説明

低粘度エンジン油組成物

【課題】本発明は、低温粘度特性及び剪断安定性に優れた省燃費型の低粘度エンジン油を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、粘度指数が115以上の鉱物油及び/又は合成油からなる基油(A)と100℃での動粘度が20〜2000mm2/s、数平均分子量が1500〜30
000、分子量分布が1.1〜1.8、不飽和基の含有率が10%以下及び粘度指数が特定の範囲にある炭素原子数8〜20のα−オレフィン(共)重合体(B)を0.5〜50質量%含む低粘度エンジン油組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のα−オレフィン(共)重合体を含有する省燃費型の低粘度エンジン油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油製品は一般に温度が変わると粘度が大きく変化する、いわゆる粘度の温度依存性を有している。例えば、自動車等に用いられる潤滑油等では粘度の温度依存性が小さいことが好ましい。そこで潤滑油には、粘度の温度依存性を小さくする目的で、潤滑油基剤に可溶な、ある種のポリマーが粘度改良剤として用いられている。近年では、このような粘度改良剤としてエチレン・α−オレフィン共重合体が広く用いられており、潤滑油の性能を更に改善するためエチレン・α−オレフィン共重合体について種々の改良がなされている(特許文献1:国際公開第WO00/34420号パンフレット参照)。
【0003】
一方、近年の自動車への環境負荷低減要求が高まる中で、自動車の燃費向上が強く求められている。その対応策の一つに、エンジン油の燃費向上技術があり、低粘度化によるトルク低減を目的とした低粘度型のエンジン油(SAE 0W−20、5W−20等)の適応が図られている。しかし、エンジン油の低粘度化に伴う潤滑性の低下が指摘されている。粘度改良剤は潤滑油が高温時に適正な粘度を保持するために用いられるが、一般の粘度改良剤は分子量が比較的に高く、剪断により粘度低下を起こしやすいため、省燃費向上に向けた低粘度型エンジン油への適用には問題があった。一方、低分子量の粘度調整剤は剪断による粘度低下は抑えられるものの、粘度指数向上能に劣るため、剪断安定性と低温粘度特性との両立が困難であった。
【特許文献1】国際公開第WO00/34420号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況において鋭意研究の結果、炭素原子数8〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類の単量体から導かれる構成単位を90〜100%モル%の範囲で含有し、且つ、特定の分子量、分子量分布を有するα−オレフィン(共)重合体と、必要に応じて流動点降下剤を使用することにより、低温粘度特性と剪断安定性を両立し、省燃費型エンジン油(SAE 0W−20、5W−20等)の配合設計が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、低温粘度特性及び剪断安定性に優れた省燃費型の低粘度エンジン油を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基油(A)と下記の(i)〜(vi)で規定されるα−オレフィン(共)重合体(B)を含む低粘度エンジン油組成物であって、当該エンジン油組成物に対して、α−オレフィン(共)重合体(B)を0.5〜50質量%含むことを特徴とする低粘度エンジン油組成物。
【0007】
基油(A);
粘度指数が115以上の鉱物油及び/又は合成油。
α−オレフィン(共)重合体(B);
(i)(a)炭素原子数8〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体
から導かれる構成単位を90〜100モル%の範囲及び(b)エチレンから導かれる構成
単位を0〜10モル%の範囲、
(ii)100℃での動粘度が20〜2000mm2/sの範囲、
(iii)数平均分子量(Mn)が1500〜30000の範囲、及び
(iv)分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜1.8の範囲にある。
(v)分子片末端における不飽和基の含有率が10%以下
(vi)粘度指数が下記式(1)を満たす
粘度指数≧37.59ln(100℃での動粘度)+23.08・・・(1)
(但し、ln(100℃での動粘度は100℃での動粘度の自然対数である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の低粘度エンジン油組成物は、高温−低温粘度特性と剪断安定性に優れ、トルク(流体摩擦損失)の低減と潤滑性をバランスよく両立することで、環境対応の省燃費型エンジン油(SAE 0W−20、5W−20等)として有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<基油(A)>
本発明の低粘度エンジン油組成物に含まれる基油(A)は、粘度指数が115以上、好ましくは120以上、より好ましくは130以上である。また、上限は特に限定はされないが、基油(A)として鉱油を用いる場合は通常160以下、合成油としてポリ・α−オレフィンを用いる場合は通常150以下、合成油としてエステル油を用いる場合は通常200以下である。
【0010】
本発明の低粘度エンジン油組成物は、基油(A)として、粘度指数が115以上と高粘度指数を有する基油を用いて粘度の温度依存性を抑制することを特徴としている。
本発明に係る基油(A)としては、具体的には、例えば、ポリ・α−オレフィン、ポリオールエステル、ジエステル等の合成油或いは高度の精製されたグループ(III)の鉱物
油等が挙げられる。
【0011】
鉱物油は一般に脱ワックス等の精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があり、本等級はAPI(米国石油協会)分類で規定される。
表1に各グループに分類される潤滑油基剤の特性を示す。
【0012】
【表1】

*1:ASTM D445(JIS K2283)に準じて測定
*2:ASTM D3238に準じて測定
*3:ASTM D4294(JIS K2541)に準じて測定
*4:飽和炭化水素分が90(容量%)未満でかつ硫黄分が0.03(重量%)未満また
は飽和炭化水素分が90(容量%)以上でかつ硫黄分が0.03(重量%)を超える鉱物
油のグループ(I)に含まれる。
【0013】
表1におけるグループ(IV)に属するポリα−オレフィンは、炭素数10以上のα−オレフィンを少なくとも原料モノマーとして重合して得られる炭化水素ポリマーであって、例えばデセン−1を重合して得られるポリデセンなどが例示される。この様なα−オレフィンオリゴマーは、チーグラー触媒、ルイス酸を触媒としたカチオン重合、熱重合、ラジカル重合によって製造することができる。
【0014】
第1表におけるグループ(V)に属する基油としては、アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類、エステル油等を例示できる。
アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類は通常大部分がアルキル鎖長が炭素原子数6〜14のジアルキルベンゼンまたはジアルキルナフタレンであり、このようなアルキルベンゼン類またはアルキルナフタレン類は、ベンゼンまたはナフタレンとオレフィンとのフリーデルクラフトアルキル化反応によって製造される。アルキルベンゼン類またはアルキルナフタレン類の製造において使用されるアルキル化オレフィンは、線状もしくは枝分かれ状のオレフィンまたはこれらの組み合わせでもよい。これらの製造方法は、たとえば、米国特許第3909432号に記載されている。
【0015】
エステル油としては、一塩基酸とアルコールから製造されるモノエステル;二塩基酸とアルコールとから、またはジオールと一塩基酸または酸混合物とから製造されるジエステル;ジオール、トリオール(たとえばトリメチロールプロパン)、テトラオール(たとえばペンタエリスリトール)、ヘキサオール(たとえばジペンタエリスリトール)などと一塩基酸または酸混合物とを反応させて製造したポリオールエステルなどが挙げられる。これらのエステルの例としては、トリデシルペラルゴネート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、トリメチロールプロパントリヘプタノエート、ペンタエリスリトールテトラヘプタノエートなどが挙げられる。
【0016】
本発明に係る基油(A)としては、精製度が高くかつ粘度指数が高い、すなわち100℃における動粘度が1〜6mm2/sで、かつ粘度指数が120以上のグループ(III)鉱
油が好ましく、グループ(IV)に属するポリα−オレフィンがさらに好ましい。なお、これらの基油には、30重量%以下の割合でポリオールエステル、ジエステル等の合成油を含有してもよい。
【0017】
<α−オレフィン重合体(B)>
本発明の低粘度エンジン油組成物に含まれるα−オレフィン(共)重合体(B)は、下記(i)〜(vi)で規定される要件を満たす重合体である。
(i)(a)炭素原子数8〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体
から導かれる構成単位を90〜100モル%の範囲及び(b)エチレンから導かれる構成単位を0〜10モル%の範囲、
(ii)100℃での動粘度が20〜2000mm2/sの範囲、
(iii)数平均分子量(Mn)が1500〜30000の範囲、及び
(iv)分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜1.8の範囲にある。
(v)分子片末端における不飽和基の含有率が10%以下
(vi)粘度指数が下記式(1)を満たす
粘度指数≧37.59ln(100℃での動粘度)+23.08・・・(1)
(但し、ln(100℃での動粘度は100℃での動粘度の自然対数である。)
にある。
【0018】
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)を構成する(a)炭素原子数8〜20の単量体としては、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−
ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンの直鎖状α―オレフィンや8−メチル−1−ノネン、7−メチル−1−デセン、6−メチル−1−ウンデセン、6,8−ジメチル−1−デセンなどの分岐を有するα―オレフィンを挙げることができるが、好ましくは炭素原子数8〜12の直鎖状α―オレフィンであり、特に好ましくは1−デセンである。
【0019】
α−オレフィンの炭素原子数が20より大きいα−オレフィン(共)重合体は、粘度指数は高くなるが、結晶性が発現するために低温での流動性が悪化して省燃費性が悪化する可能性がある。一方、α−オレフィンの炭素原子数が8より小さいα−オレフィン(共)重合体は粘度指数が低くなり、配合油の粘度指数も低くなることから、同様に低温での流動性に劣り省燃費性が悪化する虞がある。また、高温高剪断条件で適正な粘度(潤滑性)が得られなくなるため摩耗性に影響を及ぼす。中でもα−オレフィンとして1−デセンを用いた(共)重合体は、低温流動性と潤滑性バランスに最も優れる。
【0020】
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)を構成する(a)炭素原子数8〜20のα−オレフィンからなる単量体から導かれる構成単位の含有率は、90〜100モル%の範囲であり、好ましくは95〜100モル%である。
【0021】
α−オレフィンからなる単量体から導かれる構成単位の含有率が90モル%未満の重合体は、結晶性が発現するために低温流動性が悪化する虞がある。
また、本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)を構成する(b)エチレンから導かれる構成単位の含有率は0〜10モル%の範囲であり、好ましくは0〜5モル%の範囲である。
【0022】
さらに必要に応じて加えられる(c)炭素原子数3〜6のα−オレフィンから導かれる構成単位の含有率は0〜30モル%の範囲であることが好ましい。
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、少なくとも1種以上の上記(a)炭素原子数8〜20のα−オレフィンからなる単量体の重合体(α−オレフィン含有率100モル%)、または(b)エチレンとの共重合体である。さらに、必要に応じて(c)炭素原子数3〜6のα−オレフィンを共重合成分として含有させることもできる。この様な炭素原子数3〜6のα−オレフィンとしてはプロピレン,1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの直鎖状α−オレフィンや4−メチル−1−ペンテンなどの分岐を有するα−オレフィンを挙げることができる。これらのα−オレフィンは単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、100℃での動粘度が、20〜2000mm2/s、好ましくは30〜1500mm2/s、より好ましくは40〜1500mm2/sの範囲にある。中でも、動粘度が550mm2/s以上のものは増粘効果が高いので、少量の添加量で本発明の効果を発現できるので、特に好ましい。
【0024】
動粘度が上記範囲より低い重合体は、重合体の配合量を多くする必要があることから、結果として、得られる低粘度エンジン油組成物の増粘性及び粘度指数が低下する虞がある。一方、動粘度が上記範囲より高い重合体は、得られる低粘度エンジン油組成物の一時的粘度低下及び永久的粘度低下が大きくなり、剪断安定性が悪化する虞がある。一時的粘度低下が大きい、すなわち、高温での高剪断粘度が低くなると、油膜が薄くなり、油膜強度も弱くなる。
【0025】
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、数平均分子量(Mn)が1500〜30000、好ましくは5000〜20000の範囲にある。数平均分子量(Mn)が上記範囲より低い重合体は動粘度が低くなり、粘度調整(増粘)機能に乏しく、一方、数
平均分子量(Mn)が上記範囲より大きい重合体は動粘度が高くなり、粘度調整機能は向上するものの、剪断安定性が悪化するため、良好な低粘度エンジン油組成物を得ることができなくなる虞がある。
【0026】
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜1.8、好ましくは1.2〜1.7の範囲にある。分子量分布が1.8を超える重合体は、得られる低粘度エンジン油組成物のせん断安定性が低下する虞がある。
【0027】
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、(v)分子片末端における不飽和
基の含有率が10%以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは1以下である。
不飽和基の含有量が10%を超えるα−オレフィン(共)重合体は、熱による増粘やスラッジの発生が起こりやすく潤滑性が悪化する。
【0028】
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、粘度指数が下記式(1)を満たす。
粘度指数≧37.59ln(100℃での動粘度)+23.08・・・(1)
(但し、ln(100℃での動粘度は100℃での動粘度の自然対数である。)
上記式(1)を満たさないα−オレフィン(共)重合体は、粘度指数向上能が劣り、適正な低温特性(低粘度)を有する低粘度エンジン油組成物が得られない虞がある。
【0029】
<α−オレフィン(共)重合体の製造方法>
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)を製造する際には、特開平2-413
03号公報、特開平2−41305号公報、特開平2-274703号公報、特開平2-274704号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3−193796号公報、特開平4-69394号公報、特開平5-17589号公報、特開平6−122718号公報、特開平8−120127号公報、特開平8−239414号公報、特開平10−087716号公報、特開2000−212194号公報あるいはWO 01/27124、WO 02/074855、WO 04/029062、EP 0881236、EP 1416000に記載されているような、α−オレフィン(共)重
合体を製造する際に使用される触媒を用いることができる。
【0030】
具体的には本発明に係るα―オレフィン(共)重合体(B)を製造する際には、例えば、遷移金属化合物が周期表第IV族の遷移金属化合物(A)と、
(B)(B−1)有機金属化合物、
(B−2)有機アルミニウム化合物、
(B−3)有機アルミニウムオキシ化合物、
(B−4)前記第IV族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、
とから選ばれる少なくとも1種以上の化合物とからなるオレフィン重合用触媒の存在下に炭素数8〜20のα−オレフィン単独重合および、炭素数8〜20のα−オレフィン、エチレン、更に必要に応じて炭素数3〜6のα−オレフィンを共重合することにより単独重合体または共重合体を得ることができる。
さらに詳しく述べると、遷移金属化合物(A)及び化合物(B)は以下の通りである。
【0031】
〔(A)遷移金属化合物〕
本発明で用いられる遷移金属化合物(A)は、公知のオレフィン重合能を有する周期律表IV〜VI族の遷移金属化合物であれば特に制限なく使用できるが、例えば周期律表IV〜VI族の遷移金属ハロゲン化物、遷移金属アルキル化物、遷移金属アルコキシ化物、非架橋性または架橋性メタロセン化合物などを例示することができる。好ましくは、周期律表IV族、より好ましくはIVB族の遷移金属のハロゲン化物、遷移金属のアルキル化物、遷移金属の遷移金属ハロゲン化物、遷移金属アルキル化物、遷移金属アルコキシ化物
、非架橋性または架橋性メタロセン化合物などである。以下、これら遷移金属化合物(A)の好ましい形態について述べる。
【0032】
遷移金属ハロゲン化物、遷移金属アルキル化物、遷移金属アルコキシ化物として、具体的には、四塩化チタン、ジメチルチタニウムジクロライド、テトラベンジルチタン、テトラベンジルジルコニウム、テトラブトキシチタンなどを例示することができる。
【0033】
非架橋性または架橋性メタロセン化合物としては、シクロペンタジエニル骨格を有する周期律表第4族の遷移金属化合物としての、下記一般式(2)で表される化合物を例示することができる。
【0034】
MLx … (2)
式中、Mは周期律表第IV族から選ばれる1種の遷移金属原子を示し、好ましくはIVB族の遷移金属のジルコニウム、チタン又はハフニウムである。xは、遷移金属の原子価であり、Lの個数を示す。Lは、遷移金属に配位する配位子又は基を示し、少なくとも1個のLは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、該シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLは、ハロゲン、及び水素原子、炭素数が1〜10の炭化水素基、あるいは炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれた1種の基又は原子である。
【0035】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、例えばシクロペンタジエニル基、アルキル置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、アルキル置換インデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、アルキル置換フルオレニル基などを例示することができる。これらの基はハロゲン原子、トリアルキルシリル基などが置換していてもよい。
【0036】
上記一般式(2)で表される化合物が、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を2個以上含む場合、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子同士は、アルキレン基、置換アルキレン基、シリレン基、置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。(以下の説明では、このような化合物を「架橋性メタロセン化合物」という場合がある。また、このような化合物以外を「非架橋メタロセン化合物」という場合がある。)
このなかでも好ましいものとしては、下記一般式(3)で表される化合物を例示することができる。
【0037】
MLab… (3)
(式中、Mは周期律表第IV族から選ばれる1種の遷移金属原子を示し、好ましくはIVB族の遷移金属のジルコニウム、チタン又はハフニウムであり、Lは、遷移金属に配位する配位子であり、aは1以上の整数であって、Lの個数を示し、Xは遷移金属に結合するハロゲン、及び水素原子、炭素数が1〜10の炭化水素基、あるいは炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれた1種の基又は原子であり、bは1以上の整数であって、Xの個数を示す。)
【0038】
上記一般式(3)において、Lは遷移金属に配位する配位子であり、そのうち少なくとも1つはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子である。シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、例えばシクロペンタジエニル基;メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジ
エニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、プロピルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基などのアルキル置換シクロペンタジエニル基;インデニル基;4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基;フルオレニ
ル基などを例示することができる。これらの基はハロゲン原子、トリアルキルシリル基などが置換していてもよい。
【0039】
上記一般式(3)において、aは1以上の整数であり、Lの個数を示す。上記一般式(3)において、Mは周期律表第IV族から選ばれる1種の遷移金属原子を示し、好ましくはIVB族の遷移金属のジルコニウム、チタン又はハフニウムである。Xは、遷移金属に結合する、ハロゲン、及び水素原子、炭素数が1〜10の炭化水素基、あるいは炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれた1種の基又は原子であり、ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルプ
ロピル、2,2-ジメチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1-エチル-1-メチルプ
ロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、1,1-ジ
メチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、
シクロヘキシル、1-メチル-1-シクロヘキシル等が挙げられる。炭素数が10以下の中
性、共役または非共役ジエンの具体例としては、s-シス-またはs-トランス-η4-1,3-
ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、s-
シス-またはs-トランス-η4-3-メチル-1,3-ペンタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ジベンジル-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-2,4-ヘ
キサジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,3-ペンタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ジトリル-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-
ビス(トリメチルシリル)-1,3-ブタジエン等が挙げられる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert-ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテート、ベン
ゾエート等のカルボキシレート基、メシレート、トシレート等のスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、またはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1、2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。これらのうち、Xは同一でも異なった組み合わせでもよい。上記一般式(3)において、bは1以上の整数であり、Xの個数を示す。
【0040】
上記一般式(3)で表される化合物が、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を2個以上含む場合、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基;ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基;イソプロピリデンなどのアルキリデン基;シリレン基;ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基などの置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。また、2個以上のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は、同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
上記一般式(3)で表される化合物が、シクロペンタジエニル骨格を2つ有する配位子である場合、より具体的には下記一般式(4)または(5)で表される。
【0042】
【化1】

(式中、Mは周期律表第IV族から選ばれる1種の遷移金属原子を示し、好ましくはIVB族の遷移金属のジルコニウム、チタン又はハフニウムであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は水素、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれ、
それぞれ同一でも異なっていてもよく、R1からR10までの隣接した置換基は互いに結合
して環を形成していてもよく、Xは、ハロゲン、及び水素原子、炭素数が1〜10の炭化水素基、あるいは炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれた1種の基又は原子であり、nは1または2であり、Xの個数を示す。)
【0043】
【化2】

(式中、Mは周期律表第IV族から選ばれる1種の遷移金属原子を示し、好ましくはIVB族の遷移金属のジルコニウム、チタン又はハフニウムであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は水素、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R1からR8までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、Xは、ハロゲン、及び水素原子、炭素数が1〜10の炭化水素基、あるいは炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれた1種の基又は原子であり、nは1または2であって、Xの個数を示し、Qは、炭素、ケイ素またはゲルマニウムから選ばれ、Y1およびY2は水素、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0044】
上記一般式(4)または(5)において、炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜
20のアルキル基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアルキルアリール基であり、1つ以上の環構造を含んでいてもよい。その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1,1-ジエチルプロピ
ル、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、1,1-ジメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、ネオペンチル
、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1-メチル-1-シクロヘキシル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、2-メチル-2-アダマンチル、メンチル、ノルボルニル、ベンジル、2-フェニルエチル、1-テトラヒドロナフチル、1-メチル-1-テトラヒドロナフチ
ル、フェニル、ナフチル、トリル等が挙げられる。
【0045】
上記一般式(4)または(5)において、ケイ素含有炭化水素基としては、好ましくはケイ素数1〜4、炭素数3〜20のアルキルまたはアリールシリル基であり、その具体例としては、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙
げられる。
【0046】
本発明において、上記一般式(4)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9
、R10は水素、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましい炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。また、上記一般式(5)のR1、R2、R3、R4、R5
6、R7、R8は水素、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一で
も異なっていてもよい。好ましい炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。
【0047】
上記一般式(4)のシクロペンタジエニル環上のR1からR10までの隣接した置換基は
、互いに結合して環を形成してもよい。そのような置換シクロペンタジエニル基として、インデニル、2-メチルインデニル、テトラヒドロインデニル、2-メチルテトラヒドロインデニル、2,4,4-トリメチルテトラヒドロインデニル、フルオレニル、ベンゾフル
オレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル等を挙げることができる。また、上記一般式(5)のシクロペンタジエニル環上のR1からR8までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。そのような置換シクロペンタジエニル基として、インデニル、2-メチルイ
ンデニル、テトラヒドロインデニル、2-メチルテトラヒドロインデニル、2,4,4-トリメチルテトラヒドロインデニル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル等を挙げることができる。
【0048】
本発明において、一般式(4)または(5)のMは周期律表第IV族から選ばれる1種の遷移金属原子を示し、好ましくはIVB族の遷移金属のジルコニウム、チタン又はハフニウムである。
【0049】
Xは、ハロゲン、及び水素原子、炭素数が1〜10の炭化水素基、あるいは炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれた1種の基又は原子であり、ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルプロ
ピル、2,2-ジメチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロ
ピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、1,1-ジメ
チルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シ
クロヘキシル、1-メチル-1-シクロヘキシル等が挙げられる。炭素数が10以下の中性、
共役または非共役ジエンの具体例としては、s-シス-またはs-トランス-η4-1,3-ブタ
ジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-3-メチル-1,3-ペンタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ジベンジル-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-2,4-ヘキサジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,3-ペンタジエン、s-シス-またはs-トランス-
η4-1,4-ジトリル-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,3-ブタジエン等が挙げられる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert-ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテート、ベンゾエー
ト等のカルボキシレート基、メシレート、トシレート等のスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、またはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1、2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。これらのうち、Xは同一でも異なった組み合わせでもよい。
nは1または2であり、Xの個数を示す。
【0050】
上記一般式(4)として具体的には、シクロペンタジエニルトリクロライド、シクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、(シクロペンタジエニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等を含むビス(ブチ
ルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等を含むビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1,3−ジエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等を含むビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(メチルエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1-メチル-3-n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等を含むビス(メチルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等を含むビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドなどが挙げられ、上記一般式(5)として具体的には、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(1-インデニル)チタニウムジクロライド、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(ジ-tert-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4,5-ベンズインデニル)ジルコニウム
ジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウ
ムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-ナフチルインデニル)ジルコニ
ウムジクロライド、ジメチルエチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロ
ライド、ジメチルエチレンビス(2-メチル-4,5-ベンズインデニル)ジルコニウムジ
クロライド、ジメチルエチレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウム
ジクロライド、ジメチルエチレンビス(2-メチル-4-ナフチルインデニル)ジルコニウ
ムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(メチルシクロペンタジエニ
ル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(メチル-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(メチル-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチ
ルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(メチル-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-
ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(メチル-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(メチル-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、
【0051】
ジフェニルメチレン(メチル-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、シクロヘキシレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、シクロヘキシレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド
、シクロヘキシレン(メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、シクロヘキシレン(tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジ
ルコニウムジクロライド、シクロヘキシレン(メチル-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、シクロヘキシレン(メチル-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロラ
イド、シクロヘキシレン(メチル-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジ(p-トリル)メチ
レン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)
メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,
6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p- tert−ブチルフェ
ニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p- tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフ
ルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p- tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p- tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p- n−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-n−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p- n−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフ
ルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p- n−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m-
トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0052】
ジ(m-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ
メチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジメチル、ジ(p-トリル
)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジ
ルコニウムジクロリド、ジ(p-tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウム
ジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル) (オクタメチルオクタヒド
ロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジメチル、ジ(p-tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジメチル、ジ(p-イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコ
ニウムジクロリド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)
ジルコニウムジクロリド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シ
クロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(4-
ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジ
ルコニウムジクロリドシクロペンチリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブ
チルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、アダマンチリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
モノフェニルモノメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフル
オレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−
トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチル
フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロペンチリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ア
ダマンチリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、モノフェニルモノメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(シクロペンタジ
エニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメ
チレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフ
ルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロペンチリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリ
ド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフ
ルオレニル) ジルコニウムジクロリド、アダマンチリデン(シクロペンタジエニル)(オク
タメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、モノフェニルモノメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレ
ニル) ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチ
ルオクタヒドロジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、
【0053】
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオ
レニル) ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(
オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、ジエチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル) ジル
コニウムジクロリド、シクロペンチリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラ
ヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル) ジルコニウ
ムジクロリド、アダマンチリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジ
シクロペンタフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、モノフェニルモノメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル) ジル
コニウムジクロリド、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒ
ドロジシクロペンタフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シク
ロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラ
ヒドロジシクロペンタフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、ジエチルメチレン(シク
ロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、シクロペンチリデン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニ
ル) ジルコニウムジクロリド、アダマンチリデン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフル
オレニル) ジルコニウムジクロリド、モノフェニルモノメチルメチレン(シクロペンタジ
エニル)(ジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(シクロペ
ンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(
シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジクロリド
、ジエチルメチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジク
ロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル) ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)( 2,7−ジtert−ブチルフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)( 3,6−ジtert−ブチルフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロ
ジシクロペンタフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニ
ル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、プロピ
レン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル) ジルコニウムジクロリド、プロピレン(シクロペンタジエニル)( 2,7−ジtert−ブチルフルオレニル) ジルコニウムジクロリド
、プロピレン(シクロペンタジエニル)( 3,6−ジtert−ブチルフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、プロピレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシク
ロペンタフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、プロピレン(シクロペンタジエニル)(
オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0054】
(メチル)(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロ
ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(メチル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジク
ロリド、(メチル)(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−
ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(メチル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)( 2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(メチル)(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオ
レニル)ジルコニウムジクロリド、(メチル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(メチル)(ベン
ジル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(メチル)(ベンジル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(メチル)(ベンジル)メチレン(
シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド
、(メチル)(ベンジル)メチレン(シクロペンタジエニル)( 2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(メチル)(ベンジル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(
メチル)(ベンジル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベ
ンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどを例示することができる。
【0055】
また同様な立体構造を有するチタニウム化合物やハフニウム化合物、さらには臭化物、ヨウ化物などの他に、例えば特開平3−9913号公報、特開平2−131488号公報、特開平3−21607号公報、特開平3−106907号公報、特開平3−188092号公報、特開平4−69394号公報、特開平4-300887号公報、WO01/27124A1などに記載されているような遷移金属化合物を挙げることができる。
【0056】
本発明の重合例および比較重合例で用いた遷移金属化合物(A)は具体的には下記式(6)、(7)、(8)、(9)および(10)であるが、本発明においてはこの化合物に何ら限定されるものではない。
【0057】
【化3】

【0058】
【化4】

【0059】
【化5】

【0060】
【化6】

【0061】
【化7】

なお本発明の重合例および比較重合例では、化合物(6)はビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、化合物(7)は(メチル)(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)
ジルコニウムジクロリド、化合物(8)はジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジクロリド、化合物(9)はジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、化合物(10)はジ(ベンジル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,
6―ジーtert―ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドと記載している。
得られた遷移金属化合物の構造は、270MHz 1H-NMR(日本電子 GSH-270)、FD-質量分析(日本電子SX-102A)により、決定される。
【0062】
〔(B−1)有機金属化合物〕
本発明に係る(B−1)有機金属化合物として、具体的には下記式(11)で表される有機金属化合物が用いられる。
一般式 Rab3 ・・・(11)
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3 はMg、ZnまたはCdである。)で表される周期律表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
また、これら有機金属化合物(B−1)は、1種単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0063】
〔(B−2)有機アルミニウム化合物〕
本発明に係るオレフィン重合用触媒を形成する(B−2)有機アルミニウム化合物としては、例えば下記一般式(12)で表される有機アルミニウム化合物、下記一般式(13
)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、または有機アルミニウムオキシ化合物などを挙げることができる。
am Al(ORbnp2q …(12)
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、X2はハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、
nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。このような化合物の具体例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドを例示することができる。
2 AlRa4 …(13)
(式中、M2 はLi、NaまたはKを示し、Ra は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。このような化合物としては、LiAl(C25)4、LiAl(C715)4 などを例示することができる。
【0064】
上記一般式(12)で表される有機アルミニウム化合物としては、例えば下記一般式(14)、(15)、(16)、または(17)で表される化合物などを例示できる。
am Al(ORb3-m …(14)
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは1.5≦m≦3の数である。)
am AlX23-m …(15)
(式中、Ra は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、X2はハ
ロゲン原子を示し、mは好ましくは0<m<3である。)
am AlH3-m …(16)
(式中、Ra は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは2≦m<3である。)
am Al(ORbn2q …(17)
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、X2はハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、
nは0≦n<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+q=3である。)
【0065】
上記一般式(14)、(15)、(16)、または(17)で表されるアルミニウム化合物として、より具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリ
ヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウ
ム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリ tert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチ
ルアルミニウム、トリ3-メチルブチルアルミニウム、トリ2-メチルペンチルアルミニウ
ム、トリ3-メチルペンチルアルミニウム、トリ4-メチルペンチルアルミニウム、トリ2-メチルヘキシルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘ
キシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;一般式(i-C49)x Aly(C510)z (式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)などで表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルア
ルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;一般式Ra2.5 Al(ORb)0.5 などで表される平均組成
を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,
6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0066】
また、上記一般式(12)で表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C25 )2 AlN(C2
5 )Al(C25 )2などを挙げることができる。
【0067】
上記一般式(13)で表される化合物としては、例えば、LiAl(C25 )4、Li
Al(C715)4 などを挙げることができる。
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、たとえばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組み合わせ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組み合わせなどを使用することもできる。
【0068】
これらのうち、有機アルミニウム化合物が好ましい。
上記一般式(12)で表される有機アルミニウム化合物、または上記一般式(13)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0069】
〔(B−3)有機アルミニウムオキシ化合物〕
本発明に係る(B−3)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0070】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(I)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(II)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用
させる方法。
(III)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0071】
なお該アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0072】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(B−2)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0073】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0074】
また本発明に係るベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であるものが好ましい。これらの有機アルミニウムオキシ化合物(B−3)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0075】
なお、トリメチルアルミニウムから調製されるアルミノキサンは、メチルアルミノキサンあるいはMAOと呼ばれ、特によく用いられる化合物である。
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0076】
また本発明に係るベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性または難溶性である。
【0077】
本発明に係る有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式(18)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0078】
【化8】

(式中、Rcは炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。)
【0079】
上記一般式(18)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(19)で表されるアルキルボロン酸と有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
cB(OH)2 (19)
(式中、Rcは前記と同じ基を示す。)
【0080】
上記一般式(19)で表されるアルキルボロン酸の具体的なものとしては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボ
ロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,
5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、
メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0081】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、上記一般式(12)または(13)で表される有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0082】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0083】
〔(B−4)前記第IV族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物〕
前記した第IV族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−4)としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-1
79005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP-5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。
【0084】
具体的には、ルイス酸としては、BR3 (Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、たとえばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロン、トリメチルボロン、トリイソブチルボロンなどが挙げられる。
【0085】
イオン性化合物としては、たとえば下記一般式(20)で表される化合物が挙げられる。
【0086】
【化9】

式中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニ
ウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。Rf〜Riは、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。
【0087】
前記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
【0088】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロ
ピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルア
ンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリ
ニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメ
チルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロ
ピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0089】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0090】
上記のうち、Reとしては、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ま
しく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン
、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0091】
カルベニウム塩として具体的には、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(
3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができる。
【0092】
アンモニウム塩としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニ
リニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩などを挙げることができる。
トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-
トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニ
ウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジ
メチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジ
オクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフ
ェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェ
ニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニ
ル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフ
ェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオ
ロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0093】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペン
タメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0094】
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどが挙げられる。
【0095】
さらに、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、あるいは下記式(21)または(22)で表されるボレート化合物、または下記式(23)で表される活性水素を含むボレート化合物、または下記式(24)で表されるシリル基を含むボレート化合物などを挙げることもできる。
【0096】
【化10】

(式中、Etはエチル基を示す。)
【0097】
【化11】

[B−Qn(Gq(T−H)r)z]-+ (23)
式(23)中、Bはホウ素を表す。Gは多結合性ヒドロカーボンラジカルを表し、好ましい多結合性ヒドロカーボンとしては炭素数1〜20を含むアルキレン、アリレン、エチレン、アルカリレンラジカルであり、Gの好ましい例としては、フェニレン、ビスフェニレン、ナフタレン、メチレン、エチレン、プロピレン、1,4-ブタジエン、p-フェニレンメチレンがあげられる。多結合性ラジカルGはr+1の結合、すなわち一つの結合はボレートアニオンと結合し、Gのその他の結合rは(T−H)基と結合する。A+はカチオ
ンである。
【0098】
上記式(23)中のTはO、S、NRj、またはPRjを表し、Rjはヒドロカルバニル
ラジカル、トリヒドロカルバニルシリルラジカル、トリヒドロカルバニルゲルマニウムラジカル、またはハイドライドを表す。qは1以上の整数で好ましくは1である。T−Hグループとしては、−OH、−SH、−NRH、または−PRjHが挙げられ、ここでRjは炭素数1〜18好ましくは炭素数1〜10のヒドロカルビニルラジカルまたは水素である。好ましいRjグループはアルキル、シクロアルキル、アリル、アリルアルキルまたは炭
素数1〜18を有するアルキルアリルである。−OH、−SH、−NRjHまたは−PRjHは、例えば、−C(O)−OH、−C(S)−SH−C(O)−NRjH、及びC(O
)−PRjHでもかまわない。最も好ましい活性水素を有する基は−OH基である。Qは
、ハイドライド、ジヒドロカルビルアミド、好ましくはジアルキルアミド、ハライド、ヒドロカルビルオキシド、アルコキシド、アリルオキシド、ハイドロカルビル、置換ハイドロカルビルラジカルなどである。ここでn+zは4である。
【0099】
上記式(23)の[B−Qn(Gq(T−H)r)z]として、例えば、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニルージ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4-ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p-トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4-ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス〔3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル〕(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2-ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシシクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロ
フェニル)〔4-(4-ヒドロキシフェニル)フェニル〕ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)ボレートなどが挙げられ、最も好ましくはトリス(
ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドキシフェニル)ボレートである。さらに上記ボレート化合物の−OH基を−NHRj(ここで、Rjはメチル、エチル、t-ブチル)で置換したも
のも好ましい。
【0100】
ボレート化合物の対カチオンであるA+としては、カルボニウムカチオン、トロピルリ
ウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられる。またそれ自信が還元されやすい金属の陽イオンや有機金属の陽イオンも挙げられる。これらカチオンの具体例としては、トリフェニルカ
ルボニウムイオン、ジフェニルカルボニウムイオン、シクロヘプタトリニウム、インデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、N,N−ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、2,4,6-ペンタメチルアンモニウム、N,N−ジメチルフェニルアンモニウム、ジ−(i-プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリ
ホスホニウム、トリジメチルフェニルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルホスホニウムイオン、トリフェニルオキソニウムイオン、トリエチルオキソニウムイオン、ピリニウム、銀イオン、金イオン、白金イオン、銅イオン、パラジュウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオンなどが挙げられる。なかでも特にアンモニウムイオンが好ましい。
【0101】
[B−Qn(Gq(SiRklm)r)z]-+ …(24)
式(24)中、Bはホウ素を表す。Gは多結合性ヒドロカーボンラジカルを表し、好ましい多結合性ヒドロカーボンとしては炭素数1〜20を含むアルキレン、アリレン、エチレン、アルカリレンラジカルであり、Gの好ましい例としては、フェニレン、ビスフェニレン、ナフタレン、メチレン、エチレン、プロピレン、1,4-ブタジエン、p-フェニレ
ンメチレンがあげられる。多結合性ラジカルGはr+1の結合、すなわち一つの結合はボレートアニオンと結合し、Gのその他の結合rは(SiRklm)基と結合する。A+はカチオンである。
【0102】
上記式(24)中のRk、Rl、Rmはヒドロカルバニルラジカル、トリヒドロカルバニ
ルシリルラジカル、トリヒドロカルバニルゲルマニウムラジカル、水素ラジカル、アルコキシラジカル、ヒドロキシラジカルまたはハロゲン化合物ラジカル、を表す。Rk、Rl、Rmは同一でも独立でも良い。Qは、ハイドライド、ジヒドロカルビルアミド、好ましく
はジアルキルアミド、ハライド、ヒドロカルビルオキシド、アルコキシド、アリルオキシド、ハイドロカルビル、置換ハイドロカルビルラジカルなどであり、さらに好ましくはペンタフルオロベンジルラジカルである。ここでn+zは4である。
【0103】
上記式(24)中の[B−Qn(Gq(SiRklm)r)z]-として、例えば、トリフェニル(4−ジメチルクロロシリルフェニル)ボレート、ジフェニルージ(4−ジメチ
ルクロロシリルフェニル)ボレート、トリフェニル(4−ジメチルメトキシシリルフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)(4−トリエトキシシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ジメチルクロロシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ジメチルメトキシシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−トリメトキシシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ジメチルクロロシリル−2ナフチル)ボレートなどが挙げられる。
【0104】
ボレート化合物の対カチオンであるA+ 上記式(23)中の A+と同じものが挙げられる。
ボラン化合物として具体的には、たとえばデカボラン、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモ
ニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔ト
リ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス
〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩、ト
リ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッ
ケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0105】
カルボラン化合物として具体的には、たとえば4−カルバノナボラン、1,3-ジカル
バノナボラン、6,9-ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-
ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウン
デカボラン、2,7-ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7
,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウン
デカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)ア
ンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカ
ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウ
ム7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウ
ンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-
ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エ
チル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイド
ライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウ
ンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)ア
ンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-
1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(
ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト
酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバ
ウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウ
ムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデ
カボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモ
ニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-
カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-
ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバル
ト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カ
ルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げ
られる。
【0106】
尚、上記のような第4族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B)は、2種以上混合して用いることもできる。
本発明の重合例で用いた(B)成分としては、今回上記に示した(B−3)有機アルミニウムオキシ化合物を用いた、具体的には市販されている日本アルキルアルミ株式会社製のMAO/トルエン溶液である。
【0107】
また、本発明において用いられるオレフィン重合用触媒の調整において、必要に応じて担体を使用することができる。担体は、通常無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物などを挙げることができる。
【0108】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B2
3、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物を使用、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2 、SiO2-V25 、SiO2-Cr23、SiO2-TiO2-MgOなどを使用す
ることができる。
【0109】
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)は、上記のようなオレフィン重合用触媒の存在下にα−オレフィンを(共)重合させてα−オレフィン(共)重合体(B)を製造する。
【0110】
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)を製造する具体的態様を、以下に詳細に説明する。
本発明では、重合反応は炭化水素媒体中で実施される。このような炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分などを挙げることができる。さらに、重合に用いるオレフィンを用いることもできる。
【0111】
本発明では、上記のようなオレフィン重合用触媒の存在下に重合を行うが、この際には、上記第IV族遷移金属化合物(A)は、重合反応系内の遷移金属原子の濃度として通常、10-8〜1グラム原子/リットル、好ましくは10-7〜10-1グラム原子/リットルの範囲の量で用いられる。
【0112】
(B−1)成分は、(B−1)成分と、(A)成分中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B−1)/M〕が通常0.01〜5000、好ましくは0.05〜2000となるような量で用いられる。(B−2)成分は、(B−2)成分と、(A)成分中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B−2)/M〕が通常100〜25000、好ましくは500〜10000となるような量で用いられる。(B−3)成分は、(B−3)成分中のアルミニウム原子と、(A)成分中の全遷移金属(M)とのモル比〔(B−3)/M〕が、通常10〜5000、好ましくは20〜2000となるような量で用いられる。(B−4)成分は、(B−4)
成分と、(A)成分中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B−4)/M〕が通常1〜50、好ましくは1〜20となるような量で用いられる。
【0113】
また、このようなオレフィン重合触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜180℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。
【0114】
<低粘度エンジン油組成物>
本発明の低粘度エンジン油組成物は、前記基油(A)及び前記α−オレフィン(共)重合体(B)を含む低粘度エンジン油組成物であって、当該エンジン油組成物に対して、α−オレフィン(共)重合体(B)を0.5〜50質量%、好ましくは1.0〜30質量%、より好ましくは2.0〜25質量%含む。
【0115】
α−オレフィン(共)重合体(B)の含有量が0.5質量%未満の場合は、高増粘性を
有するものの、剪断安定性が悪化する虞があり、一方、含有量が50質量%を超える場合は、増粘性および粘度指数共に劣る虞がある。
【0116】
本発明の低粘度エンジン油組成物は、好ましくは、100℃での動粘度が5.6〜9.3mm2/s、より好ましくは6.0〜8.0mm2/sの範囲にある。
本発明の低粘度エンジン油組成物は、好ましくは、CCS粘度計で測定される−35℃の粘度が7000mPa・s以下、より好ましくは6000mPa・s以下の範囲にある。
【0117】
本発明の低粘度エンジン油組成物は、好ましくは、ミニロータリー粘度計で測定される−40℃の粘度が20000mPa・s以下、より好ましくは5000〜10000mPa・sの範囲にある。
【0118】
本発明の低粘度エンジン油組成物は、好ましくは、HTHS粘度計で測定される150℃の粘度が2.2〜3.5mPa・sの範囲、より好ましくは2.5〜3.0mPa・sの範囲にある。
【0119】
本発明の低粘度エンジン油組成物は、前記基油(A)及び前記α−オレフィン(共)重合体に加え、清浄分散剤、酸化防止剤、流動点降下剤、摩耗防止剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、消泡剤及び防錆剤からなる群より選ばれた少なくとも1種類の添加剤を含んでもよい。
【0120】
<清浄分散剤>
本発明の低粘度エンジン油組成物に含まれる清浄分散剤としては、種々公知の清浄分散剤を使用し得る。具体的には、例えば、カルシウムスルフォネート、メグネシウムスルフォネート等のスルホネート系;フィネート;サリチレート;コハク酸イミド;ベンジルアミンなどを例示することができ、通常、0〜15質量%の範囲で用いられる。
【0121】
<酸化防止剤>
本発明の低粘度エンジン油組成物に含まれる酸化防止剤としては、種々公知の酸化防止剤を使用し得る。具体的には、例えば、ジ(アルキルフェニル)アミン(アルキル基は炭素数4〜20)、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン(アルキル基は炭素数4〜20)、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、N,N’−ジナフチル−p−フェニレンジアミン、アクリジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、ジピリジルアミン、ジフェニルアミン、フェノールアミン、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノパラクレゾール等のアミン系酸化防止剤、2.6−ジ−t−ブチルパラクレゾ−ル、4.4’−メチレンビス(2.6−ジ−t−ブチルフェノ−ル)、2.6−ジ−t−ブチル−4−N,N−ジメチルアミノメチルフェノール、2.6−ジ−t−ブチルフェノ−ル、ジオクチルジフェニルアミン等のフェノ−ル系酸化防止剤、また鉄オクトエ−ト、フェロセン、鉄ナフトエ−ト等の有機鉄塩、セリウムナフトエ−ト、セリウムトルエ−ト等の有機セリウム塩、ジルコニウムオクトエ−ト等の有機ジルコニウム塩等の有機金属化合物系酸化防止剤が挙げられる。また、酸化防止剤は単独で使用してもよいが、二種以上組み合わせて使用することもできる。酸化防止剤は、必要に応じて、0〜3質量%の範囲で用いられる。
【0122】
<流動点降下剤>
本発明の低粘度エンジン油組成物に含まれる流動点降下剤としては、種々公知の流動点降下剤を使用し得る。具体的には、有機酸エステル基を含有する高分子化合物が用いられ、有機酸エステル基を含有するビニル重合体が特に好適に用いられる。有機酸エステル基を含有するビニル重合体としては例えばメタクリル酸アルキルの(共)重合体、アクリル
酸アルキルの(共)重合体、フマル酸アルキルの(共)重合体、マレイン酸アルキルの(共)重合体、アルキル化ナフタレン等が挙げられる。
【0123】
このような流動点降下剤は、下記(C1)の特性を有することが好ましい。
(C1)流動点降下剤(C)の融点;
流動点降下剤の融点は、−13℃以下、好ましくは−15℃、さらに好ましくは−17℃以下である。
【0124】
流動点降下剤の融点は、差走査型熱量計(DSC)を用いて測定される。具体的には試料約5mgをアルミパンに詰めて200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、10℃/分で−40℃まで冷却し、−40℃で5分保持した後、10℃/分で昇温する際の吸熱曲線から求める。
【0125】
上記流動点降下剤はさらに、下記(C2)の特性を有することが好ましい。
(C2)流動点降下剤の分子量(ポリスチレン換算重量平均分子量:Mw);
流動点降下剤の重量平均分子量は、20,000〜400,000、好ましくは30,0
00〜300,000、より好ましくは40,000〜200,000の範囲にある。
【0126】
流動点降下剤の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、テトラフロロフラン溶媒で、40℃で測定される。
流動点降下剤は、通常、0〜2質量%の範囲で用いられる。
【0127】
<摩耗防止剤>
本発明の低粘度エンジン油組成物に含まれる摩耗防止剤としては、種々公知の摩耗防止剤を使用し得る。具体的には、例えば、二硫化モリブデンなどの無機または有機モリブデン化合物、アルキルメルカプチルボレートなどの有機ホウ素化合物;グラファイト、硫化アンチモン、ホウ素化合物、ポリテトラフルオロエチレンなどを例示することができる。耐摩耗剤は、必要に応じて、0〜3質量%の範囲で用いられる。
【0128】
<摩擦調整剤>
本発明の低粘度エンジン油組成物に含まれる摩擦調整剤としては、種々公知の摩擦調整剤を使用し得る。具体的には、例えば、金属含有化合物もしくは物質ならびに無灰化合物もしくは物質またはそれらの混合物が含まれる。金属含有摩擦調整剤としては、金属塩または金属−配位子錯体が含まれる。金属にはアルカリ金属、アルカリ土類金属、または遷移族金属が含まれる。遷移金属には、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Znなどが含まれる。配位子としてはアルコール、ポリオール、グリセロール、部分エステルグリセロール、チオール、カルボキシレート、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、アミド、イミド、アミン、チアゾール、ジチアゾールトリアゾールが挙げられる。特に、Mo含有化合物、例えば、Mo−ジチオカルバメート(Mo-DTC)、Mo−ジチオホスフェート(Mo−DTP)
などが有効である。また、有効な濃度は0.1〜5質量%である。
【0129】
<腐食防止剤>
本発明の低粘度エンジン油組成物に含まれる腐食防止剤としては、種々公知の腐食防止剤を使用し得る。具体的には、例えば、ベンゾトリアゾールとその誘導体、チアゾール系化合物などを挙げることができる。腐食防止剤は、通常、0〜3質量%の範囲で用いられる。
【0130】
<消泡剤>
本発明の低粘度エンジン油組成物に含まれる消泡剤としては、種々公知の消泡剤を使用
し得る。具体的には、例えば、ジメチルシロキサン、シリカゲル分散体などのシリコーン系化合物、アルコール系またはエステル系の化合物などを例示することができる。消泡剤は、必要に応じて、0〜0.2質量%の範囲で用いられる。
【0131】
<防錆剤>
本発明の低粘度エンジン油組成物に含まれる防錆剤としては、種々公知の防錆剤を使用し得る。具体的には、例えば、各種アミン化合物、カルボン酸金属塩、多価アルコールエステル、リン化合物、スルホネートなどの化合物が挙げられる。防錆剤は、必要に応じて、0〜3質量%の範囲で用いられる。
【実施例】
【0132】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例によって限定されるものではない。
本発明に係る基油(A)及びα−オレフィン(共)重合体(B)の物性等は以下の方法で測定した。
【0133】
(1)動粘度(mm2/s)及び粘度指数
JIS K2283に基づき、40℃における動粘度(KV40℃)および100℃における動粘度(KV100℃)を測定し、粘度指数を算出した。
【0134】
(2)数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)
数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、島津製作所製のGPC(クロマトパックC−R4A)を用い以下のようにして測定した。分離カラムとして、TSKG6000H XL、G4000H XL、G3000H XL、G2000H XLを用い、カラム温度を40℃とし、移動相にはテトラヒドロフラン(和光純薬)を用い、展開速度を0.8ml/分とし、試料濃度を0.2重量%とし、試料注入量を20マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンとしては、東ソー社製のものを用いた。
【0135】
(3)分子片末端における不飽和基の含有量
分子片末端における不飽和基の含有率は、日本電子製EX400型核磁気共鳴装置を用い以下のようにして測定した。1H−NMRは、サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と
して重水素化クロロホルム中(アルドリッチ、99.8atom%D)、2重量%に調整した試料を常温において測定した。該重合体の各水素のピークは、末端の飽和メチル基に基づくピーク(A)が0.65〜0.85ppm、ビニリデン基に基づくピーク(B)が4.
70ppm〜4.80ppm、ビニル基に基づくピーク(C)および(D)が各々4.8
5〜5.0ppmと5.7〜5.9ppm、内部オレフィンに基づくピーク(E)が5.10〜5.30ppm、メチレン基に基づくピーク(F)が0.90〜2.0ppmに観
測される。各ピーク(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)のピーク面積を各々SA、SB、SC、SD、SE、SFとすれば、全プロトン数あたりの不飽和結合の個数Nは(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)のピークの強度から下記式(25)にて算出される。
【0136】
A:メチル;0.65〜0.85ppm
B:ビニリデン;4.70〜4.80ppm
C:ビニル;4.85〜5.00ppm
D:ビニル;5.70〜5.90ppm
E:内部オレフィン(3置換体);5.1〜5.3ppm
F:メチレン;0.9〜2.0ppm
N[個/全プロトン数]=[SB/2+(SC+SD)/3+SE]/(SA+SB+SC
+SD+SE+SF)・・・(25)
分子片末端における不飽和基の含有率は、上記式(25)より求めたNとVPOにより測定した絶対平均分子量Mを用いて、下記式(26)にて算出される。
【0137】
分子片末端における不飽和基の含有率[%]=N×M×(2/14)・・・(26)
N:不飽和基数[個/全プロトン]
M:絶対分子量
本発明に係る潤滑油基油(A)及びα−オレフィン(共)重合体(B)を含む低粘度エンジン油組成物の物性等は以下の方法で測定した。
【0138】
(1)動粘度(mm2/s)
JIS K2283に基づき、40℃における動粘度(KV40℃)および100℃における動粘度(KV100℃)を測定し、粘度指数を算出した。尚、本実施例では試料油の動粘度が11mm2/sとなるように調整した。
【0139】
(2)HTHS(High Temerature High Shear)粘度(m
Pa・s)
ASTM D4683に基づき、150℃での粘度を測定した。
【0140】
(3)Cold Cranking Simulator(CCS)粘度(mPa・s)
ASTM D 2602に基づいて−30℃(SAE−5W)、及び−35℃(SAE−0W)で測定を行い、CCS粘度を測定した。CCS粘度はクランク軸における低温での摺動性(始動性)の評価に用いられ、値が小さい程、低温特性に優れることを示す。
【0141】
(4)Mini−Rotary Viscometer(MRV)粘度(mPa・s)
ASTM D4684に基づいて、−40℃で(SAE−0W)で測定を行い、MRV粘度を測定した。MRV粘度はオイルポンプが低温で正常なポンピングを行うための評価に用いられ、値が小さい程、低温特性に優れることを示す。
【0142】
(5)SONIC剪断粘度低下率(%)
SONIC法(JPI−5S−29−06)に基づいて、剪断粘度低下率を測定を行った。剪断安定性は潤滑油中の共重合体成分が金属摺動部で剪断を受け、分子鎖が切断することによる動粘度の損失の尺度であり、粘度低下率が大きい値である程、損失が大きいことを示す。
【0143】
(6)パネルコーキング試験 コーキング価(mg)
アメリカ連邦規格(Federal Specification Standard)に準拠して製作されたパネルコーキング試験器を用いて、パネル温度(300℃)、油温(80℃)、スプラッシャーサイクル(10秒回転/30秒停止)で8時間運転後のカーボン(スラッジ)の付着量をコーキング価として評価した。
【0144】
〔α−オレフィン(共)重合体の重合例〕
本発明に係るα−オレフィン(共)重合体(B)等は、以下の重合例により製造した。
なお、重合例で使用したビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドは特開2000−136195号公報に記載の方法を参考に合成した。ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフル
オレニル)ジルコニウムジクロリドは特開2004−182715号公報に記載の方法を
参考に合成した。ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドは特開平2−274703号公報に記載の方法を参考に合成した。ジ(
ベンジル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6―ジーtert―ブチルフルオレニル
)ジルコニウムジクロリドは特開2004−189666号公報に記載の方法を参考に合成した。
また、(メチル)(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドは以下の方法で合成した。
【0145】
〔6,6‘−メチル,(p-トリル)フルベンの合成〕
窒素雰囲気下、200mlの3口フラスコにリチウムシクロペンタジエン5.9g(81.9mmol)に脱水ジエチルエーテル100mlを加えて攪拌した。このスラリー溶液
をアイスバスで冷却し、4′−メチルアセトフェノン10.0g(74.5mmol)を滴下した。その後室温で20時間攪拌し、得られた溶液を希塩酸水溶液でクエンチした。ヘキサン50mlを添加し この有機層を水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた粘性液体をヘキサンでカラムクロマトグラフィー分離し、赤色粘性液体の目的物を得た。(収量9.8g、収率72%)。
【0146】
〔メチル(p-トリル)シクロペンタジエニル(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)メタンの合成〕
窒素雰囲気下、200mlの3口フラスコでテトラヒドロフラン80mlおよびオクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレン5.0g(12.9mmol)を混合し、この溶液を−20℃に冷却後、n-ブチルリチウム 8.45 ml(1.61Mヘキサン溶液, 13.5mmol)をゆっくり滴下し室温で5時間攪拌した。その後この反応液を−20℃に
冷却後、6,6‘−メチル,(p-トリル)フルベン2.6g(14.2mmol)をゆっく
り滴下し、徐々に室温に戻しながら1時間攪拌した。この反応液を希塩酸水溶液でクエン
チ後、ジエチルエーテルで抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、得られた固体をメタノールで再結晶し、白色固体の目的生成物を得た(収量7.2g、収率98%)。
【0147】
〔(メチル)(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドの合成〕
窒素雰囲気下、50mlのシュレンク管に脱水ジエチルエーテル20mlとメチル(p-トリル)シクロペンタジエニル(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)メタン
1.0 g(1.76mmol)を入れ攪拌した。この溶液を−20℃に冷やしながらn-ブ
チルリチウム 2.1 ml(1.61Mヘキサン溶液, 3.47mmol)をゆっくり滴下し、徐々に室温に戻しながら48時間攪拌した。その後、−60℃に冷却し四塩化ジルコニウム0.4 g(1.76mmol) を添加し徐々に室温に戻しながら24時間攪拌した
。この反応溶液をグローブボックス内で 固体と溶液部に分離し溶液層を濃縮乾固後、ジ
エチルエーテルを添加し冷蔵庫で放置した。
【0148】
〔重合例1〕
充分に窒素置換した1000mlのオートクレーブにn−ヘプタン925ml、1−デ
セン75mlを装入し、95℃まで昇温した。オートクレーブに水素ガスを加え、3MPa・Gに加圧し、続いてトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液0.4mmolを加
え、次いで(メチル)(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオ
クタヒドロジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジクロリドのヘプタン溶液0.003mmol[ジルコニウム原子に換算して0.003mmol]とN,N-ジメチルアニリニウ
ムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのヘプタンスラリー0.012mmolを加え、温度を100℃にして60分間攪拌しながら重合した。重合後、少量のメタノールを添加し重合を停止した後、冷却、脱圧した。この溶液を取り出し0.6mol/Lの塩酸水溶液500ml中にポリマー溶液を加え、攪拌した。この溶液を分液ロートに移し、有機層を分取した後、もう一度、0.6mol/Lの塩酸水溶液500ml中を加え同
様の操作を行った。その後、有機層を500mlの水を用いて水洗を3回行い、有機層を分取し、175℃、減圧下(1mmHg)で溶媒と未反応の1−デセンを留去した。
【0149】
得られた透明液状の1−デセン重合体(重合体1)は15.7gであり、重合活性は5.2kg−polymer/mmol−Zr・hrであった。重合体1の物性を表2に示す。
【0150】
〔重合例2〕
充分に窒素置換した1000mlのオートクレーブにn−ヘプタン700ml、1−デ
セン300mlを装入し、105℃まで昇温した。オートクレーブに水素ガスを加え、3MPa・Gに加圧し、続いてトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液0.4mmol
を加え、次いで(メチル)(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチ
ルオクタヒドロジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジクロリドのヘプタン溶液0.0015mmol[ジルコニウム原子に換算して0.0015mmol]とMMAO-3A〔東
ソーファインケム社製〕のヘキサン溶液をアルミニウム原子に換算して0.75mmolを加え、温度を110℃にして60分間攪拌しながら重合した。重合後、少量のメタノールを添加し重合を停止した後、冷却、脱圧した。この溶液を取り出し0.6mol/Lの塩酸水溶液500ml中にポリマー溶液を加え、攪拌した。この溶液を分液ロートに移し、有機層を分取した後、もう一度、0.6mol/Lの塩酸水溶液500ml中を加え同様の操作を行った。その後、有機層を500mlの水を用いて水洗を3回行い、有機層を分取し、175℃、減圧下(1mmHg)で溶媒と未反応の1−デセンを留去した。
【0151】
得られた透明液状の1−デセン重合体(重合体2)は97.3gであり、重合活性は64.9kg−polymer/mmol−Zr・hrであった。重合体2の物性を表2に示す。
【0152】
〔重合例3〕
充分に窒素置換した1000mlのオートクレーブにヘプタン400ml、1−デセン100mlを装入し、続いてトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液0.2mmolを加え、さらにジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタ
ヒドロジベンゾフルオレニル) ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液0.001mmol[ジルコニウム原子に換算して0.001mmol]、N,N-ジメチルアニリニウムテ
トラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのヘプタンスラリー0.004mmolを加え、50℃まで昇温した後、水素ガスで0.8MPa・Gに加圧し、温度を55℃にして
60分間攪拌しながら重合した。重合後、冷却、脱圧し、少量のイソプロパノールを添加し重合を停止した。これを、1mol/Lの塩酸水溶液300ml中にポリマー溶液を加え、攪拌した。この溶液を分液ロートに移し、有機層を分取した後、有機層を500mlの水で水洗を行い、有機層を分取し、175℃、減圧下(1mmHg)で溶媒と未反応の1−デセンを留去した。
【0153】
得られた透明液状の1−デセン重合体(重合体3)は30.8gであり、重合活性は30.8kg−polymer/mmol−Zr・hrであった。重合体3の物性を表2に示す。
【0154】
〔重合例4〕
充分に窒素置換した1000mlのガラス製重合容器にn−デカン250ml、1−デ
セン250mlを装入し、75℃まで昇温した。続いてジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液0.002mmol[ジルコニウム原子に換算して0.002mmol]を加え、メチルアルミノキサン[M
AO]〔日本アルキルアルミ製10%トルエン溶液〕をアルミニウム原子に換算して2m
molを加え、その後ガラス容器に水素ガス35L/hrを加え、温度を80℃にして6
0分間攪拌しながら重合した。重合中は80℃を保ちながら、水素ガスを連続的に供給した。重合後、ガスの供給を停止し、少量のイソプロパノールを添加し重合を停止した。これを、1mol/Lの塩酸水溶液300ml中にポリマー溶液を加え、攪拌した。この溶液を分液ロートに移し、有機層を分取した後、有機層を500mlの水で水洗を行い、有機層を分取し、175℃、減圧下(1mmHg)で溶媒と未反応の1−デセンを留去した。
【0155】
得られた透明液状の1−デセン重合体(重合体4)は29.4gであり、重合活性は14.7kg−polymer/mmol−Zr・hrであった。重合体4の物性を表2に示す。
【0156】
〔比較重合例1〕
充分に窒素置換した1000mlのガラス製重合容器にn−デカン250ml、1−デ
セン250mlを装入し、25℃まで昇温した。続いてジフェニルメチレン(シクロペン
タジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液0.002mmol[ジルコニウム原子に換算して0.002mmol]を加え、メチルアルミノキサン[M
AO]〔日本アルキルアルミ製10%トルエン溶液〕をアルミニウム原子に換算して2m
molを加え、その後ガラス容器に水素ガス5L/hr、エチレンガス5L/hrを加え、
温度を25℃にして60分間攪拌しながら重合した。重合中は25℃を保ちながら、水素ガスを連続的に供給した。重合後、ガスの供給を停止し、少量のイソプロパノールを添加し重合を停止した。これを、1mol/Lの塩酸水溶液300ml中にポリマー溶液を加え、攪拌した。この溶液を分液ロートに移し、有機層を分取した後、有機層を500mlの水で水洗を行い、有機層を分取し、175℃、減圧下(1mmHg)で溶媒と未反応の1−デセンを留去した。
【0157】
得られた透明液状の1−デセン・エチレン共重合体(比較共重合体1)は10.1gであり、重合活性は5.1kg−polymer/mmol−Zr・hrであった。比較共重合体1の物性を表2に示す。
【0158】
〔比較重合例2〕
充分に窒素置換した1000mlのガラス製重合容器にn−デカン400ml、1−デ
セン100mlを装入し、100℃まで昇温した。続いてジ(ベンジル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6―ジーtert―ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド
のトルエン溶液0.002mmol[ジルコニウム原子に換算して0.002mmol]を加え、メチルアルミノキサン[MAO]〔日本アルキルアルミ製10%トルエン溶液〕をアルミニウム原子に換算して2mmolを加え、その後ガラス容器に水素ガス20L/hr
、エチレンガス50L/hrを加え、温度を100℃にして60分間攪拌しながら重合し
た。重合中は100℃を保ちながら、水素ガス、エチレンガスを連続的に供給した。重合後、ガスの供給を停止し、少量のイソプロパノールを添加し重合を停止した。これを、1mol/Lの塩酸水溶液300ml中にポリマー溶液を加え、攪拌した。この溶液を分液ロートに移し、有機層を分取した後、有機層を500mlの水で水洗を行い、有機層を分取し、175℃、減圧下(1mmHg)で溶媒と未反応の1−デセンを留去した。
【0159】
得られた透明液状の1−デセン・エチレン共重合体(比較共重合体2)は21.88gであり、重合活性は10.9kg−polymer/mmol−Zr・hrであった。比較共重合体2の物性を表2に示す。
【0160】
〔比較重合例3〕
連続重合反応器を用いて、精製トルエンを1L/hr、精製1−デセンを1L/hrト
リイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液0.2mmolを加え、さらにジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)
ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液0.001mmol[ジルコニウム原子に換算し
て0.001mmol]、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェ
ニル)ボレートのヘプタンスラリー0.04mmol/Lの割合で連続的に供給し、重合
器内において同時に窒素290L/hr、水素10L/hrの割合で連続的に供給し、重合温度50℃、常圧、滞留時間1.0時間となる条件下に重合を行った。ポリマー溶液を
重合器より連続的に抜き出し、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。そのポリマー溶液に水1L、塩酸少々(20mL程度)を加え、15分間攪拌した後、静置し、水層を分離する。次に水2Lを加え10分間攪拌後、静置し、水層を分離する。これを2回繰り返した。その後、ポリマー溶液よりトルエンを除去することにより無色透明な液状ポリマーを得た。さらにこの液状ポリマーを180℃で1時間減圧(15mmHg
)乾燥した。
【0161】
得られた透明液状の1−デセン重合体(比較重合体3)は24.0g/Lであり、重合活性は960kg−polymer/mmol−Zr・hrであった。比較重合体3の物性を表2に示す。
【0162】
〔比較重合例4〕
連続重合反応器を用いて、精製トルエンを1L/hr、精製1−デセンを1L/hrメチルアルミノキサン[MAO]〔日本アルキルアルミ製10%トルエン溶液〕をアルミニウム原子に換算して11mmol/L、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドをジルコニウム原子に換算して0.03mmol/Lの割合で連続的に供給し、重合器内において同時に窒素300L/hrで連続的に供給し、重合温度22℃、常圧、滞留時間1.0時間となる条件下に重合を行った。ポリマー溶液を重合器
より連続的に抜き出し、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。そのポリマー溶液に水1L、塩酸少々(20mL程度)を加え、15分間攪拌した後、静置し、
水層を分離する。次に水2Lを加え10分間攪拌後、静置し、水層を分離する。これを2回繰り返した。その後、ポリマー溶液よりトルエンを除去することにより無色透明な液状ポリマーを得た。さらにこの液状ポリマーを180℃で1時間減圧(15mmHg)乾燥
した。
【0163】
得られた透明液状の1−デセン重合体(比較重合体4)は17.8g/Lであり、重合活性は534kg−polymer/mmol−Zr・hrであった。比較重合体4の物性を表2に示す。
【0164】
【表2】

本発明の比較例9〜18で低粘度エンジン油組成物のα−オレフィン重合体(B)の換わりに用いた重合体を以下に示す。
(1)エチレン・プロピレン共重合体
三井化学社製、商品名 ルーカントHC−40
(2)ポリ1−デセン (PAO−40)
Ineos社製、商品名 Durasyn174
(3)エチレン・プロピレン共重合体
三井化学社製、商品名 ルーカントHC−600
(4)エチレン・プロピレン共重合体
三井化学社製、商品名 ルーカントHC−2000
(5)エチレン・プロピレン共重合体
日本ルーブリゾール社製、OCP系粘度改良剤、商品名 M−1710
(6)ポリメタクリレート系重合体
三洋化成社製、商品名 AC−1703
上記エチレン・プロピレン共重合体等の物性を表3に示す。
【0165】
【表3】

以下に、本発明の低粘度エンジン油組成物及び比較例を示す。
実施例及び比較例で用いた基油及び添加剤等を以下に示す。
【0166】
<基油(ベース油)>
〔合成油PAO−4〕
グループ-(IV)に分類される100℃の動粘度が4.10mm2/s、粘度指数が11
5の低粘度ポリ・αオレフィン(商標:NEXBASE−2004、Fortum社製)。
【0167】
〔合成油PAO−6〕
グループ-(IV)に分類される100℃の動粘度が5.70mm2/s、粘度指数が130の低粘度ポリ・αオレフィン(商標:NEXBASE−2006、Fortum社製)。
【0168】
〔エステル油〕
グループ-(V)に分類される100℃の動粘度が4.40mm2/s、粘度指数が137(ユニスターH−334R、日油社製)
【0169】
〔鉱油:商標 YUBASE−4、SK社製〕
グループ(III)に分類される100℃の動粘度が4.24mm2/s、粘度指数が124の鉱物油。
【0170】
〔鉱油:商標 YUBASE−6、SK社製〕
グループ(III)に分類される100℃の動粘度が6.50mm2/s、粘度指数が131の)鉱油。
【0171】
<添加剤>
〔清浄分散剤〕
インフィニアム社製;P−5202(商標)。
【0172】
〔流動点降下剤〕
三洋化成社製;AC−146(商標)。
【0173】
〔実施例1〜12〕
重合例1〜4で得られたα−オレフィン重合体を用い、上記基油、添加剤を表4に記載の割合で配合して低粘度エンジン油組成物を得た。得られた低粘度エンジン油組成物の評価を前記記載の方法で行った。結果を表4に示す。
【0174】
【表4】

〔比較例1〜8〕
比較重合例1〜4で得られたα−オレフィン(共)重合体を用い、基油、添加剤を表5
に記載の割合で配合して低粘度エンジン油組成物を得た。得られた低粘度エンジン油組成物の評価を前記記載の方法で行った。結果を表5に示す。
【0175】
【表5】

〔比較例9〜18〕
重合例1〜4で得られたα−オレフィン重合体に替えて、表3に記載した重合体を用い、基油、添加剤を表6に記載の割合で配合して低粘度エンジン油組成物を得た。得られた低粘度エンジン油組成物の評価を前記記載の方法で行った。結果を表6に示す。
【0176】
【表6】

本発明の実施例及び比較例では、いずれも低粘度エンジン油組成物の動粘度(100℃)が7.8〜8.2mm2/sの範囲になるように、調整した。
【0177】
表4に示すように、使用するα−オレフィン(共)重合体の分子量(または動粘度)が高いほど配合油の低温特性が向上(CCS粘度、MR粘度が低下)し、パネル試験コーキング価が増加する傾向が観察される(実施例1〜12)。
【0178】
次に、表4及び表5に示すようにα−オレフィン(共)重合体の動粘度(100℃)がほぼ同等の実施例と比較例について、述べる。
重合例4で得たα−オレフィン重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(実施例4)は、比較重合例1及び比較重合例2で得たα−オレフィン・エチレン共重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例1、2)に比べてCCS粘度、MR粘度が大幅に低く良好であることが分かる。また実施例4は比較重合例3及び4で得たα−オレフィン重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例3、4)に比べてパネル試験コーキング価が大幅に低下していることが分かる。更に、重合例4で得たα−オレフィン重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(実施例8)は、比較重合例1及び比較重合例2で得たα−オレフィン・エチレン共重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例5,6)に比べてCCS粘度、MR粘度が大幅に低く良好であり、また、比較重合例3及び4で得たα−オレフィン重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例7,8)に比べるとパネル試験コーキング価が大幅に低下していることが分かる。
【0179】
重合例2で得たα−オレフィン重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(実施例2)とエチレン・α−オレフィン共重合体(HC−40)を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例9)及びPAO−40を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例10)、重合例3で得たα−オレフィン重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(実施例7)とエチレン・α−オレフィン共重合体(HC−40)を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例13)及びPAO−40を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例14)、重合例3で得たα−オレフィン重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(実施例3)とエチレン・α−オレフィン共重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例11)、重合例3で得たα−オレフィン重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(実施例7)とエチレン・α−オレフィン共重合体(HC−600)を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例15)、重合例4で得たα−オレフィン重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(実施例4)とエチレン・α−オレフィン共重合体(HC−2000)を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例12)、重合例4で得たα−オレフィン重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(実施例8)とエチレン・α−オレフィン共重合体(HC−2000)を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例16)を比べると、実施例が共にCCS粘度、MR粘度が大幅に低く良好であることが分かる。
【0180】
また、重合例1〜4で得たα−オレフィン重合体を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(実施例1〜4)とエチレン・α−オレフィン共重合体(M−1710)を用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例17)及びポリメタクリレートを用いて得られた低粘度エンジン油組成物(比較例18)のHTHS粘度を比べると、実施例が共に高い値を示し、省燃費強化に向けた低粘度化(動粘度100℃の低減)で懸念される油膜安定性(潤滑性)の不安をカバーできることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0181】
石油資源、環境問題からの自動車の燃費規制が強化されている状況の中で、潤滑油の果たす役割は大きい。エンジン油からの対応としては、低粘度化と摩擦調整剤の添加により燃費低減を図っている。本発明の低粘度エンジン油組成物は、低粘度化の観点から、特定の分子量、分子量分布を有するα-オレフィン(共)重合体を粘度調整剤として含有する
ことにより、低粘度化と優れた低温粘度特性によるトルク低減で省燃費化を図るものである。一方、低粘度化の最大の課題である潤滑性を保持する観点から、優れた剪断安定性を活かして、ピストン・コンロッド系、クランク(軸受)系、動弁系等のエンジン内の各摩擦摺動部位で適正な油膜(潤滑性)を確保することが可能である。自動車の省燃費化は燃料の燃焼を低減することにより、地球温暖化の主因である二酸化炭素の低減を図るものであるが、本発明の低粘度エンジン油組成物は、省燃費性と潤滑性をバランスよく備えた地球環境保全に貢献する次世代エンジン油として有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)と下記の(i)〜(vi)で規定されるα−オレフィン(共)重合体(B)を含む低粘度エンジン油組成物であって、当該エンジン油組成物に対して、α−オレフィン(共)重合体(B)を0.5〜50質量%含むことを特徴とする低粘度エンジン油組成物。
基油(A);
粘度指数が115以上の鉱物油及び/又は合成油。
α−オレフィン(共)重合体(B);
(i)(a)炭素原子数8〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体
から導かれる構成単位を90〜100モル%の範囲及び(b)エチレンから導かれる構成単位を0〜10モル%の範囲、
(ii)100℃での動粘度が20〜2000mm2/sの範囲、
(iii)数平均分子量(Mn)が1500〜30000の範囲、及び
(iv)分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜1.8の範囲にある。
(v)分子片末端における不飽和基の含有率が10%以下
(vi)粘度指数が下記式(1)を満たす
粘度指数≧37.59ln(100℃での動粘度)+23.08・・・(1)
(但し、ln(100℃での動粘度は100℃での動粘度の自然対数である。)
【請求項2】
炭素原子数8〜20のα−オレフィンが1−デセンである請求項記載の低粘度エンジン油組成物。
【請求項3】
低粘度エンジン油組成物が、さらに、清浄分散剤、酸化防止剤、流動点降下剤、摩耗防止剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、消泡剤及び防錆剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする請求項1または2記載の低粘度エンジン油組成物。
【請求項4】
合成油が、ポリα−オレフィン(PAO)、ジエステル及びポリオールエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の低粘度エンジン油組成物。
【請求項5】
低粘度エンジン油組成物が、100℃での動粘度が5.6〜9.3mm2/sの範囲に
ある請求項1〜4のいずれか1項に記載の低粘度エンジン油組成物。
【請求項6】
低粘度エンジン油組成物が、CCS粘度計で測定される−35℃の粘度が7000mPa・s以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の低粘度エンジン油組成物。
【請求項7】
低粘度エンジン油組成物が、CCS粘度計で測定される−30℃の粘度が7000mPa・s以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の低粘度エンジン油組成物。
【請求項8】
低粘度エンジン油組成物が、ミニロータリー粘度計で測定される−40℃の粘度が20000mPa・s以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の低粘度エンジン油組成物。
【請求項9】
低粘度エンジン油組成物が、HTHS粘度計で測定される150℃の粘度が2.2〜3.5mPa・sの範囲にある請求項1〜8のいずれか1項に記載の低粘度エンジン油組成物。

【公開番号】特開2010−70593(P2010−70593A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236672(P2008−236672)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】