説明

低密度ポリエチレンの溶融押出成形方法

【課題】低密度ポリエチレンを溶融押出成形する際に、耳揺れ現象を抑制する方法を提供する。
【解決手段】最も押出機に近い位置に設置されたインナーディッケル(A)11と、最もリップ開口部に近い位置に設置されたインナーディッケル(B)とが、以下の要件(1)を満たすように保持されてなるTダイを用いて、低密度ポリエチレンを溶融押出成形する方法。(1)インナーディッケル(A)11のリップ開口部側の一辺の直線部における最もダイの中心線に近い点を点(α)、インナーディッケル(B)の押出機側の一辺における最もダイの中心線に近い点を点(β)、前記インナーディッケル(B)の押出機側の一辺の延長線と、前記点(α)からの垂線との交点を点(γ)とするとき、点(β)と点(γ)との距離(ア)が40mm以下である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低密度ポリエチレンの溶融押出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低密度ポリエチレン製フィルムを製造する方法として、押出機にて溶融混練した低密度ポリエチレンを、押出機先端に取付けた押出成形用Tダイより押し出し成形する方法が知られている。このような方法で低密度ポリエチレン製フィルムを製造する場合、Tダイより押出した溶融状フィルムに、ネックイン現象や耳揺れ現象といった現象が生じることがある。ネックイン現象とは、Tダイより押出された溶融状フィルムが収縮してフィルム幅が狭くなる現象である。耳揺れとは、Tダイより押出された溶融状フィルムの幅方向の端部が波打つ現象である。特に耳揺れは、薄いフィルムを製造する際に発生しやすい。ネックイン現象や耳揺れ現象が発生すると、製品として使用可能なフィルムの幅が狭くなってしまうという問題がある。
【0003】
ネックイン現象や耳揺れ現象を抑制する方法として、インナーディッケルおよびロッドが配設されている押出成形用Tダイを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−79924号公報
【特許文献2】特開2001−26045号公報
【0005】
しかしながらこのようなTダイを用いても、厚みの薄いフィルムを製造する際に耳揺れ現象を抑制できるような条件は見出されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、インナーディッケルおよびロッドが配設されている押出成形用Tダイを用いて低密度ポリエチレンを溶融押出成形する際に、耳揺れ現象を抑制する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、Tダイの溶融樹脂流路出口に形成されたリップの幅方向の少なくとも一方の端部に、板状のインナーディッケルが2枚以上設置されており、さらに前記インナーディッケルよりもリップ開口部側にロッドが設置されているTダイであって、
最も押出機に近い位置に設置されたインナーディッケル(A)と、最もリップ開口部に近い位置に設置されたインナーディッケル(B)とが、以下の要件(1)を満たすように保持されてなるTダイを用いて、メルトフローレートが1〜20g/10分であり、密度が910〜930kg/m3であり、分子量分布が3〜8である、高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレンを溶融押出成形する方法である。
(1)インナーディッケル(A)のリップ開口部側の一辺の直線部における最もダイの中心線に近い点を点(α)、
インナーディッケル(B)の押出機側の一辺における最もダイの中心線に近い点を点(β)、
前記インナーディッケル(B)の押出機側の一辺の延長線と、前記点(α)からの垂線との交点を点(γ)とするとき、
点(β)と点(γ)との距離(ア)が0mm以上40mm以下である
【発明の効果】
【0008】
本発明により、インナーディッケルおよびロッドが配設されている押出成形用Tダイを用いて低密度ポリエチレンを溶融押出成形する際に、耳揺れ現象を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、メルトフローレートが1〜20g/10分であり、密度が910〜930kg/m3であり、分子量分布が3〜8である、高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレンを溶融押出成形する。本発明は、このような高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレン(以下、高圧法LDPEと記すこともある)を溶融押出成形する場合に、耳揺れ現象を抑制することができる方法である。
【0010】
本発明で溶融押し出しする高圧法LDPEのメルトフローレート(MFR)は1〜20g/10分であり、好ましくは2〜10g/10分である。MFRは、JIS K7210−1995に規定された方法において、温度190℃および荷重21.18Nの条件で測定される。
【0011】
本発明で溶融押し出しする高圧法LDPEの密度は、910〜930kg/m3であり、好ましくは912〜928kg/m3である。密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される。
【0012】
本発明で溶融押し出しする高圧法LDPEの分子量分布は3〜8であり、好ましくは5〜7である。分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、以下の条件により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定することで求められる。
<測定条件>
装置:Water製Waters150C
分離カラム:TOSOH TSKgelGMH−HT
測定温度:145℃
キャリア:オルトジクロロベンゼン
流量:1.0mL/分
注入量:500μL
検出器:示差屈折
【0013】
本発明で溶融押し出しする高圧法LDPEには、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、抗ブロッキング剤等の添加剤を添加してもよい。
【0014】
本発明では、Tダイの溶融樹脂流路出口に形成されたリップの幅方向の少なくとも一方の端部に、板状のインナーディッケルが2枚以上設置されており、さらに前記インナーディッケルよりもリップ開口部側にロッドが設置されているTダイを用いる。インナーディッケルがリップの幅方向の両端部に、ダイの中心線を軸として対称に設置されているTダイを用いることが好ましい。
【0015】
本発明は、上記のようなTダイを用い、該Tダイに備えられたインナーディッケルおよびロッドが特定の条件を満たすように保持した状態で、高圧法LDPEを溶融押出するものである。以下、その特定の条件について詳細に説明するが、以下の説明は、Tダイ中の樹脂流路と平行なTダイ断面図をもとに行う。
【0016】
本発明で用いるTダイの断面図を図1に示す。Tダイ(31)は、その溶融樹脂流路出口(19)に形成されたリップ(17)の幅方向の少なくとも一方の端部に、板状のインナーディッケルを2枚有する。なお図1に示すTダイは、リップの両端にそれぞれ、最も押出機に近い位置に設置されたインナーディッケル(A)と、最もリップ開口部に近い位置に設置されたインナーディッケル(B)の2枚のインナーディッケルを有するTダイであるが、これらインナーディッケルの間に、さらに1枚以上のインナーディッケルを備えるTダイも用いることができる。また、上記インナーディッケルは、Tダイ内の溶融樹脂流路に、別体で構成された板状の部材を挿入するものであってもよいし、前記溶融樹脂流路の内壁部に一体に構成されたものであってもよい。
【0017】
各インナーディッケルはTダイ内に設置されるため、いずれも板状であるが、その先端形状は特に限定されるものではない。例えば図3に示すように、押出機側とリップ側のいずれもが略直角であってもよいし、図4に示すように、リップ側から押出機側にかけて曲線を描いていてもよい。また、図4に示すように、リップ側が直角であり、押出機側がダイの中心線方向に尖った形状であってもよい。
【0018】
本発明では、最も押出機に近い位置に設置されたインナーディッケル(A)と、最もリップ開口部に近い位置に設置されたインナーディッケル(B)とが、以下の要件(1)を満たすように保持されてなるTダイを用いて、上記高圧法LDPEを溶融押出成形する。
(1)インナーディッケル(A)のリップ開口部側の一辺の直線部における最もダイの中心線に近い点を点(α)、インナーディッケル(B)の押出機側の一辺における最もダイの中心線に近い点を点(β)、前記インナーディッケル(B)の押出機側の一辺の延長線と、インナーディッケル(A)のリップ開口部側の一辺の直線部における最もダイの中心線に近い点(α)からの垂線との交点を点(γ)とするとき、点(β)と点(γ)との距離(ア)が0mm以上40mm以下である。
【0019】
上記におけるダイの中心線とは、リップの両端部を結ぶ直線の中心点において、前記リップの両端部を結ぶ直線と直角に交わる線である。
【0020】
なお、図3の(a)や図4の(a)に示すように、リップの端部にインナーディッケルが2枚設置されたTダイの場合、点(α)を点(γ)と見なす。すなわち図3の(a)および図4の(a)において、点(β)と点(γ)との距離(ア)とは、点(β)と点(α)との距離である。
【0021】
上記の要件(1)を満たすように保持されてなるTダイから、上記高圧法LDPEを溶融押出成形することにより、耳揺れ現象を抑えながら成形することができる。
【0022】
上記の要件(1)に加えて、さらに以下の要件(2)を満たすように保持されてなるTダイを用いることが好ましい。
(2)インナーディッケル(B)と、該インナーディッケル(B)と接するように設けられたロッド(R)とが、インナーディッケル(B)のリップ開口部側の一辺の直線部における最もダイの中心線に近い点を点(δ)、ロッド(R)の押出機側の一辺における最もダイの中心線に近い点を点(ε)とするとき、点(δ)と点(ε)との距離(イ)が10mm以上である
【0023】
上記の要件(1)および(2)を満たすように保持されてなるTダイから、上記高圧法LDPEを溶融押出成形することにより、耳揺れ現象に加えて、耳高をも抑えながら成形することができる。なお、「耳高」とは、次のような現象をいう。
【0024】
押出成形用Tダイより押出された溶融状フィルムが収縮してフィルム幅が狭くなる、いわゆるネックイン現象が生じる際、収縮量は溶融状フィルムの幅方向の両端部が大きく、フィルムの中央部になるに従って小さくなる傾向がある。よって、溶融状フィルムの両端部は厚さが厚くなりやすい。このような現象を「耳高」という。
【0025】
上記の要件(1)および(2)に加えて、さらに以下の要件(3)を満たすように保持されてなるTダイを用いることが好ましい。
(3)点(δ)と点(ε)との距離(イ)が40mm以下である
このような要件を満たすように保持されてなるTダイを用いて、上記した高圧法LDPEを溶融押出成形することにより、耳揺れ現象および耳高をより抑制してフィルムを製造することができる。
【0026】
本発明におけるTダイが共押出用である場合、上記した高圧法LDPEを溶融押出するための溶融樹脂流路に設置されたインナーディッケルとロッドが、上記の要件を満たしていればよい。
【0027】
また、必ずしも溶融押出前にインナーディッケルやロッドが上記した要件を満たすように設置しておく必要はなく、樹脂を押出しながら、上記した要件を満たすように調整して保持してもよい。
【0028】
本発明の方法によれば、従来耳揺れ現象が生じやすかった厚みの薄いフィルムであっても、耳揺れ現象を抑制して製造することができる、本発明の方法は、厚み20μm以下のフィルムの製造に適している。製造可能なフィルムの厚みは、通常、2μm以上である。
【0029】
本発明の製造方法によって得られるフィルムは、そのまま種々の用途に使用してもよいし、他のフィルムや部材と積層、または貼合して使用することができる。
本発明の方法は厚みの薄いフィルムの製造に適しているため、基材上に本発明の方法により高圧法LDPEを溶融押出して押出ラミネーションする方法として好適である。以下、本発明の方法を押出ラミネーションに適用する場合について、詳細に説明する。
【0030】
前記基材を構成する原料としては、樹脂、紙、金属などが挙げられる。該樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、セロハン、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリブテン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、アセチルセルロースなどがあげられる。
【0031】
基材はフィルムなどの形状で用いられ、単層であっても、多層であってもよい。該基材の厚さは押出ラミネーション加工が可能であればよく、好ましくは5〜300μm、より好ましくは8〜250μm、さらに好ましくは12〜200μmである。
【0032】
ダイから押出された直後の樹脂温度は、基材と溶融状フィルムとの接着性を高める観点から280℃以上とすることが好ましい。また、樹脂の劣化を抑制する観点、発煙成分による冷却ロール汚染を低減する観点から350℃以下とすることが好ましく、340℃以下とすることがより好ましい。
【0033】
溶融押出成形する際の加工速度は、生産性の観点から40m/min以上であることが好ましい。
【0034】
基材と溶融状フィルムとの接着性を高めるために、基材にアンカーコート処理、電子線照射処理、プラズマ処理、コロナ放電処理または火炎処理等の公知の表面処理を行ってもよい。
【0035】
Tダイから押出しした溶融状フィルムは、基材とともにチルロールとニップロールによって押圧される。Tダイから押出された溶融状フィルムが最初にチルロールと接するまでの距離、いわゆるエアギャップは、基材と溶融状フィルムとの接着性を得る観点から、50mm以上とすることが好ましい。また、ネックイン現象をより抑制する観点から、250mm以下とすることが好ましい。
【0036】
本発明における要件(1)を満たすように保持されたTダイを用いて高圧法LDPEを溶融押出成形することにより、耳揺れ幅を30mm以下に抑えて押出ラミネーションすることができる。なお本発明では、次の方法によって耳ゆれ幅を評価した。チルロールとニップロールによって押圧された後、巻取機にて巻き取られるまでの積層フィルムについて、基材上に押出ラミネーションしたフィルムの一方の端部が記録されるようにして、押出開始から20分後にビデオ撮影を開始し、3分間撮影を継続する。なお、画像を記録する際に、フィルム幅方向に物差を固定して設置しておく。
撮影後の動画を解析し、押出ラミネーションしたフィルムの端部が、基材幅方向の中心から最も遠くに位置した地点と、最も近くに位置した地点との差を、耳揺れ幅とした。
【0037】
本発明における要件(1)および要件(2)を満たすように保持されたTダイを用いて高圧法LDPEを溶融押出成形することにより、以下の式(1)により定義される耳高の割合rが30%以下であるラミネーションフィルムを製造できる。

ただし上記式(1)中の記号は、図2(b)に示す本発明の方法により得られる押出ラミネーションフィルムの断面図において、fは基材上に押出ラミネーションした後のフィルムの総断面積を、f1は押出ラミネーションしたフィルムの有効幅(24)における該フィルムの断面積を、lは平均厚み(27)を、mはTダイ幅方向ロス部の長さ(26)を表す。
なお、図2(b)に示した押出ラミネーションしたフィルムの有効幅(24)、平均厚み(27)、Tダイ幅方向のロス部の長さ(26)とは、以下のとおりである。
[平均厚み(27)]
フィルムの幅方向の中心から押出ラミネーションされた樹脂の幅の20%(25)について、1mm毎に測定したときの積層フィルム厚みの値の平均値から基材厚みを引いた厚み
[押出ラミネーションしたフィルムの有効幅(24)]
押出ラミネーションしたフィルムの厚みが、(平均厚み±平均厚みの誤差20%)以内の厚みにある、該フィルムの幅
[Tダイ幅方向のロス部の長さ(26)]
押出ラミネーションしたフィルム幅から押出ラミネーションしたフィルムの有効幅を差し引いた値
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を説明する。
物性は、次の方法に従って測定した。
【0039】
(1)密度(単位:kg/m3
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、試料には、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った。
【0040】
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10min)
JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法により測定した。
【0041】
(3)分子量分布(Mw/Mn)
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
<測定条件>
装置:Water製Waters150C
分離カラム:TOSOH TSKgelGMH−HT
測定温度:145℃
キャリア:オルトジクロロベンゼン
流量:1.0mL/分
注入量:500μL
検出器:示差屈折
【0042】
(4)耳揺れの幅(単位:mm)
チルロールとニップロールによって押圧された後、巻取機にて巻き取られるまでの積層フィルムについて、基材上に押出ラミネーションしたフィルムの一方の端部が記録されるようにして、押出開始から20分後にビデオ撮影を開始し、3分間撮影を継続した。なお、画像を記録する際に、フィルム幅方向に物差を固定して設置した。
撮影後の動画を解析し、押出ラミネーションしたフィルムの端部が、基材幅方向の中心から最も遠くに位置した地点と、最も近くに位置した地点との差を、耳揺れ幅とした。
【0043】
(5)耳高の割合(単位:%)
押出成形用Tダイから溶融樹脂を基材に押出ラミネーションした後の積層フィルムを幅方向で厚み分布測定((株)山文電気社製、オフラインシート厚み計測装置TYPE−5R01)をオフラインで実施し、測定後の厚み分布データより以下の式(1)を用いて耳高の割合r(%)を算出した。なお測定は、測定子荷重0.4N、測定ピッチ1mmの条件で実施した。

ただし上記式(1)中の記号は、図2(b)に示す本発明の方法により得られる押出ラミネーションフィルムの断面図において、fは基材上に押出ラミネーションした後のフィルムの総断面積を、f1は押出ラミネーションしたフィルムの有効幅(24)における該フィルムの断面積を、lは平均厚み(27)を、mはTダイ幅方向ロス部の長さ(26)を表す。
なお、図2(b)に示した押出ラミネーションしたフィルムの有効幅(24)、平均厚み(27)、Tダイ幅方向のロス部の長さ(26)とは、以下のとおりである。
[平均厚み(27)]
フィルムの幅方向の中心から押出ラミネーションされた樹脂の幅の20%(25)について、1mm毎に測定したときの積層フィルム厚みの値の平均値から基材厚みを引いた厚み
[押出ラミネーションしたフィルムの有効幅(24)]
押出ラミネーションしたフィルムの厚みが、(平均厚み±平均厚みの誤差20%)以内の厚みにある、該フィルムの幅
[Tダイ幅方向のロス部の長さ(26)]
押出ラミネーションしたフィルム幅から押出ラミネーションしたフィルムの有効幅を差し引いた値
【0044】
(6)耳切れ
押出成形用Tダイから溶融樹脂を基材へ押出ラミネーションした後、基材の両側エッジ部分をビデオカメラにて加工20分後から3分間オンライン撮影し、撮影後のビデオ動画観察より、耳切れの有無を判定した。
【0045】
[実施例1]
65mmφ(L/D=32)の押出機の先端に、800mm幅のTダイ(ストレートマニホールド)を備えた押出装置を用いた。該Tダイは、リップ幅方向の両端部に、ダイの中心線を軸として対称にインナーディッケルを2枚ずつそなえ、かつこれらインナーディッケルよりもリップ開口部側にロッドが設置されたTダイであった。該押出装置に住友重機械モダン(株)社製 共押出ラミネーターを接続し、押出ラミネーションを行った。基材には、厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製(株)東洋紡エステルフィルムE5100)を用い、溶融押出する樹脂には、住友化学(株)製スミカセンCE3526(MFR=4.1g/10min、密度=918kg/m3、分子量分布6.6)を用いた。
Tダイにおけるインナーディッケル(A)とインナーディッケル(B)とが、距離(ア)が0mmとなるように、かつ、インナーディッケル(B)とロッド(R)とが、距離(イ)が0mmとなるように保持した。また、対向するロッド間の距離は、470mmとなるようにした。
押出機の温度を327℃に設定し、Tダイから押出された直後の樹脂温度が320℃となるようにして、前記樹脂を溶融押出した。加工速度を120m/min、エアギャップを160mmとし、基材に押出ラミネーションした樹脂の平均厚みが3.3μmである積層フィルムを得た。実施した押出ラミネートの加工性評価結果を表1に示した。
【0046】
[実施例2]
インナーディッケル(A)およびインナーディッケル(B)の位置を調整して、距離(イ)を30mmとした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。実施した押出ラミネートの加工性評価結果を表1に示した。
【0047】
[実施例3]
インナーディッケル(A)およびインナーディッケル(B)の位置を調整して、距離(イ)を50mmとした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。実施した押出ラミネートの加工性評価結果を表1に示した。
【0048】
[実施例4]
インナーディッケル(B)の位置を調整して、距離(ア)を30mmとした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。実施した押出ラミネートの加工性評価結果を表1に示した。
【0049】
[実施例5]
インナーディッケル(A)およびインナーディッケル(B)の位置を調整して、距離(ア)を30mm、距離(イ)を30mmとした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。実施した押出ラミネートの加工性評価結果を表1に示す。
【0050】
[実施例6]
インナーディッケル(A)およびインナーディッケル(B)の位置を調整して、距離(ア)を30mm、距離(イ)を50mmとした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。実施した押出ラミネートの加工性評価結果を表1に示した。
【0051】
[比較例1]
インナーディッケル(A)およびインナーディッケル(B)の位置を調整して、距離(ア)を50mm、距離(イ)を30mmとした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。実施した押出ラミネートの加工性評価結果を表1に示した。
【0052】
[比較例2]
インナーディッケル(A)およびインナーディッケル(B)の位置を調整して、距離(ア)を50mm、距離(イ)を50mmとした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。実施した押出ラミネートの加工性評価結果を表1に示した。
【0053】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明で用いるTダイ内部の概略図
【図2】(a)本発明で用いるTダイ内部の概略図(b)該Tダイを用いて押出ラミネーションにより得られるフィルムにおける耳高の説明図
【図3】インナーディッケル(A)、インナーディッケル(B)およびロッド(R)の位置を説明する概略図(a)押出機側とリップ側のいずれもが略直角である2枚のインナーディッケルと、ロッドとを有する場合の概略図(b)押出機側とリップ側のいずれもが略直角である3枚のインナーディッケルと、ロッドとを有する場合の概略図
【図4】(a)リップ側が直角であり、押出機側がダイの中心線方向に尖った形状であるインナーディッケル(A)と、リップ側から押出機側にかけて曲線を描くインナーディッケル(B)と、ロッドとを有する場合の概略図(b)リップ側が直角であり、押出機側がダイの中心線方向に尖った形状であるインナーディッケル(A)と、リップ側から押出機側にかけて曲線を描くインナーディッケル(B)と、これらインナーディッケルの間に押出機側とリップ側のいずれもが略直角であるインナーディッケルとを有し、さらにロッドを有する場合の概略図
【符号の説明】
【0055】
11 最も押出機に近い位置に設置されたインナーディッケル(A)
12 最もリップ開口部に近い位置に設置されたインナーディッケル(B)
13 インナーディッケル(A)とインナーディッケル(B)の間に設置されたインナーディッケル(C)
14 ロッド(R)
15 距離(ア)
16 距離(イ)
17 リップ
18 溶融樹脂流路
19 溶融樹脂流路出口
21 ロッド間距離
22 溶融状フィルム幅
23 ネックイン
24 押出ラミネーションされた樹脂の幅
25 フィルムの幅方向の中心から押出ラミネーションされた樹脂の幅の20%の範囲
26 Tダイ幅方向のロス部の長さ
27 平均厚み
31 押出成形用Tダイ
32 溶融状フィルム
33 耳高部
34 基材
Y ダイの中心線
α インナーディッケル(A)のリップ開口部側の一辺の直線部における最もダイの中心線に近い点
β インナーディッケル(B)の押出機側の一辺における最もダイの中心線に近い点
γ インナーディッケル(B)の押出機側の一辺の延長線と、点αからの垂線との交点
δ インナーディッケル(B)のリップ開口部側の一辺の直線部における最もダイの中心線に近い点
ε ロッド(R)の押出機側の一辺における最もダイの中心線に近い点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Tダイの溶融樹脂流路出口に形成されたリップの幅方向の少なくとも一方の端部に、板状のインナーディッケルが2枚以上設置されており、さらに前記インナーディッケルよりもリップ開口部側にロッドが設置されているTダイであって、
最も押出機に近い位置に設置されたインナーディッケル(A)と、最もリップ開口部に近い位置に設置されたインナーディッケル(B)とが、以下の要件(1)を満たすように保持されてなるTダイを用いて、メルトフローレートが1〜20g/10分であり、密度が910〜930kg/m3であり、分子量分布が3〜8である、高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレンを溶融押出成形する方法。
(1)インナーディッケル(A)のリップ開口部側の一辺の直線部における最もダイの中心線に近い点を点(α)、
インナーディッケル(B)の押出機側の一辺における最もダイの中心線に近い点を点(β)、
前記インナーディッケル(B)の押出機側の一辺の延長線と、前記点(α)からの垂線との交点を点(γ)とするとき、
点(β)と点(γ)との距離(ア)が0mm以上40mm以下である
【請求項2】
請求項1に記載の低密度ポリエチレンを溶融押出成形する方法において、さらに以下の要件(2)を満たすように保持されてなるTダイを用いる方法。
(2)インナーディッケル(B)と、該インナーディッケル(B)と接するように設けられたロッド(R)とが、
インナーディッケル(B)のリップ開口部側の一辺の直線部における最もダイの中心線に近い点を点(δ)、
ロッド(R)の押出機側の一辺における最もダイの中心線に近い点を点(ε)とするとき、
点(δ)と点(ε)との距離(イ)が10mm以上である
【請求項3】
請求項2に記載の低密度ポリエチレンを溶融押出成形する方法において、さらに以下の要件(3)を満たすように保持されてなるTダイを用いる方法。
(3)点(δ)と点(ε)との距離(イ)が40mm以下である

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−83060(P2010−83060A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256019(P2008−256019)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】