説明

低温硬化粉体コーティング組成物

本発明は、カルボン酸基を含有する第1のポリエステルと;≦+45℃のガラス転移温度を有する第2のポリエステル及び/又は結晶性ポリカルボン酸のうちの少なくとも1つと;グルシジル基を含有するアクリルコポリマーと;カルボン酸基と反応可能な官能基を有するさらなる化合物及び/又は樹脂と;熱硬化用硬化触媒との混合物を含む、低温硬化のための粉体コーティング組成物に関する。これらの熱硬化性粉体コーティングは、木、繊維板などの熱に弱い基材、及び従来のコーティングを硬化させるのに必要な過剰な熱/時間の条件に耐えることができない他の材料のために設計されている。本発明の粉体コーティングは、150℃未満で硬化させると、顕著な硬度及び耐候性と共に高光沢性で滑らかな表面を呈する仕上がりをもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
乾燥した、微粉状、自由流動性の、室温で固体材料である粉末コーティングが、近年液体コーティングを上回る人気を得ている。
【背景技術】
【0002】
その多くの利点にもかかわらず、現在熱硬化性粉体コーティングは、一般に少なくとも150℃の温度で硬化される。この推奨温度未満では、コーティングの外観、並びに物理的及び化学的特性が劣っている。
この制約の結果として、粉体コーティングは一般に中密度繊維板(MDF)及びプラスチックなどの熱に弱い(heat−sensitive:熱に過敏な)基材のコーティングには使用されない。その上、従来の粉体コーティングでは、完全に硬化したコーティングを得るために極めて長い硬化時間、エネルギー的観点から完全に不利な条件を必要とする重金属片がある。
【0003】
近年、低温で硬化する粉体コーティングを見いだすのに多大な努力がなされている。これまで開発された粉体コーティング組成物は、従来の硬化スケジュールに向けて開発されているか、又は低い硬化温度では、良好な表面堅さに加えて滑らかな外観などの性能の組合せが求められる場合に欠点又は限界を呈する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、
− カルボン酸基を含有する少なくとも1つの第1のポリエステルAと;
− ≦+45℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つの第2のポリエステルB1、及び/又は
少なくとも1つの結晶性ポリカルボン酸B2
からなる群から選択される少なくとも1つの成分Bと;
− グルシジル基を含有する少なくとも1つのアクリルコポリマーCと;
− カルボン酸基と反応可能な官能基を有する、化合物Cとは異なる少なくとも1つの化合物及び/又は樹脂Dと;
− 少なくとも1つの熱硬化用硬化触媒Eと
の混合物を含む、低温硬化のための粉体コーティング組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
「低温硬化」(“low temperature cure”)というのは、100℃〜150℃の温度での硬化を示すことを意味する。それらの温度での塗布及び硬化において、本発明のコーティング組成物は非常に滑らかで高光沢の仕上がりを得ることができ、良好な硬度、耐溶剤性、及び耐候性をもたらす。
【0006】
カルボン酸基を含有する本発明の第1のポリエステルAは、一般に、酸価が少なくとも15、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも22mgKOH/gである。第1のポリエステルの酸価は、一般に最大で70、好ましくは最大で50、より好ましくは最大で35mgKOH/gである。この第1のポリエステルAは、ヒドロキシル価が15mgKOH/g未満であるのが有利である。
【0007】
第1のポリエステルAの酸成分は一般に、50〜100モルパーセントのテレフタル酸及び/又はイソフタル酸、並びに、1つ又は複数の脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族の二塩基酸、例えばフマル酸、マレイン酸、無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼアリン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、トリメリト酸、ピロメリト酸、又は対応する無水物などから選択される、0〜50モルパーセントの別の二塩基酸成分からなる。
【0008】
第1のポリエステルAのグリコール成分は一般に、40〜100モルパーセントのネオペンチルグリコール、並びに、1つ又は複数の脂肪族及び/又は脂環式グリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバレート、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールなどから選択される、0〜60モルパーセントの別のグリコール成分からなる。ジエチレングリコール及び/又は1,3−プロパンジオールも、適切である。
【0009】
本発明によるカルボキシル官能性の第1のポリエステルAは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される数平均分子量(Mn)が少なくとも1100、好ましくは少なくとも1600であるのが有利である。GPCにより測定する場合(ポリスチレンスタンダード、及び溶離液としてテトラヒドロフランを使用、40℃)、この第1のポリエステルAのMnは好ましくは最大で15000、より具体的には最大で7500である。
【0010】
本発明によるカルボキシル官能性の第1のポリエステルAは、ASTM D3418に従い示差走査熱量測定法(DSC)により毎分20℃の熱勾配で測定されるガラス転移温度が、+45〜+100℃であるのが有利である。好ましくはこの第1のポリエステルAのガラス転移温度は+45℃を上回り、より好ましくは+50℃を上回る。
【0011】
本発明によるカルボキシル官能性の第1のポリエステルAは、ASTM D4287−88に従い200℃で測定されるブルックフィールドコーン/プレート粘度(Brookfield cone and plate viscosity)が、5〜15000mPa.sの範囲であるのが有利である。
【0012】
本発明によるカルボキシル官能性の第1のポリエステルAは、アモルファスポリエステルであるのが有利である。
【0013】
好ましくは、本発明によるカルボキシル官能性の第1のポリエステルAは、バインダーの総重量を基準として40〜97重量%の量で存在する。好ましくは、この量は少なくとも60重量%、好ましくは最大で85重量%である。
【0014】
本発明の(任意選択の)第2のポリエステルB1は、一般に酸価が0〜50mgKOH/gである。第2のポリエステルB1のヒドロキシル価は、一般に0〜100mgKOH/gである。
【0015】
好ましくは、第2のポリエステルB1の酸価は少なくとも5、好ましくは最大で30mgKOH/gである。
【0016】
好ましくは、第2のポリエステルB1のヒドロキシル価は少なくとも5、より具体的には少なくとも10mgKOH/gである。好ましくは、この第2のポリエステルB1のヒドロキシル価は最大で50、より具体的には最大で35mgKOH/gである。
【0017】
本発明による(任意選択の)第2のポリエステルB1の酸成分は、一般にジカルボン酸から成り、場合によりモノカルボン酸と組み合わされる。ジカルボン酸及びモノカルボン酸は、以下のうちの1つ又は複数から選択してもよい:テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカン二酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,13−トリデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,15−ペンタデカン二酸、1,16−ヘキサデカン二酸、フマル酸、無水マレイン酸、安息香酸、tert.ブチル安息香酸、ヘキサヒドロ安息香酸又は飽和脂肪族モノカルボン酸。
【0018】
本発明による(任意選択の)第2のポリエステルB1のアルコール成分は、一般にジオールから成り、場合によりモノアルコールと組み合わされる。ジオール及びモノアルコールは、以下のうちの1つ又は複数から選択してもよい:プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパン−ジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバレート、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタノール又は4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン、オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソデシルアルコール、シクロヘキサノール、ペンタノール、ヘキサノール又はベンジルアルコール。別の適切なジオールの例は、ジエチレングリコールである。
【0019】
本発明の(任意選択の)第2のポリエステルB1は、アモルファス又は半結晶性ポリエステルであってもよい。
【0020】
本発明の(任意選択の)第2のポリエステルB1は一般に、GPCにより測定した場合の数平均分子量(Mn)が少なくとも700、より好ましくは少なくとも1400である。好ましくは、この第2のポリエステルB1のMnは、GPCにより測定した場合に最大で17000、より具体的には最大で11500である。
【0021】
「第2の」というのは、ポリエステルB1が「第1の」ポリエステルAとは異なることを意味する。
【0022】
本発明の(任意選択の)第2のポリエステルB1は、第1のポリエステルAのTgよりも低いガラス転移温度(Tg)を有するのが有利である。一般に、第2のポリエステルB1のTgは、DSCにより測定した場合に−100〜+45℃の範囲である。一般に、このTgは+45℃未満である。この第2のポリエステルB1のTgは+40℃未満であってもよい。好ましくは、この第2のポリエステルB1のTgは少なくとも−50℃、より具体的には少なくとも−25℃である。
【0023】
本発明の(任意選択の)第2のポリエステルB1は一般に、ブルックフィールド(コーン/プレート)粘度が100℃で測定される10mPa.sから200℃で測定される10000mPa.sである。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、(任意選択の)第2のポリエステルB1は、カルボン酸基を含有するポリエステルである。場合により、このカルボン酸基を含有する第2のポリエステルB1を、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、モノカルボン酸グリシジルエステル(例えばCardura E)、及び/又はフェニルグリシジルエーテルなどのモノエポキシドとさらに反応させる。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、(任意選択の)第2のポリエステルB1は、ヒドロキシル基を含有するポリエステルである。場合により、このヒドロキシル基を含有するポリエステルを、n−ブチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、及び/又はフェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートとさらに反応させる。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明の(任意選択の)第2のポリエステルB1は、場合によりカルボン酸基を含む非縮合ポリエステルである。好ましくは、本発明の(任意選択の)第2のポリエステルB1は官能基(functionality:官能性)を有し、より具体的には2未満、好ましくは1.5未満の酸官能基を有する。一般に、官能基(より具体的には酸官能基)は、少なくとも0.3、より具体的には少なくとも0.5である。最も好ましくは酸官能基は1である。
【0027】
本発明のポリエステルA及びB1は、当技術分野でよく知られている従来のエステル化法を用いて調製できる。これらのポリエステルは、1つ又は複数の反応ステップからなる手順に従って調製できる。
【0028】
これらのポリエステルの調製において、攪拌器、不活性ガス(窒素)注入口、熱電対、水冷コンデンサに接続された蒸留カラム、水分離器、及び真空接続チューブを備えた従来の反応器を、典型的に使用する。
【0029】
ポリエステルの調製に使用されるエステル化条件は、従来の、すなわち標準のエステル化触媒、例えばジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、n−ブチルスズトリオクトエート、硫酸、又はスルホン酸などであり、典型的には反応物の0.05〜1.50重量%の量で使用され、場合により、色安定剤、例えばIrganox 1010(Ciba)などのフェノール系酸化防止剤、又はトリブチルホスファイトなどのホスホナイト及びホスファイト系安定剤を、反応物の0〜1重量%の量で加えることができる。
【0030】
ポリエステル化は一般に、130℃から約190〜250℃まで徐々に温度を上昇させ、最初は常圧で、次いで必要ならば各プロセス段階の最後は減圧下で、所望のヒドロキシル価及び/又は酸価を有するポリエステルが得られるまでこれらの操作条件を維持しながら行われる。エステル化の度合いは、典型的には反応の過程で生成する水の量、及び得られるポリエステルの特性、例えばヒドロキシル価、酸価、及び粘度を測定することによってモニタリングされる。
【0031】
こうして得られる(任意選択の)第2のポリエステルB1を、ポリエステルがカルボキシル官能性であるか又はヒドロキシル官能性であるかに応じて、モノエポキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、モノカルボン酸グリシジルエステル(例えばCardura E)、及び/又はフェニルグリシジルエーテルなどと、又はn−ブチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、及び/又はフェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートと、さらに反応させることができる。
【0032】
Rheocin R(Ashland)、AC 540A(Honeywell)、Disparlon PL−525(Kusumoto)などのレオロジー調整剤、Resiflow PV5(Worlee)、Modaflow(Cytec Surface Specialities)、Acronal 4F(BASF)などの流動性調整剤、Tinuvin 900(Ciba)などの紫外線吸収剤、Tinuvin 144(Ciba)に代表されるヒンダードアミン系光安定剤、Tinuvin 312及び1130(Ciba)などの他の安定化剤、Irganox 1010(Ciba)などの酸化防止剤、ホスホナイト又はホスファイト系に由来の安定化剤を、合成中又は合成後、より具体的にはポリエステルがまだ溶融段階にある場合に、本発明の1つ又は複数のポリエステル(A及び/又はB1)に加えることができる。
【0033】
結晶性「ポリカルボン酸」B2というのは、複数のカルボン酸基を有する直鎖又は分岐状の脂肪族鎖を表すことを意味する。好ましくは化合物は直鎖であり、好ましくは化合物は2つのカルボン酸基を有する。好ましくは、この化合物B2は、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカン二酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、トリアデカン二酸(1,13−triadecanedioic acid)、1,14−テトラデカン二酸、1,15−ペンタデカン二酸、及び/又は対応する無水物のうち1つ又は複数から選択される。より好ましくは、この化合物B2は、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、及び/又は対応する無水物から選択される。1,12−ドデカン二酸が、特に好適である。好ましくは、この化合物B2は酸価が410〜850mgKOH/gである。好ましくは、この化合物B2の酸価は、少なくとも450、好ましくは最大で600mgKOH/gである。
【0034】
好ましくは、化合物B1及び/又はB2の総量は、バインダーの総重量を基準として0.5〜20重量%である。好ましくは、化合物B1及び/又はB2の総量は、バインダーの総重量を基準として少なくとも2%、好ましくは最大で15重量%である。
【0035】
好ましくは、本発明の化合物Bは、少なくとも1つの本発明の第2のポリエステルB1を、場合により本発明の結晶性ポリカルボン酸B2との組合せで含む。本発明の成分Bは、B1+B2の総量に対して2.5〜100重量%の第2のポリエステルB1;及びB1+B2の総量に対して0〜50重量%の結晶性ポリカルボン酸B2を含む(又はそれらからなる)のが有利である。
【0036】
好ましくは、この成分Bは、B1+B2の総量に対して少なくとも10重量%の第2のポリエステルB1を含む(又はそれからなる)。好ましくは、この成分Bは、B1+B2の総量に対して少なくとも5重量%、好ましくは最大で35重量%の結晶性ポリカルボン酸B2を含む(又はそれからなる)。好ましくは、本発明の化合物B1は、カルボン酸基を有し、ガラス転移温度が+45℃未満である。
【0037】
好ましくは、本発明の化合物B2は、酸価が410〜850mgKOH/g、より好ましくは450〜600mgKOH/gである。
【0038】
本発明のグリシジル基を含有するアクリルコポリマーCは、一般に、エポキシ1当量あたり100〜1500グラムのポリマーのエポキシ当量重量(epoxy equivalent weight:EEW)を有する。好ましくは、この化合物CのEEWは、エポキシ1当量あたり少なくとも200グラムのポリマーである。好ましくは、この化合物のEEWは、エポキシ1当量あたり最大で1000、より具体的には最大で600グラムのポリマーである。
【0039】
本発明のアクリルコポリマーに使用されるグルシジル基を含有するモノマーは、一般に1〜95の範囲のモルパーセントで使用され、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールエーテル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエーテル(メタ)アクリレート、1,3−(2−エチル−2−ブチル)−プロパンジオールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート及びアクリル酸グリシジルエーテルから選択されるのが有利である。
【0040】
エポキシ基を含有するモノマーと共重合可能な他のモノマーは、一般に5〜99の範囲のモルパーセントで使用され、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert.ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、メタクリル酸のエステル類、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルクロリド、エチレン、プロピレン、C4−20オレフィン及びα−オレフィンから選択されるのが有利である。それらは単独で、又は2つの若しくはそれを超える組合せで使用できる。
【0041】
本発明のグリシジル基を含有するアクリルコポリマーCは、一般に、GPCにより測定した場合の数平均分子量が2000〜8000の範囲である。好ましくは、化合物CのMnは、少なくとも2500、より好ましくは少なくとも3000である。好ましくは、化合物CのMnは、最大で6000、より好ましくは最大で5000である。
【0042】
本発明のグリシジル基を含有するアクリルコポリマーは、一般にDSCにより測定されるガラス転移温度が35〜120℃の範囲である。好ましくは、Tgは少なくとも40℃であり、好ましくは最大で100℃である。
【0043】
本発明のグリシジル基を含有するアクリルコポリマーCは、一般にブルックフィールド(コーン/プレート)粘度が150℃での1,000mPa.sから200℃での10,000mPa.sの範囲である。好ましくは、この化合物Cのブルックフィールド(コーン/プレート)粘度は、175℃での1,000mPa.sから200℃での5,000mPa.sの範囲である。
【0044】
本発明のグリシジル基を含有するアクリルコポリマーCは、塊状、エマルション、又は有機溶媒の溶液での従来の重合法によって調製できる。溶媒の性質は、それが不活性でありモノマー及び合成されるコポリマーを容易に溶解させるならば、ほとんど重要ではない。適切な溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレンなどが挙げられる。モノマーは典型的には、モノマーの0.1〜4.0重量%に相当する量のフリーラジカル重合開始剤(ベンゾイルペルオキシド、ジブチルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリルなど)の存在下で共重合される。
【0045】
分子量及びその分布の良好な制御を実現するために、連鎖移動剤、好ましくはメルカプタン系のもの、例えばn−ドデシルメルカプタン、t−ドデカンチオール、イソオクチルメルカプタンなど、又は炭素ハロゲン化物系のもの、例えば四臭化炭素、臭化トリクロロメタンなどを、反応の過程で加えてもよい。連鎖移動剤は、共重合で使用されるモノマーの10重量%までの量で使用するのが有利である。
【0046】
攪拌器、コンデンサ、不活性ガス(例えば窒素)注入口及び出口、及び定量ポンプ供給システムを備えた円筒状の二重壁反応器を、本発明のグリシジル基を含有するアクリルコポリマーを調製するのに一般的に使用する。重合は、一般に従来の条件下で行われる。したがって、重合を溶液中で行う場合、例えば有機溶媒を最初に反応器中に導入し、不活性ガス雰囲気(窒素、二酸化炭素など)下で環流温度まで加熱し、次いで、必要なモノマー、フリーラジカル重合開始剤、及び必要な場合は連鎖移動剤の均一な混合物を、一般に数時間かけて徐々に溶媒へ加える。次いで典型的には、反応混合物を撹拌しながら一定時間、指示温度で維持する。次いで典型的には、得られるコポリマーから溶媒を真空で除去する。
【0047】
好ましくは、本発明のグリシジル基を含有するアクリルコポリマーCは、バインダーの総重量を基準として1重量%〜40重量%の量で存在する。好ましくは、この化合物Cは、バインダーの総重量を基準として少なくとも2重量%、好ましくは最大で25重量%の量で存在する。
【0048】
カルボン酸基と反応可能な官能基を有するさらなる化合物及び/又は樹脂Dは、化合物Cとは異なる、より具体的にはグリシジル基を含有するアクリルコポリマーとは異なるのが有利である。好ましくは、化合物Dは、化合物Cとは異なるグリシジル基を含有する樹脂及び/又は化合物である。より具体的には、化合物Dは、グリシジル基を含有するアクリルコポリマー以外のグリシジル基を含有する樹脂及び/又は化合物である。
【0049】
好ましくは、本発明の成分Dは、ビスフェノールA系エポキシ樹脂などのグリシジル基を含有するポリフェノキシ樹脂から選択される。
【0050】
ビスフェノールA系エポキシ樹脂はビスフェノールA及びエピクロロヒドリンの反応により調製され、エピクロロヒドリンの過剰分がエポキシ樹脂の数平均分子量を決定する(さらなる情報については、参照により本明細書に組み込まれる、W.G.Potter:Epoxide Resins、Springer−Verlag、New York 1970年、Y.Tanaka、A.Okada、I.Tomizuka(CA)5月、Y.Tanaka(編):Epoxy Resins Chemistry and Technology、Marcel Dekker、New York 1973年、第2章、頁9〜134を参照のこと)。
【0051】
市販のエポキシ樹脂、例えばHexion社のEpikote 1055、Huntsman社のAraldite GT7004又はAraldite ECN9699、Dow社のD.E.R.664、Hexion社のEpon 2002などは、グリシジル基を含有するポリフェノキシ化合物の典型例である。
【0052】
室温で固体である他の好ましい成分Dは、例えばグリシジルエステルを含む(又はそれからなる)化合物、より具体的にはジグリシジルテレフタレート及びトリグリシジルトリメリテートの混合物、例えばHuntsman社よりAraldite PT910及びAraldite PT912の商品名で市販されているエポキシ樹脂などである。
【0053】
本発明の化合物CがC+Dの総量の5〜75重量%に相当し、本発明の成分DがC+Dの総量の25〜95重量%に相当するのが有利である。
【0054】
好ましくは、本発明の化合物及び/又は樹脂Dは、バインダーの総重量を基準として1重量%〜30重量%の量で存在する。好ましくは、この化合物及び/又は樹脂Dは、バインダーの総重量を基準として少なくとも2重量%、最大で25重量%の量で存在する。
【0055】
本発明のバインダーに添加される硬化触媒Eは、硬化中の熱硬化性粉末組成物の架橋反応を促進するために、好ましくは、アミン(例えば2−フェニルイミダゾリン)、ホスフィン(例えばトリフェニルホスフィン)、アンモニウム塩(例えばテトラブチルアンモニウムブロミド又はテトラプロピルアンモニウムクロリド)、ホスホニウム塩(例えばエチルトリフェニルホスホニウムブロミド又はテトラプロピルホスホニウムクロリド)、及びブロックされた触媒、例えば酸でブロックされたアミン又はホスフィン触媒、又は例えばEP1348742に記載されるようなカプセル化触媒から選択される。
【0056】
好ましくは、本発明の硬化触媒Eは、バインダーの総量を基準として0.1重量%〜5重量%の量で存在する。好ましくは、本発明の硬化触媒Eは、バインダーの総重量を基準として少なくとも0.3重量%、好ましくは最大で2重量%の量で存在する。
【0057】
本発明の特定の実施形態は、
・40〜97重量%、好ましくは60〜85重量%の、好ましくはTgが少なくとも45℃である、上記で定義されるカルボン酸基を含有する第1のポリエステルAと;
・0.5〜20重量%、好ましくは2〜15重量%の、上記で定義される成分Bと;
・1〜40重量%、好ましくは2〜25重量%の、上記で定義されるグリシジル基を含有するアクリルコポリマーCと;
・1〜30重量%、好ましくは2〜25重量%の、上記で定義されるポリエステルのカルボン酸基と反応可能な官能基を有する樹脂及び/又は化合物Dと;
・0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜2重量%の、熱硬化用硬化触媒Eと
のブレンド(混合物)をバインダーとして含む、熱硬化性粉体コーティング組成物に関する。
【0058】
上記において、重量パーセントはバインダーの総重量を基準とする。
【0059】
バインダーを構成する上記の成分に加えて、本発明の粉末組成物は、Rheocin R(Ashland)、AC 540A(Honeywell)、Disparlon PL−525(Kusumoto)などのレオロジー調整剤、Resiflow PV5(Worlee)、Modaflow(Cytec Surface Specialities)、Acronal 4F(BASF)などの流動性調整剤、及びbenzoin (BASF)などの脱ガス剤も含んでいてもよい。Additol P 950(Cytec Surface Specialities)などの耐摩擦添加剤、Tinuvin 900(Ciba)などの紫外線吸収剤、Tinuvin 144(Ciba)に代表されるヒンダードアミン系光安定剤、Tinuvin 312及び1130(Ciba)などの他の安定化剤、Irganox 1010(Ciba)などの酸化防止剤、並びにホスホナイト系又はホスファイト系に由来の安定化剤を、配合物に加えることができる。
【0060】
色素系並びに透明ラッカーの両方を、調製できる。
【0061】
様々な染料及び顔料を、本発明の組成物において利用できる。有用な顔料及び染料の例は、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛などの金属酸化物、金属水酸化物、金属粉末、硫化物、スルフェート、カーボネート、ケイ酸アンモニウムなどのケイ酸塩、カーボンブラック、タルク、カオリン、バライト、紺青、リードブルー(leadblue)、有機レッド(organic red)、有機マルーン(organic maroon)などである。
【0062】
本発明による組成物の成分は、ミキサー又はブレンダー(例えばドラムミキサー)において、乾式混合により混合してもよい。次いで予備混合物は一般に、約70〜90℃の温度でBUSS−Ko−Kneterなどの1軸スクリュー押出機、又はPRISM若しくはAPVなどの2軸スクリュー押出機にて均質化される。押出物は、冷却されると、次に典型的には粒径が10〜150μmの範囲である粉末へと粉砕される。静電CORONAガン又はTRIBOガンなどのパウダーガン(powder gun)を使用することによって、粉末化した組成物を基材上に堆積させてもよい。一方で、流動床法などの周知の粉末堆積法を使用できる。
【0063】
堆積後、粉末を100〜150℃の温度に加熱するのが有利であり、そのことが粒子を流動させ、互いに融合して滑らかで均一で連続的なコーティングを基材表面上に形成させる。
【0064】
本発明の粉体コーティング組成物は、有利には、ASTM D523に従った相対的な60°光沢値が少なくとも55%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも85%であるコーティングを得ることを可能にする。好ましくは相対的な60°光沢値は、色素系において最大で100である。
【0065】
本発明の別の態様は、本発明の粉体コーティング組成物で前記基材の少なくとも1つの表面をコーティングするステップと;その基材上のコーティングを熱硬化させて、基材上にコーティング組成物の接着層を形成させるように、コーティングした基材を加熱するステップとを含む、基材をコーティングする方法に関する。
【0066】
本発明の粉体コーティング組成物は、100〜150℃の温度で一般に5〜50分の間に硬化させることができる。典型的な硬化条件は、140℃で18分、130℃で30分、及び120℃で35分の総硬化時間である。
【0067】
本発明の粉体コーティング組成物は、木、繊維板などの熱に弱い基材、具体的には中密度繊維板(MDF)の組立済み部材及びプラスチックのコーティングに適している。さらに、それらは重金属片をコーティングするのに適しており、それらを用いない場合には、完全に硬化したコーティングを得るために極めて長い硬化時間を要することになる。本発明は、本発明の方法によって得られる(又は入手可能な)物品も提供する。
【0068】
本発明のさらに別の態様は、本発明の組成物で部分的又は全体的にコーティングされた物品に関する。
【0069】
以下の実施例は、本発明をさらに良く理解するために提示され、それらに限定はされない。
【0070】
例1(第1のポリエステルA)
370.66部のネオペンチルグリコール及び41.18部のエチレングリコールを、撹拌器、水冷コンデンサに接続された蒸留カラム、窒素の導入口、及び温度調節器へ接続された温度計を備えた従来の4つ口丸底フラスコに入れる。フラスコの内容物を、窒素下で撹拌しながらおよそ140℃の温度に加熱し、この時点で563.62部のテレフタル酸、62.62部のアジピン酸、及び2.25部のn−ブチルすずトリオクトエートを加える。約95%の理論量の水が蒸留され、透明のヒドロキシル官能化プレポリマーが得られるまで、240℃で大気圧下にて反応を続ける。
【0071】
200℃の状態にある第1のステップのプレポリマーに、110.94部のイソフタル酸を加える。その後すぐに、混合物を徐々に230℃に加熱する。230℃で2時間後、反応混合物が透明になれば、0.90部のトリブチルホスファイトを加え、50mmHgの真空を徐々に引く。230℃及び50mmHgで3時間後、以下の特性が得られる:
AN 33mgKOH/g
ブルックフィールド200℃(コーン/プレート) 2300mPa.s
Tg(DSC) 53℃
【0072】
例2〜例4
以下の表において、モノマーの組成並びに最終的な樹脂特性を、例2〜例4のポリエステルについて報告する。
【表1】

【0073】
例2〜4において、0.25重量%のn−ブチルすずトリオクトエートを用いて縮合が触媒され、0.1重量%のトリブチルホスファイトを真空ステップの前に加える。
【0074】
例2〜4において、テレフタル酸とネオペンチルグリコール及びエチレングリコールの混合物との縮合により得られるヒドロキシル官能性の第1ステップのプレポリマーに、第2ステップでアジピン酸を加える。
【0075】
例4において、2ステップのプロセスで得られるカルボキシル官能性のポリエステルに、Cardura Eを加える。
【0076】
Cardura Eと第2ステップのカルボキシル官能性ポリエステルのカルボン酸基との反応は、約180℃で0.5重量%のエチルトリフェニルホスホニウムブロミドの存在下で行われる。
【0077】
例1及び2のポリエステルに、第2ステップの最後で0.5重量%のエチルトリフェニルホスホニウムブロミドを加える。
【0078】
例5(グリシジル基を含有するアクリルコポリマーC)
ステップ1:384.6重量部のn−酢酸ブチルを、穏やかな窒素オーバーフロー条件下で反応器に入れ、125℃に加熱した。温度を溶媒中で測定し、125℃に調整した。
【0079】
2つの添加を並行して行った:
・40.14部のスチレン、296.15部のグリシジルメタクリレート、53.41部のイソブチルメタクリレート、91.06部のメチルメタクリレートからなるモノマーの添加M。
・別の96.15部のn−酢酸ブチルに可溶化させた開始剤TRIGONOX(登録商標)C(38.46部)の添加I
【0080】
温度が125.0℃に達するとすぐに添加Iを開始し、これは添加の最後まで215分かかる。添加Iの開始から5分後に添加Mを開始し、これは180分かかる。添加Iの終了後、反応混合物を125℃でさらに100分維持し、次いで留去のために175℃にて600mbarの減圧で30分間加熱した。この30分後、温度を175℃に維持したがさらに90分間圧力を50mbarに減圧した。
【0081】
得られたコポリマーは以下によって特徴づけられた:Mn:2700;Mw:8400(GPC);Tg(DSC):45℃;EEW(g/eq):855、及び175℃でのブルックフィールド粘度:6530.mPa.s。
【0082】
例6
上記に例示したポリエステル及びアクリルコポリマーを、次いで以下に挙げるような配合に従って配合して粉末とする。
【表2】

【0083】
本発明による異なる粉末配合物のバインダー組成を、下記の表に示す:
【表3】

【0084】
粉末(バインダー1〜5からそれぞれ得られる粉末1〜5)は、最初に異なる成分を乾式混合し、次いで溶融状態でPRISM 16mm L/D 15/1 2軸押出機を用いて約80℃の押出温度で均質化することによって調製される。次いで均質化した混合物を冷却し、Alpineにて粉砕する。続いて粉末をふるいにかけて10〜110μmの粒径を得る。こうして得られる粉末を、0.8mmの厚みを有する冷延鋼板上に静電沈着によりGEMA−Volstatic PCG 1スプレーガンを用いて被着させる。約70μmの膜厚において、これらのパネルは換気されたオーブンへ移され、ここでは硬化が140℃の温度で15分間進行する。
【0085】
本発明によるバインダーから得られる仕上がりのコーティング(粉末1及び粉末2)における塗料の特性を、表3に示す。
【0086】
同じ表中に、比較例(粉末5R)として、例えばEP38635で特許請求されるような、カルボキシル基を含有するポリエステル及びグリシジル基を含有するアクリルコポリマーに基づくバインダーから得られる、仕上がりのコーティングの塗装性能を示す。粉末3R及び4Rは、化合物B1を含むが化合物Dを含まないコーティング組成物から調製される他の比較例を表す。
列1:配合物/粉末の識別番号を示す。
列2:ASTM D523に従って測定される60°光沢を示す。
列3:外観評価を示す。ここで、10は、非常に滑らかで高光沢のコーティングを表し、0は、60°光沢値の低い、強いゆず肌(orange peel)コーティングを表す。
列4:ASTM D2794に従った背面衝撃強度(reverse impact strength:RI)及び直接衝撃強度(direct impact strength:DI)を示す。コーティングにクラックを生じない最も高い衝撃をkg.cmで記録する。
列5:Wolff−Wilbornによる引っかき硬度試験機(scratch Hardness Tester)による鉛筆硬度を示す。
列6:MEKへの耐性を示す。これは、MEKを含浸させた綿パッドによる、硬化した膜の表面の外観に悪影響を与えない摩擦運動の2倍の(往復の)数に相当する。
【0087】
【表4】

【0088】
耐候性測定は、非常に厳しい環境、すなわちASTM G53−88(光及び水へ暴露する装置(蛍光紫外線/結露タイプ)を非金属材料の暴露において作動させる標準的な実施)に従ったQ−UV加速耐候性試験機(Q−Panel Co)で行う。
【0089】
さらに、コーティングしたパネルを、断続的な結露(condensation:凝縮)の影響(50℃で4時間)、並びに、蛍光UV−Aランプ(340nm、I=0.77W/m/nm)によってシミュレートされる日光の損傷の影響(60℃で8時間)にさらす。このタイプのランプでは、自然の日光との良好な相関が見られる。Q−UVにおいて使用されるパネルは、クロメート化(chromated)アルミニウムのパネルである。
【0090】
加速耐候性を評価するのに使用されるコーティング配合物(粉末1’〜6’:ここで、バインダーはそれぞれバインダー1〜6と同じである。)は、RAL 8014暗褐色配合物であり、組成を以下に示す。
【表5】

【0091】
ASTM D523に従った相対的な60°光沢値を、少なくとも光沢の減少が最大値の50%になるまで400時間毎に記録する。
【0092】
粉末配合物(粉末1’〜5’)から得られるすべての褐色のコーティングについて、50%の光沢減少を得るために2200〜2500時間のQUV−A暴露が必要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− カルボン酸基を含有する少なくとも1つの第1のポリエステルAと;
− 第1のポリエステルAとは異なっており、≦+45℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つの第2のポリエステルB1、及び/又は
少なくとも1つの結晶性ポリカルボン酸B2
からなる群から選択される少なくとも1つの成分Bと;
− 数平均分子量が2000〜8000ダルトンである、グルシジル基を含有する少なくとも1つのアクリルコポリマーCと;
− カルボン酸基と反応可能な官能基を有する、化合物Cとは異なる少なくとも1つの化合物及び/又は樹脂Dと;
− 少なくとも1つの熱硬化用硬化触媒Eと
の混合物を含む、低温硬化のための粉体コーティング組成物。
【請求項2】
化合物Aの酸価が20〜50mgKOH/gであり、ヒドロキシル価が15mgKOH/g未満である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
成分Bが、少なくとも1つの第2のポリエステルB1、及び場合により少なくとも1つの結晶性ポリカルボン酸B2を含む、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
成分Bが、B1+B2の総量に対して2.5〜100重量%の第2のポリエステルB1;及びB1+B2の総量に対して0〜50重量%の結晶性ポリカルボン酸B2を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
第2のポリエステルB1が、
a.場合によりさらにモノエポキシドと反応する、カルボン酸基を含むポリエステル、
b.場合によりさらにモノイソシアネートと反応する、ヒドロキシル基を含むポリエステル、及び/又は
c.場合によりカルボン酸基を含む、非縮合ポリエステル
からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
第2のポリエステルB1が2未満の官能基(functionality)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
結晶性ポリカルボン酸B2が、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカン二酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,13−トリデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,15−ペンタデカン二酸、及び/又はそれらの対応する無水物のうち1つ又は複数から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記化合物B2の酸価が410〜850mgKOH/gである、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
化合物Cが、エポキシ1当量あたり200〜1000グラムのポリマーのエポキシ当量重量(EEW)を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
成分Dが、グリシジル基を含有するアクリルコポリマー以外のグリシジル基を含有する樹脂及び/又は化合物である、請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
化合物CがC+Dの総量の5〜75重量%に相当し、成分DがC+Dの総量の25〜95重量%に相当する、請求項1から10のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
熱硬化用の硬化触媒Eが、アミン;ホスフィン;アンモニウム塩;ホスホニウム塩;ブロックされたアミン又はホスフィン触媒;及び/又はカプセル化触媒からなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
・40〜97重量%の、Tgが少なくとも45℃である、上記で定義されるカルボン酸基を含有する第1のポリエステルAと;
・0.5〜20重量%の、上記で定義される成分Bと;
・1〜40重量%の、上記で定義されるグリシジル基を含有するアクリルコポリマーCと;
・1〜30重量%の、上記で定義されるポリエステルのカルボン酸基と反応可能な官能基を有する樹脂及び/又は化合物Dと;
・0.1〜5重量%の、上記で定義される熱硬化用硬化触媒Eと
の混合物をバインダーとして含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
基材をコーティングする方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物で前記基材の少なくとも1つの表面をコーティングするステップと;その基材上のコーティングを熱硬化させて基材上にコーティング組成物の接着層を形成させるように、コーティングした基材を加熱するステップとを含む上記方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載のコーティング組成物で、部分的又は全体的にコーティングされた物品。

【公表番号】特表2012−532936(P2012−532936A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518884(P2012−518884)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059123
【国際公開番号】WO2011/003761
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(505365965)サイテック サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (38)
【Fターム(参考)】