説明

低分子量レジスト用共重合体の製造方法

【課題】分子量が1000以下のオリゴマーや重合開始剤由来の副生物の含有量が少ない、重量平均分子量が3000以上6000以下であるレジスト用共重合体の製造方法の提供。
【解決手段】該製造方法は、単量体を含む溶液と、重合開始剤を含む溶液とを加熱した溶媒中に連続的に供給してラジカル重合を行う工程を含み、単量体供給量が全単量体供給量の10モル%に達した時点から単量体溶液供給終了の時点までの間において、重合液中の重合開始剤濃度の変化幅がその間の最大濃度と最小濃度の中間値の±25%以内であり、且つ、重合液中の未反応単量体濃度の変化幅が、その間の最大濃度と最小濃度の中間値の±35%以内であることを特徴とする、レジスト用共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造に使用されるレジスト用共重合体の製造方法に関する。更に詳しくは、重量平均分子量が3000以上6000以下の範囲内であるレジスト用共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造に用いられるリソグラフィーにおいては、集積度の増大に伴い、より微細なパターンの形成が求められており、現在ではKrFエキシマレーザー光(波長248nm)やArFエキシマレーザー光(波長193nm)によるリソグラフィー技術が量産で使用されている。また、さらに波長の短いF2エキシマレーザー光(波長157nm)や、これらエキシマレーザーより短波長のEUV(極紫外線)やX線、また、電子線によるリソグラフィー技術についても研究開発が進んでいる。
【0003】
このようにパターンの微細化が進行する中、リソグラフィーに用いるレジストの基材成分として、最近ではより低い分子量の共重合体を使用するケースが増えてきている。これは、解像性ならびにラインエッジラフネス(LER)を改善するにはより小さい分子サイズの共重合体を使う方が好ましいとされている為である(特許文献1)。実際ArFエキシマレーザー用に用いられる共重合体は、パターンサイズ90nm以下では重量平均分子量(以下、Mwと略記)が10000前後の共重合体が主に使用されているが、パターンサイズ45nm以下ではMw7000前後の共重合体が使用される場合も増えてきている。共重合体の分子量が小さいと、塗布特性の低下、エッチング耐性の低下、あるいは液浸露光時の膜減り等の好ましくない性質も生じるが、今後も最先端レジスト用の共重合体に関しては低分子量化の傾向は続くと考えられる。
【0004】
これらの状況に際して、分子量が小さめの共重合体、具体的にはMw3000から6000の共重合体の製造方法に関しては確立しているとは言い難い。実用化されているレジスト用共重合体の最も一般的な製造方法は、アゾ化合物などのラジカル重合開始剤を用いて、数種類の単量体を加熱下に溶液状態で共重合させて共重合体を得る方法である。このような場合、共重合体の分子量を下げるには重合開始剤の使用量を増やす、あるいは連鎖移動効果を持つ分子量調節剤として硫黄化合物などを共存させて重合を行うなどの方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−266099号公報
【特許文献2】特開2001−2735号公報
【特許文献3】特開2011−28231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記の背景技術を検討した結果、ラジカル重合開始剤を大量に投入してラジカル濃度が高い条件で重合を行うと、重合体の連鎖成長反応が十分進む前に、発生したラジカル末端同士がすぐに停止反応を起こし、意図しない生成物、即ち、分子量1000以下のオリゴマーや、重合開始剤由来のラジカル同士が再結合した副生物の生成量が増加することを知見した。なお、ここでは単量体が2〜5個程度結合したと考えられる分子量1000以下の共重合体をオリゴマーと呼ぶこととする。レジストの基材成分として使用する分子量が小さめの共重合体にオリゴマーが多く含まれると、以下のように好ましくない現象が起きることがある。
【0007】
第一に、連鎖数の少ないオリゴマーには同一の繰り返し単位からなるホモオリゴマーが少なからず含まれ、このようなホモオリゴマーはレジスト溶剤への溶解性が低いことから不溶分となってレジストの欠陥原因となる恐れがある。例として3成分A、B、Cの単量体をモル組成比50/30/20で共重合させる場合を考える。単量体は原則ランダムに重合するので単量体3つが重合してホモ3量体AAA、BBB、CCCが出来る割合はそれぞれ、0.5の3乗=0.125、0.3の3乗=0.027、0.2の3乗0.008=0.08と予想できる。ホモ3量体は合計0.125+0.027+0.008=0.16(16%)も生成すると推定される。これが同じモル組成比で6量体であれば前述と同様の計算によりホモ6量体の合計は0.0164(1.6%)となり、ホモ重合体の割合はひと桁下がる。
【0008】
第二に、分子鎖末端の数が増えることによるレジストの透過率低下と酸化劣化の恐れが懸念される。ラジカル重合した重合体の末端には不均化停止反応に由来する炭素−炭素二重結合が少量だが存在する。炭素−炭素二重結合はリソグラフィーに使用する遠紫外線(193nmなど)を吸収し透過率の低下を招く。また、炭素−炭素二重結合が酸化を受けることにより樹脂の劣化を促進させる。
【0009】
第三に、上記第一、第二の理由で示した通り、オリゴマーはレジストに悪影響を与える懸念があるため精製して除去しなければならないが、オリゴマーを十分に除去しようと過度の精製を行うと本来必要である共重合体の低分子量側も精製によって削れてしまい、所望の分子量分布を持った共重合体を得られない恐れがある。また単純にオリゴマー含有量が多いと供給原料に対する共重合体の収率は下がり、製造コストを上昇させる要因ともなる。以上の理由から、重合反応を終えた時点でオリゴマー生成量の少ない共重合体の製造方法が望まれていた。
【0010】
特許文献3には、Mwが2500以上5000未満のアクリルエステル系共重合体の含有量が樹脂全体の50wt%以上であるレジスト用組成物及びその製造方法が報告されているが、上記課題を解決するには十分と言えるものではなかった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、分子量1000以下のオリゴマー生成量の少ない、重量平均分子量3000以上6000以下のレジスト用共重合体を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、重量平均分子量が3000以上6000以下のレジスト用共重合体の製造方法において、重合反応液中の重合開始剤濃度の変動及び重合反応液中の単量体濃度の変動を小さくすることで、重合開始剤を効率的に働かせ、重合開始剤の使用量を減らし、オリゴマーや重合開始剤由来の副生物の生成が少ない共重合体を製造できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の一態様によれば、3000以上6000以下の重量平均分子量を有するレジスト用共重合体を製造する方法であって、該製造方法が、単量体を含む溶液と、重合開始剤を含む溶液とを、加熱した溶媒中に連続的に供給してラジカル重合を行う工程を含み、単量体供給量が全単量体の10モル%に達した時点から単量体溶液供給終了の時点までの間において、重合液中の重合開始剤濃度の変化幅がその間の最大濃度と最小濃度の中間値の±25%以内であり、且つ、重合液中の未反応単量体濃度の変化幅が、その間の最大濃度と最小濃度の中間値の±35%以内である、レジスト用共重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分子量が1000以下であるオリゴマーの生成を抑制しつつ、レジスト特性に優れた、重量平均分子量が3000以上6000以下のレジスト用共重合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における重合反応中の重合開始剤濃度の時間変化を示す図である。
【図2】実施例1における重合反応中の総未反応単量体濃度の時間変化を示す図である。
【図3】比較例1における重合反応中の重合開始剤濃度の時間変化を示す図である。
【図4】比較例1における重合反応中の総未反応単量体濃度の時間変化を示す図である。
【図5】実施例2における重合反応中の重合開始剤濃度の時間変化を示す図である。
【図6】実施例2における重合反応中の総未反応単量体濃度の時間変化を示す図である。
【図7】比較例2における重合反応中の重合開始剤濃度の時間変化を示す図である。
【図8】比較例2における重合反応中の総未反応単量体濃度の時間変化を示す図である。
【図9】実施例3における重合反応中の重合開始剤濃度の時間変化を示す図である。
【図10】実施例3における重合反応中の総未反応単量体濃度の時間変化を示す図である。
【図11】比較例3における重合反応中の重合開始剤濃度の時間変化を示す図である。
【図12】比較例3における重合反応中の総未反応単量体濃度の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0017】
共重合体
本発明により製造されるレジスト用共重合体は、3000以上6000以下、好ましくは4000以上6000以下の重量平均分子量を有するものであり、好ましくは1.2〜2.5、より好ましくは1.3〜2.0の分子量分布を有するものである。さらに、共重合体は、重合反応終了時において、分子量1000以下のオリゴマーの含有量が全体の10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。また、精製後の共重合体においては、分子量1000以下のオリゴマーの含有量が全体の4%以下であることが好ましい。共重合体の重量平均分子量、分子量分布、及びオリゴマー含有量が、上記範囲程度であれば、微細なパターンを形成するリソグラフィーにおいて好適に使用できる。
【0018】
共重合体の構造
本発明により製造されるレジスト用共重合体は、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる重合体であり、少なくとも1種類以上の、酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)を有する。酸解離性溶解抑制基とは、共重合体がアルカリ現像液への溶解するのを抑制するとともに、酸の作用により解離して共重合体をアルカリ現像液に溶解せしめる基を言う。また、本発明により製造されるレジスト用共重合体は、ラクトン環構造を有する繰り返し単位(B)及び/又はヒドロキシ基を有する繰り返し単位(C)を有する。さらに、必要に応じて、アルカリ現像液への溶解を抑制すると共に酸の作用に安定な構造(以下、「酸安定性溶解抑制構造」と言うことがある)を有する繰り返し単位(D)等、その他の繰り返し単位を含むことができる。
【0019】
繰り返し単位(A)
繰り返し単位(A)は、カルボキシル基やフェノール性水酸基、あるいはスルホン酸基等のアルカリ可溶性基を、酸の作用で解離する酸解離性溶解抑制基で保護した構造を有する繰り返し単位である。好ましくは(メタ)アクリル酸あるいはヒドロキシスチレン等から誘導される繰り返し単位中のカルボキシル基やフェノール性水酸基、あるいはスルホン酸基等のOH基を酸解離性溶解抑制基で保護した繰り返し単位である。
【0020】
酸解離性溶解抑制基としては、式(a1)又は(a2)で表される構造を挙げることができる。
【化1】

式(a1)中、*は式(a1)としての結合部位を表し、R20及びR21はそれぞれ独立して炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができる。R22は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基及び、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基等を挙げることができる。尚、R22はR20又はR21と結合して環、具体的にはシクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等の炭素数5〜12の脂環を形成しても良い。特に、R22に、又は、R22がR20若しくはR21と結合して、飽和脂環、具体的にはシクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等が含まれると、リソグラフィー前後でのアルカリ現像液に対する溶解性の差が大きく、微細パターンを描くのに好ましい。
【化2】

式(a2)中、*は式(a2)としての結合部位を表し、R23及びR24はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができる。R25は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を挙げることができる。尚、R23は、R24又はR25と結合して環を形成しても良く、R23がR24と結合した環の具体例として、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等を、又、R23がR25と結合した環の具体例として、ヒドロフラン環、ヒドロピラン環等をそれぞれ挙げることができる。
【0021】
以下に、繰り返し単位(A)の具体的な例を挙げるが、本発明を限定するものではない。繰り返し単位(A)の中から、1種類、若しくは異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【化3】


(式中、RxはH,CH又はCFを表す。)
【化4】


(式中、RxはH,CH又はCFを表す。)
【0022】
繰り返し単位(B)
繰り返し単位(B)は、ラクトン構造を有する繰り返し単位であり、基板や下地膜への密着性を高めたり、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御したりする働きを与える。好ましい例として、式(B1)で表される構造を挙げることができる。
【化5】

式(B1)中、R30は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R31は単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基は炭素数1〜4のアルキレン基又は該アルキレン基に酸素原子、カルボニル基、又はカルボニルオキシ基が置換した基を表す。R32は式(b)で表されるラクトン構造含有基を表す。
【化6】

式(b)中、R301〜R308のいずれか1つは、R32としての結合部位である単結合を表し、残りの、R301〜R308は、水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基又はアルコキシ基を表すか、或いは、R301〜R308のいずれか1つは、R32としての結合部位を有し、他の、R301〜R308のいずれか1つ又は2つと結合して炭素数5〜15の脂環を形成する、酸素原子又は硫黄原子を含んでも良い炭素数3〜14の炭化水素基を表し、残りの、R301〜R308は、いずれか1つ又は2つが該炭素数5〜15の脂環を形成するための単結合を表し、その他の、R301〜R308は、水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基又はアルコキシ基を表す。mは0又は1の整数を表す。
【0023】
上記の脂環の具体例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等、好ましくは、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環を挙げることができる。炭素数1〜4の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等を挙げることができ、炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基等を挙げることができる。
【0024】
式(b)中、R301〜R308のいずれか1つがR32としての結合部位を有する単結合を表し、残りのR301〜R308は、水素原子、又は、炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表すラクトン構造の特に好ましい例として、γ−ブチロラクトン構造、δ−バレロラクトン構造を挙げることができる。R301〜R308のいずれか1つがR32としての結合部位を有し、他のR301〜R308のいずれか1つ又は2つと結合して炭素数5〜15の脂環を形成する、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数3〜14の炭化水素基を表し、残りのR301〜R308は、水素原子、又は、炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表すラクトン構造の特に好ましい例として、1,3−シクロヘキサンカルボラクトン構造、2,6−ノルボルナンカルボラクトン構造、7−oxa−2,6−ノルボルナンカルボラクトン構造、4−oxa−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン構造を挙げることができる。
【0025】
以下に繰り返し単位(B)の具体的な例を挙げるが、本発明を限定するものではない。繰り返し単位(B)の中から、1種類、若しくは異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【化7】

(式中、RxはH,CH又はCFを表す。)
【0026】
繰り返し単位(C)
繰り返し単位(C)は、側鎖にヒドロキシ基あるいはカルボキシ基を有する繰り返し単位であり、重合体の、基板や下地膜への密着性を高めたり、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御したり、硬化剤と反応して架橋構造を形成したりする働きを与える。
【0027】
繰り返し単位(C)の構造としては、式(C1)乃至(C3)で表される構造が特に好ましい。
【化8】

式(C1)中、R10は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のフッ素原子が置換しても良いアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R11は置換、又は非置換の芳香族炭化水素基である。R12は単結合、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の2価の炭化水素基、又はカルボニル基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、1,1−エチレン基、2,2−プロピレン基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基等のフッ素原子が置換もよい炭素数1〜4のアルキレン基を挙げることができ、好ましくは、単結合、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基であり、特に好ましくは単結合である。iは1又は2の整数を表す。
【化9】

式(C2)中、R13は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のフッ素原子が置換しても良いアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R14はフッ素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでも良い炭素数2〜14の2〜4価の炭化水素基を表し、具体的には、エチレン基、イソプロピレン基等の炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐状の飽和炭化水素基と、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等を有する酸素原子又は硫黄原子を含んでも良い炭素数5〜14の飽和脂環炭化水素基を挙げることができ、好ましくは、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、アダマンタン環である。R15は単結合、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の2価の炭化水素基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、1,1−エチレン基、2,2−プロピレン基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基等のフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を挙げることができ、好ましくは、単結合、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基である。R14がアダマンチル基、R15が単結合である組合せが特に好ましい。jは1〜3の整数を表す。
【化10】

式(C3)中、R16は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等のフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R17は、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数6〜12の2価の脂環炭化水素基を表し、具体的には、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等を有する酸素原子又は硫黄原子を含んでも良い脂環炭化水素基を挙げることができ、好ましくはノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環である。kは0又は1の整数を表す。
【0028】
以下に繰り返し単位(C)の具体的な例を挙げるが、本発明を限定するものではない。繰り返し単位(C)の中から、1種類、又は異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【化11】


(式中、RxはH,CH又はCFを表す。)
【0029】
繰り返し単位(D)
繰り返し単位(D)は、カルボキシル基やフェノール性水酸基等のアルカリ可溶性基を、酸の作用にあっても解離しない酸安定性溶解抑制基で保護した構造を有する繰り返し単位である。好ましくは(メタ)アクリル酸あるいはヒドロキシスチレン等から誘導される繰り返し単位中のカルボキシル基やフェノール性水酸基を酸安定性溶解抑制基で保護した繰り返し単位である。この繰り返し単位は、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性、薄膜の屈折率や光線透過率等の光学特性等を制御する働きを与える。
【0030】
酸安定性溶解抑制基としては、カルボキシル基やフェノール性水酸基の水素原子と置換して酸素原子と結合する炭素が1〜2級炭素である炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、メチル基及び1−アダマンチル基が結合した構造を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−ノルボルニル基、2−イソボルニル基、8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、4−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントラセニル基等を挙げることができる。
【0031】
以下に、繰り返し単位(D)の具体的な例を挙げるが、本発明を限定するものではない。繰り返し単位(D)の中から、1種類、又は異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【化12】

(式中、RxはH,CH又はCFを表す。)
【0032】
また、繰り返し単位(D)と同様の効果を持つ繰り返し単位として、式(D’)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【化13】

式(D’)中、R60は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等のフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R61は水素原子、又は、R62と結合する単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基であり、具体的には、水素原子、単結合、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基等を挙げることができる。R62は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、具体的にはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等を挙げることができる。
【0033】
以下に、繰り返し単位(D’)の具体的な例を挙げる。
【化14】

【0034】
各繰り返し単位の組成は、化学増幅ポジ型レジスト膜に用いる場合、繰り返し単位(A)が5〜80モル%、好ましくは10〜70モル%、より好ましくは15〜60モル%、繰り返し単位(B)と繰り返し単位(C)を合わせて20〜95モル%、好ましくは30〜90モル%、より好ましくは40〜85モル%、繰り返し単位(D)あるいは(D’)が0〜50モル%、好ましくは0〜40モル%、より好ましくは0〜30モル%の範囲から選択する。
【0035】
重合開始剤
半導体リソグラフィー用共重合体の製造に用いられる重合開始剤は、ラジカル重合開始剤として公知のものを用いることができる。重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物や過酸化物等のラジカル重合開始剤が好ましい。アゾ系化合物の重合開始剤の具体例として、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等を挙げることができる。過酸化物の重合開始剤の具体例として、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。これらは単独若しくは混合して用いることができる。アゾ系化合物の重合開始剤は取り扱いの安全性が優れることからより好ましい。ただし、アゾ系重合開始剤の中には金属不純物が多量に含まれているものもありレジスト性能等に悪影響を及ぼすこともあるので、その場合は、予め重合開始剤を有機溶剤等に溶解させた溶液を、水溶媒で抽出あるいはイオン交換樹脂や金属を捕捉する機能を持つフィルターに接触させるなどして、金属不純物を除去しておくことが望ましい。
【0036】
重合工程
本発明の重合工程は、上記の共重合体の繰り返し単位を与える単量体を含む溶液と、重合開始剤を含む溶液とを、加熱した溶媒中に連続的に供給してラジカル重合を行う工程であり、下記に示す方法により重合開始剤や単量体の供給速度を決定し、重合反応中の重合開始剤濃度や未反応単量体濃度を制御することにより行う。
【0037】
重合工程では、単量体供給量が全単量体供給量の10モル%に達した時点から単量体溶液供給終了の時点までの間において、重合液中の重合開始剤濃度の変化幅が、その間の最大濃度と最小濃度の中間値の±25%以内、好ましくは±20%以内、より好ましくは±10%以内であり、且つ、重合液中の未反応単量体濃度の変化幅が、その間の最大濃度と最小濃度の中間値の±35%以内、好ましくは±30%以内である。重合液中の重合開始剤濃度の変化幅及び未反応単量体濃度の変化幅を制御することで、重合開始剤を効率良く働かせることができ、従来よりも少ない重合開始剤の使用量で重量平均分子量が3000以上6000以下の共重合体を製造することができる。これにより、重合開始剤に由来する副生成物と分子量1000以下のオリゴマーの生成量を減らすことができる。
【0038】
重合工程では、重合開始剤の一部、例えば重合開始剤の全供給量の1〜12質量%を、単量体溶液の供給に先行して重合槽内に供給することが好ましい。重合開始剤の一部を先に供給することで、重合反応初期に目標より高い分子量の共重合体が生成するのを防ぐことができ、更には重合反応中の重合液中の重合開始剤濃度の変化幅を小さく抑えることができる。
【0039】
重合工程では、単量体の全供給モル数に対する重合開始剤の全供給モル数の割合が10モル%以下であることが好ましく、8モル%以下であることがより好ましい。単量体の全供給モル数に対する重合開始剤の全供給モル数の割合を上記範囲程度に調節することで、重合開始剤に由来する副生成物と分子量1000以下のオリゴマーの生成量をより減らすことができるのである。
【0040】
滴下液の調製
単量体及び重合開始剤は、それ自体が液体の場合は溶媒に溶解することなくそのまま供給することも可能であるが、好ましくは溶媒に溶解して供給する。その際、供給操作に問題のない粘度範囲で、各単量体及び重合開始剤が十分に溶解し、かつ、供給中に析出せず、重合系内で拡散し易い濃度を選択することが好ましい。具体的な濃度は、各溶液の溶質と溶媒の組合せ等により異なるが、通常、全単量体の合計濃度合あるいは重合開始剤濃度が、例えば各々5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%の範囲となるように調製する。
【0041】
重合開始剤の供給速度の決定方法
重合開始剤の供給速度は、一般的な半減期の計算方法を基に重合開始剤の濃度が反応系内でどのように変化するかをシミュレートして、モノマー供給量10%の時点から供給終了時点までの時間帯における重合液中の重合開始剤濃度の変化幅が、その間の平均値の±25%以内になるように供給速度を決定する。
【0042】
反応容器に溶媒のみを入れ、重合温度まで加熱した後、先行して重合開始剤の一部を含む溶液を供給し、その後、単量体を含む溶液と残りの重合開始剤を含む溶液とを滴下供給する場合を想定し、具体的には、以下の(1)から(3)の手順によりシミュレートする。
(1)反応系内の重合開始剤量の変化を計算する。
単量体の供給開始前に供給する重合開始剤の量をJ0(g)
重合温度における重合開始剤の半減期をT(分)
重合開始剤の供給速度をK(g/分)
とすると、
加熱1分後の反応系内の重合開始剤残量は、J0*exp(−ln2/T)で表される。
また、後から追加される分は1分間かけて供給される間に平均0.5分間加熱されるので、1分間に追加供給される重合開始剤の量は、K*exp(−ln2*0.5/T)で表される。
よって、1分後の重合開始剤残量J1は、
J1=J0*exp(−ln2/T)+K*exp(−ln2*0.5/T)
同様に2分後の重合開始剤残量J2は、
J2=J1*exp(−ln2/T)+K*exp(−ln2*0.5/T)
以降、同様の計算を繰り返すことで、所定時間後の反応系内の重合開始剤残量を求めることが出来る。
なお、計算に必要な重合開始剤の半減期Tの数値は、製造元のカタログ等の資料を参照することで知ることが出来る。また、重合開始剤の分解速度は溶媒の種類によって変化することもあるため、より正確な値を求めるには、重合開始剤を所定の溶媒に溶解して所定の温度で加熱し濃度変化を測定する実験を行ない、半減期Tを求めることがより好ましい。
(2)反応容器内の液量の変化を計算する。
反応容器に初期張りする溶媒の量を、L0−1(g)
単量体の供給前に供給する重合開始剤溶液の量を、L0−2(g)
重合開始剤溶液の供給速度を、M(g/分)
単量体溶液の供給速度を、N(g/分)
とすると、
1分後の反応容器内の液量L1は、L1=(L0−1)+(L0−2)+M+N 。
2分後の反応容器内の液量L2は、L2=L1+M+N 。
以下、同様に所定時間後の液量を計算することが出来る。
(3)重合液中の重合開始剤の濃度を計算する。
(1)、(2)の計算結果を元に、
1分後の重合液中の重合開始剤濃度I1は、I1=J1/L1 で表される。
2分後の重合液中の重合開始剤濃度I2は、I2=J2/L2 で表される。
以下、同様に所定時間後の重合液中の重合開始剤の濃度を算出することが出来る。
続いて、横軸に時間、縦軸に重合液中の重合開始剤濃度をとってグラフ化し、単量体供給量が全単量体供給量の10モル%の時点から供給終了時点までの時間帯における重合液中の重合開始剤の濃度変化が、その間の最大濃度と最小濃度の中間値の±25%以内になるような供給速度をシミュレートする。グラフ化することにより視覚的に重合開始剤の濃度変化の様子を確認することが出来る。以上の計算は、パソコンの表計算ソフトを用いて簡便に行うことができる。
【0043】
単量体溶液の供給速度の決定方法
本発明の、単量体の濃度変動幅を小さくするための単量体の供給速度は、以下の予備実験を行うことにより決定することができる。
先ず、溶媒のみを反応容器に入れ反応温度まで加熱後、単量体を含む溶液と重合開始剤を含む溶液とをそれぞれ一定速度で供給して共重合体の合成を行い、一定時間ごとに重合液をサンプリングして重合液中の未反応単量体の濃度を定量する。未反応単量体の定量はガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、あるいはゲルパーミネーションクロマトグラフィー等、適当な分析法により行う。未反応単量体の濃度と反応時間の関係をグラフにとり、単量体供給量が全単量体供給量の10モル%の時点から供給終了時点までの時間帯における未反応単量体濃度の最高値B(重量%)とその時点の単量体溶液供給量C(g)、及び、その間の最高値と最低値の中間値A(重量%)を求める。
以上の予備実験で得られたA,B,Cの各値を基に、本発明の単量体溶液の供給速度は以下の通りとする。
(i)反応容器に溶媒のみを入れ、重合温度まで加熱後、重合開始剤の一部を先行して供給する。
(ii)重合溶液中の単量体濃度がA(%)を超えるまで、単量体溶液を標準の速度、即ち、予備実験と同じく定速供給する場合の速度で供給する。
(iii)その後、単量体溶液の供給速度を下げる。目安は(ii)の速度のA/B倍。
(iv)単量体溶液の供給量がC(g)に達したら、単量体溶液の供給速度を(ii)と同じ速度に戻す。
【0044】
重合反応に用いる溶媒は、原料単量体、得られた共重合体、重合開始剤及び連鎖移動剤を安定して溶解し得る溶媒であれば特に制限されない。重合溶媒の具体例としては、水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等を挙げることができる。単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、共重合体の溶解性と沸点から、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、アセトニトリルが好ましい。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。また、エチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコージメチルエーテル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、共重合体の溶解性が高く、高沸点の化合物を混合して用いても良い。
【0045】
重合溶媒の使用量には特に制限はないが、溶媒の使用量があまりに少なすぎると単量体が析出したり高粘度になりすぎて重合系を均一に保てなくなったりする場合があり、多すぎると単量体の転化率が不十分であったり共重合体の分子量が所望の値まで高めることができなかったりする場合がある。通常、単量体1重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。
【0046】
反応槽内に初期に張り込む重合溶媒(以下、初期張り溶媒と言うことがある)の量は、攪拌が可能な最低量以上であればよいが、必要以上に多いと、供給できる単量体溶液量が少なくなり、生産効率が低下するため好ましくない。通常は、最終仕込み量(即ち、初期張り溶媒と、滴下する単量体溶液及び開始剤溶液の総量)に対して、例えば容量比で1/30以上、好ましくは1/20〜1/2、特に好ましくは1/10〜1/3の範囲から選択する。なお、初期張り溶媒に単量体の一部を予め混合しても良い。
【0047】
滴下時間は、短時間であると分子量分布が広くなりやすいことや、一度に大量の溶液が滴下されるため重合液の温度低下が起こることから好ましくない。逆に、長時間であると共重合体に必要以上の熱履歴がかかることと、生産性が低下することから好ましくない。従って、通常0.5〜24時間、好ましくは1〜12時間、特に好ましくは2〜8時間の範囲から選択する。
【0048】
また、滴下終了後は、一定時間温度を維持するか、若しくは更に昇温する等して熟成を行い、残存する未反応単量体を反応させることが好ましい。熟成時間は長すぎると時間当たりの生産効率が低下すること、共重合体に必要以上の熱履歴がかかることから好ましくない。従って、通常12時間以内、好ましくは6時間以内、特に好ましくは1〜4時間の範囲から選択する。
【0049】
重合温度は、溶媒、単量体、連鎖移動剤等の沸点、重合開始剤の半減期温度等によって適宜選択することができる。低温では重合が進みにくいため生産性に問題があり、又、必要以上に高温にすると、単量体及び共重合体の安定性の点で問題がある。したがって、好ましくは40〜160℃、特に好ましくは60〜120℃の範囲で選択する。重合温度は、共重合体の分子量や共重合組成に大きく影響するので、精密に制御する必要がある。一方、重合反応は一般的に発熱反応であり、重合温度が上昇する傾向にあるため、一定温度に制御することが難しい。このため、重合溶媒として、目標とする重合温度に近い沸点を有する少なくとも1種以上の化合物を含有させ、重合温度を、該化合物の、重合圧力における初留点以上に設定することが好ましい。この方法によれば、重合溶媒の気化潜熱によって重合温度の上昇を抑制することができる。
【0050】
また、重合系内に低温の単量体溶液を滴下すると、局所的に低温で、単量体濃度が高く、ラジカル濃度が低い環境が発生し、ハイポリマーが生成する可能性があるため好ましくない。このため、単量体溶液は予備加熱して供給することが好ましい。
【0051】
単量体溶液を予備加熱する方法としては、単量体溶液を貯槽内若しくは重合系内に供給する直前で熱交換器等により加温する方法が挙げられる。予備加熱の温度は25℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。但し、単量体溶液を貯槽内で予備加熱する場合は、加熱状態で長時間保持することになるため、温度が高いとハイポリマーが生成する可能性がある。このため、貯槽内での予備加熱する場合は、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下とする。なお、開始剤溶液も予備加熱することが可能であるが、温度が高すぎると重合開始剤が供給前に分解してしまうので、通常、40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下とする。
【0052】
重合圧力は、適宜設定することができるが、開始剤からラジカルが発生する際に、アゾ系の場合は窒素ガスが、過酸化物径の場合は酸素ガスが発生することから、重合圧力の変動を抑制する為に、重合系を開放系とし大気圧近傍で行うことが好ましい。
【0053】
連鎖移動剤は、連鎖移動剤として公知のものを、必要に応じて用いることができる。中でもチオール化合物が好ましく、公知のチオール化合物の中から幅広く選択することがでる。具体的には、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸等を挙げることができる。また、2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基が飽和脂肪族炭化水素に結合した構造を有するチオール化合物は、リソグラフィーパターンのラフネスや欠陥を抑える効果があるため特に好ましい。連鎖移動剤の使用量は、目的とする分子量や、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤及び溶媒等の種類、繰り返し単位組成、重合温度や滴下速度等に応じて選択することができる。
【0054】
重合反応装置
本発明の半導体リソグラフィー用重合体の製造方法には、従来公知の重合反応装置を用いることができる。少なくとも、原料単量体を含む溶液の貯蔵槽及び、重合開始剤を含む溶液の貯蔵槽と、重合反応槽を備える。
【0055】
精製工程
重合して得た共重合体は、重合溶媒、未反応単量体、オリゴマー、重合開始剤や連鎖移動剤及びこれらの反応副生物等の低分子量不純物を含んでおり、これらを精製工程によって除くことが好ましい。具体的には、重合反応液を、必要に応じて良溶媒を加えて希釈した後、貧溶媒と接触させて共重合体を固体として析出させ、不純物を貧溶媒相に抽出する(以下、再沈という)か、若しくは、液−液二相として貧溶媒相に不純物を抽出することによって行われる。再沈させた場合、析出した固体を濾過やデカンテーション等の方法で貧溶媒から分離した後、この固体を、良溶媒で再溶解して更に貧溶媒を加えて再沈する工程、若しくは、析出した固体を貧溶媒で洗浄する工程によって更に精製することができる。又、液−液二層分離した場合、分液によって貧溶媒相を分離した後、得られた共重合体溶液に貧溶媒を加えて再沈若しくは液液二相分離によって更に精製することができる。これらの操作は、同じ操作を繰り返しても、異なる操作を組み合わせても良い。
【0056】
この精製工程に用いる貧溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、乳酸エチル等の水酸基を有する化合物、ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロペンタン、エチルシクロヘキサン等の直鎖状、分岐状若しくは環状の飽和炭化水素類、若しくは、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を挙げることができる。これらの溶媒は、それぞれ単独若しくは2種以上を混合して用いることができる。又、良溶媒としては、上記の重合溶媒や後述する塗膜形成用溶媒で例示する溶媒等を挙げることができ、良溶媒に貧溶媒を混合して用いることもできる。
【0057】
精製工程に用いる貧溶媒の種類と量は、共重合体を低分子量化合物と分離できれば特に制限されないが、共重合体の貧溶媒への溶解度、重合に用いた溶媒の種類と量、不純物の種類と量等に応じて適宜選択することができる。貧溶媒の量は、少ないと重合溶媒や未反応単量体等の不純物の分離が不十分となり、逆に多すぎると廃液が増えるなど、作業性及びコストの面で好ましくない。一般的には、必要に応じて良溶媒で希釈した重合反応液の総量に対して重量で0.5〜50倍であり、好ましくは1〜20倍であり、更に好ましくは2〜10倍である。
【0058】
精製工程の温度は、共重合体の重量平均分子量、分子量分布、残存単量体や開始剤残査等の不純物の除去率、更にはリソグラフィーにおける様々な特性等に大きく影響するため、厳密に制御する必要がある。精製工程の温度は、低すぎると再沈溶媒や洗浄溶媒への不純物の溶解性が不十分となり、不純物の除去が十分に行われないため効率的でなく、逆に高すぎると共重合体が再沈溶媒及び洗浄溶媒に溶出し、共重合体の低分子領域における組成バランスが崩れたり、収率が低下したりするため好ましくない。このため、精製工程は温度0〜40℃の範囲で、好ましくは0〜30℃の範囲で実施することが好ましい。
【0059】
このようにして精製した後の共重合体は、乾燥し粉体として取り出すか、若しくは乾燥前若しくは乾燥後に良溶媒を投入して再溶解し、溶液として取り出すことができる。再溶解に用いる良溶媒は、上記の重合溶媒や後述する塗膜形成用溶媒で例示する溶媒等を用いることができる。
【0060】
上記精製後、共重合体溶液の溶媒は、後述するリソグラフィー組成物に適した塗膜形成用溶媒に置換してもよい。置換の方法は、共重合体溶液を減圧下で加熱して精製に用いた溶媒などの低沸点物質を留去させ、ここに塗膜形成用溶媒を供給しながら更に初期の溶媒と供給した溶媒とを一緒に留去させることによりおこなう。精製時に用いた溶媒などの低沸点不純物を除去し、共重合体を塗膜形成用溶液に仕上げることができる。
【0061】
減圧加熱時の温度は、共重合体が変質しない温度であれば特に制限されないが、通常100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、更に好ましくは70℃以下、特に好ましくは60℃以下である。
【0062】
また、溶媒を置換する際に、後から供給する塗膜形成用溶媒の量は、少なすぎると低沸点化合物が十分に除去できず、多すぎると置換に時間がかかり、共重合体に必要以上に熱履歴を与えるため好ましくない。その供給量は、通常、仕上がり溶液の溶媒として必要な量の1.05倍〜10倍、好ましくは1.1倍〜5倍、特に好ましくは1.2倍〜3倍の範囲から選択できる。
【0063】
塗膜形成用の溶媒としては、共重合体を溶解するものであれば特に制限されないが、通常、沸点、半導体基板やその他の塗布膜への影響、リソグラフィーに用いられる放射線の吸収を勘案して選択される。塗膜形成用に一般的に用いられる溶媒の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、乳酸エチル、メチルアミルケトン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノール等の溶媒が挙げられる。
【0064】
さらに共重合体から金属不純物を除去する工程を行うことが好ましい。この工程は、共重合体溶液を、カチオン交換能を有するフィルターや、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンカチオン樹脂などの正のゼータ電位を有する物質を含むフィルターに通液させる工程である。また、これらの工程は組み合わせて実施することができる。
【0065】
ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンカチオン樹脂などの正のゼータ電位を有する物質を含むフィルターとして、具体的には、(以下、商標)キュノ(株)製ゼータプラス40QSHやゼータプラス020GN、あるいはライフアシュアEFシリーズ等を例示できる。
【0066】
さらに、レジストのパターン欠陥の原因となるため好ましくないハイポリマー等のマイクロゲルを除去するために、共重合体溶液(あるいは上記の塗膜形成用溶液)をフィルターでろ過することが好ましい。フィルターの濾過精度は、0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、特に好ましくは0.05μm以下である。フィルターの材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリルなどの極性基含有樹脂、フッ化ポリエチレンなどのフッソ含有樹脂を挙げることができ、特に好ましくはポリアミドである。ポリアミド系フィルターの例としては、(以下、商標)、日本ポール(株)製のウルチプリーツP−ナイロン66、ウルチポアN66、キュノ(株)製のライフアシュアPSNシリーズ、ライフアシュアEFシリーズなどを挙げることができる。ポリオレフィン系フィルターとしては、日本インテグリス(株)製のマイクロガードプラスHC10、オプチマイザーD等を挙げることができる。これらのフィルターはそれぞれ単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0068】
使用する単量体
M:2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート
I:2−イソプロピル−2−アダマンチルメタクリレート
Mp:1−メチル−1−シクロペンチルメタクリレート
G:α−メタクリロキシ−γブチロラクトン
N:3,5−ノルボルナンラクトン−2−イル メタクリレート
O:3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート
【0069】
重合液中の未反応単量体濃度や重合開始剤の濃度は、下記の高速液体クロマトグラフィーにて分析を行った。重合反応液0.10gをテトラヒドロフラン1mlに溶解して分析用試料を調製した。装置への試料注入量は5μlとした。
高速液体クロマトグラフィー
装置:東ソー製GPC8220
検出器:示差屈折率(RI)検出器
カラム:東ソー製TSKgel SuperHZ1000(×4本)
溶離液:テトラヒドロフラン
【0070】
共重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、及びオリゴマー含有量は、ポリスチレンを標準品として、下記のゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにより求めた。重合反応終了時の重合液の分析は、重合液0.10gをテトラヒドロフラン1mlに溶解して分析用試料を調製した。装置への試料注入量は60μlとした。精製・乾燥後の粉体の分析は、粉体0.02gをテトラヒドロフラン1mlに溶解して分析用試料を調製した。装置への試料注入量は60μlとした。オリゴマー含有量は、重合生成物のクロマトグラムについて、未反応モノマーと未反応重合開始剤と重合溶媒等を除く全面積を100とした場合のMw1000以下の部分の面積で表した。
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー
装置:東ソー製GPC8220
検出器:示差屈折率(RI)検出器
カラム:昭和電工製KF−804L(×3本)
溶離液:テトラヒドロフラン
【0071】
共重合体の共重合組成は下記の13C−NMRにて分析を行った。精製・乾燥後の粉体1gとCr(III)アセチルアセトナート0.1gを、重アセトン1.5gとメチルエチルケトン0.5gの混合溶媒に溶解して分析用試料を調製した。
13C−NMR
装置:ブルカー製AVANCE400
核種:13
測定法:インバースゲートデカップリング
積算回数:6000回
測定チューブ:10mmφ
【0072】
実施例1
G/Mp共重合体の製造
単量体G255g及び単量体Mp252gをメチルエチルケトン360gに溶解し、単量体滴下液を調製した。また、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル55g(単量体総量に対して8.0モル%)をメチルエチルケトン167gに溶解し、開始剤滴下液を調製した。攪拌機と冷却器を備え付けたガラス製の2L4つ口フラスコ反応容器にメチルエチルケトン338gを仕込み、窒素雰囲気とした後、反応容器内のメチルエチルケトンを79℃に加熱した。25〜30℃に保った単量体滴下液及び開始剤滴下液をそれぞれ別の貯蔵槽から定量ポンプを用い、供給速度を以下のように変化させながら、79〜81℃に保った反応容器中に210分かけてそれぞれ滴下供給した。
【0073】
初めに開始剤滴下液の全体の1/10量を一度に反応容器に供給し、その時点を反応時間0分とした。その後の開始剤滴下液の供給プログラムは、0−20分の間に全体の1/10量、20−90分の間に全体の2/10量、90−210分の間に全体の6/10量を滴下した。供給スピードに換算すると、それぞれ、1.11g/分、0.63g/分、1.11g/分であった。一方、単量体滴下液の供給プログラムは、0−20分の間に全体の1/9量、20−90分の間に全体の2/9量、90−210分の間に全体の6/9量を滴下した。供給スピードに換算すると、それぞれ、4.82g/分、2.75g/分、4.82g/分であった。
【0074】
滴下終了後、温度を保ったまま、更に1時間攪拌を続け重合反応を継続し、その後室温まで冷却した。冷却させた重合液はn−ヘキサン中に加え、樹脂を析出させた。析出した樹脂はろ過した後、n−ヘキサンとメチルエチルケトンの混合溶媒で洗浄し、減圧下、40℃で乾燥させた。
【0075】
反応時間0分から滴下液滴下終了時までに重合液の一部をサンプリングして、重合液中の重合開始剤濃度及び未反応単量体濃度を高速液体クロマトグラフィーにて分析した。それぞれの分析結果を図1及び図2に示した。なお、上記の「重合開始剤の供給速度の決定方法」で説明した計算方法により算出した重合開始剤濃度の計算値を図1に併記した。また、重合反応終了時の重合液及び、精製乾燥後の樹脂の一部をサンプリングして、共重合体の分子量、分子量分布及びオリゴマー含有量をGPC分析で、共重合組成比をNMR分析にて求めた。結果を表1に示した。
【0076】
比較例1
G/Mp共重合体の製造
単量体G及び単量体Mpを使用して、実施例1と同様に単量体滴下液を調製した。また、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル69g(単量体総量に対して10.0モル%)をメチルエチルケトン151gに溶解し、開始剤滴下液を調製した。攪拌機と冷却器を備え付けたガラス製の2L4つ口フラスコ反応容器にメチルエチルケトン360gを仕込み、窒素雰囲気とした後、反応容器内のメチルエチルケトンを79℃に加熱した。25〜30℃に保った単量体滴下液及び開始剤滴下液をそれぞれ別の貯蔵槽から定量ポンプを用い、一定速度で、79〜81℃に保った反応容器中に180分かけてそれぞれ滴下供給した。
【0077】
滴下終了後、温度を保ったまま、更に1時間攪拌を続け重合反応を継続し、その後室温まで冷却した。その後の精製、乾燥工程、及び各段階における分析は実施例1と同様に行った。重合反応中の重合開始剤濃度及び未反応単量体濃度の分析結果を図3及び図4に、共重合体の分析結果を表1に示した。なお、上記の「重合開始剤の供給速度の決定方法」で説明した計算方法により算出した重合開始剤濃度の計算値を図3に併記した。
【0078】
実施例2
M/G/O共重合体の製造
単量体M201g、単量体G133g、及び単量体O85gをメチルエチルケトン378gに溶解し、単量体滴下液を調製した。また、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル39g(単量体総量に対して8.5モル%)をメチルエチルケトン121gに溶解し、開始剤滴下液を調製した。攪拌機と冷却器を備え付けたガラス製の2L4つ口フラスコ反応容器にメチルエチルケトン240gを仕込み、窒素雰囲気とした後、反応容器内のメチルエチルケトンを79℃に加熱した。25〜30℃に保った単量体滴下液及び開始剤滴下液をそれぞれ別の貯蔵槽から定量ポンプを用い、供給速度を以下のように変化させながら、79〜81℃に保った反応容器中に210分かけてそれぞれ滴下供給した。
【0079】
初めに開始剤滴下液の全体の1/10量を一度に反応容器に供給し、その時点を反応時間0分とした。その後の開始剤滴下液の供給プログラムは、実施例1と同様に、0−20分の間に全体の1/10量、20−90分の間に全体の2/10量、90−210分の間に全体の6/10量を滴下した。一方、単量体滴下液の供給プログラムも、実施例1と同様に、0−20分の間に全体の1/9量、20−90分の間に全体の2/9量、90−210分の間に全体の6/9量を滴下した。
【0080】
滴下終了後、温度を保ったまま、更に1時間攪拌を続け重合反応を継続し、その後室温まで冷却した。その後の精製、乾燥工程、及び各段階における分析は実施例1と同様に行った。重合反応中の重合開始剤濃度及び未反応単量体濃度の分析結果を図5及び図6に、共重合体の分析結果を表1に示した。なお、上記の「重合開始剤の供給速度の決定方法」で説明した計算方法により算出した重合開始剤濃度の計算値を図5に併記した。
【0081】
比較例2
M/G/O共重合体の製造
単量体G、単量体M、及び単量体Oを使用して、実施例2と同様に単量体滴下液を調製した。また、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル53g(単量体総量に対して11.5モル%)をメチルエチルケトン107gに溶解し、開始剤滴下液を調製した。攪拌機と冷却器を備え付けたガラス製の2L4つ口フラスコ反応容器にメチルエチルケトン240gを仕込み、窒素雰囲気とした後、反応容器内のメチルエチルケトンを79℃に加熱した。25〜30℃に保った単量体滴下液及び開始剤滴下液をそれぞれ別の貯蔵槽から定量ポンプを用い、一定速度で、79〜81℃に保った反応容器中に180分かけてそれぞれ滴下供給した。
【0082】
滴下終了後、温度を保ったまま、更に1時間攪拌を続け重合反応を継続し、その後室温まで冷却した。その後の精製、乾燥工程、及び各段階における分析は実施例1と同様に行った。重合反応中の重合開始剤濃度及び未反応単量体濃度の分析結果を図7及び図8に、共重合体の分析結果を表1に示した。なお、上記の「重合開始剤の供給速度の決定方法」で説明した計算方法により算出した重合開始剤濃度の計算値を図7に併記した。
【0083】
実施例3
Mp/I/G/N/O共重合体の製造
単量体Mp47g、単量体I136g、単量体G116g、単量体N67g、及び単量体O52gをメチルエチルケトン415gに溶解し、単量体滴下液を調製した。また、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル41g(単量体総量に対して9.0モル%)をメチルエチルケトン119gに溶解し、開始剤滴下液を調製した。攪拌機と冷却器を備え付けたガラス製の2L4つ口フラスコ反応容器にメチルエチルケトン253gを仕込み、窒素雰囲気とした後、反応容器内のメチルエチルケトンを79℃に加熱した。開始剤滴下液及び単量体滴下液はそれぞれ別の貯蔵層で25〜30℃に保ち、定量ポンプで反応容器に液を供給する。初めに、開始剤滴下液全体の8%量を一度に反応容器に供給し、その時点を反応時間0分とした。その後、単量体滴下液と残りの開始剤滴下液を、79〜81℃に保った反応容器中に、一定速度で240分かけてそれぞれ滴下供給した。
【0084】
滴下終了後、温度を保ったまま、更に1時間攪拌を続け重合反応を継続し、その後室温まで冷却した。その後の精製、乾燥工程、及び各段階における分析は実施例1と同様に行った。重合反応中の重合開始剤濃度及び未反応単量体濃度の分析結果を図9及び図10に、共重合体の分析結果を表1に示した。なお、上記の「重合開始剤の供給速度の決定方法」で説明した計算方法により算出した重合開始剤濃度の計算値を図9に併記した。
【0085】
比較例3
Mp/I/G/N/O共重合体の製造
単量体Mp、単量体I、単量体G、単量体N、及び単量体Oを使用して、実施例3と同様に単量体滴下液を調製した。また、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル55g(単量体総量に対して12モル%)をメチルエチルケトン105gに溶解し、開始剤滴下液を調製した。攪拌機と冷却器を備え付けたガラス製の2L4つ口フラスコ反応容器にメチルエチルケトン253gを仕込み、窒素雰囲気とした後、反応容器内のメチルエチルケトンを79℃に加熱した。25〜30℃に保った単量体滴下液及び開始剤滴下液をそれぞれ別の貯蔵槽から定量ポンプを用い、一定速度で、79〜81℃に保った反応容器中に180分かけてそれぞれ滴下供給した。
【0086】
滴下終了後、温度を保ったまま、更に1時間攪拌を続け重合反応を継続し、その後室温まで冷却した。その後の精製、乾燥工程、及び各段階における分析は実施例1と同様に行った。重合反応中の重合開始剤濃度及び未反応単量体濃度の分析結果を図11及び図12に、共重合体の分析結果を表1に示した。なお、上記の「重合開始剤の供給速度の決定方法」で説明した計算方法により算出した重合開始剤濃度の計算値を図11に併記した。
【0087】
【表1】

【0088】
実施例1、実施例2、実施例3をそれぞれ比較例1、比較例2、比較例3と比較すると、いずれの場合も重量平均分子量、分子量分布、共重合組成等の諸物性を変化させることなく、分子量1000以下のオリゴマーの生成量を20〜50%低減させる効果が認められた。
【0089】
重合反応系内の重合開始剤濃度及び未反応単量体の濃度の変動を抑制することにより、重合開始剤を効果的に働かせ、その分重合開始剤の使用量を抑えることで、オリゴマーの副生を抑制し、効率的に重量平均分子量3000〜6000のレジスト用共重合体を製造することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3000以上6000以下の重量平均分子量を有するレジスト用共重合体の製造方法であって、
該製造方法が、単量体を含む溶液と、重合開始剤を含む溶液とを、加熱した溶媒中に連続的に供給してラジカル重合を行う工程を含み、
単量体供給量が全単量体供給量の10モル%に達した時点から単量体溶液供給終了の時点までの間において、重合液中の重合開始剤濃度の変化幅が、その間の最大濃度と最小濃度の中間値の±25%以内であり、且つ、重合液中の未反応単量体濃度の変化幅が、その間の最大濃度と最小濃度の中間値の±35%以内であることを特徴とする、レジスト用共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記重合液中の重合開始剤濃度の変化幅が、その間の最大濃度と最小濃度の中間値の±20%以内である、請求項1に記載のレジスト用共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記重合開始剤の一部を、単量体溶液の供給に先行して重合槽内に供給する、請求項1又は2に記載のレジスト用共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記単量体の全供給モル数に対する前記重合開始剤の全供給モル数の割合が10モル%以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のレジスト用共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記重合開始剤がアゾ系化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載のレジスト用共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記レジスト用共重合体は、重合反応終了時において、分子量1000以下のオリゴマーの含有量が全体の10%以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のレジスト用共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記レジスト用共重合体が、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる重合体であり、少なくとも1種類以上の酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)と、ラクトン構造を有する繰り返し単位(B)及び/又はヒドロキシ基若しくはカルボキシ基を有する繰り返し単位(C)とを含む重合体である、請求項1から6のいずれか一項に記載のレジスト用共重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−103997(P2013−103997A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249049(P2011−249049)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】