説明

低い巻き戻り力の表面保護フィルム

【課題】ロール状で長期間貯蔵した後でも容易に解くことができそして適用する際に十分な初期接着性を有し、それ故に(湾曲した面に接着フィルムを貼り付ける)応力下に接着する場合にも剥がれが生じない粘着性保護フィルムの提供。
【解決手段】片面に接着剤を塗布した支持体よりなる粘着性保護フィルムにおいて、支持体が少なくとも2つの層を有し、接着剤に面するその第一の層が10〜95重量%の含有量で少なくとも1種類のプロピレンブロックコポリマーを含有する無配向フィルムよりなり、接着剤と反対側の第二の層が少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%の低密度ポリエチレンを含有するフィルムよりなることを特徴とする粘着性保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス、セラミック、ステンレス鋼、ポリカーボネートガラス又はアクリルガラス、特に塗膜表面の様な表面を保護し、同時にロールの状態の保護フィルムの巻き戻り力が小さい高接着力で耐候性の粘着性保護フィルムに関する。特に本発明の保護フィルムは自動車のような車両の新しい仕上げ塗膜の保護のために及び組み立て、運搬及び貯蔵の間の汚れ及び損傷に対しての新たに塗装した車両部品の保護のために本発明の保護フィルムは適している。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパ特許出願公開第0,592,913 A1には、33%の酢酸ビニルを含有するEVAcコポリマーよりなる自動車の運搬のためも表面保護フィルムが開示されている。追加的な接着剤層の塗布はこの保護フィルムの場合には行われない。この種類のフィルムは簡単な構造を有しているが、それの使用の際に明らかな欠点を有している。その接着力は結晶質分が多いために非常に小さく、この欠点は使用の際に加熱することによって除かれる。このフィルムは剥離用ライナー(例えばシリコーン処理紙)を備えていない場合には、貯蔵の際にくっつき合う傾向がある。このことはヨーロッパ特許出願公開第0,768,356 A1号明細書が教示している。
【0003】
記載されたフィルムは著しい塗料変質化を示し、かつ、使用後に除去することが非常に困難である。後者の現象は、33重量%の酢酸ビニルを有する実施例に記載のEVAcはシーリング性を有していることに起因する(このものは一般にシーリング剤用途で使用される)。40重量%以降の酢酸ビニル含有量では、結晶質成分は前記欠点を生じない程に僅かである。
【0004】
ドイツ特許出願公開第19,532,220 A1号明細書に記載の、EVAc接着剤を備えた接着フィルムは上記の製品よりも接着性が著しく優れている。保護するべき塗膜への影響は一成分ポリウレタン系を例外として及ぼさない。しかしながらこれらの接着フィルムは使用後に剥離する際に高い接着強度を有しており、それによって接着フィルムは裂かずに剥離できない。貼り付けた物を貯蔵する際に、当業者が剥ぎ取り増加(peel increase)と称する接着強度のこの増加は、塗料との接着剤の相互作用、特に極性力によって惹き起こされる。一方、極性コモノマー、例えばアクリレート又は酢酸ビニルは所望の高い初期接着性をもたらす。
【0005】
ヨーロッパ特許出願公開第1,190,008 A1号明細書は、応力の負荷下での貼り付けの際に(曲面に接着フィルムを貼り付ける場合に)剥がれが生じない程に十分に高い初期接着強度を有しそして(風雨・外気に曝して1年間まで)長期間貯蔵した後にも係わらず再び容易に剥離することができる接着フィルムが開示されている。同時に収縮が生じずそして保護フィルムはひび割れることなく、かつ、固着し合うことなく剥がすことができる。更に貯蔵のために剥がし用ライナーを必要とせず、高い接着力を持つKVM−接着剤を使用しそして数ケ月に亙って同時に貯蔵した場合には高い巻き戻り力を生じさせてしまい得る。
【0006】
同時にヨーロッパ特許出願公開第1,190,008 A1号明細書には、表面保護フィルム中の支持体材料としてポリエチレンフィルムを使用することは、温度安定性に欠陥があるために同様に不可能であることも記載されている。
【0007】
アクリレート及びゴム系接着剤のためにポリエチレン剥離用フィルムを使用することが英国特許出願公開第676,559A号明細書に記載されている。しかしながらこの剥離用フィルムの使用は、大きな面積で使用されるフィルムにとって経済的な理由から望ましくない。
【0008】
更にEVM接着剤は、アクリレート及びゴム系接着剤と相違する接着力及び貯蔵時の接着強度の変化に関する性質を有している。例えば0.90g/cmより大きくない密度のポリエチレンをアクリレートのための剥離用フィルムとして使用することがヨーロッパ特許出願公開第0,742,814A1号明細書に記載されている。EVM−接着剤にとってはこの種の剥離用フィルムは適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故に本発明の課題は、ロール状で(2年までの)長期間貯蔵した後でも容易に解くことができそして適用する際に十分な初期接着性を有し、それ故に(湾曲した面に接着フィルムを貼り付ける)応力下に接着する場合にも剥がれが生じない粘着性保護フィルムを提供することである。同時に収縮が生じずそして保護フィルムが裂けることなく剥離することができるべきである。貯蔵するために剥離用ライナーを必要とするべきでない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の対象は、請求項1に規定したとおりの粘着性保護フィルムによって解決される。従属形式の請求項の対象は該保護フィルムの有利な別の態様及びそれの用途に関する。更に本発明は該保護フィルムの製造方法にも関する。
【0011】
従って本発明の対象は、片面に接着剤を塗布した支持体よりなる粘着性保護フィルムにおいて、支持体が少なくとも2つの層を有し、接着剤に面するその第一の層が10〜95重量%の含有量で少なくとも1種類のプロピレンブロックコポリマーを含有する無配向フィルムよりなり、そして接着剤と反対側の第二の層が少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%の低密度ポリエチレン(PE−LD)を含有するフィルムよりなることを特徴とする、上記粘着性保護フィルムに関する。
【0012】
接着剤に面する第一の層はヨーロッパ特許出願公開第1,190,008 A1号明細書から公知である。
【0013】
本発明の有利な第一の実施態様においては、低密度ポリエチレン(PE−LD)が0.915g/cm〜0.935g/cm、好ましくは0.915g/cm〜0.930g/cmの密度を有しそして102〜120℃の融点を有する。
【0014】
第二の層は最高15μm、好ましくは最高10μmの厚みを有する。
【0015】
更にPE−LDは分岐している。
【0016】
接着剤と反対側の低密度ポリエチレンよりなる第二の層は支持体の外側層を形成するのが有利である。この外側層は粘着性付与剤又は接着剤を有していない支持体の裏側を形成する。
【0017】
使用されるポリプロピレンコポリマー(耐衝撃性ポリプロピレンとも称する)は文献、即ちEncycl. Polym. Sci. Technol. 13、第479頁以降(1988)及びUllmann‘s Encyclopedia of Industrial Chemistry A21、第529頁以降(1992)に記載されている。市販品の例には、Propathene GSF 113 (ICI)、411 GA 05 (製造元:Amoco)、PMA 6100 (製造元:Montell)、Stamylan P (製造元:DSM)、BD 801 F (製造元:Borealis)、Daplen FFC1012 (製造元:PC)、Novolen 2309 Lがある。
【0018】
この種類のブロックコポリマーは、実質的に相違するメルトインデックス(MFI)及びコモノマー含有量を有している。メルトインデックスは、一般にフィルムの強度及び溶融物の流動性に影響を及ぼす。第一のフィルムを製造するためには、一方においては強靱性及び引裂強度への要求及びもう一方においては加工性(同時押出成形されたフィルムの場合の製造速度及び均一の厚さ)を達成するために、230℃、2.16kgのもとで0.8〜15g/10分(ISO 1133(A/4))のメルトインデックスが有利である。有利な範囲は4〜10g/10分である。
【0019】
支持体及び接着剤を互いに同時押出成形することによって貼り付ける場合には、ポリプロピレンブロックコポリマーのメルトインデックスの選択及びフィルム処方の別の熱可塑性成分のメルトインデックスの選択は重要である。
【0020】
ポリプロピレンブロックコポリマー中のコモノマーの含有量は製造される保護フィルムの柔軟さ、衝撃強度及び熱安定性を決める。第一のフィルムはコモノマーとしてのエチレン含有量が3〜15重量%であるのポリプロピレンブロックコポリマーを含有するのが有利である。DIN53448に従う衝撃強度は好ましくは長手方向及び横方向で少なくとも1000mJ/mmである。
【0021】
別の成分としては例えばポリエチレン(例えばHDPE、LDPE、MDPE、LLDPE、VLLDPE)、エチレン又はプロピレンと極性コモノマーとのコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー又はポリプロピレンーランダムコポリマーを性質(機械的、熱的又は他の性質、例えば光沢、接着剤の接着性、押出成形挙動等)の精密調整のために併用してもよい。ブロックコポリマーだけを使用する場合よりも強靱性、熱安定性及び流動挙動を要求により良好に適合させることができるので、多くの種類のポリプロピレン、特に異なる柔軟さ及び異なるメルトインデックスのそれらの組合せ、例えば軟質ブロックコポリマーとPP−ホモポリマー又は硬質ブロックコポリマーとを組み合わせるのが有利である。
【0022】
十分な熱安定性のためには、第一の層中のプロピレンの割合は少なくとも65重量%であるべきである。
【0023】
支持体が多層構造の場合、第一の層と第二の層との間に及び/又は第一の層と接着剤との間に別の層が存在する場合でも、第一の層は強度の責任を果たしそしてそれ故にポリプロピレンを最も高い割合で含有する層である(一般に最も厚い厚みを有している)べきである。
【0024】
本発明の別の有利な一つの実施態様においては支持体中に別の層が追加的に存在していてもよいし又は前述の層の成分として存在していてもよい。
【0025】
支持体と接着剤との間の接着性を向上させるためには、粘着性付与剤層を塗布するのが有利である。この層はポリマー及び/又は第一の層の成分及び/又は接着剤よりなるのが有利である。粘着性付与剤は特に有利には、少なくとも1種類のα−オレフィン及び極性コモノマーを含有する少なくとも1種類のポリマーを含有する。これらの例にはイオノマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマー又は無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンがある。
【0026】
支持体を耐候性に調整するためには、光安定剤を使用するのが好ましい。保護用フィルムで使用する場合のその機能は表面保護用テープを剥離する際の問題を回避するために支持体の脆化を防ぐことを本質としている。二層又は多層支持体の場合、保護は特に第一の層に関係している。
【0027】
この種類の光保護剤はGaechter及びMullerの“Taschenbuch der Kunststoff-Additive(合成樹脂添加剤のポケット本)”、Munchen 1979;Kirk-Othmer(3.) 23、第615〜627頁;“Encycl. Polym. Sci. Technol.”14巻、第125〜148頁及び“Ullmann ”(4.) 8、21; 15, 529, 676に記載されている。特にHALS−光保護剤、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール(CAS-Nr. 65447-77-0)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート(CAS-Nr. 52829-07-9)又はポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]](CAS-Nr. 70624-18-9) を含有するジメチルスクシナートポリマーは本発明の保護フィルムに適している。光保護剤の量はフィルムを基準として少なくとも0.15重量%、好ましくは少なくとも0.30重量%である。
【0028】
保護フィルムの紫外線透過率は290〜360nmの領域で1%以下、好ましくは0.1%以下であるのが好ましい。
【0029】
フィルムのために酸化防止剤(例えばIrganox 1010 又はトリスノニルフェニルホスフィット)を用いるのが有利であるが、必ずしも使用する必要はない。他の適当な紫外線吸収剤、光保護剤及び老化防止剤はヨーロッパ特許出願公開第0,763,584A1号明細書に記載されている。
【0030】
支持体フィルムの光安定性は保護フィルム中に、特に支持体の第一の層への別の添加物によっても向上し得る。これらには紫外線吸収剤(例えばTinuvin P:製造元 Ciba社)又は反射性顔料(例えば二酸化チタン)によって行うことができる。
【0031】
二酸化チタン、光保護剤、老化防止剤又は加工助剤の様なフィルム用添加物を単独で又は一緒に好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン又はポリプロピレンブロックコポリマー中に入れて1バッチとすることができる。
【0032】
支持体については(場合によっては粘着性付与剤層を含めて)20〜80μmの厚さが特に有利である。
【0033】
支持体の柔軟さは保護フィルムを適用する間の変形の関係で役立ち、10%の延伸での力は長手方向又は横方向のいずれにおいても25N/15mm、好ましくは16N/15mmである(DIN53455−7−5に従う抗張力試験)。これは、何故全ての支持体フィルムが好ましくも未延伸であるべきかの理由の一つでもある。
【0034】
配向(延伸とも言う)によってこの力は、10%延伸した場合に、柔軟適応性しない程に著しく増加する(比較するために、典型的な値を示すと、一軸延伸されたPP−ブロックコポリマーでは100N/5mmでありそして二軸配向したホモポリマーでは180N/15mmである)。
【0035】
更に配向に対して横方向の強度又は第三の次元(フィルム表面に対して垂直方向)の強度は、本発明の保護フィルムを剥離する際に裂ける危険又は第三の次元での層間剥離(いわゆる割れ)の危険が著しく減少する。これは特に良好な接着性を有する接着剤、例えばエチレン−酢酸ビニルコポリマーのような特に良好な接着剤に該当する。
【0036】
本発明の保護フィルムは好ましくは3%より少ない、特に1%より少ない長手方向及び横方向での収縮を示すのが有利である。収縮の測定は120℃で空気循環乾燥器において行う。この目的のために、試験体を、タルクを沢山含む厚紙の上に10分間、置いておく。
【0037】
接着剤としてはエラストマー、例えばEPDM−又はEPM−ゴム、ポリイソブチレン、EVM(エチレン−酢酸ビニルコポリマー)、ジエンよりなる水素化ブロックコポリマー(例えばSBR、cSBR、BAN、NBR、SBS、SIS又はIRの水素化によって得られるものであり、このようなポリマーには例えばSEPS及びSEBSが知られている)又はACMのようなアクリレートコポリマーが使用できる。本発明の保護フィルムは老化安定性及び耐候性があるべきであるので、不安定な不飽和エラストマー、例えば天然ゴム、SIS、SBS、SBR又はNBRは余り適していない。フィルム用に挙げられる光保護剤は例えば接着剤でも使用できる。これらの添加物は接着剤の老化安定性を特に100kLy(キロラングレェイはkcal/cmに相当する)以上の紫外線露光の場合に向上させるが、エチレン−酢酸ビニルコポリマーよりなる接着剤の場合には6ケ月まで屋外気候のもとで使用するためには必須である。ポリイソブチレンホモポリマー又はブチルゴムよりなる接着剤の場合には、非常に厳しく紫外線暴露する場合に接着剤の残留を避けるべき時には、このような添加物は必須である。
【0038】
接着剤を架橋するのが有利である。これによって(例えば風雨・晴れの交互気候条件での)熱安定性が向上する。合成ゴムよりなる窓用シール剤の様な粗いか又は非極性の基体での剥がれがこれによって減少される。架橋は中でも剪断強度も向上させる。架橋は、使用時に保護フィルムの収縮に対して抵抗するので、保護フィルムとして使用する場合に特に重要である。架橋のためには通例の架橋剤が適している。特に放射線架橋、特に紫外線及び電子線で架橋する方法が有利である。紫外線の場合には接着剤に、接着剤面から照射する。光開始剤を使用することによって又はアリルアルコール、メタクリル酸又はアクリル酸のエステルの様な架橋促進剤を接着剤に添加することによって放射線量を減らすことができる。
【0039】
エチレン又は酢酸ビニルのコポリマー、特に少なくとも40重量%のVAc割合のエチレン−酢酸ビニルコポリマーが特に適していることが判っている。これらは危険な場合(接着反撥性塗料又は急激に曲がった接着面)でも高い接着強度を保証しそして接着剤中に光保護剤を添加しなくともそれ自体が高い耐候性を有している。特に55〜70重量%のVAc割合が有利である。それ故に第一の層としての未延伸のポリプロピレンブロックコポリマーと接着剤としてのエチレン−酢酸ビニルコポリマーとの組合せも、一方の材料が僅かな収縮しか示さずそしてもう一方が結合した状態で収縮に対して非常に高い抵抗(剪断強度)を示すので有利である。剪断強度は、一般に架橋を省くことができる程に良好である。
【0040】
性質の最適化、特に特別な塗膜への接合挙動の最適化のためには、使用する粘着剤(接着剤)には1種類以上の添加物、例えば粘着性付与剤(樹脂)、可塑剤、充填剤、顔料、紫外線吸収剤、光保護剤、老化防止剤、架橋剤又は架橋促進剤が混入されていてもよい。
【0041】
粘着性付与剤は例えば炭化水素樹脂(例えば不飽和のC又はC−モノマー)、テルペンフェノール樹脂、α−又はβ−ピネンの様な原料からなるテルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂又はスチレン又はα−メチルスチレンよりなる樹脂、例えばロジン及びそれの誘導体、例えば不均化された、二量体化された又はエステル化された樹脂があり、その際にグリコール、グリセロール又はペンタエリスリトールが使用でき並びに他のものはUllmann‘s Enzyklopadie der technischen Chemie, Band 12, Seiten 525 bis 555 (4. Aufl.), Weinheimに掲載されている。オレフィン性二重結合を有していない老化安定性樹脂、例えば水素化樹脂が特に適している。
【0042】
適する充填剤及び顔料には例えばカーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、珪酸塩又は珪酸がある。
【0043】
接着剤のための適する紫外線吸収剤、光保護剤及び老化防止剤はフィルムの安定化に挙げられるものである。
【0044】
適する可塑剤は例えば脂肪族、脂環式及び芳香族鉱油、フタル酸、トリメリット酸又はアジピン酸のジ−又はポリエステル、液状ゴム(例えばニトリル−又はポリイソプレンゴム)、ブテン及び/又はイソブテンよりなる液状ポリマー、アクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、粘着性樹脂の原料をベースとする液状樹脂及び可塑剤樹脂、羊毛ワックス(wool wax)及び他のワックス又はシリコーン類がある。
【0045】
架橋剤は例えばフェノール樹脂又はハロゲン化フェノール樹脂、メラミン−及びホルムアルデヒド樹脂がある。適する架橋促進剤には例えばマレインイミド、アリルエステル、例えばトリアリルシアヌレート、アクリル酸及びメタクリル酸の多官能性エステルがある。
【0046】
塗料から接着剤への塗料成分(グリセロールの脂肪酸エステル、シリコーン又はその他の可塑剤)の移動を減少させるのに、ある種の塗料系について、該塗料の成分を接着剤に添加するのが有利である。この種の塗料成分はヨーロッパ特許出願公開第0,763,584A1号明細書及び米国特許第5,612,135A1号明細書に詳細に記載されている。
【0047】
更に、接着剤、特に保護フィルム全体がハロゲンを含有していない場合が、物質回収及び熱エネルギー回収にとって有利である。
【0048】
本発明の保護フィルムは、全ての層(支持体、粘着性付与剤、接着剤)が同時に押出成形される同時押出成形によって特に有利に製造される。これは技術的に最も良い解決法である。
【0049】
支持体を第一及び第二の層並びに場合によって存在する別の層を同時押出成形することによっても同様に製造できる。
【0050】
この種類のフィルムはブロー成形ライン又は好ましくはキャスチング装置(T型ダイス技術)で製造することができ、その際にフィルムは圧延成形ロール又は圧延フレームを用いて圧延(延伸)することによっては一軸延伸又は二軸延伸されない。このようなフィルムのブロー成形の場合には引っ張り速度、ブロー比及び温度設定によって延伸を最小限にするべきである。
【0051】
同時押出成形は、支持体を製造する場合に粘着性付与層を設けるための適当な手段でもある。
【0052】
粘着性付与剤は支持体と同時押出成形することによって、支持体及び接着剤と同時押出成形することによって又は支持体の上に塗布することによって設けることができる。
【0053】
有利な一つの実施態様は、粘着性付与剤を支持体の押出成形の際に同時に適用し、得られる同時押出成形フィルムに接着剤だけを塗布するだけで設けることを本質とする。
【0054】
接着剤、粘着性付与剤及び(ブロックコポリマーよりなる)第一の層/フィルムを一つの作業段階で同時押出成形によって製造する殆ど全ての試みは、1m以上の幅の場合均一な層厚分布を達成できないので、従来には成功してない。同時押出成形によって一般的な種類の保護フィルムを製造するための、文献から知られる例の再実験で、1mより大きい幅である場合に均一な層厚分布を達成できないことがわかった。これは特に、一般にシーリング層に使用される種類の粘着性が小さくない部分的に結晶質のコポリマーを用いる強い粘着性の接着剤の原料の場合に言える。
【0055】
それ故に、少なくとも40重量%の酢酸ビニルを有するエチレン−酢酸ビニルコポリマーが実施例に記載した様なブロックコポリマーと同時押出成形されることは全く驚くべきことである。層厚分布は、1000mの連続長さ及び1.5mの幅の場合に一様に巻き取られたロールが生じそして鋼鉄(AFERA 4001) への接着力はこの幅に亙って±20%の許容範囲にある。この結果を達成するために、層の原料のメルトインデックス及び溶融流の温度は互いに一致していなければならない。
【0056】
次の範囲が最も有利である:
(プライマーの副層も含めた)フィルムのメルトインデックスは230℃、2.16kgで0.3〜10g/10分の範囲にありそして接着剤については190℃、2.16kgで0.5〜10kg/10分の範囲にある。使用されるPE−LDの厚さは0.915〜0.930g/cmの範囲にある。接着剤溶融物の温度は(溶融物流が一体化される場所で測定して)フィルムの温度より下にある。
【0057】
本発明の対象物質はその長所のために、自動車の様な塗装された乗物に使用するのに適している。その場合、接着したばかりの状態で既に少なくとも0.7N/cmの接着強度が望まれ(DIN EN 1939に相当するAFERA法4001)、それ故にフィルムは貼り付けた直後に応力付加下に(特に平らでない貼り付け物の場合に)貼り付けた縁が剥がれないか又は自動車の移動又は乗車の際でも走行風圧によっても全く剥離しない。塗膜への接着力はそれぞれの塗料調製物に左右されるので、保護フィルムの接着力は鋼鉄への接着力(AFERA) により良好な特徴がある。貼り付けたばかりの状態でこの強度はできる限り、0.2〜3.8N/cm、好ましくは0.7〜1.7N/cmにあるべきである。
【0058】
更に本発明の保護フィルムは、特に自動車の塗装したばかりのものの組み立て又は運搬に対しての保護又は塗装したての鋼鉄板の加工及び運搬の保護手段として適している。この場合、保護フィルムは塗装された表面を炉に通した後30分で、この時点まで塗料が未だ完全に硬化していないにも係わらず、既に如何なる問題もなく貼り付けることができる。更に保護フィルムは、接着力の小さい他の種類の広い表面の粘着性被覆フィルムで追加的に固定するための縁部安全化テープとして使用する場合にも優れた性質を示す。
【0059】
更に本発明の保護フィルムは、自動車の場合、自動車のボンネント、屋根及びトランクの広い幅で貼り付けることができそしてその変形能のために平らな領域及び曲がった形状の領域にも非常に良好にフィットすることに特徴がある。従って最も汚れるおそれのある水平面を保護することもできる。しかしながら狭い領域、例えば窓下のドア張出部又はバンパーも容易に覆うことができる。自動車の垂直面の保護は特にそれ自体の組み立ての間に特に適している。良好に延伸できるにも係わらず、慣用の良好な変形性ポリエチレン保護フィルムの収縮の欠点がない。
【0060】
保護フィルムは太陽光、湿気、熱及び冷寒に対して耐久性があり、この耐候性は少なくとも1年間はある。二酸化チタンの様な顔料並びに光保護安定剤の添加は保護フィルムの紫外線安定性を向上させる。例えばフロリダで遭遇するような非常に高レベルの太陽光も保護フィルムの無能化又は剥がれを生じさせない。保護フィルムの紫外線透過性が非常に僅かであることが太陽光の作用による接着剤の分解を防止する。
【0061】
更に保護フィルムの強度はワックスでの保護に比べて汚れ、例えば鳥の糞に対して及び小さい機械的な作用による自動車全体への影響に対して十分な保護を保証する。使用後に保護フィルムは、要求される良好な粘着性にも係わらず残留せず、支持体フィルムが裂けることなく剥離できる。保護フィルムは、それ自体ハロゲンを含有していないので、回収することが可能であるか又はエネルギー的に回収することが可能である。
【0062】
第一の層においてポリプロピレンブロックコポリマーを用いることによってね、保護フィルムを剥がす際に、接着剤が良好に接着性を有していても保護フィルムは裂けない。
【0063】
紫外線照射の後に表面保護テープを試験する際に、標準的なポリプロピレン(ポリプロピレンホモポリマー)、標準的なポリエチレン(HDPE)又はこれらの1:1の混合物よりなる支持体フィルムの場合には非常に速やかに脆弱化が生じるが、LDPE又は(5%のエチレンを含有する)ポリプロピレン−ランダムコポリマーの場合には状態が良好であり、3〜15%のエチレン含有量のポリプロピレン−ランダムコポリマーの場合に最も良好な結果が達成される。それ故に第一層のためにポリプロピレンブロックコポリマーを用いるメリットは、特に気候的作用を受けた後に剥離する際に、実用において非常に優れていることである。本発明において特に有利な、第一層のためのポリプロピレンブロックコポリマーと接着剤のための非常な粘着性のエチレン−酢酸ビニルコポリマーとを組み合わせた場合には、高い接着性及び未だ良好な再剥離性という重要な性質を矛盾なしに印象的に達成できることである。
【0064】
別の長所としては、加熱状態における収縮に対して本発明の保護フィルムが安定していることがある。これは保護フィルムで被覆された表面の縁部の所に接着剤の粘つき残痕を生じないことが重要である。これは、接着剤を乾燥するために保護フィルムを炉に通すために有利である。主要成分としてポリエチレンを含む保護フィルムは、たとえ自動車での用途にとって柔軟適応性(延伸性)が特に有利であるとしても、不十分な耐熱性を有している。表面保護テープのフィルムの主成分としてポリエチレン又はポリプロピレン−ランダムコポリマーを用いるのが、柔軟適応性(前述の柔軟性/変形性)が有利であるので通例である。更に強靱性も、良好な耐熱性であるが脆性が小さいポリプロピレン−ホモポリマーの場合よりも良好である。自動車を被覆するための保護フィルムにもこれは当てはまる。この種の保護フィルムは熱安定性が中程度しかないという欠点を有している。
【0065】
第一のフィルムにおいて主成分としてポリプロピレン−ブロックコポリマーを使用することで、一方は十分な柔軟性がありそしてもう一方では耐熱性があるという対立事項を特異的に解決している。このことは同じ熱安定性であって、かつ、より高い強靱性を相反して要求される場合にも該当する。
【0066】
接着剤としての強い接着性のエチレン−酢酸ビニルコポリマーは保護フィルムをロールの状態で貯蔵した後に剥離剤を本質的なフィルム成分として使用しない場合に、比較的に扱い難い巻き戻りをもたらします。扱い難い巻き戻りは使用する者に過剰延伸をもたらすだけでなく、ロール状物を解くために人(又は保持装置)が掴む位置で保護フィルムを戻せない歪みをももたらす。
【0067】
当業者にとって、PE−LDよりなる第二の外側層及び第一の層の上に存在する、エチレン−酢酸ビニル接着剤、特に少なくとも40重量%の酢酸ビニルを含むエチレン−酢酸ビニルを用いた場合に、鋼鉄に0.2〜3.7N/cmの間の接着力を持つ保護フィルムが意図する以下の性質組合せを示すことは予期しえなかったし、驚くべきことである:
− 貯蔵前でも及び特に貯蔵後でも巻き戻り力が低く、
− 第一の層への純粋PE−LD層の係留が良好である。
【0068】
他の多くのポリエチレン(例えばPE−HD、PE−MD、PE−LLD)及びポリプロピレンと相違して、エチレン−酢酸ビニルコポリマーをベースとする接着剤のPE−LDよりなる層への接着力は明らかに低く、これは貯蔵した場合でも変わらない(図1参照)。多くの粘着テープのために実施しなければならない様な剥離用ワニスの追加的塗装はPE−LDよりなる外側層が存在する場合には必要とされない。当業者に知られるとおりポリプロピレンとポリエチレンと間に相容性が無いにもかかわらず、ポリプロピレンブロックコポリマー成分を有する層へのPE−LD層の係留性は用途にとって十分な高さを有している。
【0069】
特別に使用されるEVAc−粘着剤は、一方においては、自動車工業において慣用される種々の塗料に対して良好な接着強度を有しており、この性質は湿った又は湿度の高い気候条件においても保持され、その結果保護フィルムは風の影響下でも又は曲がった面への接着による応力のもとでも自動車から剥がれない。更にこの粘着剤は貼り付け後の最初の数分の後に既に十分な接着強度を示し、その結果この保護フィルムは既に30分後には例えば(160km/時までの)強い走行風圧にも耐えることができ、もう一方では長時間使用した後でも裂けることなく取り除くことができる。
【0070】
EVAc−粘着剤を持つ本発明の保護フィルムを二成分系ポリウレタン塗料からの剥離強度(結合力)は一般に新鮮な状態で0.7N/cm以上でありそして屋外気候の影響下に貯蔵した後に4N/cm以下である(AFERA法4001と同様に測定)。保護フィルムに紫外線を、例えばキセノン試験1200を用いて55℃で3000時間照射しても、保護フィルムの性質に如何なる欠点も生じない。フィルムの脆弱化も剥がす際の重量損失も生じない。
【0071】
試験方法:
測定は他の指摘が無い限り、23±1℃及び50±5%の相対湿度の気候のもとで実施する。
【0072】
保護フィルムの延伸挙動は、15mmの幅、150cmの長さのテープ状試験体をDIN EN ISO 527-3/2/300に従いクランプ止めされた長さ100mmを300mm/分の試験速度で測定する。
【0073】
瞬間的接着力を180°の剥離角度で20mm幅の試験体についてAFERA法4001に従って測定する。この場合、 PVC板をAFERA基準に従って試験用基体として使用し、試験すべき粘着テープの帯状物を該PVC板に貼り付ける。第二の帯状物を第一の帯状物の背面に貼り付けそして第一の帯状物の背面へのそれの接着強度をAFERA法4001に従って測定する。
【0074】
剥離力は2枚のそれぞれ20mmの幅の帯状試験体同志の接着力を測定する。この場合、貼り付け物の解放された接着剤面を、同様に20mmの幅で30μmの厚さのPVC製帯状物で被覆する。試験体を、2N/cmの貼り付け物への荷重負荷の下で7日間40℃で貯蔵する。貯蔵後に帯状試験体を220mmの長さに切断しそして試験条件の下で2時間貯蔵する。測定のために貼り付け物の帯状試験体の頂部をAFERA 4001で使用される様な引っ張り試験装置の上部クランプにクランプ止めする。底部の帯状試験体及びPVC帯状物は下部クランプにクランプ止めする。この場合、両クランプ間の距離は50mmである。測定はクランプ相互が移動する速度である300mm/分の速度で行う。100mmの距離に亙って測定される、貼り付け物を剥がすのに必要とされる力の値は剥離力に相当する。
【0075】
厚さはDIN 53370に従って測定し、その際にゲージは平ら(曲がっていない)である。しかしながら構造化されたフィルムの場合には、該厚さはエンボス加工する前の厚さである。これは後で(DIN 53352に従って測定される)面積重量及び密度を用いての換算によって行うことができる。エンボスの深さは、エンボス加工した厚さとエンボス加工していない厚さとの差である。
【0076】
以下の実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0077】
[比較例1]
フィルムを平面フィルム押出成形加工によって1450mmの幅で製造する。このものは50μmの厚さの第一の層と該第一の層の自由な面上の10μmの厚さの粘着性付与剤層とよりなる。
【0078】
第一の層は以下の組成を有する:
91.3重量% のブロックコポリマー(Novolen 2309 L:製造元BASF、メルトインデッ クス:230℃、2.16kgで6g/10分、エチレン含有量:約 6.5重量%。
8.4重量%の 二酸化チタン及び
0.3重量%の HALS安定剤(Tinuvin 770)。
【0079】
粘着性付与剤層は50重量%のNovolen 2309 L 及び50重量%のEVAc−コポリマー(Escorene Ultra UL 00728:製造元Exxon)。押出成形する前に原料をコンクリートミキサーで予備混合する。
【0080】
接着剤としてトルエンに以下の原料を溶解した10%溶液を製造する:
56重量%の 70重量%の酢酸ビニルと30重量%のエチレンとよりなるコポリマーで あって、予備処理せずに100℃で28のムーニー粘度ML(1+4) (DIN 52523)を持つ;
30重量%の 45重量%の酢酸ビニルと55重量%のエチレンとよりなるコポリマーで あって、予備処理せずに100℃で18のムーニー粘度ML(1+4) (DIN 52523)を持つ:
4.8重量%の 水素化ロジングリセロールエステル;
0.2重量%の Irganox 1010(酸化防止剤)。
【0081】
接着剤溶液をフィルムの上にコーティング棒を用いて塗布しそしてトンネルで80℃で4分間乾燥する。得られる保護フィルムを縁の切り取り処理しそして巻き取って長さ200mで幅1400mmのロールとする。接着剤の塗布量は12μmである。
【0082】
こうして製造された粘着フィルムは容易に、かつ、皺もなく解くことができそして自動車の保護のために使用する際に問題なく貼り付けることができる。
【0083】
[比較例2]
フィルムを平面フィルム押出成形加工によって1450mmの幅で製造する。このものは50μmの厚さの第一の層、10μmの厚さの外側層及び該第一の層の自由な面上の10μmの厚さの粘着性付与剤層よりなる。
【0084】
第一の層の組成は比較例1の場合と同じである。外側層は100%のLupolen 3721 C (製造元:Basell、PE-MD、d = 0,937 g/cm3)よりなる。粘着性付与剤層及び接着剤は比較例1のものに相当する。
【0085】
接着剤溶液をフィルムの上にコーティング棒を用いて塗布しそしてトンネルで80℃で4分間乾燥する。得られる保護フィルムを縁の切り取り処理しそして巻き取って長さ200mで幅1400mmのロールとする。接着剤の塗布量は12μmである。
【0086】
こうして製造された粘着フィルムは容易に、かつ、皺もなく解くことができそして自動車の保護のために使用する際に問題なく貼り付けることができる。
【0087】
[比較例3]
フィルムを平面フィルム押出成形加工によって1450mmの幅で製造する。このものは50μmの厚さの第一の層、10μmの厚さの外側層及び該第一の層の自由な面上の10μmの厚さの粘着性付与剤層よりなる。
【0088】
第一の層の組成は比較例1の場合と同じである。外側層は100%のポリエチレンLL 1030XV(製造元:ExxonMobil Chemical、PE-LLD、d = 0,918 g/cm3)よりなる。粘着性付与剤層及び接着剤は比較例1のものに相当する。
【0089】
接着剤溶液をフィルムの上にコーティング棒を用いて塗布しそしてトンネルで80℃で4分間乾燥する。得られる保護フィルムを縁の切り取り処理しそして巻き取って長さ200mで幅1400mmのロールとする。接着剤の塗布量は20μmである。
【0090】
こうして製造された粘着フィルムは容易に、かつ、皺もなく解くことができそして自動車の保護のために使用する際に問題なく貼り付けることができる。
【0091】
[比較例4]
フィルムを平面フィルム押出成形加工によって1450mmの幅で製造する。このものは50μmの厚さの第一の層、10μmの厚さの第二の層(外側層)及び該第一の層の自由な面上の10μmの厚さの粘着性付与剤層よりなる。
【0092】
第一の層の組成は比較例1の場合と同じである。外側層はPE−LD及びPP−コポリマー(70重量%がExxonMobil ChemicalのLD252、密度 = 0,923 g/cm3で30重量%のブロックコポリマーの Daplen FFC 2012)よりなる。粘着性付与剤層及び接着剤は比較例1のものに相当する。
【0093】
接着剤溶液をフィルムの上にコーティング棒を用いて塗布しそしてトンネルで80℃で4分間乾燥する。得られる保護フィルムを縁の切り取り処理しそして巻き取って長さ200mで幅1400mmのロールとする。接着剤の塗布量は12μmである。
【0094】
こうして製造された粘着フィルムは容易に、かつ、皺もなく解くことができそして自動車の保護のために使用する際に問題なく貼り付けることができる。
【実施例1】
【0095】
フィルムを平面フィルム押出成形加工によって1450mmの幅で製造する。このものは50μmの厚さの第一の層、10μmの厚さの外側層及び該第一の層の自由な面上の10μmの厚さの粘着性付与剤層よりなる。
【0096】
第一の層の組成は比較例1の場合と同じである。外側層は100%のポリエチレンLD
252(製造元:ExxonMobil Chemical、PE-LD、d = 0.923 g/cm3)よりなる。PE−LD及びPP−コポリマー(70重量%がExxonMobil ChemicalのLD252、密度 = 0.923 g/cm3)よりなる。粘着性付与剤層及び接着剤は比較例1のものに相当する。
【0097】
接着剤溶液をフィルムの上にコーティング棒を用いて塗布しそしてトンネルで80℃で4分間乾燥する。得られる保護フィルムを縁の切り取り処理しそして巻き取って長さ200mで幅1400mmのロールとする。接着剤の塗布量は12μmである。
【0098】
こうして製造された粘着フィルムは容易に、かつ、皺もなく解くことができそして自動車の保護のために使用する際に問題なく貼り付けることができる。
【実施例2】
【0099】
保護フィルムを接着剤を含めて4層の同時押出成形によって製造する。
原料:
− 第一の層50μm:
60重量%の ブロックコポリマー(Daplen FFC 2012、製造元:PCD、メルトインデッ クス:230℃、2.16kgで6g/10分、エチレン含有量:12 重量%)
25重量%の ホモポリマー(Daplen KF 201、製造元:PCD、メルトインデックス: 190℃、2.16kgで1.5g/10分 )
6.3重量%の Lupolen 1840 H (LDPE、製造元:Elenac GmbH、メルトインデック ス:190℃、2.16kgで1.5g/10分 、密度: 0.919 g/cm3
8.4重量%の 二酸化チタン及び
0.3重量%の Tinuvin 770。
− 第二の層10μm:
100%の ポリエチレン(LD165BW1、製造元:ExxonMobil Chemical、PE-LD、d = 0,922 g/cm3)。
− 粘着性付与剤層10μm:比較例1と同じ。
− 接着剤層12μm:
59.5重量%の酢酸ビニルと39.5重量%のエチレンとよりなり190℃、 2.16kgで3g/10分のメルトインデックスを有するコポリ マー。押出成形前に接着剤原料を粉末化剤としての約1重量%の珪酸の 添加下に約5mmの大きさの顆粒に加工する。
【0100】
こうして製造された保護フィルムのロールは、巻き取り品質に問題のない幅1.5mで1000mの長さのものである。このロールは容易に、かつ、皺もなく解け、自動車の保護のために問題なく貼り付けることができる。使用後にこの粘着フィルムは屋外で1年の接着期間まで問題なく再び剥離すことができる。
【実施例3】
【0101】
フィルムを平面フィルム押出成形加工によって1450mmの幅で製造する。このものは50μmの厚さの第一の層、10μmの厚さの外側層及び該第一の層の自由な面上の10μmの厚さの粘着性付与剤層よりなる。
【0102】
第一の層の組成は比較例1の場合と同じである。外側層はPE−LD及びPP−コポリマー(85重量%がExxonMobil ChemicalのLD252、密度 = 0,923 g/cm3で15重量%のブロックコポリマーの Daplen FFC 2012)よりなる。粘着性付与剤層及び接着剤は比較例1のものに相当する。
【0103】
接着剤溶液をフィルムの上にコーティング棒を用いて塗布しそしてトンネルで80℃で4分間乾燥する。得られる保護フィルムを縁の切り取り処理しそして巻き取って長さ200mで幅1400mmのロールとする。接着剤の塗布量は12μmである。
【0104】
こうして製造された粘着フィルムは容易に、かつ、皺もなく解くことができそして自動車の保護のために使用する際に問題なく貼り付けることができる。
【0105】
性質の比較:
【0106】
【表1】

【0107】
実施例1及び2の接着力と各比較例のそれとの比較で、エチレン酢酸ビニル接着剤のPE−LD外側層を持つフィルムへの接着力が中でも剥離力の場合に他の外側層のそれよりも遥かに下にあることがわかる。各実施例の瞬間接着力は比較例としばしば同じ程度であるが、高温で長時間貯蔵した後の剥離力はPE−LD外側層を用いた場合に比較例のレベルに達する場合がない。瞬間接着力と剥離力との差は、接着用複合体を貯蔵した場合に、種々の基体へのエチレン酢酸ビニル接着剤の接着強度が変化することに起因する。貯蔵過程で一般に接着強度が増加するが、PE−LDへの接着ではこれが全く又は僅かしか生じない。それ故にこの基体は、特に貯蔵後でも低い巻き戻り力を達成するのに適している。実施例3及び比較例4から、PE−LDとPP−コポリマーとのブレンドが85%のPE−LD割合では低い剥離力を未だ示すが、70%だけのPE−LD割合では十分な効果をもはや示さないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】種々のポリマーに対するエチレン−酢酸ビニルコポリマーをベースとする接着剤の接着力の試験結果をグラフ化して図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に接着剤を塗布した支持体よりなる粘着性保護フィルムにおいて、支持体が少なくとも2つの層を有し、接着剤に面するその第一の層が10〜95重量%の含有量で少なくとも1種類のプロピレンブロックコポリマーを含有する無配向フィルムよりなり、そして接着剤と反対側の第二の層が少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%の低密度ポリエチレンを含有するフィルムよりなることを特徴とする、上記粘着性保護フィルム。
【請求項2】
低密度ポリエチレンが0.915g/cm〜0.935g/cm、好ましくは0.915g/cm〜0.930g/cmの密度を有する、請求項1に記載の粘着性保護フィルム。
【請求項3】
第二の層が最高15μm、好ましくは最高10μmの厚みを有する、請求項1又は2に記載の粘着性保護フィルム。
【請求項4】
ポリプロピレンブロックコポリマーのメルトインデックスが230℃、2.16kgのもとで0.8〜15g/10分である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルム。
【請求項5】
ポリプロピレンブロックコポリマーのエチレン含有量が3〜15重量%である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルム。
【請求項6】
第一の層中のプロピレンブロックコポリマーの割合が少なくとも65重量%である、請求項1〜5のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルム。
【請求項7】
支持体層と接着剤との間に粘着性付与剤が存在している、請求項1〜6のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルム。
【請求項8】
粘着性付与剤が、少なくとも1種類のα−オレフィン及び極性コモノマーを含有する少なくとも1種類のポリマーを含有する請求項1〜7のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルム。
【請求項9】
接着剤層がエチレンと酢酸ビニルとよりなる少なくとも1種類の共重合体よりなり、その際に接着剤層中の酢酸ビニルの含有量が好ましくは少なくとも40重量%、特に好ましくは55〜70重量%である、請求項1〜8のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルム。
【請求項10】
鋼鉄への接着力が0.2〜3.8N/cm、特に0.7〜1.7N/cmである、請求項1〜9のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルム。
【請求項11】
支持体の厚さが好ましくは粘着性付与剤層を含めて20〜80μmである、請求項1〜10のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルム。
【請求項12】
支持体、特に第一の層が少なくとも0.15重量%の量で少なくとも1種類の光保護剤を含有する、請求項1〜11のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルム。
【請求項13】
支持体層が少なくとも2つの層、即ち接着剤に面する層及び外側層を同時押出成形によって製造しそして該外側層が低密度ポリエチレンを含む、請求項1〜12のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルム。
【請求項14】
支持体層を粘着性付与剤層と一緒に同時押出成形する、請求項1〜13のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルムを製造する方法において、支持体層、場合によっては粘着性付与層及び接着剤を同時に押出成形することを特徴とする、上記方法。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルムを製造する方法において、支持体層及び場合によっては粘着性付与剤層を同時に押出成形し、次いで粘着性付与剤層の上に接着剤を塗布することを特徴とする、上記方法。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルムを自動車又は自動車部材の塗装面の上に使用し、その際に保護フィルムの貼り付けを好ましくは自動車の組み立て前に行うか又は自動車の新しい仕上げ塗装物の組み立て又は運搬保護のために又は新しい塗装済み鋼鉄製薄板の加工及び運搬保護としての使用。

【図1】
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【公開番号】特開2008−208374(P2008−208374A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44191(P2008−44191)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(507249591)テーザ・アクチエンゲゼルシャフト (52)
【Fターム(参考)】