位相差板
【課題】斜め入射する光であっても、所望の位相差より極力ずれることなく射出できる位相差板を提供する。
【解決手段】光透過性で、交互に配置された第1領域及び第2領域と、前記第1領域と前記第2領域の双方に、入射光の1/2波長より短いピッチで板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列された微細周期構造部10A、10Bとを有する位相差基板4Aと、位相差基板4Aの光入射側に配置され、負のCプレート特性を有する位相差補償基板5Aとを備えた。
【解決手段】光透過性で、交互に配置された第1領域及び第2領域と、前記第1領域と前記第2領域の双方に、入射光の1/2波長より短いピッチで板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列された微細周期構造部10A、10Bとを有する位相差基板4Aと、位相差基板4Aの光入射側に配置され、負のCプレート特性を有する位相差補償基板5Aとを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の位相状態を変化させる位相差板に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元表示装置では、例えば液晶パネルの異なる画素に映し出された右目用映像と左目用映像を、位相差板によって互いに異なる偏光状態として射出する。視聴者は、左右で吸収軸の向きが異なる偏光めがねを用いて右目用映像を右目で、左用映像を左目で見ることによって三次元映像を認識する。
【0003】
この位相差板は、画素サイズの領域で位相差が異なる、すなわちパターニングされたものが用いられる。このようなパターニングが可能な位相差板としては光配向膜と液晶ポリマーを用いたものや、構造性複屈折を用いたものがある。
【0004】
従来の構造性複屈折を用いた位相差板としては、特許文献1に開示されたものが提案されている。この位相差板100は、図12に示すように、光透過性の材料より形成されている。位相差板100には、第1微細周期構造部A(A1、A2〜)と第2微細周期構造部B(B1、B2〜)が交互に連続して設けられている。各微細周期構造部A,Bは、図13及び図14に示すように、入射光の1/2波長より十分に短いピッチで、板状溝部101と板状非溝部である平板部102が交互に連続して配列されている。第1微細周期構造部Aと第2微細周期構造部Bとは、板状溝部101及び平板部102の配列方向が90度回転した方向に設定されている。
【0005】
このように屈折率が異なる板状溝部101(空気の屈折率)と平板部102(基板材料の屈折率)を周期的に配置することによって複屈折特性が発生する。複屈折特性の光学方向は、板状溝部101と平板部102の配列方向により決定される。このような特性を利用して、上記位相差板100は、右目用映像と左目用映像を互いに異なる偏光状態の光に変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−30461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構造性複屈折を用いた位相差板100は、入射光に単に複屈折作用を与える構成になっている。位相差板100への入射光には、位相差板100の表面に対して垂直方向に入射する光の他に、斜めから入射する光も存在する。この斜め入射する光は、垂直入射する光に対して第1微細周期構造部Aや第2微細周期構造部Bを通過する光路長が長くなり、所望の位相差からずれた光となって射出する。すると、その後の偏光板で不要な光となって漏れ、右目用と左目用の画像重なりの原因になる恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、斜め入射する光であっても、所望の位相差より極力ずれることなく射出できる位相差板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光透過性で、交互に配置された第1領域(S1)及び第2領域(S2)と、前記第1領域(S1)と前記第2領域(S2)の少なくとも一方に、入射光の1/2波長より短いピッチで板状溝部(11)と板状非溝部(12)が交互に連続して配列された微細周期構造部(10A)、(10B)、(14)とを有する位相差基板(4A)、(4B)と、前記位相差基板(4A)、(4B)の光入射側と光射出側のいずれかの面に配置され、負のCプレート特性を有する位相差補償基板(5A)、(5B)とを備えたことを特徴とする。
【0010】
前記微細周期構造部(10A)、(19B)は、前記第1領域(S1)と前記第2領域(S2)に共に設け、前記第1領域(S1)の前記微細周期構造部(10A)と前記第2領域(S2)の前記微細周期構造部(10B)とは、互いに配列方向を90度回転した方向に設定し、前記第1領域(S1)の前記微細周期構造部(10A)と前記第2領域(S2)の前記微細周期構造部(10B)の間には、溝が形成されていない非溝領域部(S3)を設けることが好ましい。
【0011】
前記位相差補償基板(5A)は、第1領域(S1)の前記微細周期構造部(10A)と前記第2領域(S2)の前記微細周期構造部(10B)の双方に対応する領域が少なくとも負のCプレート特性を有するよう形成することが好ましい。
【0012】
前記各微細周期構造部(10A)、(10B)は、各入射光の位相が1/4波長分ずれてそれぞれ射出する構成のものを含む。
【0013】
前記位相差補償基板(5A)は、前記非溝領域部(S3)に少なくとも対応する位置に、光吸収材料からなる遮光部(6)を有することが好ましい。
【0014】
前記遮光部(6)の幅は、前記非溝領域部(S3)の幅をP2、前記非溝領域部(S3)の深さをt、光学系のF値をFとすると、P2+(t/F)であることが好ましい。
【0015】
前記微細周期構造部(14)は、前記第1領域(S1)と前記第2領域(S2)のいずれか一方にのみ設け、前記微細周期構造部(14)が設けられた領域(S1)では、入射光の位相が1/2波長分ずれて射出するよう構成され、前記微細周期構造部(14)が設けられない領域(S2)では、入射光の位相がずれずに射出するものを含む。
【0016】
前記位相差補償基板(5B)は、前記微細周期構造部(14)が設けられた領域(S1)に対応する領域が負のCプレート特性を有する複屈折部(5a)に、前記微細周期構造部(14)が設けられない領域(S2)に対応する領域が非複屈折部(5B)に形成することが好ましい。
【0017】
前記位相差補償基板(5B)は、前記第1領域(S1)と前記第2領域(S2)の境界箇所に対応する位置に、光吸収材料からなる遮光部(6)を有することが好ましい。
【0018】
前記遮光部(6)の幅は、前記板状溝部の深さをt、光学系のF値をFとすると、t/Fであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光が位相差板に斜め入射すると、位相差基板の通過に際して所望の位相差を基準として斜め入射角度の大きさが大きくなるに従って大きな位相差ずれを起こすが、位相差補償基板の通過に際して、上記とは逆の位相差(直交した方向の位相差)が大きくなるため、位相差ずれを極力相殺するよう作用する。従って、斜め入射する光であっても、所望の位相差より極力ずれることなく射出できる位相差板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、三次元表示装置の要部概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、位相差板の構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、(a)は位相差基板の一部平面図、(b)は位相差基板の一部斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、位相差補償基板の位相差特性を、屈折率異方性の関係として楕円体にモデル化した図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示し、三次元表示装置の要部概略構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示し、位相差板の構成図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示し、(a)は位相差基板の一部平面図、(b)は位相差基板の一部斜視図である。
【図8】位相差基板と位相差補償基板のマッチング条件を説明するもので、(a)は位相差基板の斜視図、(b)位相差補償基板の斜視図、(c)は位相差補償基板の屈折率異方性の関係を楕円体にモデル化した図である。
【図9】入射光の入射角に対する位相差基板と位相差補償基板の角位相差変化量を示す特性線図である。
【図10】本発明を三次元撮像装置に適用する場合の位相差基板の構成を示す図である。
【図11】本発明を三次元撮像装置に適用する場合の位相差基板の構成を示す図である。である。
【図12】従来例を示し、位相差板の全体平面図である。
【図13】従来例を示し、位相差板の一部拡大断面図である。
【図14】従来例を示し、位相差板の微細周期構造箇所の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1〜図4は、本発明に係る位相差板を三次元表示装置に適用した第1実施形態を示す。図1において、三次元表示装置1Aは、映像表示素子である液晶パネル2を有する。液晶パネル2には、右目用と左目用の各画素が例えば水平ライン毎に交互に配置されている。右目用の各画素からは右目映像の光が、左目用の画素からは左目映像の光がそれぞれ射出される。射出される各光は、振動方向が同じ向きの直線偏光である。
【0023】
位相差板3Aは、液晶パネル2の光射出側に配置されている。位相差板3Aは、図2に示すように、位相差基板4Aと位相差補償基板5Aからなり、双方の基板4A,5Aが液晶パネル2の射出光方向に互いに重なるように配置されている。位相差基板4Aは、図3(a)、(b)に詳しく示すように、ポリカーボネイト、又は、塩化ビニル、又は、ポリエステル、又は、ポリイミド、又は、ポリオレフィン、又は、アクリルの透明樹脂より形成されている。位相差基板4Aには、液晶パネル2の画素サイズに合わせた寸法の第1領域S1と第2領域S2が交互に連続して設けられている。第1領域S1には、入射光の1/2波長より短いピッチで、板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列された第1微細周期構造部10Aが設けられている。第2領域S2にも、入射光の1/2波長より短いピッチで、板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列された第2微細周期構造部10Bが設けられている。各板状溝部11は、位相差基板4Aの上面にのみ開口する溝であり、その内周面が閉じられた溝によって形成されている。これにより、各板状非溝部12は、周辺の非溝部13によって連結されている。
【0024】
第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bは、それぞれ板状溝部11と板状非溝部12の周期構造によって構造性複屈折を生じる。この構造性複屈折を利用して第1微細周期構造部10Aが例えば+λ/4位相差を発生させる領域に、第2微細周期構造部10Bが例えば−λ/4位相差を発生させる領域に設定されている。つまり、位相差基板4Aは、+λ/4領域と−λ/4領域が交互に配列された±1/4波長板として構成されている。微細周期構造にあって、通過する光の位相差を所望の波長に設定できる理由については、下記する。
【0025】
第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bでは、板状溝部11と板状非溝部12の配列方向が遅相軸となり、板状溝部11と板状非溝部12の配列方向の90度回転方向が進相軸となる。第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bでは、遅相軸及び進相軸の方向が入射光である直線偏光の振動方向に対しそれぞれ45度回転した方向に設定されている。その上、第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bでは、板状溝部11と板状非溝部12の配列方向が互いに90度回転した方向に設定され、遅相軸及び進相軸の方向が互いに90度回転した方向となっている。
【0026】
第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bの間には、溝が形成されていない非溝領域部S3が設けられている。
【0027】
位相差補償基板5Aは、図2に示すように、光透過性材料より形成されている。位相差補償基板5Aは、その全域が負のCプレート特性を有するように形成されている。つまり、位相差補償基板5Aの表面の面方向には屈折率異方性がなく、面方向の垂直方向に屈折率異方性を有し、面方向の屈折率に対して垂直方向の屈折率が小さい。
【0028】
位相差補償基板5Aの一面には、光吸収材料からなる遮光部6が設けられている。遮光部6は、位相差基板4Aの光入射側に密着されている。遮光部6は、位相差基板4Aの非溝領域部S3に対応するパターンであり、非溝領域部S3に対応する位置に配置されている。
【0029】
遮光部6の幅W1は、非溝領域部S3の幅をP2、非溝領域部S3の深さをt、光学系(レンズ)のF値をFとすると、W1=P2+(t/F)に設定されている。
【0030】
ここで、F=f(焦点距離)/φ(口径)であり、φ/2=f/2Fとなる。f→tとすると、φ/2=t/2Fとなり、φ=t/Fとなるためである。
【0031】
位相差補償基板5Aは、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、波長より十分に短い膜厚で屈折率に差のある誘電体膜を積層して構造性複屈折を利用したものより形成してある。例えば、水平配向の液晶ポリマーや、延伸フィルム等のAプレート材料を、同じ位相差を持つ状態で遅相軸を直交させて向き合わせたものである。
【0032】
次に、位相差基板4Aの各領域を所望の位相差に設定できる理由を説明する。
【0033】
板状溝部11及び板状非溝部12が延びる方向とこれに直交する方向で有効となる屈折率NTM、NTE は、板状溝部11の屈折率と周期構造より決定され、下記の式で求めることができる。ここで、TM,TEは直線偏光の振動方向に対して±45度の方向の成分を表す。板状溝部11の屈折率はN1であり、板状非溝部12の屈折率はN2である。板状溝部11は媒体が空気であるため、N1=1である。板状溝部11の幅はL、板状非溝部12の幅はS、第1及び第2微細周期構造部10A,10B(板状溝部11及び板状非溝部12)の深さはdである。フィリング係数fは、f=L/P(ピッチP=L+S)である。
【0034】
NTM={f・N22 +(1−f)}1/2
NTE=[N22 /{f +(1−f)N22}]1/2
上記式より射出光に与えられた位相差δは、δ=(NTM−NTE )×dで求められる。従って、位相差基板4Aの屈折率N2と微細周期構造部10A,10Bの深さdによって位相差δを制御でき、この第1実施形態では、+λ/4領域と−λ/4領域が交互に繰り返す±1/4波長板として構成されている。
【0035】
位相差補償基板5Aに、遮光部6のほかにアライメントパターン部を形成すれば、位相差基板4Aに正確な位置で固定できる。位相差補償基板5Aと位相差基板4Aは、板状溝部11及び板状非溝部12より外側位置を熱硬化性若しくは紫外線硬化性の接着剤等で固定する。
【0036】
図1に戻り、次に、三次元表示装置1Aの作用を説明する。液晶パネル2の右目画素では右目用映像が、液晶パネル2の左目画素では左目用映像がそれぞれ表示される。右目用映像の直線偏光の光は、位相差板3Aを通過する際に、偏光状態が変更されて例えば右円偏光になって射出される。左目用映像の直線偏光の光は、位相差板3Aを通過する際に、偏光状態が変更されて例えば左円偏光になって射出される。
【0037】
図1に示すように、右目レンズ側に右円偏光の光を透過する円偏光板15aを、左目レンズ側に左円偏光の光を透過する円偏光板15bをそれぞれ有する眼鏡15を掛けて見ると、右目には右目用映像のみが、左目には左目用映像のみが見える。これによって、視聴者は、三次元映像を見ることができる。
【0038】
次に、位相差板3Aの偏光作用を詳細に説明する。光が位相差板3Aに斜め入射すると、垂直方向に入射する光に較べて位相差基板4A内を通過する光路長が長くなり、光路長は斜め入射光の角度が大きくなるに従って長くなる。つまり、入射光が傾くほど発現していく位相差が大きくなっていく。
【0039】
一方、位相差補償板5Aは、負のCプレート特性を有する。屈折率異方性の関係として楕円体にモデル化すると、図4に示すようになる。図4に示すように、斜め入射光の角度が大きくなるに従って傾く方向には屈折率が小さくなり、その直角方向(傾かない方向)には屈折率の変化が無い。又、垂直方向の入射光に対して余分な位相差を与えない。
【0040】
また、位相差板3Aには、板状溝部11と板状非溝部12の配列方向が互いに異なる第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bが設けられているが、負のCプレート特性の位相差補償基板5Aは、面方向に屈折率異方性がないため、第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bの双方の位相差ずれを共に補償可能である。
【0041】
以上より、傾きのない垂直方向の入射光は、位相差基板4Aの通過に際して所望の位相差が与えられ、且つ、位相差補償基板5Aの通過に際して全く位相差が与えられないため、所望の位相差を持った光を射出する。傾きのある斜め入射光は、位相差基板4Aの通過に際して所望の位相差を基準として斜め入射角度の大きさが大きくなるに従って大きな位相差ずれを起こす。しかし、位相差補償基板5Aの通過に際し、上記とは逆の位相差(直交した方向の位相差)が大きくなるため、位相差ずれを極力相殺するよう作用する。従って、位相差板3Aに斜め入射する光であっても、所望の位相差より極力ずれることなく射出する。
【0042】
各微細周期構造部10A,10Bは、板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列され、且つ、板状溝部11はその内周面が閉じられた溝である。このように各板状溝部11はその内周面が閉じられた溝であり、これにより各板状非溝部12が周囲の非溝部13で互いに連結されているため、板状溝部11と板状非溝部12は強度的に強い構造となり、応力や外力によって変形したり壊れたりし難い。
【0043】
第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bの間には、溝が形成されていない非溝領域部S3が設けられている。従って、第1微細周期構造部10Aの板状溝部11と第2微細周期構造部10Bの板状溝部11の間隔が広くなるため、位相差基板4Aの強度が向上する。
【0044】
第1及び第2微細周期構造部10A,10Bは、各入射光の位相が1/4波長分ずれてそれぞれ射出されるよう構成されている。従って、同じ振動方向の直線偏光が入射光である場合に、それぞれ回転方向が異なる円偏光を射出できる。
【0045】
第1及び第2微細周期構造部10A,10Bは、入射光である直線偏光の振動方向に対しそれぞれ45度回転した方向に設定されている。従って、入射光に対して最も高い効率で位相差を生じさせることができる。
【0046】
位相差補償基板5Aは、位相差基板4Aの入射側で、且つ、非溝領域部S3に対応する位置に、光吸収材料からなる遮光部6を有する。従って、非溝領域部S3に垂直方向で入射する光を確実に遮蔽できる。その上、この実施形態では、遮光部6の幅W1は、非溝領域部S3の幅をP2、非溝領域部S3の深さをt、光学系(レンズ)のF値をFとすると、W1=P2+(t/F)に設定されている。従って、図2に示すように、斜め入射光で、第1微細周期構造部10A又は第2微細周期構造部10Bから非溝領域部S3に跨って入り込む光を阻止できるため、所望の位相差を与えられず、漏れ光となる不要な光を確実に遮蔽できる。
【0047】
(第2実施形態)
図5〜図7は、本発明に係る位相差板を三次元表示装置に適用した第2実施形態を示す。図5において、三次元表示装置1Bは、映像表示素子である液晶パネル2を有する。液晶パネル2には、右目用と左目用の各画素が例えば水平ライン毎に交互に配置されている。右目用の各画素からは右目映像の光が、左目用の画素からは左目映像の光がそれぞれ射出される。射出される各光は、振動方向が同じ向きの直線偏光である。
【0048】
位相差板3Bは、液晶パネル2の光射出側に配置されている。位相差板3Bは、図6に示すように、位相差基板4Bと位相差補償基板5Bからなり、双方の基板4B,5Bが液晶パネル2の射出光方向に互いに重なるように配置されている。
【0049】
位相差基板4Bは、図7(a)、(b)に詳しく示すように、ポリカーボネイト、塩化ビニル、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、アクリル等の透明樹脂より形成されている。位相差基板4Bには、液晶パネル2の画素サイズに合わせた寸法の第1領域S1と第2領域S2が交互に連続して設けられている。第1領域S1には、入射光の1/2波長より短いピッチで、板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列された微細周期構造部14が設けられている。第2領域S2には、前記第1実施形態と異なり、何ら板状溝部が設けられていない。
【0050】
微細周期構造部14は、板状溝部11と板状非溝部12の周期構造によって、構造性複屈折を生じる。第2領域S2は、構造性複屈折を生じない。位相差基板4Bは、構造性複屈折を利用してλ/2領域と0領域が交互に配列されたλ/2位相差基板として構成されている。
【0051】
微細周期構造部14の各板状溝部11は、位相差基板4Bの上面にのみ開口する溝であり、その内周面が閉じられた溝として形成されている。これにより、各板状非溝部12は、周辺の非溝部13によって連結されている。
【0052】
微細周期構造部14では、板状溝部11と板状非溝部12の配列方向が遅相軸となり、配列方向の90度回転方向が進相軸となる。微細周期構造部14では、遅相軸及び進相軸の方向が射出光である直線偏光の振動方向に対しそれぞれ45度回転した方向に設定されている。
【0053】
位相差補償基板5Bは、図6に示すように、光透過性材料より形成されている。位相差補償基板5Bは、微細周期構造部14が設けられた第1領域S1に対応する領域が負のCプレート特性を有する複屈折部5aに、微細周期構造部14が設けられない第2領域S2に対応する領域が非複屈折部5bに形成されている。つまり、第2領域S2は、何ら複屈折特性を発現しない領域である。
【0054】
位相差補償基板5の一面には、光吸収材料からなる遮光部6が設けられている。遮光部6は、位相差基板4Bの光入射側の面に密着されている。遮光部6は、第1領域S1と第2領域S2の境界位置に対応するパターンであり、その境界位置に対応する位置に配置されている。遮光部6の幅はW2、微細周期構造部14(板状溝部11及び板状非溝部12)の深さをt、光学系の焦点距離をFとすると、W2=(t/F)に設定されている。
【0055】
次に、三次元表示装置1Bの動作を説明する。液晶パネル2の各右目画素では右目用映像が、液晶パネル2の各左目画素では左目用映像がそれぞれ表示される。右目用映像の直線偏光の光と左目用映像の直線偏光の光は、位相差板3Bを通過する際に、いずれか一方が90度回転され、互いに90度回転した直線偏光となって射出される。
【0056】
右目レンズ側に一方の直線偏光の光を透過する偏光板16aを、左目レンズ側に他方の直線偏光の光を透過する偏光板16bをそれぞれ有する眼鏡16を掛けて見ると、右目には右目用映像のみが、左目には左目用映像のみが見える。これによって、視聴者は、三次元映像を見ることができる。
【0057】
次に、位相差板3Bの偏光作用を詳細に説明する。位相差基板4Bの微細周期構造部14が設けられていない第2領域と位相差補償基板5Bの非複屈折部5bを通過する光は、位相差が与えられない状態で射出する。一方、位相差基板4Bの微細周期構造部14(第1領域S1)と位相差補償基板5Bの複屈折部5aを通過する光は、前記第1実施形態で説明したのと同様の作用によって位相差を与えられる。従って、位相差板3Bに斜め入射する光であっても、所望の位相差より極力ずれることなく射出する。
【0058】
微細周期構造部14は、板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列され、且つ、板状溝部11はその内周面が閉じられた溝によって形成されている。このように各板状溝部11はその内周面が閉じられた溝であり、これにより各板状非溝部12が周囲の非溝部13で互いに連結されているため、板状溝部11と板状非溝部12は強度的に強い構造となり、応力や外力によって変形したり壊れたりし難い。
【0059】
微細周期構造部14は、入射光の位相が1/2波長分ずれてそれぞれ射出されるよう構成されている。従って、同じ振動方向の直線偏光が入射光である場合に、90度回転した直線偏光として射出できる。
【0060】
微細周期構造部14は、入射光である直線偏光の振動方向に対しそれぞれ45度回転した方向に設定されている。従って、入射光に対して最も高い効率で位相差を生じさせることができる。
【0061】
位相差補償基板5Bは、位相差基板4Bの入射面側で、且つ、微細周期構造部14と微細周期構造が形成されていない第2領域S2との境界位置には、光吸収材料からなる遮光部6が配置されているので、斜め入射して微細周期構造部14と微細周期構造でない第2領域S2を跨って通過する光を遮蔽できる。特に、この実施形態では、遮光部6の幅W2は、微細周期構造部14(板状溝部11及び板状非溝部12)の深さをt、光学系(レンズ)のF値をFとすると、t/Fに設定されている。従って、図6に示すように、斜め入射光で、微細周期構造部14と微細周期構造が形成されていない第2領域S2とを跨って通過する光を確実に阻止できるため、所望の位相差を与えられず、漏れ光となる不要な光を確実に遮蔽できる。
【0062】
(位相差基板と位相差補償基板のマッチング条件)
次に、第1実施形態の位相差板3Aを例として、位相差基板4Aと位相差補償基板5Aの位相差のマッチング条件を説明する。
【0063】
先ず、斜め入射光における位相差基板4Aの位相差変化量δ1を求める。図8(a)において、位相差基板4Aの表面の面方向の互いに直交する屈折率をN1、N2(N2<N1)とすると、屈折率差ΔNaは、
ΔNa=N1−N2である。
【0064】
位相差基板4Aの微細周期構造部10A,10Bの深さをd1、入射光の傾斜角をθとすると、位相差基板4Aの位相差変化量δ1は、
δ1=ΔNa・d1(1−1/cosθ)である。
【0065】
ここで、入射光の傾斜角θが変わっても、屈折率差ΔNaは変化しない。フィリング係数fは、ライン幅L、ピッチPにて屈折率が変化するが、傾斜角θが変わってもライン幅L、ピッチP共に1/cosθだけ変化するだけなので、キャンセルしてフィリング係数fは変化しない。
【0066】
従って、位相差基板4Aの位相差変化量δ1は、光路長のみによって変化する。
【0067】
次に、斜め入射光における位相差補償基板5Aの位相差変化量δ2を求める。図8(b)において、位相差補償基板5Aの表面の面方向の屈折率をN3、面方向に直交する方向の屈折率をN4(N4<N3)、入射光の傾斜角をθとすると、屈折率差ΔNbは、楕円の座標(図8(c)参照)より
ΔNb={(N3・cosθ)2+(N4・cosθ)2}1/2である。
【0068】
位相差補償基板5Aの深さ(板厚)をd2とすると、位相差補償基板5Aの位相差変化量δ2は、
δ2=ΔNb・d2/cosθである。
【0069】
ここで、入射光の傾斜角θが変わると屈折率差ΔNbが変化し、又、光路長も変化する。従って、位相差補償基板5Aの位相差変化量δ2は、屈折率差ΔNbと光路長によって変化する。以上より、位相差補償基板5の屈折率差ΔNbと深さ(板厚)d2を調整することによりマッチング可能となる。
【0070】
例えば、位相差基板4Aと位相差補償基板5Aの各値を下記の表1とすると、入射角の傾斜角θに対する位相差変化量δ1、δ2が下記の表2のようになる。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
入射光の傾斜角θに対するそれぞれの位相差変化量δ1、δ2は、図9に示すような特性線図となり、位相差板3Aに斜め入射する光であっても、ほぼ所望の位相差(±λ/4)で射出させることができる。
【0074】
(変形例等)
前記各実施形態では、位相差補償基板5A,5Bは、位相差基板4A,4Bの入射面側に配置したが、射出面側に配置しても良い。
【0075】
前記第1実施形態では、位相差基板4A,4Bには、共に微細周期構造による+λ/4領域と−λ/4領域を交互に構成したが、これに限定されず微細周期構造によって種々の波長差領域を構成可能である。
【0076】
前記第1実施形態では、位相差補償基板5Aは、全域が負のCプレート特性を有する複屈折構造に形成されているが、第1領域S1の第1微細周期構造部10Aと第2領域S2の第2微細周期構造部10Bの双方に対応する領域について、少なくとも負のCプレート特性を有する複屈折構造に形成すれば良い。
【0077】
前記第2実施形態では、位相差基板4Bには、微細周期構造によるλ/2領域と位相差なしの0領域を交互に構成したが、これに限定されず微細周期構造によって種々の波長差領域を構成可能である。
【0078】
また、前記各実施形態では、本発明の三次元表示装置への適用について述べたが、三次元撮像装置への適用も可能である。位相差基板4A,4Bは、図10に示すように+λ/4と−λ/4の領域S1,S2を交互に繰り返す構成や、図11に示すようにλ/2と0の領域を交互に繰り返す構成のものを使用する。位相差補償基板は、±λ/4の全領域に対して、負のCプレート特性を有するものや、λ/2の領域で負のCプレート特性を有し、0の領域で何ら複屈折特性を有しないものを使用する。すなわち、偏光状態と入射出の関係が三次元表示装置と逆になれば良い。
【0079】
例えば、左右の目に対応した映像光それぞれが、図10のような回転方向が異なる円偏光か、図11のようなお互いの軸が90度回転した直線偏光として位相差基板4A,4Bに入射する。その光が位相差基板4A,4Bの左右の目それぞれに対応した領域を透過することで、領域S1,S2毎に軸の向きが異なる直線偏光として射出される。その後偏光板を透過することで、ある領域では左目用の映像の直線偏光のみが、別の領域では右目用の映像の直線偏光のみが射出される。そして、位相差板に斜め入射する光であっても、位相差補償基板の補償機能によって所望の位相差より極力ずれることなく射出される。
【符号の説明】
【0080】
2 液晶パネル(表示素子)
3A,3B 位相差板
4A,4B 位相差基板
5A,5B 位相差補償基板
5a 複屈折部
5b 非複屈折部
6 遮光部
10A 第1微細周期構造部
10B 第2微細周期構造部
11 板状溝部
12 板状非溝部
14 微細周期構造部
S1 第1領域
S2 第2領域
S3 非溝領域部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の位相状態を変化させる位相差板に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元表示装置では、例えば液晶パネルの異なる画素に映し出された右目用映像と左目用映像を、位相差板によって互いに異なる偏光状態として射出する。視聴者は、左右で吸収軸の向きが異なる偏光めがねを用いて右目用映像を右目で、左用映像を左目で見ることによって三次元映像を認識する。
【0003】
この位相差板は、画素サイズの領域で位相差が異なる、すなわちパターニングされたものが用いられる。このようなパターニングが可能な位相差板としては光配向膜と液晶ポリマーを用いたものや、構造性複屈折を用いたものがある。
【0004】
従来の構造性複屈折を用いた位相差板としては、特許文献1に開示されたものが提案されている。この位相差板100は、図12に示すように、光透過性の材料より形成されている。位相差板100には、第1微細周期構造部A(A1、A2〜)と第2微細周期構造部B(B1、B2〜)が交互に連続して設けられている。各微細周期構造部A,Bは、図13及び図14に示すように、入射光の1/2波長より十分に短いピッチで、板状溝部101と板状非溝部である平板部102が交互に連続して配列されている。第1微細周期構造部Aと第2微細周期構造部Bとは、板状溝部101及び平板部102の配列方向が90度回転した方向に設定されている。
【0005】
このように屈折率が異なる板状溝部101(空気の屈折率)と平板部102(基板材料の屈折率)を周期的に配置することによって複屈折特性が発生する。複屈折特性の光学方向は、板状溝部101と平板部102の配列方向により決定される。このような特性を利用して、上記位相差板100は、右目用映像と左目用映像を互いに異なる偏光状態の光に変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−30461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構造性複屈折を用いた位相差板100は、入射光に単に複屈折作用を与える構成になっている。位相差板100への入射光には、位相差板100の表面に対して垂直方向に入射する光の他に、斜めから入射する光も存在する。この斜め入射する光は、垂直入射する光に対して第1微細周期構造部Aや第2微細周期構造部Bを通過する光路長が長くなり、所望の位相差からずれた光となって射出する。すると、その後の偏光板で不要な光となって漏れ、右目用と左目用の画像重なりの原因になる恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、斜め入射する光であっても、所望の位相差より極力ずれることなく射出できる位相差板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光透過性で、交互に配置された第1領域(S1)及び第2領域(S2)と、前記第1領域(S1)と前記第2領域(S2)の少なくとも一方に、入射光の1/2波長より短いピッチで板状溝部(11)と板状非溝部(12)が交互に連続して配列された微細周期構造部(10A)、(10B)、(14)とを有する位相差基板(4A)、(4B)と、前記位相差基板(4A)、(4B)の光入射側と光射出側のいずれかの面に配置され、負のCプレート特性を有する位相差補償基板(5A)、(5B)とを備えたことを特徴とする。
【0010】
前記微細周期構造部(10A)、(19B)は、前記第1領域(S1)と前記第2領域(S2)に共に設け、前記第1領域(S1)の前記微細周期構造部(10A)と前記第2領域(S2)の前記微細周期構造部(10B)とは、互いに配列方向を90度回転した方向に設定し、前記第1領域(S1)の前記微細周期構造部(10A)と前記第2領域(S2)の前記微細周期構造部(10B)の間には、溝が形成されていない非溝領域部(S3)を設けることが好ましい。
【0011】
前記位相差補償基板(5A)は、第1領域(S1)の前記微細周期構造部(10A)と前記第2領域(S2)の前記微細周期構造部(10B)の双方に対応する領域が少なくとも負のCプレート特性を有するよう形成することが好ましい。
【0012】
前記各微細周期構造部(10A)、(10B)は、各入射光の位相が1/4波長分ずれてそれぞれ射出する構成のものを含む。
【0013】
前記位相差補償基板(5A)は、前記非溝領域部(S3)に少なくとも対応する位置に、光吸収材料からなる遮光部(6)を有することが好ましい。
【0014】
前記遮光部(6)の幅は、前記非溝領域部(S3)の幅をP2、前記非溝領域部(S3)の深さをt、光学系のF値をFとすると、P2+(t/F)であることが好ましい。
【0015】
前記微細周期構造部(14)は、前記第1領域(S1)と前記第2領域(S2)のいずれか一方にのみ設け、前記微細周期構造部(14)が設けられた領域(S1)では、入射光の位相が1/2波長分ずれて射出するよう構成され、前記微細周期構造部(14)が設けられない領域(S2)では、入射光の位相がずれずに射出するものを含む。
【0016】
前記位相差補償基板(5B)は、前記微細周期構造部(14)が設けられた領域(S1)に対応する領域が負のCプレート特性を有する複屈折部(5a)に、前記微細周期構造部(14)が設けられない領域(S2)に対応する領域が非複屈折部(5B)に形成することが好ましい。
【0017】
前記位相差補償基板(5B)は、前記第1領域(S1)と前記第2領域(S2)の境界箇所に対応する位置に、光吸収材料からなる遮光部(6)を有することが好ましい。
【0018】
前記遮光部(6)の幅は、前記板状溝部の深さをt、光学系のF値をFとすると、t/Fであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光が位相差板に斜め入射すると、位相差基板の通過に際して所望の位相差を基準として斜め入射角度の大きさが大きくなるに従って大きな位相差ずれを起こすが、位相差補償基板の通過に際して、上記とは逆の位相差(直交した方向の位相差)が大きくなるため、位相差ずれを極力相殺するよう作用する。従って、斜め入射する光であっても、所望の位相差より極力ずれることなく射出できる位相差板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、三次元表示装置の要部概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、位相差板の構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、(a)は位相差基板の一部平面図、(b)は位相差基板の一部斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、位相差補償基板の位相差特性を、屈折率異方性の関係として楕円体にモデル化した図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示し、三次元表示装置の要部概略構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示し、位相差板の構成図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示し、(a)は位相差基板の一部平面図、(b)は位相差基板の一部斜視図である。
【図8】位相差基板と位相差補償基板のマッチング条件を説明するもので、(a)は位相差基板の斜視図、(b)位相差補償基板の斜視図、(c)は位相差補償基板の屈折率異方性の関係を楕円体にモデル化した図である。
【図9】入射光の入射角に対する位相差基板と位相差補償基板の角位相差変化量を示す特性線図である。
【図10】本発明を三次元撮像装置に適用する場合の位相差基板の構成を示す図である。
【図11】本発明を三次元撮像装置に適用する場合の位相差基板の構成を示す図である。である。
【図12】従来例を示し、位相差板の全体平面図である。
【図13】従来例を示し、位相差板の一部拡大断面図である。
【図14】従来例を示し、位相差板の微細周期構造箇所の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1〜図4は、本発明に係る位相差板を三次元表示装置に適用した第1実施形態を示す。図1において、三次元表示装置1Aは、映像表示素子である液晶パネル2を有する。液晶パネル2には、右目用と左目用の各画素が例えば水平ライン毎に交互に配置されている。右目用の各画素からは右目映像の光が、左目用の画素からは左目映像の光がそれぞれ射出される。射出される各光は、振動方向が同じ向きの直線偏光である。
【0023】
位相差板3Aは、液晶パネル2の光射出側に配置されている。位相差板3Aは、図2に示すように、位相差基板4Aと位相差補償基板5Aからなり、双方の基板4A,5Aが液晶パネル2の射出光方向に互いに重なるように配置されている。位相差基板4Aは、図3(a)、(b)に詳しく示すように、ポリカーボネイト、又は、塩化ビニル、又は、ポリエステル、又は、ポリイミド、又は、ポリオレフィン、又は、アクリルの透明樹脂より形成されている。位相差基板4Aには、液晶パネル2の画素サイズに合わせた寸法の第1領域S1と第2領域S2が交互に連続して設けられている。第1領域S1には、入射光の1/2波長より短いピッチで、板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列された第1微細周期構造部10Aが設けられている。第2領域S2にも、入射光の1/2波長より短いピッチで、板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列された第2微細周期構造部10Bが設けられている。各板状溝部11は、位相差基板4Aの上面にのみ開口する溝であり、その内周面が閉じられた溝によって形成されている。これにより、各板状非溝部12は、周辺の非溝部13によって連結されている。
【0024】
第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bは、それぞれ板状溝部11と板状非溝部12の周期構造によって構造性複屈折を生じる。この構造性複屈折を利用して第1微細周期構造部10Aが例えば+λ/4位相差を発生させる領域に、第2微細周期構造部10Bが例えば−λ/4位相差を発生させる領域に設定されている。つまり、位相差基板4Aは、+λ/4領域と−λ/4領域が交互に配列された±1/4波長板として構成されている。微細周期構造にあって、通過する光の位相差を所望の波長に設定できる理由については、下記する。
【0025】
第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bでは、板状溝部11と板状非溝部12の配列方向が遅相軸となり、板状溝部11と板状非溝部12の配列方向の90度回転方向が進相軸となる。第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bでは、遅相軸及び進相軸の方向が入射光である直線偏光の振動方向に対しそれぞれ45度回転した方向に設定されている。その上、第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bでは、板状溝部11と板状非溝部12の配列方向が互いに90度回転した方向に設定され、遅相軸及び進相軸の方向が互いに90度回転した方向となっている。
【0026】
第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bの間には、溝が形成されていない非溝領域部S3が設けられている。
【0027】
位相差補償基板5Aは、図2に示すように、光透過性材料より形成されている。位相差補償基板5Aは、その全域が負のCプレート特性を有するように形成されている。つまり、位相差補償基板5Aの表面の面方向には屈折率異方性がなく、面方向の垂直方向に屈折率異方性を有し、面方向の屈折率に対して垂直方向の屈折率が小さい。
【0028】
位相差補償基板5Aの一面には、光吸収材料からなる遮光部6が設けられている。遮光部6は、位相差基板4Aの光入射側に密着されている。遮光部6は、位相差基板4Aの非溝領域部S3に対応するパターンであり、非溝領域部S3に対応する位置に配置されている。
【0029】
遮光部6の幅W1は、非溝領域部S3の幅をP2、非溝領域部S3の深さをt、光学系(レンズ)のF値をFとすると、W1=P2+(t/F)に設定されている。
【0030】
ここで、F=f(焦点距離)/φ(口径)であり、φ/2=f/2Fとなる。f→tとすると、φ/2=t/2Fとなり、φ=t/Fとなるためである。
【0031】
位相差補償基板5Aは、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、波長より十分に短い膜厚で屈折率に差のある誘電体膜を積層して構造性複屈折を利用したものより形成してある。例えば、水平配向の液晶ポリマーや、延伸フィルム等のAプレート材料を、同じ位相差を持つ状態で遅相軸を直交させて向き合わせたものである。
【0032】
次に、位相差基板4Aの各領域を所望の位相差に設定できる理由を説明する。
【0033】
板状溝部11及び板状非溝部12が延びる方向とこれに直交する方向で有効となる屈折率NTM、NTE は、板状溝部11の屈折率と周期構造より決定され、下記の式で求めることができる。ここで、TM,TEは直線偏光の振動方向に対して±45度の方向の成分を表す。板状溝部11の屈折率はN1であり、板状非溝部12の屈折率はN2である。板状溝部11は媒体が空気であるため、N1=1である。板状溝部11の幅はL、板状非溝部12の幅はS、第1及び第2微細周期構造部10A,10B(板状溝部11及び板状非溝部12)の深さはdである。フィリング係数fは、f=L/P(ピッチP=L+S)である。
【0034】
NTM={f・N22 +(1−f)}1/2
NTE=[N22 /{f +(1−f)N22}]1/2
上記式より射出光に与えられた位相差δは、δ=(NTM−NTE )×dで求められる。従って、位相差基板4Aの屈折率N2と微細周期構造部10A,10Bの深さdによって位相差δを制御でき、この第1実施形態では、+λ/4領域と−λ/4領域が交互に繰り返す±1/4波長板として構成されている。
【0035】
位相差補償基板5Aに、遮光部6のほかにアライメントパターン部を形成すれば、位相差基板4Aに正確な位置で固定できる。位相差補償基板5Aと位相差基板4Aは、板状溝部11及び板状非溝部12より外側位置を熱硬化性若しくは紫外線硬化性の接着剤等で固定する。
【0036】
図1に戻り、次に、三次元表示装置1Aの作用を説明する。液晶パネル2の右目画素では右目用映像が、液晶パネル2の左目画素では左目用映像がそれぞれ表示される。右目用映像の直線偏光の光は、位相差板3Aを通過する際に、偏光状態が変更されて例えば右円偏光になって射出される。左目用映像の直線偏光の光は、位相差板3Aを通過する際に、偏光状態が変更されて例えば左円偏光になって射出される。
【0037】
図1に示すように、右目レンズ側に右円偏光の光を透過する円偏光板15aを、左目レンズ側に左円偏光の光を透過する円偏光板15bをそれぞれ有する眼鏡15を掛けて見ると、右目には右目用映像のみが、左目には左目用映像のみが見える。これによって、視聴者は、三次元映像を見ることができる。
【0038】
次に、位相差板3Aの偏光作用を詳細に説明する。光が位相差板3Aに斜め入射すると、垂直方向に入射する光に較べて位相差基板4A内を通過する光路長が長くなり、光路長は斜め入射光の角度が大きくなるに従って長くなる。つまり、入射光が傾くほど発現していく位相差が大きくなっていく。
【0039】
一方、位相差補償板5Aは、負のCプレート特性を有する。屈折率異方性の関係として楕円体にモデル化すると、図4に示すようになる。図4に示すように、斜め入射光の角度が大きくなるに従って傾く方向には屈折率が小さくなり、その直角方向(傾かない方向)には屈折率の変化が無い。又、垂直方向の入射光に対して余分な位相差を与えない。
【0040】
また、位相差板3Aには、板状溝部11と板状非溝部12の配列方向が互いに異なる第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bが設けられているが、負のCプレート特性の位相差補償基板5Aは、面方向に屈折率異方性がないため、第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bの双方の位相差ずれを共に補償可能である。
【0041】
以上より、傾きのない垂直方向の入射光は、位相差基板4Aの通過に際して所望の位相差が与えられ、且つ、位相差補償基板5Aの通過に際して全く位相差が与えられないため、所望の位相差を持った光を射出する。傾きのある斜め入射光は、位相差基板4Aの通過に際して所望の位相差を基準として斜め入射角度の大きさが大きくなるに従って大きな位相差ずれを起こす。しかし、位相差補償基板5Aの通過に際し、上記とは逆の位相差(直交した方向の位相差)が大きくなるため、位相差ずれを極力相殺するよう作用する。従って、位相差板3Aに斜め入射する光であっても、所望の位相差より極力ずれることなく射出する。
【0042】
各微細周期構造部10A,10Bは、板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列され、且つ、板状溝部11はその内周面が閉じられた溝である。このように各板状溝部11はその内周面が閉じられた溝であり、これにより各板状非溝部12が周囲の非溝部13で互いに連結されているため、板状溝部11と板状非溝部12は強度的に強い構造となり、応力や外力によって変形したり壊れたりし難い。
【0043】
第1微細周期構造部10Aと第2微細周期構造部10Bの間には、溝が形成されていない非溝領域部S3が設けられている。従って、第1微細周期構造部10Aの板状溝部11と第2微細周期構造部10Bの板状溝部11の間隔が広くなるため、位相差基板4Aの強度が向上する。
【0044】
第1及び第2微細周期構造部10A,10Bは、各入射光の位相が1/4波長分ずれてそれぞれ射出されるよう構成されている。従って、同じ振動方向の直線偏光が入射光である場合に、それぞれ回転方向が異なる円偏光を射出できる。
【0045】
第1及び第2微細周期構造部10A,10Bは、入射光である直線偏光の振動方向に対しそれぞれ45度回転した方向に設定されている。従って、入射光に対して最も高い効率で位相差を生じさせることができる。
【0046】
位相差補償基板5Aは、位相差基板4Aの入射側で、且つ、非溝領域部S3に対応する位置に、光吸収材料からなる遮光部6を有する。従って、非溝領域部S3に垂直方向で入射する光を確実に遮蔽できる。その上、この実施形態では、遮光部6の幅W1は、非溝領域部S3の幅をP2、非溝領域部S3の深さをt、光学系(レンズ)のF値をFとすると、W1=P2+(t/F)に設定されている。従って、図2に示すように、斜め入射光で、第1微細周期構造部10A又は第2微細周期構造部10Bから非溝領域部S3に跨って入り込む光を阻止できるため、所望の位相差を与えられず、漏れ光となる不要な光を確実に遮蔽できる。
【0047】
(第2実施形態)
図5〜図7は、本発明に係る位相差板を三次元表示装置に適用した第2実施形態を示す。図5において、三次元表示装置1Bは、映像表示素子である液晶パネル2を有する。液晶パネル2には、右目用と左目用の各画素が例えば水平ライン毎に交互に配置されている。右目用の各画素からは右目映像の光が、左目用の画素からは左目映像の光がそれぞれ射出される。射出される各光は、振動方向が同じ向きの直線偏光である。
【0048】
位相差板3Bは、液晶パネル2の光射出側に配置されている。位相差板3Bは、図6に示すように、位相差基板4Bと位相差補償基板5Bからなり、双方の基板4B,5Bが液晶パネル2の射出光方向に互いに重なるように配置されている。
【0049】
位相差基板4Bは、図7(a)、(b)に詳しく示すように、ポリカーボネイト、塩化ビニル、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、アクリル等の透明樹脂より形成されている。位相差基板4Bには、液晶パネル2の画素サイズに合わせた寸法の第1領域S1と第2領域S2が交互に連続して設けられている。第1領域S1には、入射光の1/2波長より短いピッチで、板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列された微細周期構造部14が設けられている。第2領域S2には、前記第1実施形態と異なり、何ら板状溝部が設けられていない。
【0050】
微細周期構造部14は、板状溝部11と板状非溝部12の周期構造によって、構造性複屈折を生じる。第2領域S2は、構造性複屈折を生じない。位相差基板4Bは、構造性複屈折を利用してλ/2領域と0領域が交互に配列されたλ/2位相差基板として構成されている。
【0051】
微細周期構造部14の各板状溝部11は、位相差基板4Bの上面にのみ開口する溝であり、その内周面が閉じられた溝として形成されている。これにより、各板状非溝部12は、周辺の非溝部13によって連結されている。
【0052】
微細周期構造部14では、板状溝部11と板状非溝部12の配列方向が遅相軸となり、配列方向の90度回転方向が進相軸となる。微細周期構造部14では、遅相軸及び進相軸の方向が射出光である直線偏光の振動方向に対しそれぞれ45度回転した方向に設定されている。
【0053】
位相差補償基板5Bは、図6に示すように、光透過性材料より形成されている。位相差補償基板5Bは、微細周期構造部14が設けられた第1領域S1に対応する領域が負のCプレート特性を有する複屈折部5aに、微細周期構造部14が設けられない第2領域S2に対応する領域が非複屈折部5bに形成されている。つまり、第2領域S2は、何ら複屈折特性を発現しない領域である。
【0054】
位相差補償基板5の一面には、光吸収材料からなる遮光部6が設けられている。遮光部6は、位相差基板4Bの光入射側の面に密着されている。遮光部6は、第1領域S1と第2領域S2の境界位置に対応するパターンであり、その境界位置に対応する位置に配置されている。遮光部6の幅はW2、微細周期構造部14(板状溝部11及び板状非溝部12)の深さをt、光学系の焦点距離をFとすると、W2=(t/F)に設定されている。
【0055】
次に、三次元表示装置1Bの動作を説明する。液晶パネル2の各右目画素では右目用映像が、液晶パネル2の各左目画素では左目用映像がそれぞれ表示される。右目用映像の直線偏光の光と左目用映像の直線偏光の光は、位相差板3Bを通過する際に、いずれか一方が90度回転され、互いに90度回転した直線偏光となって射出される。
【0056】
右目レンズ側に一方の直線偏光の光を透過する偏光板16aを、左目レンズ側に他方の直線偏光の光を透過する偏光板16bをそれぞれ有する眼鏡16を掛けて見ると、右目には右目用映像のみが、左目には左目用映像のみが見える。これによって、視聴者は、三次元映像を見ることができる。
【0057】
次に、位相差板3Bの偏光作用を詳細に説明する。位相差基板4Bの微細周期構造部14が設けられていない第2領域と位相差補償基板5Bの非複屈折部5bを通過する光は、位相差が与えられない状態で射出する。一方、位相差基板4Bの微細周期構造部14(第1領域S1)と位相差補償基板5Bの複屈折部5aを通過する光は、前記第1実施形態で説明したのと同様の作用によって位相差を与えられる。従って、位相差板3Bに斜め入射する光であっても、所望の位相差より極力ずれることなく射出する。
【0058】
微細周期構造部14は、板状溝部11と板状非溝部12が交互に連続して配列され、且つ、板状溝部11はその内周面が閉じられた溝によって形成されている。このように各板状溝部11はその内周面が閉じられた溝であり、これにより各板状非溝部12が周囲の非溝部13で互いに連結されているため、板状溝部11と板状非溝部12は強度的に強い構造となり、応力や外力によって変形したり壊れたりし難い。
【0059】
微細周期構造部14は、入射光の位相が1/2波長分ずれてそれぞれ射出されるよう構成されている。従って、同じ振動方向の直線偏光が入射光である場合に、90度回転した直線偏光として射出できる。
【0060】
微細周期構造部14は、入射光である直線偏光の振動方向に対しそれぞれ45度回転した方向に設定されている。従って、入射光に対して最も高い効率で位相差を生じさせることができる。
【0061】
位相差補償基板5Bは、位相差基板4Bの入射面側で、且つ、微細周期構造部14と微細周期構造が形成されていない第2領域S2との境界位置には、光吸収材料からなる遮光部6が配置されているので、斜め入射して微細周期構造部14と微細周期構造でない第2領域S2を跨って通過する光を遮蔽できる。特に、この実施形態では、遮光部6の幅W2は、微細周期構造部14(板状溝部11及び板状非溝部12)の深さをt、光学系(レンズ)のF値をFとすると、t/Fに設定されている。従って、図6に示すように、斜め入射光で、微細周期構造部14と微細周期構造が形成されていない第2領域S2とを跨って通過する光を確実に阻止できるため、所望の位相差を与えられず、漏れ光となる不要な光を確実に遮蔽できる。
【0062】
(位相差基板と位相差補償基板のマッチング条件)
次に、第1実施形態の位相差板3Aを例として、位相差基板4Aと位相差補償基板5Aの位相差のマッチング条件を説明する。
【0063】
先ず、斜め入射光における位相差基板4Aの位相差変化量δ1を求める。図8(a)において、位相差基板4Aの表面の面方向の互いに直交する屈折率をN1、N2(N2<N1)とすると、屈折率差ΔNaは、
ΔNa=N1−N2である。
【0064】
位相差基板4Aの微細周期構造部10A,10Bの深さをd1、入射光の傾斜角をθとすると、位相差基板4Aの位相差変化量δ1は、
δ1=ΔNa・d1(1−1/cosθ)である。
【0065】
ここで、入射光の傾斜角θが変わっても、屈折率差ΔNaは変化しない。フィリング係数fは、ライン幅L、ピッチPにて屈折率が変化するが、傾斜角θが変わってもライン幅L、ピッチP共に1/cosθだけ変化するだけなので、キャンセルしてフィリング係数fは変化しない。
【0066】
従って、位相差基板4Aの位相差変化量δ1は、光路長のみによって変化する。
【0067】
次に、斜め入射光における位相差補償基板5Aの位相差変化量δ2を求める。図8(b)において、位相差補償基板5Aの表面の面方向の屈折率をN3、面方向に直交する方向の屈折率をN4(N4<N3)、入射光の傾斜角をθとすると、屈折率差ΔNbは、楕円の座標(図8(c)参照)より
ΔNb={(N3・cosθ)2+(N4・cosθ)2}1/2である。
【0068】
位相差補償基板5Aの深さ(板厚)をd2とすると、位相差補償基板5Aの位相差変化量δ2は、
δ2=ΔNb・d2/cosθである。
【0069】
ここで、入射光の傾斜角θが変わると屈折率差ΔNbが変化し、又、光路長も変化する。従って、位相差補償基板5Aの位相差変化量δ2は、屈折率差ΔNbと光路長によって変化する。以上より、位相差補償基板5の屈折率差ΔNbと深さ(板厚)d2を調整することによりマッチング可能となる。
【0070】
例えば、位相差基板4Aと位相差補償基板5Aの各値を下記の表1とすると、入射角の傾斜角θに対する位相差変化量δ1、δ2が下記の表2のようになる。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
入射光の傾斜角θに対するそれぞれの位相差変化量δ1、δ2は、図9に示すような特性線図となり、位相差板3Aに斜め入射する光であっても、ほぼ所望の位相差(±λ/4)で射出させることができる。
【0074】
(変形例等)
前記各実施形態では、位相差補償基板5A,5Bは、位相差基板4A,4Bの入射面側に配置したが、射出面側に配置しても良い。
【0075】
前記第1実施形態では、位相差基板4A,4Bには、共に微細周期構造による+λ/4領域と−λ/4領域を交互に構成したが、これに限定されず微細周期構造によって種々の波長差領域を構成可能である。
【0076】
前記第1実施形態では、位相差補償基板5Aは、全域が負のCプレート特性を有する複屈折構造に形成されているが、第1領域S1の第1微細周期構造部10Aと第2領域S2の第2微細周期構造部10Bの双方に対応する領域について、少なくとも負のCプレート特性を有する複屈折構造に形成すれば良い。
【0077】
前記第2実施形態では、位相差基板4Bには、微細周期構造によるλ/2領域と位相差なしの0領域を交互に構成したが、これに限定されず微細周期構造によって種々の波長差領域を構成可能である。
【0078】
また、前記各実施形態では、本発明の三次元表示装置への適用について述べたが、三次元撮像装置への適用も可能である。位相差基板4A,4Bは、図10に示すように+λ/4と−λ/4の領域S1,S2を交互に繰り返す構成や、図11に示すようにλ/2と0の領域を交互に繰り返す構成のものを使用する。位相差補償基板は、±λ/4の全領域に対して、負のCプレート特性を有するものや、λ/2の領域で負のCプレート特性を有し、0の領域で何ら複屈折特性を有しないものを使用する。すなわち、偏光状態と入射出の関係が三次元表示装置と逆になれば良い。
【0079】
例えば、左右の目に対応した映像光それぞれが、図10のような回転方向が異なる円偏光か、図11のようなお互いの軸が90度回転した直線偏光として位相差基板4A,4Bに入射する。その光が位相差基板4A,4Bの左右の目それぞれに対応した領域を透過することで、領域S1,S2毎に軸の向きが異なる直線偏光として射出される。その後偏光板を透過することで、ある領域では左目用の映像の直線偏光のみが、別の領域では右目用の映像の直線偏光のみが射出される。そして、位相差板に斜め入射する光であっても、位相差補償基板の補償機能によって所望の位相差より極力ずれることなく射出される。
【符号の説明】
【0080】
2 液晶パネル(表示素子)
3A,3B 位相差板
4A,4B 位相差基板
5A,5B 位相差補償基板
5a 複屈折部
5b 非複屈折部
6 遮光部
10A 第1微細周期構造部
10B 第2微細周期構造部
11 板状溝部
12 板状非溝部
14 微細周期構造部
S1 第1領域
S2 第2領域
S3 非溝領域部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性で、交互に配置された第1領域及び第2領域と、前記第1領域と前記第2領域の少なくとも一方に、入射光の1/2波長より短いピッチで板状溝部と板状非溝部が交互に連続して配列された微細周期構造部とを有する位相差基板と、
前記位相差基板の光入射側と光射出側のいずれかの面に配置され、負のCプレート特性を有する位相差補償基板とを備えたことを特徴とする位相差板。
【請求項2】
請求項1に記載の位相差板であって、
前記微細周期構造部は、前記第1領域と前記第2領域に共に設けられ、前記第1領域の前記微細周期構造部と前記第2領域の前記微細周期構造部とは、互いに配列方向が90度回転した方向に設定され、
前記第1領域の前記微細周期構造部と前記第2領域の前記微細周期構造部の間には、溝が形成されていない非溝領域部が設けられたことを特徴とする位相差板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の位相差板であって、
前記位相差補償基板は、第1領域の前記微細周期構造部と前記第2領域の前記微細周期構造部の双方に対応する領域が少なくとも負のCプレート特性を有するよう形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の位相差板であって、
前記各微細周期構造部は、各入射光の位相が1/4波長分ずれてそれぞれ射出されるよう構成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の位相差板であって、
前記位相差補償基板は、前記非溝領域部に少なくとも対応する位置に、光吸収材料からなる遮光部を有することを特徴とする位相差板。
【請求項6】
請求項5に記載の位相差板であって、
前記遮光部の幅は、前記非溝領域部の幅をP2、前記非溝領域部の深さをt、光学系のF値をFとすると、P2+(t/F)であることを特徴とする位相差板。
【請求項7】
請求項1に記載の位相差板であって、
前記微細周期構造部は、前記第1領域と前記第2領域のいずれか一方にのみ設けられ、
前記微細周期構造部が設けられた領域では、入射光の位相が1/2波長分ずれて射出されるよう構成され、前記微細周期構造部が設けられない領域では、入射光の位相がずれずに射出されることを特徴とする位相差板。
【請求項8】
請求項7に記載の位相差板であって、
前記位相差補償基板は、前記微細周期構造部が設けられた領域に対応する領域が負のCプレート特性を有する複屈折部に、前記微細周期構造部が設けられない領域に対応する領域が非複屈折部に形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項9】
請求項7又は求項8に記載の位相差板であって、
前記位相差補償基板は、前記第1領域と前記第2領域の境界箇所に対応する位置に、光吸収材料からなる遮光部を有することを特徴とする位相差板。
【請求項10】
請求項9に記載の位相差板であって、
前記遮光部の幅は、前記板状溝部の深さをt、光学系のF値をFとすると、t/Fであることを特徴とする位相差板。
【請求項1】
光透過性で、交互に配置された第1領域及び第2領域と、前記第1領域と前記第2領域の少なくとも一方に、入射光の1/2波長より短いピッチで板状溝部と板状非溝部が交互に連続して配列された微細周期構造部とを有する位相差基板と、
前記位相差基板の光入射側と光射出側のいずれかの面に配置され、負のCプレート特性を有する位相差補償基板とを備えたことを特徴とする位相差板。
【請求項2】
請求項1に記載の位相差板であって、
前記微細周期構造部は、前記第1領域と前記第2領域に共に設けられ、前記第1領域の前記微細周期構造部と前記第2領域の前記微細周期構造部とは、互いに配列方向が90度回転した方向に設定され、
前記第1領域の前記微細周期構造部と前記第2領域の前記微細周期構造部の間には、溝が形成されていない非溝領域部が設けられたことを特徴とする位相差板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の位相差板であって、
前記位相差補償基板は、第1領域の前記微細周期構造部と前記第2領域の前記微細周期構造部の双方に対応する領域が少なくとも負のCプレート特性を有するよう形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の位相差板であって、
前記各微細周期構造部は、各入射光の位相が1/4波長分ずれてそれぞれ射出されるよう構成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の位相差板であって、
前記位相差補償基板は、前記非溝領域部に少なくとも対応する位置に、光吸収材料からなる遮光部を有することを特徴とする位相差板。
【請求項6】
請求項5に記載の位相差板であって、
前記遮光部の幅は、前記非溝領域部の幅をP2、前記非溝領域部の深さをt、光学系のF値をFとすると、P2+(t/F)であることを特徴とする位相差板。
【請求項7】
請求項1に記載の位相差板であって、
前記微細周期構造部は、前記第1領域と前記第2領域のいずれか一方にのみ設けられ、
前記微細周期構造部が設けられた領域では、入射光の位相が1/2波長分ずれて射出されるよう構成され、前記微細周期構造部が設けられない領域では、入射光の位相がずれずに射出されることを特徴とする位相差板。
【請求項8】
請求項7に記載の位相差板であって、
前記位相差補償基板は、前記微細周期構造部が設けられた領域に対応する領域が負のCプレート特性を有する複屈折部に、前記微細周期構造部が設けられない領域に対応する領域が非複屈折部に形成されたことを特徴とする位相差板。
【請求項9】
請求項7又は求項8に記載の位相差板であって、
前記位相差補償基板は、前記第1領域と前記第2領域の境界箇所に対応する位置に、光吸収材料からなる遮光部を有することを特徴とする位相差板。
【請求項10】
請求項9に記載の位相差板であって、
前記遮光部の幅は、前記板状溝部の深さをt、光学系のF値をFとすると、t/Fであることを特徴とする位相差板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−98657(P2012−98657A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248320(P2010−248320)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
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