説明

位置検出装置および被検体内導入システム

【課題】検出対象が存在する領域における複数の位置検出用磁場間の強度差に関わらず正確な位置検出を行うことが可能な位置検出装置を実現する。
【解決手段】周波数成分抽出部は、位置検出対象たるカプセル型内視鏡にて検出された検出磁場データ54から、第1、第2および第3位置検出用磁場の周波数f1、f2、f3を含む周波数帯の磁場データたる第1磁場データ56、第2磁場データ57および第3磁場データ58を抽出する。データ強度調整部は、第1磁場データ56、第2磁場データ57および第3磁場データ58に対して、それぞれ別個独立に強度調整を行うことによって、各磁場データのデータ強度をほぼ同等とした磁場信号S1、S2、S3を生成し、位置導出部等に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも第1周波数の第1位置検出用磁場および前記第1周波数と異なる第2周波数の第2位置検出用磁場とを用いて検出対象の位置検出を行う位置検出装置および位置検出装置を用いた被検体内導入システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡の分野においては、飲込み型のカプセル型内視鏡が提案されている。このカプセル型内視鏡には、撮像機能と無線通信機能とが設けられている。カプセル型内視鏡は、観察(検査)のために被検体の口から飲込まれた後、自然排出されるまでの間、体腔内、例えば胃、小腸などの臓器の内部をその蠕動運動に従って移動し、順次撮像する機能を有する。
【0003】
体腔内を移動する間、カプセル型内視鏡によって体内で撮像された画像データは、順次無線通信により外部に送信され、外部に設けられたメモリに蓄積される。無線通信機能とメモリ機能とを備えた受信機を携帯することにより、被検体は、カプセル型内視鏡を飲み込んだ後、排出されるまでの間に渡って、自由に行動できる。カプセル型内視鏡が排出された後、医者もしくは看護士においては、メモリに蓄積された画像データに基づいて臓器の画像をディスプレイに表示させて診断を行うことができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
さらに、従来のカプセル型内視鏡システムとして、体腔内におけるカプセル型内視鏡の位置を検出する機構を備えたものも提案されている。例えば、カプセル型内視鏡を導入する被検体の内部に複数の位置検出用の磁場を形成することによって、カプセル型内視鏡に内蔵した磁場センサによって検出された磁場の強度に基づく被検体内におけるカプセル型内視鏡の位置検出を行うことが可能である。かかるカプセル型内視鏡システムでは、磁場を形成するために、所定のコイルを被検体外部に配置した構成を採用しており、かかるコイルに所定の電流を流すことによって、被検体内部に磁場を形成することとしている。また、位置検出用磁場の一つとして地磁気を利用するカプセル型内視鏡システムも提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−19111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数の位置検出用磁場を用いた従来のカプセル型内視鏡システムでは、カプセル型内視鏡において検出する磁場の強度が複数の位置検出用磁場のそれぞれに関して大きく異なる可能性があり、このような場合に位置検出精度が低下するという課題を有する。以下、かかる課題について詳細に説明する。
【0007】
上述のように、カプセル型内視鏡は体腔内を順次移動する構成を有する一方で、位置検出用磁場を形成するための複数の磁場形成手段は、被検体に対して固定された状態で配置される。従って、磁場形成手段とカプセル型内視鏡との間の位置関係はカプセル型内視鏡の移動に伴い変動し、カプセル型内視鏡において検出される検出用磁場の強度も変動するのが通常である。また、複数の磁場形成手段は、それぞれ被検体上の異なる位置に別個独立に配置されるのが一般的であると共に、形成する磁場の種類の相違によって強度減衰の態様も異なることとなる。
【0008】
従って、カプセル型内視鏡の位置によっては、カプセル型内視鏡に備わる磁場センサは、ある磁場形成手段によって形成された位置検出用磁場は充分な強度で検出する一方で、他の磁場形成手段によって形成された位置検出用磁場に関しては充分な強度を検出できない場合が生じうる。このような場合には、検出結果をそのまま使用すると他の磁場形成手段によって形成された位置検出用磁場の検出結果を反映した位置検出が困難となることから、検出結果に対して強度増幅処理を施した上で位置検出処理を行うのが通常である。しかしながら、カプセル型内視鏡に備わる磁場センサは複数の磁場形成手段によって形成される複数の位置検出用磁場を同時に検出することから、検出結果に対して強度増幅処理を行うことによって、あらかじめ充分な強度を有する位置検出用磁場の強度が処理限界を超えた値となるおそれがある。従って、従来のカプセル型内視鏡システムでは、位置検出処理に用いる複数の位置検出用磁場の検出結果における強度が著しく相違した場合に正確な位置検出を行うことが困難であった。
【0009】
このような課題は、位置検出用磁場の一つとして地磁気を用いるシステムの場合により顕著なものとなる。具体的には、一般的なコイルによって形成される磁場と比較して地磁気は1000倍程度の強度を有することから、地磁気を利用したカプセル型内視鏡システムにおいては、カプセル型内視鏡の存在領域における位置検出用磁場間の強度差は特に顕著なものとなるためである。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の位置検出用磁場を利用して位置検出を行う位置検出装置において、検出対象が存在する領域における複数の位置検出用磁場間の強度差に関わらず正確な位置検出を行うことが可能な位置検出装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる位置検出装置は、少なくとも第1周波数の第1位置検出用磁場および前記第1周波数と異なる第2周波数の第2位置検出用磁場とを用いて検出対象の位置検出を行う位置検出装置であって、前記検出対象が位置する領域における磁場の強度に関する検出結果である検出磁場データから、前記第1周波数を含む周波数帯の検出磁場データである第1磁場データと、前記第2周波数を含む周波数帯の検出磁場データである第2磁場データとを抽出する周波数成分抽出手段と、抽出された前記第1磁場データおよび前記第2磁場データの少なくとも一方に対して、他方と別個独立に強度調整を行うデータ強度調整手段と、必要に応じて前記データ強度調整手段による強度調整が行われた前記第1磁場データおよび前記第2磁場データを用いて前記検出対象の位置を導出する位置導出手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この請求項1の発明によれば、異なる位置検出用磁場の周波数に対応して検出磁場データから第1磁場データと第2磁場データを抽出する周波数成分抽出普段と、第1磁場データの強度と第2磁場データの強度とを別個独立に調整するデータ強度調整手段とを備えることとしたため、異なる位置検出用磁場の強度が著しく異なる場合であっても、それぞれの位置検出用磁場の検出結果を的確に利用した位置検出を行うことが可能である。
【0013】
また、請求項2にかかる位置検出装置は、上記の発明において、前記第1検出用磁場は、地磁気であり、前記第2検出用磁場を形成する磁場形成手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項3にかかる位置検出装置は、上記の発明において、前記データ強度調整手段は、前記第1磁場データのピーク強度および前記第2磁場データのピーク強度のそれぞれに関して、前記位置導出手段における処理可能範囲内の強度となるよう強度調整を行うことを特徴とする。
【0015】
また、請求項4にかかる被検体内導入システムは、被検体に導入され、該被検体の内部を移動する被検体内導入装置と、少なくとも第1周波数の第1位置検出用磁場および前記第1周波数と異なる第2周波数の第2位置検出用磁場とを用いて前記被検体内導入装置の位置検出を行う位置検出装置とを備えた被検体内導入システムであって、前記被検体内導入装置は、当該被検体内導入装置が位置する領域における前記位置検出用磁場を検出する磁場センサと、前記磁場センサによる検出結果を含む無線信号を送信する無線送信手段とを備え、前記位置検出装置は、前記検出対象が位置する領域における磁場の強度に関する検出結果である検出磁場データから、前記第1周波数を含む周波数帯の検出磁場データである第1磁場データと、前記第2周波数を含む周波数帯の検出磁場データである第2磁場データとを抽出する周波数成分抽出手段と、抽出された前記第1磁場データおよび前記第2磁場データの少なくとも一方に対して、他方と別個独立に強度調整を行うデータ強度調整手段と、必要に応じて前記データ強度調整手段による強度調整が行われた前記第1磁場データおよび前記第2磁場データを用いて前記被検体内導入装置の位置を導出する位置導出手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる位置検出装置および被検体内導入システムは、異なる位置検出用磁場の周波数に対応して検出磁場データから第1磁場データと第2磁場データを抽出する周波数成分抽出普段と、第1磁場データの強度と第2磁場データの強度とを別個独立に調整するデータ強度調整手段とを備えることとしたため、複数の位置検出用磁場の検出強度が著しく異なる場合であっても、それぞれの位置検出用磁場の検出結果を的確に利用した位置検出を行うことが可能であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明を実施するための最良の形態(以下では、単に「実施の形態」と称する)である位置検出装置および被検体内導入システムについて説明する。なお、図面は模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0018】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1にかかる被検体内導入システムについて説明する。本実施の形態1では、被検体内導入システムの全体構成および各構成要素に関して説明すると共に位置検出メカニズムに関して説明した後、位置検出に使用される位置検出用磁場の強度に関する制御メカニズムに関する説明を行うこととする。
【0019】
図1は、本実施の形態1にかかる被検体内導入システムの全体構成について示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態1にかかる被検体内導入システムは、被検体1の内部に導入されて被検体1の内部を移動するカプセル型内視鏡2と、カプセル型内視鏡2との間で無線通信を行うと共に、カプセル型内視鏡2に固定された対象座標軸と、被検体1に対して固定された基準座標軸との間の位置関係を検出する位置検出装置3と、位置検出装置3によって受信された、カプセル型内視鏡2から送信された無線信号の内容を表示する表示装置4と、位置検出装置3と表示装置4との間の情報の受け渡しを行うための携帯型記録媒体5とを備える。また、図1に示すように、本実施の形態1では、X軸、Y軸およびZ軸によって形成され、カプセル型内視鏡2に対して固定された座標軸である対象座標軸と、x軸、y軸およびz軸によって形成され、カプセル型内視鏡2の運動とは無関係に定められ、具体的には被検体1に対して固定された座標軸である基準座標軸とを設定しており、以下に説明する機構を用いて基準座標軸に対する対象座標軸の位置関係を検出することとしている。
【0020】
表示装置4は、位置検出装置3によって受信された、カプセル型内視鏡2によって撮像された被検体内画像等を表示するためのものであり、携帯型記録媒体5によって得られるデータに基づいて画像表示を行うワークステーション等のような構成を有する。具体的には、表示装置4は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ等によって直接画像等を表示する構成としても良いし、プリンタ等のように、他の媒体に画像等を出力する構成としても良い。
【0021】
携帯型記録媒体5は、表示装置4および後述する処理装置12に対して着脱可能であって、両者に対する装着時に情報の出力および記録が可能な構造を有する。具体的には、携帯型記録媒体5は、カプセル型内視鏡2が被検体1の体腔内を移動している間は処理装置12に装着されて被検体内画像および基準座標軸に対する対象座標軸の位置関係を記憶する。そして、カプセル型内視鏡2が被検体1から排出された後に、処理装置12から取り出されて表示装置4に装着され、記録したデータが表示装置4によって読み出される構成を有する。処理装置12と表示装置4との間のデータの受け渡しをコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリ等の携帯型記録媒体5によって行うことで、処理装置12と表示装置4との間が有線接続された場合と異なり、カプセル型内視鏡2が被検体1内部を移動中であっても、被検体1が自由に行動することが可能となる。
【0022】
次に、カプセル型内視鏡2について説明する。カプセル型内視鏡2は、特許請求の範囲における検出対象および被検体内導入装置の一例として機能するものである。具体的には、カプセル型内視鏡2は、被検体1の内部に導入され、被検体1内を移動しつつ被検体内情報を取得し、取得した被検体内情報を含む無線信号を外部に送信する機能を有する。また、カプセル型内視鏡2は、後述する位置関係の検出のための磁場検出機能を有すると共に駆動電力が外部から供給される構成を有し、具体的には外部から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号を駆動電力として再生する機能を有する。
【0023】
図2は、カプセル型内視鏡2の構成を示すブロック図である。図2に示すように、カプセル型内視鏡2は、被検体内情報を取得する機構として、被検体内情報を取得する被検体内情報取得部14と、取得された被検体内情報に対して所定の処理を行う信号処理部15とを備える。また、カプセル型内視鏡2は、磁場検出機構として磁場を検出し、検出磁場に対応した電気信号を出力する磁場センサ16と、出力された電気信号を増幅するための増幅部17と、増幅部17から出力された電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換部18とを備える。
【0024】
被検体内情報取得部14は、被検体内情報、本実施の形態1においては被検体内の画像データたる被検体内画像を取得するためのものである。具体的には、被検体内情報取得部14は、照明部として機能するLED(Light Emitting Diode)22と、LED22の駆動を制御するLED駆動回路23と、LED22によって照明された領域の少なくとも一部を撮像する撮像部として機能するCCD(Charge Coupled Device)24と、CCD24の駆動状態を制御するCCD駆動回路25とを備える。なお、照明部および撮像部の具体的な構成としては、LED、CCDを用いることは必須ではなく、例えば撮像部としてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いることとしても良い。
【0025】
磁場センサ16は、カプセル型内視鏡2の存在領域に形成されている磁場の方位および強度を検出するためのものである。具体的には、磁場センサ16は、例えば、MI(Magneto Impedance)センサを用いて形成されている。MIセンサは、例えばFeCoSiB系アモルファスワイヤを感磁媒体として用いた構成を有し、感磁媒体に高周波電流を通電した際に、外部磁界に起因して感磁媒体の磁気インピーダンスが大きく変化するMI効果を利用して磁場強度の検出を行っている。なお、磁場センサ16は、MIセンサ以外にも、例えばMRE(磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)磁気センサ等を用いて構成することとしても良い。
【0026】
図1にも示したように、本実施の形態1では、検出対象たるカプセル型内視鏡2の座標軸として、X軸、Y軸およびZ軸によって規定された対象座標軸を想定している。かかる対象座標軸に対応して、磁場センサ16は、カプセル型内視鏡2が位置する領域に形成された磁場について、X方向成分、Y方向成分およびZ方向成分の磁場強度を検出し、それぞれの方向における磁場強度に対応した電気信号を出力する機能を有する。磁場センサ16によって検出された、対象座標軸における磁場強度データは、後述の無線送信部19を介して位置検出装置3に送信され、位置検出装置3は、磁場センサ16によって検出された磁場データの値に基づいて対象座標軸と基準座標軸の位置関係を導出することとなる。
【0027】
さらに、カプセル型内視鏡2は、送信回路26および送信アンテナ27を備えると共に外部に対して無線送信を行うための無線送信部19と、無線送信部19に対して出力する信号に関して、信号処理部15から出力されたものとA/D変換部18から出力されたものとの間で適宜切り替える切替部20とを備える。また、カプセル型内視鏡2は、被検体内情報取得部14、信号処理部15および切替部20の駆動タイミングを同期させるためのタイミング発生部21を備える。
【0028】
また、カプセル型内視鏡2は、外部からの給電用の無線信号を受信するための機構として、受信アンテナ28と、受信アンテナ28を介して受信された無線信号から電力を再生する電力再生回路29と、電力再生回路29から出力された電力信号の電圧を昇圧する昇圧回路30と、昇圧回路30によって所定の電圧に変化した電力信号を蓄積し、上記した他の構成要素の駆動電力として供給する蓄電器31とを備える。
【0029】
受信アンテナ28は、例えばループアンテナを用いて形成される。かかるループアンテナは、カプセル型内視鏡2内の所定の位置に固定されており、具体的にはカプセル型内視鏡2に固定された対象座標軸における所定の位置および指向方向を有するよう配置されている。
【0030】
次に、位置検出装置3について説明する。位置検出装置3は、図1に示すように、カプセル型内視鏡2から送信される無線信号を受信するための受信アンテナ7a〜7dと、カプセル型内視鏡2に対して給電用の無線信号を送信するための送信アンテナ8a〜8dと、地磁気の進行方向を検出する地磁気センサ9と、直線磁場を形成する直線磁場形成部10と、拡散磁場を形成する拡散磁場形成部11と、受信アンテナ7a〜7dを介して受信された無線信号等に対して所定の処理を行う処理装置12とを備える。なお、図1はあくまで模式図であり、受信アンテナ7a〜7d等に関しては構成について模式的に示すと共に、配置される位置についても一例を示すに過ぎないものである。すなわち、図1に示す各構成要素間の位置関係、特に被検体1上における位置関係については、図1に示す例に限定されないことに留意が必要である。
【0031】
受信アンテナ7a〜7dは、カプセル型内視鏡2に備わる無線送信部19から送信された無線信号を受信するためのものである。具体的には、受信アンテナ7a〜7dは、ループアンテナ等によって形成され、処理装置12に対して受信した無線信号を伝達する機能を有する。
【0032】
送信アンテナ8a〜8dは、処理装置12によって生成された無線信号をカプセル型内視鏡2に対して送信するためのものである。具体的には、送信アンテナ8a〜8dは、処理装置12と電気的に接続されたループアンテナ等によって形成されている。
【0033】
地磁気センサ9は、地磁気の進行方向を検出するためのものである。本実施の形態1にかかる被検体内導入システムでは、後に詳細に説明するように、地磁気に関しても位置検出用磁場として使用する関係から、被検体1(より正確には、被検体1に対して固定された基準座標軸)に対する地磁気の進行方向を検出する必要性が生じ、地磁気センサ9はかかる進行方向を検出する機能を有する。なお、地磁気センサ9は、かかる機能を実現する観点から、配置された位置における磁場方向のみを検出する機能を有すれば充分であるが、本実施の形態1では、カプセル型内視鏡2に備わる磁場センサ16と同様の構成を用いることとする。なお、本実施の形態1において、地磁気は特許請求の範囲における位置検出用磁場および第1直線磁場の一例として機能することとする。
【0034】
次に、直線磁場形成部10および拡散磁場形成部11について説明する。直線磁場形成部10および拡散磁場形成部11は、それぞれ特許請求の範囲における磁場形成手段の一例として機能するものであり、形成される直線磁場および拡散磁場は、特許請求の範囲における位置検出用磁場の一例として機能するものである。なお、本実施の形態1では、かかる直線磁場および拡散磁場の他に地磁気に関しても位置検出用磁場として用いることとしており、特許請求の範囲における第1位置検出用磁場および第2位置検出用磁場としては、実施の形態1におけるこれら3種類の位置検出用磁場の中から任意に選択することが可能である。その上で、以下では混乱を避けるため、機会に応じて地磁気を第1位置検出用磁場と称し、直線磁場形成部10によって形成される直線磁場を第2位置検出用磁場と称し、拡散磁場形成部11によって形成される拡散磁場を第3位置検出用磁場と称することとする。なお、かかる第1位置検出用磁場、第2位置検出用磁場および第3位置検出用磁場は、それぞれ異なる値の第1周波数、第2周波数および第3周波数の磁場であることとするが、このことは、すべての位置検出用磁場が交流磁場であることを意味するのではない。すなわち、本実施の形態1で第一位置検出用磁場として地磁気を用いることからも明らかなように、直流磁場(すなわち、周波数が0Hz)のものを位置検出用磁場として使用することに何ら不都合はない。
【0035】
直線磁場形成部10は、地磁気とは異なる方向に進行する直線磁場である直線磁場を形成するためのものである。ここで、「直線磁場」とは、少なくとも所定の空間領域、本実施の形態1では被検体1内部のカプセル型内視鏡2が位置しうる空間領域において、実質上1方向のみの磁場成分からなる磁場のことをいう。また、拡散磁場形成部11は、直線磁場形成部10とは異なり、磁場方向が位置依存性を有する拡散磁場、本実施の形態1では拡散磁場形成部11から離隔するにつれて拡散する磁場を形成するためのものである。
【0036】
図3は、直線磁場形成部10および拡散磁場形成部11の構成を示すと共に、直線磁場形成部10によって形成される直線磁場の態様を示す模式図である。図3に示すように、直線磁場形成部10は、基準座標軸におけるy軸方向に延伸し、コイル断面がxz平面と平行となるよう形成されたコイル32と、コイル32に対して電流供給を行うための電流源33とを備える。このため、コイル32によって形成される直線磁場は、図3に示すように、少なくとも被検体1内部においては直線磁場となると共に、コイル32から離れるにつれて徐々に強度が減衰する特性、すなわち強度に関して位置依存性を有することとなる。
【0037】
また、拡散磁場形成部11は、コイル34と、コイル34に対して電流供給を行うための電流源35とを備える。ここで、コイル32は、あらかじめ定めた方向に進行方向を有する磁場を形成するよう配置されており、本実施の形態1の場合には、コイル32によって形成される直線磁場の進行方向が基準座標軸におけるy軸方向となるよう配置されている。また、コイル34は、後述する磁力線方位データベース43に記憶された磁場方向と同一の拡散磁場を形成する位置に固定されている。
【0038】
図4は、拡散磁場形成部11によって形成される拡散磁場の態様を示す模式図である。図4に示すように、拡散磁場形成部11に備わるコイル34は、被検体1の表面上に渦巻き状に形成されており、拡散磁場形成部11によって形成される拡散磁場は、図4に示すようにコイル34(図4にて図示省略)によって形成された磁場において、磁力線が放射状に一旦拡散し、再びコイル34に入射するよう形成されている。
【0039】
なお、本実施の形態1において第1位置検出用磁場として地磁気を用いる関係上、第2位置検出用磁場たる直線磁場および第3位置検出用磁場たる拡散磁場は、地磁気と周波数が異なるよう交流磁場によって形成される。かかる交流磁場を形成するため、直線磁場形成部10および拡散磁場形成部11は、それぞれ電流源33、35において交流電流を出力することとする。
【0040】
次に、処理装置12の構成について説明する。図5は、処理装置12の具体的な構成を模式的に示すブロック図である。まず、処理装置12は、カプセル型内視鏡2によって送信された無線信号の受信処理を行う機能を有し、かかる機能に対応して、受信アンテナ7a〜7dのいずれかを選択する受信アンテナ選択部36と、選択した受信アンテナを介して受信された無線信号に対して復調処理等を行うことによって、無線信号に含まれる原信号を抽出する受信回路37と、抽出された原信号を処理することによって画像信号を再構成する信号処理部38とを有する。信号処理部38によって再生された画像信号は、後述する記録部44に対して出力される。
【0041】
また、処理装置12は、カプセル型内視鏡2によって検出された磁場強度等に基づき、被検体1に対して固定された基準座標軸とカプセル型内視鏡2に対して固定された対象座標軸とがなす方位と、カプセル型内視鏡2の位置とを検出する機能を有する。具体的には、処理装置12は、カプセル型内視鏡2によって送信された無線信号の内、カプセル型内視鏡2が位置する領域における検出磁場データを受信回路37から入力し、所定の周波数帯ごとに複数の検出磁場データを抽出する周波数成分抽出部39と、周波数成分抽出部39によって抽出された複数の検出磁場データの少なくとも一つに関して別個独立にデータ強度の調整を行うデータ強度調整部40と、必要に応じてデータ強度調整部40によって強度調整が行われた検出磁場データに基づき基準座標軸に対する対象座標軸のなす方位を導出する方位導出部41と、検出磁場データ等に基づき、被検体1内におけるカプセル型内視鏡2の位置を導出する位置導出部42と、位置導出部42に対して拡散磁場の磁力線の方位に関する情報を供給する磁力線方位データベース43とを備える。
【0042】
周波数成分抽出部39は、受信回路37によって受信処理された無線信号のうち、カプセル型内視鏡2に備わる磁場センサ16によって検出された磁場データを、所定の周波数帯毎に抽出するためのものである。具体的には、周波数成分抽出部39は、あらかじめ第1、第2および第3位置検出用磁場に対応した第1、第2および第3周波数の具体的な値を把握しており、かかる第1、第2および第3周波数を含む周波数帯の検出磁場データをそれぞれ抽出し、抽出した周波数帯毎の検出磁場データをデータ強度調整部40に対して出力する機能を有する。なお、「周波数帯毎に」抽出すると述べたが、周波数成分抽出部39は、少なくともそれぞれ第1、第2および第3周波数の磁場データを含んだものをそれぞれ抽出すれば良く、抽出する帯域の幅等に関して特に制限はない。
【0043】
データ強度調整部40は、周波数成分抽出部39によって周波数帯毎に抽出された複数の磁場データに対して、必要に応じて別個独立に強度調整を行うためのものである。すなわち、データ強度調整部40は、所定の条件、例えば方位導出部41、位置導出部42による処理における許容範囲内のピーク強度となるようそれぞれの磁場データの強度の調整を行う機能を有する。かかる強度調整を必要に応じて行った後、第1、第2および第3位置検出用磁場に対応した磁場信号S1、S2、S3を出力する。
【0044】
方位導出部41は、被検体1に対するカプセル型内視鏡2の指向方向、より具体的には被検体1に固定された基準座標軸に対して、カプセル型内視鏡2に固定された対象座標軸のなす方位を導出するためのものである。具体的には、方位導出部41は、データ強度調整部40から入力された、第1、第2位置検出用磁場に対応した磁場信号S1、S2と、後述する地磁気方位導出部49から入力された地磁気方位に関する情報に基づき基準座標軸に対する対象座標軸のなす方位を導出する。
【0045】
位置導出部42は、被検体1に対するカプセル型内視鏡2の位置、より具体的には、カプセル型内視鏡2に固定された対象座標軸の基準座標軸上における位置を導出するためのものである。具体的には、位置導出部42は、方位導出部41によって導出されたカプセル型内視鏡2の方位と、データ強度調整部40から出力される磁場信号S2、S3と、磁力線方位データベース43に格納されたデータに基づきカプセル型内視鏡2の位置の導出を行う機能を有する。
【0046】
また、処理装置12は、地磁気の進行方向を導出する地磁気方位導出部49を備える。地磁気方位導出部49は、地磁気センサ9の検出結果に基づき、基準座標軸における地磁気の進行方向を導出する機能を有する。地磁気方位導出部49によって導出された地磁気の進行方向は、方位導出部41に対して出力され、後述する方位導出処理の際に用いられることとなる。
【0047】
また、処理装置12は、信号処理部38によって再構成された画像信号と、方位導出部41によって導出されたカプセル型内視鏡2の方位と、位置導出部42によって導出されたカプセル型内視鏡2の位置とを記録する記録部44を有する。記録部44は、それ自体が情報を記憶する構造としても良いが、本実施の形態1では、携帯型記録媒体5に対して上述の情報を出力する出力インタフェースとしての機能を果たすこととする。記録部44によって被検体内画像に対応した画像信号およびカプセル型内視鏡2の方位・位置が携帯型記録媒体5に書き込まれることにより、医師等は、携帯型記録媒体5を表示装置4に装着することによって被検体1内部の画像および画像が撮像された位置等を確認することが可能となる。
【0048】
さらに、処理装置12は、カプセル型内視鏡2に対して駆動電力を無線送信する機能を有し、送信する無線信号の周波数を規定する発振器45と、発振器45から出力される無線信号の強度を増幅する増幅回路46と、無線信号の送信に用いる送信アンテナを選択する送信アンテナ選択部47とを備える。かかる無線信号は、カプセル型内視鏡2に備わる受信アンテナ28によって受信され、カプセル型内視鏡2の駆動電力として機能することとなる。また、処理装置12は、受信アンテナ選択部36および送信アンテナ選択部47によるアンテナ選択態様を制御する選択制御部48を備える。選択制御部48は、方位導出部41および位置導出部42によってそれぞれ導出されたカプセル型内視鏡2の方位および位置に基づき、カプセル型内視鏡2に対する送受信に最も適した送信アンテナ8および受信アンテナ7を選択する機能を有する。さらに、処理装置12は、各構成要素に対して駆動電力を供給する機能を有する電力供給部51を備える。
【0049】
次に、本実施の形態1にかかる被検体内導入システムの動作について説明する。以下では、被検体内導入システムの動作のうち、本発明にとって特に重要な処理装置12内における処理、具体的には周波数成分抽出部39、データ強度調整部40の処理について説明した後、方位導出部41および位置導出部42による処理について説明する。
【0050】
図6は、本実施の形態1にかかる被検体内導入システムにおいて、位置検出装置3を構成する処理装置12に備わる周波数成分抽出部39およびデータ強度調整部40による処理を説明するための模式図である。周波数成分抽出部39は、受信回路37によって受信処理された無線信号の中から、カプセル型内視鏡2に備わる磁場センサ16によって検出された検出磁場データ54を、例えば電圧データの形態で取得する。かかる検出磁場データは、所定の時間長に渡る磁場強度の時間変化を情報として含むものであり、より具体的には、複数の周波数成分の線形和によって検出磁場データ54は形成される。
【0051】
かかる検出磁場データ54に対して、周波数成分抽出部39は、所定の周波数を含む周波数帯の成分として、図6に示すように第1磁場データ56、第2磁場データ57および第3磁場データ58の抽出処理を行う。具体的には、周波数成分抽出部39は、あらかじめ第1、第2、第3位置検出用磁場の周波数f1、f2、f3の値を把握しており、かかる周波数f1、f2、f3を含む周波数帯に関する検出データを抽出することによって第1磁場データ56、第2磁場データ57および第3磁場データ58を生成し、それぞれの磁場データをデータ強度調整部40に対して出力する。
【0052】
データ強度調整部40は、入力された第1磁場データ56、第2磁場データ57および第3磁場データ58に対して、それぞれ別個独立に強度調整を行う。図6に示した例では、例えば充分な強度を有する第1磁場データ56に対しては増幅率を1倍とした強度調整処理を行い、微弱な強度を有する第2磁場データ57および第3磁場データ58に関しては増幅率を1000倍とした強度調整処理を行うことによって、それぞれの磁場データに基づき磁場信号S1、S2、S3を生成し、方位導出部41および位置導出部42に対して適切な磁場信号を出力する。なお、データ強度調整部40の強度調整処理における増幅率等は、方位導出部41および位置導出部42における処理可能強度範囲に基づき定められることとする。以上の周波数成分抽出部39およびデータ強度調整部40の処理によって、カプセル型内視鏡2に備わる磁場センサ16における検出強度の差にかかわらず、第1、第2、第3位置検出用磁場に対応した磁場信号S1、S2、S3に関して、それぞれ適切な強度の磁場信号として方位導出部41および位置導出部42に出力されることとなる。
【0053】
次に、方位導出部41および位置導出部42の処理について説明する。本実施の形態1にかかる被検体内導入システムは、被検体1に対して固定された基準座標軸と、カプセル型内視鏡2に対して固定された対象座標軸との間で位置関係を導出する構成を有し、具体的には、基準座標軸に対する対象座標軸の方位を導出した上で、導出した方位を利用しつつ基準座標軸上における対象座標軸の原点の位置、すなわち被検体1内部におけるカプセル型内視鏡2の位置を導出することとしている。従って、以下ではまず方位導出メカニズムについて説明した後、導出した方位を用いた位置導出メカニズムについて説明することとなるが、本発明の適用対象がかかる位置検出メカニズムを有するシステムに限定されないことはもちろんである。
【0054】
方位導出部41によって行われる方位導出メカニズムについて説明する。図7は、被検体1中をカプセル型内視鏡2が移動している際における基準座標軸と対象座標軸との関係を示す模式図である。既に説明したように、カプセル型内視鏡2は、被検体1内部を通過経路に沿って進行しつつ、進行方向を軸として所定角度だけ回転している。従って、カプセル型内視鏡2に対して固定された対象座標軸は、被検体1に固定された基準座標軸に対して、図7に示すような方位のずれを生じることとなる。
【0055】
一方で、直線磁場形成部10は、被検体1に対して固定される。従って、直線磁場形成部10によって形成される直線磁場は、基準座標軸に対して一定の方向、具体的にはy軸方向に進行する。
【0056】
本実施の形態1における方位導出は、かかる地磁気および直線磁場を利用して行われる。具体的には、まず、カプセル型内視鏡2に備わる磁場センサ16によって、地磁気および直線磁場の対象座標軸における進行方向が検出される。磁場センサ16は、対象座標軸におけるX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の磁場成分を検出するよう構成されており、検出された地磁気および直線磁場の対象座標軸における進行方向に関する情報は、無線送信部19を介して位置検出装置3に対して送信される。
【0057】
カプセル型内視鏡2によって送信された無線信号の一部は、データ強度調整部40等による処理を経て、磁場信号S1、S2として出力される。例えば、図7の例においては、磁場信号S1には、地磁気の進行方向として座標(X1、Y1、Z1)に関する情報が含まれ、磁場信号S2には、直線磁場の進行方向として座標(X2、Y2、Z2)に関する情報が含まれる。これに対して、方位導出部41は、磁場信号S1、S2の入力を受けて基準座標軸に対する対象座標軸の方位の導出を行う。具体的な処理としては以下の通りである。
【0058】
まず、方位導出部41は、被検体1に対して固定された基準座標軸における直線磁場および地磁気の進行方向を把握する。具体的には、上述したように直線磁場形成部10は被検体1に対して固定されており、形成される直線磁場の進行方向は既知の方向(本実施の形態1では上述したようにy軸方向)となることから、方位導出部41は、あらかじめ直線磁場の基準座標軸における進行方向について把握する。また、地磁気の進行方向に関しては、地磁気センサ9と地磁気方位導出部49の作用によって把握する。すなわち、地磁気センサ9は地磁気に関して基準座標軸における各成分を検出する機能を有しており、地磁気センサ9による検出結果と検出結果に対する地磁気方位導出部49の処理によって、方位導出部41は基準座標軸における地磁気の進行方向を把握する。
【0059】
この結果、直線磁場および地磁気に関して、方位導出部41は対象座標軸と基準座標軸のそれぞれにおける進行方向を把握することとなり、対象座標軸と基準座標軸との間の対応関係が明らかとなる。その後は、所定の座標変換処理を行うことによって、対象座標軸におけるX軸、Y軸およびZ軸に関して基準座標軸における座標を導出し、かかる座標を方位情報として出力する。以上が方位導出部41による方位導出メカニズムである。
【0060】
次に、位置導出部42によるカプセル型内視鏡2の位置導出メカニズムを説明する。位置導出部42は、データ強度調整部40から磁場信号S2、S3が入力され、方位導出部41から方位情報が入力されると共に、磁力線方位データベース43に記憶された情報を入力する構成を有する。位置導出部42は、入力されるこれらの情報に基づき、以下の通りにカプセル型内視鏡2の位置導出を行う。
【0061】
まず、位置導出部42は、磁場信号S2を用いて、直線磁場形成部10とカプセル型内視鏡2との間の距離の導出を行う。磁場信号S2は、カプセル型内視鏡2の存在領域における直線磁場の検出結果に対応するものであり、直線磁場は、直線磁場形成部10が被検体1外部に配置されたことに対応して、直線磁場形成部10から離隔するにつれてその強度が減衰する特性を有する。かかる特性を利用して、位置導出部42は、直線磁場形成部10近傍における直線磁場の強度(直線磁場形成部10に流す電流値より求まる)と、磁場信号S2から求まるカプセル型内視鏡2の存在領域における直線磁場の強度とを比較し、直線磁場形成部10とカプセル型内視鏡2との間の距離rを導出する。かかる距離rを導出した結果、図8に示すように、カプセル型内視鏡2は、直線磁場形成部10から距離rだけ離れた点の集合である曲面52上に位置することが明らかとなる。
【0062】
そして、位置導出部42は、磁場信号S3、方位導出部41によって導出された方位情報および磁力線方位データベース43に記憶された情報に基づきカプセル型内視鏡2の曲面52上における位置を導出する。具体的には、磁場信号S3および方位情報に基づき、カプセル型内視鏡2の存在位置における拡散磁場の進行方向を導出する。磁場信号S3は、拡散磁場を対象座標軸に基づき検出した結果に対応する信号であるから、かかる磁場信号S3に基づく拡散磁場の進行方向に関して、方位情報を用いて対象座標軸から基準座標軸へ座標変換処理を施すことによって、カプセル型内視鏡2の存在位置における、基準座標軸における拡散磁場の進行方向が導出される。
【0063】
そして、磁力線方位データベース43は、基準座標軸における拡散磁場の進行方向と位置との対応関係を記録していることから、位置導出部42は、図9に示すように、磁力線方位データベース43に記憶された情報を参照することによって導出した拡散磁場の進行方向に対応した位置を導出し、導出した位置をカプセル型内視鏡2の位置として特定する。以上が位置導出部42による位置導出メカニズムである。
【0064】
次に、本実施の形態1にかかる被検体内導入システムの利点について説明する。本実施の形態1にかかる被検体内導入システムは、カプセル型内視鏡2の位置、位置検出用磁場の種別の相違等にかかわらず、複数の位置検出用磁場のそれぞれについて、方位導出部41および位置導出部42における処理が十分可能な程度の強度の磁場検出データを得ることが可能である。
【0065】
上述したように本実施の形態1では、カプセル型内視鏡2に備わる磁場センサ16の磁場検出結果に対して、周波数成分抽出部39によって複数の位置検出用磁場に応じた周波数帯の磁場データを抽出し、データ強度調整部40によって抽出した磁場データごとに別個独立に強度変調処理を行う構成を有する。従って、本実施の形態1では、第1磁場データ、第2磁場データおよび第3磁場データのそれぞれにおける強度が著しく相違するような場合であっても、例えば図6の例では、高い強度を有する第1磁場データ56に対しては強度を増幅すること無く、微弱な強度の第2磁場データ57、第3磁場データ58に対して所定の増幅率の強度増幅を行うことが可能となる。この結果、本実施の形態1にかかる被検体内導入システムでは、第1、第2および第3位置検出用磁場のそれぞれに関して方位導出部41および位置導出部42における処理が十分可能な強度に調整することが可能である。
【0066】
かかる利点は、本実施の形態1のように位置検出用磁場の一つとして地磁気を利用した場合に特に顕著なものとなる。すなわち、コイル等を備えて構成される直線磁場形成部10等によって形成される直線磁場等の強度は、地磁気の強度の1/1000程度の強度となることが一般的であるため、磁場センサ16によって得られた検出磁場データを一括して強度増幅した場合には、かかる強度比が維持されたまま強度が増幅されることとなる。このため、位置検出用磁場の一つとして地磁気を用いた従来の被検体内導入システムでは、地磁気に対応した磁場データの強度が処理不能な程度となることを回避するために強度増幅率を低い値にせざるを得ず、微弱な強度の位置検出用磁場に対応した磁場データが充分な強度が得られないこととなり、カプセル型内視鏡の正確な位置検出の妨げとなっていた。
【0067】
これに対して、本実施の形態1では、位置検出用磁場に対応した周波数毎に磁場データを抽出し、抽出した磁場データに対して別個独立の強度調整を行うこととしている。従って、カプセル型内視鏡2が位置する領域において、直線磁場形成部10によって形成された直線磁場の強度が地磁気の1/1000程度の強度であった場合でも、方位導出部41および位置導出部42における処理が行われる段階では、ほぼ同等の強度を有する磁場信号を用いた処理が可能であり、正確な位置検出を行うことが可能である。
【0068】
また、本実施の形態1にかかる被検体内導入システムでは、雑音磁場が位置検出に及ぼす影響を低減できるという利点も有する。すなわち、本実施の形態1では、周波数成分抽出部39は、磁場センサ16によって得られた検出磁場データ54の中から位置検出用磁場の周波数f1、f2、f3に対応した第1磁場データ56〜第3磁場データ58を抽出する。従って、f1、f2、f3を含む周波数帯から外れた周波数を有する雑音磁場に起因した雑音データに関して、データ強度調整部40さらには方位導出部41、位置導出部42に出力されることを抑制することが可能であり、位置検出の際に雑音磁場が及ぼす影響を低減することが可能である。なお、かかる利点を充分に享受する観点からは第1、第2、第3位置検出用磁場の周波数f1、f2、f3のそれぞれの具体的な値を、雑音磁場の周波数、例えば電子機器にて一般的に用いられる周波数帯から充分離れた値とすることが好ましい。
【0069】
さらに、本実施の形態1にかかる被検体内導入システムでは、地磁気以外の位置検出用磁場の強度を従来と同等にした場合であっても、従来と比較して位置検出が可能範囲を拡大することが可能である。上述したように、地磁気と地磁気以外の位置検出用磁場の強度差に関わらず本実施の形態1にかかる被検体内導入システムでは正確な位置検出を行うことが可能である。従って、本実施の形態1にかかる被検体内導入システムでは、地磁気以外の位置検出用磁場の強度に関して、磁場センサ16が検出可能な磁場強度を上回っている限りほぼ正確な位置検出を行うことが可能となり、位置検出可能な範囲が従来よりも拡大されるという利点を有する。
【0070】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる被検体内導入システムについて説明する。本実施の形態2にかかる被検体内導入システムは、地磁気の代替磁場として所定の直線磁場を用いることとしている。
【0071】
図10は、本実施の形態2にかかる被検体内導入システムの全体構成を示す模式図である。図10に示すように、本実施の形態2にかかる被検体内導入システムは、実施の形態1と同様にカプセル型内視鏡2、表示装置4および携帯型記録媒体5を有する一方で、位置検出装置61が、実施の形態1における位置検出装置3と異なる構成を有する。具体的には、位置検出装置61は、地磁気センサ9が省略され、第1直線磁場形成部62、第2直線磁場形成部63および処理装置64を備えた構成を有する。なお、本実施の形態2において、実施の形態1と同様の名称・符号を付した構成要素に関しては、以下で特に言及しない限り、実施の形態1と同様の構造・機能を有することとする。
【0072】
第1直線磁場形成部62は、実施の形態1における地磁気の代替磁場である第1直線磁場を形成するためのものである。具体的には、第1直線磁場形成部62は、図10にも示すように被検体1の胴部を覆うよう形成されたコイルを備えた構成を有し、かかるコイルによって磁場を形成する機能を有する。かかるコイルは、被検体1に対して固定された状態で配置されることとし、より具体的には、基準座標軸に対して固定された状態で配置されることとする。
【0073】
図11は、第1直線磁場形成部62によって形成される第1直線磁場の態様について示す模式図である。図11に示すように、第1直線磁場は基準座標軸におけるz軸方向に進行するよう構成されており、かかる第1直線磁場が地磁気の代わりに位置検出用磁場として機能する。
【0074】
第2直線磁場形成部63は、実施の形態1における直線磁場形成部10に相当するものである。本実施の形態2においては、上述のように地磁気の代わりの第1直線磁場を形成することとしたため、第1直線磁場との区別を明確化する目的の下、実施の形態1における直線磁場を「第2直線磁場」と称し、かかる第2直線磁場を形成する構成として「第2直線磁場形成部63」と称している。従って、実質的には第2直線磁場形成部63は、実施の形態1における直線磁場形成部10と同一の構成・機能を有する。
【0075】
次に、処理装置64について説明する。図12は、処理装置64の構成を示す模式的なブロック図である。図12に示すように、処理装置64は、本実施の形態2において地磁気を位置検出用磁場として使用しないことに対応して、実施の形態1における処理装置12に備わる地磁気方位導出部49を省略する。また、処理装置64は、実施の形態1における方位導出部41と異なる態様で方位を導出する方位導出部65を新たに備えた構成を有する。
【0076】
本実施の形態2において地磁気の代替磁場として機能する第1直線磁場は上述のように第1直線磁場形成部62によって形成される。ここで、第1直線磁場形成部62は、基準座標軸に対して固定された状態で配置されることから、第1直線磁場の進行方向に関しても基準座標軸に対して固定されることとなる。かかる特性を利用して、方位導出部65は、あらかじめ第1直線磁場の進行方向(図11の例では、z軸方向)を把握した上で、磁場センサ16によって検出された対象座標軸における第1直線磁場の進行方向との対応関係等に基づき方位導出を行うこととする。
【0077】
このように、位置検出用磁場として地磁気を使用しない被検体内導入システムであっても、周波数成分抽出部39およびデータ強度調整部40を備えることによって実施の形態1と同様の利点を享受することが可能である。すなわち、カプセル型内視鏡2の位置によっては、第1直線磁場、第2直線磁場および拡散磁場に対応した第1、第2および第3磁場データ間の強度差が著しいものとなる場合が生じうる。かかる場合に周波数成分抽出部39によって各磁場データを抽出した後、それぞれに対して別個独立にデータ強度調整部40による強度調整を行うことによって、実施の形態1の場合と同様に正確な位置検出を行うことが可能である。
【0078】
また、本実施の形態2では、実施の形態1で説明した第2の利点、すなわち雑音磁場の除去の点から顕著な利点を有する。地磁気を位置検出用磁場として使用しない関係上、本実施の形態2では、地磁気は雑音磁場の一つとして機能することとなり、かかる雑音磁場を含む磁場信号が方位導出部65および位置導出部42に入力することによって、正確な位置検出の妨げになるという問題が生ずる。特に、地磁気は第1直線磁場形成部62等によって形成される位置検出用磁場と比較して非常に大きな強度を有することから、このような地磁気の影響を排除することは、正確な位置検出を可能とする観点からは非常に重要なこととなる。これに対して、本実施の形態2では、実施の形態1と同様に位置検出用磁場の周波数に対応した周波数帯の磁場データが周波数成分抽出部39によって抽出される構成を採用する。従って、本実施の形態2にかかる被検体内導入システムでは、地磁気に対応した磁場データがデータ強度調整部40、方位導出部65および位置導出部42に対して入力されることはなく、地磁気が位置検出に及ぼす影響を低減することが可能である。
【0079】
以上、実施の形態1、2に渡って本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定して解釈するべきではなく、当業者であれば様々な実施例、変形例に想到することが可能である。例えば、実施の形態1、2では、3種類の位置検出用磁場を用いた位置検出を行うことを例として説明したが、位置検出用磁場の数は3種類に限定されるのではなく、一般に複数の位置検出用磁場を用いることによって、実用上支障のない程度の位置検出を行うことが可能であり、周波数成分抽出部39によって抽出する磁場データの個数についても、複数であれば任意の個数として良い。
【0080】
また、周波数成分抽出部39によって抽出する磁場データは、必ずしも位置検出用磁場の個数と対応させる必要はない。例えば実施の形態1において、地磁気たる第1位置検出用磁場は第2、第3位置検出用磁場の双方と比較して非常に大きな強度を有する一方、第2、第3位置検出用磁場とはほぼ同等の強度を有するものと認められる場合がある。かかる場合には、周波数成分抽出部39は、第1位置検出用磁場に対応した周波数帯の磁場データと、第2、第3位置検出用磁場の双方の周波数を含む周波数帯の磁場データとを抽出することとしても良い。このような構成を採用した場合であっても、著しく高い強度を有する地磁気と、地磁気以外の位置検出用磁場との間の強度差を縮めるようデータ強度調整部40による強度調整を行うことが可能であり、従来と比較して正確な位置検出を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施の形態1にかかる被検体内導入システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】被検体内導入システムに備わるカプセル型内視鏡の構成を示す模式的なブロック図である。
【図3】位置検出装置に備わる第2直線磁場形成部および拡散磁場形成部の構成を示すと共に、第2直線磁場形成部によって形成される第2直線磁場の態様を示す模式図である。
【図4】拡散磁場形成部によって形成される拡散磁場の態様を示す模式図である。
【図5】位置検出装置に備わる処理装置の構成を示す模式的なブロック図である。
【図6】処理装置に備わる周波数成分抽出部およびデータ強度調整部の機能を説明するための模式図である。
【図7】基準座標軸と対象座標軸との関係を示す模式図である。
【図8】位置導出の際における第2直線磁場の利用態様を示す模式図である。
【図9】位置導出の際における拡散磁場の利用態様を示す模式図である。
【図10】実施の形態2にかかる被検体内導入システムの全体構成を示す模式図である。
【図11】被検体内導入システムに備わる第1直線磁場形成部によって形成される第1直線磁場の態様を示す模式図である。
【図12】被検体内導入システムに備わる処理装置の構成を示す模式的なブロック図である。
【符号の説明】
【0082】
1 被検体
2 カプセル型内視鏡
3 位置検出装置
4 表示装置
5 携帯型記録媒体
7a〜7d 受信アンテナ
8a〜8d 送信アンテナ
9 地磁気センサ
10 直線磁場形成部
11 拡散磁場形成部
12 処理装置
14 被検体内情報取得部
15 信号処理部
16 磁場センサ
17 増幅部
18 変換部
19 無線送信部
20 切替部
21 タイミング発生部
22 LED
23 LED駆動回路
24 CCD
25 CCD駆動回路
26 送信回路
27 送信アンテナ
28 受信アンテナ
29 電力再生回路
30 昇圧回路
31 蓄電器
32 コイル
33 電流源
34 コイル
35 電流源
36 受信アンテナ選択部
37 受信回路
38 信号処理部
39 周波数成分抽出部
40 データ強度調整部
41 方位導出部
42 位置導出部
43 磁力線方位データベース
44 記録部
45 発振器
46 増幅回路
47 送信アンテナ選択部
48 選択制御部
49 地磁気方位導出部
51 電力供給部
52 曲面
54 検出磁場データ
56 第1磁場データ
57 第2磁場データ
58 第3磁場データ
61 位置検出装置
62 第1直線磁場形成部
63 第2直線磁場形成部
64 処理装置
65 方位導出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1周波数の第1位置検出用磁場および前記第1周波数と異なる第2周波数の第2位置検出用磁場とを用いて検出対象の位置検出を行う位置検出装置であって、
前記検出対象が位置する領域における磁場の強度に関する検出結果である検出磁場データから、前記第1周波数を含む周波数帯の検出磁場データである第1磁場データと、前記第2周波数を含む周波数帯の検出磁場データである第2磁場データとを抽出する周波数成分抽出手段と、
抽出された前記第1磁場データおよび前記第2磁場データの少なくとも一方に対して、他方と別個独立に強度調整を行うデータ強度調整手段と、
必要に応じて前記データ強度調整手段による強度調整が行われた前記第1磁場データおよび前記第2磁場データを用いて前記検出対象の位置を導出する位置導出手段と、
を備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第1検出用磁場は、地磁気であり、
前記第2検出用磁場を形成する磁場形成手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記データ強度調整手段は、前記第1磁場データのピーク強度および前記第2磁場データのピーク強度のそれぞれに関して、前記位置導出手段における処理可能範囲内の強度となるよう強度調整を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
被検体に導入され、該被検体の内部を移動する被検体内導入装置と、少なくとも第1周波数の第1位置検出用磁場および前記第1周波数と異なる第2周波数の第2位置検出用磁場とを用いて前記被検体内導入装置の位置検出を行う位置検出装置とを備えた被検体内導入システムであって、
前記被検体内導入装置は、
当該被検体内導入装置が位置する領域における前記位置検出用磁場を検出する磁場センサと、
前記磁場センサによる検出結果を含む無線信号を送信する無線送信手段と、
を備え、
前記位置検出装置は、
前記検出対象が位置する領域における磁場の強度に関する検出結果である検出磁場データから、前記第1周波数を含む周波数帯の検出磁場データである第1磁場データと、前記第2周波数を含む周波数帯の検出磁場データである第2磁場データとを抽出する周波数成分抽出手段と、
抽出された前記第1磁場データおよび前記第2磁場データの少なくとも一方に対して、他方と別個独立に強度調整を行うデータ強度調整手段と、
必要に応じて前記データ強度調整手段による強度調整が行われた前記第1磁場データおよび前記第2磁場データを用いて前記被検体内導入装置の位置を導出する位置導出手段と、
を備えたことを特徴とする被検体内導入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−149686(P2006−149686A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344957(P2004−344957)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】