説明

位置検知システム及びそれに用いる位置検知用シート体

【課題】本発明は、本発明は、多数の無線IDタグの精度よく短時間で配列できるとともにこれらの無線IDタグのマッピング作業を効率よく行うことが可能な位置検知システム及びそれに用いる位置検知用シート体を提供することを目的とするものである。
【解決手段】位置検知システムは、矩形状の位置検知用シート体1、位置検知用シート体1にマトリクス状に規則的に配列された多数の無線IDタグ2、検知対象である移動体に取り付けられて無線IDタグ2の一部と交信してIDデータを取得するIDリーダ3、IDリーダ3から発信されるIDデータを中継器4を介して取得し移動体の位置を検知する情報処理装置5を備えている。位置検知用シート体1には、無線IDタグ2に対応して等間隔で位置決め用マークが表示されており、位置決め用マークを基準に複数の位置検知用シート体を敷設することでマッピング処理を簡単に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面、壁面、柱面等の構造物にRFIDといった無線IDタグを複数配列して移動体に搭載された読取部により無線IDタグからのIDデータを取得することで移動体の位置を検知する位置検知システム及びそれに用いる位置検知用シート体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に屋内での物体や人等の移動体の位置を認識する方法としては、カメラによる認識、赤外線を使用する方法、磁気センサを使用する方法等がある。カメラを設置する方法は、カメラで撮影した画像を解析して目的とする移動体の位置を認識することになり、カメラ設置等の施工が複雑であり設置に適したスペースを要する、複雑な画像解析を必要とする等、コストおよび測定場所の制限等課題が多い。赤外線を使用する方法は非常に高精度で位置を測定することができるが、赤外線が遮蔽されない環境を必要とし、設置場所の制限が多いという問題がある。磁気センサを使用する方法は非常に高精度で位置を測定することができるが、磁気が乱されない環境を必要とし、比較的狭い範囲でしか測定できないという問題がある。
【0003】
これらの方式に対し、RFIDを利用した非接触型位置測定システムが、設置場所に依存しない優れた方法として提案されている。アクティブタイプのRFIDを利用する位置認識システムの場合は、RFIDの電源を維持する必要があり、RFIDを設置するのに多大な施工時間とコストを要する課題がある。また、設置したRFIDと位置情報を統合するマッピングに要する時間及びコスト負担が大きいといった課題がある。
【0004】
RFIDの電源については、特許文献1〜4に記載されているように電磁誘導方式のRFIDを使用する位置認識システムが提案されているが、この場合電波の到達距離が短いため単位面積あたり非常に多くのRFID設置数が必要となり、この施工時間とコスト、さらにはRFIDの位置情報とIDのマッピング作業に必要な時間とコストを考慮しなければならない。
【0005】
RFIDをシート上に配置する方法としては特許文献5に、RFIDをテキスタイル上に配置する方法としては特許文献6で提案されている。しかしいずれもシートおよびテキスタイルの生産工程管理、もしくは製品の物流管理を目的としており、一定平面内に多数のRFIDを配置して位置検知に用いることは難しい。
【0006】
特許文献7には、複数の無線IDタグを配列した帯状シートをフロアパネル上に敷設して位置検出を行う位置検知システムが記載されているが、複数の帯状シート体の位置合せ及び各無線IDタグのマッピング作業が複雑で簡単に施工することが難しい。
【特許文献1】特許第3545689号公報
【特許文献2】特許第3545690号公報
【特許文献3】特許第3692284号公報
【特許文献4】特許第4045493号公報
【特許文献5】特許第3499218号公報
【特許文献6】特開2005−226165号公報
【特許文献7】特開2007−170853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記で記載したように、従来の電磁誘導方式のRFIDを使用する位置検知システムは電波の到達距離が短いので、位置精度を高めるためにはRFID設置密度を大きくする必要があり、多数のRFIDを使用することになる。そのため、多数のRFIDを設置するための施工時間及びコスト、さらにはRFIDの位置情報とIDのマッピング作業に必要な時間及びコストがかかる。
【0008】
また、従来のようにRFIDを床面等の構造物に固定するやり方では、設置作業及びコストがかかり、また不要になった場合の作業とコストが別途生じるようになる。そのため、イベント等の期間限定での使用には不向きである。
【0009】
そこで、本発明は、多数の無線IDタグの精度よく短時間で配列できるとともにこれらの無線IDタグのマッピング作業を効率よく行うことが可能な位置検知システム及びそれに用いる位置検知用シート体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る位置検知システムは、複数の無線IDタグを規則的に配列するとともに当該無線IDタグの配列に対応して表示された位置決め用マークが設けられた複数の位置検知用シート体と、各位置検知用シート体における前記無線IDタグのIDデータ及び個別位置情報を記憶する記憶部と、前記位置決め用マークを基準にして配列された前記位置検知用シート体の位置関係情報を取得する取得部と、取得された前記位置関係情報及び記憶された前記個別位置情報に基づいてすべての前記無線IDタグの位置関係を示す全体位置情報を算出して前記記憶部に記憶する算出部と、移動体に搭載されるとともに前記無線IDタグの一部と交信して前記IDデータを取得する読取部と、前記読取部で取得された前記IDデータ及び前記記憶部に記憶された前記全体位置情報に基づいて前記移動体の位置を検知する位置検知部とを備えていることを特徴とする。さらに、前記位置検知用シート体は、重ね合わせて前記位置決め用マークを一致させることで位置決めされていることを特徴とする。さらに、前記取得部は、隣接した前記位置検知用シート体の前記位置決め用マークの位置関係に基づいて位置関係情報を取得することを特徴とする。さらに、前記取得部は、隣接した前記位置検知用シート体のそれぞれの前記無線IDタグからの交信状態に基づいて位置関係情報を取得することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る位置検知用シート体は、上記の位置検知システムに用いられる位置検知用シート体であって、フィルム状基材又は布帛状基材に複数の無線IDタグを長手方向に一定間隔で取り付けた線状材を所定の間隔を空けて複数本並列配置され、前記線状材と直交する方向に前記無線IDタグの配列に対応して複数の位置決めマーク用の表示体が並列配置されていることを特徴とする。さらに、前記位置検知用シート体を重ね合わせた状態で着脱可能に保持する保持手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のような構成を有することで、無線IDタグの配列に対応して表示された位置決め用マークに基づいて位置検知用シート体を配列するので、位置検知用シート体を精度よく簡単に配列することができる。また、位置決め用マークを基準とする位置検知用シート体の位置関係情報に基づいて無線IDタグの全体位置情報を算出するようにしているので、無線IDタグのマッピング作業を短時間で効率よく行うことができ、レイアウトの変更又は設置場所の変更にも臨機応変に対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。位置検知システムは、矩形状の位置検知用シート体1、位置検知用シート体1にマトリクス状に規則的に配列された多数の無線IDタグ2、検知対象である移動体(この例では歩行者)に取り付けられるとともに無線IDタグ2の一部と交信してIDデータを取得するIDリーダ3、IDリーダ3から発信されるIDデータを中継器4を介して取得し移動体の位置を検知する情報処理装置5を備えている。
【0015】
図2は、位置検知用シート体1に関する一部拡大斜視図である。位置検知用シート体1は、2枚のシート材料10の間に多数の無線IDタグ2が等間隔でマトリクス状に配列されており、両側には他の位置検知用シート体1に付着して着脱可能に保持する保持部材12が取り付けられている。また、位置検知用シート体1の表面には、無線IDタグ2の間に縦横に等間隔で位置決め用マーク11が直線状に表示されている。
【0016】
無線IDタグ2をシート材料10に配置する方法としては、例えば、2層以上の複数層のシートの間に無線IDタグを配置する方法、シート材料の表面に接着剤や縫製、ラミネート、コーティング等により配置する方法、シート材料の製造工程において配置する方法がある。シート材料に無線IDタグの機能を損なわず固定できる方法であれば、それ以外の方法でもかまわない。
【0017】
シート材料10としては、フィルムもしくは織物、編物、不織布等のテキスタイルがあり、単一構成もしくは複数の材料から複合された構成であって、シートの少なくとも1面は電磁波を遮蔽しない非導電性素材で構成される。具体的素材としては、ポリエチレンテレフタレートやPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル系繊維、ナイロン(ポリアミド繊維)、アラミド(芳香族ポリアミド繊維)、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフイン系繊維、アクリル等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の化学繊維、綿、麻、ウール、絹等の天然繊維が挙げられる。さらに、シート材料を構成する材質はすべて非導電性の素材があることが好ましい。
【0018】
こうした柔軟性及び耐久性の高い素材を用いることで、簡単に位置検知用シート体を敷設及び回収することができ、無線IDタグの位置精度を保持することが可能となる。
【0019】
シート材料が織物の場合は、多層構造の織物構造内に無線IDタグを配置したり、織組織により無線IDタグの織物内での移動を制限することで織物上もしくは織物構造内に高精度かつ物理的に固定することができる。特に、経糸又は緯糸として糸長方向に一定間隔で無線IDタグを配置した糸を用いて製織することで、連続的にかつ高精度で無線IDタグを配列した織物を得ることができる。
【0020】
シート材料が編物の場合においても同様であり、多層構造の編物構造内に無線IDタグを配置したり、編組織により無線IDタグの編物内での移動を制限することで編物上もしくは編物構造内に高精度かつ物理的に固定することができる。特に、経挿入糸又は緯挿入糸として糸長方向に一定間隔で無線IDタグを配置した糸を用いて製編することで、連続的にかつ高精度で無線IDタグを配列した編物を得ることができる。
【0021】
位置決め用マーク11は、各無線IDタグ2の中間に位置するようにシート材料10の全長及び全幅にわたって予めプリントされている。なお、位置決め用マーク11の表示箇所は、必要に応じて両側のみ表示したり、表裏両面に表示するようにすればよく、また、表示位置についても中間位置以外に無線IDタグに重なるように表示してもよく、特に限定されない。位置決め用マーク11としては、2枚のシート材料10を縫製した縫い目で表示するようにしてもよい。また、織物又は編物の場合には、経糸もしくは緯糸又は経挿入糸もしくは緯挿入糸に地組織と異なる色の糸を使用して表示するようにしてもよい。また、柄模様の一部として位置決め用マーク11を表示することもできる。
【0022】
また、位置決め用マークは、位置合せが可能なものであればよく、プリント表示の場合には直線の他に十字形状、点線等様々な表示が可能である。こうした表示を図柄や模様に取り入れて表示してもよい。また、間隔が読み取れるように目盛表示を行うようにしてもよい。また、基材の端部、表面の凹凸形状、部材間の境界線といったものも位置決め用マークとして使用することができる。
【0023】
無線IDタグ2には、個別に識別可能となるIDデータが割り当てられており、そのIDデータを予め記憶するようになっている。無線IDタグとしては、公知のパッシブ型のRFIDを用いればよく、周波数帯が125k−135kHz/13.56MHZ/2.45GHz/860M−960MHzの範囲ものが好ましい。位置検知用シート体に高密度で配置する場合、タグの大きさが小さい2.45GHzのRFIDが好ましい。
【0024】
保持部材12としては、複数の位置検知用シート体1を設置した場合にその位置関係が歩行動作や走行動作でずれない程度の保持力を備えている。例えば、多数のフック及びループを係合させて着脱可能に保持するファスナー又はテープ、とじひも、ボタン、嵌合する孔部と突起部等を設けることで位置検知用シート体1同士を安定した状態で保持することができる。こうした保持手段以外にも、ステープラー、粘着テープ、仮縫い等の手段により位置検知用シート体1を直接結合して保持するようにしてもよい。
【0025】
また、位置検知用シート体1は、コーティング等により表面に被膜を形成することで耐久性を向上させることができる。コーティング材としては、ポリウレタン系、塩化ビニル系、ゴム系、ポリエステルエラストマー系、シリコン系等の材料が挙げられる。
【0026】
コーティング以外の方法としてラミネート加工や貼り合わせ加工をしてもよい。ラミネート等の材料としては熱可塑性フィルム、織編物や不織布、紙、人工皮革、フォーム等が挙げられる。
【0027】
また、位置検知用シート体1の表面に非導電性被膜を形成すれば、金属等の導電材料上に位置検知用シート体1を配置しても無線IDタグと交信してIDデータを確実に取得することができるといった効果もある。IDデータを確実に取得するために、位置検知用シート体1の表面を電磁波吸収材料を含む材料で被覆するようにしてもよい。
【0028】
図3は、無線IDタグ2及びIDリーダ3に関する回路構成図である。無線IDタグ2は、メモリ21の読出し処理及び書込み処理を行う制御回路20、通信コイル25で受信した信号を復調して制御回路20に入力する復調回路22、制御回路20から出力された信号を変調して通信コイル25を介して送信する変調回路23、通信コイル25から電力供給を受けて各回路に電源を供給する電源回路24を備えている。また、IDリーダ3は、中継器4との間でデータを送受信して情報処理する制御回路30、通信コイル33で受信した信号を復調して制御回路30に入力する復調回路31、制御回路30から出力された信号を変調して通信コイル33を介して送信する変調回路32を備えている。こうした回路構成の無線IDタグ2及びIDリーダ3は、公知のものを使用することができる。
【0029】
移動体に搭載されたIDリーダ3が無線IDタグ2に接近して交信可能な距離になると、IDリーダ3が無線IDタグ2と交信して当該無線IDタグ2からそのIDデータを読み取るようになっている。したがって、読み取られたIDデータに基づいて無線IDタグ2を特定することで、移動体の現在位置を検知することができる。
【0030】
なお、IDリーダ3は、中継器4を介さずに情報処理装置5と直接交信するようにしてもよい。
【0031】
図4は、情報処理装置5に関する概略ブロック構成図である。情報処理装置5は、必要なデータ処理を行う制御部50、各位置検知用シート体1における無線IDタグ2に関するIDデータ及びその配列位置を示す個別位置情報といった処理に必要なデータを記憶する記憶部51、必要なデータを入力する操作入力部52、検知された位置情報等を表示する表示部53を備えている。
【0032】
制御部50は、設置された複数の位置検知用シート体の位置関係情報を取得する取得部501、取得部501において取得された位置関係情報及び記憶部51に記憶された各無線IDタグ2に関する個別位置情報に基づいてすべての無線IDタグ2の位置関係を示す全体位置情報を算出する算出部502、IDリーダ3で読み取られたIDデータ及び記憶部51に記憶された全体位置情報に基づいて移動体の位置を検知する位置検知部503、中継器4との間でデータを送受信する送受信部504を備えている。
【0033】
図5は、位置検知用シート体1に関する平面図である。無線IDタグ2は、位置検知用シート体1の幅方向X及び長さ方向Yに等間隔で配列されており、全体としてマトリクス状に配列されている。そして、各無線IDタグ2の中間に直線状の位置決め用マーク11が表示されている。
【0034】
図6は、記憶部51に記憶される位置検知用シート体1における無線IDタグのIDデータ及び個別位置情報に関するデータリストである。この例では、位置検知用シート体1の端部13側の角部に位置する無線IDタグ2Aのいずれか一方を基準位置(No.1)とし、基準位置からのX方向の長さ及びY方向の長さを個別位置情報としてIDデータに対応付けて記憶する。この場合、無線IDタグの間隔は等間隔(L;単位m)に設定されているので、基準位置の無線IDタグからX方向にm番目でY方向にn何番目に設定されているとすると、個別位置情報は(Lm,Ln)となり、簡単に設定することができる。また、(m,n)を個別位置情報として記憶するようにしてもよい。
【0035】
位置検知用シート体1に配置した無線IDタグのIDデータ及び個別位置情報を対応付けたマッピング情報は、位置検知用シート体1の製造時に作成して情報記録媒体に記憶しておくとよい。そして、位置検知用シート体1を敷設する際に当該位置検知用シート体のマッピング情報を情報処理装置5に入力して記憶部51に記憶するようにすればよい。
【0036】
情報記録媒体としては、CD、DVD、USBメモリ、半導体メモリ、情報入力可能なRFID、FD等を用いることができ、位置検知用シート体とともに携行可能なものであればよい。そして、マッピング情報入力後は書き込み禁止処理を行うことにより、読み込み専用の情報記録媒体となることが好ましい。
【0037】
位置検知用シート体1の位置検知精度(a;単位m)は、移動体の移動速度(v;単位m/s)及び無線IDタグの位置検知に要する処理時間(t;単位s)に依存することから、以下の式により計算することができる。
a=v×t
位置検知用シート体1に配置する無線IDタグの間隔(L;単位m)がaより短い間隔の場合(a>L)には位置検知精度がaとなり、Lがaより長い間隔の場合(a<L)には位置検知精度がLとなる。
【0038】
位置検知用シート体1を敷設する場合、位置検知が必要な経路に合せて複数の位置検知用シート体1を敷設していくことになる。その場合、複数の位置検知用シート体1のすべての無線IDタグについて位置情報を設定する必要がある。位置検知用シート体1毎のマッピング情報は予め記憶部51に蓄積されているので、これらのマッピング情報を関係付ける位置関係情報を取得することで、すべての無線IDタグのマッピング情報を算出することができる。この場合、位置検知用シート体1を位置決め用マーク11を基準に敷設することで位置関係情報を簡単に取得することが可能となる。
【0039】
位置関係情報を取得する方法としては、重なり合った無線IDタグのIDデータをIDリーダに読み取って取得する方法がある。図7は、位置関係情報の取得に関する処理フローである。まず、両シート体を位置決め用マークに合せて重ねた状態で設置した後、基準となる位置検知用シート体に対して重ね合わせた別の位置検知用シート体の基準位置となる2つの無線IDタグにそれぞれIDリーダを近接させて無線IDタグのIDデータとともに重なり合った基準となる位置検知用シート体の無線IDタグのIDデータを読み取り、情報処理装置5に送信する(S100)。
【0040】
取得部501では、受信した2対のIDデータに基づいて個別位置情報を記憶部51から読み出し(S101)、基準となる位置検知用シート体側の2つのIDデータに関する個別位置情報についてY方向の位置ずれを算出する(S102)。Y方向の位置ずれに基づいて基準となる位置検知用シート体に対する別の位置検知用シート体の回転角度が求められる。この場合、等間隔に表示された位置決め用マークを基準として両シート体を重ね合せているので、Y方向の位置ずれパターンが予め設定することができ回転角度はそのパターンに基づいて予め算出して記憶部51に記憶しておき、必要に応じて読み出すようにすればよい。
【0041】
また、読み取った基準位置の一方の無線IDタグ(図6のNo.1)に重ね合せられた基準となる位置検知用シート体の無線IDタグの個別位置情報を求めることができるので、この個別位置情報及び回転角度を位置関係情報として別の位置検知用シート体の全体位置情報を算出することができる(S103)。
【0042】
図8に示すように、基準となる位置検知用シート体の座標系(XA−YA)に対して別の位置検知用シート体の座標系(XB−YB)が角度θ回転した場合、座標系(XB−YB)における座標(xB,yB)は以下のように変換される。
A=xBcosθ+yBsinθ
A=−xBsinθ+yBcosθ
したがって、基準位置となる無線IDタグに対応する個別位置情報が(XA1,YA1)とすると、別の位置検知用シート体における無線IDタグの全体位置情報(XABn,YABn)は、その個別位置情報(XBn,YBn)を用いて以下の式により算出される。
ABn=XA1+XBncosθ+YBnsinθ
ABn=YA1−XBnsinθ+YBncosθ
【0043】
なお、位置検知用シート体の間の位置関係から位置関係情報が簡単に読み取れる場合には、情報処理装置5の操作入力部52から入力するようにしてもよい。
【0044】
複数の位置検知用シート体の敷設例について以下に説明する。図9は、位置検知用シートを長さ方向に配列した場合を示す平面図である。この例では、位置検知用シート体1aの端部側において位置決め用マーク11aに位置検知用シート体1bの端部13bを合せて一部重ねるように敷設している。そして、位置検知用シート体1bの端部13b側の角部の2つの無線IDタグ2bを基準位置となる無線IDタグに設定している。
【0045】
位置検知用シート体1aを基準として位置検知用シート体1bの位置関係情報を取得する場合、2つの無線IDタグ2B及びこれらと重なり合う位置検知用シート体1aの2つの無線IDタグのIDデータを読み取り、これらの無線IDタグに関する個別位置情報に基づいて位置関係情報を求めることができる。
【0046】
この例では、位置検知用シート体1の基準位置となる一方の無線IDタグ2B(図7では上側)と重なり合う位置の位置検知用シート体1aの無線IDタグの個別位置情報が位置関係情報となる。そして、位置関係情報である個別位置情報を無線IDタグ2Bの全体位置情報として入力し、位置検知用シート体1bの残りの無線IDタグについては、記憶された個別位置情報に無線IDタグ2Bの全体位置情報を加算することでその全体位置情報を算出することができる。
【0047】
なお、位置検知用シート体1bの端部13bが位置合せされた位置決め用マーク11aに基づいて位置関係情報が肉眼で読み取れる場合には、読み取った位置関係情報を直接入力するようにしてもよい。
【0048】
両シート体が重なり合った状態では、両シート体の保持部材12a及び12bについても上下に重なり合うようになり、両シート体が位置ずれしないようにしっかり保持されるようになる。
【0049】
また、以上説明した敷設例において両シート体の端部同士を突き合わせた状態で設置しても簡単に全体位置情報を算出することができる。この場合には、端部自体が位置決め用マークとなって位置合せが行われるようになる。そして、無線IDタグ2Bとそれに隣接する位置検知用シート体1aの端部の無線IDタグとの間のY方向の間隔を求め、端部の無線IDタグの個別位置情報に求めた間隔データを加算して位置関係情報をセットすればよい。両シート体の位置ずれを防止するために境界部分にテープを貼付するか仮縫いをしておくとよい。
【0050】
図10は、位置検知用シート体を幅方向に配列した場合を示す平面図である。この例では、位置検知用シート体1aの側部側において位置決め用マーク11aに位置検知用シート体1bの側端(保持部材12bとの境界線)を合せて一部重ねるように敷設している。
【0051】
位置関係情報を取得する場合、位置検知用シート体1bの基準位置となる一方の無線IDタグ2B(図10の上側)及びそれに重ね合わせられた位置検知用シート体1aの無線IDタグのIDデータを読み取り、位置検知用シート体1aの無線IDタグのIDデータに基づいて個別位置情報を読出して位置関係情報とすればよい。そして、位置関係情報を無線IDタグ2Bの全体位置情報として入力し、位置検知用シート体1bの残りの無線IDタグについては、記憶された個別位置情報に無線IDタグ2Bの全体位置情報を加算することでその全体位置情報を算出することができる。
【0052】
なお、位置検知用シート体1bの側端が位置合せされた位置決め用マーク11aに基づいて位置関係情報が肉眼で読み取れる場合には、読み取った位置関係情報を直接入力するようにしてもよい。
【0053】
両シート体が重なり合った状態では、両シート体の保持部材12a及び12bがそれぞれ重なり合って、両シート体が位置ずれしないようにしっかり保持されるようになる。
【0054】
また、位置検知用シート体1aの側部に設けられた保持部材12aに位置検知用シート体1bの側部に設けられた保持部材12bを重ねて敷設した場合には、保持部材の内側の境界線が位置決め用マークとなって位置合せが行われる。この場合には、位置検知用シート体1bの基準位置となる一方の無線IDタグ2B(図8の上側)とそれに隣接する位置検知用シート体1aの他方の無線IDタグ2A(図8の下側)との間のX方向の間隔を求め、無線IDタグ2Aの個別位置情報に求めた間隔データを加算して位置関係情報とすればよい。
【0055】
図11は、位置検知用シート体を直交する方向に配列した場合を示す平面図である。この例では、位置検知用シート体1aの端部側に位置検知用シート体1bの端部側を直交するように重ねて敷設している。その際に、位置検知用シート体1bの端部13bが位置検知用シート体1aの側端に一致するように位置合せし、位置検知用シート体1bの基準位置となる一方の無線IDタグ2Bが位置検知用シート体1aの端部13aの角部に位置する無線IDタグに重なり合うように配置する。
【0056】
位置検知用シート体1aを基準として位置検知用シート体1bの位置関係情報を取得する場合、2つの無線IDタグ2B及びこれらと重なり合う位置検知用シート体1aの2つの無線IDタグのIDデータを読み取り、これらの無線IDタグに関する個別位置情報に基づいて位置関係情報を求めることができる。
【0057】
この例では、位置検知用シート体1の基準位置となる一方の無線IDタグ2B(図11では右側)と重なり合う位置の位置検知用シート体1aの無線IDタグの個別位置情報が位置関係情報となる。そして、位置関係情報である個別位置情報を無線IDタグ2Bの全体位置情報として入力し、位置検知用シート体1bの残りの無線IDタグについては、記憶された個別位置情報を90度座標変換した値に無線IDタグ2Bの全体位置情報を加算することでその全体位置情報を算出することができる。
【0058】
両シート体が重なり合った状態では、両シート体の保持部材12a及び12bがそれぞれ重なり合って両シート体が位置ずれしないようにしっかり保持されるようになる。
【0059】
図12は、基準となる位置検知用シート体に対して位置検知用シート体を所定角度回転して配列した場合を示す平面図である。この例では、位置検知用シート体1bの端部13bにおける一方の角部(図12では上側)を位置検知用シート体1aの側端における位置決め用マーク11aの交点に一致させて位置検知用シート体1bを所定角度回転させて配置している。
【0060】
この場合、端部13bにおける他方の角部(図12では下側)を位置決め用マーク11aに一致するように位置合せし、一方の角部に対して他方の角部が位置決め用マーク11aを3本分Y方向に位置ずれするように設定されている。このように、位置決め用マーク11aを基準に位置検知用シート体1bを回転させるようにすれば、予め回転パターンが決まってくるためその回転パターンに基づいて回転角度を予め算出しておくことができる。
【0061】
位置関係情報を取得する場合、位置検知用シート体1bの基準位置となる2つの無線IDタグ2B及びそれに重ね合わせられた位置検知用シート体1aの無線IDタグのIDデータを読み取り、位置検知用シート体1aの2つの無線IDタグのIDデータに基づいて個別位置情報を読み出す。これらの個別位置情報からY方向の位置ずれを求めてその位置ずれに対応する回転角度を読み出す。そして、一方の無線IDタグ2B(図12の上側)に重ね合わせられた位置検知用シート体1aの無線IDタグの個別位置情報及び読み出された回転角度を位置関係情報とすればよい。そして、図8において説明したように、位置関係情報及び位置検知用シート体1bの無線IDタグに関する個別位置情報に基づいてその全体位置情報を算出することができる。
【0062】
図13は、複数の位置検知用シート体を用いて無線IDタグの配置密度を高める場合を示す平面図である。この例では、基準となる位置検知用シート体1aの下側に別の位置検知用シート体1bを重ねて敷設する。そして、長さ方向の位置決め用マーク11aに対して長さ方向の位置決め用マーク11bが位置決め用マーク11aの中間に位置するように設定する。そのため、位置検知用シート体1aの無線IDタグ2aの幅方向の間の中間に位置検知用シート体1bの無線IDタグ2bが位置するようになり、見掛け上2倍の密度で無線IDタグが配置されるようになる。この場合、位置検知用シート体1bが幅方向に位置ずれした分を位置関係情報として用い、位置検知用シート体1bの無線IDタグ2bの個別位置情報に加算することで位置検知用シート体1aを基準とする全体位置情報を算出することができる。
【0063】
図14は、位置検知処理に関するフローである。上述したように複数の位置検知用シート体を敷設してすべての無線IDタグについて全体位置情報を算出して全体のマッピング情報を記憶部51に記憶しておく。そして、IDリーダ3を搭載した移動体が敷設した位置検知用シート体上を移動していくと、IDリーダ3から電波が発信されて(S200)交信可能な無線IDタグが存在するかチェックする(S201)。返信があった無線IDタグが存在する場合には、IDリーダ3から無線IDタグに電源を供給して(S202)通信経路を確立し、無線IDタグのIDデータを送信するよう要求してIDデータを受信する(S203)。受信されたIDデータは中継器4を介して情報処理装置5に送信され、位置検知部503においてIDデータに対応する全体位置情報が読み出される(S204)。そして、読み出された全体位置情報に基づいて移動体の現在位置が表示されるようになる。また、検知された移動体の現在位置を示す情報は、他の機器に送信されて移動体の移動に合せて作動するようにすることもできる。
【0064】
以上説明したように、位置検知を行なう経路に複数の位置検知用シート体を位置決め用マークを基準に敷設して簡単にマッピング処理を行うことができるので、敷設作業、レイアウトの変更、回収作業を効率よく行うことができ、期間限定のイベント会場等の位置検知システムとして好適である。
【0065】
また、床面以外にも壁面、柱面といった構造物に対しても位置決め用マークを基準に設置することで同様に簡単に設置作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、福祉分野、サービス分野、流通・物流分野、製造工程関連分野、セキュリティ関連分野等の位置検知が必要な幅広い分野に適用することができる。例えば、車椅子の位置検知システム、車椅子や搬送車両の自動走行システム、ロボットの位置検知システム、イベント会場等における来場者案内システム等への応用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。
【図2】位置検知用シート体に関する一部拡大斜視図である。
【図3】無線IDタグ及びIDリーダに関する回路構成図である。
【図4】情報処理装置5に関する概略ブロック構成図である。
【図5】位置検知用シート体に関する平面図である。
【図6】無線IDタグのIDデータ及び個別位置情報に関するデータリストである。
【図7】位置関係情報の取得に関する処理フローである。
【図8】位置検知用シート体の回転による座標変換に関する説明図である。
【図9】位置検知用シートを長さ方向に配列した場合を示す平面図である。
【図10】位置検知用シート体を幅方向に配列した場合を示す平面図である。
【図11】位置検知用シート体を直交する方向に配列した場合を示す平面図である。
【図12】基準となる位置検知用シート体に対して位置検知用シート体を所定角度回転して配列した場合を示す平面図である。
【図13】複数の位置検知用シート体を用いて無線IDタグの配置密度を高める場合を示す平面図である。
【図14】位置検知処理に関するフローである。
【符号の説明】
【0068】
1 位置検知用シート体
10 シート材料
11 位置決め用マーク
12 保持部材
13 端部
2 無線IDタグ
3 IDリーダ
4 中継器
5 情報処理装置
50 制御部
51 記憶部
52 操作入力部
53 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線IDタグを規則的に配列するとともに当該無線IDタグの配列に対応して表示された位置決め用マークが設けられた複数の位置検知用シート体と、各位置検知用シート体における前記無線IDタグのIDデータ及び個別位置情報を記憶する記憶部と、前記位置決め用マークを基準にして配列された前記位置検知用シート体の位置関係情報を取得する取得部と、取得された前記位置関係情報及び記憶された前記個別位置情報に基づいてすべての前記無線IDタグの位置関係を示す全体位置情報を算出して前記記憶部に記憶する算出部と、移動体に搭載されるとともに前記無線IDタグの一部と交信して前記IDデータを取得する読取部と、前記読取部で取得された前記IDデータ及び前記記憶部に記憶された前記全体位置情報に基づいて前記移動体の位置を検知する位置検知部とを備えていることを特徴とする移動体の位置検知システム。
【請求項2】
前記位置検知用シート体は、重ね合わせて前記位置決め用マークを一致させることで位置決めされていることを特徴とする請求項1に記載の位置検知システム。
【請求項3】
前記取得部は、隣接した前記位置検知用シート体の前記位置決め用マークの位置関係に基づいて位置関係情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検知システム。
【請求項4】
前記取得部は、隣接した前記位置検知用シート体のそれぞれの前記無線IDタグからの交信状態に基づいて位置関係情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検知システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載された位置検知システムに用いられる位置検知用シート体であって、フィルム状基材又は布帛状基材に複数の無線IDタグを長手方向に一定間隔で取り付けた線状材を所定の間隔を空けて複数本並列配置され、前記線状材と直交する方向に前記無線IDタグの配列に対応して複数の位置決めマーク用の表示体が並列配置されていることを特徴とする位置検知用シート体。
【請求項6】
前記位置検知用シート体を重ね合わせた状態で着脱可能に保持する保持手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載の位置検知用シート体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−66171(P2010−66171A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233973(P2008−233973)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(508275526)
【Fターム(参考)】