説明

低地上高車両

【課題】乗用フレームが適用された乗用車において、フレームタイプで発生する地上高の上昇を抑え、モノコックタイプの乗用車両が有する低い地上高による乗車感の向上と、スタイリッシュな車両の設計が可能で、かつ低くした重心により走行安定性を向上させることができる低地上高車両を提供する。
【解決手段】車両の両側の底部側面をなすサイドシルの入った下部空間の内側に車両骨格をなす乗用フレームのサイドフレームを挿入して位置させることによって、乗用フレームが地面側に突出する長さを減らし、乗用フレームにより決定される車両の地上高(車高)を低くして、車両ボディの外観を一層スタイリッシュに形成しながら低くした重心により走行安定性も向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低地上高車両、特に乗用車両に乗用フレームを用いた低地上高車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に車両はフレームタイプとモノコックタイプに大別される。このうちフレームタイプは、フレームを車両の基本骨格としたもので、モジュール化の拡張に伴う原価削減と共に、フレームと車体のブッシュによる振動絶縁により乗車感を改善できる特徴があり、一方、モノコックタイプは、車両のフロア面を低くして地上高を低くすることができ、車両ロールの性能改善とさらにスタイリッシュな車両にできる特徴がある。
【0003】
このようなフレームタイプとモノコックタイプが有するそれぞれの特徴を乗用車両に適用すると、すなわち、モノコックタイプに合うように設計された乗用車両にフレームを適用すると、フレームタイプの車両が有する長所とモノコック車両が有する長所が同時に併せもたせることができる。
【0004】
しかし、このように乗用車両にフレームを適用するときには、フレームを単に乗用車両に合うように大きさだけを小型化しても適用できない。これは、乗用フレームの場合も、フレームなどのメンバーがフロアの下に入るため、地上高が上がらざるを得ず、地上高の上昇となっては一般的なモノコックタイプのもつ特徴が生かしきれなくなってしまう。
【0005】
乗用車両にフレームを適用する場合は、モノコックタイプ乗用車両のように低い地上高による乗車感の向上と共に、車両のスタイルを一層スタイリッシュにできるように、フレームによる地上高の上昇を招かないような設計が優先視されなければならない。
【0006】
車両の低車高化については、左右の車輪をそれぞれ上下動自在に支持する左右のリンク部材と、これらリンク部材と車体との間にそれぞれ配設されたコイルスプリングおよびダンパでなるサスペンションユニットとを備えた車両のサスペンション装置で、サスペンションユニットの配置に工夫を凝らすことによって低車高化を達成する提案〔特許文献1参照〕がある。
【0007】
【特許文献1】特開平06−199122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような点を勘案してなされたもので、乗用車両にフレームを適用したとき、フレームタイプで発生する地上高の上昇を抑え、モノコックタイプの乗用車両が有する低い地上高による乗車感の向上と、スタイリッシュな車両の設計が可能で、かつ低くした重心により走行安定性を向上させることができる低地上高車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するための本発明は、乗用フレームが適用された乗用車の低地上高車両であって、乗用フレームの両側面をなすサイドフレームが、車両の両側面底部にあるサイドシルの形成する空間内に位置している。
【0010】
また、サイドシルの形成する空間が、センターフロアパネルの中央部位よりも上方に位置し、サイドシルの形成する空間内側に位置した乗用フレームの両側のサイドフレームが、センターフロアパネルの中央部位よりも上方に位置している。
【0011】
そして、低地上高車両は、サイドシルが車両の底部の側面外郭をなすように互いに間隔をおいて重ねた多数のパネルからなるサイドシルアセンブリと、サイドシルアセンブリの内側でサイドシルアセンブリに対して空き空間である第1サイドシル閉空間を形成するように重ねられたサイドシルアウター補強パネル及び前記サイドシルアウター補強パネルに対して間隔をおいてセンターフロアパネル側につながるサイドシルインナー補強パネルとからなる。
【0012】
ここで、サイドシルアウター補強パネルのボディ形状端は、乗用フレームのサイドフレームが有する四角断面を考慮し、サイドシルアセンブリ側に水平につながった後、サイドシルアセンブリの下方に傾斜してつながりながら折り曲げられる形状をなすようになる。
【0013】
また、センターフロアパネルは底を形成するセンターパネル端の両側の終端がサイドシルの内側につながりながら、サイドシルの内側に重ねられたサイドシルアウター補強パネルとサイドシルインナー補強パネルの間に形成される空間を閉空間である第2サイドシル閉空間として形成する。
【0014】
そして、センターフロアパネルは底を形成するセンターパネル端の両側の終端で互いに高さの差を有して延びた終端固定部がサイドシルアウター補強パネル側に重ねられ、第2サイドシル閉空間を形成するためにサイドシルインナー補強パネルを遮るように延長遮断部が前記センターパネル端と終端固定部間をなし、センターフロアパネルのセンターパネル端側につながるサイドシルインナー補強パネル部位に重ねられるように先端固定部が傾斜するように形成される。
【発明の効果】
【0015】
サイドシル部位を用いてフレームを位置させることによって車両の地上高を低くすることができ、フレームタイプ車両とモノコックタイプ車両が有する両方の長所を同時に満たすことができる効果が生まれる。
【0016】
また、本発明は乗用車両にフレームを適用しながらも地上高を低くすることができるので、レイアウト(Lay Out)上、室内空間が重要な小型乗用車においてフレームによる室内空間への侵入がない効果が生まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を添付した例示図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は、本発明の実施の形態を説明する例であって、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が様々な異なる形態で実現できるものである。
【0018】
図1は、本発明に係る乗用フレーム車両と乗用フレームの結合構成図であり、(イ)は乗用フレーム車両と乗用フレームの結合を示す概念図、(ロ)はサイドフレームとサイドシル部位の位置関係を示す図で、「フレーム車両」は従来のフレームタイプ車両、「モノコック車両」は従来のモノコックタイプ車両、「乗用フレーム車両」は本発明による車両のものである。
【0019】
本発明による車両Vは、車両の骨組みをなす骨格である乗用フレームFが、その両側の側面をなすサイドフレームfの上端面をサイドシルS部位の内側に挿入され、サイドフレームfの上端面が車両の底部位より高く位置することによって、車両Vの地面に対する地上高(車高)を低くし、車両ボディBの外観を一層スタイリッシュにしている。
【0020】
これと共に、車両Vは、地上高(車高)を低くすることによって重心も低くなるので、車両の走行安定性も向上させることができる。
【0021】
これにより図1(ロ)に示した通り、サイドシルS部位で離隔されて位置した一般的なフレームF’を用いたフレーム車両が有する高い地上高を有さず、モノコック車両のように乗用フレームFが適用された本発明車両Vが低い地上高を形成するようになる。
【0022】
図2は、本発明に係る乗用フレームを用いた低地上高車両の詳細図であり、図3は、その断面構成図である。本発明は、車両Vの両側の側面底部をなすサイドシルSの内側に乗用フレームFの両側の側面であるサイドフレームfを位置させることにその特徴がある。図2に示した通り、サイドシルSの下部空間をなす開放されたフレームメンバーの位置空間cに、乗用フレームFのサイドフレームfが入って位置しており、これによって、乗用フレームFが地面側に突出する長さを減らしており、乗用フレームFにより決定される地上高を低くすることができる。
【0023】
このために、本発明は車両底をなすセンターフロアパネル4の終端で車両Vの両側の側部をなすサイドシルSは、その底部に空き空間である開放されたフレームメンバー位置空間cを形成させ、そのフレームメンバー位置空間c内に乗用フレームFの両側のサイドフレームfが置かれ、さらにフレームメンバー位置空間c側にサイドシルSの剛性を強化するようにサイドシルインナー補強パネル3が重ねられている。
【0024】
これによって、乗用フレームFの両側のサイドフレームfが、サイドシルSに挿入されてセンターフロアパネル4の中央部位よりも上方に位置するので、車両Vに装着された乗用フレームFが地面側に突出する長さを減らすことができ、センターフロアパネル4を地面側に低くすることができるようになる。
【0025】
このようなサイドシルSは、図3に示した通り、車両Vの底部の側面外郭をなすように互いに間隔をおいて重ねた多数のパネルからなるサイドシルアセンブリ1からなっている。
【0026】
これに加え、サイドシルアセンブリ1の内側でサイドシルアセンブリ1に対し空き空間である第1サイドシル閉空間aを形成するように、サイドシルアウター補強パネル2が重ねられる。
【0027】
また、サイドシルアウター補強パネル2に対して間隔をおき、その終端がセンターフロアパネル4に接合するサイドシルインナー補強パネル3がさらに備えられる。
【0028】
ここで、サイドシルアセンブリ1は、最外郭をなすサイドシルアウターパネル1aと、サイドシルアウターパネル1aに重ねられて内部空間を形成するサイドシルインナーパネル1c及びパネル1a、1cの間に形成された空間を両分するように重ねられるサイドシルインターパネル1bとからなる。
【0029】
このようなサイドシルアウター補強パネル2とサイドシルインナー補強パネル3は、サイドシルSの断面縮小に伴う剛性弱化を補強、すなわち、側面衝突時にサイドシルSに加えられる衝撃によって変形するサイドシルアセンブリ1部位をサイドシルアウター補強パネル2とサイドシルインナー補強パネル3が支持するように耐久性を強化させる作用をするようになる。
【0030】
また、第1サイドシル閉空間aは、サイドシルアセンブリ1をなすパネルが重ねられた上端フランジ部で、サイドシルアウター補強パネル2のアッパー位置端2aが下方向側に垂直に延びる。
【0031】
これに加え、サイドシルアウター補強パネル2のアッパー位置端2aの終端から延びるボディ形状端2bが、サイドシルアセンブリ1の内側に占有するように多段に折り曲げられながら下方向側に傾斜するように延びる。
【0032】
これと共に、ボディ形状端2bの終端から延びるロア位置端2cが、サイドシルアセンブリ1をなすパネルが重ねられた下端フランジ部につながり形成される。
【0033】
ここで、サイドシルアウター補強パネル2のボディ形状端2bは、乗用フレームFが有する幅と形状を考慮して折曲構造を形成するようになり、通常、乗用フレームFの四角断面を考慮してサイドシルアセンブリ1側に水平につながった後、サイドシルアセンブリ1の下方に傾斜するようにつながりながら折り曲げられる形状をなすようになる。
【0034】
一方、センターフロアパネル4は、底を形成するセンターパネル端5の両側の終端がサイドシルSの内側につながりながら、サイドシルSの内側に重ねられたサイドシルアウター補強パネル2とサイドシルインナー補強パネル3の間に形成される空間を閉空間である第2サイドシル閉空間bとして形成するようになる。
【0035】
このために、センターフロアパネル4は、底を形成するセンターパネル端5の両側の終端で、互いに高さの差を有して延びた終端固定部6がサイドシルアウター2側に重ねられる。
【0036】
また、センターフロアパネル4は、第2サイドシル閉空間bを形成するために、サイドシルインナー3を遮るように延長遮断部7がセンターパネル端5と終端固定部6の間をなすようになる。
【0037】
これに加え、センターフロアパネル4は、センターフロアパネル4のセンターパネル端5側につながったサイドシルインナー3部位に重ねられるように、先端固定部8が傾斜するように形成される。
【0038】
このとき、第2サイドシル閉空間bは、センターフロアパネル4のセンターパネル端5から延びて、サイドシルアウター補強パネル2側につながる延長遮断部7が空間底部部位を遮ることによって形成される。
【0039】
このような第2サイドシル閉空間bは、サイドシルアウター補強パネル2の上端部位をなすアッパー位置端2aに重ねられたサイドシルインナー補強パネル3のアッパー位置端3aから段差を有して延びたボディ形状端3bが形成する空間である。
【0040】
これと共に、センターフロアパネル4のセンターパネル端5から延びた両側の終端をなす終端固定部6は、サイドシルアウター補強パネル2のボディ形状端2bの下端終端部位で重ねられる。
【0041】
また、サイドシルインナー補強パネル3のボディ形状端3bからセンターフロアパネル4側に延びたロア位置端3cは、センターフロアパネル4のセンターパネル端5で傾斜しながら段差を有して延長がなされ始める先端固定部8部位に重ねられる。
【0042】
このとき、サイドシルアウター補強パネル2とサイドシルインナー補強パネル3及びセンターフロアパネル4の間に互いに重ねられる部位はいずれも溶接する。
【0043】
また、サイドシルインナー補強パネル3のロア位置端3cとセンターフロアパネル4の先端固定部8は傾斜するように溶接形成角Aを形成するようになり、このような溶接形成角Aは角度が大きくなるほど乗用フレームFの室内侵入が減るが、溶接が不可能になるので、乗用フレームFがサイドシルSの内側空間に位置しながら溶接が可能な角度に設定される。
【0044】
これによって、本発明は、サイドシルSをなすサイドシルアセンブリ1の内側に重ねられたサイドシルアウター補強パネル2が、第1サイドシル閉空間aを形成するようになる。
【0045】
また、サイドシルアウター補強パネル2に重ねられるサイドシルインナー補強パネル3とセンターフロアパネル4のセンターパネル端5から延びた先端固定部8が第2サイドシル閉空間bを形成することによって、サイドシルSの底部部位からサイドシルSの上部側に開放されたフレームメンバー位置空間cが形成できるようになる。
【0046】
このようにサイドシルSのフレームメンバー位置空間cが車両の室内の底をなすセンターフロアパネル4のセンターパネル端5よりも高く位置することによって、フレームメンバー位置空間c側に乗用フレームFの両側のサイドフレームfの上端部位が位置すると、センターパネル端5より乗用フレームFの上端部位がさらに高く位置し、サイドシルSの底部が地面側にさらに下げられるようになる。
【0047】
これによって、車両と地面間に形成される地上高は図3に示した通り、センターフロアパネル4のセンターパネル端5が地面となす高さである地面上昇位置Laが、乗用フレームFの上端部位が地面となす高さである地面上昇位置Lbに比べてさらに高く形成できるようになる。
【0048】
このような乗用フレームFのサイドシルS側の挿入は、図1(ロ)に示された通り、一般的なフレームF’を用いたフレーム車両でサイドシルSと関係なく位置するフレームF’による高い地上高を有さず、モノコックM車両のように低い地上高を有する構造を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る乗用フレーム車両と乗用フレームの結合構成図である。
【図2】本発明に係る乗用フレームを用いた低地上高車両の詳細図である。
【図3】図2に係る断面構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1:サイドシルアセンブリ
1a:サイドシルアウターパネル
1b:サイドシルインターパネル
1c:サイドシルインナーパネル
2:サイドシルアウター補強パネル
2a、3a:アッパー位置端
2b、3b:ボディ形状端
2c、3c:ロア位置端
3:サイドシルインナー補強パネル
4:センターフロアパネル
5:センターパネル端
6:終端固定部
7:延長遮断部
8:先端固定部
a、b:第1・2サイドシル閉空間
c:フレームメンバー位置空間
A:溶接形成角
B:車両ボディ
F:乗用フレーム
f:サイドフレーム
La、Lb:地面上昇位置
M:モノコック
S:サイドシル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用フレームが適用された乗用車両において、
前記乗用フレームの両側面をなすサイドフレームが、車両の両側面底部にあるサイドシルの形成する空間内に位置することを特徴とする低地上高車両。
【請求項2】
前記サイドシルの形成する空間が、センターフロアパネルの中央部位よりも上方に位置し、前記サイドシルの形成する空間内側に位置した乗用フレームの両側のサイドフレームが、センターフロアパネルの中央部位よりも上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の低地上高車両。
【請求項3】
前記サイドシルが車両の底部の側面外郭をなすように互いに間隔をおいて重ねた多数のパネルからなるサイドシルアセンブリと、
前記サイドシルアセンブリの内側でサイドシルアセンブリに対し空き空間である第1サイドシル閉空間を形成するように重ねられたサイドシルアウター補強パネルと、
前記サイドシルアウター補強パネルに対し間隔をおいてセンターフロアパネル側につながるサイドシルインナー補強パネルと、
からなることを特徴とする請求項2に記載の低地上高車両。
【請求項4】
前記サイドシルアウター補強パネルのアッパー位置端終端から延びるボディ形状端は、乗用フレームのサイドフレームが有する四角断面を考慮してサイドシルアセンブリ側に水平につながった後、サイドシルアセンブリの下方に傾斜するようにつながりながら折り曲げられる形状をなすことを特徴とする請求項3に記載の低地上高車両。
【請求項5】
前記センターフロアパネルは、底を形成するセンターパネル端の両側の終端がサイドシルの内側につながりながら、前記サイドシルの内側に重ねられたサイドシルアウター補強パネルとサイドシルインナー補強パネル間に形成される空間を閉空間である第2サイドシル閉空間として形成することを特徴とする請求項2に記載の低地上高車両。
【請求項6】
前記センターフロアパネルの先端固定部は、傾斜するように溶接形成角を形成することを特徴とする請求項5に記載の低地上高車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−120166(P2009−120166A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324484(P2007−324484)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】