説明

位相差フィルム用樹脂、位相差フィルム用樹脂組成物、位相差フィルムの製造方法、及び位相差フィルム

【課題】可撓性に優れるとともに、複屈折を容易に高められ、溶融押出成形加工が可能で、測定波長が短いほど位相差が小さく、測定波長が長いほど位相差が大きいという特徴の位相差フィルムが得られる相差フィルム用樹脂、位相差フィルム用樹脂組成物、該樹脂または樹脂組成物を用いた透明性や表面平滑性に優れた位相差フィルムの製造方法、上記特徴を有する位相差フィルムを提供する。
【解決手段】特定の置換基を有するセルロースアセテートプロピオネート樹脂(組成物)を特定の方法で溶融押出成形法等でフィルム化し、場合によっては延伸等を施し、位相差フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルム用樹脂、位相差フィルム用樹脂組成物、位相差フィルムの製造方法、及び位相差フィルムに関する。さらに詳しくは、可撓性に優れる、複屈折を容易に高められ、溶融押出成形加工が可能で、測定波長が短いほど位相差が小さく、測定波長が長いほど位相差が大きいという特徴の位相差フィルムが得られる位相差フィルム用樹脂、位相差フィルム用樹脂組成物、該樹脂や樹脂組成物を用いた位相差フィルムの製造方法、及び位相差フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
セルローストリアセテート(TAC)は、その優れた耐熱性、光透過率や、低ヘーズ、低光弾性係数、偏光フィルム素材であるポリビニルアルコール(PVA)との接着性に優れるという特徴から液晶デバイス等に用いられる光学フィルムに使用されている。
しかし、TACは、発現する複屈折が小さいため位相差フィルムに用いるのが困難なことから、配合剤を添加することにより複屈折を向上させる技術が開示されている(特許文献1)。ただ、TACは、熱劣化を起こさない温度下で、生産効率に優れるとされる溶融押出成形法によりフィルム状又はシート状に成形することが困難であることから、下記の非特許文献1、2にも報告例があるように、溶媒にTACを溶かして薄く展開させた後、溶媒を揮発させてフィルムを得ると言う溶媒キャスト法によって製造されている。
【0003】
一方、アセチル基(炭素数2のアシル基)の置換度が低減したセルロースアセテートを用いることで、TACと異なる複屈折の発現性とした位相差フィルムが提案されているが(特許文献2)、吸湿性が大きくなることによる耐久性やPVAとの接着性の低下が引き起こされる恐れがある。
また、アセチル基の一部をプロピオニル基(炭素数3のアシル基)やブチリル基(炭素数4のアシル基)で置換したセルロースエステル系樹脂(セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチレート(CAB))についてもTACと異なる複屈折の発現性となることが知られているが(特許文献3)、発現する複屈折の程度が十分ではなく、耐熱性も低下してしまう言った課題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Prog. Polym. Sci., vol.26, 1605-1688 (2001)
【非特許文献2】Macromol. Symp., vol.208, 323-333 (2004)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−249223号公報 富士 Re向上材
【特許文献2】特開2000−137116号公報 帝人 TAC逆分散
【特許文献3】特開2003−315538号公報 カネカ CAP逆分散
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、可撓性に優れる、複屈折を容易に高められ、溶融押出成形加工が可能で、測定波長が短いほど位相差が小さく、測定波長が長いほど位相差が大きいという特徴の位相差フィルム用樹脂ならびに位相差フィルム用樹脂組成物を提供すること、該樹脂や樹脂組成物を用いた位相差フィルムの製造方法を提供すること、上記特徴を有する位相差フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セルロースエステル系樹脂(A)がセルロースアセテートプロピオネートであって、炭素数2のアシル基の置換度を(Sa)、炭素数3のアシル基の置換度を(Sp)、水酸基の置換度を(Sh)としたときに[ただし、(Sa)+(Sp)+(Sh)=3]、セルロースエステル系樹脂(A)の水酸基の置換度(Sh)が0.50を超え、1.00以下の範囲であることを特徴とする位相差フィルム用樹脂に関する。
ここで、上記セルロースエステル系樹脂(A)(セルロースアセテートプロピオネート)は、該セルロースエステル系樹脂(A)の炭素数2のアシル基の置換度(Sa)が0.03〜0.15の範囲であり、かつ炭素数3のアシル基の置換度(Sp)が2.00〜2.40の範囲であり、かつ水酸基の置換度(Sh)が0.50を超え、1.00以下の範囲[ただし、(Sa)+(Sp)+(Sh)=3]であることが好ましい。
次に、本発明は、上記セルロースエステル系樹脂(A)100重量部に対して、ゲル化剤(B)が0.01〜10重量部および/または可塑剤(C)が0.5〜20重量部の範囲で含有されていることを特徴とする位相差フィルム用樹脂組成物に関する。
ここで、セルロースエステル系樹脂(A)に含有させるゲル化剤(B)としては、ソルビトールとアルデヒド化合物との縮合物が挙げられ、ゲル化剤(B)の含有量は、セルロースエステル系樹脂100重量部に対し0.05重量部以上、5重量部未満が好ましい。
また、上記可塑剤(C)としては、芳香族リン酸エステル系化合物および/またはフタル酸エステル系化合物および/またはフタル酸系ポリエステル化合物が挙げられる。
次に、本発明は、上記位相差フィルム用樹脂または位相差フィルム用樹脂組成物を、
(1)溶媒に溶解した後にキャストしてフィルムに成形する方法、
(2)フラットダイを用いて、溶融押し出しによりフィルムに成形する方法、
(3)インフレーション成形法によりフィルムに成形する方法、あるいは
(4)圧縮成形法によりフィルムに成形する位相差フィルムの製造方法
に関する。
また、上記(2)フラットダイを用いて、溶融押し出しによりフィルムに成形する位相差フィルの製造方法において、
(a)溶融状態の樹脂または樹脂組成物を押出し、鏡面金属弾性ロールに挟み込んで冷却する位相差フィルムの製造方法、
(b)溶融状態の樹脂または樹脂組成物を含む積層成形物をゴムロールと金属ロールとの間に挟み込んで冷却する位相差フィルムの製造方法において、
(b1)溶融した樹脂または樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマーを積層して押出し、積層フィルムの成形後に片表層面もしくは両表層面に積層された異種ポリマーを剥離する位相差フィルムの製造方法、または
(b2)溶融した樹脂または樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくは両表層面に外層として溶融状態の異種ポリマーを積層して押出し、さらにその片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマー(溶融状態の異種ポリマーと同一の樹脂からなる異種ポリマーであっても良く、異なる樹脂からなる異種ポリマーであっても良い)を積層して押出し、積層フィルムの成形後に片表層面もしくはその両表層面に積層された異種ポリマーを剥離する位相差フィルムの製造方法
に関する。
また、本発明の位相差フィルムの製造方法では、上記の方法で製造されたフィルムを加熱延伸処理することが好ましい。
次に、本発明は、これらの方法で製造された位相差フィルムに関し、さらには、587.5nmの波長の光に対する位相差をR(587.5)とし、446.4nmの波長の光に対する位相差をR(446.4)とし、746.6nmの波長の光に対する位相差をR(746.6)とした場合に、上記位相差フィルムにおけるR(446.4)/R(587.5)が0.99以下であると共に、R(746.6)/R(587.5)が1.01以上である位相差フィルムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本発明で開示した特定の組成の位相差フィルム用樹脂あるいは位相差フィルム用樹脂組成物を用いることで、生産効率に優れた溶融押出成形法により位相差フィルムを製造することが可能であり、また、特定の方法で溶融押出成形することで、透明性や表面平滑性に優れ、残存歪の少ない位相差フィルムを製造することができ、さらに、可撓性に優れるとともに、複屈折が高く、測定波長が短いほど位相差が小さく、測定波長が長いほど位相差が大きいという特徴の位相差フィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態をその最良の形態を含めて説明する。
〔樹脂〕
一般に、セルロースエステル系樹脂は、セルロースの2位、3位、6位の水酸基のすべて又は一部を有機酸でエステル化した樹脂を言うが、その中でも本発明に用いるセルロースエステル系樹脂(A)は、セルロースアセテートプロピオネートであって、炭素数2のアシル基の置換度を(Sa)、炭素数3のアシル基の置換度を(Sp)、水酸基の置換度を(Sh)としたときに[ただし、(Sa)+(Sp)+(Sh)=3]、セルロースエステル系樹脂(A)の水酸基の置換度(Sh)が0.50を超え、1.00以下の範囲であることを特徴とする位相差フィルム用樹脂である。水酸基の置換度(Sh)は、好ましくは0.53〜0.85である。
水酸基の置換度(Sh)が0.50以下の場合には、複屈折を高める効果に乏しく、水酸基の置換度(Sh)が1.00を超える場合には、複屈折は高まるものの光の波長が短いほど位相差が小さく、波長が長いほど位相差が大きいという特性が乏しくなる。
【0010】
セルロースエステル系樹脂としては、セルロースアセテートプロピーネートの他にセルロースアセテートやセルロースアセテートブチレートがあるが、セルロースアセテートの場合は炭素数2のアシル基の置換度が低下することで吸湿性が大きくなるために耐久性やPVAとの接着性が低下する恐れがあり、セルロースアセテートブチレートの場合は炭素数4のアシル基が脱エステル化した際に生成する脂肪酸の臭気の問題があるため好ましくない。
【0011】
次に、セルロースエステル系樹脂(A)は、セルロースアセテートプロピオネートであって、セルロースエステル系樹脂(A)の炭素数2のアシル基の置換度(Sa)が0.03〜0.15の範囲であり、かつ炭素数3のアシル基の置換度(Sp)が2.00〜2.40の範囲であり、かつ水酸基の置換度(Sh)が0.50を超え、1.00以下の範囲[ただし、(Sa)+(Sp)+(Sh)=3]であることが好ましい。
炭素数2のアシル基の置換度(Sa)が0.03未満であったり、炭素数3のアシル基の置換度(Sp)が2.40を超えたりした場合には、セルロースエステル系樹脂の耐熱性が低下するという問題が生じる恐れがある。
逆に、炭素数2のアシル基の置換度(Sa)が0.15を超えたり、炭素数3のアシル基の置換度(Sp)が2.00未満の場合は複屈折が高める効果に劣るといった問題や光の波長が短いほど位相差が小さく、波長が長いほど位相差が大きいという特性が乏しくなるといった問題が生じる可能性がある。
【0012】
セルロースエステル系樹脂(A)は、透明性を損なわない限りにおいて複数の種類のセルロースエステル系樹脂の混合物であってもかまわない。複数の種類のセルロースエステル系樹脂の混合物である場合には、その混合物の置換基の置換度が上記の範囲にあれば良い。
【0013】
なお、本発明に用いるセルロースエステル系樹脂(A)の数平均分子量(混合物の場合は混合物の数平均分子量)としては、溶融押出成形性の点で、10,000〜200,000が好ましく、さらに好ましくは40,000〜100,000である。
【0014】
ここで、セルロースエステル系樹脂の置換基の種類と置換度は、ASTM−D817によって求めることができる。
また、セルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)によりポリスチレン換算分子量として測定することができる。
【0015】
〔樹脂組成物〕
次に、本発明の位相差フィルム用樹脂組成物は、上記のセルロースエステル系樹脂(A)に対し、ゲル化剤(B)および/または可塑剤(C)を配合してなるものである。
ここで、ゲル化剤(B)とは、一般的に媒質に添加したときに増粘や固化させる作用を有する添加剤を指し、本発明においてもこのような性質を有する化合物を使用することができる。
ゲル化剤(B)の種類としては、澱粉系、タンパク質系、糖又は糖誘導体系、アミノ酸又はアミノ酸誘導体系などが挙げられる。中でも、本発明において用いるゲル化剤(B)としては、分散性が良好なことから、ゲル化剤自体が媒質中に溶解した後、非共有結合で物理的に集合して針状や繊維状構造を形成するゲル化剤が好ましい。
【0016】
このようなゲル化剤(B)としては、ベンズアルデヒドとソルビトールの縮合物などのソルビトール誘導体、フタル酸やトリメリット酸などのベンゼンカルボン酸やナフタレンカルボン酸やアントラセンカルボン酸、フェナントレンカルボン酸などとアミノ基を有する化合物との縮合物、二塩基酸ビス(安息香酸ヒドラジド)化合物などを挙げることができる。
【0017】
ソルビトール誘導体としては、プロピオンアルデヒドなどの直鎖状脂肪族アルデヒド類、シクロヘキサンカルバルデヒドなどの環状飽和脂肪族アルデヒド類、ベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、p−メトキシベンズアルデヒド、p−メチルオキシカルボニルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレンアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類などのアルデヒド化合物とソルビトールとの縮合物が挙げられ、中でも、複屈折を高める効果の点でソルビトールと芳香族アルデヒド類との縮合物が好ましく、具体的には、ジベンジリデンソルビトール(新日本理化社製、GelAll D)、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール(新日本理化社製、GelAll
MD)、ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(4−エチルベンジリデン)ソルビトール(NC-4)、ビス(2,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,5−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−クロロベンジリデン)ソルビトール、ベンジリデン−p−クロロベンジリデンソルビトール、ベンジリデンアルキル置換ベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール、トリス(アルキル置換ベンジリデン)ソルビトール等を挙げることができる。
【0018】
また、フタル酸やトリメリット酸などのベンゼンカルボン酸やナフタレンカルボン酸やアントラセンカルボン酸、フェナントレンカルボン酸などとアミノ基を有する化合物との縮合物としては、ベンゼンジカルボン酸−ジシクロヘキシルアミド、ナフタレンジカルボン酸−ジシクロヘキシルアミド(新日本理化社製、NJSTAR NU-100)、ベンゼントリカルボン酸−トリシクロヘキシルアミド(新日本理化社製、NJSTAR TF-1)等を、二塩基酸ビス(安息香酸ヒドラジド)化合物としては、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド(ADEKA社製、T-1287N)等を、その他の化合物としては、新日本理化社製、RiKACLEAR PC1等を好ましく例示することができる。
【0019】
ゲル化剤(B)の含有量は、セルロースエステル系樹脂(A)100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1重量部以上、5重量部未満である。
セルロースエステル系樹脂(A)100重量部に対するゲル化剤(B)の含有量が0.01重量部未満であった場合は、樹脂組成物からなるフィルムの複屈折を向上させる効果、可撓性を付与する効果、測定波長が短いほど位相差が小さく、測定波長が長いほど位相差が大きいという特徴を向上させる効果に乏しく、一方10重量部を超えると、分散不良が生じて樹脂組成物の透明性を損なう恐れがあるので、いずれの場合も好ましくない。
【0020】
また、本発明に用いる可塑剤(C)としては、セルロースエステル系樹脂(A)の可塑性を高めるものであれば特に限定されないが、複屈折を低下させないという点で、芳香族基を有する化合物が好ましく、特に芳香族リン酸エステル系化合物やフタル酸エステル系化合物、フタル酸系ポリエステル化合物が好ましい。
【0021】
このような可塑剤(C)としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル系可塑剤;リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸トリキシレニルなどの芳香族リン酸エステル系化合物;フタル酸とジエチレングリコールとの縮合物やフタル酸とジエチレングリコールとの縮合物の末端を安息香酸で封止した縮合物などのフタル酸系ポリエステル化合物を挙げることができ、フタル酸系ポリエステル化合物の場合はポリスチレン換算の数平均分子量は500〜5,000程度である。
【0022】
可塑剤(C)の含有量は、セルロースエステル系樹脂(A)100重量部に対して0.5〜20重量部の範囲、好ましくは1〜12重量部、さらに好ましくは1〜10重量部、特に好ましくは2重量部以上、5重量部未満である。可塑剤(C)の含有量が0.5重量部未満の場合は、組成物の可塑性を高める効果に乏しく、一方20重量部を超える場合には、樹脂組成物からなるフィルムが不透明になったり、可塑剤(C)がフィルム表面にブリードしてベタツキを生じたり、樹脂組成物からなるフィルムの耐熱性が著しく低下したりする恐れがある。
【0023】
本発明の樹脂または樹脂組成物には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、他の配合剤を目的に応じて添加することができる。
例えは、フェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤;炭化水素系、アルコール系、脂肪酸系、アミド系、エステル系、金属石鹸系、シリコーン系、フッ素系などの滑剤や分散剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ニッケル系、ヒンダードアミン系などの光安定剤;脂肪酸カルシウムや脂肪酸亜鉛、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム/炭酸リチウム包摂物などの中和剤;カチオン系、アニオン系、ノニオン系などの帯電防止剤;エステル系、グリコール系などの防曇剤;ヒドラジン系、オキサミド系、アミド系、メラミン系、リン酸系などの金属不活性化剤などが挙げられる。
【0024】
〔位相差フィルムの製造方法〕
〔樹脂(組成物)の調製方法〕
本発明の樹脂または樹脂組成物(以下「樹脂(組成物)」ともいう)の調製方法としては、特に限定を受けず、セルロースエステル系樹脂(A)に、場合によってはゲル化剤(B)および/または可塑剤(C)とを配合し、さらには必要に応じて他の添加剤を配合し、バンバリーミキサーや加圧ニーダー等のインターナルミキサー、ロール混練機、単軸または二軸押出機等を用いて混合して得られる。
この際の混合温度は、通常、120〜300℃、好ましくは150〜260℃程度である。
【0025】
本発明の樹脂(組成物)を製造する際には、セルロースエステル樹脂(A)を予め乾燥しておくことが望ましく、その乾燥条件は任意であるが、例えば、30〜90℃の温度にて30分〜3日間程度乾燥することが好ましい。また、本発明の樹脂(組成物)を成形加工する際にも、該樹脂(組成物)を予め乾燥しておくことが望ましく、その乾燥条件は任意であるが、例えば、30〜90℃の温度にて30分〜3日間程度乾燥することが好ましい。
【0026】
(フィルムの成形方法)
本発明の樹脂または樹脂組成物からフィルムを得る方法として、例えば、以下の(1)〜(4)の成形方法が例示され、特に生産性の点で(2)、(3)の方法が好ましい。
(1)樹脂または樹脂組成物を溶媒に溶解した後にキャストしてフィルムに成形する方法。
(2)樹脂または樹脂組成物をフラットダイを用いて、溶融押し出しによりフィルムに成形する方法。
(3)樹脂または樹脂組成物をインフレーション成形法によりフィルムに成形する方法。
(4)樹脂または樹脂組成物を圧縮成形法によりフィルムに成形する方法。
上記(2)〜(4)の成形方法によるフィルムを製造する場合の成形機の温度は、通常、120〜300℃、好ましくは150〜260℃程度である。
【0027】
更に、上記(2)の成形方法によりフィルムを製造する場合において、以下の(a)又は(b)から選ばれるプロセスを行うことが好ましい。
(a)溶融状態の樹脂または樹脂組成物を押出し、鏡面金属弾性ロールに挟み込んで冷却する。
(b)下記の(b1)又は(b2)のプロセスにおいて、溶融状態の樹脂または樹脂組成物を含む積層成形物をゴムロールと金属ロールとの間に挟み込んで冷却する。
(b1)溶融した樹脂または樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマーを積層して押出し、積層フィルムの成形後に片表層面もしくは両表層面に積層された異種ポリマーを剥離する。
(b2)溶融した樹脂または樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくは両表層面に外層として溶融状態の異種ポリマーを積層して押出し、さらにその片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマー(溶融状態の異種ポリマーと同一の樹脂からなる異種ポリマーであっても良く、異なる樹脂からなる異種ポリマーであっても良い)を積層して押出し、積層フィルムの成形後に片表層面もしくはその両表層面に積層された異種ポリマーを剥離する。
【0028】
上記(a)のプロセスにおいて使用する鏡面金属弾性ロールとしては、例えば日立造船株式会社製のUFロール、東芝機械株式会社製のUMロールやTESロール、千葉機械株式会社製のスリーブタッチロールやSFロールを挙げることができる。
また、上記(b)のプロセスにおいて使用するゴムロールと金属ロールの材質に関しては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、一般的なフィルム押出成形用の冷却ロールとして使用されるものを使うことができ、例えばゴムロールの材質としては、フッ素ゴム(FPM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコンゴム(Si)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)アクリルゴム(ACM。ANM)等が挙げられ、金属ロールの材質としては、鉄、ステンレス等が挙げられる。
【0029】
さらに、上記(b)の(b1)もしくは(b2)のプロセスにおいて用いられる、樹脂または樹脂組成物の片表層面もしくは両表層面に積層するあらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマー、ならびに片表層面もしくは両表層面に積層する溶融状態の異種ポリマー(あらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマーと同一の樹脂からなる異種ポリマーであっても良く、異なる樹脂からなる異種ポリマーであっても良い)としては、溶融状態の樹脂または樹脂組成物が冷却された後、樹脂または樹脂組成物と適度に密着しており、且つ容易に剥離出来る樹脂が好ましい。このような樹脂として、例えば高密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂などのポリエチレン系樹脂や、ポリプロプレン系樹脂が挙げられる。
【0030】
あらかじめ、固体フィルムに成形した異種ポリマーのフィルム、および樹脂または樹脂組成物の片表層面もしくは両表層面に外層として積層される溶融状態の異種ポリマーの厚みとしては、50〜500μmの範囲であり、樹脂または樹脂組成物からなるフィルムの表面平滑性を高めるために適宜選択できるが、一般的には80〜200μmの範囲が好ましい。
【0031】
あらかじめ、固体フィルムに成形した異種ポリマーのフィルム、および樹脂または樹脂組成物の片表層面もしくは両表層面に外層として積層される溶融状態の異種ポリマーの厚みが50μm未満である場合には、ロールの表面の凹凸が溶融状態の樹脂または樹脂組成物に転写されるのを防止する効果に乏しく、一方500μmを超えた場合には、ロールの表面の凹凸が溶融状態の樹脂組成物に転写されるのを防止する効果は有するが、製造された積層体をロール状に巻いて製造する方法においては樹脂または樹脂組成物からなるフィルムにシワが入ったりする恐れがある。
樹脂または樹脂組成物からなるフィルムの厚みについては特に限定されないが、10〜300μmの範囲が好ましい。
【0032】
上記(2)の成形方法によりフィルムを製造する場合において、好ましいとした(a)又は(b)から選ばれるプロセスを行うことにより、次の効果を期待できる。
周知のように、位相差フィルムにおける位相差はフィルムの厚みとフィルム構成材料の複屈折の値により支配されるので、位相差フィルムの厚みの均一性は非常に重要である。
又、液晶デバイス等の液晶表示装置の軽量化に伴い、位相差フィルム等の光学フィルムの厚みも薄くする(重量を軽くする)ことが望まれている。
一般的に、鉄製やステンレス製などの剛直な金属ロールと金属ロールで積層体を圧着・冷却した場合、200μm以下の薄いフィルムの製造が困難になる可能性があるが、上記の(a)のように鏡面金属弾性ロールに挟み込んで冷却することで、厚みの均一な薄いフィルムを成形することができる。
【0033】
又、上記の(b)においては、一般的な押出成形装置でフィルムの冷却に用いられるゴムロールと金属ロールを使用できるという工業的利点を有する。ただし、この場合、ロールの表面の凹凸が溶融状態の樹脂または樹脂組成物に転写されることにより、樹脂または樹脂組成物からなるフィルムの厚みの均一性や表面平滑性が悪化する恐れがある。そのため、上記(b1)のように、溶融した樹脂または樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマーを積層して押出すか、上記(b2)のように、溶融した樹脂または樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくは両表層面に外層として溶融状態の異種ポリマーを積層して押出し、さらにその片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマー(溶融状態の異種ポリマーと同一の樹脂からなる異種ポリマーであっても良く、異なる樹脂からなる異種ポリマーであっても良い)を積層して押出すことで、ロールの表面の凹凸が溶融状態の樹脂組成物に転写されることを防止できる。そして、このようにして製造された樹脂または樹脂組成物を内層とし、異種ポリマーを表層(片表層もしくは両表層)とする積層体から、異種ポリマー層を剥離することで、厚みが均一で表面平滑性に優れた薄いフィルムを成形することができる。
【0034】
更に、位相差フィルムの成形においては、フィルムに対する微小なダスト等のコンタミネーションを回避する必要があるが、上記(b)の(b1)もしくは(b2)のプロセスを行うことにより、ゴミが入りにくくなるので、コンタミネーションの少ない位相差フィルムを得ることができる。
(b)の(b1)もしくは(b2)のプロセスにおいて、使用する金属ロールが鏡面ロールの場合は、ロール表面の凹凸がゴムロールに較べて極めて小さく、この凹凸が積層体に転写されても表面平滑性が低下する可能性が小さい。そのため、(b1)の方法において、樹脂または樹脂組成物がゴムロールと接する面側のみにおいて、あらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマーを挟み込んで製造してもかまわない。これは、即ち樹脂または樹脂組成物における金属ロールと接する面側はあらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマーを挟み込むことをせずに、樹脂または樹脂組成物がゴムロールと接する面側のみあらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマーを挟み込んで製造することを意味する。
【0035】
また、同様に金属ロールが鏡面ロールの場合、上記(b2)の方法における、溶融した樹脂または樹脂組成物を内層とし、その表面層に積層する溶融状態の異種ポリマーについても、溶融した樹脂または樹脂組成物がゴムロールと接する面側のみを、溶融した樹脂または樹脂組成物に溶融状態の異種ポリマーが積層された積層体として製造してもかまわない。
なお、前述の鏡面弾性金属ロール並びに鏡面金属ロールの鏡面の程度は、本発明の位相差フィルムの特性に悪影響を及ぼさない程度であれば特に限定されないが、通常、1/100S以下の表面粗度が好ましい。
【0036】
(フィルムの加熱延伸処理)
以上のように成形した樹脂または樹脂組成物のフィルムに対しては、更に加熱延伸処理を行うことが好ましく、この操作により、フィルムの位相差を自在に制御することができる。
延伸方式は、フィルムに付与したい位相差特性に従い、フィルムのMD方向、TD方向のいずれか一方向に延伸する一軸延伸、MD、TDの両方向に延伸する二軸延伸のいずれかから選択される。二軸延伸の場合は逐次二軸延伸または、同時二軸延伸のいずれかから選択される。
延伸温度は90〜160℃の範囲内であり、延伸倍率は1.1〜5.0倍の範囲内が好ましい。延伸温度が90℃未満である場合にはフィルムが破断する恐れがあり、一方160℃を超える温度で延伸を行うとフィルムが溶融する恐れがある。また、延伸倍率が1.1倍未満では位相差が十分に生じない恐れがあり、一方5倍を超えるとフィルムの破断を生じる恐れがある。
【0037】
〔位相差フィルム〕
本発明の位相差フィルムは、上記した本発明の樹脂または樹脂組成物を用い、上記した位相差フィルムの製造方法によって製造される。
また、本発明の位相差フィルムは、その構成材料である樹脂または樹脂組成物の特性にもとづき、フィルム一枚で光の波長が短いほどフィルムにおける位相差が小さく、波長が長いほどフィルムにおける位相差が大きいという優れた特性を示す。より具体的には、587.5nmの波長の光に対する位相差をR(587.5)とし、446.4nmの波長の光に対する位相差をR(446.4)とし、746.6nmの波長の光に対する位相差をR(746.6)とした場合に、位相差フィルムにおけるR(446.4)/R(587.5)が0.99以下であると共に、R(746.6)/R(587.5)が1.01以上である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
<実施例1〜2、比較例1〜2>
(樹脂組成物の調製)
表1に示した配合物に、酸化防止剤としてアデカスタブAO60(旭電化製)0.1重量部、アデカスタブ2112(旭電化製)0.1重量部、中和剤としてステアリン酸亜鉛(日東化成工業製)0.1重量部を加えた配合物を、内容積60ccのインターナルミキサー(東洋精機製作所社製、ラボプラストミル)にて220℃、回転数30rpmで10分間混合し組成物を得た。
(フィルム成形)
上記の方法で得た組成物を230℃に加熱した圧縮成形機にてフィルムに成形した。得られたフィルムの厚みを「延伸前のフィルムの厚み μm」として表1に示す。
(位相差フィルムの作製)
次に、上記の方法で得られたフィルムを表1に記載した温度、延伸倍率で幅方向に一軸延伸して位相差フィルムを作製した。得られたフィルムの厚みを「フィルムの厚み(延伸後) μm」として、表1に示す。
(位相差フィルムの測定)
上記の位相差フィルムについて、位相差測定装置(王子計測器社製:KOBRA―WR)を用いて入射角0°で長さ方向と幅方向の587.5nmの位相差(R(587.5))、446.4nmの位相差(R(446.4))、及び746.6nmの位相差(R(746.6))を測定し、その値からR(446.4)/R(587.5)、及びR(746.6)/R(587.5)の値を求めた。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
上記の表1における表中の符号は、以下の配合剤を指す。
A-1:アセチル置換度(Sa)=0.10、プロピオニル置換度(Sp)=2.31、水酸基置換度(Sh)=0.59、数平均分子量50,000のセルロースアセテートプロピオネート樹脂
A-2:アセチル置換度(Sa)=0.04、プロピオニル置換度(Sp)=2.12、水酸基置換度(Sh)=0.84、数平均分子量40,000のセルロースアセテートプロピオネート樹脂
A-3:アセチル置換度(Sa)=0.18、プロピオニル置換度(Sp)=2.49、水酸基置換度(Sh)=0.33、数平均分子量75,000のセルロースアセテートプロピオネート樹脂(イーストマン社製、CAP482-20)
A-4:アセチル置換度(Sa)=0.01、プロピオニル置換度(Sp)=1.90、水酸基置換度(Sh)=1.09、数平均分子量20,000のセルロースアセテートプロピオネート樹脂
C-1:ポリサイザーW91(ディーアイシー社製、フタル酸系ポリエステル可塑剤)
【0041】
<実施例3>
(樹脂組成物の調製)
セルロースエステル系樹脂(A−3)(イーストマン社製 CAP482-20、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、アセチル置換度(Sa)=0.18、プロピオニル置換度(Sp)=2.49、水酸基置換度(Sh)=0.33、数平均分子量75,000)60重量部、セルロースエステル系樹脂(A−5)(イーストマン社製 CAP504-0.2、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、アセチル置換度(Sa)=0.04、プロピオニル置換度(Sp)=2.12、水酸基置換度(Sh)=0.84、数平均分子量20,000)40重量部の合計100重量部に対し、ゲル化剤(B−1)(新日本理化社製1,3:2,4-Di-(p-methylbenzylidene) sorbitol、商品名GelAll MD)5重量部、酸化防止剤としてアデカスタブAO60(旭電化製)0.1重量部、アデカスタブ2112(旭電化製)0.1重量部、中和剤としてステアリン酸亜鉛(日東化成工業製)0.1重量部を加えた配合物をシリンダー温度とダイ温度を230℃に設定した二軸混練機でペレット化し、樹脂組成物を得た。
なお、セルロースエステル系樹脂(A−3)60重量部とセルロースエステル系樹脂(A−5)40重量部を混合した樹脂の置換度は、アセチル置換度(Sa)=0.12、プロピオニル置換度(Sb)=2.35、水酸基置換度(Sh)=0.53であり、数平均分子量は40,000であった。
【0042】
(フィルム成形)
上記の方法で得た樹脂組成物ペレットを40mm幅のフラットダイを備えた三層押出機(いずれも、シリンダー温度、ダイ温度とも230℃に設定)の内層とし、両表層面をポリプロピレン樹脂とする層構成で、三層構造で溶融押出した。三層構造で溶融押出する際に、フラットダイより押出された三層構造の溶融物を内層とし、その両表面層を厚さ100μmのあらかじめ成形された直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.94g/cm)フィルムで挟み込んで、ゴムロールと金属ロールからなる2本のロールでニップして冷却し積層フィルムを得た。
積層フィルムから、ポリプロピレンフィルムと直鎖状低密度ポリエチレンからなる両表層面を剥離し、厚さ200μmの樹脂組成物からなるフィルムを得た。
得られた樹脂組成物からなるフィルムは表面平滑性ならびに透明性に非常に優れるものであった。
【0043】
(位相差フィルムの作製)
次に、上記の方法で製造されたフィルムを幅方向に120℃で2倍に一軸延伸して厚さ140μmの位相差フィルムを作製した。
(位相差フィルムの測定)
上記の位相差フィルムについて、位相差測定装置(王子計測器社製:KOBRA―WR)を用いて入射角0°で長さ方向と幅方向の587.5nmの位相差(R(587.5))、446.4nmの位相差(R(446.4))、及び746.6nmの位相差(R(746.6))を測定し、その値からR(446.4)/R(587.5)、及びR(746.6)/R(587.5)の値を求めた。その結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
また、得られた位相差フィルムの可撓性を90°折り曲げ試験によって評価した結果、180°折り曲げた時にもフィルムが割れず、可撓性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の位相差フィルム用樹脂および位相差フィルム用樹脂組成物は、位相差フィルムの生産効率を向上させるとともに、この樹脂または樹脂組成物から得られる位相差フィルムは、液晶デバイス等に用いられる光学フィルムとして好適に使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステル系樹脂(A)がセルロースアセテートプロピオネートであって、炭素数2のアシル基の置換度を(Sa)、炭素数3のアシル基の置換度を(Sp)、水酸基の置換度を(Sh)としたときに[ただし、(Sa)+(Sp)+(Sh)=3]、セルロースエステル系樹脂(A)の水酸基の置換度(Sh)が0.50を超え、1.00以下の範囲であることを特徴とする位相差フィルム用樹脂。
【請求項2】
セルロースエステル系樹脂(A)がセルロースアセテートプロピオネートであって、セルロースエステル系樹脂(A)の炭素数2のアシル基の置換度(Sa)が0.03〜0.15の範囲であり、かつ炭素数3のアシル基の置換度(Sp)が2.00〜2.40の範囲であり、かつ水酸基の置換度(Sh)が0.50を超え、1.00以下の範囲[ただし、(Sa)+(Sp)+(Sh)=3]である請求項1に記載の位相差フィルム用樹脂。
【請求項3】
請求項1または2記載のセルロースエステル系樹脂(A)100重量部に対して、ゲル化剤(B)が0.01〜10重量部および/または可塑剤(C)が0.5〜20重量部の範囲で含有されている位相差フィルム用樹脂組成物。
【請求項4】
ゲル化剤(B)がソルビトールとアルデヒド化合物との縮合物である請求項3に記載の位相差フィルム用樹脂組成物。
【請求項5】
上記セルロースエステル系樹脂(A)100重量部に対し、上記ゲル化剤(B)の含有量が0.05重量部以上、5重量部未満である請求項3または4に記載の位相差フィルム用樹脂組成物。
【請求項6】
可塑剤(C)が、芳香族リン酸エステル系化合物および/またはフタル酸エステル系化合物および/またはフタル酸系ポリエステル化合物である、請求項3に記載の位相差フィルム用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の樹脂または請求項3〜6いずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて、下記のいずれかの成形方法によりフィルムを製造することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
(1)上記樹脂または上記樹脂組成物を溶媒に溶解した後にキャストしてフィルムに成形する方法。
(2)上記樹脂または上記樹脂組成物をフラットダイを用いて、溶融押し出しによりフィルムに成形する方法。
(3)上記樹脂または上記樹脂組成物をインフレーション成形法によりフィルムに成形する方法。
(4)上記樹脂または上記樹脂組成物を圧縮成形法によりフィルムに成形する方法。
【請求項8】
上記(2)の成形方法によりフィルムを製造する場合において、以下の(a)又は(b)から選ばれるプロセスを行う請求項7に記載の位相差フィルムの製造方法。
(a)溶融状態の上記樹脂または上記樹脂組成物を押出し、鏡面金属弾性ロールに挟み込んで冷却する。
(b)下記の(b1)又は(b2)のプロセスにおいて、溶融状態の上記樹脂または上記樹脂組成物を含む積層成形物をゴムロールと金属ロールとの間に挟み込んで冷却する。
(b1)溶融した上記樹脂または上記樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマーを積層して押出し、積層フィルムの成形後に片表層面もしくは両表層面に積層された異種ポリマーを剥離する。
(b2)溶融した上記樹脂または上記樹脂組成物を内層とし、その片表層面もしくは両表層面に外層として溶融状態の異種ポリマーを積層して押出し、さらにその片表層面もしくはその両表層面にあらかじめ固体フィルムに成形した異種ポリマー(溶融状態の異種ポリマーと同一の樹脂からなる異種ポリマーであっても良く、異なる樹脂からなる異種ポリマーであっても良い)を積層して押出し、積層フィルムの成形後に片表層面もしくはその両表層面に積層された異種ポリマーを剥離する。
【請求項9】
上記樹脂または上記樹脂組成物のフィルムに対して更に加熱延伸処理を行う請求項7または8に記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載した位相差フィルムの製造方法により製造されたものである位相差フィルム。
【請求項11】
587.5nmの波長の光に対する位相差をR(587.5)とし、446.4nmの波長の光に対する位相差をR(446.4)とし、746.6nmの波長の光に対する位相差をR(746.6)とした場合に、上記位相差フィルムにおけるR(446.4)/R(587.5)が0.99以下であると共に、R(746.6)/R(587.5)が1.01以上である請求項10に記載の位相差フィルム。

【公開番号】特開2012−133120(P2012−133120A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285067(P2010−285067)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000203944)太平化学製品株式会社 (20)
【Fターム(参考)】