位相及び偏光変調デバイス、また、それを用いたレーザー顕微鏡
【課題】試料、観察モードにあわせて最適なベクトルビームを発生させ、高い分解能を持ったレーザー顕微鏡を提供する。
【解決手段】 コヒーレント光源からの光束の位相を変調する位相変調手段と、光束の偏光方向を変調する偏光方向変調手段とを配置し、偏光方向変調手段は、直線偏光をラジアル偏光に変換し、位相変調手段は、複数の輪帯状パターン(104)の位相分布を与え、複数の輪帯状パターンの位相分布における直径を可変することを特徴とする位相及び偏向方向を変調するデバイス。また、それを用いた電子顕微鏡。
【解決手段】 コヒーレント光源からの光束の位相を変調する位相変調手段と、光束の偏光方向を変調する偏光方向変調手段とを配置し、偏光方向変調手段は、直線偏光をラジアル偏光に変換し、位相変調手段は、複数の輪帯状パターン(104)の位相分布を与え、複数の輪帯状パターンの位相分布における直径を可変することを特徴とする位相及び偏向方向を変調するデバイス。また、それを用いた電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザー顕微鏡において、試料を照射する光束を変調し、より高分解能な画像を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー顕微鏡は、レーザー光を対物レンズにより試料に集光し、試料より発生する反射・散乱光や蛍光を光学系で伝送し、試料上の集光点と光学的に共役な位置にピンホールを配置し、ピンホールを透過した光束を検出器で受光している。レーザー光を光軸と垂直方向のX,Y方向にスキャンし、試料の平面画像を取得し、対物レンズと試料の光軸方向(Z方向)の間隔を変えることで、Z方向の複数の断層像が得られ、これにより試料の3D画像を構築している。
【0003】
最も重要かつ、中心的な役割を果たすレーザー顕微鏡として蛍光顕微鏡がある。これは、蛍光色素を用いて試料を標識し、レーザー光のスキャンにより、試料から発生する蛍光を光学系で伝送し、蛍光のみを選択的に透過する色フィルターを用いることで、SN比の良好な信号を得ている。その他にも、試料の集光点から発生する多光子吸収励起による蛍光を観察する多光子顕微鏡や、第2高調波を観察するSHG顕微鏡等もあり、それぞれ、生体深部の観察や、反転非対称な分子の観察に適している。
【0004】
レーザー光の偏光分布を制御し、放射状の偏光分布を持ったラジアル偏光を生成し、高開口数(NA)のレンズを用いて集光すると、レンズ焦点位置で光の光軸方向(Z方向)の電界振動成分が支配的となる。また、方位角方向の偏光分布を持ったアジマス偏光を生成し、レンズで集光すると、光の進行方向の電界成分をほぼゼロにすることができる。このような偏光制御により、集光点での電界成分をコントロールすることができ、試料とのインタラクションが変化し、試料の分子の配向状態などの情報が得られる。特に第2高調波は、非対称性分子の分布や配向方向の情報が得られ、生体分子や液晶などの情報を検出することができる。このような偏光分布を与える素子として、例えば、ラジアル偏光を生成するZ偏光素子などが知られている(例えば、特許文献1)
【0005】
レーザー顕微鏡の分解能は、レーザービームのスポット径に依存し、ビーム径を細く絞ることで、分解能を向上させることができる。ここで、Maxwell方程式の解として確認されているベクトルビームは、ベッセルガウスビーム、ラゲールガウスビーム等がある。このベクトルビームの次数を適当に選んでやることで、レイリーの分解能1.22λ/2NAよりも細いビームスポットを生成することができる。例えば、ラジアル偏光分布を持ったラジアル偏光ビームR−TEMp1の焦点面での電界成分の振幅は、以下の式で表される。ここで、添え字のp及び1は、それぞれ、動径方向のモード次数と方位角方向のモード次数を示している。方位角方向の次数を上げていくと、サイドローブの数が増加し、中心スポット径は細くなる傾向がある。
【0006】
【数1】
【0007】
光軸上ではZ偏光成分のビームスポットが形成され、ラジアル成分は0となっている。高次モードほど、サイドローブは大きくなるという課題はあるが、ビームは細く絞られ、例えばNA=1のレンズにおけるビームスポットの半値幅は、R−TEM01で0.582λ、R−TEM11で0.432λ、R−TEM21で、0.403λ、R−TEM51で0.378λとなる。このような細いビームを使い、顕微鏡の高分解能化する試みも行われている(例えば、非特許文献1)。このようなビームは、直線偏光に比べて、細く絞れると同時に点対称なビームスポットを形成する。また、光軸方向の焦点深度が深いという特徴を持っている。
【0008】
このようなベクトルビームを発生させる手段として、液晶デバイスを用いた方法が提案されている。例えば、直線偏光をラジアル偏光ビームに変換するデバイスとして、光が入射する平面を、光軸を中心とした扇状に広がる領域に分割し、各々の領域に、2分の1波長板を配置し、入射する鉛直方向の直線偏光と2分の1波長板の光軸の角度を僅かずつ変えると、ラジアル偏光が得られることが知られている。これは、直線偏光を、その偏光軸とθ傾いた光軸を持つ2分の1波長板に入射すると、2θ傾斜した直線偏光が得られることを利用している。
【0009】
さらに、ベクトルビームの1種であるラゲールガウスビームの振幅分布を近似するため、上述のラジアル偏光への変換素子に加えて、輪帯状に0、πの位相分布を交互に表示する位相素子を重ねて用いることにより、ラジアル偏光ビームR−TEMp1モードのビームを近似的に生成することができる(例えば、非特許文献2)。位相素子の各輪帯径は、ラゲール関数の正負の境界に対応し、ラゲール関数が正の領域は位相が0、負の領域は位相がπとなるように設定することで、ラゲールガウスの振幅分布をバイナリ近似している。
【0010】
また、ラジアル偏光ビームの詳細な集光特性について研究されており、ビーム径と集光するレンズの瞳径の比を変えていくと、電界のZ方向振動成分も光軸上で強度が0となる条件がある。これは各リングからの光束が干渉で打ち消しあう為と考えられる。このとき焦点の前後には2つのスポットが形成され、また、焦点面ではドーナッツ状の電界分布が存在し、強度0のポイントを囲む様に光強度の強い領域が存在し、Optical cageと呼ばれている(例えば、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4512693号(図1)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】“Sharper focal spot formed by higher-order radially polarized laser beams” Vol.24, No.6 6.2007 J. Opt. Soc. Am. A
【非特許文献2】「ラジアル偏光ラゲールガウス光生成用液晶光学素子の試作と評価」,信学技報, vol. 111, no. 15, CPM2011-5, pp. 19-22, 2011.4.
【非特許文献3】“Focusing property of a double-ring-shaped radially polarized beam” Vol. 31, No. 6 5.2006 OPTICS LETTERS
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上述した様に、多様なベクトルビームが存在し、例えば、ラゲールガウスビームのモードにおいて、高次モード程、ビームスポットは細くなる一方、サイドローブが大きくなるというトレードオフの関係になっている。ビームスポットが細くなれば、より細かい試料の分解能が得られる可能性がある一方、サイドローブによるノイズで分解能が低下する可能性も考えられる。さらに、2光子吸収やSHGモード等の非線形な特性を持った観察モードでは、サイドローブの影響は小さくなることが考えられる。この様に、試料の種類、観察モードにより最適なベクトルビームは変わり、一概に最適なベクトルビームが存在するわけではなく、固定のベクトルビーム発生デバイスでは、試料や観察モードにあわせた最適なベクトルビームを発生させることはできない。
【0014】
さらに、ラジアル偏光は、焦点深度が深く、焦点深度より試料の厚さが大きい場合、試料をレーザービームで照明すると、焦点深度内の試料の情報を含んだ光が発生し、また、共焦点のピンホールで光軸方向(Z方向)の断層像の選別(セクショニング)をすることができず、焦点深度深さの試料の情報が重畳されてしまい、逆に分解能が低下するという問題点がある。
【0015】
そこで、本発明は上記課題を解決し、焦点深度の浅いベクトルビームを含めた複数のベクトルビームを発生させることができ、試料や観察モードに合わせた最適なベクトルビームを発生させ、試料を高い分解能で観察することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の位相及び偏光変調デバイス、また、それを用いたレーザー顕微鏡は下記記載の構成を採用するものである。
【0017】
本発明の位相及び偏光変調デバイスは、コヒーレント光源と対物レンズの間に、コヒーレント光源からの光束の位相を変調する位相変調手段と、光束の偏光方向を変調する偏光方向変調手段とを配置し、偏光方向変調手段は、直線偏光をラジアル偏光に変換し、位相変調手段は、複数の輪帯状パターンの位相分布を与え、複数の輪帯状パターンの位相分布における直径を可変することを特徴とする。
【0018】
この位相変調手段は、電極を形成した第1の基板と第2の基板とで液晶を挟持した液晶デバイスであり、この電極は、複数の輪帯状パターンを有する輪帯電極を備え、複数の輪帯状パターンの輪帯電極うち、電圧を印加する輪帯電極を選択することによって、位相分布における直径の可変を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明のレーザー顕微鏡は、コヒーレント光源と、コヒーレント光源からの光束を走査する光学系と、光束を試料に集光する対物レンズと、試料から発生した前記試料の情報を含んだ光束を検出器に伝送する光学系とを有するレーザー顕微鏡であって、コヒーレント光源と対物レンズの間に、先に記載の位相及び偏光変調デバイスを用いたことを特徴とする。また、輪帯状パターンの位相分布における直径が可変されることに応じて、試料の集光点と光学的に共役な位置に配置した共焦点ピンホール位置を光軸方向に変更することができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、試料や観察モードにあわせて、ベクトルビームのモードを変えることができ、より高分解能な観察をすることができる。特に、ラジアル偏光ビームに特有の焦点深度の深いビームによる不具合を、焦点深度を浅くすることで解決し、ある程度の厚さを持った試料において高い分解能で試料を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一つの実施形態に係るレーザー顕微鏡の概略構成図である。
【図2】本発明の一つの実施形態に係るレーザー顕微鏡で用いられる偏光変調デバイスを説明する概略図である。
【図3】位相及び偏光変調デバイスとして機能する、ホモジニアス配向の液晶デバイスの断面模式図である。
【図4】偏光変調デバイスの機能を説明するための図である。
【図5(a)】本発明の一つの実施形態に係る位相変調デバイスを説明する概略図である。
【図5(b)】本発明の一つの実施形態に係る位相変調デバイスを説明する概略図である。
【図6】焦点位置のビーム強度プロファイルを計算する座標系を示す模式図である。
【図7】位相及び偏光変調デバイスのパラメータを変化させた場合の、ビームスポットの光強度プロファイルを示すグラフである。
【図8】位相及び偏光変調デバイスのパラメータを変化させた場合の、ビームスポットの光強度プロファイルを示すグラフである。
【図9】位相及び偏光変調デバイスのパラメータを変化させた場合の、ビームスポットの光強度プロファイルを示すグラフである。
【図10】本発明の一つの実施形態に係る位相変調デバイスにおいて、駆動する電極パターンの違いを説明する概略図である。
【図11】位相及び偏光変調デバイスのパラメータを変化させた場合の、ビームスポットの焦点面での強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる位相及び偏光変調デバイス、また、それを用いたレーザー顕微鏡の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の1つの実施形態に係るレーザー顕微鏡の概略構成図を示している。コヒーレント光源であるレーザー光源1から出射した光束は、コリメート光学系2により平行光にされ、位相及び偏光変調デバイス3を透過し、対物レンズ4で試料5上に集光する。試料5により反射・散乱した光束や、試料より発生した蛍光等、試料の情報を含んだ光束は、光路を逆にたどり、ビームスプリッター6で反射され、コンフォーカル光学系7で再び共焦点ピンホール8上に集光され、試料の焦点位置以外からの光束をカットし、検出器9でSN比の良好な信号を得る。
【0024】
位相及び偏光変調デバイス3は、2つの液晶デバイスからなり、対物レンズ4側から、偏光変調デバイス11、位相変調デバイス10となっている。偏光変調デバイス11は、前述した構成のデバイスを用いることができる。前述したように、偏光変調デバイス11は、入射する直線偏光をラジアル偏光に変換させるデバイスで、光束が入射する平面を、光軸を中心とした扇状に広がる領域に分割し、各々の領域に、光軸の角度を僅かずつ変えた2分の1波長板を配置する構造になっている。このような2分の1波長板は、液晶素子を採用し、液晶分子をホモジニアス配向させ、その複屈折の大きさを2分の1波長として用いたり、位相差板を分割して張り付けたりなどして、形成することができる。
【0025】
偏光変調デバイス11について図2、図3、図4を用いてより詳細に説明する。本実施形態では、偏光変調デバイス11として、液晶デバイスを採用した。図2は、偏光変調デバイス11の平面図である。液晶層は、透明基板111、112で挟まれており、シール部材113で、液晶が漏れないように周辺部を封止している。液晶を駆動するアクティブ領域114は、図の円形内であり、8分割に配向分割された例を示している。分割数は8分割にこだわる必要は無く、分割数が多いほど理想的なラジアル偏光が得られるが、得られるビーム特性との兼ね合いで決定すれば良く偶数に限る必要もない。
【0026】
図3は、図2の偏光変調デバイス11のアクティブ領域114における断面模式図を示している。透明基板111,112に液晶分子94が挟まれている構成を示している。基板表面には透明電極93,93a,93bが形成されており、右側半分が電圧を印加した場合、左側半分が電圧を印加していない場合を示している。液晶分子94は、細長い分子構造を持ち、ホモジニアス配向は、2枚の基板に挟まれた液晶分子94をその長軸方向がお互いに平行、さらに、基板界面と平行に並べた構成を持っている。液晶分子94は、その長軸方向と直交する方向で屈折率が異なり、一般に、液晶分子94の長軸方向に平行な偏光成分(異常光線)に対する屈折率neは、液晶分子の短軸方向に平行な偏光成分(常光線)に対する屈折率noよりも高い。そのため、ホモジニアス配向させた液晶デバイスは、1軸性の複屈折素子として振舞う。
【0027】
アクティブ領域114の液晶分子94の配向方向は、図4(a)矢印に示すような方向を持ち、各領域の複屈折の値が、入射する光の波長の2分の1波長となるような仕様で作成する。例えば、Δn0.2の液晶を用い、液晶層の厚さ(セルギャップ)を4μmとした場合、光路差は、0.8μmになり、可視から近赤外のレーザー光源に対し、2分の1波長板として機能させることができる。このデバイスに対し、鉛直方向に振動する直線偏光を入射させると、それぞれの領域で、配向方向の傾きをθとした場合、偏光面は、2θ回転し、図4(b)の様な偏光分布を持ったラジアル偏光ビームに変換させることができる。具体的な配向方向は、8分割の場合、22.5°の整数倍となり、0°、±22.5°、±45°、±67.5°、90°となる。このように、図4(a)の矢印で示した様な光軸を持った2分の1波長板に鉛直方向の直線偏光を入射させると、図4(b)の矢印で示すような偏光分布を持ったラジアル偏光が得られる。
【0028】
上述のように、各領域で異なる方向に液晶を配向処理する方法について説明する。配向処理として最も頻繁に使用されている手法はラビング法であり、ポリイミド等の高分子材料を基板上にスピンコート等で成膜し、回転するローラーに巻きつけたロールで1方向にこすることにより、液晶分子をその方向に配向させるものである。平面内の放射状の各領域内で配向方向を異ならせる必要があるため、配向処理として、均一な配向となる領域のみ開口を設けたマスクを用い、マスクを変え(もしくは位置をずらし)ながら、これらの配向処理を繰り返し行うことで、放射状に配向するデバイスが作成できる。
【0029】
また、ラビング法の他には、構造配向、光配向等の配向処理も開発されている。構造配向としては、ナノメーターオーダーの微細なグレーティングを基板表面に形成し、グレーティングに平行に液晶を配向させる技術などがあり、その他、光配向膜に偏光した光を照射し、偏光方向に液晶分子を配向させる技術が報告されており、それぞれ、放射状のグレーティング構造や、放射状の偏光を照射することで、放射状に配向する液晶デバイスを作成することができる。
【0030】
次に、図1の位相変調デバイス10について詳細に説明する。位相変調デバイス10は、ラゲールガウスビームの振幅分布を近似するため、輪帯状に0、πの位相分布を交互に表示するデバイスである。位相変調デバイス10の各輪帯径は、ラゲール関数の正負の境
界に対応し、ラゲール関数が正の領域は位相が0、負の領域は位相がπとなるように設定されている。
【0031】
このような位相分布を与える素子も、ホモジニアス配向した液晶デバイスで作成することができる。液晶デバイスの位相変調デバイス10の平面図を図5(a)に示す。すなわち、図5(a)のような輪帯電極104を持ち、それぞれの輪帯電極に相対位相πを与えるように駆動する輪帯電極を選択することで図5(b)の様な位相分布を形成している。例えば図5(b)の斜線部は位相π、その他の領域は位相0を表している。液晶層100は、2枚の透明基板101、102で挟持され、周辺部をシール103で封止するとともに、透明基板101、102の接着を行っている。液晶分子は、誘電率異方性を持ち、一般に液晶分子長軸が電界方向に倣う方向に力が働く。ここで、図示した位相変調デバイス10は、引き出しのための電極が必要であるが、簡単のために省略してある。
【0032】
この位相変調デバイス10も偏光変調デバイス11における液晶分子と同様の動作を行う。つまり、図3で示したように、液晶分子を挟む2枚の基板に設けられた電極間に電圧を印加すると、液晶分子の長軸方向は、基板に平行な状態から、電圧に応じて立ち上がってくる。このとき、液晶分子長軸に平行で基板に垂直な偏光成分に対する液晶分子の屈折率をnψとすると、no≦nψ≦neとなる。そのため、液晶層の厚さがdであると、液晶層のうち、電圧が印加された領域と印加されていない領域を通る光束の間に、光路長差Δnd(=nψd−nod)が生じる。位相差は、2πΔnd/λとなる。なお、λは、液晶層に入射する光束の波長である。
【0033】
前述したように、位相変調デバイス10は、輪帯状に0、πの位相分布を交互に示すデバイスであるが、実際には、界面のアンカリング等で、電圧印加時、液晶分子が基板から垂直には立ち切らず、垂直から僅かに傾いた角度で立つことから残留複屈折が生じ、位相差0を達成することは難しい。従って、先に電圧を印加したところ以外には、バイアス電圧を印加し、位相0は、波長の整数倍nλ、位相πは、(n+1/2)λとすることで0、πの位相変調を与えている。また、駆動する輪帯電極の間隙にも透明電極が形成されており、対向電極と同一電圧が印加され、透明電極自体の光路長による光路差の違い、輪帯電極による回折光の防止等がなされている。
【0034】
ここで、一般的なレーザー顕微鏡は、照射するレーザー光の波長は複数備えており、それぞれ、必要な位相変調量が異なる。波長の違いによる、位相変調量の違いは、液晶に印加する電圧を変化させることで、全ての波長(λ)のレーザーに対して、(n+1/2)λの位相変調を与えることができる。更に、温度変化等による位相変調量の違いも印加電圧の調整でキャンセルすることができる。
【0035】
また、電圧印加する輪帯電極を変更することで、位相変調パターンの直径を変更することができる。例えば、相似形状を保ちながら、サイズの拡大縮小を行うことで、対物レンズの瞳径に対応させることができる。すなわち、一つの位相変調デバイス10で、複数の対物レンズに対応でき、対物レンズを変更することで、多様な試料への対応が可能となる。また、対物レンズの瞳径が一定の場合、位相変調パターンの拡大縮小により、ビーム径とサイドローブの大きさをコントロールすることができ、これにより試料にあわせた最適化を行うことができる。
【0036】
更に、前述したOptical Cageが発生するように、輪帯電極の印加パターンを複数用意し、試料の厚さにあわせて電圧が印加される輪帯電極のパターンを選択し、輪帯状パターンの位相分布における直径を可変する。例えば、厚みの無い試料(レーザースポットの焦点深度より十分に薄い試料)に対しては、ビーム径をなるべく細くする輪帯状パターンが得られるように電圧を印加して高分解能化を目指し、厚みのある試料に対しては、Optical
Cageが得られる条件のパターンが得られるように電圧を印加し、レーザースポットの焦点深度を浅くさせるようにすることもできる。
【0037】
以下に、試料の厚みによって、電圧印加される輪帯電極のパターンについて、詳細に説明する。対物レンズを通過する光の照射面における光強度分布について、図6を用いて説明する。図6に図示するように、光軸をZ軸とし、対物レンズ4の焦点面において光軸に直交する平面内で極座標をとり、光強度分布を計算する。例えば、瞳径とレーザービーム径の比β(β=瞳径/ビーム径)をパラメータに、βの値を変化させたときのビームスポットの光強度を計算したグラフを図7に示す。縦軸は光強度を示し、横軸は、動径方向(r方向)の距離で、波長で正規化されている。図7における実線は、β=3.7のときの集光点での光強度の動径方向(r方向)断面である。実線で示したβ=3.7のときの集光点におけるビーム径は、直線偏光(点線)に比べて細く絞ることができ(偏光方向で30%)、直線偏光に比べてより高分解能な試料の観察が可能となる。
【0038】
次に、β=3.7に設定したときとβ=3.0に設定したときの光軸方向(Z方向)におけるビームスポットの強度分布を図8に図示する。横軸は、光軸方向(Z方向)の距離で、焦点深度に対応しており、波長で正規化されている。グラフの点線は、β=3.7のときの強度分布であり、焦点深度は一点鎖線で示した直線偏光に比べて3倍以上と広くなっている。よって、厚みのある試料では、焦点深度内の試料からの光束を重畳してしまい、逆に分解能を低下させてしまう。
【0039】
厚い試料に対しては、焦点深度を浅くすることが望まれる。β=3.0とすると、Optical Cageの条件を満たし、そのときの強度分布が、図8のグラフの実線に当たる。グラフを見て分かるように2焦点となっているが、焦点深度は浅くなっている。また、Optical Cage焦点面断面(r方向)で見たビームスポットは、図9に示す様になり、直線偏光(点線)よりは、20%細くなっており、厚さ方向に構造があるような試料においても高分解能な画像が取得できることが期待できる。特に、前後のスポットのいずれか一方のスポットと共焦点ピンホールを共役な位置に対応させ、他方のスポットによる試料光をカットすれば、よりSN比の良い画像が取得できる。
【0040】
例えば、瞳径が5.04mm、NAが1.4の対物レンズに対して、輪帯電極の径をそれぞれ表1のように設定する。
【0041】
【表1】
【0042】
先に説明したように、位相変調デバイスの輪帯電極104は、図5(a)に示した様な電極構成であり、選択駆動する輪帯電極を変えることで、表1の条件1、条件2を満足させることができる。すなわち、内側の輪帯電極から順番にe1、e2、e3、・・・、e11とナンバリングすると、条件1では、e2、e3、e6、e7、e10、e11を、条件2では、e3、e4、e7、e8、e11を選択駆動すれば、所望の直径の位相分布(輪帯パターン)が得られる。
【0043】
表1のR1〜R6は、位相変調デバイスの3つの輪帯パターンの内径と外径を意味している。図10は、表1において電圧印かされた輪帯パターンを斜線部で示した位相変調デバイスの図であり、図10(a)は、条件1に、図10(b)は、条件2に対応している。輪帯パターンと表1のR1〜R6の関係は、図10(b)に示したとおりである。このように設定したときのビーム伝搬による焦点面での強度分布(シミュレーション)を図11に示す。図11(a)は、条件1、つまり図10(a)に対応した強度分布であり、図11(b)は、条件2、つまり図10(b)に対応した強度分布を示している。縦軸が強度であり、横軸がr断面方向距離に対応しており、中心をr=0とし、±0.75μmの範囲での値である。
【0044】
図11(a)に図示するように、条件1では、レイリーの分解能より36%細いビーム径が得られ、図11(b)に図示するように、条件2では、Optical Cageの条件が得られる。図11(b)の条件2においては、焦点面で光軸上(横軸の0点)の強度が、ほぼ0になっており、光は横軸の±0.75μmの位置でサイドローブに分散している。光軸方向(Z方向)の距離を変えてシミュレーションをしてやると、Z=0の前後に、光軸上にスポットが形成されており、Optical cageが形成されていることがわかる。
【0045】
ここで、液晶デバイスの電極構造は、表1の条件1である図10(a),条件2である図10(b)のように、2種類のパターンを切り替えられるようにするだけでなく、より多くのパターンの切り替えができるようにすることができる。また、透明基板の一方に電極の構成した場合を示しているが、液晶を挟んだ他方の基板にも異なるパターンの電極を形成し、コモン電極と信号電極を、液晶を挟んだ2つの電極で切り替えてやることにより、異なる位相パターンを形成することもできる。また、より一般的には、非常に細かく、輪帯径を分割してやれば、電圧を印加する輪帯電極を選択することで、任意の同心円パターンを形成することが可能となり、多種多様なモードを切り替え、最適なモードでの観察を行うこともできる。
【0046】
ここで、レーザー顕微鏡で生体組織を観察する場合、例えば、肺動脈細胞を観察する場合、細胞の端部のように厚みの無い部位を観察するときには、条件1で観察することで高分解能化の限界を目指すことができる。また、細胞の中心部のように厚みのある組織の構造を見る場合は、試料厚み方向からの光を遮断し、条件2でSN比の高い観察をすることで、良好な観察を可能とする。このように、印加する輪帯電極を選択し、最適なモードで観察するように切り替えることができる。
【0047】
ここで、Optical cageの条件で観察する場合、集光点が従来の集光点の前後にずれるため、従来の集光点と共役な位置にある共焦点ピンホールの位置を動かすことが望ましい。各々の条件によって共焦点ピンホールの位置を動かさないと、共焦点ピンホールによる観察したい面の信号を選択的に取得するセクショニング効果が得られないばかりでなく、逆に、ピンホールにより焦点前後のスポットによる試料からの信号光をカットしてしまい、観察することができない。ここで、コンフォーカル光学系は、対物レンズに比べて低NAであり、焦点距離も長い。例えば、NAが0.042のコンフォーカル光学系を用いた場合、共焦点位置では前後スポット間隔は、約1000倍に拡大される。Optical cageの2つのピーク間距離は、2−3μmであるので、共焦点ピンホール上では、2−3mmの距離となり、十分にピンホールで選択することができる。従って、Optical cageの条件では、前後のスポット位置のどちらかと共焦点ピンホールの間で共役条件を満たす必要があり、ピンホールの位置を光軸方向に移動することが望ましい。これは、画像を観察しながら、光強度が最大となる点に合わせる事で達成できる。また、2光子吸収や、SHG等の非線形現象を使った観察モードでは、ある閾値以上の光量が得られた場所のみ発光するので、特にピンホールの位置にこだわる必要は無く、ピンホールは解放して観察しても高分解能な画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 レーザー光源
2 コリメート光学系
3 位相及び偏光変換デバイス
4 対物レンズ
5 試料
6 ビームスプリッター
7 コンフォーカル光学系
8 共焦点ピンホール
9 検出器
10 位相変調デバイス
11 偏光変調デバイス
100 液晶
101,102,111,112 透明基板
103,113 シール
104 輪帯電極
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザー顕微鏡において、試料を照射する光束を変調し、より高分解能な画像を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー顕微鏡は、レーザー光を対物レンズにより試料に集光し、試料より発生する反射・散乱光や蛍光を光学系で伝送し、試料上の集光点と光学的に共役な位置にピンホールを配置し、ピンホールを透過した光束を検出器で受光している。レーザー光を光軸と垂直方向のX,Y方向にスキャンし、試料の平面画像を取得し、対物レンズと試料の光軸方向(Z方向)の間隔を変えることで、Z方向の複数の断層像が得られ、これにより試料の3D画像を構築している。
【0003】
最も重要かつ、中心的な役割を果たすレーザー顕微鏡として蛍光顕微鏡がある。これは、蛍光色素を用いて試料を標識し、レーザー光のスキャンにより、試料から発生する蛍光を光学系で伝送し、蛍光のみを選択的に透過する色フィルターを用いることで、SN比の良好な信号を得ている。その他にも、試料の集光点から発生する多光子吸収励起による蛍光を観察する多光子顕微鏡や、第2高調波を観察するSHG顕微鏡等もあり、それぞれ、生体深部の観察や、反転非対称な分子の観察に適している。
【0004】
レーザー光の偏光分布を制御し、放射状の偏光分布を持ったラジアル偏光を生成し、高開口数(NA)のレンズを用いて集光すると、レンズ焦点位置で光の光軸方向(Z方向)の電界振動成分が支配的となる。また、方位角方向の偏光分布を持ったアジマス偏光を生成し、レンズで集光すると、光の進行方向の電界成分をほぼゼロにすることができる。このような偏光制御により、集光点での電界成分をコントロールすることができ、試料とのインタラクションが変化し、試料の分子の配向状態などの情報が得られる。特に第2高調波は、非対称性分子の分布や配向方向の情報が得られ、生体分子や液晶などの情報を検出することができる。このような偏光分布を与える素子として、例えば、ラジアル偏光を生成するZ偏光素子などが知られている(例えば、特許文献1)
【0005】
レーザー顕微鏡の分解能は、レーザービームのスポット径に依存し、ビーム径を細く絞ることで、分解能を向上させることができる。ここで、Maxwell方程式の解として確認されているベクトルビームは、ベッセルガウスビーム、ラゲールガウスビーム等がある。このベクトルビームの次数を適当に選んでやることで、レイリーの分解能1.22λ/2NAよりも細いビームスポットを生成することができる。例えば、ラジアル偏光分布を持ったラジアル偏光ビームR−TEMp1の焦点面での電界成分の振幅は、以下の式で表される。ここで、添え字のp及び1は、それぞれ、動径方向のモード次数と方位角方向のモード次数を示している。方位角方向の次数を上げていくと、サイドローブの数が増加し、中心スポット径は細くなる傾向がある。
【0006】
【数1】
【0007】
光軸上ではZ偏光成分のビームスポットが形成され、ラジアル成分は0となっている。高次モードほど、サイドローブは大きくなるという課題はあるが、ビームは細く絞られ、例えばNA=1のレンズにおけるビームスポットの半値幅は、R−TEM01で0.582λ、R−TEM11で0.432λ、R−TEM21で、0.403λ、R−TEM51で0.378λとなる。このような細いビームを使い、顕微鏡の高分解能化する試みも行われている(例えば、非特許文献1)。このようなビームは、直線偏光に比べて、細く絞れると同時に点対称なビームスポットを形成する。また、光軸方向の焦点深度が深いという特徴を持っている。
【0008】
このようなベクトルビームを発生させる手段として、液晶デバイスを用いた方法が提案されている。例えば、直線偏光をラジアル偏光ビームに変換するデバイスとして、光が入射する平面を、光軸を中心とした扇状に広がる領域に分割し、各々の領域に、2分の1波長板を配置し、入射する鉛直方向の直線偏光と2分の1波長板の光軸の角度を僅かずつ変えると、ラジアル偏光が得られることが知られている。これは、直線偏光を、その偏光軸とθ傾いた光軸を持つ2分の1波長板に入射すると、2θ傾斜した直線偏光が得られることを利用している。
【0009】
さらに、ベクトルビームの1種であるラゲールガウスビームの振幅分布を近似するため、上述のラジアル偏光への変換素子に加えて、輪帯状に0、πの位相分布を交互に表示する位相素子を重ねて用いることにより、ラジアル偏光ビームR−TEMp1モードのビームを近似的に生成することができる(例えば、非特許文献2)。位相素子の各輪帯径は、ラゲール関数の正負の境界に対応し、ラゲール関数が正の領域は位相が0、負の領域は位相がπとなるように設定することで、ラゲールガウスの振幅分布をバイナリ近似している。
【0010】
また、ラジアル偏光ビームの詳細な集光特性について研究されており、ビーム径と集光するレンズの瞳径の比を変えていくと、電界のZ方向振動成分も光軸上で強度が0となる条件がある。これは各リングからの光束が干渉で打ち消しあう為と考えられる。このとき焦点の前後には2つのスポットが形成され、また、焦点面ではドーナッツ状の電界分布が存在し、強度0のポイントを囲む様に光強度の強い領域が存在し、Optical cageと呼ばれている(例えば、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4512693号(図1)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】“Sharper focal spot formed by higher-order radially polarized laser beams” Vol.24, No.6 6.2007 J. Opt. Soc. Am. A
【非特許文献2】「ラジアル偏光ラゲールガウス光生成用液晶光学素子の試作と評価」,信学技報, vol. 111, no. 15, CPM2011-5, pp. 19-22, 2011.4.
【非特許文献3】“Focusing property of a double-ring-shaped radially polarized beam” Vol. 31, No. 6 5.2006 OPTICS LETTERS
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上述した様に、多様なベクトルビームが存在し、例えば、ラゲールガウスビームのモードにおいて、高次モード程、ビームスポットは細くなる一方、サイドローブが大きくなるというトレードオフの関係になっている。ビームスポットが細くなれば、より細かい試料の分解能が得られる可能性がある一方、サイドローブによるノイズで分解能が低下する可能性も考えられる。さらに、2光子吸収やSHGモード等の非線形な特性を持った観察モードでは、サイドローブの影響は小さくなることが考えられる。この様に、試料の種類、観察モードにより最適なベクトルビームは変わり、一概に最適なベクトルビームが存在するわけではなく、固定のベクトルビーム発生デバイスでは、試料や観察モードにあわせた最適なベクトルビームを発生させることはできない。
【0014】
さらに、ラジアル偏光は、焦点深度が深く、焦点深度より試料の厚さが大きい場合、試料をレーザービームで照明すると、焦点深度内の試料の情報を含んだ光が発生し、また、共焦点のピンホールで光軸方向(Z方向)の断層像の選別(セクショニング)をすることができず、焦点深度深さの試料の情報が重畳されてしまい、逆に分解能が低下するという問題点がある。
【0015】
そこで、本発明は上記課題を解決し、焦点深度の浅いベクトルビームを含めた複数のベクトルビームを発生させることができ、試料や観察モードに合わせた最適なベクトルビームを発生させ、試料を高い分解能で観察することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の位相及び偏光変調デバイス、また、それを用いたレーザー顕微鏡は下記記載の構成を採用するものである。
【0017】
本発明の位相及び偏光変調デバイスは、コヒーレント光源と対物レンズの間に、コヒーレント光源からの光束の位相を変調する位相変調手段と、光束の偏光方向を変調する偏光方向変調手段とを配置し、偏光方向変調手段は、直線偏光をラジアル偏光に変換し、位相変調手段は、複数の輪帯状パターンの位相分布を与え、複数の輪帯状パターンの位相分布における直径を可変することを特徴とする。
【0018】
この位相変調手段は、電極を形成した第1の基板と第2の基板とで液晶を挟持した液晶デバイスであり、この電極は、複数の輪帯状パターンを有する輪帯電極を備え、複数の輪帯状パターンの輪帯電極うち、電圧を印加する輪帯電極を選択することによって、位相分布における直径の可変を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明のレーザー顕微鏡は、コヒーレント光源と、コヒーレント光源からの光束を走査する光学系と、光束を試料に集光する対物レンズと、試料から発生した前記試料の情報を含んだ光束を検出器に伝送する光学系とを有するレーザー顕微鏡であって、コヒーレント光源と対物レンズの間に、先に記載の位相及び偏光変調デバイスを用いたことを特徴とする。また、輪帯状パターンの位相分布における直径が可変されることに応じて、試料の集光点と光学的に共役な位置に配置した共焦点ピンホール位置を光軸方向に変更することができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、試料や観察モードにあわせて、ベクトルビームのモードを変えることができ、より高分解能な観察をすることができる。特に、ラジアル偏光ビームに特有の焦点深度の深いビームによる不具合を、焦点深度を浅くすることで解決し、ある程度の厚さを持った試料において高い分解能で試料を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一つの実施形態に係るレーザー顕微鏡の概略構成図である。
【図2】本発明の一つの実施形態に係るレーザー顕微鏡で用いられる偏光変調デバイスを説明する概略図である。
【図3】位相及び偏光変調デバイスとして機能する、ホモジニアス配向の液晶デバイスの断面模式図である。
【図4】偏光変調デバイスの機能を説明するための図である。
【図5(a)】本発明の一つの実施形態に係る位相変調デバイスを説明する概略図である。
【図5(b)】本発明の一つの実施形態に係る位相変調デバイスを説明する概略図である。
【図6】焦点位置のビーム強度プロファイルを計算する座標系を示す模式図である。
【図7】位相及び偏光変調デバイスのパラメータを変化させた場合の、ビームスポットの光強度プロファイルを示すグラフである。
【図8】位相及び偏光変調デバイスのパラメータを変化させた場合の、ビームスポットの光強度プロファイルを示すグラフである。
【図9】位相及び偏光変調デバイスのパラメータを変化させた場合の、ビームスポットの光強度プロファイルを示すグラフである。
【図10】本発明の一つの実施形態に係る位相変調デバイスにおいて、駆動する電極パターンの違いを説明する概略図である。
【図11】位相及び偏光変調デバイスのパラメータを変化させた場合の、ビームスポットの焦点面での強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる位相及び偏光変調デバイス、また、それを用いたレーザー顕微鏡の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の1つの実施形態に係るレーザー顕微鏡の概略構成図を示している。コヒーレント光源であるレーザー光源1から出射した光束は、コリメート光学系2により平行光にされ、位相及び偏光変調デバイス3を透過し、対物レンズ4で試料5上に集光する。試料5により反射・散乱した光束や、試料より発生した蛍光等、試料の情報を含んだ光束は、光路を逆にたどり、ビームスプリッター6で反射され、コンフォーカル光学系7で再び共焦点ピンホール8上に集光され、試料の焦点位置以外からの光束をカットし、検出器9でSN比の良好な信号を得る。
【0024】
位相及び偏光変調デバイス3は、2つの液晶デバイスからなり、対物レンズ4側から、偏光変調デバイス11、位相変調デバイス10となっている。偏光変調デバイス11は、前述した構成のデバイスを用いることができる。前述したように、偏光変調デバイス11は、入射する直線偏光をラジアル偏光に変換させるデバイスで、光束が入射する平面を、光軸を中心とした扇状に広がる領域に分割し、各々の領域に、光軸の角度を僅かずつ変えた2分の1波長板を配置する構造になっている。このような2分の1波長板は、液晶素子を採用し、液晶分子をホモジニアス配向させ、その複屈折の大きさを2分の1波長として用いたり、位相差板を分割して張り付けたりなどして、形成することができる。
【0025】
偏光変調デバイス11について図2、図3、図4を用いてより詳細に説明する。本実施形態では、偏光変調デバイス11として、液晶デバイスを採用した。図2は、偏光変調デバイス11の平面図である。液晶層は、透明基板111、112で挟まれており、シール部材113で、液晶が漏れないように周辺部を封止している。液晶を駆動するアクティブ領域114は、図の円形内であり、8分割に配向分割された例を示している。分割数は8分割にこだわる必要は無く、分割数が多いほど理想的なラジアル偏光が得られるが、得られるビーム特性との兼ね合いで決定すれば良く偶数に限る必要もない。
【0026】
図3は、図2の偏光変調デバイス11のアクティブ領域114における断面模式図を示している。透明基板111,112に液晶分子94が挟まれている構成を示している。基板表面には透明電極93,93a,93bが形成されており、右側半分が電圧を印加した場合、左側半分が電圧を印加していない場合を示している。液晶分子94は、細長い分子構造を持ち、ホモジニアス配向は、2枚の基板に挟まれた液晶分子94をその長軸方向がお互いに平行、さらに、基板界面と平行に並べた構成を持っている。液晶分子94は、その長軸方向と直交する方向で屈折率が異なり、一般に、液晶分子94の長軸方向に平行な偏光成分(異常光線)に対する屈折率neは、液晶分子の短軸方向に平行な偏光成分(常光線)に対する屈折率noよりも高い。そのため、ホモジニアス配向させた液晶デバイスは、1軸性の複屈折素子として振舞う。
【0027】
アクティブ領域114の液晶分子94の配向方向は、図4(a)矢印に示すような方向を持ち、各領域の複屈折の値が、入射する光の波長の2分の1波長となるような仕様で作成する。例えば、Δn0.2の液晶を用い、液晶層の厚さ(セルギャップ)を4μmとした場合、光路差は、0.8μmになり、可視から近赤外のレーザー光源に対し、2分の1波長板として機能させることができる。このデバイスに対し、鉛直方向に振動する直線偏光を入射させると、それぞれの領域で、配向方向の傾きをθとした場合、偏光面は、2θ回転し、図4(b)の様な偏光分布を持ったラジアル偏光ビームに変換させることができる。具体的な配向方向は、8分割の場合、22.5°の整数倍となり、0°、±22.5°、±45°、±67.5°、90°となる。このように、図4(a)の矢印で示した様な光軸を持った2分の1波長板に鉛直方向の直線偏光を入射させると、図4(b)の矢印で示すような偏光分布を持ったラジアル偏光が得られる。
【0028】
上述のように、各領域で異なる方向に液晶を配向処理する方法について説明する。配向処理として最も頻繁に使用されている手法はラビング法であり、ポリイミド等の高分子材料を基板上にスピンコート等で成膜し、回転するローラーに巻きつけたロールで1方向にこすることにより、液晶分子をその方向に配向させるものである。平面内の放射状の各領域内で配向方向を異ならせる必要があるため、配向処理として、均一な配向となる領域のみ開口を設けたマスクを用い、マスクを変え(もしくは位置をずらし)ながら、これらの配向処理を繰り返し行うことで、放射状に配向するデバイスが作成できる。
【0029】
また、ラビング法の他には、構造配向、光配向等の配向処理も開発されている。構造配向としては、ナノメーターオーダーの微細なグレーティングを基板表面に形成し、グレーティングに平行に液晶を配向させる技術などがあり、その他、光配向膜に偏光した光を照射し、偏光方向に液晶分子を配向させる技術が報告されており、それぞれ、放射状のグレーティング構造や、放射状の偏光を照射することで、放射状に配向する液晶デバイスを作成することができる。
【0030】
次に、図1の位相変調デバイス10について詳細に説明する。位相変調デバイス10は、ラゲールガウスビームの振幅分布を近似するため、輪帯状に0、πの位相分布を交互に表示するデバイスである。位相変調デバイス10の各輪帯径は、ラゲール関数の正負の境
界に対応し、ラゲール関数が正の領域は位相が0、負の領域は位相がπとなるように設定されている。
【0031】
このような位相分布を与える素子も、ホモジニアス配向した液晶デバイスで作成することができる。液晶デバイスの位相変調デバイス10の平面図を図5(a)に示す。すなわち、図5(a)のような輪帯電極104を持ち、それぞれの輪帯電極に相対位相πを与えるように駆動する輪帯電極を選択することで図5(b)の様な位相分布を形成している。例えば図5(b)の斜線部は位相π、その他の領域は位相0を表している。液晶層100は、2枚の透明基板101、102で挟持され、周辺部をシール103で封止するとともに、透明基板101、102の接着を行っている。液晶分子は、誘電率異方性を持ち、一般に液晶分子長軸が電界方向に倣う方向に力が働く。ここで、図示した位相変調デバイス10は、引き出しのための電極が必要であるが、簡単のために省略してある。
【0032】
この位相変調デバイス10も偏光変調デバイス11における液晶分子と同様の動作を行う。つまり、図3で示したように、液晶分子を挟む2枚の基板に設けられた電極間に電圧を印加すると、液晶分子の長軸方向は、基板に平行な状態から、電圧に応じて立ち上がってくる。このとき、液晶分子長軸に平行で基板に垂直な偏光成分に対する液晶分子の屈折率をnψとすると、no≦nψ≦neとなる。そのため、液晶層の厚さがdであると、液晶層のうち、電圧が印加された領域と印加されていない領域を通る光束の間に、光路長差Δnd(=nψd−nod)が生じる。位相差は、2πΔnd/λとなる。なお、λは、液晶層に入射する光束の波長である。
【0033】
前述したように、位相変調デバイス10は、輪帯状に0、πの位相分布を交互に示すデバイスであるが、実際には、界面のアンカリング等で、電圧印加時、液晶分子が基板から垂直には立ち切らず、垂直から僅かに傾いた角度で立つことから残留複屈折が生じ、位相差0を達成することは難しい。従って、先に電圧を印加したところ以外には、バイアス電圧を印加し、位相0は、波長の整数倍nλ、位相πは、(n+1/2)λとすることで0、πの位相変調を与えている。また、駆動する輪帯電極の間隙にも透明電極が形成されており、対向電極と同一電圧が印加され、透明電極自体の光路長による光路差の違い、輪帯電極による回折光の防止等がなされている。
【0034】
ここで、一般的なレーザー顕微鏡は、照射するレーザー光の波長は複数備えており、それぞれ、必要な位相変調量が異なる。波長の違いによる、位相変調量の違いは、液晶に印加する電圧を変化させることで、全ての波長(λ)のレーザーに対して、(n+1/2)λの位相変調を与えることができる。更に、温度変化等による位相変調量の違いも印加電圧の調整でキャンセルすることができる。
【0035】
また、電圧印加する輪帯電極を変更することで、位相変調パターンの直径を変更することができる。例えば、相似形状を保ちながら、サイズの拡大縮小を行うことで、対物レンズの瞳径に対応させることができる。すなわち、一つの位相変調デバイス10で、複数の対物レンズに対応でき、対物レンズを変更することで、多様な試料への対応が可能となる。また、対物レンズの瞳径が一定の場合、位相変調パターンの拡大縮小により、ビーム径とサイドローブの大きさをコントロールすることができ、これにより試料にあわせた最適化を行うことができる。
【0036】
更に、前述したOptical Cageが発生するように、輪帯電極の印加パターンを複数用意し、試料の厚さにあわせて電圧が印加される輪帯電極のパターンを選択し、輪帯状パターンの位相分布における直径を可変する。例えば、厚みの無い試料(レーザースポットの焦点深度より十分に薄い試料)に対しては、ビーム径をなるべく細くする輪帯状パターンが得られるように電圧を印加して高分解能化を目指し、厚みのある試料に対しては、Optical
Cageが得られる条件のパターンが得られるように電圧を印加し、レーザースポットの焦点深度を浅くさせるようにすることもできる。
【0037】
以下に、試料の厚みによって、電圧印加される輪帯電極のパターンについて、詳細に説明する。対物レンズを通過する光の照射面における光強度分布について、図6を用いて説明する。図6に図示するように、光軸をZ軸とし、対物レンズ4の焦点面において光軸に直交する平面内で極座標をとり、光強度分布を計算する。例えば、瞳径とレーザービーム径の比β(β=瞳径/ビーム径)をパラメータに、βの値を変化させたときのビームスポットの光強度を計算したグラフを図7に示す。縦軸は光強度を示し、横軸は、動径方向(r方向)の距離で、波長で正規化されている。図7における実線は、β=3.7のときの集光点での光強度の動径方向(r方向)断面である。実線で示したβ=3.7のときの集光点におけるビーム径は、直線偏光(点線)に比べて細く絞ることができ(偏光方向で30%)、直線偏光に比べてより高分解能な試料の観察が可能となる。
【0038】
次に、β=3.7に設定したときとβ=3.0に設定したときの光軸方向(Z方向)におけるビームスポットの強度分布を図8に図示する。横軸は、光軸方向(Z方向)の距離で、焦点深度に対応しており、波長で正規化されている。グラフの点線は、β=3.7のときの強度分布であり、焦点深度は一点鎖線で示した直線偏光に比べて3倍以上と広くなっている。よって、厚みのある試料では、焦点深度内の試料からの光束を重畳してしまい、逆に分解能を低下させてしまう。
【0039】
厚い試料に対しては、焦点深度を浅くすることが望まれる。β=3.0とすると、Optical Cageの条件を満たし、そのときの強度分布が、図8のグラフの実線に当たる。グラフを見て分かるように2焦点となっているが、焦点深度は浅くなっている。また、Optical Cage焦点面断面(r方向)で見たビームスポットは、図9に示す様になり、直線偏光(点線)よりは、20%細くなっており、厚さ方向に構造があるような試料においても高分解能な画像が取得できることが期待できる。特に、前後のスポットのいずれか一方のスポットと共焦点ピンホールを共役な位置に対応させ、他方のスポットによる試料光をカットすれば、よりSN比の良い画像が取得できる。
【0040】
例えば、瞳径が5.04mm、NAが1.4の対物レンズに対して、輪帯電極の径をそれぞれ表1のように設定する。
【0041】
【表1】
【0042】
先に説明したように、位相変調デバイスの輪帯電極104は、図5(a)に示した様な電極構成であり、選択駆動する輪帯電極を変えることで、表1の条件1、条件2を満足させることができる。すなわち、内側の輪帯電極から順番にe1、e2、e3、・・・、e11とナンバリングすると、条件1では、e2、e3、e6、e7、e10、e11を、条件2では、e3、e4、e7、e8、e11を選択駆動すれば、所望の直径の位相分布(輪帯パターン)が得られる。
【0043】
表1のR1〜R6は、位相変調デバイスの3つの輪帯パターンの内径と外径を意味している。図10は、表1において電圧印かされた輪帯パターンを斜線部で示した位相変調デバイスの図であり、図10(a)は、条件1に、図10(b)は、条件2に対応している。輪帯パターンと表1のR1〜R6の関係は、図10(b)に示したとおりである。このように設定したときのビーム伝搬による焦点面での強度分布(シミュレーション)を図11に示す。図11(a)は、条件1、つまり図10(a)に対応した強度分布であり、図11(b)は、条件2、つまり図10(b)に対応した強度分布を示している。縦軸が強度であり、横軸がr断面方向距離に対応しており、中心をr=0とし、±0.75μmの範囲での値である。
【0044】
図11(a)に図示するように、条件1では、レイリーの分解能より36%細いビーム径が得られ、図11(b)に図示するように、条件2では、Optical Cageの条件が得られる。図11(b)の条件2においては、焦点面で光軸上(横軸の0点)の強度が、ほぼ0になっており、光は横軸の±0.75μmの位置でサイドローブに分散している。光軸方向(Z方向)の距離を変えてシミュレーションをしてやると、Z=0の前後に、光軸上にスポットが形成されており、Optical cageが形成されていることがわかる。
【0045】
ここで、液晶デバイスの電極構造は、表1の条件1である図10(a),条件2である図10(b)のように、2種類のパターンを切り替えられるようにするだけでなく、より多くのパターンの切り替えができるようにすることができる。また、透明基板の一方に電極の構成した場合を示しているが、液晶を挟んだ他方の基板にも異なるパターンの電極を形成し、コモン電極と信号電極を、液晶を挟んだ2つの電極で切り替えてやることにより、異なる位相パターンを形成することもできる。また、より一般的には、非常に細かく、輪帯径を分割してやれば、電圧を印加する輪帯電極を選択することで、任意の同心円パターンを形成することが可能となり、多種多様なモードを切り替え、最適なモードでの観察を行うこともできる。
【0046】
ここで、レーザー顕微鏡で生体組織を観察する場合、例えば、肺動脈細胞を観察する場合、細胞の端部のように厚みの無い部位を観察するときには、条件1で観察することで高分解能化の限界を目指すことができる。また、細胞の中心部のように厚みのある組織の構造を見る場合は、試料厚み方向からの光を遮断し、条件2でSN比の高い観察をすることで、良好な観察を可能とする。このように、印加する輪帯電極を選択し、最適なモードで観察するように切り替えることができる。
【0047】
ここで、Optical cageの条件で観察する場合、集光点が従来の集光点の前後にずれるため、従来の集光点と共役な位置にある共焦点ピンホールの位置を動かすことが望ましい。各々の条件によって共焦点ピンホールの位置を動かさないと、共焦点ピンホールによる観察したい面の信号を選択的に取得するセクショニング効果が得られないばかりでなく、逆に、ピンホールにより焦点前後のスポットによる試料からの信号光をカットしてしまい、観察することができない。ここで、コンフォーカル光学系は、対物レンズに比べて低NAであり、焦点距離も長い。例えば、NAが0.042のコンフォーカル光学系を用いた場合、共焦点位置では前後スポット間隔は、約1000倍に拡大される。Optical cageの2つのピーク間距離は、2−3μmであるので、共焦点ピンホール上では、2−3mmの距離となり、十分にピンホールで選択することができる。従って、Optical cageの条件では、前後のスポット位置のどちらかと共焦点ピンホールの間で共役条件を満たす必要があり、ピンホールの位置を光軸方向に移動することが望ましい。これは、画像を観察しながら、光強度が最大となる点に合わせる事で達成できる。また、2光子吸収や、SHG等の非線形現象を使った観察モードでは、ある閾値以上の光量が得られた場所のみ発光するので、特にピンホールの位置にこだわる必要は無く、ピンホールは解放して観察しても高分解能な画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 レーザー光源
2 コリメート光学系
3 位相及び偏光変換デバイス
4 対物レンズ
5 試料
6 ビームスプリッター
7 コンフォーカル光学系
8 共焦点ピンホール
9 検出器
10 位相変調デバイス
11 偏光変調デバイス
100 液晶
101,102,111,112 透明基板
103,113 シール
104 輪帯電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光源からの光束の位相を変調する位相変調手段と、前記光束の偏光方向を変調する偏光方向変調手段とを配置し、
前記偏光方向変調手段は、直線偏光をラジアル偏光に変換し、
前記位相変調手段は、複数の輪帯状パターンの位相分布を与え、
前記複数の輪帯状パターンの位相分布における直径を可変することを特徴とする位相及び偏光変調デバイス。
【請求項2】
前記位相変調手段は、電極を形成した第1の基板と第2の基板とで液晶を挟持した液晶デバイスであり、前記電極は、前記複数の輪帯状パターンを有する輪帯電極を備え、前記複数の輪帯状パターンの輪帯電極うち、電圧を印加する前記輪帯電極を選択することによって、位相分布における直径の可変を行うことを特徴とする請求項1に記載の位相及び偏光変調デバイス。
【請求項3】
コヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源からの光束を走査する光学系と、
前記光束を試料に集光する対物レンズと、
前記試料から発生した前記試料の情報を含んだ光束を検出器に伝送する光学系とを有するレーザー顕微鏡であって、
前記コヒーレント光源と前記対物レンズの間に、
請求項1又は請求項2に記載の位相及び偏光変調デバイスを用いたレーザー顕微鏡。
【請求項4】
前記輪帯状パターンの位相分布における直径が可変されることに応じて、前記試料の集光点と光学的に共役な位置に配置した共焦点ピンホール位置を光軸方向に変更することができることを特徴とする請求項3に記載のレーザー顕微鏡。
【請求項1】
コヒーレント光源からの光束の位相を変調する位相変調手段と、前記光束の偏光方向を変調する偏光方向変調手段とを配置し、
前記偏光方向変調手段は、直線偏光をラジアル偏光に変換し、
前記位相変調手段は、複数の輪帯状パターンの位相分布を与え、
前記複数の輪帯状パターンの位相分布における直径を可変することを特徴とする位相及び偏光変調デバイス。
【請求項2】
前記位相変調手段は、電極を形成した第1の基板と第2の基板とで液晶を挟持した液晶デバイスであり、前記電極は、前記複数の輪帯状パターンを有する輪帯電極を備え、前記複数の輪帯状パターンの輪帯電極うち、電圧を印加する前記輪帯電極を選択することによって、位相分布における直径の可変を行うことを特徴とする請求項1に記載の位相及び偏光変調デバイス。
【請求項3】
コヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源からの光束を走査する光学系と、
前記光束を試料に集光する対物レンズと、
前記試料から発生した前記試料の情報を含んだ光束を検出器に伝送する光学系とを有するレーザー顕微鏡であって、
前記コヒーレント光源と前記対物レンズの間に、
請求項1又は請求項2に記載の位相及び偏光変調デバイスを用いたレーザー顕微鏡。
【請求項4】
前記輪帯状パターンの位相分布における直径が可変されることに応じて、前記試料の集光点と光学的に共役な位置に配置した共焦点ピンホール位置を光軸方向に変更することができることを特徴とする請求項3に記載のレーザー顕微鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−104950(P2013−104950A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247383(P2011−247383)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
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