説明

低分子量第4級アンモニウム塩分散剤

【課題】顔料粒子がインク中で、安定で、よく分散されている顔料着色剤を有する相変化インクなど、改善された着色相変化インク組成物を提供する。
【解決手段】下記構造を有する化合物を開示する。


(式中、Rは少なくとも23の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基であり、Rは少なくとも2の炭素原子を有するアルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基またはアリールアルキレン基であり、Xは第4級アンモニウム塩である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、多くのコピー機および印刷装置において使用される可能性のある固体相変化インクまたはホットメルトインクなどのインクを記載する。
【背景技術】
【0002】
様々な分散剤を含む着色(pigmented)相変化インク組成物もまた公知である。例えば、ソルスパース(SOLSPERSE、商標)分散剤を含む着色相変化インク組成物が、国際公開公報第99/42523号および米国特許出願公開第2003/0127021号において記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報第99/42523号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0127021号
【特許文献3】米国特許第6,860,930号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知の組成物およびプロセスはそれらの所期の目的に対しては適しているが、改善された着色相変化インク組成物が依然として必要とされている。例えば、顔料粒子がインク中で、安定で、よく分散されている顔料着色剤を有する相変化インク、改善された画像品質、改善された耐光性、および低減した透き通しを有する相変化インク、インクが長期間高温に暴露された場合のインク中での着色剤の凝塊化(agglomeration)および沈降が減少した着色相変化インク、ならびにプリントヘッドにおけるジェット詰まりが減少した着色相変化インクが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、低分子量第4級アンモニウム塩分散剤を含む改善された着色相変化インク、そのような分散剤として作用することができる新規化合物、およびこれらの化合物を製造する方法を提供することにより、これらのおよび他の要求に対処する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】インク比較例1と比較した、分散剤実施例3を含む相変化インク実施例1および2の時間に伴う顔料Z−平均粒径を示すグラフである。
【図2】インク比較例2と比較した、分散剤実施例3を含む相変化インク実施例1の時間に伴う顔料Z−平均粒径を示すグラフである。
【図3】インク比較例1と比較した、分散剤実施例3および1をそれぞれ含む相変化インク実施例1および3の顔料Z−平均粒径を示すグラフである。
【図4A】比較例である分散剤を含む相変化インクから作製したプリントの光学密度を示すグラフである。
【図4B】本開示による分散剤を含む相変化インクから作製したプリントの光学密度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
分散剤化合物:
下記式を有する化合物を、相変化インク中で分散剤として使用してもよい。一般に、化合物は下記式により表すことができる。
【0008】
【化1】

【0009】
式中、
は、下記の通りであり:
(i)アルキル基、これは、直鎖または分枝、環状または非環式、置換または非置換であってもよく、ここで、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなどのヘテロ原子がアルキル基中に存在しても、しなくてもよく、1つの実施形態では、少なくとも約1つの炭素原子、または少なくとも約16の炭素原子、または少なくとも約23の炭素原子、かつ、約200以下の炭素原子、または約150以下の炭素原子、または約100以下の炭素原子を有する、
(ii)アリールアルキル基、これは置換または非置換であってもよく、ここで、アリールアルキル基のアルキル部分は直鎖または分枝、環状または非環式、置換または非置換とすることができ、ここで、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなどのヘテロ原子がアリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれか中に存在しても、しなくてもよく、1つの実施形態では、少なくとも約6の炭素原子、または少なくとも約23の炭素原子を有し、かつ、1つの実施形態では、約200以下の炭素原子、または約150以下の炭素原子、または約100以下の炭素原子を有する、または、
(iii)アルキルアリール基、これは置換または非置換であってもよく、ここで、アルキルアリール基のアルキル部分は直鎖または分枝、環状または非環式、置換または非置換とすることができ、ここで、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなどのヘテロ原子がアルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれか中に存在しても、しなくてもよく、1つの実施形態では、少なくとも約6の炭素原子、または少なくとも約23の炭素原子を有し、かつ、約200以下の炭素原子、または約150以下の炭素原子、または約100以下の炭素原子を有する、
は、下記の通りであり:
(i)アルキレン基、これは、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環状または非環式、置換または非置換であってもよく、ここで、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなどのヘテロ原子がアルキレン基中に存在しても、しなくてもよく、1つの実施形態では、少なくとも約1つの炭素原子、または少なくとも約2の炭素原子、かつ、約20以下の炭素原子、または約10以下の炭素原子、または約8以下の炭素原子を有する、
(ii)アリーレン基、これは、置換または非置換であってもよく、ここで、ヘテロ原子がアリーレン基中に存在しても、しなくてもよく、1つの実施形態では、少なくとも約6の炭素原子、または少なくとも約7の炭素原子、かつ、約20以下の炭素原子、または約15以下の炭素原子、または約10以下の炭素原子を有する、
(iii)アリールアルキレン基、これは、置換または非置換であってもよく、ここで、アリールアルキレン基のアルキル部分は直鎖または分枝、飽和または不飽和、環状または非環式、置換または非置換とすることができ、ここで、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなどのヘテロ原子がアリールアルキレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれか中に存在しても、しなくてもよく、1つの実施形態では、少なくとも約7の炭素原子、または少なくとも約8の炭素原子を有し、かつ、約20以下の炭素原子、または約15以下の炭素原子、または約10以下の炭素原子を有する、または、
(iv)アルキルアリーレン基、これは、置換または非置換であってもよく、ここで、アルキルアリーレン基のアルキル部分は直鎖または分枝、飽和または不飽和、環状または非環式、置換または非置換とすることができ、ここで、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなどのヘテロ原子がアルキルアリーレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれか中に存在しても、しなくてもよく、1つの実施形態では、少なくとも約7の炭素原子、または少なくとも約8の炭素原子を有し、かつ、約20以下の炭素原子、または約15以下の炭素原子、または約10以下の炭素原子を有する、
Xは第4級アンモニウム塩である。
【0010】
特定の実施形態では、Rは式CH(CH−のアルキル直鎖とすることができる。1つの実施形態では、nは28炭素の平均値を有し、かつ、約20から約40の範囲を有し、または、nは36の平均値を有し、かつ、約34から約40の範囲を有し、または、nは46の平均値を有し、かつ、約40から約52の範囲を有する。
【0011】
アミド基と第4級アンモニウム塩基(salt group)との間のR基は一般に、任意のアルキレン、アリーレンなどとすることができる。一般に、アルキレンまたはアリーレン基は第2級炭素原子、すなわち2つの置換基を有するものを示す。実施形態では、Rは2から4の間の炭素原子を有する直鎖アルキレン基とすることができる。例えば、Rは2、3または4の炭素原子を有する直鎖アルキレン基としてもよい。一般に、R基の長さは、下記で記載するように、カルボン酸と反応させられる前駆体化合物の性質によって決定される。1つの実施形態では、Rは式−CHCHCH−を有する。
【0012】
第4級アンモニウム塩基「X」は一般に、塩イオンにイオン結合した任意の第4級アンモニウム官能基とすることができる。「X」基は一般に分散剤化合物の「アンカー」と呼ばれる。実施形態では、第4級アンモニウム塩は下記塩基のいずれかとすることができる。
【0013】
【化2】

【0014】
分散剤化合物を製造するための方法:
上記分散剤化合物は、2つの一般的な反応プロセスにより合成することができる。第1の反応プロセスは「ツーポット(two−pot)」反応プロセスであり、このプロセスでは、中間体が形成され、続いて単離され、その後、さらなる反応工程が実施される。第2の反応プロセスは「ワンポット」反応プロセスであり、このプロセスでは、反応工程の全てが中間体の単離なしで起こる。
【0015】
第1の反応プロセスは、本明細書では「ツーポットプロセス」と呼ばれるが、一般に下記6つの工程を含む:(1)約1モル当量の式CH(CHCOOHのカルボン酸を、不活性雰囲気下で溶融させる工程;(2)溶融カルボン酸を約1モル当量の下記式のジアミンと、不活性雰囲気下、高温、例えば約170から約200℃で反応させ、
【化3】

(式中、Rは下記で説明する)
下記式の前駆体アミド化合物を形成させる工程;
【化4】

(3)前駆体アミド化合物を冷却させる工程;(4)前駆体アミド化合物を有機溶媒中に、不活性雰囲気下で溶解させる工程;(5)約0.85モル当量の硫酸ジメチルまたはメチルp−トルエンスルホネートのいずれかを約1モル当量の溶解前駆体アミドと約90℃から約120℃などの高温で、非極性溶媒中、不活性雰囲気下で反応させ、所望の化合物を形成させる工程;および(6)分散剤化合物を分離し、単離する工程。「ツーポットプロセス」は下記のように進行する。
【0016】
【化5】

(式中、MeYは塩析剤(salting agent)である。)
【0017】
実施形態では、ツーポットプロセスは追加のプロセス工程を含んでもよい。例えば、工程(2)は例えば蒸発による、水の除去を含むことができる。さらに、ツーポットプロセスの工程(6)は、蒸留、溶媒の真空除去および、例えば、残留硫酸ジメチルまたはメチルp−トルエンスルホネートのいずれかの真空除去を含んでもよい。
【0018】
実施形態では、ツーポットプロセスは、当業者の知識にしたがい、任意の追加の化学合成工程を含んでもよく、または、ツーポットプロセスは本質的には上記で列挙した6つの工程から構成され、または上記で列挙した6つの工程のみで構成される。
【0019】
カルボン酸は一般に、得られた化合物が少なくとも23の炭素原子を含む直鎖アルキル基Rを有するような、任意のカルボン酸とすることができる。得られた分散剤化合物中のR基はカルボン酸アルキル鎖から形成され、そのため、Rの所望の長さに基づき特別なカルボン酸が選択される。例えば、カルボン酸は炭素原子数が上記の通りであるアルキル鎖を有するカルボン酸としてもよい。
【0020】
不活性雰囲気は、化学プロセスにおいて化合物と反応する化合物を含まない任意の雰囲気とすることができる。例えば、不活性雰囲気は、アルゴンなどの希ガスのみから構成された雰囲気としてもよい。
【0021】
ジアミンは、これらの官能基を有する任意のジアミンとすることができる。すなわち、ジアミンは少なくとも1つの第1級アミン−NH基、および少なくとも1つの第3級アミン−N(R基を有さなければならない。一般に、ジアミンは一般式NH−R−N(Rを有する任意の化合物とすることができ、ここで、Rは上記のように規定され、Rは任意の適したアミン置換基であり、例えば、(i)アルキル基(これは直鎖または分枝、環状または非環式、置換または非置換であってもよく、ヘテロ原子がアルキル基中に存在してもよく、またはしなくてもよい);(ii)アルキルアリール基(これは置換または非置換であってもよく、アルキルアリール基のアルキル部分は直鎖または分枝、環状または非環式、置換または非置換とすることができ、ヘテロ原子がアルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれか中に存在してもよく、またはしなくてもよい)である。実施形態では、ジアミンは3−(ジメチルアミノ)−1−プロピルアミン、またはアミノプロピルモルホリンとすることができる。
【0022】
工程(4)で使用した非極性溶媒は一般に、任意の非極性有機溶媒とすることができる。例えば、有機溶媒はトルエン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、または他の適した有機溶媒とすることができる。
【0023】
工程(1)〜(4)により形成させて得られた前駆体アミドを硫酸ジメチルまたはメチルp−トルエンスルホネートのいずれかと反応させ、第3級アミド基から第4級アンモニウム塩基を形成させる。例えば、硫酸ジメチルまたはメチルp−トルエンスルホネートは、適度な加熱下で第4級アンモニウム塩基を形成するので適切に選択することができる。
【0024】
前駆体アミドおよび塩析剤(MeY)は、任意の所望のまたは有効な相対量で存在し、1つの実施形態では、1モルのアミド前駆体あたり少なくとも約0.50モルの塩析剤、または少なくとも約0.65モルの塩析剤、または少なくとも約0.85モルの塩析剤、かつ1モルのアミド前駆体あたり約1モル以下の塩析剤、または約0.98モル以下の塩析剤、または約0.95モル以下の塩析剤である。
【0025】
工程(3)および(6)における冷却および単離工程は公知である。
【0026】
工程(2)におけるアミド前駆体および塩析剤(MeY)は、任意の所望のまたは有効な相対量で存在し、1つの実施形態では、1モルのアミド前駆体あたり少なくとも約0.50モルの塩析剤、または少なくとも約0.65モルのジアミン、または少なくとも約0.85モルの塩析剤、かつ、1つの実施形態では、0.99モルのアミド前駆体あたり約1モル以下の塩析剤、または1モルのアミド前駆体あたり約0.95モル以下の塩析剤、または1モルのアミド前駆体あたり約1モル以下の塩析剤である。
【0027】
アミド前駆体はまた、単離された第4級アンモニウム塩中に存在することができ、1つの実施形態では、アミド前駆体は最終生成物中に約1モル%、または約5モル%、または約15モル%のレベルで、1つの実施形態では、約50モル%以下、または約35モル%以下、または約25モル%以下で存在することができる。
【0028】
工程(1)におけるカルボン酸とジアミンとの間の反応は、任意の所望のまたは有効な期間の間実行させることができ、1つの実施形態では、少なくとも約1時間、または少なくとも約2時間、または少なくとも約3時間、および別の実施形態では、約10時間以下とすることができる。
【0029】
工程(2)における塩析剤(MeY)とアミド前駆体との間の反応は任意の所望のまたは有効な期間の間実行させることができ、1つの実施形態では、少なくとも約0.2時間、別の実施形態では、少なくとも約0.5時間、さらに別の実施形態では、約1時間、別の実施形態では、約5時間以下とすることができるが、期間はこれらの範囲外とすることができる。
【0030】
本明細書で「ワンポットプロセス」と呼ばれる第2の反応プロセスは一般に、下記5つの工程を含む:(1)約1モル当量の式CH(CHCOOHのカルボン酸を、不活性雰囲気下で溶融させる工程;(2)溶融カルボン酸を約1モル当量の下記式のジアミンと、不活性雰囲気下、高温、例えば約170から約200℃で反応させ、
【化6】

下記式の前駆体アミド化合物を形成させる工程;
【化7】

(3)温度を、例えば約130から約160℃までの温度に低下させる工程;(4)約0.85モル当量の硫酸ジメチルまたはメチルp−トルエンスルホネートのいずれかを前駆体アミド化合物と高温、例えば約130℃から約160℃までで、不活性雰囲気下で反応させる工程;および(5)分散剤化合物を単離する工程。必要に応じて、生成物の単離前に温度を、例えば約150℃から約180℃の温度まで上昇させると、全ての残留塩析剤、例えば硫酸ジメチルまたはメチルp−トルエンスルホネートが蒸留除去されると考えられる。「ワンポットプロセス」は下記のように進行する。
【0031】
【化8】

【0032】
アミド前駆体および塩析剤(MeY)は、任意の所望のまたは有効な相対量で存在し、1つの実施形態では、1モルのアミド前駆体あたり少なくとも約0.50モルの塩析剤、または少なくとも約0.65モルの塩析剤、または少なくとも約0.85モルの塩析剤、かつ、1つの実施形態では、1モルのアミド前駆体あたり約1モル以下の塩析剤、または約0.98モル以下の塩析剤、または約0.95モル以下の塩析剤である。
【0033】
アミド前駆体はまた、単離された第4級アンモニウム塩中に存在することができ、1つの実施形態では、アミド前駆体は最終生成物中に約1モル%、または約5モル%、または約15モル%のレベルで、1つの実施形態では、約50モル%以下、または約35モル%以下、または約25モル%以下で存在することができる。
【0034】
工程(1)におけるカルボン酸とジアミンとの間の反応は、任意の所望のまたは有効な期間の間実行させることができ、1つの実施形態では、少なくとも約1時間、または少なくとも約2時間、または少なくとも約3時間、および別の実施形態では、約10時間以下とすることができる。
【0035】
工程(2)における塩析剤(MeY)とアミド前駆体との間の反応は任意の所望のまたは有効な期間の間実行させることができ、1つの実施形態では、少なくとも約0.2時間、または少なくとも約0.5時間、または1時間、別の実施形態では、5時間以下とすることができる。
【0036】
実施形態では、ワンポットプロセスは、追加のプロセス工程を含んでもよい。例えば、工程(2)は水の除去を含むことができる。別の実施形態では、ワンポットプロセスは、残留硫酸ジメチルまたはメチルp−トルエンスルホネートの蒸留工程を含んでもよい。
【0037】
実施形態では、ワンポットプロセスは、任意の追加の化学合成工程を含んでもよい。ワンポットプロセスは、プロセスが本質的には上記で列挙した5つの工程から構成される場合に特に有用であり、上記ツーポットプロセスにおける工程(3)などの中間体分離工程を含まない。
【0038】
上記分散剤化合物は相変化インク中の分散剤として使用することができる。「分散剤として使用される」という句は、分散剤化合物がインクビヒクル中で、顔料粒子が綿状凝集し、より大きな凝塊物にならないように阻止し、このように沈降を遅らせることにより、顔料粒子を安定化させることを意味する。一般に、分散剤化合物は、顔料粒子に固着し、立体的安定化を提供することによりこの機能を達成する。分散剤化合物は、例えば、顔料粒子に吸収され、付着されまたはグラフトされることにより顔料に固着する。実施形態では、分散剤化合物は、インク中に、約0.1から約25重量%のインクの量で、または約1から約10重量%、または約1から約5重量%の量で存在してもよい。
【0039】
本明細書における相変化インクの例は、約23℃から約27℃の温度、例えば室温で固体である、または約60℃未満の温度で固体であるインクビヒクルを含むインクである。しかしながら、インクは加熱されると相変化し、噴射温度では溶融状態となる。このように、インクはインクジェット印刷のために適した高温、例えば約60℃から約150℃の温度で、約1から約20センチポアズ(cP)、または約5から約15cPまたは約8から約12cPの粘度を有する。
【0040】
この関連で、本明細書のインクは低エネルギーインクまたは高エネルギーインクのいずれかとしてもよい。低エネルギーインクは約40℃未満の温度で固体であり、約60から約125℃、例えば、約80から約125℃、例えば約100から約120℃の噴射温度では、約1から約20cP、例えば約5から約15cP、例えば約8から約12cPの粘度を有する。高エネルギーインクは40℃未満の温度で固体であり、約100から約180℃、例えば、約120から約160℃または約125から約150℃の噴射温度では、約5から約15cPの粘度を有する。
【0041】
インクは、例えば、インクビヒクルと、顔料粒子と、上記分散剤と、他の必要に応じて用いられる添加物とを含んでもよい。インクは、上記分散剤を使用するように変更された、当技術分野において公知の従来の方法により製造することができる。
【実施例】
【0042】
分散剤の合成:
下記分散剤化合物は、下記の通りに合成した。
【化9】

【0043】
【表1】

【0044】
分散剤実施例1:
加熱マントル、機械的撹拌、ディーンスタークトラップ、還流冷却器および温度センサが取り付けられた2リットルの樹脂製ケトルに、ユニシド(Unicid)425(商標)(式CH(CHCOOHのベーカーペトロライト(Baker Petrolite)からの一酸、式中、nは28炭素の平均値を有し、約20から約40までの範囲を有すると考えられる)246.05gおよびN,N−ジメチル−1−プロピルアミン(35.76g)(アルドリッチ(Aldrich))を導入した。アルゴン流下、ケトル内の温度を90℃まで上昇させ、樹脂を溶融させた。樹脂が完全に溶融した時に、温度を徐々に、撹拌しながら180℃まで上昇させ、反応を5時間進行させた。水(4ml)をディーンスタークトラップ中に収集した。反応を中止させ、120℃まで冷却し、アルミニウム製トレー中に排出させると、243gの前駆体アミドが得られた。アミド前駆体(150g)を、加熱マントル、機械的撹拌、ディーンスタークトラップ、還流冷却器および温度センサが取り付けられた2Lの樹脂製ケトルに添加した。トルエン(300ml)を反応フラスコに添加した。アルゴン流下、温度を徐々に100℃まで上昇させ、その間、前駆体アミドを溶解させた。硫酸ジメチル(16.8g)をシリンジにより徐々に添加した。反応を100℃で3時間維持した。温度を130℃まで上昇させると、トルエンが蒸留除去され始めた。温度を、180℃に達するまで徐々に上昇させた。真空を適用し、過剰のトルエンおよび硫酸ジメチルを30分間除去させた。真空をアルゴンと置換し、反応を中止させ、Alトレー中に排出させると、塩が淡褐色固体として得られた(146g;酸価14.86、アミン価4.10)。
【0045】
分散剤実施例2:
ユニシド550(商標)(式CH(CHCOOHのベーカーペトロライトからの一酸、式中、nは36炭素の平均値を有し、約34から約40までの範囲を有すると考えられる)をユニシド425(商標)の代わりに下記スケールで使用したことを除き、上記分散剤実施例1に対して概説した同じ手順を用いて分散剤実施例2を調製した:ユニシド550(250g)、N,N−ジメチル−1−プロピルアミン(32.83g)、アミド前駆体(200g)、硫酸ジメチル(23.4g)、トルエン(240ml)。生成物が淡褐色固体として得られた(208g;酸価8.49、アミン価1.14)。
【0046】
分散剤実施例3:
ユニシド700(商標)(式CH(CHCOOHのベーカーペトロライトからの一酸、式中、nは46炭素の平均値を有し、約40から約52までの範囲を有すると考えられる)をユニシド425(商標)の代わりに下記スケールで使用したことを除き、上記分散剤実施例1に対して概説した同じ手順を用いて分散剤実施例3を調製した:ユニシド700(481.15g)、N,N−ジメチル−1−プロピルアミン(48.02g)、アミド前駆体(452g)、硫酸ジメチル(34.2g)、トルエン(500ml)。生成物が淡褐色固体として得られた(486g;酸価9.96、アミン価6.54)。H NMR分析(C、500MHz、70℃)により、アミド前駆体が11モル%で存在することが示された。
【0047】
分散剤実施例4:
分散剤実施例4は、ワンポットプロセスを用いて製造した。加熱マントル、機械的撹拌、ディーンスタークトラップ、還流冷却器および温度センサが取り付けられた1リットルの樹脂製ケトルに、ユニシド700(商標)樹脂259gおよびN,N−ジメチル−1−プロピルアミン(ハンツマン(Huntsman))26.5gを導入した。アルゴン流下、ケトル内の温度を90℃まで上昇させ、樹脂を溶融させた。樹脂が完全に溶融した時に、温度を徐々に、撹拌しながら180℃まで上昇させ、反応を3時間進行させた。水(7.8ml)をディーンスタークトラップ中に収集した。180℃で3時間反応させた後、ケトル内の温度を150℃まで低下させた。温度が150℃に到達した時に、硫酸ジメチル21.2gを混合物に、15分の期間にわたって、約1ml/分の速度で滴下した。添加の終わりに、反応物を1時間150℃で撹拌させた。温度を180℃まで上昇させ、ケトルを温めて空にした。塩が淡褐色固体として得られた(275gの生成物、酸価9.39、アミン価8.59)。
【0048】
分散剤実施例5:
メチルp−トルエンスルホネートを硫酸ジメチルの代わりに下記スケールで使用したことを除き、上記分散剤実施例3に対して概説した同じ手順を用いて分散剤実施例5を調製した:アミド前駆体(200g)、メチルp−トルエンスルホネート(29.0g)、トルエン(240ml)。生成物が淡褐色固体として得られた(231g;酸価5.87、アミン価4.24)。
【0049】
分散剤実施例6:
アミノプロピルモルホリンをN,N−ジメチル−1−プロピルアミンの代わりに下記スケールで使用したことを除き、上記分散剤実施例3に対して概説した同じ手順を用いて分散剤実施例6を調製した:ユニシド700(商標)(200g)、アミノプロピルモルホリン(28.17g)、アミド前駆体(150g)、硫酸ジメチル(12.53g)、トルエン(180ml)。生成物が淡褐色固体として得られた(157g;酸価13.9、アミン価:<1)。
【0050】
分散剤実施例1〜6は下記の特性を有することが見出された。
【0051】
【表2】

【0052】
インクの調製:
比較例1:
下記成分を使用して噴射可能な固体インクを製造した。その量は特に記載がなければ質量部で示した。インク濃縮ベースは、120℃でオーバーヘッドスターラーを用いて、下記成分を混合し、溶融し、均一に共にブレンドすることにより調製した:37.53部の蒸留ポリエチレンワックス(ベーカーペトロライト)、20.00部のトリアミドワックス(米国特許第6,860,930号において記載されているトリアミド)、20.00部のS−180(ステアリルステアラミド)(クロンプトンコーポレーション(Crompton Corporation))、20.00部のKE−100樹脂(アラカワコーポレーション(Arakawa Corporation))、アラカワケミカルインダストリーズ社(Arakawa Chemical Industries,Ltd.)からの水素化アビエチン(ロジン)酸のトリグリセリド、2.26部のフォーラル(Foral、登録商標)85、水素化樹脂のエステル(ハーキュレス社(Hercules Incorporated))、0.21部のナウガード(Naugard)445(クロンプトンコーポレーション)、および3.23部のソルスパース(Solsperse)17000(ルーブリゾールコーポレーション(Lubrizol Corporation))。110℃まで予熱したセグバリ(Szegvari)01アトリターに、120℃まで予熱した1800gの1/8”440Cグレード25のステンレス鋼球(フーバープレシジョンプロダクツ社(Hoover Precision Products,Incorporated))を添加した。アトリターは30分間平衡化させ、その時に4.84部のパーマネントルービン(Permanent Rubine)L5B01顔料(クラリアント(Clariant)GmbH)を徐々にインクベースに添加した。その後、多段羽根車をアトリターに取り付け、速度を調節して羽根車先端速度が約7cm/sとなるようにした。着色混合物を一晩中19時間磨滅させ、その時点で、得られたインク顔料濃縮物は、溶融状態で排出され、鋼球から分離された時に、優れた自由流動挙動を示した。
【0053】
その後、上記インク顔料濃縮物から比較例1のインクを製造した。具体的には、下記成分混合物の溶融均一溶液70.1gを調製した:72.98部の蒸留ポリエチレンワックス(ベーカーペトロライト)、3.70部のトリアミドワックス(米国特許第6,860,930号において記載されているトリアミド)、17.11部のS−180(ステアリルステアラミド)(クロンプトンコーポレーション)、5.20部のKE−100樹脂(アラカワコーポレーション)、水素化アビエチン(ロジン)酸のトリグリセリド類(アラカワケミカルインダストリーズ社)、0.23部のナウガード445(クロンプトンコーポレーション)、および0.78部のソルスパース17000(ルーブリゾールコーポレーション)。この溶液を、120℃のオーブン中で比較例1からのインク顔料濃縮物74.9gに、400RPMで撹拌しながら徐々に添加した。得られた着色インクを120℃で6μmガラスファイバフィルタ(ポールコーポレーション(Pall Corporation))を通過させて粗く濾過させた。その後すぐに、インクを1μmガラスファイバフィルタ(ポールコーポレーション)を通して濾過した。115℃でのせん断速度粘度を、RFS3レオメータ(レオメトリックスサイエンティフィック(Rheometrics Scientific))で円錐平板法を用いてインクの1μm浸透に対し測定した。インクはニュートニアンであることがわかり、1および100s−1でそれぞれ、10.0および9.9cPのせん断速度粘度を有した。
【0054】
比較例2:
インク顔料濃縮物を、ソルスパース17000の代わりに、3.23部の、分散剤実施例3からのアミド前駆体を使用したことを除き、比較例1と同じように製造した。
【0055】
このインク顔料濃縮物からインクを調製した。このインク濃縮物の製造は、ソルスパース17000の代わりに、0.78部の分散剤実施例3のアミド前駆体を使用したことを除き、比較例1と同様に進めた。得られた着色インクは120℃で6μmガラスファイバフィルタ(ポールコーポレーション)を通過させて粗く濾過させた。その後すぐに、インクを1μmガラスファイバフィルタ(ポールコーポレーション)を通して濾過した。115℃でのせん断速度粘度を、RFS3レオメータ(レオメトリックスサイエンティフィック)で円錐平板法を用いてインクの1μm浸透に対し測定した。インクはニュートニアンであることがわかり、1および100s−1でそれぞれ、14.7および11.2cPのせん断速度粘度を有した。
【0056】
実施例1:
インク顔料濃縮物を、ソルスパース17000の代わりに、3.23部の分散剤実施例3を使用したことを除き、比較例1と同様に製造した。
【0057】
このインク顔料濃縮物からインクを調製した。このインク濃縮物の製造は、ソルスパース17000の代わりに、0.78部の分散剤実施例3を使用したことを除き、比較例1と同様に進めた。得られた着色インクは120℃で6μmガラスファイバフィルタ(ポールコーポレーション)を通過させて粗く濾過させた。その後すぐに、インクを1μmガラスファイバフィルタ(ポールコーポレーション)を通して濾過した。115℃でのせん断速度粘度を、RFS3レオメータ(レオメトリックスサイエンティフィック)で円錐平板法を用いてインクの1μm浸透に対し測定した。インクはニュートニアンであることがわかり、1および100s−1でそれぞれ、10.3および10.5cPのせん断速度粘度を有した。
【0058】
実施例2:
実施例2は実施例1で記載したものとは異なるインク製造プロセスで進行した。最初に、顔料押出成形物を下記手順にしたがい調製した。
【0059】
トリアミド樹脂、Tri−A−37を米国特許第6,860,930号において記載されているように調製した。本来、チップまたはチャンクの形態であり、これをグラインダーにより処理し、粉末形態とした。その後、700.55部の微粉トリアミド樹脂および155.13部のパーマネントルービンL5B01顔料(クラリアントGmbH)および126.95部の分散剤実施例3(グラインダーにより粉末形態に処理)をリトルフォード(LITTLEFORD)M5ブレンダー内で30分間0.8Aで混合した。その後、粉末混合物を0.8lbs/hrの速度で、70℃で加熱されたDAVOカウンター回転(counter−rotating)二軸押出機(モデルVS104(ドイツアパレート−ベルトリボーガニゼイション(Deutsche Apparate−Vertrieborganisation) GmbH&Co、ドイツのトロイスドルフ))に添加した。押出機内の溶融内容物をその後、50RPMで混合し、ストランドダイを通して75℃で排出させた。最後に、押出分散物、押出成形物Xを他のインク成分と溶融混合しインクを形成させた。
【0060】
次に、顔料押出成形物から、下記のようにインクを調製した。下記成分を2Lビーカー(A)中、125℃で溶融させ、混ぜ合わせた:上記押出成形物X(158.4部)、フォーラル(登録商標)85、水素化樹脂のエステル(ハーキュレス社)(2.8部)、ケマミドS180(クロンプトンコーポレーション)(186.89部)、KE100樹脂(アラカワケミカルインダストリーズ社)(120.10部)、およびナウガードN445(クロンプトンコーポレーション)(2.10部)。ビーカー(A)には加熱マントルおよびメカニカルスターラーを取り付けた。顔料分散物を90分間、120℃で加熱、撹拌した。顔料分散物をビーカー(A)内で調製している間、ポリエチレンワックスX1197(ベーカーペトロライト)(529.75部)を、加熱マントルおよびメカニカルスターラーが取り付けられたビーカー(B)内で溶融させた。ビーカー(B)内の樹脂分散物を120℃で1時間加熱、撹拌し、確実に樹脂を完全に溶融混合させた。
【0061】
イカウルトラツラックス(IKA Ultra Turrax)T50ホモジナイザをその後使用して、成分をビーカー(A)内で18分間、温度を120℃に維持しながら均一化した。120℃で維持したビーカー(B)内の溶融樹脂をその後、ビーカー(A)内の均一化した顔料分散物中に添加した。ビーカー(A)内の得られた混合インク分散物をその後、さらに36分間均一化させた。得られたインクを、1μmパーカーフィルタを通して濾過した後、インクを室温まで冷却し、その後、AR2000レオメーターを用いてそのレオロジーを測定した。115℃でのせん断速度粘度を、RFS3レオメータ(レオメトリックスサイエンティフィック)で円錐平板法を用いてインクの1μm浸透に対し測定した。インクはニュートニアンであることがわかり、1および100s−1でそれぞれ、9.05および9.22cPのせん断速度粘度を有した。
【0062】
実施例3:
実施例3は、インク顔料濃縮物の製造中、分散剤実施例3の代わりに分散剤実施例1を3.23g使用し、濃縮物からインクを製造する間、分散剤実施例3の代わりに分散剤実施例1を0.78g使用したことを除き、実施例1で記載したプロセスにしたがい進行した。得られた着色インクを、120℃で6μmガラスファイバフィルタ(ポールコーポレーション)を通して粗く濾過した。その後すぐに、インクを1μmガラスファイバフィルタ(ポールコーポレーション)を通して濾過した。115℃でのせん断速度粘度を、RFS3レオメータ(レオメトリックスサイエンティフィック)で円錐平板法を用いてインクの1μm浸透に対し測定した。インクはニュートニアンであることがわかり、1および100s−1でそれぞれ、10.3および10.5cPのせん断速度粘度を有した。
【0063】
実施例4:
実施例4は、インク顔料濃縮物の製造中、分散剤実施例3の代わりに分散剤実施例2を3.23g使用し、濃縮物からインクを製造する間、分散剤実施例3の代わりに分散剤実施例2を0.78g使用したことを除き、実施例1で記載したプロセスにしたがい進行した。得られた着色インクを、120℃で1μmガラスファイバフィルタ(ポールコーポレーション)を通して濾過した。115℃でのせん断速度粘度を、RFS3レオメータ(レオメトリックスサイエンティフィック)で円錐平板法を用いてインクの1μm浸透に対し測定した。インクはニュートニアンであることがわかり、1および100s−1でそれぞれ、9.7および10.0cPのせん断速度粘度を有した。
【0064】
実施例5:
実施例5は、分散剤実施例3の代わりに分散剤実施例5を使用したことを除き、実施例1で記載したプロセスにしたがい進行した。得られたインクを、1μmパーカーフィルタを通して濾過した後、インクを室温まで冷却した。115℃でのせん断速度粘度を、RFS3レオメータ(レオメトリックスサイエンティフィック)で円錐平板法を用いてインクの1μm浸透に対し測定した。インクはニュートニアンであることがわかり、1および100s−1でそれぞれ、8.1および9.6cPcPのせん断速度粘度を有した。
【0065】
実施例6:
実施例6は、インク顔料濃縮物の製造中、分散剤実施例3の代わりに分散剤実施例6を3.23g使用し、濃縮物からインクを製造する間、分散剤実施例3の代わりに分散剤実施例6を0.78g使用したことを除き、実施例2で記載したプロセスにしたがい進行した。得られた着色インクを、120℃で6μmガラスファイバフィルタ(ポールコーポレーション)を通して粗く濾過した。その後すぐに、インクを1μmガラスファイバフィルタ(ポールコーポレーション)を通して濾過した。115℃でのせん断速度粘度を、RFS3レオメータ(レオメトリックスサイエンティフィック)で円錐平板法を用いてインクの1μm浸透に対し測定した。インクはニュートニアンであることがわかり、1および100s−1でそれぞれ、11.4および9.9cPのせん断速度粘度を有した。
【0066】
上記インクのいくつかについて次に、時間経過に伴う顔料凝塊化の程度を決定するために試験した。4つのインク(比較例1および2、実施例1および2)を120℃のオーブンでエージングさせ、本明細書で粒径と呼ばれるZ−平均粒径を112℃でマルバーンゼータサイザー(Malvern Zetasizer)粒径分析計を用いて測定した。図1に示されるように、本開示にしたがい製造された2つのインク(実施例1および実施例2)は14日にわたって安定な粒径を有した。さらに、実施例2のインクをさらに3ヶ月以上120℃でエージングさせたが、依然として粒径の成長はほとんどなく、あるいはまったくないことが示された。対照的に、市販の分散剤を用いて製造した比較例1は、120℃でエージング中、たった2日後には大きな粒径成長を示した。
【0067】
真上で記載した試験と同様に、実施例1を比較例2と比較した。結果を図2に示す。図2からわかるように、実施例3からのアミド前駆体から製造した比較例2のインクは約8日後に顔料粒子成長(すなわち、凝塊化)を経験した。これにより、凝塊化の阻止にはアンカー基が必須であることが示される。それにもかかわらず、比較例2は依然として比較例1よりも良好に機能し(粒径が、6日後市販の分散剤では1000nmであるのに対し10日後200nm未満)、なお、分散剤の鎖長が粒径安定性に対し重要であることが強調される。
【0068】
重ねて、真上で記載した試験と同様に、実施例3を比較例1および実施例1と比較した。結果を図3に示す。図3からわかるように、短鎖を有する分散剤から製造した実施例3のインクは急速に顔料粒子成長(すなわち、凝塊化)を経験した。これにより、鎖長が凝塊化を阻止するのには重要であることが示される。
【0069】
最後に、プリントヘッドにより適用された時のインクの安定性もまた試験した。比較例1および実施例2のインクの各々を、112℃のプリンタ内で最大10日までエージングさせ、プリントをこの期間毎日作製させ、プリントの光学密度を図4Aおよび図4Bに示されるように測定した。比較例1のインクから作製したプリントは、バンディングとして公知の現象を示した。バンディングは非均一噴射であり、これによりページ全体の光学密度が減少する。図4Aに示されるように、比較例1から作製されたプリントの光学密度は、5日間のプリンタ内でのエージング後、著しく減少した。対照的に、図4Bに示されるように、実施例2によるインクは10日間のプリンタ内でのエージング後、有意の光学密度変化を示さなかった。
【0070】
一般に、これらの結果から、新規分散剤から製造したインクは、オーブン内およびプリンタ内の両方で決定されるように安定な粒径を表すことが示される。これにより、新規分散剤は非極性インク媒質中、高温下でマゼンタピグメントレッド(Pigment Red)57:1粒子を安定化させることができることが示された。この新規分散剤は、ろう様インクビヒクルと適合可能であり、第4級アンモニウム塩は顔料マゼンタピグメントレッド57:1に対する強力なアンカー基となり、そのため、高温下で粒子を安定化させることができる。
【0071】
これらの研究から、120℃などの高温での、顔料粒子の凝塊化、凝集および沈降に抵抗する印刷可能で安定なインクが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に示される式を有する化合物。
【化1】

は、下記の通りであり:
(i)アルキル基、これは、直鎖または分枝、環状または非環式、置換または非置換であってもよく、ここで、ヘテロ原子は前記アルキル基中に存在しても、しなくてもよい、
(ii)アリールアルキル基、これは置換または非置換であってもよく、ここで、前記アリールアルキル基の前記アルキル部分は直鎖または分枝、環状または非環式、置換または非置換とすることができ、ここで、ヘテロ原子は前記アリールアルキル基の前記アリールまたは前記アルキル部分のいずれか中に存在しても、しなくてもよい、または、
(iii)アルキルアリール基、これは置換または非置換であってもよく、ここで、前記アルキルアリール基の前記アルキル部分は直鎖または分枝、環状または非環式、置換または非置換とすることができ、ここで、ヘテロ原子は前記アルキルアリール基の前記アリールまたは前記アルキル部分のいずれか中に存在しても、しなくてもよい、
は、下記の通りであり:
(i)アルキレン基、これは、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環状または非環式、置換または非置換であってもよく、ここで、ヘテロ原子は前記アルキレン基中に存在しても、しなくてもよい、
(ii)アリーレン基、これは、置換または非置換であってもよく、ここで、ヘテロ原子は前記アリーレン基中に存在しても、しなくてもよい、
(iii)アリールアルキレン基、これは、置換または非置換であってもよく、ここで、前記アリールアルキレン基の前記アルキル部分は直鎖または分枝、飽和または不飽和、環状または非環式、置換または非置換とすることができ、ここで、ヘテロ原子は前記アリールアルキレン基の前記アリールまたは前記アルキル部分のいずれか中に存在しても、しなくてもよい、または、
(iv)アルキルアリーレン基、これは、置換または非置換アルキルアリーレン基であってもよく、ここで、前記アルキルアリーレン基の前記アルキル部分は直鎖または分枝、飽和または不飽和、環状または非環式、置換または非置換とすることができ、ここで、ヘテロ原子は前記アルキルアリーレン基の前記アリールまたは前記アルキル部分のいずれか中に存在しても、しなくてもよい、
Xは第4級アンモニウム塩である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2010−265267(P2010−265267A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112079(P2010−112079)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】