説明

低エネルギーX線画像形成装置

【課題】厚さの薄い被写体のX線画像を、長時間安定して低ノイズで形成することができる低エネルギーX線画像形成装置を提供する
【解決手段】X線源10から20keV未満の低エネルギーX線を被写体100に照射し、透過する低エネルギーX線をガス電子増幅器12で電子に変換して増幅し、電子検出器14で検出してX線画像形成装置16により被写体100の低エネルギーX線画像を形成する。この低エネルギーX線画像は、標準X線画像や可視画像と比較して、あるいは異物による低エネルギーX線の吸収端を検出することにより、印刷インクや金属その他の異物等のノイズを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低エネルギーX線画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、X線を使用して被写体の透過画像を取得する装置が使用されている。例えば、下記特許文献1には、被写体を透過してきたX線をCCD等により検出し、X線画像を生成するX線撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−141729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術においては、CCDによりX線を検出する構成なので、CCDがX線により劣化し、長時間安定して使用できないという問題があった。
【0005】
また、包装容器等の欠陥検査を行う場合には、被写体の厚さが薄いので、コントラストを出すために20keV未満の低エネルギーX線(軟X線)を使用するのが好ましいが、この場合被写体表面に形成された印刷インク層や、被写体表面に付着したゴミの影響を受け、ノイズの多いX線画像となってしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、厚さの薄い被写体のX線画像を、長時間安定して低ノイズで形成することができる低エネルギーX線画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、低エネルギーX線画像形成装置であって、20keV未満の低エネルギーX線を被写体に照射する低エネルギーX線照射手段と、前記被写体を通過した低エネルギーX線に基づいて電子を発生させ、発生した電子数を増幅する電子増幅手段と、前記電子増幅手段が増幅した電子数を検出する電子検出手段と、前記電子検出手段の検出結果に基づいて前記被写体のX線画像を形成するX線画像形成手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記低エネルギーX線画像形成装置において、前記X線画像形成手段が、予め取得した前記被写体の標準X線画像と前記被写体のX線画像との差分を求め、当該差分値からX線画像を形成することを特徴とする。
【0009】
また、上記低エネルギーX線画像形成装置において、前記X線画像形成手段が、予め取得した検出対象物質のX線吸収端のデータに基づき前記電子検出手段の検出結果から前記検出対象物質を検出し、前記X線画像に前記検出対象物質の画像のみを残す補正を行うことを特徴とする。
【0010】
また、上記低エネルギーX線画像形成装置が、さらに前記被写体の可視画像を撮影する可視画像撮影手段を備え、前記X線画像形成手段は、予め取得した前記被写体の標準可視画像と前記可視画像撮影手段が撮影した可視画像とから被写体表面の異物を検出し、X線画像から前記表面異物の画像を除去することを特徴とする。
【0011】
また、上記低エネルギーX線画像形成装置において、前記X線画像形成手段が、前記表面異物の大きさ毎に予め求めた低エネルギーX線の減衰量に基づいてX線画像から前記表面異物を除去することを特徴とする。
【0012】
また、上記低エネルギーX線画像形成装置が、さらに、20keV以上の高エネルギーX線を被写体に照射する高エネルギーX線照射手段を備え、前記電子増幅手段と、電子検出手段と、X線画像形成手段とにより前記高エネルギーX線に基づくX線画像を形成し、前記高エネルギーX線照射手段と前記低エネルギーX線照射手段とが、互いに反対方向から前記被写体にX線を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長時間安定して低エネルギーX線画像を形成することができる。また、厚さの薄い被写体の低エネルギーX線画像を、印刷インクや異物等のノイズが無い状態で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態にかかる低エネルギーX線画像形成装置の構成例を示す図である。
【図2】ガス電子増幅器及び電子検出器の構成例を示す図である。
【図3】X線画像形成装置を構成するコンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。
【図4】X線画像形成装置の一実施形態の機能ブロック図である。
【図5】画像補正部の補正動作の例の説明図である。
【図6】被写体に金属等の異物が存在する場合に、当該異物のX線の吸収曲線の例を示す図である。
【図7】画像補正部の補正動作の他の例の説明図である。
【図8】実施形態にかかる低エネルギーX線画像形成装置の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0016】
図1には、実施形態にかかる低エネルギーX線画像形成装置の構成例が示される。図1において、低エネルギーX線画像形成装置は、X線源10、ガス電子増幅器12、電子検出器14及びX線画像形成装置16、可視画像撮影装置17を含んで構成されている。この低エネルギーX線画像形成装置は、エネルギーX線画像の形成対象である被写体の内部の亀裂や異物等の存在を検査するために使用することができるが、用途はこれらに限定されるものではない。
【0017】
X線源10は、20keV未満の低エネルギーX線を発生し、被写体100に照射する装置であり、従来公知のX線照射装置を使用することができる。
【0018】
ガス電子増幅器12は、被写体100を透過してきたX線により発生した電子の数を増幅する装置である。このガス電子増幅器12は、所定の検出用ガスが充填されたチャンバと、当該チャンバ内に設けられ、発生した電子を加速するための電場を発生させる電極とを備え、X線が検出用ガスからチャンバ内に発生させた電子を、電子雪崩効果により電荷増倍を行って増幅する。なお、ガス電子増幅器12の構成例は後述する。
【0019】
電子検出器14は、ガス電子増幅器12が増幅した電子数を検出する。この電子検出器14は、直接電荷を検出する方法、あるいはシンチレーション光を検出する方法等により増幅された電子の数を検出する構成とすることができる。
【0020】
X線画像形成装置16は、適宜なコンピュータにより構成され、電子検出器14による上記電子数の検出結果に基づいて、被写体100の低エネルギーX線画像(低エネルギーX線の透過画像)を形成する。
【0021】
可視画像撮影装置17は、適宜なカメラにより構成され、被写体100の可視画像(静止画または動画)を撮影する。可視画像撮影装置17が撮影した被写体100の画像情報は、X線画像形成装置16に出力される。
【0022】
なお、被写体100は、実施形態にかかる低エネルギーX線画像形成装置によりX線画像を形成し、内部の欠陥、異物等の検査等を行う対象である。例えば、医薬品、化粧品、食品などに利用される各種包装材を挙げることができる。これらの包装材の種類としては、ラミネートチューブ、ラミネートフィルム包装、PTP包装、SP包装、両面アルミPTP包装など通常良く利用されているものが含まれる。その他、本装置によって欠陥、異物等の検査が可能な包装材であれば被写体100に含まれる。
【0023】
図2には、上記ガス電子増幅器12及び電子検出器14の構成例が示される。図2において、ガス電子増幅器12は、ドリフト電極18と電子検出器14との間に、一次電子を発生させるドリフト領域20と電子増幅板22が配置されて構成されている。この電子増幅板22は、電子雪崩効果により電荷増倍を行うガス電子増幅器として機能し、板状絶縁層24とこの板状絶縁層24の両面に被覆された平面状の導体層26、28とで構成されている。また、電子増幅板22には、電場を集束させるための貫通孔30が複数形成されている。また、これらの構成要素を収容するチャンバ32内には、所定の検出用ガスが充填されている。検出用ガスとしては、一般に希ガスとクエンチャーガスの組合せが使用される。希ガスとしては、例えばHe、Ne、Ar、Xe等がある。また、クエンチャーガスとしては、例えばCO、CH、C、CF等がある。
【0024】
このような放射線検出器においては、電源部34から導体層26、28及びドリフト電極18に所定の電圧が印加されている。これにより、チャンバ32内には電子増幅板22を介してドリフト電極18から電子検出器14の方向に電子を移動させる電場が形成されている。この状態で放射線がドリフト電極18側から入射すると、光電効果、コンプトン散乱あるいは電子対生成等により、検出用ガス中の原子から電子を遊離して一次電子を発生させる。発生した一次電子は、ドリフト電極18と電子増幅板22との間のドリフト領域20で検出用ガスを電離させ、その際に発生した電子は上記電場により電子検出器14の方向に移動する(二次電子)。電子増幅板22に近づいた二次電子は、貫通孔30内で集束された電場によってさらに加速され雪崩増幅が発生する。これにより生じた励起電荷を電子検出器14で捕集し、検出信号を出力する。
【0025】
図3には、X線画像形成装置16を構成するコンピュータのハードウェア構成の例が示される。図3において、X線画像形成装置16は、中央処理装置(例えばマイクロプロセッサ等のCPUを使用することができる)36、ランダムアクセスメモリ(RAM)38、読み出し専用メモリ(ROM)40、入力装置42、表示装置44、通信装置46及び記憶装置48を含んで構成されており、これらの構成要素は、バス50により互いに接続されている。また、入力装置42、表示装置44、通信装置46及び記憶装置48は、それぞれ各入出力インターフェース52を介してバス50に接続されている。
【0026】
CPU36は、RAM38またはROM40に格納されている制御プログラムに基づいて、後述する各部の動作を制御する。RAM38は主としてCPU36の作業領域として機能し、ROM40にはBIOS等の制御プログラムその他のCPU36が使用するデータが格納されている。
【0027】
また、入力装置42は、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル等により構成され、使用者が動作指示等を入力するために使用する。
【0028】
また、表示装置44は、液晶ディスプレイ等により構成され、被写体100のX線画像、可視画像等を表示する。
【0029】
また、通信装置46は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポートその他の適宜なインターフェースにより構成され、CPU36がネットワーク等の通信手段を介して外部の装置とデータをやり取りするために使用する。
【0030】
また、記憶装置48は、ハードディスク等の磁気記憶装置であり、後述する処理に必要となる種々のデータを記憶する。なお、記憶装置48としては、ハードディスクの代わりに、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書換可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。
【0031】
図4には、X線画像形成装置16の一実施形態の機能ブロック図が示される。図4において、X線画像形成装置16は、検出情報取得部54、X線画像形成部56、標準画像取得部58、差分演算部60、吸収端検出部62、画像補正部64、可視画像取得部66及び減衰量データ取得部68を含んで構成されており、これらの機能は例えばCPU36とCPU36の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0032】
検出情報取得部54は、電子検出器14が検出した電子数の情報を通信装置46を介して取得する。この情報の取得は、図2に示された電子検出器14との間を、例えばUSBにより接続して行うことができる。
【0033】
X線画像形成部56は、検出情報取得部54が取得した電子数の情報に基づき、被写体100の低エネルギーX線画像(低エネルギーX線の透過画像)を形成する。この場合、電子数に応じて画像の濃淡(画素値)を決定する等の方法によりX線画像を形成することができるが、X線画像の形成方法はこれには限定されない。X線画像形成部56が形成した低エネルギーX線画像は、表示装置44に表示される。
【0034】
標準画像取得部58は、予め記憶装置48に記憶されている被写体100の標準X線画像のデータを取得する。標準X線画像は、内部に亀裂等の欠陥や異物(ゴミ)がなく、表面にも異物が付着していない被写体100の低エネルギーX線画像である。ただし、被写体100にインク等を使用した印刷が施されている場合には、当該印刷が存在する状態で取得した低エネルギーX線画像である。
【0035】
差分演算部60は、X線画像形成部56が形成した低エネルギーX線画像と標準画像取得部58が取得した標準X線画像との差分を演算する。演算結果は画像補正部64に出力され、上記X線画像を補正する。
【0036】
吸収端検出部62は、被写体100の内部に存在する金属その他の異物のX線吸収端を検出する。この場合、X線源10は、検出対象物質である異物の吸収端近傍のエネルギー範囲でエネルギーの強さを連続的に変えながらX線照射を行う構成としておく。吸収端検出部62は、上記エネルギー範囲において電子検出器14が検出した電子数の推移を監視し、X線の吸収率または透過率の変化から吸収端を検出する。この場合、異物となる各物質の吸収端データを記憶装置48に記憶させておくことにより、吸収端検出部62が、検出した吸収端のエネルギー(吸収ピークの位置)から異物の種類を特定する構成としてもよい。なお、本例では、各検出対象物質毎にX線吸収端のデータを予め記憶装置48に記憶させておき、このデータに基づいてX線源10から照射される低エネルギーX線のエネルギーの大きさを制御する構成としておく。
【0037】
画像補正部64は、X線画像形成部56が形成した低エネルギーX線画像を補正する。例えば、差分演算部60から受け取った上記差分の演算結果に基づき、低エネルギーX線画像上に存在する印刷インク層のノイズ(印刷インク層の像)等を除去し、被写体100の内部の低エネルギーX線画像とする補正を行う。また、画像補正部64は、吸収端検出部62が検出した検出対象物質の吸収端のデータに基づき、当該検出対象物質の画像のみを低エネルギーX線画像上に残す補正を行う。また、画像補正部64は、可視画像取得部66が取得した被写体100の可視画像情報に基づき、被写体100の表面に存在する表面異物を検出し、低エネルギーX線画像から表面異物を除去し、被写体100の内部の低エネルギーX線画像とする補正を行う。なお、可視画像には、被写体100の表面に存在する表面異物のみが写り、被写体100の内部の異物は写らないので、可視画像中に存在する異物を表面異物と判断することができる。さらに、画像補正部64は、減衰量データ取得部68が取得した異物の減衰量データに基づき、低エネルギーX線画像上で上記表面異物に相当するX線の減衰が無かったとする補正を行う。この補正は、検出情報取得部54が取得した電子数の情報に、上記減衰分量に相当する電子数を加えること等の方法で行うことができる。これにより、低エネルギーX線画像から表面異物を除去することができる。なお、画像補正部64の動作例については後述する。
【0038】
可視画像取得部66は、可視画像撮影装置17が撮影した被写体100の可視画像情報を取得する。取得した可視画像情報は、画像補正部64に出力する。なお、可視画像取得部66が取得した可視画像も、表示装置44に表示される構成とするのが好適である。
【0039】
減衰量データ取得部68は、被写体100の表面等に存在する異物の大きさ毎に予め求め、記憶装置48に記憶させた低エネルギーX線の減衰量のデータを記憶装置48から取得する。取得した減衰量のデータは、画像補正部64に出力する。なお、異物が被写体100の表面に存在するものであるか否かは、上記被写体100の可視画像情報から検出する。
【0040】
図5(a),(b),(c),(d),(e)には、画像補正部64の補正動作の例の説明図が示される。本例は、被写体100の表面に印刷インク層が存在している場合の補正動作の例である。
【0041】
図5(a)は、標準画像取得部58が取得した被写体100の標準X線画像である。被写体100の表面には文字「A」が印刷されている。また、図5(b)は、被写体100の断面図である。図5(b)では、被写体100の表面に文字「A」を形成するインク層Aが存在し、被写体100の内部に亀裂等の欠陥や異物が存在していないことを示している。
【0042】
一方、図5(c)は、X線画像形成部56が形成した被写体100の低エネルギーX線画像である。この低エネルギーX線画像には、被写体100の表面の文字「A」の印刷(インク層)の像と、被写体100の内部に存在する異物αの像とが写っている。図5(d)は、被写体100の断面図であり、被写体100の表面に文字「A」を形成するインク層Aが存在し、被写体100の内部に異物が存在していることを示している。
【0043】
差分演算部60は、図5(a)に示される標準X線画像と図5(c)に示される低エネルギーX線画像との差分を演算する。これにより標準X線画像と低エネルギーX線画像との共通部分である文字「A」のインク層の像が除去される。画像補正部64は、上記差分の演算結果に基づき、低エネルギーX線画像を、文字「A」の印刷インク層の像を除去した画像に補正する。これにより、図5(e)に示される被写体100の内部の低エネルギーX線画像を形成する。この結果、実施形態にかかる低エネルギーX線画像形成装置により、被写体内部の欠陥や異物を検出することができる。
【0044】
図6には、被写体100に金属等の異物が存在する場合に、当該異物のX線の吸収曲線の例が示される。図6において、横軸がX線源10から被写体100に照射される低エネルギーX線のエネルギーであり、上述したように、検出対象物質である異物の既知の吸収端近傍のエネルギー範囲でエネルギーの強さが連続的に変化している。また、縦軸は、X線の被写体100の透過率である。
【0045】
図6の例では、印刷用のインク層(Cと表記)のX線吸収曲線と、異物である鉄(Feと表記)のX線吸収曲線とが示されている。図6に示されるように、鉄には吸収端AEが存在するが、インク層には吸収端が存在しない。そこで、吸収端検出部62は、上記吸収端AEの位置から異物の存在を検出することができる。画像補正部64は、吸収端検出部62が検出した吸収端のデータから、被写体100にはインク層の他に異物も存在すると判断することができる。そこで、画像補正部64は、低エネルギーX線画像に異物の像のみを残し、インク層の画像を除去する補正を行う。この場合、異物の位置は、吸収端が現れたときに低エネルギーX線を照射していた位置として決定することができるので、インク層と異物の両方の画像を含む低エネルギーX線画像からインク層の画像のみを除去することができる。なお、異物の種類は、吸収端のピーク値等から決定することができるので、低エネルギーX線画像に残した画像が異物の画像であるか否かを判定することもできる。この補正により、被写体100の内部の低エネルギーX線画像を形成することができ、被写体内部の欠陥や異物を検出することができる。
【0046】
図7(a),(b),(c),(d)には、画像補正部64の補正動作の他の例の説明図が示される。本例は、被写体100の表面に異物が存在している場合の補正動作の例である。
【0047】
図7(a)は、X線画像形成部56が形成した被写体100の低エネルギーX線画像である。この低エネルギーX線画像には、被写体100の内部に存在する異物αの像と、被写体100の表面に存在する異物βの像とが写っている。図7(b)は、被写体100の断面図であり、被写体100の内部に異物αが存在し、被写体100の表面に異物βが存在していることを示している。
【0048】
一方、図7(c)は、可視画像撮影装置17が撮影した被写体100の可視画像情報である。この可視画像情報には、被写体100の表面に存在する異物βの像が写っているが、被写体100の内部の異物αは写っていない。そこで、画像補正部64は、上記可視画像情報中に写っている異物βを被写体100の表面に存在する表面異物と判断し、低エネルギーX線画像から異物βの像を除去した画像に補正する。これにより、図7(d)に示される被写体100の内部の低エネルギーX線画像を形成する。この結果、実施形態にかかる低エネルギーX線画像形成装置により、被写体内部の欠陥や異物を検出することができる。
【0049】
なお、画像補正部64が低エネルギーX線画像から異物βの像を除去するには、例えば可視画像情報中の異物βの位置と大きさを求め、当該位置と大きさに対応する低エネルギーX線画像中の領域の画像の画素値をX線の異物による減衰が無かった場合の値に補正する。あるいは、減衰量データ取得部68が記憶装置48から取得した低エネルギーX線の減衰量データを使用し、可視画像情報から表面異物と判断した異物βに基づく減衰量を求め、この減衰量に相当する電子数を検出情報取得部54が取得した電子数の情報に加えることにより行ってもよい。
【0050】
図8には、実施形態にかかる低エネルギーX線画像形成装置の他の構成例が示され、図1と同一要素には同一符号を付している。図8においては、図1の構成に、20keV以上の高エネルギーX線を被写体100に照射する高エネルギーX線源70が追加されており、この高エネルギーX線源70から照射され、被写体100を透過した高エネルギーX線が、ガス電子増幅器72を介して電子検出器74で検出される構成となっている。なお、ガス電子増幅器72及び電子検出器74は、ガス電子増幅器12及び電子検出器14と同様の構成であり、X線を電子流に変換してから増幅し、電子の数として透過X線の強度を検出している。
【0051】
図8において特徴的な点は、低エネルギーのX線源10と高エネルギーX線源70とが、互いに平行で反対の方向から被写体100にX線を照射する点にある。これにより、相互のX線源10及び70から照射されたX線が、他方の電子検出器74及び14で検出される干渉現象を回避することができる。この結果、相互のX線源10及び70と相互の電子検出器74及び14等の距離を小さくでき、装置の小型化を図ることができる。
【0052】
また、図8に示された例では、20keV以上の高エネルギーX線を被写体100に照射することにより、被写体100の厚肉部、X線が透過しにくい材料部分等の、20keV未満の低エネルギーX線では観測が困難な部分の検査を行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
10 X線源、12 ガス電子増幅器、14 電子検出器、16 X線画像形成装置、17 可視画像撮影装置、18 ドリフト電極、20 ドリフト領域、22 電子増幅板、24 板状絶縁層、26、28 導体層、30 貫通孔、32 チャンバ、34 電源部、36 CPU、38 RAM、40 ROM、42 入力装置、44 表示装置、46 通信装置、48 記憶装置、50 バス、52 入出力インターフェース、54 検出情報取得部、56 X線画像形成部、58 標準画像取得部、60 差分演算部、62 吸収端検出部、64 画像補正部、66 可視画像取得部、68 減衰量データ取得部、70 高エネルギーX線源、72 ガス電子増幅器、74 電子検出器、100 被写体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20keV未満の低エネルギーX線を被写体に照射する低エネルギーX線照射手段と、
前記被写体を通過した低エネルギーX線に基づいて電子を発生させ、発生した電子数を増幅する電子増幅手段と、
前記電子増幅手段が増幅した電子数を検出する電子検出手段と、
前記電子検出手段の検出結果に基づいて前記被写体のX線画像を形成するX線画像形成手段と、
を備えることを特徴とする低エネルギーX線画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の低エネルギーX線画像形成装置において、前記X線画像形成手段は、予め取得した前記被写体の標準X線画像と前記被写体のX線画像との差分を求め、当該差分値からX線画像を形成することを特徴とする低エネルギーX線画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の低エネルギーX線画像形成装置において、前記X線画像形成手段は、予め取得した検出対象物質のX線吸収端のデータに基づき前記電子検出手段の検出結果から前記検出対象物質を検出し、前記X線画像に前記検出対象物質の画像のみを残す補正を行うことを特徴とする低エネルギーX線画像形成装置。
【請求項4】
請求項1記載の低エネルギーX線画像形成装置が、さらに前記被写体の可視画像を撮影する可視画像撮影手段を備え、前記X線画像形成手段は、予め取得した前記被写体の標準可視画像と前記可視画像撮影手段が撮影した可視画像とから被写体表面の異物を検出し、X線画像から前記表面異物の画像を除去することを特徴とする低エネルギーX線画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の低エネルギーX線画像形成装置において、前記X線画像形成手段は、前記表面異物の大きさ毎に予め求めた低エネルギーX線の減衰量に基づいてX線画像から前記表面異物を除去することを特徴とする低エネルギーX線画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の低エネルギーX線画像形成装置が、さらに、20keV以上の高エネルギーX線を被写体に照射する高エネルギーX線照射手段を備え、前記電子増幅手段と、電子検出手段と、X線画像形成手段とにより前記高エネルギーX線に基づくX線画像を形成し、前記高エネルギーX線照射手段と前記低エネルギーX線照射手段とが、互いに反対方向から前記被写体にX線を照射することを特徴とする低エネルギーX線画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−7759(P2011−7759A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154254(P2009−154254)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(505153199)サイエナジー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】