると考えられる。また、前記一般式〔1-1〕で表される環状オレフィンの少なくとも一部は下記構造式〔1
-1-a〕で表される構造を有していると考えられる。
【0054】
【化9】

上記一般式〔1-a〕、〔1-1-a〕において、n、m、q、R1 〜R18ならびにRa 、Rb は前記一般式〔1〕と同じものを表す。式〔2-a〕において、p、h、j、k、R7 〜R15およびR17〜R27は前記一般式〔2〕と同じものを表す。
【0055】
また(c-1)α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて他の共重合可能なモノマーから誘導される構成単位を含有していてもよい。
【0056】
このような他のモノマーとしては、上記のような脂肪族系α−オレフィンまたは多環式環状オレフィン以外のオレフィンや、非共役ジエン類などを挙げることができ、具体的には、
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロペンテン、3-メチルシクロヘキセン、2-(2-メチルブチル)-1-シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a-テトラヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデンなどのシクロオレフィン;
1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オタタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン類等を挙げることができる。
【0057】
これらの他のモノマーは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
(c-1)α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、上記のような他のモノマーから誘導される構成単位は、通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下の量で含有されていてもよい。
【0058】
(c-1)α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、α−オレフィンと一般式〔1〕または〔2〕で表される少なくとも1種の環状オレフィンとを用いて、前記公報に開示された製造方法により製造することができる。これらのうちでも、この共重合を炭化水素溶媒中で行い、触媒としてこの炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物および有機アルミニウム化合物から形成されるバナジウム系触媒、チタン化合物および有機アルミニウム化合物から形成されるチタン系触媒、または少なくとも2個の共役シクロアルカジエニル基が低級アルキレン基を介して結合した多座配位性化合物を配位子とするジルコニウム錯体およびアルミノオキサンから形成されるジルコニウム系触媒を用いて(c-1)α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体を製造することが好ましい。
【0059】
《(c-2)環状オレフィンの開環(共)重合体》
(c-2)環状オレフィンの開環(共)重合体は、前記一般式〔1〕または〔2〕で表される少なくとも1種の環状オレフィンから誘導される構成単位からなり、この構成単位の少なくとも一部は、下記一般式〔1-b〕または〔2-b〕で表される構造を有していると考えられる。また、前記一般式〔1-1〕で表される環状オレフィンの少なくとも一部は下記一般式〔1-1-b〕で表される構造を有していると考えられる。
【0060】
【化10】

上記一般式〔1-b〕、〔1-1-b〕において、n、m、q、R1 〜R18ならびにRa 、Rb は前記一般式〔1〕と同じものを表す。式〔2-b〕において、p、h、j、k、R7 〜R15およびR17〜R27は前記一般式〔2〕と同じものを表す。
【0061】
環状オレフィン系開環(共)重合体(c-2)は、前記環状オレフィンを必須成分とするものであるが、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の共重合可能な不飽和単量体成分を含有していてもよい。任意に共重合されていてもよい不飽和単量体としては、例えば下記一般式〔3〕で表される環状オレフィンなどを挙げることができる。
【0062】
【化11】

上記一般式〔3〕中、R28およびR29は、水素原子、炭化水素基またはハロゲン原子であって、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、tは2以上の整数であって、R28およびR29が複数回繰り返される場合には、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0063】
前記一般式〔3〕で示されるモノマー成分としては、例えばシクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、メチルシクロペンテン、メチルシクロヘキセン、メチルシクロヘプテン、メチルシクロオクテン、メチルシクロノネン、メチルシクロデセン、エチルシクロペンテン、エチルシクロブテン、エチルシクロオクテン、ジメチルシクロペンテン、ジメチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘプテン、ジメチルシクロオクテン、トリメチルシクロデセン、2-(2-メチルブチル)-1-シクロヘキセンなどを挙げることができる。
【0064】
前記一般式〔3〕以外に任意に共重合されてもよい不飽和単量体としては、具体的には2,3,3a,7a-テトラヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン、3a,5,6,7a-テトラヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン等の環状オレフィンを挙げることができる。
【0065】
このような任意に共重合されてもよい不飽和単量体は単独で、または組合せて使用することができ、通常、環状オレフィン系開環(共)重合体(c-2)100モル%に対して50モル%未満の量で用いられる。
【0066】
このような開環(共)重合体(c-2)は、前記公報に開示された製造方法により製造することができる。具体的には、前記一般式〔1〕または〔2〕で表される環状オレフィンを開環重合触媒の存在下に、重合または共重合させることにより得られる。
【0067】
このような開環重合触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムまたは白金などから選ばれる金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、パラジウム、ジルコニウムまたはモリブデンなどから選ばれる金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
【0068】
(c-2)開環(共)重合体の水素添加物は、上記のようにして得られる(c-2)開環(共)重合体を、従来公知の水素添加触媒の存在下に水素添加して得られる水素添加物である。
【0069】
この(c-2)開環(共)重合体の水素添加物において、前記一般式〔1〕または〔2〕で表される環状オレフィンから誘導される構成単位のうち、少なくとも一部は下記一般式〔1-c〕または〔2-c〕で表される構造を有していると考えられる。また、前記一般式〔1-1〕で表される環状オレフィンの少なくとも一部は、下記一般式〔1-1-c〕で表される構造を有していると考えられる。
【0070】
【化12】

上記一般式〔1-c〕、〔1-1-c〕において、n、m、q、R1 〜R18ならびにRa 、Rb は前記一般式〔1〕と同じものを表す。式〔2-c〕において、p、h、j、k、R7 〜R15およびR17〜R27は前記一般式〔2〕と同じものを表す。
【0071】
《(c-3)グラフト変性物》
(c-3)のグラフト変性物は、上記のような(c-1)α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体、または(c-2)環状オレフィンの開環(共)重合体もしくはその水素添加物の一部を、変性剤でグラフト変性して得られるグラフト変性物である。
【0072】
変性剤としては、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、これらの酸無水物または不飽和カルボン酸のアルキルエステル等の誘導体などを挙げることができる。
【0073】
グラフト変性物(c-3)において、変性剤から誘導される構成単位の含有率は、通常1
0モル%以下である。
このような(c-3)グラフト変性物は、所望の変性率になるように、(h-1)α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体または(h-2)環状オレフィンの開環(共)重合体もしくはその水素添加物に、変性剤を配合してグラフト重合させ製造することもできるし、予め高変性率の変性物を調製し、次いでこの変性物と未変性の環状オレフィン系樹脂とを混合することにより製造することもできる。
【0074】
環状オレフィン系樹脂(C)は、上記のような(c-1)、(c-2)および(c-3)からなる群から選ばれる樹脂を主体とするものであり、(c-1)、(c-2)または(c-3)の樹脂の単独のものであってもよいし、これらを2種以上組み合わせたものであってもよい。また(c-1)、(c-2)または(c-3)の樹脂に他の樹脂が配合された樹脂組成物であってもよい。
【0075】
環状オレフィン系樹脂(C)としては、これらのうちでも、(c-1)α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体、特にエチレン・環状オレフィンランダム共重合体が好ましく用いられる。
【0076】
芳香族系共重合体(D)
本発明で用いられる芳香族系共重合体(D)は、芳香族モノマーと、α−オレフィンとの共重合体であって、ガラス転移温度が+30℃以下、好ましくは+30〜−30℃である。芳香族系共重合体(D)のMFR(ASTM D 1238、190℃、2.16kg荷重)は、不織布を形成する繊維に用いる場合には、10〜2000g/10分、好ましくは30〜1000g/10分の範囲にあり、フィルムに用いる場合には0.1〜100g/10分、好ましくは1.0〜50g/10分の範囲にある。
【0077】
芳香族系共重合体(D)を構成する芳香族モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレンなどが挙げられる。
また芳香族系共重合体(D)を構成するα−オレフィンとしては、エチレンおよび前記樹脂(B)を構成するα−オレフィンと同様の炭素原子数が3〜20のα−オレフィンが挙げられる。
【0078】
芳香族系共重合体(D)における芳香族モノマーの含有量は0.1〜50モル%、好ましくは1〜50モル%、α−オレフィンの含有量は99.9〜50モル%、好ましくは99〜50モル%であることが望ましい。
芳香族系共重合体(D)は、X線回折法による結晶化度が通常0〜50%、好ましくは0〜40%であるものが望ましい。
【0079】
オレフィン系共重合体(E)
本発明で用いられるオレフィン系共重合体(E)は、プロピレン、1-ブテンおよび炭素原子数が5〜12のα−オレフィンから構成されるオレフィン系共重合体である。炭素原子数が5〜12のα−オレフィン成分としては、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどが挙げられる。これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を組合せて使用することもできる。
【0080】
オレフィン系共重合体(E)を構成する成分の組成は、プロピレン10〜85モル%、好ましくは15〜70モル%、1-ブテン3〜60モル%、好ましくは5〜50モル%、炭素原子数が5〜12のα−オレフィン10〜85モル%、好ましくは15〜70モル%で
ある。
【0081】
オレフィン系共重合体(E)のMFR(ASTM D 1238、190℃、2.16kg荷重)は、不織布を形成する繊維に用いる場合には、10〜2000g/10分、好ましくは30〜1000g/10分の範囲にあり、フィルムに用いる場合には0.1〜100g/10分、好ましくは1.0〜50g/10分の範囲にある。
【0082】
またオレフィン系共重合体(E)はX線回折法により測定した結晶化度が20%以下、好ましくは15%以下であるのが望ましい。結晶化度が上記範囲にあると柔軟性に優れた材料が得られる。
【0083】
またオレフィン系共重合体(E)は25℃で測定した動的弾性係数(E′)が5×107 〜5×109 dyn/cm2 、特に好ましくは1×108 〜5×109 dyn/cm2 であり、かつ25℃における損失係数(tanδ)が0.4以上、特に好ましくは0.5以上であるのが望ましい。動的弾性係数(E′)および損失係数(tanδ)が上記範囲にあると伸縮性に優れた材料が得られる。
【0084】
なお動的弾性係数(E′)および損失係数(tanδ)は次の方法により測定したものである。すなわち、ポリマーを200℃で熱プレス成形し、冷プレスにより急冷しシート状(厚さ1mm)とする。このシートを一日以上放置した後、長さ3cm、幅3mmの試験片に切取る。この試験片を、動的粘弾性測定器(東洋ボールドウィン社製、RHEO−VIBRON DDV−II型)により、周波数110Hz、動的変位1.6×10-3cmの条件で測定する。
【0085】
またオレフィン系共重合体(E)は沸騰n-ヘプタン不溶分が5重量%以下、好ましくは4重量%以下であり、かつ25℃におけるアセトン可溶分が3重量%以下、好ましくは2.5重量%以下であるのが望ましい。
【0086】
なお沸騰n-ヘプタン不溶分は、約1mm×1mm×1mm程度の細片試料およびガラスビーズを円筒ガラスフィルターに入れ、ソックスレー抽出器により14時間抽出する方法で算出するものであり、不溶分の重量%は溶解部分または不溶分を秤量することにより求めた値である。また25℃アセトン可溶分は、試料15gをn-デカン250mlに溶解(130℃)させ、これを500mlのアセトンに投じ、アセトン不溶ポリマーを析出させて、濾過により濾液を回収し、その後濾液に水300mlを加え、分液ロートでn-デカン層と水−アセトン層を分離し、n-デカン層を濃縮することにより求めた値である。
【0087】
ブテン系ポリマー(F)
本発明で用いられるブテン系ポリマー(F)は1-ブテンを主要モノマーとする重合体であり、密度が0.890〜0.915g/cm3 、好ましくは0.895〜0.910g/cm3 、より好ましくは0.895〜0.905g/cm3のブテン系ポリマーである。ブテン系ポリマー(F)のMFR(ASTM D1238、190℃、2.16kg荷重)は、不織布を形成する繊維に用いる場合には、10〜2000g/10分、好ましくは30〜1000g/10分の範囲にあり、フィルムに用いる場合には0.1〜100g/10分、好ましくは1.0〜50g/10分の範囲にある。
【0088】
(F)成分として用いられるブテン系ポリマーは、1-ブテンが70モル%以上、X線回折法による結晶化度が65%以下のものが好ましい。1-ブテンと共重合させる他のモノマーとしてはエチレン、プロピレンおよび炭素原子数が5〜20の他のα−オレフィンが挙げられる。ブテン系ポリマー(F)の重合方法も限定されず、前記樹脂(B)成分について説明したものと同様の方法が使用できる。
【0089】
伸縮性部材
本発明に係る伸縮性部材の態様としては、上述した樹脂(A)ないし(F)から選ばれる少なくとも1種の樹脂の繊維から形成される伸縮性不織布がある。
【0090】
このような伸縮性不織布は、100%伸長のヒステリシスループより測定される永久歪が30%以下である。本発明において、100%伸長のヒステリシスループにより測定される永久歪とは、引張試験において、100%まで伸長させ、その直後、同じ速度で伸長を緩和して元に戻した際、試料の長さが、伸長前の試料の長さに対して伸びた割合を言う。
【0091】
また、伸縮性不織布形成する繊維の繊維径は、通常1〜30μm程度であり、好ましくは5〜20μm程度である。伸縮性不織布の目付量は、15〜50g/m2 程度、好ましくは15〜30g/m2 程度である。
【0092】
伸縮性不織布の製造方法としては従来公知の方法を採用することができ、たとえば上記樹脂(A)ないし(F)から選ばれる少なくとも1種の樹脂を溶融押出し、メルトブロー紡糸口金から紡糸された繊維を、高温高速の気体によって極細繊維流としてブロー紡糸し、捕集装置で極細繊維ウエブとし、必要に応じて熱融着処理することにより製造するメルトブローン法、上記樹脂(A)ないし(F)から選ばれる少なくとも1種の樹脂を溶融押出し、紡出されたフィラメントを冷却流体により冷却し、延伸空気によってフィラメントに張力を加えて所期の繊度とし、フィラメントを捕集ベルト上に捕集し、たとえば熱エンボス処理を行なうスパンボンド法などがある。
【0093】
本発明に係る伸縮性部材の他の態様には、上述した樹脂(A)ないし(F)から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる伸縮性フィルムがある。このような伸縮性フィルムは、100%伸長のヒステリシスループより測定される永久歪が30%以下である。
【0094】
伸縮性フィルムの厚さは通常1.0〜100μm、好ましくは2.0〜50μmである。フィルムの厚さが1.0μm未満ではフィルムの強度や腰の低下によってフィルムの取扱い性が著しく低下し、100μmを超えるとフィルムの引き延ばし時の応力が大きくなり好ましくない。
【0095】
伸縮性フィルムの製造方法は、前記の各樹脂組成物を使用して従来行われている成形法、具体的には通常のインフレーション成形、Tダイフィルム成形、押し出し成形法等によって積製造することができる。
【0096】
本発明に係る伸縮性不織布および伸縮性フィルムは、単独で伸縮性部材、たとえば紙おむつのギャザー、生理用ナプキン等の衛生材料の一部、湿布剤の基布等として用いることができ、また後述するように伸長性不織布と積層して用いることもできる。
【0097】
不織布積層体
本発明に係る不織布積層体は、少なくとも1層の伸長性不織布層と、少なくとも1層の伸縮性部材層とからなり、少なくとも一方の表面層が伸長性不織布層である積層体である。
【0098】
本発明で用いられる伸長性不織布は、横方向の伸長率が100%以上、好ましくは200%以上であり、かつ100%伸長時の引張荷重が、最大引張強度の50%以下、好ましくは5〜20%の低応力性を有する不織布である。また、伸長性不織布は、加工適性を損なわないために、縦方向において低伸長であって、ある程度の強度を有することが好まし
く、5%伸長時の引張荷重が250g/25mm以上、好ましくは500g/25mm以上である。
【0099】
なお本発明において、「縦方向」とは、機械に不織布原反を供給する方向、すなわち、不織布原反の流れ方向を言い、「横方向」とは、機械に不織布原反を供給する方向に対して直角の方向、すなわち、不織布原反の流れ方向と直角の方向を言う。
【0100】
この伸長性不織布を形成する繊維の材料樹脂としては、繊維を形成可能なものであれば特に限定されず、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等を使用することができ、特にポリオレフィンが好ましい。
【0101】
伸長性不織布を製造する方法としては、加熱下に不織布を縦延伸する方法、または捲縮糸から不織布を形成する方法などが挙げられる。加熱下に不織布を縦延伸して伸長性不織布を製造する方法では、スパンボンド法、カード法等のいずれの方法による不織布をも使用することができる。その中でも、この縦延伸処理による幅縮みが大きく皺が発生し易いこと、また縦延伸処理によって横方向の強度が低下し易いことから、横方向の引張伸度が大きい捲縮糸からなる不織布や、引張強度の縦横比が小さい不織布が好ましい。
【0102】
加熱下に不織布を縦延伸して伸長性不織布を製造する具体的な方法としては、例えば、国際公開:WO94/23109、特公昭62−11106号公報等に記載の方法に類似の方法が挙げられる。この方法においては、幅縮みを大きくするために、最終延伸倍率に到達するまでの延伸行路長(延伸処理中に速度差をつけている送り出しロールと引取りロールの間の距離)を長くするか、または多段延伸を行うことが好ましい。この縦延伸処理において、幅縮み量は、少なくとも60%以上となるように調整される。縦延伸は、送り出しロールと引き取りロールの速度差を調整することによって行われ、延伸倍率が通常1.4〜1.8倍の範囲になるように調整される。また、行路長は、2.5m以上、好ましくは5m以上であることが望ましい。延伸速度は、幅縮み量を大きくするために、2500%/分以下、好ましくは1500%/分以下となるように調整される。また、加熱は、オーブン、赤外線ヒーター、熱ロール、熱板ヒーター等を用いて行うことができる。
【0103】
捲縮糸からなる不織布を形成する方法としては、例えば、原料樹脂として、メルトフローレート(MFRA )が5〜20g/10分のポリオレフィンAと、メルトフローレートが(MFRA )+10〜(MFRA )+20g/10分のポリオレフィンBとを用い、ポリオレフィンAとポリオレフィンBとの重量比が10/90〜20/80となるように複合溶融紡糸法によって紡糸して、偏心芯鞘型の捲縮複合長繊維フィラメントを製造する。このとき、紡糸用ノズルの偏芯量は、0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上であるのが望ましい。次に、紡出されたフィラメントを冷却流体により冷却し、延伸空気によってフィラメントに張力を加えて所期の繊度とする。ここで、繊度が小さいほど、フィラメントの捲縮度が大きいめ、3d以下、好ましくは2d以下に調整される。紡糸されたフィラメントを捕集ベルト上に捕集し、交絡処理を行って伸長性不織布を得ることができる。交絡処理は、例えば、熱エンボス、ウォータージェット、ホットエアスルー、ニードルパンチ等による方法で行うことができる。
【0104】
本発明に係る伸縮性不織布積層体は、少なくとも1層の(a)伸長性不織布層と、少なくとも1層の(b)伸縮性部材層からなる。その層構成は、少なくとも一方の表面層が(a)伸長性不織布からなる層であれば特に限定されないが、好ましくは(a)伸長性不織布/(b)伸縮性部材、(a)伸長性不織布/(b)伸縮性部材/(a)伸長性不織布の層構成である。なお、(a)伸長性不織布層と(b)伸縮性部材層とは、(a)伸長性不織布層の伸長方向と(b)伸縮性部材層の伸縮方向とが一致するように積層される。
【0105】
本発明に係る伸縮性不織布積層体は、横方向に100%伸長のヒステリシスループの測定による永久歪みが30%以下、好ましくは20%以下であり、100%伸長時の引張強度が50%伸長時の引張強度の1.2〜2.5倍、好ましくは1.5〜2倍である。
【0106】
また本発明の伸縮性不織布積層体は、縦方向に5%伸長したときの引張強度が250g/25mm以上である。この縦方向の引張強度は、横伸長性スパンボンド不織布層の特性に由来する。この縦方向に強度が優れる特性は、不織布を巻物で取り扱う際の加工適性を損なわないため、巻き出し、巻取り時の原反の伸び、さらに原反の伸びによる幅落ち等を防止するために必要な特性である。
【0107】
本発明の伸縮性不織布積層体において、伸長性不織布および伸縮性不織布の目付量は、本発明の不織布積層体の用途、要求される品質、経済性等に応じて適宜選択することができる。
【0108】
本発明の伸縮性不織布積層体の厚さは、用途、要求される品質、貼り合わせ等に応じて適宜選択することができる。通常、0.2〜2mmであり、好ましくは0.5〜1.2mmである。また、伸長性不織布からなる伸長層と、伸縮性不織布からなる伸縮層との厚さの割合は、通常、1:1〜2:1程度である。
【0109】
本発明の伸縮性不織布積層体の製造方法は、伸長性不織布と、伸縮性部材とを積層し、両者を一体化して伸長性不織布からなる伸長層と伸縮性部材からなる伸縮層とを有する積層体を形成できる方法であれば、いずれの方法にしたがって行ってもよく、特に制限されない。たとえば(1)伸長性不織布と伸縮性部材とを重ね合わせ、加熱加圧により伸長性不織布と伸縮性部材とを融着させる方法、(2)伸長性不織布と伸縮性メルトブローン不織布とを、ホットメルト接着剤、溶剤系接着剤等の接着剤によって接着する方法等を採用することができる。
【0110】
また伸縮性部材が伸縮性不織布である場合には、溶融紡糸よって形成された繊維を伸長性不織布の上に直接堆積させて伸縮性不織布を形成した後、伸長性不織布と伸縮性不織布とを融着させる方法を採用することができる。伸長性不織布の上に、直接伸縮性不織布を形成する方法は、たとえば樹脂(A)ないし(F)から選ばれる少なくとも1種の樹脂の溶融(混練)物を伸長性不織布の表面に吹き付け、繊維を堆積させるメルトブローン法によって行うことができる。このとき、伸長性不織布に対して、溶融混練物が吹き付けられる側の面の反対側の面は負圧にして、メルトブローン法によって形成される繊維を吹き付け、堆積させると同時に、伸長性不織布とメルトブローン不織布を一体化させて、伸長性不織布からなる伸長層とメルトブローン不織布からなる伸縮層とを有する不織布積層体を得る。両不織布の一体化が不十分である場合は、加熱加圧エンボスロール等により十分に一体化させることができる。
【0111】
接着剤によって伸長性不織布と伸縮性部材とを接着する方法において用いられるホットメルト接着剤としては、たとえば酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系等の樹脂系接着剤、スチレン−ブタジエン系、スチレン−イソプレン系等のゴム系接着剤などが挙げられる。また、溶剤系接着剤としては、たとえばスチレン−ブタジエン系、スチレン−イソプレン系、ウレタン系等のゴム系接着剤、酢酸ビニル、塩化ビニル等の樹脂系の有機溶剤または水性エマルジョン接着剤などが挙げられる。これらの接着剤の中でも、スチレン−イソプレン系、スチレン−ブタジエン系等のゴム系のホットメルト接着剤が、伸長性不織布の特性である風合いを損なわない点で好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが10〜2000g/10分であり、密度が0.890〜0.915g/cm3 であり、ブテンが70モル%以上であるブテン系ポリマー(F)の繊維から形成される不織布からなることを特徴とする伸縮性部材。
【請求項2】
少なくとも1層の請求項1に記載の伸縮性部材層と、少なくとも1層の横方向の伸長率が100%以上である伸長性不織布層とからなることを特徴とする伸縮性不織布積層体。

【公開番号】特開2009−62672(P2009−62672A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281280(P2008−281280)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【分割の表示】特願2006−212345(P2006−212345)の分割
【原出願日】平成10年5月14日(1998.5.14)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】