説明

低強度空洞充填材及び低強度地盤の空洞充填工法

【課題】 低強度地盤の空洞部分へ短期間で効率よく、低廉な設備コストで充填させる低強度空洞充填材及び低強度地盤の空洞充填工法を提供する。
【解決手段】 セメントと、シラスと、混和材と、を水で混練してシラスモルタルを形成し、該シラスモルタルに発泡反応剤分散液を混合した低強度空洞充填材から構成される。また、工法としては、地山強度0.5N/mm〜3N/mm程度の低強度の地盤の空洞を充填する空洞充填方法であり、低強度地盤へのポンプによる圧送直前又は圧送数時間前に発泡反応剤分散液を混入して低強度空洞充填材を形成し、該低強度空洞充填材を空洞に充填した後の発泡反応により該空洞を密実に充填させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水配管用穴、マンホール、防空壕等の空洞部分を有する地盤であって、特に、低強度地盤の空洞部分を充填する低強度空洞充填材及び低強度地盤の空洞充填工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水配管用穴、マンホール、防空壕等の空洞部の充填工事やトンネルの背面裏込め工事などでは、充填性を良くするために流動性の高いセメントエアミルクやセメントエアモルタルなどのセメント系材料に気泡を混合させて軽量化したものを空洞部に充填し、硬化させて空洞部を埋める工法が知られている。特に、防空壕などは官のみでなく、民間人の掘削による場合もあり、このような場合は掘削作業性のよい低強度地盤部分に作成させた場合も多い。図6は、従来の空洞部分を充填する工法としての気泡混合軽量土工法の構成とその流れを示しており、図において、砂S、セメントM、水WをミキサーX、ブレンダーLで混練、攪拌して充填主材Eを形成し、それに気泡発生装置Tで物理的に生成した例えば充填主材Eと同程度の容積の気泡B(材料・気泡比50:50)を注入して気泡混合軽量土とし、これを特殊ポンプPにより圧送して充填すべき空洞に充填するものであった。しかしながら、この気泡混合軽量土工法では、例えば防空壕の充填閉鎖工事においては、気泡発生装置による気泡の注入は、泡立て剤を所定量の水で希釈して圧縮空気と混合することにより気泡を発生させ、これを充填主材中に充填するものであるから、この気泡発生装置の発生能力に限界があり、したがって、注入すべき気泡量を確保するために空洞部への充填量が制約され施工能力が劣るという問題があった。また、充填後の時間の経過とともに強制注入したエアーのロスが生じる上に、硬化収縮ともあいまって充填材を数回に分けて注入する必要があり、この間、モルタル等の流失を防止するために入口の扉を閉鎖し外部から空洞内に圧力を加えた状態で保持する必要があった。したがって、この方法では充填工事の管理が煩雑で効率が悪く、しかも施工費用が高くなって施工期間が長期化する欠点があった。特に、この工法では気泡発生装置で物理的に発生させた気泡をセメント、砂、水の混練材中に注入して充填箇所に充填するものであるから、消泡による気泡の減量を防止すべく、充填工事現場で気泡混合軽量土を製造し、気泡注入しつつ充填箇所に充填作業をせざるを得ず、よって、工事現場付近に仮設プラントを構築する必要があり、この点からも工事全体のコストを高いものとしさらに、着工から工事完了までの工期の長期化を招く原因となっていた。さらに、従来の気泡混合軽量土工法では、容積比で例えば同量程度の空気を注入した軽量土を充填箇所に向けて送給する必要があり、よって、多量の空気を担持したモルタル等軽量土を圧送することとなり、このため、ポンプによる圧送性が悪く、専用のポンプでしかも小さな配管径の特殊ポンプによるほか充填箇所への圧送ができなかった。このため、1台の専用特殊ポンプで例えば1日で40m程度の充填剤の充填しか行なえず施工能力が低く作業効率が悪いものであった。さらに、該専用ポンプは容易な入手が困難で専用のポンプ設備として仮設プラントと一体に設ける必要があり、コスト上昇をきたすとともに、当該現場から他の現場への移設が簡単でなく、複数現場使用上の汎用性に欠けるものであった。加えて、これらの気泡発生装置、特殊ポンプ、砂S、セメントM、水Wはセメントサイロその他の専用の材料貯蔵設備、あるいはミキサー、ブレンダー等を配備した仮設プラント建設のために、大きな設置コストがかかり、作業全体のコストが極めて高いものとなるという問題があった。これに対し、例えば、特許文献1において、空洞部の限定注入工法の提案がなされている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−293691号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の特許文献1の工法では、空洞部に塊状物を積み上げて仕切壁を作成し、該仕切壁に可塑性注入材を付加し、該仕切壁によって仕切られた空洞部に注入材を注入するものである。しかしながら、この特許文献1の工法では、結局空洞部分に連通する縦孔を設け、該孔を通じて上方から砂や砕石等、あるいはセメントミルクを空洞部分に落下させて堆積させ、仕切壁を形成した後に硬化性の注入材を注入するという極めて限定された作業現場でしか適用できないものであった。また、セメントミルク等の注入材を別の孔を介して空洞部分に投入させるようにしているので、注入による充填状態の粗密の確認が全くできず、充填性の信頼性に欠ける問題があった。さらに、空洞部に注入される可塑性注入材は、結局、セメントモルタル等の硬化体であるから、周辺地盤の強度とのバランスが考慮されず、地山全体構造の強度分布の偏在等を生じて好ましくないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、低強度地盤の空洞部分へ短期間で効率よく、低廉な設備コストで充填させることのできる低強度空洞充填材及び低強度地盤の空洞充填工法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、低強度であるにもかかわらず良好な圧送効率と小さなポンプ動力負荷で比較的に長い距離の圧送を実現し得る低強度空洞充填材及び低強度地盤の空洞充填工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、セメントと、シラスと、混和材と、を水で混練してシラスモルタル10を形成し、該シラスモルタルに発泡反応剤分散液14を混合した低強度空洞充填材から構成される。その際、発泡反応剤分散液14は、セメントと反応して発泡する発泡剤と、起泡剤と、を水に混合して分散させるとよい。また、シラスモルタルは、容積比でセメントが7%〜14%、シラスが50%〜47%、水が43%〜39%とするのがよい。さらに、発泡剤がアルミニウム粉であり、起泡剤が界面活性剤からなるものとするとよい。また、工法発明として、本発明は、地山強度0.5N/mm〜3N/mm程度の低強度の地盤の空洞を充填する空洞充填方法であり、請求項1のシラスモルタルに、低強度地盤へのポンプによる圧送直前又は圧送数時間前に請求項2または4の発泡反応剤分散液を混入して低強度空洞充填材を形成し、該低強度空洞充填材を空洞に充填した後の発泡反応により該空洞を密実に充填させることを特徴とする低強度地盤の空洞充填工法から構成される。その際、少なくとも300メートル以上の圧送ホースを接続したポンプで160kgf/cm以下の吐出圧により低強度空洞充填材を圧送させるとよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の低強度空洞充填材及び、低強度地盤の空洞充填工法によれば、例えばアルミニウムとセメント水和物との化学反応時の水素発生による気泡生成のように、シラスモルタルと発泡反応剤との発泡反応による空洞充填剤の空洞部分への充填硬化を利用するから、例えば地山の密度と同等の低強度の地盤について、数回に分けた充填材の充填作業でなく、1回の充填作業で入口閉鎖後、膨張・硬化を待って充填が完了するから、施工性がよく工期を大幅に短縮させることができる。同時に、充填作業時の現場での作業管理が極めて簡単で労力、人件コストを節約し得る。さらに、充填材の原材料は、工場で搬送トラックでの出荷前に使用可能なように準備できるから、充填作業の現場では、ポンプ車により圧送するだけでよく、同時に、圧送性、流動性に優れるので低吐出圧のポンプにより必要な量を大量に圧送充填でき、施工時間を短縮できる。さらに、ポンプの動力負荷が小さくてよい。加えて仮設プラント等の現場プラント構築が不要であり、設備コスト、メンテナンスコストが極めて低廉である。加えて、良好な圧送性により、比較的に長い距離の圧送を実現し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明は、過去に構築されて放置されたままとなっている防空壕や、下水配管用穴、マンホール等の空洞部の充填工事やトンネルの背面裏込め工事などであって、特にその空洞の周囲の地山の強度が例えば0.5N/mm〜3N/mm程度の低強度の地盤の空洞部分を充填する低強度空洞充填材及び低強度地盤の空洞充填工法である。このような地盤部分は、例えば九州の火山灰大地、すなわちシラス台地などがあり、このような地盤の圧縮強度は約1N/mm程度である。そして、戦時に掘削されて現在放置された状態となっている防空壕が現在も数多く残存し、嫌気性ガスが原因の中毒事故を誘発する原因となっている。このような低強度地盤部分の空洞の充填に際しては、その地盤強度と同程度の充填物を充填することが全体の地山構造の強度バランスからすると好ましく、経時の安定状態を維持しやすい。
【0009】
本発明の低強度空洞充填材は、上記のような低強度地盤の空洞に充填する充填材であり、セメントと、シラスと、混和材と、を水で混練してシラスを主原料としたシラスモルタルを形成し、該シラスモルタルに発泡反応剤分散液を混合して得られる。シラスは、火山の噴火による噴出物であり、ガラス質ケイ酸塩成分を多く含む。詳しくは、シラス土の成分組成は、ケイ酸70%、酸化アルミニウム14%、カルシウム3%、ナトリウム3%、磁鉄2%、カリウム2%、その他マグネシウム、チタン、マンガンなどで構成されている。シラスは、図2に示すように、重量比20%強のシルト分を含み、このシルト分は粒径74μm以下の微粒子成分であって、乾燥時には微粉末として存在する。したがって、これをセメントと水とで混練すると、良好な流動性と空洞等への充填性を有する上に、水の量を調整することにより1N/mm前後の強度を有するシラスモルタルを高精度に形成することができる。すなわち、シラスは相当の量の微粒子成分を含むことから、加える水の量に対応して硬化時の強度の微調整が可能である。シラスは、シラスモルタルにおける原料土あるいは骨材として機能する。特に、シラス質地盤を有する立地の作業現場では、低廉なコストで該シラス土を入手でき、従来の管理された山砂に比較してコスト面で有利である。
【0010】
セメントは、水と反応して硬化するシラスモルタルにおける安定材あるいは結合材であり、任意の種類のセメントを用いることができる。ポルトランドセメントとして、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等がある。また、混合セメントとしては、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等がある。セメント(例えばポルトランドセメント)は、酸化カルシウム(CaO),二酸化ケイ素(SiO),酸化アルミニウム(Al)及び酸化第二鉄(Fe)を主成分とし、水和反応により水酸化カルシウムCa(OH)を生成して強アルカリ性を呈する。
【0011】
混和剤は、例えば有機系増粘剤を含み、微粒子を比較的に多く含むシラス土に水を加える際に懸念される材料分離への抵抗性を有し、また、ポンプによる圧送特性を向上させる。したがって、空洞充填剤の粘度をそれほど高めることなく、材料分離も抑制し、さらに、骨材としてのシラスへの圧力吸水が抑制されるため、ポンプ圧送性を良好に保持させる。増粘剤としては、例えばセルロース系増粘剤がある。なお、混和剤として、例えばAE減水剤を加えてもよく、良好な空気連行性を介したワーカビリチーや耐久性改善、強度向上をより一層図れる。
【0012】
発泡反応剤分散液は、(1)式のように、セメントの水和生成物である水酸化カルシウムCa(OH)と反応して水素ガスを発生させる発泡剤を水中に分散させて存在させた液体であり、任意のタイミングでシラスモルタル中に混入させることにより数十分あるいは数時間内に発泡反応を生じ空洞充填材全体の体積を膨張させて空洞部分へ密実な充填を確実に行なう。
【式1】
【0013】
2Al+Ca(OH)+2HO→ CaAl+3H↑ ・・・(1)
【0014】
発泡反応剤分散液は、セメントと反応して発泡する発泡剤と、起泡剤と、を水に混合して分散させたものであり、発泡剤を水中に均等に存在させてシラスモルタルとの混合性、現場対応性を向上させたものである。発泡剤は、セメントとの反応を通じて気泡を発生させる混和剤であり、例えば金属アルミニウム粉が用いられる。なお、この他の発泡剤としては同様に水素発生反応を生じるものであれば、取扱性、コスト等を考慮して任意の組成物を用いてもよい。例えばアルカリ土類金属なども考えられる。アルミニウム粉は、粒径150μm以下程度の微粉末であり、このままでは各粒子と水との界面張力により混ざり合うことなくアルミニウム粉は水の表面に浮遊したままである。したがって、このままシラスモルタルに注入して混合しても、アルミニウム粉がモルタル中で局部的に偏在し、このため、材料全体について発泡反応が行なわれず、その結果発泡による膨張の効率が悪く、実用し得ない。起泡剤は、発泡剤と水との界面活性作用を通じて界面張力を低下させ、これによって、発泡剤を水中全体に分散して存在させることにより、液体としてシラスモルタルに注入して空洞充填剤全体に満遍なく発泡反応を生じさせる界面活性手段である。具体的には、発泡反応剤分散液は、アルミニウム微粉末と界面活性剤とを希釈水中で攪拌混合することにより得られる。界面活性剤としては、親水基が電離してイオン化するイオン性界面活性剤と、非イオン(ノニオン)界面活性剤がある。また、イオン性界面活性剤としてアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤がある。アニオン界面活性剤として、例えばせっけんや洗剤として用いられるカルボン酸塩、スルホン酸塩、その他、硫酸エステル塩等がある。配合例としては、例えば発泡剤としてのアルミニウム粉末が100g/m〜600g/m、起泡材としてのカルボン酸塩系界面活性剤が2〜100cc/m、希釈水が1000〜2000cc/m程度とするのがよい。
【0015】
シラスモルタルの配合は、容積比でセメントが7%〜14%、シラスが50%〜47%、水が43%〜39%であるとよい。この配合は、従来のセメント、砂、水のモルタル製造による配合と略同程度の配合量となっている。したがって、現場での配合作業時に砂に代えてシラスを用いるだけで、従来と同様の配分構成でシラスモルタルを製造でき、作業上の管理を簡単に行なえる。また、その際のシラスが原料土とされるから、シラス質地盤地域では、管理された山砂等に比較し、低コストで入手できる。同時に、シラスの微粒子を多く含むことからくるモルタル化したときの流動性、低強度性を保持して低強度地盤の空洞の充填に極めて有効に機能する。なお、発泡反応剤分散液、増粘剤、高性能AE減水剤、必要に応じて用いられる減水剤、遅延剤は、上記の配合分量のうちで無視できる程度の重量比であり、重量の上では上記に反映させていない。
【0016】
次に、上記の低強度空洞充填材を用いた低強度地盤の空洞部分の充填工法について、図1を参照して説明する。前記した容積比のセメント、シラス、増粘剤とを水で混練し、シラスモルタル10を作成する。この工程は例えば固定の工場プラントで行なわれる。空洞充填作業現場へは、アジテータを搭載する生コン車等の搬送車12によりシラスモルタル10が搬送される。この際、例えば工場からの出荷時に発泡反応剤分散液14をアジテータ内に注入し、攪拌させる。工場から空洞充填現場までが90分を越えるような場合には工場出荷時ではなく適宜、その中間位置で発泡反応剤分散液を注入するのが好ましい。発泡反応は通常投入後90分程度までの間と、その後、投入後例えば3時間程度の間との2段階で反応が起こるように進む。シラスの微粒子分が存在する部分ではそれ以外の部分に比較して発泡剤の反応が早く行なわれると推測される。発泡反応終了後には、結局シラスモルタルの容積比で5%〜20%程度の量の気泡が内部で発生し、膨張することにより空洞部分への充填硬化時に密実な状態で低強度の空洞充填体を生成させる。
【0017】
例えば1時間で充填作業現場に到着後、ポンプ車16に搭載したコンクリートポンプに供給しながら防空壕等の入口から充填空洞20に向けて充填することができる。したがって、コンクリートポンプは、材料と同程度の体積比の多量の空気を含むものではないから通常のコンクリートポンプを用いることができ、しかも、その圧送時の吐出圧も通常の定格のポンプでよく、軽易な負荷で、しかも、動力コストも安価に維持しうる。なお、300メートル以上の圧送ホースを接続した場合でも160kgf/cm以下の吐出圧でよいから、通常のコンクリート圧送に使用されるポンプでもある程度の気泡を含む低強度空洞充填材モルタルを安定的に圧送することができる。なお、充填材の硬化強度は地山強度とほぼ同程度から10%増程度(1〜1.1倍)の強度とするのが、地山構造全体とのバランスの上から好ましく、この場合、充填材の配合比中のセメント量を多くすると強度が高くなりすぎる場合も生じうる。したがって、セメント、シラス、水の量を適宜選択し、設計強度に近い強度とする。一方、発泡空気量も10%〜20%増程度であるのがよい。発泡量が多くなる配合を選択する場合には、充填空間との関係で100%未満の充填量で止めておいて、発泡硬化により適度の充填状態を確保するようにするとよい。
【0018】
上記のように、工場出荷時に混練製造したシラスモルタルを積載したアジテータトラック出荷時に、発泡反応剤分散液をアジテータ内に投入してシラスモルタルと攪拌混合しつつ作業現場に搬送させ、発泡反応の始まりあるいはその最中にポンプで充填空洞に充填するようにしているから、当日作業現場へは充填に必要な量の空洞充填材を搭載したアジテータトラックとポンプ車のみが行って作業を行なえばよく、工事の準備だけで数日を要する仮設プラントをそのつど工事現場付近に設ける必要がない。
【0019】
図3は、本願の工法と、従来の起泡混合軽量土工法とを製造能力、ポンプ圧送能力、施工能力の点で比較した表であり、図から分かるように、気泡注入までを含めたモルタルの製造能力で、24倍〜18倍、ポンプ圧送能力で5倍〜6.5倍強、1日当り施工能力で4.5倍強〜2倍弱程度の比で本願工法が従来工法に比較して優れていることが分る。さらに、表に示していないが、コスト面においては、プラント組み立て、解体費、プラント運搬費、機械器具費等の固定費を別途必要とし、その維持管理のための人件費、メンテナンス費等を含めると工事費全体では数十倍あるいはそれ以上のコスト差が生じ得る。
【実施例】
【0020】
以下、図4により本発明の実施例についてタイプA〜タイプEを例に説明する。
[圧送試験]
(実施例1/タイプA)セメント275kg、シラス818kg、水344kg(容積比7%〜4%:50%〜47%:43%〜39%)、増粘剤0.2kgを計量、混練し、これを生コン車に積み込み、搬送前にアルミニウム粉0.4kg、希釈水1.5kg、スルホン酸塩系界面活性剤0.016kgで予め調製した発泡反応剤分散液を生コン車内に投入し、混合させつつ現場へ搬送した。生コン車に発泡反応剤分散液を投入後56分後の空気量試験値が5.8%、圧送距離300m、その際のポンプ吐出圧が120kgf/cmであった。打設前に高性能AE減水剤2.1kgを投入して空洞充填を行った。別途行った発泡試験(金属製円筒内に上端開口すりきりまで上記配合のシラスモルタルを投入し、20分ごろから上方に持ち上がるように膨張し90分頃で全体の体積の20%程度を増加させて膨張し、そのまま12時間程度後に硬化した)の結果から、空洞充填作業において同様の効果を得ると推定される。
【0021】
(実施例2/タイプB)セメント235kg、シラス841kg、水346kg(容積比7%〜4%:50%〜47%:43%〜39%)、増粘剤0.2kgを計量、混練し、これを生コン車に積み込み、搬送前にアルミニウム粉0.4kg、希釈水1.5kg、スルホン酸塩系界面活性剤0.016kgで予め調製した発泡反応剤分散液を生コン車内に投入し、混合させつつ現場へ搬送した。生コン車に発泡反応剤分散液を投入後60分後の空気量試験値が9.2%、圧送距離300m、その際のポンプ吐出圧が130kgf/cmであった。打設前に高性能AE減水剤2.1kgを投入して空洞充填を行った。
【0022】
(実施例3/タイプC)セメント235kg、シラス959kg、水387kg(容積比7%〜4%:50%〜47%:43%〜39%)、増粘剤0.2kgを計量、混練し、これを生コン車に積み込み、搬送前にアルミニウム粉0.275kg、希釈水1.5kg、スルホン酸塩系界面活性剤0.011kgで予め調製した発泡反応剤分散液を生コン車内に投入し、混合させつつ現場へ搬送した。生コン車に発泡反応剤分散液を投入後55分後の空気量試験値が4.2%、圧送距離300m、その際のポンプ吐出圧が130kgf/cmであった。打設前に高性能AE減水剤2.1kgを投入して空洞充填を行った。
【0023】
(実施例4/タイプD)セメント200kg、シラス859kg、水349kg(容積比7%〜4%:50%〜47%:43%〜39%)、増粘剤0.2kgを軽量、混練し、これを生コン車に積み込み、搬送前にアルミニウム粉0.4kg、希釈水1.5kg、スルホン酸塩系界面活性剤0.016kgで予め調製した発泡反応剤分散液を生コン車内に投入し、混合させつつ現場へ搬送した。生コン車に発泡反応剤分散液を投入後56分後の空気量試験値が3.8%、圧送距離300m、その際のポンプ吐出圧が140kgf/cmであった。打設前に高性能AE減水剤2.1kgを投入して空洞充填を行った。
【0024】
(実施例5/タイプE)セメント200kg、シラス975kg、水391kg(容積比7%〜4%:50%〜47%:43%〜39%)、増粘剤0.3kgを軽量、混練し、これを生コン車に積み込み、搬送前にアルミニウム粉0.275kg、希釈水1.5kg、スルホン酸塩系界面活性剤0.011kgで予め調製した発泡反応剤分散液を生コン車内に投入し、混合させつつ現場へ搬送した。生コン車に発泡反応剤分散液を投入後56分後の空気量試験値が2.6%、圧送距離300m、その際のポンプ吐出圧が160kgf/cmであった。打設前に高性能AE減水剤2.1kgを投入して空洞充填を行った。
【0025】
上記の例では、微粒子成分を多く含むシラスを用い、さらにこれに発泡反応させる状態でポンプ吐出圧が120kgf/cm〜160kgf/cmであるが、もっと圧送条件としては有利な砂―セメント比が1:1のモルタルについて圧送距離を300m確保するためには最低その吐出圧が270kgf/cmであることを考慮すると本願の充填材の流動性を確保した良好な圧送性が分かる。
【0026】
なお、タイプA、タイプCについては、4週強度が3N/mmを超えるが、実験上のばらつきによる誤差によるものと思われる。また、空気量はタイプD,タイプEについてはタイプA、B、Cに比較して発生量が少なくなっているが、反応速度によるものであり、界面活性剤量を加減することにより反応の時間の遅速調整は可能であるが、いずれにしても、硬化後の空気量自体は充填時の空洞充填材量に対して5%〜20%(できあがり量105%〜120%)となる。
【0027】
[発泡試験]
(実施例6)アルミニウム粉60mg、水100ml、スルホン酸塩系界面活性剤1cc、消石灰1g、を温度20±1度で撹拌、混合した。5分、10分、30分のそれぞれの経過時の発泡量(ml)を測定した。また、アルミニウム粉の149μm以下、88μm以下、44μm以下のそれぞれの粒度分布(%)をレーザー回折式粒度分布測定法により測定した。
【0028】
以上説明した本発明の低強度空洞充填材及び低強度地盤の空洞充填工法は、上記した実施例のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の低強度空洞充填材及び低強度地盤の空洞充填工法は、防空壕や、下水配管用穴、マンホール等の空洞部の充填工事やトンネルの背面裏込め工事などに広く適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る低強度地盤の空洞充填工法の工程フローチャート図である。
【図2】シラスの基本特性および成分構成を示す図である。
【図3】本発明の低強度地盤の空洞充填工法と従来工法との各能力の比較を示す図である。
【図4】本発明の実施例を示す図である。
【図5】本発明の他の特性を示す実施例図である。
【図6】従来の工法によるフローチャート図である。
【符号の説明】
【0031】
10 シラスモルタル
12 搬送車
14 発泡反応剤分散液
16 ポンプ(車)
20 充填空洞


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、シラスと、混和材と、を水で混練してシラスモルタルを形成し、該シラスモルタルに発泡反応剤分散液を混合した低強度空洞充填材。
【請求項2】
発泡反応剤分散液は、セメントと反応して発泡する発泡剤と、起泡剤と、を水に混合して分散させてなる請求項1記載の低強度空洞充填材。
【請求項3】
シラスモルタルの成分が容積比でセメント7%〜14%、シラス50%〜47%、水43%〜39%である請求項1又は2記載の低強度空洞充填材。
【請求項4】
発泡剤がアルミニウム粉であり、起泡剤が界面活性剤からなる請求項2又は3のいずれかに記載の低強度空洞充填材。
【請求項5】
地山強度0.5N/mm〜3N/mm程度の低強度の地盤の空洞を充填する空洞充填方法であり、
請求項1のシラスモルタルに、低強度地盤へのポンプによる圧送直前又は圧送数時間前に請求項2または4の発泡反応剤分散液を混入して低強度空洞充填材を形成し、該低強度空洞充填材を空洞に充填した後の発泡反応により該空洞を密実に充填させることを特徴とする低強度地盤の空洞充填工法。
【請求項6】
少なくとも300メートル以上の圧送ホースを接続したポンプで160kgf/cm以下の吐出圧により低強度空洞充填材を圧送させることを特徴とする請求項5記載の低強度地盤の空洞充填工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−51232(P2007−51232A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238220(P2005−238220)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(503039842)株式会社ガイアテック (1)
【Fターム(参考)】