説明

位置検出装置

【課題】従来のタッチセンサは検出面全体に配線が必要なため検出面の透明度が落ち、配線部が外部からの電磁ノイズを拾うため大面積化が難しかった。
【解決手段】インタラクティブボードの周囲を、内側が反射部材で構成される楕円形の光反射部7で囲む。光反射部7の二つの焦点のうち、一方に発光手段4を設け、他方に受光手段5を設ける。インタラクティブボード上を指やペン等の指示手段1で指示すると、指示手段1が、発光手段4が走査した光を遮光するため、そのときの発光手段4の走査角度から、インタラクティブボード上の指示手段1による指示座標位置3を検出できる。また、発光手段4と受光手段5とを結ぶ直線で区切られた二つの領域に、二つのインタラクティブボードを設けることで、一組の発光手段4と受光手段5を使って2点同時にインタラクティブボード上の指示手段1による指示座標位置3を検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等の自発光型表示装置やプロジェクタ等を用いてホワイトボード等に画像を表示させる投影型表示装置の表示画面上において、指やペン状の指示手段により指示された位置を検出するための位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶ディスプレイ等の自発光表示装置に用いられる位置検出装置、いわゆるタッチパネルには抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、光学式等の各種方式が開発されている。
【0003】
このなかで、抵抗膜方式や静電容量方式ではタッチパネル部に透明の電極膜を構成し、タッチパネル部における電気的抵抗値変化や電気容量変化を検出してタッチパネル部の座標を認識するものである。また、超音波方式は表面弾性波の減衰を検知して座標を認識するものである。また、光学式は指やペン等の指示手段により光を遮光するかどうかを光センサで感知してタッチ箇所の座標位置を検出するものである。
【0004】
これらの方式のなかで、抵抗膜方式や静電容量方式ではタッチ部に構成される電極膜が透明電極膜であっても、可視光波長領域にある程度の吸収があるため透過率が落ちてしまう。よって、ディスプレイで表示される画像の鮮明さ等に悪影響を与える問題がある。また、指示手段とタッチ部との接触を繰り返すことで電極膜が破損する等の問題がある。
【0005】
更に、近年ディスプレイサイズの大型化によりタッチ部のサイズも大きくなりつつあることで、電極膜の面積が大きくなり、ディスプレイ本体や周囲の電磁ノイズの影響を受けやすくなるため、誤動作を起こすという課題がある。
【0006】
更に、電極膜を大面積化するには低電気抵抗の確保、製造装置の大型化等の課題もある。
【0007】
また、超音波方式では人の指によるタッチは認識できず、専用のペンを用いてタッチする必要がある。
【0008】
それに対して、光学式ではディスプレイ部に電極膜は不要であり、光を検出して位置検出等をするため、外部からの電磁ノイズの影響を受けないメリットがある。そのため、これまで大型の位置検出装置には特に光学式が好適に用いられている。
【0009】
これまで光学式の位置検出装置としては以下のようなものが提案されている。
【0010】
図15は、従来例に係る位置検出装置の平面概略図である。(特許文献1)では、図15に示すように、ガラス等の透明パネルで作成された検出領域2の側部の二辺にLED(Light Emitting Device)等の複数の発光手段4を並べ、対向する二辺に、それぞれの発光手段4に対応する複数のPD(Photodiode)等の受光手段5が並べられている。LEDから発せられた光ビーム6の光路が指やペン等の指示手段1により遮られると、その遮られた位置の横座標と縦座標が受光手段5で感知できるため、指示手段1の指示座標位置3を検出できる仕組みである。
【0011】
図16は、従来例に係る位置検出装置の平面概略図であり、(特許文献2)に開示され
ているものである。図16(a)は、位置検出装置の構成と原理を示す図であり、図16(b)は、発光及び受光の原理を示す図である。
【0012】
概要を説明すると、二つの光学ユニット14内には、図16(b)に示すように、それぞれ発光手段4と受光手段5が設けられており、発光手段4からの光ビーム6をレンズ17及びハーフミラー16を介してパネルの二つの側辺部と底辺部に設けられた再帰性反射部15へ投光する。再帰性反射部15はその性質上、光ビーム6の入射方向と同じ方向(入射方向に対し180°の方向)に光ビーム6を反射させることができる。この反射された光ビーム6を再び光学ユニット内に設置されたハーフミラー16及びレンズ17を介して受光手段5に導く構造である。指やペン等の指示手段1が検出領域2内にタッチされると、その指示手段1により光ビーム6が遮られるため、その遮られたときの光ビーム6の角度を受光手段5で感知し、指示手段1の指示座標位置3を検出する仕組みである。二つの光学ユニット14により三角測量の原理を用いて指示手段1の指示座標位置3を算出できる。この方法では、部品点数を少なくでき、指やペン等の指示手段1の指示座標位置3を検出することがきる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−099202号公報
【特許文献2】特開平11―327770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、図15に示すような光学式の位置検出装置では、ディスプレイサイズが大きくなれば、それに比例して発光手段と受光手段の部品数が増え、コスト面、製造面で大きな課題がある。
【0015】
また、発光手段4や受光手段5の取り付け間隔が素子の大きさに依存したものとなり、分解能を高くすることができないという課題もある。
【0016】
また、図16に示すような光学式の位置検出装置では、光学ユニット14を二つ用意する必要があり、光学ユニット14間の位置精度等の光学調整が必要であるという課題がある。
【0017】
また、図16に示すような光学系の配置では同時に2人による、指やペン等の指示手段1の指示座標位置3を検出することが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような課題を解決するため、本発明の位置検出装置は、平面からなる有限の検出領域に存在する指示手段の任意の指示座標位置あるいは、前記検出領域内に存在する前記指示手段の指示範囲を検出するための位置検出装置であり、前記検出領域内に光ビームを投光するための、任意の楕円体の一つの焦点に設けられた発光手段と、投光された光ビームを反射、集光する前記楕円体からなり、あるいは前記楕円体の一部からなる光反射部と、前記光反射部で反射された光ビームを受光する前記楕円体の他方の焦点に設置に設けられた受光手段からなることを特徴としている。
【0019】
また、前記検出領域が前記発光手段と前記受光手段とを含む直線領域を含まないことを特徴としている。
【0020】
また、前記光反射部が前記検出領域に含まれず、前記検出領域の周辺領域に配置されてなることを特徴としている。
【0021】
また、前記光反射部が一つの楕円体の一部からなることを特徴としている。
【0022】
また、前記検出領域が、前記発光手段と前記受光手段とを含む直線領域を含まず、かつ前記検出領域が、前記直線で区切られた二つの領域の両方に二つ以上存在することを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光学式の位置検出装置により、検出領域内に光ビームを投光するための発光手段と、投光された光ビームを受光して信号を得るための受光手段とを楕円体の光反射部の焦点にあたる部分に配置させることで、ディスプレイ部の透明度が確保でき、外部ノイズ耐性を確保することができ、より少ない部品点数でしかも位置精度がよく、指示手段の指示座標位置あるいは指示手段の指示範囲を検出させることができる位置検出装置を提供することができる。更に、同時に2人による、指やペン等の指示手段の指示座標位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る位置検出装置の利用例を示す概略図
【図2】本発明に係る位置検出装置の利用例を示す概略図
【図3】本発明に係る位置検出装置の一実施の形態の概略を示す平面図
【図4】本発明に係る位置検出装置の一実施の形態の概略を示す平面図
【図5】本発明に係る位置検出装置の一実施の形態の概略を示す平面図
【図6】本発明に係る位置検出装置の一実施の形態の概略を示す平面図
【図7】本発明に係る位置検出装置の一実施の形態の概略を示す平面図
【図8】本発明に係る位置検出装置の利用例を示す概略図
【図9】本発明に係る位置検出装置の利用例を示す概略図
【図10】本発明に係る位置検出装置の実施例1を示した図
【図11】本発明に係る位置検出装置の実施例1における指示座標位置の計算手順を示す解説図
【図12】本発明に係る位置検出装置の実施例1における基本回路構成を示す概略図
【図13】本発明に係る位置検出装置の実施例2を示した図
【図14】本発明に係る位置検出装置の実施例2における基本回路構成を示す概略図
【図15】従来例に係る位置検出装置の平面概略図
【図16】従来例に係る位置検出装置の平面概略図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の位置検出装置の例を、図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は以下に説明するものに限定されるものではない。
【0026】
図1は本発明に係る位置検出装置の利用例を示す概略図である。位置検出装置を含む出力装置として自発光型のディスプレイを例に挙げており、指示手段1として人の指先を例として示している。人が自発光型のディスプレイ上の検出領域2の任意の点を指し示すことで、その指示座標位置3を位置検出装置が信号として読み取り、信号として読み取った指示座標位置3を自発光ディスプレイにより視覚的に出力させることで、ボタン操作、指示時間の検出、文字入力、文字書き速度の検出、入力画像選択、画像処理、指示検出等の入力インタフェースとして動作させることができる。
【0027】
但し、検出領域2は本発明に係る位置検出装置を作動させるに当たって、特に設けなければならない必須の構成要件ではなく、後述する光反射部7内において、指示座標位置3が検出できればよい。即ち、検出領域2を設けた場合、検出領域2外においても指示座標位置3を検出可能であり、検出領域2外において指示座標位置3を検出したとしても、本発明に係る位置検出装置の発明の範囲に含まれるものである。
【0028】
また、検出領域2として機能し得る構成、装置として、例えば、電子黒板、インタラクティブボード、タッチパネル、プラズマディスプレイパネル等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0029】
図2は本発明に係る位置検出装置の利用例を示す概略図であり、図1とは別のタイプの位置検出装置の利用分野の一例を示している。位置検出装置を含む機器として表示ボードを例に挙げており、この表示ボードと電気信号を送信できるように接続された出力装置として画像投影機器を例として挙げている。
【0030】
指示手段1として人の手に持たれたペン状の指示部材を例として示している。人が表示ボード上の検出領域2の任意の点を指し示すことで、その指示座標位置3を位置検出装置が信号として読み取り、信号として読み取った指示座標位置3を、画像投影機器へ信号として送信し、画像投影機器が指示座標位置3を含む検出領域2の画像を表示ボードに視覚的に出力させることで、ボタン操作、指示時間の検出、文字入力、文字書き速度の検出、入力画像選択、画像処理、指示検出等の入力インタフェースとして動作させることができる。
【0031】
図3乃至図6は本発明に係る位置検出装置の一実施の形態の概略を示す平面図である。ここで、本発明の位置検出装置において、指示手段1が示す指示座標位置3をどのように読み取るかの概略を説明する。
【0032】
図3で光反射部7は楕円体の形状からなる枠(楕円形状枠)からなり、その枠の内側に光を反射する機能を有する。例えば、鏡等の部材が前記枠の内側全面若しくはその一部に設けられている。ここで、楕円とは、2定点からの距離の和が一定値である点の集合が描く図形をいい、前記定点を焦点という。また、前記一定値は前記焦点の間隔より大きくなければならない。
【0033】
このように、楕円は二つの焦点を有するので、仮に楕円の内側面(焦点側の面)を反射材とした場合、一方の焦点から射出された光はどの方向に射出されても、必ず他方の焦点に到達するという性質を有する。
【0034】
楕円の形状を規定する数値として、楕円離心率eを定義できる。楕円離心率eとは、楕円形の潰れ具合を示すものであり、離心率eが0に近いほど真円に近くなり、離心率eが1に近いほど潰れた楕円になる。
【0035】
この光反射部7の内側の平面内において、放射状に光ビーム6を投光する発光手段4(発信手段)と、この光ビーム6を受光検出する受光手段5が含まれる。但し、ここでは光を例に挙げているが、これに限られるものではなく、音波、超音波、光波その他の搬送波を含む信号媒体であればよい。また、何らかの信号により変調されていない単なる搬送波の信号でもよく、有意なデータ、情報、信号により変調された信号でもよい。従って、発光手段4は光ビーム6の他、上記のように定義した全ての信号を発信させるよう構成することが可能であり、受光手段5も同様に全ての信号を受信できる構成とすることが可能である。
【0036】
この発光手段4と受光手段5は楕円体の焦点にあたる2点に、それぞれに設けられている。発光手段4と受光手段5は二つの焦点の内いずれかにそれぞれ配置すればよい。楕円体の基本性質上、発光手段4と受光手段5は楕円体の焦点に位置するため、発光手段4から投光された光ビーム6は楕円体の光反射部7で反射し、必ず受光手段5に集光されることになる。
【0037】
図3において、人の指を指示手段1として用いた場合の説明をすると、検出領域2内における表示ボード上のある点を指示手段1で光ビーム6を遮るように指示した場合、この指示座標位置3を照射する光ビーム6の経路として以下の2経路が存在する。一つは発光手段4から指示座標位置3へと直接投光される経路と、もう一つは発光手段4から一度光反射部7で反射された光ビーム6が指示座標位置3へ投光される経路である。
【0038】
つまり、指示手段1により、これら二つの経路の光ビーム6が指示座標位置3において遮光されることになる。よって、図3で示されたように二つの経路の交点として指示座標位置3を特定することができる。
【0039】
しかし、図4に示すように、楕円体の光反射部7で作られた楕円の二つの焦点を結ぶ直線上に指示手段1で指示座標位置3が与えられた場合、発光手段4から指示座標位置3へ直接投光される経路を進む光ビーム6は指示座標位置3に遮られたことを受光手段5は検知することができるが、発光手段4から投光されて光反射部7で反射された光は指示座標位置3を照射し得ないので、指示座標位置3に遮られたことを受光手段5は検知することができないことになり、二つの経路の光ビーム6の交点として指示座標位置3を特定することが困難となる。つまり、二つの焦点を結ぶ直線上のどこに指示座標位置3があるのかが特定できないことになる。
【0040】
そこで、図5に図示するように、光反射部7の楕円内であって光反射部7の楕円の焦点に設けられた発光手段4と受光手段5とを含む直線と重ならない領域に検出領域2を設けること、即ち発光手段4と受光手段5とを含む直線と検出領域2が重ならないようにすることで、検出領域2のどの位置であっても指示座標位置3を特定することが可能となる。尚、検出領域2の形状は図5に示すような四角形の形状に限定されるものではない。
【0041】
図6は楕円体の光反射部7を検出領域2内の位置検出に必要な部分として半分の楕円体とした構成を示している。このように楕円体の光反射部7は必要な部分のみで構成することができ、楕円体全部は必ずしも必要ない。
【0042】
図7は本発明に係る位置検出装置の一実施の形態の概略を示す平面図である。ここでは、発光手段4及び受光手段5で結ばれる直線領域(直線上)を含まない領域で、直線で区切られた二つの領域にそれぞれ検出領域2を設けている。つまり、発光手段4と受光手段5とを含む直線領域を含まない検出領域2が、前記直線領域で区切られた二つの領域の両方に二つ以上存在している。
【0043】
この場合、発光手段4及び受光手段5は二つの検出領域2に共用されることもでき、その場合部品点数を減らすことができる。また、光反射部7は図7で示すように一体型にすることも可能であるが、別々に設けることも可能である。図7では二つの検出領域2を設けているが、直線領域(直線上)を含まない領域であれば二つ以上の検出領域2を設けてもよい。また、複数の検出領域2の面積や形状は任意である。
【0044】
図8は本発明に係る位置検出装置の利用例を示す概略図であり、図7で示した位置検出装置の利用例を示す概略図である。図8のように二つの検出領域2を設けて、その間に一組の発光手段4と受光手段5を設けることで、同時に2人が示す指示座標位置3を検出することが可能である。尚、図8では光反射部7は省略して図示している。
【0045】
また、図9は本発明に係る位置検出装置の利用例を示す概略図であり、図7で示した別の位置検出装置の利用例である。ここでは、互いに大きさの異なる検出領域2を、発光手段4及び受光手段5の両側の発光手段4及び受光手段5とで結ばれる直線領域を含まない位置に設けており、二つの検出領域2の外側にはそれぞれ発光手段4と受光手段5とを共に共通の焦点とする、楕円離心率eが互いに異なる楕円体の一部からなる光反射部7を設けている。つまり、光反射部7が二つの楕円離心率eが互いに異なる楕円体の一部からなり、これら二つの楕円体がそれぞれ二つの検出領域2の周辺領域に配置されている。
【0046】
このようにすることで、二つの互いに大きさの異なる検出領域2の位置検出を一組の発光手段4と受光手段5で共用して行うことができる。図9では例として子供と大人が同時に位置検出装置を利用している図を示している。
【0047】
以下、本発明の位置検出装置の実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0048】
図10は本発明に係る位置検出装置の実施例1を示した図である。図10(a)は位置検出装置の構成の概略を示しており、図10(b)は発光手段からの投光角度に対する受光手段の信号の変化を示している。
【0049】
図10(a)に示している通り、指示手段1により表示ボード上の検出領域2内に指示座標位置3が指示されたとき、発光手段4から投光された二つの光ビーム6が指示手段1に遮光される。受光手段5は光信号を電気信号に変える機能を有しており、光ビーム6が指示手段1により遮光されると、図10(b)に示すように、二つの焦点を結ぶ直線軸に対する投光角度θ1及びθ2の点で電気信号の変化として検出することができる。そして、予め既知の複数の角度方向に光ビーム6を切り替えて投光させることで、遮光されたときの発光手段4からの光ビーム6の角度を計測し、遮光角度(投光角度)θ1と遮光角度(投光角度)θ2として数値データを得ることができる。
【0050】
また、遮光角度幅Δθ1,Δθ2により指示手段1の指示範囲をデータとして得ることができ、指示手段1のおよその大きさ(遮光角度幅)も検出することができる。例えば指とペンの遮光角度幅の違いにより指とペンの違いを検出したり、ペン先の既知の幅からペンの種類を特定したりできる。図10(a)における発光手段4は複数の光ビーム6を複数の角度方向に投光させる機能を備えており、時間によって光ビーム6の投光角度を切り替えることにより遮光角度(投光角度)の情報を得ることができる。
【0051】
上記の方法で得られた遮光角度θ1と遮光角度θ2から指示座標位置3を算出する方法は、以下の方法が一例として挙げられる。
【0052】
図11は本発明に係る位置検出装置の実施例1における指示座標位置の計算手順を示す解説図である。
【0053】
図11(a)で示すように、検出領域2を長方形とした場合に、底辺をX軸にとり、当該底辺の中点を縦に通る軸としてY軸をとる。そして、楕円体の光反射部7を検出領域2の周辺に配置し、この楕円体の長半径の長さをaとする。楕円の二つの焦点にあたる点にそれぞれ発光手段4と受光手段5を配置し、これら発光手段4と受光手段5の間の距離、つまり楕円体の焦点間距離をdとする。
【0054】
また、発光手段4と受光手段5のY座標をL、指示手段1により指示された指示座標位置3の座標を(x,y)とする。先ほどの発光手段4から投光された光ビーム6の遮光角度θ1と遮光角度θ2に対して、それぞれの遮光角度θ1,θ2に対応する受光手段5での二つの焦点を結ぶ直線に対する遮光角度をφ1,φ2とする。
【0055】
ここで、図11(a)より以下の関係式が得られる。
【0056】
tan(θ2−π/2)=(d/2+x)/(L−y) (1−1)
tan(π/2−φ1)=(d/2−x)/(L−y) (1―2)
この式を三角関数の公式から変形して、
θ2=arctan(−(L−y)/(d/2+x)) (1−3)
φ1=arctan((L−y)/(d/2−x)) (1−4)
また、図11(b)において、発光手段4から投光された光ビーム6が光反射部7で反射し、指示座標位置3を通り、受光手段5に至る経路を考えるとき、発光手段4から光反射部7までの距離をm、この光反射部7から受光手段5までの距離をnとし、この反射した光ビーム6の反射位置から発光手段4までのX軸方向の距離をl、受光手段5までのX軸方向の距離をkとして、反射位置から発光手段4または受光手段5までのY軸方向の距離をhとする。このとき下記の5式が成り立つ。
【0057】
m+n=2a(楕円の性質) (2−1)
l+k=d (2−2)
2+h2=m2 (2−3)
2+h2=n2 (2−4)
cosφ1=k/n (2−5)
この5式からm,n,h,k,lの5変数の連立方程式として解くことができ、n,m,k,lの値が下記のように求めることができる。
【0058】
n=(d2−4a2)/(2d・cosφ1−4a) (3―1)
m=2a−(d2−4a2)/(2d・cosφ1−4a) (3―2)
k=(d2−4a2)・cosφ1/(2d・cosφ1−4a) (3−3)
l=d−(d2−4a2)・cosφ1/(2d・cosφ1−4a) (3―4)
一方、図11(b)でβ1とβ2の角度を図のようにとると、
sinβ1=l/m (4−1)
sinβ2=k/n (4−2)
となる。これに式(3−1)〜(3−4)までの値を代入すると、
β1=arcsin((d−(d2−4a2)・cosφ1)/(2a−(d2−4a2))) (5−1)
β2=arcsin(cosφ1) (5−2)
更に、図11(b)より、
θ1=φ1+β1+β2 (6−1)
となるので、
θ1=φ1+arcsin((d−(d2−4a2)・cosφ1)/(2a−(d2
4a2)))+arcsin(cosφ1) (7−1)
となる。
【0059】
式(1−4)と式(7−1)から、
θ1=((L−y)/(d/2−x))+arcsin((d−(d2−4a2)・cos(arctan((L−y)/(d/2−x))))/(2a−(d2−4a2)))+arcsin(cos(arctan((L−y)/(d/2−x)))) (8−1)
と表すことができる。
【0060】
以上、得られた式(1―3)と(8―1)と図10で示した検出手段で得られた遮光角度θ1と遮光角度θ2の値から、指示手段により指示された指示座標位置(x,y)(指示手段1が光ビーム6を遮蔽した位置)を算出することができる。
【0061】
図12は本発明に係る位置検出装置の実施例1における基本回路構成を示す概略図である。発光手段4(発光部)を駆動させ、光波、超音波その他の信号を発信させる発光手段駆動回路9(発信部駆動部)と受光手段5(受光部)からの信号を検出する受光手段信号検出回路10(受信信号検出部)とで構成されており、受光手段5からの遮光情報と、その時の発光手段4からの遮光角度θ1と遮光角度θ2の情報を演算処理部11で演算をし、出力手段12(出力部)で所望のデータとして出力させることができる。
【0062】
即ち、演算処理部11は、発光手段駆動回路9が発光手段4を駆動して前記信号を発信させたにもかかわらず、受光手段5が前記信号を受信できない時または期間があった場合、図10(b)に示すように、受光手段信号検出回路10がその時または期間において発光手段4から発光させた角度から、上記した式(1−1)乃至式(8−1)を用いて、図11に示す遮光角度θ1と遮光角度θ2を演算し、若しくは遮光角度幅(△θ1、△θ2)等の情報を演算する。また、検出領域2において、指若しくはペン等により何らかの指示命令が出されたことを検出し、遮光角度θ1と遮光角度θ2から指示手段1による指示位置を検出、演算し、必要に応じて、遮光角度幅(△θ1、△θ2)の情報から、前記指示命令を出した指示手段1が指なのか、ペンなのか等を検知するための情報処理を行う。
【実施例2】
【0063】
図13は本発明に係る位置検出装置の実施例2を示した図である。特に、図13(a)は位置検出装置での位置検出の原理を説明しており、図13(b)は走査手段で回転走査される発光手段からの走査時間に対する受光手段の信号の変化を示している。
【0064】
実施例2は、走査手段8により発光手段4から投光される光ビーム6を走査する点を特徴としている。
【0065】
図13(a)で示している通り、指示手段1により指示座標位置3が指示されたとき、発光手段4から投光された二つの光ビーム6が指示手段1により遮光される。受光手段5は光信号を電気信号に変える機能を有しており、光ビーム6が遮光されると電気信号の変化として検出することができる。図13(b)では電気信号の減少として検出されている。
【0066】
走査手段8で走査される発光手段4の走査速度Vと遮光時間T1,T2とから実施例1の遮光角度θ1と遮光角度θ2を求めることができ、以後、実施例1と同様な計算で指示座標位置3、即ち光ビーム6を遮蔽した位置を算出することができる。また、遮光時間幅ΔT1,ΔT2により指示手段1の指示範囲をデータとして得ることができ、走査速度Vから指示手段1のおよその大きさ(実施例1における遮光角度幅)を検出することができる。
【0067】
図14は本発明に係る位置検出装置の実施例2における基本回路構成を示す概略図である。発光手段4(発光部)を駆動させる発光手段駆動回路9(発光部駆動部)と、発光手段4を回転走査させる走査手段8(走査部)を駆動するための走査手段駆動回路13(走査部駆動部)と、受光手段5(受光部)からの信号を検出する受光手段信号検出回路10(受光部信号検出部)とで構成されており、受光手段5からの遮光情報と、その時の受光手段5から得られた遮光時間T1と遮光時間T2の情報を演算処理部11(演算処理部)で演算をし、出力手段12(出力部)で所望のデータとして出力させることができる。
【0068】
次に、本発明の実施例1及び実施例2における各構成について詳しく説明する。
【0069】
指示手段1(指示部)としては光ビーム6を遮光するものであればどのようなものでもよいが、代表的なものとしては、人の手や指、ペン状の指示部材等が考えられる。
【0070】
検出領域2(検出部)には指示手段1が接触できるパネル状のものを設置することも可能であり、その場合、前記パネルの表面近くに光ビーム6を投光させることになる。前記パネルは、図1に示すような自発光型のディスプレイの外枠にひっかける等して取り付ける場合は、ディスプレイ画面の映像を透過させるための透明なものがよく、ガラス板やアクリル板等の透明樹脂板が好適に用いられる。
【0071】
また、図2に示すような表示ボードに画像投影機器から画像を投影して位置検出する位置検出装置では、特にパネルの材質にはこだわらない。
【0072】
更に、本発明の位置検出装置では、指示手段1により光ビーム6を遮光すれば位置を検出することができるので、パネル状のものがなくても構わない。
【0073】
発光手段4としては光ビーム6を投光できるものであれば特に限定されるものではない。好適に用いられるものとしてはLED(Light Emitting Diode)やレーザ等がある。波長領域は特に指定しないが、赤外領域の波長を用いると人の目には見えないため、自発光型のディスプレイに取り付ける場合等はディスプレイ画像が見えにくくなることがない。また、可視光を用いると遮光した場所が目視できるという効果がある。
【0074】
受光手段5としては光エネルギーあるいは光信号を電気エネルギーあるいは電気信号に変換する機能を有していればよい。好適に用いられるものとしてはPD(Photodiode)、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary metal−oxide semiconductor)センサ等がある。
【0075】
光反射部7としては発光手段4からの光ビーム6を反射させる機能を有していればよく、ミラーやプリズム等が例として挙げられる。ミラーの形成方法の一例としてガラスや樹脂等の材料を使って、金型等を用いて一括成型し、表面にアルミニウム等を蒸着成膜させる方法がある。
【0076】
図13(a)に示すような走査手段8としては光ビーム6を走査できるものであればよい。例えばレーザ光源を回転走査させるモータや、LED光源をスリット状の回転体で遮光することもできる。また、光ビーム6の投光方向をスイッチで切り替えて走査することも可能である。更に、発光手段4からの光ビーム6を鏡やプリズム等に反射させて投光方向を走査させる場合、鏡やプリズムを回転させて投光方向を走査させることも可能である。
【0077】
例えば、ポリゴンミラー等を用いて光ビーム6を走査させることができる。
【0078】
以上、本発明の位置検出装置で得られた指示座標位置情報を基に、指示手段1の検出領域内での速度、検出領域2への指示スピード、指示時間、複数指示の時間間隔等の情報を得ることができ、図12の出力手段12を通じてボタン操作、文字入力、画像選択、画像移動、画像拡大縮小、画像変更、ボタン制御、音声出力、機械制御等の操作を行うことができる。図1は出力手段12としてディスプレイ表示、図2は出力手段12として画像投影プロジェクタを用いた例である。
【0079】
以上の構成により本発明の位置検出装置を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等の自発光型表示装置や、電子黒板、プロジェクタ等を用いてホワイトボード等に画像を表示させる投影型表示装置(例えば、いわゆるインタラクティブボード、インタラクティブ電子黒板、インタラクティブ電子ボード等)の表示画面上において、指やペン状の指示手段により指示された位置を検出するための光学式の位置検出装置に関するものである。更に、指やペン等により指示した指示座標位置の情報を得ることで、上記した自発光型表示装置、投影型表示装置等のさまざまな機器、事務機器、OA機器、コンピュータ関連機器の制御や操作を行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
1 指示手段
2 検出領域
3 指示座標位置
4 発光手段
5 受光手段
6 光ビーム
7 光反射部
8 走査手段
9 発光手段駆動回路
10 受光手段信号検出回路
11 演算処理部
12 出力手段
13 走査手段駆動回路
14 光学ユニット
15 再帰性反射部
16 ハーフミラー
17 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面からなる有限の検出領域に存在する指示手段の任意の指示座標位置あるいは、前記検出領域内に存在する前記指示手段の指示範囲を検出するための位置検出装置であり、前記検出領域内に光ビームを投光するための、任意の楕円体の一つの焦点に設置に設けられた発光手段と、投光された光ビームを反射、集光する、前記楕円体からなる、あるいは前記楕円体の一部からなる光反射部と、前記光反射部で反射された光ビームを受光する前記楕円体の他方の焦点に設置に設けられた受光手段からなることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記検出領域が前記発光手段と前記受光手段とを含む直線領域を含まないことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記光反射部が前記検出領域に含まれず、前記検出領域の周辺領域に配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記光反射部が一つの楕円体の一部からなることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記発光手段と前記受光手段とを含む直線領域を含まない前記検出領域が、前記直線で区切られた二つの領域の両方に二つ以上存在することを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記光反射部が二つの楕円離心率の異なる楕円体の一部からなり、前記二つの楕円体がそれぞれ前記二つの検出領域の周辺領域に配置されてなることを特徴とする請求項5記載の位置検出装置。
【請求項7】
2定点からの距離の和が一定値である点の集合が描く楕円形状枠を有し前記楕円形状枠の内側に信号を反射する反射部材を備えた光反射部と、
前記光反射部内の前記2定点のうちの一方に設けられ、前記信号を発信する発信部と、
前記光反射部内の前記2定点のうちの他方に設けられ、前記発信部が発信した前記信号を受信する受信部とを有することを特徴とする位置検出装置。
【請求項8】
前記光反射部の内部に、指示された位置を検出する検出領域を設けたことを特徴とする請求項7記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記検出領域は、前記光反射部内にあって前記発信部と前記受信部とを結ぶ直線と重ならないことを特徴とする請求項8記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記検出領域は、電子黒板、インタラクティブボード、タッチパネルその他のディスプレイであることを特徴とする請求項8または請求項9記載の位置検出装置。
【請求項11】
2定点からの距離の和が一定値である点の集合が描く楕円形状枠を有し前記楕円形状枠の内側に信号を反射する反射部材を備えた光反射部と、
前記光反射部内の前記2定点のうちの一方に設けられ、前記信号を発信する発信部と、
前記光反射部内の前記2定点のうちの他方に設けられ、前記発信部が発信した前記信号を受信する受信部と、
前記発信部から前記信号を発信させる発信部駆動部と、
前記受光部が受信した前記信号を検出する受信信号検出部と、
前記発信部駆動部が前記発信部を発光走査する期間中に前記受信部が前記信号を受信しなかった期間があることを前記受信信号検出部が検出した場合に、前記期間における前記発信部駆動部が前記発信部を発光走査した角度の情報から前記発信部が発信した前記信号を遮蔽した位置を算出する演算処理部と、を有することを特徴とする位置検出装置。
【請求項12】
前記光反射部の内部に、指示された位置を検出する検出領域を設けたことを特徴とする請求項11記載の位置検出装置。
【請求項13】
前記検出領域は、前記光反射部内にあって前記発信部と前記受信部とを結ぶ直線と重ならないことを特徴とする請求項11記載の位置検出装置。
【請求項14】
前記検出領域は、電子黒板、インタラクティブボード、タッチパネルその他のディスプレイであることを特徴とする請求項12または請求項13記載の位置検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−159270(P2011−159270A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74685(P2010−74685)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】