説明

位置決め精度を向上させた分離可能なスライド機構

測定器具においてプローブを選択的に延出したり後退させるためのアクチュエータは、アクチュエータ本体とキャリッジとを備えている。このキャリッジは、上記本体にスライド可能に取り付けられる第一開口部と、プローブを有するプローブホルダーを収容する第二開口部とを有している。上記アクチュエータ本体を取り囲む上記キャリッジの第一開口部は、この開口部の内周に設けられた第一の複数の磁石を含んでいる。上記アクチュエータ本体は、送りねじと、この送りねじと噛み合う円形の送りねじナットと、この送りねじナットの外周に、上記第一の複数の磁石とほぼ位置を揃えて配置された第二の複数の磁石とを含んでいる。これら磁石は、上記キャリッジが上記アクチュエータ本体に対して十分変位できるように、これら磁石が上記キャリッジのさらなる動きを大きく制限しないように、配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアアクチュエータに関し、特に、電動式の送りねじまたはボールねじ(本明細書において、「送りねじ」という言葉は、両者および類似の機構を含むものとする)を有するリニアアクチュエータに関する。この送りねじは、磁石によってプローブホルダーに結合された位置決め要素(positioning element)を動かす。本発明はこのようなリニアアクチュエータにおいて、分離機能の向上と、移動終端における位置決め精度の向上を提供する。
【背景技術】
【0002】
測定器具に用いられるタイプのプローブは、公知である。非使用時にはプローブを後退させる機構を有するタイプのプローブが、好ましい。公知の機構のとして、レール・キャリッジ組立体等があるが、この組立体は、キャリッジに取り付けられたプローブ取付ブロックを有している。この取付ブロックはキャリッジによって運搬され、レールに沿って移動する。モーターによって駆動される送りねじが、この取付ブロックを動かすことが多い。
【0003】
本発明が関係するタイプのプローブは、通常、完全に後退している(fully retracted)か、使用時に完全に延出されている(fully extended)か、のいずれかである。通常、中間位置は用いられない。
【0004】
公知のアクチュエータが、特許第6,084,326号に示されている。この公知の機構においては、送りねじがモーターによって駆動されている。送りねじが回動すると、この送りねじに連結された送りねじナット等の変位部材が長手方向に移動する。複数の磁石がこの変位部材を、内周に同様の磁石を配置してなるキャリッジに連結し、キャリッジは送りねじナットと一緒に移動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のタイプの公知の機構は広く用いられているが、いくつか欠点がある。磁石による結合のため、スライダーまたはキャリッジとプローブが、変位機構に対して一時的に長手方向に変位して、非係合状態になることがある。ただし、従来でも回動方向の変位と非係合は生じなかった。さらに、公知の装置は、移動終端においてそれなりに正確ではあるが、移動終端において繰り返し位置決めするためには、送りねじのねじ山が正確であること、汚染物質がないこと、等に依存している。
【0006】
本発明の目的は、公知のアクチュエータの上述した欠点等を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単に、本発明の一態様に従って述べると、測定器具においてプローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータは、アクチュエータ本体とキャリッジを備えている。このキャリッジは、上記本体にスライド可能に取り付けられた第一開口部と、プローブを有するプローブホルダーを収容する第二開口部を有している。上記アクチュエータ本体を取り囲んでいる上記キャリッジの上記第一開口部は、その内周に沿って配置された第一の複数の磁石を有している。
【0008】
上記アクチュエータ本体は、上記アクチュエータ本体の内周の内側に配置された送りねじと、上記送りねじと噛み合う丸い送りねじナットと、この送りねじナットの外周に上記第一の複数の磁石とほぼ位置を合わせて配置された第二の複数の磁石を有している。上記第一、第二の複数の磁石は、上記キャリッジが上記アクチュエータ本体に対して長手方向または回転方向に十分変位されるように、第一、第二の複数の磁石が上記アクチュエータ本体に対する上記キャリッジの更なる移動を大きく制限しないように、配置されている。上記キャリッジおよび上記アクチュエータ本体のベース部(基部:base portion)は、相互に係合し合う第一、第二の動的据付部材を有している。これら動的据付部材は、上記アクチュエータ本体のベースと上記キャリッジにそれぞれ取り付けられ、上記プローブホルダーが完全延出位置にある時、上記キャリッジを上記アクチュエータ本体に対して正確に位置づけるようになっている。
【0009】
本発明の他の態様によれば、第一の複数の磁石と第二の複数の磁石は、それぞれ、3つの磁石で構成されている。
【0010】
本発明のさらに他の態様によれば、上記第一、第二の複数の磁石は、120度離れて等間隔に離間され、一列に配置されている。
【0011】
本発明のさらに他の態様によれば、上記相互に係合し合う第一、第二の動的据付部材の一方の端部は、半球を有している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるアクチュエータとプローブを、一部断面で示す図である。
【図2】図1の2−2線に沿う断面図である。
【図3】相互に係合する第一、第二の動的据付部材の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一態様によるアクチュエータ10を一部断面にして示している。このアクチュエータ10は、プローブ20を選択的に延出し、後退させるためのものである。このアクチュエータ10は、略円筒形のアクチュエータ本体またはハウジング100を含み、この円筒形の本体100にはモーター114がモーターユニット112によって連結されている。軸継手116が、比例送りねじ(proportional lead screw)106の軸にモーター軸を連結する。この送りねじは、上記ハウジングの上端と下端にそれぞれ配置されたベアリング110間に設けられている。好ましくは、このベアリングはボールベアリング等であり、上記送りねじを正確に位置づけ、送りねじがモーターによって回転されるように支持する。
【0014】
ハウジング100は、好ましくは円筒形であるが必ずしもその必要はない。またハウジング100は鉄を含まず、プラスチックや炭素繊維等、アクチュエータの正確な動作のための十分な堅牢さを提供するさまざまな素材から作られている。
【0015】
移動可能な送りねじナット104は、上記送りねじ106により移動される。この送りねじナット104は、送りねじの雄ねじに対応する雌ねじを有している。図示されている送りねじは円形であるが、別の形状であってもよい。
【0016】
送りねじナットは、後述のように、複数の磁石によって回動を抑制されており、送りねじ106がモーター114によって回動されると、円筒形の本体内で、送りねじに沿って昇降する。好ましくは、送りねじナット104は、複数好ましくは3つの磁石200を有し、これらの磁石は送りねじナットの外周に等間隔に離間して配置されている。例えば図2に詳細に示すように、120度離れた角度位置で配置されている。
【0017】
磁石200の北極と南極は、送りねじナットの中央を通って延びる径方向の直線上に配置されている。磁石は、好ましくは送りねじナットの外周に等間隔で配置されているが、必ずしもその必要はない。
【0018】
プローブホルダー118は、キャリッジ102によってアクチュエータ本体100に連結されている。キャリッジ102(図2も参照)は、これを貫通する2つの開口部を有している。第一開口部206はアクチュエータ本体100をスライド可能かつ回動可能に収容する。第二開口部103(図3参照)はプローブホルダー118を着脱可能(解放可能)に収容し保持する。図示のキャリッジ102は四角形であるが、他の形状であってもよい。
【0019】
好ましくは、図2に示すように、第二の同様の複数の磁石204が、アクチュエータ本体100を取り囲むキャリッジ102の開口部206の内周に沿って配置されているが、必ずしもその必要はない。磁石200と磁石204の組み合わせにより、送りねじナット104の回動を抑止する。図2に示すように、3つの磁石204が、開口部206の内周に沿って配置されている。送りねじナット104の外周に配置された磁石200と、開口部206の内周に配置された磁石204の、逆の極同士が対向し、引き付け合っている。つまり、図2に示すように、磁石200の南極が磁石204の北極に近接して配置されている。
【0020】
本発明のアクチュエータにおいて、磁石の数と大きさの選択により、プローブホルダーを送りねじナットから、長手方向にも径方向にも分離(break away)させることができる。これにより、プローブにかかる力が所定の分離力(breakaway force)を超えた時に、プローブの損傷を防止することができる。
【0021】
アクチュエータの本体100を取り囲んでいるキャリッジの第一開口部201は、キャリッジを本体100に対してスライド可能かつ回動可能に支持するベアリング108等を含んでいてよく、あるいは、単にハウジング本体の上をスライド可能であってもよい。
【0022】
プローブホルダー118は、キャリッジ102の第二開口部103内に固定されている。ねじ120がプローブホルダーをキャリッジ102の開口部103内で実質的に固定状態で締め付けている。好ましくは図1、図3に示すように、開口部103はねじ120等による調節可能な力でプローブホルダー118と摩擦係合している。これにより、必要に応じてプローブを点検修理するためにプローブホルダー118を取り外すことができ、また、プローブホルダー118をキャリッジ102に対して垂直方向および回動方向に調節することができる。
【0023】
図2は、図1の2−2線に沿う断面図である。図2には、キャリッジおよびアクチュエータ本体100での磁石の径方向の位置がより明確に示されている。プローブホルダーを固定する開口部103および締め付けねじは、図2には示されていない。
【0024】
好ましくは、アクチュエータ本体100とキャリッジ102の相対的配向を維持するために、鉄製ストリップ202(帯鉄:ferrous strip)好ましくは鋼製ストリップ(鋼帯:steel strip)が、円筒形のハウジングの内面に、1つの磁石対と位置を揃えて配置され、これによりハウジングに対する送りねじナットとプローブホルダーの相対的配向を維持する。
【0025】
図2に見られるように、プローブホルダーと送りねじナットを位置合わせする鉄製ストリップ202は、従来技術に対して有利な点を提供している。すなわち、プローブホルダー(キャリッジ)と円筒形の本体との間に摩擦を加えることなく、不要な回動を制御し、同時に所望の回動分離の特徴を提供するのである。
【0026】
図3は、キャリッジとアクチュエータ本体の底部にそれぞれ設けられた、互いに係合し合う、第一、第二の動的据付部材(kinematic mount members)の詳細図である。複数、好ましくは3つの調節ねじ302の各端部に設けられた半球形のボール304が、アクチュエータハウジング部材のベース300に形成された、対応する位置付け部(位置付け用フィーチャー;locating feature)と係合し、これによりアクチュエータが完全延出位置にあるとき、プローブホルダーをアクチュエータ本体に対して正確に位置づける。この位置付け部は、スロット305、平面、円錐型フィーチャ等からなる。上記ベース300は、必ずしもその必要はないがリング形状であることが好ましい。図には3つの据付部材が示され、それが好ましいが、より少数であってもよい。
【0027】
上記動的据付部材は、送りねじに沿う送りねじナットの移動終端(travel end)のわずかに手前で係合し、しっかりと正確な位置づけを保証する。複数磁石200と対応する磁石204のわずかな相対的位置ずれによって生じたこれら磁石間の磁力が、調節ねじの端部のボール304を、エンドキャップのそれぞれの位置付け部に保持する。
【0028】
本発明を現時点において好ましい数々の実施例と関連させて説明してきたが、当業者には、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、ある種の変形や変更が可能であることが理解されるであろう。したがって、本発明の真の精神および範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定器具においてプローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータであって、
アクチュエータ本体と、
上記アクチュエータ本体内に配置された送りねじと、
上記送りねじと噛み合う送りねじナットと、
上記アクチュエータ本体とスライド可能に係合する第一開口部を有するキャリッジと、
上記第一開口部の内周に配置された第一の複数の磁石と、
上記送りねじナットの外周に、上記第一の複数の磁石とほぼ位置を揃えて配置された第二の複数の磁石と、を備え、
上記キャリッジは、プローブが取り付けられたプローブホルダーに係合する第二開口部をさらに含み、
上記第一、第二の複数の磁石は、上記プローブホルダーが上記キャリッジに対して十分変位できるように、上記第一、第二の複数の磁石が上記プローブホルダーの上記キャリッジに対する動きを大きく制限しないように、配置されていることを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項2】
相互に係合し合う第一、第二の動的据付部材を備え、これら第一、第二の据付部材は、カラーと上記アクチュエータ本体にそれぞれ取り付けられ、上記キャリッジが延出位置にある時、上記キャリッジを上記アクチュエータ本体に対して正確に位置付けることを特徴とする、請求項1に記載の、プローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータ。
【請求項3】
上記第一、第二の複数の磁石がそれぞれ3つの磁石で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の、プローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータ。
【請求項4】
上記第一、第二の複数の磁石が、等間隔に、120度離れて、一列に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の、プローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータ。
【請求項5】
上記相互に係合し合う第一、第二動的据付部材の一方が、半球型のベアリングで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の、プローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータ。
【請求項6】
上記動的据付部材が、3つの半球型のボールと3つのスロットで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の、プローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータ。
【請求項7】
上記送りねじが上記送りねじに沿う移動限界に達する前に、上記動的据付部材が係合し、それによって上記磁石が、上記動的据付部材をくっつき合わせるように付勢する軸線方向の力を生成することを特徴とする、請求項6に記載の、プローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータ。
【請求項8】
上記キャリッジが非鉄製の管で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の、プローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータ。
【請求項9】
上記アクチュエータ本体の内面に設けられた、鉄製の位置合わせ用ストリップを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の、プローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータ。
【請求項10】
上記送りねじに連結されたモーターを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の、プローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータ。
【請求項11】
上記アクチュエータ本体がベースを備え、上記動的据付部材の一部がこのベースに配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の、プローブを選択的に延出し後退させるためのアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−524880(P2012−524880A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507483(P2012−507483)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/051099
【国際公開番号】WO2011/062686
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(505377430)クオリティー ヴィジョン インターナショナル インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】Quality Vision International, Inc.
【Fターム(参考)】