位置調整固定装置
【課題】従来の装置よりも構成を簡素化することができるとともに部品点数を減らすことが可能な位置調整固定装置を提供する。
【解決手段】位置調整固定装置1は、部材を移動させて所定の位置に固定するための位置調整固定装置であって、軸部材10と筒部材20と回動部材30とを備える。軸部材10はネジ状外周面11を有する。筒部材20は、軸部材10の周りに配置され、軸部材10を挿通する穴を有する。回動部材30は、軸部材10のネジ状外周面11に係止する係止爪31を有し、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止するロック位置と軸部材10のネジ状外周面11から離れる解除位置との間で回動するように筒部材20に取り付けられている。
【解決手段】位置調整固定装置1は、部材を移動させて所定の位置に固定するための位置調整固定装置であって、軸部材10と筒部材20と回動部材30とを備える。軸部材10はネジ状外周面11を有する。筒部材20は、軸部材10の周りに配置され、軸部材10を挿通する穴を有する。回動部材30は、軸部材10のネジ状外周面11に係止する係止爪31を有し、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止するロック位置と軸部材10のネジ状外周面11から離れる解除位置との間で回動するように筒部材20に取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には位置調整固定装置に関し、特定的には椅子の所定の部材の高さ調整等に用いられる位置調整固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、家具や電子・電気機器等の高さ調整を行うための高さ調整装置として、螺軸に対する螺合位置をワンタッチで切換えることが可能なものが、たとえば、特開2005−180471号公報(特許文献1)に記載されている。
【特許文献1】特開2005−180471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の装置は、カム孔に係合するスライドピン等を用いて構成されるので、複雑な形状の部品を作製する必要がある。このため、装置の構成が複雑で部品点数が多くなるという問題がある。
【0004】
この発明の目的は、従来の装置よりも構成を簡素化することができるとともに部品点数を減らすことが可能な位置調整固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に従った位置調整固定装置は、部材を移動させて所定の位置に固定するための位置調整固定装置であって、軸部材と、筒部材と、回動部材とを備える。軸部材は、ネジ状または凹凸状に形成された外周面を有する。筒部材は、軸部材の周りに配置され、軸部材を挿通する穴を有する。回動部材は、軸部材の外周面に係止する係止爪を有し、この係止爪が軸部材の外周面に係止するロック位置と軸部材の外周面から離れる解除位置との間で回動するように筒部材に取り付けられている。
【0006】
このように構成されているので、筒部材に取り付けられた回動部材の係止爪を、軸部材のネジ状または凹凸状に形成された外周面から離れる解除位置に設定することにより、筒部材を軸部材に対して移動することができる。また、筒部材に取り付けられた回動部材の係止爪を、軸部材のネジ状または凹凸状に形成された外周面に係止させることによって、筒部材の位置を軸部材に対して固定することができる。係止爪は、軸部材のネジ状または凹凸状に形成された外周面に係止可能な形状に形成すればよいので、ナット等の締め付け部材を加工することによって作製することができる。
【0007】
この発明の位置調整固定装置においては、回動部材は、回動部材の重量によって係止爪をロック位置へ付勢するように配置されていることが好ましい。
【0008】
このように構成することにより、回動部材の重量を利用して鉛直方向に沿った位置の固定を行うことができる。
【0009】
また、この発明の位置調整固定装置は、筒部材と回動部材との間に配置された付勢部材をさらに備え、付勢部材は、係止爪をロック位置へ常に付勢するように構成されていることが好ましい。
【0010】
このように構成することにより、付勢部材によって、鉛直方向以外の方向に沿った位置の固定を行うことができる。
【0011】
この場合、付勢部材は、回動部材の回動軸に取り付けられたねじりコイルバネであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、従来の装置よりも位置調整固定装置を簡素化することができるとともに部品点数を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の一つの実施の形態を図1と図2に基づいて説明する。
【0014】
図1は、この発明の一つの実施の形態として解除位置における位置調整固定装置を示す上面図(A)と正面図(B)である。図2は、この発明の一つの実施の形態としてロック位置における位置調整固定装置を示す上面図(A)と正面図(B)である。
【0015】
図1と図2に示すように、部材を移動させて所定の位置に固定するための位置調整固定装置1は、軸部材10と、筒部材20と、回動部材30とを備えている。
【0016】
軸部材10は、ネジ状または凹凸状に形成された外周面を有し、この実施の形態では、たとえば、ネジ状外周面11を有する。軸部材10の一方端には、装置取付金具の一例としてベースプレート12が固着されている。ベースプレート12には、本発明の位置調整固定装置1を椅子等の家具や機器に固定するために複数の取付穴13が形成されている。
【0017】
筒部材20は、軸部材10の周りに配置され、軸部材10を挿通する穴を有する。この筒部材20の内径は、軸部材10の外径よりも大きくなるように形成されている。これにより、筒部材20は軸部材10に沿って移動可能である。筒部材20の一方端には、軸受部材21が固着されている。軸受部材21には、回動軸22が取り付けられている。筒部材20の他方端には、筒部材20とともに移動可能な他の部材を取り付けるための荷重受部材23が固着されている。荷重受部材23には、本発明の位置調整固定装置1によって移動させられる可動部材を取り付けるための複数の取付穴24が形成されている。荷重受部材23には、可動部材の荷重が加えられるように構成されている。
【0018】
回動部材30は、一方端に係止爪31を有する。係止爪31は、軸部材10のネジ状外周面11に係止することが可能な形状を有し、この実施の形態では、たとえば、ナットを半分に切断した形状を有する。このナットの内ネジ部が軸部材10のネジ状外周面11に係止することができる。また、回動部材30の一方端には、回動軸22が取り付けられた軸受部32を有する。回動部材30の他方端側ではレバー部33が延在しており、レバー部33の端部には取っ手部34が取り付けられている。取っ手部34には、固着部材として、たとえば、磁石35が取り付けられている。このように構成されているので、図1に示すように、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11から離れる解除位置を保持するために取っ手部34が磁石35によって筒部材20の外周面に固着され、また図2に示すように、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止するロック位置で筒部材20の下方向への移動がロックされる。図1に示す位置と図2に示す位置との間で、回動部材30は回動軸22の周りで回動することができる。
【0019】
図3は、この発明の一つの実施の形態としての位置調整固定装置において下方向への移動がロックされる状態を示す正面図である。図4は、この発明の一つの実施の形態としての位置調整固定装置において上方向への移動が可能である状態を示す正面図である。
【0020】
図3に示すように、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止するロック位置で筒部材20の下方向への移動がロックされる。このとき、回動部材30の重量に応じた重力Wが鉛直方向に働いているので、その重力Wに応じた圧力が軸部材10のネジ状外周面11に加えられる。これにより、荷重受部材23が荷重Pの方向に移動することができない。
【0021】
これに対して、図4に示すように、荷重受部材23を矢印Qで示す上方向へ移動させると、筒部材20は、軸部材10に沿って移動しようとする。このとき、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11から離れるように、回動部材30は矢印Rで示す方向に回動するが、回動部材30の重力Wに応じて軸部材10のネジ状外周面11に加えられる圧力に打ち勝つ力で、すなわち、摩擦力に打ち勝つ力で筒部材20を軸部材10に沿って矢印Qで示す上方向へ移動させることができる。
【0022】
このように係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止すると、筒部材20を軸部材10に対して上方向に移動させることができるが、下方向に移動させることができない。
【0023】
図5は、この発明のもう一つの実施の形態としての位置調整固定装置において下方向への移動がロックされる状態を示す正面図である。図6は、この発明のもう一つの実施の形態としての位置調整固定装置において上方向への移動が可能である状態を示す正面図である。
【0024】
図5に示すように、位置調整固定装置2は、図1〜図4に示される位置調整固定装置1と異なり、筒部材20と回動部材30との間に付勢部材としてねじりコイルばね40が配置されている。ねじりコイルばね40は、回動部材30の回動軸22に取り付けられ、係止爪31をロック位置へ常に付勢するように構成されている。
【0025】
このように構成されているので、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止するロック位置で、筒部材20は下方向への移動だけでなく、水平方向への移動もロックされ得る。すなわち、回動部材30の重量に応じた重力Wが鉛直方向に働いていなくても、ねじりコイルばね40の付勢力に応じた圧力が軸部材10のネジ状外周面11に加えられる。これにより、荷重受部材23が矢印Pの方向に移動することができない。
【0026】
これに対して、図6に示すように、荷重受部材23を矢印Qで示す方向に移動させると、筒部材20は、軸部材10に沿って移動しようとする。このとき、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11から離れるように、回動部材30は矢印Rで示す方向に回動するが、ねじりコイルばね40の付勢力に応じて軸部材10のネジ状外周面11に加えられる圧力に打ち勝つ力で、すなわち、摩擦力に打ち勝つ力で筒部材20を軸部材10に沿って矢印Qで示す方向に移動させることができる。
【0027】
このように係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止すると、ねじりコイルばね40の付勢力に対抗して筒部材20を軸部材10に対して矢印Qで示す方向へ移動させることができるが、矢印Pで示す方向に移動させることができない。この実施の形態の場合、ねじりコイルばね40の付勢力を利用し、重力を利用しないので、位置調整固定装置2を、部材の鉛直方向への移動だけでなく、鉛直方向以外の方向への移動、たとえば、水平方向への移動にも適用することができる。
【0028】
図7は、本発明の位置調整固定装置を適用することが可能な一つの例として、椅子を上から見て示す概略的な上面図(A)、横から見て示す概略的な側面図(B)である。
【0029】
図7に示すように、椅子100は、座部110と背もたれ部120とを備えている。座部110の両側には、肘掛部130、140が取り付けられている。肘掛部130、140はスライド棒150、160に取り付けられている。スライド棒150、160の下端にはベースプレート170が取り付けられている。座部110は、圧縮コイルばね180の付勢力、またはその付勢力に対抗する力に応じて、スライド棒150、160に沿って上下移動する。本発明の位置調整固定装置1の筒部材20、すなわち、荷重受部材23は座部110の下部に取り付けられている。位置調整固定装置1の軸部材10の下端にはベースプレート170が取り付けられている。したがって、座部110は、スライド棒150、160と位置調整固定装置1の軸部材10に沿って、肘掛部130、140とベースプレート170との間で上下移動する。
【0030】
図8は、図7に示される椅子において座部の下方向への移動がロックされる状態を示す側面図である。図9は、図7に示される椅子において上方向への移動が可能である状態を示す側面図である。
【0031】
図7に示すように、回動部材30が解除位置にあるとき、人が座部110の上に座ると、スライド棒150、160と軸部材10とに沿って、矢印Pで示す方向に座部110が下方に移動する。このとき、圧縮コイルばね180の付勢力に対抗して、座部110に加えられた体重により、座部110が下方に移動する。人が座部110の上に座った状態で、図8に示すように、回動部材30を矢印Lで示す方向に回動させ、ロック位置で係止爪31を軸部材10のネジ状外周面11に係止させる。このロック状態は、回動部材30の重力Wによって保持される。
【0032】
次に、図9に示すように、人が立ち上がると、矢印Qで示す方向に座部110が上方に移動しようとする。荷重受部材23も矢印Qで示す上方向に移動し、筒部材20は、軸部材10に沿って移動しようとする。このとき、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11から離れるように、回動部材30は矢印Rで示す方向に回動するが、回動部材30の重力Wに応じて軸部材10のネジ状外周面11に加えられる圧力に打ち勝つ力で、すなわち、摩擦力に打ち勝つ力で筒部材20を軸部材10に沿って矢印Qで示す上方向へ移動させることができる。この場合、座部110は、上記の摩擦力に打ち勝つ圧縮コイルばね180の付勢力に応じて上昇しようとする。
【0033】
しかし、この過程で人が肘掛部130、140を支えにして、座部110の上に座り直そうとすると、座部110に体重が再度加えられる。このとき、座部110は、その位置で、圧縮コイルばね180の付勢力に対抗して保持されるとともに、回動部材30を矢印Lで示す方向に回動させ、ロック位置で係止爪31を軸部材10のネジ状外周面11に係止させる。このロック状態は、回動部材30の重力Wによって保持される。
【0034】
このようにして、図7に示す座部110の位置で、老人等が、肘掛部130、140を支えにして、椅子100に座り、その座った位置で図8に示すようにロックし、そのロック位置から、肘掛部130、140を支えにして立ち上がろうとして、滑って座部110の上に座り直しても、その位置で保持されるので、椅子100を介護椅子として用いることができ、その安全性を高めることができる。
【0035】
図10は、本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なもう一つの例として、棚を横から見て示す概略的な側面図である。
【0036】
図10に示すように、本発明の位置調整固定装置1の筒部材20に、棚200の支持台210を取り付ける。このようにすることにより、支持台210の上に物が載せられても、その重力Pで筒部材20を移動させないようにロックすることができる。また、筒部材20を矢印Pと反対の方向に移動させることにより、支持台210の位置を調整することができる。これにより、棚200において、複数組の位置調整固定装置1と支持台210を設けて、各々の支持台210の位置、すなわち、陳列位置を変更することができる。
【0037】
図11は、本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なさらに別の例として、その装置の解除位置における折り畳み椅子を横から見て示す概略的な側面図である。図12は、本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なさらに別の例として、その装置のロック位置における折り畳み椅子を横から見て示す概略的な側面図である。
【0038】
図11に示すように、本発明の位置調整固定装置1の筒部材20に取り付けられた支持棒受部材330によって、折り畳み椅子300の支持棒320が支持されている。位置調整固定装置1の軸部材10の一方端と支持棒320の一方端には、回動軸331、321を介して座部310が取り付けられている。軸部材10の他方端と支持棒320の他方端は、地面に接触している。回動部材30は解除位置にあるので、位置調整固定装置1の筒部材20は軸部材10に沿って移動することができるので、その移動に従って支持棒受部材330に支持された支持棒320がスライド移動する。すなわち、軸部材10と支持棒320とが交差する角度を変更することができるので、座部310の高さを変更することができる。
【0039】
そして、図12に示すように、座部310の高さを所定の位置に設定すると、位置調整固定装置1の回動部材30をロック位置まで回動させる。このロック状態は、回動部材30の重力Wによって保持される。このようにして、本発明の位置調整固定装置を用いて折り畳み椅子の高さ位置を調整し、かつ固定することができる。
【0040】
なお、以上の実施の形態では、本発明の位置調整固定装置を椅子や棚の高さ等の調整機構に適用する場合の例について説明したが、高さ調整だけでなく、図5〜図6に示されるような位置調整固定装置を用いることにより、鉛直方向以外の位置調整、たとえば、水平方向の位置調整を行う必要がある器具や機器に本発明の位置調整固定装置を適用することができる。
【0041】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の一つの実施の形態として解除位置における位置調整固定装置を示す上面図(A)と正面図(B)である。
【図2】この発明の一つの実施の形態としてロック位置における位置調整固定装置を示す上面図(A)と正面図(B)である。
【図3】この発明の一つの実施の形態としての位置調整固定装置において下方向への移動がロックされる状態を示す正面図である。
【図4】この発明の一つの実施の形態としての位置調整固定装置において上方向への移動が可能である状態を示す正面図である。
【図5】この発明のもう一つの実施の形態としての位置調整固定装置において下方向への移動がロックされる状態を示す正面図である。
【図6】この発明のもう一つの実施の形態としての位置調整固定装置において上方向への移動が可能である状態を示す正面図である。
【図7】本発明の位置調整固定装置を適用することが可能な一つの例として、椅子を上から見て示す概略的な上面図(A)、横から見て示す概略的な側面図(B)である。
【図8】図7に示される椅子において座部の下方向への移動がロックされる状態を示す側面図である。
【図9】図7に示される椅子において上方向への移動が可能である状態を示す側面図である。
【図10】本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なもう一つの例として、棚を横から見て示す概略的な側面図である。
【図11】本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なさらに別の例として、その装置の解除位置における折り畳み椅子を横から見て示す概略的な側面図である。
【図12】本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なさらに別の例として、その装置のロック位置における折り畳み椅子を横から見て示す概略的な側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,2:位置調整固定装置、10:軸部材、11:ネジ状外周面、20:筒部材、30:回動部材、31:係止爪、40:ねじりコイルばね。
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には位置調整固定装置に関し、特定的には椅子の所定の部材の高さ調整等に用いられる位置調整固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、家具や電子・電気機器等の高さ調整を行うための高さ調整装置として、螺軸に対する螺合位置をワンタッチで切換えることが可能なものが、たとえば、特開2005−180471号公報(特許文献1)に記載されている。
【特許文献1】特開2005−180471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の装置は、カム孔に係合するスライドピン等を用いて構成されるので、複雑な形状の部品を作製する必要がある。このため、装置の構成が複雑で部品点数が多くなるという問題がある。
【0004】
この発明の目的は、従来の装置よりも構成を簡素化することができるとともに部品点数を減らすことが可能な位置調整固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に従った位置調整固定装置は、部材を移動させて所定の位置に固定するための位置調整固定装置であって、軸部材と、筒部材と、回動部材とを備える。軸部材は、ネジ状または凹凸状に形成された外周面を有する。筒部材は、軸部材の周りに配置され、軸部材を挿通する穴を有する。回動部材は、軸部材の外周面に係止する係止爪を有し、この係止爪が軸部材の外周面に係止するロック位置と軸部材の外周面から離れる解除位置との間で回動するように筒部材に取り付けられている。
【0006】
このように構成されているので、筒部材に取り付けられた回動部材の係止爪を、軸部材のネジ状または凹凸状に形成された外周面から離れる解除位置に設定することにより、筒部材を軸部材に対して移動することができる。また、筒部材に取り付けられた回動部材の係止爪を、軸部材のネジ状または凹凸状に形成された外周面に係止させることによって、筒部材の位置を軸部材に対して固定することができる。係止爪は、軸部材のネジ状または凹凸状に形成された外周面に係止可能な形状に形成すればよいので、ナット等の締め付け部材を加工することによって作製することができる。
【0007】
この発明の位置調整固定装置においては、回動部材は、回動部材の重量によって係止爪をロック位置へ付勢するように配置されていることが好ましい。
【0008】
このように構成することにより、回動部材の重量を利用して鉛直方向に沿った位置の固定を行うことができる。
【0009】
また、この発明の位置調整固定装置は、筒部材と回動部材との間に配置された付勢部材をさらに備え、付勢部材は、係止爪をロック位置へ常に付勢するように構成されていることが好ましい。
【0010】
このように構成することにより、付勢部材によって、鉛直方向以外の方向に沿った位置の固定を行うことができる。
【0011】
この場合、付勢部材は、回動部材の回動軸に取り付けられたねじりコイルバネであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、従来の装置よりも位置調整固定装置を簡素化することができるとともに部品点数を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の一つの実施の形態を図1と図2に基づいて説明する。
【0014】
図1は、この発明の一つの実施の形態として解除位置における位置調整固定装置を示す上面図(A)と正面図(B)である。図2は、この発明の一つの実施の形態としてロック位置における位置調整固定装置を示す上面図(A)と正面図(B)である。
【0015】
図1と図2に示すように、部材を移動させて所定の位置に固定するための位置調整固定装置1は、軸部材10と、筒部材20と、回動部材30とを備えている。
【0016】
軸部材10は、ネジ状または凹凸状に形成された外周面を有し、この実施の形態では、たとえば、ネジ状外周面11を有する。軸部材10の一方端には、装置取付金具の一例としてベースプレート12が固着されている。ベースプレート12には、本発明の位置調整固定装置1を椅子等の家具や機器に固定するために複数の取付穴13が形成されている。
【0017】
筒部材20は、軸部材10の周りに配置され、軸部材10を挿通する穴を有する。この筒部材20の内径は、軸部材10の外径よりも大きくなるように形成されている。これにより、筒部材20は軸部材10に沿って移動可能である。筒部材20の一方端には、軸受部材21が固着されている。軸受部材21には、回動軸22が取り付けられている。筒部材20の他方端には、筒部材20とともに移動可能な他の部材を取り付けるための荷重受部材23が固着されている。荷重受部材23には、本発明の位置調整固定装置1によって移動させられる可動部材を取り付けるための複数の取付穴24が形成されている。荷重受部材23には、可動部材の荷重が加えられるように構成されている。
【0018】
回動部材30は、一方端に係止爪31を有する。係止爪31は、軸部材10のネジ状外周面11に係止することが可能な形状を有し、この実施の形態では、たとえば、ナットを半分に切断した形状を有する。このナットの内ネジ部が軸部材10のネジ状外周面11に係止することができる。また、回動部材30の一方端には、回動軸22が取り付けられた軸受部32を有する。回動部材30の他方端側ではレバー部33が延在しており、レバー部33の端部には取っ手部34が取り付けられている。取っ手部34には、固着部材として、たとえば、磁石35が取り付けられている。このように構成されているので、図1に示すように、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11から離れる解除位置を保持するために取っ手部34が磁石35によって筒部材20の外周面に固着され、また図2に示すように、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止するロック位置で筒部材20の下方向への移動がロックされる。図1に示す位置と図2に示す位置との間で、回動部材30は回動軸22の周りで回動することができる。
【0019】
図3は、この発明の一つの実施の形態としての位置調整固定装置において下方向への移動がロックされる状態を示す正面図である。図4は、この発明の一つの実施の形態としての位置調整固定装置において上方向への移動が可能である状態を示す正面図である。
【0020】
図3に示すように、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止するロック位置で筒部材20の下方向への移動がロックされる。このとき、回動部材30の重量に応じた重力Wが鉛直方向に働いているので、その重力Wに応じた圧力が軸部材10のネジ状外周面11に加えられる。これにより、荷重受部材23が荷重Pの方向に移動することができない。
【0021】
これに対して、図4に示すように、荷重受部材23を矢印Qで示す上方向へ移動させると、筒部材20は、軸部材10に沿って移動しようとする。このとき、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11から離れるように、回動部材30は矢印Rで示す方向に回動するが、回動部材30の重力Wに応じて軸部材10のネジ状外周面11に加えられる圧力に打ち勝つ力で、すなわち、摩擦力に打ち勝つ力で筒部材20を軸部材10に沿って矢印Qで示す上方向へ移動させることができる。
【0022】
このように係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止すると、筒部材20を軸部材10に対して上方向に移動させることができるが、下方向に移動させることができない。
【0023】
図5は、この発明のもう一つの実施の形態としての位置調整固定装置において下方向への移動がロックされる状態を示す正面図である。図6は、この発明のもう一つの実施の形態としての位置調整固定装置において上方向への移動が可能である状態を示す正面図である。
【0024】
図5に示すように、位置調整固定装置2は、図1〜図4に示される位置調整固定装置1と異なり、筒部材20と回動部材30との間に付勢部材としてねじりコイルばね40が配置されている。ねじりコイルばね40は、回動部材30の回動軸22に取り付けられ、係止爪31をロック位置へ常に付勢するように構成されている。
【0025】
このように構成されているので、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止するロック位置で、筒部材20は下方向への移動だけでなく、水平方向への移動もロックされ得る。すなわち、回動部材30の重量に応じた重力Wが鉛直方向に働いていなくても、ねじりコイルばね40の付勢力に応じた圧力が軸部材10のネジ状外周面11に加えられる。これにより、荷重受部材23が矢印Pの方向に移動することができない。
【0026】
これに対して、図6に示すように、荷重受部材23を矢印Qで示す方向に移動させると、筒部材20は、軸部材10に沿って移動しようとする。このとき、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11から離れるように、回動部材30は矢印Rで示す方向に回動するが、ねじりコイルばね40の付勢力に応じて軸部材10のネジ状外周面11に加えられる圧力に打ち勝つ力で、すなわち、摩擦力に打ち勝つ力で筒部材20を軸部材10に沿って矢印Qで示す方向に移動させることができる。
【0027】
このように係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11に係止すると、ねじりコイルばね40の付勢力に対抗して筒部材20を軸部材10に対して矢印Qで示す方向へ移動させることができるが、矢印Pで示す方向に移動させることができない。この実施の形態の場合、ねじりコイルばね40の付勢力を利用し、重力を利用しないので、位置調整固定装置2を、部材の鉛直方向への移動だけでなく、鉛直方向以外の方向への移動、たとえば、水平方向への移動にも適用することができる。
【0028】
図7は、本発明の位置調整固定装置を適用することが可能な一つの例として、椅子を上から見て示す概略的な上面図(A)、横から見て示す概略的な側面図(B)である。
【0029】
図7に示すように、椅子100は、座部110と背もたれ部120とを備えている。座部110の両側には、肘掛部130、140が取り付けられている。肘掛部130、140はスライド棒150、160に取り付けられている。スライド棒150、160の下端にはベースプレート170が取り付けられている。座部110は、圧縮コイルばね180の付勢力、またはその付勢力に対抗する力に応じて、スライド棒150、160に沿って上下移動する。本発明の位置調整固定装置1の筒部材20、すなわち、荷重受部材23は座部110の下部に取り付けられている。位置調整固定装置1の軸部材10の下端にはベースプレート170が取り付けられている。したがって、座部110は、スライド棒150、160と位置調整固定装置1の軸部材10に沿って、肘掛部130、140とベースプレート170との間で上下移動する。
【0030】
図8は、図7に示される椅子において座部の下方向への移動がロックされる状態を示す側面図である。図9は、図7に示される椅子において上方向への移動が可能である状態を示す側面図である。
【0031】
図7に示すように、回動部材30が解除位置にあるとき、人が座部110の上に座ると、スライド棒150、160と軸部材10とに沿って、矢印Pで示す方向に座部110が下方に移動する。このとき、圧縮コイルばね180の付勢力に対抗して、座部110に加えられた体重により、座部110が下方に移動する。人が座部110の上に座った状態で、図8に示すように、回動部材30を矢印Lで示す方向に回動させ、ロック位置で係止爪31を軸部材10のネジ状外周面11に係止させる。このロック状態は、回動部材30の重力Wによって保持される。
【0032】
次に、図9に示すように、人が立ち上がると、矢印Qで示す方向に座部110が上方に移動しようとする。荷重受部材23も矢印Qで示す上方向に移動し、筒部材20は、軸部材10に沿って移動しようとする。このとき、係止爪31が軸部材10のネジ状外周面11から離れるように、回動部材30は矢印Rで示す方向に回動するが、回動部材30の重力Wに応じて軸部材10のネジ状外周面11に加えられる圧力に打ち勝つ力で、すなわち、摩擦力に打ち勝つ力で筒部材20を軸部材10に沿って矢印Qで示す上方向へ移動させることができる。この場合、座部110は、上記の摩擦力に打ち勝つ圧縮コイルばね180の付勢力に応じて上昇しようとする。
【0033】
しかし、この過程で人が肘掛部130、140を支えにして、座部110の上に座り直そうとすると、座部110に体重が再度加えられる。このとき、座部110は、その位置で、圧縮コイルばね180の付勢力に対抗して保持されるとともに、回動部材30を矢印Lで示す方向に回動させ、ロック位置で係止爪31を軸部材10のネジ状外周面11に係止させる。このロック状態は、回動部材30の重力Wによって保持される。
【0034】
このようにして、図7に示す座部110の位置で、老人等が、肘掛部130、140を支えにして、椅子100に座り、その座った位置で図8に示すようにロックし、そのロック位置から、肘掛部130、140を支えにして立ち上がろうとして、滑って座部110の上に座り直しても、その位置で保持されるので、椅子100を介護椅子として用いることができ、その安全性を高めることができる。
【0035】
図10は、本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なもう一つの例として、棚を横から見て示す概略的な側面図である。
【0036】
図10に示すように、本発明の位置調整固定装置1の筒部材20に、棚200の支持台210を取り付ける。このようにすることにより、支持台210の上に物が載せられても、その重力Pで筒部材20を移動させないようにロックすることができる。また、筒部材20を矢印Pと反対の方向に移動させることにより、支持台210の位置を調整することができる。これにより、棚200において、複数組の位置調整固定装置1と支持台210を設けて、各々の支持台210の位置、すなわち、陳列位置を変更することができる。
【0037】
図11は、本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なさらに別の例として、その装置の解除位置における折り畳み椅子を横から見て示す概略的な側面図である。図12は、本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なさらに別の例として、その装置のロック位置における折り畳み椅子を横から見て示す概略的な側面図である。
【0038】
図11に示すように、本発明の位置調整固定装置1の筒部材20に取り付けられた支持棒受部材330によって、折り畳み椅子300の支持棒320が支持されている。位置調整固定装置1の軸部材10の一方端と支持棒320の一方端には、回動軸331、321を介して座部310が取り付けられている。軸部材10の他方端と支持棒320の他方端は、地面に接触している。回動部材30は解除位置にあるので、位置調整固定装置1の筒部材20は軸部材10に沿って移動することができるので、その移動に従って支持棒受部材330に支持された支持棒320がスライド移動する。すなわち、軸部材10と支持棒320とが交差する角度を変更することができるので、座部310の高さを変更することができる。
【0039】
そして、図12に示すように、座部310の高さを所定の位置に設定すると、位置調整固定装置1の回動部材30をロック位置まで回動させる。このロック状態は、回動部材30の重力Wによって保持される。このようにして、本発明の位置調整固定装置を用いて折り畳み椅子の高さ位置を調整し、かつ固定することができる。
【0040】
なお、以上の実施の形態では、本発明の位置調整固定装置を椅子や棚の高さ等の調整機構に適用する場合の例について説明したが、高さ調整だけでなく、図5〜図6に示されるような位置調整固定装置を用いることにより、鉛直方向以外の位置調整、たとえば、水平方向の位置調整を行う必要がある器具や機器に本発明の位置調整固定装置を適用することができる。
【0041】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の一つの実施の形態として解除位置における位置調整固定装置を示す上面図(A)と正面図(B)である。
【図2】この発明の一つの実施の形態としてロック位置における位置調整固定装置を示す上面図(A)と正面図(B)である。
【図3】この発明の一つの実施の形態としての位置調整固定装置において下方向への移動がロックされる状態を示す正面図である。
【図4】この発明の一つの実施の形態としての位置調整固定装置において上方向への移動が可能である状態を示す正面図である。
【図5】この発明のもう一つの実施の形態としての位置調整固定装置において下方向への移動がロックされる状態を示す正面図である。
【図6】この発明のもう一つの実施の形態としての位置調整固定装置において上方向への移動が可能である状態を示す正面図である。
【図7】本発明の位置調整固定装置を適用することが可能な一つの例として、椅子を上から見て示す概略的な上面図(A)、横から見て示す概略的な側面図(B)である。
【図8】図7に示される椅子において座部の下方向への移動がロックされる状態を示す側面図である。
【図9】図7に示される椅子において上方向への移動が可能である状態を示す側面図である。
【図10】本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なもう一つの例として、棚を横から見て示す概略的な側面図である。
【図11】本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なさらに別の例として、その装置の解除位置における折り畳み椅子を横から見て示す概略的な側面図である。
【図12】本発明の位置調整固定装置を適用することが可能なさらに別の例として、その装置のロック位置における折り畳み椅子を横から見て示す概略的な側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,2:位置調整固定装置、10:軸部材、11:ネジ状外周面、20:筒部材、30:回動部材、31:係止爪、40:ねじりコイルばね。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材を移動させて所定の位置に固定するための位置調整固定装置であって、
ネジ状または凹凸状に形成された外周面を有する軸部材と、
前記軸部材の周りに配置され、前記軸部材を挿通する穴を有する筒部材と、
前記軸部材の外周面に係止する係止爪を有し、この係止爪が前記軸部材の外周面に係止するロック位置と前記軸部材の外周面から離れる解除位置との間で回動するように前記筒部材に取り付けられた回動部材とを備えた、位置調整固定装置。
【請求項2】
前記回動部材は、前記回動部材の重量によって前記係止爪を前記ロック位置へ付勢するように配置されている、請求項1に記載の位置調整固定装置。
【請求項3】
前記筒部材と前記回動部材との間に配置された付勢部材をさらに備え、前記付勢部材は、前記係止爪を前記ロック位置へ常に付勢するように構成されている、請求項1に記載の位置調整固定装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記回動部材の回動軸に取り付けられたねじりコイルバネである、請求項3に記載の位置調整固定装置。
【請求項1】
部材を移動させて所定の位置に固定するための位置調整固定装置であって、
ネジ状または凹凸状に形成された外周面を有する軸部材と、
前記軸部材の周りに配置され、前記軸部材を挿通する穴を有する筒部材と、
前記軸部材の外周面に係止する係止爪を有し、この係止爪が前記軸部材の外周面に係止するロック位置と前記軸部材の外周面から離れる解除位置との間で回動するように前記筒部材に取り付けられた回動部材とを備えた、位置調整固定装置。
【請求項2】
前記回動部材は、前記回動部材の重量によって前記係止爪を前記ロック位置へ付勢するように配置されている、請求項1に記載の位置調整固定装置。
【請求項3】
前記筒部材と前記回動部材との間に配置された付勢部材をさらに備え、前記付勢部材は、前記係止爪を前記ロック位置へ常に付勢するように構成されている、請求項1に記載の位置調整固定装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記回動部材の回動軸に取り付けられたねじりコイルバネである、請求項3に記載の位置調整固定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−255683(P2007−255683A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84552(P2006−84552)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(396008587)株式会社大日工業 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(396008587)株式会社大日工業 (7)
【Fターム(参考)】
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