説明

位置推定装置、位置推定方法、プログラムおよび位置推定システム

【課題】屋内にいる利用者の位置推定を精度よくかつ低コストで実現することを可能にする。
【解決手段】位置推定装置は、位置情報と音特性との対応関係を記憶する記憶部110と、集音器による集音結果から判定される音特性に対応する位置情報を前記記憶部から抽出する抽出部150と、固定電話端末に対して区画に設置された機器が発する区画識別音を制御する音制御部120と、利用者端末と通信を行う通信部130と、利用者端末の集音器による集音結果から区画識別音の音特性を判定する判定部140と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定装置、位置推定方法、プログラムおよび位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近日、利用者の位置を推定するための位置推定技術が広く普及している。例えば、GPS(Global Positioning System)によれば、利用者端末が複数の衛星から衛星信号を受信し、受信した衛星信号に基づいて現在位置を推定することが可能である。一方、屋内や地下などの衛星信号が届かない環境ではGPSを用いた位置推定を行うことが困難である。このため、このような環境でも位置推定を実現するための様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、利用者により保持される携帯端末が個別の識別アドレスを含む無線信号を送信し、屋内の天井に取付けられた複数の受信機が当該無線信号を受信することにより、携帯端末の位置を認識する方法が開示されている。また、下記特許文献2では、超音波を発する専用装置を用いた測位により、下記特許文献1に記載の方法よりも精度の高い位置推定を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−28388号公報
【特許文献2】特開2009−109381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の方法では、どのように拡散するか予測困難な電波を使用するので位置測定の精度が低くなり得る。また、受信機は通常少なくとも数メートル以上離れるので、隣接する会議室のうちのいずれに携帯端末があるか判定することは難しい。また、会議室毎に受信機が設置されたとしても、電波が壁を通過するので位置の誤認が生じると考えられる。一方、上記特許文献2の方法では、特殊な専用装置を導入するためのコストが発生してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、屋内にいる利用者の位置推定を精度よくかつ低コストで実現することを可能にする、新規かつ改良された位置推定装置、位置推定方法、プログラムおよび位置推定システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、位置情報と音特性との対応関係を記憶する記憶部と、集音器による集音結果から判定される音特性に対応する位置情報を上記記憶部から抽出する抽出部と、を備える、位置推定装置が提供される。
【0008】
上記位置情報は、建造物の一区画を示す情報であり、上記音特性は、上記一区画に設置された機器が発する区画識別音の特性であってもよい。
【0009】
上記位置推定装置は、上記機器による上記区画識別音の発生を制御する音制御部をさらに備えてもよい。
【0010】
上記音制御部は、上記機器を含む複数の機器で共通する第1の共通音、および上記第1の共通音に続く上記区画識別音の上記機器による発生を制御してもよい。
【0011】
上記音制御部は、さらに、上記区画識別音に続く上記複数の機器で共通する第2の共通音の上記機器による発生を制御してもよい。
【0012】
上記音制御部は、上記集音器を備える装置への通知後に、上記区画識別音を上記機器に発せさせてもよい。
【0013】
上記位置推定装置は、上記集音器と、上記機器を含む複数の機器で共通する第1の共通音が検出された後の上記集音器による集音結果から、上記区画識別音の音特性を判定する判定部と、をさらに備えてもよい。
【0014】
上記判定部は、上記第1の共通音が検出された後であって、上記複数の機器で共通する第2の共通音が検出される前の上記集音器による集音結果から、上記区画識別音の音特性を判定してもよい。
【0015】
上記位置推定装置は、集音器と、通知信号を受信する通信部と、上記通信部により上記通知信号が受信された後に上記集音器に集音を開始させる集音制御部と、を備えてもよい。
【0016】
上記位置推定装置は、集音器と、上記集音器に間欠的に集音を行わせる集音器制御部と、を備えてもよい。
【0017】
上記区画識別音の音特性は、上記区画識別音の音パターン、上記区画識別音の発生時刻、または上記区画識別音の発生継続時間のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0018】
上記位置情報は、建造物の一区画を示す情報であり、上記音特性は、上記一区画における環境音の特性であってもよい。
【0019】
また、本発明によれば、位置情報と音特性との対応関係を記憶する記憶部を備える装置において、集音器による集音結果から判定される音特性に対応する位置情報を上記記憶部から抽出することを含む、位置推定方法が提供される。
【0020】
また、本発明によれば、位置情報と音特性との対応関係を記憶する記憶部を備える装置を制御するコンピュータに、集音器による集音結果から判定される音特性に対応する位置情報を上記記憶部から抽出する抽出部として機能させるためのプログラムが提供される。
【0021】
また、本発明によれば、利用者端末および位置推定装置を含む位置推定システムであって、上記利用者端末は、集音器を備え、上記位置推定システムは、位置情報と音特性との対応関係を記憶する記憶部と、上記集音器による集音結果から判定される音特性に対応する位置情報を上記記憶部から抽出する抽出部とを備える、位置推定システムが提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明に係る位置推定装置、位置推定方法、プログラムおよび位置推定システムによれば、屋内にいる利用者の位置推定を精度よくかつ低コストで実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る位置推定システムの概略的な構成の一例を示す説明図である。
【図2】第1の実施形態に係る構内交換機(PBX)の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】記憶部により記憶される対応関係テーブルの一例を説明するための説明図である。
【図4】記憶部により記憶される判定結果テーブルの一例を説明するための説明図である。
【図5】記憶部により記憶される現在位置テーブルの一例を説明するための説明図である。
【図6】音制御部による音の発生の制御を説明するための説明図である。
【図7】通知信号による集音の制御を説明するための説明図である。
【図8】第1の実施形態に係る利用者端末の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】集音器による間欠的な集音を説明するための説明図である。
【図10】第1の実施形態に係る位置推定処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【図11】第1の実施形態の変形例に係る位置推定処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態に係る構内交換機(PBX)の構成の一例を示すブロック図である。
【図13】記憶部により記憶される対応関係テーブルの一例を説明するための説明図である。
【図14】記憶部により記憶される判定結果テーブルの一例を説明するための説明図である。
【図15】第2の実施形態に係る利用者端末の構成の一例を示すブロック図である。
【図16】第2の実施形態に係る位置推定処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付の図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
また、以下では、[1.位置推定システムの概略的な構成]、[2.第1の実施形態]、[3.第2の実施形態]という順序で本発明の実施形態を説明する。
【0026】
[1.位置推定システムの概略的な構成]
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る位置推定システム1の概略的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係る位置推定システム1の概略的な構成の一例を示す説明図である。図1を参照すると、位置推定システム1は、固定電話端末20、構内交換機100(以下、「PBX(Private Branch eXchange)100」と呼ぶ)および利用者端末200を含む。
【0027】
固定電話端末20は、建造物の一区画10に設置された電話端末である。図1に示されるように、区画10は、一例として建造物の部屋である。固定電話端末20は、例えば、PBX100による制御に応じて、着呼時の呼出音等の音を発生する機能を有する。また、固定電話端末20は、ハンズフリー対応機種である場合には、集音機能も有する。
【0028】
PBX100は、建造物に設置された全部または一部の固定電話端末20と接続された交換機である。このPBX100は、例えば、固定電話端末20に、着呼時の呼出音等の音を発生させる機能を有する。当該音は、PBX100により設定可能であってもよい。また、PBX100は、固定電話端末20からのデータまたは固定電話端末20へのデータの受信および転送を行う機能も有する。
【0029】
利用者端末200は、利用者30により携行される端末である。この利用者端末200は、例えば、集音機能や音を発生する機能を有する。また、利用者端末200は、各種無線LAN(Local Area Network)、WCDMA、またはWiMAXのような無線通信機能を有してもよい。この場合、利用者端末200は、無線通信機能を利用して例えばPBXと各種データを通信することが可能である。
【0030】
上述したPBX100および利用者端末200などを有する位置推定システム1は、音を利用して利用者端末200の位置を推定することが可能である。例えば、以下に説明する本発明の第1の実施形態によれば、利用者端末200により集音された音に基づいて利用者端末200が位置する区画を推定することができる。また、本発明の第2の実施形態によれば、固定電話端末20により集音された音に基づいて利用者端末200が位置する区画を推定することができる。このような各実施形態については[2.第1の実施形態]および[3.第2の実施形態]において詳細に説明する。
【0031】
以上、図1を参照して本発明の実施形態に係る位置推定システム1の構成の一例を説明したが、位置推定システム1の構成は上述した例に限られない。
【0032】
まず、PBX100は、PBX以外のサーバを含む任意の情報処理装置であってもよい。
【0033】
また、利用者端末200は、スマートフォンに限られず、別の端末であってもよい。例えば、スマートフォン以外の携帯電話端末、携帯情報端末(Personal Digital Assistant)、電子書籍端末、携帯ゲーム機器、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラを含む、利用者30により携行され得る他の端末であってもよい。
【0034】
また、上記では建造物の一例として会議室のような部屋を有する建物を説明したが、建造物はかかる例に限定されない。例えば、建造物は、地下鉄の駅の構内、アトラクション施設、新幹線、船舶などであってもよい。なお、建造物がアトラクション施設である場合、アトラクション施設の区画としてはお化け屋敷、カフェテリア、VVVエリアなどが想定される。また、建造物が新幹線である場合、新幹線の区画としては新幹線の各車両が想定される。
【0035】
[2.第1の実施形態]
以上、位置推定システム1の概略的な構成を説明した。続いて、本発明の第1の実施形態を説明する。本発明の第1の実施形態によれば、固定電話端末20−1から発せられた音の利用者端末200−1による集音結果に基づいて利用者端末200−1が位置する区画10を推定することが可能である。
【0036】
なお、第1の実施形態は、[2−1.構内交換機(PBX)の構成]、[2−2.利用者端末の構成]、[2−3.処理の流れ]、[2−4.変形例]という順序で説明される。なお、[2−1.構内交換機(PBX)の構成]、[2−2.利用者端末の構成]および[2−3.処理の流れ]では、PBX100−1が位置推定装置である例について説明され、[2−4.変形例]では、利用者端末200−1が位置推定装置である変形例について説明される。
【0037】
[2−1.構内交換機(PBX)の構成]
まず、図2〜図7を参照して、第1の実施形態に係るPBX100−1の構成の一例について説明する。図2は、第1の実施形態に係るPBX100−1の構成の一例を示すブロック図である。図2を参照すると、PBX100−1は、記憶部110、音制御部120、通信部130、判定部140および抽出部150を備える。
【0038】
(記憶部110)
記憶部110は、PBX100−1において一時的にまたは恒久的に保持すべき情報を記憶する。特に本実施形態では、記憶部110は、位置情報と音特性との対応関係を記憶する。ここで、上記位置情報は、例えば、建造物の一区画10を示す情報である。また、上記音特性は、例えば、当該区画10に設置された固定電話端末20−1が発する区画識別音(すなわち区画を識別するための音)の特性である。以降では、区画識別音の音特性が区画識別音の音パターンである例を説明する。すなわち、各固定電話端末20−1が互いに異なる音パターンの音を発することで区画の識別が可能となる例を説明する。音パターンは、一例として、音の種類、音高、テンポ、周波数であってもよい。
【0039】
図3は、記憶部110により記憶される対応関係テーブル111の一例を説明するための説明図である。図3を参照すると、対応関係テーブル111には、位置情報および音パターン情報が対応して記憶される。ここで、位置情報は、区画10を示す情報である。また、音パターン情報は、区画識別音の音パターンを示す情報である。当該対応関係テーブル111によれば、どの区画10とどの音パターンとが対応しているかが分かる。例えば、区画10である101会議室に音パターンAが対応することが分かる。なお、記憶部110は、音パターンの判定のために、音パターンのサンプル音データを別途記憶してもよい。
【0040】
また、記憶部110は、例えば、後述の判定部140による、集音結果からの音特性の判定結果を記憶する。図4は、記憶部110により記憶される判定結果テーブル113の一例を説明するための説明図である。図4を参照すると、判定結果テーブル113には、履歴番号、集音時刻、利用者端末情報および音パターン情報が対応して記憶される。ここで、履歴番号は、判定結果の履歴を識別するための情報である。また、集音時刻は、判定対象となる集音結果についての集音の時刻である。また、利用者端末情報は、判定対象となる集音結果についての集音を行った利用者端末200−1を示す情報である。また、音パターン情報は、判定部140により判定された区画識別音の音パターンを示す情報である。当該判定結果テーブル113によれば、各利用者端末200−1により各時刻において集音された区画識別音の音パターンが分かる。例えば、判定結果テーブル113の履歴番号151から、利用者端末bにより2011年8月10日13:00に集音された区画識別音の音パターンは音パターンCである、ということが分かる。
【0041】
また、記憶部110は、例えば、後述の抽出部150による位置情報の最新の抽出結果を、利用者端末200−1に対応する現在の位置情報として記憶する。図5は、記憶部110により記憶される現在位置テーブル115の一例を説明するための説明図である。図5を参照すると、現在位置テーブル115には、利用者端末情報、位置情報および集音時刻が対応して記憶される。ここで、利用者端末情報は、位置情報の抽出対象となる利用者端末200−1を示す情報である。また、位置情報は、抽出部150により抽出された最新の位置情報である。また、集音時刻は、利用者端末200−1による最近の集音の時刻である。当該現在位置テーブル115によれば、最近の集音時刻において利用者端末200−1がどの区画10にあったかが分かる。例えば、2011年8月10日13:00に利用者端末aが101会議室にあったということが分かる。また、同時刻において利用者端末dはいずれの区画10にもなかったということが分かる。
【0042】
(音制御部120)
音制御部120は、固定電話端末20−1による区画識別音の発生を制御する。音制御部120は、例えば、音発生を指示する信号を固定電話端末20−1に送信する。そして、固定電話端末20−1は、当該信号に応じて区画識別音を発する。音制御部120は、例えば、予め定められた時間間隔で、接続される全ての固定電話端末20−1に同じタイミングで上記信号を送信する。なお、音制御部120は、固定電話端末20−1毎に異なるタイミングで上記信号を送信してもよい。また、音制御部120は、要求に応じて上記信号を送信してもよい。このような区画識別音の発生の制御により、所望の頻度およびタイミングで区画識別音を発生させることができる。その結果、所望の頻度およびタイミングで利用者端末200−1の位置を推定することが可能となる。
【0043】
また、音制御部120は、例えば、複数の固定電話端末20−1で共通する第1の共通音(以下、「開始案内音」と呼ぶ)および開始案内音に続く区画識別音の固定電話端末20−1による発生を制御する。さらに、音制御部120は、例えば、上記区画識別音に続く複数の固定電話端末20−1で共通する第2の共通音(以下、「終了案内音」と呼ぶ)の固定電話端末20−1による発生を制御する。以下、この点について図6を参照してより具体的に説明する。
【0044】
図6は、音制御部120による音の発生の制御を説明するための説明図である。図6を参照すると、利用者端末200−1は、継続して周囲の音を集音している。そして、音制御部120が、音発生を指示する信号を固定電話端末20−1に送信すると、固定電話端末20−1は、まず開始案内音を発する。すると、利用者端末200−1は、開始案内音の検出に基づいて、集音された音の録音を開始する。そして、固定電話端末20−1は、区画識別音を発する。その後、固定電話端末20−1は、終了案内音を発する。すると、利用者端末200−1は、終了案内音の検出に基づいて、集音された音の録音を終了する。
【0045】
上記開始案内音によれば、利用者端末200−1は区画識別音の発生のタイミングを知ることができる。そのため、利用者端末200−1は、区画識別音の発生直前から録音を開始することができるので、集音された音を常に録音する必要がなくなる。その結果、利用者端末200−1の消費電力および記憶領域を節約することができる。一方、上記終了案内音によれば、区画識別音の発生継続時間が一定でない場合であっても、利用者端末200−1は区画識別音の終了のタイミングを知ることができる。そのため、利用者端末200−1は、区間識別音の発生直後に録音を終了することができるので、集音された音を必要以上に録音し続けることを回避することができる。その結果、利用者端末200−1の消費電力および記憶領域を節約することができる。なお、固定電話端末20−1による終了案内音の発生の代わりに、区画識別音の発生継続時間が一定であってもよい。利用者端末200−1は、一定である当該区画識別音の発生継続時間を知っていれば、区間識別音の発生直後に録音を終了することができる。
【0046】
なお、音制御部120は、開始案内音の発生を制御する代わりに、利用者端末200−1への通知後に、区画識別音を固定電話端末20−1に発せさせてもよい。例えば、固定電話端末20−1は、利用者端末200−1によりサポートされる無線通信方式をサポートし、音制御部120は、固定電話端末20−1に通知信号を送信させる。当該通知信号により、例えば、区画識別音の開始時刻および終了時刻が通知される。以下、この点について図7を参照してより具体的に説明する。
【0047】
図7は、通知信号による集音の制御を説明するための説明図である。図7を参照すると、音制御部120が通知信号の送信を指示する信号を固定電話端末20−1に送信すると、固定電話端末20−1は通知信号を送信する。すると、当該固定電話端末20−1の近傍に位置する利用者端末200−1は、当該通知信号を受信し、区画識別音の開始時刻t7および終了時刻t8を知る。そして、固定電話端末20−1は、開始時刻t7から終了時刻t8まで区画識別音を発し、利用者端末200−1は、t7で集音および録音を開始し、t8で集音および録音を終了する。
【0048】
上記通知によれば、利用者端末200−1はいつから区画識別音の開始時刻および終了時刻を知ることができる。そのため、利用者端末200−1は、区画識別音の発生直前から集音を開始することができるので、常に集音を行う必要がなくなる。そのため、利用者端末200−1の消費電力を大幅に節約することができる。なお、通知信号のデータ量を極力減らすために、区画識別音の開始時刻までは通知せず、開始することを通知する通知信号が、送信されてもよい。当該通知信号に加えて、区画識別音を終了したことを通知する通知信号が送信されてもよい。また、通知信号は、固定電話端末20−1から送信されずに、PBX100−1から直接的に送信されてもよい。すなわち、音制御部120は、後述の通信部130およびネットワークを介して利用者端末200−1に通知信号を送信してもよい。このような通知信号の送信により、固定電話端末20−1がいずれかの無線通信方式をサポートしていなくても、区画識別音の開始時刻および終了時刻を利用者端末200−1に通知することが可能となる。
【0049】
以上、音制御部120による区画識別音の発生の制御について説明したが、固定電話端末20−1が開始案内音を発する代わりに、利用者端末200−1が開始案内音を発してもよい。この場合に、固定電話端末20−1が、当該開始案内音を集音する。そして、音制御部120は、当該開始案内音の集音後に、固定電話端末20−1に区画識別音を発っしてもよい。同様に、利用者端末200−1が上記通知信号を送信してもよい。また、固定電話端末20が自動的に区画識別音を発生する場合に、音制御部120による区画識別音の発生の制御が行われなくてもよい。また、固定電話端末20−1による区画識別音の代わりに、区画10における環境音が用いられる場合にも、音制御部120による区画識別音の発生の制御が行われなくてもよい。
【0050】
(通信部130)
通信部130は、利用者端末200−1の集音器による集音結果を受信する。通信部130は、例えば、利用者端末200−1の集音器により集音された音の録音データを受信する。当該録音データには、例えば、集音時刻情報も付加されている。なお、後述の判定部140が利用者端末200−1側に備えられる場合には、通信部130は、録音データの代わりに判定結果を受信してもよい。また、上記のように、区画識別音についての通知信号がPBX100−1から利用者端末200−1に直接的に送信される場合には、通信部130は、当該通知信号を利用者端末200−1に送信してもよい。
【0051】
(判定部140)
判定部140は、利用者端末200−1の集音器による集音結果から、区画識別音の音特性を判定する。判定部140は、例えば、通信部130により受信された録音データと、各音パターンのサンプル音データとを比較することにより、集音された区画識別音の音パターンを判定する。そして、判定部140は、記憶部110の判定結果テーブル113に、録音データに付加されていた集音時刻情報、録音データの送信元である利用者端末の識別情報、および判定された音パターンを記憶させる。なお、当該判定部140は、利用者端末200−1側に備えられてもよい。
【0052】
(抽出部150)
抽出部150は、利用者端末200−1の集音器による集音結果から判定される音特性に対応する位置情報を記憶部110から抽出する。すなわち、抽出部150は、判定部140により判定された音特性に対応する位置情報を記憶部110から抽出する。具体的には、抽出部150は、図4に示される判定結果テーブル113の「音パターン」に対応する位置情報を、図3に示される対応関係テーブル111から抽出する。そして、抽出部150は、抽出した位置情報を、図5に示される現在位置テーブル115に反映させる。例えば、抽出部150は、判定結果テーブル113の履歴番号152の判定結果である「音パターンC」に対応する位置情報である「103会議室」を対応関係テーブル111から抽出する。そして、抽出部150は、現在位置テーブル115の利用者端末cの位置情報に「103会議室」を反映させ、併せて集音時刻である「2011/8/10 13:00」も反映させる。
【0053】
なお、抽出部150は、判定部140による判定の都度、位置情報を抽出してもよく、または定期的に位置情報を抽出してもよい。また、ある利用者端末200−1について、予定の集音時刻の判定結果が得られない場合、一定期間内に判定結果が得られない場合等に、当該利用者端末200−1がいずれの区画10にも存在しないことを示す情報を現在位置テーブル115に反映させてもよい。図5に示されるように、例えば、利用者端末dが予定の集音時刻である13:00にいずれの区画10にも存在しないことを示す「−」が位置情報に反映される。
【0054】
このような抽出によって、利用者端末200−1の位置が推定される。その結果、利用者端末200−1の利用者30がどこにいるかを把握することが可能となる。
【0055】
(音特性の他の例)
以上、第1の実施形態に係るPBX100−1の構成の一例について説明した。上記説明では、区画識別音の音特性が区画識別音の音パターンである例を説明したが、区画識別音の音特性はこれに限られない。ここでの区画識別音の音特性は、区画識別音の音パターン、区画識別音の発生時刻、または区画識別音の発生継続時間のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0056】
例えば、区画識別音の音特性は、区画識別音の発生時刻であってもよい。すなわち、各固定電話端末20−1が互いに異なる時刻に所定の音を発することで区画10の識別が可能となってもよい。この場合に、記憶部110の対応関係テーブル111および判定結果テーブル113では、音パターンの代わりに発生時刻が記憶される。また、音制御部120は、各区画10に対応する発生時刻に、当該各区画10に位置する固定電話端末20−1に上記所定の音を発せさせる。上記所定の音の発生時刻が利用者端末200−1によって認識されればよいので、音制御部120は上記開始案内音および終了案内音を固定電話端末20−1に発せさせなくてもよい。また、通信部130は、利用者端末200−1の集音器による集音結果として、録音データではなく、上記所定の音の発生時刻を受信してもよい。判定部140は、例えば、通信部130により受信された発生時刻と、予め定められた発生時刻とを比較することにより、集音された区画識別音の発生時刻を判定する。そして、抽出部150は、判定された発生時刻に対応する位置情報を抽出する。なお、ここでの発生時刻は、発生開始時刻、発生終了時刻、またはそれらの間または近傍の時刻であってもよい。
【0057】
また、例えば、区画識別音の音特性は、区画識別音の発生継続時間であってもよい。すなわち、各固定電話端末20−1が所定の音を互いに異なる継続時間で発することで区画10の識別が可能となってもよい。この場合に、記憶部110の対応関係テーブル111および判定結果テーブル113では、音パターンの代わりに発生継続時間が記憶される。また、音制御部120は、各区画10に位置する固定電話端末20−1に、当該各区画に対応する発生継続時間で、上記所定の音を発せさせる。また、通信部130は、利用者端末200−1の集音器による集音結果として、録音データではなく、上記所定の音の発生継続時間を受信してもよい。判定部140は、例えば、通信部130により受信された発生継続時間と、予め定められた発生継続時間とを比較することにより、集音された区画識別音の発生継続時間を判定する。そして、抽出部150は、判定された発生継続時間に対応する位置情報を抽出する。
【0058】
このように、区画識別音の音特性が、区画識別音の発生時刻または区画識別音の発生継続時間であることによって、音特性の判定を容易に行うことが可能となる。また、区画識別音を録音する必要がないので、記憶領域を節約することができる。また、利用者端末200−1からPBX100−1に録音データが送信されなくてもよいので、通信負荷を減らすことができる。なお、区画識別音の音特性は、区画識別音の音パターン、区画識別音の発生時刻、または区画識別音の発生継続時間のうちの2つ以上の組合せであってもよい。
【0059】
また、音特性は、区画10に設置された固定電話端末20−1が発する区画識別音の特性の代わりに、区画10における環境音の特性であってもよい。すなわち、利用者端末200−1の集音器により環境音が集音され、集音結果から判定される環境音の特性に対応する位置情報が抽出されてもよい。このように環境音を利用することで、固定電話端末20−1を使用することなく、利用者端末200−1の位置推定を行うことが可能となる。
【0060】
[2−2.利用者端末の構成]
次に、図8および9を参照して、第1の実施形態に係る利用者端末200−1の構成の一例について説明する。図8は、第1の実施形態に係る利用者端末200−1の構成の一例を示すブロック図である。図8を参照すると、利用者端末200−1は、集音器210、録音部220、集音制御部230および通信部240を備える。
【0061】
(集音器210)
集音器210は、利用者端末200−1の周囲の音を集音する。集音器210は、集音制御部230の制御に応じて集音を開始し、終了する。
【0062】
(録音部220)
録音部220は、集音器210により集音された音を録音する。録音部220は、集音制御部230の制御に応じて録音を開始し、終了する。区画識別音の音特性が区画識別音の音パターンである場合に、録音部220は、区画識別音を録音する。
【0063】
(集音制御部230)
集音制御部230は、集音器210による集音の開始および終了、または録音部220による録音の開始および終了を制御する。
【0064】
集音制御部230は、例えば、集音器210により集音された音から開始案内音を検知すると、録音部220に録音を開始させる。また、集音制御部230は、例えば、集音器210により集音された音から終了案内音を検知すると、録音部220に録音を終了させる。このような開始案内音または終了案内音の検知による録音の制御によって、利用者端末200−1の消費電力および記憶領域を節約することができる。
【0065】
なお、集音制御部230は、区画識別音についての通知信号が後述の通信部240により受信される場合には、図7を用いて説明したように、当該通知信号に基づいて集音器210による集音および録音部220による録音の開始および終了を制御してもよい。このような通知信号による集音の制御によって、利用者端末200−1の消費電力を大幅に節約することができる。
【0066】
また、集音制御部230は、集音器210に間欠的に集音を行わせてもよい。例えば、区画識別音が予め定められた時刻に発せられ、当該時刻が集音制御部230にとって既知である場合に、集音制御部230は、集音器210に当該時刻に集音を行わせ、その他の時刻に集音を中断してもよい。図9は、集音器210による間欠的な集音を説明するための説明図である。図9を参照すると、区画識別音が時刻t9から時刻t10まで発せられることが集音制御部230にとって既知であるので、集音器210は、時刻t9から時刻t10まで集音するように集音制御部230により制御される。同様に、録音部220も、この時間帯に集音された音を録音するように集音制御部230により制御される。このような間欠的な集音によって、利用者端末200−1の消費電力を大幅に節約することができる。
【0067】
また、区画識別音の音特性が、区画識別音の音パターンではなく、区画識別音の発生時刻または区画識別音の発生継続時間であれば、集音制御部230は、録音部220に区画識別音を記憶させる代わりに、所定の音の発生時刻または発生継続時間を認識してもよい。
【0068】
(通信部240)
通信部240は、集音器210による集音結果をPBX100−1に送信する。区画識別音の音特性が区画識別音の音パターンである場合に、当該集音結果は、例えば、録音部220により録音された、集音器210により集音された音の録音データである。なお、区画識別音の音特性が、区画識別音の発生時刻または区画識別音の発生継続時間である場合に、当該集音結果は、集音制御部230により認識された上記発生時刻または上記発生継続時間であってもよい。また、通信部240は、固定電話端末20−1またはPBX100−1から、区画識別音についての通知信号を受信してもよい。
【0069】
[2−3.処理の流れ]
以下では、図10を用いて、本実施形態に係る位置推定処理の一例について説明する。図10は、第1の実施形態に係る位置推定処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0070】
まず、ステップS310では、PBX100−1の音制御部120は、例えば、音発生を指示する信号を固定電話端末20−1に送信する。
【0071】
次に、ステップS320では、固定電話端末20−1は開始案内音を発する。ここで、利用者端末200−1の集音制御部230は、集音器210により集音された当該開始案内音を検知する。そして、ステップS330では、集音制御部230は、録音部220に録音を開始させる。そして、ステップS340では、固定電話端末20−1は区画識別音を発する。そして、ステップS350では、固定電話端末20−1は、区画識別音の終了後に終了案内音を発する。ここで、利用者端末200−1の集音制御部230は、集音器210により集音された当該終了案内音を検知する。そして、ステップS360では、集音制御部230は、録音部220に録音を終了させる。
【0072】
次に、ステップS370では、利用者端末200−1の通信部240は、録音部220により録音された録音データをPBX100−1に送信する。ここで、PBX100−1の通信部130は、当該録音データを受信する。
【0073】
次に、ステップS380では、PBX100−1の判定部140は、録音データから音パターンを判定する。そして、ステップS390では、PBX100−1の抽出部150は、判定された音パターンに対応する位置情報を抽出する。
【0074】
[2−4.変形例]
[2−1.構内交換機(PBX)の構成]、[2−2.利用者端末の構成]および[2−3.処理の流れ]では、PBX100−1が位置推定装置である例について説明した。ここでは、利用者端末200−1が位置推定装置である変形例について説明する。
【0075】
(PBX100−1の構成および利用者端末200−1の構成)
第1の実施形態の変形例では、利用者端末200−1が自装置の位置情報を抽出する。したがって、図2を用いて説明したPBX100−1の構成のうちの記憶部110、判定部140および抽出部150は、利用者端末200−1により備えられる。なお、記憶部110は、PBX100−1にも備えられてもよい。
【0076】
例えば、固定電話端末20−1により開始通知音が発せられる場合に、利用者端末200−1により備えられた判定部140は、開始通知音が検出された後の集音器210による集音結果から、区画識別音の音特性を判定する。さらに、固定電話端末20−1により終了通知音が発せられる場合には、判定部140は、開始通知音が検出された後であって、終了通知音が検出される前の集音器210による集音結果から、区画識別音の音特性を判定する。なお、区画識別音についての通知信号が利用者端末200−1により受信される場合には、集音制御部230は、通信部240により上記通知信号が受信された後に集音器210に集音を開始させてもよい。
【0077】
(処理の流れ)
以下では、図11を用いて、本実施形態の変形例に係る位置推定処理の一例について説明する。図11は、第1の実施形態の変形例に係る位置推定処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0078】
変形例に係る位置推定処理の一例と図10にて示された位置推定処理の一例との差分は、ステップS382、S392およびS394のみである。ステップS382では、録音データから音パターンの判定が、PBX100−1側ではなく利用者端末200−1側で行われる。また、ステップS392では、音パターンに対応する位置情報の抽出が、PBX100−1側ではなく利用者端末200−1側で行われる。そして、ステップS394では、利用者端末200−1の通信部240は、抽出された位置情報をPBX100−1に送信する。その結果、PBX100−1には、各利用者端末200−1の位置情報が集約される。
【0079】
以上、第1の実施形態について説明したが、当該第1の実施形態によれば、固定電話端末20−1および利用者端末200−1という既存の機器を利用することにより、利用者端末200−1および利用者30の位置推定を可能にする。すなわち、特殊な機器を導入する必要がないので、低コストで位置推定を実現することができる。また、壁を通過する電波ではなく、壁を通過しにくい音を使用しているので、とりわけ部屋のような壁により仕切られた区画10に位置する利用者端末200−1の位置を精度よく推定することができる。また、集音される音の音量、区画識別音の発生時刻と集音時刻との時間差等も利用することにより、壁により仕切られていない区画10であっても、利用者端末200−1の位置を精度よく推定することができる。すなわち、屋内にいる利用者30の位置推定を精度よくかつ低コストで実現することが可能となる。
【0080】
なお、第1の実施形態に係る位置推定システム1は上述した例に限られない。位置推定システム1には、固定電話端末20−1の代わりに、区画10を識別するための音を発する任意の機器が含まれてもよい。具体的な例として、当該任意の機器は、PC(Personal Computer)、プロジェクタ、複写機、時計であってもよい。また、区画10において当該区画10を識別可能な環境音が存在する場合には、固定電話端末20−1を含む上記任意の機器は、位置推定システム1の中に含まれなくてもよい。また、位置推定システム1には、利用者端末200の代わりに、利用者30に携行される、集音器を備える任意の機器が含まれてもよい。また、変形例のように利用者端末200により位置推定が行われる場合には、PBX100は、位置推定システム1の中に含まれなくてもよい。
【0081】
[3.第2の実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態を説明する。本発明の第2の実施形態によれば、利用者端末200−2から発せられた音の固定電話端末20−2による集音結果に基づいて利用者端末200−2が位置する区画10を推定することが可能である。
【0082】
なお、第2の実施形態は、[3−1.構内交換機(PBX)の構成]、[3−2.利用者端末の構成]、[3−3.処理の流れ]という順序で説明される。
【0083】
[3−1.構内交換機(PBX)の構成]
まず、図12〜図14を参照して、第2の実施形態に係るPBX100−2の構成の一例について説明する。図12は、第2の実施形態に係るPBX100−2の構成の一例を示すブロック図である。図12を参照すると、PBX100−2は、記憶部112、集音制御部122、判定部142および抽出部152を備える。
【0084】
(記憶部112)
記憶部112は、PBX100−2において一時的にまたは恒久的に保持すべき情報を記憶する。特に本実施形態では、記憶部112は、利用者端末200−2と音特性との対応関係を記憶する。上記音特性は、例えば、利用者端末200−2が発する利用者端末識別音(すなわち利用者端末200−2を識別するための音)の特性である。以降では、利用者端末識別音の音特性が利用者端末識別音の音パターンである例を説明する。すなわち、各利用者端末200−2が互いに異なる音パターンの音を発することで利用者端末200−2の識別が可能となる例を説明する。
【0085】
図13は、記憶部112により記憶される対応関係テーブル117の一例を説明するための説明図である。図13を参照すると、対応関係テーブル117には、利用者端末情報および音パターン情報が対応して記憶される。ここで、利用者端末情報は、利用者端末200−2を示す情報である。また、音パターン情報は、利用者端末識別音の音パターンを示す情報である。当該対応関係テーブル117によれば、どの利用者端末200−2とどの音パターンが対応しているかが分かる。例えば、利用者端末200−2である利用者端末aに音パターンAが対応することが分かる。なお、記憶部112は、音パターンの判定のために、音パターンのサンプル音データを別途記憶してもよい。
【0086】
また、記憶部112は、例えば、後述の判定部142による、集音結果からの音特性の判定結果を記憶する。図14は、記憶部112により記憶される判定結果テーブル119の一例を説明するための説明図である。図14を参照すると、判定結果テーブル119には、履歴番号、集音時刻、位置情報および音パターン情報が対応して記憶される。ここで、履歴番号は、判定結果の履歴を識別するための情報である。また、集音時刻は、判定対象となる集音結果についての集音の時刻である。また、位置情報は、判定対象となる集音結果についての集音を行った固定電話端末20−2が位置する区画10を示す情報である。また、音パターン情報は、判定部142により判定された利用者端末識別音の音パターンを示す情報である。当該判定結果テーブル119によれば、各区画10において各時刻に集音された利用者端末識別音の音パターンが分かる。例えば、判定結果テーブル119の履歴番号354および355から、103会議室において2011年8月10日13:00に集音された利用者端末識別音の音パターンは音パターンBおよび音パターンCである、ということが分かる。
【0087】
また、記憶部112は、例えば、利用者端末200−2の現在の位置情報として、後述の抽出部152による利用者端末200−2の最新の抽出結果をそれに対応する位置情報とともに記憶する。具体的には、記憶部112は、例えば、第1の実施形態において図5を参照して説明した現在位置テーブル115を記憶する。
【0088】
(集音制御部122)
集音制御部122は、固定電話端末20−2に備えられる集音器による集音の開始および終了、または固定電話端末20−2に備えられる録音部による録音の開始および終了を制御する。集音制御部122は、例えば、集音および録音を指示する信号を固定電話端末20−2に送信する。そして、固定電話端末20−2は、当該信号に応じて集音および録音を行う。集音制御部122は、例えば、予め定められた時間間隔で、接続される全ての固定電話端末20−1に同じタイミングで上記信号を送信する。なお、集音制御部122は、固定電話端末20−2毎に異なるタイミングで上記信号を送信してもよい。また、集音制御部122は、要求に応じて上記信号を送信してもよい。
【0089】
また、集音制御部122は、例えば、固定電話端末20−2による開始案内音の発生、並びに開始案内音に続く固定電話端末20−2による集音および録音を制御する。なお、集音制御部122は、開始案内音の発生を制御する代わりに、利用者端末200−2への通知後に、固定電話端末20−2に集音および録音を行わせてもよい。これらの開始案内音および通知は、第1の実施形態の音制御部120についての開始案内音および通知と同様である。また、集音制御部122は、固定電話端末20−2に間欠的に集音を行わせてもよい。例えば、利用者端末識別音が予め定められた時刻に発せられ、当該時刻が集音制御部122にとって既知である場合に、集音制御部122は、固定電話端末20−2に当該時刻に集音を行わせ、その他の時刻に集音を中断してもよい。
【0090】
(判定部142)
判定部142は、固定電話端末20−2の集音器による集音結果から、利用者端末識別音の音特性を判定する。判定部142は、例えば、固定電話端末20−2の集音器により集音された音の録音データを、上記集音結果として取得する。そして、判定部142は、上記録音データと各音パターンのサンプル音データとを比較することにより、集音された利用者端末識別音の音パターンを判定する。そして、判定部142は、記憶部112の判定結果テーブル119に、録音データに付加されていた集音時刻情報、録音データの取得元である固定電話端末20−2が設置されている区画10の識別情報、および判定された音パターンを記憶させる。
【0091】
(抽出部152)
抽出部152は、区画10に設置された固定電話端末20−2の集音器による集音結果から判定される音特性に対応する利用者端末200−2を記憶部112から抽出する。すなわち、抽出部152は、判定部142により判定された音特性に対応する利用者端末200−2を記憶部112から抽出する。そして、抽出部152は、抽出した利用者端末200−2の位置情報として、判定結果テーブル119の位置情報を図5に示される現在位置テーブル115に反映させる。例えば、抽出部152は、判定結果テーブル119の履歴番号355の判定結果である「音パターンC」に対応する利用者端末200−2である「利用者端末c」を対応関係テーブル117から抽出する。そして、抽出部152は、現在位置テーブル115の利用者端末cの位置情報として「103会議室」を反映させ、併せて集音時刻である「2011/8/10 13:00」も反映させる。
【0092】
なお、抽出部152は、判定部142による判定の都度、位置情報を抽出してもよく、または定期的に位置情報を抽出してもよい。また、ある利用者端末200−2について、予定の集音時刻の判定結果から抽出されない場合、一定期間内に判定結果から抽出されない場合等に、当該利用者端末200−2がいずれの区画10にも存在しないことを示す情報を現在位置テーブル115に反映させてもよい。図5に示されるように、例えば、利用者端末dが予定の集音時刻である13:00にいずれの区画10にも存在しないことを示す「−」が位置情報に反映される。
【0093】
このような抽出によって、利用者端末200−2の位置が推定される。その結果、利用者端末200−2の利用者30がどこにいるかを把握することが可能となる。
【0094】
[3−2.利用者端末の構成]
次に、図15を参照して、第2の実施形態に係る利用者端末200−2の構成の一例について説明する。図15は、第2の実施形態に係る利用者端末200−2の構成の一例を示すブロック図である。図15を参照すると、利用者端末200−2は、集音器212、通信部242、音制御部250および発音器260を備える。
【0095】
(集音器212)
集音器212は、利用者端末200−2の周囲の音を集音する。
【0096】
(通信部242)
通信部242は、無線通信によりデータを送受信する。なお、通信部242は、固定電話端末20−2またはPBX100−2から、利用者端末識別音についての通知信号を受信してもよい。
【0097】
(音制御部250)
音制御部250は、発音器260による利用者端末識別音の発生を制御する。音制御部250は、例えば、集音器212により集音された音から開始案内音を検知すると、発音器260に利用者端末識別音を発せさせる。なお、音制御部250は、利用者端末識別音についての通知信号が通信部242により受信される場合には、当該通知信号に基づいて発音器260による利用者端末識別音の発生を制御してもよい。また、音制御部250は、予め定められた時刻または時間間隔で利用者端末識別音を発音器260に発せさせてもよい。
【0098】
(発音器260)
発音器260は、音制御部250による制御に応じて、利用者端末識別音を発する。
【0099】
[3−3.処理の流れ]
以下では、図16を用いて、本実施形態に係る位置推定処理の一例について説明する。図16は、第2の実施形態に係る位置推定処理の概略的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0100】
まず、ステップS410では、PBX100−2の集音制御部122は、集音および録音を指示する信号を固定電話端末20−2に送信する。
【0101】
次に、ステップS420では、固定電話端末20−2は開始案内音を発する。ここで、利用者端末200−2の音制御部250は、集音器212により集音された当該開始案内音を検知する。また、ステップS430では、固定電話端末20−2の集音器および録音部は、集音および録音を開始する。そして、ステップS440では、利用者端末200−2の音制御部250は、発音器260に利用者端末識別音を発せさせる。その後、ステップS450では、固定電話端末20−2の集音器および録音部は、集音および録音を終了する。
【0102】
次に、ステップS460では、固定電話端末20−2は録音データをPBX100−2に送信する。ここで、PBX100−2の判定部142は当該録音データを取得する。
【0103】
次に、ステップS470では、PBX100−2の判定部142は、録音データから音パターンを判定する。そして、ステップS480では、PBX100−2の抽出部152は、判定された音パターンに対応する利用者端末200−2を抽出する。
【0104】
以上、第2実施形態について説明したが、当該第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、既存の機器を利用することにより利用者端末200−2および利用者30の位置推定を可能にする。すなわち、屋内にいる利用者30の位置推定を精度よくかつ低コストで実現することが可能となる。
【0105】
なお、第2の実施形態に係る位置推定システム1は上述した例に限られない。位置推定システム1には、固定電話端末20−2の代わりに、集音器を備える任意の機器が含まれてもよい。また、位置推定システム1には、利用者端末200の代わりに、位置推定システム1には、利用者30に携行される、自機を識別するための音を発する任意の機器が含まれてもよい。
【0106】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0107】
また、本明細書の位置推定処理における各ステップは、必ずしもフローチャートに記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、位置推定処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0108】
また、PBX100または利用者端末200に内蔵されるCPU、ROMおよびRAM等のハードウェアを、上記PBX100または利用者端末200の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、当該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【0109】
また、固定電話端末20若しくは利用者端末200から発せられる各種音、または区画10における環境音は、集音器により集音可能である限り可聴音または不可聴音のいずれであってもよい。スピーカ、マイク等の特性を考慮すると、これらの音は、可聴域上限付近の18−20kHz付近の音であることが望ましい。また、これらの音は、超短時間に発生する音であってもよい。このような可聴域上限付近の音および超短時間に発生する音であれば、会議、デスクワーク等の妨げとなりにくい。
【符号の説明】
【0110】
1 位置推定システム
10 区画
20 固定電話端末
30 利用者
100 構内交換機(PBX)
110、112 記憶部
120 音制御部
122 集音制御部
130 通信部
140、142 判定部
150、152 抽出部
200 利用者端末
210、212 集音器
220 録音部
230 集音制御部
240、242 通信部
250 音制御部
260 発音器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報と音特性との対応関係を記憶する記憶部と、
集音器による集音結果から判定される音特性に対応する位置情報を前記記憶部から抽出する抽出部と、
を備える、位置推定装置。
【請求項2】
前記位置情報は、建造物の一区画を示す情報であり、
前記音特性は、前記一区画に設置された機器が発する区画識別音の特性である、
請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記機器による前記区画識別音の発生を制御する音制御部をさらに備える、請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記音制御部は、前記機器を含む複数の機器で共通する第1の共通音、および前記第1の共通音に続く前記区画識別音の前記機器による発生を制御する、請求項3に記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記音制御部は、さらに、前記区画識別音に続く前記複数の機器で共通する第2の共通音の前記機器による発生を制御する、請求項4に記載の位置推定装置。
【請求項6】
前記音制御部は、前記集音器を備える装置への通知後に、前記区画識別音を前記機器に発せさせる、請求項3に記載の位置推定装置。
【請求項7】
前記位置推定装置は、
前記集音器と、
前記機器を含む複数の機器で共通する第1の共通音が検出された後の前記集音器による集音結果から、前記区画識別音の音特性を判定する判定部と、
をさらに備える、請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記第1の共通音が検出された後であって、前記複数の機器で共通する第2の共通音が検出される前の前記集音器による集音結果から、前記区画識別音の音特性を判定する、
請求項7に記載の位置推定装置。
【請求項9】
前記位置推定装置は、
集音器と、
通知信号を受信する通信部と、
前記通信部により前記通知信号が受信された後に前記集音器に集音を開始させる集音制御部と、
を備える、
請求項1または2に記載の位置推定装置。
【請求項10】
前記位置推定装置は、
集音器と、
前記集音器に間欠的に集音を行わせる集音器制御部と、
を備える、
請求項1または2に記載の位置推定装置。
【請求項11】
前記区画識別音の音特性は、前記区画識別音の音パターン、前記区画識別音の発生時刻、または前記区画識別音の発生継続時間のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項12】
前記位置情報は、建造物の一区画を示す情報であり、
前記音特性は、前記一区画における環境音の特性である、請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項13】
位置情報と音特性との対応関係を記憶する記憶部を備える装置において、
集音器による集音結果から判定される音特性に対応する位置情報を前記記憶部から抽出すること
を含む、位置推定方法。
【請求項14】
位置情報と音特性との対応関係を記憶する記憶部を備える装置を制御するコンピュータに、
集音器による集音結果から判定される音特性に対応する位置情報を前記記憶部から抽出する抽出部
として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
利用者端末および位置推定装置を含む位置推定システムであって、
前記利用者端末は、集音器を備え、
前記位置推定システムは、
位置情報と音特性との対応関係を記憶する記憶部と、
前記集音器による集音結果から判定される音特性に対応する位置情報を前記記憶部から抽出する抽出部と、
を備える、
位置推定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−50331(P2013−50331A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187299(P2011−187299)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】